(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】映像処理装置および液晶プロジェクター
(51)【国際特許分類】
G09G 3/36 20060101AFI20231129BHJP
G09G 3/20 20060101ALI20231129BHJP
G03B 21/00 20060101ALI20231129BHJP
G03B 21/14 20060101ALI20231129BHJP
H04N 5/66 20060101ALI20231129BHJP
H04N 5/74 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
G09G3/36
G09G3/20 612U
G09G3/20 641P
G09G3/20 680C
G09G3/20 611D
G09G3/20 641E
G09G3/20 641C
G03B21/00 E
G03B21/14 Z
H04N5/66 B
H04N5/74 K
(21)【出願番号】P 2019117222
(22)【出願日】2019-06-25
【審査請求日】2022-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125689
【氏名又は名称】大林 章
(74)【代理人】
【識別番号】100128598
【氏名又は名称】高田 聖一
(74)【代理人】
【識別番号】100121108
【氏名又は名称】高橋 太朗
(72)【発明者】
【氏名】保坂 宏行
【審査官】橋本 直明
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-138149(JP,A)
【文献】特開2018-097022(JP,A)
【文献】特開2013-003426(JP,A)
【文献】特開2014-206703(JP,A)
【文献】特開2012-155212(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101599253(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09G 3/36
G09G 3/20
G03B 21/00
G03B 21/14
H04N 5/66
H04N 5/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像データで指定される1フレームの画像
の一部を構成する3以上のN個の画素を、液晶パネルで表示される1つの画素で、前記N個のフィールドの各々において表示させる映像処理装置であって、
処理回路を含み、
前記処理回路は、
前記N個のフィールドのうち、一のフィールドにおいて前記液晶パネルの一の画素に指定される階調レベルと前記一の画素と隣り合う他の画素に指定される階調レベルとに基づいて、当該一の画素または当該他の画素の少なくとも一方の階調レベルの補正が必要か否かを判定し、
前記補正が必要であると判定し、かつ、前記一の画素に指定される階調レベルと前記他の画素に指定される階調レベルとが、前記一のフィールドよりも前記N個のフィールド前の階調レベルと同じである場合、当該一の画素
および当該他の画素
の階調レベルを補正せず、
前記補正が必要であると判定し、かつ、前記一のフィールドよりも前記N個のフィールド前の階調レベルと同じではない場合、当該一の画素または当該他の画素の少なくとも一方の階調レベルを補正する
映像処理装置。
【請求項2】
前記処理回路は、
前記一の画素に対応する画素の階調レベルと、前記他の画素に対応する画素の階調レベルとを解析して、それぞれの階調レベル
において時間的な変化がないと判定した場合に、当該一の画素
および当該他の画素
の階調レベルを補正しない
請求項1に記載の映像処理装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の映像処理装置と、
前記一の画素および前記他の画素を表示するための第1液晶パネルと、
前記第1液晶パネルで表示される画素の位置を、前記N個のフィールドにてシフトさせるシフトデバイスと、
を含む液晶プロジェクター。
【請求項4】
前記第1液晶パネルは、第1色に対応した画像を表示し、
前記第1色とは異なる第2色に対応した画像を表示するための第2液晶パネルと、
前記第1色および第2色とは異なる第3色に対応した画像を表示するための第3液晶パネルと、
を含み、
前記シフトデバイスは、
前記第1液晶パネルによる第1色の画像、前記第2液晶パネルによる第2色の画像、および、前記第3液晶パネルによる第3色の画像の合成像の位置をシフトさせる
請求項3に記載の液晶プロジェクター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像処理装置および液晶プロジェクターに関する。
【背景技術】
【0002】
近年のように液晶パネルの小型化および高精細化が進行して、画素電極同士の隙間が狭くなると、互いに隣り合う画素電極同士で生じる電界、すなわち基板面に対して平行方向の電界(横電界)による影響が無視できなくなる。具体的には、横電界によって、液晶の配向不良、すなわちドメインが発生し、表示上の不具合として視認される。
ドメインによる表示上の不具合を抑えるため、例えば次のような技術が提案されている。すなわち、横方向の電界が大きくなる場合、具体的には、ホスト装置等の上位装置から供給される映像データにしたがった電圧を液晶パネルの画素電極に印加した場合に、隣り合う画素電極に印加される電圧の差がしきい値以上大きくなる、と想定される場合、当該電圧の差が小さくなるように補正する技術が提案されている。なお、このような補正は、ドメイン補正と呼ばれる。
【0003】
一方、液晶パネルを用いた液晶プロジェクターでは、解像度を擬似的に高めるために、スクリーン等に投射される画素の位置を、シフトデバイスによってシフトさせる技術が知られている。詳細には、この技術では、1つの単位画像を表示するための期間が、複数のフィールドに分割され、フィールド毎に、投射される画素の位置がシフトされて、液晶パネルで表現される画素の個数よりも多くの画素が投射されているかのように知覚させる。
このような画素のシフトを用いて解像度を擬似的に高める場合に、横電界に起因するドメインを抑える技術が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
液晶パネルにおいてドメイン補正された画素は、ホスト装置等の上位装置から供給される映像データで指定される階調レベルとは異なるので、いわゆる表示の背反となる。上記特許文献1に記載された技術では、各フィールドにおいて液晶パネルで横方向の電界が大きくなる、と想定される場合であれば、ドメイン補正がなされるので、表示の背反が生じやすくなる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る映像処理装置は、映像データで指定される画像を構成する画素について、液晶パネルで表示される画素を用い、複数のフィールドにわたって表示させる映像処理装置であって、一のフィールドにおいて前記液晶パネルの一の画素に指定される階調レベルと前記一の画素と隣り合う他の画素に指定される階調レベルとに基づいて、当該一の画素または当該他の画素の少なくとも一方の階調レベルを補正するか否かを仮決定する仮決定部と、前記一の画素に指定される階調レベルと前記他の画素に指定される階調レベルとが、前記一のフィールドよりも前記複数フィールド分前の階調レベルと同じであると判定した場合、前記仮決定を取り消す取消部と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態に係る液晶プロジェクターを示す図である。
【
図2】液晶プロジェクターの構成を示すブロック図である。
【
図3】液晶プロジェクターにおける液晶パネルの構成を斜視図である。
【
図5】液晶パネルの電気的な構成を示すブロック図である。
【
図6】液晶パネルにおける画素回路の構成を示す図である。
【
図7】液晶プロジェクターにおける処理回路の構成を示すブロック図である。
【
図8】映像データの画素と液晶パネルで表現される画素との関係を示す図である。
【
図9】液晶パネルにおけるV-T特性等の例を示す図である。
【
図10】各フィールドにおける液晶パネルの画素の表示例を示す図である。
【
図11】上記表示例におけるドメイン補正を示す図である。
【
図12】上記表示例におけるドメイン補正の取り消しを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態に電気光学装置について図面を参照して説明する。なお、各図において、各部の寸法および縮尺は、実際のものと適宜に異ならせてある。また、以下に述べる実施の形態は、好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本開示の範囲は、以下の説明において特に本開示を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0009】
図1は、実施形態に係る映像処理装置を含む液晶プロジェクター1の光学的な構成を示す図である。図に示されるように、液晶プロジェクター1は、液晶パネル100R、100Gおよび100Bを含む。また、液晶プロジェクター1の内部には、ハロゲンランプ等の白色光源からなるランプユニット2102が設けられている。このランプユニット2102から射出された投射光は、内部に配置された3枚のミラー2106および2枚のダイクロイックミラー2108によって、赤(R)、緑(G)および青(B)の3原色に分離される。このうち、Rの光は液晶パネル100Rに、Gの光は液晶パネル100Gに、Bの光は液晶パネル100Bに、それぞれ入射する。
なお、Bの光路は、他の赤や緑と比較して長い。したがって、Bの光は、光路での損失を防ぐために、入射レンズ2122、リレーレンズ2123および出射レンズ2124からなるリレーレンズ系2121を介して液晶パネル100Bに導かれる。
【0010】
液晶パネル100Rは、マトリクス状に配列する画素回路を有し、Rに対応するデータ信号に基づいて、上記画素回路の液晶素子を透過した光によってRの透過像を生成する。同様に、液晶パネル100Gは、Gに対応するデータ信号に基づいてGの透過像を生成し、液晶パネル100Bは、Bに対応するデータ信号に基づいてBの透過像を生成する。
【0011】
液晶パネル100R、100Gおよび100Bによってそれぞれ生成された各色の透過像は、ダイクロイックプリズム2112に3方向から入射する。そして、このダイクロイックプリズム2112において、RおよびBの光は90度に屈折する一方、Gの光は直進する。したがって、各色の画像が合成された後、シフトデバイス2300を介して投射レンズ2114に入射する。シフトデバイス2300は、ダイクロイックプリズム2112からの出射方向の光軸をシフトさせる。なお、シフトデバイス2300によるシフト動作について後述する。投射レンズ2114は、シフトデバイス2300を介した合成像を、スクリーン2120に拡大して投射する。
なお、液晶パネル100R、100Bによる透過像は、ダイクロイックプリズム2112により反射した後に投射されるのに対し、液晶パネル100Gによる透過像は直進して投射される。したがって、液晶パネル100R、100Bによる各透過像は、液晶パネル100Gの透過像に対して左右反転した関係となる。
【0012】
図2は、液晶プロジェクター1の電気的な構成を示すブロック図である。図に示されるように、液晶プロジェクター1は、映像処理装置200と、上述した液晶パネル100R、100Gおよび100Bと、シフトデバイス2300を含む。
【0013】
図示省略されたホスト装置等の上位装置から、映像データVdaが同期信号Syncに同期して供給される。映像データVdaは、表示すべき画像における画素の階調レベルを、例えばRGB毎に8ビットで指定する。
【0014】
なお、液晶パネル100R、100Gおよび100Bの合成像では画素が縦方向および横方向にわたってマトリクス状に配列する。映像データVdaで階調レベルが指定される画素の配列は、液晶パネル100R、100Gおよび100Bの合成像における画素の配列と比較して、例えば縦方向で2倍、横方向で2倍となっている。
そこで、本実施形態では、映像データVdaで示される画像を表現するための単位期間(フレーム)が、例えば4つの期間(フィールド)に分割される。シフトデバイス2300は、各フィールドにおいてスクリーン2120に投射される画素の位置を異ならせて、液晶パネル100R、100Gおよび100Bにおける解像度を擬似的に高くする。
【0015】
なお、本実施形態において、スクリーン2120に投射されるカラー画像は、液晶パネル100R、100Gおよび100Bの各透過像を合成することで、すなわち重ね合わせることで表現される。したがって、カラー画像の最小単位である画素は、液晶パネル100Rによる赤の副画素、液晶パネル100Gによる緑の副画素、および、液晶パネル100Bによる青の副画素に分けることができる。ただし、液晶パネル100R、100Gおよび100Bにおける副画素について、色について特定する必要がない場合、および、単に明暗のみを問題とする場合等では、副画素と敢えて表記する必要がない。そこで本説明では、液晶パネル100R、100Gおよび100Bにおける表示単位についても、画素と称呼する。
【0016】
また、同期信号Syncには、映像データVdaの垂直走査開始を指示する垂直同期信号や、水平走査開始を指示する水平同期信号、および、映像データの1画素分のタイミングを示すクロック信号が含まれる。
【0017】
映像処理装置200は、表示制御回路210、処理回路220R、220Gおよび220Bを含む。
表示制御回路210は、第1に、上位装置から供給される映像データVdaを分解して、フィールド毎に、かつ、色毎に出力する。詳細には、表示制御回路210は、上位装置からの映像データVdaを一旦蓄積し、蓄積した映像データVdaのうち、フィールドに対応し、かつ、Rの映像データを読み出し、Va_Rとして出力する。表示制御回路210は、蓄積した映像データVdaのうち、フィールドに対応し、かつ、Gの映像データを読み出し、Va_Gとして出力し、また、フィールドに対応し、かつ、Bの映像データを読み出し、Va_Bとして出力する。
表示制御回路210は、第2に、フィールド毎に、制御信号Ctrを液晶パネル100R、100Gおよび100Gに供給する。
表示制御回路210は、第3に、フィールド毎に、光軸のシフトを制御するための制御信号Lacを、シフトデバイス2300に供給する。
【0018】
処理回路220R、220Gおよび220Bの詳細については後述するが、処理回路220Rについて概略すれば、映像データVa_Rを解析し、必要であれば後述するドメイン補正して、アナログ電圧のデータ信号Vid_Rに変換し、液晶パネル100Rに供給する。
同様に、処理回路220Gは、映像データVa_Gを解析し、必要であればドメイン補正して、アナログ電圧のデータ信号Vid_Gに変換し、液晶パネル100Gに供給する。処理回路220Bは、映像データVa_Bを解析し、必要であればドメイン補正して、アナログ電圧のデータ信号Vid_Bに変換し、液晶パネル100Bに供給する。
【0019】
次に、液晶パネル100R、100Gおよび100Gについて説明する。液晶パネル100R、100Gおよび100Gについては、入射する光の色、すなわち波長だけが異なり、構造的には共通である。そこで、液晶パネル100R、100Gおよび100Gについては、符号を100として、色を特定しないで一般的に説明する。
【0020】
図3は、液晶パネル100の要部を示す図であり、
図4は、
図3におけるH-h線で破断した断面図である。
これらの図に示されるように、液晶パネル100は、画素電極118が設けられた素子基板100aと、コモン電極108が設けられた対向基板100bとが、図示省略のスペーサーを含むシール材90によって一定の間隙を保ちつつ、互いに電極形成面が対向するように貼り合わせられ、この間隙に液晶105が封入された構造である。
【0021】
素子基板100aおよび対向基板100bとしては、それぞれガラスや石英などの光透過性を有する基板が用いられる。
図3に示されるように、素子基板100aにおける一辺は、対向基板100bから張り出している。この張り出した領域に、X方向に沿って複数の端子106が設けられている。複数の端子106には、FPC基板74の一端が接続される。FPC基板74の他端は、映像処理装置200に接続されて、上述した各種の信号などが供給される。
【0022】
素子基板100aにおいて対向基板100bに向かう面には、画素電極118が、例えばITOなどの透明性を有する導電層のパターニングによって形成される。なお、ITOは、Indium Tin Oxideの略語である。
また、素子基板100aの対向面および対向基板100bの対向面には、電極以外にも様々な要素が設けられるが、図では省略されている。
【0023】
図5は、液晶パネル100の電気的な構成を示すブロック図である。液晶パネル100には、表示領域10の周縁に、走査線駆動回路130およびデータ線駆動回路140が設けられる。
【0024】
液晶パネル100の表示領域10においては、表示すべき画像の画素に対応した画素回路110がマトリクス状に配列される。詳細には、表示領域10において、複数本の走査線12が図においてX方向に延在して設けられ、また、複数本のデータ線14がY方向に延在し、かつ、走査線12と互いに電気的な絶縁を保って設けられる。そして、複数本の走査線12と複数本のデータ線14との交差に対応して画素回路110がマトリクス状に設けられる。
【0025】
走査線12の本数をmとし、データ線14の本数をnとした場合、画素回路110は、縦m行×横n列でマトリクス状に配列する。m、nは、いずれも2以上の整数である。走査線12と画素回路110とにおいて、マトリクスの行を区別するために、図において上から順に1、2、3、…、(m-1)、m行と呼ぶ場合がある。同様にデータ線14および画素回路110において、マトリクスの列を区別するために、図において左から順に1、2、3、…、(n-1)、n列と呼ぶ場合がある。
【0026】
走査線駆動回路130は、表示制御回路210による制御にしたがって、走査線12を例えば1、2、3、…、m行目という順番で1本ずつ選択し、選択した走査線12への走査信号をHレベルとする。なお、走査線駆動回路130は、選択した走査線12以外の走査線12への走査信号をLレベルとする。
データ線駆動回路140は、処理回路220R、220Gまたは220Bのうち、対応する色の回路から供給されたデータ信号を1行分ラッチするとともに、走査線12への走査信号がHレベルとなった期間において、当該走査線12に位置する画素回路110に、データ線14を介して出力する。
【0027】
図6は、隣り合う2本の走査線12と、隣り合う2本のデータ線14との交差に対応する2行2列の計4個の、画素回路110の等価回路を示す図である。
図に示されるように、画素回路110は、トランジスター116と液晶素子120とを含む。トランジスター116は、例えばnチャネル型の薄膜トランジスターである。画素回路110において、トランジスター116のゲートノードは、走査線12に接続される一方、そのソースノードはデータ線14に接続され、そのドレインノードは、平面視で略正方形形状の画素電極118に接続される。
【0028】
画素電極118に対向するようにコモン電極108が全画素に対して共通に設けられる。コモン電極108には電圧LCcomが印加される。そして、画素電極118とコモン電極108との間には上述したように液晶105が挟持される。したがって、画素回路110毎に、画素電極118およびコモン電極108によって液晶105を挟持した液晶素子120が構成される。
また、液晶素子120に対して並列に蓄積容量109が設けられる。蓄積容量109において、一端が画素電極118に接続され、他端が容量線107に接続されている。容量線107は、時間的に一定の電圧、例えばコモン電極108への印加電圧と同じ電圧LCcomが印加される。画素回路110は、走査線12の延在方向であるX方向とデータ線14の延在方向であるY方向とにわたってマトリクス状に配列するので、画素回路110に含まれる画素電極118についてもY方向およびX方向にわたって配列する。
【0029】
走査信号がHレベルとなった走査線12では、当該走査線12に対応して設けられる画素回路110のトランジスター116がオンする。トランジスター116のオンにより、データ線14と画素電極118とが電気的に接続された状態となるので、データ線14に供給されたデータ信号が、オンしたトランジスター116を介して画素電極118に到達する。走査線12がLレベルになると、トランジスター116はオフになるが、画素電極118に到達したデータ信号の電圧は、液晶素子120の容量性および蓄積容量109によって保持される。
【0030】
周知のように、液晶素子120では、画素電極118およびコモン電極108によって生じる電界に応じて液晶分子の配向が変化する。したがって、液晶素子120は、印加された電圧の実効値に応じた透過率となる。なお、本実施形態では、液晶素子120への印加電圧が高くなるにつれて、透過率が高くなるノーマリーブラックモードであるとする。
【0031】
液晶素子120の画素電極118にデータ信号を供給する動作が、1、2、3、…、m行目という順番で実行されることによって、m行n列で配列する画素回路110の液晶素子120の各々にデータ信号に応じた電圧が保持される。このような電圧の保持によって各液晶素子120が目的とする透過率となり、m行n列で配列する画素によって、対応する色の透過像が生成される。
【0032】
次に、映像データVdaで階調レベルが指定される画素と、液晶パネル100で表現される画素と、シフトデバイス2300による光軸のシフトと、の関係について説明する。なお、シフトデバイス2300については、上述したようにダイクロイックプリズム2112からの出射方向の光軸をシフトさせるが、便宜的に当該シフトについては、スクリーン2120に投射される画像の画素に換算して説明する。
【0033】
図8は、表示解像度とパネル解像度を画素のシフトとの関係を説明するための図である。この図において、表示解像度とは、映像データVdaで階調レベルが指定される画素配列、すなわち表示すべき画像の画素配列で示される解像度をいう。なお、
図8(1)における左欄の表示解像度の画素配列では、映像データVdaで階調レベルが指定される画素配列のうち、一部だけが抜き出されて示される。
また、パネル解像度とは、液晶パネル100の画素配列で示される解像度をいう。なお、
図8(1)における右欄のパネル解像度の画素配列では、液晶パネル100における画素配列のうち、(1)における左欄の画素配列に対応した配列が抜き出されて示される。
【0034】
上述したように、表示解像度が、パネル解像度に対して縦方向で2倍、横方向で2倍となっているので、本実施形態では、液晶パネル100における1つの画素が、映像データVdaの4つの画素を、各フィールドにて表現する構成としている。詳細には、液晶パネル100における1つの画素がスクリーン2120に投射される位置が、シフトデバイス2300によってシフトされて、映像データVdaの4つの画素が各フィールドにて表現される。
【0035】
ここで、映像データVdaにおける4つの画素を表現するための4つのフィールドについて、便宜的に時間の順で第1~第4フィールドと表記する。
本実施形態において、シフトデバイス2300は、スクリーン2120に投射される液晶パネル100の画素を、左右の軸と上下の軸との二軸にわたってシフトする構成となっている。詳細には、
図8(a)に示されるような第1フィールドにおける画素の位置を基準とした場合、シフトデバイス2300は、第2フィールドでは
図8(b)に示されるように、スクリーン2120に投射される液晶パネル100の画素を、破線で示される第1フィールドの位置から当該画素における一辺の長さのおおよそ半分だけ右にシフトさせる。
シフトデバイス2300は、第3フィールドでは
図8(c)に示されるように、投射される液晶パネル100の画素を、第2フィールドの位置から当該画素における一辺の長さのおおよそ半分だけ下にシフトさせる。
シフトデバイス2300は、第4フィールドでは
図8(d)に示されるように、投射される液晶パネル100の画素を、第3フィールドの位置から当該画素における一辺の長さのおおよそ半分だけ右にシフトさせる。
なお、シフトデバイス2300は、第4フィールドの後、次フレームの第1フィールドでは、スクリーン2120に投射される液晶パネル100の画素を、第4フィールドの位置から当該画素における一辺の長さのおおよそ半分だけ上にシフトさせる。
【0036】
また、
図8(1)において例えば液晶パネル100の画素a1は、映像データVdaで階調レベルが指定される2m行2n列で配列する画素のうち、左右上下で隣り合う4つの画素A1、A2、B1およびB2を表現する。
第1フィールドでは、
図8(a)に示されるように、液晶パネル100の画素a1は、映像データVdaにおいて隣り合う4つの画素のうち、左上端の画素A1を表現する。
第2フィールドでは、
図8(b)に示されるように、液晶パネル100の画素a1は、映像データVdaにおいて隣り合う4つの画素のうち、右上端の画素A2を表現する。
第3フィールドでは、
図8(c)に示されるように、液晶パネル100の画素a1は、映像データVdaにおいて隣り合う4つの画素のうち、右下端の画素B2を表現する。
第4フィールドでは、
図8(d)に示されるように、第4フィールドでは、液晶パネル100の画素a1は、映像データVdaにおいて隣り合う4つの画素のうち、左下端の画素B1を表現する。
【0037】
ここでは、映像データVdaにおいて階調レベルが指定される画素A1、A2、B1およびB2について、液晶パネル100における画素a1との関係で説明したが、映像データVdaにおいて指定される他の画素についても、
図8に示されるように、液晶パネル100における画素で表現される。
【0038】
したがって、本実施形態では、液晶パネル100の解像度がm行n列であっても、第1フィールドから第4フィールドまでを1つの期間としてみたときに、映像データVdaにおいて階調レベルが指定される2m行2n列の画素配列を表現することができる。
【0039】
本実施形態におけるドメインおよびその補正について説明する前に、比較例に係るドメインおよびその補正について説明する。
図9(1)は、ノーマリーブラックモードにおける液晶素子120の印加電圧-透過率の特性(V-T特性)の一例を示す図である。
ノーマリーブラックモードにおいて、高い階調レベルが指定されて、透過率が高くなる画素(明画素)では、液晶素子120における印加電圧が高い。一方、低い階調レベルが指定されて、透過率が低くなる画素(暗画素)では、液晶素子120における印加電圧が低い。このような明画素と暗画素とについて、便宜的に次のように定義する。
明画素は、階調レベルに応じた電圧が画素電極118に印加された場合に、当該画素電極118を含む液晶素子120への印加電圧がVHを上回る画素であり、暗画素は、液晶素子120への印加電圧がVLを下回る画素である。ここで、VH、VLについては、
VH>VL
の関係にある。また、液晶素子120の印加電圧が電圧VLである場合、例えば相対透過率が10%となり、電圧VHである場合、例えば相対透過率が90%となる。ただし、VLおよびVHについては、他の相対透過率に対応した電圧であってもよい。
【0040】
図9(2)に示されるように、液晶パネル100において、明画素Lpと暗画素Dpとが隣り合うと、画素電極118同士の電圧差が大きくなり、2つの画素の境界Edg付近において横電界によって液晶分子の配向乱れ、すなわちドメインが発生しやすくなる。一般に、画素電極118同士の電圧差が大きくなるほど、隣り合う2つの画素の境界付近で発生するドメインの程度が大きくなる。ドメインが発生した画素は、階調レベルに対応した透過率とはならないので、表示品位を低下させる要因となる。
特に、連続するフィールドにおいて、暗画素を背景として、明画素が1画素ずつ移動するような表示を想定してみると、明画素の移動に伴って、暗画素から明画素に変化すべき画素にドメインが発生するだけでなく、発生したドメインが残留する。この残留により、複数の明画素のリバースチルト発生領域が連結して、一種の尾引き現象として視認される。
【0041】
したがって、ドメインを原因とした表示不具合を抑えることだけを考慮すれば、暗画素から変化した明画素が別の暗画素と隣り合う場合に、当該明画素と当該暗画素との画素電極118同士で発生する横電界を小さくするようにドメイン補正すれば良いはずである。
【0042】
一方で、本実施形態のように、シフトデバイス2300によって二軸で液晶パネル100の画素をシフトする構成では、映像データVdaで指定される画像が静止画であっても、すなわち、画素の階調レベルが、前後するフレーム同士で比較した場合に変化がなくても、液晶パネル100の画素でみれば、動画のように階調レベルが変化する場合がある。この場合について
図10を参照して説明する。
【0043】
図10は、映像データVdaにおいて階調レベルが指定される4つ画素を、液晶パネル100の1つの画素で表現する場合に、液晶パネル100における1つの画素が取り得る明画素と暗画素との組み合わせ等を示す図である。
【0044】
ここでは、
図10の(1)における太枠に示されるように、映像データVdaで階調レベルが指定される配列する画素のうち、画素C3、C4、D4およびD3と、当該4つの画素を表現する液晶パネル100の画素b2とに着目する。ここで、当該画素b2が取り得る明画素と暗画素との組み合わせは、(2)に示されるように16通りある。
なお、(2)において横軸のC2、C4、D4およびD3は、それぞれ第1フィールドから第4フィールドまでにわたって、画素b2がどのように変化するかを示し、暗画素が黒の四角形で、明画素が白の四角形で、それぞれ表記される。また、液晶パネル100における画素b2が、明画素および暗画素以外となる場合、ドメインが発生しないので、組み合わせからは除外されている。
【0045】
上記16通りは、(3)に示されるように、次のA、B、C、D、Eの5パターンのいずれかに分類することができる。
詳細には、パターンAは、画素b2が第1フィールドから第4フィールドまでにわたって、明画素または暗画素のいずれかで固定となるパターンであり、上記16通りのうち、2通りがある。
パターンBは、画素b2が第1フィールドから第4フィールドまでのうち、いずれかの1つのフィールドで暗画素となり、残りの3つのフィールドで明画素となるパターンであり、上記16通りのうち、4通りがある。
パターンCは、画素b2が第1フィールドから第4フィールドまでのうち、連続する2つのフィールドで暗画素または明画素の一方となった状態から、暗画素または明画素の他方となるパターンであり、上記16通りのうち、4通りがある。
パターンDは、画素b2が第1フィールドから第4フィールドまでのうち、いずれかの3つのフィールドで暗画素となり、残りの1つのフィールドで明画素となるパターンであり、上記16通りのうち、4通りがある。
パターンEは、画素b2が第1フィールドから第4フィールドまでにおいて交互に明画素および暗画素となるパターンであり、上記16通りのうち、2通りがある。
【0046】
上述したように、ドメインによる表示品位の低下は、暗画素から変化した明画素が別の暗画素と隣り合う場合に発生しやすい。そこで、液晶パネル100において、上記5パターンのいずれかのパターンとなる画素が、明画素と暗画素との間に位置する場合について検討する。
【0047】
図11は、上記5パターンとなる画素の各々が、明画素と暗画素との間に位置する場合に、第1フィールドから第4フィールドまでにわたった変化を示す図である。
パターンAでは、液晶パネル100における画素b2が、第1フィールドから第4フィールドまでにわたって明画素または暗画素のいずれかに固定されるので、ドメイン補正が必要であるとは判定されない。
【0048】
パターンBでは、画素b2が第1フィールドから第4フィールドまでのうち、いずれかの1つのフィールドで暗画素となり、残りの3つのフィールドで明画素となるので、明画素または暗画素の一方から他方に変化するときに、ドメイン補正が必要であると判定される。なお、
図11におけるパターンBでは、液晶パネル100の画素b2が、第2フィールドにおいて暗画素から明画素に変化して、右の暗画素と隣り合うので、ドメイン補正が必要であると判定される例を示している。
【0049】
パターンCでは、画素b2が第1フィールドから第4フィールドまでのうち、連続する2つのフィールドで暗画素または明画素の一方となった状態から、暗画素または明画素の他方となるので、暗画素から明画素に変化するときに、ドメイン補正が必要であると判定される。なお、
図11におけるパターンCでは、画素b2が、第3フィールドにおいて暗画素から明画素に変化して、右の暗画素と隣り合うので、ドメイン補正が必要であると判定される例を示している。
【0050】
パターンDでは、画素b2が第1フィールドから第4フィールドまでのうち、連続する2つのフィールドで暗画素または明画素の一方となった状態から、暗画素または明画素の他方となるので、暗画素から明画素に変化するときに、ドメイン補正が必要であると判定される。なお、
図11におけるパターンDでは、画素b2が、第4フィールドにおいて暗画素から明画素に変化して、右の暗画素と隣り合うので、ドメイン補正が必要であると判定される例を示している。
【0051】
パターンEでは、画素b2が第1フィールドから第4フィールドまでにおいて交互に明画素および暗画素となるので、暗画素から明画素に変化するときに、ドメイン補正が必要であると判定される。なお、
図11におけるパターンEでは、画素b2が、第2フィールドおよび第4フィールドにおいて暗画素から明画素に変化して、右の暗画素と隣り合うので、ドメイン補正が必要であると判定される例を示している。
【0052】
このように、シフトデバイス2300によって液晶パネル100の画素をシフトする構成では、映像データVdaで指定される画像が静止画であっても、液晶パネル100の画素でみれば、動画のように階調レベルが変化する場合があるので、ドメイン補正が必要である、と判定される場合が多くなる。一方で、ドメイン補正を実行すると、表示の背反を招く。
【0053】
そこで、本実施形態では、第1フィールドから第4フィールドまでの各フィールドにおいて、液晶パネル100の、ある画素に着目した場合に、当該着目画素が、暗画素から明画素に変化した場合であって、当該着目画素が暗画素と隣り合う場合であれば、ドメイン補正を実行すると仮決定する。
ただし、ドメイン補正を実行すると仮決定した当該明画素と当該暗画素との状態が、1フレーム前、すなわち4フィールド前においても同じ状態であれば、当該ドメイン補正を実行するとした仮決定を取り消して、ドメイン補正を実行しない構成とする。
【0054】
具体的には、
図11においてパターンBでは、第2フィールドにおいて、映像データVdaの画素C4を表現する液晶パネル100の画素b2は、暗画素から明画素に変化し、かつ、映像データVdaの画素C6を表現する液晶パネル100の画素b3の暗画素と隣り合うので、ドメイン補正を実行すると、仮決定される。ただし、
図12に示されるように、画素b2および画素b3が、4フィールド前においても、同じ明画素および暗画素であれば、当該ドメイン補正を実行するとした仮決定を取り消して、ドメイン補正を実行しない構成とする。
【0055】
なお、ドメイン補正を実行すると仮決定した当該明画素と当該暗画素との状態が、4フィールド前においても異なる状態であれば、当該ドメイン補正を実行するとした仮決定が維持されて、ドメイン補正が実行される。
ここで、ドメイン補正については、明画素および暗画素の横電界を小さくすれば良いので、次の3態様が考えられる。すなわち、明画素の液晶素子120への印加電圧を、暗画素の液晶素子120への印加電圧に近づける第1の態様、暗画素の液晶素子120への印加電圧を、明画素の液晶素子120への印加電圧に近づける第2の態様、および、暗画素の液晶素子120への印加電圧と明画素の液晶素子120への印加電圧との双方を互いに近づける第3の態様が考えられる。
本実施形態では、説明を簡略化する意味で、第1の態様を採用して説明する。第1の態様について具体的には、
図9において、明画素の透過率を、Tchに相当する階調レベルに置き換え、液晶素子120への印加電圧Vchとして、暗画素の液晶素子120への印加電圧に近づける補正である。
なお、第2の態様とする場合には、暗画素の透過率を、Tclに相当する階調レベルに置き換え、液晶素子120への印加電圧Vclとして、明画素の液晶素子120への印加電圧に近づける補正である。また、第3の態様とする場合には、明画素の透過率をTchに相当する階調レベルに置き換えるとともに、暗画素の透過率をTclに相当する階調レベルに置き換える補正である。
【0056】
図7は、処理回路220R、220Gおよび220Bの構成を示すブロック図である。
なお、処理回路220R、220Gおよび220Bについては構成が共通なので、ここでは、処理回路200Rを例にとって説明する。
処理回路220Rには、上位装置からの映像データVdaを表示制御回路210によって分解された映像データVa_Rが供給される。映像データVa_Rは、Rの階調レベルであって、フィールドに対応した階調レベルを、液晶パネル100の配列において1行1列~1行n列、2行1列~2行n列、3行1列~3行n列、…、m行1列~m行n列という画素の順番で指定する。
【0057】
図7に示されるように、処理回路220Rは、判定部230、補正部225およびD/A変換部227を含み、判定部230は、記憶部232、第1判定部234、第2判定部236および第3判定部238を含む。
記憶部232は、表示制御回路210から供給される映像データVa_Rを蓄積した後、読み出して映像データVb_Rとして出力する。なお、映像データVb_Rで階調レベルが指定される画素を着目画素とする。
【0058】
第1判定部234は、映像データVb_Rで階調レベルが指定される着目画素が暗画素から明画素に変化したか否かを判定する。具体的には、第1判定部234は、映像データVb_Rで指定される(着目画素の)階調レベルが明画素に相当する階調レベルを上回り、かつ、記憶部232に記憶された1フィールド前の映像データVb_Rで指定される階調レベルが暗画素に相当する階調レベルを下回っているか否かを判定する。なお、第1判定部234は、着目画素が暗画素から明画素に変化したと判定した場合、フラグFlg0を出力する。
【0059】
第2判定部236は、第1判定部234からフラグFlg0が出力された場合に、次のような判定をする。すなわち、第2判定部236は、映像データVb_Rで階調レベルが指定される着目画素に隣り合う画素が、暗画素であるか否かを判定する。具体的には、第2判定部236は、当該着目画素に横または縦で隣り合う画素の階調レベルについて、例えば記憶部232に記憶された映像データVb_Rを読み出して取得し、取得した映像データVb_Rで指定される階調データが、暗画素に相当する階調レベルを下回っているか否かを判定する。
第2判定部236は、着目画素に隣り合う画素が暗画素であると判定した場合、フラグFlg1を出力する。なお、第2判定部236による判定は、第1判定部234からフラグFlg0が出力された場合に行われる。このため、フラグFlg1が出力される場合とは、第1判定部234によって、着目画素が暗画素から明画素に変化したと判定された場合であって、かつ、第2判定部236によって、着目画素に隣り合う画素が暗画素であると判定された場合である。すなわち、フラグFlg1が出力される場合が、ドメイン補正が必要であると仮決定される場合である。
【0060】
第3判定部238は、第2判定部236からフラグFlg1が出力された場合に、次のような判定をする。すなわち、第3判定部238は、着目画素について、映像データVb_Rで指定される(現フィールドの)階調レベルと、当該着目画素に隣り合って暗画素であると判定された画素の階調レベルとが、それぞれ4フィールド前の階調レベルと同じであるか否かを判定する。
具体的には、第1に、第3判定部238は、記憶部232から、着目画素について4フィールド前に指定された階調データ、および、当該着目画素に隣り合って暗画素であると判定された画素について4フィールド前に指定された階調データを読み出して取得する。第2に、第3判定部238は、着目画素について、映像データVb_Rで指定される階調レベルと、取得した4フィールド前の階調レベルとが同じであるか否かを判定し、さらに、当該着目画素に隣り合って暗画素であると判定された画素の階調レベルと、着目画素について取得した4フィールド前の階調レベルとが同じであるか否かを判定する。
第3判定部238は、着目画素について現フィールドの階調レベルと、当該着目画素に隣り合って暗画素であると判定された画素の階調レベルとが、それぞれ4フィールド前の階調レベルと同じであれば、フラグFlg2を出力する。すなわち、フラグFlg2が出力される場合が、ドメイン補正の仮決定を取り消す場合である。
【0061】
補正部225は、フラグFlg1が出力された場合であって、フラグFlg2が出力されない場合、すなわち、ドメイン補正が必要であるとの仮決定が取り消されない場合、ドメイン補正を実行する。詳細には、この場合に、補正部225は、映像データVb_Rで指定される階調レベルを、透過率Tchに相当する階調レベルに置き換えて、映像データVc_Rとして出力する。
【0062】
一方、補正部225は、フラグFlg1が出力されない場合、または、フラグFlg1およびFlg2がともに出力された場合、ドメイン補正をしない。なお、フラグFlg1が出力されない場合とは、ドメイン補正が必要であるとの仮決定されない場合であり、また、フラグFlg1およびFlg2がともに出力された場合とは、ドメイン補正が必要であるとの仮決定が取り消される場合である。
この場合に、補正部225は、映像データVb_Rで指定される階調レベルを、そのまま変更することなく、映像データVc_Rとして出力する。
【0063】
D/A変換部227は、デジタルの映像データVc_Rを、表示制御回路210によって指定された極性のアナログ電圧のデータ信号Vid_Rに変換して、液晶パネル100Rに供給する。
【0064】
なお、ここでは処理回路220Rを例にとって説明したが、処理回路220G、200Bについても、処理回路220Rと同様な構成である。
すなわち、処理回路220Gは、Gに対応する映像データVa_Gを処理してデータ信号Vid_Gに変換し、液晶パネル100Gに供給し、処理回路220Bは、Bに対応する映像データVa_Bを処理してデータ信号Vid_Bに変換し、液晶パネル100Bに供給する。
【0065】
比較例では、着目画素が暗画素から明画素に変化した場合であって、着目画素に隣り合う画素が暗画素である場合であれば、ドメイン補正が実行される。これに対して、本実施形態では、上記場合のうち、当該着目画素および隣り合う暗画素の階調レベルが4フィールド前と同じであれば、ドメイン補正が実行されない。
したがって、本実施形態では、ドメイン補正が実行される回数が比較例と比べると減少するので、表示の背反が抑えられる。
【0066】
映像データVdaで示される画像が静止画であっても、液晶パネル100では、4つのフィールドにおいて階調レベルが変化する画素が存在し得る。ただし、映像データVdaで示される画像が静止画である場合、本実施形態において、液晶パネル100において、階調レベルの変化するのは、1画素分に留まるので、仮にドメインが発生したとしても、表示品位の低下として視認されにくい。
また、比較例では、映像データVdaで示される画像が静止画である場合、特に明画素と暗画素との境界において、ドメイン補正が実行されるので、表示の背反が視認されやすくなる。これに対して、本実施形態では、映像データVdaで示される画像が静止画である場合、明画素と暗画素との境界であっても、ドメイン補正が実行されないので、表示の背反が発生しない。
したがって、本実施形態によれば、比較例と比べて、視認されやすい部分でのドメイン補正が実行されず、表示の背反が発生しないので、画質の向上が期待できる。
【0067】
なお、上述した実施形態では、着目画素および隣り合う暗画素の階調レベルが4フィールド前の階調レベルとそれぞれ同じであれば、ドメイン補正を実行するとの仮決定を取り消す構成としたが、例えばシフトデバイスによって液晶パネル100の画素の位置が3箇所にわたってシフトされるので、あれば3フィールド前の階調レベルとそれぞれ同じである場合に、仮決定を取り消す構成とすればよい。
【0068】
また、上述した実施形態では、着目画素および隣り合う暗画素の階調レベルが4フィールド前の階調レベルとそれぞれ同じであれば、ドメイン補正を実行するとの仮決定を取り消す構成としたが、映像データVdaで示される画像の画素のうち、液晶パネル100についての着目画素および隣り合う暗画素に相当する画素の階調レベルが、前フレームと比較して同一であれば(階調レベルの差がしきい値以内であって同一とみなせる場合を含む)、ドメイン補正を実行するとの仮決定を取り消す構成としてもよい。
上位装置から供給された映像データVdaは、表示制御回路210において一旦蓄積されるので、特に図示しないが、第3判定部238を表示制御回路210に移設し、フラグFlg1が出力された場合に、当該第3判定部238が、表示制御回路210に蓄積された映像データVdaを解析して、フラグFlg2を出力してもよい。すなわち、当該第3判定部238が、表示制御回路210に蓄積された映像データVdaで示される画像の画素のうち、液晶パネル100における着目画素および隣り合う暗画素に相当する画素の階調レベルが、前フレームと比較して同一であるか否かを判定し、同一であると判定した場合に、フラグFlg2を出力する構成としてもよい。
あるいは、表示制御回路210と処理回路220R等を区別することなく、1つの要素としてまとめてもよい。
【0069】
また、映像データVdaを解析して、全画面の一部または全部が静止画であると判定された場合に、静止画であると判定された領域を液晶パネル100で表現する際には、ドメイン補正を実行すると仮決定されたとしても、強制的に当該仮決定を取り消して、ドメイン補正が実行されない構成としてもよい。
【0070】
また、いわゆる倍速駆動の場合、具体的には、映像データVdaで示される画像を第1フィールドから第Nフィールドまで繰り返して、液晶パネル100で表示する場合、最初の第1フィールドでは、ドメイン補正を実行するか否かを仮判定し、および、仮決定を取り消すか否かを判定する構成としてもよい。
倍速駆動では、第2フィールドから第Nフィールドまでは、液晶パネル100において同じ画像となり、実質的に静止画の表示となるので、ドメイン補正を実行すると仮決定されたとしても、強制的に当該仮決定を取り消して、ドメイン補正が実行されない構成としてもよい。
【0071】
なお、第2判定部236は仮決定部の一例であり、第3判定部238は取消部の一例である。R(赤)は第1色の一例であり、液晶パネル100Rは第1液晶パネルの一例である。G(緑)は第2色の一例であり、液晶パネル100Gは第2液晶パネルの一例である。B(青)は第3色の一例であり、液晶パネル100Bは第3液晶パネルの一例である。
【0072】
また、実施形態では、ノーマリーブラックモードで説明したが、ノーマリーホワイトモードとしてもよい。また、液晶パネル100R、100G、100Bを透過型としたが、反射型としてもよい。
【符号の説明】
【0073】
1…液晶プロジェクター、100R、100G、100B…液晶パネル、110…画素回路、118…画素電極、120…液晶素子、200…映像処理装置、220R、220R、220G…処理回路、234…第1判定部、236…第2判定部、238…第3判定部。