(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20231129BHJP
B32B 27/40 20060101ALI20231129BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20231129BHJP
C09J 7/30 20180101ALI20231129BHJP
C09J 175/06 20060101ALI20231129BHJP
C09D 11/00 20140101ALI20231129BHJP
【FI】
B32B27/00 C
B32B27/40
B65D65/40 D
C09J7/30
C09J175/06
C09D11/00
(21)【出願番号】P 2023011569
(22)【出願日】2023-01-30
【審査請求日】2023-06-16
(31)【優先権主張番号】P 2022088182
(32)【優先日】2022-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】396009595
【氏名又は名称】東洋モートン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】711004436
【氏名又は名称】東洋インキ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】野田 寛樹
(72)【発明者】
【氏名】内山 裕清
(72)【発明者】
【氏名】大島 良太
(72)【発明者】
【氏名】高位 博明
(72)【発明者】
【氏名】小藤 通久
【審査官】深谷 陽子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/039559(WO,A1)
【文献】特開2020-146912(JP,A)
【文献】特開2021-165322(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00- 43/00
B65D 65/00- 65/46
C09J 1/00-201/10
C09D 11/00- 13/00
B05D 1/00- 7/26
C08G 18/00- 18/87、 71/00- 71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基材層、インキ層、接着剤層、及び第2の基材層をこの順に備える積層体の製造方法であって、以下の工程(1)~(3)を有することを特徴とする積層体の製造方法。
工程(1):第1の基材上に、着色剤と体質顔料とを質量比(着色剤:体質顔料)98:2~50:50の範囲で含む水性インキ(A)をフレキソ印刷して、インキ層を形成する工程。
工程(2):重量平均分子量が1,000~5,000であり、ポリエステルポリオール由来の構成単位を有するポリイソシアネート(b2)を得て、ポリオール(b1)と上記ポリイソシアネート(b2)とから無溶剤型接着剤(B)を得る工程。
工程(3):前記インキ層上に、前記無溶剤型接着剤(B)を塗工して接着剤層を形成する工程。
【請求項2】
前記水性インキ(A)が、イオン性基を有するウレタン樹脂を含み、前記イオン性基が、アンモニア及び有機アミンからなる群より選ばれる少なくとも一種の塩基で中和されている、請求項1に記載の積層体の製造方法。
【請求項3】
前記無溶剤型接着剤(B)が、さらに、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネートを含む、請求項1又は2に記載の積層体の製造方法。
【請求項4】
前記ポリイソシアネート(b2)が、さらに、ポリエーテルポリオール由来の構成単位を有する、請求項1又は2に記載の積層体の製造方法。
【請求項5】
前記ポリエーテルポリオールが、2官能ポリエーテルポリオールである、請求項4に記載の積層体の製造方法。
【請求項6】
前記ポリオール(b1)が、ポリエーテルポリオール及びポリエステルポリオールを含む、請求項1又は2に記載の積層体の製造方法。
【請求項7】
前記ポリイソシアネート(b2)が、芳香族ポリイソシアネート由来の構成単位を有する、請求項1又は2に記載の積層体の製造方法。
【請求項8】
前記芳香族ポリイソシアネートが、2,4-ジフェニルメタンジイソシアネート及び/又は4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートである、請求項7に記載の積層体の製造方法。
【請求項9】
前記インキ層が、ウレタン樹脂及びアセチレングリコール系化合物を含む、請求項1又は2に記載の積層体の製造方法。
【請求項10】
前記インキ層は、表面の最小自己相関長さ(Sal)が10[μm]以下である、請求項1又は2に記載の積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の基材層、水性インキを用いて形成された水性インキ層、接着剤層、及び第2の基材層をこの順に備える積層体であって、残タック抑制性能に優れる積層体に関し、より詳細には食品、医療品、化粧品等の包装に用いる包装材料に適した積層体、該積層体の製造方法、並びに該積層体を用いた包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品、医療品、化粧品等の包装に用いる包装材料として、少なくともインキ層及び接着剤層が2つの基材間に配置された積層体が好適に用いられている。そして、環境負荷低減の観点から、上記インキ層及び接着剤層を、有機溶剤を含まない若しくは有機溶剤の含有量が非常に少ないインキ及び接着剤を用いて形成することが検討されている。
【0003】
上記状況において、例えば特許文献1には、水性リキッドインキを用いて形成された印刷層と、ポリエステルポリオールとポリエステルポリウレタンポリイソシアネートとを含む無溶剤型ガスバリア性接着剤を用いて形成された接着剤層と、を備える積層体が開示されている。
また、例えば特許文献2には、特定の水性インキから形成された水性インキ層と、ポリエステルポリオール及びXDIとHDIとを含むポリイソシアネート成分を含む無溶剤型ウレタン接着剤を用いて形成された接着剤層と、を備える積層フィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-168837号公報
【文献】特開2021-66031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、一般的に溶剤を含まない無溶剤型接着剤は、塗工性を確保するために、含有する化合物の分子量を低く設定することで低粘度化を実現している。そのため、インキ層上に塗布した際に接着剤中の低分子量成分がインキ層に浸透しやすい、若しくは、インキ層中の成分が接着剤層に浸透しやすいため、積層体の接着強度、ヒートシール強度、ラミネート外観等の物性が低下するという課題がある。
また、水性インキを用いて形成された水性インキ層は、溶剤インキを用いた溶剤インキ層に比べて、水分や水酸基成分が残留しやすい。そのため、水性インキ層上に接着剤を塗布すると、残留水分及び水酸基成分が、接着剤中のイソシアネート成分を消費し、接着剤のウレタン化反応による高分子量化を阻害する。これにより、接着剤層の凝集力が低下し、接着強度、ヒートシール強度、ラミネート外観といった物性が低下し易い、という課題がある。また、硬化後の接着剤の分子量が十分に高くないため、接着剤層の粘性が高くなり、剥離した後の接着剤層はタックが残りやすい(残タック)という課題がある。
【0006】
そして、特許文献1に記載の無溶剤型接着剤は、接着剤に含まれるポリイソシアネート組成物を構成するポリエステル中間体の数平均分子量が800と小さく、ジイソシアネートとの反応後も数平均分子量は1,000未満であるため、水性インキ層に浸透しやすいという課題がある。さらに、水性インキ層中の残留水分及び水酸基成分と、接着剤中のイソシアネート成分とが反応することにより、硬化後接着剤の高分子量化が阻害されるため、残タックの課題を解決することができない。
また、特許文献2に記載の無溶剤型接着剤は、ポリイソシアネート成分としてXDIとHDIとを用いるのみであり、硬化後の接着剤層の凝集力が低く、残タックの課題を解決することができない。
【0007】
なお、前述するように、無溶剤型接着剤に含まれる化合物の分子量を高くすることで、硬化後の接着剤層の凝集力を上げることは可能だが、通常、接着剤の粘度が高くなるため塗布直後の塗工面が粗くなり外観が大きく低下する。また、接着剤の粘度が高くなることにより気泡の噛み込み量が増加し、外観が大きく低下する。
【0008】
したがって本発明の目的は、昨今の環境問題を鑑み水性インキを用いた水性インキ層及び無溶剤型接着剤を用いた接着剤層を備える積層体において、接着剤層の残タックが抑制され、且つ外観に優れる積層体、該積層体の製造方法、並びに該積層体を用いた包装体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る積層体は、第1の基材層、インキ層、接着剤層、及び第2の基材層をこの順に備える積層体であって、前記インキ層が、水性インキ(A)を用いて形成された層であり、前記接着剤層が、無溶剤型接着剤(B)を用いて形成された層であり、前記無溶剤型接着剤(B)は、ポリオール(b1)及びポリイソシアネート(b2)を含み、前記ポリイソシアネート(b2)は、重量平均分子量が1,000~5,000であり、ポリエステルポリオール由来の構成単位を有することを特徴とする。
【0010】
本発明の一態様に係る積層体は、前記水性インキ(A)は、該水性インキ(A)を用いて形成されたインキ層表面の最小自己相関長さ(Sal)が10[μm]以下であることを特徴とする。
【0011】
本発明の一態様に係る積層体は、前記ポリイソシアネート(b2)が、芳香族ポリイソシアネート由来の構成単位を有することを特徴とする。
【0012】
本発明の一態様に係る積層体は、前記芳香族ポリイソシアネートが、2,4-ジフェニルメタンジイソシアネート及び/又は4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートであることを特徴とする。
【0013】
本発明の一態様に係る積層体は、前記ポリイソシアネート(b2)が、さらに、ポリエーテルポリオール由来の構成単位を有することを特徴とする。
【0014】
本発明の一態様に係る積層体は、前記ポリエーテルポリオールが、2官能ポリエーテルポリオールであることを特徴とする。
【0015】
本発明の一態様に係る積層体は、前記無溶剤型接着剤(B)が、さらに、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネートを含むことを特徴とする。
【0016】
本発明の一態様に係る積層体は、前記インキ層が、ウレタン樹脂及びアセチレングリコール系化合物を含むことを特徴とする。
【0017】
本発明の一態様に係る積層体は、前記インキ層が、体質顔料を含むことを特徴とする。
【0018】
本発明の一態様に係る包装体は、前記記載の積層体を使用したことを特徴とする。
【0019】
本発明の一態様に係る積層体の製造方法は、第1の基材層、インキ層、接着剤層、及び第2の基材層をこの順に備える積層体の製造方法であって、以下の工程(1)及び(2)を有することを特徴とする。
工程(1):第1の基材上に水性インキ(A)をフレキソ印刷して、表面の最小自己相関長さ(Sal)が10[μm]以下であるインキ層を形成する工程。
工程(2):前記インキ層上に、以下の無溶剤型接着剤(B)を塗工して接着剤層を形成する工程。
無溶剤型接着剤(B):ポリオール(b1)及びポリイソシアネート(b2)を含み、前記ポリイソシアネート(b2)は、重量平均分子量が1,000~5,000であり、ポリエステルポリオール由来の構成単位を有する。
【0020】
本発明の一態様に係る積層体の製造方法は、第1の基材層、インキ層、接着剤層、及び第2の基材層をこの順に備える積層体の製造方法であって、以下の工程(1)~(3)を有することを特徴とする。
工程(1):第1の基材上に、着色剤と体質顔料とを質量比(着色剤:体質顔料)98:2~50:50の範囲で含む水性インキ(A)をフレキソ印刷して、インキ層を形成する工程。
工程(2):重量平均分子量が1,000~5,000であり、ポリエステルポリオール由来の構成単位を有するポリイソシアネート(b2)を得て、ポリオール(b1)と上記ポリイソシアネート(b2)とから無溶剤型接着剤(B)を得る工程。
工程(3):前記インキ層上に、前記無溶剤型接着剤(B)を塗工して接着剤層を形成する工程。
【0021】
本発明の一態様に係る積層体の製造方法は、前記水性インキ(A)が、イオン性基を有するウレタン樹脂を含み、前記イオン性基が、アンモニア及び有機アミンからなる群より選ばれる少なくとも一種の塩基で中和されていることを特徴とする。
【0022】
本発明の一態様に係る積層体の製造方法は、前記無溶剤型接着剤(B)が、さらに、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネートを含むことを特徴とする。
【0023】
本発明の一態様に係る積層体の製造方法は、前記ポリイソシアネート(b2)が、さらに、ポリエーテルポリオール由来の構成単位を有することを特徴とする。
【0024】
本発明の一態様に係る積層体の製造方法は、前記ポリエーテルポリオールが、2官能ポリエーテルポリオールであることを特徴とする。
【0025】
本発明の一態様に係る積層体の製造方法は、前記ポリオール(b1)が、ポリエーテルポリオール及びポリエステルポリオールを含むことを特徴とする。
【0026】
本発明の一態様に係る積層体の製造方法は、前記ポリイソシアネート(b2)が、芳香族ポリイソシアネート由来の構成単位を有することを特徴とする。
【0027】
本発明の一態様に係る積層体の製造方法は、前記芳香族ポリイソシアネートが、2,4-ジフェニルメタンジイソシアネート及び/又は4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートであることを特徴とする。
【0028】
本発明の一態様に係る積層体の製造方法は、前記インキ層が、ウレタン樹脂及びアセチレングリコール系化合物を含むことを特徴とする。
【0029】
本発明の一態様に係る積層体の製造方法は、前記インキ層の表面の最小自己相関長さ(Sal)が10[μm]以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
本発明により、水性インキを用いた水性インキ層及び無溶剤型接着剤を用いた接着剤層を備える積層体において、接着剤層の残タックが抑制され、且つ外観に優れる積層体、該積層体の製造方法、並びに該積層体を用いた包装体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の積層体は、第1の基材、インキ層、接着剤層、及び第2の基材をこの順に備える積層体であって、インキ層が、水性インキ(A)を用いて形成された層であり、接着剤層が、無溶剤型接着剤(B)を用いて形成された層であり、無溶剤型接着剤(B)は、ポリオール(b1)及びポリイソシアネート(b2)を含み、ポリイソシアネート(b2)は、重量平均分子量が1,000~5,000であり、ポリエステルポリオール由来の構成単位を有する、ことを特徴とする。
上記無溶剤型接着剤(B)を構成するポリイソシアネート成分として、重量平均分子量が1,000~5,000であり、ポリエステルポリオール由来の構成単位を有するポリイソシアネートを用いることで、接着剤層の凝集力が向上し、外観性能を損なうことなく、優れた残タック抑制性能を発揮することができる。
また本発明の積層体の製造方法は、第1の基材層、インキ層、接着剤層、及び第2の基材層をこの順に備える積層体の製造方法であって、以下の工程(1)~(3)を有することを特徴とする。
工程(1):第1の基材上に、着色剤と体質顔料とを質量比(着色剤:体質顔料)98:2~50:50の範囲で含む水性インキ(A)をフレキソ印刷して、インキ層を形成する工程。
工程(2):重量平均分子量が1,000~5,000であり、ポリエステルポリオール由来の構成単位を有するポリイソシアネート(b2)を得て、ポリオール(b1)と上記ポリイソシアネート(b2)とから無溶剤型接着剤(B)を得る工程。
工程(3):前記インキ層上に、前記無溶剤型接着剤(B)を塗工して接着剤層を形成する工程。
【0032】
〔接着剤層〕
本発明における接着剤層は、無溶剤型接着剤(B)を用いて形成された層であり、無溶剤型接着剤(B)は、ポリオール(b1)及びポリイソシアネート(b2)を含み、前記ポリイソシアネート(b2)は、重量平均分子量が1,000~5,000であり、ポリエステルポリオール由来の構成単位を有することを特徴とする。
【0033】
<ポリオール(b1)>
無溶剤型接着剤(B)を構成するポリオール(b1)は、水酸基を2つ以上有する化合物であればよく、公知のポリオールから選択することができる。ポリオールとしては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール、シリコーンポリオール、蓖麻子油系ポリオール、フッ素系ポリオールが挙げられる。これらのポリオール(b1)は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ポリオール(b1)は、基材へのレベリング性と接着性能向上の観点から、好ましくはポリエーテルポリオール又はポリエステルポリオールを含み、より好ましくはポリエステルポリオールを含み、さらに好ましくはポリエーテルポリオール及びポリエステルポリオールの双方を含む。
【0034】
(ポリエーテルポリオール)
ポリエーテルポリオールは、水酸基とエーテル結合とを分子内に各々2つ以上有する化合物であればよく、2官能ポリエーテルポリオール、3官能以上のポリエーテルポリオールのいずれであってもよい。これらのポリエーテルポリオールは、1種を単独で用いても
よく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
2官能のポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリブチレングリコールのようなポリアルキレングリコール;ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコールブロック共重合体;プロピレンオキサイド・エチレンオキサイドランダムポリエーテル;が挙げられる。また、水、エチレングリコール、プロピレングリコール等の低分子量ポリオール開始剤に、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、テトラヒドロフラン等のオキシラン化合物を付加重合した付加重合体をポリエーテルポリオールとして用いてもよい。該付加重合体としては、例えば、プロピレングリコールプロピレンオキサイド付加体が挙げられる。
【0036】
3官能以上のポリエーテルポリオールとしては、例えば、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、スクロースのような低分子量のポリオールを開始剤として、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン、エチルグリシジルエーテル、プロピルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテルのような種々の環状エーテル結合含有化合物を開環重合して得られる変性ポリエーテルポリオール;前記脂肪族ポリオールと、ε-カプロラクトンのような種々のラクトン類との重縮合反応によって得られるラクトン系ポリエステルポリオール;が挙げられる。
【0037】
塗膜柔軟性と樹脂相溶性との観点から、ポリエーテルポリオールの数平均分子量は、好ましくは400~2,000である。数平均分子量が400以上であると、接着剤における高分子鎖の柔軟性が増すため好ましい。数平均分子量が2,000以下であると、イソシアネート成分との相溶性が向上し、ウレタン化反応が容易に進行するため好ましい。
【0038】
(ポリエステルポリオール)
ポリエステルポリオールとしては、例えば、カルボキシ基成分と水酸基成分とを反応させて得られるポリエステルポリオール;ポリカプロラクトン、ポリバレロラクトン、ポリ(β-メチル-γ-バレロラクトン)等のラクトン類を開環重合して得られるポリエステルポリオール;が挙げられる。
上記カルボキシ基成分として好ましくは、両末端に1級水酸基を有する多価カルボン酸であり、例えば、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、無水マレイン酸、フマル酸のような非環状脂肪族ジカルボン酸;1,3-シクロペンタンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸のような脂環式ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、2,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ナフタル酸、ビフェニルジカルボン酸、1,2-ビス(フェノキシ)エタン-p,p’-ジカルボン酸のような芳香族ジカルボン酸;これら脂肪族又は芳香族ジカルボン酸の無水物あるいはエステル形成性誘導体;p-ヒドロキシ安息香酸、p-(2-ヒドロキシエトキシ)安息香酸及びこれらのジヒドロキシカルボン酸のエステル形成性誘導体、ダイマー酸等の多塩基酸類;が挙げられる。
【0039】
中でも接着性能及び耐熱性の観点から、カルボキシ基成分として好ましくは、非環状脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸であり、より好ましくは非環状脂肪族ジカルボン酸である。非環状脂肪族ジカルボン酸として好ましくはアジピン酸であり、芳香族ジカルボン酸として好ましくはイソフタル酸及びテレフタル酸からなる群より選ばれる少なくとも1種である。
非環状脂肪族ジカルボン酸のような脂肪族系カルボキシ基成分であると、塗膜が柔軟に
なり、接着強度が向上するため好ましい。また、脂肪族系カルボキシ基成分であると粘度が低減し、ポットライフが改善されるため好ましい。
【0040】
上記水酸基成分は公知のものであれば特に制限されないが、例えば、ジオールや3官能以上のポリオールが挙げられ、好ましくはジオールである。ジオールであると、ポリイソシアネートと混合した際に過度な架橋形成を抑制し、ポットライフが良化するため好ましい。
前記ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、3,3‘-ジメチロールヘプタン、1,4-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘサンのような脂肪族ジオール;ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリオキシエチレングリコールのようなエーテルグリコール;前記脂肪族ジオールと、エチレンオキシド、テトラヒドロフランのような種々の環状エーテル結合含有化合物との開環重合によって得られる変性ポリエーテルジオール;前記脂肪族ジオールと、ラクタノイド、ε-カプロラクトンのような種々のラクトン類との重縮合反応によって得られるラクトン系ポリエステルポリオール;ビスフェノールA、ビスフェノールFのようなビスフェノールにエチレンオキサイド等を付加して得られるビスフェノールのアルキレンオキサイド付加物;が挙げられる。ジオールとして好ましくは脂肪族ジオールであり、より好ましくは、エチレングリコール、ジエチレングリコール、及びネオペンチルグリコールからなる群より選ばれる少なくとも1種である。
【0041】
前記3官能以上のポリオールとしては、例えば、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトールのような脂肪族ポリオール;前記脂肪族ポリオールと、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン、エチルグリシジルエーテル、プロピルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテルのような種々の環状エーテル結合含有化合物との開環重合によって得られる変性ポリエーテルポリオール;前記脂肪族ポリオールと、ε-カプロラクトンのような種々のラクトン類との重縮合反応によって得られるラクトン系ポリエステルポリオール;が挙げられる。3官能以上のポリオールとして好ましくは脂肪族ポリオールであり、より好ましくはトリメチロールプロパンである。
【0042】
すなわち、ポリエステルポリオールは、好ましくは脂肪族ポリエステルポリオールを含むものである。該脂肪族ポリエステルポリオールは、ポリエステルポリオールを構成するカルボキシ基成分及び水酸基成分がいずれも、上述する脂肪族成分であることを意味する。このような脂肪族ポリエステルポリオールを含むことで、粘度が低減し、外観性能及びハンドリング性が向上するため好ましい。
【0043】
前記ポリエステルポリオールは、重量平均分子量が500~3,000であることが好ましい。より好ましくは1,000~2,500である。重量平均分子量が500以上であると、ポリエステルポリオールによって凝集力が向上し、接着強度とヒートシール強度が向上するため好ましい。重量平均分子量が3,000以下であると、粘度が低減し、外観性能及びハンドリング性が向上するため好ましい。
【0044】
前記ポリエステルポリオールの合成に用いる水酸基成分の水酸基数とカルボキシ基成分のカルボキシ基数との比(OH/COOH)は、好ましくは1.2~2.0であり、より好ましくは1.2~1.5である。1.2以上であるとポリエステルポリオールの凝集力が向上し、接着強度とヒートシール強度が向上するため好ましい。1.5以下であると、ポリイソシアネート(b2)と混合した後の粘度上昇が緩やかになり、経時での塗工性の
低下を抑制できるため好ましい。
【0045】
前記ポリエステルポリオールの水酸基価は、好ましくは40~150mgKOH/gであり、より好ましくは50~120mgKOH/gである。40mgKOH/g以上であると、ポリエステルポリオールの粘度が低減し、ポリイソシアネート(b2)と混合した後の粘度上昇が緩やかになり、経時での塗工性の低下を抑制できるため好ましい。150mgKOH/g以下であると、ポリエステルポリオールの凝集力が向上し、接着強度とヒートシール強度が向上するため好ましい。
【0046】
前記ポリエステルポリオールの含有量は、ポリオール(b1)全量に対して、5~95質量%であることが好ましい。より好ましくは10~80質量%である。10質量%以上であると、ポリオール(b1)の凝集力が向上して接着強度及びヒートシール強度が向上するため好ましい。95質量%以下であると、ポリオール(b1)の粘度が低減し、外観性能及びハンドリング性が向上するため好ましい。
【0047】
前記ポリオール(b1)は、水酸基の一部にポリイソシアネートを反応させてウレタン結合を導入したもの(以下、ポリウレタンポリオールと略記する場合がある)であってもよい。前記ポリイソシアネートとしては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、水添化ジフェニルメタンジイソシアネートが挙げられる。
なお本明細書において、ポリエーテルポリオールとポリイソシアネートとの反応生成物であるポリオールをポリエーテルポリウレタンポリオール、ポリエステルポリオールポリオールとポリイソシアネートとの反応生成物であるポリオールをポリエステルポリウレタンポリオール、と略記する場合がある。
【0048】
また、前記ポリオール(b1)は、水酸基の一部に酸無水物を反応させてカルボキシ基を導入したものであってもよい(以下、酸変性と略記する場合がある)。前記酸無水物としては、例えば、無水ピロメリット酸、無水メリト酸、無水トリメリット酸、トリメリット酸エステル無水物が挙げられる。トリメリット酸エステル無水物は、例えば、炭素数2~30のアルキレングリコール又はアルカントリオールを無水トリメリット酸でエステル化反応させてなるエステル化合物が挙げられ、具体的には、エチレングリコールビスアンハイドロトリメリテート、プロピレングリコールビスアンハイドロトリメリテート等を用いることができる。
【0049】
前記ポリオール(b1)を、前記ポリイソシアネートで変性する場合の、イソシアネート基数と水酸基数との比(NCOモル数/OHモル数)は、好ましくは0.10~0.50である。より好ましくは0.20~0.40であり、さらに好ましくは0.25~0.35である。モル比が0.20以上であると、より分子量の高い高分子が得られて接着強度が向上するため好ましい。モル比が0.40以下であると、粘度が低減し、外観性能及びハンドリング性が向上するため好ましい。
【0050】
前記ポリオール(b1)を、前記ポリイソシアネートで変性することで得られるポリウレタンポリオールの重量平均分子量は、接着強度とヒートシール強度及びハンドリング性とを向上させる観点から、500~10,000であることが好ましい。より好ましくは1,000~8,000である。重量平均分子量が500以上であると、ポリウレタンポリオールの凝集力が向上し、接着強度とヒートシール強度が向上するため好ましい。重量平均分子量が10,000以下であると、粘度が低減し、外観性能及びハンドリング性が向上するため好ましい。
【0051】
<ポリイソシアネート(b2)>
無溶剤型接着剤(B)を構成するポリイソシアネート(b2)は、ポリエステルポリオール由来の構成単位を有し、且つ、重量平均分子量が1,000~5,000であることが重要である。
ポリイソシアネート(b2)がポリエステルポリオール由来の構成単位を含むことで、接着剤塗膜の凝集力が向上し、硬化後の残タックを抑制できる。
ポリイソシアネート(b2)の重量平均分子量が1,000以上であることで、接着剤層の凝集力が向上し、硬化後の残タックを抑制できる。さらに、接着強度とヒートシール強度が向上する。また、重量平均分子量が5,000以下であることで、粘度が高くなりすぎず、外観性能及びポットライフが向上する。ポリイソシアネート(b2)の重量平均分子量は、残タックの抑制、接着強度向上、及び外観性能向上の観点から、好ましくは1,500~3,000である。
【0052】
ポリイソシアネート(b2)としては、例えば、ポリエステルポリオールを含むポリオールと、ポリイソシアネートとを、イソシアネート基が過剰である条件で反応させてなる反応生成物が好適に用いられる。このようなウレタン結合を有するポリイソシアネートを含むことで接着剤塗膜の凝集力が向上し、残タックを抑制できる。
【0053】
(ポリイソシアネート)
上記ポリイソシアネートとしては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、又はこれらの変性体が挙げられる。これらのポリイソシアネートは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0054】
(芳香族ポリイソシアネート)
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネートのような芳香族ジイソシアネート;ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネートのような芳香族ポリイソシアネート;が挙げられる。
【0055】
(芳香脂肪族ポリイソシアネート)
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3-又は1,4-キシリレンジイソシアネート若しくはその混合物、ω,ω′-ジイソシアネート-1,4-ジエチルベンゼン、1,3-又は1,4-ビス(1-イソシアネート-1-メチルエチル)ベンゼン若しくはその混合物等の芳香脂肪族ジイソシアネート;が挙げられる。
【0056】
(脂肪族ポリイソシアネート)
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、1,2-ブチレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、2,4,4-又は2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6-ジイソシアネートメチルカプロエート、リジンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネートのような脂肪族ジイソシアネート;が挙げられる。
【0057】
(脂環式ポリイソシアネート)
脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4′-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-ビス(イソシ
アネートメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、ノルボルネンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート;が挙げられる。
【0058】
ポリイソシアネートの変性体としては、例えば、アロファネート型変性体、イソシアヌレート型変性体、ビウレット型変性体、アダクト型変性体が挙げられる。また、ポリイソシアネートの変性体として、ポリイソシアネートとポリオールとの反応生成物である、ウレタン結合を有するポリイソシアネートを用いてもよい。
上記ポリイソシアネートの変性体を形成するポリオールは特に制限されず、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール、シリコーンポリオール、ヒマシ油系ポリオール、フッ素系ポリオールが挙げられる。
【0059】
上記ポリイソシアネートは、好ましくは芳香族ポリイソシアネートであり、より好ましくはジフェニルメタンジイソシアネートである。すなわち、ポリイソシアネート(b2)は、芳香族ポリイソシアネート由来の構成単位を有することが好ましい。芳香族ポリイソシアネートであると塗膜の凝集力が上がり、接着強度及びヒートシール強度、耐熱強度が向上するため好ましい。
【0060】
(ポリエステルポリオールを含むポリオール)
ポリオールは、少なくともポリエステルポリオールを含んでいればよく、上記ポリエステルポリオールとしては、水酸基とエステル結合とを分子内に各々2個以上有する化合物であればよい。このようなポリエステルポリオールとしては、好ましくは前述の(ポリオール(b1))の項に記載したものを援用することができる。
中でも、好ましくは脂肪族ポリエステルポリオールを含むものである。該脂肪族ポリエステルポリオールは、ポリエステルポリオールを構成するカルボキシ基成分及び水酸基成分が、いずれも上述した脂肪族成分であることを意味する。このような脂肪族ポリエステルポリオールを含むことで、粘度が低減し、外観性能及びハンドリング性が向上するため好ましい。
【0061】
前記ポリエステルポリオールを構成する水酸基成分は、好ましくはジオールである。ジオールであると、ポリイソシアネートと混合した際に過度な架橋形成を抑制し、ポットライフが良化するため好ましい。
【0062】
前記ポリエステルポリオールは、重量平均分子量が1,000~4,000の範囲であることが好ましい。より好ましくは1,500~3,000である。重量平均分子量が1,000以上であると、接着剤塗膜の凝集力が向上し、残タックを抑制できるため好ましい。重量平均分子量が4,000以下であると、誘導されるポリイソシアネート(b2)の重量平均分子量が過度に上昇せず、ポリイソシアネート(b2)の粘度が低減し、外観性能及びポットライフが向上するため好ましい。
【0063】
ポリイソシアネート(b2)を構成するポリエステルポリオールの合成に用いる水酸基成分の水酸基数とカルボキシ基成分のカルボキシ基数との比(OH/COOH)は、好ましくは1.2~2.0であり、より好ましくは1.2~1.4である。1.2以上であると誘導されるポリイソシアネート(b2)の凝集力が向上し、残タックを抑制するため好ましい。2.0以下であると、誘導されるポリイソシアネート(b2)の粘度が低減し、外観性能及びポットライフが向上するため好ましい。
【0064】
ポリイソシアネート(b2)を構成するポリエステルポリオールの水酸基価は、好ましくは40~150mgKOH/gであり、より好ましくは50~100mgKOH/gである。40mgKOH/g以上であると、誘導されるポリイソシアネート(b2)の粘度
が低減し、外観性能及びポットライフが向上するため好ましい。150mgKOH/g以下であると、誘導されるポリイソシアネート(b2)の凝集力が向上し、残タックを抑制するため好ましい。
【0065】
(ポリエーテルポリオール)
上記ポリオールは、好ましくは、ポリエステルポリオールとポリエーテルポリオールの双方を含む。すなわち、ポリイソシアネート(b2)は、ポリエステルポリオール由来の構成単位に加えて、さらに、ポリエーテルポリオール由来の構成単位を有することが好ましい。
ポリエステルポリオールとポリエーテルポリオールとを含むポリオールと、ポリイソシアネートとの反応生成物であるウレタン結合を有するポリイソシアネートを含むことで、接着剤塗膜の柔軟性及び基材追従性が向上し、経時で屈曲される厳しい条件に置かれた時に、屈曲部分のデラミネーションを抑制できる。
【0066】
ポリエーテルポリオールは、水酸基とエーテル結合とを分子内に各々2つ以上有する化合物であればよく、2官能ポリエーテルポリオール、3官能ポリエーテルポリオールのいずれであってもよい。これらのポリエーテルポリオールは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらは、前述の(ポリオール(b1))の項に記載したものを援用することができる。
【0067】
上記ポリエーテルポリオールは、2官能ポリエーテルポリオールであることが好ましい。2官能ポリエーテルポリオールを用いると、接着剤塗膜の柔軟性及び基材追従性が向上し、経時で屈曲される条件に置かれた時に、屈曲部分のデラミネーションを抑制できるため好ましい。
【0068】
少なくともポリエステルポリオールを含むポリオールは、水酸基の一部にジイソシアネートを反応させてウレタン結合を導入したものであってもよく、水酸基の一部に酸無水物を反応させてカルボキシ基を導入したものであってもよい。これらジイソシアネート及び酸無水物は、前述の(ポリオール(b1))の項に記載したものを援用することができる。
【0069】
ポリオールとポリイソシアネートとを反応させてウレタン結合を有するポリイソシアネートを得る際の、イソシアネート基のモル数と水酸基のモル数との比(NCOモル数/OHモル数)は、好ましくは2.0以上、5.0以下であり、好ましくは2.8以上、4.2以下である。モル当量比が2.0以上であると、誘導されるポリイソシアネート(b2)の粘度が低減し、外観性能及びポットライフが向上するため好ましい。モル当量比が5.0以下であると、誘導されるポリイソシアネート(b2)の凝集力が向上し、残タックを抑制できるため好ましい。
【0070】
ポリイソシアネート(b2)のポリイソシアネート基含有率は、好ましくは5.0質量%~18.0質量%、より好ましくは6.0質量%~16.0質量%の範囲である。上記範囲であると、架橋密度が最適化され残タックを抑制し、且つ接着強度及びヒートシール強度が向上するため好ましい。
【0071】
<その他ポリイソシアネート>
無溶剤型接着剤(B)は、本発明の効果を損なわない範囲で、さらにポリイソシアネート(b2)以外のその他ポリイソシアネート(以下、後添加ポリイソシアネートともいう)を含んでもよい。このような後添加ポリイソシアネートとしては、前述のポリイソシアネートを援用することができ、粘度低減の観点から、好ましくは、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-ジ
フェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体から1種以上選ばれるものであり、より好ましくは、耐熱強度向上の観点からポリメリックジフェニルメタンジイソシアネートである。
【0072】
後添加ポリイソシアネートの含有量は、ポリイソシアネート(b2)全量に対して、10~45質量%であることが好ましい。より好ましくは、10~35質量%である。10質量%以上であると、粘度低減によりハンドリング性が向上するため好ましい。45質量%以下であると、無溶剤型接着剤(B)に含まれるポリイソシアネート成分の重量平均分子量が下がりすぎず、接着剤塗膜の凝集力が向上して残タックを抑制できるため好ましい。
【0073】
ポリオール(b1)、ポリイソシアネート(b2)及びその他ポリイソシアネートを配合する時の、全イソシアネート基数と全水酸基数との比(NCOモル数/OHモル数)は、1.0~3.0であり、好ましくは1.8~2.4である。上記範囲であると、ポリイソシアネート(b2)由来の凝集力が接着剤塗膜に付与され、残タックを抑制できるため好ましい。
【0074】
<その他成分>
無溶剤型接着剤(B)は、接着剤又は包装体に要求される各種物性を満たすために、上記以外のその他成分を含有してもよい。これらのその他成分は、ポリオール(b1)又はポリイソシアネート(b2)のいずれに配合してもよいし、ポリオール(b1)とポリイソシアネート(b2)とを配合する際に添加してもよい。これらのその他成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0075】
(シランカップリング剤)
無溶剤型接着剤(B)は、金属箔等の金属系素材に対する接着強度を向上させる観点から、シランカップリング剤を含有することができる。シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニル基を有するトリアルコキシシラン;3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基を有するトリアルコキシシラン;3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)-エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のグリシジル基を有するトリアルコキシシラン;が挙げられる。
シランカップリング剤の含有量は、ポリオール(b1)あるいはポリイソシアネート(b2)の質量を基準として、好ましくは0.1~5質量%であり、より好ましくは0.2~3質量%である。上記範囲とすることで、金属箔に対する接着強度を向上することができるため好ましい。
【0076】
(リン酸又はリン酸誘導体)
無溶剤型接着剤(B)は、金属箔等の金属系素材に対する接着強度を向上させる観点から、リン酸又はリン酸誘導体を含有することができる。
前記リン酸としては、遊離の酸素酸を少なくとも1個有しているものであればよく、例えば、次亜リン酸、亜リン酸、オルトリン酸、次リン酸のようなリン酸類;メタリン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸、ポリリン酸、ウルトラリン酸のような縮合リン酸類;が挙げられる。また、リン酸の誘導体としては、例えば、上述のリン酸を遊離の酸素酸を少なくとも1個残した状態でアルコール類と部分的にエステル化したものが挙げられる。該アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、エチレングリコール、グリセリンのような脂肪族アルコール;フェノール、キシレノール、ハイドロキノン、カテコール、フロログリシノールのような芳香族アルコール;が挙げられる。
リン酸又はその誘導体の含有量は、ポリオール(b1)あるいはポリイソシアネート(
b2)の質量を基準として、好ましくは0.01~10質量%であり、より好ましくは0.05~5質量%、特に好ましくは0.05~1質量%である。
【0077】
(レベリング剤又は消泡剤)
無溶剤型接着剤(B)は、積層体の外観を向上させるため、さらにレベリング剤及び/又は消泡剤を含有することができる。レベリング剤としては、例えば、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、アラルキル変性ポリメチルアルキルシロキサン、ポリエステル変性水酸基含有ポリジメチルシロキサン、ポリエーテルエステル変性水酸基含有ポリジメチルシロキサン、アクリル系共重合物、メタクリル系共重合物、ポリエーテル変性ポリメチルアルキルシロキサン、アクリル酸アルキルエステル共重合物、メタクリル酸アルキルエステル共重合物、レシチンが挙げられる。
消泡剤としては、例えば、シリコーン樹脂、シリコーン溶液、アルキルビニルエーテルとアクリル酸アルキルエステルとメタクリル酸アルキルエステルとの共重合物が挙げられる。
【0078】
(反応促進剤)
無溶剤型接着剤(B)は、硬化反応を促進するため、さらに反応促進剤を含有することができる。反応促進剤としては、例えば、ジブチルチンジアセテート、ジブチルチンジラウレート、ジオクチルチンジラウレート、ジブチルチンジマレートのような金属系触媒;1,8-ジアザ-ビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7、1,5-ジアザビシクロ(4,3,0)ノネン-5、6-ジブチルアミノ-1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7のような3級アミン;トリエタノールアミンのような反応性3級アミン;が挙げられる。
【0079】
(その他添加剤)
無溶剤型接着剤(B)は、本発明の効果を損なわない範囲で、各種の添加剤を配合してもよい。添加剤としては、例えば、シリカ、アルミナ、マイカ、タルク、アルミニウムフレーク、ガラスフレーク等の無機充填剤、層状無機化合物、安定剤(酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、加水分解防止剤等)、防錆剤、増粘剤、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤、着色剤、フィラー、結晶核剤、硬化反応を調整するための触媒が挙げられる。
【0080】
<接着剤層の形成>
無溶剤型接着剤(B)は、ロールコート等の公知のラミネート加工後、例えば20~60℃の条件下で1日~1週間程度硬化させることで硬化し、接着剤層を形成する。
接着剤層の厚みは、積層体外観及び物性向上の観点から、好ましくは1.0μm~5.0μmであり、より好ましくは1.5μm~4.5μmである。接着剤層の厚みが1.0μm以上であると、接着剤層の剛直性が高まってラミネート強度やヒートシール強度等の物性が向上し、且つ印刷表面の凹凸を埋めて外観性能が向上するため好ましい。接着剤層の厚みが5.0μm以下であると、接着剤層の凝集力が高まって噛みこんだ微細な気泡の動きを抑制し、外観性能が向上するため好ましい。
【0081】
〔インキ層〕
本発明におけるインキ層は、水性インキ(A)を用いて形成された層であり、該水性インキ(A)は、少なくとも、着色剤、体質顔料、及び水性樹脂を含有するものである。
また、水性インキ(A)着色剤と体質顔料との割合(着色剤:体質顔料)は、質量比で98:2~50:50の範囲である。
【0082】
<着色剤>
着色剤としては、無機系着色剤及び有機系着色剤等の顔料を好適に使用できる。
無機系着色剤としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化クロム、シリカ、カーボンブラック、アルミニ
ウム、マイカ(雲母)が挙げられる。着色力、隠ぺい力、耐薬品性、耐候性の点から、白色着色剤として酸化チタンが好ましく、より好ましくは、顔料表面が塩基性である酸化チタンである。アルミニウムは粉末又はペースト状であるが、取扱い性及び安全性の面からペースト状で使用するのが好ましく、リーフィング又はノンリーフィングを使用するかは輝度感及び濃度の点から適宜選択される。
有機系着色剤としては、例えば、一般のインキ、塗料、及び記録剤等に使用されている有機顔料及び染料を挙げることができる。このような有機系着色剤としては、例えば、アゾ系、フタロシアニン系、アントラキノン系、ペリレン系、ペリノン系、キナクリドン系、チオインジゴ系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系、アゾメチンアゾ系、ジクトピロロピロール系、イソインドリン系の顔料が挙げられる。着色剤としては、カラーインデックス収載の任意の化合物を用いることができ、藍インキには銅フタロシアニン、黄インキにはコスト・耐光性の点からC.I.Pigment Yellow83を用いることが好ましい。
ラミネート物性の観点から、着色剤の含有率は、水性インキ(A)の固形分質量を基準として、好ましくは20~75質量%、より好ましくは25~73質量%、さらに好ましくは30~70質量%である。
【0083】
<体質顔料>
水性インキ(A)は、体質顔料を含む。体質顔料を含有することで、インキ層の耐ブロッキング性が向上する。体質顔料としては、例えば、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリンクレイ、シリカなどが挙げられ、これらは1種、又は2種以上の組み合わせで用いられる。
ラミネート物性の観点から、体質顔料の含有率は、水性インキ(A)の固形分質量を基準として、好ましくは1~45量%、より好ましくは3~30量%、さらに好ましくは10~20質量%である。
【0084】
水性インキ(A)中の着色剤と体質顔料との質量比(着色剤:体質顔料)は、接着剤層の残タック抑制の観点から、98:2~50:50であることが重要であり、好ましくは95:5~55:45、より好ましくは90:10~60:40である。
【0085】
<水性樹脂>
水性樹脂は、水溶性又は水分散性(エマルジョン)の樹脂を表し、該樹脂としては例えば、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ウレタンアクリル樹脂、スチレン-アクリル樹脂、スチレン-アクリル樹脂、スチレン-無水マレイン酸樹脂、ポリエステル樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、セルロース系樹脂、塩素化ポリオレフィンが挙げられる。水性樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0086】
(水性ウレタン樹脂)
水性樹脂は、ラミネート物性の観点から、水性ウレタン樹脂が好適に用いられる。水性ウレタン樹脂は、イオン性基を有するウレタン樹脂であることが好ましく、樹脂内にカルボキシ基、スルホン基等のイオン性基を有していることが好ましく、例えば、ポリオール、ポリイソシアネート、及びポリヒドロキシ酸のようなイオン性基を有するポリオールを反応させた後、当該イオン性基を中和することにより得ることができる。イオン性基は、耐水性の観点からカルボキシ基が好ましい。
【0087】
(ポリオール)
水性ポリウレタン樹脂の合成に利用可能なポリオールとしては、例えば、PEG(ポリエチレングリコール)、PPG(ポリプロピレングリコール)やPTMG(ポリオキシテトラメチレングリコール)等のポリエーテルポリオール類;エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタジオール、メチルペンタジオール、ヘキサジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、メチルノナンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール等の低分子グリコール類と、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸等の二塩基酸、若しくはこれらの無水物とを脱水縮合して得られるポリエステルポリオール類;N-メチルジエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン、N-ブチルジエタノールアミン、N-t-ブチルジエタノールアミン、ジヒドロキシイソプロピルエチルアミン、ジヒドロキシイソプロピルn-ブチルアミン、ジヒドロキシイソプロピルt-ブチルアミン、N,N-ビス(2-ヒドロキシプロピル)アニリン等の3級アミノ基を有するポリオール;ポリカーボネートジオール類、ポリブタジエングリコール類、ビスフェノールAに酸化エチレン又は酸化プロピレンを付加して得られるグリコール類、ダイマージオール類等の各種公知のポリオールが挙げることができる。
【0088】
これらのポリオールは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。該ポリオールは、水性インキ(A)の再溶解性の観点から、ポリエーテルポリオール類を含有することが好ましく、より好ましくは、PEG(ポリエチレングリコール)を含む。
【0089】
水性ウレタン樹脂は、ポリエチレングリコール由来の構成単位の含有量(水性ウレタン樹脂中のポリエチレングリコールの固形分質量比率、以下PEG%と略する)が5~50質量%の範囲であることが好ましい。PEG%が5質量%以上であると、樹脂の親水性が高まるため、水性インキの安定性が良化し、50質量%以下であると、樹脂の粘度が低くなり、インキ中のバインダー有効量を満たし、インキ被膜の強度低下を抑制できる。
【0090】
ポリオールの各々の数平均分子量は3,000以下であることが好ましい。数平均分子量は水酸基価から算出されるものであり、水酸基価は、樹脂中の水酸基をエステル化又はアセチル化し、残存する酸をアルカリで逆滴定して算出した樹脂1g中の水酸基量を、水酸化カリウムのmg数に換算した値で、JIS K 0070に従って行った値である。数平均分子量が3,000以下であると、水溶化のために組み込んだイオン性基を水性ポリウレタン樹脂中に点在化させることができるため、再溶解性が向上する。また、ポリオールの数平均分子量が大きいほど、ポリウレタン樹脂皮膜が柔らかくなり、ラミネート強度が良化する傾向にあるため、数平均分子量は500以上であることが好ましい。
【0091】
(ポリイソシアネート)
水性ポリウレタン樹脂の合成に利用可能なポリイソシアネートとしては、例えば、芳香族、脂肪族又は脂環族の各種公知のジイソシアネート類を挙げることができる。
芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、1,5-ナフチレンジイソシアネート、4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4'-ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4'-ジベンジルイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソ
シアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、mーテトラメチルキシリレンジイソシアネートが挙げられる。
脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、ブタン-1,4-ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートが挙げられる。
脂環族ジイソシアネートとしては、例えば、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4、4'-ジイソシアネー
ト、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネートが挙げられる。
【0092】
(イオン性基を有するポリオール)
樹脂内にイオン性基を導入するには、イオン性基を有するポリオールを利用することが好ましい。イオン性基として好ましくはカルボキシ基である。このようなイオン性基を有するポリオールとしては、例えば、ジメチロール酢酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、2,2-ジメチロール酪酸、2,2-ジメチロールペンタン酸等のジメチロールアルカン酸や、ジヒドロキシコハク酸、ジヒドロキシプロピオン酸、ジヒドロキシ安息香酸が挙げられる。これらは単独又は2種以上を混合して用いることができる。
【0093】
(水性ウレタンウレア樹脂)
水性ウレタン樹脂は、ポリオール、ポリイソシアネート、及びイオン性基を有するポリオールを反応させてポリウレタン樹脂とした後、さらに鎖延長剤及び反応停止剤を用いて尿素結合を導入した、水性ウレタンウレア樹脂であってもよい。本発明における水性ウレタン樹脂は、尿素結合を導入することで、塗膜がより強靭となり、塗膜物性が向上する傾向にあるため、水性ウレタンウレア樹脂であることが好ましい。
【0094】
(鎖延長剤)
上記鎖延長剤としては公知のアミン類を使用することができ、例えば、2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、2-ヒドロキシプロピルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシプロピルエチレンジアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジアミン、さらにダイマー酸のカルボキシ基をアミノ基に転化したダイマージアミンが挙げられる。これらアミン類は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。上記アミン類として好ましくは、水酸基を有するアミン類であり、再溶解性が良好となるため好ましい。
【0095】
(反応停止剤)
上記反応停止剤としては、例えば、ジ-n-ジブチルアミン等のジアルキルアミン類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、トリ(ヒドロキシメチル)アミノメタン、2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオール、N-ジ-2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、N-ジ-2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、N-ジ-2-ヒドロキシプロピルエチレンジアミン等の水酸基を有するアミン類;グリシン、アラニン、グルタミン酸、タウリン、アスパラギン酸、アミノ酪酸、バリン、アミノカプロン酸、アミノ安息香酸、アミノイソフタル酸、スルファミン酸等のモノアミン型アミノ酸類;が挙げられる。
【0096】
(中和)
水性ウレタン樹脂は、ウレタン樹脂中のイオン性基が塩基性化合物(塩基)で中和されていることが好ましい。
塩基性化合物(塩基)としては、例えば、アンモニア;、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機の金属水酸化物;メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、エタノールアミン、プロパノールアミン、ジエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、2-ジメチルアミノ-2-メチル-1-プロパノール、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、モルホリン等の有機アミン;が挙げられ、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせで用いてもよい。
上記塩基は、印刷物の耐水性、残留臭気、積層体のインキ層のムラ等の点から、好ましくはアンモニア及び有機アミンからなる群より選ばれる少なくとも一種の塩基であり、より好ましくは、アンモニア、ジエチルアミン、トリエチルアミン及びN,N-ジメチルエタノールアミンからなる群より選ばれる少なくとも一種であり、特に好ましくはアンモニアである。
【0097】
(合成法)
水性ウレタン樹脂の合成は特に制限されず、例えば、イソシアネートに対して不活性かつ親水性の有機溶剤を用いるアセトン法、溶剤を使用しない無溶剤合成法等を用いることができる。イソシアネートに対して不活性でかつ親水性の有機溶剤としては、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;酢酸エチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン等のアミド類;が挙げられる。有機溶剤は、脱溶剤、又は乾燥速度向上の観点から、水より低沸点である溶剤を用いることが好ましい。
【0098】
本発明における水性ウレタン樹脂は、溶解性、耐ブロッキング性の観点から酸価が15~65mgKOH/g、重量平均分子量が5,000~100,000であることが好ま
しい。
【0099】
水性インキ(A)は、更にアセチレングリコール系化合物を含むことが好ましい。アセチレングリコール系化合物を含有することでインキ層のレベリング性が向上する。
アセチレングリコール系化合物は、アセチレン基を中央に持ち、左右対称の構造をした非イオン性界面活性剤である。アセチレングリコール系化合物の市販品としては、例えば、日信化学工業社製のオルフィンE1010、オルフィンE1020、サーフィノール1
04、サーフィノール420、サーフィノール440、サーフィノール465、サーフィノール485が挙げられる。ラミネート物性の観点から、アセチレングリコール系化合物の含有率は、水性インキ(A)の固形分中を基準として、好ましくは0.3~15質量%、より好ましくは0.6~9質量%、さらに好ましくは1.5~6質量%である。
【0100】
<添加剤>
水性インキ(A)は、必要に応じて添加剤を含有してもよい。該添加剤としては、例えば、接着助剤、硬化剤、消泡剤、ワックス、シランカップリング剤、可塑剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、芳香剤、難燃剤が挙げられる。
【0101】
接着助剤としては、ヒドラジド基を含有する化合物が好ましい。例えば、アジピン酸ジヒドラジド(ADH)が挙げられる。後述するが、樹脂中や硬化剤のケト基と相互作用して、プラスチックフィルムへの密着性、インキ皮膜強度が良化する。
【0102】
硬化剤としては、例えば、カルボジイミド基やケト基等の反応性基を含有する樹脂微粒子分散体が挙げられる。このような樹脂微粒子分散体の市販品としては、例えば、日清紡社製、カルボジライトE-02、SV-02、V-02、V-02-L2、V-04、BASF社製、アクロナールYJ2716D、YJ2720D、YJ2727DN、YJ2741D、YJ2746DS、DSMネオレジン社製、NEOCRYLA-1127、A-1125、A-1120、A-1131が挙げられる。
【0103】
上記硬化剤を用いることにより、基材への密着性、インキ皮膜強度をさらに向上させることができる。硬化剤の含有率は、水性インキ(A)の固形分を基準として、好ましくは1~45質量%、より好ましくは5~20質量%である。
【0104】
水性インキ(A)は、媒体として、水を含み、更にアルコール類を含むことが好ましい。アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、iso-ブタノールが挙げられる。食品包材に適用する場合、安全衛生性と残留臭気の点から、アルコール類として、エタノール、1-プロパノール又は2-プロパノールを使用することが好ましい。
更に、乾燥調整を目的とて、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール及びこれらのモノ又はジエーテル類を必要に応じて使用してもよい。
【0105】
また、インキ層は、本発明の効果を損なわない範囲で、水性ウレタン樹脂以外のその他樹脂を含んでもよい。このようなその他樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、スチレン-アクリル樹脂、スチレン-無水マレイン酸樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、セルロース系樹脂、及び塩素化ポリオレフィン等の水性樹脂が挙げられ、これらの複数種を併用することもできる。
【0106】
水性インキ(A)の製造方法は特に制限されず、上記の原料を、例えば、ローラーミル
、ボールミル、ペブルミル、アトライター、サンドミル等の公知の分散機を用いて分散・混合することにより製造することができる。水性インキ(A)中に気泡や予期せずに粗大粒子等が含まれる場合は、印刷物品質を低下させるため、濾過等により取り除くことが好ましい。濾過機は従来公知のものを使用することができる。
【0107】
<インキ層表面の最小自己相関長さSal>
本発明における水性インキ(A)は、該水性インキ(A)を用いて形成されたインキ層表面の最小自己相関長さ(Sal)が10μm以下であることが好ましい。インキ層表面の最小自己相関長さSalとは、ISO 25178に準拠して規定された値であり、目の細かさを表現する評価指標である。具体的には、インキ層表面の凹凸状態の密集度合いを長さの単位で数値化したものであり、最小自己相関長さSalの値が小さいほど目が細かいと言える。
Salは、例えば、白色光干渉式表面性状測定機(AМETEK(アメテック)社のタリサーフCCIMP-HS)を用いて測定することができる。
インキ層表面の最小自己相関長さSalは、より好ましくは1~10μm、さらに好ましくは2~8μm、特に好ましくは4~7μmである。Salが1μm以上であると、インキ層表面の表面積が小さくなり、無溶剤型接着剤(B)中のイソシアネート成分のインキ層への浸透、及び、インキ層中の低分子水酸基成分の接着剤層への浸透が抑制される。これにより、良好な残タック抑制、接着強度、ヒートシール強度等の物性が得られる。Salが10μm以下であると、インキ層表面の目が細かくなり、無溶剤型接着剤(B)を塗工する際に、インキ層と接着剤層間に気泡が噛み込み難くなるために、ラミネート後の外観が良化する。
【0108】
<インキ層の形成>
インキ層は、上記水性インキ(A)を、後述する基材上に印刷することにより形成することができる。印刷方式としては、公知のフレキソ印刷方式、グラビア印刷方式が好適に用いられ、上記印刷方式を用いて塗布し、オーブン等を用いて乾燥させて定着することで得られる。乾燥温度は通常40~100℃程度である。インキ層の厚みは、好ましくは0.1~5μm、より好ましくは0.1~2μmである。
【0109】
<フレキソ印刷方法>
上記印刷方式としてはフレキソ印刷がより好適に用いられる。フレキソ印刷に使用されるアニロックスとしては、セル彫刻が施されたセラミックアニロックスロール、クロムメッキアニロックスロール等を使用することができる。優れたドット再現性を有する印刷物を得るために印刷する際に使用する版線数の5倍以上好ましくは6倍以上の線数を有するアニロックスロールが好ましい。例えば、使用する版線数が75lpiの場合は375lpi以上のアニロックスが好ましい。アニロックス容量は、水性インキ(A)の乾燥性とブロッキング性の観点から、好ましくは1~8cc/m2、より好ましくは2~6cc/m2である。
【0110】
フレキソ印刷に使用される版としてはUV光源による紫外線硬化を利用する感光性樹脂版又はダイレクトレーザー彫刻方式を使用するエラストマー素材版が挙げられる。フレキソ版の画像部の形成方法に関わらず版のスクリーニング線数において75lpi以上のものが好ましい。版を貼るスリーブやクッションテープについては任意のものを使用することができる。
【0111】
フレキソ印刷機としてはCI型多色フレキソ印刷機、ユニット型多色フレキソ印刷機等があり、インキ供給方式についてはチャンバー方式、2ロール方式が挙げることができ、適宜の印刷機を使用することができる。
【0112】
〔積層体の製造〕
本発明の積層体は、第1の基材層、インキ層、接着剤層、及び第2の基材層をこの順に備えるものであって、好ましくは、以下の工程(1)及び(2)を有する製造方法により製造してもよい。
工程(1):第1の基材上に水性インキ(A)をフレキソ印刷して、表面の最小自己相関長さ(Sal)が10[μm]以下であるインキ層を形成する工程。
工程(2):前記インキ層上に、以下の無溶剤型接着剤(B)を塗工して接着剤層を形成する工程。
無溶剤型接着剤(B):ポリオール(b1)及びポリイソシアネート(b2)を含み、前記ポリイソシアネート(b2)は、重量平均分子量が1,000~5,000であり、ポリエステルポリオール由来の構成単位を有する。
【0113】
また、本発明の積層体は、第1の基材層、インキ層、接着剤層、及び第2の基材層をこの順に備える積層体の製造方法であって、以下の工程(1)~(3)を有する製造方法。
工程(1):第1の基材上に、着色剤と体質顔料とを質量比(着色剤:体質顔料)98:2~50:50の範囲で含む水性インキ(A)をフレキソ印刷して、インキ層を形成する工程。
工程(2):重量平均分子量が1,000~5,000であり、ポリエステルポリオール由来の構成単位を有するポリイソシアネート(b2)を得て、ポリオール(b1)と上記ポリイソシアネート(b2)とから無溶剤型接着剤(B)を得る工程。
工程(3):前記インキ層上に、前記無溶剤型接着剤(B)を塗工して接着剤層を形成する工程。
【0114】
上記製造方法は、インキ層に含まれる着色剤と体質顔料の質量比が98:2~50:50であることで、接着剤中のポリイソシアネート(b2)が、インキ層に過剰に浸透することを抑制する、優れた浸透阻害効果を発揮する。これにより、ポリイソシアネート(b2)と、インキ層に含まれる残留水分との反応が抑制され、接着剤層の増粘が抑制でき、さらに、ポリオール(b1)とポリイソシアネート(b2)との反応が効率的に進行し、得られる積層体の残タックを抑制することができる。
【0115】
また、上記製造方法は、ポリオール(b1)と、重量平均分子量が1,000~5,000であり、ポリエステルポリオール由来の構成単位を有するポリイソシアネート(b2)とからなる無溶剤型接着剤(B)を用いることで、水性インキ層上に接着剤層を設ける際の課題であった、残留水分との反応による接着剤層の凝集力低下、及び、ポリイソシアネートの凝集力低下を向上させることができるため、得られる積層体の残タックを抑制できる。
【0116】
〔基材〕
第1及び第2の基材は特に制限されず、例えば、従来公知のプラスチックフィルム、紙、金属箔等が挙げられ、2つの基材は同種のものでも異種のものでもよい。
プラスチックフィルムとしては、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂のフィルムを用いることができ、好ましくは熱可塑性樹脂のフィルムである。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ABS樹脂、アクリル樹脂、アセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、繊維素系プラスチックが挙げられる。
第1及び第2の基材は、金属又は金属酸化物の蒸着層等からなるバリア層を備えていてもよく、該バリア層としては、アルミニウム、シリカ、アルミナ等の蒸着層が挙げられる。
【0117】
第1の基材は、好ましくはプラスチックフィルムである。プラスチックフィルムとしては、包装材に一般的に使用されるものが挙げられ、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリ乳酸(PLA)のようなポリエステル樹脂フィルム;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)のようなポリオレフィン樹脂フィルム;ポリスチレン樹脂フィルム;ナイロン6、ポリ-p-キシリレンアジパミド(MXD6ナイロン)のようなポリアミド樹脂フィルム;ポリカーボネート樹脂フィルム;ポリアクリルニトリル樹脂フィルム;ポリイミド樹脂フィルム;これらの複層体(例えば、ナイロン6/MXD6/ナイロン6、ナイロン6/エチレン-ビニルアルコール共重合体/ナイロン6)や混合体等が挙げられる。中でも、機械的強度や寸法安定性を有するものが好ましい。
【0118】
第2の基材が積層体の最外層となる場合、第2の基材はプラスチックフィルムの中でもシーラント基材であることが好ましい。
シーラント基材としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)や高密度ポリエチレン(HDPE)等のポリエチレン、酸変性ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)、酸変性ポリプロピレン、共重合ポリプロピレン、エチレン-ビニルアセテート共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、アイオノマーが挙げられる。
また、シーラント基材に数μm程度の高低差を有する凸凹を設けることで、滑り性や包装袋の引き裂き性を付与することができる。
【0119】
第1の基材の厚みは、任意に選択できるが、成形性、透明性の観点から、好ましくは5μm~50μmであり、より好ましくは10μm~40μmである。第1の基材の膜厚が5μm以上であると、積層体の剛性が上がって積層体としての強度が向上し、例えば、本発明の積層体及び本発明の包装袋に衝撃が加わった際に生じやすいデラミネーションや皴の発生を抑制できるため好ましい。第1の基材の厚みが50μm以下であると、積層体の
柔軟性が上がり、例えば、包装袋に内容物を充填する際の加工が容易になるため好ましい。
【0120】
第2の基材の膜厚は、任意に選択できるが、包装材料としての強度等の観点から、好ましくは5μm~500μmであり、より好ましくは10μm~250μmであり、さらに好ましくは15μm~200μmである。第2の基材の厚みが5μm以上であると、ヒートシール強度が上がり、本発明の包装袋に、より重い内容物を充填可能になり、包装袋としてのアプリケーションが拡大するため好ましい。また、第2の基材の厚みが500μm以下であると、コスト抑制につながり、且つ積層体の柔軟性が上がり、例えば、上述の内容物充填の加工性が向上するため好ましい。
【0121】
基材は、インキ層あるいは接着剤層との密着性を向上させるために、ラミネート又は蒸着前に、コロナ放電処理、オゾン処理のほか、酸素ガス若しくは窒素ガス等を用いた低温プラズマ処理;グロー放電処理等の物理的な処理;化学薬品を用いた酸化処理等の化学的な処理;接着剤層、プライマーコート剤層、アンダーコート層、若しくは蒸着アンカーコート剤層等を形成する処理;及びその他処理のような表面処理を行ってもよい。また、該表面処理後に無機蒸着層を設け、さらに、該無機蒸着層上にバリアコート層を設けてもよい。
【0122】
第1の基材及び第2の基材に用いる樹脂のフィルムは、例えば、前記の樹脂の群から選ばれる1種又は2種以上の樹脂を使用し、公知の製膜化法を用いて製造することができる。このような製膜化法としては、例えば、押し出し法、キャスト成形法、Tダイ法、切削法、インフレーション法、多層共押し出し法が挙げられる。さらに、フィルムの強度、寸法安定性、耐熱性の観点から、例えば、テンター方式、チューブラー方式を利用して1軸ないし2軸方向に延伸することができる。
【0123】
プラスチックフィルムは、必要に応じて、加工性、耐熱性、耐候性、機械的性質、寸法安定性、抗酸化性、滑り性、離形性、難燃性、抗カビ性、電気的特性、強度等を改良、改質する目的で、滑剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、補強剤、帯電防止剤、顔料等のプラスチック配合剤や添加剤等を添加することができ、その添加量としては、他の性能に悪影響を与えない範囲で目的に応じて任意に添加することができる。
【0124】
本発明の積層体は、例えば、第1の基材上に水性インキ(A)を印刷し、乾燥後、無溶剤型接着剤(B)を塗布し、第2の基材を重ね合わせた後、エ-ジング工程により接着剤を硬化させることで、製造することができる。インキ層及び第2の基材は、複数設けてもよい。例えばインキ層は、色インキ層/白インキ層、色インキ層/白インキ層/白インキ層、色インキ層/色インキ層/白インキ層/白インキ層、のような構成であってもよい。
【0125】
本発明の積層体の構成の一例を以下に挙げるが、これらに限定されるものではない。積層体が複数の接着剤層を備える場合、接着剤層の内少なくとも1層が、本発明の無溶剤型接着剤から形成された接着剤層であればよい。また、以下において、透明蒸着とはシリカ又はアルミナの蒸着層を意味する。
2軸延伸ポリプロピレン(OPP)/印刷層/接着剤層/無延伸ポリプロピレン(CPP)、
OPP/印刷層/接着剤層/AL蒸着CPP、
OPP/印刷層/接着剤層/AL蒸着ポリエチレンテレフタレート(AL蒸着PET)、OPP/印刷層/接着剤層/ポリエチレン(PE)、
OPP/印刷層/接着剤層/AL蒸着ポリエチレン(AL蒸着PE)、
PET/印刷層/接着剤層/CPP、
PET/印刷層/接着剤層/AL蒸着CPP、
PET/印刷層/接着剤層/AL蒸着PET、
PET/印刷層/接着剤層/PE、
PET/印刷層/接着剤層/AL蒸着PE、
PE/印刷層/接着剤層/CPP、
PE/印刷層/接着剤層/AL蒸着CPP、
PE/印刷層/接着剤層/AL蒸着PET、
PE/印刷層/接着剤層/PE、
PE/印刷層/接着剤層/AL蒸着PE、
ナイロン(NY)/印刷層/接着剤層/CPP、
NY/印刷層/接着剤層/AL蒸着CPP、
NY/印刷層/接着剤層/AL蒸着PET、
NY/印刷層/接着剤層/PE、
NY/印刷層/接着剤層/AL蒸着PE
【0126】
〔包装体〕
本発明の包装体は、上記積層体を使用したものであればよく、例えば、二方袋、三方袋、チャック付三方袋、合掌袋、ガゼット袋、底ガゼット袋、スタンド袋、スタンドチャック袋、二方袋、四方柱平底ガゼット袋、サイドシール袋、ボトムシール袋が挙げられる。本発明の包装体は、水性インキ由来の残留水酸基成分と無溶剤型接着剤由来のイソシアネート成分とが反応することで発生する残タックを抑制できるため、特に、水性インキ中に残留水酸基成分が残りやすい夏季や高湿度環境地域にて流通する包装袋に好適に用いられる。
【実施例】
【0127】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明する。実施例及び比較例中の「部」及び「%」は、特に指定がない場合は「質量部」及び「質量%」を意味する。
【0128】
〔数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)の測定方法〕
数平均分子量及び重量平均分子量は、昭和電工社製GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)「ShodexGPCSystem-21」を用いて測定した。GPCは溶媒に溶解した物質をその分子サイズの差によって分離定量する液体クロマトグラフィーであり、溶媒としてはテトラヒドロフラン、分子量の決定はポリスチレン換算で行った。
【0129】
〔水酸基価(OHV)の測定方法〕
共栓三角フラスコ中に試料約1gを精密に量り採り、トルエン/エタノール(容量比:トルエン/エタノール=2/1)混合液100mLを加えて溶解した。更にアセチル化剤(無水酢酸25gをピリジンで溶解し、容量100mLとした溶液)を正確に5mL加え、約1時間攪拌した。これに、フェノールフタレイン試液を指示薬として加え、30秒間持続する。その後、溶液が淡紅色を呈するまで0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液で滴定した。水酸基価は次の(式2)により求めた。水酸基価は樹脂の乾燥状態の数値とした。
(式2)水酸基価mgKOH/g=[{(b-a)×F×28.25}/S]/(不揮発分濃度/100)+D
S:試料の採取量(g)
a:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(mL)
b:空実験の0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(mL)
F:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の力価
D:酸価mgKOH/g
【0130】
〔酸価(AV)の測定方法〕
酸価は、樹脂1g中に含まれる酸性成分を中和するのに要する水酸化カリウムのミリグラム数であり、JIS K2501に準拠して、水酸化カリウム・エタノール溶液で電位差滴定を行い算出した。
【0131】
〔NCO含有率(質量%)の測定方法〕
200mLの三角フラスコに試料約1gを量り採り、これに0.5Nジ-n-ブチルアミンのトルエン溶液10mL、及びトルエン10mLを加えて溶解した。次に、フェノールフタレイン試液を指示薬として加え、30秒間保持した後、溶液が淡紅色を呈するまで0.25N塩酸溶液で滴定した。NCO含有率(質量%)は以下の(式3)により求めた。
(式3):NCO(質量%)={(b-a)×4.202×F×0.25}/S
ただし、S:試料の採取量(g)
a:0.25N塩酸溶液の消費量(ml)
b:空実験の0.25N塩酸溶液の消費量(ml)
F:0.25N塩酸溶液の力価
【0132】
<水性ウレタン樹脂(Ur1)の合成>
温度計、撹拌機、還流冷却管、撹拌装置、還流器を備えた反応容器に窒素ガスを導入しながら、PTG-3000SN(保土ヶ谷化学社製ポリテトラメチレングリコール官能基数2数平均分子量3000)11.5部、PEG#2000(日油製ポリエチレングリコ
ール官能基数2数平均分子量2000)2.3部、N,N-ビス(2-ヒドロキシプロピ
ル)アニリン0.4部、ジメチロールプロピオン酸3.6部及びイソホロンジイソシアネート7.2部を仕込み、90℃、3時間反応させた。冷却後、得られた水溶性樹脂に25%アンモニア水1.6部とイオン交換水75.0部の混合溶液を徐々に滴下して中和する
ことにより水溶化し、固形分25%の水性ウレタン樹脂(Ur1)の水溶液を得た。得られた水性ウレタン樹脂(Ur1)の酸価は60mgKOH/g、EO%は9.2%、重量平均分子量は36,000であった。
【0133】
<水性アクリル樹脂の調整>
水性アクリル樹脂(製品名GL-2439、星光PMC社製)をイオン交換水で希釈して、固形分25%の水性アクリル樹脂の水溶液を得た。
【0134】
<水性ウレタンアクリル樹脂の調整>
水性ウレタンアクリル樹脂(製品名WEM-200U、大成ファインケミカル社製)をイオン交換水で希釈して、固形分25%の水性ウレタンアクリル樹脂の水溶液を得た。
【0135】
<水性インキの製造>
(水性インキ(A1)、印刷物の作製)
フタロシアニン(トーヨーカラー社製LIONOL BLUE FG7400-G)20.0部、硫酸バリウム5.0部、シリカ1.0部、水性ウレタン樹脂(Ur1)20.0部、水10.0部、n-プロピルアルコール5.0部、を撹拌混合しサンドミルで練肉した後、水性ウレタン樹脂(Ur1)20.0部、水14.0部、プロピレングリコール2.0部、アセチレングリコール系化合物(日信化学工業社製サーフィノール420)0.5部、ポリエチレンワックス(三井化学社製ケミパールW300)2.0部、消泡剤(EVONIK社製TEGO FOAMEX1488)0.1部、アジピン酸ジヒドラジド0.2部、25%アンモニア水0.2部を攪拌混合し、水性インキ(A1)を作製した。
【0136】
得られた水性インキ(A1)を用いて、以下のようにして、「PET/インキ層」の構
成(印刷物1)、及び「NY/インキ層」の構成(印刷物2)で印刷を行った。
【0137】
〔印刷物1の作製:PET/インキ層〕
水性インキ(A1)を、フレキソ版(感光性樹脂版KODAK社製FLEXCELNXHデジタルフレキソプレート版厚1.14mm版線数150lpi)及びアニロックスロール(900lpi3cc/m2)を具備したフレキソ印刷機(MIRAFLEXCM)にて、コロナ処理ポリエステル(PET)基材(東洋紡社製「E5102」、厚み12μm)に速度200m/分にて印刷を行い、厚み0.9~1.1μmのインキ層を有する印刷物1を得た。なおインキ層の乾燥条件は色間ドライヤー100℃、トンネルドライヤー100℃とした。
【0138】
〔印刷物2の作製:NY/インキ層〕
基材をコロナ処理ナイロン(NY)基材(ユニチカ社製「エンブレムON-RT」、厚み15μm)に変更した以外は印刷物1と同様にして、厚み0.9~1.1μmのインキ層を有する印刷物2を得た。
【0139】
(水性インキ(A2~A18)の作製)
表1に示す各原料及び比率を用いた以外は上記A1と同様の方法で、水性インキA2~A18を作製した。
次いで、得られた水性インキA2~A18を用いて、A1と同様にして、「PET/インキ層」の構成(印刷物1)、及び「NY/インキ層」の構成(印刷物2)で印刷を行い、印刷物を得た。
【0140】
<最小自己相関長さSal>
水性インキA1~A18を用いて得られた「PET/インキ層」の構成である印刷物1について、各々、インキ層が上になるように基材層をガラス板上に固定し、白色光干渉式表面性状測定機(AМETEK(アメテック)社製タリサーフCCIMP-HS)を用いて、ISO 25178に準ずる形で、最小自己相関長さSal[μm]を求めた。得られた結果を表1に示す。
【0141】
【0142】
使用したアセチレングリコール系化合物は以下の通りである。
サーフィノール420:日信化学工業社製 エチレンオキサイド付加物(有効成分100%)
サーフィノール104PA:日信化学工業社製 エチレンオキサイド付加なし(有効成分50%)
【0143】
<ポリオール(b1)の製造>
(ポリエステルポリオール-1の合成)
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下槽及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、アジピン酸402.3部、ネオペンチルグリコール186.3部、1,6-ヘキサンジオール211.4部を仕込み、窒素気流下で攪拌しながら240℃まで昇温した。酸価が5mgKOH/g以下になるまで反応を続けた後に、徐々に減圧を行い、1mmHgで反応を継続し、余剰のアルコールを除去して、重量平均分子量1,950の、ポリエステルポリオール-1を得た。
【0144】
(ポリエステルポリオール-2~ポリエステルポリオール-6の合成)
原料を表2に記載の配合(質量部)に変更した以外は、ポリエステルポリオール-1と同様にしてエステル化反応を行い、ポリエステルポリオール-2~ポリエステルポリオール-6を得た。
【0145】
【0146】
(ポリオール(b1-1)の合成)
撹拌機、温度系、還流冷却管、滴下槽及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、数平均分子量400のポリプロピレングリコール252.0部、数平均分子量2,000のポリプロピレングリコール407.4部、グリセリンにポリプロピレングリコールを付加した数平均分子量400のトリオール82.8部、トリレンジイソシアネート57.8部を仕込み、窒素ガス気流下で攪拌しながら80℃~90℃で3時間加熱してウレタン化反応を行うことで、水酸基価170mgKOH/gのポリオール(b1-1)を得た。
【0147】
(ポリオール(b1-2)の合成)
原料を表3に記載の配合(質量部)に変更した以外は、ポリオール(b1-1)と同様にしてウレタン化反応を行い、ポリオール(b1-2)を得た。
【0148】
【0149】
表3中の略称を以下に示す。
P-400:数平均分子量400のポリプロピレングリコール
PTMG-1000:数平均分子量1,000のポリテトラメチレングリコール
P-2000:数平均分子量2,000のポリプロピレングリコール
グリセリンPPG付加物:グリセリンにポリプロピレングリコールを付加した数平均分子量400のトリオール
4,4’-MDI:4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート
2,4-MDIと4,4’-MDIの混合物:2,4-ジフェニルメタンジイソシアネートと4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートの質量比50/50の混合物
HDIビウレット:ビウレット型ポリイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートの三量体
【0150】
<ポリイソシアネート(b2)の製造>
(ポリイソシアネート(b2-1)の合成)
撹拌機、温度系、還流冷却管、滴下槽及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、ポリエステルポリオール-1を529.0部、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートと2,4-ジフェニルメタンジイソシアネートの混合物(重量比50:50)271.0部を仕込み、窒素ガス気流下で攪拌しながら80℃~90℃で3時間加熱してウレタン化反応を行うことで、重量平均分子量2,500、NCO含有率8.5%のポリイソシアネート(b2-1)を得た。
【0151】
(ポリイソシアネート(b2-2、b2-17~b2-32)の合成)
原料を表4及び表5に記載の配合(質量部)に変更した以外は、ポリイソシアネート(b2-1)と同様にしてウレタン化反応を行い、ポリイソシアネート(b2-2、b2-17~b2-32)を得た。
【0152】
(ポリイソシアネート(b2-3)の合成)
撹拌機、温度系、還流冷却管、滴下槽及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、ポリエステルポリオール-1を370.3部、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート189.7部を仕込み、窒素ガス気流下で攪拌しながら80℃~90℃で3時間加熱してウレタン化反応を行うことで、イソシアネート末端のプレポリマーを得た。その後、同反応容器にポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート240.0部を仕込み、70℃で1時間攪拌しながら混合することで、重量平均分子量2,000、NCO含有率15.0%のポリイソシアネート(b2-3)を得た。
【0153】
(ポリイソシアネート(b2-4~b2-16)の合成)
原料を表4に記載の配合(質量部)に変更した以外は、ポリイソシアネート(b2-3)と同様にしてウレタン化反応を行い、ポリイソシアネート(b2-4~b2-16)を得た。
【0154】
【0155】
【0156】
表4及び表5中の略称を以下に示す。
P-400:数平均分子量400のポリプロピレングリコール(2官能)
PTMG-1000:数平均分子量1,000のポリテトラメチレングリコール(2官能)
P-2000:数平均分子量2,000のポリプロピレングリコール(2官能)
グリセリンPPG付加物:グリセリンにポリプロピレングリコールを付加した数平均分子量400のトリオール(3官能)
4,4’-MDI:4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート
2,4-MDIと4,4’-MDIの混合物:2,4-ジフェニルメタンジイソシアネートと4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートの質量比50/50の混合物
HDIビウレット:ビウレット型ポリイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートの三量体
【0157】
<無溶剤型接着剤(B)の製造>
(無溶剤型接着剤(B-1~B-38))
表6及び表7の配合に従ってポリオール(b1)、ポリイソシアネート(b2)を混合し、無溶剤型接着剤(B-1~B-38)を得た。
【0158】
【0159】
【0160】
<積層体の作製>
[実施例1~61、比較例1~8]積層体C-1~C-69
得られた印刷物及び無溶剤型接着剤を用いて、表8に示す構成にて、以下に示す4種の積層体を製造した。
【0161】
(積層体1の作製:PET/インキ層/接着剤層/VM-CPP)
常温環境下にてラミネーターを用いて、印刷物1のインキ面と、厚み25μmのアルミ蒸着未延伸ポリプロピレンフィルム(東レ社製「2703」、以下、VM-CPP)のアルミ蒸着面とを、無溶剤型接着剤を用いて貼り合わせ、長さ1000mの積層体を得た。ラミネートの速度は250[m/分]、接着剤層の厚みは1.9~2.1μmとした。
貼り合わせた積層体を、40℃、65%RH環境下に保管し、48時間後に取り出すことで「PET/インキ層/接着剤層/VM-CPP」の構成である積層体1を得た。
【0162】
(積層体2の作製:NY/インキ層/接着剤層/LLDPE)
常温環境下にてラミネーターを用いて、印刷物2のインキ面と、厚み50μmのポリエチレンフィルム(三井化学東セロ社製「TUX-FCD」、以下、LLDPE)の処理面とを、無溶剤型接着剤を用いて貼り合わせ、長さ500mの積層体を得た。ラミネートの速度は100[m/分]、接着剤層の膜厚は1.9~2.1μmとした。
貼り合わせた積層体を、40℃、65%RH環境下に保管し、48時間後に取り出すことで「NY/インキ層/接着剤層/LLDPE」の構成である積層体2を得た。
【0163】
(積層体3の作製:PET/インキ層/接着剤層/VM-PET)
常温環境下にてラミネーターを用いて、印刷物1のインキ面と、厚み12μmのアルミ蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルム(麗光社製「ダイアラスターH27」、以下、VM-PET)のアルミ蒸着面とを、無溶剤型接着剤を用いて貼り合わせ、、長さ500mの積層体を得た。ラミネートの速度は100[m/分]、接着剤層の厚みは1.9~2.1μmとした。
貼り合わせた積層体を、40℃、65%RH環境下に保管し、48時間後に取り出すことで「PET/インキ層/接着剤層/VM-PET」の構成である積層体3を得た。
【0164】
(積層体4の作製:PET/インキ層/接着剤層/LLDPE)
常温環境下にてラミネーターを用いて、印刷物1のインキ面と、厚み50μmのLLDPEの処理面とを、無溶剤型接着剤を用いて貼り合わせ、長さ500mの積層体を得た。ラミネートの速度は100[m/分]、接着剤層の厚みは1.9~2.1μmとした。
貼り合わせた積層体を、40℃、65%RH環境下に保管し、48時間後に取り出すことで「PET/インキ層/接着剤層/LLDPE」の構成である積層体4を得た。
【0165】
<積層体の評価>
得られた積層体について、以下の評価を行った。結果を表8に示す。
【0166】
<積層体外観>
積層体1を、最外層から10m巻き出した地点の外観について、下記基準で評価を行った。
A:気泡無し(非常に良好)
B:平均直径1mm以内の気泡が数個発生(良好)
C:平均直径1mm以内の気泡が全体に発生(使用可)
D:平均直径1mmを超える気泡が全体に発生(使用不可)
【0167】
<接着強度>
積層体1を、幅15mm、長さ300mmに切り取って試験片とした。JIS K6854に基づき、インストロン型引張試験機を用いて、温度20℃、相対湿度65%の環境下で、300mm/分の剥離速度で引張り、PETとVM-CPPとの間のT型剥離強度[N/15mm]を測定した。測定は5回行い、その平均値を用いて下記基準で評価を行った。
A:2.0[N/15mm]以上(非常に良好)
B:1.5[N/15mm]以上、2.0[N/15mm]未満(良好)
C:1.0[N/15mm]以上、1.5[N/15mm]未満(使用可能)
D:1.0[N/15mm]未満(使用不可)
【0168】
<残タック抑制(常温評価)>
上記<接着強度>の評価で得られた接着強度評価済みの剥離された試験片を、PET/インキ層/接着剤層/VM-CPPの構成となるように、露出された接着剤面を再度インキ面と貼り合わせ、常温でニップを施した。該試験片を、JIS K6854に基づき、インストロン型引張試験機を用いて、温度20℃、相対湿度65%の環境下で、300mm/分の剥離速度で引張り、PETとVM-CPPとの間のT型剥離強度[N/15mm]を測定した。測定は5回行い、その平均値を用いて下記基準で評価を行った。
A:0.3[N/15mm]未満(非常に良好)
B:0.3[N/15mm]以上、0.6[N/15mm]未満(良好)
C:0.6[N/15mm]以上、1.0[N/15mm]未満(使用可能)
D:1.0[N/15mm]以上(使用不可)
【0169】
<残タック抑制(高温評価)>
測定温度を40℃にした以外は上記<残タック抑制(常温評価)>と同様にして、PETとVM-CPPとの間のT型剥離強度[N/15mm]を測定した。測定は5回行い、その平均値を用いて下記基準で評価を行った。
A:0.3[N/15mm]未満(非常に良好)
B:0.3[N/15mm]以上、0.6[N/15mm]未満(良好)
C:0.6[N/15mm]以上、1.0[N/15mm]未満(使用可能)
D:1.0[N/15mm]以上(使用不可)
【0170】
<インキ層ムラ>
積層体1を、最外層から10m巻き出した地点の、印刷された基材側からのインキ層の外観について、下記基準で評価を行った。
A:インキ層にムラが無い
B:インキ層の端部分で僅かにムラがある
C:インキ層の全体に渡りムラがある
【0171】
<ヒートシール剥離試験>
積層体2を、幅15mm、長さ300mmに切り取って試験片とし、シーラント面を重ねるように折り曲げ、150℃、2kg、1秒でヒートシールを施した。JIS K6854に基づき、インストロン型引張試験機を用いて、温度20℃、相対湿度65%の環境下で、300mm/分の剥離速度で引張り、引張強度が下がるまで試験を実施した。次いで、試験実施後のサンプルを観察し、形態によって下記基準で評価を行った。試験は5回行い、最も多かった形態を採用した。
A:ラミネートフィルムが破断したが、ヒートシール部分は完全に維持されている(非常に良好)
B:ラミネートフィルム破断は発生せず、LLDPEフィルムのみが破断した(良好)
C:ラミネートフィルム破断は発生せず、ヒートシール部分のNY/LLDPEが剥離し始め、そのままLLDPEフィルム単体の破断が発生した(使用可能)
D:フィルムの破断は一切発生せず、ヒートシール部分のNY/LLDPEが剥離するのみであった(使用不可)
【0172】
<経時折り曲げデラミ耐性>
積層体3を、幅10cm、長さ15cmに切り取って試験片とした。該試験片を三つ折りにして、折り目部分をゼムクリップで留めて固定した。該折り曲げ試験片を、温度40℃、相対湿度65%の環境下に最長7日間保管し、下記基準で評価を行った。
A:7日間保管し、デラミネーション無し(非常に良好)
B:5日経過時点でデラミネーションが確認された(良好)
C:3日経過時点でデラミネーションが確認された(使用可能)
D:1日経過時点でデラミネーションが確認された(使用不可)
【0173】
<耐熱強度>
積層体4を、幅15mm、長さ300mmに切り取って試験片とした。JIS K6854に基づき、インストロン型引張試験機を用いて、温度80℃の環境下で、300mm
/分の剥離速度で引張り、PETとLLDPEとの間のT型剥離強度[N/15mm]を測定した。測定は5回行いその平均値を用いて下記基準で評価を行った。
A:1.2[N/15mm]以上(非常に良好)
B:0.8[N/15mm]以上、1.2[N/15mm]未満(良好)
C:0.4[N/15mm]以上、0.8[N/15mm]未満(使用可能)
D:0.4[N/15mm]未満(使用不可)
【0174】
【0175】
評価結果によれば、本発明の積層体は、接着剤層の残タックが抑制され、且つ外観に優れていた。
特に、ポリイソシアネート(b2)にポリメリックジフェニルメタンジイソシアネートを10~35質量%の範囲で含む実施例4は、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネートを含まない実施例1よりも、接着剤層の凝集力が向上し、耐熱強度に優れていた。また実施例4は、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネートをポリイソシアネート(b2)中に5質量%含む実施例15よりも、接着剤層の凝集力が向上し、耐熱強度に優れていた。また実施例4は、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネートをポリイソシアネート(b2)中に40質量%含む実施例16よりも、接着剤層の柔軟性が向上し、接着強度に優れていた。
また、ポリイソシアネート(b2)の重量平均分子量が1,500~3,000の範囲である実施例4は、同分子量が3,000~5,000の範囲である実施例9よりも粘度が低減して外観性能が向上していた。また実施例4は、同分子量が1,000~1,500の範囲である実施例10よりも接着剤層の凝集力が向上し、接着強度に優れていた。
また、ポリイソシアネート(b2)に用いるポリオールに、ポリエステルポリオールとポリエーテルポリオールを併用した実施例21は、同成分にポリエステルポリオールのみを用いた実施例1よりも接着剤層の柔軟性が向上し、経時折り曲げデラミ耐性に優れていた。また、ポリイソシアネート(b2)の重量平均分子量が1,500~3,000の範囲である実施例21は、同分子量が3,000~5,000の範囲である実施26、30、31よりも粘度が低減し、外観性能に優れていた。また実施例21は、同分子量が1,000~1,500の範囲である実施例27、28よりも接着剤層の凝集力が向上し、接着強度に優れていた。
また、水性インキ(A)を用いて形成されたインキ層表面の最小自己相関長さ(Sal)が4~7μmの範囲である実施例4は、同値が4μmを下回る実施例42、43、45よりも耐熱強度に優れていた。これは、インキ層表面の表面積が低下し、接着剤層中のイソシアネート成分が、過度にインキ層に浸透することが抑制されたため、接着剤層中のポリオール(b1)とポリイソシアネート(b2)の反応が効率良く進行し、最適な凝集力が得られたことが要因であると推察している。また実施例4は、同値が7μmを上回る実施例40、44、47よりも、インキ層表面が平滑でラミネート時に気泡の噛み込み量が減少し、外観性能に優れていた。
また、水性インキ(A)を用いて形成されたインキ層表面の最小自己相関長さ(Sal)が4~7μmの範囲である実施例21は、同値が4μmを下回る実施例56、57、59よりも経時折り曲げデラミ耐性に優れていた。これは、インキ層表面の表面積が低下し、接着剤層中のイソシアネート成分が、過度にインキ層に浸透することが抑制されたため、接着剤層中のポリオール(b1)とポリイソシアネート(b2)の反応が効率良く進行し、最適な柔軟性を発現したためであると推察している。また実施例4は、同値が7μmを上回る実施例54、58、61よりも、インキ層表面が平滑でラミネート時に気泡の噛み込み量が減少し、外観性能に優れていた。
また、中和剤がアンモニアである水性インキ(A)を用いた実施例4は、中和剤がトリエチルアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、水酸化ナトリウムである実施例48、49、50よりも、インキ層ムラに優れていた。
【要約】
【課題】水性インキ層及び無溶剤型接着剤層を備え、接着剤層の残タックが抑制され、且つ外観に優れる積層体の製造方法の提供。
【解決手段】上記課題は、第1の基材層、インキ層、接着剤層、及び第2の基材層をこの順に備え、以下の工程(1)~(3)を有することを特徴とする積層体の製造方法によって解決される。
工程(1):第1の基材上に、着色剤と体質顔料とを質量比(着色剤:体質顔料)98:2~50:50の範囲で含む水性インキ(A)をフレキソ印刷して、インキ層を形成する工程。
工程(2):重量平均分子量が1,000~5,000であり、ポリエステルポリオール由来の構成単位を有するポリイソシアネート(b2)を得て、ポリオール(b1)と上記ポリイソシアネート(b2)とから無溶剤型接着剤(B)を得る工程。
工程(3):前記インキ層上に、前記無溶剤型接着剤(B)を塗工して接着剤層を形成する工程。
【選択図】なし