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特許7392286カバー材の製造方法とパルプモールド成形用型
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  • 特許-カバー材の製造方法とパルプモールド成形用型 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】カバー材の製造方法とパルプモールド成形用型
(51)【国際特許分類】
   B31D 5/02 20170101AFI20231129BHJP
   B65D 43/08 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
B31D5/02
B65D43/08 210
B65D43/08 BRL
B65D43/08 BSE
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019092963
(22)【出願日】2019-05-16
(65)【公開番号】P2020185749
(43)【公開日】2020-11-19
【審査請求日】2022-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 倫寿
(72)【発明者】
【氏名】三田 とも子
(72)【発明者】
【氏名】滝田 亮一
【審査官】種子島 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3190372(JP,U)
【文献】特開2009-292528(JP,A)
【文献】特開2005-205877(JP,A)
【文献】特開2013-129921(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B31D 5/02
B65D 43/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天板と、前記天板周縁から垂下する側壁とを有し、容器開口部上端のエッジに突き当たる突き当て部と、突き当て部下方側壁に、前記エッジの下部に嵌合するアンダーカットを有するカバー材を、抄造型と乾燥型とからなるパルプモールド成形用型を使用して製造する方法において、
カバー材成形用の抄造型に、前記アンダーカット位置である側壁内側に吸引孔を設け、成形の未加熱乾燥時、加熱乾燥中および離型直前に吸引し、側壁内側に凸形状のアンダーカットを形成すると共に、
加熱乾燥後に、前記吸引孔からエアーを吹き出して、側壁内側に形成したアンダーカットを型から抜き、成形品を取り出し可能としたことを特徴とするカバー材の製造方法。
【請求項2】
天板と、前記天板周縁から垂下する側壁とを有し、容器開口部上端のエッジに突き当たる突き当て部と、突き当て部下方側壁に、前記エッジの下部に嵌合するアンダーカットを有するカバー材を製造する抄造型と乾燥型とからなるパルプモールド成形用型において、
カバー材成形用型の下型に、前記アンダーカット位置である側壁内側に吸引孔を有し、成形の未加熱乾燥時、加熱乾燥中および離型直前に前記吸引孔から、側壁内側を吸引可能とすると共に、
加熱乾燥後に、前記吸引孔からエアーを吹き出して、側壁内側に形成したアンダーカットを型から抜き、成形品を取り出し可能としたことを特徴とするカバー材のパルプモールド成形用型。
【請求項3】
前記吸引孔が、φ1mm~φ5mmの径で、深さを0.2mm~1mmとしたことを特徴とする請求項2に記載のカバー材のパルプモールド成形用型。
【請求項4】
前記吸引孔の底面が、連続孔を有する焼結材によって形成したことを特徴とする請求項2又は3に記載のカバー材のパルプモールド成形用型。
【請求項5】
前記吸引孔が、カバー側壁の内側周縁に、断続的あるいは部分的に設けられていることを特徴とする請求項2~4のいずれかに記載のカバー材のパルプモールド成形用型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器に嵌合するパルプモールド成形品のカバー材に関する。
【背景技術】
【0002】
円錐台形状の紙容器は、高速で安価に製造できると共に、紙製であるが上に、廃棄しやすい容器である。また、内容物を充てんし易く、かつ、熱伝導性が低い為に、低温の食材にも、温食用の食材にも使用できるなどの、大きなメリットがある。
紙容器で内容物が長い時間保温するようにするには、カバーすることが好ましい。
【0003】
例えば、特許文献1では、開口頂部外周にカール部を有するコップに装着する蓋であって、コップ開口面を覆うパネル面と、該パネル面外周に無端状に突出形成され、上部がほぼ断面円弧状になっているカール部嵌合溝と、該カール部嵌合溝の下方の外側位置で外方に突出形成されたフランジ状の蓋切出し係合部と、前記パネル面から上方に突出形成された積重ねリブ部とを有してなり、前記カール部嵌合溝は、該カール部嵌合溝の最大幅より狭い幅に形成されているカール部嵌合溝入口を有し、該カール部嵌合溝入口から前記パネル面に至る面及び前記蓋切出し係合部に至る面とで、下方に向けてテーパー状に拡がった嵌合溝導入部を構成し、該嵌合溝導入部がコップに蓋装着時のセンターリング機能を果たすようにしてなり、該嵌合溝導入部は内側テーパー面と、前記カール部嵌合溝入口から下方に垂直に伸びた突出面を有する垂下壁部及び該垂下壁部下端から前記切出し係合部に至る外側テーパー面を有していることを特徴とするコップ蓋を提案している。
【0004】
ここで提案しているコップ蓋は、一般的な、嵌合しやすいプラスチック製のシートを成形したコップ蓋である。しかし、プラスチック製のコップ蓋の場合には、紙カップと一緒に廃棄することができない。
そこで、紙と同じパルプを使用したカバーで開口部を覆えば、内容物が多少残っていても、そのまま廃棄可能になるので、便利である。
しかしながら、パルプを使用したパルプモールド成形からなるカバーには柔軟性がないので、成形して金型から取り出す時に、上記のようなコップ蓋に設けた型に嵌合溝などのアンダーカットがあると、プラスチックのように柔軟性を生かして変形して抜くことができず、アンダーカットが破損してしまいやすい。
この為、アンダーカットの無い状態で成形した後、嵌合部を二次加工によって形成するなど、工程を分けて加工せざるを得ないなどの問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第4588236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、容器に嵌合可能なカバーをパルプモールド成形によって製造し、かつ、容器開口部に嵌合するアンダーカットの形状を破損せずに安定して型から外すことができる製造方法を得るのが、本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のカバー材の製造方法は、天板と、前記天板周縁から垂下する側壁とを有し、容器開口部上端のエッジに突き当たる突き当て部と、突き当て部下方側壁に、前記エッジの下部に嵌合するアンダーカットを有するカバー材を、抄造型と乾燥型とからなるパルプモールド成形用型を使用して製造する方法において、
カバー材成形用の抄造型に、前記アンダーカット位置である側壁内側に吸引孔を設け、成形の未加熱乾燥時、加熱乾燥中および離型直前に吸引し、側壁内側に凸形状のアンダーカットを形成すると共に、
加熱乾燥後に、前記吸引孔からエアー等を吹き出して、側壁内側に形成したアンダーカットを型から抜き、成形品を取り出し可能としたことを特徴とするカバー材の製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明のカバー材の製造方法は、側壁内側に吸引孔を設け、パルプモールド成形の未加熱乾燥時、加熱乾燥中および離型直前に吸排気孔からエアーを吸引し、側壁内側に凸形状のアンダーカット部を形成する。そして、型からカバー材を離型する時に、カバー材は充分に乾燥しているので、形状を維持し易くなっていて、吸引孔を使用すれば、前記アンダーカット部を破損しないで、容易に取り出すことができる。
この為、工程を分けずに、一つの型で製造できるので、安価で、かつ、生産性も高く、安定した製造が可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明のカバー材と、それを成形するパルプモールド成形用型を示す横断面図と縦断面図である。
図2】本発明のカバー材と、パルプモールド成形後、乾燥し、カバー材を金型から取り出す工程を示す縦断面図である。
図3】本発明のカバー材を容器に嵌合した状態を示す縦断面図である。
図4】本発明のカバー材の第二実施形態例を成形するパルプモールド成形用型を示す横断面図と縦断面図である。
図5】本発明のカバー材の第一実施形態例、第二実施形態例の外観を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のカバー材の製造方法について、図を用いて詳細に説明する。
第1図は、本発明のカバー材と、カバー材のパルプモールド成形に使用される成形用型を示す横断面図と縦断面図である。
【0011】
図1-1に示すカバー材1は、植物繊維を溶かして、抄造型6(コア)をパルプスラリープールに着水し、パルプを吸引して、抄造型6(コア)表面へ抄くようにして付着させ、型の形状に成形した含水抄造成形品2を得る。
さらに、含水抄造成形品2は、一般的な乾燥炉に投入するのではなく、乾燥型7(キャビティ)を抄造型6(コア)に被せ、乾燥型7と抄造型6の内部に通してあるカートリッジヒーター81、82、あるいは加熱蒸気などを通すことなどによって、金型を高温にし、含水抄造成形品2の含有水分を蒸発させて、パルプモールド成形品であるカバー材1を得る。
【0012】
パルプモールド成形品は、繊維同士が水素結合して3次元的に絡まってできているので、プラスチック成形品のような高い弾力性はないが、通気性や保水性、形状の柔軟性に優れ、形状の保持性能が高く、かつ、衝撃にも強い梱包材料となっている。
この為、成形形状としてアンダーカットを含む形状とするには、ある程度乾燥させるが、乾燥しきって形状を変化できないほど乾燥していない未乾燥時、少なくとも半生乾燥までの状態で、吸引加工し、アンダーカットの形状を得る方法を採る必要がある。
したがって、含水抄造成形品2は、XY平面に高さ方向の情報のみを加えた2.5次元形状に成形される。
すなわち、上下方向にアンダーカットの無い形状で、上下に抜くのに、逆勾配のある部分がないので、抵抗が無く取り外すことが可能な形状となっている。
【0013】
本発明に使用される含水抄造成形品2は、図1-1に示すように、天板3と、前記天板周縁から垂下する側壁4とを有し、側壁4に隣接する天板の周縁近傍は容器開口部上端のエッジに突き当たる突き当て部33を形成する形状としている。
天板3の中央は内側に落ち込んだ窪地形状部31を有し、ストローなどを挿入可能な孔を加工して、内容物やその蒸気等が凝縮した液体が天板内面に付着しても、問題なく容器内部に戻りやすくしている。窪地形状部31を得る為、中央の周囲には外輪山のような高い土手部32を設け、中央の窪地形状部31を確実に内容物から離れた位置を確保する形状としている。
【0014】
図1-2と図1-3は、含水抄造成形品2を未乾燥状態において、側壁4の内側を吸引して、容器のエッジに嵌合する凸形状を形成する抄造型6(コア)と乾燥型7(キャビティ)とを示す図である。
この内、図1-2は、図1-3のB-B面における横断面図で、図1-3は、図1-2のA-A面における縦断面図である。
抄造型6(コア)には、側壁4内側でほぼ一定の高さに、吸引孔61を設けている。
吸引孔61は、側壁内側へ円周状に並んで作られるので、その内側には環状の管路62が設けられ、管路62には、更に吸引管路63、64を経由して、型の外側に設けた真空ポンプ、あるいは吸引ポンプに繋がって、吸引される。
【0015】
凸形状のアンダーカット部を形成する吸引孔61は、φ1mm~φ5mmの径とする。φ1mm未満の場合、パルプ繊維が詰まって、充分に吸引できず、アンダーカットの形状ができない。
また、φ5mm以上の場合、アンダーカットの高さが高くなり過ぎて、型から外れにくくなる問題が発生する。
この為、吸引孔61は、φ1mm~φ5mmの径とする。
【0016】
凸形状のアンダーカット部の高さは、あまり高くし過ぎると、アンダーカットなので、型からカバー材を抜くことができなくなる。そこで、その高さを0.2mm~1mmに抑える必要がある。通常は吸引孔の深さをいくら深くしても、内径をφ1mm~φ5mmの径にした場合、0.2mm~1mmの深さに抑えられる。
【0017】
凸形状のアンダーカット部の高さを制御する為、吸引孔の深さを制限しても良い。
例えば、吸引孔61の奥に底面を設け、底面が連続孔を有する焼結材によって形成した型とすると、確実に高さを制御できる。
焼結材はセラミックスや金属粉等を型に入れ、融点よりわずかに低い温度の状態の高温中に直流電気を通すなどして、粒体の接触部分のみが融着し、連続孔を形成したものである。耐熱性が高く、硬度も高く、かつ、通気性が高い材料で、気体や水などの液体は通すが、繊維などの固体や高粘度の物質は通さないので、本発明に使用するパルプモールド成形に使用すると、深さを安定的に製造可能とすることができる。
【0018】
含水抄造成形品2の側壁4は、半生乾燥状態で吸引孔61によって吸引されると、吸引孔61に入り込むように変形し、凸形状のアンダーカット部を形成する。
凸形状のアンダーカット部を形成し、その状態で乾燥させる。
【0019】
図2-1は、側壁4の内側に凸形状のアンダーカット部41を形成し、乾燥させたカバー材1である。
この凸形状のアンダーカット部41は、図3の本発明のカバー材1を容器5に嵌合した状態を示す縦断面図である。
図3の縦断面図に示すように、カバー材1の側壁4は、容器開口部51に嵌合される。
容器開口部51の上端には、突き当て部33が当接し、開口部51上端のエッジ511の下端近傍には、アンダーカットとしてカバー材1の側壁4に加工された内側の凸形状のアンダーカット41が係止することによって、カバー材1が容器開口部51周縁に嵌合し、開口部51を覆って保護することができる。
【0020】
図1-2に示す第一実施形態例の型では吸引孔を使用し、図5-1に示す外観斜視図のように、側壁の内側に沿って全周に円形状の凸形状を不連続の点状で断続的に形成したアンダーカットによる嵌合形状を作っている。
カバー材は、第一実施形態例のように、アンダーカットの加工がない未加工部があることによって、未加工部でカバー材1の側壁4がねじれやすく、形状を変化させやすいので、カバー材1を容器開口部に嵌合する時や、外す時などに、大きな力が要らないで容易に嵌めたり、外したりすることができるなどのメリットがある。
【0021】
しかし、図4に示す第二実施形態例の型のように、連続した吸引部65を設け、外観斜視図の図5-2に示す、連続的な凸形状を形成するものであってもかまわない。
第二実施形態例のように、アンダーカットが連続して形成されていると、嵌合が強くなると共に、容器を傾けても内容物が漏れにくいなどのメリットがある。
【0022】
図2-2は、凸形状のアンダーカット部41を形成し、乾燥させたカバー材1を型から取り出す工程を示す縦断面図である。
まず、乾燥型7(キャビティ)を抄造型6(コア)から離して、カバー材1の外面側を開ける。
型を高温にして、含水抄造成形品2の水分を蒸発・乾燥させたカバー材1は、変形しにくく、硬度も向上している。そこで、吸引孔61に嵌まり込んで形成された凸形状のアンダーカット部41は、配管のバルブを切り替えて、加圧ポンプから送られる圧縮空気等を吸引孔61から吹き出し、吸引孔61からアンダーカット部41を抜く。
【0023】
アンダーカット部41が抜けると共に、図2-3に示すように、側壁4が一時的に外側に膨らみ、吹き出した圧縮空気がカバー材1を噴き上げ、抄造型6(コア)からカバー材1が離型する。
もちろん、ロボットで吸引しながら取り出しても良い。
また、上下を逆にして、重力で抄造型6(コア)からカバー材1を落下させても良い。
【0024】
本発明のカバー材の製造方法は以上のようなもので、側壁内側に吸引孔を設け、パルプモールド成形後半の加熱乾燥時に吸引孔からエアーを吸引し、側壁内側に凸形状のアンダーカットを形成する。そして、型からカバー材を離型する時に、カバー材は充分に乾燥しているので、形状を維持し易くなっていて、スライドなどの複雑な機構を型に組み込むことなく、吹き上げるだけで、前記アンダーカットを破損しないで取り出すことができる。この為、工程を分けずに、一つの単純な型で製造できるので、安価で、かつ、生産性も高く、安定した製造が可能になった。
また、発明のカバー材は、パルプの繊維を3次元的に絡めた状態で抄製されているので、通気性や保水性、形状の柔軟性に優れ、カバー材を燃やした灰やガスで、大気を汚すことはなく、嵌合する紙容器本体が紙であれば、そのまま一緒に廃棄可能である。
特に、成形時に使う大量の水にも有害な薬品は使っていないので、自然環境への負担はほとんど無く、再度資源として再利用することも容易であると共に、 最終的に土にかえるまで、環境にやさしいパルプモールドの良さを失わずに活用されているなど、本発明のカバー材の製造方法のメリットは大きい。
【符号の説明】
【0025】
1・・・・・・・・カバー材
2・・・・・・・・含水抄造成形品
3・・・・・・・・天板
31・・・・・・・窪地形状部
32・・・・・・・土手部
33・・・・・・・突き当て部
4・・・・・・・・側壁
41・・・・・・・凸形状のアンダーカット
5・・・・・・・・容器
511・・・・・・・開口部(容器開口部)
52・・・・・・・エッジ(容器)
6・・・・・・・・抄造型(コア)
61・・・・・・・吸引孔
62・・・・・・・管路
63、64・・・・吸引管路
65・・・・・・・連続した吸引部
7・・・・・・・・乾燥型(キャビティ)
81,82・・・・カートリッジヒーター
図1
図2
図3
図4
図5