(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】車両の故障診断装置
(51)【国際特許分類】
G01M 17/007 20060101AFI20231129BHJP
【FI】
G01M17/007 J
(21)【出願番号】P 2019106425
(22)【出願日】2019-06-06
【審査請求日】2022-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒川 芳正
(72)【発明者】
【氏名】山下 哲弘
【審査官】岩永 寛道
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0050704(US,A1)
【文献】国際公開第2019/082733(WO,A1)
【文献】特開平09-119889(JP,A)
【文献】特開2006-226805(JP,A)
【文献】特開2001-264132(JP,A)
【文献】特開平05-116601(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 17/007
B60W 50/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された
複数の車載デバイスを制御するための演算を行う演算装置を備えた、車両の故障診断装置であって、
前記演算装置に前記車両の外部環境を含む車両情報を入力する複数のセンサと、
前記演算装置に設けられ、前記各センサにより入力された情報に基づいて前記車両の目標運動を設定する目標運動設定部と、
前記演算装置に設けられ、前記目標運動設定部により設定された目標運動に基づいて前記各車載デバイスに制御信号をそれぞれ出力するデバイス制御部と、
前記演算装置の通信経路における前記デバイス制御部と前記各車載デバイスとの間に設けられ、前記各車載デバイスの故障を診断するデバイス故障診断部
と、を備え、
前記デバイス故障診断部は、前記車両の機能毎に、各機能と関連する前記車載デバイスが特定されたデバイス診断テーブルを有するとともに、前記各車載デバイスの出力と前記デバイス診断テーブルとに基づいて前記各車載デバイスの故障を診断
し、
前記目標運動設定部は、
前記各センサの出力に基づいて前記車両が走行すべき走行経路を決定する経路決定部と、
前記経路決定部により算出された走行経路を追従するための前記車両の運動を決定する車両運動決定部とを有し、
さらに前記デバイス故障診断部は、前記経路決定部により決定された前記走行経路の路面状態と、前記車両運動決定部により決定された前記車両の運動とを更に考慮して、前記各車載デバイスの故障を診断することを特徴とする車両の故障診断装置。
【請求項2】
請求項
1に記載の車両の故障診断装置において、
前記演算装置の通信経路における前記各センサと前記目標運動設定部との間に設けられ、前記各センサの故障を診断するセンサ故障診断部を更に備え、
前記センサ故障診断部は、前記車両の機能毎に、各機能と関連する前記センサが特定されたセンサ診断テーブルを有するとともに、前記センサ診断テーブルに基づいて前記各センサの故障を診断することを特徴とする車両の故障診断装置。
【請求項3】
請求項
2に記載の車両の故障診断装置において、
前記デバイス故障診断部の診断結果と前記センサ故障診断部の診断結果とを、前記車両の機能毎に関連させて記憶する記憶部を更に備えることを特徴とする車両の故障診断装置。
【請求項4】
請求項
3に記載の車両の故障診断装置において、
前記目標運動設定部は、
前記各センサの出力に基づいて前記車両が走行すべき走行経路を決定する経路決定部と、
前記経路決定部により算出された走行経路を追従するための前記車両の運動を決定する車両運動決定部とを有し、
前記記憶部は、前記デバイス故障診断部の診断結果及び前記センサ故障診断部の診断結果に対して、前記経路決定部により決定された前記走行経路
の路面状態と、前記車両運動決定部により決定された前記車両の運動とを更に関連付けて記憶することを特徴とする車両の故障診断装置。
【請求項5】
請求項1に記載の車両の故障診断装置において、
前記デバイス診断テーブルは、前記機能と関連する前記各車載デバイスのうち、正常な車載デバイスと異常な車載デバイスとの組み合わせが特定されたデバイス故障コードを、該組み合わせ毎に有しており、
前記デバイス故障診断部は、診断結果から前記デバイス故障コードを特定することを特徴とする車両の故障診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示された技術は、車両の故障診断装置に関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
最近では車両の電子化が進んでおり、エンジン、自動変速機、ブレーキ等に制御信号を出力することで各車載デバイスの制御を行っている。このような電子化が進んだ車両においては、制御信号の通信網の故障や車載デバイス自体の故障についても電気信号によって行われる(例えば、特許文献1)。
【0003】
例えば、特許文献1には、各種ECUの通信線の全てに接続されたマネージャーECUに、重要データが各種ECUに受信されるまでの伝送経路を既述したルートテーブルを記憶させておき、該ルートテーブルを用いて、各通信線を流れるデータから前記伝送経路の異常を検出するように構成された車両用通信システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、現在の車両の故障診断は、センサ毎及び車載デバイス毎に故障を示す故障コードを付しておき、ディーラー等の車両の故障を認定する作業者が、各故障コードをそれぞれ読み込むことで車両の故障箇所を把握する。しかしながら、車両の故障とみられる事象に対して複数のセンサや複数の車載デバイスが関連する場合には、当該事象の最終的な要因を明確に把握しにくいという問題がある。
【0006】
例えば、ホイールトルクが生じないという事象に対しては、エンジン、トランスミッション、ブレーキ装置等が影響するが、個別の故障コードのみでは、どの車載デバイスが故障しているのか把握し難く、事象の要因を把握しにくい。
【0007】
ここに開示された技術は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするとこは、車両に故障とみられる事象が生じたときに、当該事象の要因を把握しやすくすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、ここに開示された技術では、車両に搭載された車載デバイスを制御するための演算を行う演算装置を備えた、車両の故障診断装置を対象として、前記演算装置に前記車両の外部環境を含む車両情報を入力する複数のセンサと、前記演算装置に設けられ、前記各センサにより入力された情報に基づいて前記車両の目標運動を設定する目標運動設定部と、前記演算装置に設けられ、前記目標運動設定部により設定された目標運動に基づいて前記各車載デバイスに制御信号をそれぞれ出力するデバイス制御部と、前記演算装置の通信経路における前記デバイス制御部と前記各車載デバイスとの間に設けられ、前記各車載デバイスの故障を診断するデバイス故障診断部を備え、前記デバイス故障診断部は、前記車両の機能毎に、各機能と関連する前記車載デバイスが特定されたデバイス診断テーブルを有するとともに、前記各車載デバイスの出力と前記デバイス診断テーブルとに基づいて前記各車載デバイスの故障を診断する、という構成とした。
【0009】
この構成によると、デバイス故障診断部は、演算装置の通信経路におけるデバイス制御部と各車載デバイスとの間に設けられるため、各車載デバイスを制御する各デバイス制御部からの出力を受ける。このため、デバイス故障診断部は、各車載デバイスの関連性まで考慮して、各車載デバイスの故障を診断することができる。そして、デバイス故障診断部は、車両の機能毎に、各機能と関連する車載デバイスが特定されたデバイス診断テーブルを有するため、車両に故障とみられる事象が生じたときに、該事象と関連する各車載デバイスの状態を把握することができる。したがって、車両の故障とみられる事象に対して、当該事象の要因を把握しやすくすることができる。
【0010】
前記車両の故障診断装置において、前記目標運動設定部は、前記各センサの出力に基づいて前記車両が走行すべき走行経路を決定する経路決定部と、前記経路決定部により算出された走行経路を追従するための前記車両の運動を決定する車両運動決定部とを有し、前記デバイス故障診断部は、前記経路決定部により決定された前記走行経路と、前記車両運動決定部により決定された前記車両の運動とを更に考慮して、前記各車載デバイスの故障を診断する、という構成でもよい。
【0011】
例えば、「エンジンが回転しているが前進しない」という事象に対して、走行経路の路面状態(例えば、路面が凍結している)や該路面状での車両の運動が考慮されることで、前記事象が生じていたとしても、デバイス故障診断部は、車載デバイスの故障でなく、路面状態が問題であると判断できる。これにより、車両の故障とみられる事象に対して、当該事象の要因をより把握しやすくすることができる。
【0012】
前記車両の故障診断装置において、前記演算装置の通信経路における前記各センサと前記目標運動設定部との間に設けられ、前記各センサの故障を診断するセンサ故障診断部を更に備え、前記センサ故障診断部は、前記車両の機能毎に、各機能と関連する前記センサが特定されたセンサ診断テーブルを有するとともに、前記センサ診断テーブルに基づいて前記センサの故障を診断する、という構成でもよい。
【0013】
この構成によると、車両に故障とみられる事象が生じたときに、故障しているのが、車載デバイスでなくセンサである場合でも、該事象の要因を特定しやすくなる。これにより、車両の故障とみられる事象に対して、当該事象の要因を把握しやすくすることができる。
【0014】
センサ故障診断部を備えた車両の故障診断装置において、前記デバイス故障診断部の診断結果と前記センサ故障診断部の診断結果とを、前記車両の機能毎に関連させて記憶する記憶部を更に備える、という構成でもよい。
【0015】
この構成によると、車両の機能と関連する車載デバイスとセンサとの組合せを把握した上で、車両の故障を診断することができる。これにより、車両の故障とみられる事象に対して、当該事象の要因を把握しやすくすることができる。
【0016】
記憶部を備えた車両の故障診断装置において、前記目標運動設定部は、前記各センサの出力に基づいて前記車両が走行すべき走行経路を決定する経路決定部と、前記経路決定部により算出された走行経路を追従するための前記車両の運動を決定する車両運動決定部とを有し、前記記憶部は、前記デバイス故障診断部の診断結果及び前記センサ故障診断部の診断結果に対して、前記経路決定部により決定された前記走行経路と、前記車両運動決定部により決定された前記車両の運動とを更に関連付けて記憶する、という構成でもよい。
【0017】
この構成によると、車両の故障診断において、車両の走行経路及び目標運動がさらに考慮される。これにより、例えば、「エンジンが回転しているが前進しない」という事象に対して、走行経路の路面状態(例えば、路面が凍結している)や該路面状での車両の運動が考慮されることで、車載デバイス及びセンサの故障でなく、路面状態が問題であることを把握することができる。これにより、車両の故障とみられる事象に対して、当該事象の要因をより把握しやすくすることができる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、ここに開示された技術によると、車両に故障とみられる事象が生じたときに、当該事象の要因を把握しやすくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】例示的な実施形態に係る故障診断装置を含む演算装置を示す概略図である。
【
図2】デバイス故障診断部に記憶されているデバイス診断テーブルの一例を示す図である。
【
図3】センサ故障診断部に記憶されているセンサ診断テーブルの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、例示的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0021】
図1は、車両に搭載される演算装置100の構成を概略的に示す。この演算装置100は、前記車両のアシスト運転及び自動運転を可能にするために、前記車両が走行すべき経路を算出するとともに、該経路を追従するための前記車両の運動を決定する機能を有する。演算装置100は、1つ又は複数のチップで構成されたマイクロプロセッサであって、CPUやメモリ等を有している。尚、
図1においては、本実施形態に係る機能(後述する経路生成機能)を発揮するための構成を示しており、演算装置100が有する全ての機能を示しているわけではない。
【0022】
図1に示すように、演算装置100は、車両の外部環境を含む車両情報を入力する複数のセンサ等からの入力された情報に基づいて、車両の目標運動を決定して、デバイスの作動制御を行う。演算装置100に情報を出力するセンサ等は、前記車両のボディ等に設けられかつ車外環境を撮影する複数のカメラ70と、車両のボディ等に設けられかつ車外の物標等を検知する複数のレーダ71と、全地球測位システム(Global Positioning System:GPS)を利用して、車両の位置(車両位置情報)を検出する位置センサ72と、車速センサ、加速度センサ、ヨーレートセンサ等の車両の挙動を検出するセンサ類の出力から構成され車両の状態を取得する車両状態センサ73と、車内カメラ等により構成され、車両の乗員の状態を取得する乗員状態センサ74と、ヘッドライドやエアコンを作動させるためのスイッチ類75、自車両の周囲に位置する他車両からの通信情報やナビゲーションシステムからの交通情報を受信して演算装置100に入力する車外通信部76を含む。
【0023】
各カメラ70は、車両の周囲を水平方向に360°撮影できるようにそれぞれ配置されている。各カメラ70は、車外環境を示す光学画像を撮像して画像データを生成する。各カメラ70は、生成した画像データを演算装置100に出力する。
【0024】
各カメラ70が取得した画像データは、演算装置100以外にも、HMI(Human Machine Interface)ユニット(図示省略)に入力される。このHMIユニットは、取得した画像データに基づく情報を車内のディスプレイ装置等に表示する。
【0025】
各レーダ71は、カメラ70と同様に、検出範囲が車両の周囲を水平方向に360°広がるようにそれぞれ配置されている。レーダ71の種類は特に限定されず、例えば、ミリ波レーダや赤外線レーダを採用することができる。
【0026】
演算装置100は、アシスト運転時や自動運転時には、各センサ70~76から入力された情報に基づいて、車両の走行経路を設定して、車両が該走行経路を追従するように、車両の目標運動を設定する目標運動設定部101を有する。目標運動設定部101は、車両の目標運動を設定するために、カメラ70等からの出力を基にして車外環境を認定する車外環境認定部111と、車外環境認定部111が認定した車外環境に応じて、車両1が走行可能な1つ又は複数の候補経路を算出する候補経路生成部112と、車両状態センサ73からの出力を基にして車両の挙動を推定する車両挙動推定部113と、乗員状態センサ74からの出力を基にして、車両の乗員の挙動を推定する乗員挙動推定部114と、車両1が走行すべき経路を決定する経路決定部115と、経路決定部115が設定した経路を追従するための車両の目標運動を決定する車両運動決定部116とを有する。
【0027】
演算装置100は、車両運動決定部116が決定した目標運動を達成するための前記車載デバイスの制御量(例えば、エンジン20における燃料噴射量やブレーキ40におけるアクチュエータの作動量)を算出する、パワートレイン制御部(以下、PT制御部という)117、ブレーキ制御部118、及び操舵制御部119を有する。また、演算装置100は、ボディ関係のデバイス(適宜、ボディ系デバイス10という)を制御するボディ機器制御部140を有する。
【0028】
また、演算装置100は、セーフティ機能として、所定のルールにより車外の対象物を認定して、該対象物を避けるような走行経路を生成するルールベース経路生成部120と、車両1を路肩等の安全領域に誘導するための走行経路を生成するバックアップ部130とを有する。
【0029】
また、本実施形態では、演算装置100は、車両の故障診断を行う故障診断機能を有する。具体的には、演算装置100は、該演算装置100の通信経路におけるデバイス制御部117~119,140と各車載デバイスとの間に設けられ、各車載デバイスの故障を診断するデバイス故障診断部150と、該演算装置100の通信経路における各センサ70~76と車外環境認定部111等の目標運動設定部との間に設けられ、各センサ70~76の故障を診断するセンサ故障診断部160と、デバイス故障診断部150の診断結果及びセンサ故障診断部160の診断結果を、車両の機能毎に関連付けて記憶する記憶部170とを備える。
【0030】
〈車外環境認定部〉
車外環境認定部111は、車両に搭載されたカメラ70やレーダ71等の出力を受け、車外環境を認定する。認定する車外環境は、少なくとも道路および障害物を含む。ここでは、車外環境認定部111は、カメラ70やレーダ71のデータを基にして、車両の周囲の3次元情報と車外環境モデルとを対照することにより、道路および障害物を含む車両環境を推定するものとする。車外環境モデルは、例えば深層学習によって生成された学習済みモデルであって、車両周囲の3次元情報に対して、道路や障害物等を認識することができる。
【0031】
例えば、車外環境認定部111は、カメラ70が撮像した画像から、画像処理によって、フリースペースすなわち物体が存在しない領域を特定する。ここでの画像処理には、例えば深層学習によって生成された学習済みモデルが利用される。そしてフリースペースを表す2次元のマップを生成する。また、車外環境認定部111は、レーダ71の出力から、車両1の周辺に存在する物標の情報を取得する。この情報は、物標の位置や速度等を含む測位情報である。そして、車外環境認定部111は、生成された2次元のマップと物標の測位情報とを結合させて、車両の周囲を表す3次元マップを生成する。ここでは、カメラ70の設置位置および撮像方向の情報、レーダ71の設置位置および送信方向の情報が用いられる。車外環境認定部111は、生成した3次元マップと車外環境モデルとを対比することによって、道路及び障害物を含む車両環境を推定する。尚、深層学習では、多層ニューラルネットワーク(DNN:Deep Neural Network)が用いられる。多層ニューラルネットワークとして、例えば、CNN(Convolutional Neural Network)がある。
【0032】
〈候補経路生成部〉
候補経路生成部112は、車外環境認定部111の出力、位置センサ72の出力、及び車外通信部76から送信される情報等を基にして、車両が走行可能な候補経路を生成する。例えば、候補経路生成部112は、車外環境認定部111によって認定された道路上において、車外環境認定部111によって認定された障害物を回避する走行経路を生成する。車外環境認定部111の出力は、例えば、車両が走行する走行路に関する走行路情報が含まれている。走行路情報には、走行路自体の形状に関する情報や、走行路上の対象物に関する情報が含まれる。走行路形状に関する情報には、走行路の形状(直線、カーブ、カーブ曲率)、走行路幅、車線数、各車線幅等が含まれる。対象物に関する情報には、自車両に対する対象物の相対位置及び相対速度、対象物の属性(種類、移動方向)等が含まれる。対象物の種類としては、例えば、他車両、歩行者、道路、区画線等がある。
【0033】
ここでは、候補経路生成部112は、ステートラティス法を用いて複数の候補経路を計算し、これらの中からそれぞれの候補経路の経路コストに基づいて、1つまたは複数の候補経路を選択するものとする。ただし、他の手法を用いて経路の算出を行ってもよい。
【0034】
候補経路生成部112は、走行路情報に基づいて走行路上に仮想のグリッド領域を設定する。このグリッド領域は、複数のグリッド点を有する。各グリッド点により、走行路上の位置が特定される。候補経路生成部112は、所定のグリッド点を目標到達位置に設定する。そして、グリッド領域内の複数のグリッド点を用いた経路探索により複数の候補経路を演算する。ステートラティス法では、あるグリッド点から車両の進行方向前方の任意のグリッド点へ経路が枝分かれしていく。したがって、各候補経路は、複数のグリッド点を順次に通過するように設定される。各候補経路は、各グリッド点を通過する時間を表す時間情報、各グリッド点での速度・加速度等に関する速度情報、その他車両運動に関する情報等も含む。
【0035】
候補経路生成部112は、複数の候補経路から、経路コストに基づいて1つまたは複数の走行経路を選択する。ここでの経路コストは、例えば、レーンセンタリングの程度、車両の加速度、ステアリング角度、衝突の可能性等がある。なお、候補経路生成部112が複数の走行経路を選択する場合は、経路決定部115が、1つの走行経路を選択する。
【0036】
〈車両挙動推定部〉
車両状態推定部113は、車速センサ、加速度センサ、ヨーレートセンサ、ホイールトルク等の車両の挙動を検出するセンサ類の出力から、車両の状態を計測する。車両状態推定部113は、車両の挙動を示す車両6軸モデルを用いる。
【0037】
ここで、車両6軸モデルとは、走行中の車両の「前後」「左右」「上下」の3軸方向の加速度と、「ピッチ」「ロール」「ヨー」の3軸方向の角速度を、モデル化したものである。すなわち、車両の動きを古典的な車両運動工学的な平面上のみ(車両の前後左右(X-Y移動)とヨー運動(Z軸)のみ)で捉えるのではなく、4つの車輪にサスペンションを介して乗っている車体のピッチング(Y軸)およびロール(X軸)運動とZ軸の移動(車体の上下動)の、計6軸を用いて車両の挙動を再現する数値モデルである。
【0038】
車両状態推定部113は、候補経路生成部112が生成した走行経路に対して、車両6軸モデルを当てはめて、該走行経路を追従する際の車両の挙動を推定する。
【0039】
〈乗員挙動推定部〉
乗員挙動推定部114は、乗員状態センサ74の検出結果から、特に、運転者の健康状態や感情を推定する。健康状態としては、例えば、健康、軽い疲労、体調不良、意識低下等がある。感情としては、例えば、楽しい、普通、退屈、イライラ、不快等がある。
【0040】
例えば、乗員状態推定部114は、例えば、車室内に設置されたカメラによって撮像された画像から、運転者の顔画像を抽出し、運転者を特定する。抽出した顔画像と特定した運転者の情報は、人間モデルに入力として与えられる。人間モデルは、例えば深層学習によって生成された学習済みモデルであり、当該車両の運転者であり得る各人について、その顔画像から、健康状態および感情を出力する。乗員状態推定部114は、人間モデルが出力した運転者の健康状態および感情を、出力する。
【0041】
また、運転者の情報を取得するための乗員状態センサ74として、皮膚温センサ、心拍センサ、血流量センサ、発汗センサ等の生体情報センサが用いられる場合は、乗員状態推定部114は、生体情報センサの出力から、運転者の生体情報を計測する。この場合、人間モデルは、当該車両の運転者であり得る各人について、その生体情報を入力とし、健康状態および感情を出力する。乗員状態推定部114は、人間モデルが出力したドライバの健康状態および感情を出力する。
【0042】
また、人間モデルとして、当該車両の運転者であり得る各人について、車両の挙動に対して人間が持つ感情を推定するモデルを用いてもよい。この場合には、車両挙動推定部113の出力、運転者の生体情報、推定した感情状態を時系列で管理して、モデルを構築すればよい。このモデルによって、例えば、ドライバの感情の高まり(覚醒度)と車両の挙動との関係を予測することが可能となる。
【0043】
また、乗員状態推定部114は、人間モデルとして、人体モデルを備えていてもよい。人体モデルは、例えば、頭部質量(例:5kg)と前後左右Gを支える首周り筋力等を特定している。人体モデルは、車体の動き(加速度Gや加加速度)を入力すると、予想される乗員のフィジカルと主観を出力する。乗員のフィジカルとしては例えば、心地よい/適度/不快、主観としては例えば、不意/予測可能、等である。人体モデルを参照することによって、例えば、頭部がわずかでも仰け反らせるような車体挙動は乗員にとって不快であるので、その走行経路を選択しないようにすることができる。一方、頭部がお辞儀するように前に移動する車体挙動は乗員がこれに抗する姿勢をとりやすく、直ちに不快につながらないようので、その走行経路を選択するようにすることができる。あるいは、人体モデルを参照することによって、例えば、乗員の頭部が揺れないように、あるいは、生き生きするようにダイナミックに、目標運動を決定することができる。
【0044】
乗員状態推定部114は、車両挙動推定部113により推定された車両挙動に対して、人間モデルを当てはめて、現在の運転者の、車両挙動に対する健康状態の変化や感情の変化を推定する。
【0045】
〈経路決定部〉
経路決定部115は、乗員状態推定部114の出力に基づいて、車両が走行すべき経路を決定する。候補経路生成部112が生成した経路が1つである場合には、経路決定部115は当該経路を車両が走行すべき経路とする。候補経路生成部112が生成した経路が複数ある場合には、乗員状態推定部114の出力を考慮して、例えば、複数の候補経路のうち乗員(特に運転者)が最も快適と感じる経路、すなわち、障害物を回避するに当たって慎重過ぎるなどの冗長さを運転者に感じさせない経路を選択する。
【0046】
〈ルールベース経路生成部〉
ルールベース経路生成部120は、カメラ70及びレーダ71からの出力を基にして、深層学習を利用せずに、所定のルールにより車外の対象物を認定して、該対象物を避けるような走行経路を生成する。ルールベース経路生成部120でも、候補経路生成部112と同様に、ステートラティス法を用いて複数の候補経路を計算し、これらの中からそれぞれの候補経路の経路コストに基づいて、1つまたは複数の候補経路を選択するものとする。ルールベース経路生成部120では、例えば、対象物の周囲数m以内には侵入しないというルールに基づいて、経路コストが算出される。このルールベース経路生成部120でも、他の手法を用いて経路の算出を行ってもよい。
【0047】
ルールベース経路生成部120が生成した経路の情報は車両運動決定部116に入力される。
【0048】
〈バックアップ部〉
バックアップ部130は、カメラ70及びレーダ71からの出力を基にして、センサ等の故障時や乗員の体調が優れない時に、車両を路肩等の安全領域に誘導するための走行経路を生成する。バックアップ部130は、例えば、位置センサ72の情報から車両を緊急停止させることができる安全領域を設定し、該安全領域に到達するまでの走行経路を生成する。バックアップ部130でも、候補経路生成部112と同様に、ステートラティス法を用いて複数の候補経路を計算し、これらの中からそれぞれの候補経路の経路コストに基づいて、1つまたは複数の候補経路を選択するものとする。このバックアップ部130でも、他の手法を用いて経路の算出を行ってもよい。
【0049】
バックアップ部130が生成した経路の情報は車両運動決定部116に入力される。
【0050】
〈車両運動決定部〉
車両運動決定部116は、経路決定部115が決定した走行経路について、目標運動を決定する。目標運動とは、走行経路を追従するような操舵および加減速のことをいう。また、車両運動決定部116は、車両6軸モデルを参照して、経路決定部115が選択した走行経路について、車体の動きを演算する。
【0051】
車両運動決定部116は、ルールベース経路生成部120が生成する走行経路を追従するための目標運動を決定する。
【0052】
車両運動決定部116は、バックアップ部130が生成する走行経路を追従するための目標運動を決定する。
【0053】
車両運動決定部116は、経路決定部115が決定した走行経路が、ルールベース経路生成部120が生成した走行経路と比較して大きく逸脱していたときには、ルールベース経路生成部120が生成した走行経路を、車両が走行すべき経路として選択する。
【0054】
車両運動決定部116は、センサ等(特に、カメラ70やレーダ71)の故障時や乗員の体調不良が推定されたときには、バックアップ部130が生成した走行経路を、車両が走行すべき経路として選択する。
【0055】
〈デバイス制御部〉
デバイス制御部は、PT制御部117、ブレーキ制御部118、操舵角制御部119、及びボディ機器制御部140で構成されている。
【0056】
PT制御部117は、エンジン20及びトランスミッション30の制御量を算出して、エンジン20及びトランスミッション30に制御信号を出力する。具体的には、PT制御部117は、車両運動決定部116の出力に基づいて、エンジン20のインジェクタの燃料噴射量や燃料噴射タイミング、エンジン20の点火プラグの点火タイミング等を設定し、該設定に従って、エンジン20を制御する制御信号を生成する。PT制御部117は、生成した制御信号をエンジン20のインジェクタやスロットルバルブ等に出力する。また、PT制御部117は、車両運動決定部116の出力に基づいて、トランスミッション30のギヤ段を設定し、該設定に従ってトランスミッション30を制御する制御信号を出力する。PT制御部117は、生成した制御信号をトランスミッション30に出力する。ブレーキ制御部118は、車両運動決定部116の出力に基づいて、ブレーキ装置40のブレーキアクチュエータの動作を設定し、該設定に従ってブレーキアクチュエータを制御する制御信号を生成する。ブレーキ制御部118は、生成した制御信号をブレーキ装置40に出力する。操舵制御部119は、車両運動決定部116の出力に基づいて、ステアリング装置50の電動パワーステアリングの動作を設定し、該設定に従って電動パワーステアリングを制御する制御信号を生成する。操舵制御部119は、生成した制御信号をステアリング装置50に出力する。ボディ機器制御部140は、車両運動決定部116の出力に基づいて、ランプやドアなどの車両のボディ系デバイス10の動作を設定し、その設定に従って、ボディ系デバイス10を制御する制御信号を生成する。生成された制御信号は、各ボディ系デバイス10に送信される。
【0057】
尚、ここで示す車載デバイス10~50は、一例であり、車両に搭載された装置であれば、車載デバイスに含まれる。また、例えば、エンジン20のように、インジェクタやスロットルバルブなど多数の車載デバイスが含まれていることがある。
【0058】
〈デバイス故障診断部〉
デバイス故障診断部150は、
図1に示すように、演算装置100の通信経路におけるデバイス制御部117~119,140と各車載デバイス10~50との間に設けられている。このため、デバイス故障診断部150には、各デバイス制御部117~119,140から各車載デバイスに出力される各制御信号の全てが入力される。
【0059】
デバイス故障診断部150は、
図2に示すようなデバイス診断テーブル151を有する。このデバイス診断テーブル151は、車両の機能毎に、各機能と関連する車載デバイスが特定されている。例えば、
図2に示すデバイス診断テーブル151は、エンジン20の回転(クランクシャフトの回転)に関連する車載デバイスが特定されている。尚、
図2で示す車載デバイスは、一例であり、エンジン20の回転に関連する車載デバイスの全てを示しているわけではない。
【0060】
デバイス故障診断部150は、デバイス制御部117~119,140が出力する各制御信号と実際の各車載デバイスの出力値とに基づいて、各車載デバイス10~50の故障状態を診断する。
図1に示すように、デバイス故障診断部150には、デバイス制御部117~119,140が出力する制御信号が入力される。デバイス故障診断部150は、該制御信号の内容、特に各車載デバイスの出力(アクチュエータの作動時間など)の期待値を記憶する。このとき、デバイス故障診断部150はデバイス診断テーブル151に基づいて、実行される制御内容と関連する車載デバイスの期待値をそれぞれ記憶する。そして、デバイス診断部150は、車載デバイスの実際の出力を取得して、記憶した期待値と比較する。デバイス診断部150は、車載デバイスの実際の出力と記憶した期待値とのズレが所定量以上あるときには、車載デバイスに異常がある(故障している)と判断する。
【0061】
例えば、エンジン20を回転させる際には、デバイス故障診断部150は、インジェクタの作動時間、点火プラグの点火タイミング、及びスロットルバルブの開度等をPT制御部117からの入力により記憶する。そして、各車載デバイスの期待値を各車載デバイスの実際の出力と比較して、異常のある車載デバイスを特定する。
【0062】
デバイス診断テーブル151には、正常な車載デバイスと異常な車載デバイスとの組み合わせ毎にデバイス故障コード(
図2では単にコードと示している)が付されている。デバイス故障診断部150は、診断結果からデバイス故障コードを特定して、該デバイス故障コードを記憶部170に出力する。
【0063】
〈センサ故障診断部〉
センサ故障診断部160は、
図1に示すように、演算装置100の通信経路における各センサ70~76と目標運動設定部101との間に設けられている。このため、センサ故障診断部160は、目標運動設定部101に検出信号を送る各センサ70~76から出力される信号の全てを受信することができる。
【0064】
センサ故障診断部160は、
図3に示すようなセンサ診断テーブル161を有する。このセンサ診断テーブル161は、車両の機能毎に、各機能と関連するセンサが特定されている。例えば、
図2に示すセンサ診断テーブル161は、エンジン20の回転に関連するセンサが特定されている。尚、
図3で示すセンサは、一例であり、エンジン20の回転に関連するセンサの全てを示しているわけではない。
【0065】
センサ故障診断部160は、各センサ70~76から入力される信号に基づいて各センサ70~76の故障状態を診断する。具体的には、各センサ70~76はそれぞれセルフチェック機能を有しており、各センサ70~76は該セルフチェック機能によるチェック結果を、測定値と共にセンサ故障診断部160に入力する。センサ故障診断部160は、入力されたチェック結果に基づいて、各センサ70~76の故障状態を診断する。また、センサ故障診断部160は、各センサ70~76にセルフチェックを行うように指示する制御信号を出力可能に構成されている。
【0066】
センサ診断テーブル161には、正常なセンサと異常な(故障している)センサとの組み合わせ毎にセンサ故障コード(
図3では単にコードと示している)が付されている。センサ故障診断部160は、診断結果からセンサ故障コードを特定して、該センサ故障コードを記憶部170に出力する。
【0067】
〈記憶部〉
記憶部170は、デバイス故障診断部150の診断結果とセンサ故障診断部160の診断結果とを、車両の機能毎に関連させて記憶する。具体的には、デバイス故障診断部150から出力されたデバイス故障コードと、センサ故障診断部160から出力されたセンサ故障コードとを、車両の機能毎及び時間毎に関連させて記憶する。
【0068】
例えば、記憶部170に、デバイス故障コードとセンサ故障コードとを機能毎に組み合わせたテーブルを格納させておくことができる。これにより、記憶部170は、該テーブルに基づいてデバイス故障コードとセンサ故障コードとを関連付けるようにすることができる。また、記憶部170に、デバイス故障コード及びセンサ故障コードに対してタイムスタンプを付与する機能をもたせておくことができる。これにより、記憶部170は、同時に又は近い時間に入力された、デバイス故障コードとセンサ故障コードとを時間的に関連させて記憶することができる。尚、デバイス故障診断部150及びセンサ故障診断部160のそれぞれに、デバイス故障コード及びセンサ故障コードに対してタイムスタンプを付与する機能をもたせるようにしてもよい。
【0069】
これにより、車両に故障とみられる事象が生じたときに、該事象の要因を特定しやすくなる。例えば、「アクセルペダルを踏んだがエンジン回転数が上昇しない」という事象が発生したとする。この事象が生じた時期に、デバイス故障診断部150からスロットルバルブの故障を示すデバイス故障コード(
図2のコードD1)が出力されている一方、センサ故障診断部160からアクセル開度センサの故障を示すセンサ故障コード(
図3のコードA2やA3)が出力されていなかったとする。これにより、ディーラー等の車両の故障を認定する作業者は、記憶部170に記憶された各コードを読み込めば、「アクセルペダルを踏んだがエンジン回転数が上昇しない」という事象に対して、「スロットルバルブの故障により、エンジン回転数が上昇しなかった」と、要因を把握することができる。
【0070】
他にも、例えば「ドアロックしているがドアが開く」という事象が発生したとする。このとき、この事象が生じた時期に、デバイス故障診断部150からドアロックのアクチュエータの故障を示すデバイス故障コードが出力されておらず一方、センサ故障診断部160からドアスイッチの故障を示すセンサ故障コードが出力されていたとする。これにより、ディーラー等の車両の故障を認定する作業者は、「ドアロックしているがドアが開く」という事象に対して、「ドアスイッチの故障により、ドアロックのアクチュエータが作動しなかった」と、要因を把握することができる。
【0071】
ここで、本実施形態では、記憶部170は、デバイス故障診断部150の診断結果及びセンサ故障診断部160の診断結果に対して、目標運動設定部101により設定された車両の目標運動を更に関連付けて記憶するように構成されている。より具体的には、記憶部170は、デバイス故障診断部150の診断結果及びセンサ故障診断部160の診断結果に対して、経路決定部115により決定された走行経路と、車両運動決定部116により決定された車両の運動とを更に関連付けて記憶する。
【0072】
例えば、「ステアリング装置50を操作しているが、ヨー加速度が生じない」という事象が生じていたとする。この事象が生じた時期に、デバイス故障診断部150からの関連する車載デバイス(ステアリング装置50等)の故障を示すデバイス故障コード、及びセンサ故障診断部160からの関連するセンサ(操舵角センサ等)の故障を示すセンサ故障コードが入力されていないとする。一方で、記憶部170に、目標運動設定部101から走行経路に凍結した路面があるという情報が出力されているとする。これにより、ディーラー等の車両の故障を認定する作業者は、「ステアリング装置50を操作しているが、ヨー加速度が生じない」という事象に対して、「車載デバイス及びセンサの故障では無く、凍結した路面を走行していたため」と、要因を把握することができる。このように、前記作業者が、車両が故障していないことを認識しやすくなるとともに、車両の故障とみられる事象が生じた要因を容易に認識することができる。
【0073】
したがって、本実施形態では、演算装置100に車両の外部環境を含む車両情報を入力する複数のセンサ70~76と、演算装置100に設けられ、各センサ70~76により入力された情報に基づいて車両の目標運動を設定する目標運動設定部101と、演算装置100に設けられ、目標運動設定部101により設定された目標運動に基づいて各車載デバイス10~50に制御信号をそれぞれ出力するデバイス制御部117~119,140と、演算装置100の通信経路におけるデバイス制御部117~119,140と各車載デバイス10~50との間に設けられ、各車載デバイス10~50の故障を診断するデバイス故障診断部150を備え、デバイス故障診断部150は、車両の機能毎に、各機能と関連する車載デバイス10~50が特定されたデバイス診断テーブル151を有するとともに、各車載デバイス10~50の出力とデバイス診断テーブル(例えば、
図2のデバイス診断テーブル151)とに基づいて車載デバイス10~50の故障を診断する。すなわち、デバイス故障診断部150は、各車載デバイスを制御する各デバイス制御部117~119,140からの出力を受けるため、各車載デバイスの関連性を考慮して、各車載デバイスの故障を診断することができる。そして、デバイス故障診断部150は、車両の機能毎に、各機能と関連する車載デバイスが特定されたデバイス診断テーブルを有するため、車両に故障とみられる事象が生じたときに、該事象と関連する車載デバイスの状態を把握することができる。したがって、車両の故障とみられる事象に対して、当該事象の要因を把握しやすくすることができる。
【0074】
また、本実施形態では、演算装置100の通信経路における各センサ70~76と目標運動設定部101との間に設けられ、各センサ70~76の故障を診断するセンサ故障診断部160を更に備え、センサ故障診断部160は、車両の機能毎に、各機能と関連するセンサ70~76が特定されたセンサ診断テーブル(例えば、
図3のセンサ診断テーブル161)を有するとともに、センサ診断テーブルに基づいて各センサ70~76の故障を診断する。これにより、車両に故障とみられる事象が生じたときに、故障しているのが、車載デバイスでなくセンサである場合でも、該事象の要因を特定しやすくなる。この結果、車両の故障とみられる事象に対して、当該事象の要因を把握しやすくすることができる。
【0075】
また、本実施形態では、デバイス故障診断部150の診断結果とセンサ故障診断部160の診断結果とを、車両の機能毎に関連させて記憶する記憶部170を更に備える。これにより、車両の機能と関連する車載デバイスとセンサとの組合せを把握した上で、車両の故障を診断することができる。この結果、車両の故障とみられる事象に対して、当該事象の要因を把握しやすくすることができる。
【0076】
特に、本実施形態では、記憶部170は、デバイス故障診断部150の診断結果及びセンサ故障診断部160の診断結果に対して、経路決定部115により決定された車両の走行経路と、車両運動決定部116により決定された車両の運動とを更に関連付けて記憶する。これにより、走行経路の路面状態(例えば、路面が凍結している)や該路面状での車両の運動が考慮されることで、車載デバイス及びセンサの故障でなく、路面状態が問題であることを把握することができる。これにより、車両の故障とみられる事象に対して、当該事象の要因をより把握しやすくすることができる。
【0077】
ここに開示された技術は、前述の実施形態に限られるものではなく、請求の範囲の主旨を逸脱しない範囲で代用が可能である。
【0078】
例えば、デバイス故障診断部150が、経路決定部115により決定された車両の走行経路と、車両運動決定部116により決定された車両の運動とを更に考慮して、各車載デバイスの故障を診断するようにしてもよい。このときには、例えば、デバイス診断テーブルに、路面状態(凍結の有無や凹凸具合等)や車両の運動(カーブを曲がる等)を示す項目を追加しておき、路面状態や車両の運動毎にデバイス故障コードを付しておけばよい。
【0079】
また、前述の実施形態では、記憶部170が設けられていたが、これに限らず、記憶部170を省略してもよい。このときには、例えば、デバイス故障診断部150及びセンサ故障診断部160のそれぞれに、デバイス故障コード及びセンサ故障コードを記憶する機能をもたせておき、ディーラー等が各故障診断部150,160から各故障コードをそれぞれ読むようにすることができる。
【0080】
また、前述の実施形態では、演算装置100の目標運動設定部101により、自動運転やアシスト運転が可能となっていた。これに限らず、目標運動設定部101が、各センサ70~76により入力された情報に基づいて車両の目標運動を設定するのであれば、演算装置100が自動運転機能やアシスト運転機能を有していなくてもよい。
【0081】
前述の実施形態は単なる例示に過ぎず、本開示の範囲を限定的に解釈してはならない。本開示の範囲は請求の範囲によって定義され、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本開示の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0082】
ここに開示された技術は、車両に搭載された車載デバイスを制御するための演算を行う演算装置を備えた、車両の故障診断装置として有用である。
【符号の説明】
【0083】
10 ボディ系デバイス
20 エンジン
30 トランスミッション
40 ブレーキ装置
50 ステアリング装置
70 カメラ(センサ)
71 レーダ(センサ)
72 位置センサ
73 車両状態センサ
74 乗員状態センサ
75 スイッチ類(センサ)
76 車外通信部(センサ)
100 演算装置
101 目標運動設定部
115 経路決定部
116 車両運動決定部
117 PT制御部
118 ブレーキ制御部
119 操舵制御部
140 ボディ機器制御部
150 デバイス故障診断部
151 デバイス診断テーブル
160 センサ故障診断部
161 センサ診断テーブル
170 記憶部