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特許7392299分散剤付着ポリテトラフルオロエチレン粒子、組成物、層状物、電子写真感光体、プロセスカートリッジ、および画像形成装置
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  • 特許-分散剤付着ポリテトラフルオロエチレン粒子、組成物、層状物、電子写真感光体、プロセスカートリッジ、および画像形成装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】分散剤付着ポリテトラフルオロエチレン粒子、組成物、層状物、電子写真感光体、プロセスカートリッジ、および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   C08L 27/18 20060101AFI20231129BHJP
   G03G 5/05 20060101ALI20231129BHJP
   G03G 5/147 20060101ALI20231129BHJP
   C08L 33/16 20060101ALI20231129BHJP
   C08K 5/095 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
C08L27/18
G03G5/05 104B
G03G5/147 504
C08L33/16
C08K5/095
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019111335
(22)【出願日】2019-06-14
(65)【公開番号】P2019218539
(43)【公開日】2019-12-26
【審査請求日】2022-02-28
(31)【優先権主張番号】P 2018114576
(32)【優先日】2018-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 渉
(72)【発明者】
【氏名】中村 隆宏
(72)【発明者】
【氏名】須田 信吾
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 真宏
(72)【発明者】
【氏名】藤井 亮介
(72)【発明者】
【氏名】草野 佳祐
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 有杜
(72)【発明者】
【氏名】福井 泰佑
【審査官】前田 直樹
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第105367692(CN,A)
【文献】国際公開第2009/001894(WO,A1)
【文献】特開2015-152629(JP,A)
【文献】特開2011-203693(JP,A)
【文献】特開2013-195710(JP,A)
【文献】特開2018-024868(JP,A)
【文献】特開2018-024869(JP,A)
【文献】特開2011-074129(JP,A)
【文献】特開2016-210886(JP,A)
【文献】特開2013-200525(JP,A)
【文献】特開2013-200504(JP,A)
【文献】特開2012-188514(JP,A)
【文献】特開2007-031713(JP,A)
【文献】米国特許第06337166(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0292794(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
G03G
C08K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素原子を持つ分散剤が表面に付着し、パーフルオロオクタン酸含有量がポリテトラフルオロエチレン粒子に対して0ppb以上25ppb以下であり、
前記フッ素原子を持つ分散剤が、フッ化アルキル基を有する重合性化合物を単独重合又は共重合した重合体である分散剤付着ポリテトラフルオロエチレン粒子。
【請求項2】
平均粒径が0.2μm以上4.5μm以下である請求項1に記載の分散剤付着ポリテトラフルオロエチレン粒子。
【請求項3】
上記フッ化アルキル基を有する重合性化合物を単独重合又は共重合した重合体が、下記一般式(FA)で示される構造単位を有するフッ化アルキル基含有重合体、又は下記一般式(FA)で示される構造単位と、下記一般式(FB)で示される構造単位とを有するフッ化アルキル基含有重合体である請求項1又は請求項に記載の分散剤付着ポリテトラフルオロエチレン粒子。
【化1】


(一般式(FA)及び(FB)中、RF1、RF2、RF3及びRF4は、各々独立に、水素原子、又はアルキル基を表す。XF1は、アルキレン鎖、ハロゲン置換アルキレン鎖、-S-、-O-、-NH-、又は単結合を表す。YF1は、アルキレン鎖、ハロゲン置換アルキレン鎖、-(Cfx2fx-1(OH))-又は単結合を表す。QF1は、-O-、又は-NH-を表す。fl、fm及びfnは、各々独立に、1以上の整数を表す。fp、fq、fr及びfsは、各々独立に、0または1以上の整数を表す。ftは、1以上7以下の整数を表す。fxは1以上の整数を表す。)
【請求項4】
前記フッ素原子を持つ分散剤の含有量が、前記ポリテトラフルオロエチレン粒子に対して0.5質量%以上10質量%以下である請求項1に記載の分散剤付着ポリテトラフルオロエチレン粒子。
【請求項5】
前記フッ素原子を持つ分散剤の含有量が、前記ポリテトラフルオロエチレン粒子に対して1質量%以上7質量%以下である請求項に記載の分散剤付着ポリテトラフルオロエチレン粒子。
【請求項6】
ポリテトラフルオロエチレン粒子と、フッ素原子を持つ分散剤と、を含有し、
パーフルオロオクタン酸含有量が前記ポリテトラフルオロエチレン粒子に対して0ppb以上25ppb以下であり、
前記フッ素原子を持つ分散剤が、フッ化アルキル基を有する重合性化合物を単独重合又は共重合した重合体である組成物。
【請求項7】
前記ポリテトラフルオロエチレン粒子の平均粒径が0.2μm以上4.5μm以下である請求項に記載の組成物。
【請求項8】
液体状又は固体状である請求項6又は請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
導電性基体と、前記導電性基体上に設けられた感光層と、を有し、
最表面層が、ポリテトラフルオロエチレン粒子と、フッ素原子を持つ分散剤と、を含有し、パーフルオロオクタン酸含有量が前記ポリテトラフルオロエチレン粒子に対して0ppb以上25ppb以下である層状物からなる層である電子写真感光体。
【請求項10】
前記ポリテトラフルオロエチレン粒子の平均粒径が0.2μm以上4.5μm以下である請求項に記載の電子写真感光体。
【請求項11】
前記最表面層が、架橋構造を有する表面保護層である請求項9又は請求項10に記載の電子写真感光体。
【請求項12】
請求項9~請求項11のいずれか1項に記載の電子写真感光体を備え、
画像形成装置に着脱するプロセスカートリッジ。
【請求項13】
請求項9~請求項11のいずれか1項に記載の電子写真感光体と、
前記電子写真感光体の表面を帯電する帯電手段と、
帯電した前記電子写真感光体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
トナーを含む現像剤により、前記電子写真感光体の表面に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、
前記トナー像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、
を備える画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散剤付着ポリテトラフルオロエチレン粒子、組成物、層状物、電子写真感光体、プロセスカートリッジ、および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリテトラフルオロエチレン粒子は、例えば、潤滑剤などとして広く利用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、「感光層にフッ素原子含有樹脂粒子を含有する電子写真感光体」が開示されている。そして、特許文献1には、フッ素原子含有樹脂粒子として、ポリテトラフルオロエチレン粒子が開示されている。
【0004】
一方、特許文献2には、「界面活性剤とバインダー樹脂とを含有する感光層を備え、
前記界面活性剤の含有量は、100.00質量部の前記バインダー樹脂に対して、0.10質量部以上3.00質量部以下であり、前記界面活性剤の疎水基は、パーフルオロアルキル基であり、前記界面活性剤は、ノニオン性を有する、電子写真感光体。」が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-104145号公報
【文献】特開2017-090566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ポリテトラフルオロエチレン粒子は、フッ素原子を持つ分散剤(以下「フッ素含有分散剤」とも称する)と共に、例えば、分散媒、粉体等の成分と混合されて使用される。しかし、混合される成分の状態(例えば、分散媒の蒸発、粉体の溶融等の変化)が生じると、ポリテトラフルオロエチレン粒子の分散性が低下する傾向がある。
【0007】
そこで、本発明の課題は、パーフルオロオクタン酸(以下「PFOA」とも称する)含有量がポリテトラフルオロエチレン粒子(以下「PTFE粒子」とも称する)に対して25ppb超えである場合に比べ、混合される成分の状態が変化しても、分散状態の維持性が高い分散剤付着ポリテトラフルオロエチレン粒子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、以下の手段により解決される。
【0009】
<1>
フッ素原子を持つ分散剤が表面に付着し、パーフルオロオクタン酸含有量がポリテトラフルオロエチレン粒子に対して0ppb以上25ppb以下である分散剤付着ポリテトラフルオロエチレン粒子。
<2>
平均粒径が0.2μm以上4.5μm以下である<1>に記載の分散剤付着ポリテトラフルオロエチレン粒子。
<3>
前記フッ素原子を持つ分散剤が、フッ化アルキル基を有する重合性化合物を単独重合又は共重合した重合体である<1>又は<2>に記載の分散剤付着ポリテトラフルオロエチレン粒子。
<4>
上記フッ化アルキル基を有する重合性化合物を単独重合又は共重合した重合体が、下記一般式(FA)で示される構造単位を有するフッ化アルキル基含有重合体、又は下記一般式(FA)で示される構造単位と、下記一般式(FB)で示される構造単位とを有するフッ化アルキル基含有重合体である<3>に記載の分散剤付着ポリテトラフルオロエチレン粒子。
【化1】



(一般式(FA)及び(FB)中、RF1、RF2、RF3及びRF4は、各々独立に、水素原子、又はアルキル基を表す。XF1は、アルキレン鎖、ハロゲン置換アルキレン鎖、-S-、-O-、-NH-、又は単結合を表す。YF1は、アルキレン鎖、ハロゲン置換アルキレン鎖、-(Cfx2fx-1(OH))-又は単結合を表す。QF1は、-O-、又は-NH-を表す。fl、fm及びfnは、各々独立に、1以上の整数を表す。fp、fq、fr及びfsは、各々独立に、0または1以上の整数を表す。ftは、1以上7以下の整数を表す。fxは1以上の整数を表す。)
<5>
前記フッ素原子を持つ分散剤の含有量が、前記ポリテトラフルオロエチレン粒子に対して0.5質量%以上10質量%以下である<1>~<4>のいずれか1項に記載の分散剤付着ポリテトラフルオロエチレン粒子。
<6>
前記フッ素原子を持つ分散剤の含有量が、前記ポリテトラフルオロエチレン粒子に対して1質量%以上7質量%以下である<5>に記載の分散剤付着ポリテトラフルオロエチレン粒子。
<7>
ポリテトラフルオロエチレン粒子と、フッ素原子を持つ分散剤と、を含有し、
パーフルオロオクタン酸含有量が前記ポリテトラフルオロエチレン粒子に対して0ppb以上25ppb以下である組成物。
<8>
前記ポリテトラフルオロエチレン粒子の平均粒径が0.2μm以上4.5μm以下である<7>に記載の組成物。
<9>
液体状又は固体状である<7>又は<8>に記載の組成物。
<10>
ポリテトラフルオロエチレン粒子と、フッ素原子を持つ分散剤と、を含有し、
パーフルオロオクタン酸含有量が前記ポリテトラフルオロエチレン粒子に対して0ppb以上25ppb以下である層状物。
<11>
前記ポリテトラフルオロエチレン粒子の平均粒径が0.2μm以上4.5μm以下である<10>に記載の層状物。
<12>
導電性基体と、前記導電性基体上に設けられた感光層と、を有し、
最表面層が、<10>又は<11>に記載の層状物からなる層である電子写真感光体。
<13>
前記最表面層が、架橋構造を有する表面保護層である<12>に記載の電子写真感光体。
<14>
<12>又は<13>に記載の電子写真感光体を備え、
画像形成装置に着脱するプロセスカートリッジ。
<15>
<12>又は<13>に記載の電子写真感光体と、
前記電子写真感光体の表面を帯電する帯電手段と、
帯電した前記電子写真感光体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
トナーを含む現像剤により、前記電子写真感光体の表面に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、
前記トナー像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、
を備える画像形成装置。
【発明の効果】
【0010】
<1>、<2>、<3>、<4>、<5>、又は<6>に係る発明によれば、PFOA含有量がPTFE粒子に対して25ppb超えである場合に比べ、混合される成分の状態が変化しても、分散状態の維持性が高い分散剤付着PTFE粒子が提供される。
<7>、<8>、又は<9>に係る発明によれば、PFOA含有量がPTFE粒子に対して25ppb超えである場合に比べ、PTFE粒子と混合される成分の状態が変化しても、PTFE粒子の分散状態の維持性が高い組成物が提供される。
<10>、<11>、<12>、<13>、<14>又は<15>に係る発明によれば、PFOA含有量がPTFE粒子に対して25ppb超えである場合に比べ、PTFE粒子の分散状態が高い層状物、当該層状物からなる最表面層を有する電子写真感光体、当該電子写真感光体を備えるプロセスカートリッジ、又は当該電子写真感光体を備える画像形成装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態の電子写真感光体の層構成の一例を示す模式断面図である。
図2】本実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
図3】本実施形態に係る画像形成装置の他の一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一例である実施形態について、詳細に説明する。
【0013】
(分散剤付着ポリテトラフルオロエチレン粒子)
本実施形態に係る分散剤付着ポリテトラフルオロエチレン粒子(分散剤付着PTFE粒子)は、フッ素原子を持つ分散剤(フッ素含有分散剤)が表面に付着したPTFE粒子である。
そして、本実施形態に係る分散剤付着PTFE粒子は、パーフルオロオクタン酸(PFOA)含有量がポリテトラフルオロエチレン粒子(PTFE粒子)に対して0ppb以上25ppb以下である。
【0014】
本実施形態に係る分散剤付着PTFE粒子は、上記構成により、混合される成分の状態が変化しても、分散状態の維持性が高い。その理由は、次の通り推測される。
【0015】
通常、PTFE粒子は、フッ素含有分散剤と共に、例えば、分散媒、粉体等の成分と混合されて使用される。しかし、混合される成分の状態(例えば、分散媒の蒸発、粉体の溶融等の変化)が生じると、ポリテトラフルオロエチレン粒子の分散性が低下する傾向がある。
【0016】
具体的には、例えば、PTFE粒子およびフッ素含有分散剤と共に、樹脂および分散媒を含む液体状組成物(例えば、層形成用塗布液等)を利用し、PTFE粒子を含有した層状物を形成する場合、層状物を形成する過程で、分散媒の乾燥が行われる。すると、分散媒が乾燥(つまり蒸発)する過程で、PTFE粒子の分散性が低下し、PTFE粒子の凝集が起きることがある。
また、例えば、PTFE粒子およびフッ素含有分散剤と共に、樹脂粒子を含む固体状組成物(例えば粉体塗料等)を利用し、PTFE粒子を含有した層状物を形成する場合、層状物を形成する過程で、樹脂の溶融を生じさせる。すると、樹脂が溶融する過程で、PTFE粒子の分散性が低下し、PTFE粒子の凝集が起きることがある。
【0017】
その結果、PTFE粒子の分散状態が低い層状物が形成されることになる。この原因は、次の通りである。
PTFE粒子は、その製造過程で、PFOAが使用されたり、副生成物として生成したりするため、PTFE粒子には、PFOAが含まれることが多い。
PFOAが存在すると、組成物の状態では、フッ素含有分散剤によりPTFE粒子の分散性が高い状態である一方で、混合される成分の状態が変化すると、PTFE粒子に対するフッ素含有分散剤の付着状態が変化する。具体的には、PFOAによりフッ素含有分散剤の一部がPTFE粒子から離脱すると考えられる。そのため、PTFE粒子の分散性が低下し、PTFE粒子の凝集が起きる。
【0018】
そこで、本実施形態に係る分散剤付着PTFE粒子は、PFOA含有量をPTFE粒子に対して0ppb以上25ppb以下とする。つまり、PFOAを含まない、又は含んでも含有量を抑える。それにより、PFOAに起因し、混合される成分の状態が変化したときに生じる「PTFE粒子に対するフッ素含有分散剤の付着状態の変化」が抑制される。
【0019】
以上から、本実施形態に係る分散剤付着PTFE粒子は、混合される成分の状態が変化しても、分散状態の維持性が高いと推測される。
【0020】
以下、本実施形態に係る分散剤付着PTFE粒子の詳細について説明する。
【0021】
PFOA含有量は、PTFE粒子に対して0ppb以上25ppb以下であるが、分散状態の維持性向上の観点から、0.01ppb以上20ppb以下が好ましく、0.1ppb以上15ppb以下がより好ましい。なお、「ppb」は質量基準である。
PFOA含有量を低減する方法としては、純水、アルカリ水、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノール等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)、エステル類(酢酸エチル等)、その他の一般的な有機溶剤(トルエン、テトラヒドロフラン等)などにより、PTFE粒子を十分洗浄する方法が挙げられる。洗浄は室温で行っても良いが、加熱下で行うことにより効率的に低減することができる。
【0022】
PFOA含有量は、次の方法により測定される値である。
-試料の前処理-
分散剤付着PTFE粒子を含む層状物の場合、層状物を溶剤(例えばテトラヒドロフラン)に浸漬し、PTFE粒子および溶剤に不溶な物質以外を溶剤(例えばテトラヒドロフラン)に溶解させた後、純水中に滴下し析出物をろ別する。その際に得られたPFOAを含む溶液を捕集する。さらにろ別により得られた不溶物を溶剤に溶解させた後、純水中に滴下し析出物をろ別する。その際に得られたPFOAを含む溶液を捕集する作業を5回繰り返し、すべての作業で捕集した水溶液を、前処理済みの水溶液とする。
分散剤付着PTFE粒子を含む組成物の場合、組成物に対して層状物の場合と同様な処理を実施し、前処理済みの水溶液を得る。
分散剤付着PTFE粒子の場合、分散剤付着PTFE粒子に対して層状物の場合と同様な処理を実施し、前処理済みの水溶液を得る。
【0023】
-測定-
上記の手段で得た前処理済みの水溶液を「環境水・底質・生物中のペルフルオロオクタンスルホン のペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS) ぺルフルオロオクタン ぺルフルオロオクタン酸(PFOA)の分析 岩手県環境保健研究センター」に示される方法に準じて試料液の調整、測定を行う。
【0024】
PTFE粒子の平均粒径(分散剤付着PTFE粒子の平均粒径)は、特に制限はないが、0.2μm以上4.5μm以下が好ましく、0.2μm以上4μm以下がより好ましい。平均粒径0.2μm以上4.5μm以下のPTFE粒子は、PFOAを多く含む傾向がある。そのため、平均粒径0.2μm以上4.5μm以下のPTFE粒子は、特に、混合される成分の状態が変化すると、分散状態が低下する傾向がある。しかし、PFOA含有量を上記範囲に抑えることで、平均粒径0.2μm以上4.5μm以下のPTFE粒子でも、混合される成分の状態が変化しても、分散状態の維持性が向上する。
【0025】
PTFE粒子の平均粒径は、次の方法により測定される値である。
SEM(走査型電子顕微鏡)により例えば倍率5000倍以上で観察し、フッ素樹脂粒子(一次粒子が凝集した二次粒子)の最大径を測定し、これを50個の粒子について行った平均値をPTFE粒子の平均粒径とする。なお、SEMとして日本電子製JSM-6700Fを使用し、加速電圧5kVの二次電子画像を観察する。
【0026】
フッ素含有分散剤としては、フッ化アルキル基を有する重合性化合物を単独重合又は共重合した重合体(以下「フッ化アルキル基含有重合体」とも称する)が挙げられる。
【0027】
フッ素含有分散剤として具体的には、フッ化アルキル基を有する(メタ)アクリレートの単独重合体、フッ化アルキル基を有する(メタ)アクリレートとフッ素原子を有さないモノマーとのランダム又はブロック共重合体等が挙げられる。なお、(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよびメタクリレートの双方を意味する。
フッ化アルキル基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル(メタ)アククリレートが挙げられる。
フッ素原子を有さないモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アククリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチルo-フェニルフェノール(メタ)アクリレート、o-フェニルフェノールグリシジルエーテル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0028】
その他、フッ素含有分散剤として具体的には、米国特許5637142号明細書、特許第4251662号公報などに開示されたブロック又はブランチポリマーも挙げられる。更に、フッ素含有分散剤として具体的には、フッ素系界面活性剤も挙げられる。
【0029】
これらの中でも、フッ素含有分散剤としては、下記一般式(FA)で示される構造単位を有するフッ化アルキル基含有重合体が好ましく、下記一般式(FA)で示される構造単位と、下記一般式(FB)で示される構造単位とを有するフッ化アルキル基含有重合体がより好ましい。
【0030】
以下、下記一般式(FA)で示される構造単位と、下記一般式(FB)で示される構造単位とを有するフッ化アルキル基含有重合体について説明する。
【0031】
【化2】


【0032】
一般式(FA)及び(FB)中、RF1、RF2、RF3及びRF4は、各々独立に、水素原子、又はアルキル基を表す。
F1は、アルキレン鎖、ハロゲン置換アルキレン鎖、-S-、-O-、-NH-、又は単結合を表す。
F1は、アルキレン鎖、ハロゲン置換アルキレン鎖、-(Cfx2fx-1(OH))-又は単結合を表す。
F1は、-O-、又は-NH-を表す。
fl、fm及びfnは、各々独立に、1以上の整数を表す。
fp、fq、fr及びfsは、各々独立に、0または1以上の整数を表す。
ftは、1以上7以下の整数を表す。
fxは1以上の整数を表す。
【0033】
一般式(FA)及び(FB)中、RF1、RF2、RF3及びRF4を表す基としては、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基等が好ましく、水素原子、メチル基がより好ましく、メチル基が更に好ましい。
【0034】
一般式(FA)及び(FB)中、XF1及びYF1を表すアルキレン鎖(未置換アルキレン鎖、ハロゲン置換アルキレン鎖)としては、炭素数1以上10以下の直鎖状又は分岐状のアルキレン鎖が好ましい。
F1を表す-(Cfx2fx-1(OH))-中のfxは、1以上10以下の整数を表すことが好ましい。
fp、fq、fr及びfsは、それぞれ独立に0または1以上10以下の整数を表すことが好ましい。
fnは、例えば、1以上60以下が好ましい。
【0035】
ここで、フッ素含有分散剤において、一般式(FA)で示される構造単位と一般式(FB)で示される構造単位との比、つまり、fl:fmは、1:9から9:1までの範囲が好ましく、3:7から7:3までの範囲がより好ましい。
【0036】
また、フッ素含有分散剤、一般式(FA)で示される構造単位と一般式(FB)で示される構造単位とに加え、一般式(FC)で示される構造単位を更に有していてもよい。一般式(FC)で示される構造単位の含有比は、一般式(FA)及び(FB)で示される構造単位の合計、即ちfl+fmとの比(fl+fm:fz)で、10:0から7:3までの範囲が好ましく、9:1から7:3までの範囲がより好ましい。
【0037】
【化3】


【0038】
一般式(FC)中、RF5、及びRF6は、各々独立に、水素原子、又はアルキル基を表す。fzは、1以上の整数を表す。
【0039】
一般式(FC)中、RF5、及びRF6を表す基としては、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基等が好ましく、水素原子、メチル基がより好ましく、メチル基が更に好ましい。
【0040】
フッ素含有分散剤の市販品としては、例えば、GF300、GF400(東亞合成社製)、サーフロンシリーズ(AGCセイミケキカル社製)、フタージェントシリーズ(ネオス社製)、PFシリーズ(北村化学社製)、メガファックシリーズ(DIC製)、FCシリーズ(3M製)等が挙げられる。
【0041】
フッ素含有分散剤の重量平均分子量は、例えば、2000以上250000以下が好ましく、3000以上150000以下がより好ましく、50000以上100000以下が更に好ましい。
フッ素含有分散剤の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定される値である。GPCによる分子量測定は、例えば、測定装置として東ソー製GPC・HLC-8120を用い、東ソー製カラム・TSKgel GMHHR-M+TSKgel GMHHR-M(7.8mmI.D.30cm)を使用し、クロロホルム溶媒で行い、この測定結果から単分散ポリスチレン標準試料により作製した分子量校正曲線を使用して算出する。
【0042】
フッ素含有分散剤の含有量は、例えば、PTFE粒子に対して0.5質量%以上10質量%以下が好ましく、1質量%以上7質量%以下がより好ましい。
なお、フッ素含有分散剤は、1種を単独でまたは2種以上を併用してもよい。
【0043】
本実施形態に係る分散剤付着PTFE粒子の製造方法としては、
1)PTFE粒子とフッ素含有分散剤とを分散媒に配合して、PTFE粒子の分散液を調製した後、分散液から分散媒を除去する方法。
2)乾式粉体混合機を用いてPTFE粒子とフッ素含分散剤を混合しPTFE粒子にフッ素含分散剤を付着させる方法
3)PTFE粒子を攪拌しながら溶剤に溶かしたフッ素含有分散剤を滴下した後溶剤を除去する方法
等が挙げられる。
【0044】
(組成物)
本実施形態に係る組成物は、PTFE粒子と、フッ素含有分散剤と、を含有する。そして、本実施形態に係る組成物は、PFOA含有量がPTFE粒子に対して0ppb以上25ppb以下である。
つまり、本実施形態に係る組成物は、本実施形態に係る分散剤付着PTFE粒子を含む。そのため、本実施形態に係る組成物は、PTFE粒子と混合される成分の状態が変化しても、PTFE粒子の分散状態の維持性が高い組成物である。
【0045】
ただし、本実施形態に係る組成物は、予め調製した分散剤付着PTFE粒子と他の成分(例えば、分散媒、PTFE粒子以外の樹脂粒子等)とを混合した調製した組成物であってもよいし、個別に、PTFE粒子と、フッ素含有分散剤と、他の成分(例えば、分散媒、PTFE粒子以外の樹脂粒子等)とを混合した組成物であってもよい。
【0046】
本実施形態に係る組成物は、液体状の組成物、固体状の組成物のいずれであってもよい。
液体状の組成物としては、PTFE粒子とフッ素含有分散剤と分散媒を含むPTFE粒子分散液、PTFE粒子分散液に樹脂を配合した層状物形成用塗布液等が挙げられる。
固体状の組成物としては、分散剤付着PTFE粒子と、樹脂粒子(例えば、トナー粒子、粉体塗料粒子等)と、を含む組成物が挙げられる。
【0047】
(層状物)
本実施形態に係る層状物は、PTFE粒子と、フッ素含有分散剤と、を含有する。そして、本実施形態に係る組成物は、PFOA含有量がPTFE粒子に対して0ppb以上25ppb以下である。
つまり、本実施形態に係る層状物は、分散剤付着PTFE粒子を含む。具体的には、本実施形態に係る層状物は、本実施形態に係る組成物により形成された層である。
そのため、本実施形態に係る層状物は、PTFE粒子の分散状態が高い層状物である。そして、本実施形態に係る層状物は、潤滑性、疎水性(撥水性)などの表面特性に優れた層状物(特に、表面特性のムラが少ない層状物)である。
【0048】
本実施形態に係る層状物は、電子写真感光体の最表面層、トナー画像、粉体塗装層、摺動層、等が例示される。
【0049】
なお、本実施形態に係る層状物において、上記表面特性を発揮する観点から、PTFE粒子の含有量は、層状物に対して0.1質量%以上40質量%以下が好ましく、1質量%以上30質量%以下がより好ましい。
【0050】
(電子写真感光体)
本実施形態に係る電子写真感光体(以下「感光体」とも称する)は、導電性基体と、前記導電性基体上に設けられた感光層と、を有し、最表面層が、本実施形態に係る層状物からなる層である。
この層状物からなる最表面層としては、積層型感光層の電荷輸送層、単層型感光層、表面保護層等である。
本実施形態に係る感光体は、最表面層として、本実施形態に係る層状物からなる層を有するため、耐磨耗性が高い。特に、感光体は、最表面層に含まれるPTFE粒子の分散性が低いと、画像欠陥(具体的には、筋状の画像むら)が生じる傾向がある。しかし、本実施形態に係る感光体は、PTFE粒子の分散性が高い状態で最表面層に含まれるため、上記画像欠陥が抑制される。
【0051】
以下、本実施形態に係る電子写真感光体について図面を参照して説明する。
図1に示す電子写真感光体7は、例えば、導電性支持体4上に、下引層1と電荷発生層2と電荷輸送層3とが、この順序で積層された構造を有する感光体7が挙げられる。電荷発生層2及び電荷輸送層3が感光層5を構成している。
【0052】
なお、電子写真感光体7は、下引層1が設けられていない層構成であってもよい。
また、電子写真感光体7は、電荷発生層2と電荷輸送層3との機能が一体化した単層型感光層を有する感光体であってもよい。単層型感光層を有する感光体の場合、単層型感光層が最表面層を構成する。
また、電子写真感光体7は、電荷輸送層3上、又は単層型感光層上に、表面保護層を有する感光体であってもよい。表面保護層を有する感光体の場合、表面保護層が最表面層を構成する。
【0053】
以下、本実施形態に係る電子写真感光体の各層について詳細に説明する。なお、符号は省略して説明する。
【0054】
(導電性基体)
導電性基体としては、例えば、金属(アルミニウム、銅、亜鉛、クロム、ニッケル、モリブデン、バナジウム、インジウム、金、白金等)又は合金(ステンレス鋼等)を含む金属板、金属ドラム、及び金属ベルト等が挙げられる。また、導電性基体としては、例えば、導電性化合物(例えば導電性ポリマー、酸化インジウム等)、金属(例えばアルミニウム、パラジウム、金等)又は合金を塗布、蒸着又はラミネートした紙、樹脂フィルム、ベルト等も挙げられる。ここで、「導電性」とは体積抵抗率が1013Ωcm未満であることをいう。
【0055】
導電性基体の表面は、電子写真感光体がレーザプリンタに使用される場合、レーザ光を照射する際に生じる干渉縞を抑制する目的で、中心線平均粗さRaで0.04μm以上0.5μm以下に粗面化されていることが好ましい。なお、非干渉光を光源に用いる場合、干渉縞防止の粗面化は、特に必要ないが、導電性基体の表面の凹凸による欠陥の発生を抑制するため、より長寿命化に適する。
【0056】
粗面化の方法としては、例えば、研磨剤を水に懸濁させて導電性基体に吹き付けることによって行う湿式ホーニング、回転する砥石に導電性基体を圧接し、連続的に研削加工を行うセンタレス研削、陽極酸化処理等が挙げられる。
【0057】
粗面化の方法としては、導電性基体の表面を粗面化することなく、導電性又は半導電性粉体を樹脂中に分散させて、導電性基体の表面上に層を形成し、その層中に分散させる粒子により粗面化する方法も挙げられる。
【0058】
陽極酸化による粗面化処理は、金属製(例えばアルミニウム製)の導電性基体を陽極とし電解質溶液中で陽極酸化することにより導電性基体の表面に酸化膜を形成するものである。電解質溶液としては、例えば、硫酸溶液、シュウ酸溶液等が挙げられる。しかし、陽極酸化により形成された多孔質陽極酸化膜は、そのままの状態では化学的に活性であり、汚染され易く、環境による抵抗変動も大きい。そこで、多孔質陽極酸化膜に対して、酸化膜の微細孔を加圧水蒸気又は沸騰水中(ニッケル等の金属塩を加えてもよい)で水和反応による体積膨張でふさぎ、より安定な水和酸化物に変える封孔処理を行うことが好ましい。
【0059】
陽極酸化膜の膜厚は、例えば、0.3μm以上15μm以下が好ましい。この膜厚が上記範囲内にあると、注入に対するバリア性が発揮される傾向があり、また繰り返し使用による残留電位の上昇が抑えられる傾向にある。
【0060】
導電性基体には、酸性処理液による処理又はベーマイト処理を施してもよい。
酸性処理液による処理は、例えば、以下のようにして実施される。先ず、リン酸、クロム酸及びフッ酸を含む酸性処理液を調製する。酸性処理液におけるリン酸、クロム酸及びフッ酸の配合割合は、例えば、リン酸が10質量%以上11質量%以下の範囲、クロム酸が3質量%以上5質量%以下の範囲、フッ酸が0.5質量%以上2質量%以下の範囲であって、これらの酸全体の濃度は13.5質量%以上18質量%以下の範囲がよい。処理温度は例えば42℃以上48℃以下が好ましい。被膜の膜厚は、0.3μm以上15μm以下が好ましい。
【0061】
ベーマイト処理は、例えば90℃以上100℃以下の純水中に5分から60分間浸漬すること、又は90℃以上120℃以下の加熱水蒸気に5分から60分間接触させて行う。被膜の膜厚は、0.1μm以上5μm以下が好ましい。これをさらにアジピン酸、硼酸、硼酸塩、燐酸塩、フタル酸塩、マレイン酸塩、安息香酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩等の被膜溶解性の低い電解質溶液を用いて陽極酸化処理してもよい。
【0062】
(下引層)
下引層は、例えば、無機粒子と結着樹脂とを含む層である。
【0063】
無機粒子としては、例えば、粉体抵抗(体積抵抗率)10Ωcm以上1011Ωcm以下の無機粒子が挙げられる。
これらの中でも、上記抵抗値を有する無機粒子としては、例えば、酸化錫粒子、酸化チタン粒子、酸化亜鉛粒子、酸化ジルコニウム粒子等の金属酸化物粒子がよく、特に、酸化亜鉛粒子が好ましい。
【0064】
無機粒子のBET法による比表面積は、例えば、10m/g以上がよい。
無機粒子の体積平均粒径は、例えば、50nm以上2000nm以下(好ましくは60nm以上1000nm以下)がよい。
【0065】
無機粒子の含有量は、例えば、結着樹脂に対して、10質量%以上80質量%以下であることが好ましく、より好ましくは40質量%以上80質量%以下である。
【0066】
無機粒子は、表面処理が施されていてもよい。無機粒子は、表面処理の異なるもの、又は、粒径の異なるものを2種以上混合して用いてもよい。
【0067】
表面処理剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、界面活性剤等が挙げられる。特に、シランカップリング剤が好ましく、アミノ基を有するシランカップリング剤がより好ましい。
【0068】
アミノ基を有するシランカップリング剤としては、例えば、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0069】
シランカップリング剤は、2種以上混合して使用してもよい。例えば、アミノ基を有するシランカップリング剤と他のシランカップリング剤とを併用してもよい。この他のシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピル-トリス(2-メトキシエトキシ)シラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0070】
表面処理剤による表面処理方法は、公知の方法であればいかなる方法でもよく、乾式法又は湿式法のいずれでもよい。
【0071】
表面処理剤の処理量は、例えば、無機粒子に対して0.5質量%以上10質量%以下が好ましい。
【0072】
ここで、下引層は、無機粒子と共に電子受容性化合物(アクセプター化合物)を含有することが、電気特性の長期安定性、キャリアブロック性が高まる観点からよい。
【0073】
電子受容性化合物としては、例えば、クロラニル、ブロモアニル等のキノン系化合物;テトラシアノキノジメタン系化合物;2,4,7-トリニトロフルオレノン、2,4,5,7-テトラニトロ-9-フルオレノン等のフルオレノン化合物;2-(4-ビフェニル)-5-(4-t-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール、2,5-ビス(4-ナフチル)-1,3,4-オキサジアゾール、2,5-ビス(4-ジエチルアミノフェニル)-1,3,4オキサジアゾール等のオキサジアゾール系化合物;キサントン系化合物;チオフェン化合物;3,3’,5,5’テトラ-t-ブチルジフェノキノン等のジフェノキノン化合物;等の電子輸送性物質等が挙げられる。
特に、電子受容性化合物としては、アントラキノン構造を有する化合物が好ましい。アントラキノン構造を有する化合物としては、例えば、ヒドロキシアントラキノン化合物、アミノアントラキノン化合物、アミノヒドロキシアントラキノン化合物等が好ましく、具体的には、例えば、アントラキノン、アリザリン、キニザリン、アントラルフィン、プルプリン等が好ましい。
【0074】
電子受容性化合物は、下引層中に無機粒子と共に分散して含まれていてもよいし、無機粒子の表面に付着した状態で含まれていてもよい。
【0075】
電子受容性化合物を無機粒子の表面に付着させる方法としては、例えば、乾式法、又は、湿式法が挙げられる。
【0076】
乾式法は、例えば、無機粒子をせん断力の大きなミキサ等で攪拌しながら、直接又は有機溶媒に溶解させた電子受容性化合物を滴下、乾燥空気や窒素ガスとともに噴霧させて、電子受容性化合物を無機粒子の表面に付着する方法である。電子受容性化合物の滴下又は噴霧するときは、溶剤の沸点以下の温度で行うことがよい。電子受容性化合物を滴下又は噴霧した後、更に100℃以上で焼き付けを行ってもよい。焼き付けは電子写真特性が得られる温度、時間であれば特に制限されない。
【0077】
湿式法は、例えば、攪拌、超音波、サンドミル、アトライター、ボールミル等により、無機粒子を溶剤中に分散しつつ、電子受容性化合物を添加し、攪拌又は分散した後、溶剤除去して、電子受容性化合物を無機粒子の表面に付着する方法である。溶剤除去方法は、例えば、ろ過又は蒸留により留去される。溶剤除去後には、更に100℃以上で焼き付けを行ってもよい。焼き付けは電子写真特性が得られる温度、時間であれば特に限定されない。湿式法においては、電子受容性化合物を添加する前に無機粒子の含有水分を除去してもよく、その例として溶剤中で攪拌加熱しながら除去する方法、溶剤と共沸させて除去する方法が挙げられる。
【0078】
なお、電子受容性化合物の付着は、表面処理剤による表面処理を無機粒子に施す前又は後に行ってよく、電子受容性化合物の付着と表面処理剤による表面処理と同時に行ってもよい。
【0079】
電子受容性化合物の含有量は、例えば、無機粒子に対して0.01質量%以上20質量%以下がよく、好ましくは0.01質量%以上10質量%以下である。
【0080】
下引層に用いる結着樹脂としては、例えば、アセタール樹脂(例えばポリビニルブチラール等)、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、カゼイン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル-無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン-アルキッド樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂等の公知の高分子化合物;ジルコニウムキレート化合物;チタニウムキレート化合物;アルミニウムキレート化合物;チタニウムアルコキシド化合物;有機チタニウム化合物;シランカップリング剤等の公知の材料が挙げられる。
下引層に用いる結着樹脂としては、例えば、電荷輸送性基を有する電荷輸送性樹脂、導電性樹脂(例えばポリアニリン等)等も挙げられる。
【0081】
これらの中でも、下引層に用いる結着樹脂としては、上層の塗布溶剤に不溶な樹脂が好適であり、特に、尿素樹脂、フェノール樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂;ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂及びポリビニルアセタール樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂と硬化剤との反応により得られる樹脂が好適である。
これら結着樹脂を2種以上組み合わせて使用する場合には、その混合割合は、必要に応じて設定される。
【0082】
下引層には、電気特性向上、環境安定性向上、画質向上のために種々の添加剤を含んでいてもよい。
添加剤としては、多環縮合系、アゾ系等の電子輸送性顔料、ジルコニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物、チタニウムアルコキシド化合物、有機チタニウム化合物、シランカップリング剤等の公知の材料が挙げられる。シランカップリング剤は前述のように無機粒子の表面処理に用いられるが、添加剤として更に下引層に添加してもよい。
【0083】
添加剤としてのシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピル-トリス(2-メトキシエトキシ)シラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0084】
ジルコニウムキレート化合物としては、例えば、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセト酢酸エチル、ジルコニウムトリエタノールアミン、アセチルアセトネートジルコニウムブトキシド、アセト酢酸エチルジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムオキサレート、ジルコニウムラクテート、ジルコニウムホスホネート、オクタン酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、ラウリン酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、イソステアリン酸ジルコニウム、メタクリレートジルコニウムブトキシド、ステアレートジルコニウムブトキシド、イソステアレートジルコニウムブトキシド等が挙げられる。
【0085】
チタニウムキレート化合物としては、例えば、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2-エチルヘキシル)チタネート、チタンアセチルアセトネート、ポリチタンアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレート等が挙げられる。
【0086】
アルミニウムキレート化合物としては、例えば、アルミニウムイソプロピレート、モノブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムブチレート、ジエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)等が挙げられる。
【0087】
これらの添加剤は、単独で、又は複数の化合物の混合物若しくは重縮合物として用いてもよい。
【0088】
下引層は、ビッカース硬度が35以上であることがよい。
下引層の表面粗さ(十点平均粗さ)は、モアレ像抑制のために、使用される露光用レーザ波長λの1/(4n)(nは上層の屈折率)から1/2までに調整されていることがよい。
表面粗さ調整のために下引層中に樹脂粒子等を添加してもよい。樹脂粒子としてはシリコーン樹脂粒子、架橋型ポリメタクリル酸メチル樹脂粒子等が挙げられる。また、表面粗さ調整のために下引層の表面を研磨してもよい。研磨方法としては、バフ研磨、サンドブラスト処理、湿式ホーニング、研削処理等が挙げられる。
【0089】
下引層の形成は、特に制限はなく、周知の形成方法が利用されるが、例えば、上記成分を溶剤に加えた下引層形成用塗布液の塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥し、必要に応じて加熱することで行う。
【0090】
下引層形成用塗布液を調製するための溶剤としては、公知の有機溶剤、例えば、アルコール系溶剤、芳香族炭化水素溶剤、ハロゲン化炭化水素溶剤、ケトン系溶剤、ケトンアルコール系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤等が挙げられる。
これらの溶剤として具体的には、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、iso-プロパノール、n-ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロロベンゼン、トルエン等の通常の有機溶剤が挙げられる。
【0091】
下引層形成用塗布液を調製するときの無機粒子の分散方法としては、例えば、ロールミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、コロイドミル、ペイントシェーカー等の公知の方法が挙げられる。
【0092】
下引層形成用塗布液を導電性基体上に塗布する方法としては、例えば、ブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が挙げられる。
【0093】
下引層の膜厚は、例えば、好ましくは15μm以上、より好ましくは20μm以上50μm以下の範囲内に設定される。
【0094】
(中間層)
図示は省略するが、下引層と感光層との間に中間層をさらに設けてもよい。
中間層は、例えば、樹脂を含む層である。中間層に用いる樹脂としては、例えば、アセタール樹脂(例えばポリビニルブチラール等)、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、カゼイン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル-無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン-アルキッド樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂等の高分子化合物が挙げられる。
中間層は、有機金属化合物を含む層であってもよい。中間層に用いる有機金属化合物としては、ジルコニウム、チタニウム、アルミニウム、マンガン、ケイ素等の金属原子を含有する有機金属化合物等が挙げられる。
これらの中間層に用いる化合物は、単独で又は複数の化合物の混合物若しくは重縮合物として用いてもよい。
【0095】
これらの中でも、中間層は、ジルコニウム原子又はケイ素原子を含有する有機金属化合物を含む層であることが好ましい。
【0096】
中間層の形成は、特に制限はなく、周知の形成方法が利用されるが、例えば、上記成分を溶剤に加えた中間層形成用塗布液の塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥、必要に応じて加熱することで行う。
中間層を形成する塗布方法としては、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が用いられる。
【0097】
中間層の膜厚は、例えば、好ましくは0.1μm以上3μm以下の範囲に設定される。なお、中間層を下引層として使用してもよい。
【0098】
(電荷発生層)
電荷発生層は、例えば、電荷発生材料と結着樹脂とを含む層である。また、電荷発生層は、電荷発生材料の蒸着層であってもよい。電荷発生材料の蒸着層は、LED(Light Emitting Diode)、有機EL(Electro-Luminescence)イメージアレー等の非干渉性光源を用いる場合に好適である。
【0099】
電荷発生材料としては、ビスアゾ、トリスアゾ等のアゾ顔料;ジブロモアントアントロン等の縮環芳香族顔料;ペリレン顔料;ピロロピロール顔料;フタロシアニン顔料;酸化亜鉛;三方晶系セレン等が挙げられる。
【0100】
これらの中でも、近赤外域のレーザ露光に対応させるためには、電荷発生材料としては、金属フタロシアニン顔料、又は無金属フタロシアニン顔料を用いることが好ましい。具体的には、例えば、特開平5-263007号公報、特開平5-279591号公報等に開示されたヒドロキシガリウムフタロシアニン;特開平5-98181号公報等に開示されたクロロガリウムフタロシアニン;特開平5-140472号公報、特開平5-140473号公報等に開示されたジクロロスズフタロシアニン;特開平4-189873号公報等に開示されたチタニルフタロシアニンがより好ましい。
【0101】
一方、近紫外域のレーザ露光に対応させるためには、電荷発生材料としては、ジブロモアントアントロン等の縮環芳香族顔料;チオインジゴ系顔料;ポルフィラジン化合物;酸化亜鉛;三方晶系セレン;特開2004-78147号公報、特開2005-181992号公報に開示されたビスアゾ顔料等が好ましい。
【0102】
450nm以上780nm以下に発光の中心波長があるLED,有機ELイメージアレー等の非干渉性光源を用いる場合にも、上記電荷発生材料を用いてもよいが、解像度の観点より、感光層を20μm以下の薄膜で用いるときには、感光層中の電界強度が高くなり、基体からの電荷注入による帯電低下、いわゆる黒点と呼ばれる画像欠陥を生じやすくなる。これは、三方晶系セレン、フタロシアニン顔料等のp-型半導体で暗電流を生じやすい電荷発生材料を用いたときに顕著となる。
【0103】
これに対し、電荷発生材料として、縮環芳香族顔料、ペリレン顔料、アゾ顔料等のn-型半導体を用いた場合、暗電流を生じ難く、薄膜にしても黒点と呼ばれる画像欠陥を抑制し得る。n-型の電荷発生材料としては、例えば、特開2012-155282号公報の段落[0288]~[0291]に記載された化合物(CG-1)~(CG-27)が挙げられるがこれに限られるものではない。
なお、n-型の判定は、通常使用されるタイムオブフライト法を用い、流れる光電流の極性によって判定され、正孔よりも電子をキャリアとして流しやすいものをn-型とする。
【0104】
電荷発生層に用いる結着樹脂としては、広範な絶縁性樹脂から選択され、また、結着樹脂としては、ポリ-N-ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン、ポリシラン等の有機光導電性ポリマーから選択してもよい。
結着樹脂としては、例えば、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアリレート樹脂(ビスフェノール類と芳香族2価カルボン酸の重縮合体等)、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂等が挙げられる。ここで、「絶縁性」とは、体積抵抗率が1013Ωcm以上であることをいう。
これらの結着樹脂は1種を単独で又は2種以上を混合して用いられる。
【0105】
なお、電荷発生材料と結着樹脂の配合比は、質量比で10:1から1:10までの範囲内であることが好ましい。
【0106】
電荷発生層には、その他、周知の添加剤が含まれていてもよい。
【0107】
電荷発生層の形成は、特に制限はなく、周知の形成方法が利用されるが、例えば、上記成分を溶剤に加えた電荷発生層形成用塗布液の塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥し、必要に応じて加熱することで行う。なお、電荷発生層の形成は、電荷発生材料の蒸着により行ってもよい。電荷発生層の蒸着による形成は、特に、電荷発生材料として縮環芳香族顔料、ペリレン顔料を利用する場合に好適である。
【0108】
電荷発生層形成用塗布液を調製するための溶剤としては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、n-ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸n-ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロロベンゼン、トルエン等が挙げられる。これら溶剤は、1種を単独で又は2種以上を混合して用いる。
【0109】
電荷発生層形成用塗布液中に粒子(例えば電荷発生材料)を分散させる方法としては、例えば、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、横型サンドミル等のメディア分散機や、攪拌、超音波分散機、ロールミル、高圧ホモジナイザー等のメディアレス分散機が利用される。高圧ホモジナイザーとしては、例えば、高圧状態で分散液を液-液衝突や液-壁衝突させて分散する衝突方式や、高圧状態で微細な流路を貫通させて分散する貫通方式等が挙げられる。
なお、この分散の際、電荷発生層形成用塗布液中の電荷発生材料の平均粒径を0.5μm以下、好ましくは0.3μm以下、更に好ましくは0.15μm以下にすることが有効である。
【0110】
電荷発生層形成用塗布液を下引層上(又は中間層上)に塗布する方法としては、例えばブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が挙げられる。
【0111】
電荷発生層の膜厚は、例えば、好ましくは0.1μm以上5.0μm以下、より好ましくは0.2μm以上2.0μm以下の範囲内に設定される。
【0112】
(電荷輸送層)
電荷輸送層は、例えば、電荷輸送材料と結着樹脂とを含む層である。電荷輸送層は、高分子電荷輸送材料を含む層であってもよい。
【0113】
電荷輸送材料としては、p-ベンゾキノン、クロラニル、ブロマニル、アントラキノン等のキノン系化合物;テトラシアノキノジメタン系化合物;2,4,7-トリニトロフルオレノン等のフルオレノン化合物;キサントン系化合物;ベンゾフェノン系化合物;シアノビニル系化合物;エチレン系化合物等の電子輸送性化合物が挙げられる。電荷輸送材料としては、トリアリールアミン系化合物、ベンジジン系化合物、アリールアルカン系化合物、アリール置換エチレン系化合物、スチルベン系化合物、アントラセン系化合物、ヒドラゾン系化合物等の正孔輸送性化合物も挙げられる。これらの電荷輸送材料は1種を単独で又は2種以上で用いられるが、これらに限定されるものではない。
【0114】
電荷輸送材料としては、電荷移動度の観点から、下記構造式(a-1)で示されるトリアリールアミン誘導体、及び下記構造式(a-2)で示されるベンジジン誘導体が好ましい。
【0115】
【化4】

【0116】
構造式(a-1)中、ArT1、ArT2、及びArT3は、各々独立に置換若しくは無置換のアリール基、-C-C(RT4)=C(RT5)(RT6)、又は-C-CH=CH-CH=C(RT7)(RT8)を示す。RT4、RT5、RT6、RT7、及びRT8は各々独立に水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を示す。
上記各基の置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基が挙げられる。また、上記各基の置換基としては、炭素数1以上3以下のアルキル基で置換された置換アミノ基も挙げられる。
【0117】
【化5】

【0118】
構造式(a-2)中、RT91及びRT92は各々独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、又は炭素数1以上5以下のアルコキシ基を示す。RT101、RT102、RT111及びRT112は各々独立に、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基、炭素数1以上2以下のアルキル基で置換されたアミノ基、置換若しくは無置換のアリール基、-C(RT12)=C(RT13)(RT14)、又は-CH=CH-CH=C(RT15)(RT16)を示し、RT12、RT13、RT14、RT15及びRT16は各々独立に水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を表す。Tm1、Tm2、Tn1及びTn2は各々独立に0以上2以下の整数を示す。
上記各基の置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基が挙げられる。また、上記各基の置換基としては、炭素数1以上3以下のアルキル基で置換された置換アミノ基も挙げられる。
【0119】
ここで、構造式(a-1)で示されるトリアリールアミン誘導体、及び前記構造式(a-2)で示されるベンジジン誘導体のうち、特に、「-C-CH=CH-CH=C(RT7)(RT8)」を有するトリアリールアミン誘導体、及び「-CH=CH-CH=C(RT15)(RT16)」を有するベンジジン誘導体が、電荷移動度の観点で好ましい。
【0120】
高分子電荷輸送材料としては、ポリ-N-ビニルカルバゾール、ポリシラン等の電荷輸送性を有する公知のものが用いられる。特に、特開平8-176293号公報、特開平8-208820号公報等に開示されているポリエステル系の高分子電荷輸送材は特に好ましい。なお、高分子電荷輸送材料は、単独で使用してよいが、結着樹脂と併用してもよい。
【0121】
電荷輸送層に用いる結着樹脂は、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレン-ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン-アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル-無水マレイン酸共重合体、シリコーン樹脂、シリコーンアルキッド樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、スチレン-アルキッド樹脂、ポリ-N-ビニルカルバゾール、ポリシラン等が挙げられる。これらの中でも、結着樹脂としては、ポリカーボネート樹脂又はポリアリレート樹脂が好適である。これらの結着樹脂は1種を単独で又は2種以上で用いる。
なお、電荷輸送材料と結着樹脂との配合比は、質量比で10:1から1:5までが好ましい。
【0122】
電荷輸送層には、その他、周知の添加剤が含まれていてもよい。
【0123】
電荷輸送層の形成は、特に制限はなく、周知の形成方法が利用されるが、例えば、上記成分を溶剤に加えた電荷輸送層形成用塗布液の塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥、必要に応じて加熱することで行う。
【0124】
電荷輸送層形成用塗布液を調製するための溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素類;アセトン、2-ブタノン等のケトン類;塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素類;テトラヒドロフラン、エチルエーテル等の環状又は直鎖状のエーテル類等の通常の有機溶剤が挙げられる。これら溶剤は、単独で又は2種以上混合して用いる。
【0125】
電荷輸送層形成用塗布液を電荷発生層の上に塗布する際の塗布方法としては、ブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が挙げられる。
【0126】
電荷輸送層の膜厚は、例えば、好ましくは5μm以上50μm以下、より好ましくは10μm以上30μm以下の範囲内に設定される。
【0127】
(保護層)
保護層は、必要に応じて感光層上に設けられる。保護層は、例えば、帯電時の感光層の化学的変化を防止したり、感光層の機械的強度をさらに改善する目的で設けられる。
そのため、保護層は、硬化膜(架橋膜)で構成された層(つまり、架橋構造を有する保護層)を適用することがよい。これら層としては、例えば、下記1)又は2)に示す層が挙げられる。
【0128】
1)反応性基及び電荷輸送性骨格を同一分子内に有する反応性基含有電荷輸送材料を含む組成物の硬化膜で構成された層(つまり当該反応性基含有電荷輸送材料の重合体又は架橋体を含む層)
2)非反応性の電荷輸送材料と、電荷輸送性骨格を有さず、反応性基を有する反応性基含有非電荷輸送材料と、を含む組成物の硬化膜で構成された層(つまり、非反応性の電荷輸送材料と、当該反応性基含有非電荷輸送材料の重合体又は架橋体と、を含む層)
【0129】
反応性基含有電荷輸送材料の反応性基としては、連鎖重合性基、エポキシ基、-OH、-OR[但し、Rはアルキル基を示す]、-NH、-SH、-COOH、-SiRQ1 3-Qn(ORQ2Qn[但し、RQ1は水素原子、アルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を表し、RQ2は水素原子、アルキル基、トリアルキルシリル基を表す。Qnは1~3の整数を表す]等の周知の反応性基が挙げられる。
【0130】
連鎖重合性基としては、ラジカル重合しうる官能基であれば特に限定されるものではなく、例えば、少なくとも炭素二重結合を含有する基を有する官能基である。具体的には、ビニル基、ビニルエーテル基、ビニルチオエーテル基、スチリル基(ビニルフェニル基)、アクリロイル基、メタクリロイル基、及びそれらの誘導体から選択される少なくとも一つを含有する基等が挙げられる。なかでも、その反応性に優れることから、連鎖重合性基としては、ビニル基、スチリル基(ビニルフェニル基)、アクリロイル基、メタクリロイル基、及びそれらの誘導体から選択される少なくとも一つを含有する基であることが好ましい。
【0131】
反応性基含有電荷輸送材料の電荷輸送性骨格としては、電子写真感光体における公知の構造であれば特に限定されるものではなく、例えば、トリアリールアミン系化合物、ベンジジン系化合物、ヒドラゾン系化合物等の含窒素の正孔輸送性化合物に由来する骨格であって、窒素原子と共役している構造が挙げられる。これらの中でも、トリアリールアミン骨格が好ましい。
【0132】
これら反応性基及び電荷輸送性骨格を有する反応性基含有電荷輸送材料、非反応性の電荷輸送材料、反応性基含有非電荷輸送材料は、周知の材料から選択すればよい。
【0133】
保護層には、その他、周知の添加剤が含まれていてもよい。
【0134】
保護層の形成は、特に制限はなく、周知の形成方法が利用されるが、例えば、上記成分を溶剤に加えた保護層形成用塗布液の塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥し、必要に応じて加熱等の硬化処理することで行う。
【0135】
保護層形成用塗布液を調製するための溶剤としては、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル等のセロソルブ系溶剤;イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール系溶剤等が挙げられる。これら溶剤は、単独で又は2種以上混合して用いる。
なお、保護層形成用塗布液は、無溶剤の塗布液であってもよい。
【0136】
保護層形成用塗布液を感光層(例えば電荷輸送層)上に塗布する方法としては、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が挙げられる。
【0137】
保護層の膜厚は、例えば、好ましくは1μm以上20μm以下、より好ましくは2μm以上10μm以下の範囲内に設定される。
【0138】
(単層型感光層)
単層型感光層(電荷発生/電荷輸送層)は、例えば、電荷発生材料と電荷輸送材料と、必要に応じて、結着樹脂、及びその他周知の添加剤と、を含む層である。なお、これら材料は、電荷発生層及び電荷輸送層で説明した材料と同様である。
そして、単層型感光層中、電荷発生材料の含有量は、全固形分に対して0.1質量%以上10質量%以下がよく、好ましくは0.8質量%以上5質量%以下である。また、単層型感光層中、電荷輸送材料の含有量は、全固形分に対して5質量%以上50質量%以下がよい。
単層型感光層の形成方法は、電荷発生層や電荷輸送層の形成方法と同様である。
単層型感光層の膜厚は、例えば、5μm以上50μm以下がよく、好ましくは10μm以上40μm以下である。
【0139】
[画像形成装置(及びプロセスカートリッジ)]
本実施形態に係る画像形成装置は、電子写真感光体と、電子写真感光体の表面を帯電する帯電手段と、帯電した電子写真感光体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、トナーを含む現像剤により電子写真感光体の表面に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、トナー像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、を備える。そして、電子写真感光体として、上記本実施形態に係る電子写真感光体が適用される。
【0140】
本実施形態に係る画像形成装置は、記録媒体の表面に転写されたトナー像を定着する定着手段を備える装置;電子写真感光体の表面に形成されたトナー像を直接記録媒体に転写する直接転写方式の装置;電子写真感光体の表面に形成されたトナー像を中間転写体の表面に一次転写し、中間転写体の表面に転写されたトナー像を記録媒体の表面に二次転写する中間転写方式の装置;トナー像の転写後、帯電前の電子写真感光体の表面をクリーニングするクリーニング手段を備えた装置;トナー像の転写後、帯電前に電子写真感光体の表面に除電光を照射して除電する除電手段を備える装置;電子写真感光体の温度を上昇させ、相対温度を低減させるための電子写真感光体加熱部材を備える装置等の周知の画像形成装置が適用される。
【0141】
中間転写方式の装置の場合、転写手段は、例えば、表面にトナー像が転写される中間転写体と、電子写真感光体の表面に形成されたトナー像を中間転写体の表面に一次転写する一次転写手段と、中間転写体の表面に転写されたトナー像を記録媒体の表面に二次転写する二次転写手段と、を有する構成が適用される。
【0142】
本実施形態に係る画像形成装置は、乾式現像方式の画像形成装置、湿式現像方式(液体現像剤を利用した現像方式)の画像形成装置のいずれであってもよい。
【0143】
なお、本実施形態に係る画像形成装置において、例えば、電子写真感光体を備える部分が、画像形成装置に対して着脱されるカートリッジ構造(プロセスカートリッジ)であってもよい。プロセスカートリッジとしては、例えば、本実施形態に係る電子写真感光体を備えるプロセスカートリッジが好適に用いられる。なお、プロセスカートリッジには、電子写真感光体以外に、例えば、帯電手段、静電潜像形成手段、現像手段、転写手段からなる群から選択される少なくとも一つを備えてもよい。
【0144】
以下、本実施形態に係る画像形成装置の一例を示すが、これに限定されるわけではない。なお、図に示す主要部を説明し、その他はその説明を省略する。
【0145】
図2は、本実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
本実施形態に係る画像形成装置100は、図2に示すように、電子写真感光体7を備えるプロセスカートリッジ300と、露光装置9(静電潜像形成手段の一例)と、転写装置40(一次転写装置)と、中間転写体50とを備える。なお、画像形成装置100において、露光装置9はプロセスカートリッジ300の開口部から電子写真感光体7に露光し得る位置に配置されており、転写装置40は中間転写体50を介して電子写真感光体7に対向する位置に配置されており、中間転写体50はその一部が電子写真感光体7に接触して配置されている。図示しないが、中間転写体50に転写されたトナー像を記録媒体(例えば用紙)に転写する二次転写装置も有している。なお、中間転写体50、転写装置40(一次転写装置)、及び二次転写装置(不図示)が転写手段の一例に相当する。
【0146】
図2におけるプロセスカートリッジ300は、ハウジング内に、電子写真感光体7、帯電装置8(帯電手段の一例)、現像装置11(現像手段の一例)、及びクリーニング装置13(クリーニング手段の一例)を一体に支持している。クリーニング装置13は、クリーニングブレード(クリーニング部材の一例)131を有しており、クリーニングブレード131は、電子写真感光体7の表面に接触するように配置されている。なお、クリーニング部材は、クリーニングブレード131の態様ではなく、導電性又は絶縁性の繊維状部材であってもよく、これを単独で、又はクリーニングブレード131と併用してもよい。
【0147】
なお、図2には、画像形成装置として、潤滑材14を電子写真感光体7の表面に供給する繊維状部材132(ロール状)、及び、クリーニングを補助する繊維状部材133(平ブラシ状)を備えた例を示してあるが、これらは必要に応じて配置される。
【0148】
以下、本実施形態に係る画像形成装置の各構成について説明する。
【0149】
-帯電装置-
帯電装置8としては、例えば、導電性又は半導電性の帯電ローラ、帯電ブラシ、帯電フィルム、帯電ゴムブレード、帯電チューブ等を用いた接触型帯電器が使用される。また、非接触方式のローラ帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン帯電器やコロトロン帯電器等のそれ自体公知の帯電器等も使用される。
【0150】
-露光装置-
露光装置9としては、例えば、電子写真感光体7表面に、半導体レーザ光、LED光、液晶シャッタ光等の光を、定められた像様に露光する光学系機器等が挙げられる。光源の波長は電子写真感光体の分光感度領域内とする。半導体レーザの波長としては、780nm付近に発振波長を有する近赤外が主流である。しかし、この波長に限定されず、600nm台の発振波長レーザや青色レーザとして400nm以上450nm以下に発振波長を有するレーザも利用してもよい。また、カラー画像形成のためにはマルチビームを出力し得るタイプの面発光型のレーザ光源も有効である。
【0151】
-現像装置-
現像装置11としては、例えば、現像剤を接触又は非接触させて現像する一般的な現像装置が挙げられる。現像装置11としては、上述の機能を有している限り特に制限はなく、目的に応じて選択される。例えば、一成分系現像剤又は二成分系現像剤をブラシ、ローラ等を用いて電子写真感光体7に付着させる機能を有する公知の現像器等が挙げられる。中でも現像剤を表面に保持した現像ローラを用いるものが好ましい。
【0152】
現像装置11に使用される現像剤は、トナー単独の一成分系現像剤であってもよいし、トナーとキャリアとを含む二成分系現像剤であってもよい。また、現像剤は、磁性であってもよいし、非磁性であってもよい。これら現像剤は、周知のものが適用される。
【0153】
-クリーニング装置-
クリーニング装置13は、クリーニングブレード131を備えるクリーニングブレード方式の装置が用いられる。
なお、クリーニングブレード方式以外にも、ファーブラシクリーニング方式、現像同時クリーニング方式を採用してもよい。
【0154】
-転写装置-
転写装置40としては、例えば、ベルト、ローラ、フィルム、ゴムブレード等を用いた接触型転写帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン転写帯電器やコロトロン転写帯電器等のそれ自体公知の転写帯電器が挙げられる。
【0155】
-中間転写体-
中間転写体50としては、半導電性を付与したポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル、ゴム等を含むベルト状のもの(中間転写ベルト)が使用される。また、中間転写体の形態としては、ベルト状以外にドラム状のものを用いてもよい。
【0156】
図3は、本実施形態に係る画像形成装置の他の一例を示す概略構成図である。
図3に示す画像形成装置120は、プロセスカートリッジ300を4つ搭載したタンデム方式の多色画像形成装置である。画像形成装置120では、中間転写体50上に4つのプロセスカートリッジ300がそれぞれ並列に配置されており、1色に付き1つの電子写真感光体が使用される構成となっている。なお、画像形成装置120は、タンデム方式であること以外は、画像形成装置100と同様の構成を有している。
【0157】
(分散剤付着PTFE粒子のその他用途)
本実施形態に係る分散剤付着PTEF粒子は、トナー用外添剤、粉体塗料用外添剤として好適に利用される。
例えば、分散剤付着PTEF粒子をトナー用外添剤として適用する場合、トナーとしては、トナー粒子と、外添剤として分散剤付着PTEF粒子と、を有する静電荷像現像用トナーが例示される。トナー粒子は、樹脂(結着樹脂)を含む。なお、トナー粒子は、必要に応じて、着色剤、離型剤等のその他添加剤を含む。
分散剤付着PTEF粒子を粉体塗料用外添剤として適用する場合、粉体塗料としては、粉体粒子と、外添剤として分散剤付着PTEF粒子と、を有する粉体塗料が例示される。粉体粒子は、熱硬化性樹脂及び熱硬化剤を含む。粉体粒子は、必要に応じて、必要に応じて、着色剤等のその他添加剤を含む。
【実施例
【0158】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、「部」又は「%」は、特に断りがない限り、質量基準である。
【0159】
<実施例1>
-PTFE粒子Aの作製-
市販品の平均粒径3.5μm(一次粒径0.2μm)のPTFE粒子を、次の通り、洗浄後、フッ素含有分散剤により処理したPTFE粒子をPTFE粒子Aとした。
テトロヒドロフラン400質量部とPTFE粒子15質量部を採取し高圧ホモジナイザー(LA-33S、ナノマイザー株式会社製、商品名)の圧力を500kg/cmに設定し、上記混合物をこの高圧ホモジナイザーに4回流通させることにより洗浄処理した。さらに遠心分離機にて分散液を処理したあと、上層の透明部分の液を除去した。次にテトロヒドロフランを液量が415質量部になるように加え、再び高圧ホモジナイザーにて分散処理後、遠心分離機にて分散液を処理し、上層の透明部分の液を捨てた。この作業をさらに3回繰返した後、フッ素含有分散剤として、GF400(東亜合成社製:フッ化アルキル基を持つメタクリレートを少なくとも重合成分とした界面活性剤):1.5部を加えて、次にテトロヒドロフランを液量が415質量部になるように加え、再び高圧ホモジナイザーにて分散処理後、減圧下溶剤を留去した。その後乾燥した粒子を乳鉢で粉砕した。この粒子をPTFE粒子Aとした。
【0160】
-PTFE粒子AのPFOA含有量測定-
PTFE粒子Aの「PFOA含有量」を既述の方法に従って測定した結果、5ppbであった。
【0161】
-PTFE組成物L-Aの作製-
下記式(CT-1)で表されるベンジジン化合物45部、及び下記式(B-1)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物(粘度平均分子量:40,000)55部をトルエン350部、テトラヒドロフラン150部に溶解させ、PTFE粒子A10部を加え、高圧ホモジナイザーで5回処理してPTFE組成物L-Aを作製した。
【0162】
【化6】

【0163】
【化7】

【0164】
-PTFE組成物L-Aの評価-
得られたPTFE組成物L-A中のPTFEの分散状態をレーザー回析式粒度分布測定装置(マスターサイザー3000:Malvern社)を用いて評価した結果、平均粒径0.22μmであった。
【0165】
-PTFE層状物F-Aの作製と評価-
PTFE組成物L-Aを、ギャップコーターを用いてガラス基板上に塗布し130℃、45分の加熱を行い膜厚5μmのPTFE層状物F-Aを作製した。得られた層状物中のPTFE粒子の平均粒径は0.23μmであった。
【0166】
-電子写真感光体Aの作製-
次の通り、感光体Aを作製した。
・下引層の形成
酸化亜鉛:(平均粒径70nm:テイカ社製:比表面積値15m2/g)100部をテトラヒドロフラン500部と攪拌混合し、シランカップリング剤(KBM503:信越化学工業社製)1.3部を添加し、2時間攪拌した。その後トルエンを減圧蒸留にて留去し、120℃で3時間)焼き付けを行い、シランカップリング剤表面処理酸化亜鉛を得た。
前記表面処理を施した酸化亜鉛110部を500部のテトラヒドロフランと攪拌混合し、アリザリン0.6部を50部のテトラヒドロフランに溶解させた溶液を添加し、50℃にて5時間攪拌した。その後、減圧ろ過にてアリザリンを付与させた酸化亜鉛をろ別し、さらに60℃で減圧乾燥を行い、アリザリン付与酸化亜鉛を得た。
このアリザリン付与酸化亜鉛60部と硬化剤(ブロック化イソシアネート スミジュール3175、住友バイエルンウレタン社製):13.5部とブチラール樹脂 (エスレックBM-1、積水化学社製)15部とメチルエチルケトン85部とを混合し混合液を得た。この混合液38部と、メチルエチルケトン25部と、を混合し、1mmφのガラスビーズを用いてサンドミルにて2時間の分散を行い、分散液を得た。
得られた分散液に触媒としてジオクチルスズジラウレート:0.005部、シリコーン樹脂粒子(トスパール145、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社):45部を添加し、下引層用塗布液を得た。この塗布液を浸漬塗布法にて、直径47mm、長さ357mm、肉厚1mmのアルミニウム基材上に塗布し、170℃、30分の乾燥硬化を行い厚さ25μmの下引層を得た。
【0167】
・電荷発生層の形成
次に、X線回折スペクトルにおけるブラッグ角(2θ±0.2°)が7.5°、9.9°、12.5°、16.3°、18.6°、25.1°、28.3°に強い回折ピークを持つヒドロキシガリウムフタロシアニン1部を、ポリビニルブチラール(エスレックBM-S、積水化学工業社製)1部及び酢酸n-ブチル80部と混合し、これをガラスビーズと共にペイントシェーカーで1時間分散処理することにより電荷発生層用塗布液を調製した。得られた塗布液を下引層が形成された導電性支持体上に浸漬塗布し、100℃で10分間加熱乾燥して膜厚0.15μmの電荷発生層を形成した。
【0168】
・電荷輸送層の形成
PTFE組成物Aを上記電荷発生層上に浸漬塗布法で塗布し、130℃、45分の加熱を行い膜厚13μmの電荷輸送層を形成した。
【0169】
以上の工程を経て、感光体を作製した。
【0170】
-電子写真感光体Aの評価-
得られた感光体を用いて、次の評価を実施した。
【0171】
・目視評価
得られた感光体の表面(電荷輸送層の表面)を目視にて観察した。
A:筋が見られず
B:うっすらと筋状の欠陥が見られる
C:明らかに筋状の欠陥が見られる
【0172】
・画質評価
得られた感光体を画像形成装置「Apeos Port C4300(富士ゼロクス社製)」に搭載した。この装置を用いて、A4紙に、5%ハーフトーン画像を10000枚出力した。1枚目、100枚目、5000枚目、10000枚目の画像を観察し、画像欠陥について評価した。評価基準は、次の通りとした。
A:画像欠陥無し。
B:拡大鏡でみるとわずかに画像欠陥がみられる。(問題にならないレベル)
C:目視で画像欠陥が見られる
D:明らかな筋状画像欠陥が見られる。
【0173】
<実施例2>
-PTFE粒子Bの作製-
市販品の平均粒径4.5μm(一次粒径0.2μm)のPTFE粒子を、実施例1と同様に、洗浄後、フッ素含有分散剤により処理したPTFE粒子をPTFE粒子Bとした。
【0174】
-PTFE粒子BのPFOA含有量測定-
PTFE粒子Aと同様にPTFE粒子Bの「PFOA含有量」を既述の方法に従って測定した結果、0ppbであった。
【0175】
-PTFE組成物L-Bの作製-
PTFE粒子AをPTFE粒子Bに変更したほかは実施例1と同様な作業を行い、PTFE組成物L-Bを作製した。
【0176】
-PTFE組成物L-Bの評価-
PTFE組成物L-AをPTFE組成物L-Bに変更したほかは実施例1と同様な評価を行った。結果を表1に示す。
【0177】
-PTFE層状物S-Bの作製と評価-
PTFE組成物L-AをPTFE組成物L-Bに変更したほかは実施例1と同様な作業を行いPTFE層状物F-Bの作製と評価を行った。結果を表1に示す。
【0178】
-電子写真感光体Bの作製-
PTFE組成物L-AをPTFE組成物L-Bに変更したほかは実施例1と同様な作業を行い、電子写真感光体Bを作製した。
【0179】
-電子写真感光体Bの評価-
得られた電子写真感光体Bについて実施例1と同様な評価を行った。結果を表1に示す。
【0180】
<実施例3>
実施例1のPTEE粒子Aの作製において、PFOAの合計量が25ppbになるように、洗浄、フッ素含有分散剤による処理したPTFE粒子をPTFE粒子Cとした。
その後、PTFE粒子Aに代えて、PTFE粒子Eを用いた以外は、実施例1と同様に、PTFE組成物L-Cの作製と評価、PTFE組成物L-Cの作製と評価、PTFE層状物F-Cの作製と評価、電子写真感光体Cの作製、評価を実施した。結果を表1に示す。
【0181】
<実施例10>
実施例1のPTEE粒子Aの作製において、PFOAの合計量が0.01ppbになるように、洗浄、フッ素含有分散剤による処理したPTFE粒子をPTFE粒子Dとした。
その後、PTFE粒子Aに代えて、PTFE粒子Dを用いた以外は、実施例1と同様に、PTFE組成物L-Dの作製と評価、PTFE層状物F-Dの作製と評価、電子写真感光体Dの作製、評価を実施した。結果を表1に示す。
【0182】
<実施例11>
実施例1のPTEE粒子Aの作製において、PFOAの合計量が0.1ppbになるように、洗浄、フッ素含有分散剤による処理したPTFE粒子をPTFE粒子Fとした。
その後、PTFE粒子Aに代えて、PTFE粒子Fを用いた以外は、実施例1と同様に、PTFE組成物L-Fの作製と評価、PTFE層状物F-Fの作製と評価、電子写真感光体Fの作製、評価を実施した。結果を表1に示す。
【0183】
<実施例12>
実施例1のPTEE粒子Aの作製において、PFOAの合計量が15ppbになるように、洗浄、フッ素含有分散剤による処理したPTFE粒子をPTFE粒子Gとした。
その後、PTFE粒子Aに代えて、PTFE粒子Gを用いた以外は、実施例1と同様に、PTFE組成物L-Gの作製と評価、PTFE層状物F-Gの作製と評価、電子写真感光体Gの作製、評価を実施した。結果を表1に示す。
【0184】
<実施例13>
実施例1のPTEE粒子Aの作製において、PFOAの合計量が20ppbになるように、洗浄、フッ素含有分散剤による処理したPTFE粒子をPTFE粒子Hとした。
その後、PTFE粒子Aに代えて、PTFE粒子Hを用いた以外は、実施例1と同様に、PTFE組成物L-Hの作製と評価、PTFE層状物F-Hの作製と評価、電子写真感光体Hの作製、評価を実施した。結果を表1に示す。
【0185】
<比較例1>
実施例1のPTEE粒子Aの作製において、PFOAの合計量が30ppbになるように、洗浄、フッ素含有分散剤による処理したPTFE粒子をPTFE粒子Eとした。
その後、PTFE粒子Aに代えて、PTFE粒子Eを用いた以外は、実施例1と同様に、PTFE組成物L-Eの作製と評価、PTFE組成物L-Eの作製評価、PTFE層状物F-Eの作製と評価、電子写真感光体Eの作製、評価を実施した。結果を表1に示す。
【0186】
<実施例14>
-PTFE組成物L2-Aの作製-
次に、下記構造式で表される化合物(I-A)9.5質量部、スーパーベッカミン(R)L-148-55(ブチル化ベンゾグアナミン樹脂:大日本インキ社製)0.5質量部、メラミン樹脂(商品名:ニカラックMw30、三和ケミカル社製)0.1質量部、ポリエーテル変性シリコーンオイル(商品名:KF355(A)、信越化学社製)0.01質量部、ブロックスルホン酸(商:Nacure5225、楠本化成社製)0.1質量部、シクロペンタノール20質量部、及び、2-ブタノール5質量部を混合した。さらにPTFE粒子Aを1質量部、1mmφガラスビーズを添加しペイントシェーカーで30分分散処理をしたあと、ガラスビーズを取り除いた。この液をPTFE組成物L2-Aとする。
【0187】
【化8】
【0188】
-電子写真感光体の作製-
実施例1と同様に電荷発生層まで作製した。
次に、下記式(CT-1)で表されるベンジジン化合物2質量部、及び、下記式(B-1)で表わされる構造単位を有する高分子化合物(粘度平均分子量約80,000)2.5質量部をクロロベンゼン35質量部に溶解させ、電荷輸送層形成用塗布液を得た。
次に、得られた塗布液を、上記電荷発生層上に浸漬塗布法で塗布し、120℃で40分間加熱乾燥し、厚さ23μmの電荷輸送層を形成した。
【化9】

【0189】
【化10】
【0190】
次に、PTFE組成物L2-Aを上記電荷輸送層上に浸漬塗布法により塗布し、室温で10分間風乾した後、150℃で1時間加熱処理して硬化し、厚さ約7μmの保護層を形成した。
これにより、目的の電子写真感光体(感光体a)を得た。
そして、実施例1と同様にして、各種評価を実施した。
【0191】
<実施例15>
-PTFE組成物L2-Bの作製-
下記構造式で表される化合物(III-2)6質量部、Me(MeO)-Si-(CH-Si-Me(OMe):3質量部、シクロペンタノール20質量部、及び、イソプロパノール5質量部を混合し、さらに陽イオン交換樹脂(商品名:アンバーリスト15E、ローム・アンド・ハース社製)0.6質量部、蒸留水0.5質量部を混合して30分間加水分解を行った。加水分解したものからイオン交換樹脂をろ別し、アルミニウムトリスアセチルアセトナート0.2質量部、アセチルアセトン0.2質量部ポリエーテル変性シリコーンオイル(商品名:KF355(A)、信越化学社製)0.01質量部、及び、ブロックスルホン酸(商品名:Nacure5225、楠本化成社製)0.1質量部を加えて混合し、さらにPTFE粒子B:1質量部、1mmφガラスビーズを添加しペイントシェーカーで30分分散処理をしたあと、ガラスビーズを取り除いた。この液をPTFE組成物L2-Bとする。
【0192】
【化11】
【0193】
ここで、式(III-2)中、Sはいずれも-(CH-COO-(CH-Si(O-iPr)Meを示す。なお、Meはメチル基を示し、iPrはイソプロピル基を示す。
【0194】
-電子写真感光体の作製-
実施例11と同様に電荷輸送層まで作製した。
次に、PTFE組成物L2-Bを上記電荷輸送層上に浸漬塗布法により塗布し、室温で10分間風乾した後、150℃で1時間加熱処理して硬化し、厚さ約5μmの保護層を形成した。
これにより、目的の電子写真感光体(感光体b)を得た。
そして、実施例1と同様にして、各種評価を実施した。
【0195】
<実施例16>
-PTFE組成物L2-Cの作製-
下記構造式で表される化合物20質量部を、安定剤不含テトラヒドロフラン(THF)15質量部、及びシクロペンチルメチルエーテル15質量部の混合物に溶解し、さらにPTFE粒子C:1質量部、1mmφガラスビーズを添加しペイントシェーカーで30分分散処理をしたあと、ガラスビーズを取り除いた。更に開始剤V-601(和光純薬社製)3.8質量部を溶解させ保護層形成用塗布液を得た。この液をPTFE組成物L2-Cとする。
【0196】
【化12】
【0197】
-電子写真感光体の作製-
実施例13と同様に電荷輸送層まで作製した。
PTFE組成物L2-Cを電荷輸送層上に塗布し、酸素濃度約80ppmの雰囲気下で155℃、40分加熱し、厚み7μmの保護層を形成した。
これにより、目的の電子写真感光体(感光体c)を得た
そして、実施例1と同様にして、各種評価を実施した。
【0198】
<実施例4>
(粉体塗料の作製及び評価)
実施例1のPTFE粒子Aを外添剤として使用して、次の通り、粉体塗料を作製した。
【0199】
-ポリエステル樹脂・硬化剤複合分散液(E1)の調製-
コンデンサー、温度計、水滴下装置、アンカー翼を備えたジャケット付き3リットル反応槽(東京理化器械(株)製:BJ-30N)を水循環式恒温槽にて40℃に維持しながら、該反応槽に酢酸エチル180部とイソプロピルアルコール80部との混合溶剤を投入し、これに下記組成物を投入した。
・ポリエステル樹脂(PES1)[テレフタル酸/エチレングリコール/ネオペンチルグリコール/トリメチロールプロパンの重縮合体(モル比=100/60/38/2(mol%)、ガラス転移温度=62℃、酸価(Av)=12mgKOH/g、水酸基価(OHv)=55mgKOH/g、重量平均分子量(Mw)=12,000、数平均分子量(Mn)=4,000]:240部
・ブロックイソシアネート硬化剤VESTAGONB1530(EVONIK社製):60部
・ベンゾイン:1.5部
・アクリルオリゴマー(アクロナール4F、BASF社):3部
【0200】
投入後、スリーワンモーターを用い150rpmで撹拌を施し、溶解させて油相を得た。この撹拌されている油相に、10質量%アンモニア水溶液の1部と5質量%水酸化ナトリウム水溶液の47部との混合液を5分間で滴下し、10分間混合した後、さらにイオン交換水900部を毎分5部の速度で滴下して転相させ、乳化液を得た。
すぐに、得られた乳化液800部とイオン交換水700部とを2リットルのナスフラスコに入れ、トラップ球を介して真空制御ユニットを備えたエバポレーター(東京理化器械(株)製)にセットした。ナスフラスコを回転させながら、60℃の湯バスで加温し、突沸に注意しつつ7kPaまで減圧し溶剤を除去した。溶剤回収量が1100部になった時点で常圧(1気圧)に戻し、ナスフラスコを水冷して分散液を得た。得られた分散液に溶剤臭は無かった。この分散液における樹脂粒子の体積平均粒径は145nmであった。その後、アニオン性界面活性剤(ダウケミカル製、Dowfax2A1、有効成分量45質量%)を、分散液中の樹脂分に対して有効成分として2質量%添加混合し、イオン交換水を加えて固形分濃度が25質量%になるように調整した。これをポリエステル樹脂・硬化剤複合分散液(E1)とした。
【0201】
-白色顔料分散液(W1)の調製-
・酸化チタン(石原産業製 A-220):100部
・アニオン界面活性剤(第一工業製薬社製:ネオゲンRK):15部
・イオン交換水:400部
・0.3mol/lの硝酸:4部
以上を混合し、溶解し、高圧衝撃式分散機アルティマイザー((株)スギノマシン製、HJP30006)を用いて3時間分散して酸化チタンを分散させてなる白色顔料分散液を調製した。レーザー回折粒度測定器を用いて測定したところ顔料分散液における酸化チタンの体積平均粒径は、0.28μm、白色顔料分散液固形分比率は25%であった。
【0202】
-白色粉体粒子(PC1)の作製-
・ポリエステル樹脂・硬化剤複合分散液(E1):180部(固形分45部)
・白色顔料分散液(W1):160部(固形分40部)
・イオン交換水:200部
以上を丸型ステンレス製フラスコ中においてホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)を用いて混合及び分散した。次いで、1.0質量%硝酸水溶液を用い、pHを3.5に調整した。これに10質量%ポリ塩化アルミニウム水溶液0.50部を加え、ウルトラタラックスで分散操作を継続した。
撹拌機、マントルヒーターを設置し、スラリーが充分に撹拌するように撹拌の回転数を調整しながら、50℃まで昇温し、50℃で15分保持した後、コールターカウンター[TA-II]型(アパーチャー径:50μm、ベックマン-コールター社製)にて凝集粒子の粒径を測定し、体積平均粒径が5.5μmとなったところで、シェルとしてポリエステル樹脂・硬化剤複合分散液(E1)60部をゆっくりと投入した(シェル投入)。
【0203】
投入後30分間保持した後、5%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを7.0とした。その後、85℃まで昇温し、2時間保持した。
【0204】
反応終了後、フラスコ内の溶液を冷却し、ろ過することにより固形分を得た。次に、この固形分を、イオン交換水で洗浄した後、ヌッチェ式吸引ろ過で固液分離し、再度固形分を得た。
次に、この固形分を40℃のイオン交換水3リットル中に再分散し、15分、300rpmで撹拌、洗浄した。この洗浄操作を5回繰り返し、ヌッチェ式吸引ろ過で固液分離して得られた固形分を12時間真空乾燥させて、コア・シェル型の白色粉体粒子(PC1))を得た。
【0205】
この白色粉体粒子(PC1)の粒径を測定したところ、体積平均粒径D50vは6.8μm、体積粒度分布指標GSDvは1.24、平均円形度は0.97であった。
【0206】
-白色粉体塗料の作製-
白色粉体粒子(PC1):100部と、外添剤としてシリカ粒子「RX200(日本アエロジル株式会社)」0.6部と、外添剤として各例の分散剤付着PTFE粒子3部と、をヘンシェルミキサーにより周速32m/s、10分間で混合した後、45μm網目のシーブを用いて粗大粒子を除去し、白色粉体塗料を得た。
【0207】
-評価-
得られた白色粉体塗料を用いて、次の評価を実施した。
粉体塗料を旭サナック製コロナガンXR4-110Cに装填した。
鏡面仕上げのアルミ板の30cm×30cmの四角形テストパネル(被塗装物)に対して、パネル正面から30cmの距離(パネルとコロナガンの吐出口との距離)で、旭サナック製コロナガンXR4-110Cを上下左右にスライドさせて、粉体塗料を吐出して、パネルに静電付着させ、付着層を得た。コロナガンの印加電圧は80kV、入力エア圧は0.55MPa、吐出量200g/分とし、パネルに付着させる粉体塗料の付着量を50g/m、90g/m、180g/m、又は、220g/mとした4回の塗装を実施した。
その後、各パネルを180℃に設定した高温チャンバーに入れて30分加熱(焼付)した。
【0208】
得られた塗装膜について、触診、目視にて評価を行った。評価基準は、次の通りとした。
A:触診、目視ともに問題なし
B:目視上わずかにむらが見られる(問題にならないレベル)
C:触診で突起が確認される(問題にならないレベル)
D:目視上むら、触診で突起が見られる。
【0209】
<実施例5-6、比較例2>
(粉体塗料の作製及び評価)
実施例2~3、比較例1のPTFE粒子B~Eを外添剤として使用した以外は、実施例4と同様にして、粉体塗料を作製し、評価した。
【0210】
以上の例の一覧を表1~表2に一覧にして示す。
【0211】
【表1】
【0212】
【表2】

【0213】
上記結果から、本実施例では、比較例に比べ、感光体評価および粉体塗料評価のいずれの良好な結果が得られたことがわかる。
それにより、本実施例のPTFE粒子分散液(および分散液付着PEFT粒子)は、混合される成分の状態が変化しても、分散状態の維持性が高いことがわかる。
【符号の説明】
【0214】
1 下引層、2 電荷発生層、3 電荷輸送層、4 導電性基体、7A,7 電子写真感光体、8 帯電装置、9 露光装置、11 現像装置、13 クリーニング装置、14 潤滑剤、40 転写装置、50 中間転写体、100 画像形成装置、120 画像形成装置、131 クリーニングブレード、132 繊維状部材(ロール状)、133 繊維状部材(平ブラシ状)、300 プロセスカートリッジ
図1
図2
図3