(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 25/07 20060101AFI20231129BHJP
H01L 25/18 20230101ALI20231129BHJP
H01L 23/48 20060101ALI20231129BHJP
H01L 23/34 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
H01L25/04 C
H01L23/48 L
H01L23/34 A
(21)【出願番号】P 2019148404
(22)【出願日】2019-08-13
【審査請求日】2022-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002918
【氏名又は名称】弁理士法人扶桑国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 尚毅
【審査官】河合 俊英
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/166696(WO,A1)
【文献】特開2000-332179(JP,A)
【文献】特開2000-068426(JP,A)
【文献】国際公開第2017/168756(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 25/07
H01L 23/48
H01L 23/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電子部品と、
前記第1電子部品に電気的に接続される第1配線部と前記第1配線部が一体的に接続され、電流が印加される第1端子部とを備える第1リードフレームと、
前記第1端子部を外部に延伸して前記第1リードフレームが一体成形され、前記第1配線部を表出する第1配線領域を内部に備え、前記第1電子部品を収納するケースと、
前記ケース内を封止する封止部材と、
を有し、
前記第1リードフレームは、
前記第1リードフレームと同じ材質により構成され、前記第1配線部に
一体的に接続され、前記ケースに埋設された第1受熱部をさらに備える、
半導体装置。
【請求項2】
前記第1受熱部は、前記第1端子部と前記第1電子部品との間に流れる電流の経路を拡張しない、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1配線部は平板状であって前記第1配線部の主面が前記ケースの底面に対向し、前記第1受熱部は平板状であって、前記第1配線部の少なくとも一方の側部から前記底面に向けて突出している、
請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1受熱部は、前記第1配線部の延伸方向に対して直交する側に折れ曲がっている、
請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第1配線部は平板状であって前記第1配線部の主面が前記ケースの底面に対向し、前記第1受熱部はブロック状であって、前記第1配線部の前記主面から前記底面に向けて突出している、
請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第1受熱部は、側面視で櫛歯状である、
請求項3または5に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第1受熱部の端部は、前記第1端子部が延伸する前記ケースの面から露出している、
請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第1受熱部の前記端部は、さらに、前記ケースの前記面から突出している、
請求項7に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記第1電子部品は、制御部品を含んでいる、
請求項1乃至8のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項10】
第2電子部品と、
前記第2電子部品に電気的に接続される第2配線部と前記第2配線部が一体的に接続され、電流が印加される第2端子部とを備える第2リードフレームをさらに備え、
前記第2端子部を外部に延伸して前記第2リードフレームが前記ケースに一体成形され、前記ケースが前記内部に備える第2配線領域に前記第2配線部が表出されている、
請求項9に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記第2電子部品は、半導体チップであり、
前記ケースは前記第2電子部品を収納する収納領域を備える、
請求項10に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記第2配線部に接続され、前記ケースに埋設された第2受熱部をさらに備える、
請求項11に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記ケースは平面視で矩形状であって、前記第1配線領域及び前記第2配線領域が前記収納領域を挟んで対向し、
前記ケースの一方の一辺から前記第1端子部が延出し、前記一方の一辺に対向する他方の一辺から前記第2端子部が延出する、
請求項11または1
2に記載の半導体装置。
【請求項14】
前記第1配線部に接続されている前記第1受熱部の端部が前記ケースから表出されることなく、前記ケースに埋設されている、
請求項1に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、パワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)等の半導体チップを含んで、例えば、電力変換装置として利用されている。このような半導体装置は、熱可塑性樹脂を用いてリードフレームがインサート成形されたケースに、半導体チップ及び制御IC(Integrated Circuit)等が設置された回路基板を収納して、トランスファー成形を用いて封止部材で封止されて構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記半導体装置では、半導体チップ並びに制御ICの動作に伴う発熱により装置内部の熱応力が増加する。これにより、例えば、リードフレームと半導体チップ並びに制御ICとを電気的に接続するボンディングワイヤのボンディング箇所が熱応力を受けて剥離してしまうおそれがある。また、リードフレームに外部機器をはんだにより接合する際に、リードフレームとケースと封止部材との3部材の界面を起点として剥離が生じてしまうおそれがある。このような剥離等により、半導体装置の信頼性の低下を招いてしまう。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、内部の温度上昇を抑制することができる半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一観点によれば、第1電子部品と、前記第1電子部品に電気的に接続される第1配線部と前記第1配線部が一体的に接続され、電流が印加される第1端子部とを備える第1リードフレームと、前記第1端子部を外部に延伸して前記第1リードフレームが一体成形され、前記第1配線部を表出する第1配線領域を内部に備え、前記第1電子部品を収納するケースと、前記ケース内を封止する封止部材と、を有し、前記第1リードフレームは、前記第1リードフレームと同じ材質により構成され、前記第1配線部に一体的に接続され、前記ケースに埋設された第1受熱部をさらに備える、半導体装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
開示の技術によれば、内部の温度上昇を抑制して、半導体装置の信頼性の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1の実施の形態の半導体装置の平面図である。
【
図2】第1の実施の形態の半導体装置の断面図である。
【
図3】第1の実施の形態の半導体装置の側面図である。
【
図4】第1の実施の形態の半導体装置の含まれるリードフレームの製造方法を説明するための図である。
【
図5】第2の実施の形態の半導体装置の断面図である。
【
図6】第2の実施の形態の半導体装置の含まれるリードフレームの製造方法を説明するための図である。
【
図7】第1,第2の実施の形態の半導体装置に含まれる受熱部を説明するための図である。
【
図8】第3の実施の形態の半導体装置の断面図である。
【
図9】第3の実施の形態の半導体装置の側面図である。
【
図10】第3の実施の形態の別の半導体装置の断面図である。
【
図11】第3の実施の形態の半導体装置の含まれるリードフレームの製造方法を説明するための図である。
【
図12】第4の実施の形態の半導体装置の断面図である。
【
図13】第4の実施の形態の半導体装置の含まれるリードフレームの製造方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、実施の形態について説明する。なお、以下の説明において、「おもて面」及び「上面」とは、
図2の半導体装置10において、上側を向いた面を表す。同様に、「上」とは、
図2の半導体装置10において、上側の方向を表す。「裏面」及び「下面」とは、
図2の半導体装置10において、下側を向いた面を表す。同様に、「下」とは、
図2の半導体装置10において、下側の方向を表す。必要に応じて他の図面でも同様の方向性を意味する。「おもて面」、「上面」、「上」、「裏面」、「下面」、「下」、「側面」は、相対的な位置関係を特定する便宜的な表現に過ぎず、本発明の技術的思想を限定するものではない。例えば、「上」及び「下」は、必ずしも地面に対する鉛直方向を意味しない。つまり、「上」及び「下」の方向は、重力方向に限定されない。
【0010】
[第1の実施の形態]
第1の実施の形態における半導体装置について、
図1~
図3を用いて説明する。
図1は、第1の実施の形態の半導体装置の平面図であり、
図2は、第1の実施の形態の半導体装置の断面図であり、
図3は、第1の実施の形態の半導体装置の側面図である。なお、
図1では、封止部材38及びプリント回路基板40の記載を省略している。
図2は、
図1における一点鎖線X-Xにおける断面図である。
図3は、
図2の半導体装置10の側面32eの要部を表している。
【0011】
半導体装置10は、1組の半導体ユニット20と、複数の制御IC37と、1組の半導体ユニット20及び制御IC37を収納し、リードフレーム33~36を備えるケース30とを有している。半導体ユニット20は、第1半導体チップ21及び第2半導体チップ22を6組有している。さらに、1組の第1半導体チップ21及び第2半導体チップ22がおもて面にそれぞれ設けられた6つの回路パターン23と、これらの回路パターン23がおもて面に形成された絶縁基板24とを有している。なお、このような半導体ユニット20では、第1半導体チップ21及び第2半導体チップ22と、第1半導体チップ21及び第2半導体チップ22がおもて面に配置された回路パターン23とを1組として、絶縁基板24上に絶縁基板24の長辺に沿って、例えば、6組配列されている。なお、
図1では、6組の第1半導体チップ21及び第2半導体チップ22が設けられている場合を示しているに過ぎない。6組に限らず、半導体装置10の仕様等に応じた組数を設けることができる。制御IC37は、第1半導体チップ21及び第2半導体チップ22の2組に対して1つずつ、合計3つ有している。なお、本実施の形態では、複数存在する構成は特に断りがない場合には、そのうちの1つを挙げて説明する。
【0012】
第1半導体チップ21は、例えば、IGBT、パワーMOSFET等のスイッチング素子を含んでいる。第1半導体チップ21がIGBTである場合には、裏面に主電極としてコレクタ電極を、おもて面に、ゲート電極及び主電極としてエミッタ電極をそれぞれ備えている。第1半導体チップ21がパワーMOSFETである場合には、裏面に主電極としてドレイン電極を、おもて面に、ゲート電極及び主電極としてソース電極をそれぞれ備えている。上記の第1半導体チップ21は、その裏面が回路パターン23上にはんだ(図示を省略)により接合されている。第2半導体チップ22は、例えば、SBD(Schottky Barrier Diode)、FWD(Free Wheeling Diode)等のダイオード素子を含んでいる。このような第2半導体チップ22は、裏面に主電極として出力電極(カソード電極)を、おもて面に主電極として入力電極(アノード電極)をそれぞれ備えている。上記の第2半導体チップ22は、その裏面が回路パターン23上にはんだ(図示を省略)により接合されている。なお、第1半導体チップ21及び第2半導体チップ22に代えて、IGBTとFWDとの機能を合わせ持つRC(Reverse-Conducting)-IGBTを用いてもよい。
【0013】
回路パターン23は、導電性に優れた銅あるいは銅合金等の金属により構成されている。なお、
図1及び
図2の回路パターン23の形状は一例である。このような回路パターン23は、絶縁基板24の一方の面に形成された導電性の板または箔をエッチングして生成され、または、導電性の板を絶縁基板24の一方の面に貼り合わせて生成される。なお、回路パターン23の厚さは、好ましくは、0.10mm以上、1.00mm以下であり、より好ましくは、0.20mm以上、0.50mm以下である。絶縁基板24は、熱抵抗の小さいエポキシ樹脂、液晶ポリマー等の絶縁樹脂と熱伝導率の高い窒化硼素、酸化アルミニウム、酸化珪素等との組み合わせによる有機絶縁層とすることができる。あるいは、熱伝導性に優れた、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化珪素等の高熱伝導性のセラミックスで構成される無機絶縁層とすることができる。
【0014】
放熱板25は、熱伝導性に優れた、例えば、アルミニウム、鉄、銀、銅、または、少なくともこれらの一種を含む合金により構成されている。また、耐食性を向上させるために、例えば、ニッケル等の材料をめっき処理等により放熱板の表面に形成してもよい。具体的には、ニッケルの他に、ニッケル-リン合金、ニッケル-ボロン合金等がある。さらに、この放熱板25の裏面に冷却器(図示を省略)をはんだまたは銀ろう等を介して取り付けて放熱性を向上させることができる。この場合の冷却器は、例えば、熱伝導性に優れたアルミニウム、鉄、銀、銅、または、少なくともこれらの一種を含む合金等により構成されている。また、冷却器として、フィン、または、複数のフィンから構成されるヒートシンク並びに水冷による冷却装置等を適用することができる。また、放熱板25は、このような冷却器と一体化されてもよい。その場合は、熱伝導性に優れたアルミニウム、鉄、銀、銅、または、少なくともこれらの一種を含む合金により構成される。そして、耐食性を向上させるために、例えば、ニッケル等の材料をめっき処理等により冷却器と一体化された放熱板の表面に形成してもよい。具体的には、ニッケルの他に、ニッケル-リン合金、ニッケル-ボロン合金等がある。なお、放熱板25の厚さは、好ましくは、1mm以上、1.5mm以下である。また、回路パターン23、絶縁基板24、放熱板25の組み合わせは、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化珪素等の無機絶縁層の両面に銅箔が接合されたDCB(Direct Copper Bond)基板、AMB(Active Metal Brazed)基板を用いることができる。なお、このような構成を有する半導体ユニット20の回路パターン23の形状、配置位置及び個数、第1半導体チップ21及び第2半導体チップ22の配置位置及び個数は一例であり、
図1及び
図2に限らず、設計等により適宜設定される。
【0015】
制御IC37は、はんだ(図示を省略)を介して、後述するリードフレーム35の制御配線部35aの3か所にそれぞれ接合されている。なお、所望の機能を実現するために、制御IC37に代わって、例えば、サーミスタ、コンデンサ、抵抗等の電子部品を適宜用いてもよい。
【0016】
次に、ケース30について説明する。ケース30は、枠型状の筐体である上部枠体部31と、上部枠体部31が一体的に形成された下部本体部32と、下部本体部32に設けられたリードフレーム33~36とを有している。下部本体部32は、平面視で矩形状を成した平板状をしており、おもて面から裏面を貫通し、底面に形成された、半導体ユニット20が取り付けられる収納開口部32a(収納領域)を備えている。さらに、下部本体部32は、収納開口部32aを挟んで両側に対向して第1配線領域32bと第2配線領域32cとを備えている。
【0017】
複数のリードフレーム33~35は、ケース30の
図1中左側の側面32dから側面32dに垂直に延出している。下部本体部32の側面32dに複数のリードフレーム33~35が一列に配列した状態で固着されている。リードフレーム33~35は、制御配線部33a~35aと制御配線部33a~35aに一体的に接続された制御端子部33b~35bとを備える。制御端子部33b~35bは、途中で屈曲して半導体装置10の上方に向かっている。なお、半導体装置10の
図1中左側の側面32dに設けられた、リードフレーム34,35を除いた全てがリードフレーム33である。各リードフレーム33の制御端子部33bは、下部本体部32の側面32dから外部空間に突出し、制御配線部33aは、第1配線領域32bに表出している。また、下部本体部32の一方の側面32dにリードフレーム34,35も複数のリードフレーム33に対して一列に配列した状態で固着されている。リードフレーム34,35の制御端子部34b,35bは、下部本体部32の側面32dから外部空間に突出し、制御配線部34a,35aは、第1配線領域32bに表出して側面32dに沿って配線されている。そして、制御IC37がはんだ(図示を省略)を介して、第1配線領域32b内のリードフレーム35の制御配線部35aの3か所にそれぞれ接合されている。この際、リードフレーム35は、接地されている。制御IC37は、リードフレーム33~35の制御配線部33a~35aに対して適宜、ボンディングワイヤ26により電気的に接続されている。
【0018】
また、例えば、リードフレーム35の制御配線部35aには受熱部35cが設けられている。受熱部35cは、制御端子部35bと制御IC37との間に流れる電流の経路を拡張しないように設けられている。電流の経路を拡張しないように設けられるとは、例えば、受熱部35cが制御IC37と制御端子部35bとを電気的に結ぶ最短経路ではない部分に設けられていることを意味する。また、例えば、受熱部35cを設けたリードフレーム35と、設けないリードフレーム35とにおいて、制御配線部35aの制御IC37が設けられた箇所から、制御端子部35bの端部までの電気抵抗を比較した場合に、受熱部35cを設けたリードフレーム35の方が電気抵抗が小さい。このような受熱部35cは、平板状であって、半導体装置10の底面側に突出している。また、受熱部35cは、制御配線部35aの端部から距離b、離間している。また、受熱部35cの制御配線部35aの延伸方向に平行な幅は、幅cである。また、受熱部35cの下端部は、ケース30の底面まで距離a、離間している。なお、この際、距離a>距離b、幅c>距離bである。
【0019】
このような構成のリードフレーム35では、制御IC37で発生した熱が、制御配線部35aを経由して制御端子部35bに伝導する際に、制御配線部35aに設けられた受熱部35cに伝導して、受熱部35cに貯留する。このため、リードフレーム35の、特に、制御配線部35aの受熱部35cの取り付け箇所から外側の部分及び制御端子部35bの温度上昇を抑制することができる。他のリードフレーム33,34の制御配線部33a,34aにも同様に受熱部(図示を省略)が設けられている。これらの受熱部もまた上記受熱部35cと同様の機能を果たす。このため、半導体装置10の内部における温度上昇を抑制することができる。
【0020】
また、下部本体部32の側面32dの反対側にある側面32eに複数のリードフレーム36が一列に配列した状態で一体化されている。リードフレーム36は、主電流配線部36aと主電流配線部36aに一体的に接続された主電流端子部36bとを備える。主電流端子部36bは、途中で屈曲して半導体装置10の上方に向かっている。なお、半導体装置10の
図1中右側の側面32eに設けられた全てがリードフレーム36である。各リードフレーム36の主電流端子部36bは、下部本体部32の側面32eから垂直に外部空間に突出し、主電流配線部36aは、第2配線領域32cに表出している。また、リードフレーム36の主電流配線部36aには受熱部36cが設けられている。受熱部36cもまた、受熱部35cと同様の構成であってリードフレーム36に対して同様の機能を果たし、半導体装置10の内部における温度上昇を抑制することができる。すなわち、リードフレーム36の温度上昇を抑制するために、例えば、外部空間に突出した主電流端子部36bに対して加工等を施して放熱部を形成する必要がない。このため、
図3に示されるように、リードフレーム36の空間絶縁間隔である間隔eを最小限に抑えることができる。なお、主電流端子部36bの幅は幅dとする。また、図示を省略するものの、リードフレーム33~35についても同様に、制御端子部33b~35bの間隔eを最小限に抑えることができる。したがって、リードフレーム33~36の間隔を最小限に抑えることができるために、半導体装置10の小型化を促進することができる。
【0021】
上部枠体部31は、板状であって、下部本体部32の外周縁に対応した環状を成している。上部枠体部31は、下部本体部32のおもて面の外周縁に一体的に形成されている。上面視で、上部枠体部31の外周は下部本体部32の外周と同じであってよい。また、上面視で、上部枠体部31の内周は下部本体部32の内周よりも大きくてよい。リードフレーム33~36は、それぞれの一部が上部枠体部31の裏面と下部本体部32の第1配線領域32b及び第2配線領域32cに挟まれていてよい。さらに、リードフレーム33~36は、上部枠体部31の内周側において、下部本体部32上に露出していてよい。上部枠体部31及び下部本体部32は、いずれも同種の熱硬化性樹脂により構成されている。このような樹脂として、マレイミド変性エポキシ樹脂、マレイミド変性フェノール樹脂、マレイミド樹脂等の熱硬化性樹脂と熱硬化性樹脂に含有される充填材とを含んでいる。その具体例として、エポキシ樹脂があり、エポキシ樹脂にフィラーとして酸化シリコン、酸化アルミニウム、窒化ホウ素または窒化アルミニウム等の充填材を含んでいる。プリント回路基板40は、所定の回路配線層と当該回路配線層が主面に設けられた絶縁層とを備えている。このようなプリント回路基板40は、リードフレーム33~36の制御端子部33b~35b及び主電流端子部36bの先端部が勘合されて電気的に接続されている。
【0022】
このようなケース30に収納された半導体ユニット20において、第1半導体チップ21と第2半導体チップ22とリードフレーム33~36と制御IC37との間が適宜ボンディングワイヤ26により電気的に接続されている。なお、ボンディングワイヤ26に限らず、リボンやリードフレーム等の導電性の配線部材で接続してもよい。これにより、半導体装置10において所望の回路が構成される。そして、下部本体部32の収納開口部32a及び上部枠体部31で囲まれる第1,第2配線領域32b,32c内が封止部材38により封止されている。すなわち、ケース30内の半導体ユニット20、リードフレーム33~36の制御配線部33a~35a及び主電流配線部36a、ボンディングワイヤ26、制御IC37等が封止部材38により封止されている。封止部材38は、マレイミド変性エポキシ樹脂、マレイミド変性フェノール樹脂、マレイミド樹脂等の熱硬化性樹脂と熱硬化性樹脂に含有される充填材とを含んでいる。その具体例として、エポキシ樹脂があり、エポキシ樹脂にフィラーとして酸化シリコン、酸化アルミニウム、窒化ホウ素または窒化アルミニウム等の充填材を含んでいる。または、封止部材38として、シリコーンゲルを用いてもよい。この場合には、封止部材38で封止した後、ケース30上にケース蓋(図示を省略)を設けて、ケース30を閉じる。
【0023】
次に、半導体装置10に含まれるリードフレーム33~36の製造方法について、
図4を用いて説明する。
図4は、第1の実施の形態の半導体装置の含まれるリードフレームの製造方法を説明するための図である。なお、ここでは、一例として、リードフレーム36の場合について説明する。
【0024】
まず、板金50を用意する(
図4(A))。なお、
図4(A)には、板金50に主電流配線部36aに接続された受熱部36c近傍の打ち抜き領域を破線で示している。次いで、板金50に対してこの破線に沿って打ち抜くことで、受熱部36cが両側部に同一平面に形成された主電流端子部36bを含むリードフレーム36が得られる(
図4(B))。このようなリードフレーム36において、受熱部36cを主電流配線部36aの主面に対して垂直に折り曲げる(
図4(C))。主電流配線部36aの主面に対して垂直に起立した受熱部36cの先端部をさらに主電流配線部36aの主面側に略直角に折り曲げる(
図4(D))。なお、このような受熱部36cの折り曲げ方は一例である。この場合に限らず、受熱部36cを長めに切り出し、複数回、同方向に折り曲げ、または、ジグザグ状に折り曲げて、複数層に構成されてもよい。または、一方の受熱部36cを主電流配線部36aの主面に重なるように折り曲げて、他方の受熱部36cを、折り曲げた一方の受熱部36cに重なるように折り曲げてもよい。このようにして半導体装置10に備えられるリードフレーム36の受熱部36c(図
2を参照)が構成される。また、図示は省略するものの、リードフレーム33~35についても、
図4に示したリードフレーム36と同様にして形成することができる。
【0025】
上記半導体装置10は、第1,第2半導体チップ21,22、制御IC37(第1電子部品)と、リードフレーム33~36と、リードフレーム33~36が一体成形されたケース30と、ケース30内を封止する封止部材38とを備える。リードフレーム33~35は、制御IC37に電気的に接続される制御配線部33a~35aと制御配線部33a~35aが一体的に接続され、電流が印加される制御端子部33b~35bとを備える。リードフレーム36は、第1,第2半導体チップ21,22に電気的に接続される主電流配線部36aと主電流配線部36aが一体的に接続され、電流が印加される主電流端子部36bとを備える。ケース30は、制御端子部33b~35b及び主電流端子部36bを外部に延伸してリードフレーム33~36が一体成形され、制御配線部33a~35a及び主電流配線部36aを表出する第1,第2配線領域32b,32cを内部に備え、第1,第2半導体チップ21,22を収納する。この際、リードフレーム33~36は、制御配線部33a~35a及び主電流配線部36aに接続され、ケース30に埋設された受熱部35c,36c(リードフレーム33,34に接続された受熱部の図示は省略)をさらに備える。このため、リードフレーム33~36では、制御IC37及び第1,第2半導体チップ21,22で発生した熱が、制御配線部33a~35a及び主電流配線部36aを経由して制御端子部33b~35b及び主電流端子部36bに伝導する際に、制御配線部33a~35a及び主電流配線部36aに設けられた受熱部35c,36cに伝導して、受熱部35c,36cに貯留する。このため、リードフレーム33~36の、特に、制御配線部33a~35a及び主電流配線部36aの受熱部35c,36cの取り付け箇所から外側の部分及び制御端子部33b~35b及び主電流端子部36bの温度上昇を抑制することができる。さらには、半導体装置10の内部における温度上昇を抑制することができる。この結果、半導体装置10の内部の熱応力の発生を低減でき、ボンディングワイヤ26の剥離等を抑制して、半導体装置10の信頼性の低下を抑制することができる。なお、このような半導体装置10では、第1,第2半導体チップ21,22は、リードフレーム36に対してボンディングワイヤ26を介して電気的に接続されている。一方、制御IC37は、リードフレーム35に直接配置されている。このため、リードフレーム35の方がリードフレーム36よりも温度上昇が大きい。また、リードフレーム35の温度上昇に伴ってリードフレーム33,34も温度上昇してしまう可能性が高い。このため、受熱部35c(リードフレーム33,34の受熱部は図示を省略する)は、少なくとも、リードフレーム33~35に設けることが好ましい。なお、これは、以下に説明する半導体装置でも同様である。
【0026】
[第2の実施の形態]
第2の実施の形態では、第1の実施の形態において受熱部の別の形態の場合について
図5を用いて説明する。
図5は、第2の実施の形態の半導体装置の断面図である。なお、第2の実施の形態の半導体装置10aは、第1の実施の形態の半導体装置10に対して、受熱部以外は同様の構成を成しており、それらの構成の説明は省略する。
【0027】
半導体装置10aでは、リードフレーム33~36の制御配線部33a~35a及び主電流配線部36aに形成される受熱部は、側面視で櫛歯型を成している。例えば、
図5に示されるように、リードフレーム35の制御配線部35a及びリードフレーム36の主電流配線部36aに形成された受熱部35c1,36c1(リードフレーム33,34の受熱部は図示を省略)は側面視で櫛歯型を成している。この場合も半導体装置10の受熱部35c,36cと同様の効果が得られる。
【0028】
次に、半導体装置10aに含まれるリードフレーム33~36の製造方法について、
図6を用いて説明する。
図6は、第2の実施の形態の半導体装置の含まれるリードフレームの製造方法を説明するための図である。なお、ここでは、一例として、リードフレーム36の場合について説明する。
【0029】
まず、第1の実施の形態と同様に、板金50を用意する(
図6(A))。なお、
図6(A)には、板金50に主電流配線部36aに接続された受熱部36c1近傍の打ち抜き領域を破線で示している。次いで、板金50に対してこの破線に沿って打ち抜くことで、受熱部36c1が両側部に同一平面に形成された主電流端子部36bを含むリードフレーム36が得られる(
図6(B))。このようなリードフレーム36においても、第1の実施の形態と同様に、受熱部36c1を主電流配線部36aの主面に対して垂直に折り曲げ、さらに、主電流配線部36aの主面に対して垂直に起立した受熱部36c1の先端部をさらに主電流配線部36aの主面側に略直角に折り曲げる(
図4(C),(D)を参照)。なお、この場合も、この折り曲げ方は一例であり、第1の実施の形態と同様に複数回折り曲げて、複数層に構成されてもよい。また、図示は省略するものの、リードフレーム33~35についても、
図5に示したリードフレーム36と同様にして形成することができる。
【0030】
ここで、第1,第2の実施の形態の受熱部の別の例として、平板状ではなく、ブロック状である場合について、
図7を用いて説明する。
図7は、第1,第2の実施の形態の半導体装置に含まれる受熱部を説明するための図である。なお、ここでは、一例として、リードフレーム36の場合について説明する。
図7(A),(C)は、リードフレーム36の
主電流配線部36aの平面図、
図7(B)は、
図7(A)における一点鎖線X-Xにおける断面図をそれぞれ表している。
【0031】
半導体装置10のリードフレーム36の
主電流配線部36aに設けられる受熱部36cは、
図2及び
図7(A),(B)に示されるように、ケース30の底面に突出したブロック状を成している。また、半導体装置10aのリードフレーム36の
主電流配線部36aに設けられる受熱部36c1は、
図5及び
図7(C)に示されるように、ケース30の底面に突出した櫛歯型のブロック状を成している。なお、リードフレーム33~35の
制御配線部33a~35aに設けられる受熱部についても同様に構成することができる。このような受熱部を備える半導体装置10,10aでも上記と同様の効果が得られる。
【0032】
[第3の実施の形態]
第3の実施の形態では、第1,第2の実施の形態において受熱部の別の形態の場合について
図8~
図10を用いて説明する。
図8は、第3の実施の形態の半導体装置の断面図である。
図9は、第3の実施の形態の半導体装置の側面図である。また、
図10は、第3の実施の形態の別の半導体装置の断面図である。なお、
図9は、
図8の半導体装置10bの
図8中右側の側面32eの要部を表している。また、第3の実施の形態の半導体装置10bは、第1の実施の形態の半導体装置10に対して、受熱部35c2,36c2以外は同様の構成を成しており、それらの構成の説明は省略する。
【0033】
半導体装置10bでは、リードフレーム33~36の制御配線部33a~35a及び主電流配線部36aに形成される受熱部の端部が、制御端子部33b~35b及び主電流端子部36bが延伸するケース30の側面32d,32eから露出するように構成されている。例えば、
図8に示されるように、リードフレーム35の制御配線部35a及びリードフレーム36の主電流配線部36aにそれぞれ設けられた受熱部35c2,36c2の端部がケース30の側面32d,32eから露出されている。このため、リードフレーム35の制御配線部35a及びリードフレーム36の主電流配線部36aの受熱部35c2,36c2は、第1の実施の形態と同様の効果が得られ、さらに、受熱部35c2,36c2の放熱性が向上する。なお、このような受熱部35c2,36c2は、リードフレーム35の制御配線部35a及びリードフレーム36の主電流配線部36aの両側部に設けられている。このため、例えば、
図9に示されるように、ケース30の側面32eの、リードフレーム36の主電流端子部36bの
図9中下側から受熱部36c2が露出している。このため、リードフレーム36の幅dは、例えば、第1の実施の形態の場合(
図3を参照)と同様の幅dを維持することができる。これにより、リードフレーム36の空間絶縁間隔である間隔eを最小限に抑えることができる。なお、図示を省略するものの、リードフレーム33~35についても同様に、制御端子部33b~35bの間隔eを最小限に抑えることができる。したがって、リードフレーム33~36の間隔eを最小限に抑えることができるために、半導体装置10bの小型化に寄与することができる。また、半導体装置10bは、
図10に示されるように、リードフレーム35の制御配線部35a及びリードフレーム36の主電流配線部36aにそれぞれ設けられた受熱部35c2,36c2の端部がケース30の側面32d,32eから露出され、さらに、側面32d,32eから延伸していてもよい。これにより、
図10の半導体装置10bは、
図8に示した半導体装置10bの場合よりも、受熱部35c2,36c2による放熱性がより向上する。
【0034】
次に、半導体装置10bに含まれるリードフレーム33~36の製造方法について、
図11を用いて説明する。
図11は、第3の実施の形態の半導体装置の含まれるリードフレームの製造方法を説明するための図である。なお、ここでは、一例として、リードフレーム36の場合について説明する。
【0035】
まず、第1の実施の形態と同様に、板金50を用意する(
図11(A))。なお、
図11(A)には、板金50に主電流配線部36aに接続されたL字状の受熱部36c2近傍の打ち抜き領域を破線で示している。次いで、板金50に対してこの破線に沿って打ち抜くことで、受熱部36c2が両側部に同一平面に形成された主電流端子部36bを含むリードフレーム36が得られる(
図11(B))。このようなリードフレーム36において、受熱部36c2を主電流配線部36aの主面に対して垂直に折り曲げる(
図4(C)を参照)。このようにして半導体装置10bに備えられるリードフレーム36の受熱部36c2(
図8を参照)が構成される。また、図示は省略するものの、リードフレーム33~35についても、
図11に示したリードフレーム36と同様にして受熱部を形成することができる。また、
図11(A)に示した板金50において、受熱部36c2のサイズを適宜変更することで、
図10に示した半導体装置10bの受熱部36c2が得られる。
【0036】
[第4の実施の形態]
第4の実施の形態では、第1~第3の実施の形態において受熱部の別の形態の場合について
図12を用いて説明する。
図12は、第4の実施の形態の半導体装置の断面図である。また、第4の実施の形態の半導体装置10cは、第1の実施の形態の半導体装置10に対して、受熱部35c3以外は同様の構成を成しており、それらの構成の説明は省略する。
【0037】
半導体装置10cは、ケース30の裏面に、冷却器である、例えば、複数のフィンが設けられたヒートシンク39が設けられている。この場合において、半導体装置10cでは、リードフレーム33~36のうち、
図12に示されるように、接地されているリードフレーム35の制御配線部35aに受熱部35c3が形成されている。この受熱部35c3は、その端部が、ケース30の裏面から露出して、ヒートシンク39に熱的に接続されるように構成されている。このため、リードフレーム35の制御配線部
35aの受熱部35c3は、第1の実施の形態と同様の効果が得られ、さらに、受熱部35c3の放熱性が向上する。なお、このような受熱部35c3、リードフレーム35の制御配線部
35aの両側部に設けられている。このように受熱部35c3は、リードフレーム35の制御配線部
35aの幅dを空けてケース30の底面に向けて垂直に延伸している。このため、リードフレーム35とそれに隣接するリードフレーム34との間隔eに何ら影響することはない。これにより、リードフレーム35とリードフレーム34との空間絶縁間隔である間隔eを最小限に抑えることができる。
【0038】
次に、半導体装置10cに含まれるリードフレーム35の製造方法について、
図13を用いて説明する。
図13は、第4の実施の形態の半導体装置の含まれるリードフレームの製造方法を説明するための図である。まず、第1の実施の形態と同様に、板金50を用意する(
図13(A))。なお、
図13(A)には、板金50に制御配線部35aに接続された直線状の受熱部35c3近傍の打ち抜き領域を破線で示している。次いで、板金50に対してこの破線に沿って打ち抜くことで、受熱部35c3が両側部に同一平面に形成された制御配線部35aを含むリードフレーム35が得られる(
図13(B))。このようなリードフレーム35において、受熱部35c3を制御配線部35aの主面に対して垂直に折り曲げる。このようにして半導体装置10cに備えられるリードフレーム35の受熱部35c3(
図12参照)が構成される。なお、第4の実施の形態の受熱部35c3は、第1~第3の実施の形態の半導体装置10,10a,10bのリードフレーム35の受熱部35c,35c1,35c2に代えて取り付けてもよい。
【符号の説明】
【0039】
10,10a,10b,10c 半導体装置
20 半導体ユニット
21 第1半導体チップ
22 第2半導体チップ
23 回路パターン
24 絶縁基板
25 放熱板
26 ボンディングワイヤ
30 ケース
31 上部枠体部
32 下部本体部
32a 収納開口部
32b 第1配線領域
32c 第2配線領域
32d,32e 側面
33,34,35,36 リードフレーム
33a,34a,35a 制御配線部
33b,34b,35b 制御端子部
35c,35c1,35c2,35c3,36c,36c1,36c2 受熱部
36a 主電流配線部
36b 主電流端子部
37 制御IC
38 封止部材
39 ヒートシンク
40 プリント回路基板
50 板金