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特許7392307静電荷像現像用トナー、静電荷像現像剤、トナーカートリッジ、プロセスカートリッジ、印刷物の製造装置及び印刷物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】静電荷像現像用トナー、静電荷像現像剤、トナーカートリッジ、プロセスカートリッジ、印刷物の製造装置及び印刷物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/09 20060101AFI20231129BHJP
   G03G 9/087 20060101ALI20231129BHJP
   G03G 15/20 20060101ALI20231129BHJP
   G03G 21/18 20060101ALI20231129BHJP
   G03G 9/093 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
G03G9/09
G03G9/087 325
G03G15/20 565
G03G21/18
G03G9/093
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2019132142
(22)【出願日】2019-07-17
(65)【公開番号】P2021018270
(43)【公開日】2021-02-15
【審査請求日】2022-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上脇 聡
(72)【発明者】
【氏名】清徳 滋
(72)【発明者】
【氏名】山中 清弘
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 嵩
(72)【発明者】
【氏名】吉野 進
【審査官】中山 千尋
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-102058(JP,A)
【文献】特開2018-163198(JP,A)
【文献】特開2018-163256(JP,A)
【文献】国際公開第2014/119482(WO,A1)
【文献】特開2019-053182(JP,A)
【文献】特開2011-232713(JP,A)
【文献】特開2010-211016(JP,A)
【文献】特開2018-004966(JP,A)
【文献】特開2018-016714(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0011171(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/00-9/16
G03G 15/20
G03G 21/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン系樹脂及び(メタ)アクリル酸エステル系樹脂を含む2種以上の結着樹脂と、黄色顔料と、を含み、
前記黄色顔料の含有量が5ppm以上100ppm以下であり、且つ、
少なくとも2つのガラス転移点を有し、最も低いガラス転移温度と最も高いガラス転移温度との差が30℃以上である、圧着印刷物作製用の静電荷像現像用トナー。
【請求項2】
前記黄色顔料が、モノアゾ顔料、ジスアゾ顔料、及びベンズイミダゾロン系ジスアゾ顔料からなる群より選択される顔料である、請求項1に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項3】
前記黄色顔料が、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー93、及び、C.I.ピグメントイエロー180よりなる群から選択される顔料である、請求項1又は請求項2に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項4】
前記スチレン系樹脂が、スチレン及びその他のビニルモノマーを重合成分に含むスチレン系樹脂であり前記(メタ)アクリル酸エステル系樹脂が、少なくとも2種の(メタ)アクリル酸エステルを重合成分に含み、重合成分全体に占める(メタ)アクリル酸エステルの質量割合が90質量%以上である(メタ)アクリル酸エステル系樹脂である、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項5】
前記スチレン系樹脂の重合成分全体に占めるスチレンの質量割合が60質量%以上95質量%以下である、請求項4に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項6】
前記(メタ)アクリル酸エステル系樹脂に重合成分として含まれる前記少なくとも2種の(メタ)アクリル酸エステルのうち、最も質量割合の多い2種の質量比が80:20~20:80である、請求項4又は請求項5に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項7】
前記(メタ)アクリル酸エステル系樹脂に重合成分として含まれる前記少なくとも2種の(メタ)アクリル酸エステルのうち最も質量割合の多い2種が(メタ)アクリル酸アルキルエステルであり、当該2種の(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキル基の炭素数の差が1個以上4個以下である、請求項4~請求項6のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項8】
前記スチレン系樹脂に重合成分として含まれる前記その他のビニルモノマーが(メタ)アクリル酸エステルを含む、請求項4~請求項7のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項9】
前記スチレン系樹脂に重合成分として含まれる前記その他のビニルモノマーがアクリル酸n-ブチル及びアクリル酸2-エチルヘキシルの少なくとも一方を含む、請求項4~請求項8のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項10】
前記スチレン系樹脂と前記(メタ)アクリル酸エステル系樹脂とが同種の(メタ)アクリル酸エステルを重合成分として含む、請求項4~請求項9のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項11】
前記(メタ)アクリル酸エステル系樹脂が重合成分としてアクリル酸2-エチルヘキシル及びアクリル酸n-ブチルを含む、請求項4~請求項10のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項12】
前記スチレン系樹脂の含有量が前記(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の含有量よりも多い、請求項~請求項11のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項13】
前記スチレン系樹脂を含む海相と、前記海相に分散した前記(メタ)アクリル酸エステル系樹脂を含む島相と、を有する、請求項~請求項12のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項14】
前記島相の平均径が200nm以上500nm以下である、請求項13に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項15】
前記スチレン系樹脂及び前記(メタ)アクリル酸エステル系樹脂を含有するコア部と、前記コア部を被覆するシェル層と、を有する、請求項~請求項14のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項16】
前記シェル層が前記スチレン系樹脂を含有する、請求項15に記載の印刷物の静電荷像現像用トナー。
【請求項17】
圧力4MPa下にて粘度10000Pa・sを示す温度が90℃以下である、請求項1~請求項16のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項18】
請求項1~請求項17のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナーを含む静電荷像現像剤。
【請求項19】
請求項1~請求項17のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナーを収容し、印刷物の製造装置に着脱されるトナーカートリッジ。
【請求項20】
請求項18に記載の静電荷像現像剤を収容し、前記静電荷像現像剤により、感光体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段を備え、
印刷物の製造装置に着脱されるプロセスカートリッジ。
【請求項21】
請求項1~請求項17のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナーを含む静電荷像現像剤を収容し、前記静電荷像現像用トナーを電子写真方式により記録媒体上に配置する配置手段と、
前記記録媒体を折り重ねて圧着する、又は、前記記録媒体と別の記録媒体とを重ねて圧着する圧着手段と、
を含む印刷物の製造装置。
【請求項22】
有色の静電荷像現像剤を用いて電子写真方式により記録媒体上に有色画像を形成する有色画像形成手段を更に含む、請求項21に記載の印刷物の製造装置。
【請求項23】
請求項1~請求項17のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナーを含む静電荷像現像剤を用いて、前記静電荷像現像用トナーを電子写真方式により記録媒体上に配置する配置工程と、
前記記録媒体を折り重ねて圧着する、又は、前記記録媒体と別の記録媒体とを重ねて圧着する圧着工程と、
を含む印刷物の製造方法。
【請求項24】
有色の静電荷像現像剤を用いて電子写真方式により記録媒体上に有色画像を形成する有色画像形成工程を更に含む、請求項23に記載の印刷物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、静電荷像現像用トナー、静電荷像現像剤、トナーカートリッジ、プロセスカートリッジ、印刷物の製造装置及び印刷物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、式1「20℃≦T(1MPa)-T(10MPa)(T(1MPa)は印加圧力1MPaにおいて粘度が10Pa・sになるときの温度を表し、T(10MPa)は印加圧力10MPaにおいて粘度が10Pa・sになるときの温度を表す。)」を満たす接着材料が記載されている。
【0003】
特許文献2には、被接着面に、圧力が付与されると粘着性を発現する粉体を付着させる付着部と、粉体が付着した記録媒体に圧力を付与して、粘着層として前記記録媒体に定着する定着部と、粘着層が、被接着面に形成されている記録媒体を、被接着面が対向するように、折る折り部と、被接着面が対向した前記記録媒体に圧力を付与し、粘着層同士を接着する付与部と、を備える圧着印刷物作成装置が記載されている。
【0004】
特許文献3には、スチレン樹脂及び当該スチレン樹脂よりもガラス転移温度が30℃以上低い(メタ)アクリル酸エステル樹脂を含み、スチレン樹脂を含む海部及び(メタ)アクリル酸エステル樹脂を含む島部で構成された海島構造を有し、島部の長径が200nm以上500nm以下であるコア部と、コア部を被覆しガラス転移温度が50℃以上の樹脂を含むシェル層と、を有する圧力定着トナーが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-002889号公報
【文献】特開2018-004966号公報
【文献】特開2018-163198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、2種以上の結着樹脂を含み、且つ、少なくとも2つのガラス転移点を有し、最も低いガラス転移温度と最も高いガラス転移温度との差が30℃以上である静電荷像現像用トナーであって、黄色顔料を含み、黄色顔料の含有量が5ppm未満又は100ppm超である静電荷像現像用トナーに比べて、機内汚れを抑制しうる静電荷像現像用トナーを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための具体的手段には、下記の態様が含まれる
<1> 2種以上の結着樹脂と、黄色顔料と、を含み、
前記黄色顔料の含有量が5ppm以上100ppm以下であり、且つ、
少なくとも2つのガラス転移点を有し、最も低いガラス転移温度と最も高いガラス転移温度との差が30℃以上である、静電荷像現像用トナー。
<2> 前記黄色顔料が、モノアゾ顔料、ジスアゾ顔料、及びベンズイミダゾロン系ジスアゾ顔料からなる群より選択される顔料である、<1>に記載の静電荷像現像用トナー。
<3> 前記黄色顔料が、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー93、及び、C.I.ピグメントイエロー180よりなる群から選択される顔料である、<1>又は<2>に記載の静電荷像現像用トナー。
<4> 前記結着樹脂が、スチレン及びその他のビニルモノマーを重合成分に含むスチレン系樹脂と、少なくとも2種の(メタ)アクリル酸エステルを重合成分に含み、重合成分全体に占める(メタ)アクリル酸エステルの質量割合が90質量%以上である(メタ)アクリル酸エステル系樹脂と、を含む、<1>~<3>のいずれか1に記載の静電荷像現像用トナー。
<5> 前記スチレン系樹脂の重合成分全体に占めるスチレンの質量割合が60質量%以上95質量%以下である、<4>に記載の静電荷像現像用トナー。
<6> 前記(メタ)アクリル酸エステル系樹脂に重合成分として含まれる前記少なくとも2種の(メタ)アクリル酸エステルのうち、最も質量割合の多い2種の質量比が80:20~20:80である、<4>又は<5>に記載の静電荷像現像用トナー。
<7> 前記(メタ)アクリル酸エステル系樹脂に重合成分として含まれる前記少なくとも2種の(メタ)アクリル酸エステルのうち最も質量割合の多い2種が(メタ)アクリル酸アルキルエステルであり、当該2種の(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキル基の炭素数の差が1個以上4個以下である、<4>~<6>のいずれか1に記載の静電荷像現像用トナー。
<8> 前記スチレン系樹脂に重合成分として含まれる前記その他のビニルモノマーが(メタ)アクリル酸エステルを含む、<4>~<7>のいずれか1に記載の静電荷像現像用トナー。
<9> 前記スチレン系樹脂に重合成分として含まれる前記その他のビニルモノマーがアクリル酸n-ブチル及びアクリル酸2-エチルヘキシルの少なくとも一方を含む、<4>~<8>のいずれか1に記載の静電荷像現像用トナー。
<10> 前記スチレン系樹脂と前記(メタ)アクリル酸エステル系樹脂とが同種の(メタ)アクリル酸エステルを重合成分として含む、<4>~<9>のいずれか1に記載の静電荷像現像用トナー。
<11> 前記(メタ)アクリル酸エステル系樹脂が重合成分としてアクリル酸2-エチルヘキシル及びアクリル酸n-ブチルを含む、<4>~<10>のいずれか1に記載の静電荷像現像用トナー。
<12> 前記スチレン系樹脂の含有量が前記(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の含有量よりも多い、<4>~<11>のいずれか1に記載の静電荷像現像用トナー。
<13> 前記スチレン系樹脂を含む海相と、前記海相に分散した前記(メタ)アクリル酸エステル系樹脂を含む島相と、を有する、<4>~<12>のいずれか1に記載の静電荷像現像用トナー。
<14> 前記島相の平均径が200nm以上500nm以下である、<13>に記載の静電荷像現像用トナー。
<15> 前記スチレン系樹脂及び前記(メタ)アクリル酸エステル系樹脂を含有するコア部と、前記コア部を被覆するシェル層と、を有する、<4>~<14>のいずれか1に記載の静電荷像現像用トナー。
<16> 前記シェル層が前記スチレン系樹脂を含有する、<15>に記載の印刷物の静電荷像現像用トナー。
<17> 圧力4MPa下にて粘度10000Pa・sを示す温度が90℃以下である、<1>~<16>のいずれか1に記載の静電荷像現像用トナー。
<18> <1>~<17>のいずれか1に記載の静電荷像現像用トナーを含む静電荷像現像剤。
<19> <1>~<17>のいずれか1に記載の静電荷像現像用トナーを収容し、印刷物の製造装置に着脱されるトナーカートリッジ。
<20> <18>に記載の静電荷像現像剤を収容し、前記静電荷像現像剤により、感光体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段を備え、
印刷物の製造装置に着脱されるプロセスカートリッジ。
<21>
<1>~<17>のいずれか1に記載の静電荷像現像用トナーを含む静電荷像現像剤を収容し、前記静電荷像現像用トナーを電子写真方式により記録媒体上に配置する配置手段と、
前記記録媒体を折り重ねて圧着する、又は、前記記録媒体と別の記録媒体とを重ねて圧着する圧着手段と、
を含む印刷物の製造装置。
<22> 有色の静電荷像現像剤を用いて電子写真方式により記録媒体上に有色画像を形成する有色画像形成手段を更に含む、<21>に記載の印刷物の製造装置。
<23> <1>~<17>のいずれか1に記載の静電荷像現像用トナーを含む静電荷像現像剤を用いて、前記静電荷像現像用トナーを電子写真方式により記録媒体上に配置する配置工程と、
前記記録媒体を折り重ねて圧着する、又は、前記記録媒体と別の記録媒体とを重ねて圧着する圧着工程と、
を含む印刷物の製造方法。
<24> 有色の静電荷像現像剤を用いて電子写真方式により記録媒体上に有色画像を形成する有色画像形成工程を更に含む、<23>に記載の印刷物の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
<1>に係る発明によれば、黄色顔料を含み、黄色顔料の含有量が5ppm未満又は100ppm超である場合に比べて、機内汚れを抑制しうる静電荷像現像用トナーを提供することができる。
<2>に係る発明によれば、モノアゾ顔料、ジスアゾ顔料、及びベンズイミダゾロン系ジスアゾ顔料からなる群以外の黄色顔料を含む場合に比べて、機内汚れを抑制しうる静電荷像現像用トナーを提供することができる。
<3>に係る発明によれば、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー93、及び、C.I.ピグメントイエロー180よりなる群以外の黄色顔料を含む場合に比べて、機内汚れを抑制しうる静電荷像現像用トナーを提供することができる。
<4>に係る発明によれば、結着樹脂が、スチレン系樹脂及び(メタ)アクリル酸エステル系樹脂を含み、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂が(メタ)アクリル酸エステルのホモポリマーである場合に比べて、圧力によって相転移しやすく且つ接着性に優れる静電荷像現像用トナーを提供することができる。
<5>に係る発明によれば、スチレン系樹脂の重合成分全体に占めるスチレンの質量割合が95質量%超である場合に比べて、圧力によって相転移しやすい静電荷像現像用トナーを提供することができる。
<6>に係る発明によれば、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂に重合成分として含まれる少なくとも2種の(メタ)アクリル酸エステルのうち最も質量割合の多い2種の質量比が80:20~20:80の範囲を外れる場合に比べて、圧力によって相転移しやすく且つ接着性に優れる静電荷像現像用トナーを提供することができる。
<7>に係る発明によれば、前記2種の(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキル基の炭素数の差が5個以上である場合に比べて、圧力によって相転移しやすく且つ接着性に優れる静電荷像現像用トナーを提供することができる。
<8>、<9>、又は<10>に係る発明によれば、スチレン系樹脂の代わりにポリスチレンを含む場合に比べて、圧力によって相転移しやすい静電荷像現像用トナーを提供することができる。
<11>に係る発明によれば、スチレン系樹脂及び(メタ)アクリル酸エステル系樹脂を含む静電荷像現像用トナーであって、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂がアクリル酸2-エチルヘキシルのホモポリマーである場合に比べて、接着性に優れる静電荷像現像用トナーを提供することができる。
<12>に係る発明によれば、スチレン系樹脂の含有量が(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の含有量よりも少ない場合に比べて、接着性が維持される静電荷像現像用トナーを提供することができる。
<13>に係る発明によれば、前記海島構造を有しない場合に比べて、圧力によって相転移しやすく且つ接着性に優れる静電荷像現像用トナーを提供することができる。
<14>に係る発明によれば、島相の平均径が500nm超である場合に比べて、圧力によって相転移しやすい静電荷像現像用トナーを提供することができる。
<15>に係る発明によれば、コア部にスチレン系樹脂のみ又は(メタ)アクリル酸エステル系樹脂のみを含有するコア・シェル構造である場合に比べて、圧力によって相転移しやすい静電荷像現像用トナーを提供することができる。
<16>に係る発明によれば、シェル層がスチレン系樹脂を含有せずそれ以外の樹脂を含有する場合に比べて、圧力によって相転移しやすい静電荷像現像用トナーを提供することができる。
<17>に係る発明によれば、圧力4MPa下にて粘度10000Pa・sを示す温度が90℃超である場合に比べて、圧力によって相転移しやすい静電荷像現像用トナーを提供することができる。
【0009】
<18>に係る発明によれば、黄色顔料を含み、黄色顔料の含有量が5ppm未満又は100ppm超である静電荷像現像用トナーを含む静電荷像現像剤に比べて、機内汚れを抑制しうる静電荷像現像剤を提供することができる。
【0010】
<19>に係る発明によれば、黄色顔料を含み、黄色顔料の含有量が5ppm未満又は100ppm超である静電荷像現像用トナーに比べて、機内汚れを抑制しうる静電荷像現像用トナーを収容したトナーカートリッジを提供することができる。
【0011】
<20>に係る発明によれば、黄色顔料を含み、黄色顔料の含有量が5ppm未満又は100ppm超である静電荷像現像用トナーを含む静電荷像現像剤に比べて、機内汚れを抑制しうる静電荷像現像剤を収容したプロセスカートリッジを提供することができる。
【0012】
<21>又は<22>に係る発明によれば、黄色顔料を含み、黄色顔料の含有量が5ppm未満又は100ppm超である静電荷像現像用トナーに比べて、機内汚れを抑制しうる静電荷像現像用トナーを適用した印刷物の製造装置を提供することができる。
【0013】
<23>又は<24>に係る発明によれば、黄色顔料を含み、黄色顔料の含有量が5ppm未満又は100ppm超である静電荷像現像用トナーに比べて、機内汚れを抑制しうる静電荷像現像用トナーを適用した印刷物の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態に係る印刷物の製造装置の一例を示す概略図である。
図2】本実施形態に係る印刷物の製造装置の別の一例を示す概略図である。
図3】本実施形態に係るプロセスカートリッジの一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の実施形態について説明する。これらの説明及び実施例は実施形態を例示するものであり、実施形態の範囲を制限するものではない。
【0016】
本開示において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
【0017】
本開示中、に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0018】
本開示において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
【0019】
本開示において、実施形態を、図面を参照して説明する場合、当該実施形態の構成は図面に示された構成に限定されない。また、各図における部材の大きさは概念的なものであり、部材間の大きさの相対的な関係はこれに限定されない。
【0020】
本開示において、各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。本開示において組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
【0021】
本開示において、各成分に該当する粒子は複数種含んでいてもよい。組成物中に各成分に該当する粒子が複数種存在する場合、各成分の粒子径は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の粒子の混合物についての値を意味する。
【0022】
本開示において「(メタ)アクリル」との表記は「アクリル」及び「メタクリル」のいずれでもよいことを意味する。
【0023】
本開示において、「静電荷像現像用トナー」を単に「トナー」ともいい、「静電荷像現像剤」を単に「現像剤」ともいう。
【0024】
本開示において、記録媒体を折り重ね対向する面同士を接着して形成した印刷物、又は、2以上の記録媒体を重ね対向する面同士を接着して形成した印刷物を、「圧着印刷物」という。
本開示において、「接着性」とは、上記の記録媒体の対向する面同士の接着性を指す。
【0025】
<静電荷像現像用トナー>
本実施形態に係るトナーは、2種以上の結着樹脂と、黄色顔料と、を含み、黄色顔料の含有量が5ppm以上100ppm以下であり、且つ、少なくとも2つのガラス転移点を有し、最も低いガラス転移温度と最も高いガラス転移温度との差が30℃以上である。
【0026】
本実施形態に係るトナーは、「2種以上の結着樹脂を含み」且つ「少なくとも2つのガラス転移温度を有し、最も低いガラス転移温度と最も高いガラス転移温度との差が30℃以上である」との熱的特性を示すことにより、圧力によって相転移する。
本開示において、圧力によって相転移するトナーとは、下記の式1を満たすトナーを意味する。
【0027】
式1・・・10℃≦T1-T2
式1において、T1は、圧力1MPa下にて粘度10000Pa・sを示す温度であり、T2は、圧力10MPa下にて粘度10000Pa・sを示す温度である。温度T1及び温度T2の求め方は後述する。
【0028】
本実施形態に係るトナーが上記のように圧力によって相転移することで、既述の圧着印刷物の作製において、記録媒体の対向する面同士を接着しうる機能が発現する。
【0029】
圧力によって相転移するトナーは従来知られているが、結着樹脂の選択肢が特異的であることなどから、帯電分布が広い傾向にある。帯電分布が広いトナーを用いる場合、帯電量が小さい側のトナーは、転写及び現像ができずに浮遊し、画像形成装置内を汚すこと(所謂、機内汚れ)があった。
【0030】
本実施形態に係るトナーは、「2種以上の結着樹脂を含み」且つ「少なくとも2つのガラス転移温度を有し、最も低いガラス転移温度と最も高いガラス転移温度との差が30℃以上である」ことに加え、黄色顔料を含み、黄色顔料の含有量を5ppm以上100ppm以下としている。
このように、本発明者らは、微量の黄色顔料を添加することにより、圧力によって相転移するトナーによる上記の機内汚れを抑制しうることを見出した。機内汚れを抑制しうる理由は明らかではないか、以下のように推測している。
【0031】
微量で添加される黄色顔料は、トナー中にて電荷制御剤として機能しているものと考えられる。特に、黄色顔料は窒素原子を含むことで、トナーの過剰なマイナス帯電を抑制すること、局所的に低電気抵抗領域が形成されることなどが生じ、結果的に、帯電分布を狭くすることができると推測される。
従って、上記のような帯電分布が広いトナーに起因する機内汚れが抑制されるものと考えられる。
【0032】
本実施形態に係るトナーは、少なくともトナー粒子を含み、必要に応じて外添剤を含む。
即ち、本実施形態に係るトナーに含まれるトナー粒子は、2種以上の結着樹脂と、黄色顔料と、を含み、黄色顔料の含有量が5ppm以上100ppm以下であり、且つ、少なくとも2つのガラス転移点を有し、最も低いガラス転移温度と最も高いガラス転移温度との差が30℃以上である。
【0033】
〔トナー粒子〕
トナー粒子は、2種以上の結着樹脂と、黄色顔料と、を含む。
トナー粒子は、必要に応じて、黄色顔料以外の着色剤、離型剤、その他添加剤を含有していてもよい。
【0034】
[2種以上の結着樹脂]
トナー粒子は、2種以上の結着樹脂を含み、少なくとも2つのガラス転移点を有し、最も低いガラス転移温度と最も高いガラス転移温度との差が30℃以上である、といった熱的特性を有する。
【0035】
トナー粒子に用いられる2種以上の結着樹脂としては、上記の熱的特性が発現する組み合わせであれば特に制限はないが、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂等の付加重合型樹脂が好ましく、圧力によって相転移しやすい観点、既述の圧着印刷物の作製において、記録媒体の対向する面同士の接着性を高める観点からは、スチレン及びその他のビニルモノマーを重合成分に含むスチレン系樹脂と、少なくとも2種の(メタ)アクリル酸エステルを重合成分に含み、重合成分全体に占める(メタ)アクリル酸エステルの質量割合が90質量%以上である(メタ)アクリル酸エステル系樹脂と、を含むことが好ましい。
以下、「スチレン及びその他のビニルモノマーを重合成分に含むスチレン系樹脂」を「特定スチレン系樹脂」ともいい、「少なくとも2種の(メタ)アクリル酸エステルを重合成分に含み、重合成分全体に占める(メタ)アクリル酸エステルの質量割合が90質量%以上である(メタ)アクリル酸エステル系樹脂」を「特定(メタ)アクリル酸エステル系樹脂」ともいう。
【0036】
トナー粒子は、接着性を維持する観点から、特定スチレン系樹脂の含有量が特定(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の含有量よりも多いことが好ましい。特定スチレン系樹脂の含有量は、特定スチレン系樹脂と特定(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の合計含有量に対して、55質量%以上80質量%以下が好ましく、60質量%以上75質量%以下がより好ましく、65質量%以上70質量%以下が更に好ましい。
【0037】
-特定スチレン系樹脂-
本実施形態に係るトナーを構成するトナー粒子は、スチレン及びその他のビニルモノマーを重合成分に含む特定スチレン系樹脂を含有する。
【0038】
特定スチレン系樹脂の重合成分全体に占めるスチレンの質量割合は、加圧されていない状態でトナーが流動化することを抑制する観点から、60質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、75質量%以上が更に好ましい。
特定スチレン系樹脂の重合成分全体に占めるスチレンの質量割合は、圧力によって相転移しやすいトナーを形成する観点から、95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましく、85質量%以下が更に好ましい。
即ち、特定スチレン系樹脂の重合成分全体に占めるスチレンの質量割合は、60質量%以上95質量%以下が好ましい。
【0039】
特定スチレン系樹脂の重合成分に含まれるスチレン以外のその他のビニルモノマー(以下、その他のビニルモノマーともいう)としては、例えば、スチレン系モノマー、アクリル系モノマー等が挙げられる。
【0040】
その他のビニルモノマーにおけるスチレン系モノマーとしては、例えば、ビニルナフタレン;α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-エチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、p-n-ブチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、p-n-ヘキシルスチレン、p-n-オクチルスチレン、p-n-ノニルスチレン、p-n-デシルスチレン、p-n-ドデシルスチレン等のアルキル置換スチレン;p-フェニルスチレン等のアリール置換スチレン;p-メトキシスチレン等のアルコキシ置換スチレン;p-クロロスチレン、3,4-ジクロロスチレン、p-フルオロスチレン、2,5-ジフルオロスチレン等のハロゲン置換スチレン;m-ニトロスチレン、o-ニトロスチレン、p-ニトロスチレン等のニトロ置換スチレン;などが挙げられる。
これらのスチレン系モノマーは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0041】
その他のビニルモノマーにおけるアクリル系モノマーとしては、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種のアクリル系モノマーが好ましい。(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸カルボキシ置換アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシ置換アルキルエステル、(メタ)アクリル酸アルコキシ置換アルキルエステル、ジ(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
これらのアクリル系モノマーは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0042】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)メタクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸カルボキシ置換アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸2-カルボキシエチル等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸ヒドロキシ置換アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸アルコキシ置換アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル等が挙げられる。
ジ(メタ)アクリル酸エステルとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリラート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリラート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリラート、ブタンジオールジ(メタ)アクリラート、ペンタンジオールジ(メタ)アクリラート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリラート、ノナンジオールジ(メタ)アクリラート、デカンジオールジ(メタ)アクリラート等が挙げられる。
【0043】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸2-(ジエチルアミノ)エチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリラート等も挙げられる。
【0044】
特定スチレン系樹脂の重合成分に含まれるその他のビニルモノマーとしては、スチレン系モノマー及びアクリル系モノマーの他に、例えば、(メタ)アクリロニトリル;ビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル;ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン;イソプレン、ブテン、ブタジエンなどのオレフィン;も挙げられる。
【0045】
特定スチレン系樹脂は、圧力によって相転移しやすいトナーを形成する観点から、重合成分として含まれるその他のビニルモノマーが、(メタ)アクリル酸エステルを含むことが好ましく、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含むことがより好ましく、アルキル基の炭素数が2個以上10個以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含むことが更に好ましく、アルキル基の炭素数が4個以上8個以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含むことが更に好ましい。
特定スチレン系樹脂は、圧力によって相転移しやすいトナーを形成する観点から、重合成分として含まれるその他のビニルモノマーが、アクリル酸n-ブチル及びアクリル酸2-エチルヘキシルの少なくとも一方を含むことが特に好ましい。
特定スチレン系樹脂と後述する特定(メタ)アクリル酸エステル系樹脂とは、圧力によって相転移しやすいトナーを形成する観点から、同種の(メタ)アクリル酸エステルを重合成分として含むことが好ましい。
【0046】
特定スチレン系樹脂の重合成分全体に占める(メタ)アクリル酸エステルの質量割合は、加圧されていない状態でトナーが流動化することを抑制する観点から、40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、25質量%以下が更に好ましく、圧力によって相転移しやすいトナーを形成する観点から、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上が更に好ましい。ここでの(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、アルキル基の炭素数が2個以上10個以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルがより好ましく、アルキル基の炭素数が4個以上8個以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルが更に好ましい。
【0047】
特定スチレン系樹脂は重合成分としてアクリル酸n-ブチル及びアクリル酸2-エチルヘキシルの少なくとも一方を含むことが特に好ましく、スチレン系樹脂の重合成分全体に占めるアクリル酸n-ブチル及びアクリル酸2-エチルヘキシルの合計量は、加圧されていない状態でトナーが流動化することを抑制する観点から、40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、25質量%以下が更に好ましく、圧力によって相転移しやすいトナーを形成する観点から、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上が更に好ましい。
【0048】
特定スチレン系樹脂の重量平均分子量は、加圧されていない状態でトナーが流動化することを抑制する観点から、3000以上が好ましく、4000以上がより好ましく、5000以上が更に好ましく、圧力によって相転移しやすいトナーを形成する観点から、60000以下が好ましく、55000以下がより好ましく、50000以下が更に好ましい。
【0049】
本開示において樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定する。GPCによる分子量測定は、GPC装置として東ソー製HLC-8120GPCを用い、カラムとして東ソー製TSKgel SuperHM-M(15cm)を用い、溶媒としてテトラヒドロフランを用いて行う。樹脂の重量平均分子量は、単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用して算出する。
【0050】
特定スチレン系樹脂のガラス転移温度は、加圧されていない状態でトナーが流動化することを抑制する観点から、30℃以上であることが好ましく、40℃以上であることがより好ましく、50℃以上であることが更に好ましく、圧力によって相転移しやすいトナーを形成する観点から、110℃以下であることが好ましく、100℃以下であることがより好ましく、90℃以下であることが更に好ましい。
【0051】
本開示において、樹脂のガラス転移温度は、示差走査熱量測定(Differential Scanning Calorimetry、DSC)を行って得た示差走査熱量曲線(DSC曲線)から求める。より具体的には、JIS K7121:1987「プラスチックの転移温度測定方法」のガラス転移温度の求め方に記載の「補外ガラス転移開始温度」に従って求める。
【0052】
樹脂のガラス転移温度は、重合成分の種類及び重合割合によって制御できる。ガラス転移温度は、主鎖に含まれるメチレン基、エチレン基、オキシエチレン基等の柔軟な単位の密度が高いほど低く、主鎖に含まれる芳香環、シクロヘキサン環等の剛直な単位の密度が高いほど高い傾向がある。また、ガラス転移温度は、側鎖における脂肪族基の密度が高いほど低い傾向がある。
【0053】
本実施形態においてトナー粒子全体に占める特定スチレン系樹脂の質量割合は、加圧されていない状態でトナーが流動化することを抑制する観点から、55質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、65質量%以上が更に好ましく、圧力によって相転移しやすいトナーを形成する観点から、80質量%以下が好ましく、75質量%以下がより好ましく、70質量%以下が更に好ましい。
【0054】
-特定(メタ)アクリル酸エステル系樹脂-
本実施形態に係るトナーを構成するトナー粒子は、少なくとも2種の(メタ)アクリル酸エステルを重合成分に含み、重合成分全体に占める(メタ)アクリル酸エステルの質量割合が90質量%以上である(メタ)アクリル酸エステル系樹脂を含有する。
【0055】
(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の重合成分全体に占める(メタ)アクリル酸エステルの質量割合は、90質量%以上であり、95質量%以上がより好ましく、98質量%以上が更に好ましく、100質量%が更に好ましい。
【0056】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸カルボキシ置換アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシ置換アルキルエステル、(メタ)アクリル酸アルコキシ置換アルキルエステル、ジ(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
【0057】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)メタクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸カルボキシ置換アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸2-カルボキシエチル等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸ヒドロキシ置換アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸アルコキシ置換アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル等が挙げられる。
ジ(メタ)アクリル酸エステルとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリラート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリラート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリラート、ブタンジオールジ(メタ)アクリラート、ペンタンジオールジ(メタ)アクリラート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリラート、ノナンジオールジ(メタ)アクリラート、デカンジオールジ(メタ)アクリラート等が挙げられる。
【0058】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸2-(ジエチルアミノ)エチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリラート等も挙げられる。
【0059】
(メタ)アクリル酸エステルは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0060】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、圧力によって相転移しやすく且つ接着性に優れるトナーを形成する観点から、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、アルキル基の炭素数が2個以上10個以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルがより好ましく、アルキル基の炭素数が4個以上8個以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルが更に好ましく、アクリル酸n-ブチル及びアクリル酸2-エチルヘキシルが特に好ましい。
既述のように、特定(メタ)アクリル酸エステル系樹脂と特定スチレン系樹脂とは、圧力によって相転移しやすいトナーを形成する観点から、同種の(メタ)アクリル酸エステルを重合成分として含むことが好ましい。
【0061】
特定(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の重合成分全体に占める(メタ)アクリル酸アルキルエステルの質量割合は、圧力によって相転移しやすく且つ接着性に優れるトナーを形成する観点から、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、98質量%以上が更に好ましく、100質量%が更に好ましい。ここでの(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アルキル基の炭素数が2個以上10個以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、アルキル基の炭素数が4個以上8個以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルがより好ましい。
【0062】
特定(メタ)アクリル酸エステル系樹脂に重合成分として含まれる少なくとも2種の(メタ)アクリル酸エステルのうち最も質量割合の多い2種の質量比は、圧力によって相転移しやすく且つ接着性に優れるトナーを形成する観点から、80:20~20:80であることが好ましく、70:30~30:70であることがより好ましく、60:40~40:60であることが更に好ましい。
【0063】
特定(メタ)アクリル酸エステル系樹脂に重合成分として含まれる少なくとも2種の(メタ)アクリル酸エステルのうち最も質量割合の多い2種は(メタ)アクリル酸アルキルエステルであることが好ましい。ここでの(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アルキル基の炭素数が2個以上10個以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、アルキル基の炭素数が4個以上8個以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルがより好ましい。
【0064】
特定(メタ)アクリル酸エステル系樹脂に重合成分として含まれる少なくとも2種の(メタ)アクリル酸エステルのうち最も質量割合の多い2種が(メタ)アクリル酸アルキルエステルである場合、当該2種の(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキル基の炭素数の差は、圧力によって転移しやすく且つ接着性に優れるトナーを形成する観点から、1個以上4個以下であることが好ましく、2個以上4個以下であることがより好ましく、3個又は4個であることが更に好ましい。
【0065】
特定(メタ)アクリル酸エステル系樹脂は、圧力によって相転移しやすく且つ接着性に優れるトナーを形成する観点から、重合成分としてアクリル酸n-ブチル及びアクリル酸2-エチルヘキシルを含むことが好ましく、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂に重合成分として含まれる少なくとも2種の(メタ)アクリル酸エステルのうち最も質量割合の多い2種がアクリル酸n-ブチルとアクリル酸2-エチルヘキシルとであることが特に好ましい。(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の重合成分全体に占めるアクリル酸n-ブチル及びアクリル酸2-エチルヘキシルの合計量は、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、98質量%以上が更に好ましく、100質量%が更に好ましい。
【0066】
特定(メタ)アクリル酸エステル系樹脂は、(メタ)アクリル酸エステル以外のビニルモノマーを重合成分に含んでいてもよい。
(メタ)アクリル酸エステル以外のビニルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸;スチレン;スチレン以外のスチレン系モノマー;(メタ)アクリロニトリル;ビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル;ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン;イソプレン、ブテン、ブタジエンなどのオレフィン;が挙げられる。これらビニルモノマーは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0067】
特定(メタ)アクリル酸エステル系樹脂が(メタ)アクリル酸エステル以外のビニルモノマーを重合成分に含む場合、(メタ)アクリル酸エステル以外のビニルモノマーとしては、アクリル酸及びメタクリル酸の少なくとも一方が好ましく、アクリル酸がより好ましい。
【0068】
特定(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の重量平均分子量は、加圧されていない状態でトナーが流動化することを抑制する観点から、10万以上が好ましく、12万以上がより好ましく、15万以上が更に好ましく、圧力によって相転移しやすいトナーを形成する観点から、25万以下が好ましく、22万以下がより好ましく、20万以下が更に好ましい。
【0069】
特定(メタ)アクリル酸エステル系樹脂のガラス転移温度は、圧力によって相転移しやすいトナーを形成する観点から、10℃以下であることが好ましく、0℃以下であることがより好ましく、-10℃以下であることが更に好ましく、加圧されていない状態でトナーが流動化することを抑制する観点から、-90℃以上であることが好ましく、-80℃以上であることがより好ましく、-70℃以上であることが更に好ましい。
【0070】
本実施形態においてトナー粒子全体に占める特定(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の質量割合は、圧力によって相転移しやすいトナーを形成する観点から、20質量%以上が好ましく、25質量%以上がより好ましく、30質量%以上が更に好ましく、加圧されていない状態でトナーが流動化することを抑制する観点から、45質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、35質量%以下が更に好ましい。
【0071】
本実施形態においてトナー粒子に含まれる特定スチレン系樹脂と特定(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の合計量は、トナー粒子全体に対して、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上が更に好ましく、95質量%以上が更に好ましく、100質量%が更に好ましい。
【0072】
トナー粒子は、必要に応じて、例えば、ポリスチレン;エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテル樹脂、変性ロジン等の非ビニル系樹脂;などを含有していてもよい。
これらの樹脂は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0073】
[黄色顔料]
トナー粒子は、黄色顔料を含み、その黄色顔料の含有量が質量基準にて5ppm以上100ppm以下である。
黄色顔料の含有量が5ppm以上であると、黄色顔料による機内汚れの抑制効果が発現する。黄色顔料の含有量が100ppm以下とすると、トナーの平均帯電量を下げすぎないことから、機内汚れが抑制されるものと考えられる。
なお、黄色顔料の含有量が100ppm以下であることで、圧着印刷物における画像の視認性が低下しないという効果も奏する。
【0074】
本実施形態に係るトナー(トナー粒子)中の黄色顔料の含有量の測定方法は、以下の方法が挙げられる。
黄色顔料の含有量は、GC-MS(ガスクロマトグラフ質量分析)、TG-DTA(熱分析-示差熱熱重量同時測定)、IPC-OES(誘導結合プラズマ発光分光分析)、IPC-AES(プラズマ発光分光分析)、IPC-MS(誘導結合プラズマ質量分析)、原子吸光等の分析を組み合わせることにより定量することができる。
キナクリドン系顔料に関しては、例えば、熱分解GC/MSによる構造解析と、IPC-MS、原子吸光等の分析を組み合わせることにより定量できる。
また、モノアゾ顔料であるC.I.ピグメントイエロー74に関しては、例えば、顔料中の塩素原子量など顔料由来の原子をIPC(誘導結合プラズマ分析)、原子吸光等の分析にて定量し、顔料含有量を定量してもよい。これらの分析によると、顔料仕込み量と検出量の関係は以下の表のようになり、この表をもとに、トナー(トナー粒子)中の黄色顔料の含有量を求めてもよい。
【0075】
【表1】
【0076】
黄色顔料の含有量は、機内汚れの抑制の観点から、5ppm以上80ppm以下であることが好ましく、10ppm以上70ppm以下であることがより好ましく、15ppm以上60ppm以下であることが更に好ましい。
一方で、黄色顔料の含有量は、接着性を高める観点からは、10ppm以上80ppm以下であることが好ましく、15ppm以上70ppm以下であることがより好ましく、20ppm以上60ppm以下であることが更に好ましい。
また、黄色顔料は1種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0077】
黄色顔料は、波長530nm以上620nm以下に吸収のピーク波長を有する顔料であれば特に限定されず、公知の黄色顔料から適宜選択することができる。
黄色顔料としては、下記構造式(1)に代表されるC.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、5、6、49、65、73、75、97、98、111、116、130等のモノアゾ系顔料;下記構造式(2)に代表されるC.I.ピグメントイエロー154、C.I.ピグメントイエロー120、151、175、180、181、194等のベンズイミダゾロン系顔料;下記式(3)に代表されるC.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、95、128、166、12、13、14、17、55、63、81、83、87、90、106、113、114、121、124、126、127、136、152、170、171、172、174、176、188等のジスアゾ系顔料;下記式(4)に代表されるC.I.ピグメントイエロー110、C.I.ピグメントイエロー109等のイソインドリノン系顔料;下記式(5)に代表されるC.I.ピグメントイエロー147、C.I.ピグメントイエロー24、108、193、199等のアントラキノン系顔料;C.I.ピグメントイエロー61、62、133、168、169等のアゾレーキ顔料;C.I.ピグメントイエロー139等のイソインドリン系顔料;C.I.ピグメントイエロー138等のキノフタロン系顔料が挙げられる。
【0078】
【化1】
【0079】
これらの中でも、黄色顔料は、機内汚れの抑制の観点から、モノアゾ顔料、ジスアゾ顔料、及びベンズイミダゾロン系顔料よりなる群から選択される顔料ことが好ましく、モノアゾ顔料、ジスアゾ顔料、及びベンズイミダゾロン系ジスアゾ顔料よりなる群から選択される顔料がより好ましい。
より具体的には、モノアゾ顔料としては、機内汚れの抑制の観点から、C.I.ピグメントイエロー74が好ましく、ジスアゾ顔料としては、C.I.ピグメントイエロー93が好ましく、ベンズイミダゾロン系ジスアゾ顔料としては、C.I.ピグメントイエロー180が好ましい。
黄色顔料としては、機内汚れの抑制の観点から、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー93、及びC.I.ピグメントイエロー180から選択される顔料であることが特に好ましい。
【0080】
-黄色顔料の分散-
トナー粒子において、黄色顔料は結着樹脂中に分散していることが好ましい。特に、後述するコア・シェル構造粒子におけるシェル層にて、結着樹脂中に分散していることが好ましい。
トナー粒子が混練粉砕法により製造される場合は、黄色顔料はそのまま用いてもよく、また予め結着樹脂中に高濃度に分散させた後、混練時に結着樹脂と共に混練する、いわゆるマスターバッチを用いてもよく、更には、黄色顔料合成後に乾燥前のウェットケーキの状態で結着樹脂中に分散させるフラッシングを用いてもよい。
トナー粒子が懸濁重合法により製造される場合には、黄色顔料はそのまま用いられてもよい。懸濁重合法においては、結着樹脂中に分散させた黄色顔料を重合性単量体中に溶解、又は分散させることにより、造粒粒子中に黄色顔料が分散される。
トナー製法が凝集合一法の場合は、黄色顔料分散液を作製し、これを結着樹脂粒子等と共に凝集させ、トナー粒子径に造粒することによって、結着樹脂中に黄色顔料が分散したトナー粒子が得られる。
【0081】
[その他の成分]
トナー粒子は、必要に応じて、その他の成分を含んでいてもよい。
その他の成分としては、黄色顔料以外の着色剤(例えば、顔料、染料)、離型剤(例えば、炭化水素系ワックス;カルナバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス等の天然ワックス;モンタンワックス等の合成又は鉱物・石油系ワックス;脂肪酸エステル、モンタン酸エステル等のエステル系ワックス)などが挙げられる。
【0082】
本実施形態に係るトナーは、画像の視認性を損なわない範囲において、黄色顔料以外の着色剤を含んでいてもよい。
トナー粒子中の着色剤の含有量は、トナー粒子全体に対して、1.0質量%以下であることが好ましく、トナーの透明性を高める観点からは少ないほど好ましい。
より具体的には、黄色顔料以外の着色剤の含有量は合計して100ppm以下であることが好ましく、50ppm以下であることがより好ましく、0ppm、即ち含有しないことが更に好ましい
【0083】
-トナー粒子の構造-
トナー粒子の内部構造は海島構造であることが好ましい。
海島構造としては、2以上の結着樹脂のうち、一方を含む海相と、当該海相に分散したもう一方を含む島相と、を有する海島構造が好ましい。圧力によって相転移しやすい観点から、より具体的には、特定スチレン系樹脂を含む海相と、当該海相に分散した特定(メタ)アクリル酸エステル系樹脂を含む島相と、を有する海島構造が好ましい。海相に含まれる特定スチレン系樹脂及び島相に含まれる(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の詳細は既述の通りである。なお、海相に(メタ)アクリル酸エステル系樹脂を含まない島相が分散していてもよい。
【0084】
トナー粒子が海島構造を有する場合、島相の平均径は、200nm以上500nm以下が好ましい。島相の平均径が500nm以下であると、圧力によってトナー粒子が相転移しやすく、島相の平均径が200nm以上であると、トナー粒子に求められる機械的強度(例えば、現像器内で攪拌された際に変形しにくい強度)に優れる。これらの観点から、島相の平均径は、220nm以上450nm以下がより好ましく、250nm以上400nm以下が更に好ましい。
【0085】
海島構造の島相の平均径を上記範囲に制御する方法としては、例えば、後述するトナー粒子の製造方法において、特定スチレン系樹脂の量に対する特定(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の量を増減する、凝集した樹脂粒子を融合・合一する工程において高温に維持する時間を増減する、等が挙げられる。
【0086】
海島構造の確認、及び島相の平均径の測定は、次の方法により行う。
トナーをエポキシ樹脂に包埋し、ダイヤモンドナイフ等で切片を作製し、作製した切片をデシケータ内で四酸化オスミウム又は四酸化ルテニウムを用いて染色する。染色された切片を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察する。海島構造の海相と島相とは、四酸化オスミウム又は四酸化ルテニウムによる樹脂の染色度合いに起因する濃淡で区別され、これを利用して海島構造の有無を確認する。SEM画像から100個の島相を無作為に選択し、各島相の長径を計測し、長径100個の平均値を平均径とする。
【0087】
トナー粒子は、単層構造のトナー粒子であってもよいし、コア部とコア部を被覆するシェル層とを有するコア・シェル構造のトナー粒子であってもよい。加圧されていない状態でトナーが流動化することを抑制する観点から、トナー粒子はコア・シェル構造であることが好ましい。
【0088】
トナー粒子がコア・シェル構造を有する場合、圧力によって相転移しやすい観点から、コア部が特定スチレン系樹脂及び特定(メタ)アクリル酸エステル系樹脂を含有することが好ましい。更に、加圧されていない状態でトナーが流動化することを抑制する観点から、シェル層が特定スチレン系樹脂を含有することが好ましい。
【0089】
トナー粒子がコア・シェル構造を有する場合、コア部が特定スチレン系樹脂を含む海相と、海相に分散した特定(メタ)アクリル酸エステル系樹脂を含む島相と、を有することが好ましい。島相の平均径は、既述の範囲であることが好ましい。更に、コア部が上記構成であることに加えて、シェル層が特定スチレン系樹脂を含有することが好ましい。この場合、コア部の海相とシェル層とが連続した構造となり、圧力によってトナー粒子が相転移しやすい。
【0090】
シェル層に含まれる樹脂としては、ポリスチレン;エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテル樹脂、変性ロジン等の非ビニル系樹脂;なども挙げられる。
これらの樹脂は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0091】
シェル層の平均厚は、トナー粒子の変形抑制の観点から、120nm以上が好ましく、130nm以上がより好ましく、140nm以上が更に好ましく、圧力によってトナー粒子が相転移しやすい観点から、550nm以下が好ましく、500nm以下がより好ましく、400nm以下が更に好ましい。
【0092】
シェル層の平均厚は、次の方法により測定する。
トナーをエポキシ樹脂に包埋し、ダイヤモンドナイフ等で切片を作製し、作製した切片をデシケータ内で四酸化オスミウム又は四酸化ルテニウムを用いて染色する。染色された切片を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察する。SEM画像から10個のトナー粒子断面を無作為に選択し、トナー粒子1個につきシェル層の厚さを20か所計測して平均値を算出し、トナー粒子10個の平均値を平均厚とする。
【0093】
トナー粒子の体積平均粒径(D50v)は、トナー粒子の取り扱いの容易さの観点から、4μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましく、6μm以上が更に好ましく、圧力によってトナー粒子全体が相転移しやすい観点から、12μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、9μm以下が更に好ましい。
【0094】
トナー粒子の体積平均粒径(D50v)は、コールターマルチサイザーII(ベックマン・コールター社製)及びアパーチャー径100μmのアパーチャーを用いて測定する。アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム5質量%水溶液2mLにトナー粒子を0.5mg以上50mg以下加え分散させ、次いで、電解液(ISOTON-II、ベックマン・コールター社製)100mL以上150mL以下と混合し、超音波分散機で1分間分散処理を行い、得られた分散液を試料とする。試料中の粒径2μm以上60μm以下の粒子50000個の粒径を測定する。小径側から起算した体積基準の粒度分布において累積50%となる粒径を体積平均粒径(D50v)とする。
【0095】
[外添剤]
外添剤としては、例えば、無機粒子が挙げられる。無機粒子として、SiO、TiO、Al、CuO、ZnO、SnO、CeO、Fe、MgO、BaO、CaO、KO、NaO、ZrO、CaO・SiO、KO・(TiO)n、Al・2SiO、CaCO、MgCO、BaSO、MgSO等が挙げられる。
【0096】
外添剤としての無機粒子の表面は、疎水化処理が施されていることがよい。疎水化処理は、例えば、疎水化処理剤に無機粒子を浸漬する等して行う。疎水化処理剤は特に制限されないが、例えば、シラン系カップリング剤、シリコーンオイル、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。疎水化処理剤の量は、例えば、無機粒子100質量部に対して、1質量部以上10質量部以下である。
【0097】
外添剤としては、樹脂粒子(ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、メラミン樹脂等の樹脂粒子)、クリーニング活剤(例えば、ステアリン酸亜鉛に代表される高級脂肪酸の金属塩、フッ素系高分子量体の粒子)等も挙げられる。
【0098】
外添剤の外添量は、トナー粒子に対して、0.01質量%以上5質量%以下が好ましく、0.01質量%以上2.0質量%以下がより好ましい。
【0099】
[トナーの特性]
本実施形態に係るトナーは、少なくとも2つのガラス転移温度を有するところ、ガラス転移温度の1つは2種以上の結着樹脂の一方に由来するガラス転移温度と推測され、もう1つは2種以上の結着樹脂のもう一方に由来するガラス転移温度と推測される。既述のように、結着樹脂が特定スチレン系樹脂及び特定(メタ)アクリル酸エステル系樹脂を含む場合には、ガラス転移温度の1つは特定スチレン系樹脂のガラス転移温度と推測され、もう1つは特定(メタ)アクリル酸エステル系樹脂のガラス転移温度と推測される。
【0100】
本実施形態に係るトナーは、3つ以上のガラス転移温度を有していてもよいが、ガラス転移温度の個数は2個であることが好ましい。ガラス転移温度の個数が2個である形態としては、トナーに含まれる樹脂が特定スチレン系樹脂及び特定(メタ)アクリル酸エステル系樹脂のみである形態;特定スチレン系樹脂及び特定(メタ)アクリル酸エステル系樹脂ではないその他の樹脂の含有量が少ない形態(例えば、その他の樹脂の含有量がトナー全体に対して5質量%以下である形態);である。
【0101】
本実施形態に係るトナーは、少なくとも2つのガラス転移温度を有し、最も低いガラス転移温度と最も高いガラス転移温度との差が30℃以上である。最も低いガラス転移温度と最も高いガラス転移温度との差は、圧力によってトナーが相転移しやすい観点から、より好ましくは40℃以上であり、更に好ましくは50℃以上であり、更に好ましくは60℃以上である。最も低いガラス転移温度と最も高いガラス転移温度との差は、その上限が、例えば、140℃以下であり、130℃以下であり、120℃以下である。
【0102】
本実施形態に係るトナーが示す最も低いガラス転移温度は、圧力によってトナーが相転移しやすい観点から、10℃以下であることが好ましく、0℃以下であることがより好ましく、-10℃以下であることが更に好ましく、加圧されていない状態でトナーが流動化することを抑制する観点から、-90℃以上であることが好ましく、-80℃以上であることがより好ましく、-70℃以上であることが更に好ましい。
【0103】
本実施形態に係るトナーが示す最も高いガラス転移温度は、加圧されていない状態でトナーが流動化することを抑制する観点から、30℃以上であることが好ましく、40℃以上であることがより好ましく、50℃以上であることが更に好ましく、圧力によってトナーが相転移しやすい観点から、70℃以下であることが好ましく、65℃以下であることがより好ましく、60℃以下であることが更に好ましい。
【0104】
本開示において、トナーのガラス転移温度は、示差走査熱量測定(Differential Scanning Calorimetry、DSC)を行って得た示差走査熱量曲線(DSC曲線)から求める。より具体的には、JIS K7121:1987「プラスチックの転移温度測定方法」のガラス転移温度の求め方に記載の「補外ガラス転移開始温度」に従って求める。
【0105】
本実施形態に係るトナーは、圧力によって相転移するトナーであり、下記の式1を満たす。
式1・・・10℃≦T1-T2
式1において、T1は、圧力1MPa下にて粘度10000Pa・sを示す温度であり、T2は、圧力10MPa下にて粘度10000Pa・sを示す温度である。
【0106】
温度差(T1-T2)は、圧力によってトナーが相転移しやすい観点から、10℃以上であり、15℃以上が好ましく、20℃以上がより好ましく、加圧されていない状態でトナーが流動化することを抑制する観点から、120℃以下が好ましく、100℃以下がより好ましく、80℃以下が更に好ましい。
【0107】
温度T1の値は、140℃以下が好ましく、130℃以下がより好ましく、120℃以下が更に好ましく、115℃以下が更に好ましい。温度T1の下限は、80℃以上が好ましく、85℃以上がより好ましい。
温度T2の値は、40℃以上が好ましく、50℃以上がより好ましく、60℃以上が更に好ましい。温度T2の上限は、85℃以下が好ましい。
【0108】
トナーが圧力によって相転移しやすいことを示す指標として、圧力1MPa下にて粘度10000Pa・sを示す温度T1と、圧力4MPa下にて粘度10000Pa・sを示す温度T3との温度差(T1-T3)が挙げられ、温度差(T1-T3)は5℃以上であることが好ましい。本実施形態に係るトナーは、圧力によって相転移しやすい観点から、温度差(T1-T3)が5℃以上であることが好ましく、10℃以上であることがより好ましい。
温度差(T1-T3)は、一般的に25℃以下である。
【0109】
本実施形態に係るトナーは、温度差(T1-T3)が5℃以上となる観点から、圧力4MPa下に粘度10000Pa・sを示す温度T3が90℃以下であることが好ましく、85℃以下であることがより好ましく、80℃以下であることが更に好ましい。温度T3の下限は、60℃以上が好ましい。
【0110】
温度T1、温度T2、及び温度T3を求める方法は、次のとおりである。
トナーを圧縮してペレット状の試料を作製する。ペレット状の試料をフローテスター(島津製作所製、CFT-500)にセットして、印加圧力を1MPaに固定して、1MPaにおける温度に対する粘度を測定する。得られた粘度のグラフから、印加圧力1MPaにおいて粘度が10Pa・sになるときの温度T1を決定する。印加圧力1MPaを10MPaとする以外は、温度T1に係る方法と同様にして、温度T2を決定する。印加圧力1MPaを4MPaとする以外は、温度T1に係る方法と同様にして、温度T3を決定する。温度T1と温度T2から温度差(T1-T2)を算出する。温度T1と温度T3から温度差(T1-T3)を算出する。
【0111】
[トナーの製造方法]
本実施形態に係るトナーは、トナー粒子を製造後、トナー粒子に対して、外添剤を外添することで得られる。
【0112】
トナー粒子は、乾式製法(例えば、混練粉砕法等)、湿式製法(例えば、凝集合一法、懸濁重合法、溶解懸濁法等)のいずれにより製造してもよい。これらの製法に特に制限はなく、公知の製法が採用される。これらの中でも、凝集合一法によりトナー粒子を得ることがよい。
【0113】
以下、結着樹脂として、特定スチレン系樹脂と特定(メタ)アクリル酸エステル系樹脂とを含むトナー粒子を、凝集合一法にて製造する方法を一例として示す。
トナー粒子を凝集合一法により製造する場合、例えば、
特定スチレン系樹脂を含むスチレン系樹脂粒子が分散したスチレン系樹脂粒子分散液を準備する工程(スチレン系樹脂粒子分散液準備工程)と、
スチレン系樹脂粒子分散液中で特定(メタ)アクリル酸エステル系樹脂を重合し、特定スチレン系樹脂及び特定(メタ)アクリル酸エステル系樹脂を含有する複合樹脂粒子を形成する工程(複合樹脂粒子形成工程)と、
黄色顔料を分散した黄色顔料分散液を準備する工程(黄色顔料分散液準備工程)と、
複合樹脂粒子が分散した複合樹脂粒子分散液と黄色顔料分散液とを混合し、複合樹脂粒子及び黄色顔料を凝集させ、凝集粒子を形成する工程(凝集粒子形成工程)と、
凝集粒子が分散した凝集粒子分散液を加熱し、凝集粒子を融合・合一して、トナー粒子を形成する工程(融合・合一工程)と、を経て、トナー粒子を製造する。
【0114】
上記のような凝集合一法にてトナー粒子を製造する場合、黄色顔料の存在及び働きにより、接着性に優れるトナー粒子が得られることがある。機序の詳細は不明であるが、黄色顔料の存在が、海島構造の島相の平均径を大きくするように働くためと考えられる。
凝集粒子形成工程にて、黄色顔料は複合樹脂粒子表面に偏在化するが、複合樹脂粒子に、アクリル酸由来のマイナス電荷が存在すると、黄色顔料に含まれる窒素原子によりマイナス電荷を打ち消すように機能する。その結果、複合樹脂粒子を融合・合一する際、マイナス電荷による凝集力への反発が抑えられ、平均径の大きな島相を有するトナー粒子が作製されるものと考えられる。
【0115】
以下、各工程の詳細について説明する。
以下の説明では、離型剤を含まないトナー粒子を得る方法について説明する。離型剤、その他添加剤は、必要に応じて用いてもよい。
トナー粒子に離型剤を含有させる場合は、凝集粒子形成工程にて、複合樹脂粒子分散液と着色剤粒子分散液と離型剤粒子分散液とを混合し、複合樹脂粒子、黄色顔料、及び離型剤を凝集させ、凝集粒子を形成すればよい。
離型剤粒子分散液は、例えば、離型剤と分散媒とを混合した後、公知の分散機を用いて分散処理を行うことで作製できる。
【0116】
-スチレン系樹脂粒子分散液準備工程-
スチレン系樹脂粒子分散液準備工程では、特定スチレン系樹脂を含むスチレン系樹脂粒子が分散したスチレン系樹脂粒子分散液を準備する。
スチレン系樹脂粒子分散液は、例えば、界面活性剤によりスチレン系樹脂粒子を分散媒中に分散させた分散液である。
【0117】
分散媒としては、例えば、水、アルコール類などの水系媒体が挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0118】
界面活性剤としては、例えば、硫酸エステル塩系、スルホン酸塩系、リン酸エステル系、せっけん系等のアニオン界面活性剤;アミン塩型、4級アンモニウム塩型等のカチオン界面活性剤;ポリエチレングリコール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物系、多価アルコール系等の非イオン系界面活性剤等が挙げられる。非イオン系界面活性剤は、アニオン界面活性剤又はカチオン界面活性剤と併用してもよい。これらの中でも、アニオン界面活性剤が好ましい。界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0119】
スチレン系樹脂粒子を分散媒に分散する方法としては、例えば、特定スチレン系樹脂と分散媒とを混合し、回転せん断型ホモジナイザー、メディアを有するボールミル、サンドミル、ダイノミル等を用いて攪拌して分散させる方法が挙げられる。
【0120】
スチレン系樹脂粒子を分散媒に分散する別の方法としては、乳化重合法が挙げられる。具体的には、特定スチレン系樹脂の重合成分と連鎖移動剤又は重合開始剤とを混合した後、界面活性剤を含有する水系媒体を更に混合し、攪拌して乳化液を作製し、乳化液中でスチレン系樹脂を重合する。この際、連鎖移動剤としてドデカンチオールを用いることが好ましい。
【0121】
スチレン系樹脂粒子分散液中に分散するスチレン系樹脂粒子の体積平均粒径は、100nm以上250nm以下が好ましく、120nm以上220nm以下がより好ましく、150nm以上200nm以下が更に好ましい。
樹脂粒子分散液に含まれる樹脂粒子の体積平均粒径は、レーザ回折式粒度分布測定装置(例えば、堀場製作所製LA-700)にて粒径を測定し、小径側から起算した体積基準の粒度分布において累積50%となる粒径を体積平均粒径(D50v)とする。
【0122】
スチレン系樹脂粒子分散液に含まれるスチレン系樹脂粒子の含有量は、スチレン系樹脂粒子分散液の全質量に対して、30質量%以上60質量%以下が好ましく、40質量%以上50質量%以下がより好ましい。
【0123】
-複合樹脂粒子形成工程-
複合樹脂粒子形成工程では、スチレン系樹脂粒子分散液中で特定(メタ)アクリル酸エステル系樹脂を重合し、特定スチレン系樹脂及び特定(メタ)アクリル酸エステル系樹脂を含有する複合樹脂粒子を形成する。
複合樹脂粒子形成工程では、スチレン系樹脂粒子分散液と特定(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の重合成分とを混合し、スチレン系樹脂粒子分散液中で特定(メタ)アクリル酸エステル系樹脂を重合し、特定スチレン系樹脂及び特定(メタ)アクリル酸エステル系樹脂を含有する複合樹脂粒子を形成する。
【0124】
複合樹脂粒子は、特定スチレン系樹脂と特定(メタ)アクリル酸エステル系樹脂とがミクロ相分離の状態で含まれる樹脂粒子であることが好ましい。当該樹脂粒子は、例えば、下記の方法で製造することができる。
【0125】
スチレン系樹脂粒子分散液に、特定(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の重合成分(少なくとも2種の(メタ)アクリル酸エステルを含むモノマー群)を添加し、必要に応じて水系媒体を添加する。次いで、分散液をゆっくりと攪拌しながら、分散液の温度を特定スチレン系樹脂のガラス転移温度以上(例えば、特定スチレン系樹脂のガラス転移温度より10℃から30℃高い温度)に加熱する。次いで、温度を保ちながら、重合開始剤を含有する水系媒体をゆっくりと滴下し、更に1時間以上15時間以下の範囲で長時間攪拌を継続する。この際、重合開始剤として過硫酸アンモニウムを用いることが好ましい。
【0126】
詳細な機序は必ずしも明らかではないが、上記の方法を採用した場合、スチレン系樹脂粒子中にモノマーと重合開始剤とが含浸し、スチレン系樹脂粒子の内部で特定(メタ)アクリル酸エステルが重合すると推測される。これによって、スチレン系樹脂粒子の内部に特定(メタ)アクリル酸エステル系樹脂が含まれており、粒子内部において特定スチレン系樹脂と特定(メタ)アクリル酸エステル系樹脂とがミクロ相分離の状態を形成している複合樹脂粒子が得られると推測される。
【0127】
複合樹脂粒子分散液中に分散する複合樹脂粒子の体積平均粒径は、140nm以上300nm以下が好ましく、150nm以上280nm以下がより好ましく、160nm以上250nm以下が更に好ましい。
【0128】
複合樹脂粒子分散液に含まれる複合樹脂粒子の含有量は、複合樹脂粒子分散液の全質量に対して、20質量%以上50質量%以下が好ましく、30質量%以上40質量%以下がより好ましい。
【0129】
-黄色顔料分散液準備工程-
黄色顔料分散液準備工程では、黄色顔料を分散した黄色顔料分散液を準備する。
黄色顔料分散液の調製方法は特に制限はなく、例えば、スチレン系樹脂粒子分散液準備工程と同様に、黄色顔料を界面活性剤と共に機械的な衝撃等によって分散媒に分散することにより、黄色顔料分散液が調製される。機械的な衝撃等による黄色顔料の分散には、例えば、回転せん断型ホモジナイザー、ボールミル、サンドミル、アトライター等のメディア式分散機の他、高圧対向衝突式の分散機等が用いられる。黄色顔料は極性を有する界面活性剤を用いて、ホモジナイザー等の分散機によって分散されるもよい。
黄色顔料分散液における粒子(即ち黄色顔料)の体積平均粒径、分散媒、分散方法、及び粒子(即ち黄色顔料)の含有量に関しては、スチレン系樹脂粒子分散液のそれぞれと同様であり、好ましい態様も同様である。
【0130】
-凝集粒子形成工程-
凝集粒子形成工程では、複合樹脂粒子が分散した複合樹脂粒子分散液と黄色顔料分散液とを混合し、複合樹脂粒子及び黄色顔料を凝集させ、凝集粒子を形成する。
ここで、凝集粒子形成工程では、複合樹脂粒子及び黄色顔料を凝集させ、目的とするトナー粒子の径に近い径を持つ凝集粒子を形成する。
【0131】
凝集粒子形成工程について、具体的には、例えば、複合樹脂粒子分散液と黄色顔料分散液との混合液に凝集剤を添加すると共に、複合樹脂粒子分散液のpHを酸性(例えばpH2以上5以下)に調整し、必要に応じて、分散安定剤を添加した後、特定スチレン系樹脂のガラス転移温度に近い温度(具体的には、例えば、特定スチレン系樹脂のガラス転移温度-30℃以上ガラス転移温度-10℃以下)に加熱し、複合樹脂粒子及び黄色顔料を凝集させて、凝集粒子を形成する。
【0132】
凝集粒子形成工程においては、複合樹脂粒子分散液と黄色顔料分散液との混合液を回転せん断型ホモジナイザーで攪拌下、室温(例えば25℃)で凝集剤を添加し、複合樹脂粒子分散液のpHを酸性(例えばpH2以上5以下)に調整し、必要に応じて分散安定剤を添加した後に、加熱を行ってもよい。
【0133】
凝集剤としては、例えば、複合樹脂粒子分散液に含まれる界面活性剤と逆極性の界面活性剤、無機金属塩、2価以上の金属錯体が挙げられる。凝集剤として金属錯体を用いた場合には、界面活性剤の使用量が低減され、帯電特性が向上する。
凝集剤と共に、該凝集剤の金属イオンと錯体もしくは類似の結合を形成する添加剤を必要に応じて用いてもよい。この添加剤としては、キレート剤が好適に用いられる。
【0134】
無機金属塩としては、例えば、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム等の金属塩;ポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム、多硫化カルシウム等の無機金属塩重合体;などが挙げられる。
キレート剤としては、水溶性のキレート剤を用いてもよい。キレート剤としては、例えば、酒石酸、クエン酸、グルコン酸等のオキシカルボン酸;イミノ二酸酢(IDA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)等のアミノカルボン酸;などが挙げられる。
キレート剤の添加量は、樹脂粒子100質量部に対して0.01質量部以上5.0質量部以下が好ましく、0.1質量部以上3.0質量部未満がより好ましい。
【0135】
-融合・合一工程-
融合・合一工程では、凝集粒子が分散した凝集粒子分散液を加熱し、凝集粒子を融合・合一して、トナー粒子を形成する。
融合・合一工程では、凝集粒子が分散された凝集粒子分散液を、例えば、特定スチレン系樹脂のガラス転移温度以上(例えば特定スチレン系樹脂のガラス転移温度より10℃から30℃高い温度)に加熱して、凝集粒子を融合・合一し、トナー粒子を形成する。
【0136】
以上の工程を経て得られたトナー粒子は、通常、特定スチレン系樹脂を含む海相と、当該海相に分散した特定(メタ)アクリル酸エステル系樹脂を含む島相と、を有する海島構造を有する。複合樹脂粒子においては特定スチレン系樹脂と特定(メタ)アクリル酸エステル系樹脂とがミクロ相分離の状態であったところ、融合・合一工程において、特定スチレン系樹脂が互いに集まって海相になり、特定(メタ)アクリル酸エステル系樹脂が互いに集まって島相になるものと推測される。
【0137】
海島構造の島相の平均径は、例えば、複合樹脂粒子形成工程において使用するスチレン系樹脂粒子分散液の量又は少なくとも2種の(メタ)アクリル酸エステルの量を増減すること、融合・合一工程において高温に維持する時間を増減すること、等によって制御できる。
【0138】
コア・シェル構造のトナー粒子は、例えば、
既述の凝集粒子形成工程にて凝集粒子分散液(以下、第1凝集粒子が分散した第1凝集粒子分散液ともいう)を得た後、凝集粒子分散液とスチレン系樹脂粒子分散液とを更に混合し、凝集粒子の表面に更にスチレン系樹脂粒子を付着するように凝集して、第2凝集粒子を形成する工程(第2凝集粒子形成工程)と、
第2凝集粒子が分散された第2凝集粒子分散液に対して加熱をし、第2凝集粒子を融合・合一して、コア・シェル構造のトナー粒子を形成する工程(コア・シェル構造形成工程)と、
を経て製造する。
上記工程を経て得られるコア・シェル構造のトナー粒子は、特定スチレン系樹脂を含むシェル層を有する。
スチレン系樹脂粒子分散液の代わりに他の種類の樹脂粒子が分散した樹脂粒子分散液を用いて、他の種類の樹脂を含むシェル層を形成してもよい。
また、既述の凝集粒子形成工程にて、黄色顔料分散液を用いず、黄色顔料を含まない凝集粒子を形成しておき、上記第2凝集粒子形成工程にて、スチレン系樹脂粒子分散液と共に黄色顔料分散液を用い、黄色顔料及び特定スチレン系樹脂を含むシェル層を形成してもよい。
【0139】
融合・合一工程終了後、液中に形成されたトナー粒子に、公知の洗浄工程、固液分離工程、及び乾燥工程を施して乾燥した状態のトナー粒子を得る。
洗浄工程は、帯電性の観点から、イオン交換水による置換洗浄を充分に施すことがよい。固液分離工程は、生産性の観点から、吸引濾過、加圧濾過等を施すことがよい。乾燥工程は、生産性の観点から、凍結乾燥、気流乾燥、流動乾燥、振動型流動乾燥等を施すことがよい。
【0140】
そして、本実施形態に係るトナーは、例えば、得られた乾燥状態のトナー粒子に、外添剤を添加し、混合することにより製造される。
混合は、例えば、Vブレンダー、ヘンシェルミキサー、レーディゲミキサー等によって行うことがよい。
更に、必要に応じて、振動篩分機、風力篩分機等を使ってトナーの粗大粒子を取り除いてもよい。
【0141】
<静電荷像現像剤>
本実施形態に係る静電荷像現像剤は、本実施形態に係るトナーを少なくとも含むものである。
本実施形態に係る静電荷像現像剤は、本実施形態に係るトナーのみを含む一成分現像剤であってもよいし、本実施形態に係るトナーとキャリアとを混合した二成分現像剤であってもよい。
【0142】
キャリアとしては、特に制限はなく、公知のキャリアが挙げられる。キャリアとしては、例えば、磁性粉からなる芯材の表面に樹脂を被覆した被覆キャリア;マトリックス樹脂中に磁性粉が分散して配合された磁性粉分散型キャリア;多孔質の磁性粉に樹脂を含浸させた樹脂含浸型キャリア;等が挙げられる。磁性粉分散型キャリア、樹脂含浸型キャリアは、当該キャリアの構成粒子を芯材とし、この表面を樹脂で被覆したキャリアであってもよい。
【0143】
磁性粉としては、例えば、鉄、ニッケル、コバルト等の磁性金属;フェライト、マグネタイト等の磁性酸化物;などが挙げられる。
【0144】
被覆用の樹脂及びマトリックス樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、スチレン-アクリル酸エステル共重合体、オルガノシロキサン結合を含んで構成されるストレートシリコーン樹脂又はその変性品、フッ素樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。被覆用の樹脂及びマトリックス樹脂には、導電性粒子等、その他添加剤を含ませてもよい。導電性粒子としては、金、銀、銅等の金属、カーボンブラック、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、硫酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、チタン酸カリウム等の粒子が挙げられる。
【0145】
芯材の表面を樹脂で被覆するには、被覆用の樹脂、及び各種添加剤(必要に応じて使用する)を適当な溶媒に溶解した被覆層形成用溶液により被覆する方法等が挙げられる。溶媒としては、特に限定されるものではなく、使用する樹脂の種類や、塗布適性等を勘案して選択すればよい。
具体的な樹脂被覆方法としては、芯材を被覆層形成用溶液中に浸漬する浸漬法;被覆層形成用溶液を芯材表面に噴霧するスプレー法;芯材を流動エアーにより浮遊させた状態で被覆層形成用溶液を噴霧する流動床法;ニーダーコーター中でキャリアの芯材と被覆層形成用溶液とを混合し、その後に溶剤を除去するニーダーコーター法;等が挙げられる。
【0146】
二成分現像剤におけるトナーとキャリアとの混合比(質量比)は、トナー:キャリア=1:100乃至30:100が好ましく、3:100乃至20:100がより好ましい。
【0147】
<印刷物の製造装置、印刷物の製造方法>
本実施形態に係る印刷物の製造装置は、本実施形態に係るトナーを含む現像剤を収容し、前記トナーを電子写真方式により記録媒体上に配置する配置手段と、前記記録媒体を折り重ねて圧着する、又は、前記記録媒体と別の記録媒体とを重ねて圧着する圧着手段と、を含む。
【0148】
本実施形態に係る印刷物の製造装置によって、本実施形態に係る印刷物の製造方法が実施される。
【0149】
本実施形態に係る印刷物の製造方法は、本実施形態に係るトナーを含む現像剤を用いて、前記トナーを電子写真方式により記録媒体上に配置する配置工程と、前記記録媒体を折り重ねて圧着する、又は、前記記録媒体と別の記録媒体とを重ねて圧着する圧着工程と、を含む。
【0150】
本実施形態に係る印刷物の製造装置が含む前記配置手段は、例えば、
感光体と、
前記感光体の表面を帯電する帯電手段と、
帯電した前記感光体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成手段と、
本実施形態に係る静電荷像現像剤を収容し、前記静電荷像現像剤により、前記感光体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段と、
前記感光体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、
を備える。
前記配置手段は、記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着手段を更に備えることが好ましい。
【0151】
本実施形態に係る印刷物の製造方法が含む前記配置工程は、例えば、
感光体の表面を帯電する帯電工程と、
帯電した前記感光体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成工程と、
本実施形態に係る静電荷像現像剤により、前記感光体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像工程と、
前記感光体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写工程と、
を含む。
前記配置工程は、記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着工程を更に含むことが好ましい。
【0152】
前記配置手段は、例えば、感光体の表面に形成されたトナー画像を直接記録媒体に転写する直接転写方式の装置;感光体の表面に形成されたトナー画像を中間転写体の表面に一次転写し、中間転写体の表面に転写されたトナー画像を記録媒体の表面に二次転写する中間転写方式の装置;トナー画像の転写後、帯電前の感光体の表面をクリーニングするクリーニング手段を備えた装置;トナー画像の転写後、帯電前に感光体の表面に除電光を照射して除電する除電手段を備える装置;などの装置である。
前記配置手段が中間転写方式の装置の場合、転写手段は、例えば、表面にトナー画像が転写される中間転写体と、感光体の表面に形成されたトナー画像を中間転写体の表面に一次転写する一次転写手段と、中間転写体の表面に転写されたトナー画像を記録媒体の表面に二次転写する二次転写手段と、を有する。
【0153】
前記配置手段は、現像手段を含む部分が、前記配置手段に着脱するカートリッジ構造(いわゆるプロセスカートリッジ)であってもよい。プロセスカートリッジとしては、例えば、本実施形態に係る静電荷像現像剤を収容する現像手段を備え、印刷物の製造装置に着脱されるプロセスカートリッジが好適に用いられる。
【0154】
本実施形態に係る印刷物の製造装置が含む圧着手段は、本実施形態に係るトナーが配置された記録媒体に圧力を印加する。これによって、記録媒体上において本実施形態に係るトナーが流動化し接着性を発揮する。
本実施形態に係るトナーを流動化させる目的で圧着手段が記録媒体に印加する圧力は、20MPa以上100MPa以下が好ましく、40MPa以上90MPa以下がより好ましく、50MPa以上80MPa以下が更に好ましい。
【0155】
本実施形態に係るトナーは、記録媒体の全面に配置されてもよく、記録媒体の一部に配置されてもよい。本実施形態に係るトナーは、記録媒体上に1層又は複数層配置される。本実施形態に係るトナーの層は、記録媒体の面方向に連続した層であってもよいし、記録媒体の面方向に不連続な層であってもよい。
【0156】
記録媒体上の本実施形態に係るトナーの量は、配置された領域において、例えば、0.5g/m以上50g/m以下であり、1g/m以上40g/m以下であり、1.5g/m以上30g/m以下である。
記録媒体上の本実施形態に係るトナー(好ましくは透明トナー)の層厚は、例えば、0.2μm以上25μm以下であり、0.4μm以上20μm以下であり、0.6μm以上15μm以下である。
【0157】
本実施形態に係る印刷物の製造装置に適用する記録媒体としては、例えば、紙、紙の表面を樹脂等でコーティングしたコート紙、布、不織布、樹脂フィルム、樹脂シートなどが挙げられる。
記録媒体は、片面又は両面に予め画像を有していてもよい。
【0158】
以下、本実施形態に係る印刷物の製造装置の一例を示すが、本実施形態はこれに限定されるわけではない。
【0159】
図1は、本実施形態に係る印刷物の製造装置の一例を示す概略構成図である。図1に示す印刷物の製造装置は、配置手段100と、配置手段100の下流に配置された圧着手段200と、を備える。矢印は、感光体の回転方向又は記録媒体の搬送方向を示す。
【0160】
配置手段100は、本実施形態に係るトナーを含む現像剤を用いて、本実施形態に係るトナーを電子写真方式により記録媒体P上に配置する直接転写方式の装置である。記録媒体Pには、片面又は両面に予め画像が形成されている。
【0161】
配置手段100は、感光体101を有している。感光体101の周囲には、感光体101の表面を帯電させる帯電ロール(帯電手段の一例)102、帯電した感光体101の表面をレーザ光線によって露光して静電荷像を形成する露光装置(静電荷像形成手段の一例)103、静電荷像にトナーを供給して静電荷像を現像する現像装置(現像手段の一例)104、現像したトナー画像を記録媒体P上に転写する転写ロール(転写手段の一例)105、及び転写後に感光体101の表面に残存するトナーを除去する感光体クリーニング装置(クリーニング手段の一例)106が順に配置されている。
【0162】
配置手段100が本実施形態に係るトナーを記録媒体P上に配置する動作について説明する。
まず、帯電ロール102によって感光体101の表面が帯電される。帯電した感光体101の表面に、図示しない制御部から送られてくる画像データに従って、露光装置103がレーザ光線を照射する。それにより、本実施形態に係るトナーの配置パターンの静電荷像が感光体101の表面に形成される。
【0163】
感光体101上に形成された静電荷像は、感光体101の走行に従って現像位置まで回転する。そして、現像位置で、感光体101上の静電荷像が、現像装置104によって現像され可視化されトナー画像になる。
【0164】
現像装置104内には、少なくとも本実施形態に係るトナーとキャリアとを含む現像剤が収容されている。本実施形態に係るトナーは、現像装置104の内部でキャリアとともに攪拌されることで摩擦帯電し、現像剤ロール上に保持されている。感光体101の表面が現像装置104を通過していくことにより、感光体101表面の静電荷像にトナーが静電的に付着し、静電荷像がトナーによって現像される。トナーのトナー画像が形成された感光体101は、引き続き走行し、感光体101上に現像されたトナー画像が転写位置へ搬送される。
【0165】
感光体101上のトナー画像が転写位置へ搬送されると、転写ロール105に転写バイアスが印加され、感光体101から転写ロール105に向う静電気力がトナー画像に作用し、感光体101上のトナー画像が記録媒体P上に転写される。
【0166】
感光体101上に残留したトナーは感光体クリーニング装置106で除去されて回収される。感光体クリーニング装置106は、例えば、クリーニングブレード、クリーニングブラシ等である。感光体クリーニング装置106は、感光体の表面に残留した本実施形態に係るトナーが圧力により流動化して感光体の表面に膜状に付着する現象を抑制する観点から、クリーニングブラシであることが好ましい。
【0167】
トナー画像が転写された記録媒体Pは定着装置(定着手段の一例)107へと搬送される。定着装置107は、例えば、一対の定着部材(ロール/ロール、ベルト/ロール)である。配置手段100は、定着装置107を備えていなくてもよいが、記録媒体Pから本実施形態に係るトナーが脱落することを抑制する観点から、定着装置107を備えていることが好ましい。定着装置107が記録媒体Pに印加する圧力は、加圧装置230が記録媒体P2に印加する圧力に比較して低圧でよく、具体的には、0.5MPa以上10MPa以下が好ましい。
【0168】
定着装置107は内部に、記録媒体Pを加熱するための加熱源(例えばハロゲンヒータ)を有していてもよいし、有していなくてもよい。
定着装置107が内部に加熱源を有する場合、加熱源によって加熱された際の記録媒体Pの表面温度は、80℃以上200℃以下が好ましく、110℃以上180℃以下がより好ましく、130℃以上175℃以下が更に好ましい。なお、定着装置107が内部に加熱源を有しないことは、配置手段100が備えるモーター等の発熱により、定着装置107内の温度が環境温度以上になることを除外しない。
【0169】
記録媒体Pは、配置手段100を通過することによって、画像上に本実施形態に係るトナーが付与された記録媒体P1になる。記録媒体P1は、圧着手段200に向けて搬送される。
【0170】
本実施形態に係る印刷物の製造装置において、配置手段100と圧着手段200とは、近接している形態でもよく、離隔している形態でもよい。
配置手段100と圧着手段200とが離隔している場合、配置手段100と圧着手段200とは、例えば、記録媒体P1を搬送する搬送手段(例えばベルトコンベア)によって繋がれる。
【0171】
圧着手段200は、折り装置220と加圧装置230とを備え、記録媒体P1を折り重ねて圧着する手段である。
【0172】
折り装置220は、当該装置を通過する記録媒体P1を折り重ね、折り重なった記録媒体P2を作製する。
記録媒体P2の折り重なり方は、例えば、二つ折り、三つ折り、四つ折りであり、記録媒体P2の一部のみが折り重なっている形態でもよい。記録媒体P2は、対向する2つの面の少なくとも一方の面の少なくとも一部に、本実施形態に係るトナーが配置された状態である。
【0173】
折り装置220は、記録媒体P2に圧力を印加する一対の加圧部材(例えば、ロール/ロール、ベルト/ロール)を有していてもよい。折り装置220の加圧部材が記録媒体P2に印加する圧力は、加圧装置230が記録媒体P2に印加する圧力に比較して低圧でよく、具体的には、1MPa以上10MPa以下が好ましい。
【0174】
圧着手段200は、折り装置220の代わりに、記録媒体P1と別の記録媒体とを重ねる重ね装置を備えていてもよい。
記録媒体P1と別の記録媒体との重なりの形態は、例えば、記録媒体P1上に別の記録媒体が1枚重なっている形態、記録媒体P1上の複数個所に別の記録媒体が1枚ずつそれぞれ重なっている形態などである。別の記録媒体は、片面又は両面に予め画像が形成されている記録媒体でもよく、画像が形成されていない記録媒体でもよく、予め作製しておいた圧着印刷物でもよい。
【0175】
折り装置220(又は重ね装置)を出た記録媒体P2は、加圧装置230に向けて搬送される。
【0176】
加圧装置230は、一対の加圧部材(則ち、加圧ロール231及び232)を備える。加圧ロール231と加圧ロール232とは互いの外周面で接触し且つ押し合い、通過する記録媒体P2に圧力を印加する。加圧装置230が備える一対の加圧部材は、加圧ロールと加圧ロールの組合せに限られず、加圧ロールと加圧ベルトの組合せ、加圧ベルトと加圧ベルトの組合せでもよい。
また、加圧装置230における一対の加圧部材は、例えば、離間した一対の加圧部材(ロール/ロール等)間の隙間に記録媒体P2を通過させ、通過する記録媒体P2に圧力を印加する態様であってもよい。
【0177】
加圧装置230を通過する記録媒体P2に圧力が印加されると、記録媒体P2上において本実施形態に係るトナーが圧力によって流動化し接着性を発揮する。加圧装置230が記録媒体P2に印加する圧力は、20MPa以上100MPa以下が好ましく、40MPa以上90MPa以下がより好ましく、50MPa以上80MPa以下が更に好ましい。
【0178】
加圧装置230は内部に、記録媒体P2を加熱するための加熱源(例えばハロゲンヒータ)を有していてもよいし、有していなくてもよい。
加圧装置230が内部に加熱源を有する場合、加熱源によって加熱された際の記録媒体P2の表面温度は、40℃以上80℃以下が好ましく、50℃以上70℃以下がより好ましく、55℃以上65℃以下が更に好ましい。
なお、加圧装置230が内部に加熱源を有しないことは、加圧装置230が備えるモーター等の発熱により、加圧装置230内の温度が環境温度以上になることを除外しない。
【0179】
記録媒体P2が加圧装置230を通過することによって、折り重なった面同士が流動化した本実施形態に係るトナーによって接着され、圧着印刷物P3が作製される。
作製された圧着印刷物P3は、対向する面同士が、一部又は全部、接着されている。
【0180】
完成した圧着印刷物P3は、加圧装置230から搬出される。
【0181】
圧着印刷物P3の第一の形態は、折り重なった記録媒体が、対向する面において、本実施形態に係るトナーによって接着されてなる、圧着印刷物である。
本形態の圧着印刷物P3は、折り装置220を備える印刷物の製造装置によって製造される。
【0182】
圧着印刷物P3の第二の形態は、重なった複数の記録媒体が、対向する面において、本実施形態に係るトナーによって接着されてなる、圧着印刷物である。
本形態の圧着印刷物P3は、重ね装置を備える圧着印刷物の製造装置によって製造される。
【0183】
本実施形態に係る印刷物の製造装置は、記録媒体P2を折り装置220(又は重ね装置)から加圧装置230へ連続して搬送する形態の装置に限定されない。
本実施形態に係る印刷物の製造装置は、折り装置220(又は重ね装置)を出た記録媒体P2を貯留し、記録媒体P2の貯留量が予め定められた量に達した後、記録媒体P2を加圧装置230に搬送する形態の装置でもよい。
【0184】
本実施形態に係る印刷物の製造装置において、折り装置220(又は重ね装置)と圧着加圧装置230とは、近接している形態でもよく、離隔している形態でもよい。折り装置220(又は重ね装置)と圧着加圧装置230とが離隔している場合、折り装置220(又は重ね装置)と圧着加圧装置230とは、例えば、記録媒体P2を搬送する搬送手段(例えばベルトコンベア)によって繋がれる。
【0185】
本実施形態に係る印刷物の製造装置は、記録媒体を予め定められた寸法に裁断する裁断手段を備えていてもよい。裁断手段は、例えば、配置手段100と圧着手段200との間に配置され、記録媒体P1の一部であって本実施形態に係るトナーが配置されていない領域を切り落とす裁断手段;折り装置220と加圧装置230との間に配置され、記録媒体P2の一部であって本実施形態に係るトナーが配置されていない領域を切り落とす裁断手段;圧着手段200の下流に配置され、圧着印刷物P3の一部であって本実施形態に係るトナーによって接着されていない領域を切り落とす裁断手段;などである。
なお、裁断手段によれば、本実施形態に係るトナーが配置されている領域の一部を切り落としてもよい。
【0186】
本実施形態に係る印刷物の製造装置は、枚葉式の装置に限定されない。本実施形態に係る印刷物の製造装置は、長尺の記録媒体に対して配置工程及び圧着工程を行って長尺の圧着印刷物を形成した後、長尺の圧着印刷物を予め定められた寸法に裁断する様式の装置であってもよい。
【0187】
本実施形態に係る印刷物の製造装置は、有色の静電荷像現像剤を用いて電子写真方式により記録媒体上に有色画像を形成する有色画像形成手段を更に含んでもよい。
有色画像形成手段は、例えば、
感光体と、
前記感光体の表面を帯電する帯電手段と、
帯電した前記感光体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成手段と、
有色の静電荷像現像剤を収容し、有色の静電荷像現像剤により、前記感光体の表面に形成された静電荷像を有色のトナー画像として現像する現像手段と、
前記感光体の表面に形成された有色のトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、
前記記録媒体の表面に転写された有色のトナー画像を熱定着する熱定着手段と、を備える。
【0188】
上記構成の製造装置によって、本実施形態に係る印刷物の製造方法であって、有色の静電荷像現像剤を用いて電子写真方式により記録媒体上に有色画像を形成する有色画像形成工程を更に含む製造方法が実施される。有色画像形成工程は、具体的には、
感光体の表面を帯電する帯電工程と、
帯電した前記感光体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成工程と、
有色の静電荷像現像剤により、前記感光体の表面に形成された静電荷像を有色のトナー画像として現像する現像工程と、
前記感光体の表面に形成された有色のトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写工程と、
前記記録媒体の表面に転写された有色のトナー画像を熱定着する熱定着工程と、を含む。
【0189】
本実施形態に係る印刷物の製造装置が含む有色画像形成手段は、例えば、感光体の表面に形成された有色のトナー画像を直接記録媒体に転写する直接転写方式の装置;感光体の表面に形成された有色のトナー画像を中間転写体の表面に一次転写し、中間転写体の表面に転写された有色のトナー画像を記録媒体の表面に二次転写する中間転写方式の装置;有色のトナー画像の転写後、帯電前の感光体の表面をクリーニングするクリーニング手段を備えた装置;有色のトナー画像の転写後、帯電前に感光体の表面に除電光を照射して除電する除電手段を備える装置;などの装置である。
有色画像形成手段が中間転写方式の装置の場合、転写手段は、例えば、表面に有色のトナー画像が転写される中間転写体と、感光体の表面に形成された有色のトナー画像を中間転写体の表面に一次転写する一次転写手段と、中間転写体の表面に転写された有色のトナー画像を記録媒体の表面に二次転写する二次転写手段と、を有する。
【0190】
本実施形態に係る印刷物の製造装置において、本実施形態に係るトナーを含む現像剤の配置手段と有色画像形成手段とが中間転写方式を採用している場合、配置手段と有色画像形成手段とは、中間転写体及び二次転写手段を共有していてもよい。
【0191】
本実施形態に係る印刷物の製造装置において、本実施形態に係るトナーを含む像現像剤の配置手段と有色画像形成手段とは、熱定着手段を共有していてもよい。
【0192】
以下、有色画像形成手段を備える本実施形態に係る印刷物の製造装置の一例を示すが、本実施形態はこれに限定されるわけではない。以下の説明においては、図に示す主要部を説明し、その他はその説明を省略する。
【0193】
図2は、本実施形態に係る印刷物の製造装置の一例を示す概略構成図である。図2に示す印刷物の製造装置は、記録媒体への本実施形態に係るトナーの配置と有色画像形成とを一括で行う印刷手段300と、印刷手段300の下流に配置された圧着手段200と、を備える。
【0194】
印刷手段300は、5連タンデム方式且つ中間転写方式の印刷手段である。印刷手段300は、本実施形態に係るトナー(T)を配置するユニット10Tと、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(K)の各色画像を形成するユニット10Y、10M、10C及び10Kと、を備えている。ユニット10Tが、本実施形態に係るトナーを含む現像剤を用いて記録媒体P上に本実施形態に係るトナーを配置する配置手段である。ユニット10Y、10M、10C及び10Kがそれぞれ、有色トナーを含む現像剤を用いて記録媒体P上に有色画像を形成する手段である。ユニット10T、10Y、10M、10C及び10Kは、電子写真方式を採用している。
【0195】
ユニット10T、10Y、10M、10C及び10Kは、水平方向に互いに離間して並設されている。ユニット10T、10Y、10M、10C、10Kは、印刷手段300に着脱するプロセスカートリッジであってもよい。
【0196】
ユニット10T、10Y、10M、10C及び10Kの下方には、各ユニットを通して中間転写ベルト(中間転写体の一例)20が延設されている。中間転写ベルト20は、中間転写ベルト20の内面に接する、駆動ロール22、支持ロール23、及び対向ロール24に巻きつけて設けられ、ユニット10Tからユニット10Kに向う方向に走行するようになっている。中間転写ベルト20の像保持面側には、駆動ロール22と対向して中間転写体クリーニング装置21が備えられている。
【0197】
ユニット10T、10Y、10M、10C及び10Kはそれぞれ、現像装置(現像手段の一例)4T、4Y、4M、4C及び4Kを備える。現像装置4T、4Y、4M、4C、4Kのそれぞれには、トナーカートリッジ8T、8Y、8M、8C、8Kに収められた本実施形態に係るトナー、イエロートナー、マゼンタトナー、シアントナー、ブラックトナーの供給がなされる。
【0198】
ユニット10T、10Y、10M、10C及び10Kは、同等の構成及び動作を有しているため、本実施形態に係るトナーを記録媒体上に配置するユニット10Tについて代表して説明する。
【0199】
ユニット10Tは、感光体1Tを有している。感光体1Tの周囲には、感光体1Tの表面を帯電させる帯電ロール(帯電手段の一例)2T、帯電した感光体1Tの表面をレーザ光線によって露光して静電荷像を形成する露光装置(静電荷像形成手段の一例)3T、静電荷像にトナーを供給して静電荷像を現像する現像装置(現像手段の一例)4T、現像したトナー画像を中間転写ベルト20上に転写する一次転写ロール(一次転写手段の一例)5T、及び一次転写後に感光体1Tの表面に残存するトナーを除去する感光体クリーニング装置(クリーニング手段の一例)6Tが順に配置されている。一次転写ロール5Tは、中間転写ベルト20の内側に配置され、感光体1Tに対向した位置に設けられている。
【0200】
以下、ユニット10Tの動作を例示しながら、記録媒体P上に本実施形態に係るトナーの配置と有色画像形成とを行う動作について説明する。
まず、帯電ロール2Tによって感光体1Tの表面が帯電される。帯電した感光体1Tの表面に、図示しない制御部から送られてくる画像データに従って、露光装置3Tがレーザ光線を照射する。それにより、本実施形態に係るトナーの配置パターンの静電荷像が感光体1Tの表面に形成される。
【0201】
感光体1T上に形成された静電荷像は、感光体1Tの走行に従って現像位置まで回転する。そして、現像位置で、感光体1T上の静電荷像が、現像装置4Tによって現像され可視化されトナー画像になる。
【0202】
現像装置4T内には、少なくとも本実施形態に係るトナーとキャリアとを含む現像剤が収容されている。本実施形態に係るトナーは、現像装置4Tの内部でキャリアとともに攪拌されることで摩擦帯電し、現像剤ロール上に保持されている。感光体1Tの表面が現像装置4Tを通過していくことにより、感光体1T表面の静電荷像にトナーが静電的に付着し、静電荷像がトナーによって現像される。トナーのトナー画像が形成された感光体1Tは、引き続き走行し、感光体1T上に現像されたトナー画像が一次転写位置へ搬送される。
【0203】
感光体1T上のトナー画像が一次転写位置へ搬送されると、一次転写ロール5Tに一次転写バイアスが印加され、感光体1Tから一次転写ロール5Tに向う静電気力がトナー画像に作用し、感光体1T上のトナー画像が中間転写ベルト20上に転写される。感光体1T上に残留したトナーは感光体クリーニング装置6Tで除去されて回収される。感光体クリーニング装置6Tは、例えば、クリーニングブレード、クリーニングブラシ等であり、クリーニングブラシであることが好ましい。
【0204】
ユニット10Y、10M、10C及び10Kにおいても、ユニット10Tと同様の動作が、有色トナーを含む現像剤を用いて行われる。ユニット10Tにて本実施形態に係るトナーのトナー画像が転写された中間転写ベルト20が、ユニット10Y、10M、10C、10Kを順次通過し、中間転写ベルト20上に各色のトナー画像が多重転写される。
【0205】
ユニット10T、10Y、10M、10C及び10Kを通して5つのトナー画像が多重転写された中間転写ベルト20は、中間転写ベルト20と、中間転写ベルトの内面に接する対向ロール24と、中間転写ベルト20の像保持面側に配置された二次転写ロール(二次転写手段の一例)26とから構成された二次転写部へと至る。一方、記録媒体Pが供給機構を介して二次転写ロール26と中間転写ベルト20とが接触した隙間に給紙され、二次転写バイアスが対向ロール24に印加される。このとき、中間転写ベルト20から記録媒体Pに向う静電気力がトナー画像に作用し、中間転写ベルト20上のトナー画像が記録媒体P上に転写される。
【0206】
トナー画像が転写された記録媒体Pは熱定着装置(熱定着手段の一例)28へと搬送さる。熱定着装置28は、ハロゲンヒータ等の加熱源を備え、記録媒体Pを加熱する。熱定着装置28によって加熱された際の記録媒体Pの表面温度は、80℃以上200℃以下が好ましく、110℃以上180℃以下がより好ましく、130℃以上175℃以下が更に好ましい。熱定着装置28を通過することにより、有色のトナー画像が記録媒体P上へ熱定着される。
【0207】
熱定着装置28は、記録媒体Pから本実施形態に係るトナーが脱落することを抑制する観点、及び、有色画像の記録媒体Pへの定着性を向上させる観点から、加熱と共に加圧を行う装置であることが好ましく、例えば、内部に加熱源を備える一対の定着部材(ロール/ロール、ベルト/ロール)であってよい。熱定着装置28が加圧を行う場合、熱定着装置28が記録媒体Pに印加する圧力は、加圧装置230が記録媒体P2に印加する圧力に比較して低圧でよく、具体的には、0.1MPa以上2MPa以下が好ましい。
【0208】
記録媒体Pは、印刷手段300を通過することによって、有色画像及び本実施形態に係るトナーが付与された記録媒体P1になる。記録媒体P1は、圧着手段200に向けて搬送される。
【0209】
図2における圧着手段200の構成は、図1における圧着手段200と同じでよく、圧着手段200については構成及び動作の詳細な説明を省略する。
【0210】
本実施形態に係る印刷物の製造装置において、印刷手段300と圧着手段200とは、近接している形態でもよく、離隔している形態でもよい。印刷手段300と圧着手段200とが離隔している場合、印刷手段300と圧着手段200とは、例えば、記録媒体P1を搬送する搬送手段(例えばベルトコンベア)によって繋がれる。
【0211】
本実施形態に係る印刷物の製造装置は、記録媒体を予め定められた寸法に裁断する裁断手段を備えていてもよい。裁断手段は、例えば、印刷手段300と圧着手段200との間に配置され、記録媒体P1の一部であって本実施形態に係るトナーが配置されていない領域を切り落とす裁断手段;折り装置220と加圧装置230との間に配置され、記録媒体P2の一部であって本実施形態に係るトナーが配置されていない領域を切り落とす裁断手段;圧着手段200の下流に配置され、圧着印刷物P3の一部であって本実施形態に係るトナーによって接着されていない領域を切り落とす裁断手段;などである。
【0212】
本実施形態に係る印刷物の製造装置は、枚葉式の装置に限定されない。本実施形態に係る印刷物の製造装置は、長尺の記録媒体に対して有色画像形成工程、配置工程及び圧着工程を行って長尺の圧着印刷物を形成した後、長尺の圧着印刷物を予め定められた寸法に裁断する様式の装置であってもよい。
【0213】
<プロセスカートリッジ>
本実施形態に係るプロセスカートリッジについて説明する。
本実施形態に係るプロセスカートリッジは、本実施形態に係る静電荷像現像剤を収容し、前記静電荷像現像剤により、感光体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段を備え、印刷物の製造装置に着脱されるプロセスカートリッジである。
【0214】
本実施形態に係るプロセスカートリッジは、現像手段と、必要に応じて、感光体、帯電手段、静電荷像形成手段、転写手段などから選択される少なくとも一つと、を備える構成であってもよい。
【0215】
以下、本実施形態に係るプロセスカートリッジの一例を示すが、本実施形態はこれに限定されるわけではない。以下の説明においては、図に示す主要部を説明し、その他はその説明を省略する。
【0216】
図3は、本実施形態に係るプロセスカートリッジの一例を示す概略構成図である。
図3に示すプロセスカートリッジ500は、例えば、図1又は図2に示す印刷物の製造装置に着脱される。
【0217】
プロセスカートリッジ500は、感光体501と、感光体501の周囲に備えられた帯電ロール502(帯電手段の一例)、現像装置504(現像手段の一例)及び感光体クリーニング装置506(クリーニング手段の一例)とが筐体517により一体化されたカートリッジである。筐体517は、露光のための開口部518を有する。筐体517は、取り付けレール516を有し、取り付けレール516を介してプロセスカートリッジ500が印刷物の製造装置に装着される。
【0218】
図3には、プロセスカートリッジ500が印刷物の製造装置に装着された際に、プロセスカートリッジ500の周囲に配される露光装置503及び転写装置505と、記録媒体Pも図示している。
【0219】
<トナーカートリッジ>
本実施形態に係るトナーカートリッジは、本実施形態に係るトナーを収容し、印刷物の製造装置に着脱されるトナーカートリッジである。トナーカートリッジは、印刷物の製造装置内に設けられた現像手段に供給するための補給用のトナーを収容するものである。
【0220】
図2に示す印刷手段300は、トナーカートリッジ8T、8Y、8M、8C及び8Kが着脱される構成を有しており、現像装置4T、4Y、4M、4C及び4Kはそれぞれ、トナーカートリッジ8T、8Y、8M、8C及び8Kと、図示しないトナー供給管で接続されている。本実施形態に係るトナーカートリッジの一例が、トナーカートリッジ8Tであり、本実施形態に係るトナーが収容されている。トナーカートリッジ8Y、8M、8C及び8Kにはそれぞれ、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの各トナーが収容されている。トナーカートリッジ内に収容されているトナーが少なくなった場合には、これらトナーカートリッジが交換される。
【実施例
【0221】
以下、実施例により発明の実施形態を詳細に説明するが、発明の実施形態は、これら実施例に何ら限定されるものではない。以下の説明において、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
【0222】
≪トナー(T1)及び現像剤(G1)の作製≫
<コア部用樹脂粒子分散液の調製>
[スチレン系樹脂粒子分散液(A1)の調製]
・スチレン : 440部
・アクリル酸n-ブチル : 130部
・アクリル酸 : 20部
・ドデカンチオール : 10部
上記の材料を混合溶解してモノマー溶液を調製した。
アニオン性界面活性剤(ダウ・ケミカル社製、DOWFAX2A1)10部をイオン交換水250部に溶解し、前記モノマー溶液を加えて分散し乳化させて、乳化液を得た。
【0223】
アニオン性界面活性剤(ダウ・ケミカル社製、DOWFAX2A1)1部を555部のイオン交換水に溶解し、重合用フラスコに仕込んだ。
重合用フラスコに還流管を設置し、窒素を注入しながら、ゆっくりと撹拌しながら、75℃まで重合用フラスコをウォーターバスで加熱し、保持した。
過硫酸アンモニウム9部をイオン交換水43部に溶解し、重合用フラスコ中に定量ポンプを介して、20分かけて滴下した後、前記乳化液を、定量ポンプを介して200分かけて滴下した。
その後、撹拌を続けながら重合用フラスコを75℃に、3時間保持して1段階目の重合を終了した。樹脂粒子の体積平均粒径(D50v)が195nm、ガラス転移温度が53℃、重量平均分子量が32,000のスチレン系樹脂粒子分散液(A1)が得られた。
【0224】
[複合樹脂粒子分散液(A1)の調製]
次に、室温まで温度が低下した後、前記重合用フラスコに、アクリル酸2-エチルヘキシル240部、アクリル酸n-ブチル160部、及びイオン交換水1200部を加え、ゆっくりと2時間撹拌した。
その後、撹拌を続けながら70℃に昇温し、過硫酸アンモニウム4.5部及びイオン交換水100部を、前記重合用フラスコに、定量ポンプを介して20分かけて滴下した。次いで、撹拌を続けながら3時間保持して重合を終了した。
以上の工程を経て、体積平均粒径(D50v)が240nm、重量平均分子量が133,000、数平均分子量が18,000の複合樹脂粒子を含み、イオン交換水を追加して調整して固形分量30%の複合樹脂粒子分散液(A1)を得た。
複合樹脂粒子分散液(A1)を、コア部用樹脂粒子分散液(A1)として用いた。
【0225】
複合樹脂粒子分散液(A1)を乾燥させた後、乾燥した複合樹脂粒子について、示差走査熱量計(島津製作所製)にて、温度-150℃から100℃の範囲の熱的挙動を分析したところ、ガラス転移温度が2つ(Tg1及びTg2)観察された。表2にガラス転移温度を示す。
【0226】
[複合樹脂粒子分散液(A2)~(A5)の調製]
アクリル酸2-エチルヘキシル(表2では「2EHA」と略記)及びアクリル酸n-ブチル(表2では「BA」と略記)の量を下記表2のように変え、且つ、複合樹脂粒子の体積平均粒径200nm~240nmの範囲に制御した以外は、複合樹脂粒子分散液(A1)の調製と同様にして、複合樹脂粒子分散液(A2)~(A5)を得た。
なお、複合樹脂粒子分散液(A2)~(A5)の固形分量は、イオン交換水を用いていずれも30%とした。
複合樹脂粒子分散液(A2)~(A5)を、コア部用樹脂粒子分散液(A2)~(A5)として用いた。
【0227】
【表2】
【0228】
<シェル層用樹脂粒子分散液の調製>
(シェル層用樹脂粒子分散液(B1)の調製)
・スチレン : 450部
・n-ブチルアクリレート : 135部
・アクリル酸 : 10部
・ドデカンチオール : 10部
上記の材料を混合溶解してモノマー溶液を調製した。
アニオン性界面活性剤(ダウ・ケミカル社製、DOWFAX2A1)10部をイオン交換水250部に溶解し、前記モノマー溶液を加えて分散し乳化させて、乳化液を得た。
【0229】
アニオン性界面活性剤(ダウ・ケミカル社製、DOWFAX2A1)1部を555部のイオン交換水に溶解し、重合用フラスコに仕込んだ。
重合用フラスコに還流管を設置し、窒素を注入しながら、ゆっくりと撹拌しながら、75℃まで重合用フラスコをウォーターバスで加熱し、保持した。
過硫酸アンモニウム9部をイオン交換水43部に溶解し、重合用フラスコ中に定量ポンプを介して、20分かけて滴下した後、前記乳化液を、定量ポンプを介して200分かけて滴下した。
その後、撹拌を続けながら重合用フラスコを75℃に、3時間保持して1段階目の重合を終了した。樹脂粒子の体積平均粒径(D50v)が200nm、ガラス転移温度が53℃、重量平均分子量が33,000、イオン交換水の追加により固形分量30質量%に調整されたシェル層用樹脂粒子分散液(B1)が得られた。
【0230】
<離型剤粒子分散液の調製>
(離型剤粒子分散液(1)の調製)
・フィッシャートロプシュワックス : 270部
(日本精鑞(株)製、商品名:FNP-0090、融解温度=90℃)
・アニオン性界面活性剤 : 1.0部
(第一工業製薬(株)製、ネオゲンRK)
・イオン交換水 : 400部
上記成分を混合して95℃に加熱し、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)を用いて分散した後、マントンゴーリン高圧ホモジナイザ(ゴーリン社)で360分間の分散処理をして、体積平均粒径が0.23μmである離型剤粒子が分散してなる離型剤粒子分散液(1)(固形分量20%)を調製した。
【0231】
<黄色顔料分散液の調製>
(黄色顔料分散液(1)の調製)
・黄色顔料(クラリアント社製、C.I.Pigment Yellow 74) : 50部
・イオン性界面活性剤(ネオゲンRK、第一工業製薬(株)製) : 5部
・イオン交換水 : 195部
上記成分を混合し、ホモジナイザー(IKAウルトラタラックス)により10分間分散した後に、アルティマイザー(対抗衝突型湿式粉砕機:(株)スギノマシン製)を用い圧力250Mpaで15分間分散処理を行い、イオン交換水を加えて調整して、黄色顔料の体積平均粒径が130nmである黄色顔料が分散してなる、黄色顔料分散液(1)(固形分量2%)を調製した。
【0232】
<トナー粒子(T1)の作製>
・コア部用樹脂粒子分散液(A1) : 600部
・離型剤粒子分散液(1) : 10部
・コロイダルシリカ水溶液 : 13部
(日産化学(株)製、スノーテックスOS)
・イオン交換水 : 1000部
・アニオン性界面活性剤 : 1部
(ダウケミカル(株)社製、Dowfax2A1)
上記の成分を、温度計、pH計、及び攪拌器を具備した3リットルの反応容器に入れ、温度25℃にて、1.0%硝酸を加えてpHを3.0にした後、ホモジナイザー(IKAジャパン(株)製:ウルトラタラクスT50)にて5,000rpmで分散しながら、調製した10%ポリ塩化アルミ水溶液を4部添加して6分間分散した。
【0233】
その後、反応容器に攪拌器、マントルヒーターを設置し、スラリーが充分に攪拌されるように攪拌器の回転数を調整しながら、温度40℃までは0.2℃/分の昇温速度、40℃を超えてからは0.05℃/分の昇温速度で昇温し、10分ごとにマルチサイザーII(アパーチャー径:50μm、ベックマン・コールター社製)にて粒径を測定した。体積平均粒径が7.5μmになったところで温度を保持し、シェル層用樹脂粒子分散液(B1)115部及び黄色顔料分散液(1)0.24部を混合してから5分かけて投入した。30分間保持した後、1%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを6.0にした。その後、5℃ごとにpHが6.0になるように同様にして調整しながら、昇温速度1℃/分で90℃まで昇温し、96℃で保持した。光学顕微鏡と走査電子顕微鏡(FE-SEM)にて粒子形状及び表面性を観察したところ、2.0時間目で粒子の合一が確認されたので、冷却水にて容器を30℃まで5分間かけて冷却した。
【0234】
冷却後のスラリーを、目開き30μmのナイロンメッシュに通過させ粗大粉を除去し、メッシュを通過したトナースラリーをアスピレータで減圧ろ過した。ろ紙上に残ったトナーを手でできるだけ細かく砕いて、温度30℃でトナー量の10倍のイオン交換水に投入し、30分間攪拌混合した。引き続き、アスピレータで減圧ろ過し、ろ紙上に残ったトナーを手でできるだけ細かく砕いて、温度30℃でトナー量の10倍のイオン交換水に投入し、30分間攪拌混合した後、再度アスピレータで減圧ろ過し、ろ液の電気伝導度を測定した。ろ液の電気伝導度が10μS/cm以下になるまでこの操作を繰り返し、トナーを洗浄した。洗浄されたトナーを湿式乾式整粒機(コーミル)で細かく砕いてから、25℃の乾燥器で36時間真空乾燥して、トナー粒子(T1)を得た。
得られたトナー粒子(T1)は、体積平均粒径が8.5μm、重量平均分子量が125,000、数平均分子量が17,000であった。
【0235】
<トナー(T1)の作製>
トナー粒子(T1)100部と、疎水性シリカ(日本アエロジル株式会社製、RY50)1.5部と、を混合し、サンプルミルを用いて回転速度13000rpmで30秒間混合した。目開き45μmの振動篩で篩分して、トナー(T1)を得た。
【0236】
トナー(T1)中の黄色顔料の含有量を既述の方法で測定したところ、22ppmであった。
【0237】
トナー(T1)を試料にして、示差走査熱量計(島津製作所製)にて、温度-150℃から100℃の範囲の熱的挙動を分析したところ、ガラス転移温度が2つ観察された。表3にガラス転移温度を示す。
【0238】
トナー(T1)の温度T1及び温度T2を既述の測定方法によって求め、温度差(T1-T2)を算出したところ、20℃であった。
【0239】
トナー(T1)の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察したところ、海島構造が観察された。また、トナー(T1)は、島相が存在するコア部と、島相が存在しないシェル層と、を有していた。
海相は特定スチレン系樹脂を含み、島相は特定(メタ)アクリル酸エステル系樹脂を含んでいた。既述の測定方法にて島相の平均径を求めた。表3に島相の平均径を示す。
【0240】
<現像剤(G1)の作製>
トナー(T1)10部と下記の樹脂被覆キャリア100部とをV型ブレンダーに入れ20分間攪拌し、次いで、目開き212μmの振動篩で篩分して現像剤(G1)を得た。
【0241】
・Mn-Mg-Sr系フェライト粒子(平均粒径40μm):100部
・トルエン : 14部
・ポリメタクリル酸メチル : 2部
・カーボンブラック(VXC72:キャボット製) :0.12部
フェライト粒子を除く上記材料とガラスビーズ(直径1mm、トルエンと同量)とを混合し、関西ペイント社製サンドミルを用いて回転速度1200rpmで30分間攪拌し、分散液を得た。この分散液とフェライト粒子とを真空脱気型ニーダーに入れ、攪拌しながら減圧し乾燥させることにより、樹脂被覆キャリアを得た。
【0242】
≪トナー(T2)~(T12)、(T18)~(T19)及び現像剤(G1)~(G12)、(G18)~(G19)の作製≫
トナー粒子(T1)の代わりに、下記表3に記載のトナー粒子(T2)~(T14)を用いた以外は、トナー(T1)の作製と同様にして、トナー(T2)~(T12)、(T18)~(T19)を作製した。そして、トナー(T2)~(T12)、(T18)~(T19)を用いた以外は、現像剤(G1)の作製と同様にして、現像剤(G2)~(G12)、(G18)~(G19)を作製した。
【0243】
≪トナー(T13)~(T14)及び現像剤(G13)~(G14)の作製≫
トナー粒子(T1)の作製時に、黄色顔料分散液(1)の代わりに、下記黄色顔料分散液(2)又は(3)を用いた以外は、トナー(T1)の作製と同様にして、トナー(T13)~(T14)を作製した。そして、トナー(T13)~(T14)を用いた以外は、現像剤(G1)の作製と同様にして、現像剤(G13)~(G14)を作製した。
【0244】
<黄色顔料分散液の調製>
(黄色顔料分散液(2)の調製)
・黄色顔料(大日精化社製、C.I.Pigment Yellow 93) : 50部
・イオン性界面活性剤(ネオゲンRK、第一工業製薬(株)製) : 5部
・イオン交換水 : 195部
上記成分を混合し、ホモジナイザー(IKAウルトラタラックス)により10分間分散した後に、アルティマイザー(対抗衝突型湿式粉砕機:(株)スギノマシン製)を用い圧力250Mpaで15分間分散処理を行い、イオン交換水を加えて調整して、黄色顔料の体積平均粒径が180nmである黄色顔料が分散してなる、黄色顔料分散液(2)(固形分量2%)を調製した。
【0245】
(黄色顔料分散液(3)の調製)
・黄色顔料(クラリアント社製、C.I.Pigment Yellow 180) : 50部
・イオン性界面活性剤(ネオゲンRK、第一工業製薬(株)製) : 5部
・イオン交換水 : 195部
上記成分を混合し、ホモジナイザー(IKAウルトラタラックス)により10分間分散した後に、アルティマイザー(対抗衝突型湿式粉砕機:(株)スギノマシン製)を用い圧力250Mpaで15分間分散処理を行い、イオン交換水を加えて調整して、黄色顔料の体積平均粒径が150nmである黄色顔料が分散してなる、黄色顔料分散液(3)(固形分量2%)を調製した。
【0246】
≪トナー(T15)~(T-17)及び現像剤(G15)~(G-17)の作製≫
<トナー粒子(T15)の作製>
・コア部用樹脂粒子分散液(A1) : 715部
・離型剤分散液(1) : 10部
・黄色顔料分散液(1) :0.24部
・コロイダルシリカ水溶液 : 13部
(日産化学(株)製、スノーテックスOS)
・イオン交換水 : 1000部
・アニオン性界面活性剤 : 1部
(ダウケミカル(株)社製、Dowfax2A1)
上記の成分を、温度計、pH計、及び攪拌器を具備した3リットルの反応容器に入れ、温度25℃にて、1.0%硝酸を加えてpHを3.0にした後、ホモジナイザー(IKAジャパン(株)製:ウルトラタラクスT50)にて5,000rpmで分散しながら、調製した10%ポリ塩化アルミ水溶液を4部添加して6分間分散した。
【0247】
その後、反応容器に攪拌器、マントルヒーターを設置し、スラリーが充分に攪拌されるように攪拌器の回転数を調整しながら、温度40℃までは0.2℃/分の昇温速度、40℃を超えてからは0.05℃/分の昇温速度で昇温し、10分ごとにマルチサイザーII(アパーチャー径:50μm、ベックマン・コールター社製)にて粒径を測定した。体積平均粒径が8.5μmになったところで温度を保持し、1%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを6.0にした。その後、5℃ごとにpHが6.0になるように同様にして調整しながら、昇温速度1℃/分で90℃まで昇温し、96℃で保持した。光学顕微鏡と走査電子顕微鏡(FE-SEM)にて粒子形状及び表面性を観察したところ、2.0時間目で粒子の合一が確認されたので、冷却水にて容器を30℃まで5分間かけて冷却した。
冷却後のスラリーを、目開き30μmのナイロンメッシュに通過させ粗大粉を除去し、メッシュを通過したトナースラリーをアスピレータで減圧ろ過した。ろ紙上に残ったトナーを手でできるだけ細かく砕いて、温度30℃でトナー量の10倍のイオン交換水に投入し、30分間攪拌混合した。引き続き、アスピレータで減圧ろ過し、ろ紙上に残ったトナーを手でできるだけ細かく砕いて、温度30℃でトナー量の10倍のイオン交換水に投入し、30分間攪拌混合した後、再度アスピレータで減圧ろ過し、ろ液の電気伝導度を測定した。ろ液の電気伝導度が10μS/cm以下になるまでこの操作を繰り返し、トナーを洗浄した。洗浄されたトナーを湿式乾式整粒機(コーミル)で細かく砕いてから、25℃の乾燥器で36時間真空乾燥して、トナー粒子(T15)を得た。
得られたトナー粒子(T1)は、体積平均粒径が8.3μm、重量平均分子量が133,000、数平均分子量が18,000であった。
【0248】
<トナー(T15)及び現像剤(G15)の作製>
トナー粒子(T1)の代わりに、トナー粒子(T15)を用いた以外は、トナー(T1)の作製と同様にして、トナー(T15)を作製した。そして、トナー(T15)を用いた以外は、現像剤(G1)の作製と同様にして、現像剤(G15)を作製した。
【0249】
<トナー粒子(T16)及び(T17)の作製>
トナー粒子(T15)の作製時に用いた黄色顔料分散液(1)の量(0.24部)を、0.44部又は0.65部にそれぞれ変えた以外は、トナー粒子(T15)の作製と同様にして、トナー粒子(T16)~(T17)を作製した。
トナー粒子(T1)の代わりに、トナー粒子(T16)又は(T17)を用いた以外は、トナー(T1)の作製と同様にして、トナー(T16)~(T17)を作製した。そして、トナー(T16)~(T17)を用いた以外は、現像剤(G1)の作製と同様にして、現像剤(G16)~(G17)を作製した。
【0250】
【表3】
【0251】
[機内汚れの評価]
第1現像器~第4現像器にシアン、マゼンタ、イエロー、及びブラックの有色静電荷像現像剤が充填された富士ゼロックス(株)社製Color 1000 Press改造機の第5現像器に現像剤(1)を収容した。
記録紙(OKプリンス上質紙、坪量157g、王子製紙(株)製)をセットし、定着温度170℃、定着圧力4.0kg/cmにて、トナー(1)の載り量3g/mとし、文字と写真画像とを混在させた画像(面積密度を30%)を形成し、定着をおこなった。トナー像の配置の順番としては、着色トナー像上に、トナー(1)によるトナー像を配置した。この条件で、1,000枚の連続印刷を行った。
印刷後に、第5現像器及び第5現像器に対向する感光体を外し、第5現像器直下の本体フレームの汚れをテープ転写し、汚れが転写されたテープを黒色紙に貼り付けて、機内汚れの確認及び評価を行った。表4に結果を示す。
評価基準は以下の通りである。
-評価基準-
A:黒色紙に貼り付けたテープにおいて、トナーは視認できないレベルであり、機内汚れがほぼ無い
B:黒色紙に貼り付けたテープにおいて、視認できるトナー溜まりが数箇所あるが、機内汚れは許容の範囲である
C:黒色紙に貼り付けたテープにおいて、トナー溜まりがテープ全面に視認されるレベルであり、機内汚れが目立つ
【0252】
[接着性の評価]
機内汚れの評価後、更に、10枚印刷を行い、10枚目の画像を定着面が重なるように折り曲げ、圧着シーラーPRESSELE LEADA(トッパンフォームズ(株)製)改造機を用いて圧着し、圧着印刷物を作製した。その後、圧着印刷物を22℃50%の環境に1日間放置した。
圧着印刷物を長辺方向に幅15mmで裁断し、長方形の試験片を3つ作製して、90度剥離試験を行い、接着性を剥離力にて評価した90度剥離試験の剥離速度は20mm/分とし、測定開始後10mmから50mmまでの荷重(N)を0.4mm間隔で採取し、その平均を算出し、更に、試験片3つの荷重(N)を平均した。表4に結果を示す。
【0253】
【表4】
【0254】
<スチレン系樹脂粒子を含む分散液の調製>
[スチレン系樹脂粒子分散液(St1)の調製]
・スチレン : 390部
・アクリル酸n-ブチル : 100部
・アクリル酸 : 10部
・ドデカンチオール :7.5部
上記の材料を混合し溶解してモノマー溶液を調製した。
アニオン性界面活性剤(ダウ・ケミカル社製、Dowfax2A1)8部をイオン交換水205部に溶解し、前記モノマー溶液を加えて分散し乳化し、乳化液を得た。
アニオン性界面活性剤(ダウ・ケミカル社製、Dowfax2A1)2.2部をイオン交換水462部に溶解し、攪拌機、温度計、還流冷却管及び窒素ガス導入管を備えた重合用フラスコに仕込み、攪拌しながら73℃まで加熱し、保持した。
過硫酸アンモニウム3部をイオン交換水21部に溶解し、前記重合用フラスコに定量ポンプを介して15分間かけて滴下した後、前記乳化液を定量ポンプを介して160分間かけて滴下した。
次いで、ゆっくりと攪拌を続けながら重合用フラスコを75℃に3時間保持した後、室温に戻した。
これにより、スチレン系樹脂粒子を含み、樹脂粒子の体積平均粒径(D50v)が154nm、GPC(UV検出)による重量平均分子量が59k、ガラス転移温度が54℃、固形分量が42%のスチレン系樹脂粒子分散液(St1)を得た。
【0255】
スチレン系樹脂粒子分散液(St1)を乾燥してスチレン系樹脂粒子を取り出し、示差走査熱量計(島津製作所製、DSC-60A)にて、温度-150℃から100℃の範囲の熱的挙動を分析したところ、ガラス転移温度が1つ観察された。表5にガラス転移温度を示す。
【0256】
[スチレン系樹脂粒子分散液(St2)~(St13)の調製]
スチレン系樹脂粒子分散液(St1)の調製と同様にして、但し、モノマーを表5に記載の通りに変更して、スチレン系樹脂粒子分散液(St2)~(St13)を調製した。
【0257】
表5においてモノマーは下記の略号で記載する。
スチレン:St、アクリル酸n-ブチル:BA、アクリル酸2-エチルヘキシル:2EHA、アクリル酸エチル:EA、アクリル酸4-ヒドロキシブチル:4HBA、アクリル酸:AA、メタクリル酸:MAA、アクリル酸2-カルボキシエチル:CEA
【0258】
【表5】
【0259】
<複合樹脂粒子を含む分散液の調製>
[複合樹脂粒子分散液(M1)の調製]
・スチレン系樹脂粒子分散液(St1) : 1190部(固形分500部)
・アクリル酸2-エチルヘキシル : 250部
・アクリル酸n-ブチル : 250部
・イオン交換水 : 982部
上記の材料を重合用フラスコに仕込み、25℃で1時間攪拌した後、70℃に加熱した。
過硫酸アンモニウム2.5部をイオン交換水75部に溶解し、前記重合用フラスコに定量ポンプを介して60分間かけて滴下した。
次いで、ゆっくりと攪拌を続けながら重合用フラスコを70℃に3時間保持した後、室温に戻した。
これにより、複合樹脂粒子を含み、樹脂粒子の体積平均粒径(D50v)が183nm、GPC(UV検出)による重量平均分子量が129k、固形分量が32%の複合樹脂粒子分散液(M1)を得た。
【0260】
複合樹脂粒子分散液(M1)を乾燥して複合樹脂粒子を取り出し、示差走査熱量計(島津製作所製、DSC-60A)にて、温度-150℃から100℃の範囲の熱的挙動を分析したところ、ガラス転移温度が2つ観察された。表6にガラス転移温度を示す。
【0261】
[複合樹脂粒子分散液(M2)~(M21)及び(cM1)~(cM3)の調製]
複合樹脂粒子分散液(M1)の調製と同様にして、但し、スチレン系樹脂粒子分散液(St1)を表6に記載の通りに変更して、又は、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の重合成分を表6に記載の通りに変更して、複合樹脂粒子分散液(M2)~(M21)及び(cM1)~(cM3)を調製した。
【0262】
[複合樹脂粒子分散液(M22)~(M27)の調製]
複合樹脂粒子分散液(M1)の調製と同様にして、但し、アクリル酸2-エチルヘキシル及びアクリル酸n-ブチルの使用量を調節して、複合樹脂粒子分散液(M22)~(M27)を調製した。
【0263】
表6においてモノマーは下記の略号で記載する。
スチレン:St、アクリル酸n-ブチル:BA、アクリル酸2-エチルヘキシル:2EHA、アクリル酸エチル:EA、アクリル酸4-ヒドロキシブチル:4HBA、アクリル酸:AA、メタクリル酸:MAA、アクリル酸2-カルボキシエチル:CEA、アクリル酸ヘキシル:HA、アクリル酸プロピル:PA
【0264】
【表6】
【0265】
<トナーの調製>
[トナー(1)及び現像剤(1)の調製]
・複合樹脂粒子分散液(M1) :504部
・イオン交換水 :710部
・アニオン性界面活性剤(ダウ・ケミカル社製、Dowfax2A1): 1部
【0266】
温度計及びpH計を備えた反応容器に上記の材料を入れ、温度25℃下に1.0%硝酸水溶液を添加してpHを3.0に調整した後、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)にて回転数5000rpmで分散しながら、2.0%硫酸アルミニウム水溶液を23部添加した。次いで、反応容器に攪拌機及びマントルヒーターを設置し、温度40℃までは0.2℃/分の昇温速度、40℃を超えてからは0.05℃/分の昇温速度で昇温し、10分ごとにマルチサイザーII(アパーチャー径50μm、ベックマン-コールター社製)にて粒径を測定した。体積平均粒径が5.0μmになったところで温度を保持し、スチレン系樹脂粒子分散液(St1)170部、及び黄色顔料分散液(1)0.3部を5分間かけて投入した。投入終了後、50℃に30分間保持した後、1.0%水酸化ナトリウム水溶液を加え、スラリーのpHを6.0に調整した。次いで、5℃ごとにpHを6.0に調整しながら、昇温速度1℃/分で90℃まで昇温し、90℃で保持した。光学顕微鏡と電界放出形走査電子顕微鏡(FE-SEM)にて粒子形状及び表面性を観察したところ、10時間目で粒子の合一が確認されたので、冷却水で容器を30℃まで5分間かけて冷却した。
【0267】
冷却後のスラリーを、目開き15μmのナイロンメッシュに通過させ粗大粒子を除去し、メッシュを通過したスラリーをアスピレータで減圧濾過した。濾紙上に残った固形分を手でできるだけ細かく砕いて、固形分量の10倍のイオン交換水(温度30℃)に投入し、30分間攪拌した。次いで、アスピレータで減圧濾過し、濾紙上に残った固形分を手でできるだけ細かく砕いて、固形分量の10倍のイオン交換水(温度30℃)に投入し、30分間攪拌した後、再度アスピレータで減圧濾過し、濾液の電気伝導度を測定した。濾液の電気伝導度が10μS/cm以下になるまでこの操作を繰り返し、固形分を洗浄した。
【0268】
洗浄された固形分を湿式乾式整粒機(コーミル)で細かく砕き、25℃のオーブン中で36時間真空乾燥して、トナー粒子(1)を得た。トナー粒子(1)は、体積平均粒径が8.0μmであった。
【0269】
トナー粒子(1)100部と、疎水性シリカ(日本アエロジル株式会社製、RY50)1.5部と、を混合し、サンプルミルを用いて回転速度13000rpmで30秒間混合した。目開き45μmの振動篩で篩分して、トナー(1)を得た。
【0270】
トナー(1)を試料にして、示差走査熱量計(島津製作所製、DSC-60A)にて、温度-150℃から100℃の範囲の熱的挙動を分析したところ、ガラス転移温度が2つ観察された。表7にガラス転移温度を示す。
【0271】
トナー(1)の温度T1及び温度T2を既述の測定方法によって求めたところ、トナー(1)は式1「20℃≦T1-T2」を満足していた。
【0272】
トナー(1)の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察したところ、海島構造が観察された。また、トナー(1)は、島相が存在するコア部と、島相が存在しないシェル層と、を有していた。
海相は特定スチレン系樹脂を含み、島相は特定(メタ)アクリル酸エステル系樹脂を含んでいた。既述の測定方法にて島相の平均径を求めた。表7に島相の平均径を示す。
トナー(1)中の黄色顔料の含有量を既述の方法で測定したところ、26ppmであった。
【0273】
トナー(1)10部と下記の樹脂被覆キャリア100部とをV型ブレンダーに入れ20分間攪拌し、次いで、目開き212μmの振動篩で篩分して現像剤(1)を得た。
【0274】
・Mn-Mg-Sr系フェライト粒子(平均粒径40μm):100部
・トルエン : 14部
・ポリメタクリル酸メチル : 2部
・カーボンブラック(VXC72:キャボット製) :0.12部
フェライト粒子を除く上記材料とガラスビーズ(直径1mm、トルエンと同量)とを混合し、関西ペイント社製サンドミルを用いて回転速度1200rpmで30分間攪拌し、分散液を得た。この分散液とフェライト粒子とを真空脱気型ニーダーに入れ、攪拌しながら減圧し乾燥させることにより、樹脂被覆キャリアを得た。
【0275】
[トナー(2)~(27)及び現像剤(2)~(27)の調製]
トナー(1)の調製と同様にして、但し複合樹脂粒子分散液及びスチレン系樹脂粒子分散液を表3に記載の通りに変更して、トナー(2)~(27)及び現像剤(2)~(27)を調製した。
【0276】
トナー(2)~(27)の温度T1及び温度T2を既述の測定方法によって求めたところ、トナー(2)~(27)はすべて式1「10℃≦T1-T2」を満足していた。
【0277】
[比較用のトナー(c1)~(c3)及び現像剤(c1)~(c3)の調製]
トナー(1)の調製と同様にして、但し複合樹脂粒子分散液及びスチレン系樹脂粒子分散液を表3に記載の通りに変更して、トナー(c1)~(c3)及び現像剤(c1)~(c3)を調製した。
【0278】
[圧力応答性相転移の評価]
トナーが圧力によって相転移しやすいことを示す指標である温度差(T1-T3)を求めた。各トナーを試料にして、フローテスター(島津製作所製、CFT-500)にて、温度T及び温度Tを測定し、温度差(T1-T3)を算出した。表7に温度差(T1-T3)を示す。
【0279】
[接着性の評価]
印刷物の製造装置として、図2に示す形態の装置を用意した。すなわち、記録媒体への本実施形態に係るトナーの配置と有色画像形成とを一括で行う5連タンデム方式且つ中間転写方式の印刷手段と、折り装置及び加圧装置を有する圧着手段と、を備える印刷物の製造装置を用意した。
印刷手段が有する5つの現像器にそれぞれ、本実施形態に係るトナー(又は比較用のトナー)、イエロートナー、マゼンタトナー、シアントナー及びブラックトナーを入れた。イエロートナー、マゼンタトナー、シアントナー及びブラックトナーは、富士ゼロックス社製の市販品を使用した。
記録媒体として富士ゼロックス社製のハガキ用紙V424を用意した。
ハガキ用紙に形成する画像は、黒色文字とフルカラー写真画像とが混在した面積密度30%の画像とし、ハガキ用紙の片面に形成した。
本実施形態に係るトナー(又は比較用のトナー)の付与量は、ハガキ用紙の画像形成面の画像形成領域に、3g/mとした。
折り装置は、画像形成面が内側になるようにハガキ用紙を二つ折りにする装置とした。
加圧装置は、圧力90MPaとした。
上記の装置及び条件で、画像形成面が内側になるように二つ折りにされ、且つ画像形成面同士が接着されたハガキを連続して10通作製した。
10通目のハガキを長辺方向に幅15mmで裁断し長方形の試験片を作製して、90度剥離試験を行った。90度剥離試験の剥離速度は20mm/分とし、測定開始後10mmから50mmまでの荷重(N)を0.4mm間隔で採取し、その平均を算出し、更に試験片3枚の荷重(N)を平均した。剥離に要する荷重(N)を下記のとおり分類した。表7に結果を示す。
【0280】
A:1.0N以上
B:0.8N以上1.0N未満
C:0.6N以上0.8N未満
D:0.4N以上0.6N未満
E:0.4N未満
【0281】
【表7】
【符号の説明】
【0282】
100 配置手段
101 感光体
102 帯電ロール(帯電手段の一例)
103 露光装置(静電荷像形成手段の一例)
104 現像装置(現像手段の一例)
105 転写ロール(転写手段の一例)
106 感光体クリーニング装置(クリーニング手段の一例)
107 定着装置(定着手段の一例)
200 圧着手段
220 折り装置
230 加圧装置
231、232 加圧ロール
P 記録媒体
P1 画像上に本実施形態に係るトナーが付与された記録媒体
P2 折り重なった記録媒体
P3 圧着印刷物
【0283】
300 印刷手段
1T、1Y、1M、1C、1K 感光体
2T、2Y、2M、2C、2K 帯電ロール(帯電手段の一例)
3T、3Y、3M、3C、3K 露光装置(静電荷像形成手段の一例)
4T、4Y、4M、4C、4K 現像装置(現像手段の一例)
5T、5Y、5M、5C、5K 一次転写ロール(一次転写手段の一例)
6T、6Y、6M、6C、6K 感光体クリーニング装置(クリーニング手段の一例)
8T、8Y、8M、8C、8K トナーカートリッジ
10T、10Y、10M、10C、10K ユニット
20 中間転写ベルト(中間転写体の一例)
21 中間転写体クリーニング装置
22 駆動ロール
23 支持ロール
24 対向ロール
26 二次転写ロール(二次転写手段の一例)
28 熱定着装置(熱定着手段の一例)
【0284】
500 プロセスカートリッジ
501 感光体
502 帯電ロール(帯電手段の一例)
503 露光装置(静電荷像形成手段の一例)
504 現像装置(現像手段の一例)
505 転写装置(転写手段の一例)
506 感光体クリーニング装置(クリーニング手段の一例)
516 取り付けレール
517 筐体
518 露光のための開口部
図1
図2
図3