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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-27
(45)【発行日】2023-12-05
(54)【発明の名称】カテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/092 20060101AFI20231128BHJP
【FI】
A61M25/092 500
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022576298
(86)(22)【出願日】2021-01-21
(86)【国際出願番号】 JP2021002056
(87)【国際公開番号】W WO2022157887
(87)【国際公開日】2022-07-28
【審査請求日】2023-03-06
(73)【特許権者】
【識別番号】594170727
【氏名又は名称】日本ライフライン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】赤星 輝
【審査官】川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-230471(JP,A)
【文献】特開2018-153460(JP,A)
【文献】特開2015-150026(JP,A)
【文献】特表2010-508129(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0276222(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/092
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテーテル本体と、
前記カテーテル本体の基端部に装着されたハンドル本体と、
前記カテーテル本体内に挿通されて、前記カテーテル本体の適所に設けた偏向可能部を偏向させる操作用ワイヤと、
前記ハンドル本体に装着されて、前記偏向可能部を所定の初期姿勢から偏向した偏向姿勢に変形させるように前記操作用ワイヤを操作する操作機構と、を備え、
前記操作機構は、
前記ハンドル本体によって可動に支持された操作部材と、
前記操作用ワイヤが前記操作部材の動作に応じて操作されるように前記操作用ワイヤを前記操作部材に対して拘束する拘束位置と、前記操作用ワイヤを前記操作部材から解放する非拘束位置と、の間で前記操作部材の操作状態に応じて位置変位するスライダと、を備えることを特徴とするカテーテル。
【請求項2】
前記操作部材は、前記スライダとの間で前記操作用ワイヤを挟圧保持する挟圧面と、前記スライダを前記挟圧面に対して接近又は離間するように前記スライダの一部位を支持する接離ガイドと、を備えており、
前記ハンドル本体によって固定的に支持されて、前記操作部材の操作量に応じて前記スライダを前記接離ガイド内の所定位置に移動させるように前記スライダの他部位を支持する固定ガイドを備えることを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項3】
カテーテル本体と、
前記カテーテル本体の基端部に装着されたハンドル本体と、
前記カテーテル本体内に挿通されて、前記カテーテル本体の適所に設けた偏向可能部を偏向させる操作用ワイヤと、
前記ハンドル本体に装着されて、前記偏向可能部を所定の初期姿勢から偏向した偏向姿勢に変形させるように前記操作用ワイヤを操作する操作機構と、を備え、
前記操作機構は、
前記ハンドル本体によって回転可能に支持された回転板と、
前記回転板の一面から前記回転板の回転軸方向に沿って起立する挟圧面と、
前記挟圧面に対して接近又は離間するように前記回転板に形成された接離ガイドと、
一部位を前記接離ガイドによって支持されて、前記挟圧面に接近したときに前記操作用ワイヤを前記挟圧面との間で挟圧保持するスライダと、
前記ハンドル本体によって回転不能に支持されて、前記回転板の回転角度に応じて前記スライダを前記接離ガイド内の所定位置に移動させるように前記スライダの他部位を支持する固定ガイドと、を備えることを特徴とするカテーテル。
【請求項4】
前記スライダは、前記挟圧面との間で前記操作用ワイヤを挟圧する押圧面を有し、前記接離ガイドに対して相対回転不能、且つ前記接離ガイド内を進退可能に構成された押子部材と、該押子部材を間に挟んで前記挟圧面とは反対側に配置されて、前記回転板の回転軸方向に沿って伸びる回転基準軸を中心として前記接離ガイド内で相対回転可能、且つ前記接離ガイド内を進退可能に構成された回転部材と、を備えることを特徴とする請求項3に記載のカテーテル。
【請求項5】
前記回転部材は、前記固定ガイドとの間に働く摩擦力により回転する緩衝部と、該回転により前記押子部材と摺動する摺動部と、を備えることを特徴とする請求項4に記載のカテーテル。
【請求項6】
前記操作用ワイヤの基端部には、前記カテーテル本体内における前記操作用ワイヤの弛みを防止する弾性付勢部材が取り付けられていることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載のカテーテル。
【請求項7】
カテーテル本体と、
前記カテーテル本体の基端部に装着されたハンドル本体と、
前記カテーテル本体内に挿通されて、前記カテーテル本体の適所に設けた偏向可能部を偏向させる第一及び第二の操作用ワイヤと、
前記ハンドル本体に装着されて、前記偏向可能部を所定の初期姿勢から偏向した偏向姿勢に変形させるように前記第一及び第二の操作用ワイヤを操作する操作機構と、を備え、
前記操作機構は、
前記ハンドル本体によって正逆方向に回転可能に支持された回転板と、
前記回転板の一面から前記回転板の回転軸方向に沿って起立する第一及び第二の挟圧面と、
前記第一及び第二の挟圧面に対して夫々接近又は離間するように前記回転板に形成された第一及び第二の接離ガイドと、
一部位を前記第一及び第二の接離ガイドによって夫々支持されて、前記第一及び第二の挟圧面に接近したときに前記第一及び第二の操作用ワイヤを夫々前記第一及び第二の挟圧面との間で挟圧保持する第一及び第二のスライダと、
前記ハンドル本体によって回転不能に支持されて、前記回転板の回転角度に応じて前記第一及び第二のスライダを前記第一及び第二の接離ガイド内の所定位置に夫々移動させるように前記第一及び第二のスライダの他部位を支持する固定ガイドと、
を備え、
前記固定ガイドは、前記第一のスライダが前記第一の操作用ワイヤを前記第一の挟圧面との間で挟圧保持するときに、前記第二のスライダと前記第二の挟圧面とによる前記第二の操作用ワイヤの挟圧保持を解除するように構成されていることを特徴とするカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
患部の診断や治療を行うために用いられる医療用のカテーテルは、血管等の形状に従って湾曲変形可能な可撓性を有し、血管等の管状の体内器官内に挿入されるカテーテル本体と、カテーテル本体の基端部に装着されたハンドルとを備える。
【0003】
従来、ハンドル側における操作により、カテーテル本体の一部分の向き又は姿勢を所定の初期姿勢から変化させうるように(偏向できるように)構成されたカテーテルが知られている。
【0004】
特許文献1には、カテーテル本体の先端部に、操作により姿勢変化可能な偏向可能部を備えたカテーテルが記載されている。このカテーテル本体内には、偏向可能部の向きを操作する操作用ワイヤが挿通されている。操作用ワイヤの先端部はカテーテル本体の先端部に固着され、基端部はハンドルによって操作可能に支持されている。偏向可能部は、ハンドルに設けたノブを回転させて、カテーテル本体内から操作用ワイヤを引き出し又は戻すことによってその向きを変える。操作用ワイヤの引き出し量(移動量)が多いほど偏向可能部の変形量は大きくなり、操作用ワイヤの引き出し量が少なければ偏向可能部の変形量は小さくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2010-508129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、操作用ワイヤが操作されていない状態で、カテーテル本体が例えば管状の体内器官の湾曲形状に従って湾曲すると、カテーテル本体内におけるワイヤ経路長は、カテーテル本体の湾曲形状に応じて伸長し又は縮小する。また、カテーテル本体を構成する材料自体の経年変化により、カテーテル本体が長手方向に収縮すると、カテーテル本体内におけるワイヤ経路長が縮小する。
【0007】
このような場合、仮に操作用ワイヤの基端部がハンドル内に固定されていると、カテーテル本体内におけるワイヤ経路長と、操作用ワイヤ長との長さバランスが崩れる。その結果、ノブの操作量に対して偏向可能部の変形量が小さくなる、という問題がある。
【0008】
本発明は上述の事情に鑑みてなされたものであり、カテーテル本体が血管等に沿って湾曲した場合や、経年変化によりカテーテル本体が収縮した場合等においても、偏向可能部の変形量を維持することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明は、カテーテル本体と、前記カテーテル本体の基端部に装着されたハンドル本体と、前記カテーテル本体内に挿通されて、前記カテーテル本体の適所に設けた偏向可能部を偏向させる操作用ワイヤと、前記ハンドル本体に装着されて、前記偏向可能部を所定の初期姿勢から偏向した偏向姿勢に変形させるように前記操作用ワイヤを操作する操作機構と、を備え、前記操作機構は、前記ハンドル本体によって可動に支持された操作部材と、前記操作用ワイヤが前記操作部材の動作に応じて操作されるように前記操作用ワイヤを前記操作部材に対して拘束する拘束位置と、前記操作用ワイヤを前記操作部材から解放する非拘束位置と、の間で前記操作部材の操作状態に応じて位置変位するスライダと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、カテーテル本体が血管等に沿って湾曲した場合や、経年変化によりカテーテル本体が縮んだ場合にも、偏向可能部の変形量を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第一の実施形態に係るカテーテルの概略構成を示す図であり、(a)は正面図であり、(b)は(a)のC-C断面図であり、(c)は側面図である。
図2】ハンドルの一部分解斜視図である。
図3】操作機構の分解斜視図である。
図4】(a)、(b)は、スライダを示す斜視図である。
図5】(a)~(c)は、操作機構の動作を説明する透視平面図である。
図6】(a)~(c)は、操作機構の動作を説明する一部分解断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
【0013】
〔第一の実施形態〕
図1は、本発明の第一の実施形態に係るカテーテルの概略構成を示す図であり、(a)は正面図であり、(b)は(a)のC-C断面図であり、(c)は側面図である。
本実施形態に係るカテーテルは、カテーテル本体に設けた偏向可能部を偏向操作するときに操作用ワイヤの基端部をハンドル内で拘束状態とし、偏向操作しないときに操作用ワイヤの基端部を非拘束状態とする点に特徴がある。
【0014】
本発明の一実施形態に係るカテーテル1は、中空且つ可撓性を有したカテーテル本体10と、カテーテル本体10の基端部に装着されたハンドル30と基端部側からカテーテル本体10内に挿通されて、カテーテル本体10の適所(本実施形態では先端部)に設けた偏向可能部11を偏向させる操作用ワイヤ17(17A,17B)とを備える。ハンドル30は、カテーテル本体10の基端部が装着されるハンドル本体31と、ハンドル本体31に装着されて、偏向可能部11を所定の初期姿勢から偏向した偏向姿勢に変形させるように操作用ワイヤ17を操作する操作機構100と、を備える。
ここで、「偏向」とは、カテーテル本体10の向き(姿勢)を操作機構100により操作して変化させること、或いはカテーテル本体10を操作機構100により操作して曲げることをいう。
【0015】
<カテーテル>
図示するカテーテル1は血管を介して心臓内に挿入される電極カテーテルであり、不整脈等の診断に用いられる。以下、本発明を電極カテーテルの例により説明するが、本発明は電極カテーテルの他、心臓内に挿入されて不整脈の原因となる心臓組織を焼灼するアブレーションカテーテル、心室細動を除去するための心腔内除細動カテーテル等にも適用可能である。また、本発明は、食道内部の温度を測定する食道カテーテルや、腫瘍組織等の病変部位を焼灼する他の治療用のカテーテル等にも適用可能である。
【0016】
カテーテル本体10の長手方向の適所には、ハンドル30に設けた操作機構100を操作することにより、実線で示した初期姿勢から図中矢印A1方向又はA2方向に偏向(姿勢変位)して破線で示した姿勢に変形する偏向可能部11が形成されている。本例において偏向可能部11は、カテーテル本体10の先端部に配置されている。
操作機構100を構成するノブ113,113の操作により操作部材(回転板)110を、図示する初期位置から図中矢印B1方向に回転させると偏向可能部11は実線にて示す初期姿勢から矢印A1方向に偏向し(第一の偏向姿勢)、操作部材110を矢印B2方向に回転させると偏向可能部は矢印A2方向に偏向する(第二の偏向姿勢)。
本例に示すカテーテル1は、偏向可能部11が2方向(矢印A1方向、A2方向)に偏向するいわゆるバイディレクショナルタイプのカテーテルである。本発明は、偏向可能部11が1方向のみに(例えば矢印A1方向のみに)偏向するいわゆるシングルディレクショナルタイプのカテーテルにも適用可能である。
【0017】
<<カテーテル本体>>
カテーテル本体10は、血管等の形状に従って湾曲変形可能な可撓性を有している。
図1(b)に示すように、カテーテル本体10は、内部に長手方向の一端部(基端部)から他端部(先端部)にかけて配置された中空部である少なくとも1つのルーメン(13,15)を備えた中空筒状である。
図示するカテーテル1は、心臓内の刺激伝導経路を検査する診断用の電極カテーテルである。カテーテル1は、カテーテル本体10の先端に配置された先端電極19Aと、先端電極19Aから基部側に所定の間隔を空けて配置された複数のリング状電極19B,19B…とを備える。先端電極19Aとリング状電極19B,19B…は、心臓内の電位を観測する手段であり、偏向可能部11に配置されている。
各操作用ワイヤ17A,17Bは、カテーテル本体10の内部に配置されたワイヤ用のルーメン13,13内からハンドル30内に掛けて配置されている。操作用ワイヤ17A,17Bの先端は、カテーテル本体10内部の先端部適所(本例では先端電極19Aの直近位置)に固定される。カテーテル1が複数の操作用ワイヤ17A,17Bを備える場合、各操作用ワイヤ17A,17Bは、互いに異なるルーメン13,13内に挿通される。
他のルーメン15,15内には、カテーテルの種類に応じて種々の部材が挿通される。例えば、カテーテル1が本例のような電極カテーテルである場合、ルーメン15,15には先端電極19Aとリング状電極19B…とに夫々導通する導線21,21…が挿通される。
カテーテル本体10の外装となるチューブ、及び各ルーメン13,15…を形成するチューブは、例えばポリオレフィン、ポリアミド、ポリエーテルポリアミド、ポリウレタンなどの合成樹脂から構成される。先端電極19Aとリング状電極19B…は、例えばアルミニウム、銅、ステンレス、金、白金など、電気伝導性の良好な金属から構成される。
【0018】
<操作機構>
図2は、ハンドルの一部分解斜視図である。図3は、操作機構の分解斜視図である。図中、軸線Ax1は、操作部材110の回転中心軸である。
操作用ワイヤ17A,17Bをカテーテル本体10の基端部から引き出す操作、又はカテーテル本体内に押し戻す操作をする操作機構100は、ハンドル本体31によって可動に支持された操作部材110(回転板)と、操作用ワイヤ17A,17Bが操作部材110の動作に応じて操作(進退動作)されるように操作用ワイヤ17A,17Bを操作部材110に対して拘束する拘束位置(図6(b)のスライダ190A参照)と、操作用ワイヤ17A,17Bを操作部材から解放する非拘束位置(図6(b)のスライダ190B参照)と、の間で操作部材110の操作状態に応じて位置変位するスライダ190(190A,190B:拘束部材)と、を備える。
図3に示すように、操作部材110は、スライダ190A,190Bとの間で操作用ワイヤ17A,17Bを挟圧保持する挟圧面137(137A,137B)と、スライダ190A,190Bを挟圧面137A,137Bに対して接近又は離間するようにスライダ190A,190Bの一部位(軸方向の中間部)を支持する接離ガイド121(121A,121B)と、を備えている。
更に、図2及び図3に示すように、操作機構100は、ハンドル本体31によって固定的に支持されて、操作部材110の操作量に応じてスライダ190A,190Bを接離ガイド121A,121B内の所定位置に移動させるようにスライダ190A,190Bの他部位(軸方向の各端部)を支持する固定ガイド170(170A,170B)を備える。
ハンドル本体31、操作部材110、固定ガイド170は、例えばポリカーボネートから構成される。
【0019】
<<拘束状態・非拘束状態>>
ここで拘束状態とは、操作機構100が操作用ワイヤ17の長手方向移動を制御できている(又は制限できている)状態である。操作用ワイヤ17は挟圧面137とスライダ190との間で挟圧されることにより拘束状態となる。非拘束状態とは操作機構100が操作用ワイヤ17の長手方向移動を制御できていない(又は制限できていない)状態である。操作用ワイヤ17は挟圧面137とスライダ190との間で挟圧されないことにより非拘束状態となる。
操作用ワイヤ17が拘束状態にあるとき、ハンドル30に設けた操作部材110は、その操作状態に応じて操作用ワイヤ17をカテーテル本体10内から引き出し又は押し戻すことができる。操作用ワイヤ17が非拘束状態にあるとき、ハンドル30に設けた操作部材110は、その操作状態の如何に関わらず、操作用ワイヤ17をカテーテル本体10から引き出し又は押し戻すことができない。
カテーテル本体10内における操作用ワイヤ17のワイヤ経路長は、カテーテル本体10の湾曲形状に応じて変化する。非拘束状態にあるとき、操作用ワイヤ17は、ワイヤ経路長の変化に応じて、カテーテル本体10内を長手方向に自由に移動できる。言い換えれば、操作用ワイヤ17は、操作部材110により操作されなくても、ワイヤ経路長の変化に応じて、ハンドル30とカテーテル本体10との間を自由に移動する。
【0020】
<<ハンドル本体>>
ハンドル本体31は、図2に示すように二分割される一対の分割片31A,31Bから構成される。ハンドル本体31(分割片31A,31B)は、先部側内部に操作機構100を収容する操作機構収容部33を備える。また、各分割片31A,31Bは、それぞれ基部側の適所に、操作用ワイヤ17A,17Bの基端部に結合される引張バネ220(220A,220B:弾性付勢部材)を支持するバネ支持部35,35を有する。
【0021】
<<操作部材>>
本例における操作部材110は、ハンドル本体31によって正逆方向に回転可能に中心部を支持された円盤状の回転部材である。操作部材110は、操作用ワイヤ17A,17Bの長手方向と交差する軸線Ax1を中心として正方向(図1中B1方向)又は逆方向(図1中B2方向)に回転する。なお、図2に示された操作部材110は、回転角度0度の初期位置にある。操作部材110が初期位置にあるとき、偏向可能部11は図1の実線にて示す初期姿勢を取る。以下、操作部材110が初期位置にある状態を基準として説明する。
【0022】
<<<結合状態>>>
図2に示すように、操作部材110は概略円盤状であり、面内中央部に回転中心となる軸支部111と、外周縁から180度の周方向位置関係で外径方向に突出した2つのノブ113,113とを有する。本例に示す軸支部111は、操作部材110を肉厚方向(Z軸方向)に貫通する貫通孔である。操作部材110は、軸線Ax1を中心として正逆方向(矢印B1,B2方向)に自在に回転するように、ハンドル本体31によって支持される。ノブ113,113は、軸支部111を間に挟んで、互いに相反する外径方向に突出している。
操作部材110の内部には先部側から基部側にかけて、操作用ワイヤ17A(第一操作用ワイヤ)を通過させる第一ワイヤ経路115Aと、操作用ワイヤ17B(第二操作用ワイヤ)を通過させる第二ワイヤ経路115Bとが貫通形成されている。軸支部111を間に挟んで径方向の一方の側には第一ワイヤ経路115Aが形成され、径方向の他方の側には第二ワイヤ経路115Bが形成されている。操作用ワイヤ17A,17Bは、操作部材110内に挿通される。
操作部材110の第一ワイヤ経路115A側には、内外径方向に延びる長孔としての接離ガイド121A(第一接離ガイド)が貫通形成されている。操作部材110の第二ワイヤ経路115B側には、内外径方向に延びる長孔としての接離ガイド121B(第二接離ガイド)が貫通形成されている。各接離ガイド121A,121Bは、後述するスライダ190A(第一スライダ)とスライダ190B(第二スライダ)を係合させた状態で、それぞれ内外径方向(図中矢印D方向)に進退するようにガイドする。本例において、接離ガイド121A,121Bは操作部材110を肉厚方向に貫通すると共に、操作部材110の半径方向に直線的に延びる長孔である。
【0023】
<<<分解状態>>>
図3に示すように、操作部材110は、軸線Ax1方向(Z軸方向)に分割される一対の回転板(第一回転板130、第二回転板150)から構成される。
第一及び第二回転板130,150は、夫々、面内中央部に回転中心となる軸支部131,151を有した概略円形状であり、ハンドル本体31によって正逆方向に回転可能に支持されている。第一及び第二回転板130,150には、軸線Ax1方向に結合することによりノブ113,113を形成するノブ部133,153…が、夫々、外径方向に突出形成されている。
【0024】
第二回転板150と対向する第一回転板130の一面(対向面130a)には、操作部材110内における操作用ワイヤ17A,17Bの通過経路を規定するワイヤガイド135が形成されている。ワイヤガイド135は、対向面130aから軸線Ax1方向に沿って起立するガイド面(突面)であり、軸支部131の周囲にオーバル状に(長円状)に形成されている。
なお、第一回転板130と対向する第二回転板150の面には、ワイヤガイド135を形成するオーバル状の突出部の起立方向の先端側を係合させるオーバル状の凹所155が形成されている。
【0025】
ワイヤガイド135は、スライダ190A,190Bとの間で操作用ワイヤ17A,17Bを夫々挟圧保持する挟圧面137A,137B(第一挟圧面、第二挟圧面)と、各挟圧面137A,137Bよりもハンドル30の先部側に位置すると共に両挟圧面137A,137Bに連続して形成された円弧状の壁面である長尺化部139と、各挟圧面137A,137Bよりもハンドル30の基部側に位置すると共に両挟圧面137A,137Bに連続して形成された円弧状の壁面である小径部140と、を備える。
挟圧面137A,137Bは、XY平面上では直線的に延在する。本例に示す2つの挟圧面137A,137Bは、同方向に並行して延びており、操作部材110が初期位置にあるときにハンドル30の長手方向(図中Y軸方向)に沿って延びるように配置される。
【0026】
円弧状の湾曲面である長尺化部139は、操作部材110を回転させたときに長尺化部139と接触する操作用ワイヤ17A,17Bの通過経路を長くする部位である。
操作部材110が初期位置にあるとき、ワイヤガイド135の長軸は、ハンドル30の長手方向に沿って延びる。軸支部131は、ワイヤガイド135の長軸の中心よりも基部寄りに形成されている。軸支部131から長尺化部139までの距離は、軸支部131からワイヤガイド135の他の部位までの距離よりも長くなるように設定されている。
操作部材110が初期位置にあるときには、操作用ワイヤ17A,17Bの湾曲量(変形量)が最も小さくなり、ワイヤ経路は最小となる。操作部材110を初期位置から何れかの方向に回転させると、一方の操作用ワイヤ17が長尺化部139と接触して、カテーテル本体10から引き出される当該操作用ワイヤ17の長さが増大する(図5(b)、(c)の操作用ワイヤ17A参照)。
【0027】
第一及び第二回転板130,150の面内には、接離ガイド121A,121Bを形成する矩形状のガイド長孔141(141A,141B)、161(161A,161B)が夫々貫通形成されている。ガイド長孔141,161の内壁は、内外径方向に直線的に延びるガイド側面143,163となっている。
第一回転板130のガイド長孔141は、挟圧面137に対して接近又は離間するように第一回転板130の径方向に形成されている。第一回転板130のガイド長孔141は、挟圧面137の直近位置から外径方向に向けて形成される。第二回転板150のガイド長孔161は、第一回転板130のガイド長孔141と対応する整合(連通)位置関係となるように形成される。
【0028】
なお、XY平面内におけるガイド長孔141,161(接離ガイド121)の延在方向と、各挟圧面137の延在方向とは、押子部材191が操作用ワイヤ17を挟圧する力を効率的に発揮させるために直交していることが望ましい。
【0029】
<<スライダ>>
図2に示すように、接離ガイド121内には、スライダ190が配置される。スライダ190は、軸方向(軸線Ax1に沿った方向)の一部位、ここでは軸方向の中間部位を接離ガイド121によって支持される。スライダ190は接離ガイド121内で操作部材110の内外径方向(図中矢印D方向)に進退移動する。操作用ワイヤ17A,17Bは、スライダ190A,190Bと挟圧面137A,137Bとの間に配置される。スライダ190は挟圧面137に接近したときに操作用ワイヤ17を挟圧面137との間で挟圧し、操作用ワイヤ17を回転板130に対して固定する。スライダ190は、操作部材110の回転に伴って、操作部材110の周方向(図中矢印E方向)に移動する。
なお、スライダ190の詳細構成については後述する。
【0030】
<<固定ガイド>>
図2に示すように、本例に示す操作機構100は、操作部材110を軸線Ax1方向に挟む一対の固定ガイド170A,170B(第一固定ガイド、第二固定ガイド)を備える。各固定ガイド170A,170Bは概略平板状であり、ハンドル本体31によって回転不能に支持される。
操作部材110と対向する各固定ガイド170A,170Bの面内には、軸線Ax1(軸支部171)を中心としてスライダ190を周方向に移動可能にガイドするガイド溝173が形成されている。
固定ガイド170Aのガイド溝173は、スライダ190の軸方向の一方の端部を支持し、固定ガイド170Bガイド溝173は、スライダ190の軸方向の他方の端部を支持する。
なお、操作機構100は少なくとも一方の固定ガイド170を備えていればよい。
ガイド溝173は、操作部材110の回転角度に応じて操作部材110と共に周方向に移動するスライダ190を、スライダ190の周方向位置に応じて接離ガイド121内の内外径方向の所定位置に移動させる。
【0031】
<<<ガイド溝の各領域>>>
図3に示すように、ガイド溝173は、周方向の一部に拘束領域175を備え、周方向の他部に非拘束領域177を備える。本例において拘束領域175はハンドル30内の基部側に位置し、非拘束領域177はハンドル30内の先部側に位置する。
【0032】
拘束領域175は、スライダ190を接離ガイド121(ガイド長孔141,161)の内周側、言い換えれば挟圧面137側に保持する領域である。拘束領域175は、軸線Ax1を中心とする所定半径の円弧状に形成される。拘束領域175は、スライダ190を挟圧面137に近接させる。スライダ190が拘束領域175に位置する場合、スライダ190は操作用ワイヤ17を挟圧面137との間で挟圧し、操作用ワイヤ17を拘束状態にする。
非拘束領域177は、スライダ190を挟圧面137から離間させる領域である。スライダ190が非拘束領域177に位置する場合、スライダ190は操作用ワイヤ17を非拘束状態にする。非拘束領域177のうち、拘束領域175に隣接する部位は、操作部材110の回転方向に応じてスライダ190を内外径方向に移動させる中間領域179である。また、中間領域179に連続して形成された非拘束領域177の他の部位は、スライダ190を外周側に退避した状態に維持する退避領域181である。
【0033】
<<スライダの詳細構成>>
図4(a)、(b)は、スライダを示す斜視図である。(a)はスライダを構成する各部材が結合(密着)した状態を示し、(b)はスライダを構成する各部材が分離した状態を示す。なお、図4中、軸線Ax1に沿った方向をスライダの軸方向として説明する。
スライダ190は、軸方向の中間部190a(一部位)を接離ガイド121の内壁によって操作部材110の径方向に進退可能に支持され、軸方向の各端部190b,190b(他部位)を固定ガイド170によって固定ガイド170の周方向に移動可能に支持されている。スライダ190は接離ガイド121内に挿通されている。
スライダ190は、挟圧面137との間で操作用ワイヤ17を挟圧する押圧面197を内径側に有し、接離ガイド121に対して相対回転不能、且つ接離ガイド121内を図2中矢印D方向に進退可能に構成された押子部材191と、押子部材191を間に挟んで挟圧面137とは反対側に配置されて、操作部材110の回転軸(軸線Ax1)方向に沿って伸びる回転基準軸Ax2を中心として図中矢印F方向に接離ガイド121内で相対回転可能、且つ接離ガイド121内を図2中矢印D方向に進退可能に構成された回転部材211と、を備える。
【0034】
<<<押子部材>>>
接離ガイド121内で挟圧面137側(内周側)に配置される押子部材191は、軸方向の中間部に配置された本体部193と、軸方向の両端部に配置されたガイド突起201,201とを備える。
本体部193は、外周側に半円柱状の係合凹所(係合摺動面)195が形成された概略直方体状である。本体部193は、内周側に挟圧面137との間で操作用ワイヤ17を挟圧する押圧面197を備える。本体部193のうち、径方向に沿って延びる側面は、第一回転板130のガイド側面143と第二回転板150のガイド側面163(内外径方向に延びる接離ガイド121の端面)と摺動する姿勢規制面199,199である。係合凹所195は、回転部材211と係合する半円柱状の凹所である。
押圧面197は、挟圧面137に対して操作用ワイヤ17を押圧することによって、挟圧面137との間で操作用ワイヤ17を挟圧、保持する。押圧面197は、挟圧面137と並行して延びるように形成された平坦面である。
姿勢規制面199は、押子部材191が接離ガイド121内で軸線Ax1方向に延びる仮想軸を中心として回転することを防止しつつ、接離ガイド121内を内外径方向に移動可能にする。
【0035】
ガイド突起201,201は、本体部193の軸方向の両端面から軸方向に突出形成されている。ガイド突起201,201は、少なくともスライダ190が固定ガイド170A,170Bに設けた中間領域179内を外径方向に移動するようにガイドされる際に、ガイド溝173の内周側に立設した内周側側面183(図3)と当接し、内周側側面183から外径方向への押圧力を受ける。当該押圧力によりスライダ190は外径方向に移動する。ガイド突起201,201は内周側に凸湾曲状に形成された湾曲面201aを有する。湾曲面201aは、内周側側面183との接触面積の低減による摺動抵抗の低減を図る形状である。
押子部材191は、挟圧面137との間で金属製の操作用ワイヤ17を挟圧、保持可能な耐久性を有する硬度を有する材料、例えば金属材料から構成される。
【0036】
<<<回転部材>>>
接離ガイド121内で挟圧面137とは反対側(外周側)に配置される回転部材211は、軸線Ax1と同方向に伸びる回転基準軸Ax2を有する概略円柱状である。回転部材211は、回転基準軸Ax2を中心として接離ガイド121内で回転しながら、接離ガイド121内を進退する。
【0037】
回転部材211は、軸方向の中間部に押子部材191の係合凹所195と係合する摺動部213を、軸方向の両端部に固定ガイド170のガイド溝173によってガイドされる環状の緩衝部215を備える。本例において、緩衝部215は摺動部213よりも大径である。
緩衝部215,215は、スライダ190が拘束領域175内をガイドされる際に、ガイド溝173の外周側に立設した外周側側面185(図3)と当接する。緩衝部215は、スライダ190がガイド溝173に沿って周方向に移動する際に、固定ガイド170の外周側側面185との間に働く摩擦力により図中矢印F方向に回転する。回転部材211は外周側側面185に沿ってガイド溝173内を転動する。緩衝部215は、固定ガイド170の外周側側面185から押子部材191を内径方向に押圧する押圧力を受ける。
摺動部213は、緩衝部215の回転により、係合凹所195と摺動しつつ、押子部材191を内径方向に押圧する。
回転部材211は、回転基準軸Ax2を中心として接離ガイド121内で自転し、軸線Ax1を中心としてガイド溝173に沿って公転する。
また、緩衝部215,215は、スライダ190が固定ガイド170A,170Bに設けた中間領域179内を内径方向に移動するようにガイドされる際に、ガイド溝173の外周側に立設した外周側側面185(図3)と当接し、外周側側面185から内径方向への押圧力を受ける。当該押圧力によりスライダ190は内径方向に移動する。
【0038】
摺動部213は、係合凹所195との間で良好な摺動性を有し、且つ耐摩耗性に優れた材料から構成される。摺動部213は例えばポリオキシメチレン(POM)から構成される。緩衝部215は、ガイド溝173の外周側側面185との間で高い摩擦力を発生させる材料から構成される。緩衝部215は、例えばゴム(シリコンゴム)から構成される。回転部材211は、POM製の円柱状部品の軸方向の両端部に、シリコンゴム製の環状部品を嵌合させることにより形成される。
【0039】
<<操作機構の動作>>
操作機構の動作と操作用ワイヤとの関係について、図4を参照しながら、図5及び図6に基づいて説明する。
図5(a)~(c)は、操作機構の動作を説明する透視平面図である。図6(a)~(c)は、操作機構の動作を説明する一部分解断面図である。図6(a)~(c)は夫々図5(a)~(c)のG1~G3断面に相当する。図5図6とも、(a)は操作部材110が初期位置(回転角度0度)にある状態を示し、(b)は操作部材110が初期位置から矢印B1方向に20度回転した状態を示し、(c)は操作部材110が初期位置から矢印B1方向に40度回転した状態を示す。
【0040】
図5(a)、図6(a)に示すように、操作部材110が初期位置にあるとき、両スライダ190A,190Bはガイド溝173内の非拘束領域177(中間領域179)に位置する。このとき、スライダ190A,190Bは挟圧面137A,137Bから離間しており、操作用ワイヤ17A,17Bを拘束しない。即ち、スライダ190A,190Bと挟圧面137A,137Bとによる操作用ワイヤ17A,17Bの挟圧保持が解除されている。偏向可能部11は、図1に示す初期姿勢を取る。スライダ190A,190Bは、操作用ワイヤ17A,17Bがハンドル本体31とカテーテル本体10との間で自由に移動することを許容する。
操作部材110が初期位置にあるとき、或いは操作用ワイヤ17A,17Bの挟圧保持が解除されているとき、スライダ190A,190Bは操作用ワイヤ17A,17Bと接触してもよいし、接触しなくてもよい。
【0041】
図5(b)、図6(b)に示すように、操作部材110が軸線Ax1を中心として初期位置から所定角度回転すると、一方のスライダ190Aはガイド溝173内の非拘束領域177(中間領域179)から拘束領域175に移動する。スライダ190Aの回転部材211は、図4に示す緩衝部215がガイド溝173の外周側側面185から内径方向(図中矢印D1方向)に受ける押圧力により、押子部材191を内径方向に押圧する。スライダ190Aの押圧面197は挟圧面137Aとの間で操作用ワイヤ17Aを挟圧し、操作用ワイヤ17Aを拘束する。また、操作用ワイヤ17Aは、ワイヤガイド135の長尺化部139と接触する。操作機構100は、操作部材110の回転量に応じた長さの操作用ワイヤ17Aを、カテーテル本体10から引き出す。偏向可能部11は、操作部材110の回転量に応じて図1(a)中矢印A1方向に偏向した偏向姿勢を取る。
他方のスライダ190Bはガイド溝173内の非拘束領域177(中間領域179)を退避領域181に向けて移動する。スライダ190Bの押子部材191は、図4に示すガイド突起201,201がガイド溝173の内周側側面183から外径方向(図中矢印D2方向)に押圧される。スライダ190Bは接離ガイド121B内を外径方向に移動して挟圧面137Bから更に離間するので、操作用ワイヤ17Bは非拘束状態に維持される。即ち、操作用ワイヤ17Bは、ハンドル本体31とカテーテル本体10との間で自由に移動できる。
【0042】
図5(c)、図6(c)に示すように、操作部材110が同方向に更に回転すると、一方のスライダ190Aは、操作部材110と共に拘束領域175内を周方向に移動する。スライダ190Aは、操作用ワイヤ17Aを拘束した状態に維持する。
スライダ190Aの回転部材211は、図4に示す緩衝部215が、操作用ワイヤ17Aの挟圧に必要な押圧力をガイド溝173の外周側側面185から受けつつ、外周側側面185に沿って転動する。回転部材211は回転するため、回転部材211の摺動部213が押子部材191の係合凹所195と摺動する。回転部材211は、操作用ワイヤ17Aの挟圧に必要な押圧力を押子部材191に伝達する。緩衝部215は弾性変形しつつ、回転部材211が外周側側面185から受ける振動や衝撃を吸収する緩衝機能を発揮して、外周側側面185から受ける押圧力をスムーズに押子部材191に伝達する。また、この緩衝機能により、操作部材110を滑らかに回転させることができる。押子部材191は、回転部材211から伝達される押圧力により、操作用ワイヤ17Aを挟圧面137Aとの間で挟圧保持する。
操作機構100は、操作部材110の回転量に応じた長さの操作用ワイヤ17Aを、カテーテル本体10から引き出す。操作用ワイヤ17Aは、ワイヤガイド135の長尺化部139と接触しているので、操作機構100内における操作用ワイヤ17Aの通過経路が長くなり、カテーテル本体10から大きく引き出される。偏向可能部11は、操作部材110の回転量に応じて図1(a)中矢印A1方向に偏向した偏向姿勢を取る。
他方のスライダ190Bは、中間領域179から退避領域181に移動する。スライダ190Bは操作部材110の回転量に応じて退避領域181内を周方向に移動する。スライダ190Bは挟圧面137Bから離間しているので、操作用ワイヤ17Bは非拘束状態に維持される。
【0043】
<第一実施形態の効果>
以上のように、本実施形態によれば、操作機構により操作用ワイヤをカテーテル本体から引き出す操作又は押し戻す操作をする場合には操作用ワイヤが拘束され、当該操作をしない場合には操作用ワイヤは拘束されない。
本実施形態に示すカテーテルにおいては、操作用ワイヤが拘束されていない状態でカテーテル本体を湾曲させると、カテーテル本体内に位置する操作用ワイヤの長さはカテーテル本体の湾曲姿勢に応じて変動する。操作用ワイヤが、湾曲したカテーテル本体の外周側に位置するルーメンに挿通されている場合は、カテーテル本体が直線的な姿勢を取る場合に比べて、カテーテル本体内に位置する操作用ワイヤの長さが長くなる。逆に、操作用ワイヤが、湾曲したカテーテル本体の内周側に位置するルーメンに挿通されている場合は、カテーテル本体が直線的な姿勢を取る場合に比べて、カテーテル本体内に位置する操作用ワイヤの長さが短くなる。
本実施形態においては、カテーテル本体の湾曲姿勢に応じた長さの操作用ワイヤがカテーテル本体内に位置する状態を出発点として、偏向可能部を湾曲変形させるために必要な量の操作用ワイヤをカテーテル本体から引き出すことが可能となる。従って、偏向可能部を目的とする患部において大きく湾曲変形させることが可能となる。
また、血管等、管状の構造を有する内臓器官を経由して、偏向可能部を目的とする患部に到達させるまでの間、操作用ワイヤを非拘束状態とできるため、カテーテル本体を血管等の湾曲形状に沿って湾曲変形させやすくなり、カテーテル本体の挿入性及び形状追従性が向上する。
【0044】
本実施形態に係るカテーテルは、2本の操作用ワイヤを備え、一方の操作用ワイヤが拘束状態にあるとき、他方の操作用ワイヤは非拘束状態となる。一方の操作用ワイヤがカテーテル本体から引き出されて偏向可能部が偏向操作されるときに、他方の操作用ワイヤは偏向可能部の湾曲変形に起因するカテーテル本体内のワイヤ経路長の変化に応じて、カテーテル本体内に引き込まれる。本実施形態によれば、複数の操作用ワイヤを備える場合に、偏向可能部をよりスムーズに偏向させることができる。
【0045】
なお、本例において操作部材110は、操作用ワイヤ17A,17Bと交差する軸線Ax1を中心に正方向又は逆方向に回転する構成であるが、操作部材110を、操作用ワイヤ17A,17Bの延在方向に進退する構成、即ち、基部方向又は先部方向に移動する構成としてもよい。
【0046】
<<操作用ワイヤ引張機構>>
操作用ワイヤ17の基端部(操作機構100よりも基部寄りの部位)は、ハンドル30内の適所によって支持されていなくてもよい。しかし、何らかの理由で操作用ワイヤ17がカテーテル本体10内で弛むと、操作機構100を操作して操作用ワイヤ17をカテーテル本体10から引き出したとしても、偏向可能部11を所望の湾曲形状に変形させることが困難となる。
そこで、カテーテル1は、非拘束状態にある操作用ワイヤ17に所定の張力を付与してカテーテル本体10内における操作用ワイヤ17の弛みを防止する手段を備えるとよい。
図2に示すカテーテル1は、操作用ワイヤ17A,17Bを基部方向(図中矢印H方向)に弾性付勢する引張バネ220(220A,220B)をハンドル30内に備える。引張バネ220A,220Bは、一部位220a,220a(基部)をハンドル本体31に設けたバネ支持部35,35により支持され、他部位220b,220b(先部)を操作用ワイヤ17A,17Bの基端部17b,17bに固定される。引張バネ220A,220Bの他部位220b,220bと操作用ワイヤ17A,17Bの基端部17b,17bとは、例えばボルト及びナットから構成される固定部材221,221を用いて固定される。
引張バネ220のバネ定数は、操作用ワイヤ17が非拘束状態にあるときに、カテーテル本体10の湾曲姿勢に応じた長さの操作用ワイヤ17がカテーテル本体10内に位置することを許容しつつ、カテーテル本体10内における操作用ワイヤ17の弛みを防止できるように設定される。なお、操作用ワイヤ17が拘束状態にあるときは、操作機構100よりも基端側に位置する操作用ワイヤ17に対して引張バネ220弾性付勢力が働かなくてもよい。即ち、操作用ワイヤ17が拘束状態にあれば、操作機構100よりも基端側に位置する操作用ワイヤ17の部分が弛んでいても構わない。
図示するカテーテル1は夫々の操作用ワイヤ17A,17Bに対応する引張バネ220A,220Bを備える構成であるが、カテーテルは単一の引張バネ220によって複数の操作用ワイヤ17A,17Bに所定の張力を付与する構成でもよい。
本実施形態によれば、操作用ワイヤ17を基部方向に弾性付勢することで、非拘束状態にある操作用ワイヤ17の弛みを防止するので、操作機構100の操作量に応じて偏向可能部11を適切な形状に湾曲変形可能となる。
【0047】
〔本発明の実施態様例と作用、効果のまとめ〕
<第一の実施態様>
本態様に係るカテーテル1は、カテーテル本体10と、カテーテル本体の基端部に装着されたハンドル本体31と、カテーテル本体内に挿通されて、カテーテル本体の適所に設けた偏向可能部11を偏向させる操作用ワイヤ17と、ハンドル本体に装着されて、偏向可能部を所定の初期姿勢から偏向した偏向姿勢に変形させるように操作用ワイヤを操作する操作機構100と、を備える。
操作機構は、ハンドル本体によって可動に支持された操作部材110と、操作用ワイヤが操作部材の動作に応じて操作されるように操作用ワイヤを操作部材に対して拘束する拘束位置と、操作用ワイヤを操作部材から解放する非拘束位置と、の間で操作部材の操作状態に応じて位置変位するスライダ190と、を備えることを特徴とする。
【0048】
本態様においては、操作用ワイヤが操作部材の動作に応じて操作される状態と、操作用ワイヤが操作部材の動作に関わらず操作されない状態とが、操作部材の操作状態に応じて切り替えられる。
操作用ワイヤが拘束されている状態では、操作用ワイヤは操作部材の操作状態に応じてカテーテル本体から引き出され、又は押し戻される。
操作用ワイヤが解放されている状態では、操作用ワイヤはカテーテル本体とハンドル本体との間を自由に移動できる。操作用ワイヤは、カテーテル本体の湾曲変形に起因するワイヤ経路長の変化に応じてハンドル本体側に移動し、又はカテーテル本体側に移動する。
このように、操作用ワイヤを操作する時のみ操作用ワイヤを拘束するので、カテーテル本体が血管等、管状の構造を有する内臓器官に沿って湾曲しても、偏向可能部の最大変形量(最大偏向量)は、カテーテル本体が直線的姿勢を取る場合と変わらない。また、経年変化によりカテーテル本体を構成する材料が収縮したとしても、偏向可能部の最大変形量を維持できる。
【0049】
<第二の実施態様>
本態様に係るカテーテル1において、操作部材110は、スライダ190との間で操作用ワイヤ17を挟圧保持する挟圧面137と、スライダを挟圧面に対して接近又は離間するようにスライダの一部位190aを支持する接離ガイド121と、を備えており、ハンドル本体31によって固定的に支持されて、操作部材の操作量に応じてスライダを接離ガイド内の所定位置に移動させるようにスライダの他部位190bを支持する固定ガイド170を備えることを特徴とする。
【0050】
本態様においては、スライダが固定ガイドと接離ガイドとにより支持されている。また、操作部材の操作方向(例:回転方向)と、スライダを挟圧面に接近・離間させる方向(例:回転方向と交差する半径方向)とが異なる。固定ガイドは、操作部材の操作方向を接近・離間方向に変換してスライダに伝達する。接離ガイドは、挟圧面に対するスライダの移動方向を制限する。
本態様によれば、異なる複数のガイドを用いて、操作部材の操作方向を変換してスライダを拘束位置と非拘束位置に変位させるので、操作用ワイヤが拘束される状態と、非拘束にされる状態とが連続的に切り替えられる。
【0051】
<第三の実施態様>
本態様に係るカテーテル1は、カテーテル本体10と、カテーテル本体の基端部に装着されたハンドル本体31と、カテーテル本体内に挿通されて、カテーテル本体の適所に設けた偏向可能部11を偏向させる操作用ワイヤ17と、ハンドル本体に装着されて、偏向可能部を所定の初期姿勢から偏向した偏向姿勢に変形させるように操作用ワイヤを操作する操作機構100と、を備える。
操作機構は、ハンドル本体によって回転可能に支持された回転板(操作部材110、第一回転板130)と、回転板の一面(対向面130a)から回転板の回転軸方向(軸線Ax1方向)に沿って起立する挟圧面137と、挟圧面に対して接近又は離間するように回転板に形成された接離ガイド121と、一部位190aを接離ガイドによって支持されて、挟圧面に接近したときに操作用ワイヤを挟圧面との間で挟圧保持するスライダ190と、ハンドル本体によって回転不能に支持されて、回転板の回転角度に応じてスライダを接離ガイド内の所定位置に移動させるようにスライダの他部位190bを支持する固定ガイド170と、を備えることを特徴とする。
【0052】
本態様においては、操作用ワイヤが回転板の動作に応じて操作される状態と、操作用ワイヤが回転板の動作に関わらず操作されない状態とが、回転板の操作状態に応じて切り替えられる。
操作用ワイヤが拘束されている状態では、操作用ワイヤは回転板の操作状態に応じてカテーテル本体から引き出され、又は押し戻される。
操作用ワイヤが解放されている状態では、操作用ワイヤはカテーテル本体とハンドル本体との間を、自由に移動できる。操作用ワイヤは、カテーテル本体の湾曲変形に起因するワイヤ経路長の変化に応じてハンドル本体側に移動し、又はカテーテル本体側に移動する。
このように、操作用ワイヤを操作する時のみ操作用ワイヤを拘束するので、カテーテル本体が血管等、管状の構造を有する内臓器官に沿って湾曲しても、偏向可能部の最大変形量(最大偏向量)は、カテーテル本体が直線的姿勢を取る場合と変わらない。また、経年変化によりカテーテル本体を構成する材料が収縮したとしても、偏向可能部の最大変形量を維持できる。
【0053】
本態様においては、スライダが固定ガイドと接離ガイドとにより支持されている。また、回転板の操作方向(回転方向)と、スライダを挟圧面に接近・離間させる方向(回転方向と交差する半径方向)とが異なる。固定ガイドは、回転板の操作方向を接近・離間方向に変換してスライダに伝達する。接離ガイドは、挟圧面に対するスライダの移動方向を制限する。
本態様によれば、異なる複数のガイドを用いて、回転板の操作方向を変換してスライダを拘束位置と非拘束位置に変位させるので、操作用ワイヤが拘束される状態と、非拘束にされる状態とが連続的に切り替えられる。
【0054】
<第四の実施態様>
本態様に係るカテーテル1において、スライダ190は、挟圧面137との間で操作用ワイヤ17を挟圧する押圧面197を有し、接離ガイド121に対して相対回転不能、且つ接離ガイド内を進退可能に構成された押子部材191と、該押子部材を間に挟んで挟圧面とは反対側に配置されて、回転板の回転軸方向に沿って伸びる回転基準軸Ax2を中心として接離ガイド内で相対回転可能、且つ接離ガイド内を進退可能に構成された回転部材211と、を備えることを特徴とする。
【0055】
本態様においては、スライダを、回転板の回転に伴って接離ガイド内で回転する回転部材と、回転部材からの押圧力を受けて操作用ワイヤを挟圧する押子部材と、を備える構成とした。本態様によれば、スライダによる操作用ワイヤの固定力を維持しながら、回転板を滑らかに回転させることができる。
【0056】
<第五の実施態様>
本態様に係るカテーテル1において、回転部材211は、固定ガイド170との間に働く摩擦力により回転する緩衝部215と、該回転により押子部材191と摺動する摺動部213と、を備えることを特徴とする。
【0057】
緩衝部は固定ガイドとの間に働く摩擦力により回転する。摺動部は、回転部材が回転する際に押子部材と摺動する。従って、回転部材は、回転板の回転に応じて回転しつつ固定ガイドに沿って滑らかに移動し、押子部材に対して滑らかに回転する。本態様によれば、スライダ190を滑らかに動作させることができる。
緩衝部は回転板の回転時に発生する振動や衝撃を吸収する緩衝機能を発揮して、固定ガイドから受ける押圧力を押子部材に伝達するので、回転板の操作時においても操作用ワイヤの固定力を適切に維持できる。
【0058】
<第六の実施態様>
本態様に係るカテーテル1において、操作用ワイヤ17の基端部17bには、カテーテル本体10内における操作用ワイヤの弛みを防止する弾性付勢部材(引張バネ220)が取り付けられていることを特徴とする。
【0059】
本態様によれば、操作用ワイヤを基部側に弾性付勢して操作用ワイヤの弛みを取るので、操作用ワイヤが非拘束状態にあるときに、カテーテル本体内に位置する操作用ワイヤの長さを適切に維持できる。従って、カテーテル本体の姿勢変化や経年変化に起因するカテーテル本体を構成する材料の収縮が発生しても、偏向可能部の最大変形量(最大偏向量)を適切に維持できる。
【0060】
<第七の実施態様>
本態様に係るカテーテル1は、カテーテル本体10と、カテーテル本体の基端部に装着されたハンドル本体31と、カテーテル本体内に挿通されて、カテーテル本体の適所に設けた偏向可能部11を偏向させる第一及び第二の操作用ワイヤ17A,17Bと、ハンドル本体に装着されて、偏向可能部を所定の初期姿勢から偏向した偏向姿勢に変形させるように第一及び第二の操作用ワイヤを操作する操作機構100と、を備える。
本態様に係るカテーテル1において、操作機構は、ハンドル本体によって正逆方向に回転可能に支持された回転板(操作部材110、第一回転板130)と、回転板の一面(対向面130a)から回転板の回転軸方向(軸線Ax1方向)に沿って起立する第一及び第二の挟圧面137A,137Bと、第一及び第二の挟圧面に対して夫々接近又は離間するように回転板に形成された第一及び第二の接離ガイド121A,121Bと、一部位190aを第一及び第二の接離ガイドによって夫々支持されて、第一及び第二の挟圧面に接近したときに第一及び第二の操作用ワイヤを夫々第一及び第二の挟圧面との間で挟圧保持する第一及び第二のスライダ190A,190Bと、ハンドル本体によって回転不能に支持されて、回転板の回転角度に応じて第一及び第二のスライダを第一及び第二の接離ガイド内の所定位置に夫々移動させるように第一及び第二のスライダの他部位190bを支持する固定ガイド170と、を備える。
本態様に係るカテーテル1において、固定ガイドは、第一のスライダ190Aが第一の操作用ワイヤ17Aを第一の挟圧面137Aとの間で挟圧保持するときに、第二のスライダ190Bと第二の挟圧面137Bとによる第二の操作用ワイヤ17Bの挟圧保持を解除するように構成されている。
【0061】
本実施態様は、第三の実施態様と同様の効果を奏する。
更に、本実施態様においては、第一及び第二の操作用ワイヤを備え、第一の操作用ワイヤが拘束状態にあるとき、第二の操作用ワイヤは非拘束状態となる。第一の操作用ワイヤがカテーテル本体から引き出されて偏向可能部が偏向操作されるときに、第二の操作用ワイヤは偏向可能部の湾曲変形に起因するカテーテル本体内のワイヤ経路長の変化に応じて、カテーテル本体内に引き込まれる。
従って、複数の操作用ワイヤを備える場合に、偏向可能部をよりスムーズに偏向させることができる。
【符号の説明】
【0062】
Ax1…軸線、Ax2…回転基準軸、
1…カテーテル、10…カテーテル本体、11…偏向可能部、13…ルーメン(ワイヤ用)、15…ルーメン(導線用)、17,17A,17B…操作用ワイヤ、17b…基端部、19A,19B…電極、21…導線、30…ハンドル、31…ハンドル本体、31A,31B…分割片、33…操作機構収容部、35…バネ支持部、
100…操作機構、
110…操作部材、111…軸支部、113…ノブ、115A…第一ワイヤ経路、115B…第二ワイヤ経路、121,121A,121B…接離ガイド、130…第一回転板、130a…対向面、131…軸支部、133…ノブ部、135…ワイヤガイド、137,137A,137B…挟圧面、139…長尺化部、140…小径部、141,141A,141B…ガイド長孔、143…ガイド側面、150…第二回転板、151…軸支部、153…ノブ部、155…凹所、161,161A,161B…ガイド長孔、163…ガイド側面、
170,170A,170B…固定ガイド、171…軸支部、173…ガイド溝、175…拘束領域、177…非拘束領域、179…中間領域、181…退避領域、183…内周側側面、185…外周側側面、
190,190A,190B…スライダ、190a…中間部、190b…端部、191…押子部材、193…本体部、195…係合凹所、197…押圧面、199…姿勢規制面、201…ガイド突起、201a…湾曲面、211…回転部材、213…摺動部、215…緩衝部、
220,220A,220B…引張バネ(弾性付勢部材)、220a…一部位、220b…他部位、221…固定部材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6