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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】幅広プライの切断装置
(51)【国際特許分類】
   B29D 30/46 20060101AFI20231129BHJP
【FI】
B29D30/46
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019160332
(22)【出願日】2019-09-03
(65)【公開番号】P2021037699
(43)【公開日】2021-03-11
【審査請求日】2022-07-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩谷 亮佑
(72)【発明者】
【氏名】加瀬 光輝
【審査官】松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-020416(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2009-0043263(KR,A)
【文献】特開2005-053112(JP,A)
【文献】特開2006-281351(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26D 1/04-1/11
B26D 3/00
B29D 30/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
並列した多数のコードと、これらコードを覆うトッピングゴムとで構成された幅広プライを、複数の幅狭プライに切断する装置であって、
前記幅広プライを繰り出す、繰り出しユニットと、
前記幅狭プライを巻き取る、巻き取りユニットと、
前記繰り出しユニットと、前記巻き取りユニットとの間に位置する、切断ユニットと、
を備え、
前記切断ユニットが、前記幅広プライを切断する複数の切断刃と、これら切断刃を保持する保持部材と、前記幅広プライに対して前記保持部材を移動させる移動部材とを備え、
前記繰り出しユニットが、回転して前記幅広プライを繰り出すドラムと、前記ドラムの回転した回数を計測するエンコーダーとを備え、
前記ドラムの回転した回数に応じて、前記保持部材の移動が制御され
前記繰り出しユニットから前記巻き取りユニットに向かって移動する幅広プライの移動方向に対して交差する方向に、前記移動部材が前記保持部材を移動させることで、前記切断刃による前記幅広プライの切断を維持しながら、前記幅広プライに対する前記切断刃の当たり位置が摩耗していない部分に変化する、幅広プライの切断装置。
【請求項2】
並列した多数のコードと、これらコードを覆うトッピングゴムとで構成された幅広プライを、複数の幅狭プライに切断する装置であって、
前記幅広プライを繰り出す、繰り出しユニットと、
前記幅狭プライを巻き取る、巻き取りユニットと、
前記繰り出しユニットと、前記巻き取りユニットとの間に位置する、切断ユニットと、
を備え、
前記切断ユニットが、前記幅広プライを切断する複数の切断刃と、これら切断刃を保持する保持部材と、前記幅広プライに対して前記保持部材を移動させる移動部材とを備え、
前記巻き取りユニットが、回転して前記幅狭プライを巻き取るドラムと、前記ドラムの回転した回数を計測するエンコーダーとを備え、
前記ドラムの回転した回数に応じて、前記保持部材の移動が制御され、
前記繰り出しユニットから前記巻き取りユニットに向かって移動する幅広プライの移動方向に対して交差する方向に、前記移動部材が前記保持部材を移動させることで、前記切断刃による前記幅広プライの切断を維持しながら、前記幅広プライに対する前記切断刃の当たり位置が摩耗していない部分に変化する、幅広プライの切断装置。
【請求項3】
並列した多数のコードと、これらコードを覆うトッピングゴムとで構成された幅広プライを、複数の幅狭プライに切断する装置であって、
前記幅広プライを繰り出す、繰り出しユニットと、
前記幅狭プライを巻き取る、巻き取りユニットと、
前記繰り出しユニットと、前記巻き取りユニットとの間に位置する、切断ユニットと、
前記繰り出しユニットと、前記切断ユニットとの間に、前記繰り出しユニットから前記切断ユニットに向かって移動した幅広プライの長さを計測する測長器と、
を備え、
前記切断ユニットが、前記幅広プライを切断する複数の切断刃と、これら切断刃を保持する保持部材と、前記幅広プライに対して前記保持部材を移動させる移動部材とを備え、
前記幅広プライの長さに応じて、前記保持部材の移動が制御され、
前記繰り出しユニットから前記巻き取りユニットに向かって移動する幅広プライの移動方向に対して交差する方向に、前記移動部材が前記保持部材を移動させることで、前記切断刃による前記幅広プライの切断を維持しながら、前記幅広プライに対する前記切断刃の当たり位置が摩耗していない部分に変化する、幅広プライの切断装置。
【請求項4】
並列した多数のコードと、これらコードを覆うトッピングゴムとで構成された幅広プライを、複数の幅狭プライに切断する装置であって、
前記幅広プライを繰り出す、繰り出しユニットと、
前記幅狭プライを巻き取る、巻き取りユニットと、
前記繰り出しユニットと、前記巻き取りユニットとの間に位置する、切断ユニットと、
前記切断ユニットと、前記巻き取りユニットとの間に、前記切断ユニットから前記巻き取りユニットに向かって移動した幅狭プライの長さを計測する測長器と、
を備え、
前記切断ユニットが、前記幅広プライを切断する複数の切断刃と、これら切断刃を保持する保持部材と、前記幅広プライに対して前記保持部材を移動させる移動部材とを備え、
前記幅狭プライの長さに応じて、前記保持部材の移動が制御され、
前記繰り出しユニットから前記巻き取りユニットに向かって移動する幅広プライの移動方向に対して交差する方向に、前記移動部材が前記保持部材を移動させることで、前記切断刃による前記幅広プライの切断を維持しながら、前記幅広プライに対する前記切断刃の当たり位置が摩耗していない部分に変化する、幅広プライの切断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、幅広プライの切断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤの構成要素としてのバンドは、螺旋状に巻かれたコードを含む。バンドの形成には、帯状プライが用いられる。帯状プライは、並列した複数本のコードと、これらコードを覆うトッピングゴムとで構成される。バンドは、この帯状プライをタイヤの周方向に螺旋状に巻いて形成される。
【0003】
下記の特許文献1にも開示されているように、帯状プライは通常、図3に示された幅広プライ2を切断して得られる。この幅広プライ2は、並列した多数のコード4と、これらコード4を覆うトッピングゴム6とで構成される。
【0004】
図4には、幅広プライ2を切断して帯状プライを得るための切断装置8が示される。この切断装置8は、複数の切断刃10と、これら切断刃10を保持する保持部材12と、この保持部材12を支持する支持部材14とを備える。
【0005】
図5には、幅広プライ2を切断している状況が示される。図5において、左右方向は幅広プライ2の幅方向である。上下方向は、幅広プライ2の長さ方向である。この図5において、矢印Aは幅広プライ2の移動方向を表す。紙面の上側が切断装置8の上流側であり、下側が切断装置8の下流側である。
【0006】
図示されないが、幅広プライ2において多数のコード4は、幅方向に所定の間隔をあけて配置される。この幅広プライ2において、それぞれのコード4は長さ方向に延びる。
【0007】
図5に示されるように、切断装置8に設けられる複数の切断刃10は幅広プライ2の幅方向に間隔をあけて配置される。図示されないが、切断刃10は、一のコード4とこの一のコード4の隣に位置する他のコード4との間にセットされる。この切断装置8では、幅広プライ2を下流側に移動させながら、切断刃10によってこの幅広プライ2を切断することにより、複数本の幅狭プライ16が得られる。この幅狭プライ16が、帯状プライである。
【0008】
切断刃10は、幅広プライ2を切断することにより徐々に摩耗する。摩耗は、切断刃10の切断性能を損なう。
【0009】
切断刃10は、その一部において幅広プライ2を切断する。この一部が摩耗しても、切断に関与していない残りの部分は十分な切断性能を有する。そこで、図4に示された切断装置8は、幅広プライ2に対する切断刃10の位置(以下、切断刃10の当たり位置とも称される。)を変えることができる位置変更手段18を有する。
【0010】
この切断装置8では、位置変更手段18は、保持部材12と支持部材14との間に位置する。位置変更手段18は、積層された複数枚のスペーサー20を有する。幅広プライ2の切断により得られる幅狭プライ16の切断面に、ささくれ等が確認されると、スペーサー20を除去又は追加することで切断刃10の当たり位置が変えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2012-131111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
切断刃10の当たり位置を調整するとき、切断装置8は停止させられる。この当たり位置の調整は、タイヤの生産性に影響する。
【0013】
切断刃10の当たり位置の調整の程度は、スペーサー20の厚さに依存する。厚いスペーサー20を用いれば、当たり位置の調整頻度は低下する。しかし、切断刃10のうち切断に関与できない部分の割合が増加してしまう。これに対して、薄いスペーサー20を用いれば、切断刃10のうち切断に関与できない部分の割合が低下する。しかし、当たり位置の調整頻度が増加するので、この調整のために切断装置8を停止させる機会が増加してしまう。
【0014】
タイヤの生産性向上の観点から、切断装置8を停止させることなく当たり位置を調整でき、切断刃10の略全体を幅広プライ2の切断に使用できる、幅広プライ2の切断装置8が求められている。
【0015】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、タイヤの生産性の向上に貢献できる、幅広プライの切断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の一態様に係る幅広プライの切断装置は、並列した多数のコードと、これらコードを覆うトッピングゴムとで構成された幅広プライを、複数の幅狭プライに切断する装置であって、前記幅広プライを繰り出す繰り出しユニットと、前記幅狭プライを巻き取る巻き取りユニットと、前記繰り出しユニットと、前記巻き取りユニットとの間に位置する、切断ユニットと、を備える。前記切断ユニットは、前記幅広プライを切断する複数の切断刃と、これら切断刃を保持する保持部材と、前記幅広プライに対して前記保持部材を移動させる移動部材とを備える。前記繰り出しユニットから前記巻き取りユニットに向かって移動する幅広プライの移動方向に対して交差する方向に、前記移動部材が前記保持部材を移動させることで、前記切断刃による前記幅広プライの切断を維持しながら、前記幅広プライに対する前記切断刃の当たり位置が変化する。
【0017】
好ましくは、この幅広プライの切断装置では、前記繰り出しユニットは、回転して前記幅広プライを繰り出すドラムと、前記ドラムの回転数を計測するエンコーダーとを備える。前記ドラムの回転数に応じて、前記保持部材の移動が制御される。
【0018】
好ましくは、この幅広プライの切断装置では、前記巻き取りユニットは、回転して前記幅狭プライを巻き取るドラムと、前記ドラムの回転数を計測するエンコーダーとを備える。前記ドラムの回転数に応じて、前記保持部材の移動が制御される。
【0019】
好ましくは、この幅広プライの切断装置は、前記繰り出しユニットと、前記切断ユニットとの間に、前記繰り出しユニットから前記切断ユニットに向かって移動した幅広プライの長さを計測する測長器を備える。前記幅広プライの長さに応じて、前記保持部材の移動が制御される。
【0020】
好ましくは、この幅広プライの切断装置は、前記切断ユニットと、前記巻き取りユニットとの間に、前記切断ユニットから前記巻き取りユニットに向かって移動した幅狭プライの長さを計測する測長器を備える。前記幅狭プライの長さに応じて、前記保持部材の移動が制御される。
【発明の効果】
【0021】
本発明の幅広プライの切断装置によれば、この切断装置を停止させることなく切断刃の当たり位置を調整でき、切断刃の略全体を幅広プライの切断に使用できる。この幅広プライの切断装置は、タイヤの生産性の向上に貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る幅広プライの切断装置の一例が示された概略図である。
図2図2は、図1の切断装置の一部が示された概略図である。
図3図3は、幅広プライの一部が示された斜視図である。
図4図4は、従来の切断装置の一部が示された概略図である。
図5図5は、幅広プライの切断を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて、本発明が詳細に説明される。
【0024】
図1には、本発明の一実施形態に係る幅広プライ32の切断装置34の一例が概略的に示される。この切断装置34は、幅広プライ32を複数本の幅狭プライ36に切断する装置である。
【0025】
幅広プライ32は、図3に示された幅広プライ2のように、並列した多数のコードとこれらコードを覆うトッピングゴムとで構成される。詳述しないが、この切断装置34では、図4に示された従来の切断装置8と同様、一のコードと、この一のコードの隣に位置する他のコードとの間において、幅広プライ32が切断される。したがって、この切断により得られる幅狭プライ36(帯状プライとも称される。)は、並列した複数のコードと、これらコードを覆うトッピングゴムとで構成される。
【0026】
コードは、有機繊維からなる。この有機繊維としては、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、レーヨン繊維及びアラミド繊維が例示される。バンドのコードとして、スチールコードが用いられることもある。
【0027】
トッピングゴムは、未加硫状態のゴム組成物(以下、未加硫ゴムとも称される。)である。未加硫ゴムは、バンバリーミキサー等の混錬機を用いて基材ゴム及び薬品を混合して得られる。この基材ゴムとしては、天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)及びブチルゴム(IIR)が例示される。薬品としては、カーボンブラックやシリカのような補強剤、アロマチックオイル等のような可塑剤、酸化亜鉛等のような充填剤、ステアリン酸のような滑剤、老化防止剤、加工助剤、硫黄及び加硫促進剤が例示される。基材ゴム及び薬品の選定、選定した薬品の含有量等は、このゴムが適用される構成要素の仕様に応じて、適宜決められる。
【0028】
この切断装置34は、繰り出しユニット38と、巻き取りユニット40と、切断ユニット42とを備える。繰り出しユニット38は、幅広プライ32を繰り出す。巻き取りユニット40は、幅狭プライ36を巻き取る。切断ユニット42は、繰り出しユニット38と巻き取りユニット40との間に位置し、幅広プライ32を切断し、幅狭プライ36を形成する。
【0029】
この切断装置34はさらに、処理ユニット44を備える。この処理ユニット44は、例えばCPU等の演算部、RAM及びROMを含む記憶部等を有するマイクロコンピュータにより構成される。処理ユニット44は、記憶部に記憶されたプログラムを演算部が実行することによって所定の機能を発揮する。この処理ユニット44は、切断装置34の構成要素と通信ケーブル46で繋げられる。後述する、繰り出しユニット38、巻き取りユニット40及び切断ユニット42の動作は、この処理ユニット44によって制御される。
【0030】
繰り出しユニット38は、回転可能に支持されたドラム48を備える。この切断装置34では、このドラム48に幅広プライ32が巻かれる。図示されないが、この繰り出しユニット38は駆動手段(例えば、モーター)を備える。この駆動手段がドラム48を回転させることで、このドラム48から幅広プライ32が繰り出される。この繰り出しユニット38は、回転して幅広プライ32を繰り出すドラム48を備える。
【0031】
巻き取りユニット40は、回転可能に支持されたドラム50を備える。この切断装置34では、このドラム50に幅狭プライ36が巻かれる。図示されないが、この巻き取りユニット40は駆動手段(例えば、モーター)を備える。この駆動手段がドラム50を回転させることで、このドラム50に幅狭プライ36が巻き取られる。この巻き取りユニット40は、回転して幅狭プライ36を巻き取るドラム50を備える。この切断装置34では、一枚の幅広プライ32から、複数の幅狭プライ36が形成される。この巻き取りユニット40は、形成される幅狭プライ36の数と同数のドラム50を有する。
【0032】
図2には、切断ユニット42の要部が示される。この切断ユニット42は、切断刃52と、保持部材54と、移動部材56とを備える。
【0033】
切断刃52は、超硬合金からなる刃物、すなわち、超硬刃である。この切断装置34は幅広プライ32を切断して複数の幅狭プライ36を形成するので、切断ユニット42は幅広プライ32を切断する複数の切断刃52を有する。この切断ユニット42では、複数の切断刃52は幅広プライ32の幅方向に間隔をあけて配置される。この間隔は、形成される幅狭プライ36の幅を考慮して決められる。
【0034】
保持部材54は、切断刃52を保持する。この保持部材54は、切断刃52がセットされるホルダー58と、このホルダー58を支持する支持フレーム60とを備える。この切断ユニット42には複数の切断刃52が設けられるので、これら切断刃52のセットのために、複数のホルダー58が設けられる。
【0035】
詳述しないが、この切断装置34では、ホルダー58は、コード4を切断する切断時の抵抗よりも小さな抵抗で幅方向に切断刃52が移動できるように、この切断刃52を保持する。この切断刃52は、フローティングカッターとも称される。
【0036】
移動部材56は、幅広プライ32に対して保持部材54を移動させる。この移動部材56は、ロッド部62と、駆動部64と、伝達部66と、検出部68とを備える。ロッド部62は、棒状であり、その先端に支持フレーム60が固定される。駆動部64は、モーター、詳細にはインバーターモーターである。
【0037】
伝達部66は、駆動部64において発生させた回転運動を直線運動としてロッド部62に伝達する。言い換えれば、この伝達部66は、駆動部64の回転運動をロッド部62の直線運動に変換する。
【0038】
図示されないが、この切断装置34では、伝達部66の動力伝達機構として、ウォームギアと送りネジ機構とが採用されている。この伝達部66はウォームシャフトとウォームギアと備える。この移動部材56において、前述のロッド部62は送りネジ機構のネジ軸であり、前述のウォームギアはこのネジ軸が螺合するナットとしても機能する。この切断装置34では、市販のスクリュージャッキが伝達部66として用いられている。
【0039】
この切断装置34では、駆動部64がウォームシャフトを回転させることでウォームギアが回転する。ウォームギアが回転すると、ロッド部62が上下に移動する。検出部68はウォームシャフトが回転した量と回転した回数を検出する。この回転量及び回転数に関するデータは、処理ユニット44に入力される。処理ユニット44では、これらのデータに基づいて、例えば、切断刃52の位置が把握される。この切断装置34では、市販のアブソコーダが検出部68として用いられている。
【0040】
この切断装置34では、移動部材56の駆動部64を駆動させてロッド部62を下方に動かすと、保持部材54は下降する。ロッド部62を上方に動かすと、保持部材54が上昇する。この移動部材56は、保持部材54を上下に移動させる。
【0041】
この切断装置34では、繰り出しユニット38から巻き取りユニット40に向かって幅広プライ32は移動する。図2においては、紙面の左側から右側に向かって幅広プライ32は移動し、切断ユニット42を通過する。この切断装置34では、幅広プライ32が切断ユニット42を通過することにより、切断刃52が幅広プライ32を切断する。
【0042】
前述したように、この切断装置34では、移動部材56は保持部材54を上下に移動させる。この保持部材54の移動方向は、切断ユニット42を通過する幅広プライ32の移動方向と交差する。つまり、移動部材56は、幅広プライ32の移動方向に対して交差する方向に、保持部材54を移動できる。詳細には、この切断装置34では、移動部材56は、幅広プライ32の移動方向に対して直交する方向に、保持部材54を移動できる。
【0043】
この切断装置34では、移動部材56のロッド部62は保持部材54の支持フレーム60を支持し、切断刃52はホルダー58を介してこの支持フレーム60に固定される。このため、保持部材54が上下に移動すると、切断刃52も上下に移動する。
【0044】
この切断装置34は、幅広プライ32の移動方向に対して交差する方向に、移動部材56が保持部材54を移動させることで、切断刃52による幅広プライ32の切断を維持しながら、この幅広プライ32に対する切断刃52の当たり位置(切断刃52の切断位置とも称される。)が変化する。具体的には、移動部材56が、水平方向に移動する幅広プライ32に対して切断刃52を下向きに移動させることで、この切断装置34は、切断刃52による幅広プライ32の切断を維持しながら、切断刃52の切断位置を上方に変化できる。このため、切断刃52の摩耗が進み、切断刃52の切れ味、すなわち切断性能の低下が懸念される場合、この切断装置34は、幅広プライ32の切断動作を停止させることなく、切断刃52の当たり位置を変えることができる。この切断刃52の当たり位置は、従来の切断装置8のように段階的ではなく、連続的に変えられるので、切断刃52はその略全体が幅広プライ32の切断に関与できる。この切断装置34は、この切断装置34を停止させることなく切断刃52の当たり位置を調整でき、切断刃52の略全体を幅広プライ32の切断に使用できる。この切断装置34は、タイヤの生産性の向上に貢献できる。
【0045】
前述したように、この切断装置34では、処理ユニット44が切断ユニット42の動作を制御する。特に、この処理ユニット44が移動部材56(具体的には、移動部材56における駆動部64としてのモーター)の動作を制御することで、保持部材54の移動が精密に制御できる。保持部材54の移動のタイミング、移動量及び移動速度が的確に設定されるので、切断刃52の当たり位置を効果的に変化させながら、幅広プライ32が切断される。切断刃52の略全体が幅広プライ32の切断に使用できるので、この切断装置34は切断刃52の交換頻度を効果的に低減できる。この切断装置34は、タイヤの生産性の向上に貢献できる。この観点から、この切断装置34は、移動部材56の動作を制御する処理ユニット44を備えるのが好ましい。
【0046】
ところで、切断刃52の摩耗状態は幅広プライ32の切断長さと密接に関係する。このため、前述の移動部材56の動作の制御は、幅広プライ32の切断長さと、切断刃52の摩耗状態との関係が考慮される。したがって、幅広プライ32の切断長さを把握できれば、この関係に基づいて、処理ユニット44が移動部材56の動作を制御できる。
【0047】
この切断装置34では、繰り出しユニット38がドラム48の回転数を計測するエンコーダー70を備えることができる。エンコーダー70で計測されたドラム48の回転数は、切断ユニット42にて切断された幅広プライ32の長さに対応する。エンコーダー70でドラム48の回転数を計測することで、幅広プライ32の切断長さが把握できる。この切断装置34では、エンコーダー70で計測されたドラム48の回転数に応じて保持部材54の移動が制御できるので、切断刃52の当たり位置を効果的に変化させながら、幅広プライ32が切断される。切断刃52の略全体が幅広プライ32の切断に使用できるので、この切断装置34は切断刃52の交換頻度を効果的に低減できる。この切断装置34は、タイヤの生産性の向上に貢献できる。この観点から、この切断装置34では、繰り出しユニット38がドラム48の回転数を計測するエンコーダー70を備え、計測したドラム48の回転数に応じて、保持部材54の移動が制御されるのが好ましい。
【0048】
この切断装置34では、巻き取りユニット40がドラム50の回転数を計測するエンコーダー72を備えることができる。エンコーダー72で計測されたドラム50の回転数は、幅広プライ32を切断して得られる幅狭プライ36の長さに対応する。エンコーダー72でドラム50の回転数を計測することで、幅広プライ32の切断長さが把握できる。この切断装置34では、エンコーダー72で計測されたドラム50の回転数に応じて保持部材54の移動が制御できるので、切断刃52の当たり位置を効果的に変化させながら、幅広プライ32が切断される。切断刃52の略全体が幅広プライ32の切断に使用できるので、この切断装置34は切断刃52の交換頻度を効果的に低減できる。この切断装置34は、タイヤの生産性の向上に貢献できる。この観点から、この切断装置34では、巻き取りユニット40がドラム50の回転数を計測するエンコーダー72を備え、計測したドラム50の回転数に応じて、保持部材54の移動が制御されてもよい。
【0049】
この切断装置34は、繰り出しユニット38と切断ユニット42との間に、測長器74を備えることができる。この測長器74は、繰り出しユニット38から切断ユニット42に向かって移動した幅広プライ32の長さを計測する。測長器74で計測された幅広プライ32の長さは、切断ユニット42にて切断された幅広プライ32の長さに対応する。測長器74で幅広プライ32の長さを計測することで、幅広プライ32の切断長さが把握できる。この切断装置34では、測長器74で計測された幅広プライ32の長さに応じて保持部材54の移動が制御できるので、切断刃52の当たり位置を効果的に変化させながら、幅広プライ32が切断される。切断刃52の略全体が幅広プライ32の切断に使用できるので、この切断装置34は切断刃52の交換頻度を効果的に低減できる。この切断装置34は、タイヤの生産性の向上に貢献できる。この観点から、この切断装置34は、繰り出しユニット38と切断ユニット42との間に、繰り出しユニット38から切断ユニット42に向かって移動した幅広プライ32の長さを計測する測長器74を備え、計測した幅広プライ32の長さに応じて、保持部材54の移動が制御されてもよい。
【0050】
この切断装置34は、切断ユニット42と巻き取りユニット40との間に、測長器76を備えることができる。この測長器76は、切断ユニット42から巻き取りユニット40に向かって移動した幅狭プライ36の長さを計測する。測長器76で計測された幅狭プライ36の長さは、切断ユニット42にて切断された幅広プライ32の長さに対応する。測長器76で幅狭プライ36の長さを計測することで、幅広プライ32の切断長さが把握できる。この切断装置34では、測長器76で計測された幅狭プライ36の長さに応じて保持部材54の移動が制御できるので、切断刃52の当たり位置を効果的に変化させながら、幅広プライ32が切断される。切断刃52の略全体が幅広プライ32の切断に使用できるので、この切断装置34は切断刃52の交換頻度を効果的に低減できる。この切断装置34は、タイヤの生産性の向上に貢献できる。この観点から、この切断装置34は、切断ユニット42と巻き取りユニット40との間に、切断ユニット42から巻き取りユニット40に向かって移動した幅狭プライ36の長さを計測する測長器76を備え、計測した幅狭プライ36の長さに応じて、保持部材54の移動が制御されてもよい。
【0051】
以上説明したように、本発明によれば、切断装置34を停止させることなく切断刃52の当たり位置を調整でき、切断刃52の略全体を幅広プライ32の切断に使用できる。この幅広プライ32の切断装置34は、タイヤの生産性の向上に貢献できる。
【0052】
今回開示した実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の技術的範囲は前述の実施形態に限定されるものではなく、この技術的範囲には特許請求の範囲に記載された構成と均等の範囲内でのすべての変更が含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
以上説明された、幅広プライを切断する技術は種々のタイヤの製造にも適用できる。
【符号の説明】
【0054】
2、32・・・幅広プライ
4・・・コード
6・・・トッピングゴム
8、34・・・切断装置
10、52・・・切断刃
12、54・・・保持部材
14・・・支持部材
16、36・・・幅狭プライ
18・・・位置変更手段
20・・・スペーサー
38・・・繰り出しユニット
40・・・巻き取りユニット
42・・・切断ユニット
44・・・処理ユニット
48・・・繰り出しユニット38のドラム
50・・・巻き取りユニット40のドラム
56・・・移動部材
58・・・ホルダー
60・・・支持フレーム
62・・・ロッド部
64・・・駆動部
66・・・伝達部
68・・・検出部
70・・・繰り出しユニット38のエンコーダー
72・・・巻き取りユニット40のエンコーダー
74、76・・・測長器
図1
図2
図3
図4
図5