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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】化粧材
(51)【国際特許分類】
   B32B 7/023 20190101AFI20231129BHJP
   B32B 33/00 20060101ALI20231129BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
B32B7/023
B32B33/00
B32B27/00 E
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019067910
(22)【出願日】2019-03-29
(65)【公開番号】P2020163767
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2022-01-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】桜井 玲子
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 健
(72)【発明者】
【氏名】西根 祥太
【審査官】清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-343667(JP,A)
【文献】実開昭50-017580(JP,U)
【文献】特開平11-268215(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
E04F 13/00-15/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、装飾層とを有する化粧材であって、
該基材の明度(L )と該装飾層の明度(L )とが下記関係式(1)を満たし、
該基材の彩度(C )と該装飾層の彩度(C )とが下記関係式(2)を満たし、
かつ、該基材と該装飾層との色差(ΔEab)が下記関係式(3)を満たす、
化粧材。
関係式(1) -15≦L -L ≦10
関係式(2) -8≦C -C ≦25
関係式(3) 15.1≦ΔEab≦33.0
(該装飾層の明度(L )は、該化粧材における該基材の該装飾層が設けられている側から測定した明度を意味する。)
(該装飾層の彩度(C )は、該化粧材における該基材の該装飾層が設けられている側から測定した色度(a )及び色度(b )から算出した値を意味する。)
(該色差(ΔEab)は、「該基材の明度(L )、該基材の色度(a )、該基材の色度(b )」と、「該L 、該a 、該b 」とから算出した値を意味する。)
【請求項2】
下記関係式(1a)又は(1b)を満たす、請求項1に記載の化粧材。
関係式(1a) -14≦L -L ≦-0.1
関係式(1b) 1≦L -L ≦9
【請求項3】
下記関係式(2a)又は(2b)を満たす、請求項1又は2に記載の化粧材。
関係式(2a) -8≦C -C ≦-1
関係式(2b) 3≦C -C ≦23
【請求項4】
前記装飾層が、全面着色層と絵柄層とを有する請求項1~3のいずれか1項に記載の化粧材。
【請求項5】
前記基材と前記全面着色層と前記絵柄層とをこの順に有する請求項4に記載の化粧材。
【請求項6】
更に表面保護層を、前記基材、前記装飾層及び表面保護層の順に有する請求項1~5のいずれか1項に記載の化粧材。
【請求項7】
前記表面保護層が、電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物からなる請求項6に記載の化粧材。
【請求項8】
更に、前記基材の前記絵柄層を有する面とは反対側の面に、接着剤層を介して被着体を有する請求項4又は5に記載の化粧材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
壁、天井、床等の建築物の内装用部材、窓枠、玄関ドア等の各種扉、手すり、幅木、廻り縁、窓枠、扉枠、モール等の建具又は造作部材の他、キッチン、家具又は弱電製品、OA機器等のキャビネットの表面化粧板等は、一般的に、樹脂部材、木質部材、金属部材等の各種部材を被着材として、これらの被着材に化粧材を貼り合わせたもの等が用いられる。
【0003】
上記用途に用いられる化粧材としては、様々なものが提案されており、例えば、基材、絵柄層、表面保護層を有する化粧シートが提案されている(例えば、特許文献1)。この化粧材は、装飾層が設けられる領域と設けられない領域との艶差により視覚的に凹部を表現する、優れた意匠性を有しており、表面保護層の形成に電離放射線硬化性樹脂組成物が用いられていることから、耐汚染性、耐マーリング性(耐擦傷性)等の表面特性にも優れた化粧材である。また、基材シートと絵柄着色層と透明な表面シートとをこの順に積層してなり、基材シートの少なくとも絵柄着色層側表面について、色相を絵柄着色層の色相と合わせ、かつ光学濃度を絵柄着色層の光学濃度の最も低い部分の値に合わせた化粧シートが提案されている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-125780号公報
【文献】特開平11-198320号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記用途に用いられる化粧材は、各種建具等への加工時、施工現場への搬送時に、互いに又は他の木材等の各種部材、搬送時の冶具等との擦れが生じる、あるいは衝突等により衝撃が加えられることがある。特許文献1の化粧シートは、電離放射線硬化性樹脂組成物により形成された表面保護層を有することで、日常使用における汚染、マーリング(擦傷)等への耐性には優れているものの、上記加工時、搬送時の擦れ、衝撃等への耐性までは想定されておらず、また現実的にも、このような搬送時の擦れ、衝撃等に耐えうる表面保護層の形成は不可能である。そのため、搬送時の擦れ、衝撃等により、表面保護層とともに装飾層が基材より剥離してしまい、装飾層に被覆されていた下層の露出が生じることで、意匠性が低下する場合がある。
【0006】
下層の露出が生じることで意匠性が低下することを抑制する化粧シートとして、特許文献2の化粧シートのように、化粧シートを構成する基材シート、絵柄着色層及び透明な表面シートの各層の色相を概略合わせる手法がとられる場合がある。しかし、基材シートはコスト削減等が考慮されて汎用品を用いることが一般的であり、一品一様にて作製されるものではない。そのため、近年の需要者の意匠に対する要求の多様化が進む中、所望の絵柄と色相を概略合わせた基材シートが存在せず、意匠の多様化に十分対応できない問題が生じるようになっている。
【0007】
本発明は、このような状況下になされたもので、意匠の多様化に対応しつつ、搬送時の擦れ、衝撃等により装飾層等の剥離が生じても、意匠性の低下を抑制し得る化粧シート及び化粧材を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、下記の構成を有する化粧材に係る発明により前記課題を解決できることを見出した。
【0009】
[1]基材と、装飾層とを有し、
該基材の明度(L )と該装飾層の明度(L )とが下記関係式(1)を満たし、
該基材の彩度(C )と該装飾層の彩度(C )とが下記関係式(2)を満たし、
かつ、該基材と該装飾層との色差(ΔEab)が下記関係式(3)を満たす、
化粧材。
関係式(1) -15≦L -L ≦10
関係式(2) -10≦C -C ≦25
関係式(3) ΔEab≧3
[2]更に表面保護層を、前記基材、前記装飾層及び表面保護層の順に有する上記[1]に記載の化粧材。
[3]更に、前記基材の前記絵柄層を有する面とは反対側の面に、接着剤層を介して被着体を有する上記[1]又は[2]に記載の化粧材。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、搬送時の擦れ、衝撃等により装飾層等が剥離しても、意匠性の低下を抑制し得る化粧シート及び化粧材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の化粧材の一例の層構成を示す模式断面図である。
図2】本発明の化粧材の一例の層構成を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔化粧材〕
以下、本発明の化粧材について説明する。なお、本明細書中において、数値範囲の記載に関する「以上」、「以下」及び「~」に係る数値は任意に組み合わせできる数値であり、実施例の数値は数値範囲の上下限に用い得る数値であるとする。
【0013】
本発明の化粧材は、基材と、装飾層とを有し、該基材の明度(L )と該装飾層の明度(L )とが下記関係式(1)を満たし、該基材の彩度(C )と該装飾層の彩度(C )とが下記関係式(2)を満たし、かつ、該基材と該装飾層との色差(ΔEab)が下記関係式(3)を満たす、ものである。
関係式(1) -15≦L -L ≦10
関係式(2) -10≦C -C ≦25
関係式(3) ΔEab≧3
本発明の化粧材において、基材と装飾層との関係について、上記関係式を満たすようなものを選定することにより、装飾層が基材から剥離したとしても、該剥離した領域が、他の剥離していない領域から目立つことがなく、結果として意匠性の低下を抑制することが可能となる。通常であれば、例えば上記特許文献2のように、色相を概略合わせる、すなわち色差(ΔEab)を小さくして0に近づけるほど、剥離した領域は他の剥離していない領域から目立ちにくくなり、意匠性の低下を抑制できると考えるものである。しかし、本発明においては、色差(ΔEab)が大きい場合であっても、特定の明度(L)と彩度(C)とを組み合わせることにより、すなわち上記関係式(1)に示される装飾層の明度(L )と、基材の明度(L )との差(以下、「明度差(ΔL)」と称することがある。)、上記関係式(2)に示される装飾層の彩度(C )と、基材の彩度(C )との差(以下、「彩度差(ΔC)」と称することがある。)、そして上記関係式(3)に示される色差(ΔEab)を同時に満たすことにより、剥離した領域は他の剥離していない領域から目立ちにくくなり、意匠性の低下を抑制することが可能となった。また、本発明によれば、色差(ΔEab)が大きくても意匠性の低下を抑制することができるようになったため、装飾層の様々な絵柄等に対して様々な基材を適用することが可能となり、近年の需要者の意匠に対する要求の多様化に容易に対応することが可能となった。
【0014】
明度(L)に関する関係式(1)について、明度差(ΔL)は-15以上10以下であることを要する。明度差(ΔL)が-15未満、あるいは10より大きいと、いずれも装飾層等が剥離した領域が、他の剥離していない領域から目立ちやすくなり、意匠性が低下する。
【0015】
剥離した領域を他の剥離していない領域から目立ちにくくすることで、意匠性の低下を抑制する観点から、より安定して意匠性の抑制を図ることを更に考慮すると、明度差(ΔL)は、好ましくは-13以上、より好ましくは-11以上、更に好ましくは-10以上である。また上限として好ましくは9以下、より好ましくは8以下、更に好ましくは7以下である。
【0016】
これと同様の観点から、明度差(ΔL)は以下の関係式(1a)又は(1b)を満たすことが特に好ましい。
関係式(1a) -14≦L -L ≦-0.1
関係式(1b) 1≦L -L ≦9
関係式(1a)において、下限として好ましくは-13以上、より好ましくは-11以上、更に好ましくは-10以上であり、上限として好ましくは-2以下、より好ましくは-3以下、更に好ましくは-5以下である。
また、関係式(1b)において、上限として好ましくは8以下、より好ましくは7以下であり、下限として好ましくは2以上である。
一般的には、明度差(ΔL)が小さいほど(0に近いほど)、装飾層等が剥離した領域と他の剥離していない領域との明度差が小さくなるため、該剥離した領域は目立ちにくくなると考えるものである。しかし、本発明においては、明度差(ΔL)が0より大きくても(0より離れていても)、他の彩度差(ΔC)、色差(ΔEab)を所定の範囲内とすることで、より容易に、剥離した領域を目立ちにくくし、意匠性の低下を抑制することができる。
【0017】
彩度(C)に関する関係式(2)について、彩度差(ΔC)は-10以上25以下であることを要する。彩度差(ΔC)が-10未満、あるいは25より大きいと、いずれも装飾層等が剥離した領域が、他の剥離していない領域から目立ちやすくなり、意匠性が低下する。
【0018】
剥離した領域を他の剥離していない領域から目立ちにくくすることで、意匠性の低下を抑制し、より安定して意匠性の抑制を図ることを更に考慮すると、彩度差(ΔC)は、好ましくは-8以上、より好ましくは-7以上、更に好ましくは-6以上であり、上限として好ましくは23以下、より好ましくは20以下、更に好ましくは16以下である。
【0019】
これと同様の観点から、彩度差(ΔC)は以下の関係式(2a)又は(2b)を満たすことが特に好ましい。
関係式(2a) -8≦C -C ≦-1
関係式(2b) 3≦C -C ≦23
関係式(2a)において、下限として好ましくは-7以上、より好ましくは-6以上、更に好ましくは-5以上であり、上限として好ましくは-2以下、より好ましくは-3以下、更に好ましくは-5以下である。
関係式(2b)において、上限として好ましくは21以下、より好ましくは20以下、更に好ましくは17以下であり、下限として好ましくは4以上、より好ましくは5以上、更に好ましくは8以上である。
一般的には、彩度差(ΔC)が小さいほど(0に近いほど)、装飾層等が剥離した領域と他の剥離していない領域との明度差が小さくなるため、該剥離した領域は目立ちにくくなると考えるものである。しかし、本発明においては、彩度差(ΔC)が0より大きくても(0より離れていても)、他の明度差(ΔL)、色差(ΔEab)を所定の範囲内とすることで、より容易に、剥離した領域を目立ちにくくし、意匠性の低下を抑制することができる。
【0020】
色差(ΔEab)に関する関係式(3)について、色差(ΔEab)は3以上である。剥離した領域は他の剥離していない領域から目立ちにくくなり、意匠性の低下を抑制する観点から、より安定して意匠性の抑制を図ることを更に考慮すると、色差(ΔEab)は、好ましくは5以上、すなわち以下関係式(3a)を満たすことが好ましい。
関係式(3a) ΔEab≧5
また、これと同様の観点から、ΔEabは好ましくは9以上、より好ましくは15以上、更に好ましくは20以上である。またΔEabの上限については特に制限はないが、これと同様の観点から、好ましくは35以下、より好ましくは32以下、更に好ましくは30以下である。
【0021】
一般的には、色差(ΔEab)が小さいほど(0に近いほど)、装飾層等が剥離した領域と他の剥離していない領域との明度差が小さくなるため、該剥離した領域は目立ちにくくなるとも考えられる。しかし、本発明においては、色差(ΔEab)が0より大きくても(0より離れていても)、他の明度差(ΔL)、彩度差(ΔC)を所定の範囲内とすることで、より容易に、剥離した領域を目立ちにくくし、意匠性の低下を抑制することができる。
本発明の化粧材においては、このように色差(ΔEab)が大きくてもよいことから、例えば装飾層が茶系の木目模様を呈する場合に、基材として汎用されるグレー系のように色相が全く異なるものを用いても、上記関係式(1)~(3)さえ満たせば、本発明の効果、すなわち剥離した領域は他の剥離していない領域から目立ちにくくなり、意匠性の低下を抑制するという効果が得られる。
【0022】
本発明において、明度差(ΔL)、彩度差(ΔC)及び色差(ΔEab)は、以下のようにして求めた数値である。
まず、装飾層の明度L 、色度a 及びb を測定する。具体的には、化粧材(大きさ:100cm×100cm)を100に分割し(分割した一つあたりの大きさ:10cm×10cm)、分割した任意の20の各々について、任意の50箇所において分光測色計を用いて、L、a、bを測定し、測定値の平均値を分割したシートの装飾層のL、a、bとし、当該分割した20のシートの装飾層のL、a、bの平均値を明度L 、色度a 及びb とする。すなわち、装飾層の明度L 、色度a 及びb は実質的には化粧材の明度L 、色度a 及びb であるといえる。
【0023】
また、基材は通常無地であるため、任意の一箇所について分光測色計を用いてL、a、bを測定し、これを基材の明度L 、色度a 及びb とする。なお、装飾層が単一色による全面着色層のみからなる層であるときは、上記基材と同じ方法により明度L 、色度a 及びb を測定すればよく、逆に基材が絵柄を有する層であるときは、上記装飾層と同じ方法により明度L 、色度a 及びb を測定すればよい。
【0024】
これらのL、a、bは、JIS Z8781-5:2013の色の表示方法に規定されたものであり、市販の分光測色計(例えば、分光色彩計・色差計「SE6000」(型番)、日本電色工業株式会社製)等を用いて測定することができる。
【0025】
このようにして測定した、基材のL 、a 及びb 、装飾層のL 、色度a 及びb を用いて、下記数式により、基材の彩度(C )、装飾層の彩度(C )、明度差(ΔL)、彩度差(ΔC)及び色差(ΔEab)を算出した。
=〔(a +(b 1/2
=〔(a +(b 1/2
ΔL=L -L
ΔC=C -C
ΔEab=〔(L -L +(a -a +(b 1/2
【0026】
次に、本発明の化粧材を構成する層について、図1及び2を用いて説明する。
図1は、本発明の化粧材10の断面を示す模式断面図であり、本発明の化粧材10が、基材1、装飾層2を有していることが示される。また、図2には、本発明の化粧材10の好ましい一態様の断面を示す模式断面図であり、基材1、化粧材の全面を被覆するように設けられる全面着色層21(「ベタ層」とも称される。)及び絵柄層22を有する装飾層2、該装飾層2の全面を被覆するように、プライマー層4及び表面保護層3が順に設けられていることが示される。
以下、本発明の化粧材を構成する各層について、より詳細に説明する。
【0027】
(基材1)
基材は、後述する装飾層との関係で、特定の明度差、彩度差及び色差を有する、すなわち上記関係式(1)~(3)を満たす必要がある。
基材としては、上記関係式(1)~(3)を満たすものであれば、通常化粧材の基材として用いられるものを制限なく採用することができ、例えば、紙、不織布又は織布、樹脂、木材、金属、非金属無機材料等からなる基材が代表的に挙げられる。基材の厚みも特に制限はなく、フィルム、シート、又は板状の形態のものを所望に応じて適宜用いることができるが、通常は、フィルム又はシートとして20~300μm程度、板としては500μm~10cm程度のものが用いられる。
【0028】
紙基材としては、例えばクラフト紙、チタン紙、リンター紙、硫酸紙、グラシン紙、パーチメント紙、樹脂含浸紙、薄葉紙、和紙等が挙げられる。不織布又は織布の基材としては、例えばガラス繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、炭素繊維等の無機繊維、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等の各種合成樹脂の有機繊維で構成される不織布又は織布、またこれらの複合体等の基材が挙げられる。
【0029】
樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、アイオノマー等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、ポリエチレンナフタレート樹脂(PEN)、エチレングリコール-テレフタル酸-イソフタル酸共重合体、ポリエステル系熱可塑性エラストマー等のポリエステル樹脂、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート-ブチル(メタ)アクリレート共重合体等のアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(以下、「ABS樹脂」とも称する。)、塩化ビニル樹脂等の熱可塑性樹脂からなる樹脂基材が挙げられる。
【0030】
木材としては、杉、檜、松、樫、ラワン、チーク、ゴムの木等の各種樹種の木材からなる木材基材が挙げられる。木材基材は、突板と称されるフィルム、又はシート形態、あるいは単板、合板、集成材、パーチクルボード、繊維板等の板形態とすることができる。
金属としては、鉄、アルミニウム、銅、錫、チタニウム、これらの金属を少なくとも一種含む合金(例えば、炭素鋼、ステンレス鋼、ジュラルミン、真鍮、青銅等)等からなる金属基材が挙げられる。
また、非金属無機材料としては、セメント、石膏、珪酸カルシウム、陶磁器、各種セラミックス等が挙げられる。
【0031】
基材は、着色されていてもよいし、着色されていなくてもよく(透明でもよく)、着色されている場合、着色の態様には特に制限はなく、透明着色であってもよいし、不透明着色(隠蔽着色)であってもよく、これらは任意に選択できる。
【0032】
基材は、着色されている場合、着色剤としては、例えば、チタン白等の白色顔料、鉄黒、黄鉛、チタン黄、弁柄、カドミウム赤、群青、コバルトブルー等の無機顔料;キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー、ニッケル-アゾ錯体、アゾメチンアゾ系黒色顔料、ペリレン系黒色顔料等の有機顔料又は染料;アルミニウム、真鍮等の鱗片状箔片からなる金属顔料;二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の鱗片状箔片からなる真珠光沢(パール)顔料等の着色剤が挙げられる。例えば、化粧シートを貼着する被着材の表面色相がばらついている場合に、表面色相を隠蔽し、装飾層の色調の安定性を向上させたい場合は、上記着色剤のいずれかを用いればよい。
【0033】
樹脂の着色の場合は、樹脂中への添加(混練、練り込み)、樹脂と着色剤とを含む塗料の塗膜の塗布による形成等の、いずれの手段を採用することができる。紙、不織布、又は織布の着色の場合は、パルプや繊維材料との混抄、あるいは塗膜形成等のいずれかの手段、又はこれらの併用により行うことができる。
木材の着色の場合は、染料による染色、あるいは塗膜形成のいずれかの手段、又はこれらの併用により行うことができる。金屬の着色の場合、塗膜形成の他、陽極酸化法を用いて表面に金属酸化物皮膜を形成する解着色法等を採用することができる。また、非金属無機材料の場合、塗膜形成、あるいは基材中への添加のいずれかの手段、又はこれらの併用により行うことができる。
【0034】
基材には、必要に応じて、添加剤が配合されてもよい。添加剤としては、例えば、炭酸カルシウム、クレーなどの無機、水酸化マグネシウムなどの難燃剤、酸化防止剤、滑剤、発泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤等が挙げられる。添加剤の配合量は、加工特性等を阻害しない範囲であれば特に制限はなく、要求特性等に応じて適宜設定できる。
【0035】
本発明の化粧材の耐候性を向上させる観点から、上記添加剤の中でも、紫外線吸収剤、光安定剤等の耐候剤を用いることが好ましい。
紫外線吸収剤としては、化粧材に汎用される紫外線吸収剤を特に制限なく用いることができ、例えばベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤等が挙げられる。光安定剤としても、化粧材に汎用される光安定剤を特に制限なく用いることができ、例えばピペリジニルセバケート系光安定剤等のヒンダードアミン系光安定剤等が挙げられる。また、これらの紫外線吸収剤、光安定剤は、分子中に(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性二重結合を有する反応性官能基を有するものであってもよい。
これらの紫外線吸収剤、光安定剤等の耐候剤、その他各種添加剤は、単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。
【0036】
本発明においては、上記の基材を単独で、又は複数種を組み合わせて用いることもできる。複数の紙基材を組み合わせたものであってもよいし、紙基材と繊維基材、紙基材と樹脂基材、繊維基材と樹脂基材、紙基材と繊維基材と樹脂基材とを組み合わせたものであってもよい。また、樹脂基材については、上記樹脂の単層、あるいは同種又は異種樹脂による複層のいずれの構成であってもよい。
【0037】
基材の形状としては、特に制限はなく、所望に応じて適宜選択すればよく、例えば、平板状のものでもよいし、曲面を有するものでもよいし、また角を有するもの等の非平板状のものであってもよい。図1及び2には、平板状(「シート状」ともいえる。)の化粧材が示されているが、本発明の化粧材の形状は、これに限られるものではない。化粧材の製造のしやすさ、用途、加工特性等を考慮すると、平板状であることが好ましい。
基材の厚さは、主に加工特性、取扱の容易さ等を考慮すると、20μm以上が好ましく、30μm以上がより好ましく、40μm以上が更に好ましい。上限としては、200μm以下が好ましく、160μm以下がより好ましく、100μm以下が更に好ましい。
【0038】
基材は、基材と他の層との層間密着性の向上、各種の被着材との接着性の強化等のために、その片面又は両面に、酸化法、凹凸化法等の物理的表面処理、又は化学的表面処理等の表面処理を施すことができる。
酸化法としては、例えばコロナ放電処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン-紫外線処理法等が挙げられ、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法等が挙げられる。これらの表面処理は、基材の種類に応じて適宜選択されるが、一般にはコロナ放電処理法が、表面処理の効果及び操作性等の面から好ましく用いられる。
また、基材と他の層との層間密着性の向上、各種の被着材との接着性の強化等のために、基材の少なくとも一方の面にプライマー層を形成する等の処理を施してもよい。
【0039】
(装飾層2)
装飾層は、上記の基材との関係で、特定の明度差、彩度差及び色差を有する、すなわち上記関係式(1)~(3)を満たす必要がある。よって、装飾層は、上記関係式(1)~(3)を満たすものであれば、特に制限はなく、通常、基材の一方の面の少なくとも一部分を被覆するように設けられ、本発明の化粧材に模様を付与することで、意匠性を向上させる層である。
本発明の化粧材において、装飾層は、基材の一方の面の一部分を被覆するように柄を形成するように設けられる絵柄層のみから構成される層であってもよいし、基材の一方の面の全面を被覆するように設けられる全面着色層のみから構成される層でもあってもよいし、該絵柄層と全面着色層とを組み合わせた層であってもよい。より高い意匠性を表現する観点から、装飾層は、絵柄層と全面着色層とから構成される層であることが好ましい。この場合、本発明の化粧材は、基材、全面着色層及び絵柄層をこの順に有するものであることが好ましく、また絵柄層は一層でもよいし、二層以上であってもよい。
【0040】
装飾層により付与される模様としては、特に制限なく所望に応じて選択すればよく、例えば、木目模様、大理石模様(例えばトラバーチン大理石模様)、花崗岩板のへき開面等の岩石の表面を模した石目模様、布目や布状の模様を模した布地模様、レザーのシボを表現したレザー(皮シボ)模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、ヘアライン、万線条溝、梨地、砂目、文字、記号、幾何学模様等、これらを複合した寄木、パッチワーク等の模様が挙げられる。また、これらを複合した模様として、例えば大理石等の石材の砕石を白色セメントに混ぜて固め、磨いて大理石のように仕上げた人造石、いわゆる人造大理石のような模様も挙げられる。
需要者の意匠への要望は流行等により変化するものであるが、木目模様への人気は根強いため、本発明の化粧材の模様としても、木目模様が好ましい。木目模様には、柾目模様、板目模様、杢目模様、木口模様等があるが、いずれであってもよい。
【0041】
装飾層の形成には、少なくともバインダー樹脂、並びに顔料及び染料等の着色剤を含む樹脂組成物が用いられることが好ましく、その他所望に応じて用いられる成分、例えば、艶消し剤、体質顔料、安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、溶剤等を適宜混合したものを用いることができる。すなわち、装飾層は、少なくともバインダー樹脂、及び顔料及び染料等の着色剤を含む層であり、その他、上記の所望に応じて所望に応じて用いられる成分を含み得る層である。
【0042】
バインダー樹脂としては特に制限はなく、例えば、ウレタン樹脂、アクリルポリオール樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、アミド樹脂、ブチラール樹脂、スチレン樹脂、ウレタン-アクリル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル-アクリル共重合体樹脂、ニトロセルロース樹脂(硝化綿)、酢酸セルロース樹脂等の樹脂が好ましく挙げられる。また、例えばポリオールを主剤とし、イソシアネートを硬化剤とする2液硬化型樹脂等の硬化性樹脂を用いてもよい。これらを単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。
【0043】
装飾層で用いられ得る顔料、染料等の着色剤としては、例えば、上記の基材に用いられ得る顔料、染料等の着色剤と同じものを例示でき、これらの中から所望の絵柄に応じて適宜選択すればよい。
【0044】
また、本発明において、より意匠性を向上させる観点から、装飾層には、上記のその他所望に応じて用いられる成分の中でも、艶消し剤を含むことが好ましい。
艶消し剤としては、シリカ、クレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、沈降性硫酸バリウム、ケイ酸カルシウム、合成ケイ酸塩、及びケイ酸微粉末等の無機フィラー;アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ナイロン樹脂、ポリプロピレン樹脂、又は尿素系樹脂等の有機フィラー、等が挙げられる。
【0045】
装飾層が艶消し剤を含むことで、装飾層はより低光沢となるため、艶差による視覚的な凹凸感を有するような意匠表現が可能となる。
例えば、好ましい模様として例示した木目模様について、木目模様は、より低光沢(艶消又は低艶)の導管部分、より高光沢(艶有又は高艶)の春材部分、更に高光沢の秋材部分(照り部分)等が存在する。装飾層において、より低光沢な導管部分を形成する絵柄層、より高光沢な春材部分を形成する絵柄層、更に高光沢の秋材部分を形成する絵柄層等の複数の絵柄層を組み合わせることで、意匠性の高い模様を形成することが可能である。またこの場合、例えば全面着色層に艶消し剤を含有させない、あるいは絵柄層よりもその含有量を少なくすることで、絵柄層との艶差をより大きくして、意匠性を向上させることも可能である。
【0046】
これらの艶消し剤の体積平均粒径は、好ましくは0.5~25μmであり、より好ましくは1~15μm、更に好ましくは3~10μmである。
また、装飾層中のバインダー樹脂100質量部に対する艶消し剤の含有量は、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、更に好ましくは2質量部以上であり、上限としては通常100質量部以下であり、好ましくは50質量部以下、より好ましくは20質量部以下、更に好ましくは10質量部以下である。艶消し剤の含有量が上記範囲内であると、装飾層はより低光沢な層として視認できるようになるため、艶差による視覚的な凹凸感を向上させることが可能となり、かつ樹脂組成物のチキソ性が極端に高くなることがなく塗布性能が向上するため、結果として意匠性が向上する。
【0047】
装飾層は、耐候性を向上させる観点から、紫外線吸収剤、光安定剤等の耐候剤を含んでいてもよい。紫外線吸収剤、光安定剤としては、基材に含まれ得るものと同じものを例示でき、これらの中から所望の絵柄に応じて適宜選択すればよい。
【0048】
装飾層の厚さは、所望の模様に応じて適宜選択すればよく、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上、更に好ましくは2μm以上であり、上限として好ましくは15μm以下、より好ましくは10μm以下、更に好ましくは8μm以下である。
【0049】
(表面保護層3)
表面保護層は、基材及び装飾層を被覆するように、本発明の化粧材の全面に設けられる層であり、本発明の化粧材を構成する各層を保護し、結果として本発明の化粧材を保護する層である。
表面保護層は、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂のいずれにより構成されていてもよく、本発明の化粧材を保護し、より優れた耐汚染性及び耐摩耗性等の表面特性を得る観点から、硬化性樹脂により構成される層、より具体的には硬化性樹脂の硬化物により構成される層であることが好ましい。また、熱可塑性樹脂と硬化性樹脂とを併用して構成される層であってもよい。
【0050】
熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、熱可塑性(非架橋型)ウレタン樹脂等が挙げられる。
【0051】
硬化性樹脂としては、熱硬化性樹脂、二液硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂等の硬化性樹脂を用いることができ、物理的な凹凸形状及び視覚的な凹凸感により触感と意匠性を向上させやすくする観点、更には本発明の化粧材の耐汚染性及び耐摩耗性の向上の観点から、電離放射線硬化性樹脂が好ましい。
【0052】
熱硬化樹脂としては、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、フェノール系樹脂、尿素メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、シリコーン系樹脂等が挙げられる。熱硬化樹脂には、必要に応じて硬化剤が添加される。
二液硬化樹脂としては、ポリオール化合物を主剤としイソシアネート化合物を硬化剤とする二液硬化型ウレタン樹脂、二液硬化型エポキシ樹脂、二液硬化型ウレタン変性アクリル樹脂及び二液硬化型ポリエステル樹脂等が挙げられる。
【0053】
電離放射線硬化性樹脂は、電離放射線を照射することにより、架橋、硬化する樹脂のことであり、電離放射線硬化性官能基を有するものである。ここで、電離放射線硬化性官能基とは、電離放射線の照射によって架橋硬化する基であり、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基などのエチレン性二重結合を有する官能基などが好ましく挙げられる。また、電離放射線とは、電磁波又は荷電粒子線のうち、分子を重合あるいは架橋し得るエネルギー量子を有するものを意味し、通常、紫外線(UV)又は電子線(EB)が用いられるが、その他、X線、γ線などの電磁波、α線、イオン線などの荷電粒子線も含まれる。
電離放射線硬化性樹脂としては、具体的には、従来電離放射線硬化性樹脂として慣用されている重合性モノマー、重合性オリゴマーの中から適宜選択して用いることができる。
【0054】
重合性モノマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレート系モノマーが好ましく、中でも多官能性(メタ)アクリレートモノマーが好ましい。ここで「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート又はメタクリレート」を意味する。
多官能性(メタ)アクリレートモノマーとしては、分子中に2つ以上の電離放射線硬化性官能基を有し、かつ該官能基として少なくとも(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートモノマーが挙げられ、化粧材を保護し、更には耐汚染性及び耐摩耗性等の表面特性の向上の観点から、アクリロイル基を有するアクリレートモノマーが好ましい。
また、これと同様の観点から、官能基数は好ましくは2以上であり、上限として好ましくは8以下、より好ましくは6以下、更に好ましくは4以下、特に好ましくは3以下である。これらの多官能性(メタ)アクリレートは、単独で、又は複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
このような重合性モノマーとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAテトラエトキシジアクリレート、ビスフェノールAテトラプロポキシジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート等の二官能(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸変性トリ(メタ)アクリレート等の三官能以上の(メタ)アクリレート;が好ましく挙げられる。
【0056】
重合性オリゴマーとしては、例えば、分子中に2つ以上の電離放射線硬化性官能基を有し、かつ該官能基として少なくとも(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートオリゴマーが挙げられる。例えば、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリカーボネート(メタ)アクリレートオリゴマー、アクリル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリカプロラクトンウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリカプロラクトンジオールウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0057】
化粧材を保護し、更には耐汚染性及び耐摩耗性等の表面特性の向上の観点から、これらの重合性オリゴマーの官能基数は、好ましくは2以上であり、上限として好ましくは8以下、より好ましくは6以下、更に好ましくは4以下、特に好ましくは3以下である。
また、これと同様の観点から、500以上が好ましく、より好ましくは1,000以上であり、上限として好ましくは80,000以下、より好ましくは50,000以下である。本明細書において、重量平均分子量は、GPC分析によって測定され、かつ標準ポリスチレンで換算された平均分子量である。
【0058】
表面保護層には、所望に応じて、本発明の目的を損なわない範囲で、紫外線吸収剤、光安定剤等の耐候剤、紫外線遮蔽剤、耐摩耗性向上剤、重合禁止剤、架橋剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、接着性向上剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、ブロッキング防止剤、滑剤、溶剤等を添加することができる。中でも、紫外線吸収剤、光安定剤等の耐候剤を含んでいることが好ましい。
紫外線吸収剤、光安定剤については、基材に用いられ得るものとして例示した紫外線吸収剤、光安定剤から適宜選択して採用すればよい。
【0059】
表面保護層の厚さは、化粧材の保護、耐汚染性及び耐摩耗性等の表面特性の向上、更には表面保護層の形成のしやすさ等を考慮すると、好ましくは1μm以上、より好ましくは2μm以上、更に好ましくは3μm以上であり、上限として好ましくは10μm以下、より好ましくは8μm以下、更に好ましくは5μm以下である。
【0060】
(プライマー層4)
プライマー層は、主に本発明の化粧材を構成する各層の層間密着性を向上させるために設けられる層である。図2に示されるように、例えば装飾層と表面保護層との間に設けられることで、これらの層の層間密着性を向上させることができ、また装飾層を保護する機能も有する。図2には、プライマー層が装飾層と表面保護層との間に設けられる態様が示されているが、これに限らず、例えば基材と装飾層との間に設けることも可能である。
【0061】
プライマー層の形成には、少なくともバインダー樹脂を含む樹脂組成物が用いられることが好ましく、その他所望に応じて用いられる成分、例えば体質顔料、安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、溶剤等を適宜混合したものを用いることができる。すなわち、プライマー層は、少なくともバインダー樹脂を含む層であり、その他、上記の所望に応じて所望に応じて用いられる成分を含み得る層である。
【0062】
プライマー層の形成に用いられるバインダー樹脂としては、上記の装飾層の形成に用いられ得るバインダー樹脂と同じものを例示でき、これらの中から所望に応じて適宜選択すればよい。
【0063】
プライマー層の厚さは、効率よく装飾層を保護し、かつ層間密着性を向上させる観点から、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは1μm以上、更に好ましくは2μm以上であり、上限として好ましくは10μm以下、より好ましくは8μm以下、更に好ましくは5μm以下である。
【0064】
(樹脂層)
本発明の化粧材は、樹脂層を有していてもよい(図示せず)。樹脂層を設けることにより、装飾層の保護、本発明の化粧材の耐汚染性及び耐摩耗性等の表面特性の向上が期待できる。よって、樹脂層は、装飾層の表面側(装飾層の基材側とは反対側)、上記表面保護層を設ける場合には、装飾層と表面保護層との間に設けることが好ましい。
【0065】
樹脂層を構成する樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリスチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂等が好ましく挙げられる。中でも、表面特性の向上の観点から、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂が好ましく、ポリオレフィン樹脂が更に好ましい。ポリオレフィン樹脂としては、基材シートを構成し得るものとして例示した樹脂が挙げられ、中でもポリプロピレン樹脂が好ましい。
【0066】
樹脂層は、装飾層をより鮮明に視認できるようにする観点から、透明であることが好ましい。ここで、透明とは、無色透明の他、着色透明及び半透明も含むものである。また、着色されている場合、着色剤としては、上記の装飾層に用いられ得る着色剤として例示した着色剤が好ましく挙げられ、装飾層と同系色の着色剤を用いることが好ましい。
【0067】
樹脂層は、必要に応じて、添加剤が配合されていてもよく、例えば、上記基材中に配合し得る添加剤として例示したもの、中でも紫外線吸収剤、光安定剤等の耐候剤を用いることが好ましい。また、基材シートに含み得る耐候剤と同じく、分子中に(メタ)アクリロイル基等のエチレン性二重結合を有する反応性官能基を有する紫外線吸収剤、分子中に(メタ)アクリロイル基等のエチレン性二重結合を有する反応性官能基を有する光安定剤を用いてもよい。添加剤の添加量は特に制限はなく、要求特性等に応じて適宜設定できる。
【0068】
樹脂層の厚さは、装飾層の保護、表面特性の向上の観点から、10μm以上150μm以下が好ましく、30μm以上120μm以下がより好ましく、50μm以上100μm以下が更に好ましい。また、装飾層を保護し、かつ優れた表面特性を得る観点から、基材よりも厚くすることが好ましい。
【0069】
樹脂層は、他の層との層間密着性の向上等のために、基材と同じく、その片面又は両面に、物理的表面処理、又は化学的表面処理等の表面処理を施すことができる。
また、樹脂層と他の層との層間密着性の向上を得る等のために、樹脂層の片面又は両面にプライマー層を形成する等の処理を施してもよい。このプライマー層については、既述の通りである。
【0070】
(接着層)
本発明の化粧材は、必要に応じて接着層を有してもよい。特に、本発明の化粧材が上記の樹脂層を有する場合、該樹脂層と装飾層との層間密着性を向上させる際に、接着層を設けることが有効である。接着層を構成する接着剤としては、通常化粧シートで用いられる接着剤を制限なく用いることができる。
【0071】
接着剤としては、例えば、ウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、ゴム系接着剤等が挙げられ、中でも、ウレタン系接着剤が接着力の点で好ましい。なお、ウレタン系接着剤としては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール等の各種ポリオール化合物と、上記の各種イソシアネート化合物等の硬化剤とを含む2液硬化型ウレタン樹脂を利用した接着剤が挙げられる。また、アクリル-ポリエステル-塩酢ビ系樹脂等も加熱により容易に接着性を発現し、高温での使用でも接着強度を維持し得る好適な接着剤である。
【0072】
接着層の厚さは、十分な接着性を得る観点から、0.1μm以上30μm以下が好ましく、1μm以上15μm以下がより好ましく、2μm以上10μm以下が更に好ましい。
【0073】
(化粧材の製造方法)
本発明の化粧材の製造方法について、本発明の化粧材として好ましい態様の一つである、図2に示される、基材、全面着色層と絵柄層とにより構成される装飾層、プライマー層及び表面保護層を順に有する化粧材を例にとって、その製造方法を説明する。
【0074】
本発明の化粧材は、例えば、基材に全面着色層と絵柄層とを設け、装飾層を形成する工程、該装飾層を被覆するようにプライマー層を形成する工程、及び該プライマー層を被覆するように表面保護層を形成する工程を順に経ることにより製造することができる。
【0075】
装飾層を形成する工程は、まず基材上に全面着色層の形成に用いられる樹脂組成物を塗布して所望の全面着色層を形成し、次いで絵柄層の形成に用いられる樹脂組成物を塗布して絵柄層を形成する。樹脂組成物の塗布は、グラビア印刷法、バーコート法、ロールコート法、リバースロールコート法、コンマコート法等の公知の方式、好ましくはグラビア印刷法により行う。
【0076】
基材に表面処理を施す場合は、全面着色層を形成する前に行えばよく、プライマー層を設ける場合も全面着色層を形成する前に行えばよい。また、基材の装飾層を設ける面とは反対側の面(裏面)に裏面プライマー層を設ける場合は、装飾層の形成前後のいずれに設けてもよい。
【0077】
樹脂層を設ける場合、上記装飾層を形成した後、樹脂層を形成すればよい。樹脂層は、上記装飾層を形成し、該装飾層上に必要に応じて接着剤を塗布して接着層を形成した後に、樹脂層を構成する樹脂組成物を押出ラミネーション、ドライラミネーション、ウエットラミネーション、サーマルラミネーション等の方法により接着及び圧着させて積層して形成することができる。
【0078】
次いで、装飾層を被覆するようにプライマー層を形成する工程では、上記装飾層の表面に、プライマー層の形成に用いられる樹脂組成物を塗布して形成すればよく、塗布方法は上記装飾層を形成する樹脂組成物の塗布の方法より適宜選択して採用すればよい。また、樹脂層を設ける場合は、該樹脂層上にプライマー層を形成すればよい。
【0079】
表面保護層の形成は、表面保護層の形成に用いられる、好ましくは硬化性樹脂の液体状の未硬化物を含む硬化性樹脂組成物を化粧材の全面に塗布し、必要に応じて硬化させて行う。
液体状の未硬化物を含む未硬化樹脂組成物の塗布方法としては、上記装飾層の樹脂組成物の塗布の方法として例示した公知の方式のいずれかを採用すればよい。
また、硬化性樹脂の液体状の未硬化物を含む未硬化樹脂組成物の硬化方法は、該未硬化樹脂組成物に含まれる硬化性樹脂の種類に応じて選択すればよい。例えば、未硬化樹脂組成物が熱硬化性樹脂の液体状の未硬化物を含む樹脂組成物である場合、使用する熱硬化性樹脂に応じた熱処理を施して、硬化させればよい。
【0080】
電離放射線樹脂の液体状の未硬化物を含む未硬化樹脂組成物を用いる場合、該未硬化樹脂組成物の塗布により形成した未硬化樹脂層は、電子線、紫外線等の電離放射線を照射して硬化物とすればよい。ここで、電離放射線として電子線を用いる場合、その加速電圧については、用いる樹脂や層の厚みに応じて適宜選定し得るが、通常加速電圧70~300kV程度で未硬化樹脂層を硬化させることが好ましい。照射線量は、電離放射線硬化性樹脂の架橋密度が飽和する量が好ましく、通常5~300kGy(0.5~30Mrad)、好ましくは10~50kGy(1~5Mrad)の範囲で選定される。
電子線源としては、特に制限はなく、例えばコックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、あるいは直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器を用いることができる。
また、電離放射線として紫外線を用いる場合には、波長190~380nmの紫外線を含むものを放射する。紫外線源としては特に制限はなく、例えば高圧水銀燈、低圧水銀燈、メタルハライドランプ、カーボンアーク燈等が用いられる。
【0081】
また、表面保護層を形成した後、必要に応じて、エンボス板による加熱加圧成形により、凹凸形状を付与することもできる。凹凸形状を形成することにより、触感が付与され、本発明の化粧材の意匠性が向上する。また、例えば装飾層にて木目模様を形成する場合、該木目模様における導管部分と、凹凸形状の凹部とを同調させることで、質感が高く、優れた意匠を表現することが可能である。
【0082】
加熱加圧成形の条件は、使用する硬化性樹脂の種類に応じて適宜調整すればよく、特に制限はないが、通常100~200℃の温度条件で、圧力は0.1~9.8MPa、時間は10秒から120分間である。
【0083】
(化粧材の用途)
本発明の化粧材は、搬送時の擦れ、衝撃等により装飾層等が剥離しても、意匠性の低下を抑制し得る、高い意匠性を有する化粧材である。よって、本発明の化粧材は、そのままで、又は被着体に接着剤層を介して積層する、あるいは所定の成形加工等を施して各種用途に用いることができる。
例えば、各種素材の平板、曲面板等の板材、シート(又はフィルム)等の被着体に積層し、壁、天井、床等の建築物の内装用部材又は外壁、屋根等の外装用部材、窓枠、玄関ドア等の各種扉、手すり、幅木、廻り縁、窓枠、扉枠、モール等の建具又は造作部材の他、キッチン、家具又は弱電製品、OA機器等のキャビネットの表面化粧板、車両の内装用部材又は外装用部材等に用いることができる。
【0084】
被着体としては、例えば、杉、檜、松、ラワン等の各種木材からなる木材単板、木材合板、パーティクルボード、MDF(中密度繊維板)等の木質繊維板等の板材や立体形状物品等として用いられる木質部材;鉄、アルミニウム等の板材や鋼板、立体形状物品、あるいはシート等として用いられる金属部材;ガラス、陶磁器等のセラミックス、石膏等の非セメント窯業系材料、ALC(軽量気泡コンクリート)板等の非陶磁器窯業系材料等の板材や立体形状物品等として用いられる窯業部材;アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体)樹脂、フェノール樹脂、塩化ビニル樹脂、セルロース樹脂、ゴム等の板材、立体形状物品、あるいはシート等として用いられる樹脂部材等が挙げられる。また、これらの部材は、単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。
【0085】
接着剤層に用いられる接着剤としては、特に限定されず、公知の接着剤を使用することができ、例えば、感熱接着剤、感圧接着剤等の接着剤が好ましく挙げられる。この接着剤層を構成する接着剤に用いられる樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、スチレン-アクリル共重合樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられ、これらを単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。また、イソシアネート化合物等を硬化剤とする2液硬化型のポリウレタン系接着剤、ポリエステル系接着剤も適用し得る。
また、接着剤層には、粘着剤を用いることもできる。粘着剤としては、アクリル系、ウレタン系、シリコーン系、ゴム系等の粘着剤を適宜選択して用いることができる。
【0086】
接着剤層は、上記の樹脂を溶液、あるいはエマルジョン等の塗布可能な形態にしたものを、グラビア印刷法、スクリーン印刷法またはグラビア版を用いたリバースコーティング法等の手段により塗布、乾燥して形成することができる。
接着剤層の厚さは特に制限はないが、優れた接着性を得る観点から、1μm以上100μm以下が好ましく、5μm以上50μm以下がより好ましく、10μm以上30μm以下が更に好ましい。
【実施例
【0087】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、この例によってなんら限定されるものではない。
【0088】
(評価及び観察方法)
1.基材及び装飾層の明度(L)、色度(a)、色度(b)の測定
各実施例及び比較例で用いた基材の任意の一点について、コニカミノルタホールディングス株式会社の分光測色計(商品名:CM-3500d)を用い、JIS Z8781-4:2013に準拠して、CIE(国際照明委員会)L表色系の明度(L )、色度(a )、色度(b )を測定した。測定値はSCIモードによるものを採用した。測定結果を表1にまとめる。
また、各実施例及び比較例で得られた化粧材の装飾層の明度(L )、色度(a )、色度(b )については、以下の方法で測定した。
まず、各実施例及び比較例で得られた化粧材(大きさ:100cm×100cm)を100に分割し(分割した一つあたりの大きさ:10cm×10cm)、分割したシートの任意の20の各々について、任意の50箇所において、上記方法と同様にして、明度(L)、色度(a)、色度(b)を測定した。該測定値の平均値を分割したシート各々の明度(L)、色度(a)、色度(b)とし、該分割した20のシート各々の明度(L)、色度(a)、色度(b)の平均値を、各々装飾層の明度(L )、色度(a )、色度(b )とした。明度(L)、色度(a)、色度(b)の測定時の光入射角は10度として、光源はD65光源を用いた。
以上のようにして測定した基材の明度(L )、色度(a )及び色度(b )、並びに装飾層の明度(L )、色度(a )、色度(b )を用いて、下記数式により、基材の彩度(C )、装飾層の彩度(C )、明度差(ΔL)、彩度差(ΔC)及び色差(ΔEab)を算出した。
=〔(a +(b 1/2
=〔(a +(b 1/2
ΔL=L -L
ΔC=C -C
ΔEab=〔(L -L +(a -a +(b 1/2
【0089】
実施例1
易接着処理された建材用着色単層PETシート(厚さ:45μm)を基材として用意して、上記の方法により、基材の明度(L )、色度(a )、色度(b )を測定した。測定の結果、当該PETシートの明度(L )は81.8、色度(a )は4.0、色度(b )は16.5であった。測定結果を表1の基材1のものとして示した。
当該基材シートに、全面着色層用のインキ(バインダー樹脂:アクリルウレタン樹脂、着色剤:チタン白、弁柄、黄鉛、カーボンブラック)を用いて全面着色層(厚さ:5μm)を形成し、次いで絵柄層用のインキ(バインダー樹脂:ニトロセルロース/アルキド樹脂、着色剤:キナクリドン、イソインドリノン、フタロシアニン及びカーボンブラック)を用いて木目模様を呈する絵柄層(厚さ:5μm、表2の装飾層4)を形成し、化粧材を得た。
得られた化粧材について、上記の方法により、装飾層の明度(L )、色度(a )、色度(b )を測定したところ、各々65.3、7、19.3となった。基材の明度等と装飾層の明度等の測定結果から、明度差(ΔL)、彩度差(ΔC)及び色差(ΔEab)を算出すると、各々-9.5、7.2、11.9となった。これらの数値を表2及び3にまとめる。また、得られた化粧材について、上記意匠性の評価を行ったところ、その評価はBとなった。
【0090】
実施例2~33、比較例1~23
実施例1において、基材及び装飾層を表3及び4に示すものとした以外は、実施例1と同様にして化粧材を作製した。ここで、表3及び4に示される基材及び装飾層は、各々表1及び2に示される明度(L )、色度(a )、色度(b )、明度(L )、色度(a )、色度(b )を有するものである。
各実施例及び比較例で得られた化粧材の、明度差(ΔL)、彩度差(ΔC)及び色差(ΔEab)は、表3及び4に示される通りである。また、各実施例及び比較例で得られた化粧板について上記の評価を行い、その結果を表3及び4に示す。
【0091】
【表1】
【0092】
【表2】
【0093】
【表3】
【0094】
【表4】
【0095】
実施例の結果より、本発明の化粧材は明度差(ΔL)、彩度差(ΔC)及び色差(ΔEab)を所定の範囲内とすることで、搬送時の擦れ、衝撃等により装飾層等が剥離しても、意匠性の低下を抑制し得る、高い意匠性を有する化粧材であることが確認された。例えば、基材として基材5~10のグレー系基材を用い、装飾層を茶系の木目模様1~6とした実施例11~15、17~19、21~23及び25は、基材と装飾層の色合いは互いに全く異なる組み合わせとなるが、意匠性の評価は高いものとなった。また、例えば基材として基材1~4、11~15のベージュ、オレンジ、茶系等の基材を用い、装飾層をグレー等の暗色系の木目模様7~9とした実施例9、10及び33も、基材と装飾層の色合いは互いに全く異なる組み合わせとなるが、意匠性の評価は高いものとなった。
一方、比較例によれば、明度差(ΔL)、彩度差(ΔC)及び色差(ΔEab)のいずれかが所定の範囲外にあると、意匠性の低下を抑制することはできないことが確認された。
例えば上記特許文献2のように、基材と装飾層との明度差(ΔL)、彩度差(ΔC)及び色差(ΔEab)等が小さいほど(0に近いほど)、搬送時の擦れ、衝撃等により装飾層等が剥離しても、意匠性の低下を抑制し得ると考えるのが一般的であった。しかし、上記実施例により、本発明の化粧材では、これらの差が小さくなくても、意匠性の低下を抑制し得ることが可能となっていることが確認された。
【符号の説明】
【0096】
10.化粧材
1.基材
2.装飾層
21.全面着色層
22.絵柄層
3.表面保護層
4.プライマー層
図1
図2