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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 25/07 20060101AFI20231129BHJP
   H01L 25/18 20230101ALI20231129BHJP
【FI】
H01L25/04 C
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019133361
(22)【出願日】2019-07-19
(65)【公開番号】P2021019063
(43)【公開日】2021-02-15
【審査請求日】2022-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】仲村 秀世
【審査官】高橋 優斗
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/192298(WO,A1)
【文献】特開2017-228694(JP,A)
【文献】特開平10-056131(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L25/00-25/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ制御電極を有する複数の半導体チップと、
前記複数の半導体チップを一方の主面に搭載した絶縁回路基板と、
前記絶縁回路基板の前記一方の主面と対向して配置されたプリント基板と、
前記制御電極のいずれか1つに電気的に接続された複数の制御配線と、
を備え、
前記複数の半導体チップ、前記絶縁回路基板、前記プリント基板を用いて3相分の上下アームを構成し、
前記プリント基板が、
絶縁層と、
前記絶縁層の一方の主面に配列された複数の上側中継パターン層と、
前記絶縁層の前記一方の主面に、前記上側中継パターン層の配列に並行して配置された上側共通パターン層と、
前記絶縁層の一方の主面とは反対側の他方の主面に、前記上側中継パターン層に対向して配列され、且つ前記上側中継パターン層とそれぞれ個別に同電位となる複数の下側中継パターン層と、
前記絶縁層の前記他方の主面に、前記上側共通パターン層に対向して前記下側中継パターン層の配列に並行して配置され、且つ前記上側共通パターン層と同電位となる下側共通パターン層とを有し、
前記制御配線の一部が、前記上側中継パターン層と前記上側共通パターン層との間の領域、又は前記下側中継パターン層と前記下側共通パターン層との間の領域にそれぞれ設けられている
ことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記半導体チップのいずれか1つに電気的に接続されたセンス配線を複数有し、
前記センス配線の一部が、前記絶縁層を介して前記制御配線に対向する領域に設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記プリント基板が、前記絶縁層の前記一方の主面に、前記上側中継パターン層の配列に並行して配列された複数の制御端子接続パターン層を更に含み、
前記制御配線が、前記制御端子接続パターン層と、前記半導体チップの制御電極に接続されたピンとを接続する
ことを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記プリント基板が、前記絶縁層の一方の主面に、前記制御端子接続パターン層の配列と前記上側中継パターン層の配列との間において配列された複数の上側補助パターン層を更に含み、
前記制御配線が、前記上側補助パターン層の間の領域を通過する
ことを特徴とする請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記プリント基板が、前記絶縁層の他方の主面に、前記下側中継パターン層の配列に並行して、前記上側補助パターン層の配列に対向して配列され、前記上側補助パターン層と同電位となる複数のセンス端子接続パターン層を更に含み、
前記センス配線が、前記センス端子接続パターン層と、前記下側共通パターン層とを接続する
ことを特徴とする請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記プリント基板が、前記絶縁層の前記他方の主面に、前記センス端子接続パターン層の配列と並行して、前記制御端子接続パターン層の配列に対向する領域に配列され、前記制御端子接続パターン層と同電位となる複数の下側補助パターン層を更に含むことを特徴とする請求項5に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記プリント基板を貫通し、前記制御端子接続パターン層及び前記下側補助パターン層に接続された制御端子と、
前記プリント基板を貫通し、前記センス端子接続パターン層及び前記上側補助パターン層に接続されたセンス端子と、
を更に備えることを特徴とする請求項6に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記絶縁回路基板は、一方の主面に、第1パターン層、第2パターン層、第3パターン層及び基板側共通パターン層を有し、
前記第1パターン層の前記絶縁回路基板側とは反対側の一方の主面には、第1相の下アーム側の前記半導体チップを有し、
前記第2パターン層の前記絶縁回路基板側とは反対側の一方の主面には、第2相の下アーム側の前記半導体チップを有し、
前記第3パターン層の前記絶縁回路基板側とは反対側の一方の主面には、第3相の下アーム側の前記半導体チップを有し、
前記基板側共通パターン層の前記絶縁回路基板側とは反対側の一方の主面には、前記第1~第3相の上アーム側の前記半導体チップを有し、
前記第1相の下アーム側の前記半導体チップ、前記第2相の下アーム側の前記半導体チップ及び前記第3相の下アーム側の前記半導体チップが、前記上側共通パターン層及び前記下側共通パターン層と電気的に接続され、
前記第1相~第3相の上アーム側の前記半導体チップが、前記複数の上側中継パターン層及び前記複数の下側中継パターン層とそれぞれ電気的に接続されている
ことを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項9】
側面が前記上側中継パターン層および前記下側中継パターン層に接続し、一端が前記第1相~第3相の上アーム側のいずれか1つの前記半導体チップのプリント基板側の主面に設けられた電極上に接続する第1の主電流ピンと、
側面が前記上側共通パターン層および前記下側共通パターン層に接続し、一端が前記第1相~第3相の下アーム側のいずれか1つの前記半導体チップのプリント基板側の主面に設けられた電極上に接続する第2の主電流ピンと、
を更に備えることを特徴とする請求項8に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記絶縁回路基板は、一方の主面に、第1パターン層、第2パターン層、第3パターン層及び基板側共通パターン層を有し、
前記第1パターン層の前記絶縁回路基板側とは反対側の一方の主面には、第1相の下アーム側の前記半導体チップを有し、
前記第2パターン層の前記絶縁回路基板側とは反対側の一方の主面には、第2相の下アーム側の前記半導体チップを有し、
前記第3パターン層の前記絶縁回路基板側とは反対側の一方の主面には、第3相の下アーム側の前記半導体チップを有し、
前記基板側共通パターン層の前記絶縁回路基板側とは反対側の一方の主面には、前記第1~第3相の上アーム側の前記半導体チップを有し、
前記第1相の下アーム側の前記半導体チップ、前記第2相の下アーム側の前記半導体チップ及び前記第3相の下アーム側の前記半導体チップが、前記上側共通パターン層及び前記下側共通パターン層と電気的に接続され、
前記第1相~第3相の上アーム側の前記半導体チップが、前記複数の上側中継パターン層及び前記複数の下側中継パターン層とそれぞれ電気的に接続され、
側面が前記上側中継パターン層および前記下側中継パターン層に接続し、一端が前記第1相~第3相の上アーム側のいずれか1つの前記半導体チップのプリント基板側の主面に設けられた電極上に接続する第1の主電流ピンと、
側面が前記上側共通パターン層および前記下側共通パターン層に接続し、一端が前記第1相~第3相の下アーム側のいずれか1つの前記半導体チップのプリント基板側の主面に設けられた電極上に接続する第2の主電流ピンと、
前記絶縁回路基板の前記一方の主面とは反対側の他方の主面に配置された導電層と、
前記第1パターン層の前記一方の主面に接続された第1出力端子と、
前記第2パターン層の前記一方の主面に接続された第2出力端子と、
前記第3パターン層の前記一方の主面に接続された第3出力端子と、
前記上アーム側の前記半導体チップに導電的に接続された高電位側端子と、
前記下アーム側の前記半導体チップに導電的に接続された低電位側端子と、
を更に備え、
前記第1~第3出力端子の一端、前記制御端子の一端、前記センス端子の一端、前記高電位側端子の一端、前記低電位側端子の一端および前記導電層の下面を除いて封止する封止樹脂を備えることを特徴とする請求項に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力用の半導体チップが搭載された絶縁回路基板と、プリント基板とを有する電力用の半導体装置(半導体モジュール)に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電力用の半導体チップが搭載された絶縁回路基板と、プリント基板とを有する電力用の半導体装置が知られている。
【0003】
特許文献1には、3相のハーフブリッジ回路を構成する半導体装置が開示されている。特許文献2には、1相のハーフブリッジ回路を構成する半導体装置が開示されている。特許文献3には、封止樹脂の線膨張係数を、電極端子や導体層との相性を優先し、基材よりも、導体層及び電極端子に近い値に設定することが開示されている。特許文献4には、エポキシ系樹脂の線膨張係数の適正領域が開示されている。特許文献5には、6イン(in)1構造の半導体モジュールが開示されている。特許文献6には、6in1構造の電力用半導体モジュールが開示され、更に、無機粉末としてアルミナ粉末を含有するエポキシ樹脂絶縁シートが開示されている。特許文献7~10及び非特許文献1には、電力用の半導体チップが搭載された半導体モジュールが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2013/118415号
【文献】国際公開第2014/185050号
【文献】特開2015-41716号公報
【文献】特開2006-179732号公報
【文献】国際公開第2014/136271号
【文献】特開2017-108187号公報
【文献】国際公開第2014/061211号
【文献】国際公開第2013/146212号
【文献】国際公開第2013/145619号
【文献】国際公開第2013/145620号
【非特許文献】
【0005】
【文献】梨子田典弘,日向裕一朗,堀尾真史著,「All-SiCモジュール技術」,富士電機技報,2012年,vol.85,no.6,p.403-407
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1~10及び非特許文献1に記載の半導体装置では、3相分の上下アームを構成する場合に、半導体チップの制御電極に電気的に接続される制御配線(ゲート配線)の引き回しについて何ら考慮されていない。
【0007】
上記課題に鑑み、本発明は、3相分の上下アームを構成する場合に、半導体チップの制御電極に電気的に接続される制御配線を効率よく引き回し、浮遊インダクタンスを低減することができる半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、それぞれ制御電極を有する複数の半導体チップと、複数の半導体チップを一方の主面に搭載した絶縁回路基板と、絶縁回路基板の一方の主面と対向して配置されたプリント基板と、制御電極のいずれか1つに電気的に接続された複数の制御配線と、を備え、複数の半導体チップ、絶縁回路基板、プリント基板を用いて3相分の上下アームを構成し、プリント基板が、絶縁層と、絶縁層の一方の主面に配列された複数の上側中継パターン層と、絶縁層の一方の主面に、上側中継パターン層の配列に並行して配置された上側共通パターン層と、絶縁層の一方の主面とは反対側の他方の主面に、上側中継パターン層に対向して配列され、且つ上側中継パターン層とそれぞれ個別に同電位となる複数の下側中継パターン層と、絶縁層の他方の主面に、上側共通パターン層に対向して下側中継パターン層の配列に並行して配置され、且つ上側共通パターン層と同電位となる下側共通パターン層とを有し、制御配線の一部が、上側中継パターン層と上側共通パターン層との間の領域に設けられている半導体装置であることを要旨とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、3相分の上下アームを構成する場合に、半導体チップの制御電極に電気的に接続される制御配線を効率よく引き回し、浮遊インダクタンスを低減することができる半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る半導体装置の上面側の斜視図である。
図2】実施形態に係る半導体装置の下面側の斜視図である。
図3】実施形態に係る半導体装置の上面図である。
図4図3のA-A方向から見た断面図である。
図5】実施形態に係る半導体装置の斜視図である。
図6】実施形態に係る半導体装置の絶縁回路基板の上面図である。
図7】実施形態に係る半導体装置のプリント基板の下側配線層の上面図である。
図8】実施形態に係る半導体装置のプリント基板の上側配線層の上面図である。
図9】実施形態に係る半導体装置の絶縁回路基板、プリント基板の下側配線層及び上側配線層を重ね合わせた上面図である。
図10】実施形態に係る半導体装置の等価回路図である。
図11】実施形態に係る半導体装置の組立方法を説明するための概略図である。
図12】比較例に係る半導体装置の上面側の斜視図である。
図13】比較例に係る半導体装置の下面側の斜視図である。
図14】比較例に係る半導体装置の側面図である。
図15】実施形態の第1変形例に係る半導体装置の絶縁回路基板の上面図である。
図16】実施形態の第2変形例に係る半導体装置の絶縁回路基板の上面図である。
図17】実施形態の第3変形例に係る半導体装置の絶縁回路基板の上面図である。
図18】実施形態の第3変形例に係る半導体装置のプリント基板の上側配線層の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下において、図面を参照して実施形態を説明する。以下の説明で参照する図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0012】
また、本明細書において、半導体チップ(半導体素子)の「第1主電極」とは、半導体チップが電界効果トランジスタ(FET)や静電誘導トランジスタ(SIT)の場合には、ソース電極又はドレイン電極のいずれか一方となる、主電流が流入若しくは流出する電極を意味する。半導体チップの「第1主電極」とは、半導体チップに主電流が流入若しくは流出する電極を意味する。例えば、半導体チップが絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)の場合には、「第1主電極」はエミッタ電極又はコレクタ電極のいずれか一方となる電極に対応する。半導体チップが静電誘導サイリスタ(SIサイリスタ)やゲートターンオフサイリスタ(GTO)の場合には、「第1主電極」はアノード電極又はカソード電極のいずれか一方となる電極を意味する。
【0013】
また、半導体チップの「第2主電極」とは、半導体チップがFETやSITであれば、上記第1主電極とはならないソース電極又はドレイン電極のいずれか一方となる電極を意味する。IGBTにおいては、「第2主電極」は上記第1主電極とはならないエミッタ電極又はコレクタ電極のいずれか一方となる電極を意味する。SIサイリスタやGTOにおいては、「第2主電極」は上記第1主電極とはならないアノード電極又はカソード電極のいずれか一方となる電極を意味する。
【0014】
このように、半導体チップの「第1主電極」がソース電極であれば、「第2主電極」はドレイン電極を意味する。半導体チップの「第1主電極」がエミッタ電極であれば、「第2主電極」はコレクタ電極を意味する。半導体チップの「第1主電極」がアノード電極であれば、「第2主電極」はカソード電極を意味する。MISFET等で対称構造の半導体チップとなる場合は、バイアス関係を交換すれば「第1主電極」の機能と「第2主電極」の機能を交換可能な場合もある。
【0015】
また、本明細書における上下等の方向の定義は、単に説明の便宜上の定義であって、本発明の技術的思想を限定するものではない。例えば、以下の説明における「上側配線層」や「下側配線層」における「上」「下」は単なる便宜上の選択に過ぎず、地球の重力の方向に対して定義されるものではない。よって、対象を90°回転して観察すれば上下は左右に変換して読まれ、180°回転して観察すれば上下は反転して読まれることは勿論である。
【0016】
<半導体装置>
実施形態に係る半導体装置(半導体モジュール)は、図1図3に示すように、略直方体形状の封止樹脂1と、封止樹脂1の長手方向において対向する側面に配置された取り付け用フランジ2a,2bとを有する。封止樹脂1としては、例えば耐熱性が高く硬質な熱硬化性樹脂等の樹脂材料が使用可能であり、具体的にはエポキシ樹脂、マレイミド樹脂、シアネート樹脂等が使用可能である。取り付け用フランジ2a,2bは、実施形態に係る半導体装置を冷却フィン(不図示)等に取り付ける際に使用される。封止樹脂1の下面の中央部には、絶縁回路基板3の下面側の導電層31が露出する。
【0017】
更に、実施形態に係る半導体装置は、封止樹脂1の上面から突出するようにそれぞれ設けられた、複数(6本)の棒状の制御端子11a,11b,11c,11d,11e,11f、複数(6本)の棒状のセンス端子12a,12b,12c,12d,12e,12f、複数(6本)の棒状の出力端子13a,13b,13c,13d,13e,13f、複数(2本)の棒状の高電位側端子(P端子)14a,14b及び複数(2本)の棒状の低電位側端子(N端子)15a,15bを備える。封止樹脂1は、第1~第3出力端子13a,13b,13c,13d,13e,13fの一端、制御端子11a,11b,11c,11d,11e,11fの一端、センス端子12a,12b,12c,12d,12e,12fの一端、高電位側端子(P端子)14a,14bの一端、低電位側端子(N端子)15a,15bの一端および導電層31の下面を除いて封止する。
【0018】
制御端子11a~11fは、封止樹脂1の長手方向に沿って1列に配列されている。図1以降において、制御端子11a~11fの配列方向をX軸方向と定義し、X軸方向に直交する方向をY軸方向と定義し、X軸方向及びY軸方向がなす面に直交し、実施形態に係る半導体装置の上方に向かう方向をZ軸方向と定義する。センス端子12a~12f及び出力端子13a~13fは、X軸方向に沿って1列に配列されている。P端子14a,14b及びN端子15a,15bは、封止樹脂1の長手方向の一端側において、Y軸方向に配列されている。
【0019】
制御端子11a~11f、センス端子12a~12f、出力端子13a~13f、P端子14a,14b及びN端子15a,15bの材料としては、銅(Cu)やアルミニウム(Al)等の導電性材料が使用可能である。制御端子11a~11f、センス端子12a~12f、出力端子13a~13f、P端子14a,14b及びN端子15a,15bの形状は、円柱状の他、角柱状、板状、ブロック状等であっても構わない。
【0020】
図3のA-A方向から見た断面図を図4に示し、図4に示す半導体装置から封止樹脂1及び取り付け用フランジ2a,2bを除いた斜視図を図5に示す。図4及び図5に示すように、実施形態に係る半導体装置は、1枚の絶縁回路基板3と、絶縁回路基板3の上面に搭載された複数の電力用の半導体チップ21a~21f,22a~22cと、絶縁回路基板3の上方に配置されたプリント基板4とを備える。絶縁回路基板3、半導体チップ21a~21f,22a~22c及びプリント基板4は、封止樹脂1により封止されている。実施形態に係る半導体装置は、複数の半導体チップ21a~21f,22a~22c、絶縁回路基板3、プリント基板4を用いて3相ブリッジ回路の上下アームを構成する6in1モジュールである。
【0021】
図4及び図5に示すように、絶縁回路基板3は、例えば直接銅接合(DCB)基板や活性ろう付け(AMD)基板等であってもよい。絶縁回路基板3は、1枚の絶縁基板30と、絶縁基板30の下面に配置された導電層31と、絶縁基板30の上面に配置された配線層32とを備える。絶縁基板30は、例えば酸化アルミニウム(Al)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化珪素(Si)等からなるセラミクス基板で構成できる。導電層31及び配線層32の材料としては、例えば銅(Cu)やアルミニウム(Al)等の導体箔が使用可能である。図4では、導電層31が配線層32よりも厚い場合を例示するが、導電層31は配線層32よりも薄くてもよく、導電層31と配線層32とが同じ厚さであってもよい。
【0022】
図4及び図5に示すように、プリント基板4は、絶縁層40と、絶縁層40の下面に配置された下側配線層41と、絶縁層40の上面に配置された上側配線層42とを備える。絶縁層40は、例えばAl、AlN、Si等のセラミクスや樹脂で構成できる。封止樹脂1の硬化温度から常温までの平均線膨張係数が、絶縁層40の平均線膨張係数と、下側配線層41及び上側配線層42の平均線膨張係数の間となるように、封止樹脂1、絶縁層40、下側配線層41及び上側配線層42の材料をそれぞれ選択することが好ましい。これにより、2in1モジュールよりもサイズの大きいプリント基板4の熱応力や反りを低減することができる。
【0023】
プリント基板4には、絶縁層40、下側配線層41及び上側配線層42を貫通する複数の貫通孔(スルーホール)が設けられている。プリント基板4の複数の貫通孔には、制御端子11a~11f、センス端子12a~12f、出力端子13a~13f、P端子14a,14b及びN端子15a,15bがそれぞれ挿入され、接合されている。更に、プリント基板4の複数の貫通孔には、多数のピン(導電ポスト)6がそれぞれ挿入され、接合されている。
【0024】
図4及び図5に示した絶縁回路基板3の配線層32は、図6に示すように、基板側共通パターン層(P端子接続パターン層)35aと、N端子支持パターン層35bと、6つの制御端子支持パターン層32a,32b,32c,32d,32e,32fと、6つのセンス端子支持パターン層33a,33b,33c,33d,33e,33fと、3つの出力端子接続パターン層(第1~第3パターン)34a,34b,34cのパターンを含む。
【0025】
P端子接続パターン層35aは、櫛歯形の平面パターン層を有し、X軸方向に延伸して配置されている。P端子接続パターン層35aには、2本のP端子14a,14bが垂直方向(Z軸方向)に接合されている。P端子14a,14bは、3相分の上アームに共通に使用されるため、2in1モジュールを3個接続するための専用配線は不要となる。
【0026】
出力端子接続パターン層34a~34cは、略矩形の平面パターン層をそれぞれ有し、P端子接続パターン層35aに沿って、X軸方向に一列に配列されている。出力端子接続パターン層34aには、2本の出力端子13a,13bが垂直方向(Z軸方向)に接合されている。出力端子接続パターン層34bには、2本の出力端子13c,13dが垂直方向(Z軸方向)に接合されている。出力端子接続パターン層34cには、2本の出力端子13e,13fが垂直方向(Z軸方向)に接合されている。
【0027】
N端子支持パターン層35bは、略矩形の平面パターン層を有する。N端子支持パターン層35bには、2本のN端子15a,15bが垂直方向(Z軸方向)に接合されている。
【0028】
制御端子支持パターン層32a~32fは、P端子接続パターン層35aにより構成される櫛歯形の歯の間に配置されている。制御端子支持パターン層32a~32fは、X軸方向に一列に配列されている。制御端子支持パターン層32a~32fには、制御端子11a~11fが垂直方向(Z軸方向)にそれぞれ1本ずつ接合されている。
【0029】
センス端子支持パターン層33a~33fは、P端子接続パターン層35aにより構成される櫛歯形の歯の間に配置されている。センス端子支持パターン層33a~33fは、制御端子支持パターン層32a~32fの配列に並行して、X軸方向に一列に配列されている。センス端子支持パターン層33a~33fには、センス端子12a~12fが垂直方向(Z軸方向)にそれぞれ1本ずつ接合されている。
【0030】
図6に示すように、半導体チップ21a~21f,22a~22cは、P端子接続パターン層35aの上面に、はんだ等の接合材により接合されている。半導体チップ21g,21h,22dは、出力端子接続パターン層34aの上面に、はんだ等の接合材により接合されている。半導体チップ21i,21j,22eは、出力端子接続パターン層34bの上面に、はんだ等の接合材により接合されている。半導体チップ21k,21l,22fは、出力端子接続パターン層34cの上面に、はんだ等の接合材により接合されている。
【0031】
半導体チップ21a~21lとして、例えばIGBT、MOSトランジスタ、SIサイリスタ、GTOサイリスタ等が採用可能であるが、ここでは半導体チップ21a~21lがIGBTの場合を例示する。半導体チップ21a~21lは、例えばシリコン(Si)基板で構成してもよく、炭化珪素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)等のワイドバンドギャップ半導体基板で構成してもよい。
【0032】
半導体チップ21a~21lのそれぞれは、上面側にエミッタ電極(第1主電極)及び制御電極(ゲート電極)を有し、下面側にコレクタ電極(第2主電極)を有する。半導体チップ21a~21lのそれぞれの制御電極は、半導体チップ21a~21lのそれぞれの第1主電極と第2主電極の間を流れる主電流を制御する。
【0033】
半導体チップ21a~21lのそれぞれの制御電極には、プリント基板4を介して制御端子11a~11fが電気的に接続されている。半導体チップ21a~21lのそれぞれの制御電極には、制御端子11a~11fを介して外部から所定の電圧が印加される。半導体チップ21a~21lのそれぞれの第1主電極には、プリント基板4を介してセンス端子12a~12fが電気的に接続されている。半導体チップ21a~21lのそれぞれの第1主電極と第2主電極の間を流れる主電流が、センス端子12a~12fを介して外部で測定(モニタリング)される。
【0034】
半導体チップ22a~22fは、例えばショットキーバリアダイオード(SBD)等のダイオード(2端子素子)で構成でき、ここでは半導体チップ22a~22fがSBDの場合を例示する。半導体チップ21a~21l,22a~22fは、下面側にアノード電極を有し、上面側にカソード電極を有する。
【0035】
半導体チップ21a,21b,22aは、U相(第1相)の上アーム側の回路を構成する。半導体チップ21c,21d,22bは、V相(第2相)の上アーム側の回路を構成する。半導体チップ21e,21f,22cは、W相(第3相)の上アーム側の回路を構成する。半導体チップ21g,21h,22dは、U相の下アーム側の回路を構成する。半導体チップ21i,21j,22eは、V相の下アーム側の回路を構成する。半導体チップ21k,21l,22fは、W相の下アーム側の回路を構成する。なお、各相の上下アームをそれぞれ構成する半導体チップの数は特に限定されない。
【0036】
図7は、図4及び図5に示したプリント基板4の上側配線層42を省略し、プリント基板4の絶縁層40を上方から見た場合の下側配線層41を示す。下側配線層41は、図7に示すように、6つの下側補助パターン層41a,41b,41c,41d,41e,41fと、6つのセンス端子接続パターン層42a,42b,42c,42d,42e,42fと、3つの下側中継パターン層43a,43b,43cと、下側共通パターン層(下側N端子接続パターン層)44と、下側P端子接続パターン層45を有する。
【0037】
下側補助パターン層41a~41fは、X軸方向に1列に配列されている。下側補助パターン層41a~41fのそれぞれの貫通孔には、制御端子11a~11fが、下側補助パターン層41a~41fの主面に垂直方向(Z軸方向)に挿入され、接合されている。
【0038】
センス端子接続パターン層42a~42fは、下側補助パターン層41a~41fの配列に並列して、X軸方向に1列に配列されている。センス端子接続パターン層42a~42fのそれぞれの貫通孔には、センス端子12a~12fが、センス端子接続パターン層42a~42fの主面に垂直方向(Z軸方向)に挿入されている。
【0039】
下側中継パターン層43a~43cは、下側補助パターン層41a~41fの配列及びセンス端子接続パターン層42a~42fの配列に並列して、X軸方向に1列に配列されている。下側中継パターン層43aの複数の貫通孔には、棒状の主電流ピン(導電ポスト)62a~62d,63a,63b,64a~64fが、下側中継パターン層43aの主面に垂直方向(Z軸方向)にそれぞれ挿入され、接合されている。主電流ピン62a~62d,63a,63b,64a~64fの側面が、下側中継パターン層43aに接続されている下側中継パターン層43bの複数の貫通孔には、棒状の主電流ピン(導電ポスト)62e~62h,63c,63d,64g~64lが、下側中継パターン層43bの主面に垂直方向(Z軸方向)にそれぞれ挿入され、接合されている。主電流ピン62e~62h,63c,63d,64g~64lの側面が、下側中継パターン層43bに接続されている。下側中継パターン層43cの複数の貫通孔には、棒状の主電流ピン(導電ポスト)62i~62l,63e,63f,64m~64rが、下側中継パターン層43cの主面に垂直方向(Z軸方向)にそれぞれ挿入され、接合されている。主電流ピン62i~62l,63e,63f,64m~64rの側面が、下側中継パターン層43cに接続されている。
【0040】
主電流ピン62a~62lは、図6に示した半導体チップ21a~21fの第1主電極に垂直方向(Z軸方向)に2本ずつ接合されている。主電流ピン63a~63fは、図6に示した半導体チップ22a~22cのカソード電極に垂直方向(Z軸方向)に2本ずつ接合されている。主電流ピン64a~64fは、図6に示した出力端子接続パターン層34aに垂直方向(Z軸方向)に接合されている。主電流ピン64g~64lは、図6に示した出力端子接続パターン層34bに垂直方向(Z軸方向)に接合されている。主電流ピン64m~64rは、図6に示した出力端子接続パターン層34cに垂直方向(Z軸方向)に接合されている。
【0041】
下側共通パターン層44は、下側中継パターン層43a~43cの配列と並行して、X軸方向に延在するように配置されている。下側共通パターン層44の複数の貫通孔には、N端子15a,15b及び主電流ピン62m~62x,63g~63lが、下側共通パターン層44の主面に垂直方向(Z軸方向)に挿入され、接合されている。N端子15a,15bの側面及び第2の主電流ピン62m~62x,63g~63lの側面は、上側共通パターン層54および下側共通パターン層44に接続されている。N端子15a,15bは、3相分の下アームに共通に使用されるため、2in1モジュールを3個接続するための専用配線は不要となる。
【0042】
主電流ピン62m~62xは、図6に示した半導体チップ21g~21lの第1主電極に垂直方向(Z軸方向)に2本ずつ接合されている。主電流ピン63g~63lは、図6に示した半導体チップ22d~22fのカソード電極に垂直方向(Z軸方向)に2本ずつ接合されている。
【0043】
プリント基板4の上面に絶縁層40が露出する部分に位置する複数の貫通孔には、棒状の制御ピン61a~61lが、主面に垂直方向(Z軸方向)に挿入され、接合されている。制御ピン61a~61lは、図6に示した半導体チップ21a~21lの制御電極に垂直方向(Z軸方向)に1本ずつ接合されている。更に、絶縁層40の複数の貫通孔には、出力端子13a~13fが、主面に垂直方向(Z軸方向)に挿入され、接合されている。
【0044】
制御ピン61a~61l及び主電流ピン62a~62x,63a~63l,64a~64r,65a~65fの材料としては、CuやAl等の導電性材料が使用可能である。制御ピン61a~61l及び主電流ピン62a~62x,63a~63l,64a~64r,65a~65fの形状は、円柱状の他、角柱状、板状、ブロック状等であっても構わない。制御ピン61a~61l及び主電流ピン62a~62x,63a~63l,64a~64r,65a~65fの長さは互いに同一でもよく、互いに異なっていてもよい。
【0045】
センス端子接続パターン層42a~42fのうち、センス端子接続パターン層42a,42c,42eは、センス配線46a,46c,46eを介して下側中継パターン層43a~43cにそれぞれ接続されている。一方、センス端子接続パターン層42b,42d,42fは、センス配線46b,46d,46fを介して下側共通パターン層44にそれぞれ接続されている。センス配線46b,46dは、下側中継パターン層43a~43cの間を通過するように設けられている。センス配線46fは、下側中継パターン層43cと、下側P端子接続パターン層45との間を通過するように設けられている。そして、センス配線46b,46d,46fの一部は、下側中継パターン層43a~43cと、下側共通パターン層44との間を通過するように設けられている。半導体装置は、半導体チップのいずれか1つに電気的に接続されたセンス配線を複数有し、センス配線の一部が、絶縁層を介して制御配線に対向する領域に設けられている。
【0046】
また、図4及び図5に示したプリント基板4の上側配線層42は、図8に示すように、6つの制御端子接続パターン層51a,51b,51c,51d,51e,51fと、6つの上側補助パターン層52a,52b,52c,52d,52e,52fと、3つの上側中継パターン層53a,53b,53cと、上側共通パターン層(上側N端子接続パターン層)54と、上側P端子接続パターン層55とを含む。
【0047】
制御端子接続パターン層51a~51fは、X軸方向に1列に配列されている。制御端子接続パターン層51a~51fは、絶縁層40を挟んで図7に示した下側補助パターン層41a~41fと対向する領域に設けられている。制御端子接続パターン層51a~51fのそれぞれの貫通孔には、制御端子11a~11fが、制御端子接続パターン層51a~51fの主面に垂直方向(Z軸方向)に挿入され、接合されている。制御端子接続パターン層51a~51fは、制御端子11a~11fにより下側補助パターン層41a~41fと電気的に接続され、下側補助パターン層41a~41fと同電位となる。
【0048】
制御端子接続パターン層51a~51fは、制御配線56a~56fを介して制御ピン61a~61lにそれぞれ接続されている。制御配線56a~56fは、絶縁層40を介して図7に示したセンス配線46a~46fと対向する領域に設けられている。制御配線56a~56fの制御ピン61a~61l側は2本に分岐して、制御ピン61a~61lを2本ずつ、等しい長さで配線(等長配線)している。制御配線56a,56c,56eは、上側補助パターン層52a~52fと上側中継パターン層53a~53cとの間の領域を通過するように設けられている。
【0049】
制御配線56bは、上側補助パターン層52b,52cの間を通過すると共に、上側中継パターン層53a,53bの間を通過するように設けられている。制御配線56dは、上側補助パターン層52d,52eの間を通過すると共に、上側中継パターン層53b,53cの間を通過するように設けられている。制御配線56fは、上側補助パターン層52fと上側P端子接続パターン層55の間を通過すると共に、上側中継パターン層53cと上側P端子接続パターン層55との間を通過するように設けられている。そして、そして、制御配線56b,56d,56fは、上側中継パターン層53a~53cと上側共通パターン層54との間の領域を通過するように設けられている。
【0050】
上側補助パターン層52a~52fは、制御端子接続パターン層51a~51fの配列と並行して、X軸方向に1列に配列されている。上側補助パターン層52a~52fは、絶縁層40を介して図7に示したセンス端子接続パターン層42a~42fと対向する領域に設けられている。上側補助パターン層52a~52fの貫通孔にはセンス端子12a~12fが、上側補助パターン層52a~52fの主面に垂直方向(Z軸方向)に挿入され、接合されている。上側補助パターン層52a~52fは、センス端子12a~12fを介してセンス端子接続パターン層42a~42fとそれぞれ個別に電気的に接続され、同電位となる。
【0051】
上側中継パターン層53a~53cは、上側補助パターン層52a~52fの配列と並行して、X軸方向に1列に配列されている。上側中継パターン層53a~53cは、絶縁層40を介して図7に示した下側中継パターン層43a~43cと対向する領域に設けられている。上側中継パターン層53a~53cの複数の貫通孔には、主電流ピン62a~62l,63a~63f,64a~64rが、上側中継パターン層53a~53cの主面に垂直方向(Z軸方向)に挿入され、接合されている。主電流ピン62a~62lの側面が、上側中継パターン層53aおよび下側中継パターン層43aに、主電流ピン63a~63fの側面が、上側中継パターン層53bおよび下側中継パターン層43bに,主電流ピン64a~64rの側面が、上側中継パターン層53cおよび下側中継パターン層43cにそれぞれ接続されている。上側中継パターン層53a~53cは、主電流ピン62a~62l,63a~63f,64a~64rを介して、下側中継パターン層43a~43cとそれぞれ個別に電気的に接続され、同電位となる。
【0052】
上側共通パターン層54は、上側中継パターン層53a~53cの配列に並行して、X軸方向に延伸するように配置されている。上側共通パターン層54は、絶縁層40を介して図7に示した下側共通パターン層44と対向する領域に設けられている。上側共通パターン層54の複数の貫通孔には、N端子15a,15b及び主電流ピン62m~62x,63g~63lが、上側共通パターン層54の主面に垂直方向(Z軸方向)に挿入され、接合されている。N端子15a,15bの側面及び主電流ピン62m~62x,63g~63lの側面が、上側共通パターン層54および下側共通パターン層44に接続されている。上側共通パターン層54は、N端子15a,15b及び主電流ピン62m~62x,63g~63lを介して下側共通パターン層44と電気的に接続され、同電位となる。
【0053】
図9は、図6に示した配線層32、図7に示した下側配線層41、図8に示した上側配線層42を重ね合わせた上面図である。図9においては模式的に、配線層32を実線で示し、下側配線層41を一点鎖線で示し、上側配線層42を二点鎖線で示している。
【0054】
図10に示すように、実施形態に係る半導体装置は3相ブリッジ回路を構成する。P端子にMOSトランジスタT1,T3,T5のドレイン電極(第2主電極)が接続され、N端子にMOSトランジスタT2,T4,T6のソース電極(第1主電極)が接続されている。MOSトランジスタT1のソース電極及びMOSトランジスタT2のドレイン電極が出力端子U及びセンス端子S1に接続されている。MOSトランジスタT3のソース電極及びMOSトランジスタT4のドレイン電極が出力端子V及びセンス端子S3に接続されている。MOSトランジスタT5のソース電極及びMOSトランジスタT6のドレイン電極が出力端子W及びセンス端子S5に接続されている。MOSトランジスタT1~T6には還流ダイオード(FWD)D1~D6が逆並列接続されている。MOSトランジスタT2,T4,T6のソース電極には、センス端子S2,S4,S6がそれぞれ接続されている。
【0055】
MOSトランジスタT1が図6に示した電力用の半導体チップ21a,21bに対応し、還流ダイオードD1が図6に示した半導体チップ22aに対応する。MOSトランジスタT2が図6に示した電力用の半導体チップ21g,21hに対応し、還流ダイオードD2が図6に示した半導体チップ22dに対応する。
【0056】
MOSトランジスタT3が図6に示した電力用の半導体チップ21c,21dに対応し、還流ダイオードD3が図6に示した半導体チップ22bに対応する。MOSトランジスタT4が図6に示した電力用の半導体チップ21i,21jに対応し、還流ダイオードD4が図6に示した半導体チップ22eに対応する。
【0057】
MOSトランジスタT5が図6に示した電力用の半導体チップ21e,21fに対応し、還流ダイオードD5が図6に示した半導体チップ22cに対応する。MOSトランジスタT6が図6に示した電力用の半導体チップ21k,21lに対応し、還流ダイオードD6が図6に示した半導体チップ22fに対応する。
【0058】
<半導体装置の組立方法>
次に、実施形態に係る半導体装置の組立方法の一例を説明する。まず、図11の下側に示すように、1枚の絶縁回路基板3を用意する。そして、絶縁回路基板3の上面に、はんだ等の接合材7を介して半導体チップ8を搭載する。図11の半導体チップ8は、図6の半導体チップ21a~21l,22a~22fに対応する。次に、絶縁回路基板3の上面及び半導体チップ21a~21l,22a~22fの上面に、はんだ等の接合材9を搭載する。
【0059】
一方で、図11の上側に示すように、プリント基板4の貫通孔に端子10及びピン6を、プリント基板4の主面に垂直方向に圧入することにより、端子10及びピン6が一体化されたプリント基板4を用意する。図11の端子10は、図5の制御端子11a~11f、センス端子12a~12f、出力端子13a~13f、P端子14a,14b及びN端子15a,15bに対応する。図11のピン6は、図7及び図8の制御ピン61a~61l及び主電流ピン62a~62l,63a~63f,64a~64rに対応する。
【0060】
次に、端子10及びピン6が一体化されたプリント基板4を、接合材9を搭載した絶縁回路基板3上に配置する。そして、加熱炉等により全体を加熱し、接合材7,9を溶融させて一括して接合することにより、図5に示した構造体となる。この際、圧入する端子10及びピン6と、プリント基板4の貫通孔との一方又は両方に錫(Sn)メッキやはんだメッキを施しておくことにより、一括接合の際にメッキが溶けて、端子10及びピン6とプリント基板4の貫通孔も固着する。
【0061】
例えば接合材7,9がはんだからなる場合には、セルフアライメント機構がはたらくので、比較的容易に接続できる。これは、半導体チップ8上の電極パッド内で、溶融したはんだによってピンにかかる表面張力がバランスするように、主に半導体チップ8の方が自動的に動く現象を利用するものである。また、接合材7,9が銀(Ag)等の金属焼結材であり、接合材7,9が溶融しない場合には、画像認識によるアライメント装置を用いてもよい。
【0062】
次に、図5に示した構造体を金型(不図示)にセットし、図1及び図2に示すように樹脂でモールド成型する。樹脂成型の金型は、端子部や冷却面への樹脂の回りこみを防止するため、端子部や冷却面を挟み込むような機構を有していてもよい。特に端子部は、樹脂で被覆されると電気的な接続ができなくなるため、例えばスライド機構を搭載した金型で端子を挟み込んでから成型してもよい。また、Oリング等で端子先端部に樹脂が回りこみにくくしてもよい。また、樹脂成型後にレーザや機械的研磨装置等により、樹脂の薄皮を剥ぎ取るようにしてもよい。この場合、端子には、樹脂と剥離し易いニッケル(Ni)メッキや錫(Sn)メッキ等を施しておいてもよい。一方、樹脂が剥離し易い材料を使う場合には、モジュール本体から端子が抜けるのを防止するため、端子に凹凸等の機械的な噛み合わせ部を設けてもよい。
【0063】
取り付け用フランジ2a,2bは、樹脂成型の際に一体化して固定される。取り付け用フランジ2a,2bは、必要に応じて、成型後に曲げ加工を施してもよい。なお、取り付け用フランジ2a,2bの形状は図1及び図2に示す形状に限定されない。
【0064】
<比較例>
次に、図12図14を参照して、比較例に係る半導体装置を説明する。図12に示すように、比較例に係る半導体装置は、封止樹脂101と、封止樹脂101の上面から突出した主端子111~116及び補助端子121~124とを備える。図13に示すように、比較例に係る半導体装置の下面側には、絶縁回路基板130a,130bが露出する。
【0065】
図14に示すように、比較例に係る半導体装置は、2枚の絶縁回路基板130a,130bを備える。絶縁回路基板130aは、絶縁基板131aと、絶縁基板131aの下面に配置された導電層132aと、絶縁基板131aの上面に配置された配線層133aを含む。絶縁回路基板130bは、絶縁基板131bと、絶縁基板131bの下面に配置された導電層132bと、絶縁基板131bの上面に配置された配線層133bを含む。
【0066】
2枚の絶縁回路基板130a,130bのそれぞれの上面には、複数の半導体チップ140が搭載されている。複数の半導体チップ140のそれぞれの上面には、複数のピン160の一端が接続される。絶縁回路基板130a,130bの上方には、プリント基板150が配置されている。プリント基板150には、主端子111~116及び補助端子121~124が挿入される。更に、プリント基板150には、ピン160の他端が挿入される。
【0067】
比較例に係る半導体装置は、2回路分の半導体チップ140を有する2in1モジュールである。このため、3相分の上下アームを構成するためには、比較例に係る半導体装置のモジュールが3個必要であり、その分、装置への組み付け工数が増加する。更に、比較例に係る半導体装置のモジュール毎に、端子の対地間絶縁距離を確保したり、絶縁基板の額縁状のセラミック露出部や絶縁基板端部の樹脂の厚さを確保したり、或いは取り付け領域を確保したりするため、設置面積が単純に3倍必要となる。また、比較例に係る半導体装置のモジュールの外部で配線するため、配線距離が長くなり、インダクタンスが増加する場合がある。
【0068】
これに対して、実施形態に係る半導体装置によれば、図1図9に示すように、1枚の絶縁回路基板3と1枚のプリント基板4で半導体チップ21a~21l,22a~22fを挟み込むことにより、3相用の6in1モジュールを一体で実現可能となる。この際、2in1モジュールを3個組み合わせる場合と比べて、モジュールごとに必要だった各種絶縁距離、絶縁基板の露出部、その周辺の樹脂、ネジ止め領域等を削減できる。また、2in1モジュールを3個並べた場合と比較して、小型で低インダクタンスとなる6in1モジュールを安価に提供することができる。
【0069】
更に、プリント基板4の下側配線層41のパターン及び上側配線層42のパターンを対向する領域に配置すると共に、下側配線層41及び上側配線層42を同電位とすることにより、浮遊インダクタンスを低減することができる。
【0070】
更に、プリント基板4の下側配線層41のパターン及び上側配線層42のパターンを対向する領域に配置することにより配線の自由度が制約されるが、図8に示すように、制御配線56b,56d,56fを、上側中継パターン層53a~53cと上側共通パターン層54との間の領域を通過するように配置することにより、制御配線56b,56d,56fの長さを短く引き回すことができ、浮遊インダクタンスを低減することができる。
【0071】
更に、図7に示すように、センス配線46b,46d,46fを、下側中継パターン層43a~43cのパターンと下側共通パターン層44のパターンとの間の領域に設けることにより、センス配線46b,46d,46fの長さを短く引き回すことができ、浮遊インダクタンスを低減することができる。
【0072】
<第1変形例>
実施形態の第1変形例に係る半導体装置は、図15に示すように、出力端子13a~13fのX軸方向における位置が、制御端子11a~11f及びセンス端子12a~12fのX軸方向における位置と異なる点が、実施形態に係る半導体装置と異なる。
【0073】
出力端子13a,13bは、制御端子11a及びセンス端子12aを通るY軸方向の直線と、制御端子11b及びセンス端子12bを通るY軸方向の直線との間に位置する。出力端子13c,13dは、制御端子11c及びセンス端子12cを通るY軸方向の直線と、制御端子11d及びセンス端子12dを通るY軸方向の直線との間に位置する。出力端子13e,13fは、制御端子11e及びセンス端子12eを通るY軸方向の直線と、制御端子11f及びセンス端子12fを通るY軸方向の直線との間に位置する。実施形態の第1変形例に係る半導体装置の他の構成は、実施形態に係る半導体装置と同様であるので、重複した説明を省略する。
【0074】
実施形態の第1変形例に係る半導体装置によれば、出力端子13a~13fのX軸方向における位置を、制御端子11a~11f及びセンス端子12a~12fのX軸方向における位置と異ならせることにより、スライド機構を搭載した金型を用いてモールド成型を行う際に、各端子を容易に露出させることができる。
【0075】
<第2変形例>
実施形態の第2変形例に係る半導体装置は、図16に破線で模式的に示すように、絶縁回路基板3の導電層31(図4参照)に、絶縁回路基板3の絶縁基板30を露出する溝部(スリット)91~94を設けている点が、実施形態に係る半導体装置と異なる。
【0076】
溝部91は、N端子支持パターン層35bと出力端子接続パターン層34aとの間の絶縁基板30が露出する領域に対向するように、Y方向に直線状に設けられている。溝部92は、出力端子接続パターン層34a,34bの間の絶縁基板30が露出する領域に対向するように、Y方向に直線状に設けられている。溝部93は、出力端子接続パターン層34b,34cの間の絶縁基板30が露出する領域に対向するように、Y方向に直線状に設けられている。溝部94は、溝部91~93と交差し、P端子接続パターン層35aと出力端子接続パターン層34a~34cとの間の絶縁基板30が露出する領域に対向するように、X方向に直線状に設けられている。なお、溝部91~94の数、形状及び配置位置はこれに限定されない。実施形態の第2変形例に係る半導体装置の他の構成は、実施形態に係る半導体装置と同様であるので、重複した説明を省略する。
【0077】
実施形態の第2変形例に係る半導体装置によれば、絶縁回路基板3の導電層31に、絶縁回路基板3の絶縁基板30を露出する溝部91~94を設けることにより、絶縁回路基板3の反りや熱応力を低減することができる。
【0078】
<第3変形例>
実施形態の第3変形例に係る半導体装置は、図17に示すように、SBDを構成する半導体チップ22a~22fの代わりに、IGBTを構成する半導体チップ21m~21rを用いた点が、実施形態に係る半導体装置と異なる。半導体チップ21a~21rは、SBDを内蔵する。
【0079】
図18に示すように、制御配線56a~56fの一端が3方向に分岐し、制御ピン65a~65fにも接続される。制御配線56a~56fは必ずしも制御ピン61a~61l,65a~65fを等長配線しなくてもよい。制御ピン65a~65fは、図17に示した半導体チップ21m~21rの制御電極に接合される。実施形態の第3変形例に係る半導体装置の他の構成は、実施形態に係る半導体装置と同様であるので、重複した説明を省略する。
【0080】
実施形態の第3変形例に係る半導体装置によれば、SBDを構成する半導体チップを有していなくてもよく、半導体チップ21a~21rがSBDを内蔵していてもよい。
【0081】
(その他の実施形態)
上記のように、本発明は実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0082】
例えば、実施形態に係る半導体装置では、図7に示すように、プリント基板4の下面側にセンス配線46a~46fを設け、図8に示すように、プリント基板4の上面側に制御配線56a~56fを設けた場合を例示したが、逆の構成でもよい。即ち、図7に示したプリント基板4の下面側のセンス配線46a~46f等の回路パターン層がプリント基板4の上面側であり、図8に示したプリント基板4の上面側の制御配線56a~56f等の回路パターン層がプリント基板4の下面側であってもよい。
【0083】
また、制御端子11a~11fと、センス端子12a~12fとが逆の配置であってもよい。この場合、図7に示した下側補助パターン層41a~41fと、センス端子接続パターン層42a~42fとが逆の配置となる。また、図8に示した制御端子接続パターン層51a~51fと、上側補助パターン層52a~52fとが逆の配置となる。
【0084】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0085】
1…封止樹脂
2a,2b…取り付け用フランジ
3…絶縁回路基板
4…プリント基板
6…ピン
7,9…接合材
8…半導体チップ
10…端子
11a~11f…制御端子
12a~12f…センス端子
13a~13f…出力端子
14a,14b…P端子
15a,15b…N端子
21a~21r,22a~22f…半導体チップ
30…絶縁基板
31…導電層
32…配線層
32a~32f…制御端子支持パターン層
33a~33f…センス端子支持パターン層
34a~34c…出力端子接続パターン層
35a…P端子接続パターン層
35b…N端子支持パターン層
40…絶縁層
41…下側配線層
41a~41f…下側補助パターン層
42…上側配線層
42a~42f…センス端子接続パターン層
43a~43c…下側中継パターン層
44…下側共通パターン層
45…P端子接続パターン層
46a~46f…センス配線
51a~51f…制御端子接続パターン層
52a~52f…上側補助パターン層
53a~53c…上側中継パターン層
54…上側共通パターン層
55…上側P端子接続パターン層
56a~56f…制御配線
61a~61l…制御ピン
62a~62x,63a~63l,64a~64r,65a~65f…主電流ピン
91~94…溝部
101…封止樹脂
111~116…主端子
121~124…補助端子
130a,130b…絶縁回路基板
131a,131b…絶縁基板
132a,132b…導電層
133a,133b…配線層
140…半導体チップ
150…プリント基板
160…ピン
D1~D6…還流ダイオード
T1~T6…MOSトランジスタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図18