IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 第一精工株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-電気コネクタ 図1
  • 特許-電気コネクタ 図2
  • 特許-電気コネクタ 図3
  • 特許-電気コネクタ 図4
  • 特許-電気コネクタ 図5
  • 特許-電気コネクタ 図6
  • 特許-電気コネクタ 図7
  • 特許-電気コネクタ 図8
  • 特許-電気コネクタ 図9
  • 特許-電気コネクタ 図10
  • 特許-電気コネクタ 図11
  • 特許-電気コネクタ 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】電気コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/6461 20110101AFI20231129BHJP
   H01R 13/6582 20110101ALI20231129BHJP
   H01R 24/40 20110101ALI20231129BHJP
【FI】
H01R13/6461
H01R13/6582
H01R24/40
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019088757
(22)【出願日】2019-05-09
(65)【公開番号】P2020184475
(43)【公開日】2020-11-12
【審査請求日】2022-04-13
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】592028846
【氏名又は名称】I-PEX株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】八十 実紗希
【審査官】松原 陽介
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-009037(JP,A)
【文献】特開2010-205604(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/56-13/72
H01R 24/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同軸ケーブルの外導体と電気的に接続されるシェル部材に形成され、相手コネクタのグランドコンタクト部材と直接接触し、グランド経路を形成するシェルグランド接続片と、
相手コネクタのシェル部材と前記外導体とを電気的に接続し、前記グランド経路とは異なるグランド経路を、前記シェルグランド接続片が形成する前記グランド経路よりも前記同軸ケーブル寄りの位置に形成するグランド接続片と
を備え
前記グランド接続片は、前記シェルグランド接続片が形成される前記シェル部材に形成される前記グランド接続片のグランドコンタクト部材を含み、
前記グランド接続片のグランドコンタクト部材は、複数の前記同軸ケーブルの外導体を電気的に接続するグランドバーに形成される接続片と電気的に接続し、
前記接続片は、前記グランド接続片のグランドコンタクト部材、および、前記シェルグランド接続片に接続する、ことを特徴とする電気コネクタ。
【請求項2】
前記グランド接続片は、前記シェルグランド接続片よりも前記同軸ケーブル寄りの位置に配置される
ことを特徴とする請求項1に記載の電気コネクタ。
【請求項3】
前記グランド接続片は、
前記相手コネクタのシェル部材と前記外導体とを電気的に接続する構成に加えて、
前記シェルグランド接続片が形成される前記シェル部材から立ち上がる突出部と、
前記突出部から前記グランドコンタクト部材に向けて延び、前記接続片と電気的に接続する延出部と
を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の電気コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、電気コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の同軸ケーブルの外導体をグランドバーによって接続し、グランドバーから延出するグランド接続片を導電コンタクトに接続し、導電コンタクトを相手コネクタの導電コンタクトに接続する電気コネクタが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-205604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記電気コネクタと相手コネクタとが嵌合した状態で形成されるグランド経路は、グランドバー、グランド接続片、電気コネクタの導電コンタクト、および相手コネクタの導電コンタクトによって形成される。
【0005】
そのため、グランド経路が信号の波長、または半波長に対して同程度の長さとなり、通電時に共振が発生し、クロストーク共振のピーク値が増大するおそれがある。
【0006】
実施形態の一態様は、上記に鑑みてなされたものであって、クロストーク共振のピーク値を抑制する電気コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の一態様に係る電気コネクタは、ハウジングと、ハウジングに取り付けられ、配実施形態の一態様に係る電気コネクタは、同軸ケーブルの外導体と電気的に接続されるシェル部材に形成され、相手コネクタのグランドコンタクト部材と直接接触し、グランド経路を形成するシェルグランド接続片と、相手コネクタのシェル部材と外導体とを電気的に接続し、グランド経路とは異なるグランド経路を、シェルグランド接続片が形成するグランド経路よりも同軸ケーブル寄りの位置に形成するグランド接続片とを備え、グランド接続片は、シェルグランド接続片が形成されるシェル部材に形成されるグランド接続片のグランドコンタクト部材を含み、グランド接続片のグランドコンタクト部材は、複数の同軸ケーブルの外導体を電気的に接続するグランドバーに形成される接続片と電気的に接続し、接続片は、グランド接続片のグランドコンタクト部材、および、シェルグランド接続片に接続する。
【発明の効果】
【0008】
実施形態の一態様にかかる電気コネクタによれば、シェルグランド接続片によって形成されるグランド経路と、グランド接続片によって形成される異なるグランド経路とによって、グランド経路が増加されるので、クロストーク共振のピーク値を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態に係る電気コネクタにおけるプラグコネクタとリセプタクルコネクタとを示す斜視図である。
図2図2は、図1に示すプラグコネクタとリセプタクルコネクタとが嵌合した状態を示す図である。
図3図3は、図2に示すIII-III線に沿った断面図である。
図4図4は、図3におけるプラグコネクタを示す断面図である。
図5図5は、プラグコネクタの一部を示す斜視図である。
図6図6は、図5に示すプラグコネクタの平面図である。
図7図7は、プラグコネクタ、およびリセプタクルコネクタの一部を示す斜視図である。
図8図8は、プラグコネクタの第2シェル部材を示す斜視図である。
図9図9は、図8に示す第2シェル部材の平面図である。
図10図10は、比較例に係る電気コネクタのシミュレーション結果を示す図である。
図11図11は、実施形態に係る電気コネクタのシミュレーション結果を示す図である。
図12図12は、変形例に係る電気コネクタのシミュレーション結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する電気コネクタを説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0011】
<1.電気コネクタの概略>
まず、図1図3を参照して実施形態に係る電気コネクタ1の概略を説明する。実施形態に係る電気コネクタ1は、リセプタクルコネクタ10(相手コネクタ)と、プラグコネクタ20(電気コネクタ)とを有する。
【0012】
なお、ここでは、説明の便宜上、プラグコネクタ20(リセプタクルコネクタ10)の長手方向をY軸正負方向とし、プラグコネクタ20(リセプタクルコネクタ10)の短手方向をX軸正負方向とする直交座標系を示す。
【0013】
X軸正方向は、リセプタクルコネクタ10に対するプラグコネクタ20の差し込み方向であり、X軸負方向は、リセプタクルコネクタ10に対するプラグコネクタ20の抜去方向である。なお、X軸正方向を「前方」、およびX軸負方向を「後方」と称する場合がある。
【0014】
また、Z軸正負方向は、図1の紙面上方をZ軸正方向とし、図1の紙面下方をZ軸負方向とする。なお、Z軸正方向を「上方」、およびZ軸負方向を「下方」と称する場合がある。
【0015】
電気コネクタ1は、複数の同軸ケーブル50と、基板(不図示)とを電気的に接続する。電気コネクタ1では、一組の同軸ケーブル50がプラグコネクタ20の長手方向(Y軸正負方向)に並んで配置される。一組の同軸ケーブル50は、プラグコネクタ20の長手方向に並んで配置された2本の同軸ケーブル50によって形成される。一組の同軸ケーブル50は、差動信号の伝送を行う。一組の同軸ケーブル50は、プラグコネクタ20の長手方向に沿って、予め設定された所定間隔を設けて配置される。
【0016】
プラグコネクタ20は、固定部材28が図1に示す状態から上方に回動され、リセプタクルコネクタ10に差し込まれる。これにより、図2、および図3に示すように、プラグコネクタ20は、リセプタクルコネクタ10に嵌合し、接続される。
【0017】
なお、固定部材28は、プラグコネクタ20がリセプタクルコネクタ10に嵌合した後に、リセプタクルコネクタ10を覆うように下方に回動される。
【0018】
<2.リセプタクルコネクタ>
次に、図1、および図3を参照してリセプタクルコネクタ10の構成について説明する。リセプタクルコネクタ10は、基板の主面に実装される。リセプタクルコネクタ10は、ハウジング11と、グランドコンタクト部材12と、信号コンタクト部材13と、第1シェル部材14と、第2シェル部材15とを有する。
【0019】
ハウジング11は、絶縁性の樹脂によって形成される。ハウジング11には、図3に示すように、後端が開口する凹部11aが形成される。凹部11aは、プラグコネクタ20が挿入される嵌合空間40を形成する。凹部11aは、リセプタクルコネクタ10の長手方向(Y軸正負方向)に沿って延びるように形成される。なお、嵌合空間40の一部は、第2シェル部材15によって形成される。
【0020】
また、ハウジング11の前壁部11bには、図1に示すように、複数のグランドコンタクト部材12、および複数の信号コンタクト部材13が圧入され取り付けられる。なお、複数のグランドコンタクト部材12、および複数の信号コンタクト部材13は、インサート成形によってハウジング11と一体的に形成されてもよい。
【0021】
ハウジング11には、グランドコンタクト部材12、および一組の信号コンタクト部材13がリセプタクルコネクタ10の長手方向(Y軸正負方向)に沿って交互に取り付けられる。
【0022】
グランドコンタクト部材12は、導電性の金属部材によって形成される。グランドコンタクト部材12は、図3に示すように、基板接続脚部12aと、弾性ビーム部12bと、接続部12cとを有する。
【0023】
基板接続脚部12aは、ハウジング11よりも前方に配置される。基板接続脚部12aは、基板の主面に沿って延びるように形成され、基板上のグランド導電路(不図示)に載置された状態で、例えば、半田接合される。
【0024】
接続部12cは、基板接続脚部12aの後端から上方に沿って形成される。接続部12cは、基板接続脚部12aと同様にハウジング11よりも前方に配置される。
【0025】
弾性ビーム部12bは、接続部12cの上端から後方に沿って延びるように形成される。弾性ビーム部12bは、ハウジング11の前壁部11bを貫通し、前壁部11bによって支持された状態で、嵌合空間40に突出する。すなわち、弾性ビーム部12bは、ハウジング11によって片持ち状に支持され、嵌合空間40においてZ軸正負方向に弾性変形可能である。
【0026】
弾性ビーム部12bの後端には、下方に向けて突出する凸部12dが形成される。凸部12dは、嵌合空間40にプラグコネクタ20が挿入された場合に、後述するプラグコネクタ20の第1グランドコンタクト部材24bの延出部24fと接触し、第1グランドコンタクト部材24bと電気的に接続される。
【0027】
信号コンタクト部材13は、図1に示すように、一組の信号コンタクト部材13として、リセプタクルコネクタ10の長手方向(Y軸正負方向)に並んで配置される。一組の信号コンタクト部材13は、リセプタクルコネクタ10の長手方向に並んで配置された2本の信号コンタクト部材13である。
【0028】
一組の信号コンタクト部材13は、リセプタクルコネクタ10の長手方向(Y軸正負方向)において、一組の同軸ケーブル50に対応する位置に配置される。一組の信号コンタクト部材13は、一組の同軸ケーブル50と同様に、リセプタクルコネクタ10の長手方向に沿って、予め設定された所定間隔を設けて配置される。
【0029】
信号コンタクト部材13は、基板接続脚部13aと、弾性ビーム部13bと、接続部13cとを有する。なお、信号コンタクト部材13の具体的な形状は、グランドコンタクト部材12の形状と同じであり、ここでの説明は省略する。
【0030】
信号コンタクト部材13は、後述するプラグコネクタ20の信号コンタクト部材22(図5、および図6参照)と電気的に接触し、信号伝達経路を形成する。
【0031】
第1シェル部材14は、導電性の金属部材によって形成される。第1シェル部材14は、薄板状の金属部材をプレス加工することで形成される。第1シェル部材14は、図1に示すように、上壁部14aと、前壁部14bと、側壁部14cとを有する。
【0032】
上壁部14aは、ハウジング11の上壁部11cに沿って形成される。上壁部14aには、リセプタクルコネクタ10の長手方向(Y軸正負方向)の両端から前方に向けて突出する突出部14dが形成される。
【0033】
前壁部14bは、突出部14dの前端から下方に向けて形成される。また、前壁部14bは、リセプタクルコネクタ10の長手方向(Y軸正負方向)に沿って延びるように形成される。前壁部14bは、グランドコンタクト部材12、および信号コンタクト部材13よりも前方に形成される。
【0034】
側壁部14cは、リセプタクルコネクタ10の長手方向(Y軸正負方向)における上壁部14aの両端から下方に向けて形成される。側壁部14cの下端には、基板の主面に沿った接合部14eが形成される。
【0035】
接合部14eは、基板上に形成されたグランド接続用の導電路(不図示)に、例えば、半田接合される。これにより、グランド回路の電気的な接続が行われると共に、リセプタクルコネクタ10が基板に固定される。
【0036】
第2シェル部材15は、導電性の金属部材によって形成される。第2シェル部材15は、薄板状の金属部材をプレス加工することで形成される。第2シェル部材15の前端は、図3に示すように、ハウジング11に形成された圧入穴11dに圧入される。第2シェル部材15は、下方からハウジング11の下壁部11eに支持される。第2シェル部材15は、ハウジング11の下壁部11eに沿って形成される。第2シェル部材15は、ハウジング11の下壁部11eよりも後方に延びるように形成される。第2シェル部材15は、ハウジング11と共に嵌合空間40を形成する。
【0037】
第1シェル部材14、および第2シェル部材15は、リセプタクルコネクタ10の内部に形成される信号伝達経路を外方から覆うことにより電磁遮蔽を行うシールド部材として装着される。
【0038】
<3.プラグコネクタ>
次に、図1図9を参照してプラグコネクタ20の構成について説明する。プラグコネクタ20は、図4、5に示すように、ハウジング21と、信号コンタクト部材22と、第1シェル部材23と、第2シェル部材24(シェル部材)と、第1グランドバー25と、第2グランドバー26と、回動枠27と、固定部材28とを有する。
【0039】
ハウジング21は、絶縁性の樹脂によって形成される。ハウジング21は、図3図6に示すように、本体部21aと、挿入部21bとを有する。挿入部21bは、本体部21aの前端から前方に向けて突出する。挿入部21bは、図3に示すように、リセプタクルコネクタ10の嵌合空間40に挿入される。
【0040】
ハウジング21は、インサート成形によって、図5、および図6に示すように、信号コンタクト部材22と一体的に形成される。ハウジング21、および信号コンタクト部材22は、信号コンタクト部材22が、ハウジング21の上表面21cに露出するように形成される。
【0041】
また、ハウジング21は、図3、および図4に示すように、第2シェル部材24と一体的に形成される。具体的には、ハウジング21、および第2シェル部材24は、図3図6に示すように、後述する第2シェル部材24の延出部24f、および第2シェル部材24の延出部24hが、ハウジング21の上表面21cに露出するように形成される。また、ハウジング21、および第2シェル部材24は、図3、および図4に示すように、後述する第2シェル部材24の下壁部24aがハウジング21の下表面21dに露出するように形成される。
【0042】
ハウジング21、信号コンタクト部材22、および第2シェル部材24は、図5、および図6に示すように、ハウジング21の上表面21cに第1グランドコンタクト部材24b、および一組の信号コンタクト部材22がプラグコネクタ20の長手方向(Y軸正負方向)に沿って交互に露出するように設けられる。一組の信号コンタクト部材22は、プラグコネクタ20の長手方向に並んで配置された2本の信号コンタクト部材22である。
【0043】
一組の信号コンタクト部材22は、プラグコネクタ20の長手方向(Y軸正負方向)において、一組の同軸ケーブル50(図1参照)に対応する位置に配置される。一組の信号コンタクト部材22は、一組の同軸ケーブル50と同様に、プラグコネクタ20の長手方向に沿って、予め設定された所定間隔を設けて配置される。
【0044】
信号コンタクト部材22は、導電性の金属部材によって形成される。信号コンタクト部材は、ハウジング21の本体部21aから挿入部21bにかけてプラグコネクタ20の短手方向(X軸正負方向)に沿って形成される。
【0045】
信号コンタクト部材22は、図7に示すように、同軸ケーブル50の中心導体51と接触し、同軸ケーブル50の中心導体51と電気的に接続する。また、信号コンタクト部材22は、リセプタクルコネクタ10の信号コンタクト部材13と接触し、リセプタクルコネクタ10の信号コンタクト部材13と電気的に接続する。
【0046】
第1シェル部材23は、図3に示すように、ハウジング21の上方を覆うように装着される。第1シェル部材23は、導電性の金属部材によって形成される。第1シェル部材23は、薄板状の金属部材をプレス加工することで形成される。
【0047】
また、第1シェル部材23には、図1および図2に示すように、プラグコネクタ20の長手方向(Y軸正負方向)の両端に支持部23aが形成される。支持部23aは、下方が開口する略U字状に形成される。支持部23aは、固定部材28が取り付けられた回動枠27を回動可能に支持する。
【0048】
第2シェル部材24は、図3、および図4に示すように、ハウジング21と一体的に形成される。第2シェル部材24は、導電性の金属部材によって形成される。第2シェル部材24は、薄板状の金属部材をプレス加工することで形成される。
【0049】
第2シェル部材24は、図8、および図9に示すように、下壁部24aと、第1グランドコンタクト部材24b(シェルグランド接続片)と、第2グランドコンタクト部材24c(グランド接続片)と、支持部24dとを有する。
【0050】
下壁部24aは、図3、および図4に示すように、ハウジング21の下表面21dに露出する。また、下壁部24aは、図3に示すように、リセプタクルコネクタ10の第2シェル部材15と接触し、リセプタクルコネクタ10の第2シェル部材15と電気的に接続する。
【0051】
また、下壁部24aは、図3、および図4に示すように、ハウジング21よりも後方で、第2グランドバー26と接触し、第2グランドバー26を介して同軸ケーブル50の外導体52(図3図4、および図7参照)と電気的に接続する。すなわち、第2シェル部材24は、同軸ケーブル50の外導体52と電気的に接続する。
【0052】
第1グランドコンタクト部材24bは、図3図4図8、および図9に示すように、突出部24eと、延出部24fとを有する。突出部24eは、下壁部24aの前端から上方に向けて延びるように形成される。すなわち、突出部24eは、下壁部24aから上方に向けて立ち上がるように形成される。
【0053】
延出部24fは、突出部24eの上端から後方に向けて延びるように形成される。延出部24fは、図3図6に示すように、ハウジング21の上表面21cに露出する。延出部24fは、図3に示すように、リセプタクルコネクタ10のグランドコンタクト部材12の凸部12dと接触する。すなわち、第1グランドコンタクト部材24bは、リセプタクルコネクタ10のグランドコンタクト部材12に直接接触する。
【0054】
また、延出部24fは、図3図4、および図7に示すように、凸部12dと接触する箇所よりも後方で、後述する第1グランドバー25のグランドフィンガー25bと接触し、半田接合される。これにより、延出部24fは、グランドフィンガー25bと電気的に接続する。
【0055】
第2グランドコンタクト部材24cは、図3図4図8、および図9に示すように、突出部24gと、延出部24hとを有する。突出部24gは、第1グランドコンタクト部材24bよりも後方に形成され、下壁部24aから上方に向けて延びるように形成される。すなわち、突出部24gは、第1グランドコンタクト部材24bよりも同軸ケーブル50寄りに形成され、下壁部24aから上方に向けて立ち上がるように形成される。
【0056】
延出部24hは、突出部24gの上端から前方に向けて形成される。すなわち、延出部24hは、突出部24gの上端から第1グランドコンタクト部材24bに向けて延びるように形成される。延出部24hは、図3図6に示すように、ハウジング21の上表面21cに露出する。
【0057】
延出部24hは、図3図4、および図7に示すように、後述する第1グランドバー25のグランドフィンガー25bと接触し、半田接合される。これにより、延出部24hは、グランドフィンガー25b、および第1グランドコンタクト部材24bの延出部24fを介して、リセプタクルコネクタ10のグランドコンタクト部材12と電気的に接続する。
【0058】
第1シェル部材23、および第2シェル部材24は、プラグコネクタ20の内部に形成される信号伝達経路を外方から覆うことにより電磁遮断を行うシール部材として装着される。
【0059】
支持部24dは、図5図6図8、および図9に示すように、プラグコネクタ20の長手方向(Y軸正負方向)における下壁部24aの両端に形成される。支持部24dは、上方が開口する略U字状に形成される。支持部24dは、第1シェル部材23の支持部23a(図1、および図2参照)と共に、固定部材28が取り付けられた回動枠27(図1、および図2参照)を回動可能に支持する。
【0060】
第1グランドバー25は、図3図4、および図7に示すように、本体部25aと、グランドフィンガー25b(グランド接続片、接続片)とを有する。第1グランドバー25は、導電性の金属部材で形成される。
【0061】
本体部25aは、図7に示すように、プラグコネクタ20の長手方向(Y軸正負方向)に沿って延びるように形成される。本体部25aは、プラグコネクタ20の長手方向に沿って配置された複数の同軸ケーブル50の外導体52と接触し、複数の同軸ケーブル50の外導体52と電気的に接続する。すなわち、第1グランドバー25は、複数の同軸ケーブル50の外導体52を電気的に接続する。
【0062】
グランドフィンガー25bは、図3図4、および図7に示すように、本体部25aの前端から前方に向けて突出する。また、グランドフィンガー25bは、斜め下方に向けて突出する。グランドフィンガー25bの前端は、第1グランドコンタクト部材24bの延出部24fと半田接合される。
【0063】
また、グランドフィンガー25bは、グランドフィンガー25bの前端よりも後方、すなわち、同軸ケーブル50寄りで第2グランドコンタクト部材24cの延出部24hと半田接合される。
【0064】
このように、グランドフィンガー25bは、第1グランドコンタクト部材24bの延出部24fと、第2グランドコンタクト部材24cの延出部24hとを電気的に接続する。
【0065】
第2グランドバー26は、導電性の金属部材で形成される。第2グランドバー26は、図7に示すように、プラグコネクタ20の長手方向(Y軸正負方向)に沿って延びるように形成される。第2グランドバー26は、プラグコネクタ20の長手方向に沿って配置された複数の同軸ケーブル50の外導体52と接触し、複数の同軸ケーブル50の外導体52と電気的に接続する。また、第2グランドバー26は、第2シェル部材24の下壁部24aと接触し、下壁部24aと電気的に接続する。
【0066】
回動枠27は、図1、および図2に示すように、略U字状に形成され、後端が第1シェル部材23の支持部23a、および第2シェル部材24の支持部24dによって回動可能に支持される。
【0067】
固定部材28は、上壁部28aと、前壁部28bと、取付部28c、28dとを有する。固定部材28は、取付部28c、28dによって回動枠27に取り付けられ、回動枠27と共に回動する。
【0068】
前壁部28bは、プラグコネクタ20をリセプタクルコネクタ10に嵌合させた状態では、図3に示すように、リセプタクルコネクタ10よりも前方に位置するように形成される。これにより、プラグコネクタ20に対し、後方に向けた力、すなわち、プラグコネクタ20を抜去させる力が作用した場合に、前壁部28bはリセプタクルコネクタ10の前壁部14bに当接し、プラグコネクタ20が抜去することを抑制することができる。
【0069】
すなわち、前壁部28bは、リセプタクルコネクタ10の前壁部14bと共に、プラグコネクタ20が抜去することを抑制するストッパーとして機能する。
【0070】
<4.グランド経路>
プラグコネクタ20の挿入部21bが、リセプタクルコネクタ10の嵌合空間40に挿入されることで、プラグコネクタ20がリセプタクルコネクタ10に嵌合される。プラグコネクタ20がリセプタクルコネクタ10に嵌合された状態では、同軸ケーブル50の外導体52に接続する3つのグランド経路(第1グランド経路、第2グランド経路、および第3グランド経路)が形成される。
【0071】
第1グランド経路は、リセプタクルコネクタ10のグランドコンタクト部材12に直接接触する第2シェル部材24の第1グランドコンタクト部材24bによって形成される。具体的には、第1グランド経路は、グランドコンタクト部材12、第2シェル部材24の第1グランドコンタクト部材24b、第2シェル部材24の下壁部24a、および第2グランドバー26によって形成される。
【0072】
第2グランド経路は、第1グランドバー25によって形成される。具体的には、第2グランド経路は、リセプタクルコネクタ10の第2シェル部材15、第2シェル部材24の下壁部24a、第1グランドコンタクト部材24bの突出部24e、第1グランドコンタクト部材24bの延出部24f、第1グランドバー25のグランドフィンガー25b、および第1グランドバー25の本体部25aによって形成される。
【0073】
第3グランド経路は、第2シェル部材24の第2グランドコンタクト部材24cによって形成される。具体的には、第3グランド経路は、リセプタクルコネクタ10の第2シェル部材15、第2シェル部材24の下壁部24a、第2グランドコンタクト部材24cの突出部24g、第2グランドコンタクト部材24cの延出部24h、第1グランドバー25のグランドフィンガー25b、および第1グランドバー25の本体部25aによって形成される。
【0074】
プラグコネクタ20は、第2シェル部材24の第1グランドコンタクト部材24bを、リセプタクルコネクタ10のグランドコンタクト部材12と直接接触させて、第1グランド経路を形成する。また、プラグコネクタ20は、リセプタクルコネクタ10の第2シェル部材15と同軸ケーブル50の外導体52とを電気的に接続し、第1グランド経路とは異なるグランド経路である第2グランド経路、および第3グランド経路を形成する。
【0075】
本実施形態を用いない比較例として、プラグコネクタの短手方向(X軸正負方向)に延びるコンタクト部材を介して、リセプタクルコネクタのグランドコンタクト部材と、同軸ケーブルの外導体とをグランド接続するプラグコネクタが考えられる。
【0076】
比較例に係るプラグコネクタでは、コンタクト部材を用いて形成されるグランド経路が差動信号の波長、または半波長に対して同程度の長さになり、図10に示すシミュレーション結果のように、差動信号の周波数に近い17GHzの近傍で共振が生じる。
【0077】
これに対し、実施形態に係るプラグコネクタ20では、第2シェル部材24の第1グランドコンタクト部材24bを、リセプタクルコネクタ10のグランドコンタクト部材12と直接接触させることで、グランド経路を短くすることができる。これにより、プラグコネクタ20は、図11に示すシミュレーション結果のように、差動信号に影響を及ぼさない、より高周波帯(実施形態においては34GHz)に共振をずらすことができる。
【0078】
また、プラグコネクタ20は、第1グランド経路~第3グランド経路を形成し、グランド経路を多くすることで、共振の大きさを小さくすることができる。
【0079】
このように、実施形態に係るプラグコネクタ20は、第1グランド経路~第3グランド経路を形成することで、共振の発生を抑制し、クロストーク共振のピーク値を抑制することができる。
【0080】
また、第2グランド経路を形成するグランドフィンガー25bを、第1グランドコンタクト部材24bよりも同軸ケーブル50寄りに形成することで、プラグコネクタ20の短手方向(X軸正負方向)の長さが長くなることを抑制しつつ、クロストーク共振のピーク値を抑制することができる。
【0081】
また、グランドフィンガー25bを第1グランドコンタクト部材24bの延出部24fに接合し、第2グランド経路を形成することで、部品点数の増加を抑制しつつ、クロストーク共振のピーク値を抑制することができる。
【0082】
また、第3グランド経路を形成する第2グランドコンタクト部材24cを、第1グランドコンタクト部材24bよりも同軸ケーブル50寄りに形成することで、プラグコネクタ20の短手方向(X軸正負方向)の長さが長くなることを抑制しつつ、クロストーク共振のピーク値を抑制することができる。
【0083】
また、第2グランドコンタクト部材24cを第2シェル部材24に形成することで、部品点数を増加させずに、クロストーク共振のピーク値を抑制することができる。
【0084】
また、第2グランドコンタクト部材24cを、第2シェル部材24から立ち上がる突出部24gと、突出部24gから第1グランドコンタクト部材24bに向けて延びる延出部24hとによって形成し、延出部24hを第1グランドバー25のグランドフィンガー25bに接合し、第3グランド経路を形成する。これにより、第2シェル部材24をプレス加工によって形成することができ、部品点数を増加させずに、第2グランドコンタクト部材24cを容易に形成することができ、クロストーク共振のピーク値を抑制することができる。
【0085】
また、第1グランドコンタクト部材24bと、第2グランドコンタクト部材24cとを第1グランドバー25のグランドフィンガー25bに接合する。これにより、グランドフィンガー25bを共通部品として用いた第2グランド経路、および第3グランド経路を形成することができる。また、グランドフィンガー25bと、第1グランドコンタクト部材24bの延出部24f、および第2グランドコンタクト部材24cの延出部24hとの接合面積を大きくすることができ、例えば、半田接合を容易に行うことができる。
【0086】
<5.プラグコネクタの他の構成>
上記プラグコネクタ20では、第1グランド経路~第3グランド経路を形成したが、これに限られることはない。変形例に係るプラグコネクタ20では、第1グランド経路、および第3グランド経路のみを形成してもよい。
【0087】
変形例に係るプラグコネクタ20は、図12に示すシミュレーション結果のように、差動信号に影響を及ぼさない、より高周波帯(変形例においては30GHz)に共振をずらすことができる。また、変形例に係るプラグコネクタ20は、図10に示すシミュレーション結果に対し、共振の大きさを小さくすることできる。すなわち、変形例に係るプラグコネクタ20においても、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0088】
なお、変形例に係るプラグコネクタ20は、第1グランド経路、および第2グランド経路のみを形成してもよい。これによっても、同様の効果を得ることができる。
【0089】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。従って、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0090】
1 電気コネクタ
10 リセプタクルコネクタ(相手コネクタ)
12 グランドコンタクト部材
20 プラグコネクタ(電気コネクタ)
23 第1シェル部材
24 第2シェル部材(シェル部材)
24b 第1グランドコンタクト部材(シェルグランド接続片)
24c 第2グランドコンタクト部材(グランド接続片)
24g 突出部
24h 延出部
25 第1グランドバー
25b グランドフィンガー(グランド接続片、接続片)
50 同軸ケーブル
52 外導体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12