IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シェンズェン カプチェム テクノロジー カンパニー リミテッドの特許一覧

特許7392143組成物、コンデンサ用ポリマー及びコンデンサ
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-27
(45)【発行日】2023-12-05
(54)【発明の名称】組成物、コンデンサ用ポリマー及びコンデンサ
(51)【国際特許分類】
   C08G 61/12 20060101AFI20231128BHJP
   H01G 9/028 20060101ALI20231128BHJP
   H01G 9/15 20060101ALI20231128BHJP
   H01G 9/00 20060101ALI20231128BHJP
【FI】
C08G61/12
H01G9/028 G
H01G9/15
H01G9/00 290H
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022528069
(86)(22)【出願日】2020-12-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-26
(86)【国際出願番号】 CN2020136011
(87)【国際公開番号】W WO2021121174
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-05-13
(31)【優先権主張番号】201911303518.1
(32)【優先日】2019-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】513222359
【氏名又は名称】シェンズェン カプチェム テクノロジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SHENZHEN CAPCHEM TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Room 1901, Capchem Plaza, No. 9 Changye Road, Liulian Community, Pingshan Street, Pingshan District, Shenzhen City, 518118, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】趙 大成
(72)【発明者】
【氏名】燕 民翔
(72)【発明者】
【氏名】張 尚軍
【審査官】常見 優
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/129515(WO,A1)
【文献】特開2016-092387(JP,A)
【文献】特開2005-037903(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0206860(US,A1)
【文献】特開2015-060897(JP,A)
【文献】特開2017-105982(JP,A)
【文献】特開2013-172146(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G61/00- 61/12
C08G 2/00- 2/38
C08L 1/00-101/16
C08K 3/00- 13/08
H01G 9/00- 9/28
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量部で、重合性モノマー96~99.9998部と、リン酸エステル系化合物0.0001~3部と、末端封鎖剤0.0001~1部とを含む組成物であって、
前記重合性モノマーは、3,4-エチレンジオキシチオフェン系重合性モノマーを含み、
前記末端封鎖剤は、構造式1で表される化合物を含み、

式中、RはH又は炭素数1~6の炭化水素基から選択されることを特徴とする、組成物。
【請求項2】
前記末端封鎖剤は、3,4-エチレンジオキシチオフェン-2-カルボン酸メチル、3,4-エチレンジオキシチオフェン-2-カルボン酸エチル、3,4-エチレンジオキシチオフェン-2-カルボン酸プロピル、3,4-エチレンジオキシチオフェン-2-カルボン酸イソプロピル、3,4-エチレンジオキシチオフェン-2-カルボン酸ブチルのうちの1種又は複数種を含むことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記リン酸エステル系化合物は、構造式2で表される化合物を含み、

式中、R、R及びRはそれぞれ独立してH、又は、水素原子が置換又は非置換の炭素数1~6の炭化水素基、エーテル基、カルボニル基及びアリール基から選択され、Rと、Rと、Rが同時にHである場合はないことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
、R及びRのうちの2つは互いに結合して環を形成することを特徴とする、請求項に記載の組成物。
【請求項5】
前記リン酸エステル系化合物は、リン酸トリメチル、リン酸ジメチル、リン酸メチルエチル、リン酸トリエチル、リン酸ジエチル、リン酸ジメチルエチル、リン酸メチルジエチル、リン酸トリプロピル、リン酸トリプロピニル、リン酸ジプロピル、リン酸トリブチル、リン酸ジブチル、リン酸モノブチル及びリン酸トリペンチルのうちの1種又は複数種を含む、請求項に記載の組成物。
【請求項6】
前記重合性モノマーは、構造式3で表される化合物を含むことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。

【請求項7】
請求項1からのいずれか1項に記載の組成物を重合して得られることを特徴とする、コンデンサ用ポリマー。
【請求項8】
コンデンサ素子と、前記コンデンサ素子に付着した陰極材料とを含むコンデンサであって、
前記陰極材料は、請求項に記載のコンデンサ用ポリマーを含むことを特徴とする、コンデンサ。
【請求項9】
前記コンデンサは、アルミ固体電解コンデンサ又はタンタル固体電解コンデンサであることを特徴とする、請求項に記載のコンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体コンデンサ材料の技術分野に属し、具体的には、組成物、コンデンサ用ポリマー及びコンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
固体電解コンデンサは、導電性が高く熱安定性に優れた導電性高分子を電解質として使用しており、従来の液体電解コンデンサに比べ、高信頼性、長寿命、高周波低インピーダンス、超大リップル電流耐性などの特性を有し、電解液が漏れやすいという液体電解コンデンサの欠点を克服した。国内の電子情報産業の急速な発展に伴い、近年の発展傾向から、固体電解コンデンサは徐々に液体低電圧電解コンデンサに取って代わり、21世紀の電子情報産業の基幹製品の一つとなることが期待されている。
【0003】
固体電解コンデンサの性能に対する要求の高まりに伴い、導電性高分子コンデンサの耐電圧をさらに改善し、漏れ電流を低減することでコンデンサの性能と耐用年数を改善することは、研究者の共通の目標となっている。アルミ電解コンデンサの耐電圧は酸化アルミニウム皮膜の厚さに比例する。酸化アルミニウム皮膜が薄くなると、アルミ箔の耐電圧が低下する。アルミ箔の酸化皮膜層の厚さがある程度薄くなると、正極箔の耐電圧が性能要求を満たさなくなり、コンデンサの使用中に正極と負極が導通し、いわゆる絶縁破壊が発生する。腐食が上記のように厳しい条件に達していない場合においても、漏れ電流が大きくなりすぎるおそれがある。漏れ電流の制御は、主要な固体アルミニウム電解コンデンサメーカーの制御の焦点にもなっている。また、近年、小型コンデンサに対する市場の需要及びアルミ固体電解コンデンサのコスト削減の需要に応じて、コンデンサメーカーが使用する正極箔の耐電圧はさらに低下傾向にある。そのため、陽極箔の腐食の緩和、コンデンサの漏れ電流の低減などに対する要求はより高くなっている。
【0004】
現在、アルミ固体電解コンデンサでは、通常、3,4-エチレンジオキシチオフェンをモノマーとして製造されたポリ3,4-エチレンジオキシチオフェン(PEDOT)ポリマー材料が使用されている。上記のポリマー材料は良好な導電性と優れた環境安定性を有するため、固体電解コンデンサの陰極として幅広く使用されている。しかし、重合反応に使用される強酸性物質が生成したポリマー材料に残留することが多いため、コンデンサの使用時にアルミ箔酸化被膜層が腐食されて薄くなることで、コンデンサの耐電圧能力が低下し、漏れ電流が増大する問題が発生する。そのため、単に3,4-エチレンジオキシチオフェンモノマーを使用して製造されたアルミ固体電解コンデンサの耐電圧性及び漏れ電流性能は高まる要求を満たすことができなくなっている。
【発明の概要】
【0005】
従来の電解コンデンサに存在する金属箔酸化被膜の腐食による耐電圧性の低下及び漏れ電流の増大という問題を解決するために、本発明によれば、組成物、コンデンサ用ポリマー及びコンデンサが提供される。
【0006】
上記の技術的問題を解決するために本発明が採用する技術的手段は以下の通りである。
本発明によれば、重合性モノマーと、リン酸エステル系化合物と、末端封鎖剤とを含む組成物であって、
前記重合性モノマーは、3,4-エチレンジオキシチオフェン系重合性モノマーを含み、
前記末端封鎖剤は、構造式1で表される化合物を含み、
式中、RはH又は炭素数1~6の炭化水素基から選択される組成物が提供される。
【0007】
選択的に、前記組成物は、重量部で、重合性モノマー96~99.9998部と、末端封鎖剤0.0001~1部と、リン酸エステル系化合物0.0001~3部とを含む。
【0008】
選択的に、前記末端封鎖剤は、3,4-エチレンジオキシチオフェン-2-カルボン酸メチル、3,4-エチレンジオキシチオフェン-2-カルボン酸エチル、3,4-エチレンジオキシチオフェン-2-カルボン酸プロピル、3,4-エチレンジオキシチオフェン-2-カルボン酸イソプロピル、3,4-エチレンジオキシチオフェン-2-カルボン酸ブチルのうちの1種又は複数種を含む。
【0009】
選択的に、前記リン酸エステル系化合物は、構造式2で表される化合物を含み、
式中、R、R及びRはそれぞれ独立してH、又は、水素原子が置換又は非置換の炭素数1~6の炭化水素基、エーテル基、カルボニル基及びアリール基から選択され、Rと、Rと、Rが同時にHである場合はない。
【0010】
選択的に、R、R及びRのうちの2つは互いに結合して環を形成する。
【0011】
選択的に、前記リン酸エステル系化合物は、リン酸トリメチル、リン酸ジメチル、リン酸メチルエチル、リン酸トリエチル、リン酸ジエチル、リン酸ジメチルエチル、リン酸メチルジエチル、リン酸トリプロピル、リン酸トリプロピニル、リン酸ジプロピル、リン酸トリブチル、リン酸ジブチル、リン酸モノブチル及びリン酸トリペンチルのうちの1種又は複数種を含む。
【0012】
選択的に、前記重合性モノマーは、構造式3で表される化合物を含む。
【0013】
別の態様では、本発明によれば、前記組成物を重合して得られるコンデンサ用ポリマーが提供される。
【0014】
別の態様では、本発明によれば、コンデンサ素子と、前記コンデンサ素子に付着した陰極材料とを含むコンデンサであって、前記陰極材料は、前記コンデンサ用ポリマーを含むことを特徴とする、コンデンサが提供される。
【0015】
選択的に、前記コンデンサは、アルミ固体電解コンデンサ又はタンタル固体電解コンデンサである。
【0016】
本発明で提供される組成物では、リン酸エステル系化合物、重合性モノマー及び末端封鎖剤が重合原料として使用される。リン酸エステル系化合物は、ある程度の潤滑性を有し、金属箔と直接接触しやすいため、金属箔の徐放剤として使用されて腐食の発生を防止することができ、金属箔上の酸化被膜に対して修復及び保護作用を奏し、コンデンサの金属箔上の酸化被膜の破壊を防止することができる。また、構造式1で表される化合物を末端封鎖剤として使用することにより、重合性モノマーの重合反応において重合度を低下させ、モノマーの重合速度を低下させることができ、これによって、反応系の酸性度が低下し、腐食の発生がさらに防止される。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明が解決しようとする課題、技術的手段及び有益な効果をより明確にするために、以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明する。本明細書に記載の具体的な実施例は、本発明を解釈するためのものに過ぎず、本発明を制限するものではない。
【0018】
本発明の一実施例によれば、重合性モノマーと、リン酸エステル系化合物と、末端封鎖剤とを含む組成物が提供される。
前記重合性モノマーは、3,4-エチレンジオキシチオフェン系重合性モノマーを含む。
前記末端封鎖剤は、構造式1で表される化合物を含む。
式中、RはH又は炭素数1~6の炭化水素基から選択される。
【0019】
リン酸エステル系化合物は、ある程度の潤滑性を有し、金属箔と直接接触しやすいため、金属箔の徐放剤として使用されて腐食の発生を防止することができ、金属箔上の酸化被膜に対して修復及び保護作用を奏し、コンデンサの金属箔上の酸化被膜の破壊を防止することができる。また、構造式1で表される化合物を末端封鎖剤として使用することにより、重合性モノマーの重合反応において重合度を低下させ、モノマーの重合速度を低下させることができ、これによって、反応系の酸性度が低下し、腐食の発生がさらに防止される。
【0020】
いくつかの実施例において、前記組成物は、重量部で、重合性モノマー96~99.9998部と、末端封鎖剤0.0001~1部と、リン酸エステル系化合物0.0001~3部とを含む。
より好ましい実施例において、前記組成物は、重量部で、重合性モノマー98~99.9899部と、末端封鎖剤0.0001~0.5部と、リン酸エステル系化合物0.01~1.5部とを含む。
【0021】
前記リン酸エステル系化合物の添加量が少なすぎると、アルミ箔酸化被膜に対する保護作用は十分ではなく、前記リン酸エステル系化合物の添加量が多すぎると、重合後のポリマーの導電性が低下し、金属箔へのポリマーの付着効果が低下する場合がある。
【0022】
前記末端封鎖剤の添加量が少なすぎると、重合反応の重合度の低下は十分ではなく、前記末端封鎖剤の添加量が多すぎると、重合後のポリマーの重合度が低くなりすぎることで、ポリマーの構造強度に影響が与え、コンデンサの安全性能の向上に不利である。
【0023】
いくつかの実施例において、前記末端封鎖剤は、3,4-エチレンジオキシチオフェン-2-カルボン酸メチル、3,4-エチレンジオキシチオフェン-2-カルボン酸エチル、3,4-エチレンジオキシチオフェン-2-カルボン酸プロピル、3,4-エチレンジオキシチオフェン-2-カルボン酸イソプロピル、3,4-エチレンジオキシチオフェン-2-カルボン酸ブチルのうちの1種又は複数種を含む。
【0024】
いくつかの実施例において、前記リン酸エステル系化合物は、構造式2で表される化合物を含む。
式中、R、R及びRはそれぞれ独立してH、又は、水素原子が置換又は非置換の炭素数1~6の炭化水素基、エーテル基、カルボニル基及びアリール基から選択され、置換基はハロゲン、ヒドロキシル基又はカルボキシル基であり、Rと、Rと、Rが同時にHである場合はない。
【0025】
いくつかの実施例において、R、R及びRのうちの2つは互いに結合して環を形成する。
【0026】
より好ましい実施例において、前記リン酸エステル系化合物は、リン酸トリメチル、リン酸ジメチル、リン酸メチルエチル、リン酸トリエチル、リン酸ジエチル、リン酸ジメチルエチル、リン酸メチルジエチル、リン酸トリプロピル、リン酸トリプロピニル、リン酸ジプロピル、リン酸トリブチル、リン酸ジブチル、リン酸モノブチル及びリン酸トリペンチルのうちの1種又は複数種を含む。
【0027】
なお、本明細書において、3,4-エチレンジオキシチオフェン系重合性モノマーとは、チオフェン環上の2位及び5位に重合反応が発生可能な3,4-エチレンジオキシチオフェン、又はその誘導体を指す。
【0028】
いくつかの実施例において、前記重合性モノマーは、構造式3で表される化合物を含む。
【0029】
本発明の別の実施例によれば、前記組成物を重合して得られるコンデンサ用ポリマーが提供される。
【0030】
従来のコンデンサ用のポリマーに比べ、前記組成物を重合して得られるコンデンサ用ポリマーは、金属箔に対する腐食性を低減できるため、コンデンサの漏れ電流を効果的に減少させ、固体コンデンサ性能の安定性を向上させることができる。
【0031】
本発明の別の実施例によれば、コンデンサ素子と、前記コンデンサ素子に付着した陰極材料とを含み、前記陰極材料は前記コンデンサ用ポリマーを含むアルミ電解コンデンサが提供される。
いくつかの実施例において、前記コンデンサは、アルミ固体電解コンデンサ又はタンタル固体電解コンデンサである。
【0032】
以下、実施例により本発明をさらに説明する。
【0033】
実施例1
本実施例は、本発明に係る組成物、コンデンサ用ポリマー及びコンデンサの製造方法を説明するためのものであり、以下の操作ステップを含む。
リン酸トリブチル0.07%重量部、3,4-エチレンジオキシチオフェン-2-カルボン酸メチル0.01%重量部、3,4-エチレンジオキシチオフェン99.92%重量部の配合比でこれらの物質を均一に混合し、重合性モノマー、リン酸エステル系化合物及び末端封鎖剤を含む組成物を製造した。
【0034】
上記組成物を重合原料とし、ラジカル重合によりポリマー水分散体を製造した。具体的には、1753gの水及び90.32gのポリスチレンスルホン酸ナトリウムを取り、分散機内で高速で均一に混合し、窒素雰囲気の保護下で、反応器内の温度を22℃に制御し、17.54gの硫酸鉄水溶液(1.3%濃度)及び7.25gの上記重合原料を加え、引き続き24h反応させ、ポリマー分散体PEDOT/PSS中間体を得た。このポリマー分散体PEDOT/PSS中間体と陰陽イオン交換樹脂とを混合して不純物イオンを除去した。不純物イオンが除去されたポリマー分散体PEDOT:PSS中間体500gを取り、そこに53.2gポリエチレングリコール1000を加え、8h混合して撹拌した後、ホモジナイザーを用いて均質化処理し、ポリマー分散液を得た。
【0035】
乾燥したコンデンサ素子を常温、真空度-0.09MPaの条件下でポリマー分散液に20min浸漬した後、素子を取り出し、その表面のポリマー分散液を拭き取り、125℃で1h乾燥した。このように浸漬、乾燥工程を3回繰り返した。浸漬終了後、コンデンサ素子をシールして組み立てることで固体電解コンデンサを形成した。
【0036】
実施例2
本実施例は、本発明に係る組成物、コンデンサ用ポリマー及びコンデンサの製造方法を説明するためのものであり、リン酸メチルジエチル0.2%重量部、3,4-エチレンジオキシチオフェン-2-カルボン酸エチル0.1%重量部、3,4-エチレンジオキシチオフェン99.7%重量部の配合比でこれらの物質を均一に混合し、重合性モノマー、リン酸エステル系化合物及び末端封鎖剤を含む組成物を製造した以外、実施例1の操作ステップと同じである。
【0037】
実施例3
本実施例は、本発明に係る組成物、コンデンサ用ポリマー及びコンデンサの製造方法を説明するためのものであり、リン酸ジメチルエチル1.0%重量部、3,4-エチレンジオキシチオフェン-2-カルボン酸プロピル0.3%重量部、3,4-エチレンジオキシチオフェン98.7%重量部の配合比でこれらの物質を均一に混合し、重合性モノマー、リン酸エステル系化合物及び末端封鎖剤を含む組成物を製造した以外、実施例1の操作ステップと同じである。
【0038】
実施例4
本実施例は、本発明に係る組成物、コンデンサ用ポリマー及びコンデンサの製造方法を説明するためのものであり、リン酸トリプロピル0.62%重量部、3,4-エチレンジオキシチオフェン-2-カルボン酸ブチル0.0002%重量部、3,4-エチレンジオキシチオフェン99.3798%重量部の配合比でこれらの物質を均一に混合し、重合性モノマー、リン酸エステル系化合物及び末端封鎖剤を含む組成物を製造するした以外、実施例1の操作ステップと同じである。
【0039】
実施例5
本実施例は、本発明に係る組成物、コンデンサ用ポリマー及びコンデンサの製造方法を説明するためのものであり、リン酸トリプロピニル0.006%重量部、3,4-エチレンジオキシチオフェン-2-カルボン酸メチル0.006%重量部、3,4-エチレンジオキシチオフェン99.988%重量部の配合比でこれらの物質を均一に混合し、重合性モノマー、リン酸エステル系化合物及び末端封鎖剤を含む組成物を製造した以外、実施例1の操作ステップと同じである。
【0040】
実施例6
本実施例は、本発明に係る組成物、コンデンサ用ポリマー及びコンデンサの製造方法を説明するためのものであり、リン酸トリエチル0.05%重量部、3,4-エチレンジオキシチオフェン-2-カルボン酸イソプロピル0.024%重量部、3,4-エチレンジオキシチオフェン99.926%重量部の配合比でこれらの物質を均一に混合し、重合性モノマー、リン酸エステル系化合物及び末端封鎖剤を含む組成物を製造した以外、実施例1の操作ステップと同じである。
【0041】
実施例7
本実施例は、本発明に係る組成物、コンデンサ用ポリマー及びコンデンサの製造方法を説明するためのものであり、リン酸モノブチル0.37%重量部、3,4-エチレンジオキシチオフェン-2-カルボン酸メチル0.052%重量部、3,4-エチレンジオキシチオフェン99.578%重量部の配合比でこれらの物質を均一に混合し、重合性モノマー、リン酸エステル系化合物及び末端封鎖剤を含む組成物を製造した以外、実施例1の操作ステップと同じである。
【0042】
実施例8
本実施例は、本発明に係る組成物、コンデンサ用ポリマー及びコンデンサの製造方法を説明するためのものであり、以下の操作ステップを含む。
リン酸トリブチル0.06%重量部、3,4-エチレンジオキシチオフェン-2-カルボン酸メチル0.04%重量部、3,4-エチレンジオキシチオフェン99.9%重量部の配合比でこれらの物質を均一に混合し、重合性モノマー、リン酸エステル系化合物及び末端封鎖剤を含む組成物を製造した。
【0043】
エタノールを溶媒として上記組成物を25%のモノマー溶液に調製し、コンデンサ素子を上記モノマー溶液に2min浸漬した後、コンデンサ素子を取り出し、60℃のオーブン内で30min乾燥した後、常温まで冷却した。
【0044】
上記のように処理されたコンデンサ素子を常温、真空度-0.085MPaの条件下で60%濃度のp-トルエンスルホン酸鉄のエタノール酸化剤溶液に5min浸漬した。
【0045】
浸漬終了後、コンデンサ素子を取り出して恒温恒湿器に移し、温度40℃、湿度40%の条件下で1h反応させ、次に温度を60℃、湿度を25%に調整し、2h反応させ、次に温度を70℃、湿度を20%に調整し、1h反応させ、次に温度を150℃、湿度を0%に調整し、1h反応させ、次に温度を110℃、湿度を0%に調整し、3h反応させることで重合反応を行った。重合反応終了後、コンデンサ素子をシールして組み立てることで固体電解コンデンサを形成した。
【0046】
比較例1
本比較例は、本発明に係るコンデンサ用ポリマー及びコンデンサの製造方法を比較説明するためのものであり、実施例1の重合原料の代わりに、純粋なモノマー3,4-エチレンジオキシチオフェンを用いた以外、実施例1の操作ステップと同じである。
【0047】
比較例2
本比較例は、本発明に係るコンデンサ用ポリマー及びコンデンサの製造方法を比較説明するためのものであり、以下の操作ステップを含む。
エタノールを溶媒として3,4-エチレンジオキシチオフェンを25%のモノマー溶液に調製し、コンデンサ素子をモノマー溶液に2min浸漬した後、コンデンサ素子を取り出し、60℃のオーブン内で30min乾燥した後、常温まで冷却した。
【0048】
上記のように処理されたコンデンサ素子を常温、真空度-0.085MPaの条件下で60%濃度のp-トルエンスルホン酸鉄のエタノール酸化剤溶液に5min浸漬した。
【0049】
浸漬終了後、コンデンサ素子を取り出して恒温恒湿器に移し、温度40℃、湿度40%の条件下で1h反応させ、次に温度を60℃、湿度を25%に調整し、2h反応させ、次に温度を70℃、湿度を20%に調整し、1h反応させ、次に温度を150℃、湿度を0%に調整し、1h反応させ、次に温度を110℃、湿度を0%に調整し、3h反応させることで重合反応を行った。重合反応終了後、コンデンサ素子をシールして組み立てることで固体電解コンデンサを形成した。
【0050】
比較例3
本比較例は、本発明に係るコンデンサ用ポリマー及びコンデンサの製造方法を比較説明するためのものであり、リン酸トリブチル0.07%重量部、3,4-エチレンジオキシチオフェン99.93%重量部の配合比率でこれらの物質を均一に混合し、重合性モノマー及びリン酸エステル系化合物を含む組成物を製造した以外、実施例1の操作ステップと同じである。
【0051】
比較例4
本比較例は、本発明に係るコンデンサ用ポリマー及びコンデンサの製造方法を比較説明するためのものであり、3,4-エチレンジオキシチオフェン-2-カルボン酸メチル0.01%重量部、3,4-エチレンジオキシチオフェン99.99%重量部の配合比率でこれらの物質を均一に混合し、重合性モノマー及び末端封鎖剤を含む組成物を製造した以外、実施例1の操作ステップと同じである。
【0052】
特性試験
上記の実施例1~7及び比較例1~4で製造された固体電解コンデンサについて以下の特性試験を行った。
電子部品自動分析装置及び漏れ電流計を用いて固体電解コンデンサの静電容量、損耗値、等価直列抵抗及び漏れ電流を測定した。ここで、容量、損耗値は120Hz周波数で測定し、等価直列抵抗は100KHz周波数で測定し、漏れ電流は定格電圧下で1min充電した後、漏れ電流計を用いて測定した。測定方法は、通常の電子部品自動分析装置、漏れ電流計の測定方法であるため、ここでは説明を省略する。
【0053】
試験結果を表1に示す。
<表1>
【0054】
表1の試験結果から分かるように、本発明に係るコンデンサ用ポリマーを用いて製造された固体電解コンデンサは、漏れ電流値が比較的低く、最大でも7.3μAである一方、比較例1~4のモノマーを用いて製造された固体電解コンデンサは、漏れ電流値が顕著に大きくなり、最小でも12.5μAである。これは、リン酸エステル系物質及び末端封鎖剤の添加により、アルミ箔に対する固体電解質の腐食が効果的に軽減され、コンデンサの漏れ電流が減少し、コンデンサの耐電圧能力が向上するため、固体電解コンデンサ特性の安定性が確保され、固体電解コンデンサの使用寿命が大幅に延長することを示している。
【0055】
実施例1、比較例3及び比較例4の試験結果を比較して明らかなように、リン酸エステル系化合物及び末端封鎖剤は、いずれもアルミ箔に対する固体電解質の腐食を軽減する作用を奏し、コンデンサの漏れ電流を減少させた。
【0056】
以上の説明は、本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明を制限するものではない。本発明の思想及び原則の範囲内に行われる全ての修正、同等置換及び改良などは、いずれも本発明の保護範囲内に含まれるべきである。