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特許7392132コバルトフリー正極材料およびその調製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-27
(45)【発行日】2023-12-05
(54)【発明の名称】コバルトフリー正極材料およびその調製方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/525 20100101AFI20231128BHJP
   C01G 53/00 20060101ALI20231128BHJP
   H01M 4/131 20100101ALI20231128BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20231128BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20231128BHJP
【FI】
H01M4/525
C01G53/00 A
H01M4/131
H01M4/36 C
H01M4/505
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022521738
(86)(22)【出願日】2020-12-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-26
(86)【国際出願番号】 CN2020134519
(87)【国際公開番号】W WO2022011939
(87)【国際公開日】2022-01-20
【審査請求日】2022-04-11
(31)【優先権主張番号】202010677212.9
(32)【優先日】2020-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522354388
【氏名又は名称】蜂巣能源科技股▲フン▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100177220
【弁理士】
【氏名又は名称】小木 智彦
(72)【発明者】
【氏名】喬 斉斉
(72)【発明者】
【氏名】江 衛軍
(72)【発明者】
【氏名】孫 明珠
(72)【発明者】
【氏名】許 ▲金▼培
(72)【発明者】
【氏名】施 澤濤
(72)【発明者】
【氏名】馬 加力
(72)【発明者】
【氏名】陳 思賢
(72)【発明者】
【氏名】王 鵬飛
【審査官】佐溝 茂良
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-169217(JP,A)
【文献】特開2008-243414(JP,A)
【文献】特開平10-069910(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0103022(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/525
H01M 4/36
H01M 4/505
C01G 53/00
H01M 4/525
H01M 4/505
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)リチウム塩および前駆体を混合した後に反応させ、コバルトフリー正極材料を得、そのうち、前記前駆体の化学式がNiMn(OH)であり、0.55≦x≦0.95、0.05≦y≦0.45であることと、
(2)前記コバルトフリー正極材料、被覆剤および導電物質を混合した後、焼成処理を行い、前記導電物質は、導電カーボンブラック、黒鉛およびグラフェンから選ばれる1種または複数種であり、前記被覆剤は、Alおよび/またはZrOから選ばれ、前記混合は、ドライ混合であることと、
(3)ステップ(2)で得た物質を粉砕処理し、コバルトフリー正極材料を得ることと、を含み、
前記導電物質の比表面積が50~200m /gであり、平均粒径が50~500nmであるコバルトフリー正極材料の調製方法。
【請求項2】
ステップ(1)で、前記反応の条件には、温度が800~1000℃であり、時間が10~20hであり、
ステップ(2)で、前記焼成処理の条件には、Nの雰囲気下で、温度が300~700℃であり、時間が5~10hである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(2)で、前記前駆体の総重量を基準として、前記リチウム塩の用量が47~50重量%、前記導電物質の用量が0.105~0.525重量%、前記コバルトフリー正極材料の用量が105~108重量%、前記被覆剤の用量が0.21~0.525重量%である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前駆体の総重量を基準として、前記リチウム塩の用量が47~48重量%、前記導電物質の用量が0.315~0.525重量%、前記コバルトフリー正極材料の用量が105~106重量%、前記被覆剤の用量が0.21~0.315重量%である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記導電物質は、導電カーボンブラックである、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記正極材料は、コアおよび前記コアに被覆されたシェルを含み、
前記コアは、コバルトフリー正極材料であり、前記コアの化学式がLiNiMnであり、ただし、0.55≦x≦0.95、0.05≦y≦0.45であり、
前記シェルは、被覆剤およびカーボンである、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記コアの総重量を基準として、前記シェルの含有量が0.1~1.0重量%である、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記コアの総重量を基準として、前記シェルの含有量が0.3~1.0重量%である、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記被覆剤の含有量が0.25~0.3重量%であり、前記カーボンの含有量が0.35~0.45重量%である、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記正極材料は、単結晶材料である、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記正極材料の平均粒径が1~10μmである、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記正極材料の平均粒径が2~4μmである、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リチウムイオン電池の技術分野に関し、たとえば、コバルトフリー正極材料およびその調製方法、並びにリチウムイオン電池正極およびリチウム電池に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、新エネルギー自動車の分野では、リチウムイオン動力電池の安全、航続走行距離、コストに対するニーズがますます高くなっている。動力電池の4つの主な材料のうち、正極材料の性能が電池性能全体に対して重要な役割を果たしながら、そのコストが動力電池の総コストに対して30~40%を占めている。そのため、電池性能を向上子ながら、そのコストを低下しようとすれば、正極材料の性能を向上させ、正極材料のコストを低下させる必要がある。
【0003】
現在広く用いられているNCM正極において、コバルト元素の価格が高く、環境を汚染しやすいため、三元正極材料のコバルトの含有量を低下させるか、または材料にコバルトを含めさせない必要がある。しかしながら、コバルトフリー単結晶層状正極材料は、一次粒径が小さく、D50が2~4umであるので、乾式被覆過程で凝集しやく、被覆均一性が悪いことを引き起こした。それと同時に、コバルトフリー材料にコバルトが不足していることに起因して、導電性が悪く、倍率性能が悪いことがある。
【0004】
現在、コバルトフリー単結晶層状正極材料の改良については、明確な改善案が提出された報道が発見されていない。
【0005】
したがって、コバルトフリー正極材料の研究および開発には、重要な意義がある。
【発明の概要】
【0006】
以下は、本明細書に詳しく説明されるテーマに対する概説である。この概説は、特許請求の範囲を限定するためのものではない。
【0007】
本開示は、コバルトフリー正極材料およびその調製方法、並びにリチウムイオン電池正極およびリチウム電池を提供する。
【0019】
本開示の一実施例において、
(1)リチウム塩および前駆体を混合した後に反応させ、コバルトフリー正極材料を得、そのうち、前記前駆体の化学式がNiMn(OH)であり、0.55≦x≦0.95、0.05≦y≦0.45であることと、
(2)前記コバルトフリー正極材料、被覆剤および導電物質を混合した後、焼成処理を行い、前記導電物質は、導電カーボンブラック、黒鉛およびグラフェンから選ばれる1種または複数種であり、前記被覆剤は、Alおよび/またはZrOから選ばれ、前記混合は、ドライ混合であることと、
(3)ステップ(2)で得た物質を粉砕処理し、コバルトフリー正極材料を得ることと、を含み、
前記導電物質の比表面積が50~200m /gであり、平均粒径が50~500nmであるコバルトフリー正極材料の調製方法が提供される。
本開示の一実施例において、
コアおよび前記コアに被覆されたシェルを含み、
前記コアは、コバルトフリー正極材料であり、前記コアの化学式がLiNiMnであり、ただし、0.55≦x≦0.95、0.05≦y≦0.45であり、
前記シェルは、被覆剤およびカーボンである、コバルトフリー正極材料の調製方法が提供される。
本開示に係る一実施例において、コバルトフリー正極材料は、乾式被覆過程で凝集しにくく、被覆均一性が良く、コバルトフリー単結晶正極材料の導電性を向上することができる。
一実施例において、前記コアの総重量を基準として、前記シェルの含有量が0.1~1.0重量%、たとえば0.1重量%、0.2重量%、0.3重量%、0.5重量%、0.6重量%、0.8重量%または1.0重量%などである。
一実施例において、前記シェルの含有量が0.3~1.0重量%、たとえば0.3重量%、0.4重量%、0.5重量%、0.7重量%、0.8重量%、0.9重量%または1.0重量%などである。
一実施例において、前記被覆剤は、AlおよびZrOのうちの少なくとも1種である。
一実施例において、前記被覆剤の含有量が0.25~0.3重量%、たとえば0.25重量%、0.28重量%、0.29重量%または0.30重量%などであり、前記カーボンの含有量が0.35~0.45重量%、たとえば0.35重量%、0.36重量%、0.38重量%、0.40重量%、0.41重量%、0.43重量%または0.45重量%などである。
一実施例において、前記正極材料は、単結晶材料である。
一実施例において、前記コアは、単結晶材料である。
この単結晶のコアの表面に上述したシェルが被覆された後に形成された材料は、単結晶材料として考えられてもよい。
一実施例において、前記正極材料の平均粒径が1~10μm、たとえば1μm、2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、8μmまたは10μmなどである。
一実施例において、前記正極材料の平均粒径が2~4μmである。
【0020】
本開示に係る一実施例において、導電物質を添加することにより、粒子の分散性を改善し、被覆効果を向上することができる。そして、調製方法がシンプルであり、大規模で使用可能となる。
【0021】
本開示に係る一実施例において、前記コバルトフリー正極材料の調製方法は、コバルトフリー正極材料の被覆過程における分散性を向上しながら、コバルトフリー正極材料の導電性を向上することができる。
【0022】
一実施例において、ステップ(1)で、前記反応の条件には、温度が800~1000℃、たとえば800℃、820℃、840℃、850℃、880℃、900℃、925℃、950℃または1000℃などであり、時間が10~20h、たとえば10h、12h、14h、15h、18h、19hまたは20hなどである。
【0023】
一実施例において、ステップ(2)で、前記焼成処理の条件には、Nの雰囲気下で、温度が300~700℃、たとえば300℃、400℃、500℃、550℃、600℃または700℃などであり、時間が5~10h、たとえば5h、6h、7h、8.5h、9hまたは10hなどである。
【0024】
一実施例において、ステップ(2)で、前駆体の総重量を基準として、前記リチウム塩の用量が47~50重量%、たとえば47重量%、48重量%、48.5重量%、49重量%または50重量%などであり、前記導電物質の用量が0.105~0.525重量%、たとえば0.105重量%、0.150重量%、0.200重量%、0.250重量%、0.300重量%、0.350重量%、0.400重量%、0.450重量%または0.500重量%などであり、前記コバルトフリー正極材料の用量が105~108重量%、たとえば105重量%、106重量%、107重量%または108重量%などであり、前記被覆剤の用量が0.21~0.525重量%、たとえば0.21重量%、0.23重量%、0.30重量%、0.35重量%、0.40重量%または0.45重量%などである。
【0025】
一実施例において、前駆体の総重量を基準として、前記リチウム塩の用量が47~48重量%、たとえば47重量%、47.2重量%、47.5重量%または48重量%などであり、前記導電物質の用量が0.315~0.525重量%、たとえば0.315重量%、0.350重量%、0.400重量%、0.450重量%、0.480重量%または0.500重量%などであり、前記コバルトフリー正極材料の用量が105~106重量%、たとえば105重量%、105.2重量%、105.5重量%または106重量%などであり、前記被覆剤の用量が0.21~0.315重量%、たとえば0.21重量%、0.25重量%、0.28重量%または0.3重量%などである。
【0026】
一実施例において、前記導電物質は、導電カーボンブラック、黒鉛およびグラフェンから選ばれる1種または複数種である。
【0027】
一実施例において、前記導電物質は、導電カーボンブラックである。
【0028】
一実施例において、前記導電物質の比表面積が50~200m/g、たとえば50m/g、60m/g、80m/g、90m/g、100m/g、120m/g、150m/g、180m/gまたは200m/gなどであり、平均粒径が50~500nm、たとえば50nm、80nm、100nm、125nm、150nm、170nm、200nm、240nm、280nm、320nm、350nm、400nmまたは500nmなどである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図面は、本開示の技術案のさらなる理解を提供するために使用され、且つ明細書の一部を構成し、本願の実施例とともに、本開示の技術案を説明するために使用され、本開示の技術案に対する限定を構成するものではない。
【0034】
図1は、比較例1における導電物質が添加されていないコバルトフリー正極材料のSEM電子顕微鏡写真である。
図2は、実施例1で調製されたコバルトフリー正極材料のSEM電子顕微鏡写真である。
図3は、比較例1におけるカーボンブラックが添加されていない材料、および実施例1で調製されたコバルトフリー正極材料の1週目充放電曲線模式図である。
図4は、比較例1におけるカーボンブラックが添加されていない材料、および実施例1で調製されたコバルトフリー正極材料のサイクル性能曲線模式図である。
【符号の説明】
【0035】
1、3、5は、比較例1における、カーボンブラックが添加されていない材料である。
2、4、6は、実施例1で調製されたコバルトフリー正極材料である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、具体的な実施例によって、本開示の技術案をさらに説明する。
【0037】
本開示の一実施例において、コアおよび前記コアに被覆されたシェルを含むコバルトフリー正極材料であって、コアは、コバルトフリー正極材料であり、コアの化学式がLiNiMnであり、ただし、0.55≦x≦0.95、0.05≦y≦0.45であり、シェルは、被覆剤およびカーボンである、コバルトフリー正極材料が提供される。
【0038】
本開示の発明者は、試験によって以下のことが発見した。関連技術において、コバルトフリー正極材料の粒径が小さいので、乾式被覆過程で凝集しやすく、被覆均一性が悪いことを引き起こすとともに、コバルトフリー正極材料の導電性を向上することができない。
【0039】
本開示に係る一実施例において、発明者は、コバルトフリー正極材料、被覆剤および導電物質を混合した後に焼成処理を行うことにより、この導電物質が大きい比表面積、および小さい粒径を有するため、被覆過程における分散性を改善しながら、導電物質が良好な導電性を有するため、コバルトフリー正極材料の導電性を向上することができる。
【0040】
また、本開示の一実施例において、正極材料は、コバルトフリー正極材料であり、コバルトフリー正極材料の構造が安定し、コバルト元素への依存を振り切り、コストがコバルト含有材料よりも低い。
【0041】
なお、本開示に係る一実施例において、コバルトフリー正極材料は、単結晶材料に属し、電子顕微鏡写真で確定可能である。本開示に係る一実施例において、コバルトフリー正極材料は、コバルトフリー単結晶層状正極材料である。
【0042】
一実施例において、前記コアの総重量を基準として、前記シェルの含有量が0.1~1.0重量%である。
【0043】
一実施例において、前記コアの総重量を基準として、前記シェルの含有量が0.3~1.0重量%である。
【0044】
本開示に係る一実施例において、シェルの含有量を、上述した範囲以内に限定することにより、被覆過程における分散性を改善するとともに、コバルトフリー正極材料の導電性を向上することができる。
【0045】
一実施例において、前記被覆剤は、AlおよびZrOのうちの少なくとも1種である。「前記被覆剤は、Alおよび/またはZrOである」と記述されてもよい。
【0046】
一実施例において、前記被覆剤の含有量が0.25~0.3重量%であり、前記カーボンの含有量が0.35~0.45重量%である。
【0047】
一実施例において、0.55≦x≦0.8、0.2≦y≦0.45である。
【0048】
一実施例において、xは、0.75、0.55および0.8、並びにそれらの点値におけるいずれか2つからなる範囲における任意の値であってもよい。
【0049】
一実施例において、yは、0.2、0.25および0.45、並びにそれらの点値におけるいずれか2つからなる範囲における任意の値であってもよい。
【0050】
一実施例において、xは、0.75であり、yは、0.25である。
【0051】
一実施例において、x+y=1である。
【0052】
一実施例において、正極材料は、単結晶材料である。
【0053】
一実施例において、正極材料の平均粒径が1~10μmである。
【0054】
一実施例において、正極材料の平均粒径が2~4μmである。
【0055】
なお、本開示において、「平均粒径」とは、前記正極材料のD50を指す。
【0056】
一実施例において、「平均粒径」は、レーザ式粒度分布計で測定される。
【0057】
本開示の一実施例において、
(1)リチウム塩および前駆体を混合した後に反応させ、コバルトフリー正極材料を得、そのうち、前記前駆体の化学式がNiMn(OH)であり、0.55≦x≦0.95、0.05≦y≦0.45であることと、
(2)上述したコバルトフリー正極材料、被覆剤および導電物質を混合した後、焼成処理を行うことと、
(3)ステップ(2)で得た物質を粉砕処理し、コバルトフリー正極材料を得ることと、を含むコバルトフリー正極材料の調製方法が提供される。
【0058】
一実施例において、ステップ(1)で、前記反応の条件には、温度が800~1000℃であり、時間が10~20hである。
【0059】
一実施例において、ステップ(1)で、前記反応の条件には、温度が900~1000℃であり、時間が10~15hである。
【0060】
一実施例において、ステップ(2)で、前記焼成処理の条件には、Nの雰囲気下で、温度が300~700℃であり、時間が5~10hである。
【0061】
一実施例において、ステップ(2)で、前記焼成処理の条件には、温度が300~500℃であり、時間が5~7hである。
【0062】
一実施例において、ステップ(1)および(2)で、前記混合は、高速ミキサーで行われる。
【0063】
一実施例において、ステップ(1)および(2)で、撹拌速度800~1000rpmの条件下で行われる。
【0064】
一実施例において、ステップ(1)および(2)で、撹拌速度900~1000rpmの条件下で行われる。
【0065】
一実施例において、ステップ(2)で、前駆体の総重量を基準として、リチウム塩の用量が47~50重量%、導電物質の用量が0.105~0.525重量%、コバルトフリー正極材料の用量が105~108重量%、前記被覆剤の用量が0.21~0.525重量%である。
【0066】
一実施例において、ステップ(2)で、前駆体の総重量を基準として、リチウム塩の用量が47~48重量%、導電物質の用量が0.315~0.525重量%、コバルトフリー正極材料の用量が105~106重量%、被覆剤の用量が0.21~0.315重量%である。
【0067】
一実施例において、導電物質は、導電カーボンブラック、黒鉛およびグラフェンから選ばれる1種または複数種である。
【0068】
一実施例において、導電物質は、導電カーボンブラックである。
【0069】
一実施例において、導電カーボンブラックは、アセチレンブラック、Super PおよびSuper Sから選ばれる1種または複数種である。そのうち、Super PおよびSuper Sは、型番である。具体的には、Super Pの比表面積が120m/g、平均粒径が55nmであり、Super Sの比表面積が80m/g、平均粒径が125nmである。
【0070】
一実施例において、導電物質の比表面積が50~200m/gであり、導電物質の平均粒径が50~500nmである。
【0071】
一実施例において、導電物質の比表面積が100~200m/gである。
【0072】
一実施例において、導電物質の平均粒径が50~200nmである。
【0073】
一実施例において、被覆剤は、Alおよび/またはZrOから選ばれる。
【0074】
一実施例において、リチウム塩は、LiOHおよび/またはLiCOである。
【0075】
一実施例において、ステップ(3)で、ロール破砕および気流粉砕により材料を粉砕処理した後、篩にかけて最終製品を得る。
【0076】
本開示の一実施例において、上述した方法により調製されたコバルトフリー正極材料が提供される。
【0077】
本開示の一実施例において、上述したコバルトフリー正極材料を含有するリチウムイオン電池正極が提供される。
【0078】
本開示の一実施例において、上述したリチウムイオン電池正極である正極と、負極とを含むリチウムイオン電池が提供される。
【0079】
以下は、本開示の典型的であるが非限定的な実施例である。
【0080】
以下の実施例および比較例において、
(1)元素含有量のパラメータは、ICPでテストされた。ICPは、パーキンエルマー企業管理(上海)有限公司(PerkinElmer Enterprise Management (Shanghai) Co., Ltd.)から購入され、型番がAvio 500である。
(2)表面形態および分散性は、SEMでテストされた。SEMは、ドイツ ZEISSから購入され、型番がSUPRA 55VPである。
(3)1週目充放電およびサイクル性能は、ボタン型電池として組み立てて、ボタン型電池をテストすることにより得られた。ボタン型電池の製造方法は、以下の通りである。
正極材料:導電カーボンブラック:接着剤PVDF(ポリフッ化ビニリデン)=92:4:4の質量比で混合し、NMP(N-メチルピロリドン)を溶剤として混合した後、アルミニウム箔に塗布し、90℃で真空乾燥させて正極シートを得た。そして、前記負極シート(リチウムシート)、正極シート、電解液(1mol/LのLiPF6、EC:EMC=1:1)(ECがエチレンカーボネートであり、EMCがエチルメチルカーボネートである)およびセパレータを電池として組み立てた。
(4)1週目充放電性能のテスト
得た電池に対して、25±2℃の環境下で、充放電テストを行った。充放電電圧が3.0~4.4V、電流密度が0.1C/0.1Cである。50週サイクル性能テスト:得た電池に対して、25±2℃の環境下で、充放電テストを行った。充放電電圧が3.0~4.4V、電流密度が0.1C/0.1C(0.5C充電、1C放電)である。
(5)リチウム塩は、▲カン▼鋒リチウム工業股フン有限公司から購入された。前駆体は、金馳エネルギー材料有限公司から購入された。被覆剤は、上海贏創特種化学有限公司から購入された。導電物質は、天津優盟化学工業科学技術有限公司から購入された。
【0081】
実施例1
【0082】
本実施例において、下記方法により調製されたコバルトフリー正極材料が提供される。
【0083】
(1)48gのLiOHおよび100gの前駆体NiMn(OH)(xが0.75、yが0.25である)を、高速ミキサーで、撹拌速度950rpmの条件下で混合した後、950℃の高温で10h反応させて、コバルトフリー正極材料を合成した。
【0084】
(2)コバルトフリー正極材料105g、被覆剤(具体的にはAl)0.25g、比表面積200m/gの導電カーボンブラック0.35gを高速ミキサーで、撹拌速度が1000rpmの条件下で混合し、混合した材料を400℃、Nの雰囲気下で5h熱処理した。そのうち、前駆体の総重量を基準として、前記リチウム塩の用量が48重量%、前記導電物質の用量が0.35重量%、前記コバルトフリー正極材料の用量が105重量%、前記被覆剤の用量が0.25重量%である。
【0085】
(3)ロール破砕および気流粉砕により上記材料を粉砕処理し、300~400メッシュの篩にかけた。
【0086】
その結果、最終製品であるコバルトフリー正極材料を得、C-LiNi0.75Mn0.25と表記された。この正極材料は、コアおよびコアに被覆されたシェルを含み、コアがコバルトフリー正極材料であり、コアの化学式がLiNi0.75Mn0.25であり、前記シェルが被覆剤およびカーボンである。且つ、前記コアの総重量を基準として、前記シェルの含有量が0.6重量%(そのうち、前記被覆剤Alの含有量が0.25重量%、前記カーボン(導電カーボンブラック)の含有量が0.35重量%)である。被覆層が均一である。
【0087】
実施例2
【0088】
本実施例において、下記方法により調製されたコバルトフリー正極材料が提供される。
【0089】
(1)47gのLiOHおよび100gの前駆体NiMn(OH)(xが0.55、yが0.45である)を、高速ミキサーで、撹拌速度900rpmの条件下で混合した後、980℃の高温で12h反応させて、コバルトフリー正極材料を合成した。
【0090】
(2)コバルトフリー正極材料106g、被覆剤(具体的にはAl)0.30g、比表面積120m/gの導電カーボンブラック0.40gを高速ミキサーで、撹拌速度が980rpmの条件下で混合し、混合した材料を500℃、Nの雰囲気下で6h熱処理した。そのうち、前駆体の総重量を基準として、前記リチウム塩の用量が47重量%、前記導電物質の用量が0.40重量%、前記コバルトフリー正極材料の用量が106重量%、前記被覆剤の用量が0.30重量%である。
【0091】
(3)ロール破砕および気流粉砕により上記材料を粉砕処理し、300~400メッシュの篩にかけた。
【0092】
その結果、最終製品であるコバルトフリー正極材料を得、C-LiNi0.55Mn0.45と表記された。この正極材料は、コアおよびコアに被覆されたシェルを含み、コアがコバルトフリー正極材料であり、コアの化学式がLiNi0.55Mn0.45であり、シェルが被覆剤およびカーボンである。且つ、コアの総重量を基準として、シェルの含有量が.7重量%(そのうち、被覆剤ZrOの含有量が0.30重量%、カーボン(導電カーボンブラック)の含有量が0.40重量%)である。被覆層が均一である。
【0093】
実施例3
【0094】
本実施例において、下記方法により調製されたコバルトフリー正極材料が提供される。
【0095】
(1)48gのLiOHおよび100gの前駆体NiMn(OH)(xが0.80、yが0.20である)を、高速ミキサーで、撹拌速度950rpmの条件下で混合した後、900℃の高温で15h反応させて、コバルトフリー単結晶層状正極材料を合成した。
【0096】
(2)コバルトフリー単結晶層状正極材料105.5g、被覆剤(具体的にはAl)0.28g、比表面積150m/gの導電カーボンブラック0.45gを、高速ミキサーで、撹拌速度1000rpmの条件下で混合し、混合した材料を500℃、Nの雰囲気下で7h熱処理した。そのうち、前駆体の総重量を基準として、前記リチウム塩の用量が48重量%、前記導電物質の用量が0.45重量%、前記コバルトフリー正極材料の用量が105.5重量%、前記被覆剤の用量が0.28重量%である。
【0097】
(3)ロール破砕および気流粉砕により上記材料を粉砕処理し、300~400メッシュの篩にかけた。
【0098】
その結果、最終製品であるコバルトフリー正極材料を得、C-LiNi080Mn0.20と表記された。この正極材料は、コアおよびコアに被覆されたシェルを含み、コアがコバルトフリー正極材料であり、コアの化学式がLiNi080Mn0.20であり、シェルが被覆剤およびカーボンである。且つ、コアの総重量を基準として、シェルの含有量が0.73重量%(そのうち、被覆剤Alの含有量が0.28重量%、カーボン(導電カーボンブラック)の含有量が0.45重量%)である。被覆層が均一である。
【0099】
実施例4
【0100】
本実施例において、下記方法により調製されたコバルトフリー正極材料が提供される。
【0101】
実施例1と同様な方法により、コバルトフリー正極材料を調製した。その相違点は、以下の通りである。
【0102】
ステップ(1)で、「LiCO」で「LiOH」を置き換えた。
【0103】
ステップ(2)で、「比表面積200m/gの導電カーボンブラック」を「比表面積80m/gの導電カーボンブラック」に変更し、前駆体の総重量を基準として、リチウム塩の用量が47重量%、導電物質の用量が0.35重量%、コバルトフリー正極材料の用量が105重量%、被覆剤の用量が0.25重量%である。
【0104】
その結果、最終製品であるコバルトフリー正極材料を得、C-LiNi0.75Mn0.25と表記された。この正極材料は、コアおよびコアに被覆されたシェルを含み、コアがコバルトフリー正極材料であり、コアの化学式がLiNi0.75Mn0.25であり、シェルが被覆剤およびカーボンである。且つ、コアの総重量を基準として、シェルの含有量が0.6重量%(そのうち、被覆剤Alの含有量が0.25重量%、カーボン(導電カーボンブラック)の含有量が0.35重量%)である。被覆層が均一である。
【0105】
実施例5
【0106】
本実施例において、下記方法により調製されたコバルトフリー正極材料が提供される。
【0107】
実施例1と同様な方法により、コバルトフリー正極材料を調製した。その相違点は、以下の通りである。
【0108】
ステップ(1)で、「950℃の高温で10h反応させる」を、「880℃の高温で20h反応させる」に変更した。
【0109】
ステップ(2)で、「400℃、Nの雰囲気下で5h熱処理する」を「700℃、Nの雰囲気下で8h熱処理する」に変更した。
【0110】
その結果、最終製品であるコバルトフリー正極材料を得、C-LiNi0.75Mn0.25と表記された。この正極材料は、コアおよびコアに被覆されたシェルを含み、コアがコバルトフリー正極材料であり、コアの化学式がLiNi0.75Mn0.25であり、シェルが被覆剤およびカーボンである。且つ、コアの総重量を基準として、シェルの含有量が0.6重量%(そのうち、被覆剤Alの含有量が0.25重量%、カーボン(導電カーボンブラック)の含有量が0.35重量%)である。被覆層が均一である。
【0111】
比較例1
【0112】
実施例1と同様な条件下で、コバルトフリー正極材料を調製した。その相違点は、ステップ(2)で、導電カーボンブラックが添加されていない点である。
【0113】
その結果、最終製品であるコバルトフリー正極材料を得、LiNi0.75Mn0.25と表記された。
【0114】
図1は、比較例1における導電物質が添加されていないコバルトフリー正極材料のSEM電子顕微鏡写真である。図2は、実施例1で調製されたコバルトフリー正極材料のSEM電子顕微鏡写真である。図1および図2のSEMテスト結果から分かるように、図2の実施例1におけるカーボンブラックが添加されていないコバルトフリー正極材料の分散性は、明らかに、図1における導電物質たとえばカーボンブラックが添加されていないものの分散性よりも優れている。また、図2から分かるように、前記コバルトフリー正極材料が単結晶材料であり、平均粒径が1~5μm、たとえば2~4μmである。
【0115】
また、本開示において、なお、図1および図2では、「ZEISS」は、機器メーカのロゴである。
【0116】
図3は、比較例1におけるカーボンブラックが添加されていない材料、および実施例1で調製されたコバルトフリー正極材料の1週目充放電曲線模式図である。図3は、25℃、電圧3.0~4.4Vである場合、材料の0.1C/0.1C充放電下での1週目充放電曲線である。図3から分かるように、比較例1におけるカーボンブラックが添加されていない材料は、0.1Cでの1週目充電および放電比容量がそれぞれ213.0mAh/gおよび184.1mAh/gであり、1週目充放電効率が86.38%であり、実施例1で調製されたコバルトフリー正極材料は、0.1Cでの1週目充電および放電比容量がそれぞれ222.6mAh/gおよび196.6mAh/gであり、1週目充放電効率が88.32%である。
【0117】
そのため、被覆過程においてカーボンブラックが添加されることにより、材料の1週目充放電効率および放電比容量を向上させることに寄与する。
【0118】
図4は、比較例1におけるカーボンブラックが添加されていない材料、および実施例1で調製されたコバルトフリー正極材料のサイクル性能曲線模式図である。図4は、25℃、電圧3.0~4.4Vである場合、材料の0.5C/1Cでのサイクル曲線である。図4から分かるように、比較例1において、カーボンブラックが添加されていない材料の50週サイクルした後の容量保持率が95.7%であり、実施例1で調製されたコバルトフリー正極材料の50週サイクルした後の容量保持率が98.8%である。サイクル性能が向上した理由は、被覆過程においてカーボンブラックが添加されるためである。実施例1のように、材料の被覆均一性を向上し、材料と電解液との間の副反応を低減し、材料の導電性を改善することができる。
【0119】
比較例2
【0120】
実施例1と同様な方法により、コバルトフリー正極材料を調製した。その相違点は、以下の通りである。
【0121】
ステップ(2)で、前駆体の総重量を基準として、前記リチウム塩の用量が48重量%、前記導電物質の用量が0.08重量%、前記コバルトフリー正極材料の用量が105重量%、前記被覆剤の用量が0.25重量%である。
【0122】
その結果、最終製品であるコバルトフリー正極材料を得、DC-LiNi0.75Mn0.25と表記された。この正極材料は、コアおよびコアに被覆されたシェルを含み、コアがコバルトフリー正極材料であり、コアの化学式がLiNi0.75Mn0.25であり、シェルが被覆剤およびカーボンである。且つ、コアの総重量を基準として、シェルの含有量が0.33重量%(そのうち、前記被覆剤Alの含有量が0.25重量%、カーボン(導電カーボンブラック)の含有量が0.08重量%)である。
【0123】
比較例3
【0124】
実施例1と同様な方法により、コバルトフリー正極材料を調製した。その相違点は、以下の通りである。
【0125】
ステップ(1)で、「950℃の高温で10h反応させる」を、「1100℃の高温で8h反応させる」に変更した。
【0126】
ステップ(2)で、「400℃、Nの雰囲気下で5h熱処理する」を、「800℃、Nの雰囲気下で12h熱処理する」に変更した。
【0127】
その結果、最終製品であるコバルトフリー正極材料を得、DC-LiNi0.75Mn0.25と表記された。この正極材料は、コアおよびコアに被覆されたシェルを含み、コアがコバルトフリー正極材料であり、コアの化学式がLiNi0.75Mn0.25であり、シェルが被覆剤およびカーボンである。且つ、コアの総重量を基準として、シェルの含有量が0.55重量%(そのうち、前記被覆剤Alの含有量が0.20重量%、カーボン(導電カーボンブラック)の含有量が0.35重量%)である。
【0128】
比較例4
【0129】
実施例1と同様な条件下で、コバルトフリー正極材料を調製した。その相違点は、以下の通りである。ステップ(2)で、一般的な導電カーボンブラックであって比表面積が大きくではないカーボンブラックを添加した。具体的には、この一般的な導電カーボンブラックの比表面積が25m/gである。また、本開示において、この一般的な導電カーボンブラックは、天津星龍泰化学工業製品科学技術有限公司から購入され、型番がxlt-1である。
【0130】
その結果、最終製品であるコバルトフリー正極材料を得、LiNi0.75Mn0.25と表記された。この正極材料は、コアおよびコアに被覆されたシェルを含み、コアがコバルトフリー正極材料であり、コアの化学式がLiNi0.75Mn0.25であり、シェルが被覆剤およびカーボンである。且つ、コアの総重量を基準として、シェルの含有量が0.6重量%(そのうち、被覆剤Alの含有量が0.25重量%、カーボン(導電カーボンブラック)の含有量が0.35重量%)である。しかし、被覆層が均一ではない。
【0131】
テスト例1
【0132】
按照比較例1および実施例1の方法によりn個のサンプルを調製し、そのうちから3つのサンプルをランダム選出してICPでテストした。その結果は、表1-ICPテスト結果比較により示される。
【表1】
【0133】
表1から分かるように、実施例1では、カーボンブラックが添加された材料は、Ni、Mn、Al(被覆剤)の3種の元素の均一性が、いずれも比較例1におけるカーボンブラックが添加されていないものよりも高い。
【0134】
そして、比較例2~4および実施例2~5の方法によりn個のサンプルを調製し、そのうちから3つのサンプルをランダム選出してICPでテストした。その結果、実施例2~5におけるカーボンブラックが添加された材料は、Ni、Mn、Al(被覆剤)の3種の元素の均一性が、いずれも比較例2~4におけるカーボンブラックが添加されていないものよりも高い。
【0135】
テスト例2
【0136】
比較例1~4および実施例1~5で調製された材料に対して倍率性能テストを行った。その結果は、表2における倍率性能比較により示される。
【表2】
【0137】
記:表2における各データの単位は、mAh/gである。
【0138】
表2における結果から、以下のように分かることができる。
【0139】
(1)実施例1では、被覆過程においてカーボンブラックが添加された後、1/3Cから4Cまで、実施例1で調製されたコバルトフリー正極材料の倍率性能が明らかに向上することを見つけ出すことができる。たとえば、1Cの倍率下で、実施例1におけるカーボンブラックが添加された材料の放電比容量が173.1mAh/gに向上し、4Cの倍率下で、実施例1におけるカーボンブラックが添加された材料の放電比容量が150.9mAh/gに達した。比較例1におけるカーボンブラックが添加されていない材料は、1Cの倍率下で、放電比容量が164.5mAh/gだけであり、4Cの倍率下で、比較例1におけるカーボンブラックが添加されていない材料の放電比容量が138.6mAh/gだけである。倍率性能が向上する理由は、カーボンブラックの電子導電率が良いためであり、被覆後にコバルトフリー正極材料の電気化学的活性を向上させることで、材料の倍率性能を向上させることができる。
【0140】
同様にして、実施例4で調製されたコバルトフリー正極材料がC-LiNi0.75Mn0.25であり、「比表面積200m/gの導電カーボンブラック」を「比表面積80m/gの導電カーボンブラックに変更した。その結果、実施例1よりも、容量および倍率性能が悪い。
【0141】
実施例5で調製されたコバルトフリー正極材料がC-LiNi0.75Mn0.25であり、「400℃、Nの雰囲気下で5h熱処理する」を、「700℃、Nの雰囲気下で8h熱処理する」に変更し、そして、前記コアの総重量を基準として、前記シェルの含有量が0.6重量%である。その結果、ステップ(2)における温度が高く、容量が低下した。
【0142】
比較例2および3で調製されたコバルトフリー正極材料がDC-LiNi0.75Mn0.25である。その結果、実施例1よりも、容量および倍率性能が悪い。比較例から分かるように、Xが向上すると、容量が向上し、Xが低下すると、容量が低下した。
【0143】
テスト例3
【0144】
実施例2~5および比較例2~4で調製された材料に対して、25℃、電圧3.0~4.4Vである場合、0.1C/0.1Cで1週目充放電テストを行った。結果を表3に示す。
【0145】
テスト例4
【0146】
実施例2~5および比較例2~4で調製された材料に対して、25℃、電圧3.0~4.4Vである場合、0.5C/1Cでサイクル性能テストを行った。結果を表3に示す。
【表3】
【0147】
表3における結果から、以下のように分かることができる。
【0148】
実施例2~3の結果から分かるように、Xが0.75以上である場合、サイクル性能が低下した。実施例4~5の結果から分かるように、比表面積が大きい導電剤、適当な反応条件(1回目熱処理)および焼成条件(2回目熱処理)の温度で、サイクル性能を向上することに寄与する。
【0149】
比較例3で調製された材料は、反応条件(1回目熱処理)および焼成条件(2回目熱処理)の温度が高すぎるため、被覆剤の一部が本体材料の内部に進入し、シェル含有量が低減した。比較例4では、比表面積が小さい導電カーボンブラックが用いられるので、被覆層が均一ではない。比較例2~4の結果から分かるように、導電剤の含有量が少なすぎ、反応条件(1回目熱処理)および焼成条件(2回目熱処理)の温度が高すぎ、導電剤が小さいことは、いずれもコバルトフリー材料のサイクル性能の向上に有利ではない。
【0150】
要するに、本開示は、導電物質を添加することにより、粒子の分散性を改善し、被覆効果を向上することができる。この方法により調製されたコバルトフリー正極材料の導電性は、向上可能となる。また、この調製方法は、シンプルであり、大規模で使用可能となる。
図1
図2
図3
図4