IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本碍子株式会社の特許一覧

特許7392208材料創出を支援するシステム及び方法、プログラム
<>
  • 特許-材料創出を支援するシステム及び方法、プログラム 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-27
(45)【発行日】2023-12-05
(54)【発明の名称】材料創出を支援するシステム及び方法、プログラム
(51)【国際特許分類】
   G16C 60/00 20190101AFI20231128BHJP
【FI】
G16C60/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023543391
(86)(22)【出願日】2023-03-09
(86)【国際出願番号】 JP2023009175
【審査請求日】2023-07-19
(31)【優先権主張番号】P 2022037335
(32)【優先日】2022-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木俣 貴文
(72)【発明者】
【氏名】冨田 崇弘
(72)【発明者】
【氏名】阿閉 恭平
(72)【発明者】
【氏名】森本 健司
(72)【発明者】
【氏名】惣川 真吾
(72)【発明者】
【氏名】加藤 泰輔
(72)【発明者】
【氏名】西脇 孝文
【審査官】岡北 有平
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-174473(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0098084(US,A1)
【文献】国際公開第2021/124392(WO,A1)
【文献】特表2023-507082(JP,A)
【文献】特開2020-57364(JP,A)
【文献】特開2019-10095(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16C 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)乃至(C)のサイクルをコンピュータにより行
(A)第2のデータソースから実験データを収集し、収集された実験データを整形し、整形された実験データにおける所定の一種類以上のデータを、既存の又は新たな第1のデータソースに含まれるデータであり前記一種類以上のデータの特徴量を含むデータである整理済データに変換する、
(B)定期的に又は問合せの受信の都度に、前記第1のデータソースから整理済データを取得し、当該整理済データを機械学習モデルに入力することにより得られた推論結果に基づくデータが表す製法レシピ、材料組成又は材料開発戦略を提示する、
(C)提示された製法レシピ、材料組成又は材料開発戦略に基づく実験により得られたデータである実験データを前記第2のデータソースに格納する、
前記サイクルにおいて既存の又は新たな第1のデータソースにおける更新された整理済データを用いて前記機械学習モデルを学習することをコンピュータにより実行し、
前記実験データ、前記整理済データ、及び、前記推論結果に基づくデータが、セラミックス材料に関するデータを含み、
前記所定の一種類以上のデータは、画像データを含み、
(A)では、コンピュータにより、前記画像データを解析し、その解析の結果を基に、前記画像データの特徴量計算を行って、前記画像データの特徴量を含んだ前記整理済データを得る、
材料創出支援方法。
【請求項2】
下記(A)乃至(C)のサイクルをコンピュータにより行い、
(A)第2のデータソースから実験データを収集し、収集された実験データを整形し、整形された実験データにおける所定の一種類以上のデータを、既存の又は新たな第1のデータソースに含まれるデータであり前記一種類以上のデータの特徴量を含むデータである整理済データに変換する、
(B)定期的に又は問合せの受信の都度に、前記第1のデータソースから整理済データを取得し、当該整理済データを材料創出支援モデルとしての機械学習モデルに入力することにより得られた推論結果に基づくデータが表す製法レシピ、材料組成又は材料開発戦略を提示する、
(C)提示された製法レシピ、材料組成又は材料開発戦略に基づく実験により得られたデータである実験データを前記第2のデータソースに格納する、
前記サイクルにおいて既存の又は新たな第1のデータソースにおける更新された整理済データを用いて前記機械学習モデルを学習することをコンピュータにより実行
前記実験データ、前記整理済データ、及び、前記推論結果に基づくデータが、セラミックス材料に関するデータを含み、
前記所定の一種類以上のデータは、画像データを含み、
(A)では、コンピュータにより、前記画像データを解析し、その解析の結果を基に、前記画像データの特徴量計算を行って、前記画像データの特徴量を含んだ前記整理済データを得る、
材料創出支援モデルの生成方法。
【請求項3】
データ変換部と、データ提示部と、データ取得部とを備え、
下記(A)乃至(C)のサイクルが行われ、
(A)前記データ変換部が、第2のデータソースから実験データを収集し、収集された実験データを整形し、整形された実験データにおける所定の一種類以上のデータを、既存の又は新たな第1のデータソースに含まれるデータであり前記一種類以上のデータの特徴量を含むデータである整理済データに変換する、
(B)前記データ提示部が、定期的に又は問合せの受信の都度に、前記第1のデータソースから整理済データを取得し、当該整理済データを機械学習モデルに入力することにより得られた推論結果に基づくデータが表す製法レシピ、材料組成又は材料開発戦略を提示する、
(C)前記データ取得部が、提示された製法レシピ、材料組成又は材料開発戦略に基づく実験により得られたデータである実験データを第2のデータソースに格納する、
前記データ提示部が、前記サイクルにおいて既存の又は新たな第1のデータソースにおける更新された整理済データを用いて前記機械学習モデルを学習することを実行し、
前記実験データ、前記整理済データ、及び、前記推論結果に基づくデータが、セラミックス材料に関するデータを含み、
前記所定の一種類以上のデータは、画像データを含み、
(A)では、前記データ変換部により、前記画像データを解析し、その解析の結果を基に、前記画像データの特徴量計算を行って、前記画像データの特徴量を含んだ前記整理済データを得る、
材料創出支援システム。
【請求項4】
下記(A)乃至(C)のサイクルをコンピュータに実行させ、
(A)第2のデータソースから実験データを収集し、収集された実験データを整形し、整形された実験データにおける所定の一種類以上のデータを、既存の又は新たな第1のデータソースに含まれるデータであり前記一種類以上のデータの特徴量を含むデータである整理済データに変換する、
(B)定期的に又は問合せの受信の都度に、前記第1のデータソースから整理済データを取得し、当該整理済データを機械学習モデルに入力することにより得られた推論結果に基づくデータが表す製法レシピ、材料組成又は材料開発戦略を提示する、
(C)提示された製法レシピ、材料組成又は材料開発戦略に基づく実験により得られたデータである実験データを前記第2のデータソースに格納する、
前記サイクルにおいて既存の又は新たな第1のデータソースにおける更新された整理済データを用いて前記機械学習モデルを学習することをコンピュータにより実行させ、
前記実験データ、前記整理済データ、及び、前記推論結果に基づくデータが、セラミックス材料に関するデータを含み、
前記所定の一種類以上のデータは、画像データを含み、
(A)では、前記画像データを解析し、その解析の結果を基に、前記画像データの特徴量計算を行って、前記画像データの特徴量を含んだ前記整理済データを得る、ことをコンピュータに実行させる、
コンピュータプログラム。
【請求項5】
下記(A)乃至(C)のサイクルをコンピュータに実行させ、
(A)第2のデータソースから実験データを収集し、収集された実験データを整形し、整形された実験データにおける所定の一種類以上のデータを、既存の又は新たな第1のデータソースに含まれるデータであり前記一種類以上のデータの特徴量を含むデータである整理済データに変換する、
(B)定期的に又は問合せの受信の都度に、前記第1のデータソースから整理済データを取得し、当該整理済データを機械学習モデルに入力することにより得られた推論結果に基づくデータが表す製法レシピ、材料組成又は材料開発戦略を提示する、
(C)提示された製法レシピ、材料組成又は材料開発戦略に基づく実験により得られたデータである実験データを前記第2のデータソースに格納する、
前記サイクルにおいて既存の又は新たな第1のデータソースにおける更新された整理済データを用いて前記機械学習モデルを学習することをコンピュータにより実行させる
コンピュータプログラムを記憶する記憶媒体であって、
前記実験データ、前記整理済データ、及び、前記推論結果に基づくデータが、セラミックス材料に関するデータを含み、
前記所定の一種類以上のデータは、画像データを含み、
前記コンピュータプログラムは、(A)で、前記画像データを解析し、その解析の結果を基に、前記画像データの特徴量計算を行って、前記画像データの特徴量を含んだ前記整理済データを得る、ことをコンピュータに実行させるコンピュータプログラムである、
記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、材料創出を支援する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
材料創出支援方法の一つとして、マテリアルズインフォマティクス(MI)が知られている。MIは、インフォマティクスの手法により材料創出を支援する方法であり、一般に、材料の構造や特性等に関するデータを集約し、機械学習を用いて、新たな構造又は特性を有する材料を探索する方法である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
例えば、有機材料に関しては、化学組成から分子の特性のシミュレーション(例えば第一原理計算)は容易である。このため、特性に関する高精度なシミュレーションデータを多く取得でき、故に、MIの適用が容易である。
【0004】
しかし、材料種類によっては、MIの適用が難しい。一つの理由として、材料の構造や特性等に関する高精度なシミュレーションデータの取得が困難であることが挙げられる。例えば、無機材料(セラミックス)に関しては、結晶粒子が多数集まった複雑な高次構造(例えば、粒径、粒度分布及び粒界相など)が特性に影響し、故に、特性のシミュレーションは困難である。このため、特性に関する高精度なシミュレーションデータを取得することは難しく、故に、MIの適用が難しい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
材料創出支援システムは、定期的に又は問合せの受信の都度に、第1のデータソースからデータを取得し、対象データを提示する。対象データは、取得されたデータと、当該データを機械学習モデルに入力することにより得られた推論結果に基づくデータとのうちの少なくとも一方である。
【0006】
材料創出支援システムは、当該対象データに基づく実験により得られたデータである実験データを第2のデータソースに格納する。材料創出支援システムは、第2のデータソースから実験データを取得し、当該実験データを既存の又は新たな第1のデータソースに含まれるデータに変換する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、対象データの提示が実施されればされる程に、提示された対象データに基づく実験により得られた実験データが取得される。提示される対象データは、取得された実験データに基づく。このため、創出対象の材料の種類が、構造や特性等に関する高精度なシミュレーションデータを得られる材料種類であるか否かに関わらず、材料創出に有用なデータが提示される可能性を高めることができる。結果として、インフォマティクスの手法による材料創出支援が可能な材料種類が拡張される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態におけるシステム構成の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の説明では、「インターフェース装置」は、1つ以上のインターフェースデバイスでよい。当該1つ以上のインターフェースデバイスは、下記のうちの少なくとも1つでよい。
・1つ以上のI/O(Input/Output)インターフェースデバイス。I/O(Input/Output)インターフェースデバイスは、I/Oデバイスと遠隔の表示用計算機とのうちの少なくとも1つに対するインターフェースデバイスである。表示用計算機に対するI/Oインターフェースデバイスは、通信インターフェースデバイスでよい。少なくとも1つのI/Oデバイスは、ユーザインターフェースデバイス、例えば、キーボード及びポインティングデバイスのような入力デバイスと、表示デバイスのような出力デバイスとのうちのいずれでもよい。
・1つ以上の通信インターフェースデバイス。1つ以上の通信インターフェースデバイスは、1つ以上の同種の通信インターフェースデバイス(例えば1つ以上のNIC(Network Interface Card))であってもよいし2つ以上の異種の通信インターフェースデバイス(例えばNICとHBA(Host Bus Adapter))であってもよい。
【0010】
また、以下の説明では、「メモリ」は、1つ以上の記憶デバイスの一例である1つ以上のメモリデバイスであり、典型的には主記憶デバイスでよい。メモリにおける少なくとも1つのメモリデバイスは、揮発性メモリデバイスであってもよいし不揮発性メモリデバイスであってもよい。
【0011】
また、以下の説明では、「永続記憶装置」は、1つ以上の記憶デバイスの一例である1つ以上の永続記憶デバイスでよい。永続記憶デバイスは、典型的には、不揮発性の記憶デバイス(例えば補助記憶デバイス)でよく、具体的には、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、NVME(Non-Volatile Memory Express)ドライブ、又は、SCM(Storage Class Memory)でよい。
【0012】
また、以下の説明では、「記憶装置」は、メモリと永続記憶装置の少なくともメモリでよい。
【0013】
また、以下の説明では、「プロセッサ」は、1つ以上のプロセッサデバイスでよい。少なくとも1つのプロセッサデバイスは、典型的には、CPU(Central Processing Unit)のようなマイクロプロセッサデバイスでよいが、GPU(Graphics Processing Unit)のような他種のプロセッサデバイスでもよい。少なくとも1つのプロセッサデバイスは、シングルコアでもよいしマルチコアでもよい。少なくとも1つのプロセッサデバイスは、プロセッサコアでもよい。少なくとも1つのプロセッサデバイスは、処理の一部又は全部を行うハードウェア記述言語によりゲートアレイの集合体である回路(例えばFPGA(Field-Programmable Gate Array)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)又はASIC(Application Specific Integrated Circuit))といった広義のプロセッサデバイスでもよい。
【0014】
また、以下の説明では、「yyy部」の表現にて機能を説明することがあるが、機能は、1つ以上のコンピュータプログラムがプロセッサによって実行されることで実現されてもよいし、1つ以上のハードウェア回路(例えばFPGA又はASIC)によって実現されてもよいし、それらの組合せによって実現されてもよい。プログラムがプロセッサによって実行されることで機能が実現される場合、定められた処理が、適宜に記憶装置及び/又はインターフェース装置等を用いながら行われるため、機能はプロセッサの少なくとも一部とされてもよい。機能を主語として説明された処理は、プロセッサあるいはそのプロセッサを有する装置が行う処理としてもよい。プログラムは、プログラムソースからインストールされてもよい。プログラムソースは、例えば、プログラム配布計算機又は計算機が読み取り可能な記録媒体(例えば非一時的な記録媒体)であってもよい。各機能の説明は一例であり、複数の機能が1つの機能にまとめられたり、1つの機能が複数の機能に分割されたりしてもよい。
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態を説明する。なお、以下の説明では、「MI」は、マテリアルズインフォマティクスの略であり、「DB」は、データベースの略である。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態におけるシステム構成の一例を示す。
【0017】
材料創出を支援する材料創出支援システム10が構築される。材料創出支援システム10は、物理的な計算機システムでもよいし、物理的な計算機システムに基づく論理的な計算機システムでもよいし、物理的な計算機システムの少なくとも一部と論理的な計算機システムの少なくとも一部との組合せでもよい。物理的な計算機システムは、一つ又は複数の物理計算機で構成されてよく、インターフェース装置、記憶装置及びそれらに接続されたプロセッサを備えてよい。論理的な計算機システムは、仮想マシンを含んでもよいし、クラウドコンピューティングサービスとしてのシステムを含んでもよい。
【0018】
材料創出支援システム10は、データ提示部50、データ取得部60及びデータ変換部70を有する。これらの機能50、60及び70は、コンピュータプログラムがプロセッサに実行されることにより実現されてよい。
【0019】
データ提示部50は、定期的に又は問合せの受信の都度に、データマート107からデータを取得し、対象データを提示する。以下、データマート107内のデータを、「整理済データ」と呼ぶ。対象データは、当該取得された整理済データと、当該整理済データを機械学習モデルに入力することにより得られた推論結果に基づくデータとのうちの少なくとも一方である。データマート107は、第1のデータソースの一例である。当該データとしては、セラミックス材料に関するデータを含むことが好ましい。
【0020】
データ取得部60は、当該対象データに基づく実験により得られたデータである実験データを電子実験ノート131、作製DB121及び評価DB122に格納する。電子実験ノート131、作製DB121及び評価DB122が、第2のデータソースの一例である。また、本実施形態において、「実験データ」とは、実験のサマリ、詳細、結果又は評価など実験に関わるデータでよい。
【0021】
データ変換部70は、電子実験ノート131、作製DB121及び評価DB122から実験データを取得し、当該実験データを既存の又は新たなデータマート107に含まれるデータに変換する。
【0022】
実験データに基づく整理済データが既存のデータマート107に格納された後、又は、実験データに基づく整理済データを含んだ新たなデータマート107が作成された後、対象データは、更新された又は新たに作成されたデータマート107、すなわち、過去に提示された対象データに基づき行われた実験の実験データの整理済データに基づいている。このため、創出対象の材料の種類が、構造や特性等に関する高精度なシミュレーションデータを得られる材料種類であるか否かに関わらず、材料創出に有用なデータが提示される可能性を高めることができる。結果として、インフォマティクスの手法による材料創出支援が可能な材料種類が拡張される。具体的には、例えば、創出対象の材料の種類が無機材料(セラミックス)であっても、材料創出に有用なデータを提示することができる。
【0023】
以下、本実施形態を詳細に説明する。
【0024】
材料創出支援システム10に関し、インターフェース装置は、実験システム110、データ取得部60及び研究者端末11Aの少なくとも一つと通信可能に接続されてよい。記憶装置には、電子実験ノート131、作製DB121、評価DB122、各種データ150、データレイク102及びデータマート107のうちの少なくとも一部のデータが格納されてよい。プロセッサは、コンピュータプログラムを実行することにより上述の機能50、60及び70を実現してよい。
【0025】
データ提示部50及びデータ変換部70が、MIプラットフォームシステム100に備えられる。データ取得部60は、MIプラットフォームシステム100の外(又は中)に備えられる。MIプラットフォームシステム100は、物理的な計算機システムでもよいし、論理的な計算機システムでもよいし、物理的な計算機システムの少なくとも一部と論理的な計算機システムの少なくとも一部との組合せでもよい。
【0026】
データ提示部50は、AI(Artificial Intelligence)部108及びIF(インターフェース)部109を有する。
【0027】
AI部108は、機械学習モデルの学習や、機械学習モデルを用いた推論を行う。機械学習モデルは、CNN,RNN,LSTMなどのニューラルネットワーク又はランダムフォレスト、勾配ブースティング、ロジスティック回帰、および、サポートベクタマシン(SVM)、強化学習モデルなどを含む他種の機械学習モデルでよい。AI部108は、例えばIF部109からの指示に応答して、データマート107から取得された整理済データを機械学習モデルに入力することにより得られた推論結果をIF部109に対し出力する。
【0028】
IF部109は、研究者端末11Aから問合せを受け、当該問合せに応答して対象データを研究者端末11Aに提示する。研究者端末11Aは、材料研究者5A(ユーザの一例)の情報処理端末(例えば、パーソナルコンピュータ又はスマートフォン)である。研究者端末11Aは、対象データの問合せの送信元の一例であり、また、対象データの提示先の一例である。IF部109は、研究者端末11Aから問合せを受けた場合に(又は定期的に)、対象データ(データマート107から取得された整理済データ、及び/又は、AI部108に指示することにより得られた推論結果に基づくデータ)を提示する。提示される対象データは、例えば、製法レシピ、材料組成又は材料開発戦略でよい。
【0029】
材料研究者5Aは、提示された対象データを基に、新材料を創出したり、対象データに基づく実験を行ったりする。対象データの提示先(送信先)は、研究者端末11Aに代えて又は加えて、実験システム110のようなシステムでもよい。
【0030】
材料研究者5Aにより、提示された対象データに基づき、実験システム110を用いた実験が行われる。例えば、実験システム110を用いた実験は、コンビナトリアル実験でよい。実験システム100は、一つ又は複数の装置、例えば、セラミックスの作製装置111(例えば、大気焼成炉)、及び、セラミックスの評価装置112(例えば、熱膨張率を評価する装置)を含んでよい。作製装置111及び評価装置112といった実験装置から実験データが出力される。出力された実験データは、データサーバ120に送信され格納される。また、コンビナトリアル実験は、実験の一例であり、コンビナトリアル実験に代えて又は加えて、ハイスループット実験、ロボットを用いた自動実験、及び、人手による作業が主体の実験、のうちの少なくとも一つが採用されてもよい。
【0031】
データ取得部60は、データサーバ120及び実験ノート部130を含む。
【0032】
データサーバ120は、実験システム110からの実験データが格納されるDBを管理する。データサーバ120が管理するDBは、実験装置の種類毎に存在してよい。例えば、作製装置111からの実験データが格納される作成DB121と、評価装置112からの実験データが格納される評価DB122とが管理されてよい。実験システム110からの実験データは、データサーバ120により構造化データとされ、DBに格納される。
【0033】
実験ノート部130は、データサーバ120が管理するDBから取得された実験データを電子実験ノート131として管理する。電子実験ノート131は、構造化されたデータ、例えばDBである。
【0034】
データ変換部70が、収集部101、特徴量計算部103、画像解析部104、自然言語解析部105及び整理部106を有する。
【0035】
収集部101は、電子実験ノート131やデータサーバ120のDBから実験データを収集し、収集された実験データを整形して、整形された実験データをデータレイク102に格納する。ここで言う「整形」とは、実験データの構成を所定の構成に整えることである。
【0036】
また、収集部101は、各種データ150を収集してよい。各種データ150は、実験データを含んでよい。具体的には、例えば、各種データ150は、過去実験の数値データ、有償又は無償で利用可能な材料データベース、過去の実験(例えば、実験内容及び実験結果)を表す言語データ、シミュレーション等の計算により得られた材料データ、及び、特許文献や論文の言語データ、の少なくとも一つを含んでよい。各種データ150のデータソースは一つ以上存在してよい。例えば、過去実験の数値データのデータソースと特許文献や論文の言語データのデータソースは異なっていてよい。
【0037】
特徴量計算部103は、整形された実験データにおける所定の一種類以上のデータの特徴量を算出する。これにより、当該一種類以上のデータの各々が数値化され、結果として、AI部108による処理が可能となる。例えば、一種類以上のデータは、画像データとテキストデータでよい。画像データは、画像解析部104により解析され、その解析の結果を基に、特徴量計算部103が、画像データの特徴量計算を行う。また、テキストデータは、自然言語解析部105によりテキストマイニングされ、そのテキストマイニングの結果を基に、特徴量計算部103が、テキストデータの特徴量計算を行う。特徴量計算には、上記のニューラルネットワークを用いてもよい。データレイク102内に、実験データの複製が生成され、当該複製における所定の一種類以上のデータの各々が、計算された特徴量(数値)に変換されてよい。
【0038】
整理部106が、データレイク102を、所定の条件に適合するデータ集合としての一つ又は複数のデータマート107に整理する。例えば、AI部108非経由で対象データの少なくとも一部として提示され得る整理済データを含んだデータマート107と、AI部108経由で対象データの少なくとも一部として提示され得る整理済データを含んだデータマート107とが生成されてよい。
【0039】
このように、MIプラットフォームシステム100に収集され整形された実験データに基づく整理済データが用意され、整理済データを基に対象データがMIプラットフォームシステム100により材料研究者5Aに提示される。
【0040】
また、材料研究者5Aに対するデータの提示は、MIプラットフォームシステム100非経由に行われてもよい。例えば、別の材料研究者5Bが、研修者端末11Bを用いて、電子実験ノート131から実験データを取得し、当該実験データを整理して、AI部140に入力してよい。AI部140は、研修者端末11Bの外(又は中)に実現されてよい。AI部140も、AI部108と同様に、入力された整理済データを機械学習モデルに入力することで推論を行ってよい。この推論の結果に基づくデータが材料研究者5Aに提示されてよい。この提示されたデータを基に材料研究者5Aが実験を行ってもよい。この実験のデータも、実験システム110からデータサーバ120に格納され、MIプラットフォームシステム100に収集されてよい。
【0041】
研究者端末11Aの中又は外に実現される所定の機能により、提示された対象データに基づく実験が促進されてよい。例えば、当該機能が、材料研究者5Aに対し、どのような実験を推奨するかを決定し、決定した事項を材料研究者5Aに提示してよい。或いは、対象データが、どのような実験を推奨するかを表すデータを含んでよい。
【0042】
上述の実施形態によれば、対象データの提示→実験→実験データの収集→実験データの整理済データへの変換→整理済データに基づく対象データの提示といったサイクルを高効率且つ高速に行うことが期待できる。このように、実験データを主体としたMIが実現される。このため、構造や特性に関する高精度なシミュレーションデータを取得することが困難な材料種類の材料、例えば、セラミックスの複雑な高次構造の材料の創出を支援することができる。
【0043】
また、上述した実施形態によれば、MIプラットフォームシステム100を提供する組織(例えば企業)の内部又は外部の種々のデータをMIプラットフォームシステム100に集約し構造化して管理しデータマート107に反映できる。このため、提示される対象データが材料創出に有用である可能性がより高まる。
【0044】
以上、一実施形態を説明したが、これは本発明の説明のための例示であって、本発明の範囲をこの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。本発明は、他の種々の形態でも実行することが可能である。例えば、上述の説明を基に下記の表現が可能である。下記の表現は、上述の説明の補足説明又は変形例の説明を含んでよい。
<表現1>
定期的に又は問合せの受信の都度に、第1のデータソースからデータを取得し、当該データと、当該データを機械学習モデルに入力することにより得られた推論結果に基づくデータとのうちの少なくとも一方である対象データを提示するデータ提示部(50)と、
当該対象データに基づく実験により得られたデータである実験データを第2のデータソースに格納するデータ取得部(60)と、
前記第2のデータソースから実験データを取得し、当該実験データを既存の又は新たな第1のデータソースに含まれるデータに変換するデータ変換部(70)と
を備える材料創出支援システム。
<表現2>
前記第1のデータソースから取得されたデータ、前記提示された対象データ、前記実験データ、及び、前記既存の又は新たな第1のデータソースに含まれるデータ、のうちの少なくとも一つのデータが、セラミックス材料に関するデータを含む、
表現1に記載の材料創出支援システム。
<表現3>
(A)定期的に又は問合せの受信の都度に、第1のデータソースからデータを取得し、当該データと、当該データを機械学習モデルに入力することにより得られた推論結果に基づくデータとのうちの少なくとも一方である対象データを提示し、
(B)当該対象データに基づく実験により得られたデータである実験データを第2のデータソースに格納し、
(C)前記第2のデータソースから実験データを取得し、当該実験データを既存の又は新たな第1のデータソースに含まれるデータに変換する、
材料創出支援方法。
<表現4>
前記機械学習モデルは、前記実験データの取得によって既存の又は新たな第1のデータソースに含まれる更新されたデータを取得し、パラメータを学習する、
表現3に記載の材料創出支援方法。
具体的には、例えば、次の通りである。(C)により取得された実験データ(例えばデータ変換部70により取得された実験データ)を基に、既存のデータマート107内のデータが更新される、又は、当該取得された実験データに基づくデータを含んだ新たなデータマート107が生成される。このため、既存の又は新たなデータマート107が、当該取得された実験データに基づくデータである更新データを含むこととなる。AI部108が、更新データをデータマート107から取得し、当該AI部108が使用する機械学習モデルのパラメータを学習(例えば、更新)してよい。
<表現5>
既存又は新たな実験データを収集し、第1のデータソースに含まれるデータに変換し、
定期的に又は問合せの受信の都度に、第1のデータソースからデータを取得し、当該データと、当該データを機械学習モデルに入力することにより得られた推論結果に基づくデータとのうちの少なくとも一方である対象データを提示する、
材料創出支援方法。
例えば、この材料創出支援方法は、MIプラットフォームシステム100により行われてよい。別の言い方をすれば、材料創出支援システム10は、データ提示部50及びデータ変換部70を有しデータ取得部60を有していなくてもよい。
<表現6>
前記第1のデータソースから取得されたデータ、前記提示された対象データ、前記実験データ、前記既存の又は新たな第1のデータソースに含まれるデータ、及び、前記推論結果に基づくデータ、のうちの少なくとも一つのデータが、セラミックス材料に関するデータを含む、
表現3~5の何れか一つの表現に記載の材料創出支援方法。
<表現7>
(A)定期的に又は問合せの受信の都度に、第1のデータソースからデータを取得し、当該データと、当該データを機械学習モデルに入力することにより得られた推論結果に基づくデータとのうちの少なくとも一方である対象データを提示し、
(B)当該対象データに基づく実験により得られたデータである実験データを第2のデータソースに格納し、
(C)前記第2のデータソースから実験データを取得し、当該実験データを既存の又は新たな第1のデータソースに含まれるデータに変換し、
(D)前記(C)の第1のデータソースに含まれる学習用データを用いて、製法レシピ又は材料組成を示す推奨推論結果を出力する機械学習モデルの学習処理を実行する、
材料創出支援モデルの生成方法。
<表現8>
前記第1のデータソースから取得されたデータ、前記提示された対象データ、前記実験データ、前記既存の又は新たな第1のデータソースに含まれるデータ、前記学習用データ、及び、前記推奨推論結果を表すデータ、のうちの少なくとも一つのデータが、セラミックス材料に関するデータを含む、
表現7に記載の材料創出支援モデルの生成方法。
<表現9>
表現3~6の何れか一つの表現に記載の材料創出支援方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
<表現10>
表現7又は8に記載の材料創出支援モデルの生成方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【符号の説明】
【0045】
10…材料創出支援システム
【要約】
材料創出支援システムは、定期的に又は問合せの受信の都度に、第1のデータソースからデータを取得し、対象データを提示する。対象データは、取得されたデータと、当該データを機械学習モデルに入力することにより得られた推論結果に基づくデータとのうちの少なくとも一方である。材料創出支援システムは、当該対象データに基づく実験により得られたデータである実験データを第2のデータソースに格納する。材料創出支援システムは、第2のデータソースから実験データを取得し、当該実験データを既存の又は新たな第1のデータソースに含まれるデータに変換する。
図1