(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】装着型表示装置
(51)【国際特許分類】
G02C 5/20 20060101AFI20231129BHJP
G02C 5/16 20060101ALI20231129BHJP
G02C 5/04 20060101ALI20231129BHJP
G02C 5/12 20060101ALI20231129BHJP
G02B 27/02 20060101ALI20231129BHJP
H04N 5/64 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
G02C5/20
G02C5/16
G02C5/04
G02C5/12
G02B27/02 Z
H04N5/64 511A
(21)【出願番号】P 2019095793
(22)【出願日】2019-05-22
【審査請求日】2022-04-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】鎌倉 和也
【審査官】中村 説志
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-009927(JP,A)
【文献】特開2015-038608(JP,A)
【文献】特開2004-133049(JP,A)
【文献】特開2014-224847(JP,A)
【文献】国際公開第2016/162901(WO,A1)
【文献】特開2000-066611(JP,A)
【文献】登録実用新案第3199832(JP,U)
【文献】韓国登録実用新案第20-0332390(KR,Y1)
【文献】中国実用新案第205665476(CN,U)
【文献】特開2019-200407(JP,A)
【文献】特開2010-226217(JP,A)
【文献】特開2012-078586(JP,A)
【文献】特開2012-078591(JP,A)
【文献】中国実用新案第201081772(CN,Y)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02C 1/00-13/00
G02B27/01-27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
虚像を形成する光学装置と、
前記光学装置を支持する支持装置と、
を備え、
前記支持装置は、
根元側の一端に第1方向
に沿う方向を回転軸とする回転機構を有し、前記第1方向と交差する第2方向に沿って延出する固定テンプルと、
前記固定テンプルの前記回転機構によって前記回転機構の回転方向に可動され、前記固定テンプルに対して第1位置と、第2位置と、第3位置と、に配置される可動テンプルと、有し、
前記第1位置は、前記第1方向から見て、前記固定テンプルと重なる位置であり、
前記第2位置は、前記第1方向から見て、前記固定テンプルとは重ならない位置であり、
前記第3位置は、前記第1方向から見て、前記第1位置と前記第2位置との間の位置
であり、
前記可動テンプルは、前記固定テンプルよりも上側に配置可能に取り付けられ、
前記固定テンプルの前記回転機構は、前記固定テンプルに対する前記可動テンプルの開き角の増加又は減少を許容するラチェット機構を有するとともに、前記可動テンプルの角度を元に戻す解除機構を有し、
前記可動テンプルは、前記回転機構の前記ラチェット機構により、前記第1位置、前記第2位置及び前記第3位置のいずれかの位置で固定される、装着型表示装置。
【請求項2】
前記可動テンプルは、前記固定テンプルの外側に配置されている、
請求項1に記載の装着型表示装置。
【請求項3】
前記可動テンプルは、前記固定テンプルに対する開き角の最大値が10°以上80°以下である、
請求項1及び2のいずれか一項に記載の装着型表示装置。
【請求項4】
前記可動テンプルは、弾性体で形成され、内側に湾曲している、
請求項1~3のいずれか一項に記載の装着型表示装置。
【請求項5】
前記可動テンプルは、先端側で頭部にフィットする湾曲形状を有する、
請求項4に記載の装着型表示装置。
【請求項6】
前記光学装置又は前記支持装置に取り付けられるノーズパッドを有し、
前記光学装置又は前記支持装置と前記ノーズパッドとの間に前記ノーズパッドの配置を可変な状態で設定するパッド支持装置を有する、
請求項1~5のいずれか一項に記載の装着型表示装置。
【請求項7】
前記パッド支持装置は、前記ノーズパッドの前記光学装置からの距離と回転姿勢とを設定する、
請求項6に記載の装着型表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、虚像を観察者に提示する装着型表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
装着型表示装置として、眼鏡状の外観を有し、左右の表示装置と、これらを支持するために設けられた一対のテンプルとを有するものが存在する。また、装着型表示装置に類似するものとして、左目用画像と左目用画像とを表示するディスプレイを鑑賞するための画像観賞用眼鏡が存在する。この種の画像観賞用眼鏡として、左右の眼に応じた開口部を有するフレーム部と、フレーム部の左右にヒンジ部を介して接続される左右のテンプルホルダーと、各テンプルホルダーに結合されたテンプルとを備え、左右のテンプルの開き角度、つまりテンプル先端間の開き量を調整可能にしたものが公知となっている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の装置では、左右の眼の周辺に表示装置を配置する構造を採用した場合、顔特に鼻への過重負担が大きくなる傾向があり、装着性を損なう傾向が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一側面における装着型表示装置は、虚像を形成する光学装置と、前記光学装置を支持する支持装置と、を備え、前記支持装置は、根元側の一端に第1方向に沿う方向を回転軸とする回転機構を有し、前記第1方向と交差する第2方向に沿って延出する固定テンプルと、前記固定テンプルの前記回転機構によって前記回転機構の回転方向に可動され、前記固定テンプルに対して第1位置と、第2位置と、第3位置と、に配置される可動テンプルと、有し、前記第1位置は、前記第1方向から見て、前記固定テンプルと重なる位置であり、前記第2位置は、前記第1方向から見て、前記固定テンプルとは重ならない位置であり、前記第3位置は、前記第1方向から見て、前記第1位置と前記第2位置との間の位置であり、前記可動テンプルは、前記固定テンプルよりも上側に配置可能に取り付けられ、前記固定テンプルの前記回転機構は、前記固定テンプルに対する前記可動テンプルの開き角の増加又は減少を許容するラチェット機構を有するとともに、前記可動テンプルの角度を元に戻す解除機構を有し、前記可動テンプルは、前記回転機構の前記ラチェット機構により、前記第1位置、前記第2位置及び前記第3位置のいずれかの位置で固定される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1実施形態の装着型表示装置の使用状態を説明する斜視図である。
【
図2】装着型表示装置の外観の具体例を説明する図である。
【
図3】装着型表示装置の構造を説明する分解斜視図である。
【
図4】装着型表示装置の光学装置を説明する平面図である。
【
図5】第1虚像形成光学部の光学的構造を説明する平面図である。
【
図6】
図2に示す調整部のAA矢視断面及びBB矢視断面に関する斜視図である。
【
図7】支持装置の前後移動及び幅調整を説明する平面図である。
【
図8】光学装置の配置調整を説明する側面図である。
【
図9】
図2に示す調整部のCC矢視断面に関する斜視図及びDD矢視断面図である。
【
図10】可動テンプルを利用した保持を説明する側面図である。
【
図11】可動テンプルを利用した保持を説明する背面図である。
【
図12】ノーズパッドの配置調整方法を説明する断面図である。
【
図13】第2実施形態の装着型表示装置の外観を説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[第1実施形態]
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る装着型表示装置の第1実施形態について説明する。
【0008】
図1及び
図2に示すように、第1実施形態の装着型表示装置100は、眼鏡のような外観を有するヘッドマウントディスプレイ(HMD)である。
図1等において、X、Y、及びZは、直交座標系であり、+X方向は、装着型表示装置100を装着した観察者又は装着者USの両眼の並ぶ横方向に対応し、+Y方向は、装着者USにとっての両眼の並ぶ横方向に直交する下方向に相当し、-Y方向は、装着者USにとっての両眼の並ぶ横方向に直交する上方向に相当し、+Z方向は、装着者USにとっての前方向又は正面方向に相当する。
図2において、第1領域AR1は、装着型表示装置100の平面図であり、第2領域AR2は、装着型表示装置100の正面図であり、第3領域AR3は、装着型表示装置100の左側面図である。`
【0009】
装着型表示装置100は、この装着型表示装置100を装着した観察者又は装着者USに対して、虚像を視認させることができるだけでなく、外界像をシースルーで観察させることができる。装着型表示装置100は、ケーブル109を介してスマートフォン等である外部装置200に対して通信可能に接続することができ、例えば外部装置200から入力された映像信号に対応する虚像を形成することができる。
【0010】
図3に示すように、装着型表示装置100は、構造的な要素として、虚像を形成する光学装置100Aと、光学装置100Aを支持する支持装置100Bとを備える。この場合、支持装置100Bが、装着者USの頭部に安定した状態で支持され、この支持装置100Bに対して光学装置100Aをアライメントしつつ固定できるようになっている。
【0011】
光学装置100Aは、第1表示装置101aと第2表示装置101bとを備える。第1表示装置101aと第2表示装置101bとは、左眼用の虚像と右眼用の虚像とをそれぞれ形成する部分である。左眼用の第1表示装置101aは、観察者の眼前を透視可能に覆う第1虚像形成光学部103aと、画像光を形成する第1像形成本体部105aとを備える。右眼用の第2表示装置101bは、観察者の眼前を透視可能に覆う第2虚像形成光学部103bと、画像光を形成する第2像形成本体部105bとを備える。虚像形成光学部103a,103bは、樹脂材料等で形成される導光体を含み、像形成本体部105a,105bは、マグネシウム合金等で形成された外装ケース105d中に光学部品や電子部品を収納している。外装ケース105dには、後述する可動機構24aに付随する部分として、軸部材であるボス106aが設けられている。
【0012】
支持装置100Bは、第1テンプル22aを含む第1側方支持体21aと、第2テンプル22bを含む第2側方支持体21bと、第1側方支持体21a及び第2側方支持体21bの先端部23a,23b間に延びる前フレーム21cとを有する。ここで、第1側方支持体21aの先端部23aは、前フレーム21cの一端を支持する左フレーム基部として機能し、第2側方支持体21bの先端部23bは、前フレーム21cの他端を支持する右フレーム基部として機能する。前フレーム21cと、先端部(フレーム基部)23a,23bとは、XZ面に平行な基準面に略沿って延びる。前フレーム21cと、先端部(フレーム基部)23a,23bとは、一体的な部品をなし、ネジやピンといった部分を除いた略全体が、例えば樹脂材料で形成されているが、これらの一体的部品は、金属材料で形成されてもよく、金属の芯材を樹脂材料で被覆したものから形成されてもよい。
【0013】
支持装置100Bは、前フレーム21cと第1側方支持体21aの先端部23aとの間に、たわみ部材21iを有し、前フレーム21cと第2側方支持体21bの先端部23bとの間に、たわみ部材21jを有する。たわみ部材21i,21jは、樹脂等で形成されて可撓性を有し、第1側方支持体21aの先端部23aと第2側方支持体21bの先端部23bとの間隔を可変とする。たわみ部材21i,21jは、先端部23a,23bの間隔だけでなく、これらの相対的な角度を可変とし、これらの微小なねじれを許容する。たわみ部材21i,21jは、第1側方支持体21aの先端部23aと第2側方支持体21bの先端部23bとの間隔を強制的に広げた場合、その弾性による復元力によって、両先端部23a,23bの間隔を元の間隔に戻す。先端部23aに設けたたわみ部材21iは、平面視でS字状の外形を有する第1バネ部材21xであり、曲率を有するように2箇所以上で滑らかに折り曲げられることで、両端の相対的位置について比較的大きな変位を可能にしている。また、先端部23bに設けたたわみ部材21jは、平面視でS字状の外形を有する第2バネ部材21yであり、曲率を有するように折り曲げられることで、両端の相対的位置について比較的大きな変位を可能にしている。
図3中に部分的に拡大して示すように、第1バネ部材21xは、XZ面に平行な基準面に沿って延び基準面に直交するY方向に相対的に長い断面21zを有するものとなっている。同様に、第2バネ部材21yは、XZ面に平行な基準面に沿って延び基準面に直交するY方向に相対的に長い断面を有するものとなっている。第1バネ部材21xは、第1側方支持体21aの先端部23aと前フレーム21cの第1端21pとを連結し、第2バネ部材21yは、第2側方支持体21bの先端部23bと前フレーム21cの第2端21qとを連結する。この場合、第1バネ部材21xと第2バネ部材21yとが板バネ状の連結部材となり、簡単な構造で間隔の調整等の自由度を高めることができる。
【0014】
左側の第1側方支持体21aにおいて、後方の第1テンプル22aは、ヒンジ22hによって先端部23aに対して装着者USの頭部がある内側に折り畳み可能になっている。また、右側の第2側方支持体21bにおいて、後方の第2テンプル22bは、ヒンジ22hによって先端部23bに対して装着者USの頭部がある内側に折り畳み可能になっている。テンプル22a,22bは、バネのような部分を除いた略全体が、例えば樹脂材料で形成されているが、金属材料で形成されてもよく、金属の芯材を樹脂材料で被覆したものから形成されてもよい。
【0015】
第1テンプル22aと第2テンプル22bとは、装着者USの耳の上部に掛けられる。光学装置100Aは、前フレーム21cの中央に対応する箇所において、すなわち第1虚像形成光学部103aと第2虚像形成光学部103bとに挟まれた中央部又はブリッジ部103kに形成された窪みの背後において、装着者USの鼻に掛けられるノーズパッド61を有する。テンプル22a,22bとノーズパッド61とは、装着者USの頭部に対する装着型表示装置100の装着状態を安定して確保するための部分であり、装着用当接部を構成する。
【0016】
支持装置100Bは、左側の第1側方支持体21aの先端部23aにおいて、光学装置100A又は第1表示装置101aを支持装置100Bに対して変位可能に支持する可動機構24aを有する。可動機構24aは、光学装置100A又は第1表示装置101aを支持装置100Bに対して光軸方向に対応する前後方向つまり±Z方向に移動可能に支持する移動機構24sとしての機能を有し、かつ、光学装置100A又は第1表示装置101aを光軸に対して直交する横軸LX1のまわりに回転可能に支持する回動機構24rとしての機能を有する。この可動機構24aは、第1側方支持体21aと第2側方支持体21bとの間隔、つまりX方向の距離を増減させる機能も有する。
【0017】
第1側方支持体21aの第1テンプル22aは、XZ面に略平行に延びる固定テンプル26aと、固定テンプル26aに対して可動であり固定テンプル26aに対してV字状に角度をなして上方に配置可能な可動テンプル27aとを有する。つまり、支持装置100Bは、装着時の接触部である第1テンプル22aにおいて、固定テンプル26aと可動テンプル27aとを有し、可動テンプル27aは、固定テンプル26aよりも装着状態を想定して上側すなわち-Y側に配置可能に取り付けられている。可動テンプル27aは、一般的な固定テンプル26aに追加される意味で、補助テンプルとも呼ぶ。固定テンプル26aの根元側には、可動テンプル27aを回動可能に支持するとともに可動テンプル27aの固定テンプル26aに対する開き角を調整可能にする回転機構として、テンプル調整機構25aが設けられている。この場合、装着者の個々の頭部に合わせた装着型表示装置100の装着が可能になる。より詳細には、テンプル調整機構25aは、可動テンプル27aの固定テンプル26aに対する開き角を段階的に調整して固定する。また、テンプル調整機構25aを固定テンプル26aの根元側に設けることで、固定テンプル26aの根元周辺を基点に可動テンプル27aを回転させることができ、固定テンプル26aと可動テンプル27aとをV字状に広げることができ、先端の間隔を大きく広げて支持を安定させやすくなる。固定テンプル26aのうちテンプル調整機構25aの下方すなわち+Y方向に隣接して耳パッド26eが取り付けられている。耳パッド26eのうち、テンプル調整機構25aの下方や後方の部分には、装着者USの耳が当たって、テンプル調整機構25a等が耳に支持されるようになっている。固定テンプル26aと可動テンプル27aとは、弾性体で形成され、内側に湾曲している。特に、可動テンプル27aは、装着者USの頭部が配置される内側に湾曲するとともに可撓性を有し、後頭部のサイズや形状にフィットするようになっている。この場合、弾性的な可動テンプル27aによって適度な力で挟むように頭部を保持する装着が可能になる。さらに、可動テンプル27aは、固定テンプル26aの外側又は-X側に配置されている。これにより、可動テンプル27aを滑らかに回転させて後頭部の適所にフィットさせることができる。
【0018】
支持装置100Bは、右側の第2側方支持体21bの先端部23bにおいて、光学装置100A又は第2表示装置101bを支持装置100Bに対して変位可能に支持する可動機構24bを有する。可動機構24bは、光学装置100A又は第2表示装置101bを支持装置100Bに対して光軸方向に対応する前後方向つまり±Z方向に移動可能に支持する移動機構24sとしての機能を有し、かつ、光学装置100A又は第2表示装置101bを光軸に対して直交する横軸LX2のまわりに回転可能に支持する回動機構24rとしての機能を有する。この可動機構24bは、第1側方支持体21aと第2側方支持体21bとの間隔、つまりX方向の距離を増減させる機能も有する。なお、第2側方支持体21bの可動機構24bは、第1側方支持体21aの可動機構24aと協働することで、装着型表示装置100の装着状態に関する全体的な調整機構として動作し、支持装置100B又は装着者USの頭部に対して光学装置100Aを前後方向すなわち±Z方向に段階的に又は連続的に進退させる前後位置調整や、支持装置100B又は装着者USの頭部に対して光学装置100AをX方向に延びる横水平軸LX01(
図2参照)のまわりに回動させて光学装置100Aの姿勢を段階的に又は連続的に傾ける傾斜角度調整を可能としている。結果的に、一対の側方支持体21a,21bに設けた可動機構24a,24bによって、装着者USの眼から光学装置100Aまでの距離を調整することができる。さらに、可動機構24a,24bによって、装着者USの眼に対して、虚像形成光学部103a,103bの前フレーム21cに対する高さをすなわち±Y方向における配置を調整するとともに、虚像形成光学部103a,103bの傾斜姿勢をすなわちX軸まわりの回転姿勢を調整することができる。なお、可動機構24a,24bによる光学装置100Aの前後位置調整や傾斜角度調整は、後に詳述する機械的要素によって、装着者USが一定以上の外力を与えるまで変化しない半固定的なものとなっている。
【0019】
第2側方支持体21bの第2テンプル22bは、XZ面に略平行に延びる固定テンプル26bと、固定テンプル26bに対して可動であり固定テンプル26bに対してV字状に角度をなして上方に配置可能な可動テンプル27bとを有する。固定テンプル26bの根元側には、可動テンプル27bを回動可能に支持するとともに可動テンプル27bの固定テンプル26bに対する開き角を段階的に又は連続的に調整して固定するためのテンプル調整機構25bが設けられている。固定テンプル26bには、第1テンプル22aの場合と同様に、耳パッド26eが取り付けられている。また、固定テンプル26a及び可動テンプル27aは、第1テンプル22aの場合と同様に、内側に湾曲するとともに可撓性を有する。結果的に、第1テンプル22aと第2テンプル22bとによって装着者USの後頭部を抱え込むような装着が可能となる。さらに、可動テンプル27bは、滑らかな回転を確保するため固定テンプル26bの外側又は+X側に配置されている。なお、一対の側方支持体21a,21bにおいて、テンプル調整機構25a,25bによる可動テンプル27a,27bの開き角調整は、後に詳述する機械的要素によって、装着者USが所定の操作を行うまで変化しない半固定的なものとなっている。詳細は後述するが、一対の側方支持体21a,21bの固定テンプル26a,26bと可動テンプル27a,27bとによって、その先端部で後頭部に対する4点支持が行われていることになる。
【0020】
光学装置100Aは、第1及び第2虚像形成光学部103a,103bに挟まれた中央部又はブリッジ部103kにおいて、ノーズパッド61の配置を可変な状態で設定するパッド支持装置65を有する。パッド支持装置65は、ノーズパッド61を光学装置100A又は虚像形成光学部103a,103bに対して変位可能に支持している。つまり、光学装置100Aとノーズパッド61との間に設けられたパッド支持装置65は、ノーズパッド61の配置を可変な状態で設定する。この場合、光学装置100Aの顔面に対する高さや間隔を調整することが容易になる。パッド支持装置65により、ノーズパッド61は、光学装置100A又は虚像形成光学部103a,103bに対して上下の±Y方向に段階的に又は連続的に変位し、高さ位置に関して位置調整可能な状態で支持されている。つまり、パッド支持装置65は、ノーズパッド61について光学装置100Aからの距離を自在に設定できるようにしている。また、パッド支持装置65により、ノーズパッド61は、根元側を中心としてX方向に延びる横水平軸LX02のまわりに段階的に又は連続的に回動し、回転姿勢を傾斜状態に関して姿勢調整可能な状態で支持されている。つまり、パッド支持装置65は、ノーズパッド61の回転姿勢を自在に設定できるようにしている。結果的に、装着者USの眼に対して、虚像形成光学部103a,103bの姿勢を含めた配置を、上下方向すなわち±Y方向と前後方向すなわち±Z方向とに関して変更することができる。なお、パッド支持装置65によるノーズパッド61の姿勢を含めた配置調整は、後に詳述する機械的要素によって、装着者USが一定以上の外力を与えるまで変化しない半固定的なものとなっている。
【0021】
図4を参照して、光学装置100Aの内部構造等について説明する。左眼用の第1像形成本体部105aは、外装ケース105d内に、表示素子80、投射レンズ30、電子回路基板41,42等を保持する。投射レンズ30の外観を構成する鏡筒38は、投射レンズ30を構成するレンズ要素や表示素子80を相互にアライメントして固定する。表示素子80、投射レンズ30、及び電子回路基板41,42は、金属製の外装ケース105d内に不図示の取付部材を介してアライメントされた状態で固定されており、特に投射レンズ30は、第1虚像形成光学部103aの先端部に対してもアライメントされた状態で固定されている。投射レンズ30は、第1虚像形成光学部103aに対して光路に関する前段に配置されて結像系の一部を構成する。電子回路基板41は、
図1に示す外部装置200からの情報を含む信号を処理する信号処理基板である。電子回路基板41は、外部装置200とのインターフェース機能を有するとともに、電子回路基板42の表示動作を管理し制御している。電子回路基板42は、第1像形成本体部105a中の表示素子80を駆動する駆動回路基板であり、電子回路基板41の制御下で動作する。
【0022】
右眼用の第2像形成本体部105bは、カバー状の外装ケース105d内に、表示素子80、投射レンズ30、電子回路基板42等を保持する。投射レンズ30、表示素子80、及び電子回路基板42は、金属製の外装ケース105d内にアライメントされた状態で固定されており、特に投射レンズ30は、第2虚像形成光学部103bの先端部に対してもアライメントされた状態で固定されている。右眼用の第2像形成本体部105bにおいて、投射レンズ30は、第2虚像形成光学部103bに対して光路に関する前段に配置されて結像系の一部を構成する。電子回路基板42は、第2像形成本体部105b中の表示素子80を駆動する駆動回路基板であり、離れた第1像形成本体部105aに設けた電子回路基板41の制御下で動作する。
【0023】
第1及び第2虚像形成光学部103a,103bは、別体ではなく対向する端部で連結されて一体的な部材である透視型導光ユニット100Cを形成している。透視型導光ユニット100Cは、表示素子80からの画像光を導く一対の導光部材10a,10bと、外界像の重畳視を可能にする中央部材50とを備える。一対の導光部材10a,10bは、画像光を内部に伝搬させつつ虚像形成に寄与する一対の光学部材である。中央部材50は、一対の光透過部50a,50bを有し、一方の光透過部50aは、一方の導光部材10aに接合され、他方の光透過部50bは、他方の導光部材10bに接合される。透視型導光ユニット100Cは、導光によって装着者USに両眼用の画像を提供する複合型の導光装置であり、両端部つまり導光部材10a,10bの先端が外装ケース105dに嵌め込まれ、像形成本体部105a,105bに支持されている。
【0024】
透視型導光ユニット100Cの上面には、上カバー100Dが固定されている。上カバー100Dと透視型導光ユニット100Cとの間には、薄く狭い空間が形成されており、第1像形成本体部105aと第2像形成本体部105bとを電気的に連結する信号線48が延びている。
【0025】
第1像形成本体部105aに組み込まれた表示素子80は、2次元的な表示を可能にする自発光型の表示デバイスであり、ドットマトリクス方式で動作する。各表示素子80は、具体的には有機EL(Electro-luminescence)の表示パネルを想定しているが、これに限るものではなく、液晶ディスプレイ(LCD: Liquid Crystal Display)用のパネルであってもよい。LCD用のパネルを用いる場合、適合する照明用光源が必要となる。表示素子80は、電子回路基板42に駆動されて四角形の表示面上にカラー画像を形成し、2次元的な動画又は静止画を表示することができる。
【0026】
図5は、第1表示装置101aの一部を示す図であり、特に第1虚像形成光学部103aの光学的構造を説明するものとなっている。装着型表示装置100は、既述のように、第1表示装置101a及び第2表示装置101b(
図1等参照)で構成されるが、第1表示装置101aと第2表示装置101bとは、左右対称で同等の構造を有するため、第1表示装置101aについてのみ説明し、第1表示装置101bについては説明を省略する。なお、
図5において、x、y、及びzは、直交座標系であり、x方向及びy方向は、第1面S11及び第3面S13に平行であり、z方向は、第1面S11及び第3面S13に垂直である。
【0027】
第1虚像形成光学部103aのうち導光部材10aは、接着層CCを介して光透過部50aと接合されている。つまり、光透過部50aの第2透過面S52は、導光部材10aの第2面S12に対向して配置され、同じ形状を有する。導光部材10aと光透過部50aとは、光学面を含む立体的形状を与える本体部材の表面を薄いハードコート層で被覆した構造を有する。導光部材10aや光透過部50aの本体部材は、可視域で高い光透過性を示す樹脂材料で形成されており、例えば金型内に熱可塑性樹脂を注入し固化させることにより成形される。
【0028】
以下、画像光GLの光路について概要を説明する。導光部材10aは、投射レンズ30から射出された画像光GLを、第1~第5面S11~S15での反射等により装着者USの眼に向けて導光する。具体的には、投射レンズ30からの画像光GLは、まず光入射部11aに形成されている第4面S14の部分に入射して反射膜RMの内面である第5面S15で反射され、第4面S14に内側から再度入射して全反射され、第3面S13に入射して全反射され、第1面S11に入射して全反射される。第1面S11で全反射された画像光GLは、第2面S12に入射し、第2面S12に設けたハーフミラー15を部分的に透過しつつも部分的に反射されて光射出部11bに形成されている第1面S11の部分に再度入射して通過する。第1面S11を通過した画像光GLは、Z方向に略平行な光軸AXに沿って全体として進み、装着者USの眼が配置される射出瞳EPに略平行光束として入射する。つまり、装着者USは、虚像としての画像光により画像を観察することになる。
【0029】
第1虚像形成光学部103aは、導光部材10aにより装着者USに画像光を視認させるとともに、導光部材10aと光透過部50aとの組み合わせた状態で、装着者USに歪みの少ない外界像を観察させるものとなっている。この際、第3面S13と第1面S11とが互いに略平行な平面となっていることで、この部分を透過させる観察に関して視度が略0となり、外界光OLについて収差等をほとんど生じさせない。また、第3透過面S53と第1透過面S51とが互いに略平行な平面となっている。さらに、第1透過面S51と第1面S11とが互いに略平行な平面となっていることで、収差等をほとんど生じさせない。以上により、装着者USは、光透過部50a越しに歪みのない外界像を観察することになる。
【0030】
図6は、第1側方支持体21aに設けた可動機構24aの内部構造の具体例を説明する図である。
図6において、第1領域AR1は、
図2に示す可動機構24aのAA矢視断面及びその奥を観察した斜視図であり、第2領域AR2は、
図2に示す可動機構24aのBB矢視断面及びその奥を観察した斜視図である。
【0031】
図6に示すように、第1側方支持体21aに設けた可動機構24aのハウジング71a中には、第1回転部材71gが保持され、第1回転部材71gのローレット部分71hの上部が、ハウジング71aの上部スロット71bからはみ出している。第1回転部材71gのギヤ部分71iは、ハウジング71aに形成された長円形の窪みの下部に形成されたラック71mのギヤ部分71nと噛み合って、左右のX方向に略平行に延びる回転軸LX11のまわりに回転可能となっている。第1回転部材71gは、ハウジング71a内に形成された溝等のガイドに案内されて前後のDS1方向に移動可能になっており、指で操作される第1回転部材71gの回転に伴って前後のDS1方向すなわちZ方向に移動する。ローレット部分71hの内側には、同芯で円形の収納空間が形成されており、第2回転部材71qの歯止め部材71rが収納されている。第2回転部材71qは、中空の中央部材71sを有し、中央部材71sは、ハウジング71a内に形成された溝等のガイドに案内されて前後のZ方向に移動可能になっている。この際、第1回転部材71gの回転移動に伴って第2回転部材71qも回転しつつ、或いは回転しないで前後のZ方向に移動する。中央部材71sの孔71tには、
図3に示す第1像形成本体部105aの外装ケース105dの内側に突起する軸部材であるボス106aが挿入され、凹凸の係合によって中央部材71sとボス106aとが一体的に回転する。ボス106aすなわち第1像形成本体部105aは、ハウジング71aに形成された長円形の側方スロット71c等に案内されて中央部材71sとともに前後のDS1方向すなわちZ方向に移動する。この際、第2回転部材71qの歯止め部材71rに形成された爪71uと、第1回転部材71gのローレット部分71hの内側に形成された内歯71iとが噛み合って、第1回転部材71gに対する第2回転部材71qの回転が抑制される。ただし、所定以上の回転力が加わると歯止め部材71rが変形して係合が一時的に解除され、第2回転部材71qの回転が許容される。つまり、歯止め部材71rとローレット部分71hとは、所定の角度間隔で緩いロックを達成するクリック係合構造として機能している。第1回転部材71gのローレット部分71hを手動で操作して回転させることで、ボス(軸部材)106aに支持された第1像形成本体部105aを前後方向にクリック感を持たせて段階的に徐々に移動させることができる。
【0032】
第2側方支持体21bに設けた可動機構24bの機械的構造は、詳細な説明を省略するが、第1側方支持体21aの可動機構24aと同様の機能を有し、可動機構24aの機械的構造を左右反転させたものとなっている。
【0033】
図7は、光学装置100Aに対する支持装置100Bの前後に関する相対的な変位を説明する平面図である。図中において実線で示す支持装置100Bは、最も前方に配置された状態を示し、点線で示す支持装置100Bは、最も後方に配置された状態を示す。
【0034】
可動機構24a,24bに設けたローレット部分71hを回転させる操作を行うことにより、第1側方支持体21aの先端部23aを第1像形成本体部105aに対して前後方向に徐々にシフトさせることができ、第2側方支持体21bの先端部23bを第2像形成本体部105bに対して前後方向に徐々にシフトさせることができる。つまり、光学装置100A又は表示装置101a,101bを支持装置100Bに対して所望量だけ前後方向に移動させることができる。この際、支持装置100Bが光学装置100Aに対して前方に移動した場合に、第1側方支持体21aの先端部23aと第2側方支持体21bの先端部23bとの間隔を狭める。支持装置100Bが光学装置100Aに対して後方に移動した場合には、逆の状態が生じる。つまり、支持装置100Bを相対的に前方の+Z方向に移動させることで一対の先端部23a,23bの間隔が狭まり、光学装置100Aを相対的に後方の-Z方向に移動させることで一対の先端部の間隔が広がる。具体的には、実線で示す配置の支持装置100Bの場合、第1側方支持体21aの先端部23aと第2側方支持体21bの先端部23bとのX方向の間隔が狭まっているが、点線で示す配置の支持装置100Bの場合、先端部23a,23bのX方向の間隔が広がっている。このように、支持装置100Bを前後の±Z方向に移動させることで、支持装置100Bの先端部23a,23b間の間隔を増減調整することにもなる。ここで、先端部23a,23bの間隔を増減させる量は、平面視の傾斜角αに応じたものとなる。例えば点線の位置が基本とすると(
図7に点線で示す状態参照)、支持装置100Bが前進して点線の位置から実線の位置に前進すると、たわみ部材21i,21jが横のX方向に強制的に縮められる。たわみ部材21i,21jは、圧縮に反発する力を発生し、先端部23a,23bの間隔を実線の状態から点線の状態に戻そうとする。つまり、たわみ部材21i,21jは、光学装置100Aが前フレーム21cに対して所定以上に後方に配置された状態で第1側方支持体21aの先端部23aと第2側方支持体21bの先端部23bとを広くする駆動力又は伸張力を発生し、光学装置100Aを前フレーム21cに対して前方に付勢する。この場合、光学装置100Aを支持装置100Bに対して前進した基準位置に戻すことが容易になる。ただし、可動機構24a,24bにおいてローレット部分71hの回転には適度の抵抗を持たせることができ、光学装置100Aが支持装置100Bに対して自動的に元の位置に復帰しないように設定することができる。なお、支持装置100Bの位置については、たわみ部材21i,21jの形状の初期設定により、実線の位置を基本として、点線の位置から実線の位置に復帰しやすくすることもできる。すなわち、たわみ部材21i,21jは、光学装置100Aが前フレーム21cに対して所定以上に前方に配置された状態で第1側方支持体21aの先端部23aと第2側方支持体21bの先端部23bとを狭くする駆動力又は引っ張り力を発生し、光学装置100Aを前フレーム21cに対して後方に付勢する。この場合、光学装置100Aを支持装置100Bに対して後退した基準位置に戻すことが容易になる。
【0035】
図8は、光学装置100Aに対する支持装置100Bの傾斜を含む相対的な姿勢変化を説明する側面図である。
図8において、第1~第4領域AR1~AR4は、支持装置100Bの姿勢の変化パターンを示している。第1領域AR1に示す例では、支持装置100Bに対して光学装置100Aが-Z方向に最も後退して配置され、光学装置100Aが略水平に向かっており、光学装置100Aの姿勢に傾斜がない状態となっている。第2領域AR2に示す例では、支持装置100Bに対して光学装置100Aが+Z方向に最も前進して配置され、光学装置100Aの姿勢に傾斜がない状態となっている。第3領域AR3に示す例では、支持装置100Bに対して光学装置100Aが-Z方向に最も後退して配置され、光学装置100Aが前方で下向きに傾斜した状態となっている。第4領域AR4に示す例では、支持装置100Bに対して光学装置100Aが+Z方向に最も前進して配置され、光学装置100Aが前方で下向きに傾斜した状態となっている。
【0036】
図9は、第1側方支持体21a設けたテンプル調整機構25aの内部構造の具体例を説明する図である。
図9において、第1領域AR1は、
図2に示すテンプル調整機構25aのCC矢視断面から奥を観察した斜視図であり、第2領域AR2は、
図2に示すテンプル調整機構25aのDD矢視断面図である。
【0037】
テンプル調整機構25aは、固定テンプル26aに対する可動テンプル27aの開き角の増加又は減少を許容するラチェット機構25mを有するとともに、可動テンプル27aの角度を元に戻す解除機構25nを有する。この場合、可動テンプル27aの固定テンプル26aに対する姿勢を段階的に解除可能に維持することができる。テンプル調整機構25aにおいて、内環状部分73aと、内環状部分73aから外側に離間して同芯状に配置された外環状部分73bとは、固定テンプル26aの外側面上に設けられて固定テンプル26aに支持されている。内環状部分73aと外環状部分73bとの間に挟まれてこれらに嵌合する円筒部73gと、円筒部73gと一体化されたカバー73hとは、可動テンプル27aの根元部分に設けられて可動テンプル27aとともに回転する。ここで、内環状部分73aには、外周の複数箇所において半径外方向に突起するラチェット爪73dが形成され、円筒部73gの内周面上には、ラチェット歯73eが形成されている。ラチェット爪73dとラチェット歯73eとは、図示の通常状態で弾性的に係合し、ラチェット機構25mとして機能する。ラチェット機構25mは、ラチェット歯73eを設けた円筒部73gすなわち可動テンプル27aが回転軸LX12のまわりに矢印A1で示す時計方向に回転することを許容する。つまり、可動テンプル27aは、当初固定テンプル26aに対してV字状に角度をなして配置されているとして、固定テンプル26aと略重なった角度略0°の位置まで段階的に徐々に回転させることができる。内環状部分73aの中心側であって固定テンプル26aの外側面上には、バネ固定部73cが形成され、カバー73hの内側には、カバー73hに支持されてバネ固定部73iが配置されている。バネ固定部73c,73iには、つるまきバネ73pの両端が固定され、カバー73hや可動テンプル27aを矢印A2で示す反時計方向に回転させるように付勢している。カバー73hに嵌め込むように保持された解除ボタン73sは、カバー73hとバネ固定部73iとの隙間を通って内環状部分73aと係合する押圧用突起73tを有し、解除機構25nとして機能する。解除ボタン73sを押し下げることにより、押圧用突起73tを介して内環状部分73aに設けたラチェット爪73dをその周辺部部分とともに矢印DP1で示す内側に押し込むように局所的に変位させることができる。これにより、ラチェット爪73dのラチェット歯73eに対する係合が解除され、ラチェット歯73eを設けた円筒部73gすなわち可動テンプル27aが、つるまきバネ73pの力を受けて矢印A2で示す反時計方向に回転する。結果的に、可動テンプル27aは、リセットされ、固定テンプル26aに対してV字状に角度をなして配置される。ただし、円筒部73gの外周面上に形成されたストッパー73fによって、可動テンプル27aの回転角の最大値が制限されているので、可動テンプル27aが固定テンプル26aに対してなす角度にも上限が設けられている。
【0038】
以上で例示した構造では、ラチェット爪73d及びラチェット歯73eによって、可動テンプル27aを矢印A1で示す時計方向に段階的に徐々に回転させて固定しているが、ラチェット爪73dの向き等を変更することで、可動テンプル27aを矢印A2で示す反時計方向に段階的に徐々に回転させて固定することもできる。この場合、解除ボタン73sの押し下げにより可動テンプル27aを矢印A1で示す時計方向に回転させて、固定テンプル26aと略重なった角度略0°の位置まで戻す構造とすることができる。
【0039】
第2側方支持体21bに設けたテンプル調整機構25bの機械的構造は、詳細な説明を省略するが、第1側方支持体21aのテンプル調整機構25aと同様の機能を有し、テンプル調整機構25aの機械的構造を左右反転させたものとなっている。
【0040】
図10は、可動テンプル27aの角度変化を説明する側面図であり、
図11は、可動テンプル27a,27bのよる頭部の保持を説明する背面図である。可動テンプル27a,27bは、テンプル調整機構25a,25bを中心軸として、固定テンプル26a,27bに対する開き角γを段階的に変化させることができる。可動テンプル27a,27bは、固定テンプル26a,26bに対する開き角γが10°~80°となる範囲で回転する。また、開き角γの最大値が10°以上~80°以下となるようにしても良い。なお、可動テンプル27a,27bが回転していない閉状態又は基本状態では、可動テンプル27a,27bの高さが、装着状態を想定して固定テンプル26a,27bと同じ高さとなっている。また、可動テンプル27a,27bが回転した開状態では、可動テンプル27a,27bの高さが、装着状態を想定して固定テンプル26a,27bよりも高く上側に配置されている。点線で示すように可動テンプル27a,27bの開き角γを微調整することで、装着者USの後頭部BHに対する可動テンプル27a,27bの配置を調整することができ、可動テンプル27a,27bによって、可動テンプル27a,27bの先端26k,27kにおいて下向きの力FDを与えることでき、耳パッド26e周辺を支点として、側方支持体21a,21b又は第1虚像形成光学部103a,103bに対してこれを持ち上げるような上向きの力FUを与えることできる。これにより、鼻NOに過度の加重が集中することを防止して、加重分散を図ることができる。つまり、耳EAの上部と鼻NOと、後頭部BHとにバランスした加重感を与えることができる。可動テンプル27a,27bは、先端側で頭部HDにフィットする湾曲形状を有する。この湾曲は、標準的な頭部の湾曲よりも若干曲率を大きくしたものとなっている。この場合、湾曲し可撓性を有する可動テンプル27a,27bによって頭部HDを包むように保持する装着が可能になり、支持装置100Bが頭部HDに対してずれにくくなる。さらに、可動テンプル27a,27bのテンプル調整機構(回転機構)25a,25bから先端27kまでの長さは、固定テンプル26a,26bの回転機構から先端26kまでの長さと同様かそれよりも長い。この場合、固定テンプル26a,26bの先端26k,27kによる支持を安定させやすく、装着型表示装置100の装着を安定させやすい。特に、可動テンプル27a,27bの先端26k,27kは、後頭部BHに対応する位置まで延びる。この場合、可動テンプル27a,27bによる頭部HDの保持が確実になる。
【0041】
なお、
図11に示す例では、可動テンプル27a,27bの回転軸LX12がXZ面に平行ではなく或は横水平軸LX01に平行ではなく、X軸又は横水平軸LX01に対して例えばXY面に沿って内側に小角δ傾いている。言い換えれば、支持装置100Bにおいて、可動テンプル27a,27bの先端27kが後頭部BHに対応して配置された状態で、支持装置100Bの当接部APが上下方向又はY方向を基準として上側又は-Yで内側に傾いている。この場合、当接部APのうち特に可動テンプル27a,27bを鉛直方向から内側に傾けることになり、可動テンプル27a,27bを頭部HDの形状に沿って接触するように配置できる。具体的には、可動テンプル27a,27bの開き角γを大きくするほど、可動テンプル27a,27bの先端27kを一点鎖線で示す位置から実線で示す内側に変位させる力を与えることができる。つまり、可動テンプル27a,27bを一点鎖線で示す傾きのない場合よりもより大きなしなり量によってより内側に大きな押圧力を発生させるものとすることができる。これにより、頭部HDの形状に沿って接触するように可動テンプル27a,27bを配置し、可動テンプル27a,27bを頭部HDに対し締めつける方向での調整が可能になり、可動テンプル27a,27bによる支持装置100Bの支持を確実で安定したものとすることができる。
【0042】
図12は、光学装置100Aに設けたパッド支持装置65の具体的な構造と、光学装置100Aに対するノーズパッド61の変位とを説明する側面図である。
図11において、第1~第5領域AR1~AR5は、ノーズパッド61の姿勢を含む配置の変化パターンを示している。
【0043】
パッド支持装置65は、第1及び第2虚像形成光学部103a,103bに挟まれた中央部であるブリッジ部103kに設けられている。パッド支持装置65は、ブリッジ部103kに固定された固定部材75aと、固定部材75aから延びるアーム75bとを備える。固定部材75aの前側端には、アーム75bの根元に設けた軸部材75dを回転可能に支持する軸受け75cが形成されている。アーム75bの先端には、ノーズパッド61の根元に設けた軸部材75fを横水平軸LX02のまわりに回転可能に支持する軸受け75eが形成されている。詳細な説明を省略するが、軸受け75cと軸部材75dとの間には、所定の角度間隔で緩いロックを達成するクリック係合構造が組み込まれており、固定部材75aに対するアーム75bの回転角度を複数段階で変化させることができる。同様に詳細な説明を省略するが、軸受け75eと軸部材75fとの間には、所定の角度間隔で緩いロックを達成するクリック係合構造が組み込まれており、アーム75bに対するノーズパッド61の回転角度を複数段階で変化させることができる。つまり、アーム75bやノーズパッド61の姿勢は、装着者USが一定以上の外力を与えることで調整することができるが、通常の装着状態では変化しない半固定的なものとなっている。アーム75bやノーズパッド61の姿勢を調整することにより、ノーズパッド61の先端部をYZ面に沿って2次元的に自在に変位させることができる。具体的には、第1~第3領域AR1~AR3に示すように、ノーズパッド61の姿勢を変化させることなく、ノーズパッド61のブリッジ部103k又は光学装置100Aに対する高さ位置すなわち±Y方向の配置を変化させることができる。また、第4領域AR4に示すように、ノーズパッド61を大きく回転させて姿勢を水平に延びるようなものとすることができる。第5領域AR5に示すように、ノーズパッド61を上下反転させてアーム75bに取り着けることもできる。この場合、アーム75b先端に設けた軸受け75eは、ノーズパッド61の根元に設けた軸部材75fを着脱可能に支持するものとなっている。
【0044】
以上で説明した第1実施形態の装着型表示装置100では、可動テンプル27a,27bが固定テンプル26a,26bよりも装着状態を想定して上側に配置可能に取り付けられているので、可動テンプル27a,27bを固定テンプル26a,26bよりも上側に配置することで、固定テンプル26a,26bの根元部分を耳EAにかけつつ可動テンプル27a,27bを頭部HDに当てて光学装置100Aにこれを上側に上げる力を与えることができ、頭部HDを全体的に利用して光学装置100Aを支えることができ、加重の分散によって装着型表示装置100の装着が楽になる。
【0045】
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態に係る装着型表示装置について説明する。なお、第2実施形態の装着型表示装置は、第1実施形態の装着型表示装置を部分的に変更したものであり、共通部分については説明を省略する。
【0046】
図13に示すように、第2実施形態の装着型表示装置1100は、
図1等に示す装着型表示装置100に対してシェード107を追加したものとなっている。シェード107は、第1像形成本体部105aの外装ケース105dに設けた固定溝105tと、第2像形成本体部105bの外装ケース105dに設けた固定溝105tとに両端を嵌め込むように挿入することで、光学装置100Aに対して固定されている。シェード107のフレーム107aに固定されたフィルター107bは、例えばNDフィルターのようなものとすることができるが、カラーフィルター、偏光フィルター等であってもよい。フィルター107aは、透過率等が一定に保たれるものに限らず、透過率等を電子制御できるものであってもよい。
【0047】
〔変形例及びその他の事項〕
以上で説明した第1側方支持体21aや第2側方支持体21bの形状や構造は、単なる例示であり、同様の機能を達成できる範囲で、側方支持体21a,21bの形状や構造を変更することができる。
【0048】
以上で例示したテンプル調整機構(回転機構)25a,25bの機械的な構造は、単なる例示であり、同様の機能を達成できる範囲で、テンプル調整機構25a,25bの構造を変更することができる。
【0049】
以上で例示した可動機構24a,24b及びパッド支持装置65の機械的な構造は、単なる例示であり、同様の機能を達成できる範囲で、可動機構24a,24b及びパッド支持装置65の構造を変更することができる。
【0050】
可動テンプル27a,27bは、横から見て直線的に延びるものに限らず、折れ曲がったような形状とすることができる。この場合も、可動テンプル27a,27bの先端27kと固定テンプル26a,26bの先端26kとの距離が十分確保されていれば、可動テンプル27a,27bによる保持が安定したものとなる。
【0051】
例えば固定テンプル26a,26b同士を分離可能に連結する連結装置を設けることもできる。可動テンプル27a,27b同士について、これらを分離可能に連結する連結装置を設けることができる。
【0052】
可動テンプル27a,27bのテンプル調整機構25a,25bから先端27kまでの長さは、固定テンプル26a,26bの回転機構から先端26kまでの長さと等しくしてもよく、固定テンプル26a,26bの回転機構から先端26kまでの長さよりも短くしてもよい。
【0053】
可動テンプル27a,27bは、固定テンプル26a,26bの内側に配置することもできる。
【0054】
可動機構24a,24bやパッド支持装置65については、これらを省略することもできる。可動機構24a,24bを省略する場合、回動機構24rとしての機能を省略して移動機構24sとしてのみ機能させることもできる。また、可動機構24a,24bの有無に関わらず、可動テンプル27a,27bを着脱可能に構成することができる。可動機構24a,24bを省略して可動テンプル27a,27bを固定テンプル26a,26b等に対して着脱可能にした場合、可動テンプル27a,27bに相当する部分は、角度固定の挿入型の部材となる。このような角度固定の挿入型テンプルも可動テンプルと呼ぶ。角度固定の挿入型テンプルについては、固定テンプル26a,26bに対して複数の角度状態で差し込む構造とすることができる。この場合、角度固定の挿入型テンプル又は可動テンプルを固定テンプル26a,26bに対して例えば3段の角度状態に設定して取り付けることができる。
【0055】
可動機構24a,24bを省略する場合、第1像形成本体部105aと第1側方支持体21aとを一体化し、第2像形成本体部105bと第2側方支持体21bとを一体化してもよい。この場合、前フレーム21cが不要となり、或は前フレーム21cが虚像形成光学部103a,103bと一体化される。前フレーム21cが虚像形成光学部103a,103bと一体化される場合、前フレーム21cつまり支持装置100B側にノーズパッド61が取り付けられる。さらに、支持装置100B側にパッド支持装置65を介してノーズパッド61を取り付けてもよい。
【0056】
たわみ部材21i,21jは、S字状の外形を有するバネ部材21x,21yに限らず、L字状のバネ部材、或いは湾曲したR形状を有する板状のバネ部材のように、様々な形状を有するバネ部材に置き換えることができる。たわみ部材21i,21jは、S字状のバネ部材、L字状のバネ部材、R形状を有するバネ部材とすることができるだけでなく、金属、ゴム、プラスチック、樹脂材料等の各種弾性体又はその複合構造から形成されるものであって、弾性変形する板状、棒状等を含む様々な立体的形状を有するものとすることができる。
【0057】
たわみ部材21i,21jは、第1側方支持体21a及び前フレーム21cの双方又は一方と一体化された部品とすることができる。逆に、たわみ部材21i,21jは、追加の接続部品と組み合わせて第1側方支持体21a又は前フレーム21c固定することもできる。また、たわみ部材21i,21jは、金属材料で形成することができるだけでなく、金属の芯材を樹脂材料で被覆したものから形成することができる。
【0058】
以上の説明では、表示素子80が有機ELの表示パネルやLCD用のパネルであるとしたが、表示素子80は、LEDアレイ、レーザーアレイ、量子ドット発光型素子等に代表される自発光型の表示素子であってもよい。さらに、表示素子80は、レーザー光源とスキャナーとを組みあわせたレーザスキャナーを用いたディスプレイであってもよい。なお、LCDパネルに代えてLCOS(Liquid crystal on silicon)技術を用いることもできる。
【0059】
虚像形成光学部103a,103bは、眼前を覆って外光を遮断するようなものであってもよい。この場合、外界を直接観察できなくなるが、カメラで撮影した外界像を観察できるようにすることもできる。
【0060】
電子回路基板41,42には、実施形態で説明した機能に限らず、様々な機能を持たせることができる。
【0061】
具体的な態様における装着型表示装置は、虚像を形成する光学装置と、光学装置を支持する支持装置とを備え、支持装置は、固定テンプルと可動テンプルとを有し、可動テンプルは、固定テンプルよりも上側に配置可能に取り付けられている。
【0062】
上記装着型表示装置では、可動テンプルが固定テンプルよりも装着状態を想定して上側に配置可能に取り付けられているので、可動テンプルを固定テンプルよりも上側に配置することで、固定テンプルの根元部分を耳にかけつつ可動テンプルを頭部に当てて光学装置にこれを上側に上げる力を与えることができ、頭部を全体的に利用して装着型表示装置を支えることができ、加重の分散によって装着型表示装置の装着が楽になる。
【0063】
具体的な側面において、固定テンプルに対する可動テンプルの開き角を調整可能にする回転機構を備える。この場合、装着者の個々の頭部に合わせた装着型表示装置の装着が可能になる。
【0064】
別の側面において、回転機構は、固定テンプルに対する可動テンプルの開き角の増加又は減少を許容するラチェット機構を有するとともに、可動テンプルの角度を元に戻す解除機構を有する。この場合、可動テンプルの固定テンプに対する姿勢を段階的に解除可能に維持することができる。
【0065】
さらに別の側面において、回転機構は、固定テンプルの根元側に設けられている。この場合、固定テンプルの根元周辺を基点に可動テンプルを回転させることができ、固定テンプルと可動テンプルとをV字状に広げることができ、先端の間隔を大きく広げて支持を安定させやすくなる。
【0066】
さらに別の側面において、可動テンプルは、固定テンプルの外側に配置されている。これにより、可動テンプルを滑らかに回転させやすくなる。
【0067】
さらに別の側面において、可動テンプルの回転機構から先端までの長さは、固定テンプルの回転機構から先端までの長さよりも長い。この場合、固定テンプルの先端による支持を安定させやすく、装着型表示装置の装着を安定させやすい。
【0068】
さらに別の側面において、可動テンプルの先端は、後頭部に対応する位置まで延びる。この場合、可動テンプルによる頭部の保持が確実になる。
【0069】
さらに別の側面において、支持装置において、可動テンプルの先端が後頭部に対応して配置された状態で、支持装置の当接部が上下方向を基準として上側で内側に傾いている。この場合、支持装置の当接部のうち特に可動テンプルを鉛直方向から内側に傾けることになり、可動テンプルを頭の形状に沿って接触するように配置できる。
【0070】
さらに別の側面において、可動テンプルは、固定テンプルに対する開き角の最大値が10°以上80°以下である。
【0071】
さらに別の側面において、可動テンプルは、弾性体で形成され、内側に湾曲している。この場合、弾性的な可動テンプルによって適度な力で挟むように頭部を保持する装着が可能になる。
【0072】
さらに別の側面において、可動テンプルは、先端側で頭部にフィットする湾曲形状を有する。この場合、湾曲した可動テンプルによって頭部を包むように保持する装着が可能になる。
【0073】
さらに別の側面において、光学装置又は支持装置に取り付けられるノーズパッドを有し、光学装置又は支持装置とノーズパッドとの間にノーズパッドの配置を可変な状態で設定するパッド支持装置を有する。この場合、光学装置の顔面に対する高さや間隔を調整することが容易になる。
【0074】
さらに別の側面において、パッド支持装置は、ノーズパッドの光学装置からの距離と回転姿勢とを設定する。
【符号の説明】
【0075】
AX…光軸、LX01,LX02…横水平軸、LX1,LX2…横軸、10a,10b…導光部材、15…ハーフミラー、21a…第1側方支持体、21b…第2側方支持体、21c…前フレーム、21i,21j…たわみ部材、21x,21y…バネ部材、22a…第1テンプル(接触部)、22b…第2テンプル(接触部)、23a,23b…先端部、24a,24b…可動機構、24r…回動機構、24s…移動機構、25a,25b…テンプル調整機構(回転機構)、26a,26b…固定テンプル、27a,27b…可動テンプル、30…投射レンズ、50…中央部材、61…ノーズパッド、65…パッド支持装置、80…表示素子、100…装着型表示装置、100A…光学装置、100B…支持装置、101a…第1表示装置、101b…第2表示装置、103a…第1虚像形成光学部、103b…第2虚像形成光学部、105a,105b…第2像形成本体部、105d…外装ケース、106a…ボス、107…シェード、200…外部装置