(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-27
(45)【発行日】2023-12-05
(54)【発明の名称】安定化装置
(51)【国際特許分類】
C23C 2/20 20060101AFI20231128BHJP
C23C 2/40 20060101ALI20231128BHJP
【FI】
C23C2/20
C23C2/40
(21)【出願番号】P 2022534867
(86)(22)【出願日】2020-12-10
(86)【国際出願番号】 IB2020061738
(87)【国際公開番号】W WO2021116964
(87)【国際公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-08-05
(31)【優先権主張番号】102019000023484
(32)【優先日】2019-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】510152666
【氏名又は名称】ダニエリ アンド シー.オフィス メカニケ エスピーエー
【氏名又は名称原語表記】DANIELI&C.OFFICINE MECCANICHE SPA
【住所又は居所原語表記】Via Nazionale,41-33042 Buttrio(UD),Italy
(74)【代理人】
【識別番号】100166338
【氏名又は名称】関口 正夫
(72)【発明者】
【氏名】コナ アレッサンドロ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィニョーロ ルチャーノ
【審査官】▲辻▼ 弘輔
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-510236(JP,A)
【文献】特開2010-180435(JP,A)
【文献】特表2008-506839(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102006052000(DE,A1)
【文献】特開昭50-091535(JP,A)
【文献】特開2010-261076(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102597295(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 2/00-2/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融金属浴から理論的供給面(X)に沿って上がる金属ストリップを安定化する安定化装置であって、
第1のエアナイフが第1の側に配置され、第2のエアナイフが前記理論的供給面(X)に対して前記第1の側の反対側の第2の側に配置される、少なくとも1対のエアナイフ(1)と、
第1の電磁スタビライザ装置が前記第1の側に配置され、第2の電磁スタビライザ装置が前記第2の側に配置される、少なくとも1対の電磁スタビライザ装置(2)と、
各々がそれぞれのエアナイフ(1)を支持する1対の第1の支持ビーム(3)と、
各々がそれぞれの電磁スタビライザ装置(2)を支持する1対の第2の支持ビーム(6)と、
を含み、
前記1対の第2の支持ビーム(6)は、前記1対の第1の支持ビーム(3)と異なり、前記第1の支持ビーム(3)は、前記理論的供給面(X)の遠位にあり、前記第2の支持ビーム(6)は、前記理論的供給面(X)に関して、前記1対の第1の支持ビーム(3)に対して少なくとも部分的に最も内側の位置にあるように、前記理論的供給面(X)の近位に
あり、
前記第1の支持ビーム(3)と前記第2の支持ビーム(6)の両方は、第1の側部構造(12)に載る、他の第1の端部から独立するそれぞれの第1の端部(3’’、6’’)と、第2の側部構造(13)に載る、他の第2の端部から独立するそれぞれの第2の端部(3’’’、6’’’)とを有する、安定化装置。
【請求項2】
前記少なくとも1対の第1の支持ビームの2つの第1の支持ビーム(3)は、それぞれ、前記第1の側と前記第2の側に配置され、互いに異なり、前記少なくとも1対の第2の支持ビームの2つの第2の支持ビーム(6)も、それぞれ、前記第1の側と前記第2の側に配置され、互いに異なる、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記エアナイフ(1)からのエアジェット用のバッフルシステム(4)は、前記第2の支持ビーム(6)の間に配置され、前記第2の支持ビーム(6)の少なくとも1つに固定され、少なくとも1対のバッフル(7)を含み、前記少なくとも1対のバッフルの各々のバッフル(7)は、前記エアナイフ(1)の間には、前記エアナイフのそれぞれの端部に設置される、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記バッフルシステム(4)は、各々が前記理論的供給面(X)に垂直な平面(Y)のそれぞれの側に配置される2つの支持体(5)を含み、
各々の支持体(5)は、それぞれのバッフル(7)が設置された下部アーム(8)と、ストリップのエッジを検出する検出装置(10)が設置された上部アーム(9)とを有する、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
各々の電磁スタビライザ装置(2)は、それぞれの第2の支持ビーム(6)の凹部内に少なくとも部分的に配置され、前記凹部には、前記電磁スタビライザ装置(2)が前記理論的供給面(X)に垂直な方向に沿って作動位置から静止位置へ、又はその逆にスライドするスライドガイド(11)が設置される、請求項1から4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記第1の側部構造(12)と前記第2の側部構造(13)は
、前記第1の支持ビーム(3)及び/又は前記第2の支持ビーム(6)を持ち上げるか又は下げるそれぞれの垂直移動手段を有する、請求
項1から5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記第1の支持ビーム(3)は、それぞれのエアナイフ(1)を支持するそれぞれの中央ストレッチ(3’)を有し、前記中央ストレッチ(3’)は、前記理論的供給面(X)に関して最も外側にあり、対応する第1の端部(3’’)及び第2の端部(3’’’)に対して下げられ、前記第2の支持ビーム(6)は、前記理論的供給面(X)に関して、対応する第1の端部(6’’)及び第2の端部(6’’’)に対して最も外側にあるそれぞれの中央ストレッチ(6’)を有し、前記中央ストレッチ(6’)は、その前記理論的供給面に対する近位側から、それぞれの電磁スタビライザ装置(2)を収容する対応する第2の支持ビーム(6)の凹部を区切り、前記第1の支持ビーム(3)の中央ストレッチ(3’)は、前記2つの中央ストレッチ(3’)の間のゾーンに前記電磁スタビライザ装置(2)を収容できるように、前記理論的供給面(X)から離れて配置される、請求
項1から6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
各々の第2の支持ビーム(6)の中央ストレッチ(6’)は、対応する第1の支持ビーム(3)の中央ストレッチ(3’)に接近し、前記中央ストレッチ(3’)の上の位
置に配置さ
れる、請求
項7に記載の装置。
【請求項9】
各々の電磁スタビライザ装置(2)は、それぞれの第2の支持ビーム(6)の凹部の
下に延
びる、請求
項7又
は8に記載の装置。
【請求項10】
前記第1の支持ビーム(3)の第1の端部(3’’)と第2の端部(3’’’)の両方は、それぞれ前記第1の側部構造(12)と前記第2の側部構造(13)に設置された、前記理論的供給面(X)に垂直であるそれぞれのスライドガイド(14、15)に載ることにより、前記第1の支持ビーム(3)は、スライドして、2つのエアナイフ(1)の間の距離を調整することができる、請求
項1か
ら9のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
機械的システムは、前記第2の支持ビーム(6)を、前記理論的供給面(X)に対してオフセットされる実際の供給面に対して対称な位置に維持するために設置される、請求
項10に記載の装置。
【請求項12】
少なくとも1つの補強横木(16、17)は、前記第2の支持ビーム(6)の第1の端部(6’’)と第2の端部(6’’’)の両方に設置され、各々の補強横木(16、17)は、第1の端部が前記第2の支持ビーム(6)の一方にヒンジで連結され、第2の端部が前記第2の支持ビーム(6)の他方に設置されたロック装置(18、19)に係合するように適合される、請求項1か
ら11のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
接続装置(20)は、前記1対の第1の支持ビーム(3)と前記1対の第2の支持ビーム(6)の両方をクレーンにより持ち上げる必要がある場合、各々の第1の支持ビーム(3)をその近位にある第2の支持ビーム(6)に接続するために設置される、請求項1か
ら12のいずれか1項に記載の装置。
【請求項14】
金属ストリップを溶融金属層でコーティングする設備であって、溶融金属浴(21)を収容するように適合されたタンクの上に配置された請求項1か
ら13のいずれか1項に記載の安定化装置を含む、設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強磁性材料製の平坦な製品、例えば、金属ストリップ、特に鋼ストリップをコーティングする設備の分野に関する。より詳細には、本発明は、強磁性材料で作られた運動中のストリップの振動及び揺動を緩和し、溶融金属を用いたコーティングプロセス、例えば、亜鉛めっきプロセスにおいてストリップの変形を補正する安定化装置に関する。本発明は更に、上記安定化装置を含む、金属ストリップを溶融金属を用いてコーティングする設備に関する。
【背景技術】
【0002】
知られているように、強磁性材料で作られたストリップは、複数のコーティングプロセス、例えば、亜鉛めっきにより外部コーティングされる。
【0003】
溶融金属、例えば、亜鉛を収容するタンクの上のエアナイフゾーンは、コーティングプロセスの中心であり、設備の利用可能性、プロセスの生産性、製品の品質及び亜鉛の消費に影響を与える。
【0004】
そのようなコーティングプロセスでは、移動する金属ストリップは、通常、変形及び振動の影響を受け、電磁スタビライザ装置によって補正されて、プロセスの生産性を向上させ、亜鉛の消費を最適化する。
【0005】
実際に、そのような電磁スタビライザ装置により、エアナイフゾーンでのストリップ振動の振幅を低減すると同時に、クロスボウなどの静的形状欠陥の振幅を低減することによりストリップの形状を改善することができる。
【0006】
例えば、
図1及び
図2は、電磁スタビライザ装置2が、下にある対応するエアナイフ1を支持する同じ支持ビーム3に取り付けられる安定化装置を概略的に示す。この構成には、ストリップの上のエアジェットの衝撃ゾーンとストリップ安定化ゾーンとの間の距離を短くすることができ、その結果、エアナイフ1の下流にあるストリップの振動と形状の両方を制御するのに優れた効果があるという利点がある。
【0007】
しかしながら、この構成は、
-支持ビームは、エアナイフの重量と電磁スタビライザ装置の重量の両方を支持する必要があるため、大きく、
-構成が複雑であるため、投資コストに大きな影響を与え、
-メンテナンスのためにエアナイフを取り外す手順は、複雑であり、
-スタビライザを追加することにより、エアナイフのみを備えた設備を現代化する場合、エアナイフとそれらの移動システムにも介入することが必須である、
という幾つかの欠点がある。
【0008】
したがって、安定化装置の革新的な構成を実施することにより、前述の欠点を解決する必要がある。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、非常に簡単でコンパクトである、溶融金属浴から上がる金属ストリップを安定化する安定化装置を作製することを目的とする。
【0010】
本発明は、ストリップのコーティング厚さの精度に関してエアナイフの性能を向上させるような構造を有する安定化装置を作製することを更なる目的とする。
【0011】
本発明は、投資コストへの影響が低い安定化装置を作製することを更なる目的とする。
【0012】
本発明は、エアナイフと電磁装置の両方のメンテナンス動作を容易にし、持ち上げ動作の回数を最小限に抑え、スタビライザ装置を古いエアナイフから分解して、一連の新しいエアナイフに再組み立てする必要性をなくす安定化装置を作製することを更なる目的とする。
【0013】
本発明は、溶融金属浴から理論的供給面Xに沿って上がる金属ストリップを安定化する安定化装置により、本明細書に照らして明らかになるそのような目的の少なくとも1つ、及び他の目的を達成し、該装置は、
第1のエアナイフが第1の側に配置され、第2のエアナイフが上記理論的供給面Xに対して第1の側の反対側の第2の側に配置される少なくとも1対のエアナイフと、
第1の電磁スタビライザ装置が上記第1の側に配置され、第2の電磁スタビライザ装置が上記第2の側に配置される少なくとも1対の電磁スタビライザ装置と、
各々がそれぞれのエアナイフを支持する1対の第1の支持ビームと、
各々がそれぞれの電磁スタビライザ装置を支持する1対の第2の支持ビームと、を含み、
1対の第2の支持ビームは、1対の第1の支持ビームと異なり、第1の支持ビームは、理論的供給面Xの遠位にあり、第2の支持ビームは、上記理論的供給面Xの近位にあり、1対の第1の支持ビームに対して少なくとも部分的に内側にある位置に配置される。
【0014】
本発明の別の態様は、金属ストリップを溶融金属層でコーティングする設備であって、溶融金属浴を収容するように適合されたタンクの上に設置された前述の安定化装置を含む、設備に関する。
【0015】
有利には、電磁スタビライザの2つの支持ビームとエアナイフの2つの支持ビームの両方は、2つの側部構造にばらばらに取り付けられ、該2つの側部構造は、上記4つの支持ビームに対して横方向であり、かつ動作段階を開始する前に、エアナイフと電磁スタビライザ装置の両方を持ち上げるか又は下げるができる。それにより、ラインのプロセスパラメータ(ストリップの速度及びコーティング厚さ)に対する電磁スタビライザ装置とエアナイフの一体的な移動と、ストリップの位置に対する平行度の可能な補正とを得ることができる。
【0016】
同時に、メンテナンスのステップでは、このばらばらになった組み立てにより、電磁スタビライザの支持ビームとエアナイフの支持ビームをクレーンなどにより別々に持ち上げることができる。
【0017】
メンテナンスは、以下の順序で実行される:
まず電磁スタビライザ装置の支持ビーム、次にエアナイフの支持ビームを2つの側部構造から分解し持ち上げ、
まずエアナイフの支持ビームを再組み立てし、次に電磁スタビライザ装置の支持ビームを再組み立てする。
【0018】
更に、本発明の装置の構成により、電磁装置により生成された力への反応として生成された応力がエアナイフの支持ビームに解放されて、コーティング厚さの精度に関してエアナイフの性能に明らかに悪影響を与えることを回避することができる。実際に、電磁装置により生成された応力は、エアナイフの支持ビームからばらばらにされた電磁装置のそれぞれの支持ビームに解放される。
【0019】
次に、電磁装置の支持ビームは、端部が、それらの高い剛性を保証する上記2つの側部構造に拘束される。
【0020】
また、電磁装置の支持ビームの剛性を更に向上させるために、これらのビーム間の接続システムは、オペレータ側とモータ側の両方に設置されて、安定化グループの、好ましくはエアジェットのバッフルシステムの曲げ剛性を向上させるフレームを作る。
【0021】
更なる利点は、本発明の装置のコンパクトさを向上させるために、ストリップのエッジでのエアナイフのバッフルシステムを1つ以上の電磁スタビライザ装置の同じ第2の支持ビームにより支持することができるため、バッフルシステムの組み立てを少なくとも1つの電磁スタビライザ装置の組み立てと一体化することができる変形例により表される。
【0022】
特に、第2の支持ビームの1つは、また、ストリップの各々のエッジに1つずつ、2つのエッジバッフルを含むエアナイフのバッフルシステムを支持する。
【0023】
好ましくは、第2の支持ビームは、装置のコンパクトさを維持しながら、ストリップ供給面の近位にある作動位置から上記ストリップ供給面の遠位にある静止位置への電磁スタビライザ装置の水平移動を可能にするように適切に成形される。
【0024】
更なる利点は、エアナイフの支持ビームが、コーティングを制御するエアジェット衝撃ゾーンと電磁スタビライザとの間の距離をできるだけ最小限に抑えるように適切に成形される変形例により表される。
【0025】
特に、エアナイフの支持ビームは、前進ストリップの位置でのそれらの中央ストレッチが、これらの2つの中央ストレッチの間のゾーンにスタビライザのハウジングが配置できるように、供給面から離れて設置されるように成形することができる。このようにして、電磁アクチュエータを収容するハウジングは、エアナイフノズルに対してできるだけ近いように下げることができる。これは、電磁スタビライザにより、ストリップの振動と形状の両方に対する制御効果を最大化するために行われる。
【0026】
本発明の更なる特徴及び利点は、好ましいが排他的ではない実施形態の詳細な説明に照らして、より明らかになる。
【0027】
従属請求項は、本発明の特定の実施形態を説明する。
【0028】
本発明の説明は、非限定的な例として提供される添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図2】
図1の装置の平面A-Aに沿った側面図である。
【
図4】
図3の装置の平面B-Bに沿った側面図である。
【
図6】本発明に係る安定化装置の一実施形態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図中の同じ参照番号と文字は、同じ要素又は部品を示す。
【0031】
図に関して、亜鉛などの溶融金属浴21から理論的供給面Xに沿って上がる金属ストリップを安定化するように適合された、本発明に係る安定化装置のいくつかの例が示される。
【0032】
本発明の全ての実施形態において、安定化装置は、
第1のエアナイフが理論的供給面Xの第1の側に配置され、第2のエアナイフが上記理論的供給面Xの第1の側の反対側の第2の側に配置される少なくとも1対、好ましくは1対のみのエアナイフ1と、
第1の電磁スタビライザ装置が上記第1の側に配置され、第2の電磁スタビライザ装置が上記第2の側に配置される少なくとも1対、好ましくは1対のみの電磁スタビライザ装置2と、
各々がそれぞれのエアナイフ1を支持する1対の第1の支持ビーム3と、
各々がそれぞれの電磁スタビライザ装置2を支持する1対の第2の支持ビーム6とを含む。
【0033】
好ましくは、装置の動作ステップでは、各々のエアナイフ1は、理論的供給面Xに対して他方のエアナイフの鏡像に配置され、すなわち、エアナイフ1は、理論的供給面Xに対して対称的に配置される。同様に、各々の電磁スタビライザ装置2は、上記理論的供給面Xに対して他方の電磁スタビライザ装置の鏡像に配置され、すなわち、電磁スタビライザ装置は、上記理論的供給面Xに対して対称的に配置される。
【0034】
有利には、1対の第2の支持ビーム6は、1対の第1の支持ビーム3と異なり、すなわち別個であり、第1の支持ビーム3は、理論的供給面Xの遠位にあり、第2の支持ビーム6は、上記理論的供給面Xの近位にある。第1及び第2の支持ビームが互いに異なるか又は別個であるという事実は、第2の支持ビーム6が対応する第1の支持ビーム3により直接的又は間接的に支持されないことを意味する。特に、第2の支持ビーム6は、第1の支持ビーム3に載っておらず、第1の支持ビーム3によりいかなる方法で支持されない。それにより、電磁スタビライザ装置2により生成された力への反応として生成された応力がエアナイフ1の支持ビーム3に解放されて、コーティング厚さの精度に関してエアナイフの性能に明らかに悪影響を与えることを回避することができる。実際に、電磁スタビライザ装置2により生成された応力は、エアナイフ1の支持ビームから分離された電磁スタビライザ装置自体のそれぞれの支持ビーム6に解放される。
【0035】
更に、第2の支持ビーム6は、理論的供給面Xに関して、1対の第1の支持ビーム3に対して少なくとも部分的に最も内側の位置又は完全に最も内側の位置に配置することができる。支持ビームのこの配置により、本発明の装置は、既知の解決策より簡単で、よりコンパクトである。
【0036】
特に、第2の支持ビーム6は、第1の支持ビーム3に平行に配置することができる。
【0037】
例えば、
図6に示すように、第2の支持ビーム6は、その少なくとも一部のみが第1の支持ビーム3の上にあるように配置することができる。
【0038】
特に、2つの第1の支持ビーム3は、互いに異なり、それぞれ上記理論的供給面Xの第1の側と第2の側に、好ましくは互いに鏡面的に配置され、すなわち、支持ビーム3は、上記理論的供給面Xに対して対称的に配置され、また、2つの第2の支持ビーム6は、互いに異なり、それぞれ上記第1の側と上記第2の側に、好ましくは、上記理論的供給面Xに対して互いに鏡面的に配置され、すなわち、支持ビーム6は、理論的供給面Xに対して対称的に配置される。
【0039】
本発明の装置のコンパクトさを更に向上させるために、変形例には、上記エアナイフ1からのエアジェット用のバッフルシステム4が設置され、バッフルシステム4は、第2の支持ビーム6の間に配置され、上記第2の支持ビーム6の少なくとも1つ、好ましくは1つのみに固定され、少なくとも1対のバッフル7を含み、各々のバッフル7は、エアナイフ1の間には、エアナイフのそれぞれの端部に設置される。バッフル7は、エアジェットの干渉により生成されたノイズを低減し、特に厚いコーティングを有する低速ストリップの場合、ストリップエッジのオーバーコーティングを最小限に抑える機能を有する。
【0040】
上記バッフルシステム4の特定の実施形態は、各々が理論的供給面Xに垂直な平面Yのそれぞれの側に配置される2つの支持体5を含む。
【0041】
2つの支持体5は、実質的に平坦であり、理論的供給面Xに沿って、好ましくは互いに鏡面的に、すなわち平面Yに対して対称的に配置される。
【0042】
各々の支持体5は、好ましくはC字形であり、それぞれのバッフル7が設置された下部アーム8と、ストリップのエッジを検出する検出装置10が設置された上部アーム9とを有する(
図4)。そのような検出装置10は、例えば、フォトセル又はカメラタイプのセンサであってもよい。平面Yに対するバッフル7の距離は、溶融金属浴から上がるストリップのエッジの位置の検出に基づいて調整することができる。2つのバッフル7の間の距離は、例えば、500~2000mmである。
【0043】
例えば、2つの支持体5は、第2の支持体ビーム6の1つに沿って、理論的供給面Xに平行にスライドすることができる。各々のバッフル7は、ストリップのエッジの検出装置10からの信号に応答してリニアサーボアクチュエータにより配置することができる。サーボアクチュエータは、アブソリュート・エンコーダを含んでもよい。
【0044】
通常の動作中に、ストリップとバッフルとは、接触しない。検出装置10は、オペレータの介入なしに、エアカーテンにより数週間清潔に保持することができる。バッフル7は、ストリップが浴から上がるときに、上記ストリップの溶接シームが到着すると自動的に後退することができる。
【0045】
動作中にバッフルの高さを調整し、例えば、初期基準位置から±20mm、最大40mm調整する垂直調整機構を含んでもよい。
【0046】
本発明の装置の変形例において、第1の支持ビーム3と第2の支持ビーム6の両方は、
第1の側部構造12に載る第1の端部3’’、6’’と、
第2の側部構造13に載る第2の端部3’’’、6’’’とを有し、側部構造12、13は、好ましくは、互いに平行であり、上記平面Yに平行である(
図5)。
【0047】
具体的には、各々の第1の支持ビーム3の第1の端部3’’は、各々の第2の支持ビーム6の第1の端部6’’からばらばらにされるか又は独立して、第1の側部構造12に載り、各々の第1の支持ビーム3の第2の端部3’’’は、各々の第2の支持ビーム6の第2の端部6’’’から互いにばらばらにされるか又は独立して、第2の側部構造13に載る。
【0048】
好ましくは、第1の側部構造12と第2の側部構造13は、任意に互いに同期して、第1の支持ビーム3及び第2の支持ビーム6を共に持ち上げるか又は下げるそれぞれの垂直移動手段を有する。そのような垂直移動手段は、例えば、油圧、空気圧又は機械的アクチュエータを含む。
【0049】
例えば、垂直移動は、機械式ジャッキを介して2.2kWのACギアモータにより駆動することができる。
【0050】
そのような垂直移動は、下のタンク内の溶融金属の公称レベルから70mm~700mmであってもよい。垂直移動の速度は、例えば、約380~420mm/minである。
【0051】
有利には、第1の支持ビーム3は、底部でそれぞれのエアナイフ1を支持するそれぞれの中央ストレッチ3’を有し、上記中央ストレッチ3’は、理論的供給面Xに関して最も外側にあり、第1の支持ビーム3の対応する第1の端部3’’及び第2の端部3’’’に対して下げられる(
図6)。また、第2の支持ビーム6は、理論的供給面Xに関して最も外側にあり、好ましくは第2の支持ビーム6の対応する第1の端部6’’及び第2の端部6’’’に対して下げられるそれぞれの中央ストレッチ6’を有する。各々の中央ストレッチ6’は、その理論的供給面Xに対する近位側から、対応する第2の支持ビーム6の凹部を区切る。第1の支持ビーム3の中央ストレッチ3’は、有利には、上記2つの中央ストレッチ3’の間のゾーンに電磁スタビライザ装置2を収容できるように、理論的供給面Xから離れて配置される。
【0052】
好ましくは、第1の端部3’’又は第2の端部3’’’を中央ストレッチ3’と結合する中間ビームストレッチは、少なくとも部分的に曲線であり、好ましくは2つの変曲点を有する軸を規定し、或いはそれぞれの第1の支持ビーム3の端部と中央ストレッチの両方に垂直な中間ビームストレッチであってもよい。
【0053】
代わりに、第1の支持ビーム3の中間ビームストレッチについて今説明したものに加えて、第1の端部6’’又は第2の端部6’’’を中央ストレッチ6’と結合する中間ビームストレッチは、中央ストレッチ6’に対して横方向、好ましくは直交し、上記中央ストレッチ6’と共に、電磁スタビライザ装置2が配置される凹部を規定する部分60を更に有することができる。
【0054】
各々の電磁スタビライザ装置2は、好ましくは、それぞれの第2の支持ビーム6の凹部内に少なくとも部分的に配置される。任意に、上記凹部に、好ましくは上記凹部の端部には、対応する電磁スタビライザ装置2が理論的供給面Xに垂直な方向に沿って作動位置から静止位置へ、又はその逆にスライドするスライドガイド11(
図5)が設置される。
【0055】
ストリップの供給面Xの近位の作動位置では、電磁スタビライザ装置2は、例えば、ストリップの表面ひいては供給面から40~60mmの距離にある。
【0056】
代わりに、ストリップ供給面Xの遠位の静止位置では、電磁スタビライザ装置2は、例えば、ストリップの表面ひいては供給面から100~250mmの距離にある。
【0057】
有利な実施形態(
図6)において、各々の第2の支持ビーム6の中央ストレッチ6’は、対応する第1の支持ビーム3の中央ストレッチ3’の近位に、上記中央ストレッチ3’の上の位置に、好ましくは少なくとも部分的に最も内側の位置又は完全に最も内側の位置に配置され、その結果、対応する支持ビーム6の凹部に収容されたそれぞれの電磁スタビライザ装置2は、その下の対応するエアナイフ1に接近することができる。
【0058】
例えば、
図6に示すように、第2の支持ビーム6は、第1の支持ビーム3の上に部分的にのみ配置される。特に、各々の第2の支持ビーム6の中央ストレッチ6’は、対応する第1の支持ビーム3の中央ストレッチ3’の上に配置される。
【0059】
各々の電磁スタビライザ装置2は、それぞれの第2の支持ビーム6の凹部の下、好ましくは対応する第1の支持ビーム3の中央ストレッチ3’の下に延びて、電磁スタビライザ装置2とその下のエアナイフ1との間の距離は、200~1500mm、好ましくは200~1000mmである。
【0060】
好ましくは、各々の中央ストレッチ6’は、第1の支持ビーム3の第1の端部3’’及び第2の端部3’’’の上部エッジの高さより低い高さに配置される。
【0061】
本発明の装置の更なる実施形態において、第1の支持ビーム3の第1の端部3’’と第2の端部3’’’の両方は、それぞれ第1の側部構造12と第2の側部構造13に設置された、理論的供給面Xに垂直であるそれぞれのスライドガイド14、15に載ることにより、第1の支持ビーム3は、上記スライドガイド14及び15上をスライドして、2つのエアナイフ1の間の距離を調整することができる(
図5)。
【0062】
第1の支持ビーム3のこの水平移動は、別個のステッピングモータにより駆動することができる。トランスミッションは、精密ボールねじ、リニアガイド14及び15を含んでもよい。
【0063】
支持ビーム3のそのような水平移動は、支持ビーム3の初期基準位置に対して、支持ビーム3がストリップの供給面に近づく場合に-20mmであり、上記供給面から離れる場合に+100mmである。
【0064】
ストリップ供給面(パスライン)は、平面Yに沿って±25mm水平に移動することができる。第1の支持ビーム3は、水平面に対して平行又は傾斜して調整することができる。
【0065】
第1の支持ビーム3ひいてはエアナイフ1の水平高速開放機能は、溶融金属浴から上がるストリップの溶接シームの通過時に提供することができる。この場合、水平移動の速度は、例えば、ストローク100mmあたり約2~4秒である。
【0066】
垂直移動のモータと水平移動のモータの両方、全てのモーターに少なくとも1つのリニアトランスデューサを提供することができる。
【0067】
ストリップのパスラインが設計位置、すなわち理論的供給面に対して変位する場合、上記理論的供給面Xに対してオフセットされる実際の供給面に対するエアナイフの対称性を維持するために、エアナイフ1が上記スライドガイド14及び15に沿って移動し、そして、第2の支持ビーム6も、適切な機械的システムにより自己調整して、上記第2の支持ビーム6を上記実際の供給面に対して鏡面的位置、すなわち対称的に維持する。
【0068】
この機械的システム、例えば、ねじ及び/又はレバーのシステムは、好ましくは、側部構造12及び13の内側、任意にスライドガイド14及び15を含む平面の下に設置され、また、エアナイフ1からのエアジェットのバッフルシステム4が第2の支持ビーム6の間に配置されると共に、上記第2の支持ビーム6の1つに固定された変形例において、バッフル7の位置の自己調整を可能にする。
【0069】
本発明の更なる変形例において、少なくとも1つの補強横木16、17は、第2の支持ビーム6の第1の端部6’’と第2の端部6’’’の両方に設置される(
図5)。各々の補強横木16、17は、第1の端部が第2の支持ビーム6の一方に回転可能に拘束され、第2の端部が第2の支持ビーム6の他方に設置されたロック装置18、19に係合するように適合される。それにより、安定化グループの、好ましくはエアジェットのバッフルシステムの曲げ剛性を向上させるフレームを作ることができる。
【0070】
接続装置20は、1対の第1の支持ビーム3と1対の第2の支持ビーム6の両方をクレーンにより持ち上げる必要がある場合、各々の第1の支持ビーム3をその近位にある第2の支持ビーム6に接続するために設置されてもよい。
【0071】
本発明の装置の全ての実施形態において、溶融金属浴21を収容するタンクの真上にあるエアナイフ1は、加圧エアジェットによりストリップ表面上の溶融金属コーティングの厚さを調整して、所望の厚さの均一なコーティングを達成する。
【0072】
各々のエアナイフは、最初に空気を一連の内部の互いに部分的に分離されたチャンバーに通過させることにより、ノズル22(
図4)の幅にわたって均一なエアジェットを生成することができ、チャンバーは、ノズル22に近づく連続的に小さい流路を有する。各々の制限により流路は、空気圧がより均一になるように強制する。ノズル22のリップの出口では、圧力プロファイルは、幅全体にわたって±1.5%以下に均一である。
【0073】
例として、以下の場合が挙げられる:
各々のエアナイフの入口に必要な最大圧力は約850~950mbarであり、
各々のエアナイフに必要な最大空気流量は、20℃で約60~65Nm3/minであり、
エアナイフに供給するブロワーの流量は、20℃で約65~145m3/分間であり、
ブロワーあたりの設置電力は、約300kWである。
【0074】
理論的供給面Xに対するノズル22の角度を調整する手動機構、及び/又はノズルのリップ間のギャップを調整する手動機構を設置することができる。
【0075】
好ましくは、平面Xに平行に測定されたノズル22の開口部の幅は、1400~2000mmで、例えば1900mmである。ノズルのリップ間のギャップは、最大2.5mmで、例えば、1.0mm(中央)~1.3mm(端部)であってもよい。ノズル22の角度調整範囲は、水平に対して約10°で、例えば+3°~-7°である。
【0076】
空気圧で動作する自動ノズル洗浄装置22を設置することができる。
【0077】
本発明の装置の全ての実施形態において、電磁スタビライザ装置2により、ストリップの振動を低減し、ストリップを平らにし(形状補正作用)、エアナイフ1の間に一定のパスラインを確立することができる。それにより、ストリップ上の亜鉛コーティングがより均一になり、亜鉛コーティングが減少し、製品の品質が向上する。更に、シンクロールを安定化する水中ベアリング又は焼鈍炉などの他の機器による制限がない限り、生産性が向上する。
【0078】
好ましくは、各々の電磁スタビライザ装置2は、磁気安定化効果を最大化するために、ノズル22にできるだけ近く、電磁スタビライザ装置2の下のエアナイフ1の本体の上に配置されたハウジングを含む。上記ハウジングは、複数の磁気アクチュエータ及び渦電流センサ、渦電流センサの電子機器、ガイド11上をスライドする機械的運動ユニットを内部で囲むことができる。各々の装置2の磁気アクチュエータ及び渦電流センサは、他の装置2の対応する反対側の磁気アクチュエータ及び渦電流センサと対になって動作する。
【0079】
特に、各々のハウジング内の電動式移動機構は、エアナイフ本体及びストリップに対して垂直に各々のハウジングの位置を独立して調整することができる。
【0080】
ストリップからの各々のハウジングの動作距離は、例えば、約20mmであり、ハウジングは、例えば、ストリップから約70mmの距離まで後退することができる。スタビライザ装置2の水平移動の最大速度は、約50mm/sである。
【0081】
理論的供給面からの水平に沿うストリップの最大オフセットは、±25mmであるが、その傾斜の補正の最大値は、1°である。
【0082】
溶融金属浴から上がるストリップは、磁気アクチュエータ及び渦電流センサを収容する2つの空冷ハウジングの間を通過する。ハウジングは、過酷な環境、ストリップからの熱放射、及び溶融金属浴を収容するタンクから装置を保護するように特別に設計される。
【0083】
更に、スタビライザ装置2の電磁構成は、最良の平面性制御を提供するために、スポット状の分布と対照的に、ストリップの幅に沿って空間的に連続した磁力を与えるように規定される。