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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】車両の側部車体構造
(51)【国際特許分類】
   B60J 5/00 20060101AFI20231129BHJP
【FI】
B60J5/00 Q
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019153785
(22)【出願日】2019-08-26
(65)【公開番号】P2021030912
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】田原 一成
(72)【発明者】
【氏名】中里 大介
(72)【発明者】
【氏名】藤井 英明
【審査官】菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-136756(JP,A)
【文献】特開2005-041260(JP,A)
【文献】特開2007-326532(JP,A)
【文献】特開2005-153644(JP,A)
【文献】米国特許第05782523(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前部に車両上下方向に延びるセンタピラーを内蔵するリヤドアと、車両前後方向に延びるドアインパクトバーを内蔵するフロントドアと、
上記リヤドアおよび上記フロントドアによって閉塞可能に車体側部に開口形成されたドア開口の下縁に沿って、上記センタピラーの下部とドア閉時に車両側面視でラップするように配設されたサイドシルと、を備えた車両の側部車体構造であって、
上記ドアインパクトバーの後端は上記センタピラーに車両側面視でラップするように配置され、
上記フロントドアの内部に、該フロントドアの下部と上記ドアインパクトバーの後部とを連結する補強ガセットを備え、
上記フロントドアの下部における上記補強ガセットとの連結部分に対して下方には、上記サイドシルが隣接して配設され
上記補強ガセットは、上記ドアインパクトバーの後部に接続される上端フランジ部と、上記フロントドアの下部に接続される下端フランジ部と、上記上端フランジ部と上記下端フランジ部とを直線状につなぐ補強ガセット本体部とを備え、
上記補強ガセットは、上記上端フランジ部が上記下端フランジ部に対し、車外側に位置するとともに、
車幅方向において上記サイドシルに対して、上記上端フランジ部の、少なくとも上記補強ガセット本体部の側の端部が真上に位置せず、上記下端フランジ部が真上に位置する
車両の側部車体構造。
【請求項2】
車両が、上記フロントドアがその前端部で、上記リヤドアがその後端部で、夫々車体にヒンジを介して結合され、且つ上記フロントドアの前後長さに対して上記リヤドアの前後長さが短い、観音開き構造のドアを有する車両である
請求項1に記載の車両の側部車体構造。
【請求項3】
上記フロントドアには、上記ドアインパクトバー後端が接続されるドアインナと、上記ドアインパクトバー後端と上記ドアインナとの間に介在し、これらの接続箇所を補強する接続補強部材とを備え、
上記ドアインナには、上記補強ガセットが連結される上記フロントドアの上記下部を備え、
上記接続補強部材を、上記フロントドアの上記下部における上記補強ガセットとの連結部位まで延ばし、
上記補強ガセットは、上記接続補強部材を介して上記フロントドアの上記下部に連結する
請求項1又は2に記載の車両の側部車体構造。
【請求項4】
上記フロントドアの内部において、上記接続補強部材と、上記フロントドアの下部とで、車両前後方向に延びる閉断面が形成された
請求項3に記載の車両の側部車体構造。
【請求項5】
上記補強ガセットに長手方向に延びる複数の稜線部を備えた
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の車両の側部車体構造。
【請求項6】
上記補強ガセットを、下端が上端に対し前方側に位置するように形成した
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の車両の側部車体構造。
【請求項7】
上記ドアインパクトバーの後端は上記センタピラー下部と車両側面視でラップする構造とした
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の車両の側部車体構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両上下方向に延びるセンタピラーを車体側ではなくドア側に備えた車両の側部車体構造に関し、詳しくは、センタピラーレスの車体に、前部にセンタピラーを内蔵するリヤドアと、車両前後方向に延びるドアインパクトバーを内蔵するフロントドアと、を備えた車両の側部車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の車体側部には乗員乗降用の開口部が形成されており、前席乗員乗降用となる前側の開口部にはフロントドアが、後席乗員乗降用となる後側の開口部にはリヤドアが、夫々開閉可能に備えている。
【0003】
このような車両の側部車体構造においては、前側の開口部と後側の開口部を、これらの間に、開口部の上下各縁を繋ぐように車両上下方向に延びるセンタピラーを配設することで、車両前後方向に互いに区分けして構成したものが知られている。
【0004】
一方、車両の側部車体構造の中には、前側の開口部と後側の開口部とを、これらの間にセンタピラーを備えずに、車両前後方向に連続して形成されたものも存在する。
【0005】
後者の車両の側部車体構造は、特許文献1の車両のドア構造に例示されるように、センタピラーを車体側に備えない代わりにリヤドア前端に、上下方向に延びる補強部材、すなわちセンタピラーを配設したものである。さらに、後者の車両の側部車体構造は、このセンタピラーを、フロントドアの前後両端に架け渡すように車両前後方向に配設したドアインパクトバーの後端に車両側面視でラップさせることで側突対応を行っている。
【0006】
しかしながら後者の車両の側部車体構造のように、センタピラーを車体側に備えずにドア側に備えた構造においては、センタピラーがドア閉時に車両側面視で車体に対してラップさせるラップ量を、リヤドア自体の車体に対するラップ量の範囲でしか確保できない。
【0007】
このため、後者の車両の側部車体構造においては、センタピラーを車体側に備えた前者の車両の側部車体構造と比して、センタピラーの、リヤドア閉時における車体とのラップ量が制限され、側突対応の点でさらなる改善の余地があった。
【0008】
具体的に、後者の車両の側部車体構造として例示される特許文献1の車両のドア構造は、サイドドアの下部を、該サイドドア閉時において、開口部の下縁に沿って車両前後方向に延びる車体側のサイドシルに対して車両側面視でラップするように車幅方向外側に配設されたものである。特許文献1の車両のドア構造は、このサイドシルに対する、リヤサイドドアに備えたセンタピラーとのラップ量が十分でないため、側突時にリヤサイドドアがサイドシルを乗り越え乗員乗降用の開口部から車室内側に侵入し易い構造であり改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2003-25844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたもので、側突時にドア(リヤドアおよびフロントドア)の下端がサイドシルを乗り越え車室内側に侵入するのを抑制できる車両の側部車体構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、前部に車両上下方向に延びるセンタピラーを内蔵するリヤドアと、車両前後方向に延びるドアインパクトバーを内蔵するフロントドアと、上記リヤドアおよび上記フロントドアによって閉塞可能に車体側部に開口形成されたドア開口の下縁に沿って、上記センタピラーの下部とドア閉時に車両側面視でラップするように配設されたサイドシルと、を備えた車両の側部車体構造であって、上記ドアインパクトバーの後端は上記センタピラーに車両側面視でラップするように配置され、上記フロントドアの内部に、該フロントドアの下部と上記ドアインパクトバーの後部とを連結する補強ガセットを備え、上記フロントドアの下部における上記補強ガセットとの連結部分に対して下方には、上記サイドシルが隣接して配設され、上記補強ガセットは、上記ドアインパクトバーの後部に接続される上端フランジ部と、上記フロントドアの下部に接続される下端フランジ部と、上記上端フランジ部と上記下端フランジ部とを直線状につなぐ補強ガセット本体部とを備え、上記補強ガセットは、上記上端フランジ部が上記下端フランジ部に対し、車外側に位置するとともに、車幅方向において上記サイドシルに対して、上記上端フランジ部の、少なくとも上記補強ガセット本体部の側の端部が真上に位置せず、上記下端フランジ部が真上に位置するものである。
【0012】
上記構成によれば、側突時に補強ガセットに、ドアインパクトバーの後部とフロントドアの下部との間で突っ張る突っ張り部材としての役目を果たさせることでドア(リヤドアおよびフロントドア)の下端がサイドシルを乗り越え車室内側に侵入するのを抑制できる。
【0013】
また上述したように、上記補強ガセットは、上端側が下端側に対し車外側に位置するように備えたため、側突時に車室内側に向かう側突荷重がドアに入力されることによって、ドアインパクトバーが車室内側に押され、これに従って補強ガセットのドア下部に対する突っ張り力を大きくできる。
【0014】
この発明の態様として、車両が、上記フロントドアがその前端部で、上記リヤドアがその後端部で、夫々車体にヒンジを介して結合され、且つ上記フロントドアの前後長さに対して上記リヤドアの前後長さが短い、観音開き構造のドア(センターオープニング・ドア)を有する車両である。
【0015】
上記構成によれば、フロントドアの前後長さに対して上記リヤドアの前後長さが短いことに起因してリヤドアの前端に内蔵したセンタピラーが、車体側部に形成した乗員乗降用のドア開口(開口部)の車両前後方向の中心から後方へズレることになるが、そのズレによる側突時の弊害を上記補強ガセットによってカバーすることができる
【0016】
の発明の態様として、上記フロントドアには、上記ドアインパクトバー後端が接続されるドアインナと、上記ドアインパクトバー後端と上記ドアインナとの間に介在し、これらの接続箇所を補強する接続補強部材とを備え、上記ドアインナには、上記補強ガセットが連結される上記ドア下部を備え、上記接続補強部材を、上記フロントドアの上記下部における上記補強ガセットとの連結部位まで延ばし、上記補強ガセットは、上記接続補強部材を介して上記フロントドアの上記下部に連結する構成としたものである。
【0017】
上記構成によれば、上記接続補強部材を、上記フロントドアの上記下部における上記補強ガセットとの連結部位まで延ばし、上記補強ガセットの下部が連結される上記フロントドアの上記下部側の自身の剛性を高めて補強ガセットの突っ張り力を向上させることができる。
【0018】
この発明の態様として、上記フロントドアの内部において、上記接続補強部材と、上記フロントドアの下部とで、車両前後方向に延びる閉断面が形成されたものである。
【0019】
この発明の態様として、上記補強ガセットに長手方向に延びる複数の稜線部を備えたものである。
【0020】
上記構成によれば、稜線部によって補強ガセットの長手方向の高剛性化を図ることで突っ張りに対する剛性を高めることができる。
【0021】
この発明の態様として、上記補強ガセットを、下端が上端に対し前方側に位置するように形成したものである。
【0022】
上記構成によれば、補強ガセットを例えば、上下各端が共に車両前後方向に略同じ位置になるように形成した場合と比して該補強ガセットの下部を、上記フロントドアの上記下部における、センタピラーから前方へより離間した位置に連結させることができる。
【0023】
これにより、側突時にドアインパクトバー後部及びセンタピラーに入力される車室内側へ入力される側突荷重をサイドシルの広い範囲で受けることができる。
【0024】
この発明の態様として、上記ドアインパクトバーの後端は上記センタピラー下部と車両側面視でラップする構造とした。
【0025】
上記構成によれば、フロントドアの下部と上記ドアインパクトバーの後部とを繋ぐ補強ガセットの(上下方向の長さの)短縮化を図ることができ、結果的に補強ガセットの曲げ剛性の向上および軽量化に寄与することができる。
【発明の効果】
【0026】
この発明によれば、側突時にドア(リヤドアおよびフロントドア)の下端がサイドシルを乗り越え車室内側に侵入するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の車両の側部車体構造の要部を示す側面図
図2図1中のA-A線に沿った要部矢視断面図。
図3図1中のB-B線に沿った要部矢視断面図。
図4図1中のC-C線に沿った要部矢視断面図。
図5図1中の要部を前方かつ上方から視た要部拡大斜視図。
図6図5においてドアインパクトバーを仮想線にて示した要部拡大斜視図。
図7図2中の矢視Dにおける要部を示した要部拡大図。
図8】補強ガセットを、前方かつ車幅方向内側から視た斜視図(a),車幅方向外側から視た側面図(b)。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1図8を参照しながら、本実施形態の車両の側部車体構造について説明する。
【0029】
図中、矢印Fは車両前方、矢印Uは車両上方、矢印Rは車両右方、矢印Lは車両左方、OUTは車幅方向外側(車室外側)、INは車幅方向内側(車室内側)を夫々示すものとする。
【0030】
図面は車両の側部車体構造を示し、図1はドアアウタパネルを取外して当該車両の側部車体構造を車幅方向外側から見た状態で示す側面図、図2図1中のA-A線に沿った要部矢視断面図、図3図1中のB-B線に沿った要部矢視断面図、図4図1中のC-C線に沿った要部矢視断面図、図5図1中のフロントドアの後下部周辺を前方かつ上方から視た要部拡大斜視図、図6図5においてドアインパクトバーを仮想線にて示した要部拡大斜視図、図7図2中の矢視Dにおけるドアインパクトバー、接続補強部材および補強ガセットのみを示した要部拡大図、図8(a)は補強ガセットを前方かつ車幅方向内側から視た斜視図(a),図8(b)は補強ガセットを車幅方向外側から視た側面図である。
【0031】
図1に示すように、ボディ側の側部には、前側のヒンジピラー1と、後側のヒンジピラー2と、サイドシル3と、フロントピラー4と、ルーフサイドレール5とで環状構造体6が形成されると共に、ボディ側にはセンタピラーが存在しないセンタピラーレス車体に構成されている。
またボディ側の側部には、上述の各部、すなわち、ヒンジピラー1,2、サイドシル3、フロントピラー4、ルーフサイドレール5で囲繞されたドア開口7が形成されている。
【0032】
上述の前側のヒンジピラー1は、ヒンジピラーアウタとヒンジピラーインナとを接合して、車両上下方向に延びるヒンジピラー閉断面をもった車体剛性部材である。
図1に示すように、上述のサイドシル3は、前後の各ヒンジピラー1,2の下部を連結する車体剛性部材であり、該サイドシル3は図2に示すように、サイドシルアウタ3Aとサイドシルインナ3Bとサイドシルレイン3Cとを接合して、車両前後方向に延びるサイドシル閉断面3Sを備えている。
【0033】
サイドシルアウタ3Aはサイドシルレイン3Cに対して車幅方向外側から覆うように接合され、サイドシルの意匠面を形成している。
【0034】
サイドシルインナ3Bは、上端フランジ3Baと、上端フランジ3Baの下端から車幅方向内側へ延びる上壁3Bbと、上壁3Bbの車幅方向内端から下方に延びる車幅内壁3Bcと、車幅内壁3Bcの下端から車幅方向外側へ延びる下壁3Bdと、下壁3Bdの車幅外端から下方に延びる下端フランジ3Beとで車両前後方向の直交断面が、車幅方向外側に向けて開口したハット形状に形成されている。
【0035】
サイドシルレイン3Cは、上端フランジ3Caと、上端フランジ3Caの下端から車幅方向外側へ延びる上壁3Cbと、上壁3Cbの車幅方向外端から下方に延びる車幅外壁3Ccと、車幅外壁3Ccの下端から車幅方向内側へ延びる下壁3Cdと、下壁3Cdの車幅内端から下方に延びる下端フランジ3Ceとで車両前後方向の直交断面が、車幅方向内側に向けて開口したハット形状に形成されている。
【0036】
これらサイドシルインナ3Bとサイドシルレイン3Cとの間には、上記サイドシル閉断面3Sを備えている。
【0037】
図1に示すように、上述のフロントピラー4は、前側のヒンジピラー1の上端とルーフサイドレール5の前端とを連結して、その前部から後部にかけて後方かつ上方に斜め方向に延びる車体剛性部材である。また、該フロントピラー4は、フロントピラーアウタとフロントピラーインナとを接合して、斜め方向に延びるフロントピラー閉断面を備えている。
【0038】
上述のルーフサイドレール5は、フロントピラー4の後端と、図示しないリヤピラー部前端とを車両前後方向に連結する車体剛性部材である。また、該ルーフサイドレール5は、ルーフサイドレールアウタとルーフサイドレールインナとを接合して、車両前後方向に延びるルーフサイドレール閉断面を備えている。
ドア開口7には、図1に示すように、観音開き構造のフロントドア10と、リヤドア30とが設けられている。
【0039】
フロントドア10は、ヒンジピラー1に設けた上下一対のヒンジブラケット8,8を介して、ドア前端部を支点として当該フロントドア10後側が開閉するように構成されている。リヤドア30は、後側のヒンジピラー2に設けたヒンジブラケット(図示せず)を介して、ドア後端部を支点として当該リヤドア30前側が開閉するように構成されている。
この観音開き構造のフロントドア10と、リヤドア30とは、リヤドア30に対してフロントドア10が優先して開放されるように構成している。また本実施形態においては、フロントドア10はリヤドア30よりも前後スパンが長くなるように形成している。
【0040】
図1図3図4を参照してリヤドア30の構造について説明する。
【0041】
図1に示すように、リヤドア30(但し、図面では車両右側のドアを示している)は、ドアサッシュ部30Aとドア本体30Bとを備えている。
【0042】
リヤドア30は図3図4に示すように、車幅方向に凹設された鋼板製のドアインナパネル32と、該ドアインナパネル32に対面して設けられた鋼板製のドアアウタパネル31とを備え、これら両パネル31,32を図4に示すようにヘミング結合して、一体化している。
【0043】
上述のドアアウタパネル31は車室外側に配置されてリヤドア30の意匠面を形成している。一方、ドアインナパネル32は図1に示すように、アウタパネル主板部32cと、このアウタパネル主板部32cの前部から車幅方向外方に延びる前辺部32fと、アウタパネル主板部32cの下部から車幅方向外方に延びる下辺部32dと、アウタパネル主板部32cの後部から車幅方向外方に延びる後辺部32rとを備えている。
【0044】
リヤドア30は図1図3図4に示すように、ドアインナパネル32がドアアウタパネル31よりも車室内側に配置されており、これら両者31,32間にはドア内部空間33が形成されている。
【0045】
図1に示すように、リヤドア30は、後辺部32rにおいて上上下一対のヒンジブラケット(図示せず)を介して車体側のヒンジピラー2に開閉可能に支持されている。
【0046】
図1に示すように、上述の後辺部32rにおいてドアインナパネル32には、上下方向に延びるヒンジレインフォースメント34を設けている。
図1図3図4に示すように、リヤドア30の前部には、その前端が前辺部32fに沿うようにドア側のセンタピラー35(バーチカルレインフォースメントと同意)が内蔵されている。
【0047】
このセンタピラー35は図1に示すように、ドアサッシュ部30Aの前側上端部から下辺部32dまで上下方向に延びるピラー部材である。
【0048】
詳しくは、センタピラー35の上端は図1に示すように、ドア閉時にドア開口7の上縁に沿って車両前後方向に延びるルーフサイドレール5に対して車両側面視でラップする。但し、センタピラー35の上端は、リヤドア30の上端よりも若干下側に位置するため、リヤドア30が、閉時においてルーフサイドレール5に対して車両側面視でラップする範囲内でルーフサイドレール5に対してラップする。
【0049】
一方、センタピラー35の下端は図1に示すように、ドア閉時にドア開口7の下縁に沿って車両前後方向に延びるサイドシル3に対して車両側面視でラップする。但し、センタピラー35の下端は、リヤドア30の下端よりも若干上側に位置するため、リヤドア30が、閉時においてサイドシル3に対して車両側面視でラップする範囲内でサイドシル3に対してラップする。
【0050】
図3に断面図で示すように、該センタピラー35は、前側の接合フランジ部35aと、前壁部35bと、外壁部35cと、後壁部35dと、後側の接合フランジ部35eと、を一体形成して、水平断面でハット形状に形成されている。
【0051】
図1に示すように、上記センタピラー35は、その上部側の前後方向長さが下部側の前後方向長さに対して小さく形成されているが、当該センタピラー35は、その上下両端部を除いて、上部側から下部側にかけて、断面ハット形状に形成されている。
【0052】
図3に示すように、センタピラー35の前後の各接合フランジ部35a,35eは前後方向に延びており、これらの各接合フランジ部35a,35eはドアインナパネル32に接合固定されている。
【0053】
前壁部35bは、接合フランジ部35aの後端から車幅方向外方に延びている。同様に、後壁部35dは、接合フランジ部35eの前端から車幅方向外方に延びている。外壁部35cは、前壁部35bと後壁部35dとの車幅方向外端相互間を前後方向に延びて連結している。
【0054】
また上述したようにフロントドア10はリヤドア30よりも前後スパンが長くなるように形成している。このため図1に示すように、リヤドア30の前部に内蔵されたセンタピラー35は、ドア開口7の車両前後方向の中間位置よりも後方寄りに配置されている。
【0055】
次に、図1に示すように、フロントドア10(但し、図面では車両右側のドアを示している)は、ドアサッシュ部10Aとドア本体10Bとを備えている。
【0056】
フロントドア10は、車幅方向に凹設された鋼板製のドアインナパネル12と、該ドアインナパネル12に対面して設けられた鋼板製のドアアウタパネル11(図2図4参照)とを備え、これら両パネル11,12を図2図4に示すように、ヘミング結合して、一体化している。
【0057】
上述のドアインナパネル12は、図1に示すように、複数の開口部12b,12c,12eが形成されたインナパネル主板部12aと、このインナパネル主板部12aの前部から車幅方向外方に延びる前辺部12fと、インナパネル主板部12aの下部から車幅方向外方に延びる下辺部12dと、インナパネル主板部12aの後部から車幅方向外方に延びる後辺部12rとを備えている。
【0058】
上述のドアアウタパネル11は車室外側に配置されてフロントドア10の意匠面を形成している。ドアアウタパネル11と、該ドアアウタパネル11よりも車室内側に配置されたドアインナパネル12との間には図2図4に示すように、ドア内部空間13が形成されている。
【0059】
ドアインナパネル12は、図2に示すように、下辺部12dによってドア内部空間13の底面を、図3に示すように、後辺部12rによってドア内部空間13の後面を、夫々形成している。
【0060】
具体的には、下辺部12dは図1に示すように、ドアインナパネル12の下縁に沿って車両前後方向に延びており、図2に示すように、縦壁状のインナパネル主板部12aの下端から車幅方向外側へ略水平に段状に延びる下辺部基壁121dと、下辺部基壁121dの車幅外端から下方へ突片状に延びる下辺部車幅外壁122dとで一体形成されている。
【0061】
下辺部基壁121dは、車両上下方向に厚みを有するパネル状を成し、フロントドア10の下面部を形成している。
【0062】
下辺部車幅外壁122dは、車幅方向に厚みを有するパネル状を成し、該下辺部車幅外壁122dの下端は、ドアアウタパネル11の下端に対してヘミング結合されている。これにより、フロントドア10の下端部には下端ヘム部12dhが形成されている(図2参照)。
【0063】
ドアインナパネル12の下辺部12dを備えたフロントドア10の下部は、ドア閉時においてサイドシル3に対して車幅方向外側から車両側面視でラップするように形成している。
【0064】
具体的には図2に示すように、ドア閉時において、ドアインナパネル12は、インナパネル主板部12aの下部が、サイドシル3の上端フランジ3Ba,3Caに対して車幅方向外側に配置され互いに車幅方向に間隔を空けて隣接している。
【0065】
さらに図2に示すように、ドア閉時において、ドアインナパネル12は、下辺部基壁121dが、サイドシルレイン3Cの上壁3Cbに対して上方に配置され互いに上下方向に間隔を空けて隣接している。
【0066】
これらフロントドア10の下部およびサイドシル3は、上述した両者の間隔が夫々略一定の間隔を保ちながら車両前後方向に沿って延びている。
【0067】
また図2に示すように、ドアインナパネル12の下端部は、サイドシルレイン3Cの上壁3Cbよりも下方へ突き出すように延びており、ドア閉時において下辺部12dの略全体がサイドシル3と車両側面視でラップしている。
【0068】
また図1に示すように、後辺部12rは、ドアインナパネル12の後端に沿って車両上下方向に延びており、図3に示すように、縦壁状のインナパネル主板部12aの後端から車幅方向外側へ略水平に段状に延びる後辺部基壁121rと、後辺部基壁121rの車幅外端から車両後方へ突片状に延びる後辺部車幅外壁122rとで一体形成されている。
【0069】
後辺部基壁121rは、車両前後方向に厚みを有するパネル状を成し、フロントドア10の後面部を形成している。
【0070】
後辺部車幅外壁122rは、車幅方向に厚みを有するパネル状を成し、上述したように後辺部車幅外壁122rの後端とドアアウタパネル11の後端とがヘミング結合されている。これにより、フロントドア10の後端部には後端ヘム部12rhが形成されている。
【0071】
図3に示すように、ドアインナパネル12の後辺部12rを備えたフロントドア10の後部は、ドア閉時においてリヤドア30の前部に内蔵されているセンタピラー35の前側部分に対して車幅方向外側から車両側面視でラップするように形成している。
【0072】
また図1に示すように、フロントドア10は、上述のドアインナパネル12の前辺部12fが上下一対のヒンジブラケット8,8を介して車体側のヒンジピラー1に開閉可能を支持されている。
【0073】
フロントドア10の前辺部12fにおいて、上下一対のヒンジブラケット8,8のうちの上側のヒンジブラケット8と対応するドアインナパネル12には、上部ヒンジレインフォースメント14を設けている。
【0074】
同様に、フロントドア10の前辺部12fにおいて、上下一対のヒンジブラケット8,8のうちの下側のヒンジブラケット8と対応するドアインナパネル12には、下部ヒンジレインフォースメント15を設けている。
【0075】
図1に示すように、フロントドア10の後辺部12r上側におけるドアインナパネル12からドアサッシュ部10Aの後片部にかけて上下方向に延びるレインフォースメント16を設けている。後辺部12rの上下方向中間部におけるドアインナパネル12には、ラッチレインフォースメント17を設けている。
【0076】
また、ドアインナパネル12は、図1に示すように、ベルトライン部BLに沿って前後方向に延びるベルトラインレインフォースメント19を設けている。
【0077】
このベルトラインレインフォースメント19は上部ヒンジレインフォースメント14と、レインフォースメント16の下部との間に張架されたものである。
【0078】
また、図1に示すように、ベルトラインレインフォースメント19前部とドアインパクトバー21前部との間と、ラッチレインフォースメント17の直下部の後辺部12rとを、前高後低状に斜め前後方向に延びるスティフナ23を設けている。
該スティフナ23は、スポンジ部材やウレタン部材を介してドアアウタパネル11に当接されており、このスティフナ23によりドアアウタパネル11の張り剛性を確保するよう構成している。
【0079】
さらに同図に示すように、ブラケット20とレインフォースメント16との両者には、ガラスガイド24,25を取付けている。そして、これら前後一対のガラスガイド24,25に沿ってウインドガラスを昇降案内するように構成している。
【0080】
ドアインナパネル12のベルトラインレインフォースメント19よりも下方には、前辺部12fと後辺部12rとを繋ぐように車両前後方向に延びるドアインパクトバー21を備えている。
【0081】
ドアインパクトバー21は、その前部が後部に対して上下方向の上側に位置するよう前高後低状に傾斜して直線状に延びるバー本体部22と、前後両端においてドアインナパネル12の側へ接続する幅広接続部23f,23r(前側幅広接続部23fおよび後側幅広接続部23r)が形成されている。
【0082】
前後各側の幅広接続部23f,23rは共に、バー本体部22に対して幅広に形成されている。
【0083】
前後各側の幅広接続部23f,23rのうち、後側幅広接続部23rは、ドアインパクトバー21の延在方向の直交断面が、車幅方向内側に向けて開口する断面ハット形状に形成されている。
断面ハット形状の後側幅広接続部23rにおける幅方向の両外側には夫々、フランジ部231r,231rが形成されており、これらフランジ部231r,231rが後述する接続補強部材18を介して後辺部12rの下部(すなわち、後辺部12rと下辺部12dとのコーナー部)に車幅方向外側から接続されている。
【0084】
図3図4に示すように、ドアインパクトバー21は、ドア閉時においてセンタピラー35に対して車幅外側に配設され、ドアインパクトバー21の後側幅広接続部23rは、少なくとも一部が車両側面視でセンタピラー35の下部とラップ(重複)する。
【0085】
ドアインパクトバー21には図1図2に示すように、延在方向に沿って連続して延びる複数(当例では2つ)のビード221(稜線)が形成されており、主に側突時に車室内側へ向かう入力荷重に対して該ドアインパクトバー21自体の剛性を高めている。これらビード221は、ドアインパクトバー21の延在方向(長手方向)の前後各側の幅広接続部23f,23rを除く、バー本体部22のみに形成されるとともに、ドアインパクトバー21の幅方向において間隔を空けて共に車幅方向外側へ突状に形成されている。
【0086】
また図1図7に示すように、後辺部12rの下部から下辺部12dの後部にかけてドアインナパネル12には、接続補強部材18を設けている。
ドアインパクトバー21は、前側幅広接続部23fが上述した上部ヒンジレインフォースメント14に接合されるとともに、後側幅広接続部23rが接続補強部材18に接合されている。
【0087】
具体的には図5に示すように、ドアインパクトバー21の後側幅広接続部23rは、接続補強部材18を介してドアインナパネル12に接合されており、該接続補強部材18は、ドアインパクトバー21とドアインナパネル12との接合箇所を補強している。
【0088】
接続補強部材18は鋼板製であり、接続補強部材基壁181と車幅内壁182と車幅外壁183とで一体に形成している。
【0089】
接続補強部材基壁181は、下辺部基壁121dの後部および後辺部基壁121rの下部を覆うように車両側面視で下辺部基壁121dの後部から後辺部基壁121rの下部にかけてのコーナー形状に沿って湾曲形成されている。
【0090】
車幅内壁182は、接続補強部材基壁181の車幅内端からインナパネル主板部12aの後下コーナー形状に沿って縦壁状に延びている。車幅外壁183は、接続補強部材基壁181の車幅外端から後辺部車幅外壁122rおよび下辺部車幅外壁122dに沿って縦壁状に延びている。
【0091】
そして接続補強部材18は、車幅内壁182をインナパネル主板部12aに、車幅外壁183を後辺部車幅外壁122rおよび下辺部車幅外壁122dに、夫々スポット溶接等により一体に溶着することで、上述したようにドアインナパネル12に接合されている。
【0092】
さらに、ドアインパクトバー21は、後側幅広接続部23rの幅方向の両外側に備えたフランジ部231r,231rを接続補強部材18の車幅外壁183にスポット溶接等により一体に溶着することで、上述したように接続補強部材18を介してドアインナパネル12に接合されている。
【0093】
また、図1図7に示すように、フロントドア10の下辺部12dと、ドアインパクトバー21の後部の間には、これらを連結する補強ガセット40が設けられ、側突時に、該補強ガセット40に、これら下辺部12dと、ドアインパクトバー21の後部との間で突っ張る突っ張り棒の役目を果たさせるように構成している。
【0094】
補強ガセット40は鋼板製であり、図6図8(a)(b)に示すように、上端フランジ部41と下端フランジ部42とこれらを繋ぐ補強ガセット本体部43とで一体形成している。
【0095】
上端フランジ部41は、車幅方向に厚みを有するパネル状に形成されるとともに、下端フランジ部42は上下方向に厚みを有するパネル状に形成されている。
【0096】
図2図6に示すように、上記補強ガセット40は、車幅方向に延びる下端フランジ部42の車幅方向外端よりも車幅方向外側に、上下方向に延びる上端フランジ部41が位置するように、補強ガセット本体部43が車幅方向外側に迫り出す姿勢で形成されている。
【0097】
さらに補強ガセット40は図7図8(b)に示すように、下端フランジ部42が上端フランジ部41に対し前側寄りに形成されたものである。
【0098】
具体的には、補強ガセット40は、下端フランジ部42の前端が上端フランジ部41の前端に対し、下端フランジ部42の後端が上端フランジ部41の後端に対し、夫々前方側に位置するように、下端フランジ部42が上端フランジ部41に対して前寄りに形成されたものである。
【0099】
補強ガセット本体部43は図8(a)(b)に示すように、上端フランジ部41の下端41dと、下端フランジ部42の車幅外端42dとを直線状に繋ぐように上下方向に延びている。補強ガセット本体部43は、図8(b)に示すように、車両側面視で上方程後方に位置するように傾斜するとともに、図2図4図7に示すように、車両正面視で上方程車幅方向外側に位置するように直線状に傾斜している。
【0100】
図3図5図8(a)(b)に示すように、補強ガセット40には、延在方向に沿って延びる複数(2つ)の補強ビード44(稜線部)が形成されている。
【0101】
補強ビード44は、上端フランジ部41の上端から下端フランジ部42の車幅内端にかけて連続して、すなわち補強ガセット40の延在方向の全長に亘って形成されている。
【0102】
補強ビード44の延在方向における上端フランジ部41および補強ガセット本体部43の通過部分は、車幅方向内側に突出するとともに、下端フランジ部42の通過部分は上方に突出している。
【0103】
これら補強ビード44により補強ガセット40の延在方向の高剛性化を図り、また、側突時には、ドアインパクトバー21の後部から補強ガセット40を介して下辺部12dへ荷重を伝達する場合、その荷重伝達効率の向上を図るように構成したものである。
【0104】
補強ガセット40は図1図2図5図7に示すように、上端フランジ部41がドアインパクトバー21の後部、すなわちバー本体部22の後部において車幅方向内側から溶接等により接合されるとともに、下端フランジ部42が下辺部基壁121dの側に溶接等により接合される。
【0105】
図8に示すように、上端フランジ部41は、ドアインパクトバー21に接合可能に、該ドアインパクトバー21の前上後下状に傾斜して延びる方向に沿わせて前上後下状に傾斜した姿勢で形成している。
【0106】
さらに補強ガセット本体部43についても、前上後下状に傾斜するドアインパクトバー21と、水平な下辺部基壁121dとの上下方向の間隔が前方程広がることに応じて前方程上下方向の長さが長くなるように形成している(図8(b)参照)。すなわち補強ガセット40(補強ガセット本体部43)は前方程徐々に高背になるように形成されている。
【0107】
ここで図4図7に示すように、上述した接続補強部材18は、その前端が、ドアインパクトバー21の後端に有する後側幅広接続部23rの、ドアインナパネル12側への接合部位、すなわち、下辺部12dと後辺部12rとのコーナー部から、補強ガセット40の下辺部基壁121dとの接合部位に略相当する位置まで前方に延設している。
【0108】
そして補強ガセット40の下端フランジ部42は、接続補強部材18を介して下辺部基壁121dに溶接等により接合される。これにより、補強ガセット40と下辺部基壁121dとの接合箇所の剛性(すなわち補強ガセット40の突っ張りを下辺部基壁121dによって支持する支持力)を高めている。
【0109】
上述した本実施形態の車両の側部車体構造は図1に示すように、前部に車両上下方向に延びるセンタピラー35を内蔵するリヤドア30と、車両前後方向に延びるドアインパクトバー21を内蔵するフロントドア10と、リヤドア30およびフロントドア10によって閉塞可能に車体側部に開口形成されたドア開口7の下縁に沿って、センタピラー35の下部とドア閉時に車両側面視でラップするように配設されたサイドシル3と、を備えた車両の側部車体構造であって、図1図3に示すように、ドアインパクトバー21の後側幅広接続部23r(後端)はセンタピラー35に車両側面視でラップするように配置され、図1図7に示すように、フロントドア10のドア内部空間13(内部)に、該フロントドア10の下部とドアインパクトバー21の後部とを連結する補強ガセット40を備え、図2に示すように、フロントドア10の下部における補強ガセット40との連結部分に対して下方には、サイドシル3が隣接して配設されたものである。
【0110】
上記構成によれば、側突時に補強ガセット40に、ドアインパクトバー21の後部とフロントドア10の下部との間で突っ張る突っ張り部材としての役目を果たさせることでフロントドア10およびリヤドア30(以下、単に「ドア」とも称する)の下端がサイドシル3を乗り越え車室内側に侵入するのを抑制できる。
【0111】
詳述すると、一般の車両は、車体側部に開口形成される乗員乗降用のドア開口7を車両前後方向に区分けするように、車両上下方向に延びる車体強度部材としてのセンタピラーが配設されている。センタピラーは、上端が、ドア開口7の上縁に沿って車両前後方向に延びるルーフサイドレール5に対して、下端が、ドア開口7の下縁に沿って車両前後方向に延びるサイドシル3に対して、夫々一体に接合されると共に、これらルーフサイドレール5とサイドシル3との夫々に対する、車両側面視におけるラップ量も十分確保されている。
【0112】
このため、側突時にドア開口7に備えたドアが車室内側に侵入することがないようにセンタピラーによって受け止めることができる。
【0113】
これに対して本実施形態のように、センタピラー35を車体側ではなくドア側に備えた構成においては、センタピラー35がルーフサイドレール5やサイドシル3等の車体側強度部材に対して直接接続されておらず、ドア閉時の車両側面視における、これら車体側強度部材とのラップ量についても、ドア自体の車体に対するラップ量の範囲でしか確保できない。このためセンタピラー35をドア側に備えた側部車体構造における側突対策として、リヤドア30の前部に内蔵したセンタピラー35に、フロントドア10に車両前後方向に延びるように内蔵されたドアインパクトバー21の後側幅広接続部23r(後端)を車両側面視でラップさせることが行われている。
【0114】
しかしながら、側突時に、車両前後方向に連続して開口するドア開口7の車両前後方向の中間付近に側突荷重が入力された場合には、その側突荷重は、センタピラー35に集中する。さらに、センタピラー35にドアインパクトバー21の後端を車両側面視でラップさせることで、センタピラー35に集中する側突荷重をドアインパクトバー21の側へある程度分散できるが、ドアインパクトバー21が内蔵されるフロントドア10自体の範囲内における荷重分散効果しか期待できない。
【0115】
このため、上記構成においても、側突時にドア開口7に備えたドアが車室内側に侵入しないようにセンタピラー35によって受け止めきれない(踏ん張りきれない)ことが懸念される。
【0116】
そこで本実施形態においては、フロントドア10の内部に、該フロントドア10の下部とドアインパクトバー21の後部とを連結する補強ガセット40を備えることで、側突時に補強ガセット40に、ドアインパクトバー21の後部とフロントドア10の下部との間で突っ張る突っ張り部材としての役目を果たさせることができる。
【0117】
詳しくは本実施形態の車両の側部車体構造は、フロントドア10の下部に対して、その下方で車両前後方向に延びるサイドシル3(の上壁3Cb)が隣接して配設されたものである(図2参照)。このため側突時に補強ガセット40は、下部がフロントドア10の下部、すなわち下辺部基壁121dを介して車体側、すなわちサイドシル3の特にサイドシルレイン3Cの上壁3Cbに対して突っ張ることができ、結果として、共に高剛性に構成されたドアインパクトバー21とサイドシル3との間で優れた突っ張り力を得ることができる。
【0118】
従って、ドアの下端(下辺部車幅外壁122d)がサイドシル3に車幅方向外側から衝突しながら該サイドシル3を乗り越えてドア開口7から車室内側に侵入することを抑制できる。
【0119】
すなわち、本実施形態の車両の側部車体構造は上述したように、ドアインパクトバー21の後端がセンタピラー35に車両側面視でラップし、さらに補強ガセット40が、ドアインパクトバー21の後部、すなわち車両前後方向においてセンタピラー35近傍に連結されてしている。加えて、フロントドア10の下部とサイドシル3とは、補強ガセット40の下部が側突時にフロントドア10の下部を介して車体側のサイドシル3の側へ突っ張ることが可能に上下各側に隣接して配置している。
【0120】
これらにより本実施形態の車両の側部車体構造は、側突時にセンタピラー35に集中する荷重を、ドアインパクトバー21から即時に補強ガセット40を経由して、車体側のサイドシル3の側へと効率よく分散できる。
【0121】
従って本実施形態の車両の側部車体構造は、センタピラー35を車体側ではなくドア(リヤドア30)側に備えた構成でありながら側突時にドアが車室内側に侵入することがないようにセンタピラー35によって受け止めることができる。
【0122】
この発明の態様として、車両が、フロントドア10がその前端部で車体にヒンジブラケット8(ヒンジ)を介して結合されるとともに、リヤドア30がその後端部で車体にヒンジ(図示省略)を介して結合され、且つフロントドア10の前後長さに対してリヤドア30の前後長さが短い、観音開き構造のドアを有する車両である(図1参照)。
【0123】
上記構成によれば、フロントドア10の前後長さに対してリヤドア30の前後長さが短いことに起因してセンタピラー35は、ドア開口7の車両前後方向の中間位置に対して後寄りに配置されることになるが、そのズレによる側突時の弊害を補強ガセット40によってカバーすることができる。
【0124】
詳述すると、本実施形態のように、フロントドア10の前後長さに対してリヤドア30の前後長さが短い構成においては、リヤドア30の前部に内蔵したセンタピラー35が、ドア閉時において、車体側部に形成したドア開口7の車両前後方向の中間位置から後方へズレた位置に配置されることになる。
【0125】
そうすると、側突時に、車室内側に向かう側突荷重がリヤドア30と比してフロントドア10側に入力され易くなることから、側突荷重をリヤドア30側に備えたセンタピラー35によって受け止めることが困難になるおそれがある。
【0126】
これに対して本実施形態においては、車両前後方向に延びるフロントドア10に内蔵したドアインパクトバー21の後部に補強ガセット40を連結したため、側突時に側突荷重がフロントドア10に入力された場合における、センタピラー35によるフロントドア10の受け止め性能の低下を補強ガセット40によってカバーすることができる。
【0127】
この発明の態様として、補強ガセット40は、上端フランジ部41(上端)側が下端フランジ部42(下端)側に対し車外側に位置するように備えたものである(図2図6図7参照)。
【0128】
上記構成によれば、側突時に車室内側に向かう側突荷重がドアに入力されることによって、ドアインパクトバー21が車室内側に押され、これに従って補強ガセット40のドア下部、すなわち下辺部基壁121dに対する突っ張り力を大きくできる。
【0129】
詳述すると、側突時に車室内側に向かう側突荷重がドアに入力されることによって、ドアインパクトバー21が車室内側に押されることに伴って、補強ガセット40は、上端フランジ部41側が車幅方向内側に変位するようにドアインパクトバー21によって付勢される。
【0130】
このとき、補強ガセット40は、上端フランジ部41側が下端フランジ部42側に対し車幅方向外側に位置するような図2に示すような姿勢(車両正面視で上外下内状の傾斜姿勢)から徐々に起立(直立)した姿勢となるように、すなわち車両上下方向の長さ成分が長くなるように付勢される。
【0131】
このため、補強ガセット40は、側突荷重によってドアインパクトバー21が車幅方向内側へ押し込まれるに従って下辺部基壁121dに対する突っ張り力(押さえ付け力)を高めることができる。
【0132】
従って、ドアの下端部(下辺部車幅外壁122d)がサイドシル3を乗り越えないようにフロントドア10の下辺部基壁121dをサイドシル3の側へ補強ガセット40により押さえることができる。
【0133】
この発明の態様として、フロントドア10には図1図7に示すように、ドアインパクトバー21の後側幅広接続部23r(後端)が接続されるドアインナパネル12(ドアインナ)と、ドアインパクトバー21の後側幅広接続部23rとドアインナパネル12との間に介在し、これらの接続箇所を補強する接続補強部材18とを備え、図2図5図6に示すように、ドアインナパネル12には、補強ガセット40が連結される下辺部基壁121d(ドア下部)を備え、接続補強部材18を、下辺部基壁121dにおける補強ガセット40との連結部位まで延ばし(図4図7参照)、補強ガセット40は、接続補強部材18を介して下辺部基壁121dに連結するものである。
【0134】
上記構成によれば、補強ガセット40を、接続補強部材18を介して下辺部基壁121dに連結したため、補強ガセット40の下部が連結される下辺部基壁121d側の剛性を高めて補強ガセット40の突っ張り力を向上させることができる。
【0135】
さらに、接続補強部材18によって、下辺部基壁121dにおける補強ガセット40との連結部位の剛性を向上させることで、側突時に、補強ガセット40から、接続補強部材18によって補強された下辺部基壁121d側を介してサイドシル3の側へと伝達される側突荷重の伝達性能も向上させることができる。
【0136】
従って、側突時にセンタピラー35に集中する荷重を、ドアインパクトバー21から補強ガセット40を経由して、車体側のサイドシル3の側へとより一層効率よく分散できる。
【0137】
この発明の態様として、補強ガセット40に長手方向に延びる複数の補強ビード44(稜線部)を備えたものである(図7図8(a)参照)。
【0138】
上記構成によれば、補強ガセット40は、板状に形成することにより重量の増加を抑制しつつ、補強ビード44によって補強ガセット40の長手方向の高剛性化を図ることで突っ張りに対する自身の剛性を高めることができる。
【0139】
さらに補強ガセット40は、長手方向に延びる複数の補強ビード44を備えることで、該補強ガセット40を介してドアインパクトバー21から下辺部基壁121dへの側突荷重の伝達効率も高めることができる。
【0140】
この発明の態様として、補強ガセット40を、下端フランジ部42(下端)が上端フランジ部41(上端)に対し前方側に位置するように形成したものである(図1図7図8(b)参照)。
【0141】
上記構成によれば、補強ガセット40を例えば、上下各端が共に車両前後方向に略同じ位置になるように形成した場合と比して該補強ガセット40の下部を下辺部基壁121dにおける、センタピラー35から前方へより離間した位置に連結させることができる。
【0142】
これにより、側突時にドアインパクトバー21の後部及びセンタピラー35に入力される車室内側へ向かって入力される側突荷重をサイドシル3の車両前後方向に亘って広範囲で受けることができる。
【0143】
特に本実施形態のように、フロントドア10の前後長がリヤドア30の前後長に対し長い構成においては、リヤドア30の前部に内蔵したセンタピラー35は、上述したように、ドア開口7の車両前後方向の中心に対して後寄りに配置されることになる。
【0144】
この点においても、サイドシル3における、センタピラー35の下部とのラップ部分と、補強ガセット40の下部の直下部分との、車両前後方向の間隔をより広げることに寄与する。このため、結果として側突時にドアインパクトバー21の後部及びセンタピラー35に入力される車室内側へ向かう入力荷重をサイドシル3の、さらに広い範囲で受けることができる。
【0145】
この発明の態様として、ドアインパクトバー21の後側幅広接続部23r(後端)はセンタピラー35の下部と車両側面視でラップする構造としたものである(図1図3参照)。
【0146】
上記構成によれば、フロントドア10の下部とドアインパクトバー21の後部とを上下方向に繋ぐ補強ガセット40の(上下方向の長さの)短縮化を図ることができ、結果的に補強ガセット40の曲げ剛性の向上および軽量化に寄与することができる。
【0147】
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではなく様々な実施形態で形成することができる。
【符号の説明】
【0148】
3…サイドシル
7…ドア開口
10…フロントドア
8…ヒンジブラケット(ヒンジ)
12…ドアインナパネル(ドアインナ)
13…ドア内部空間(フロントドアの内部)
18…接続補強部材
21…ドアインパクトバー
23r…後側幅広接続部(ドアインパクトバーの後端)
30…リヤドア
35…センタピラー
40…補強ガセット
41…上端フランジ部(補強ガセットの上端)
42…下端フランジ部(補強ガセットの下端)
43…補強ガセット本体部
44…補強ビード(稜線部)
121d…下辺部基壁(フロントドアの下部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8