(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】X線蛍光分光法により製品を当該製品の組成に基づいて選択する装置、および対応する選択方法
(51)【国際特許分類】
G01N 23/223 20060101AFI20231129BHJP
【FI】
G01N23/223
(21)【出願番号】P 2020513909
(86)(22)【出願日】2018-08-30
(86)【国際出願番号】 IB2018056637
(87)【国際公開番号】W WO2019049000
(87)【国際公開日】2019-03-14
【審査請求日】2021-08-12
(31)【優先権主張番号】102017000100060
(32)【優先日】2017-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】520074125
【氏名又は名称】ディ.テク.ター エス.アール.エル.
(73)【特許権者】
【識別番号】520074136
【氏名又は名称】アッチエリー ヴァルブルーナ エス.ピー.エー.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ピッタ ジュゼッペ
(72)【発明者】
【氏名】アメンドゥニ マッシモ
(72)【発明者】
【氏名】ゾナ マウロ
【審査官】田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-228385(JP,A)
【文献】特開平01-244346(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0007869(US,A1)
【文献】特開2007-033207(JP,A)
【文献】実開平05-002057(JP,U)
【文献】特開平01-316605(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00-23/2276
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線蛍光分光法を介して製品を前記製品の組成に基づいて選択するための装置であって、製品試料に向かってX線ビーム(XB、XBC)を発するX線源と、前記製品試料により拡散されるX線ビーム(XBR)を受信するための、かつ、前記製品試料の化学組成を決定して前記製品試料の前記化学組成に対応する製品のタイプを選択するために分析され得る受信信号を生成するための粒子検出器とを備え、
前記装置は、
前記製品試料に対向する底部であって、
前記製品試料に対向しており前記X線ビームの軸及び前記粒子検出器の観測軸が通過する出力窓を有する前記底部と、
前記製品試料に対向する前記装置の前記出力窓と前記X線ビームの前記軸上の前記X線源との間に位置する第1の真空チャンバと、前記製品試料に対向する前記装置の前記出力窓と前記粒子検出器の前記
観測軸上の前記粒子検出器との間に位置する第2の真空チャンバと、
前記X線ビームの前記軸及び前記
観測軸を回転させるよう構成された、X線源と粒子検出器との間の角度の変化のシステムとを備える、
装置。
【請求項2】
前記X線源の下流に位置するポリキャピラリレンズを有する光学モジュールをさらに備え、前記光学モジュールは、前記X線ビーム(XB)を集束させるように構成され、さらに、前記第1の真空チャンバに真空気密式で結合されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
X線蛍光分光法を介して製品を前記製品の組成に基づいて選択するための前記装置
において、前記出力窓を有する前記底部は、前記第1の真空チャンバおよび前記第2の真空チャンバと前記製品試料との間の熱シールド
として機能するよう構成される、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
位置、特に、前記X線ビーム(XB、XBC)の焦点の深さおよび/または水平位置を修正すべく、前記X線ビーム(XB)の軸と前記粒子検出器の観測軸との間の角度を修正するように構成された機械的機構を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記機械的機構は、前記X線ビーム(XB)の前記軸と前記製品試料の表面に垂直な軸との間で計算される入射角を変えるための機械的サブ機構と、垂直な前記軸に対して前記観測軸を観測角に独立の態様で変位させるためのさらなる機械的サブ機構とを有する、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記製品試料の表面の高さを測定するためのモジュール、特に光学干渉計を備える、請求項1から5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
特にセラミック材料で作られた熱シールドとして動作するように構成された少なくとも1つの底部を有するハウジングを備え、当該底部は、前記製品試料に対向した前記出力窓を有して前記製品試料に対向した前記底部に対応する、請求項2から6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の装置を用いたX線蛍光分光法を介して、製品を前記製品の組成に基づいて選択する方法。
【請求項9】
製品を製造または搬送するためのラインの1または複数の制御点に選択用の前記装置を設置する段階と、
処理中の製品のタイプが所与の時間間隔において与えられると、前記処理中の製品のタイプを認識するように設計された重要な化学元素のセットを規定する段階と、
製造用または搬送用の前記ラインに沿って移動中の前記製品の試料の測定信号を、X線蛍光分光法を介して取得し、前記重要な化学元素のセットに限定して前記測定信号を分析する段階と
を備える、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記製品は金属基製品であり、前記ラインは鋼製造ラインである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
特に、前記製品試料の表面の高さを測定するための特に光学干渉計であるモジュールにより測定される高さの関数としての前記X線ビーム(XB)の位置、特に、焦点の深さおよび/または水平位置を変更および/または修正するために、前記X線ビーム(XB)の軸と前記粒子検出器の観測軸との間の角度を修正する段階を備える、請求項8または9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、X線蛍光分光法を介して製品を当該製品の組成に基づいて選択するための技術に関する。
【0002】
特に、本発明は、金属基製品を、特に上記製品の製造プロセスにおいて、選択し、上記製品の混合を防止するための技術に関する。
【背景技術】
【0003】
鋼合金の製造など、金属基製品の製造フローでは、鉄鋼物の精錬、熱処理および冷却処理という3つの主な製造段階が識別されている。
【0004】
従って、例えば製品の組成、いわゆる製品マークまたは製品名により識別される製品の単一のタイプの各々が使用目的上想定されている製造経路に従うことを保証すべく、異なる製造段階における製品の識別および追跡へ進む必要がある。
【0005】
試料に対する化学的分析の実行を想定した、接触型携帯タイプのXRF(X線蛍光)分光法計器の使用を伴う品質管理方法をこの目的のために用いることが知られている。
【0006】
XRF分光法技術は、X線蛍光検査を通じて試料の元素組成の検出を可能にする非破壊的分析技術である。X光線が、励起に続いて試料の原子により発される。励起は一般的に、接触している試料を高エネルギーのX光線およびガンマ光線で照射することにより得られる。
【0007】
上記XRF技術は、この技術が、方法の高い精度および再現性など、複雑な較正手順が必要としないこと、分析が短時間であること、決定され得る分析範囲が広いことにつながるという一連の利点のために、製品の化学的分析を実行するために工業分野において用いられている。
【0008】
XRF分光測光法分析は通常、静的な試料、すなわち、室温でアナライザと接触して設置され動いていないもので実行される。さらに、試料は、測定を実行するために予め処理されている。
【0009】
しかしながら、製造サイクル内で処理中の製品の任意の混合を選択および回避すべく、試料または製品、例えば、棒鋼が、
表面の油および酸化物など、異なるレベルの汚染の存在下、
5メートル/分と80メートル/分との間の範囲であり得る速度で移動中、
室温よりも高い温度、例えば、1200℃まで、
という条件で存在し得るラインに対してXRF分析を実行することは問題がある。
【0010】
従って、これは、鋳造中に行われる化学的分析と様々な処理段階において製品の化学的分析をモニタおよび比較するように、固定されたバーだけでなく、軸運動バーでも、異なる温度条件(オーブンからのまたは回転ラインに沿った出力などの熱い製品)で分析を実行することを必要とするであろう。
【0011】
結果的に、製造ラインに沿って固定条件で、室温で、かつ、アナライザと接触して材料に対してなされる試料試験であるに等しい既知の解決手段は、連続する製造フローにおいて化学的分析を行うことを可能にしない制限を示している。
【発明の概要】
【0012】
本明細書において説明される実施形態の目的は、既に論じたように、従来技術による装置およびプロセスを改善することである。
【0013】
以降の特許請求の範囲において再度言及する特性を有する装置のおかげで、様々な実施形態により、上記目的が達成される。
【0014】
特許請求の範囲は、本発明に関連して本明細書において提供される技術的教示の不可欠な部分を形成する。
【0015】
特に、本明細書において説明される解決手段は、X線蛍光分光法を介して製品を製品の組成に基づいて選択するための装置に関する。
装置は、製品試料に向かってX線ビームを発するX線源と、上記製品試料により拡散されるX線ビームを受信するための、かつ、上記製品試料の化学組成を決定して製品試料の上記化学組成に対応する製品のタイプを選択するために分析され得る受信信号を生成するための粒子検出器とを備え、
装置は、製品試料に対向する装置の出力と上記X線源との間に位置する第1の真空チャンバと、製品試料に対向する装置の上記出力と上記検出器との間に位置する第2の真空チャンバとを備える。
【0016】
変形実施形態において、X線蛍光分光法を介して製品を当該製品の組成に基づいて選択するための上記装置は、上記X線源の下流に位置するポリキャピラリレンズを有する光学モジュールをさらに備える。光学モジュールは、上記X線ビームを集束させるように構成され、さらに、上記第1の真空チャンバに真空気密式で結合されている。
【0017】
変形実施形態において、上記装置は、上記第1の真空チャンバおよび上記第2の真空チャンバと上記製品試料との間の熱シールドを備える。熱シールドは、装置の上記出力に窓を有する。特に、装置は、特にセラミック材料で作られた熱シールドとして動作するように構成された少なくとも1つの底部を有するハウジングを備える。
【0018】
変形実施形態において、装置は、位置、特に、X線ビームの焦点の深さおよび/または水平位置を修正すべく、上記X線ビームの軸と検出器の観測軸との間の角度を修正するように構成された機械的機構を備える。
【0019】
変形実施形態において、機械的機構は、ビームの軸と製品試料の表面に垂直な軸との間で計算される入射角を変えるための機械的サブ機構と、垂直な軸に対して観測軸を観測角に独立の態様で変位させるためのさらなる機械的サブ機構とを有する。
【0020】
変形実施形態において、装置は、製品試料の表面の高さを測定するためのモジュール、特に、光学干渉計を備える。
【0021】
また、本明細書において説明される解決手段は、上記で説明された装置を用いたX線蛍光分光法を介して製品を当該製品の組成に基づいて選択する方法に関する。
【0022】
変形実施形態において、方法は、
製品を製造または搬送するためのラインの1または複数の制御点に選択用の上記装置を設置する段階と、
処理中の製品のタイプが所与の時間間隔において与えられると、上記処理中の製品のタイプを認識するように設計された重要な化学元素のセットを規定する段階と、
製造用または搬送用の上記ラインに沿って移動中の上記製品の試料の測定信号を、X線蛍光分光法を介して取得し、上記重要な化学元素のセットに限定して測定信号を分析する段階と
を想定している。
【0023】
変形実施形態において、方法は、上記製品が金属基製品であり、上記ラインが鋼製造ラインであることを想定している。
【0024】
変形実施形態において、方法は、X線ビームの焦点の深さを、特に、製品試料の表面の高さを測定するための上記モジュールにより測定される高さの関数として変えるために、上記X線ビームの軸と検出器の観測軸との間の角度を修正する段階を想定している。上記モジュールは特に、光学干渉計である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
こ様々な実施形態が、添付図面を参照して、単に例としてここで説明される。
【
図2a】本明細書において説明される装置の軸および動きの図を示す。
【
図2b】本明細書において説明される装置の軸および動きの図を示す。
【
図2c】本明細書において説明される装置の軸および動きの図を示す。
【
図2d】本明細書において説明される装置の軸および動きの図を示す。
【
図3】本明細書において説明される装置の実装の一部分の断面図である。
【
図4】本明細書において説明される装置の概略斜視図である。
【
図5】本明細書において説明される装置の用途のある状況の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以降の説明において、例として提供される実施形態についての最大限の理解を可能にすべく、多くの具体的な詳細が提供される。実施形態は、具体的な詳細と共に、もしくは具体的な詳細なく、またはそうでなければ他の方法、構成要素、材料等で実装され得る。他の状況では、周知の構造、材料または動作が、実施形態の態様が不明瞭にならないように、詳細には示されないか、または説明されない。本明細書中の「実施形態」または「一実施形態」への言及は、当該実施形態に関連して説明される特定の特質、構造または特性が少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。従って、本明細書中の様々な箇所に現れ得る「実施形態において」または「一実施形態において」などの語句は、必ずしも1つの同じ実施形態を指すわけではない。さらに、特定の特質、構造または特性は、1または複数の実施形態において、任意の簡便な態様で組み合わされ得る。
【0027】
本明細書において提供される言及は、読み手の便宜のためだけのものであり、当該実施形態の範囲または意味を定義するものではない。
【0028】
図1は、X線蛍光分光法を介して製品を当該製品の組成に基づいて選択するための装置10の概略図である。上記装置10は、X線ビームXBを、入射軸Iに対応する当該ビームの軸に沿って製品試料20に向かって発するX線源、特に、X線管11を備える。製品試料20は具体的には、コンベアベルト51により搬送方向Mに運ばれる棒鋼である。X線管11の下流で、X線ビームXBは、ポリキャピラリレンズを有する、主軸ビームXBの軸に揃えられたポリキャピラリレンズを実質的に有する光学モジュール12を通過する。モジュール12は、X線ビームを集束ビームXBCに集束させるように構成される。上記集束ビームXBCは、真空チャンバ13を通過して製品試料20に到達し、反射したX線ビームXBRにおいて観測軸Oに沿って反射、より具体的には拡散される。上記の反射したX線ビームは、観測軸O上に設置された真空チャンバ14をさらに通過し、この例における観測軸Oが観測軸Oに揃えられたエネルギー分散固体粒子検出器15により集光および測定される。真空チャンバ13および14は、製品試料20に対向したチャンバ13の出力端子部分13aおよびチャンバ14の入力端子部分14aを閉じる、
図1に示されていないそれぞれのベリリウム窓を介して、製品試料20へと放つ。
【0029】
基本的に、源11と、ポリキャピラリレンズを有する光学モジュール12と、真空チャンバ13とは、光源アセンブリ111を識別し、一方で、真空チャンバ14および検出器15は、検出器アセンブリ115を識別する。部分13aは、
図4に示される、試料20に向かう集束ビームXBCの出力に実質的に対応し、その結果として、
図1に概略的に表される構成要素を収容するハウジング43の底部44の窓45に対応する。
【0030】
装置10は、源と検出器との間の角度αを変えるためのシステム18をさらに備える。システムは、入射軸Iおよび観測軸Oを中心として、実質的には、図面の面に垂直(続いてより完全に説明される方向Y)な源および検出器のそれぞれの回転軸を中心として回転し、端子部分13aおよび14aをそれぞれ通過することにより、上記源―検出器間の角度αを変えるように構成される。
図2a、
図2b、
図2c、
図2dを参照して以下でも論じるように、端子部分13aおよび14aは、好ましくは、特に、源11および検出器15の上記回転軸を中心として回転するピン13b、14b上に、回転可能に固定され、一方で、アセンブリ111および114の残りは、基本的に部分13a、14aに対してそれらの中央部分または遠位部分が、円の弧線に沿って動くように制限される(例えば、
図3に示されるガイド33、34)。
【0031】
源―検出器間の角度αを変えることで、測定焦点Fの位置の深さdを修正することにより、分析対象の試料20上に存在する原子を、材料の望ましくない表面層(例えば、10分の数ミリメートルの順番の様々な厚さで存在し得る油または酸化物の層)よりも下方にこれらが位置している場合でも、工具―目標間の距離を修正することなく、かつ、常に非接触の測定を行う可能性を保証することなく、励起することが可能である。
【0032】
干渉計16は、製品試料20の表面のプロファイルの高さを測定するために用いられ、その測定軸は、製品試料20の面に垂直であり、Pにより示される。上記干渉計16の製品試料20の表面のプロファイルに関する情報を組み合わせて用いることを介して、かつ、源11と検出器15との間の角度を変えるためのシステム18を介して、源―検出器間の角度αを、製品が動いている測定中に変わり得る表面の起伏として理解される試料の欠陥に応じて変えることが可能である。
【0033】
述べてきたように、製品試料20は、すなわち、鋼製造ラインに関する例において、棒鋼は通常、高温(最大で1200℃)であり、さらには、動いている。これら2つの理由で、XRF測定を短時間で実行できること、特に、X線源11および検出器15の熱による損傷を防止すべく製品20から離れて動かすことが必要である。しかしながら、そのように実行することで、測定の効率、精度および速度が悪化する。
【0034】
本明細書いにおいて説明される装置10は、真空チャンバ13および14とポリキャピラリレンズを有する光学モジュール12とが動きの軸Mに沿って製品20に続くように存在することを活用している。
【0035】
装置10はさらに、真空チャンバ13および14とポリキャピラリレンズを有する光学モジュール12の存在だけでなく、これに加えて、以下でより完全に説明される、製品20の高レベルの熱から源11および検出器15を遮蔽するための熱シールドを活用している。
【0036】
これにより、全体として、良好な解像度をあきらめることなく、X線源および検出器を検査中の製品から安全距離に維持しながら、XRF分析に必要とされる10分の1の測定時間よりも大きいかまたは等しい因子だけ低減することが可能になる。
【0037】
真空チャンバ13および14により表される真空システムを用いることにより、断熱として作用することに加え、X線ビーム、特に、集束ビームXBCおよび反射ビームXBRの光学的経路を改善することが可能になる。特に、集束X線ビームXBCの強度は、ベリリウム窓の通過は別としていかなる減衰も経ず、空気中の残りの距離(例えば、従来のシステムでの約10cmに対して1.5cm)に起因する減衰も経ない。結果的に、ビームの減衰が大幅に低減されるが故に、従来技術だと検出するには弱過ぎる信号が得られるSi、P、(いわゆる硫黄マークの)Sなど、またはそうでなければ、V、Cr、Mn、Fe、また、場合によっては、弱い信号(例えば、透過率が90%より下)が得られるCo、Ni、Cuなどの要素の認識が可能になり、従って、重要な測定信号を取得するためのより長い測定時間が必要となる。当該測定時間は、測定中の試料の高温と適合しない時間である。
【0038】
ポリキャピラリレンズを有する光学モジュール12を用いることにより、さらに、生成されたX光線の目標、すなわち、製品20への集束が可能になり、故に、より大きな数の蛍光X光線を取得し、必要とされる化学的分析を実行するために必要な曝露時間を低減することが可能になる。ポリキャピラリレンズを有する光学モジュール12で試料20に到達するX線ビームの強度と、ポリキャピラリレンズを有する光学モジュール12なしで試料20に到達するX線ビームの強度との間の比は、10:1よりも大きい、すなわち、1桁分より大きい。従って、測定時間は、1桁分またはそれより多く低減される。
【0039】
図1において真空チャンバ13がポリキャピラリレンズを有する光学モジュール12の下流のブロックセットとして表されていても、実際には、ポリキャピラリレンズを有する光学モジュール12は、端子部分13から最も遠い部分の内部ではあるものの、真空チャンバ13内に含まれる。これは、X線ビームの強度が空気中での伸びにより損なわれることなく、X線ビームの経路全体が真空内にあることを意味する。さらに、これにより、高温、汚れおよび湿度を伴う鋼製造地の地点における場合に製造地に存在する環境条件により、本明細書において提案される構成では真空自体の存在により保護されるポリキャピラリレンズを有する上記光学モジュール12が損傷することが防止される。真空チャンバ14に含まれる検出器15についても同様である。
【0040】
説明された装置10の動きの第1のモードを概略的に示す図が
図2aに表される。装置10は、
図3においてより詳細に示されている。
【0041】
図3を参照しても続いて示されるように、端子部分13aおよび14aは、好ましくは、源11および検出器15の上記回転軸を中心として回転する回転連結ピン13b、14b上に回転可能に固定され、一方で、アセンブリ111および114の残りは、基本的には部分13a、14aに対してそれらの中央部分または遠位部分が、円の弧線に沿って動くように制限される(例えば、
図3に示されるガイド33、34)。
【0042】
動きの軸Mに平行な横軸Xおよび縦軸Zが表されている(軸Yはシートの面から出ており、表されていない)
図2aにおいて、どのように上記連結ピン13b、14bが、従って端子13a、14aが、短距離、例えば、試料20の表面の上方約1センチメートルに位置することが示され得る。
【0043】
この第1のモードで、源11、すなわち、光源アセンブリ111は、X線ビームXBの入射軸Iにより、入射軸Iと垂直測定軸Pとの間で計算されるその入射角θiが変わるように、連結ピン13aを中心として回転しながら変位可能である。同じ態様で、検出器15は、ビームの反射角、従って、反射軸Rの傾きの結果的な変化に追従すべく、独自の観測軸Oを観測角θoに揃えるように変位され得る。従って、
図2aおよび2bを参照して説明される第1のモードでは、入射角θiおよび観測角θoを、対称的な態様で、すなわち、これらの角度が等しい値となるように変えることが想定されている。これらの角度の合計により、源―検出器間の角度αが決定される。このように、軸Zに沿った焦点Fの独自の位置が変わることで、試料20における焦点Fの深さdが変わるが、その横座標は、引き続き測定軸Pに対応する。好ましくは、
図3に示されるガイド33、34の機械的機構を介して、ポリキャピラリレンズを有する光学モジュール12と真空チャンバ13は、源―検出器間の角度αが変わった場合、入射軸Iに沿って揃った状態を維持しながら源11と共に回転する。チャンバ14および検出器15についても同様である。
【0044】
図2cおよび
図2dを参照すると、入射角θiが観測角θoに対して独立の態様で変わる第2のモードが示されている。
【0045】
図2cに示されるように、これは、
図2bでのようにこれらの角度が対称的である場合、焦点Fは、深さdに位置するが、測定軸Pの位置に対して長さWだけ変位していることを意味する。
【0046】
このように、例えば、
図2dに示されるように、観測軸(軸O
1、O
2、O
3により表される)を異なる態様で変位させ傾けて、3つの異なる位置(w
1,d
1)(w
2,d
2)(w
3,d
3)を得ることが可能である。
図2bに示されるように、入射角θiと観測角θoとの合計である源―検出器間の角度αを変えることにより、集束X線ビームXBCが焦点Fに集束された場合に上記焦点Fの深さdが変化し得る。源―検出器間の角度αは、好ましくは、
図2の入射軸Iと軸Pとの交点に対する回転を指す。
【0047】
図3は、入射軸Iおよび反射軸Rにより実質的に画定される面における断面図で、X線蛍光分光法を介して製品を当該製品の組成に基づいて選択するための装置10の実装を示す。示され得るように、本体30aから外側に突出し、真空チャンバ13を支持する水平ブラケット31を底部に含む中央本体30aを有するフレーム30が設けられる。上記真空チャンバ13は、テーパ状出力部分、すなわち、端子部分13aが、試料20(図には示されていない)上に出て、その結果として、さらなる断熱のためのセラミック材料のチャンバ17内に含まれる、真空状態に維持された円錐ノズルの形状を実質的に有する。水平ブラケット32がさらに、ブラケット31の突出方向とは反対の方向へ本体30aの底部から外側に突出し、テーパ状出力部分、すなわち、端子部分14aが試料20上に出た円錐ノズルのような形状でもあり、セラミック材料の対応するチャンバ19だけでなく検出器15に含まれる真空チャンバ14を支持している。
【0048】
水平ブラケット31および32上には、曲線の弧線のような形状のそれぞれのガイド33および34が設けられている。真空チャンバ13および14は、スライド35および36を介してガイドに結合され、部分13a、14aに対してそれらの上部または遠位部分に固定されている。部分13aおよび14aは、代わりに、フレーム30に固定されることにより、上記部分13a、14aを通る垂直軸を中心として回転できる。
図1に示されないモータ駆動式アクチュエータが、チャンバ13および14、すなわち、アセンブリ111および115をガイド33および34に沿って動かし、一方で、端部13a、14aは、固定されたままであるが故に、部分13aおよび14aにより表される上記連結点に対する軸Iおよび軸Oの傾きの変化を生じさせる。
【0049】
従って、基本的に、機械構成要素33、34、35、36、13b、14bは、位置、特に、X線ビームXBの焦点Fの深さdおよび/または水平位置wを修正すべく上記X線ビームXBの軸Iと検出器14の観測軸Oとの間の角度αを修正するように構成された機械的機構または機械的システムを識別する。上記のように、この機構は、機械構成要素33、34、13bにより識別される、ビームXBの軸Iと試料20の表面に垂直な軸P、すなわち、測定軸との間で計算される入射角θiを変えるための機械的サブ機構と、機械構成要素35、36、14bにより識別される、観測軸Oを垂直軸Pに対して観測角θoへ独立の態様で変位させることにより焦点Fの横座標wも変えることができるさらなる機械的サブ機構とを有する。
【0050】
図3は、どのように、ポリキャピラリレンズを有する光学モジュール12が、ポリキャピラリレンズ12aと源11に結合された向き支持部12bとを有することにより、ポリキャピラリレンズ12aを正確に揃えるべく複数の軸に沿って移動および回転し得るかも示す。
【0051】
図4は、代わりに、装置10のハウジング44を示す。ハウジング44は、フレーム30を内部に含む。装置10の全ての構成要素は、
図3に表されている(または
図1に概略的に表されている)。上記ハウジング43は、実質的にタンクまたはバスケットのような形状であり、製品試料20に対向し、出力窓45が設けられた底部44を有する。装置10からの出力における集束X線ビームXBCおよび反射X線ビームXFRだけでなく光学干渉計16のビームが出力窓45を通り得る。これに関連して、上記出力窓45から出るそれぞれの入射軸I、反射軸Rおよび干渉計測定軸Pが
図4に表されている。上記底部44は、製品試料20に対向しているので、特に、航空宇宙業界において熱シールドとして用いられるタイプのセラミック材料、例えばセラミックシリカで作られた熱シールドとして構成される。窓45は、
図3においても、ハウジング43が表されていなくても理解を容易にするために、破線で表されている。
【0052】
ハウジング43はさらに、自らを測位システム、例えば、
図4を参照して論じられるロボットマニピュレータ52に固定するためのバー46および47を上部に有する。
【0053】
49によりさらに、空圧式安全シャッターが示される。上記シャッター49は、窓45を閉じるために回転することにより、測定が行われる場合を除いて、ビームXBCの通過を防止する。言い換えると、
図4では測定を実行するために開いた状態で示されるシャッター49は通常、閉じている。シャッター49は、窓45を閉じるための部分49aの内部に、既知の化学組成、例えば、装置10を較正するための既知のマークの鋼でできているプレートを有する。
【0054】
従って、概して
図1から
図4を参照して、X線蛍光分光法を介して製品を当該製品の組成に基づいて選択するための装置10が説明された。装置10は、製品試料20に向かってX線ビームXBを発するX線源11と、上記製品試料20により拡散されるX線ビームXBRを受信するための、かつ、上記製品試料20の化学組成を決定して製品試料20の上記化学組成に対応する製品のタイプを選択するために分析され得る受信信号を生成するための粒子検出器15とを備える。上記装置10は、製品試料20に対向する装置10の出力である窓45と上記X線源11との間に位置する第1の真空チャンバ13と、製品試料20に対向する装置10の上記出力45と上記検出器15との間に位置する第2の真空チャンバ14とを備える。装置10は、上記X線源11の下流に位置するポリキャピラリレンズを有する光学モジュール12も備える。光学モジュール12は、上記X線ビームXBを集束させるように構成され、さらに、特に、上記第1の真空チャンバ13の上流で、上記第1の真空チャンバ13に真空気密式で結合されている。
【0055】
図5は、本明細書において説明される製品選択装置10の使用状況を概略的に表す。
【0056】
上記装置10は、制御モジュール60の制御下で動作する。制御モジュール60は、XRFシステムの動作、すなわち、特に、源11、検出器15、干渉計16および角度を変えるためのシステム18の動作を制御するように構成される。
【0057】
上記制御モジュール60は、ソフトウェア分析モジュール61を有する。ソフトウェア分析モジュール61は、装置10、すなわち、検出器15のXRF測定信号Yを受信し、当該信号を分析して、製造ラインに沿って移動する製品試料20の化学組成を決定する。図において、製造ラインは、参照符号50により示され、とりわけ、装置10が動作するコンベア51を有する。
【0058】
上記ソフトウェア分析モジュール61は、製造ライン50上で処理中の製品を認識するために、例えば、所与の時間間隔、例えば、1日以内、1週間以内または1か月以内を指す重要な化学元素のリストLSを入力として受信する。上記リストLSは概して、装置10により識別され得る化学元素のセットと比べて低減されたセットに関する。
【0059】
ソフトウェア分析モジュール61は、データベースCDBにアクセス関係で接続され、少なくとも当該時間間隔で処理中の製品または製造ライン上で処理され得るの様々なタイプまたはそうでなければ鋳造組成に対応する参照化学組成に格納されている。
【0060】
ソフトウェア分析モジュール61は、測定信号Yと、リストLSと、データベースCBDに含まれるデータとに基づいて、製品のタイプCを識別し、決定モジュール62に供給する。決定モジュール62は、当該タイプに基づいて、コマンドを製造ライン50に発して動作を実行する。例えば、通過する製品20が、予期しないタイプCのものである場合、決定モジュール62は、予期しない製品20を不良品ラインに向かって搬送すべく装置10が動作する制御点の下流の分岐点にコマンドを発し得る。これにより、異なるタイプの製品20、特に、異なるマークの棒鋼の混合が防止される。
【0061】
制御モジュール60は、製造ラインから同期信号T、すなわち、例えば、試料がコンベア51上に存在する時間走査を供給する信号も受信することにより、測定動作を同期できることに留意すべきである。
【0062】
また、制御モジュール60は、これに関連して、ロボットマニピュレータ52を制御するように構成される。ロボットマニピュレータ52は、製造ラインの測定および動作の要件に従って、例えばコンベア51に沿って装置10を動かす。
【0063】
制御モジュール60はさらに、インターネットもしくは携帯電話ネットワークまたはいくつかの他のタイプの通信ネットワークであり得るネットワーク70を通じて、データの表示およびコマンドの送信の両方のために制御モジュール60と通信するためのアプリケーションが設けられた端子80、パーソナルコンピュータおよび/またはスマートフォンおよび/またはタブレットに接続される。
【0064】
ソフトウェア分析モジュール61は概して、
ノイズの取得、
ノイズの補正、
ノイズの平滑化、
ノイズの除去、
測定された信号Yから得られるスペクトルのピークの検出、
スペクトルのデータの非線形フィッティングの動作、
ピークの積分、
測定された試料の化学組成を決定するための、ピークの積分の値からの化学元素の濃度の計算、および、
特に、製品のタイプCを認識するための、データベースDCBに格納された組成との測定された化学組成cの比較
という機能を、測定された信号Yに対して実行するように構成される。
【0065】
本明細書において説明される解決手段の実施形態の変形例における必ずしも全ての動作が、分析において存在し得るわけではない。例えば、ノイズの補正、平滑化および除去の動作のうちの1または複数は、存在し得ないが、可能な実施形態は、上記で言及された動作を、それらが示された順番で含む。
【0066】
従って、製造ライン50においてX線蛍光分光法を介して製品を当該製品の組成に基づいて選択するための説明された装置10は、様々な処理ラインに沿って、例えば、異なる各処理ラインの各分岐の前、入力および/または端部に設置され得る。
【0067】
既に述べられたように、装置10は、80メートル/分に達し得る速度で動いている目標の化学的分析および認識を実行できなければならない。故に、測定を短時間で完了させる必要がある。
【0068】
この目的のために、装置10により行われる測定の前に、処理中の製品20の異なるタイプCまたはマーク、すなわちリストLSを区別するために何が重要な化学元素であるかについてのインジケーションを供給することが想定されている。これにより、処理中の製品20のタイプの短時間での認識を確立することが可能になり、従って、異なるタイプの製品20間の混合、本明細書において説明される例では、異なる長い金属基断面要素間の混合という課題が防止される。
【0069】
実際には、XRF分光法測定を実行する装置10がひとたび、定量的測定、すなわち、測定中の製品20に存在し、処理中の製品のタイプの認識のために必要な化学元素の濃度の値の測定を、例えば、リストLSに示されるものに限定して行えば、製品20のタイプを認識し、異なる製品、例えば、長い金属基断面要素の間の混合を防止すべく、上記分析の結果を参照化学組成、例えば、データベースCDBに格納された製品のタイプ、すなわち、マークの鋳造化学組成または化学組成のデータと比較するには十分である。
【0070】
概して全てのまたは多数の化学元素の濃度の検証を想定し得る上記比較は、好ましくは、低減されたセットである重要な化学元素のリストLSに対する測定を介して行われるので、はるかに速く、測定時間、従って、高温への装置10の曝露の制限が可能である。
【0071】
説明された装置10で、例えば、ライン50を制御するモジュール60を介して、製造ラインの任意の地点、例えば、接合部の存在下での新しい処理動作の開始時または終了時に制御を実行することが可能である。概して、いかなる場合も、ライン上で用いられ得る制御点の数は制限されない。
【0072】
従って、一般的な形態では、本明細書において説明される解決手段は、本明細書において説明される装置のような装置を用いたX線蛍光分光法を介して製品を当該製品の組成に基づいて選択する方法を目的としている。
当該方法は、
製品を製造または搬送するためのラインの1または複数の制御点に上記選択装置を設置する段階と、
所与の時間間隔において処理中の製品のタイプが与えられると、処理中の上記製品のタイプを認識するように設計された重要な化学元素のセットを規定する段階と、
上記の製造ラインまたは搬送ラインに沿って移動する上記製品の試料の化学組成を、重要な化学元素の上記セットに限定して測定する段階と
を想定している。
【0073】
従って、これまでに述べてきたことから、説明された解決手段および対応する利点が明らかになる。
【0074】
有利なことに、本発明による装置により、連続的な製造フローにおいて、製品の試料に対する化学的分析を行うことが可能になる。
【0075】
説明された装置により、真空チャンバとポリキャピラリレンズを有するモジュールとの導入のおかげで、強い熱という課題が、断熱およびより短い取得時間の両方により解決される。
【0076】
上記構成要素により、動きの軸に沿った製品の後の光学的な改善も可能になる。
【0077】
これにより、全体として、良好な解像度をあきらめることなく、X線源および検出器を検査中の製品から安全距離に維持しながら分析時間をかなり低減することが可能になる。
【0078】
有利なことに、真空チャンバにより、高温、汚れおよび湿度を伴う鋼製造地の地点における場合に製造地に存在する環境条件も防止され、光学モジュールだけでなく源または検出器の損傷も防止される。
【0079】
当然ながら、本発明の原理を損なうことなく、詳細および実施形態は、保護範囲から逸脱することなく、単に例として本明細書において説明されたものに対して大幅にさえ変わり得る。上記保護範囲は、添付の特許請求の範囲により定義される。
【0080】
本明細書において説明され、特許請求の範囲に記載される装置および方法は、好ましくは、高温のライン上を移動する金属基製品、例えば、鋼断面要素の選択に適用される。
【0081】
しかしながら、本明細書において説明される装置および方法は、必ずしも金属製品ではないが、組成がXRF分光法を介して分析され得る製品にも適用される。加えて、当然ながら、装置に損傷を生じさせないようにするためなど、複数の温度において製品を検査することも可能である。