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特許7392272センター装置、データ通信システム、配信制御プログラム及び配信制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】センター装置、データ通信システム、配信制御プログラム及び配信制御方法
(51)【国際特許分類】
   H04L 67/02 20220101AFI20231129BHJP
【FI】
H04L67/02
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019054791
(22)【出願日】2019-03-22
(65)【公開番号】P2020154987
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2022-03-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 那央
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 義隆
【審査官】木村 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-055645(JP,A)
【文献】特開2011-148398(JP,A)
【文献】特開2018-086894(JP,A)
【文献】国際公開第2018/070242(WO,A1)
【文献】特開2018-132979(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0102939(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 67/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両側へのデータ配信を制御する配信制御部(14a)と、
配信済みのデータの車両側での動作が正常であるか否かを判定する正常動作判定部(14f)と、
データが公共の通信ネットワークを介して車両側に配信された後に、その配信済みのデータの車両側での動作が前記正常動作判定部により正常であると判定されると、前記配信済みのデータに係るデータの配信対象を拡大する配信対象拡大部(14g)と、を備え、
前記配信対象拡大部は、車両走行に影響を及ぼすデータを配信する場合には、車両が走行状態であるか否かを判定し、車両走行に影響を及ぼすデータの配信対象の拡大を車両駐車中に行うセンター装置。
【請求項2】
前記配信対象拡大部は、前記配信済みのデータの配信先とは異なる車両を新たな配信先とし、前記配信済みのデータに係る未配信のデータを前記新たな配信先へ配信することで、前記配信済みのデータに係るデータの配信対象を拡大する請求項1に記載したセンター装置。
【請求項3】
前記配信対象拡大部は、前記配信済みのデータに係る未配信のデータを前記配信済みのデータの配信先へ配信し、前記配信済みのデータの配信先へのデータの配信量を拡大することで、前記配信済みのデータに係るデータの配信対象を拡大する請求項1に記載したセンター装置。
【請求項4】
前記配信対象拡大部は、配信済みのデータの機能や性能の拡大を車両用マスタ装置に実施させることで、前記配信済みのデータに係るデータの配信対象を拡大する請求項1に記載したセンター装置。
【請求項5】
前記配信対象拡大部は、データの機能や性能の拡大を指定するコマンドを車両側に配信することで、データの機能や性能の拡大を車両用マスタ装置に実施させる請求項4に記載したセンター装置。
【請求項6】
データの配信対象をグループ分けするグループ分け部(14h)と、
前記配信対象拡大部は、前記グループ分け部によりグループ分けされたグループにしたがって前記配信済みのデータに係るデータの配信対象を拡大する請求項1から5の何れか一項に記載したセンター装置。
【請求項7】
車両側から車両情報を取得する車両情報取得部(14b)と、
前記車両情報取得部により取得された車両情報を解析する車両情報解析部(14c)と、を備え、
前記正常動作判定部は、前記車両情報解析部の解析結果を用いて配信済みのデータの車両側での動作が正常であるか否かを判定する請求項1から6の何れか一項に記載したセンター装置。
【請求項8】
車両側から外部情報を取得する外部情報取得部(14d)と、
前記外部情報取得部により取得された外部情報を解析する外部情報解析部(14e)と、を備え、
前記正常動作判定部は、前記外部情報解析部の解析結果を用いて配信済みのデータの車両側での動作が正常であるか否かを判定する請求項1から7の何れか一項に請求項1に記載したセンター装置。
【請求項9】
データを公共の通信ネットワークを介して車両側に配信した後に、その配信済みのデータの車両側での動作が正常であるか否かを判定し、その配信済みのデータの車両側での動作が正常であると判定すると、前記配信済みのデータに係るデータの配信対象を拡大するセンター装置(2)と、
前記センター装置から配信されたデータを受信する車両用マスタ装置(7)と、を備え、
前記センター装置は、車両走行に影響を及ぼすデータを配信する場合には、車両が走行状態であるか否かを判定し、車両走行に影響を及ぼすデータの配信対象の拡大を車両駐車中に行うデータ配信システム。
【請求項10】
センター装置(2)に、
データが公共の通信ネットワークを介して車両側に配信された後に、その配信済みのデータの車両側での動作が正常であるか否かを判定する正常動作判定手順と、
配信済みのデータの車両側での動作が正常であると前記正常動作判定手順により判定すると、前記配信済みのデータに係るデータであって車両走行に影響を及ぼすデータを配信する場合には、車両が走行状態であるか否かを判定し、前記配信済みのデータに係るデータであって車両走行に影響を及ぼすデータの配信対象の拡大を車両駐車中に行う配信対象拡大手順と、を実行させる配信制御プログラム。
【請求項11】
センター装置(2)において、
データが公共の通信ネットワークを介して車両側に配信された後に、その配信済みのデータの車両側での動作が正常であるか否かを判定する正常動作判定手順と、
配信済みのデータの車両側での動作が正常であると前記正常動作判定手順により判定すると、前記配信済みのデータに係るデータであって車両走行に影響を及ぼすデータを配信する場合には、車両が走行状態であるか否かを判定し、前記配信済みのデータに係るデータであって車両走行に影響を及ぼすデータの配信対象の拡大を車両駐車中に行う配信対象拡大手順と、を行う配信制御方法。
【請求項12】
プログラム更新の対象となる電子制御装置と当該電子制御装置へプログラム更新のためのデータを配信する車両用マスタ装置とを備える車両に対し、公共の通信ネットワークを介してデータ配信を制御する配信制御部(14a)と、
前記車両から受信した情報に基づき、前記配信制御部により配信済みのデータの車両側での機能や性能に関する動作が正常であるか否かを判定する正常動作判定部(14f)と、
データが車両側に配信された後に、その配信済みのデータの車両側での機能や性能に関する動作が前記正常動作判定部により正常であると判定されると、データの配信対象を拡大する配信対象拡大部(14g)と、を備え、
前記配信対象拡大部は、前記正常動作判定部により正常であると判定された場合、前記配信済みのデータに関する機能や性能の拡大がなされていない車両に対し前記配信済みのデータに関する機能や性能の拡大を指定するコマンドを車両側に配信することで、前記配信済みのデータに関する機能や性能の拡大を前記車両用マスタ装置に実施させ、前記正常動作判定部により正常でないと判定された場合、前記コマンドを車両側に配信しないセンター装置。
【請求項13】
センター装置(2)と、前記センター装置から配信されたデータを受信する車両用マスタ装置(7)と、を備えるデータ配信システムであって、
前記センター装置は、
プログラム更新の対象となる電子制御装置と当該電子制御装置へプログラム更新のためのデータを配信する車両用マスタ装置とを備える車両に対し、公共の通信ネットワークを介してデータ配信を制御する配信制御部(14a)と、
前記車両から受信した情報に基づき、前記配信制御部により配信済みのデータの車両側での機能や性能に関する動作が正常であるか否かを判定する正常動作判定部(14f)と、
データが車両側に配信された後に、その配信済みのデータの車両側での機能や性能に関する動作が前記正常動作判定部により正常であると判定されると、データの配信対象を拡大する配信対象拡大部(14g)と、を備え、
前記配信対象拡大部は、前記正常動作判定部により正常であると判定された場合、前記配信済みのデータに関する機能や性能の拡大がなされていない車両に対し前記配信済みのデータに関する機能や性能の拡大を指定するコマンドを車両側に配信することで、前記配信済みのデータに関する機能や性能の拡大を前記車両用マスタ装置に実施させ、前記正常動作判定部により正常でないと判定された場合、前記コマンドを車両側に配信しないデータ配信システム。
【請求項14】
センター装置(2)に、
プログラム更新の対象となる電子制御装置と当該電子制御装置へプログラム更新のためのデータを配信する車両用マスタ装置とを備える車両に対し、公共の通信ネットワークを介してデータ配信を制御する配信制御手順と、
前記車両から受信した情報に基づき、前記配信制御手順により配信済みのデータの車両側での機能や性能に関する動作が正常であるか否かを判定する正常動作判定手順と、
データが車両側に配信された後に、その配信済みのデータの車両側での機能や性能に関する動作が前記正常動作判定手順により正常であると判定すると、前記配信済みのデータに関する機能や性能の拡大がなされていない車両に対し前記配信済みのデータに関する機能や性能の拡大を指定するコマンドを車両側に配信することで、前記配信済みのデータに関する機能や性能の拡大を前記車両用マスタ装置に実施させ、前記正常動作判定手順により正常でないと判定すると、前記コマンドを車両側に配信しない配信対象拡大手順と、を実行させる配信制御プログラム。
【請求項15】
センター装置(2)において、
プログラム更新の対象となる電子制御装置と当該電子制御装置へプログラム更新のためのデータを配信する車両用マスタ装置とを備える車両に対し、公共の通信ネットワークを介してデータ配信を制御する配信制御手順と、
前記車両から受信した情報に基づき、前記配信制御手順により配信済みのデータの車両側での機能や性能に関する動作が正常であるか否かを判定する正常動作判定手順と、
データが車両側に配信された後に、その配信済みのデータの車両側での機能や性能に関する動作が前記正常動作判定手順により正常であると判定すると、前記配信済みのデータに関する機能や性能の拡大がなされていない車両に対し前記配信済みのデータに関する機能や性能の拡大を指定するコマンドを車両側に配信することで、前記配信済みのデータに関する機能や性能の拡大を前記車両用マスタ装置に実施させ、前記正常動作判定手順により正常でないと判定すると、前記コマンドを車両側に配信しない配信対象拡大手順と、を行う配信制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センター装置、データ通信システム配信制御プログラム及び配信制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、通信ネットワークの進展等に伴い、コネクッテッドカーの技術が普及している。コネクッテッドカーの技術を利用し、センター装置から車両側にデータを無線で配信する構成が供されている。例えば特許文献1には、センター装置において、リプログデータを車両側に無線で配信し、車載の電子制御装置(以下、ECU(Electronic Control Unit))のアプリプログラムを更新する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-191786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
センター装置がデータを車両側に配信する構成では、配信済みのデータの品質的な不具合や品質上の問題がなくとも周囲の要因等により想定外の事象が発生する場合がある。配信済みのデータにおいて想定外の事象が発生すると、被害の影響を抑えるために膨大な負担が必要となることが想定される。そのため、センター装置においては、配信済みのデータに付随する影響範囲を低減することが望まれる。
【0005】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、配信済みのデータに付随する影響範囲を適切に低減することができるセンター装置、データ配信システム配信制御プログラム及び配信制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載した発明によれば、配信制御部(14a)は、車両側へのデータ配信を制御する。正常動作判定部(14f)は、配信済みのデータの車両側での動作が正常であるか否かを判定する。配信対象拡大部(14g)は、データが公共の通信ネットワークを介して車両側に配信された後に、その配信済みのデータの車両側での動作が正常であると正常動作判定部により判定されると、前記配信済みのデータに係るデータの配信対象を拡大する。前記配信対象拡大部は、車両走行に影響を及ぼすデータを配信する場合には、車両が走行状態であるか否かを判定し、車両走行に影響を及ぼすデータの配信対象の拡大を車両駐車中に行う。

【0007】
データを公共の通信ネットワークを介して車両側に配信し、その配信済みのデータの車両側での動作が正常であると判定すると、データの配信対象を拡大するようにした。配信済みのデータの車両側での動作が正常であることを確認した上でデータの配信対象を拡大することで、配信済みのデータに付随する影響範囲を適切に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態の全体構成を示す図
図2】処理の流れを示す図(その1)
図3】処理の流れを示す図(その2)
図4】車両情報及び外部情報を示す図
図5】グループ分けを示す図
図6】修正版リプログデータの配信先を拡大する配信計画を示す図
図7】修正版リプログデータの配信先を拡大するパターンの処理の流れを示す図(その1)
図8】修正版リプログデータの配信先を拡大するパターンの処理の流れを示す図(その2)
図9】修正版リプログデータの論理単位及びデータ容量を示す図
図10】修正版リプログデータの配信量を拡大する配信計画を示す図
図11】修正版リプログデータの配信量を拡大するパターンの処理の流れを示す図(その1)
図12】修正版リプログデータの配信量を拡大するパターンの処理の流れを示す図(その2)
図13】修正版リプログデータの機能や性能を示す図
図14】配信済みの修正版リプログデータの機能や性能を拡大する配信計画を示す図
図15】配信済みの修正版リプログデータの機能や性能を拡大するパターンの処理の流れを示す図(その1)
図16】配信済みの修正版リプログデータの機能や性能を拡大するパターンの処理の流れを示す図(その2)
図17】修正版リプログデータの配信先を示す図
図18】設定変更指示の配信先を示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。データ配信システムは、センター装置が車両側にデータを無線で配信するシステムである。本実施形態では、センター装置から車両側に配信されるデータとして、例えば車両に搭載されているECUの車両制御や診断等に使用されるアプリプログラムを更新するためのリプログデータを例示する。ここでいうリプログデータとは、ECUのハードウェア(物理的な機械)がアプリプログラムを実行してECUの動作を制御するために必要なソフトウェアを含む。
【0010】
図1に示すように、データ配信システム1は、リプログデータを車両側に配信するセンター装置2と、リプログデータをセンター装置2に提供するキャンペーン管理者により管理されるキャンペーン管理者端末3と、車両に搭載されている車両側システム4と、ユーザが携帯可能な携帯端末5とを有する。携帯端末5は、例えばWebブラウザを有するスマートフォンやタブレット等である。センター装置2、キャンペーン管理者端末3、車両側システム4及び携帯端末5は、通信ネットワーク6を介してデータ通信可能に構成されている。通信ネットワーク6は、LPWA(Low Power Wide Area)の通信方式に準拠した通信ネットワーク、LTE(Long Term Evolution)の通信方式に準拠した通信ネットワークを含む。センター装置2と車両側システム4及び携帯端末5とは1対複数の関係にあり、センター装置2は、不特定多数の車両側システム4及び携帯端末5とデータ通信可能であり、リプログデータを不特定多数の車両側システム4及び携帯端末5に配信可能である。
【0011】
キャンペーン管理者端末3は、センター装置2から車両側に配信されるリプログデータを管理し、例えば機能向上やバグ改修等によりリプログデータの配信イベントが成立すると、キャンペーン情報をセンター装置2に送信する。
【0012】
センター装置2は、キャンペーン管理者端末3から送信されたキャンペーン情報を受信すると、リプログデータの配信を知らせるキャンペーン通知を車両側システム4や携帯端末5に配信する。
【0013】
車両側システム4は、車両用マスタ装置7を有する。車両用マスタ装置7は、車載通信機8とゲートウェイ装置9とを有し、車載通信機8とゲートウェイ装置9とがデータ通信可能に接続されている。車載通信機8は、センター装置2との間で通信ネットワーク6を介してデータ通信を行う。車載通信機8は、センター装置2からリプログデータをダウンロードすると、そのダウンロードしたリプログデータをゲートウェイ装置9に転送する。
【0014】
ゲートウェイ装置9には、バス10を介して車両用HMI(Human Machine Interface)装置12が接続されており、バス11を介して各種ECU13が接続されている。車両用HMI装置12は、HMI機能を有し、各種画面を表示する機能及びユーザの操作を受付ける機能を有する。バス11は、例えば走行系ネットワークのバスであり、走行系の制御を行うECUが接続されている。走行系の制御を行うECUは、例えばアクセルの駆動を制御するアクセルECU、ブレーキの駆動を制御するブレーキECU、ステアリングの駆動を制御するステアリングECU、自動運転機能を制御する自動運転ECU等である。バス11は、走行系ネットワークのバスの他に、例えばボディ系ネットワークのバスやマルチメディア系ネットワークのバス等であっても良く、ボディ系の制御を行うECUやマルチメディア系の制御を行うECUが接続されていても良い。バス11の種別や本数、ECU13の種別や個数は、例示した構成に限らない。
【0015】
ゲートウェイ装置9は、データ中継機能を有し、車載通信機8からリプログデータが転送されると、その転送されたリプログデータを、配信先として指定されているECU13に配信する。ECU13は、ゲートウェイ装置9からリプログデータを受信すると、その受信したリプログデータをフラッシュメモリに書込む。ECU13は、リプログデータをフラッシュメモリに書込むことで、アプリプログラムを更新し、アプリプログラムの機能向上やバグ改修を行う。
【0016】
上記した構成では、携帯端末5及び車両用HMI装置12は、それぞれセンター装置2から配信されたキャンペーン通知を受信すると、キャンペーン通知画面を表示し、センター装置2からリプログデータをダウンロード可能であることを示すキャンペーン情報をユーザに通知する。ユーザは、キャンペーン通知画面が携帯端末5や車両用HMI装置12に表示されると、アプリプログラムの更新の手続きを各種画面で確認し、必要事項を入力したり選択したりすることで、アプリプログラムの更新の手続きを可能である。即ち、ユーザは、車室外と車室内とで携帯端末5と車両用HMI装置12とを使い分け、アプリプログラムの更新の手続きを可能である。ユーザは、乗車中であれば車両用HMI装置12からアプリプログラムの更新の手続きを可能であり、乗車中でなくても携帯端末5を所有していれば携帯端末5からアプリプログラムの更新の手続きを可能である。尚、アプリプログラムの更新に緊急性を伴う場合には、キャンペーン通知画面を表示せず、ユーザがアプリプログラムの更新の手続きを行わなくとも、センター装置2からリプログデータをダウンロードしても良い。
【0017】
センター装置2は、制御部14と、データ通信部15と、キャンペーン情報記憶部16と、ユーザ情報記憶部17と、車両情報記憶部18と、外部情報記憶部19とを有する。本実施形態では、これらの記憶部16~19がセンター装置2の内部に設けられている構成を例示しているが、これらの記憶部16~19がセンター装置2とは別の外部サーバに設けられている構成でも良く、センター装置2と外部サーバとがデータ通信を行う構成でも良い。
【0018】
データ通信部15は、キャンペーン管理者端末3、車両側システム4、携帯端末5との間で通信ネットワーク6を介してデータ通信を行う。キャンペーン情報記憶部16は、配信対象のリプログデータに関する各種情報をキャンペーン情報として記憶すると共に、リプログデータを記憶する。キャンペーン情報は、配信先、データの配信量、リプログデータの種別等を含み、キャンペーン管理者端末3からセンター装置2に送信されることでキャンペーン情報記憶部16に記憶される。リプログデータは、キャンペーン管理者端末3からセンター装置2に送信されることでキャンペーン情報記憶部16に記憶される。
【0019】
ユーザ情報記憶部17は、車両の所有者であるオーナに関する各種情報をユーザ情報として記憶する。ユーザ情報は、車両に固有に付与されている車両識別番号(以下、VIN(Vehicle Identification Number)と称する)、その車両に搭載されている車載通信機8の電話番号、ユーザが所有する携帯端末5の電話番号等を含む。ユーザ情報は、例えばユーザが車両購入時に車両用HMI装置12により登録操作を行い、車両用マスタ装置7からセンター装置2に送信されることでユーザ情報記憶部17に記憶される。
【0020】
車両情報記憶部18は、車両に関する各種情報を車両情報として記憶する。車両情報は、車両ログを示すログ情報、車両位置を示す位置情報を含む。車両ログとは、例えばエンジンのオン時刻、エンジンのオフ時刻、アクセルの操作時刻や操作量、ブレーキの操作時刻や操作量、ステアリングの操作時刻や操作量等である。車両情報は、車両用マスタ装置7からセンター装置2に送信されることで車両情報記憶部18に記憶される。
【0021】
外部情報記憶部19は、車両外部から取得される各種情報を外部情報として記憶する。外部情報は、例えば地図情報、気象情報、道路情報、SNS(Social Networking Service)情報等を含む。地図情報は、地図情報配信サーバからセンター装置2に送信されることで外部情報記憶部19に記憶される。気象情報は、天気、降水量、降雪量、風速、風向等の気象全般に関する情報であり、気象情報配信サーバからセンター装置2に送信されることで外部情報記憶部19に記憶される。道路情報は、路面状況、交通状況等の道路全般に関する情報であり、道路情報配信サーバからセンター装置2に送信されることで外部情報記憶部19に記憶される。SNS情報は、フェイスブック(Facebook)、ツイッター(Twitter、登録商標)、インスタグラム(Instagram)等のアプリにより不特定多数のユーザから提供される情報であり、例えばSNSサービスを提供する機関において不特定多数のユーザから提供された情報を集約し、その集約した情報をオペレータがセンター装置2に登録することで外部情報記憶部19に記憶される。
【0022】
制御部14は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を含むマイコンを有し、非遷移的実体的記憶媒体に格納されている制御プログラムを実行して各種処理を行い、センター装置2の動作を制御する。制御部14が実行する制御プログラムには、配信制御プログラムが含まれる。制御部14は、配信制御部14aと、車両情報取得部14bと、車両情報解析部14cと、外部情報取得部14dと、外部情報解析部14eと、正常動作判定部14fと、配信対象拡大部14gと、グループ分け部14hとを有する。
【0023】
配信制御部14aは、車両側へのリプログデータの配信を制御する。車両情報取得部14bは、車両情報記憶部18に記憶されている車両情報を取得する。車両情報解析部14cは、車両情報が車両情報取得部14により取得されると、その取得された車両情報を解析する。即ち、車両情報解析部14cは、車両情報が車両用マスタ装置7からセンター装置2に定期的に送信され、車両情報記憶部18に記憶される車両情報が定期的に更新されることで、最新の車両情報を解析する。外部情報取得部14dは、外部情報記憶部19に記憶されている外部情報を取得する。外部情報解析部14eは、外部情報が外部情報取得部14dにより取得されると、その取得された外部情報を解析する。即ち、外部情報解析部14eは、外部情報が外部情報配信サーバからセンター装置2に定期的に送信され、外部情報記憶部19に記憶される外部情報が定期的に更新されることで、最新の外部情報を解析する。
【0024】
正常動作判定部14fは、車両情報が車両情報解析部14cにより解析され、外部情報が外部情報解析部14eにより解析されると、それらの解析結果から配信済みのリプログデータの車両側での動作が正常であるか否かを判定するアルゴリズムを構築し、その構築したアルゴリズムを用いて配信済みのリプログデータの車両側での動作が正常であるか否かを判定する。
【0025】
配信対象拡大部14gは、リプログデータが車両側に配信され、その配信済みのリプログデータの車両側での動作が正常であると正常動作判定部14fにより判定されると、リプログデータの配信対象を拡大する。配信対象拡大部14gがリプログデータの配信対象を拡大するパターンとしては、リプログデータの配信先を拡大するパターン、リプログデータの配信量を拡大するパターン、配信済みのリプログデータの機能や性能を拡大するパターンがある。即ち、リプログデータの配信対象を拡大することは、リプログデータの配信先を拡大すること、リプログデータの配信量を拡大すること、配信済みのリプログデータの機能や性能を拡大することを意味する。
【0026】
配信済みのリプログデータの機能や性能を拡大するパターンでは、リプログデータの構成として、機能や性能のオンオフが外部から指定されると、その指定された機能や性能をオンオフ可能であれば、配信制御部14aは、配信済みのリプログデータの機能や性能をオフ中に、配信済みのリプログデータの機能や性能のオンを指定するコマンドを車両用マスタ装置7に配信させることで、その配信済みのリプログデータの機能や性能をオンし、配信済みのリプログデータの機能や性能の拡大を車両用マスタ装置7に実施させる。
【0027】
配信対象拡大部14gは、車両が走行状態であるか否かを判定し、その判定結果にしたがってリプログデータの配信対象を拡大する。即ち、配信制御部14aは、車両走行に影響を及ぼさないリプログデータの配信対象の拡大であれば、リプログデータの配信対象の拡大を車両走行中に行っても車両走行に影響が及ばないが、車両走行に影響を及ぼすリプログデータの配信対象の拡大を車両走行中に行ってしまうと、車両走行に影響が及ぶことが懸念されるので、車両走行に影響を及ぼすリプログデータの配信対象の拡大を車両駐車中に行う。
【0028】
グループ分け部14fは、リプログデータの配信対象をグループ分けする。配信対象拡大部14gは、グループ分け部14fによりグループ分けされたグループにしたがってリプログデータの配信対象を拡大する。
【0029】
次に、上記した構成の作用について図2から図18を参照して説明する。
図2及び図3に示すように、キャンペーン管理者端末3は、リプログデータの配信イベントが成立すると、キャンペーン情報及びリプログデータをセンター装置2に送信する(S1)。センター装置2において、制御部14は、キャンペーン管理者端末3から送信されたキャンペーン情報及びリプログデータが受信されると、その受信されたキャンペーン情報及びリプログデータをキャンペーン情報記憶部16に記憶させる。制御部14は、配信開始指示を判定すると(S2)、キャンペーン通知を車両用マスタ装置7に配信させる(S3)。
【0030】
車両用マスタ装置7は、センター装置2から配信されたキャンペーン通知を受信すると、キャンペーン表示指示を車両用HMI装置12に送信し(S4)、車両用HMI装置12においてキャンペーン通知画面を表示させ(S5)、リプログデータのダウンロードの開始を許可するか否かの選択をユーザに促す。車両用HMI装置12は、リプログデータをダウンロードの開始を許可する旨をユーザが選択すると(S6)、その操作内容を車両用マスタ装置7に送信する(S7)。車両用マスタ装置7は、車両用HMI装置12から操作内容を受信すると、ダウンロード許可をセンター装置2に送信する(S8)。
【0031】
センター装置2において、制御部14は、車両用マスタ装置7から送信されたダウンロード許可が受信されると、キャンペーン情報記憶部16からリプログデータを取得し(S9,S10)、その取得したリプログデータを車両用マスタ装置7に配信させる(S11)。
【0032】
車両用マスタ装置7は、センター装置2からリプログデータをダウンロードした以降では、車両情報をセンター装置2に定期的に送信する(S12)。センター装置2において、制御部14は、車両用マスタ装置7から送信された車両情報が受信されると、その受信された車両情報を車両情報記憶部18に記憶させる。制御部14は、車両情報記憶部18に記憶されている車両情報を定期的に監視する(S13)。
【0033】
地図情報配信サーバ、気象情報配信サーバ、道路情報配信サーバ等を含む外部情報配信サーバは、外部情報として地図情報、気象情報、道路情報を定期的に送信する(S14)。センター装置2において、制御部14は、車両用マスタ装置7から送信された外部情報が受信されると、その受信された外部情報を外部情報記憶部19に記憶させる。制御部14は、外部情報記憶部19に記憶されている外部情報を定期的に監視する(S15)。
【0034】
キャンペーン管理者端末3は、キャンペーン情報及びリプログデータをセンター装置に送信した後に、そのリプログデータを修正した修正版リプログデータを作成すると、修正版リプログデータの配信イベントの成立を待機する。キャンペーン管理者端末3は、修正版リプログデータの配信イベントが成立すると、修正版リプログデータをセンター装置2に送信する(S16)。
【0035】
センター装置2において、制御部14は、キャンペーン管理者端末3から送信された修正版リプログデータが受信されると、その受信された修正版リプログデータをキャンペーン情報記憶部16に記憶させ、修正版リプログデータの内容を取得する(S17)。
【0036】
制御部14は、車両情報及び外部情報を定期的に監視し、車両情報及び外部情報を解析して修正版リプログデータの配信タイミング及び配信条件を設定し、その設定した配信タイミング及び配信条件にしたがって配信対象を拡大する。制御部14は、その設定した修正版リプログデータの配信タイミングになると、その設定した配信条件にしたがってキャンペーン情報記憶部16から修正版リプログデータを取得し(S18,S19)、ダウンロード通知を車両用マスタ装置7に配信させる(S20)。配信条件とは、修正版リプログデータの配信先、修正版リプログデータの配信量、配信済みの修正版リプログデータの機能や性能の条件である。
【0037】
車両用マスタ装置7は、センター装置2から配信されたダウンロード通知を受信すると、ダウンロード表示指示を車両用HMI装置12に送信し(S21)、車両用HMI装置12においてダウンロード通知画面を表示させ(S22)、修正版リプログデータのダウンロードの開始を許可するか否かの選択をユーザに促す。車両用HMI装置12は、修正版リプログデータをダウンロードの開始を許可する旨をユーザが選択すると(S23)、その操作内容を車両用マスタ装置7に送信する(S24)。車両用マスタ装置7は、車両用HMI装置12から操作内容を受信すると、ダウンロード許可をセンター装置2に送信する(S25)。
【0038】
センター装置2において、制御部14は、車両用マスタ装置7から送信されたダウンロード許可が受信されると、修正版リプログデータを車両用マスタ装置7に配信させる(S26)。制御部14は、修正版リプログデータの配信対象を拡大するパターンとして、修正版リプログデータの配信先を拡大するパターン、修正版リプログデータの配信量を拡大するパターン、配信済みの修正版リプログデータの機能や性能を拡大するパターンの何れかを行う。以下、各パターンについて説明する。
【0039】
(1)修正版リプログデータの配信先を拡大するパターン
制御部14は、図4に示すように、車両情報及び外部情報として、例えば車両毎の10:00~17:00の時間帯の平均駐車時間、気温変動範囲、最寄りのディーラからの距離を解析する。制御部14は、最寄りのディーラからの距離にしたがって車両をグループ分けする。制御部14は、図5に示すように、最寄りのディーラからの距離順に、車両A~車両CをグループAとし、車両D~車両FをグループBとし、車両G~車両IをグループCとする。
【0040】
制御部14は、図6に示すように、そのグループ分けしたグループ毎に対象車両数を設定し、その設定した対象車両数にしたがって修正版リプログデータの配信先を拡大する配信計画を作成する。制御部14は、グループAについては、例えば対象車両数を100台に設定し、その100台の対象車両への修正版リプログデータの配信タイミングをM1月D1日に設定する。同様に、制御部14は、グループBについては、例えば対象車両数を900台に設定し、その900台の対象車両への修正版リプログデータの配信タイミングをM2月D2日に設定し、グループCについては、例えば対象車両数を9000台に設定し、その9000台の対象車両への修正版リプログデータの配信タイミングをM3月D3日に設定する。尚、時系列の順序は、M1月、D1日、M2月D2日、M3月D3日である。M1、M2、M3は、「1」~「12」の任意の自然数であり、D1、D2、D3は、「1」~「31」の任意の自然数である。
【0041】
図7及び図8に示すように、センター装置2において、制御部14は、グループAについて設定した配信タイミングであるM1月D1日になると、修正版リプログデータの配信先をグループAに設定する。制御部14は、キャンペーン情報記憶部16から修正版リプログデータを取得し(S31,S32)、ダウンロード通知をグループAに属する車両の車両用マスタ装置7に配信させる(S33)。
【0042】
グループAに属する車両の車両用マスタ装置7は、センター装置2から配信されたダウンロード通知を受信すると、ダウンロード表示指示を車両用HMI装置12に送信し(S34)、車両用HMI装置12においてダウンロード通知画面を表示させ(S35)、修正版リプログデータのダウンロードの開始を許可するか否かの選択をユーザに促す。車両用HMI装置12は、修正版リプログデータをダウンロードの開始を許可する旨をユーザが選択すると(S36)、その操作内容をグループAに属する車両の車両用マスタ装置7に送信する(S37)。グループAに属する車両の車両用マスタ装置7は、車両用HMI装置12から操作内容を受信すると、ダウンロード許可をセンター装置2に送信する(S38)。
【0043】
センター装置2において、制御部14は、グループAに属する車両の車両用マスタ装置7から送信されたダウンロード許可が受信されると、修正版リプログデータをグループAに属する車両の車両用マスタ装置7に配信させる(S39)。これ以降、制御部14は、グループAに属する車両の車両用マスタ装置7から送信された車両情報を定期的に監視し(S40,41)、地図情報配信サーバ、気象情報配信サーバ、道路情報配信サーバ等を含む外部情報配信サーバから送信された外部情報を定期的に監視する(S42,43)。制御部14は、車両情報及び外部情報の解析結果から配信済みの修正版リプログデータの車両側での動作が正常であるか否かを判定するアルゴリズムを構築し、その構築したアルゴリズムを用い、グループAの車両側に配信させた修正版リプログデータの車両側での動作が正常であるか否かを判定する。
【0044】
制御部14は、グループBについて設定した配信タイミングであるM2月D2日になると、グループAの車両側に配信させた修正版リプログデータの車両側での動作がM1月D1日からM2月D2日までの期間で正常であったか否かを判定する(正常動作判定手順)。制御部14は、グループAの車両側に配信させた修正版リプログデータの車両側での動作が正常であったと判定すると、修正版リプログデータの配信先としてグループBを設定して同様の処理を行い、修正版リプログデータをグループBに属する車両の車両用マスタ装置7に配信させる(S44~S56、配信対象拡大手順)。
【0045】
制御部14は、同様に、グループCについて設定した配信タイミングであるM3月D3日になると、グループBの車両側に配信させた修正版リプログデータの車両側での動作がM2月D2日からM3月D3日までの期間で正常であったか否かを判定する(正常動作判定手順)。制御部14は、グループBの車両側に配信させた修正版リプログデータの車両側での動作が正常であったと判定すると、修正版リプログデータの配信先としてグループCを設定して同様の処理を行い、修正版リプログデータをグループCに属する車両の車両用マスタ装置7に配信させる(配信対象拡大手順)。
【0046】
制御部14は、このようにして修正版リプログデータの配信先を段階的に拡大することで、修正版リプログデータの配信対象を拡大する。尚、制御部14は、グループAの車両側に配信させた修正版リプログデータの車両側での動作が正常でなく、修正版リプログデータに不具合が検知されると、修正版リプログデータをグループBに属する車両の車両用マスタ装置7に配信させない。即ち、制御部14は、修正版リプログデータをグループBに属する車両の車両用マスタ装置7に配信させないことで、不具合により発生する被害の影響を抑える。又、制御部14は、不具合が検知された修正版リプログデータに対して必要な対策を講じる。
【0047】
尚、図4及び図5に例示したように、最寄りのディーラからの距離にしたがって車両をグループ分けしたことで、修正版リプログデータに不具合が検知されても、ディーラの担当者が即座に対応することができる。最寄りのディーラからの距離にしたがってグループ分けすることに限らず、例えば車種、年式、グレード等にしたがってグループ分けしても良い。例えば車種にしたがってグループ分けすれば、修正版リプログデータを車種Aの車両側に配信させ、その車種Aの車両について修正版リプログデータの車両側での動作が正常であると判定した上で、修正版リプログデータを車種Bの車両側に配信させても良い。例えば年式にしたがってグループ分けすれば、修正版リプログデータを比較的新しい年式の車両側に配信させ、その比較的新しい年式の車両について修正版リプログデータの車両側での動作が正常であると判定した上で、修正版リプログデータを比較的古い年式の車両側に配信させても良い。例えばグレードにしたがってグループ分けすれば、修正版リプログデータを比較的高いグレードの車両側に配信させ、その比較的高いグレードの車両について修正版リプログデータの車両側での動作が正常であると判定した上で、修正版リプログデータを比較的低いグレードの車両側に配信させても良い。
【0048】
(2)修正版リプログデータの配信量を拡大するパターン
制御部14は、図9に示すように、修正版リプログデータを論理単位に分割し、その分割した論理単位毎にデータ容量を計算する。論理単位とは、修正版リプログデータを構成するデータの単位である。制御部14は、図10に示すように、その計算したデータ容量にしたがってリプログデータの配信量を拡大する配信計画を作成する。制御部14は、データ容量が10kB(キロバイト)の論理単位Aについては、修正版リプログデータの配信タイミングをM1月D1日に設定する。同様に、制御部14は、データ容量が1MB(メガバイト)の論理単位Bについては、修正版リプログデータの配信タイミングをM2月D2日に設定し、データ容量が10MBの論理単位Cについては、修正版リプログデータの配信タイミングをM3月D3日に設定する。
【0049】
図11及び図12に示すように、センター装置2において、制御部14は、論理単位Aについて設定した配信タイミングであるM1月D1日になると、修正版リプログデータの配信量を論理単位Aの10kBに設定する。制御部14は、キャンペーン情報記憶部16から修正版リプログデータのうち論理単位Aの10kBを取得し(S61,S62)、その取得した論理単位Aのダウンロード通知を車両用マスタ装置7に配信させる(S63)。
【0050】
車両用マスタ装置7は、センター装置2から配信された論理単位Aのダウンロード通知を受信すると、ダウンロード表示指示を車両用HMI装置12に送信し(S64)、車両用HMI装置12においてダウンロード通知画面を表示させ(S65)、リプログデータのうち論理単位Aのダウンロードの開始を許可するか否かの選択をユーザに促す。車両用HMI装置12は、論理単位Aのダウンロードの開始を許可する旨をユーザが選択すると(S66)、その操作内容を車両用マスタ装置7に送信する(S67)。車両用マスタ装置7は、車両用HMI装置12から操作内容を受信すると、ダウンロード許可をセンター装置2に送信する(S68)。
【0051】
センター装置2において、制御部14は、車両用マスタ装置7から送信されたダウンロード許可が受信されると、修正版リプログデータのうち論理単位Aの10kBを車両用マスタ装置7に配信させる(S69)。これ以降、制御部14は、車両用マスタ装置7から送信された車両情報を定期的に監視し(S70,71)、地図情報配信サーバ、気象情報配信サーバ、道路情報配信サーバ等を含む外部情報配信サーバから送信された外部情報を定期的に監視する(S72,73)。制御部14は、車両情報及び外部情報の解析結果から配信済みの修正版リプログデータのうち論理単位Aの車両側での動作が正常であるか否かを判定するアルゴリズムを構築し、その構築したアルゴリズムを用い、車両側に配信させた修正版リプログデータのうち論理単位Aの車両側での動作が正常であるか否かを判定する。
【0052】
制御部14は、論理単位Bについて設定した配信タイミングであるM2月D2日になると、車両側に配信させた修正版リプログデータのうち論理単位Aの車両側での動作がM1月D1日からM2月D2日までの期間で正常であったか否かを判定する(正常動作判定手順)。制御部14は、車両側に配信させた修正版リプログデータのうち論理単位Aの車両側での動作が正常であったと判定すると、修正版リプログデータの配信量を論理単位Bの1MBに設定して同様の処理を行い、修正版リプログデータのうち論理単位Bの1MBを車両用マスタ装置7に配信させる(S74~S86、配信対象拡大手順)。
【0053】
制御部14は、同様に、論理単位Cについて設定した配信タイミングであるM3月D3日になると、車両側に配信させた修正版リプログデータのうち論理単位Bの車両側での動作がM2月D2日からM3月D3日までの期間で正常であったか否かを判定する(正常動作判定手順)。制御部14は、車両側に配信させた修正版リプログデータのうち論理単位Bの車両側での動作が正常であったと判定すると、修正版リプログデータの配信量を論理単位Cの10MBに設定して同様の処理を行い、修正版リプログデータのうち論理単位Cの10MBを車両用マスタ装置7に配信させる(配信対象拡大手順)。
【0054】
制御部14は、このようにして修正版リプログデータの配信量を段階的に拡大することで、修正版リプログデータの配信対象を拡大する。尚、制御部14は、車両側に配信させた修正版リプログデータのうち論理単位Aの車両側での動作が正常でなく、修正版リプログデータに不具合が検知されると、修正版リプログデータのうち論理単位Bの1MBを車両の車両用マスタ装置7に配信させない。即ち、制御部14は、修正版リプログデータのうち論理単位Bの1MBを車両の車両用マスタ装置7に配信させないことで、不具合により発生する被害の影響を抑える。又、制御部14は、不具合が検知された修正版リプログデータに対して必要な対策を講じる。
【0055】
(3)配信済みの修正版リプログデータの機能や性能を拡大するパターン
制御部14は、図13に示すように、車両側に配信させた修正版リプログデータのうち機能や性能のオンオフの対象として自動ブレーキ機能、自動操舵機能、自動アクセル機能を設定する。制御部14は、図14に示すように、自動ブレーキ機能をオンにし、自動操舵機能をオフにし、自動アクセル機能をオフにするモード1、自動ブレーキ機能をオンにし、自動操舵機能をオンにし、自動アクセル機能をオフにするモード2、自動ブレーキ機能をオンにし、自動操舵機能をオンにし、自動アクセル機能をオンにするモード3を設定し、配信済みのリプログデータの機能や性能を拡大する配信計画を作成する。制御部14は、モード1への移行指示を示す設定変更通知の配信タイミングをM1月D1日に設定する。同様に、制御部14は、モード2への移行指示を示す設定変更通知の配信タイミングをM2月D2日に設定し、モード3への移行指示を示す設定変更通知の配信タイミングをM3月D3日に設定する。
【0056】
図15及び図16に示すように、センター装置2において、制御部14は、修正版リプログデータを車両用マスタ装置7に配信させた後に(S91~S93)、モード1への移行指示を示す設定変更通知の配信タイミングであるM1月D1日になると、モード1への移行指示を示す設定変更通知を車両用マスタ装置7に配信させる(S94)。
【0057】
車両用マスタ装置7は、センター装置2から配信された設定変更通知を受信すると、設定変更表示指示を車両用HMI装置12に送信し(S95)、車両用HMI装置12において設定変更通知画面を表示させ(S96)、配信済みのリプログデータの設定変更を許可するか否かの選択をユーザに促す。車両用HMI装置12は、設定変更を許可する旨をユーザが選択すると(S97)、その操作内容を車両用マスタ装置7に送信する(S98)。車両用マスタ装置7は、車両用HMI装置12から操作内容を受信すると、設定変更許可をセンター装置2に送信する(S99)。
【0058】
センター装置2において、制御部14は、車両用マスタ装置7から送信された設定変更許可が受信されると、モード1への移行指示を示す設定変更指示を車両用マスタ装置7に配信させる(S100)。車両用マスタ装置7は、センター装置2から配信された設定変更指示を受信すると、その受信した設定変更指示にしたがって自動ブレーキ機能、自動操舵機能、自動アクセル機能のオンオフを設定する。即ち、車両用マスタ装置7は、自動ブレーキ機能オンをブレーキECUに送信し、ブレーキECUの自動ブレーキ機能をオンさせ、自動操舵機能オフを自動運転ECUに送信し、自動運転ECUの自動操舵機能をオフさせ、自動アクセル機能オフをアクセルECUに送信し、アクセルECUの自動アクセル機能をオフさせる。これ以降、制御部14は、車両用マスタ装置7から送信された車両情報を定期的に監視し(S101,102)、地図情報配信サーバ、気象情報配信サーバ、道路情報配信サーバ等を含む外部情報配信サーバから送信された外部情報を定期的に監視する(S103,104)。制御部14は、車両情報及び外部情報の解析結果からモード1の車両側での動作、即ち、自動ブレーキ機能の車両側での動作が正常であるか否かを判定するアルゴリズムを構築し、その構築したアルゴリズムを用い、自動ブレーキ機能の車両側での動作が正常であるか否かを判定する。
【0059】
制御部14は、モード2への移行指示を示す設定変更通知の配信タイミングであるM2月D2日になると、自動ブレーキ機能の車両側での動作がM1月D1日からM2月D2日までの期間で正常であったか否かを判定する(正常動作判定手順)。制御部14は、自動ブレーキ機能の車両側での動作が正常であったと判定すると、モード2への移行指示を示す設定変更通知を車両用マスタ装置7に配信させる(S105~S115、配信対象拡大手順)。この場合、車両用マスタ装置7は、センター装置2から配信された設定変更指示を受信すると、その受信した設定変更指示にしたがって自動ブレーキ機能オンをブレーキECUに送信し、ブレーキECUの自動ブレーキ機能のオンを継続させ、自動操舵機能オンを自動運転ECUに送信し、自動運転ECUの自動操舵機能をオフからオンに切替え、自動アクセル機能オフをアクセルECUに送信し、アクセルECUの自動アクセル機能のオフを継続させる。
【0060】
制御部14は、同様に、モード3への移行指示を示す設定変更通知の配信タイミングであるM3月D3日になると、自動ブレーキ機能及び自動操舵機能の車両側での動作がM2月D2日からM3月D3日までの期間で正常であったか否かを判定する(正常動作判定手順)。制御部14は、自動ブレーキ機能及び自動操舵機能の車両側での動作が正常であったと判定すると、モード3への移行指示を示す設定変更通知を車両用マスタ装置7に配信させる(配信対象拡大手順)。この場合、車両用マスタ装置7は、センター装置2から配信された設定変更指示を受信すると、その受信した設定変更指示にしたがって自動ブレーキ機能オンをブレーキECUに送信し、ブレーキECUの自動ブレーキ機能のオンを継続させ、自動操舵機能オンを自動運転ECUに送信し、自動運転ECUの自動操舵機能のオンを継続させ、自動アクセル機能オンをアクセルECUに送信し、アクセルECUの自動アクセル機能をオフからオンに切替える。
【0061】
制御部14は、このようにして配信済みの修正版リプログデータの機能や性能を段階的に拡大することで、修正版リプログデータの配信対象を拡大する。尚、制御部14は、モード1への移行指示を示す設定変更指示を車両側に配信させた後に、モード1の車両側での動作が正常でなく、修正版リプログデータに不具合が検知されると、モード2への移行指示を示す設定変更指示を車両の車両用マスタ装置7に配信させない。即ち、制御部14は、モード2への移行指示を示す設定変更指示を車両の車両用マスタ装置7に配信させないことで、不具合により発生する被害の影響を抑える。又、制御部14は、不具合が検知された修正版リプログデータに対して必要な対策を講じる。尚、ブレーキECUの自動ブレーキ機能、自動運転ECUの自動操舵機能、アクセルECUの自動アクセル機能を段階的にオンさせる場合を例示したが、別のECUの別の機能をオンさせる構成でも良い。
【0062】
以上は、センター装置2において、修正版リプログデータや設定変更指示を、車両情報を送信した車両の車両用マスタ装置7に配信させる場合を説明したが、車両情報を送信していない車両の車両用マスタ装置7に配信させても良い。図17に示すように、センター装置2において、制御部14は、修正版リプログデータの配信先や配信量を拡大する場合には、データ構成が同一の修正版リプログデータを車両A~車両C、車両P~車両Rに配信させた後に、車両A~車両Cから車両情報を受信するが、何らかの理由で車両P~車両Rから車両情報を受信しなくても、修正版リプログデータを車両A~車両Cに送信させることに加え、修正版リプログデータを車両P~車両Rに送信させても良い。
【0063】
図18に示すように、センター装置2において、制御部14は、配信済みの修正版リプログデータの機能や性能を拡大する場合には、データ構成が同一の修正版リプログデータを車両A~車両C、車両P~車両Rに配信させた後に、車両A~車両Cから車両情報を受信するが、何らかの理由で車両P~車両Rから車両情報を受信しなくても、設定変更指示を車両A~車両Cに送信させることに加え、設定変更指示を車両P~車両Rに送信させても良い。
【0064】
以上に説明したように本実施形態によれば、以下に示す作用効果を得ることができる。センター装置2において、修正版リプログデータを車両側に配信し、その配信済みの修正版リプログデータの車両側での動作が正常であると判定すると、修正版リプログデータの配信対象を拡大するようにした。配信済みの修正版リプログデータの車両側での動作が正常であることを確認した上で修正版リプログデータの配信対象を拡大することで、配信済みのデータに付随する影響範囲を適切に低減することができる。
【0065】
センター装置2において、修正版リプログデータの配信先を拡大することで、修正版リプログデータの配信対象を拡大するようにした。配信済みの修正版リプログデータの車両側での動作が正常であることを確認した上で修正版リプログデータの配信先を拡大することができる。
【0066】
センター装置2において、修正版リプログデータの配信量を拡大することで、修正版リプログデータの配信対象を拡大するようにした。配信済みの修正版リプログデータの車両側での動作が正常であることを確認した上で修正版リプログデータの配信量を拡大することができる。
【0067】
センター装置2において、配信済みの修正版リプログデータの機能や性能の拡大を車両用マスタ装置7に実施させることで、修正版リプログデータの配信対象を拡大するようにした。配信済みの修正版リプログデータの車両側での動作が正常であることを確認した上で配信済みの修正版リプログデータの機能や性能を拡大することができる。
【0068】
センター装置2において、配信済みの修正版リプログデータの機能や性能の拡大を指定するコマンドを車両側に配信することで、その配信済みの修正版リプログデータの機能や性能の拡大を車両用マスタ装置7に実施させるようにした。機能や性能を拡大した修正版リプログデータを配信する構成では、センター装置2から車両側へのデータ配信量が大きくなり、通信時間が長くなり、機能や性能の拡大を即座に実施させることができない虞があるが、コマンドを車両側に配信することで、センター装置2から車両側へのデータ配信量を低減し、通信時間を低減することができ、機能や性能の拡大を即座に実施させることができる。
【0069】
データの配信対象をグループ分けし、そのグループ分けされたグループにしたがってデータの配信対象を拡大するようにした。修正版リプログデータの配信対象をグループ単位で段階的に拡大することができる。
【0070】
センター装置2において、車両側から車両情報を取得して解析し、その解析結果を用いて配信済みの修正版リプログデータの車両側での動作が正常であるか否かを判定するようにした。車両情報を取得して解析することで、配信済みの修正版リプログデータの車両側での動作を実際の車両動作により判定することができる。
【0071】
センター装置2において、例えば地図情報、気象情報、道路情報等の外部情報を取得して解析し、その解析結果を用いて配信済みの修正版リプログデータの車両側での動作が正常であるか否かを判定するようにした。外部情報として例えば地図情報、気象情報、道路情報等を取得して解析することで、配信済みの修正版リプログデータの車両側での動作を外部情報と関連付けて検知することができる。
【0072】
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、更には、それらに一要素のみ、それ以上、或いはそれ以下を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【0073】
修正版リプログデータの配信対象を拡大するようにしたが、修正版でないリプログデータ、即ち、車両側に配信する最初のリプログデータの配信対象を拡大するようにしても良い。センター装置2から車両側に配信されるデータは、ECUのアプリプログラムを更新するためのリプログデータに限らず、例えば地図データ等であっても良い。
【0074】
配信済みの修正版リプログデータの機能や性能を拡大することとして、機能をオンさせる構成を例示したが、例えば機能を有効にするための判定基準となる閾値を変更したり、性能を増大させたりしても良い。
【0075】
修正版リプログデータの配信先を拡大するパターン、修正版リプログデータの配信量を拡大するパターン、配信済みの修正版リプログデータの機能や性能を拡大するパターンを組み合わせても良い。例えば修正版リプログデータの配信量を段階的に拡大しながら、配信済みの修正版リプログデータの機能や性能を段階的に拡大しても良い。
【0076】
本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することにより提供された専用コンピュータにより実現されても良い。或いは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によりプロセッサを構成することにより提供された専用コンピュータにより実現されても良い。若しくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路により構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより実現されても良い。又、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていても良い。
【符号の説明】
【0077】
図面中、1はデータ通信システム、2はセンター装置、7は車両用マスタ装置、12は車両用HMI装置、14は制御部、14aは配信制御部、14bは車両情報取得部、14cは車両情報解析部、14dは外部情報取得部、14eは外部情報解析部、14fは正常動作判定部、14gは配信対象拡大部、14hはグループ分け部である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
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図17
図18