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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】押出し容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 35/10 20060101AFI20231129BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
B65D35/10 A
B65D65/40 D
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019049534
(22)【出願日】2019-03-18
(65)【公開番号】P2020152383
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2022-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】弁理士法人小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 剛史
【審査官】森本 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-061859(JP,A)
【文献】特開2016-124276(JP,A)
【文献】特開2012-162283(JP,A)
【文献】特開2006-082852(JP,A)
【文献】特開2017-159927(JP,A)
【文献】特開昭55-089069(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 35/10
B65D 65/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
柔軟性のある胴部を有し、押圧して内容物を注出する押出し容器において、
少なくとも、バリア性を有するフィルムからなるバリア層と、前記バリア層の裏両方に設けられた融着可能なフィルム融着層と、からなる積層フィルムを襞状に折り畳んだ状態で頭基材部内側に溶着して形成された頭部を有し、
前記頭部は、内側に注出流路を有する注出口と、前記注出口に連続し、傾斜して前記胴部の径まで広がる肩部とからなり、
前記バリア性を有するフィルムは、形状保持特性を有するフィルムおよび酸化金属蒸着層を有するフィルムからなり、
前記頭基材部は、融着性を有する樹脂と、バリア性を有する樹脂と、からなるブレンド樹脂によって形成され、
前記注出口および前記肩部が、襞状に外側に突出した前記積層フィルムを一定方向に平滑に折り畳んだ状態で溶着して形成されてなることを特徴とする押出し容器。
【請求項2】
バリア性を有するフィルムが、ポリアミド、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートを主体としたフィルムからなることを特徴とする請求項1に記載の押出し容器。
【請求項3】
形状保持性を有するフィルムが、環状オレフィン樹脂、環状オレフィンコポリマー樹脂を主体とした樹脂、あるいは、一軸延伸高密度ポリエチレンフィルム、または、ポリブチレンテレフタレートのいずれかを主成分とし、その他のポリエステル系樹脂や、ジカルボン酸と共重合したポリブチレンテレフタレートを含む樹脂系からなる二軸延伸フィルムからなることを特徴とする請求項に記載の押出し容器。
【請求項4】
バリア性を有する樹脂が、メタキシレンジアミン・アジピン酸共重合体、6-ナイロン、6,6ナイロン、6-6,6-共重合ナイロン、のいずれかのアミド樹脂、あるいは、前記メタキシレンジアミン・アジピン酸共重合体と、6-ナイロン、6,6ナイロン、6-6,6-共重合ナイロン、の少なくともいずれかと、をブレンドしたアミド樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物(エチレン・ビニルアルコール共重合体)、からなることを特徴とする請求項に記載の押出し容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、練り歯磨きなどの高粘度の液体もしくはペースト状のものを内容物として収納し、柔軟性のある容器胴部を有し、押圧して内容物を注出する押出し容器に関する。
【背景技術】
【0002】
練り歯磨き、バター、マヨネーズ、ケチャップ、接着剤などの高粘度の液体もしくはペースト状のものを内容物として収納する容器は、柔軟性のある容器胴部を有し、押圧して内容物を注出する押出し容器を使用してきた。これらは、主に円筒状の押し出しチューブを切断して、それに頭部を融着したり、積層シートを丸めて背をシールして胴部を形成しそれに頭部を溶着したりした容器や、薄肉の軟質ブロー成形容器などからなり、多くの食品、非食品分野で使用されている。
【0003】
頭部を成形する方法としては、射出成形、圧縮成形などの方法が採用され、成形と同時に胴部に融着する方法と、成形した頭部を別工程で融着する方法が知られている。
しかし、それらの頭部は、一般的にポリエチレン等の単体樹脂からなり、胴部がバリア性の高い保存性能の高い構成であっても、頭部から酸素等が透過するなど、バリア性を高められない要因になっていた。
【0004】
この問題に対し、例えば、特許文献1では、
笠状の肩部の上端開口部から短円筒状の口筒部を立設したヘッド部に、アルミラミネートシート製の胴部の上端を溶着固定したアルミラミネートチューブ容器において、
前記ヘッド部を、厚みが20~100μmからなる外面樹脂層と内面樹脂層との間に、厚みが20~60μmからなるアルミ箔層と剛性を高めて曲がり変形を規制する補強樹脂層とを加えた4層の積層構造を有して構成され、少なくとも前記肩部の内面全域を形成するアルミラミネートシート製のリング状をしたバリアシート片と、該バリアシート片を溶着固定するヘッド樹脂とで構成し、
前記ヘッド樹脂の流動時の押下げ力によって前記バリアシート片の外周端部に曲がり変形が生じるものであり、
前記バリアシート片の外周端部を前記ヘッド樹脂の覆い樹脂片で覆い、該覆い樹脂片の厚み幅を、該覆い樹脂片で覆われた外周端部の端部幅よりも大きい幅寸法に設定すると共に、
前記バリアシート片の内表面に対する覆い樹脂片の内周端面の角度である端面角度を、前記バリアシート片の外周端部の曲がり変形角度よりも大きい角度としたことを特徴とするアルミラミネートチューブ容器を提案している。
【0005】
しかしながら、ヘッド部のバリアシート片におけるバリア層がアルミ箔であり、かつ、バリアシート片はヘッド形状に合わせて成形されるので、バリア層が折り込まれたり、伸ばされたりして、亀裂が生じ、バリア性が低下する問題があった。
また、バリアシート片は、ヘッドの内、肩部分には被覆できても、ネジ部や注出口にまで被覆しにくい。この為、バリア層によって遮蔽できない部分が生じ、バリア壁を完全に形成できない問題があった。
また、アルミ箔を使用することによって、充填後の内容物において、金属探知機やX線検査機(X線透過)等による異物混入の有無を確認する充填後検査ができなかった問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5403394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、バリア層が亀裂や破断が発生しにくく、注出口までバリア層を設けることが可能で、かつ、内容物充填後の金属探知機等による異物検査が可能な押出し容器を得ることが、本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の押出し容器は、
柔軟性のある胴部を有し、押圧して内容物を注出する押出し容器において、少なくとも、バリア性を有するフィルムからなるバリア層と、前記バリア層の裏両方に設けられた融着可能なフィルム融着層と、からなる積層フィルムを襞状に折り畳んだ状態で頭基材部内側に溶着して形成された頭部を有し、前記頭部は、内側に注出流路を有する注出口と、前記注出口に連続し、傾斜して前記胴部の径まで広がる肩部とからなり、前記バリア性を有するフィルムは、形状保持特性を有するフィルムおよび酸化金属蒸着層を有するフィルムからなり、前記頭基材部は、融着性を有する樹脂と、バリア性を有する樹脂と、からなるブレンド樹脂によって形成され、前記注出口および前記肩部が、襞状に外側に突出した前記積層フィルムを一定方向に平滑に折り畳んだ状態で溶着して形成されてなることを特徴とする押出し容器である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の押出し容器は、バリア層として、フィルムを使用しているので破断したり、亀裂が入ったりしにくく、かつ、注出口までバリア壁を形成することが可能であるので、高いバリア性を有することができる。
また、金属箔を使用していないので、X線透過によって内容物充填後の異物検査が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の押出し容器で、キャップを螺合して閉じた状態の縦断面図と、その部分的な拡大断面図である。
図2】本発明の押出し容器で、積層フィルムを頭部形状に加工する工程の初期で、積層フィルムを頭部形状に加工する工程を示す工程図である。
図3】本発明の押出し容器で、頭部内側形状に加工した積層フィルムの外側襞部をプレスし、平滑に折り畳んだ状態に加工する工程を示す工程図である。
図4】本発明の押出し容器で、射出成形金型に頭部形状に加工した積層フィルムを挿入し、頭基材部樹脂を射出し、頭部を成形する工程を示す工程図である。
図5】本発明の押出し容器で、射出成形金型に頭部形状に加工した積層フィルムと胴部とを挿入し、頭基材部樹脂を射出しながら、胴部と積層フィルムと一体化した押出し容器を成形する工程を示す工程図である。
図6】本発明の押出し容器で、頭部近傍で酸素や香料などの流出状況を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の押出し容器の実施形態例について、図を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明の一例を示す押出し容器1で、キャップ4を螺合した状態の縦断面図である。
本発明の押出し容器1は、薄肉で可撓性が高く柔軟性を有する胴部2と、胴部2の一端に融着し剛性を有する頭部3と、頭部3に螺合あるいは打栓によって嵌合するキャップ4と、から構成されている。
押出し容器1は、上記柔軟性のある胴部2を押圧することによって、内圧が上昇し、外気に対して高い気圧の容器内部から、気圧の低い外部へ、内容物を注出することによって、平衡を取る作用が働き、内容物が注出可能となる。
【0012】
胴部2は、少なくとも最内層にシーラント層23を有した筒状のシートから形成されている。胴部は異形押出し成形法によりパイプ状に押出したチューブであってもよいし、長方形、あるいは正方形のフィルムの左右両端を一部重ね合わせて筒状にし、その合わせた
端部近傍を融着した胴部であってもかまわない。
胴部2は、上端に頭部3と融着する肩融着部21を形成し、下端は、内容物を充填後、シーラント層23同士を合わせて底シール部22を形成して、押出し容器1を形作っている。
本発明の押出し容器1に使用される胴部2は、バリア層24を含み、かつ、可撓性のあるシートやチューブから形成されている。この為、キャップ4を外し、胴部2を外側から押圧することによって、内容物が注出口から注出可能となっている。
【0013】
頭部3は、キャップ4と嵌合し、内側に注出流路31を有する注出口32と、注出口32から傾斜して胴部2の径まで広がる肩部33と、から構成されている。
頭部3を形成する頭基材部30内側には、少なくとも、バリア性を有するバリア層341と、その表裏のいずれか一方または両方に融着可能なフィルム融着層342と、からなる積層フィルム34が折り畳んだ状態で溶着している。尚、フィルム融着層342はバリア層341の表裏に設けるのが好ましい。
【0014】
積層フィルム34の中間層に使用されるバリア層341は、バリア性を有するフィルムによって形成される。
バリア性を有するフィルムの例として、例えば、ポリアミド、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートを主体としたフィルムなどが使用できる。また、20μm以下の金属箔フィルムを用いても良い。
上記、バリア層に使用されるフィルムには、さらに、内面、あるいは外面に、金属等の無機酸化物からなる蒸着層を設けたものであってもかまわない。
無機酸化物としては、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシュウム、酸化カリウム、酸化錫、酸化ナトリウム、酸化ホウ素、酸化チタン、酸化鉛、酸化ジルコニウム、酸化イットリウムなどの金属の酸化物が使用できる。中でも生産性、価格面から酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウムなどが好ましい。
さらに、形状保持性を有する二軸延伸共重合ポリエステルフィルムである東洋紡株式会社製オリエステル(登録商標)や、環状ポリオレフィン樹脂、環状ポリオレフィンコポリマー樹脂、あるいは一軸延伸高密度ポリエチレンフィルムなどをさらに積層したものであっても良い。
特に、ポリブチレンテレフタレートを主成分とし、その他のポリエステル系樹脂や、ジカルボン酸と共重合したポリブチレンテレフタレートを含む樹脂系からなる二軸延伸フィルムは、形状保持性や折り畳み性が高く、かつ、亀裂が生じにくいので、バリア性の低下を抑えられる。
【0015】
積層フィルム34の表裏に使用されるフィルム融着層342は、シーラント樹脂によって形成される。
フィルム融着層342は、内容物に接しても劣化したりせず、安定した樹脂であると共に、頭基材部30に融着可能な材質である必要がある。
使用する樹脂として、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン・メチルアクリレート共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体、などが使用できる。
【0016】
具体的に、本発明に用いる積層フィルムとしては、
ポリエチレン20μm/酸化珪素蒸着ポリエチレンテレフタレート12μm/ポリエチレン20μm、
ポリエチレン20μm/酸化珪素蒸着ポリエチレンテレフタレート12μm/オリエステル(R)30μm/ポリエチレン20μm、
一軸延伸高密度ポリエチレン23μm/酸化珪素蒸着ポリエチレンテレフタレート12μm/一軸延伸高密度ポリエチレン23μm、
などの構成が用いられる。
【0017】
頭基材部30は、胴部2 の内面と端面に融着し、押圧等によって肩融着部21近傍に強いストレスを加えても、容易に剥離せず、ストレスクラッキングなどの耐性も高い、強固な融着強度を必要とする。
さらに、バリア層を含む積層フィルムを内面で融着可能な樹脂が使用される。
さらに、キャップと嵌合し、容器の密封性を確保する必要がある。
すなわち、螺合するキャップに対して、そのキャップの回転による想定回数の開閉頻度において、密封強度を確保する必要がある。
打栓式のキャップであれば、打栓強度を担保する必要がある。
【0018】
頭基材部の成形に使用する樹脂として、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、などの融着性の樹脂が使用できる。
【0019】
しかし、この頭基材部は、折り畳んだ状態で溶着したバリア性の積層フィルムの外側にあって、このバリア性の積層フィルムと、胴部と、を融着しているが、この頭基材部にバリア性がないと、図6で示すように、それらの隙間を通して、酸素や水蒸気等の流入、あるいは香料7などの流出が生ずる。
【0020】
そこで、頭基材部を成形する樹脂として、上記融着性の樹脂と、バリア性の樹脂と、をブレンドしたブレンド樹脂によって形成することが望ましい。
バリア性の樹脂としては、メタキシレンジアミン・アジピン酸共重合体、6-ナイロン、6,6―ナイロン、6-6,6-共重合ナイロン、などのアミド樹脂、または、前記メタキシレンジアミン・アジピン酸共重合体と、6-ナイロン、6,6―ナイロン、6-6,6-共重合ナイロン、の少なくともいずれかと、をブレンドしたアミド樹脂、あるいは、エチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物(エチレン・ビニルアルコール共重合体)、などが考えられる。
バリア性樹脂が、エチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物や、6-ナイロン、6,6―ナイロン、6-6,6-共重合ナイロンなどのポリアミド系樹脂の場合、相溶性を向上するように、無水フタル酸変性したポリエチレン等を添加することが望ましい。
バリア性樹脂を融着性の樹脂にブレンドすることによって、バリア性を向上させることが可能となる。
【0021】
図2は、本発明の押出し容器で、積層フィルム34を頭部形状に加工する工程の初期で、積層フィルム34を頭部形状に加工する工程を示す工程図である。
図2-1で示すように、積層フィルム34は、フィルム固定治具によって周縁を上下で挟み、その状態で、遠赤外線ヒーター5等で加熱され、軟化される。
この軟化した状態で、そのまま、真空成形や圧空成形、あるいは真空圧空成形の第一成形コア6に押し当てられ、空圧よって、内面を肩形状に成形される。
図2-1では、成形コア61の頭部と肩との境界近傍等に、真空孔62を設けているが、この真空孔62は真空ポンプに繋がって、被された積層フィルムと成形コア61との隙間の空気を抜いて、内面を成形コア61形状に密着し、成形される。もちろん、成形コア61は冷却機構も内蔵して、加熱軟化した積層フィルムの熱を吸収・冷却して、頭部内面形状に維持可能にしている。
この時、成形コア61の外側に釜を被せ、積層フィルム外側の気圧を高圧にして、圧空成形とすることでも良い。
【0022】
図2-2は、上記工程で加工された積層フィルムを頭部内面形状に成形した状態を示す斜視図である。
内面は成形コア61形状に密着し、頭部内面形状になり、外側は、襞状に積層フィルムが形成されている。
【0023】
図3は、頭部内側形状に加工した積層フィルムの外側襞部をプレスし、平滑に折り畳んだ状態に加工する工程を示す工程図である。
図3-1では、内側を頭部形状に成形された積層フィルムは、内側に成形コアを挿入した状態で、外側から、圧縮治具で、襞状になった積層フィルムの外側を加圧し、外側を圧縮成形する。
この工程は、図2の真空成形直後に、積層フィルムの外側襞部が冷却されない内に、加工することが好ましく、ほぼ、同時であってもかまわない。もし、積層フィルムの外側襞部が冷却された場合には、積層フィルムの外側を再度加熱する必要がある。
さらに、バリア層が破損されないように、圧縮治具をゆっくり回転しながら圧縮すると、始めに接触した襞が、回転方向に倒され、傘を折り畳んだように、一定の方向に向って均一に倒すことができる。
この時、注出口先端の開口孔343を開孔することが望ましいが、追加した工程で開口しても良い。
この図3の工程と図2の工程を、超音波融着ホーンで加圧しながら一度に溶着加工しても良いし、インパルスシーラーを用いて形状加工を行なっても良い。
【0024】
図3-2は、上記工程で加工された積層フィルムを外面も平滑に頭部形状に成形した状態を示す斜視図である。
外面も、隣り合う襞が折り曲げられるようになりながらも、繋がって、バリア層を破損しにくい状態で、圧縮され、フィルム融着層342同士が融着して、平滑な外表面を作り出している。
特に、バリア層が折れ曲がった襞の先端や根元部分であっても、両面がフィルム融着層で覆われているので、破断するなど著しいバリア層の劣化が生じにくい。
【0025】
図4は、本発明の押出し容器で、射出成形金型344に頭部形状に加工した積層フィルム34を挿入し、頭基材部樹脂を射出し、頭部3を成形する工程を示す工程図である。
金型内部に挿入した積層フィルム34は、その外側に射出する溶融樹脂の熱によって、積層フィルムのフィルム融着層342に融着可能となる。
射出された頭基材部は、キャップと嵌合するネジ部等の嵌合部を形成し、かつ、胴部2と融着する可能な融着部を有し、胴部と超音波融着等によって、一体化することができる。
【0026】
図5は、本発明の押出し容器で、射出成形金型に頭部形状に加工した積層フィルム34と胴部2とを挿入し、頭基材部樹脂を射出しながら、胴部2と積層フィルム34と一体化した押出し容器1を成形する工程を示す工程図である。
射出成形金型は、胴部2を挿入可能なマンドレル状の長いコア3442と、左右に分かれる割型となったスライドキャビティ3441とから構成され、スライド部にゲートを設けた射出成形金型としているが、ゲートは肩部33であっても、注出口外面であっても良い。
頭基材部30を形成する溶融樹脂の熱で、頭部3は積層フィルム34と融着し、かつ、頭基材部30と積層フィルム34が融着する。
【0027】
図に示したキャップは、ネジ部を有する螺合キャップであるが、打栓式キャップとし、その外側にヒンジを介して開口可能なヒンジキャップであってもかまわない。
打栓式キャップを使用する場合には、注出口外側の嵌合部は打栓用の嵌合リングを形成す
る。
【実施例
【0028】
<実施例1>
胴部は12μmの酸化珪素蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルムを積層したフィルムを使用し、太さが直径35mmの筒状に融着した積層チューブとした。
頭部の積層フィルムには、ポリエチレン20μm/酸化珪素蒸着ポリエチレンテレフタレート12μm/ポリエチレン20μmのフィルムを使用した。
頭基材部としては、直鎖状低密度ポリエチレンを使用し、上記積層フィルムを頭部内面に設け、図1に示した押出し容器を作った。
【0029】
<実施例2>
胴部と頭部の積層フィルムは、実施例1と同じ積層チューブを使用した。
頭基材部としては、直鎖状低密度ポリエチレンにメタキシレンジアミン・アジピン酸共重合体、をブレンドした樹脂を使用し、上記積層フィルムを頭部内面に設け、図1に示した押出し容器を作った。
【0030】
<比較例1>
胴部の積層フィルムは、実施例1と同じ積層チューブを使用した。
頭部にバリア性の積層フィルムは使用しなかった。
頭基材部としては、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂を使用し、積層フィルムを使用しない押出し容器を作った。
【0031】
<比較例2>
胴部の積層フィルムは、実施例1と同じ積層チューブを使用した。
頭部にバリア性の積層フィルムは使用しなかった。
頭基材部としては、直鎖状低密度ポリエチレンにメタキシレンジアミン・アジピン酸共重合体、をブレンドした樹脂を使用し、積層フィルムを使用しない押出し容器を作った。
【0032】
<評価試験方法>
底シール部を融着し、胴部に2箇所の開孔部を設け、前記開孔部に管を通して固定し、MOCON社製酸素透過率測定装置OX-TRAN(登録商標)2/22を使って、押出し容器全体の酸素透過率を測定した。
【0033】
<評価試験結果>
比較例1は0.015cc/package/day、比較例2では0.007cc/package/dayであったが、実施例1は0.005cc/package/day、実施例2は0.001cc/package/dayであった。
頭部内面のバリア性積層フィルムによって、酸素透過は1/3~1/5に減少し、頭部成形樹脂のバリア性樹脂ブレンドと合わせると、1/15に減少する効果が得られた。
【0034】
【表1】
【0035】
本発明の押出し容器は、以上のようなもので、バリア層として、フィルムを使用しているので破断したり、亀裂が入ったりしにくい。また、肩部分だけでなく、注出口側にもバリア層を設けているので、確実に酸素の流入を高く阻止可能としている。
さらに、バリア層が、両面をフィルム融着層で覆われているので、折れた部分であってもバリア層の著しい劣化を生じにくく、この為、高いバリア性を確保可能である。
特に融着性の樹脂にバリア性樹脂をブレンドした頭基材部と併用することによって、さらに高いバリア性を確保できた。
その上、金属箔を使用していないので、X線透過によって内容物充填後の異物検査が可能
であるなど、本発明のメリットは大きい。
【符号の説明】
【0036】
1・・・・・・・・押出し容器
2・・・・・・・・胴部
21・・・・・・・肩融着部
22・・・・・・・底シール部
23・・・・・・・シーラント層
24・・・・・・・バリア層
3・・・・・・・・頭部
30・・・・・・・頭基材部
31・・・・・・・注出流路
32・・・・・・・注出口
33・・・・・・・肩部
34・・・・・・・積層フィルム
341・・・・・・バリア層
342・・・・・・フィルム融着層
343・・・・・・開口孔
344・・・・・・射出成形金型
3441・・・・・スライドキャビティ
3442・・・・・マンドレル状の長いコア
4・・・・・・・・キャップ
5・・・・・・・・遠赤外線ヒーター
6・・・・・・・・第一成形コア
61・・・・・・・成形コア
62・・・・・・・真空孔
7・・・・・・・・香料(透過ガス)
図1
図2
図3
図4
図5
図6