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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】吐出ヘッド
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20231129BHJP
   B05C 5/00 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
B41J2/14 501
B05C5/00 101
B41J2/14 305
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019101044
(22)【出願日】2019-05-30
(65)【公開番号】P2020192780
(43)【公開日】2020-12-03
【審査請求日】2022-04-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】浅見 昌広
(72)【発明者】
【氏名】宮岸 暁良
【審査官】長田 守夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-6424(JP,A)
【文献】特開2017-159565(JP,A)
【文献】特開2007-076168(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0041335(US,A1)
【文献】特開2008-137341(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
B05C 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出するためのエネルギーを生成するエネルギー生成素子と、
前記エネルギー生成素子を内包するエネルギー生成室と、
前記エネルギー生成室と連通し、前記エネルギー生成素子により生成されたエネルギーによって吐出方向へと液体を吐出するノズルと、を有する吐出ヘッドであって、
前記ノズル内の前記吐出方向における特定の位置を第1位置、
前記ノズル内の前記第1位置よりも前記吐出方向における下流側の特定の位置を第2位置、
前記吐出方向と交差する特定の方向を第1方向、
前記吐出方向および前記第1方向と交差する特定の方向を第2方向、
前記第1位置と前記第2位置を含む前記吐出方向の各位置において、前記ノズル内の前記第1方向と前記第2方向の中心に対応する位置を中心部としたとき、
前記第2位置における前記中心部から前記ノズルの縁部までの距離のうちの最大値と最小値の差が、前記第1位置における前記中心部から前記ノズルの縁部までの距離のうちの最大値と最小値の差よりも小さく、
前記第1位置において前記中心部を通る位置での前記第1方向における前記ノズルの幅が、前記第2位置において前記中心部を通る位置での前記第1方向における前記ノズルの幅よりも小さく、
前記第2位置における前記ノズルの縁部の前記吐出方向に沿った長さが、前記第1位置における前記ノズルの縁部の前記吐出方向に沿った長さよりも小さく、なるように前記ノズルが設けられている、
ことを特徴とする吐出ヘッド。
【請求項2】
前記第1位置において前記中心部よりも前記第2方向における一方の縁側の位置での前記第1方向における前記ノズルの幅が、前記第2位置において前記中心部よりも前記第2方向における一方の縁側の位置での前記第1方向における前記ノズルの幅よりも大きくなるように、前記ノズルが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の吐出ヘッド。
【請求項3】
前記第1位置において、前記中心部を通る位置での前記第1方向における前記ノズルの幅は、前記中心部よりも前記第2方向における一方の縁側の位置での前記第1方向における最大幅よりも小さく、
前記第1位置において、前記中心部を通る位置での前記第1方向における前記ノズルの幅は、前記中心部よりも前記第2方向における他方の縁側の位置での前記第1方向における最大幅よりも小さくなるように、前記ノズルが設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の吐出ヘッド。
【請求項4】
前記第1位置において、前記中心部を通る位置から前記第2方向における一方の縁側に向かうにしたがって、前記第1方向における前記ノズルの幅は漸次増加した後に漸次減少し、
前記第1位置において、前記中心部を通る位置から前記第2方向における他方の縁側に向かうにしたがって、前記第1方向における前記ノズルの幅は漸次増加した後に漸次減少するように、前記ノズルが設けられていることを特徴とする請求項3に記載の吐出ヘッド。
【請求項5】
前記第2位置における前記中心部から前記ノズルの縁部までの距離のうちの最大値と最小値の差は、0であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の吐出ヘッド。
【請求項6】
前記第1位置における前記中心部と、前記第2位置における前記中心部と、は一致することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の吐出ヘッド。
【請求項7】
前記吐出方向における位置が前記第1位置から前記第2位置に向かうにしたがって、前記中心部を通る位置での前記第1方向における前記ノズルの幅は漸次的に変化することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の吐出ヘッド。
【請求項8】
前記第2位置における前記ノズルの縁部の周方向に沿った長さは、前記第1位置における前記ノズルの縁部の前記周方向に沿った長さよりも小さくなるように、前記ノズルが設けられていることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の吐出ヘッド。
【請求項9】
前記第2位置における前記ノズルの流路断面積は、前記第1位置における前記ノズルの流路断面積よりも小さくなるように、前記ノズルが設けられていることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の吐出ヘッド。
【請求項10】
液体を吐出するためのエネルギーを生成するエネルギー生成素子と、
前記エネルギー生成素子を内包するエネルギー生成室と、
前記エネルギー生成室と連通し、前記エネルギー生成素子により生成されたエネルギーによって吐出方向へと液体を吐出するノズルと、を有する吐出ヘッドであって、
前記ノズル内の前記吐出方向における特定の位置を第1位置、
前記ノズル内の前記第1位置よりも前記吐出方向における下流側の特定の位置を第2位置、
前記吐出方向と交差する特定の方向を第1方向、
前記吐出方向および前記第1方向と交差する特定の方向を第2方向、
前記第1位置と前記第2位置を含む前記吐出方向の各位置において、前記ノズル内の前記第1方向と前記第2方向の中心に対応する位置を中心部としたとき、
前記ノズルは、前記第1位置に設けられる第1ノズル部と、前記第1ノズル部に連続し、前記第2位置に設けられる第2ノズル部と、を備え、
前記第2位置における前記中心部から前記ノズルの縁部までの距離のうちの最大値と最小値の差が、前記第1位置における前記中心部から前記ノズルの縁部までの距離のうちの最大値と最小値の差よりも小さく、
前記第1位置において、前記中心部を通る位置での前記第1方向における前記ノズルの幅が、前記中心部よりも前記第2方向における一方の縁側の位置での前記第1方向における最大幅よりも小さく、
前記第1位置において、前記中心部を通る位置での前記第1方向における前記ノズルの幅が、前記中心部よりも前記第2方向における他方の縁側の位置での前記第1方向における最大幅よりも小さく、
前記第2位置における前記ノズルの縁部の前記吐出方向に沿った長さが、前記第1位置における前記ノズルの縁部の前記吐出方向に沿った長さよりも小さく、なるように前記ノズルが設けられている、
ことを特徴とする吐出ヘッド。
【請求項11】
前記エネルギー生成室は、前記第2方向に沿って延設されており、
前記第1位置において、前記中心部を通る位置での前記第2方向における前記ノズルの幅は、前記中心部を通る位置での前記第1方向における前記ノズルの幅よりも大きい、
ことを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の吐出ヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、吐出ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンター等の液体吐出装置には、吐出ヘッドが備えられている。吐出ヘッドには、インク等の液体を液滴として吐出するノズルが設けられている。ノズルから吐出される液滴は、液滴先端に球状に形成された主滴部と、主滴部に後続する液柱部とから構成され、液柱部が主滴部から分離し、液柱部自体が分裂することで、サテライトと呼ばれる副滴部が形成される。画質向上のためには、サテライトの数は少ない方が好ましい。そこで、特許文献1に記載された技術では、ノズルの縁部にノズルの内側に向けて突出する突起を設けることにより、吐出される液滴と残留する液体とを分離しやすくして、液柱部の短縮化を図り、サテライトの発生を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-111358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ノズルの縁部に突起を設けると、ノズルに形成されるメニスカスの形状が異形となり、ノズルを円形とするよりもメニスカスの振動が不安定になるおそれがある。そのため、吐出ヘッドを連続駆動させると、前の駆動により発生したメニスカスの不安定な振動によって、次の駆動による液滴の吐出において、吐出方向のズレや液滴の割れ、吐出量の変動等が生じる可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一形態によれば、吐出ヘッドが提供される。この吐出ヘッドは、液体を吐出するためのエネルギーを生成するエネルギー生成素子と、前記エネルギー生成素子を内包するエネルギー生成室と、前記エネルギー生成室と連通し、前記エネルギー生成素子により生成されたエネルギーによって吐出方向へと液体を吐出するノズルと、を有する。そして、前記ノズル内の前記吐出方向における特定の位置を第1位置、前記ノズル内の前記第1位置よりも前記吐出方向における下流側の特定の位置を第2位置、前記吐出方向と交差する特定の方向を第1方向、前記吐出方向および前記第1方向と交差する特定の方向を第2方向、前記第1位置と前記第2位置を含む前記吐出方向の各位置において、前記ノズル内の前記第1方向と前記第2方向の中心に対応する位置を中心部としたとき、前記第2位置における前記中心部から前記ノズルの縁部までの距離のうちの最大値と最小値の差は、前記第1位置における前記中心部から前記ノズルの縁部までの距離のうちの最大値と最小値の差よりも小さくなるように、前記ノズルが設けられていることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】吐出ヘッドを備える液体吐出装置の概略構成を示す模式図である。
図2】吐出ヘッドの主要なヘッド構成材を分解視して示す説明図である。
図3】吐出ヘッドの断面図である。
図4】ノズルの形状を示す図である。
図5】ノズルの各部における断面構造を示す図である。
図6】第1ノズル部の形状を示す図である。
図7】第2実施形態におけるノズルの形状を示す図である。
図8】第3実施形態におけるノズルの形状を示す図である。
図9】第4実施形態におけるノズルの各部における断面構造を示す図である。
図10】第5実施形態におけるノズルの各部における断面構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
A.第1実施形態:
図1は、本開示の第1実施形態としての吐出ヘッド26を備える液体吐出装置100の概略構成を示す模式図である。液体吐出装置100は、液体の一例であるインクの液滴を媒体12に吐出して印刷するインクジェットプリンターである。媒体12は、印刷用紙の他、樹脂フィルムや布等の任意の材質の印刷対象を採用可能である。図1以降の各図においては、互いに直交するX方向、Y方向およびZ方向のうち、ノズル列方向をX方向とし、ノズルNzからのインクの吐出方向に沿った方向をZ方向とし、X方向とZ方向に直交する方向をY方向とする。インクの吐出方向は、鉛直方向と平行であってもよいし、それと交差する方向でもよい。吐出ヘッド26の搬送方向に沿った主走査方向はY方向であり、媒体12の送り方向である副走査方向はX方向となる。以下の説明においては、説明の便宜上、主走査方向を印刷方向と、適宜称する。
【0008】
本実施形態では、Z方向のうち、+Z方向をインクの吐出方向Zともいう。また、吐出方向Zと交差する特定の方向であるX方向のことを第1方向Xともいう。また、吐出方向Zおよび第1方向Xと交差する特定の方向であるY方向のことを第2方向Yともいう。以下において、方向の向きを特定する場合には、正の方向を「+」、負の方向を「-」として、方向表記に正負の符合を併用する。なお、本実施形態の液体吐出装置100は、吐出ヘッド26がY方向に搬送されるシリアルプリンターであるが、液体吐出装置100は、吐出ヘッド26が固定され、媒体12の全幅に亘ってノズルNzが並べられたラインプリンターでもよい。
【0009】
液体吐出装置100は、液体容器14と、媒体12を送り出す搬送機構722と、制御ユニット620と、ヘッド移動機構824と、吐出ヘッド26と、を備える。液体容器14は、吐出ヘッド26から吐出される複数種のインクを個別に貯留する。液体容器14としては、可撓性フィルムで形成された袋状の液体パックや、液体吐出装置100に着脱可能なカートリッジなどが利用可能である。
【0010】
吐出ヘッド26は液体を吐出するための複数のノズルNzを有する。ノズルNzは、X方向に沿って並んで配置されたノズル列を構成する。本実施形態では、1種類の液体を吐出するために2列のノズル列が用いられる。ノズルNzは、液体を吐出する吐出口を媒体12に対向する位置に有する。
【0011】
制御ユニット620は、1または複数のCPU(Central Processing Unit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の処理回路と半導体メモリー等の記憶回路とを含み、搬送機構722やヘッド移動機構824、吐出ヘッド26を統括制御する。搬送機構722は、制御ユニット620の制御下で動作し、媒体12をX方向に沿って搬送する。つまり、搬送機構722は、媒体12を吐出ヘッド26に対して相対的に移動させる機構である。
【0012】
ヘッド移動機構824は、媒体12の印刷範囲に亘ってX方向に掛け渡された搬送ベルト23と、吐出ヘッド26を収容して搬送ベルト23に固定するキャリッジ25とを備える。ヘッド移動機構824は、制御ユニット620の制御下で動作し、吐出ヘッド26を主走査方向に沿ってキャリッジ25ごと往復移動させる。キャリッジ25の往復移動の際、キャリッジ25は図示しないガイドレールにより案内される。なお、液体容器14は、吐出ヘッド26と共にキャリッジ25に搭載されてもよい。
【0013】
吐出ヘッド26は、ノズルNzの列を副走査方向に沿って並べたノズル列を備える。吐出ヘッド26は、液体容器14が貯留する液体の色ごとに用意され、液体容器14から供給される液体を、制御ユニット620の制御下で、複数のノズルNzから媒体12に向けて吐出する。吐出ヘッド26の往復移動の間のノズルNzからの液体吐出により、媒体12に所望の画像等の印刷がなされる。図1の破線で示された矢印は、液体容器14と吐出ヘッド26との間のインクの移動を模式的に表している。
【0014】
図2は、吐出ヘッド26の主要なヘッド構成材を分解視して示す説明図である。図3は、図2における3-3線に沿った吐出ヘッド26の断面図である。吐出ヘッド26は、エネルギー生成素子44と、エネルギー生成室Cと、ノズルNzとを備える。エネルギー生成素子44は、本実施形態では圧電素子であり、液体を吐出するためのエネルギーを生成する。エネルギー生成室Cは、エネルギー生成素子44を内包する。ノズルNzは、エネルギー生成室Cと連通し、エネルギー生成素子44により生成されたエネルギーによって吐出方向Zへと液体を吐出する。エネルギー生成素子44は、圧電素子に限らず、熱エネルギーを生成してノズルNz内の液体を膜沸騰させることで液体の吐出を行う電気熱変換素子であってもよい。
【0015】
図2および図3に示すように、第1ノズル列L1と第2ノズル列L2を有する吐出ヘッド26は、ヘッド構成材を積層した積層体である。図示する各構成部材の厚みは、実際の構成材の厚みを示しているものではない。図2においては、図示の都合上、構成材である第1流路基板32の一部の部位が省略されている。
【0016】
図3に示すように、吐出ヘッド26は、第1ノズル列L1のノズルNzに関連する構成と、第2ノズル列L2のノズルNzに関連する構成とを、中心面Oを挟んで面対称に備える。つまり、吐出ヘッド26のうち、中心面Oを挟んで+X方向側の第1部分P1と-X方向側の第2部分P2とでは、その構成が共通する。そして、第1ノズル列L1のノズルNzは第1部分P1に属し、第2ノズル列L2のノズルNzは第2部分P2に属し、中心面Oは第1部分P1と第2部分P2の境界面となる。
【0017】
吐出ヘッド26は、主要な構成部材として、吐出ヘッド26における流路形成に関与する流路形成部30と、インクの給排に関与する筐体部48とを備える。流路形成部30は、第1流路基板32と第2流路基板34とを積層して構成される。第1流路基板32と第2流路基板34の両基板は、X方向に長尺なプレート体であり、第1流路基板32における-Z方向の上面Faに、第2流路基板34が接着剤を用いて固定される。
【0018】
第2流路基板34には、その上面Fcの側に、振動部42と、複数のエネルギー生成素子44と、保護部材46と、筐体部48とが設置される。振動部42は、第1部分P1から第2部分P2に掛けて設置されるX方向に長尺で薄様状の部材である。保護部材46は、第1部分P1から第2部分P2に掛けて設置されるX方向に長尺な部材である。保護部材46は、振動部42の上面側に凹状の空間を形成して、振動部42を覆う。筐体部48は、X方向に長尺な部材である。保護部材46は、中心面Oの両側に配置されている。保護部材46は、筐体部48と第2流路基板34とによって挟持されてもよい。この他、第1流路基板32には、Z方向の下面Fbに、ノズルプレート52と、振動吸収体54とが配置される。ノズルプレート52と振動吸収体54は、共に、X方向に長尺なプレート体である。ノズルプレート52は、中心面Oを跨いで、第1部分P1から第2部分P2に掛けて設置される。振動吸収体54は、第1部分P1と第2部分P2とに個別に設置される。これら各要素は、接着剤を用いて第1流路基板32の下面Fbにそれぞれ接着される。
【0019】
ノズルプレート52は、図2に示すように、第1部分P1のノズルNzと第2部分P2のノズルNzとを列状に備え、第1部分P1のノズルNzが並んだ第1ノズル列L1と第2部分P2のノズルNzが並んだ第2ノズル列L2との間に、第2個別流路72を2列、備える。尚、第1個別流路61については、後述する。第2個別流路72は、図3に示すように、ノズルプレート52の表面に形成された凹状の溝である。第2個別流路72は、ノズルプレート52の表面に形成された凹状の溝としてではなく、第1流路基板32の表面に形成された凹状の溝として設けられてもよい。+Y方向側の列の第2個別流路72は、第1ノズル列L1におけるノズルNzの隣に形成されており、-Y方向側の第2個別流路72は、第2ノズル列L2のノズルNzの隣に形成されている。ノズルプレート52は、シリコンの単結晶基板への半導体製造技術、例えば、ドライエッチングやウェットエッチング等の加工技術の適用を経て、ノズルNzや第2個別流路72を有するよう形成される。本実施形態では、各ノズルNzは、ノズルプレート52において-Z方向側に開口する部分と、+Z方向側に開口する部分とで異なる形状に形成されている。ノズルNzの形状についての詳細は後述する。以下では、ノズルNzが+Z方向に開口する側を、ノズルNzの先端側または下流側という。また、ノズルNzが-Z方向側に開口する側を、ノズルNzの後端側または上流側という。
【0020】
振動吸収体54は、図3に示すように、ノズルプレート52と共に吐出ヘッド26の底面を形成している。振動吸収体54は、第1流路基板32の下面Fbに接着されることによって、インク流入室Raと第1共通流路60および第1個別流路61の底面を形成する。この振動吸収体54は、例えば、インク流入室Raにおける圧力変動を吸収する可撓性のフィルムと、フィルムを支える基板とによって構成されている。
【0021】
第1流路基板32にノズルプレート52と振動吸収体54とが接着されることによって、第1部分P1と第2部分P2とに、それぞれ、インク流入室Raと、第1共通流路60と、第1個別流路61と、連通路63とが形成され、第1部分P1と第2部分P2とに共通する第2共通流路65が形成される。図2に示すように、インク流入室Raは、第1流路基板32に、X方向に沿う長尺状の貫通開口として形成されている。第1個別流路61および連通路63とは、第1流路基板32に、貫通孔として形成されている。第1共通流路60は、第1流路基板32の下面Fbに、インク流入室Raから中心面Oに向かう凹部として形成されている。図3に示すように、第1流路基板32の下面Fbに振動吸収体54が接着されることによって、インク流入室Raと第1共通流路60と第1個別流路61とが形成される。インク流入室Raと第1共通流路60と第1個別流路61とは、それぞれのノズルNzへのインク供給に関与する。
【0022】
第2共通流路65は、図2に示すように、第1流路基板32の下面Fbに、X方向に沿って長尺状の凹状の溝として形成されている。図3に示すように、第1流路基板32の下面Fbに、ノズルプレート52が接着されることによって、連通路63と第2共通流路65とが形成される。ノズルプレート52は、第1ノズル列L1および第2ノズル列L2のそれぞれのノズルNzと、第2個別流路72とを備える。それぞれのノズルNzは、Z方向からの平面視において連通路63に重なる位置に配設される。第2個別流路72は、ノズル列ごとの連通路63と第2共通流路65とを区画する隔壁部69に、Z方向からの平面視において重なる位置に配設される。この第2個別流路72は、第1流路基板32の下面Fbにノズルプレート52が接着されることによって、隔壁部69を跨ぐインク流路となり、ノズルNzごとに、連通路63と第2共通流路65とを連通する。第2共通流路65は、ノズルNzごとの連通路63から、それぞれの第2個別流路72を介してインクの流入を受けることによって、連通路63からのインク排出に関与する。
【0023】
第2共通流路65は、図2に示すように、第1ノズル列L1と第2ノズル列L2におけるノズルNzの並びより長尺な凹状の溝であって、溝両端に循環口65a、65bを有する。この循環口65a、65bは、第2共通流路65の底壁、即ち第1流路基板32を貫通する貫通孔であり、インクを吐出ヘッド26内で循環させる図示していない循環機構に接続される。循環口65a、65bは、3-3線断面とは異なる位置において、筐体部48に設けられた流路を介して循環機構と接続されてもよい。インクは、連通路63に流れ込んだ後に、第2個別流路72を通過して第2共通流路65に入り込み、第2共通流路65の循環口65a、65bを経て吐出ヘッド26から排出される。排出されたインクは、循環機構によってインク導入口49に再流入する。
【0024】
第1流路基板32の上面Faに接着される第2流路基板34は、第1部分P1と第2部分P2のそれぞれに、エネルギー生成室Cを形成する。このエネルギー生成室Cは、第1ノズル列L1および第2ノズル列L2のノズルNzごとに形成されたY方向に沿う貫通孔であり、+Z方向の貫通孔下端側で、第1流路基板32の第1個別流路61および連通路63に連通する。尚、本明細書では、エネルギー生成室Cと連通路63とを特に区別せずに説明する場合は、エネルギー生成室Cと連通路63とをまとめてエネルギー生成室Cと呼ぶこともある。エネルギー生成室Cのことを、圧力室ともいう。エネルギー生成室Cにおいて、第2流路基板34と保護部材46とに挟持された振動部42により、-Z方向における貫通孔の上端側が閉鎖される。エネルギー生成室Cは、第2流路基板34に設けられた貫通孔と振動部42とによって形成するのではなく、第2流路基板34と振動部42とを一体的に形成することによって形成してもよい。上端側が閉鎖されたエネルギー生成室Cは、第1ノズル列L1および第2ノズル列L2のノズルNzごとのキャビティとして機能する。上記した第1流路基板32と第2流路基板34は、ノズルプレート52と同様、シリコンの単結晶基板への既述した半導体製造技術の適用を経て、形成される。
【0025】
第2流路基板34と保護部材46との間に挟持された振動部42は、弾性的に振動可能な板状部材である。振動部42の上側には、エネルギー生成室Cごとに、エネルギー生成素子44が設けられている。つまり、1つのノズルNzに対して、1つのエネルギー生成素子44が設けられている。本実施形態におけるエネルギー生成素子44は、制御ユニット620からの駆動信号を受けて変形する圧電素子である。エネルギー生成素子44の振動により、エネルギー生成室Cにおける供給済みのインクに圧力変化が起きる。この圧力変化は、連通路63を経てノズルNzに及ぶ。
【0026】
保護部材46は、それぞれのエネルギー生成素子44を保護するための板状部材であり、第2流路基板34との間に振動部42を介在した状態で、第1流路基板32に積層される。保護部材46は、第1流路基板32や第2流路基板34と同様、シリコンの単結晶基板への既述した半導体製造技術の適用を経て形成できるほか、他の材料で形成してもよい。
【0027】
筐体部48は、吐出ヘッド26の上面側を覆う部材であり、ヘッド全体の保護と、ノズルNzごとのエネルギー生成室Cに供給されるインクの貯留および液体容器14からのインク補給に関与する。より具体的には、筐体部48は、第1流路基板32のインク流入室RaにZ方向に重なる上流側インク流入室Rbを備え、この上流側インク流入室Rbと第1流路基板32のインク流入室Raとでインク貯留室Rを形成する。インク貯留室Rのことをリザーバーともいう。上流側インク流入室Rbへのインク供給は、上流側インク流入室Rbの天井壁に形成されたインク導入口49からなされる。筐体部48は、適宜な樹脂材料の射出成形により形成される。
【0028】
図4は、第1実施形態におけるノズルNzの形状を示す図である。図5は、ノズルNzの各部における断面構造を示す図である。図4には、ノズルNzを-Z方向から+Z方向に見た場合の形状を示している。図5には、図4におけるA-A断面、B-B断面およびC-C断面の形状を模式的に示している。
【0029】
ノズルNzは、第1ノズル部N1と第2ノズル部N2とを備えている。第1ノズル部N1は、ノズルNzの後端側に位置している。第2ノズル部N2は、ノズルNzの先端側に位置している。つまり、第2ノズル部N2は、第1ノズル部N1よりも吐出方向Zにおいて下流側に配置され、第1ノズル部N1は、第2ノズル部N2よりも吐出方向Zにおいて上流側に配置されている。本実施形態において、第2ノズル部N2の最大幅は、第1ノズル部N1の最大幅よりも小さい。また、第1ノズル部N1の最大幅は、第2ノズル部N2の最大幅の1倍よりも大きく、2倍よりも小さい。
【0030】
ここで、図5に示すように、ノズルNz内の吐出方向Zにおける特定の位置を第1位置S1とし、ノズルNz内の第1位置よりも吐出方向Zにおける下流側の特定の位置を第2位置S2とする。第1位置S1は、第1ノズル部N1が設けられている位置に対応する。第2位置S2は、第2ノズル部N2が設けられている位置に対応する。また、図4および図5に示すように、第1位置S1と第2位置S2を含む吐出方向Zの各位置において、ノズルNz内の第1方向Xと第2方向Yの中心に対応する位置を中心部CPとする。言い換えると、中心部CPからノズルNzの第1方向Xの一端までの距離と、中心部CPからノズルNzの第1方向Xの他端までの距離は等しく、且つ、中心部CPからノズルNzの第2方向までの距離と、中心部CPからノズルNzの第2方向Yの他端までの距離は等しくなる。
【0031】
本実施形態では、第1ノズル部N1の流路断面の形状と第2ノズル部N2の流路断面の形状とが異なる。本実施形態では、下流側に位置する第2ノズル部N2の流路断面形状は、円形状である。従って、第2ノズル部N2が設けられている第2位置S2において、中心部CPからノズルNzの縁部までの距離のうちの最大値R0と最小値R0は略同じ値であり、これらの差は略0である。これに対して、上流側に位置する第1ノズル部N1の流路断面形状は、円形状とは異なる異形であり、8の字の外周に沿った形状である。従って、第1ノズル部N1が設けられている第1位置S1における中心部CPからノズルNzの縁部までの距離のうちの最大値R2と最小値R1の差は0よりも大きい。つまり、本実施形態では、第2位置S2における中心部CPからノズルNzの縁部までの距離のうちの最大値R0と最小値R0の差は、第1位置S1における中心部CPからノズルNzの縁部までの距離のうちの最大値R2と最小値R1の差よりも小さくなるように、吐出ヘッド26にノズルNzが設けられている。
【0032】
図6は、上流側に位置する第1ノズル部N1の形状を示す図である。本実施形態では、第1ノズル部N1が設けられた第1位置S1において、中心部CPを通る位置での第1方向XにおけるノズルNzの幅W1は、中心部CPよりも第2方向Yにおける一方の縁B1側の位置での第1方向Xにおける最大幅W2maxよりも小さい。また、第1位置S1において、中心部CPを通る位置での第1方向XにおけるノズルNzの幅W1は、中心部CPよりも第2方向Yにおける他方の縁B2側の位置での第1方向Xにおける最大幅W3maxよりも小さい。つまり、本実施形態における第1ノズル部N1の流路断面形状は、X方向においてノズルNzの縁部の対向する2箇所を、中心部CPに向けて突出させた形状であるともいえる。
【0033】
更に、本実施形態では、第1ノズル部N1が設けられた第1位置S1において、中心部CPを通る位置から第2方向Yにおける一方の縁B1側に向かうにしたがって、第1方向における幅W2は漸次増加した後に漸次減少している。また、第1ノズル部N1が設けられた第1位置S1において、中心部CPを通る位置から第2方向Yにおける他方の縁B2側に向かうにしたがって、第1方向XにおけるノズルNzの幅W3は漸次増加した後に漸次減少している。より具体的には、第1ノズル部N1の流路断面は、中心部CPから第2方向Yの両端に向けて、それぞれ半円形状となる部分を有している。また、本実施形態における第1ノズル部N1の流路断面は、2つの円の一部をそれぞれ重ねることによって構成される形状の外周に沿った形状であるともいえる。
【0034】
本実施形態では、更に、図4および図5に示すように、第1ノズル部N1が設けられた第1位置S1における中心部CPと、第2ノズル部N2が設けられた第2位置S2における中心部CPとは一致している。つまり、第1ノズル部N1の中心の位置と第2ノズル部N2の中心の位置とが、ノズルNzを吐出方向Zから見たときに一致している。
【0035】
以上で説明した本実施形態の吐出ヘッド26によれば、ノズルNzの流路断面形状が、先端側と後端側とで異なる形状となっており、本実施形態では、先端側が円形形状となっており、後端側が円形とは異なる異形形状となっている。そのため、後端側の異形形状によってノズルNz内における液体の残留振動が抑制されると共に、先端側の円形形状によってメニスカスが多様な方向へ振動することを抑制できる。従って、吐出ヘッド26を短い周期で連続的に駆動したり、液滴のサイズを変更するためにメニスカスを大きく揺らしたりしても、液滴の吐出方向のズレや液滴の割れ、吐出量の変動等が生じる可能性を低減でき、液体の吐出安定性を向上させることができる。また、本実施形態では、ノズルNzの後端側が異形形状であるため、液体の吐出時において、ノズルNzから吐出される液滴とノズルNzに残留する液体とが分離しやすくなる。そのため、液体吐出時におけるサテライトの発生を抑制することができ、印刷画質を向上させることができる。
【0036】
また、本実施形態では、ノズルNzの後端側に位置する第1ノズル部N1において、中心部CPを通る位置での第1方向XにおけるノズルNzの幅が、第2方向Yの両側におけるノズルNzの最大幅W2max,W3maxよりも小さい。そして、さらに、第1ノズル部N1は、中心部CPから第2方向Yの両側に向けて、ノズルNzの幅が漸次増加した後に漸次減少する形状である。そのため、ノズルNzから吐出される液滴とノズルNzに残留する液体とを容易に分離させることができ、サテライトの発生を抑制できる。
【0037】
また、本実施形態では、第2ノズル部N2が位置する第2位置S2において、ノズルNzの中心部CPから縁部までの距離のうちの最大値R0と最小値R0の差は0である。つまり、第2ノズル部N2の流路断面形状は、真円形状であるため、メニスカスを安定して形成することができる。
【0038】
また、本実施形態では、ノズルNzの後端側に位置する第1ノズル部N1の中心と、先端側に位置する第2ノズル部N2の中心とが一致している。そのため、ノズルNz内において液体が円滑に流れるので、液滴を良好に吐出させることができる。
【0039】
なお、本実施形態において、第1ノズル部N1の流路抵抗は、第2ノズル部N2の流路抵抗以上であることが好ましい。第1ノズル部N1の流路抵抗を大きくすれば、ノズルNz内の液体の残留振動を効果的に抑制することができる。第1ノズル部N1の流路抵抗を第2ノズル部N2の流路抵抗よりも大きくするには、例えば、第2位置S2に配置される第2ノズル部N2の縁部の吐出方向Zに沿った長さを、第1位置S1に配置される第1ノズル部N1の縁部の吐出方向Zに沿った長さよりも小さくする。あるいは、第2位置S2に配置される第2ノズル部N2の縁部の周方向に沿った長さを、第1位置S1に配置される第1ノズル部N1の縁部の周方向に沿った長さよりも小さくする。
【0040】
また、本実施形態において、第1ノズル部N1のイナータンスは、第2ノズル部N2のイナータンス以下であることが好ましい。第1ノズル部N1のイナータンスを小さくすれば、第1ノズル部N1を異形形状とすることによる吐出効率の低下を抑制できる。第1ノズル部N1のイナータンスを第2ノズル部N2のイナータンスよりも小さくするには、例えば、第2位置S2に配置される第2ノズル部N2の流路断面積を、第1位置S1に配置される第1ノズル部N1の流路断面積よりも小さくする。また、第2位置S2に配置される第2ノズル部N2の縁部の吐出方向Zに沿った長さを、第1位置S1に配置される第1ノズル部N1の縁部の吐出方向Zに沿った長さよりも大きくすることでも、第1ノズル部N1のイナータンスを第2ノズル部N2のイナータンスよりも小さくできる。
【0041】
B.第2実施形態:
図7は、第2実施形態におけるノズルNzの形状を示す図である。図4に示した例では、第2ノズル部N2の最大幅は、第1ノズル部N1の最小幅よりも大きい。これに対して、第2実施形態では、図7に示すように、第2ノズル部N2の最大幅は、第1ノズル部N1の最小幅と略同じである。また、他の実施形態では、第2ノズル部N2の最大幅は、第1ノズル部N1の最小幅よりも小さくてもよい。
【0042】
C.第3実施形態:
図8は、第3実施形態におけるノズルNzの形状を示す図である。図7に示した例では、第2ノズル部N2の最大幅は、第1ノズル部N1の最小幅と略同じである。これに対して、第3実施形態では、図8に示すように、第2ノズル部N2の最大幅は、第1ノズル部N1の最大幅と略同じである。また、他の実施形態では、第2ノズル部N2の最大幅は、第1ノズル部N1の最大幅よりも大きくてもよい。
【0043】
D.第4実施形態:
図9は、第4実施形態におけるノズルNzの各部における断面構造を示す図である。図9に示した各断面は、図5に示した各位置における断面を示している。第4実施形態では、吐出方向Zにおける位置が第1位置S1から第2位置S2に向かうにしたがって、少なくとも中心部CPを通る位置での第1方向XにおけるノズルNzの幅は漸次的に変化している。つまり、第4実施形態では、第1ノズル部N1と第2ノズル部N2とが、それらの境界において段差が生じないように繋がっている。本実施形態では、第1ノズル部N1の縁部を傾斜面とすることにより、第1ノズル部N1と第2ノズル部N2との間の段差を解消している。このような構成であれば、第1ノズル部N1と第2ノズル部N2との間に気泡が溜まることを抑制することができるので、ノズルNzから気泡を排出しやすくできる。なお、傾斜面は必ずしも-Z方向の端部まで形成されていなくともよい。つまり、-Z方向の端部は、第1方向XにおけるノズルNzの幅が変化しないように設けられていてもよい。
【0044】
E.第5実施形態:
図10は、第5実施形態におけるノズルNzの各部における断面構造を示す図である。図10に示した各断面は、図5に示した各位置における断面を示している。第5実施形態では、第4実施形態と同様に、第1ノズル部N1と第2ノズル部N2とが、それらの境界において段差が生じないように繋がっている。本実施形態では、第2ノズル部N2の縁部を傾斜面とすることにより、第1ノズル部N1と第2ノズル部N2との間の段差を解消している。このような構成によっても、第1ノズル部N1と第2ノズル部N2との間に気泡が溜まることを抑制することができるので、ノズルNzから気泡を排出しやすくできる。なお、傾斜面は必ずしも+Z方向の端部まで形成されていなくともよい。つまり、+Z方向の端部は、第1方向XにおけるノズルNzの幅が変化しないように設けられてもよい。
【0045】
F.他の実施形態:
(F-1)上述した各実施形態におけるノズルNzの形状はいずれも例示である。ノズルNzの第2位置S2における中心部CPからノズルNzの縁部までの距離のうちの最大値R0と最小値R0の差が、第1位置S1における中心部CPからノズルNzの縁部までの距離のうちの最大値R2と最小値R1の差よりも小さくなるように、吐出ヘッド26にノズルNzが設けられていれば、ノズルNzの形状は、上記各実施形態に限られない。例えば、第1ノズル部N1および第2ノズル部N2の形状は、楕円であってもよい。また、第1ノズル部N1の形状は、第2ノズル部N2の形状よりも扁平率の大きい楕円であってもよい。その他、例えば、第1ノズル部N1の形状は、その縁部の1箇所あるいは3箇所以上が内側に向けて突出していてもよい。
【0046】
(F-2)上記実施形態では、第1方向はノズル列方向であるX方向と同じ方向であるものとし、第2方向は吐出ヘッド26の主走査方向であるY方向と同じ方向であるものとしている。しかし、第1方向と第2方向は、これらの方向に限られない。第1方向は、吐出方向と交差する特定の方向であればよく、また、第2方向は、吐出方向および第1方向と交差する特定の方向であればよい。
【0047】
(F-3)上記実施形態における吐出ヘッド26の構造は例示であり、上記実施形態の構造に限られない。例えば、上記実施形態では、吐出ヘッド26にノズル列が2列備えられているが、1列でもよいし、3列以上であってもよい。また、上記実施形態における吐出ヘッド26は、第2個別流路72や第2共通流路65、循環機構など、インクの循環に関与する要素を備えない構成であってもよい。
【0048】
(F-4)上記実施形態では、第1ノズル部N1における中心部CPと第2ノズル部N2における中心部CPとが一致している。しかし、これらの中心部CPは、ずれていても構わない。
【0049】
G.他の形態:
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、以下に記載する各形態中の技術的特徴に対応する実施形態の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0050】
(1)本開示の第1の形態によれば、吐出ヘッドが提供される。この吐出ヘッドは、液体を吐出するためのエネルギーを生成するエネルギー生成素子と、前記エネルギー生成素子を内包するエネルギー生成室と、前記エネルギー生成室と連通し、前記エネルギー生成素子により生成されたエネルギーによって吐出方向へと液体を吐出するノズルと、を有する吐出ヘッドであって、前記ノズル内の前記吐出方向における特定の位置を第1位置、前記ノズル内の前記第1位置よりも前記吐出方向における下流側の特定の位置を第2位置、前記吐出方向と交差する特定の方向を第1方向、前記吐出方向および前記第1方向と交差する特定の方向を第2方向、前記第1位置と前記第2位置を含む前記吐出方向の各位置において、前記ノズル内の前記第1方向と前記第2方向の中心に対応する位置を中心部としたとき、前記第2位置における前記中心部から前記ノズルの縁部までの距離のうちの最大値と最小値の差は、前記第1位置における前記中心部から前記ノズルの縁部までの距離のうちの最大値と最小値の差よりも小さくなるように、前記ノズルが設けられていることを特徴とする。このような形態によれば、ノズルにメニスカスを安定して形成することができ、また、液体吐出時におけるサテライトの発生を抑制することができる。
【0051】
(2)上記形態の吐出ヘッドにおいて、前記第1位置において、前記中心部を通る位置での前記第1方向における前記ノズルの幅は、前記中心部よりも前記第2方向における一方の縁側の位置での前記第1方向における最大幅よりも小さく、前記第1位置において、前記中心部を通る位置での前記第1方向における前記ノズルの幅は、前記中心部よりも前記第2方向における他方の縁側の位置での前記第1方向における最大幅よりも小さくなるように、前記ノズルが設けられてもよい。このような形態によれば、液体吐出時におけるサテライトの発生を抑制することができる。
【0052】
(3)上記形態の吐出ヘッドにおいて、前記第1位置において、前記中心部を通る位置から前記第2方向における一方の縁側に向かうにしたがって、前記第1方向における前記ノズルの幅は漸次増加した後に漸次減少し、前記第1位置において、前記中心部を通る位置から前記第2方向における他方の縁側に向かうにしたがって、前記第1方向における前記ノズルの幅は漸次増加した後に漸次減少するように、前記ノズルが設けられてもよい。このような形態によれば、液体吐出時におけるサテライトの発生を抑制することができる。
【0053】
(4)上記形態の吐出ヘッドにおいて、前記第2位置における前記中心部から前記ノズルの縁部までの距離のうちの最大値と最小値の差は、0であってもよい。このような形態によれば、ノズルにメニスカスを安定して形成することができる。
【0054】
(5)上記形態の吐出ヘッドにおいて、前記第1位置における前記中心部と、前記第2位置における前記中心部と、は一致してもよい。このような形態によれば、液体を良好に吐出することができる。
【0055】
(6)上記形態の吐出ヘッドにおいて、前記吐出方向における位置が前記第1位置から前記第2位置に向かうにしたがって、前記中心部を通る位置での前記第1方向における前記ノズルの幅は漸次的に変化してもよい。このような形態によれば、ノズルの気排性を向上できる。
【0056】
(7)上記形態の吐出ヘッドにおいて、前記第2位置における前記ノズルの縁部の前記吐出方向に沿った長さは、前記第1位置における前記ノズルの縁部の前記吐出方向に沿った長さよりも小さくなるように、前記ノズルが設けられていてもよい。このような形態によれば、ノズルの第1位置における流路抵抗が大きくなるので、ノズル内の液体に振動が残留することを抑制できる。
【0057】
(8)上記形態の吐出ヘッドにおいて、前記第2位置における前記ノズルの縁部の周方向に沿った長さは、前記第1位置における前記ノズルの縁部の前記周方向に沿った長さよりも小さくなるように、前記ノズルが設けられていてもよい。このような形態によっても、ノズルの第1位置における流路抵抗が大きくなるので、ノズル内の液体に振動が残留することを抑制できる。
【0058】
(9)上記形態の吐出ヘッドにおいて、前記第2位置における前記ノズルの流路断面積は、前記第1位置における前記ノズルの流路断面積よりも小さくなるように、前記ノズルが設けられてもよい。このような形態によれば、ノズルの第1位置におけるイナータンスを小さくできるので、液体の吐出効率が低下することを抑制できる。
【0059】
本開示は、上述した吐出ヘッドとしての形態に限らず、吐出ヘッドを備える液体吐出装置や液体吐出システムなどの種々の形態として実現可能である。
【符号の説明】
【0060】
C…エネルギー生成室、CP…中心部、Fa…上面、Fb…下面、Fc…上面、L1…第1ノズル列、L2…第2ノズル列、N1…第1ノズル部、N2…第2ノズル部、Nz…ノズル、O…中心面、P1…第1部分、P2…第2部分、R…インク貯留室、Ra…インク流入室、Rb…上流側インク流入室、S1…第1位置、S2…第2位置、12…媒体、14…液体容器、23…搬送ベルト、25…キャリッジ、26…吐出ヘッド、30…流路形成部、32…第1流路基板、34…第2流路基板、42…振動部、44…エネルギー生成素子、46…保護部材、48…筐体部、49…インク導入口、52…ノズルプレート、54…振動吸収体、60…第1共通流路、61…第1個別流路、63…連通路、65…第2共通流路、65a,65b…循環口、69…隔壁部、72…第2個別流路、100…液体吐出装置、620…制御ユニット、722…搬送機構、824…ヘッド移動機構
図1
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図10