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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】コイル部品
(51)【国際特許分類】
   H01F 17/04 20060101AFI20231129BHJP
   H01F 1/153 20060101ALI20231129BHJP
   H01F 27/255 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
H01F17/04 F
H01F1/153 108
H01F27/255
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2017184138
(22)【出願日】2017-09-25
(65)【公開番号】P2018152543
(43)【公開日】2018-09-27
【審査請求日】2020-07-03
【審判番号】
【審判請求日】2022-08-03
(31)【優先権主張番号】10-2017-0031998
(32)【優先日】2017-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クォン、サン キュン
(72)【発明者】
【氏名】チュン、ジョン ホ
【合議体】
【審判長】山田 正文
【審判官】須原 宏光
【審判官】畑中 博幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-051329(JP,A)
【文献】特開2013-65844(JP,A)
【文献】特開2015-026736(JP,A)
【文献】特開2011-192729(JP,A)
【文献】国際公開第2010/084812(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/04
H01F 27/255
H01F 41/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイル部が内設された本体と、
前記コイル部と接続された外部電極と、を含み、
前記本体は、
メイン絶縁部に複数の第1磁性粒子及び前記第1磁性粒子よりサイズの小さい複数の第2磁性粒子が分散した構造を有し、
前記複数の第2磁性粒子は、複数のサブ絶縁部のそれぞれに分散して複数の複合体をなし、前記複数の複合体の一部における前記複数の第2磁性粒子の一部が前記サブ絶縁部から露出して前記第1磁性粒子と接触し、前記複合体における前記複数の第2磁性粒子の体積分率は80~90%であり、
前記複数のサブ絶縁部のうち一部のサブ絶縁部は、突出部を有し、
前記突出部を有する前記一部のサブ絶縁部と隣接する他のサブ絶縁部は、前記突出部に対応する凹部を有する、
コイル部品。
【請求項2】
前記複合体において、前記複数の第2磁性粒子のうち少なくとも一部は互いに接している形態である、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項3】
前記複数の複合体それぞれは前記複数の第2磁性粒子を含み、前記複数の複合体のうち少なくとも一部は互いに形状が異なる、請求項1又は2に記載のコイル部品。
【請求項4】
前記複数の複合体の形状はランダムな形態である、請求項3に記載のコイル部品。
【請求項5】
前記複数の複合体内に含まれた第2磁性粒子の個数はランダムな形態である、請求項3又は4に記載のコイル部品。
【請求項6】
前記複数の複合体内に含まれた第2磁性粒子の体積分率はランダムな形態である、請求項3から5のいずれか一項に記載のコイル部品。
【請求項7】
前記複数の第2磁性粒子は、前記複数の複合体のうち、同一のものに属しているもの同士の間隔が他の複合体に属しているもの同士の間隔より小さい、請求項3から6のいずれか一項に記載のコイル部品。
【請求項8】
前記複合体の平均直径は1~20μmである、請求項1から7のいずれか一項に記載のコイル部品。
【請求項9】
前記複数の第1磁性粒子の平均直径は5~20μmである、請求項1から8のいずれか一項に記載のコイル部品。
【請求項10】
前記複数の第2磁性粒子の平均直径は5μm未満である、請求項1から9のいずれか一項に記載のコイル部品。
【請求項11】
前記複数の第2磁性粒子のうち少なくとも一部は互いにサイズが異なる、請求項1から10のいずれか一項に記載のコイル部品。
【請求項12】
前記複数の第2磁性粒子のうち一部の平均直径は1μm未満である、請求項11に記載のコイル部品。
【請求項13】
前記メイン絶縁部は熱可塑性樹脂を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載のコイル部品。
【請求項14】
前記複数のサブ絶縁部は熱可塑性樹脂を含む、請求項1から13のいずれか一項に記載のコイル部品。
【請求項15】
前記複数のサブ絶縁部は軟化点が50℃以上の物質からなる、請求項1から14のいずれか一項に記載のコイル部品。
【請求項16】
前記メイン絶縁部と前記複数のサブ絶縁部とは互いに異なる物質からなる、請求項1から13のいずれか一項に記載のコイル部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
デジタルTV、モバイルフォン、ノート型パソコンのような電子機器の小型化及び薄型化に伴い、このような電子機器に適用されるコイル部品にも小型化及び薄型化が求められている。このような要求に応えるために、多様な形態の巻線タイプ又は薄膜タイプのコイル部品の研究開発が活発に行われている。
【0003】
コイル部品の小型化及び薄型化による主要な課題は、このような小型化及び薄型化にもかかわらず、従来と同等の特性を実現することである。このような要求を満足させるためには、磁性物質が充填されるコアで磁性物質の割合を増加させなければならないが、インダクタ本体の強度、絶縁性による周波数特性の変化などの理由により、その割合を増加させることに限界がある。
【0004】
コイル部品を製造する一例として、磁性粒子と樹脂などを混合したシートをコイルに積層した後、加圧して、本体を実現する方法が利用されている。この場合、コイル部品の透磁率特性などの側面から磁性粒子の含量を増加させることが有利である。そのため、微細な磁性粒子を利用したコイル部品が作製されたが、この場合、磁性粒子の比表面積が増加して、樹脂の含量も増加する必要があり、これにより磁性粒子の含量が減少するという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の様々な目的の一つは、微細な磁性粒子を用いながらも、これを分散させるための絶縁部の含量を最小化することができるコイル部品を提供することである。このようなコイル部品の場合、高い透磁率とDCバイアス(bias)特性を有することができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するための方法として、本発明は、一例を通じてコイル部品の新規な構造を提案しようとする。具体的に、コイル部が内設された本体と、上記コイル部と接続された外部電極と、を含み、上記本体は、メイン絶縁部に複数の第1磁性粒子及び上記第1磁性粒子よりサイズの小さい複数の第2磁性粒子が分散した構造を有し、上記複数の第2磁性粒子は、複数のサブ絶縁部のそれぞれに分散して複合体をなし、上記複合体における上記第2磁性粒子の体積分率は80~90%である。
【0007】
一実施形態において、上記複合体において、上記複数の第2磁性粒子のうち少なくとも一部は、互いに接している形態であることができる。
【0008】
一実施形態において、上記複合体は、複数個が備えられ、それぞれは上記複数の第2磁性粒子を含み、上記複数の複合体のうち少なくとも一部は互いに形状が異なることができる。
【0009】
一実施形態において、上記複数の複合体の形状は、ランダムな形態であることができる。
【0010】
一実施形態において、上記複数の複合体内に含まれた第2磁性粒子の個数は、ランダムな形態であることができる。
【0011】
一実施形態において、上記複数の複合体内に含まれた第2磁性粒子の体積分率は、ランダムな形態であることができる。
【0012】
一実施形態において、上記複数の第2磁性粒子は、上記複数の複合体のうち、同一の複合体に属しているもの同士の間隔が他の複合体に属しているもの同士の間隔より小さければよい。
【0013】
一実施形態において、上記複合体の平均直径は、1~20μmであることができる。
【0014】
一実施形態において、上記第1磁性粒子の平均直径は、5~20μmであることができる。
【0015】
一実施形態において、上記第2磁性粒子の平均直径は、5μm未満であることができる。
【0016】
一実施形態において、上記複数の第2磁性粒子のうち少なくとも一部は、互いにサイズが異なることができる。
【0017】
一実施形態において、上記複数の第2磁性粒子のうち一部の平均直径は、1μm未満であることができる。
【0018】
一実施形態において、上記メイン絶縁部は、熱可塑性樹脂を含むことができる。
【0019】
一実施形態において、上記サブ絶縁部は、熱可塑性樹脂を含むことができる。
【0020】
一実施形態において、上記サブ絶縁部は、軟化点が50℃以上の物質からなることができる。
【0021】
一実施形態において、上記メイン絶縁部と上記サブ絶縁部とは、互いに異なる物質からなることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の一例によるコイル部品の場合、微細な磁性粒子を使用しながらも、これを分散させるための絶縁部の含量を最小化することができる。これにより、コイル部品の透磁率とDCバイアス特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】電子機器に適用されるコイル部品の例を概略的に示す。
図2】本発明の一実施形態によるコイル部品を示す概略的な斜視図である。
図3図2のコイル部品の概略的なI-I'面の切断断面図である。
図4図3のコイル部品における本体領域を拡大して示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下では、添付の図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。しかし、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形されることができ、本発明の範囲は以下で説明する実施形態に限定されない。また、本発明の実施形態は、当該技術分野で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさなどはより明確な説明のために拡大縮小表示(又は強調表示や簡略化表示)されることがある。
【0025】
電子機器
図1は、電子機器に適用されるコイル部品の例を概略的に示す。
【0026】
図面を参照すると、電子機器には、多様な種類の電子部品が使用されることが分かり、例えば、応用プロセッサ(Application Processor)を中心として、DC/DC、Comm.Processor、WLAN BT/WiFi FM GPS NFC、PMIC、バッテリー(Battery)、SMBC、LCD AMOLED、オーディオコーデック(Audio Codec)、USB 2.0/3.0 HDMI(登録商標)、CAMなどが使用されることができる。この時、このような電子部品には、ノイズ除去などを目的として多様な種類のコイル部品がその用途に応じて適切に適用されることができ、例えば、パワーインダクタ(Power Inductor)1、高周波インダクタ(HF Inductor)2、通常のビーズ(General Bead)3、高周波用ビーズ(GHz Bead)4、コモンモードフィルター(Common Mode Filter)5などを挙げることができる。
【0027】
具体的に、パワーインダクタ(Power Inductor)1は、電気を磁場形態で保存し、出力電圧を維持して電源を安定させる用途などで使用されることができる。また、高周波インダクタ(HF Inductor)2は、インピーダンスをマッチングして必要な周波数を確保するか、ノイズ及び交流成分を遮断するなどの用途で使用されることができる。また、通常のビーズ(General Bead)3は、電源及び信号ラインのノイズを除去するか、高周波リップルを除去するなどの用途で使用されることができる。また、高周波用ビーズ(GHz Bead)4は、オーディオと関連した信号ライン及び電源ラインの高周波ノイズを除去するなどの用途で使用されることができる。また、コモンモードフィルター(Common Mode Filter)5は、ディファレンシャルモードでは電流を通過させ、コモンモードノイズのみを除去するなどの用途で使用されることができる。
【0028】
電子機器は、代表的にスマートフォン(Smart Phone)であることができるが、これに限定されず、例えば、個人用情報端末機(personal digital assistant)、デジタルビデオカメラ(digital video camera)、デジタルスチルカメラ(digital still camera)、ネットワークシステム(network system)、コンピュータ(computer)、モニター(monitor)、テレビ(television)、ビデオゲーム(video game)、スマートウォッチ(smart watch)などであってもよい。これらの他にも通常の技術者によく知られた他の多様な電子機器などであってもよいことはいうまでもない。
【0029】
コイル部品
以下では、本発明のコイル部品を説明するにあたり、便宜上、インダクタ(Inductor)の構造を例に挙げて説明するが、上述したように、他の多様な用途のコイル部品にも本実施形態で提案するコイル部品を適用できることはいうまでもない。
【0030】
図2は、本発明の一実施形態によるコイル部品の外形を概略的に示す斜視図である。また、図3は、図1のI-I'線による断面図である。この場合、図2の図示を基準として、下記の説明において「長さ」方向は図2の「X」方向、「幅」方向は「Y」方向、「厚さ」方向は「Z」方向と定義することができる。図4は、図3のコイル部品における本体領域を拡大して示すものである。
【0031】
図2及び図3を参照すると、本発明の一実施形態によるコイル部品100は、コイル部103及び支持部材102を含む本体101と、外部電極120、130と、を含む。
【0032】
本体101は、コイル部103と、その周辺の磁性物質と、を含む。このような磁性物質の例として、金属などの磁性粒子が樹脂に充填された形態が挙げられる。この場合、金属磁性粒子は、鉄(Fe)、シリコン(Si)、クロム(Cr)、ホウ素(B)及びニッケル(Ni)からなる群より選択されるいずれか一つ以上を含むことができ、例えば、Fe-Si-B-Cr系非晶質金属であることができるが、必ずしもこれに制限されるものではない。さらに具体的な例として、金属磁性粒子は、Fe-Si-B-Nb-Cr組成のナノ結晶粒系合金、Fe-NI系合金、Fe系合金などで形成されることができる。
【0033】
後述するように、本体101は、互いにサイズが異なる磁性粒子を含み、微細な磁性粒子をサブ絶縁部に高密度で分散させた形態である。このような構造により、微細な磁性粒子が本体101内に均一に分散することができ、コイル部品100の透磁率とDCバイアス特性を向上させることができる。
【0034】
コイル部103は、コイル部品100のコイルから発現される特性により、電子機器内において多様な機能を行う役割を果たす。例えば、コイル部品100は、パワーインダクタであってもよく、この場合、コイル部103は、電気を磁場形態で保存し、出力電圧を維持して電源を安定させる役割などを果たすことができる。この場合、コイル部103をなすコイルパターンは、支持部材102の両面上にそれぞれ積層された形態であることができ、支持部材102を貫通する導電性ビアを介して電気的に連結されることができる。コイル部103は、螺旋(spiral)状に形成されることができるが、このような螺旋状の最外側には、外部電極120、130との電気的連結のために本体101の外部に露出する引出部Tを含ませることができる。コイル部103をなすコイルパターンの場合、当技術分野で使用されるめっき工程、例えば、パターンめっき、異方めっき,等方めっきなどの方法を使用して形成されることができ、これらの工程のうち複数の工程を利用して多層構造で形成されることもできる。
【0035】
コイル部103を支持する支持部材102の場合、ポリプロピレングリコール(PPG)基板、フェライト基板又は金属系軟磁性基板などで形成されることができる。この場合、支持部材102の中央領域には貫通孔が形成されることができ、上記貫通孔には磁性材料が充填されてコア領域Cを形成することができる。上記コア領域Cは本体101の一部を構成する。このように、磁性材料で充填された形態でコア領域Cを形成することで、コイル部品100の性能を向上させることができる。
【0036】
外部電極120、130は、引出部Tとそれぞれ接続されるように本体101上に形成される。外部電極120、130は、電気伝導性に優れた金属を含むペーストを用いて形成することができ、例えば、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、スズ(Sn)又は銀(Ag)などを単独で、又はこれらの合金などを含む伝導性ペーストを使用することができる。また、外部電極120、130上にめっき層(図示せず)をさらに形成することができる。この場合、上記めっき層は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)及びスズ(Sn)からなる群より選択されるいずれか一つ以上を含むことができ、例えば、ニッケル(Ni)層とスズ(Sn)層が順次に形成されたものであることができる。
【0037】
図4を参照して、本体101の細部的な形態を説明する。本実施形態の場合、本体101は、メイン絶縁部112に複数の第1磁性粒子111、及びそれよりサイズの小さい複数の第2磁性粒子113が分散した構造を有する。この場合、複数の第2磁性粒子113は、複数のサブ絶縁部114のそれぞれに分散して複合体115をなし、複合体115における第2磁性粒子113の体積分率は80~90%と高い割合を占める。
【0038】
本実施形態の場合、第1磁性粒子111の平均直径は5~20μmであり、第2磁性粒子113の平均直径は5μm未満であることができる。サイズが互いに異なる第1及び第2磁性粒子111、113を混合することで、磁性粒子111、113の分散性と密度を向上させることができる。この場合、複合体115を構成する微細なサイズの第2磁性粒子113のうち少なくとも一部は、互いにサイズが異なることができる。換言すると、複数の第2磁性粒子113のうち一部は、さらに微細なサイズを有することができ、例えば、その平均直径は1μm未満であることができる。
【0039】
相対的にサイズの小さい微細粒子である第2磁性粒子113の密度を高めるために、高い圧力で加圧して得られた複合体115を使用する。これにより、第2磁性粒子113の体積分率が増加しても、比表面積は顕著に増加しないようにすることができる。このような高密度構造の場合、複合体115における複数の第2磁性粒子113間の間隔は最小化される。そして、図4に示すように、複合体115において、複数の第2磁性粒子113のうち少なくとも一部は、互いに接していることができる。また、同一の複合体115に属している第2磁性粒子113同士の間隔は、他の複合体115に属しているもの同士の間隔より小さければよい。このような形態の複合体115の場合、内部に微細気孔が存在することができ、これにより、成形の際に複合体115の形状が変わっても、応力発生による磁気特性の劣化を低減することができる。
【0040】
上述したように、複合体115における第2磁性粒子113の体積分率は80~90%と高い割合を占め、このような高密度構造は、サブ絶縁部114を破壊しない限度で最大圧力を加える成形工程によって得られる。これを具体的に説明すると、先ず、サブ絶縁部114に第2磁性粒子113をスラリー状に混合する。このようなスラリーを高い圧力で加圧成形した後、乾燥して、これを再び粉砕して複合体115を形成する。この場合、粉砕された複合体115の平均直径は1~20μmであることができる。
【0041】
このような工程により得られた複合体115は、複数個が備えられ、それぞれは複数の第2磁性粒子113を含む。また、乾燥後に再粉砕過程を経るため、図4に示すように、複数の複合体115のうち少なくとも一部は、互いに形状が異なることができる。さらに、複数の複合体115の形状は、ランダムな形態であることができる。また、ランダム形態は、第2磁性粒子113の個数や体積分率にも適用されることができる。換言すると、複数の複合体115内に含まれた第2磁性粒子113の個数はランダムな形態であることができ、これと同時にあるいは別に複数の複合体115内に含まれた第2磁性粒子113の体積分率もランダムな形態であることができる。
【0042】
このように得られた複合体115は、第1磁性粉末111と混合してメイン絶縁部112に分散したスラリー状に作製し、再度加圧成形する。このような成形体が必要な場合は複数個を作製することができ、これらを積層後に成形することで、上述した本体101を実現することができる。
【0043】
上述したように、複合体115のサブ絶縁部114が破壊されない状態で、複合体115は、高い体積分率で第2磁性粉末113を含むため、第2磁性粉末113の比表面積が増加することを最小化することができる、これにより、サブ絶縁部114の含量を増やさなくとも、本体101内における磁性粉末111、113の密度を増加させることができる。加圧成形過程において、サブ絶縁部114が破壊されないようにするためには、強い結合の凝集体を形成できる物質を使用することが好ましい。具体的に、サブ絶縁部114をなす物質として、熱硬化性樹脂(フェノール樹脂系、ポリイミド系)、熱可塑性樹脂(CPE、PP、EPDM、NBR)、ワックス系、無機系(水ガラス、マグネシウム酸化物など)などの物質が使用されることができる。この場合、サブ絶縁部114として熱可塑性樹脂を使用する場合、コイル部品100の作製時に使用される温間成形工程で発生し得る応力の影響を減らすことができ、本体101の成形密度をさらに向上させることができる。
【0044】
一方、微細なサイズの第2磁性粒子113は、成形圧力が増加すると形状が変わる可能性があるが、このような形状変形が原因でヒステリシス損失(hysteresis loss)が増加し、透磁率が減少するおそれがある。これに対し、本実施形態のように、複数の第2磁性粒子113を、凝集された形態の複合体115で実現する場合、成形圧力が増加しても第2磁性粒子113の間に存在するサブ絶縁部114により形状変形を減少させることができる。この場合、サブ絶縁部114をなす物質として、軟化点が50℃以上の物質を使用すれば、加圧成形時の応力発生を最小化することができる。
【0045】
メイン絶縁部112も上述した熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、ワックス系、無機系などの物質を使用することができ、サブ絶縁部114のような物質、例えば、熱可塑性樹脂を使用することができる。但し、メイン絶縁部112とサブ絶縁部114を常に同じ物質で形成しなければならないわけではなく、実施形態によって、メイン絶縁部112とサブ絶縁部114とは互いに異なる物質からなることもできる。
【0046】
一方、本発明の発明者らは、第1磁性粒子と第2磁性粒子の割合を異ならせて成形密度を比較した。下記の表1は、比較例と実施例による粒子の割合で本体を作製する場合の成形密度を比較したものである(成形圧力:1.5ton/cm)。下記の表1を参照すると、成形密度が高いほど磁性粒子の充填効率が向上して、透磁率特性などが向上することができる。ここで、比較例は、第2磁性粒子を上述した複合体構造で形成せず、第1磁性粒子と第2磁性粒子を一度に混合した後、成形した構造である。そして、第1磁性粒子は、約20μmの平均直径を有する粉末、第2磁性粒子は、約5μmと約1μmの平均直径を有する微細な粉末を使用した。
【0047】
【表1】
【0048】
上記表1の実験結果を検討すると、先ず、比較例2から分かるように、1μm水準の微細な第2磁性粒子を添加する場合、これを含まない比較例1に比べて成形密度が少量増加することが分かる。しかし、5μm又は1μmサイズを有する第2磁性粒子の粉末含量を増加させた場合、比較例3及び4の結果から分かるように、成形密度は低下した。これは、微細な磁性粒子の体積分率が増加して、粒子の比表面積も増加し、その結果、樹脂などのバインダーが枯渇して成形性が低下するためであると見なされる。
【0049】
これと比較して、実施例に示された結果から分かるように、第2磁性粒子を複合体構造で作製する場合、比較例に比べて成形密度が向上した。特に、第2磁性粒子の含量が高い実施例3及び実施例4の結果をみると、比較例で成形密度が減少したこととは異なり、微細粉末の含量を高くしても成形密度が増加することが分かる。また、実施例5及び実施例6から分かるように、その含量が増加しても、密度は大きく変わらないことを確認できる。
【0050】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の範囲はこれに限定されず、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から外れない範囲内で多様な修正及び変形が可能であるということは、当技術分野の通常の知識を有する者には明らかである。
[項目1]
コイル部が内設された本体と、
上記コイル部と接続された外部電極と、を含み、
上記本体は、
メイン絶縁部に複数の第1磁性粒子及び上記第1磁性粒子よりサイズの小さい複数の第2磁性粒子が分散した構造を有し、
上記複数の第2磁性粒子は、複数のサブ絶縁部のそれぞれに分散して複合体をなし、上記複合体における上記複数の第2磁性粒子の体積分率は80~90%である、コイル部品。
[項目2]
上記複合体において、上記複数の第2磁性粒子のうち少なくとも一部は互いに接している形態である、項目1に記載のコイル部品。
[項目3]
上記複合体は、複数個が備えられ、それぞれは上記複数の第2磁性粒子を含み、上記複数の複合体のうち少なくとも一部は互いに形状が異なる、項目1又は2に記載のコイル部品。
[項目4]
上記複数の複合体の形状はランダムな形態である、項目3に記載のコイル部品。
[項目5]
上記複数の複合体内に含まれた第2磁性粒子の個数はランダムな形態である、項目3又は4に記載のコイル部品。
[項目6]
上記複数の複合体内に含まれた第2磁性粒子の体積分率はランダムな形態である、項目3から5のいずれか一項に記載のコイル部品。
[項目7]
上記複数の第2磁性粒子は、上記複数の複合体のうち、同一のものに属しているもの同士の間隔が他の複合体に属しているもの同士の間隔より小さい、項目3から6のいずれか一項に記載のコイル部品。
[項目8]
上記複合体の平均直径は1~20μmである、項目1から7のいずれか一項に記載のコイル部品。
[項目9]
上記複数の第1磁性粒子の平均直径は5~20μmである、項目1から8のいずれか一項に記載のコイル部品。
[項目10]
上記複数の第2磁性粒子の平均直径は5μm未満である、項目1から9のいずれか一項に記載のコイル部品。
[項目11]
上記複数の第2磁性粒子のうち少なくとも一部は互いにサイズが異なる、項目1から10のいずれか一項に記載のコイル部品。
[項目12]
上記複数の第2磁性粒子のうち一部の平均直径は1μm未満である、項目11に記載のコイル部品。
[項目13]
上記メイン絶縁部は熱可塑性樹脂を含む、項目1から12のいずれか一項に記載のコイル部品。
[項目14]
上記複数のサブ絶縁部は熱可塑性樹脂を含む、項目1から13のいずれか一項に記載のコイル部品。
[項目15]
上記複数のサブ絶縁部は軟化点が50℃以上の物質からなる、項目1から14のいずれか一項に記載のコイル部品。
[項目16]
上記メイン絶縁部と上記複数のサブ絶縁部とは互いに異なる物質からなる、項目1から13のいずれか一項に記載のコイル部品。
【符号の説明】
【0051】
1 パワーインダクタ
2 高周波インダクタ
3 ビーズ
4 高周波用ビーズ
5 コモンモードフィルター
100 コイル部品
101 本体
102 支持部材
103 コイル部
111 第1磁性粒子
112 メイン絶縁部
113 第2磁性粒子
114 サブ絶縁部
120、130 外部電極
C コア領域
図1
図2
図3
図4