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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】冷凍サイクル装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/22 20060101AFI20231129BHJP
   B60H 1/32 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
B60H1/22 651A
B60H1/22 651C
B60H1/22 671
B60H1/32 621C
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019107954
(22)【出願日】2019-06-10
(65)【公開番号】P2020199869
(43)【公開日】2020-12-17
【審査請求日】2022-05-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001472
【氏名又は名称】弁理士法人かいせい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡村 徹
(72)【発明者】
【氏名】加藤 吉毅
(72)【発明者】
【氏名】牧原 正径
(72)【発明者】
【氏名】谷岡 邦義
(72)【発明者】
【氏名】前田 隆宏
【審査官】佐藤 正浩
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/22
B60H 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を吸入して圧縮し吐出する圧縮機(11)と、
前記圧縮機から吐出された前記冷媒と熱媒体とを熱交換させることにより前記冷媒を放熱させて前記熱媒体を加熱する放熱部(12)と、
前記放熱部で放熱された前記冷媒を減圧させる減圧部(16)と、
前記減圧部で減圧された前記冷媒を蒸発させることによって吸熱させる吸熱部(17、32、45、18)と、
前記放熱部で加熱された前記熱媒体の熱を利用する熱利用部(22)と、
前記熱媒体の流れにおいて前記熱利用部に対して並列に配置され、前記放熱部で加熱された前記熱媒体の熱を前記吸熱部に供給する熱供給部(20c、23、37)と、
前記放熱部から流出した前記熱媒体を前記熱利用部側と前記熱供給部側とに分岐させる分岐部(20d)と、
前記熱利用部を流れた前記熱媒体と前記熱供給部を流れた前記熱媒体とを合流させて前記放熱部側へ流出させる合流部(20e)と、
前記放熱部と前記熱利用部との間で前記熱媒体が循環する第1状態と、前記放熱部と前記熱利用部および前記熱供給部との間で前記熱媒体が循環する第2状態とを切り替える切替部(26)と、
前記熱媒体を吸入して吐出するポンプ(21)と
前記切替部が前記第1状態から前記第2状態に切り替えたとき、前記放熱部に流入する前記熱媒体の温度の時間変化率が小さくなるように前記ポンプを制御する制御部(60)とを備える冷凍サイクル装置。
【請求項2】
冷媒を吸入して圧縮し吐出する圧縮機(11)と、
前記圧縮機から吐出された前記冷媒と熱媒体とを熱交換させることにより前記冷媒を放熱させて前記熱媒体を加熱する放熱部(12)と、
前記放熱部で放熱された前記冷媒を減圧させる減圧部(16)と、
前記減圧部で減圧された前記冷媒を蒸発させることによって吸熱させる吸熱部(17、32、45、18)と、
前記放熱部で加熱された前記熱媒体の熱を利用する熱利用部(22)と、
前記熱媒体の流れにおいて前記熱利用部に対して並列に配置され、前記放熱部で加熱された前記熱媒体の熱を前記吸熱部に供給する熱供給部(20c、23、37)と、
前記放熱部から流出した前記熱媒体を前記熱利用部側と前記熱供給部側とに分岐させる分岐部(20d)と、
前記熱利用部を流れた前記熱媒体と前記熱供給部を流れた前記熱媒体とを合流させて前記放熱部側へ流出させる合流部(20e)と、
前記放熱部と前記熱利用部との間で前記熱媒体が循環する1状態と、前記放熱部と前記熱利用部および前記熱供給部との間で前記熱媒体が循環する第2状態とを切り替える切替部(26)と
前記減圧部で減圧された前記冷媒を蒸発させることによって空気を冷却除湿する蒸発器(14)とを備え、
前記熱利用部は、前記放熱部で加熱された前記熱媒体を利用して、前記蒸発器で冷却除湿された空気および前記蒸発器をバイパスして流れた空気のうち少なくとも一方を加熱するヒータコア(22)を有しており、
前記切替部は、前記蒸発器で空気を冷却除湿し且つ前記蒸発器で冷却除湿された空気を前記ヒータコアで加熱する除湿暖房モード、または前記蒸発器をバイパスして流れた空気を前記ヒータコアで加熱する暖房モードから、前記熱媒体の熱を利用して前記吸熱部を除霜する除霜モードに切り替わる際に、前記第1状態から前記第2状態に切り替える冷凍サイクル装置。
【請求項3】
前記切替部は、前記第2状態において前記熱利用部側と前記熱供給部側との前記熱媒体の流量比を調整可能になっており、
前記第1状態から前記第2状態へ切り替えたとき、前記熱供給部側へ流れる前記熱媒体の流量が、前記熱利用部側へ流れる前記熱媒体の流量よりも少なくなるように前記切替部を制御する制御部(60)を備える請求項1または2に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項4】
冷媒を吸入して圧縮し吐出する圧縮機(11)と、
前記圧縮機から吐出された前記冷媒と熱媒体とを熱交換させることにより前記冷媒を放熱させて前記熱媒体を加熱する放熱部(12)と、
前記放熱部で放熱された前記冷媒を減圧させる減圧部(16)と、
前記減圧部で減圧された前記冷媒を蒸発させることによって吸熱させる吸熱部(17、32、45、18)と、
前記放熱部で加熱された前記熱媒体の熱を利用する熱利用部(22)と、
前記熱媒体の流れにおいて前記熱利用部に対して並列に配置され、前記放熱部で加熱された前記熱媒体の熱を前記吸熱部に供給する熱供給部(20c、23、37)と、
前記放熱部から流出した前記熱媒体を前記熱利用部側と前記熱供給部側とに分岐させる分岐部(20d)と、
前記熱利用部を流れた前記熱媒体と前記熱供給部を流れた前記熱媒体とを合流させて前記放熱部側へ流出させる合流部(20e)と、
前記放熱部と前記熱利用部との間で前記熱媒体が循環する1状態と、前記放熱部と前記熱利用部および前記熱供給部との間で前記熱媒体が循環する第2状態とを切り替える切替部(26)とを備え
前記切替部は、前記第2状態において前記熱利用部側と前記熱供給部側との前記熱媒体の流量比を調整可能になっており、
さらに、前記第1状態から前記第2状態へ切り替えたとき、前記熱供給部側へ流れる前記熱媒体の流量が、前記熱利用部側へ流れる前記熱媒体の流量よりも少なくなるように前記切替部を制御する制御部(60)を備え、
前記制御部は、前記第1状態から前記第2状態へ切り替えたとき、前記熱供給部側へ流れる前記熱媒体の流量を時間の経過とともに増加させる冷凍サイクル装置。
【請求項5】
前記熱媒体を吸入して吐出するポンプ(21)を備え、
前記制御部は、前記第1状態から前記第2状態に切り替えたとき、前記放熱部に流入する前記熱媒体の温度の時間変化率が小さくなるように前記ポンプを制御する請求項に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項6】
前記減圧部で減圧された前記冷媒を蒸発させることによって空気を冷却除湿する蒸発器(14)を備え、
前記熱利用部は、前記放熱部で加熱された前記熱媒体を利用して、前記蒸発器で冷却除湿された空気および前記蒸発器をバイパスして流れた空気のうち少なくとも一方を加熱するヒータコア(22)を有しており、
前記切替部は、前記蒸発器で空気を冷却除湿し且つ前記蒸発器で冷却除湿された空気を前記ヒータコアで加熱する除湿暖房モード、または前記蒸発器をバイパスして流れた空気を前記ヒータコアで加熱する暖房モードから、前記熱媒体の熱を利用して前記吸熱部を除霜する除霜モードに切り替わる際に、前記第1状態から前記第2状態に切り替える請求項4または5に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記第2状態において、前記放熱部に流入する前記熱媒体の温度が前記放熱部での露点温度よりも高くなるように前記切替部を制御する請求項3ないし6のいずれか1つに記載の冷凍サイクル装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記第2状態において、前記熱利用部に流入する前記熱媒体の温度が前記熱利用部での露点温度よりも高くなるように前記切替部を制御する請求項3ないし7のいずれか1つに記載の冷凍サイクル装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記第2状態における前記熱媒体の温度と、前記第2状態に切り替えたときの前記吸熱部の温度との温度差が所定範囲内になるように前記切替部を制御する請求項3ないし8のいずれか1つに記載の冷凍サイクル装置。
【請求項10】
前記放熱部は、前記冷媒と前記熱媒体とが互いに対向して流れる構造を有している請求項1ないしのいずれか1つに記載の冷凍サイクル装置。
【請求項11】
前記放熱部は、前記冷媒を凝縮させる凝縮部(12a)と、前記凝縮部で凝縮された前記冷媒を過冷却する過冷却部(12c)とを有しており、前記熱媒体が、前記過冷却部、前記凝縮部の順番に流れる構造を有している請求項10に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項12】
ジュール熱を発生することにより前記熱媒体を加熱する加熱部(25)を備え、
前記加熱部は、前記熱媒体の流れにおいて、前記分岐部の下流側かつ前記熱利用部の上流側に配置されている請求項1ないし11のいずれか1つに記載の冷凍サイクル装置。
【請求項13】
前記熱媒体を吸入して吐出するポンプ(21)を備え、
前記ポンプは、前記熱媒体の流れにおいて、前記合流部の下流側、かつ前記分岐部の上流側に配置されている請求項1ないし12のいずれか1つに記載の冷凍サイクル装置。
【請求項14】
前記合流部の下流側かつ前記放熱部の上流側、または前記合流部に配置され、前記熱媒体を貯留する貯留部(24)を備える請求項1ないし13のいずれか1つに記載の冷凍サイクル装置。
【請求項15】
前記第1状態では、前記熱供給部に前記熱媒体が循環しない請求項1ないし14のいずれか1つに記載の冷凍サイクル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放熱部の熱を吸熱部に供給可能な冷凍サイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1には、冷却水を利用して外気吸熱を行うヒートポンプシステムが記載されている。この従来技術では、冷凍サイクルのチラーで冷却された冷却水がLTラジエータにて外気から吸熱し、冷凍サイクルの水冷コンデンサで加熱された冷却水がヒータコアで放熱することによって室内暖房を行う。
【0003】
この従来技術では、LTラジエータに霜が付着した場合、水冷コンデンサで加熱された冷却水をLTラジエータに流すことによってLTラジエータを除霜する。
【0004】
LTラジエータを除霜する際には、LTラジエータから流出した冷却水が水冷コンデンサとバイパス流路とを並列に流れる。これにより、水冷コンデンサで加熱された高温の冷却水とバイパス流路を流れた中温の冷却水とが混合されてLTラジエータに流入するので、LTラジエータにおけるヒートショックを軽減できる。すなわち、低温のLTラジエータに高温の冷却水が流入することによる急激な温度変化を軽減できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6399060号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この従来技術によると、LTラジエータ(換言すれば吸熱部)の除霜を開始する際に、LTラジエータから流出した低温の冷却水が高温の水冷コンデンサ(換言すれば放熱部)に流入するため、水冷コンデンサにヒートショックが生じてしまう。
【0007】
本発明は上記点に鑑みて、放熱部の熱を吸熱部に供給するときの吸熱部および放熱部のヒートショックを軽減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の冷凍サイクル装置では、
冷媒を吸入して圧縮し吐出する圧縮機(11)と、
圧縮機から吐出された冷媒と熱媒体とを熱交換させることにより冷媒を放熱させて熱媒体を加熱する放熱部(12)と、
放熱部で放熱された冷媒を減圧させる減圧部(16)と、
減圧部で減圧された冷媒を蒸発させることによって吸熱させる吸熱部(17、32、45、18)と、
放熱部で加熱された熱媒体の熱を利用する熱利用部(22)と、
熱媒体の流れにおいて熱利用部に対して並列に配置され、放熱部で加熱された熱媒体の熱を吸熱部に供給する熱供給部(20c、23)と、
放熱部から流出した熱媒体を熱利用部側と熱供給部側とに分岐させる分岐部(20d)と、
熱利用部を流れた熱媒体と熱供給部を流れた熱媒体とを合流させて放熱部側へ流出させる合流部(20e)と、
放熱部と熱利用部との間で熱媒体が循環する第1状態と、放熱部と熱利用部および熱供給部との間で熱媒体が循環する第2状態とを切り替える切替部(26)と、
熱媒体を吸入して吐出するポンプ(21)と
切替部が第1状態から第2状態に切り替えたとき、放熱部に流入する熱媒体の温度の時間変化率が小さくなるようにポンプを制御する制御部(60)とを備える
【0009】
これによると、第1状態から第2状態に切り替えたときに放熱部(12)の熱媒体が熱利用部(22)側と熱供給部(20c、23)側とに分岐して流れ、熱供給部(20c、23)を流れた熱媒体が熱利用部(22)を流れた熱媒体と合流して放熱部(12)に流入する。
【0010】
そのため、熱供給部(20c、23)に流入する熱媒体の流量を少なくできるとともに放熱部(12)に流入する熱媒体の温度を、熱供給部(20c、23)を流れた熱媒体の温度よりも高くすることができる。したがって、吸熱部(32、45、18)および放熱部(12)のヒートショックを軽減できる。
上記目的を達成するため、請求項2に記載の冷凍サイクル装置では、
冷媒を吸入して圧縮し吐出する圧縮機(11)と、
圧縮機から吐出された冷媒と熱媒体とを熱交換させることにより冷媒を放熱させて熱媒体を加熱する放熱部(12)と、
放熱部で放熱された冷媒を減圧させる減圧部(16)と、
減圧部で減圧された冷媒を蒸発させることによって吸熱させる吸熱部(17、32、45、18)と、
放熱部で加熱された熱媒体の熱を利用する熱利用部(22)と、
熱媒体の流れにおいて熱利用部に対して並列に配置され、放熱部で加熱された熱媒体の熱を吸熱部に供給する熱供給部(20c、23、37)と、
放熱部から流出した熱媒体を熱利用部側と熱供給部側とに分岐させる分岐部(20d)と、
熱利用部を流れた熱媒体と熱供給部を流れた熱媒体とを合流させて放熱部側へ流出させる合流部(20e)と、
放熱部と熱利用部との間で熱媒体が循環する第1状態と、放熱部と熱利用部および熱供給部との間で熱媒体が循環する第2状態とを切り替える切替部(26)と、
減圧部で減圧された冷媒を蒸発させることによって空気を冷却除湿する蒸発器(14)とを備え、
熱利用部は、放熱部で加熱された熱媒体を利用して、蒸発器で冷却除湿された空気および蒸発器をバイパスして流れた空気のうち少なくとも一方を加熱するヒータコア(22)を有しており、
切替部は、蒸発器で空気を冷却除湿し且つ蒸発器で冷却除湿された空気をヒータコアで加熱する除湿暖房モード、または蒸発器をバイパスして流れた空気をヒータコアで加熱する暖房モードから、熱媒体の熱を利用して吸熱部を除霜する除霜モードに切り替わる際に、第1状態から第2状態に切り替える
これにより、請求項1に記載の冷凍サイクル装置と同様の作用効果を奏することができる。
上記目的を達成するため、請求項4に記載の冷凍サイクル装置では、
冷媒を吸入して圧縮し吐出する圧縮機(11)と、
圧縮機から吐出された冷媒と熱媒体とを熱交換させることにより冷媒を放熱させて熱媒体を加熱する放熱部(12)と、
放熱部で放熱された冷媒を減圧させる減圧部(16)と、
減圧部で減圧された冷媒を蒸発させることによって吸熱させる吸熱部(17、32、45、18)と、
放熱部で加熱された熱媒体の熱を利用する熱利用部(22)と、
熱媒体の流れにおいて熱利用部に対して並列に配置され、放熱部で加熱された熱媒体の熱を吸熱部に供給する熱供給部(20c、23、37)と、
放熱部から流出した熱媒体を熱利用部側と熱供給部側とに分岐させる分岐部(20d)と、
熱利用部を流れた熱媒体と熱供給部を流れた熱媒体とを合流させて放熱部側へ流出させる合流部(20e)と、
放熱部と熱利用部との間で熱媒体が循環する第1状態と、放熱部と熱利用部および熱供給部との間で熱媒体が循環する第2状態とを切り替える切替部(26)とを備え、
切替部は、第2状態において熱利用部側と熱供給部側との熱媒体の流量比を調整可能になっており、
さらに、第1状態から第2状態へ切り替えたとき、熱供給部側へ流れる熱媒体の流量が、熱利用部側へ流れる熱媒体の流量よりも少なくなるように切替部を制御する制御部(60)を備え、
制御部は、第1状態から第2状態へ切り替えたとき、熱供給部側へ流れる熱媒体の流量を時間の経過とともに増加させる
これにより、請求項1に記載の冷凍サイクル装置と同様の作用効果を奏することができる。
【0011】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態における冷凍サイクル装置の全体構成図である。
図2】第1実施形態における冷凍サイクル装置の電気制御部を示すブロック図である。
図3】第1実施形態における冷凍サイクル装置の冷房モード時の作動状態を示す全体構成図である。
図4】第1実施形態における冷凍サイクル装置の除湿暖房モード時の作動状態を示す全体構成図である。
図5】第1実施形態における冷凍サイクル装置の暖房モード時の作動状態を示す全体構成図である。
図6】第1実施形態における冷凍サイクル装置の除霜モード時の作動状態を示す全体構成図である。
図7】第1実施形態における冷凍サイクル装置の除霜モードでの高温冷却水回路の冷却水の温度の時間変化を示すグラフである。
図8】第1実施形態における冷凍サイクル装置の除霜モードでの高温冷却水回路の冷却水流れ方向における冷却水および冷媒の温度変化を示すグラフである。
図9】第2実施形態における冷凍サイクル装置の全体構成図である。
図10】第3実施形態における冷凍サイクル装置の全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施形態について図に基づいて説明する。以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0014】
(第1実施形態)
以下、実施形態について図に基づいて説明する。図1に示す車両用空調装置1は、車室内空間(換言すれば、空調対象空間)を適切な温度に調整する空調装置である。車両用空調装置1は、冷凍サイクル装置10を有している。
【0015】
冷凍サイクル装置10は、電気自動車やハイブリッド自動車等に搭載されている。電気自動車は、走行用電動モータから車両走行用の駆動力を得る自動車である。ハイブリッド自動車は、エンジン(換言すれば内燃機関)および走行用電動モータから車両走行用の駆動力を得る自動車である。
【0016】
冷凍サイクル装置10は、圧縮機11、凝縮器12、第1膨張弁13、空気側蒸発器14、定圧弁15、第2膨張弁16および冷却水側蒸発器17を備える蒸気圧縮式冷凍機である。本実施形態の冷凍サイクル装置10では、冷媒としてフロン系冷媒を用いており、高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超えない亜臨界冷凍サイクルを構成している。
【0017】
第2膨張弁16および冷却水側蒸発器17は、冷媒流れにおいて、第1膨張弁13、空気側蒸発器14および定圧弁15に対して並列に配置されている。
【0018】
冷凍サイクル装置10には、第1冷媒循環回路と第2冷媒循環回路とが形成される。第1冷媒循環回路では、冷媒が圧縮機11、凝縮器12、第1膨張弁13、空気側蒸発器14、定圧弁15、圧縮機11の順に循環する。第2冷媒循環回路では、冷媒が圧縮機11、凝縮器12、第2膨張弁16、冷却水側蒸発器17の順に循環する。
【0019】
圧縮機11は、電池から供給される電力によって駆動される電動圧縮機であり、冷凍サイクル装置10の冷媒を吸入して圧縮して吐出する。圧縮機11の電動モータは、制御装置60によって制御される。圧縮機11は、ベルトによって駆動される可変容量圧縮機であってもよい。
【0020】
凝縮器12は、圧縮機11から吐出された高圧側冷媒と高温冷却水回路20の冷却水とを熱交換させる高圧側熱交換器である。凝縮器12は、圧縮機11から吐出された冷媒と冷却水とを熱交換させることにより冷媒を放熱させて冷却水を加熱する放熱部である。
【0021】
電気自動車の場合、圧縮機11および凝縮器12は、車両のモータールーム内に配置されている。モータールームは、走行用電動モータが収容される空間である。ハイブリッド自動車の場合、圧縮機11および凝縮器12は、車両のエンジンルーム内に配置されている。エンジンルームは、エンジンが収容される空間である。
【0022】
凝縮器12は、凝縮部12a、レシーバ12bおよび過冷却部12cを有している。凝縮器12において冷媒は凝縮部12a、レシーバ12bおよび過冷却部12cの順番に流れる。
【0023】
凝縮部12aは、圧縮機11から吐出された高圧側冷媒と高温冷却水回路20の冷却水とを熱交換させることによって高圧側冷媒を凝縮させる。
【0024】
レシーバ12bは、凝縮器12から流出した高圧冷媒の気液を分離して、分離された液相冷媒を下流側へ流出させるとともに、サイクルの余剰冷媒を貯える気液分離部である。
【0025】
過冷却部12cは、レシーバ12bから流出した液相冷媒と高温冷却水回路20の冷却水とを熱交換させて液相冷媒を過冷却する。
【0026】
高温冷却水回路20の冷却水は、熱媒体としての流体である。高温冷却水回路20の冷却水は高温熱媒体である。本実施形態では、高温冷却水回路20の冷却水として、少なくともエチレングリコール、ジメチルポリシロキサンもしくはナノ流体を含む液体、または不凍液体が用いられている。高温冷却水回路20は、高温熱媒体が循環する高温熱媒体回路である。
【0027】
第1膨張弁13は、レシーバ12bから流出した液相冷媒を減圧膨張させる第1減圧部である。第1膨張弁13は、電気式膨張弁である。電気式膨張弁は、絞り開度を変更可能に構成された弁体と、この弁体の開度を変化させる電動アクチュエータとを有して構成される電気式の可変絞り機構である。
【0028】
第1膨張弁13は、空気側蒸発器14に冷媒が流れる状態と冷媒が流れない状態とを切り替える冷媒流れ切替部である。第1膨張弁13は、制御装置60から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0029】
第1膨張弁13は機械式の温度膨張弁であってもよい。第1膨張弁13が機械式の温度膨張弁である場合、第1膨張弁13側の冷媒流路を開閉する開閉弁が、第1膨張弁13とは別個に設けられている必要がある。
【0030】
空気側蒸発器14は、第1膨張弁13から流出した冷媒と車室内へ送風される空気とを熱交換させて冷媒を蒸発させる蒸発器である。空気側蒸発器14では、冷媒が車室内へ送風される空気から吸熱する。空気側蒸発器14は、車室内へ送風される空気を冷却する空気冷却器である。
【0031】
定圧弁15は、空気側蒸発器14の出口側における冷媒の圧力を所定値に維持する圧力調整部である。定圧弁15は、機械式の可変絞り機構で構成されている。具体的には、定圧弁15は、空気側蒸発器14の出口側における冷媒の圧力が所定値を下回ると冷媒通路の通路面積(すなわち絞り開度)を減少させ、空気側蒸発器14の出口側における冷媒の圧力が所定値を超えると冷媒通路の通路面積(すなわち絞り開度)を増加させる。定圧弁15で圧力調整された気相冷媒は圧縮機11に吸入されて圧縮される。
【0032】
サイクルを循環する循環冷媒流量の変動が少ない場合等には、定圧弁15に代えて、オリフィス、キャピラリチューブ等からなる固定絞りを採用してもよい。
【0033】
第2膨張弁16は、凝縮器12から流出した液相冷媒を減圧膨張させる第2減圧部である。第2膨張弁16は、電気式膨張弁である。電気式膨張弁は、絞り開度を変更可能に構成された弁体と、この弁体の開度を変化させる電動アクチュエータとを有して構成される電気式の可変絞り機構である。第2膨張弁16は冷媒流路を全閉可能になっている。
【0034】
第2膨張弁16は、冷却水側蒸発器17に冷媒が流れる状態と流れない状態とを切り替える冷媒流れ切替部である。第2膨張弁16は、制御装置60から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0035】
第2膨張弁16は機械式の温度膨張弁であってもよい。第2膨張弁16が機械式の温度膨張弁である場合、第2膨張弁16側の冷媒流路を開閉する開閉弁が、第2膨張弁16とは別個に設けられている必要がある。
【0036】
冷却水側蒸発器17は、第2膨張弁16から流出した冷媒と低温冷却水回路30の冷却水とを熱交換させて冷媒を蒸発させる蒸発部である。冷却水側蒸発器17では、冷媒が低温冷却水回路30の冷却水から吸熱する。冷却水側蒸発器17は、低温冷却水回路30の冷却水を冷却する熱媒体冷却器である。冷却水側蒸発器17で蒸発した気相冷媒は圧縮機11に吸入されて圧縮される。
【0037】
低温冷却水回路30の冷却水は、熱媒体としての流体である。低温冷却水回路30の冷却水は低温熱媒体である。本実施形態では、低温冷却水回路30の冷却水として、少なくともエチレングリコール、ジメチルポリシロキサンもしくはナノ流体を含む液体、または不凍液体が用いられている。低温冷却水回路30は、低温の熱媒体が循環する低温熱媒体回路である。
【0038】
高温冷却水回路20には、凝縮器12、高温側ポンプ21、ヒータコア22、高温側ラジエータ23、リザーブタンク24および電気ヒータ25が配置されている。
【0039】
高温側ポンプ21は、冷却水を吸入して吐出する熱媒体ポンプである。高温側ポンプ21は電動式のポンプである。高温側ポンプ21は、吐出流量が一定となる電動式のポンプであるが、高温側ポンプ21は、吐出流量が可変な電動式のポンプであってもよい。
【0040】
ヒータコア22は、高温冷却水回路20の冷却水と車室内へ送風される空気とを熱交換させて車室内へ送風される空気を加熱する空気加熱器である。ヒータコア22では、冷却水が、車室内へ送風される空気に放熱する。ヒータコア22は、凝縮器12で加熱された冷却水の熱を利用する熱利用部である。
【0041】
高温側ラジエータ23は、高温冷却水回路20の冷却水と外気とを熱交換させて冷却水から外気に放熱させる放熱器である。
【0042】
凝縮器12および高温側ポンプ21は、凝縮器流路20aに配置されている。凝縮器流路20aは、高温冷却水回路20の冷却水が流れる流路である。
【0043】
凝縮器12における冷却水の流れ方向は、凝縮器12における冷媒の流れ方向と対向している。すなわち、凝縮器12において冷却水は、過冷却部12c、凝縮部12aの順番に流れる。
【0044】
ヒータコア22は、ヒータコア流路20bに配置されている。ヒータコア流路20bは、高温冷却水回路20の冷却水が流れる流路である。
【0045】
高温側ラジエータ23は、ラジエータ流路20cに配置されている。ラジエータ流路20cは、高温冷却水回路20の冷却水がヒータコア22に対して並列に流れる流路である。
【0046】
高温冷却水回路20の分岐部20dには、三方弁26が配置されている。分岐部20dは、凝縮器流路20aからヒータコア流路20bとラジエータ流路20cとに分岐する分岐部である。
【0047】
三方弁26は、高温冷却水回路20における冷却水の流れを切り替える切替部である。三方弁26は、ヒータコア流路20bとラジエータ流路20cとを開閉する。三方弁26は、ヒータコア流路20bの開度とラジエータ流路20cの開度とを調整する。三方弁26は、ヒータコア流路20bとラジエータ流路20cとの開度比を調整する。三方弁26は、ヒータコア22を流れる冷却水と高温側ラジエータ23を流れる冷却水との流量比を調整する。
【0048】
高温冷却水回路20の合流部20eには、リザーブタンク24が配置されている。合流部20eは、ヒータコア流路20bとラジエータ流路20cとから凝縮器流路20aに合流する合流部である。
【0049】
リザーブタンク24は、余剰冷却水を貯留する貯留部である。リザーブタンク24に余剰冷却水を貯留しておくことによって、各流路を循環する冷却水の液量の低下を抑制することができる。
【0050】
リザーブタンク24は、密閉式リザーブタンクまたは大気開放式リザーブタンクである。密閉式リザーブタンクは、蓄えている冷却水の液面における圧力を所定圧力にするリザーブタンクである。大気開放式リザーブタンクは、蓄えている冷却水の液面における圧力を大気圧にするリザーブタンクである。
【0051】
リザーブタンク24は、冷却水中に混在する気泡を冷却水から分離させる気液分離機能を有している。
【0052】
電気ヒータ25は、高温冷却水回路20の分岐部20dの下流側かつヒータコア22の上流側に配置されている。電気ヒータ25は、バッテリから電力が供給されることによってジュール熱を発生する。電気ヒータ25は、ジュール熱を発生することにより冷却水を加熱する加熱部である。電気ヒータ25は、高温冷却水回路20の冷却水を補助的に加熱する。電気ヒータ25は、制御装置60によって制御される。
【0053】
低温冷却水回路30には、低温側ポンプ31、冷却水側蒸発器17および低温側ラジエータ32が配置されている。
【0054】
低温側ポンプ31は、冷却水を吸入して吐出する熱媒体ポンプである。低温側ポンプ31は電動式のポンプである。低温側ラジエータ32は、低温冷却水回路30の冷却水と外気とを熱交換させて低温冷却水回路30の冷却水に外気から吸熱させる。冷却水側蒸発器17および低温側ラジエータ32は、第2膨張弁16で減圧された冷媒を蒸発させることによって吸熱させる吸熱部である。
【0055】
高温側ラジエータ23および低温側ラジエータ32は、外気の流れ方向において、この順番に直列に配置されている。高温側ラジエータ23および低温側ラジエータ32には、室外送風機40によって外気が送風される。
【0056】
室外送風機40は、高温側ラジエータ23および低温側ラジエータ32へ向けて外気を送風する外気送風部である。室外送風機40は、ファンを電動モータにて駆動する電動送風機である。室外送風機40の作動は、制御装置60によって制御される。
【0057】
高温側ラジエータ23、低温側ラジエータ32および室外送風機40は、車両の最前部に配置されている。従って、車両の走行時には高温側ラジエータ23および低温側ラジエータ32に走行風を当てることができるようになっている。
【0058】
高温側ラジエータ23および低温側ラジエータ32は、共通のフィン37によって互いに接合されている。
【0059】
共通のフィン37は、冷却水と空気との熱交換を促進する熱交換促進部材である。共通のフィン37は、金属製(例えばアルミニウム製)の部材である。
【0060】
共通のフィン37は、高温側ラジエータ23と低温側ラジエータ32とを金属で結合することによって、高温側ラジエータ23から低温側ラジエータ32へ熱を移動させる結合部である。
【0061】
空気側蒸発器14およびヒータコア22は、室内空調ユニット50の空調ケーシング51に収容されている。室内空調ユニット50は、車室内前部の図示しない計器盤の内側に配置されている。空調ケーシング51は、空気通路を形成する空気通路形成部材である。
【0062】
ヒータコア22は、空調ケーシング51内の空気通路において、空気側蒸発器14の空気流れ下流側に配置されている。空調ケーシング51には、内外気切替箱52と室内送風機53とが配置されている。
【0063】
内外気切替箱52は、空調ケーシング51内の空気通路に内気と外気とを切替導入する内外気切替部である。室内送風機53は、内外気切替箱52を通して空調ケーシング51内の空気通路に導入された内気および外気を吸入して送風する。室内送風機53の作動は、制御装置60によって制御される。
【0064】
空調ケーシング51内の空気通路において空気側蒸発器14とヒータコア22との間には、エアミックスドア54が配置されている。エアミックスドア54は、空気側蒸発器14を通過した冷風のうちヒータコア22に流入する冷風と冷風バイパス通路55を流れる冷風との風量割合を調整する。
【0065】
冷風バイパス通路55は、空気側蒸発器14を通過した冷風がヒータコア22をバイスして流れる空気通路である。
【0066】
エアミックスドア54は、空調ケーシング51に対して回転可能に支持された回転軸と、回転軸に結合されたドア基板部とを有する回転式ドアである。エアミックスドア54の開度位置を調整することによって、空調ケーシング51から車室内に吹き出される空調風の温度を所望温度に調整できる。
【0067】
エアミックスドア54の回転軸は、サーボモータ56によって駆動される。エアミックスドア用サーボモータ56の作動は、制御装置60によって制御される。
【0068】
エアミックスドア54は、空気流れと略直交する方向にスライド移動するスライドドアであってもよい。スライドドアは、剛体で形成された板状のドアであってもよいし。可撓性を有するフィルム材で形成されたフィルムドアであってもよい。
【0069】
エアミックスドア54によって温度調整された空調風は、空調ケーシング51に形成された吹出口57から車室内へ吹き出される。
【0070】
図2に示す制御装置60は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成されている。制御装置60は、ROM内に記憶された制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行う。制御装置60の出力側には各種制御対象機器が接続されている。制御装置60は、各種制御対象機器の作動を制御する制御部である。
【0071】
制御装置60によって制御される制御対象機器は、圧縮機11、第1膨張弁13、第2膨張弁16、三方弁26、室外送風機40、室内送風機53およびエアミックスドア用サーボモータ56等である。
【0072】
制御装置60のうち圧縮機11の電動モータを制御するソフトウェアおよびハードウェアは、冷媒吐出能力制御部である。制御装置60のうち第1膨張弁13および第2膨張弁16を制御するソフトウェアおよびハードウェアは、絞り制御部である。
【0073】
制御装置60のうち三方弁26を制御するソフトウェアおよびハードウェアは、高温熱媒体流れ制御部である。
【0074】
制御装置60のうち室外送風機40を制御するソフトウェアおよびハードウェアは、外気送風能力制御部である。
【0075】
制御装置60のうち室内送風機53を制御するソフトウェアおよびハードウェアは、空気送風能力制御部である。
【0076】
制御装置60のうちエアミックスドア用サーボモータ56を制御するソフトウェアおよびハードウェアは、風量割合制御部である。
【0077】
制御装置60の入力側には、種々の制御用センサ群が接続されている。種々の制御用センサ群は、内気温度センサ61、外気温度センサ62、日射量センサ63、高温冷却水温度センサ64、凝縮器近傍空気温度センサ65、凝縮器近傍湿度センサ66、ヒータコア近傍空気温度センサ67、ヒータコア近傍湿度センサ68等である。
【0078】
内気温度センサ61は車室内温度Trを検出する。外気温度センサ62は外気温Tamを検出する。日射量センサ63は車室内の日射量Tsを検出する。
【0079】
高温冷却水温度センサ64は、高温冷却水回路20の冷却水の温度TWを検出する。例えば、高温冷却水温度センサ64は、凝縮器12から流出した冷却水の温度を検出する。
【0080】
凝縮器近傍空気温度センサ65は、凝縮器12近傍の空気の温度を検出する。換言すれば、凝縮器近傍空気温度センサ65は、車両のモータールームまたはエンジンルーム内の空気の温度を検出する。
【0081】
凝縮器近傍湿度センサ66は、凝縮器12近傍の湿度を検出する。換言すれば、凝縮器近傍湿度センサ66は、車両のモータールームまたはエンジンルーム内の湿度を検出する。
【0082】
制御装置60は、凝縮器近傍空気温度センサ65が検出した空気温度、および凝縮器近傍湿度センサ66が検出した湿度等に基づいて、凝縮器12近傍での露点温度を算出する。
【0083】
ヒータコア近傍空気温度センサ67は、ヒータコア22近傍の空気の温度を検出する。換言すれば、ヒータコア近傍空気温度センサ67は、空調ケーシング51内の空気の温度を検出する。
【0084】
ヒータコア近傍湿度センサ68は、ヒータコア22近傍の湿度を検出する。換言すれば、ヒータコア近傍湿度センサ68は、空調ケーシング51内の湿度を検出する。
【0085】
制御装置60は、ヒータコア近傍空気温度センサ67が検出した空気温度、およびヒータコア近傍湿度センサ68が検出した湿度等に基づいて、ヒータコア22近傍での露点温度を算出する。
【0086】
制御装置60の入力側には、図示しない各種操作スイッチが接続されている。各種操作スイッチは操作パネル70に設けられており、乗員によって操作される。操作パネル70は車室内前部の計器盤付近に配置されている。制御装置60には、各種操作スイッチからの操作信号が入力される。
【0087】
各種操作スイッチは、オートスイッチ、エアコンスイッチ、温度設定スイッチ等である。オートスイッチは、車両用空調装置1の自動制御運転の設定および解除を行うスイッチである。エアコンスイッチは、室内空調ユニット50にて空気の冷却を行うか否かを設定するスイッチである。温度設定スイッチは、車室内の設定温度を設定するスイッチである。
【0088】
次に、上記構成における作動を説明する。以下では、制御装置60は、操作パネル70のオートスイッチが乗員によってオンされている場合の作動について説明する。操作パネル70のエアコンスイッチが乗員によってオンされている場合、目標吹出温度TAO等と図3に示す制御マップとに基づいて運転モードを切り替える。運転モードとしては、少なくとも冷房モードおよび除湿暖房モードがある。
【0089】
目標吹出温度TAOは、車室内へ吹き出す吹出空気の目標温度である。制御装置60は、目標吹出温度TAOを以下の数式に基づいて算出する。
【0090】
TAO=Kset×Tset-Kr×Tr-Kam×Tam-Ks×Ts+C
この数式において、Tsetは操作パネル70の温度設定スイッチによって設定された車室内設定温度、Trは内気温度センサ61によって検出された内気温、Tamは外気温度センサ62によって検出された外気温、Tsは日射量センサ63によって検出された日射量である。Kset、Kr、Kam、Ksは制御ゲインであり、Cは補正用の定数である。
【0091】
目標吹出温度TAOの低温域では冷房モードに切り替える。目標吹出温度TAOの高温域では除湿暖房モードに切り替える。
【0092】
除湿暖房モードでは、車室内へ送風される空気を空気側蒸発器14で冷却除湿し、空気側蒸発器14で冷却除湿された空気をヒータコア22で加熱することによって車室内を除湿暖房する。
【0093】
制御装置60は、操作パネル70のエアコンスイッチが乗員によってオフされており且つ目標吹出温度TAOが高温域にある場合、暖房モードに切り替える。
【0094】
暖房モードでは、車室内へ送風される空気を空気側蒸発器14で冷却除湿することなくヒータコア22で加熱することによって車室内を暖房する。
【0095】
次に、冷房モード、除湿暖房モードおよび暖房モードにおける作動について説明する。冷房モード、除湿暖房モードおよび暖房モードでは、制御装置60は、目標吹出温度TAOや上述のセンサ群の検出信号等に基づいて、制御装置60に接続された各種制御機器の作動状態(換言すれば、各種制御機器へ出力する制御信号)を決定する。
【0096】
(1)冷房モード
冷房モードでは、制御装置60は、圧縮機11および高温側ポンプ21を作動させる。
冷房モードでは、制御装置60は、第1膨張弁13を絞り開度で開弁させ、第2膨張弁16を閉弁させる。冷房モードでは、制御装置60は、ヒータコア流路20bおよびラジエータ流路20cの両方が開くように三方弁26を制御する。
【0097】
これにより、冷房モード時の冷凍サイクル装置10では、図3の太実線のように冷媒が流れ、サイクルを循環する冷媒の状態については、以下のように変化する。
【0098】
すなわち、圧縮機11から吐出された高圧冷媒が凝縮器12に流入する。凝縮器12に流入した冷媒は、高温冷却水回路20の冷却水に放熱する。これにより、凝縮器12で冷媒が冷却されて凝縮する。
【0099】
凝縮器12から流出した冷媒は、第1膨張弁13へ流入して、第1膨張弁13にて低圧冷媒となるまで減圧膨張される。第1膨張弁13にて減圧された低圧冷媒は、空気側蒸発器14に流入し、車室内へ送風される空気から吸熱して蒸発する。これにより、車室内へ送風される空気が冷却される。
【0100】
そして、空気側蒸発器14から流出した冷媒は、圧縮機11の吸入側へと流れて再び圧縮機11にて圧縮される。
【0101】
このように、冷房モードでは、空気側蒸発器14にて低圧冷媒に空気から吸熱させて、冷却された空気を車室内へ吹き出すことができる。これにより、車室内の冷房を実現することができる。
【0102】
冷房モード時の高温冷却水回路20では、図3の太実線に示すように、高温側ラジエータ23に高温冷却水回路20の冷却水が循環して高温側ラジエータ23で冷却水から外気に放熱される。
【0103】
このとき、図3の太実線に示すように、ヒータコア22にも高温冷却水回路20の冷却水が循環するが、ヒータコア22における冷却水から空気への放熱量はエアミックスドア54によって調整される。
【0104】
エアミックスドア54のサーボモータへ出力される制御信号については、エアミックスドア54によって温度調整された空調風が目標吹出温度TAOとなるように決定される。具体的には、エアミックスドア54の開度が、目標吹出温度TAO、空気側蒸発器14の温度、および高温冷却水回路20の冷却水の温度TW等に基づいて決定される。
【0105】
(2)除湿暖房モード
除湿暖房モードでは、制御装置60は、圧縮機11、高温側ポンプ21および低温側ポンプ31を作動させる。除湿暖房モードでは、制御装置60は、第1膨張弁13および第2膨張弁16を絞り開度で開弁させる。除湿暖房モードでは、制御装置60は、三方弁26は、ヒータコア流路20bが開き、ラジエータ流路20cが閉じるように三方弁26を制御する。
【0106】
除湿暖房モードの冷凍サイクル装置10では、図4の太実線のように冷媒が流れ、サイクルを循環する冷媒の状態については、次のように変化する。
【0107】
すなわち、冷凍サイクル装置10では、図4の太実線に示すように、圧縮機11から吐出された高圧冷媒は、凝縮器12へ流入して、高温冷却水回路20の冷却水と熱交換して放熱する。これにより、高温冷却水回路20の冷却水が加熱される。
【0108】
凝縮器12から流出した冷媒は、第1膨張弁13へ流入して、第1膨張弁13にて低圧冷媒となるまで減圧膨張される。第1膨張弁13にて減圧された低圧冷媒は、空気側蒸発器14に流入し、車室内へ送風される空気から吸熱して蒸発する。これにより、車室内へ送風される空気が冷却除湿される。
【0109】
そして、空気側蒸発器14から流出した冷媒は、圧縮機11の吸入側へと流れて再び圧縮機11にて圧縮される。
【0110】
これと同時に、冷凍サイクル装置10では、図4の太実線に示すように、凝縮器12から流出した冷媒は、第2膨張弁16へ流入して、第2膨張弁16にて低圧冷媒となるまで減圧膨張される。第2膨張弁16にて減圧された低圧冷媒は、冷却水側蒸発器17に流入し、低温冷却水回路30の冷却水から吸熱して蒸発する。これにより、低温冷却水回路30の冷却水が冷却される。
【0111】
そして、冷却水側蒸発器17から流出した冷媒は、圧縮機11の吸入側へと流れて再び圧縮機11にて圧縮される。
【0112】
除湿暖房モード時の高温冷却水回路20は、図4の太実線に示す第1状態になる。第1状態では、凝縮器12とヒータコア22との間で高温冷却水回路20の冷却水が循環するが高温側ラジエータ23には高温冷却水回路20の冷却水が循環しない。
【0113】
エアミックスドア54のサーボモータへ出力される制御信号については、エアミックスドア54が図4の実線位置に位置してヒータコア22の空気通路を全開し、空気側蒸発器14を通過した送風空気の全流量がヒータコア22を通過するように決定される。
【0114】
これにより、ヒータコア22で高温冷却水回路20の冷却水から、車室内へ送風される空気に放熱される。したがって、空気側蒸発器14で冷却除湿された空気がヒータコア22で加熱されて車室内に吹き出される。
【0115】
このとき、三方弁26がラジエータ流路20cを閉じているので、高温側ラジエータ23に高温冷却水回路20の冷却水が循環しない。したがって、高温側ラジエータ23で冷却水から外気に放熱されない。
【0116】
除湿暖房モード時の低温冷却水回路30では、図4の太実線に示すように、低温側ラジエータ32に低温冷却水回路30の冷却水が循環して低温側ラジエータ32にて低温冷却水回路30の冷却水に外気から吸熱される。
【0117】
このように、除湿暖房モードでは、圧縮機11から吐出された高圧冷媒の有する熱を凝縮器12にて高温冷却水回路20の冷却水に放熱させ、高温冷却水回路20の冷却水が有する熱をヒータコア22にて空気に放熱させ、ヒータコア22で加熱された空気を車室内へ吹き出すことができる。
【0118】
ヒータコア22では、空気側蒸発器14にて冷却除湿された空気が加熱される。これにより、車室内の除湿暖房を実現することができる。
【0119】
(3)暖房モード
暖房モードでは、制御装置60は、圧縮機11および高温側ポンプ21を作動させる。暖房モードでは、制御装置60は、第1膨張弁13を閉弁させ、第2膨張弁16を絞り開度で開弁させる。暖房モードでは、制御装置60は、三方弁26は、ヒータコア流路20bが開きラジエータ流路20cが閉じるように三方弁26を制御する。
【0120】
暖房モードの冷凍サイクル装置10では、図5の太実線のように冷媒が流れ、サイクルを循環する冷媒の状態については、次のように変化する。
【0121】
すなわち、冷凍サイクル装置10では、図5の太実線に示すように、凝縮器12から流出した冷媒は、第2膨張弁16へ流入して、第2膨張弁16にて低圧冷媒となるまで減圧膨張される。第2膨張弁16にて減圧された低圧冷媒は、冷却水側蒸発器17に流入し、低温冷却水回路30の冷却水から吸熱して蒸発する。これにより、低温冷却水回路30の冷却水が冷却される。
【0122】
このとき、第1膨張弁13が閉弁されているので、空気側蒸発器14に冷媒が流れない。したがって、空気側蒸発器14で空気が冷却除湿されない。
【0123】
暖房モード時の高温冷却水回路20は、図5の太実線に示す第1状態になる。第1状態では、凝縮器12とヒータコア22との間で高温冷却水回路20の冷却水が循環するが高温側ラジエータ23には高温冷却水回路20の冷却水が循環しない。
【0124】
エアミックスドア54のサーボモータへ出力される制御信号については、エアミックスドア54が図5の実線位置に位置してヒータコア22の空気通路を全開し、空気側蒸発器14を通過した送風空気の全流量がヒータコア22を通過するように決定される。
【0125】
これにより、ヒータコア22で高温冷却水回路20の冷却水から、車室内へ送風される空気に放熱される。したがって、空気側蒸発器14を通過した空気(すなわち、空気側蒸発器14で冷却除湿されていない空気)がヒータコア22で加熱されて車室内に吹き出される。
【0126】
このとき、三方弁26がラジエータ流路20cを閉じているので、高温側ラジエータ23に高温冷却水回路20の冷却水が循環しない。したがって、高温側ラジエータ23で冷却水から外気に放熱されない。
【0127】
暖房モード時の低温冷却水回路30では、図5の太実線に示すように、低温側ラジエータ32に低温冷却水回路30の冷却水が循環して低温側ラジエータ32にて低温冷却水回路30の冷却水に外気から吸熱される。
【0128】
このように、暖房モードでは、圧縮機11から吐出された高圧冷媒の有する熱を凝縮器12にて高温冷却水回路20の冷却水に放熱させ、高温冷却水回路20の冷却水が有する熱をヒータコア22にて空気に放熱させ、ヒータコア22で加熱された空気を車室内へ吹き出すことができる。
【0129】
ヒータコア22では、空気側蒸発器14にて冷却除湿されることなく空気側蒸発器14にてを通過した空気を加熱する。これにより、車室内の暖房を実現することができる。
【0130】
(4)除霜モード
除霜モードは、除湿暖房モード後または暖房モード後に低温側ラジエータ32の除霜を行う。除湿暖房モードまたは暖房モードでは、低温側ラジエータ32で低温冷却水回路30の冷却水が外気から吸熱するので、低温側ラジエータ32の温度が氷点下になると低温側ラジエータ32に着霜が生じる。そこで、除湿暖房モードを実行した後の停車時に、高温冷却水回路20の冷却水に残った熱を利用して低温側ラジエータ32を除霜する。
【0131】
具体的には、除霜モードでは、制御装置60は、高温側ポンプ21を作動させ、圧縮機11、低温側ポンプ31、室外送風機40および室内送風機53を停止させる。除湿暖房モードでは、制御装置60は、ヒータコア流路20bおよびラジエータ流路20cの両方を開けるように三方弁26を制御する。
【0132】
圧縮機11を停止させるので、除霜モードの冷凍サイクル装置10には冷媒が流れない。低温側ポンプ31を停止させるので、除霜モード時の低温冷却水回路30に冷却水が循環しない。
【0133】
除湿暖房モード時の高温冷却水回路20は、図6の太実線に示す第2状態になる。第2状態では、凝縮器12とヒータコア22および高温側ラジエータ23との間で高温冷却水回路20の冷却水が循環する。
【0134】
具体的には、高温側ポンプ21から吐出された冷却水が凝縮器12を通過して分岐部20dでヒータコア22側と高温側ラジエータ23側とに分岐し、ヒータコア22と高温側ラジエータ23とを並列に流れて合流部20eで合流し、高温側ポンプ21に吸入される。これにより、凝縮器12内の高温の冷却水が高温側ラジエータ23に流入する。
【0135】
室内送風機53を停止させているので、ヒータコア22に空気が流れない。したがって、ヒータコア22内の高温の冷却水は空気で冷却されることなく高温側ラジエータ23に流入する。
【0136】
室外送風機40を停止させているので、高温側ラジエータ23に空気が流れない。したがって、高温側ラジエータ23では冷却水が外気によって冷却されない。
【0137】
高温側ラジエータ23および低温側ラジエータ32は、共通のフィン37によって互いに熱移動可能に接続されているので、高温側ラジエータ23を流れる高温冷却水回路20の冷却水の熱がフィン37を介して低温側ラジエータ32に移動する。
【0138】
このように低温側ラジエータ32に供給された熱によって、低温側ラジエータ32の表面に付着した霜を融かすことができる。
【0139】
すなわち、除霜モードでは、ラジエータ流路20c、高温側ラジエータ23およびフィン37は、凝縮器12で加熱された冷却水の熱を低温側ラジエータ32に供給する熱供給部である。
【0140】
高温側ラジエータ23にて冷却水の熱が低温側ラジエータ32に移動するので、高温側ラジエータ23にて冷却水が冷却される。高温側ラジエータ23で冷却された冷却水は、ヒータコア22から流出した冷却水と合流部20eで合流した後、凝縮器12に流入する。
【0141】
このように冷却水が循環することにより、凝縮器12および凝縮器流路20aの熱を除霜に有効利用でき、ヒータコア22およびヒータコア流路20bの冷却水の熱も除霜に有効利用できる。
【0142】
合流部20eにリザーブタンク24が配置されているので、高温側ラジエータ23で冷却された冷却水とヒータコア22から流出した冷却水とがリザーブタンク24で混合されて凝縮器12に流入する。リザーブタンク24内の冷却水流路は、冷却水を気液分離するために入り組んだ流路になっている。したがって、高温側ラジエータ23で冷却された冷却水とヒータコア22から流出した冷却水とがリザーブタンク24で良好に混合されて凝縮器12に流入するので、凝縮器12に流入する冷却水の温度分布を小さくできる。
【0143】
このとき、制御装置60は、高温冷却水回路20の冷却水の温度(具体的には、高温冷却水温度センサ64で検出した冷却水温度)が図7のグラフの太実線のように時間変化するように三方弁26を制御する。
【0144】
具体的には、以下の(1)~(6)の制御を行うことにより、高温冷却水回路20の冷却水の温度が図7のグラフの破線で示す比較例のように急激に低下することを抑制できる。すなわち、図7のグラフの太実線のように高温冷却水回路20の冷却水の温度を緩やかに低下させることができる。
【0145】
(1)制御装置60は、除湿暖房モードまたは暖房モードから除霜モードに切り替えた際、高温側ラジエータ23に流入する冷却水の流量が、ヒータコア22に流入する冷却水の流量よりも少なくなるように三方弁26を制御する。
【0146】
(2)制御装置60は、除湿暖房モードまたは暖房モードから除霜モードに切り替えた際、高温側ラジエータ23に流入する冷却水の流量が、時間の経過とともに徐々に増加するように三方弁26を制御する。
【0147】
(3)制御装置60は、除湿暖房モードまたは暖房モードから除霜モードに切り替えた際、ヒータコア22に流入する冷却水の温度がヒータコア22での露点温度よりも高くなるように三方弁26を制御する。
【0148】
(4)制御装置60は、除霜モードにおける高温冷却水回路20の冷却水の温度と、除霜モードに切り替えたときの低温側ラジエータ32の温度TR0との温度差が許容範囲ΔTR内に収まるように三方弁26を制御する。
【0149】
(5)制御装置60は、除霜モードにおける高温冷却水回路20の冷却水の温度と、除霜モードに切り替えたときの凝縮器12の温度TC0との温度差が許容範囲ΔTC内に収まるように三方弁26を制御する。
【0150】
(6)制御装置60は、除霜モードにおける高温冷却水回路20の冷却水の温度と、除霜モードに切り替えたときのヒータコア22の温度TH0との温度差が許容範囲ΔTH内に収まるように三方弁26を制御する。
【0151】
したがって、除湿暖房モードまたは暖房モードから除霜モードに切り替えた際の低温側ラジエータ32、凝縮器12およびヒータコア22におけるヒートショックを軽減できる。
【0152】
すなわち、除湿暖房モードまたは暖房モードから除霜モードに切り替えた際に低温側ラジエータ32が高温側ラジエータ23からの熱で急激に加熱されるというヒートショックを軽減できる。除湿暖房モードまたは暖房モードから除霜モードに切り替えた際に高温側ラジエータ23で冷却された冷却水によって凝縮器12およびヒータコア22が急激に冷却されるというヒートショックを軽減できる。
【0153】
高温側ラジエータ23に流入する冷却水の流量を時間の経過とともに徐々に増加させるので、ヒートショックを軽減しつつ低温側ラジエータ32を極力速やかに除霜できる。
【0154】
凝縮器12に流入する冷却水の温度を凝縮器12での露点温度よりも高くするので、除霜モードにおける凝縮器12の結露を抑制できる。
【0155】
ヒータコア22に流入する冷却水の温度をヒータコア22での露点温度よりも高くするので、除霜モードにおけるヒータコア22の結露を抑制できる。
【0156】
本実施形態の変形例として、制御装置60は、除湿暖房モードまたは暖房モードから除霜モードに切り替えた際、高温側ポンプ21の出力を小さく抑えてもよい。これによると、除霜モードにおける高温冷却水回路20の冷却水の流量が少なく抑えられることから、高温冷却水回路20の冷却水の温度は、図7のグラフの太二点鎖線に示すように時間変化する。
【0157】
すなわち、除霜モードに切り替えた直後の高温冷却水回路20の冷却水の温度の時間変化率を小さく抑えることができる。そのため、高温冷却水回路20の冷却水の温度を一層緩やかに低下させることができるので、ヒートショックを一層軽減できる。
【0158】
除霜モードでは、制御装置60は電気ヒータ25を作動させてもよい。これにより、高温冷却水回路20の冷却水が加熱されるので、一層速やかに除霜できる。
【0159】
また、ヒータコア22に流入する冷却水が加熱されるので、冷却水の熱が除霜のために用いられても、ヒータコア22に流入する冷却水の温度が低くなりすぎることを抑制できる。そのため、ヒータコア22でのヒートショックを一層軽減できる。
【0160】
このときの高温冷却水回路20の冷却水流れ方向における冷却水の温度変化を図8に示す。
【0161】
電気ヒータ25は凝縮器12よりも高温になる場合が多い。この点に鑑みて、電気ヒータ25が凝縮器12の冷媒流れ下流側に配置されているので、冷却水を効率的に加熱できる。
【0162】
凝縮器12において冷却水は、冷媒とは逆に過冷却部12c、凝縮部12aの順番に流れるので、図8に示すように、過冷却部12cにおける冷媒と冷却水との温度差ΔT1、および凝縮部12aにおける冷媒と冷却水との温度差ΔT2を小さく抑えることができる。電気ヒータ25が凝縮器12の冷媒流れ下流側に配置されているので、電気ヒータ25における冷却水との温度差ΔT3を小さく抑えることができる。
【0163】
本実施形態では、凝縮器12から流出した冷却水が分岐部20dにてヒータコア22側と高温側ラジエータ23側とに分岐する。ヒータコア22を流れた冷却水と高温側ラジエータ23を流れた冷却水とが合流部20eにて合流する。そして、三方弁26が除湿暖房モードまたは暖房モードと除霜モードとを切り替える。
【0164】
これによると、除湿暖房モードまたは暖房モードから除霜モードに切り替えたときに凝縮器12の高温の冷却水がヒータコア22側と高温側ラジエータ23側とに分岐して流れ、高温側ラジエータ23を流れた低温の冷却水がヒータコア22を流れた高温の冷却水と合流して凝縮器12に流入する。
【0165】
そのため、高温側ラジエータ23に流入する冷却水の流量を少なくできるとともに、凝縮器12に流入する冷却水の温度を、高温側ラジエータ23を流れた冷却水の温度よりも高くすることができる。
【0166】
したがって、除湿暖房モードまたは暖房モードから除霜モードに切り替えて低温側ラジエータ32の除霜を開始した際の低温側ラジエータ32および凝縮器12のヒートショックを軽減できる。
【0167】
本実施形態では、制御装置60は、除湿暖房モードまたは暖房モードから除霜モードへ切り替えたとき、高温側ラジエータ23側へ流れる冷却水の流量が、ヒータコア22側へ流れる冷却水の流量よりも少なくなるように三方弁26を制御する。
【0168】
これにより、除湿暖房モードまたは暖房モードから除霜モードに切り替えたときに高温側ラジエータ23に流入する冷却水の流量を確実に少なくできるので、低温側ラジエータ32の除霜を開始した際の低温側ラジエータ32および凝縮器12のヒートショックを確実に軽減できる。
【0169】
本実施形態では、制御装置60は、除湿暖房モードまたは暖房モードから除霜モードへ切り替えたとき、高温側ラジエータ23側へ流れる冷却水の流量を時間の経過とともに増加させる。
【0170】
これにより、ヒートショックを軽減しつつ低温側ラジエータ32を極力速やかに除霜できる。
【0171】
本実施形態では、制御装置60は、除霜モードにおいて、凝縮器12に流入する冷却水の温度が凝縮器12での露点温度よりも高くなるように三方弁26を制御する。これにより、除霜モードにおける凝縮器12の結露を抑制できる。
【0172】
本実施形態では、制御装置60は、除霜モードにおいて、ヒータコア22に流入する冷却水の温度がヒータコア22での露点温度よりも高くなるように三方弁26を制御する。これにより、除霜モードにおけるヒータコア22の結露を抑制できる。
【0173】
本実施形態では、制御装置60は、除霜モードにおける冷却水の温度と、除霜モードに切り替えたときの低温側ラジエータ32の温度との温度差が所定範囲内になるように三方弁26を制御する。
【0174】
これにより、低温側ラジエータ32の除霜を開始した際の低温側ラジエータ32のヒートショックを確実に軽減できる。
【0175】
本実施形態では、凝縮器12は、冷媒と冷却水とが互いに対向して流れる構造を有している。このため、低温側ラジエータ32の除霜を開始した際の凝縮器12の各部位における冷媒と冷却水の温度差を低減できるので、凝縮器12のヒートショックを一層軽減できる。
【0176】
具体的には、凝縮器12において、冷却水は過冷却部12c、凝縮部12aの順番に流れる。このため、低温側ラジエータ32の除霜を開始した際の凝縮部12aおよび過冷却部12cにおける冷媒と冷却水の温度差を低減できるので、凝縮器12のヒートショックを一層軽減できる。
【0177】
本実施形態では、電気ヒータ25は、冷却水の流れにおいて、分岐部の下流側かつ熱利用部の上流側に配置されているので、凝縮器12よりも高温になる電気ヒータ25で、冷却水を効率的に加熱できる。
【0178】
本実施形態では、高温側ポンプ21は、冷却水の流れにおいて、合流部20eの下流側、かつ分岐部20dの上流側に配置されている。これにより、高温冷却水回路20のポンプ個数を最小化できる。
【0179】
本実施形態では、制御装置60は、除湿暖房モードまたは暖房モードから除霜モードに切り替えたとき、凝縮器12に流入する冷却水の温度の時間変化率が小さくなるように高温側ポンプ21を制御する。
【0180】
これによると、除霜モードにおける高温冷却水回路20の冷却水の流量が少なく抑えられることから、除霜モードに切り替えた直後の高温冷却水回路20の冷却水の温度の時間変化率を小さく抑えることができる。そのため、高温冷却水回路20の冷却水の温度を一層緩やかに低下させることができるので、ヒートショックを一層軽減できる。
【0181】
本実施形態では、リザーブタンク24は、合流部20eの下流側かつ凝縮器12の上流側、または合流部20eに配置されている。
【0182】
これにより、除霜モードにおいて、高温側ラジエータ23で冷却された冷却水とヒータコア22から流出した冷却水とがリザーブタンク24で良好に混合されて凝縮器12に流入するので、凝縮器12に流入する冷却水の温度分布を小さくできる。
【0183】
(第2実施形態)
上記第1実施形態では、高温冷却水回路20に高温側ラジエータ23が配置され、低温冷却水回路30に低温側ラジエータ32が配置されているが、本実施形態では、図9に示すように、高温冷却水回路20および低温冷却水回路30に共通ラジエータ45が配置されている。共通ラジエータ45は、高温冷却水回路20と低温冷却水回路30とで共通のラジエータである。
【0184】
共通ラジエータ45には、高温冷却水回路20のラジエータ流路20cの冷却水と、低温冷却水回路30の冷却水の両方が流通可能になっている。
【0185】
共通ラジエータ45は、冷却水と外気とを熱交換させる。共通ラジエータ45および室外送風機40は、車両の最前部に配置されている。従って、車両の走行時には共通ラジエータ45に走行風を当てることができるようになっている。
【0186】
低温冷却水回路30には、共通ラジエータ45への冷却水流路を開閉する開閉弁46が配置されている。開閉弁46の開閉作動は制御装置60によって制御される。
【0187】
冷房モードでは、制御装置60は、高温冷却水回路20のラジエータ流路20cの冷却水が共通ラジエータ45に流通するように三方弁26を制御し、低温冷却水回路30の冷却水が共通ラジエータ45に流通しないように開閉弁46を閉弁する。
【0188】
これにより、冷房モードでは、共通ラジエータ45は高温冷却水回路20のラジエータ流路20cの冷却水から外気に放熱する。
【0189】
除湿暖房モードでは、制御装置60は、高温冷却水回路20のラジエータ流路20cの冷却水が共通ラジエータ45に流通しないように三方弁26を制御し、低温冷却水回路30の冷却水が共通ラジエータ45に流通するように開閉弁46を開弁する。
【0190】
これにより、除湿暖房モードでは、共通ラジエータ45は低温冷却水回路30の冷却水が外気から吸熱する。除湿暖房モードでは、冷却水側蒸発器17および共通ラジエータ45は、第2膨張弁16で減圧された冷媒を蒸発させることによって吸熱させる吸熱部である。
【0191】
暖房モードでは、制御装置60は、高温冷却水回路20のラジエータ流路20cの冷却水が共通ラジエータ45に流通しないように三方弁26を制御し、低温冷却水回路30の冷却水が共通ラジエータ45に流通するように開閉弁46を開弁する。
【0192】
これにより、暖房モードでは、共通ラジエータ45は低温冷却水回路30の冷却水が外気から吸熱する。暖房モードでは、冷却水側蒸発器17および共通ラジエータ45は、第2膨張弁16で減圧された冷媒を蒸発させることによって吸熱させる吸熱部である。
【0193】
除霜モードでは、制御装置60は、高温冷却水回路20のラジエータ流路20cの冷却水が共通ラジエータ45に流通するように三方弁26を制御し、低温冷却水回路30の冷却水が共通ラジエータ45に流通しないように開閉弁46を閉弁する。
【0194】
これにより、除霜モードでは、共通ラジエータ45は高温冷却水回路20のラジエータ流路20cの冷却水の熱によって除霜される。除霜モードでは、ラジエータ流路20cは、凝縮器12で加熱された冷却水の熱を共通ラジエータ45に供給する熱供給部である。
【0195】
本実施形態においても、上記実施形態と同様の作用効果を奏することができる。すなわち、除湿暖房モードまたは暖房モードから除霜モードに切り替えた際の共通ラジエータ45および凝縮器12のヒートショックを軽減できる。
【0196】
(第3実施形態)
上記第1実施形態では、第2膨張弁16で減圧された冷媒が低温冷却水回路30の冷却水を介して外気から吸熱するが、本実施形態では、図10に示すように、第2膨張弁16で減圧された冷媒が冷却水を介することなく外気から吸熱する。
【0197】
冷凍サイクル装置10は室外蒸発器18を備える。室外蒸発器18は、第2膨張弁16から流出した冷媒と外気とを熱交換させて冷媒に外気から吸熱させて冷媒を蒸発させる。室外蒸発器18は、第2膨張弁16で減圧された冷媒を蒸発させることによって吸熱させる吸熱部である。
【0198】
室外蒸発器18は、高温側ラジエータ23と共通のフィン37によって互いに接合されている。室外蒸発器18、高温側ラジエータ23および室外送風機40は、車両の最前部に配置されている。従って、車両の走行時には室外蒸発器18および高温側ラジエータ23に走行風を当てることができるようになっている。
【0199】
本実施形態においても、上記第1実施形態と同様に冷房モード、除湿暖房モード、暖房モードおよび除霜モードを切り替える。したがって、上記第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0200】
(他の実施形態)
上記実施形態を適宜組み合わせ可能である。上記実施形態を例えば以下のように種々変形可能である。
【0201】
(1)上記実施形態では、熱媒体として冷却水を用いているが、油などの各種媒体を熱媒体として用いてもよい。熱媒体として、ナノ流体を用いてもよい。ナノ流体とは、粒子径がナノメートルオーダーのナノ粒子が混入された流体のことである。
【0202】
(2)上記実施形態の冷凍サイクル装置10では、冷媒としてフロン系冷媒を用いているが、冷媒の種類はこれに限定されるものではなく、二酸化炭素等の自然冷媒や炭化水素系冷媒等を用いてもよい。
【0203】
また、上記実施形態の冷凍サイクル装置10は、高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超えない亜臨界冷凍サイクルを構成しているが、高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超える超臨界冷凍サイクルを構成していてもよい。
【0204】
(3)上記第1実施形態では、高温側ラジエータ23と低温側ラジエータ32とが別々のラジエータになっていて、高温側ラジエータ23と低温側ラジエータ32とが共通のフィン37によって互いに接合されているが、高温側ラジエータ23と低温側ラジエータ32とが1つのラジエータで構成されていてもよい。
【0205】
例えば、高温側ラジエータ23の冷却水タンクと低温側ラジエータ32の冷却水タンクとが互いに一体化されていることによって、高温側ラジエータ23と低温側ラジエータ32とが1つのラジエータで構成されていてもよい。
【0206】
(4)上記実施形態では、電気ヒータ25が高温冷却水回路20の分岐部20dの下流側かつヒータコア22の上流側に配置されているが、高温冷却水回路20における電気ヒータ25の位置はこれに限定されるものではない。
【0207】
例えば、電気ヒータ25は、高温冷却水回路20の凝縮器12の下流側かつ分岐部20dの上流側に配置されていてもよい。
【0208】
(5)上記第1、第3実施形態では、除湿暖房モードおよび暖房モードの場合、高温側ラジエータ23に高温冷却水回路20の冷却水が循環しないが、除湿暖房モードおよび暖房モードの場合、高温側ラジエータ23に高温冷却水回路20の冷却水が小流量で循環してもよい。
【0209】
例えば、除湿暖房モードおよび暖房モードの場合、高温側ラジエータ23に高温冷却水回路20の冷却水が除霜モードと比較して少ない流量で循環してもよい。
【0210】
この実施例においても、除湿暖房モードまたは暖房モードから除霜モードに切り替えて低温側ラジエータ32に循環する高温冷却水回路20の冷却水の流量が増加した際の低温側ラジエータ32および凝縮器12のヒートショックを軽減できる。
【0211】
すなわち、除湿暖房モードまたは暖房モードから除霜モードに切り替えた時に、高温側ラジエータ23に流入する冷却水の流量を極力少なくできるとともに、凝縮器12に流入する冷却水の温度を、高温側ラジエータ23を流れた冷却水の温度よりも高くすることができる。
【0212】
(6)上記第2実施形態では、除湿暖房モードおよび暖房モードの場合、高温冷却水回路20の冷却水が共通ラジエータ45に流通しないが、除湿暖房モードおよび暖房モードの場合、高温冷却水回路20の冷却水が共通ラジエータ45に小流量で流通してもよい。
【0213】
例えば、除湿暖房モードおよび暖房モードの場合、共通ラジエータ45に、高温冷却水回路20の冷却水が、除霜モードと比較して少ない流量で流通してもよい。
【0214】
この実施例においても、除湿暖房モードまたは暖房モードから除霜モードに切り替えて共通ラジエータ45を流通する高温冷却水回路20の冷却水の流量が増加した際の共通ラジエータ45および凝縮器12のヒートショックを軽減できる。
【0215】
すなわち、除湿暖房モードまたは暖房モードから除霜モードに切り替えた時に、共通ラジエータ45に流入する冷却水の流量を極力少なくできるとともに、凝縮器12に流入する冷却水の温度を、共通ラジエータ45を流れた冷却水の温度よりも高くすることができる。
【符号の説明】
【0216】
11 圧縮機
12 凝縮器(放熱部)
16 第2膨張弁(減圧部)
17 冷却水側蒸発器(吸熱部)
20c ラジエータ流路(熱供給部)
20d 分岐部
20e 合流部
22 ヒータコア(熱利用部)
23 高温側ラジエータ(熱供給部)
26 三方弁(切替部)
32 低温側ラジエータ(吸熱部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10