(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】多層積層フィルム
(51)【国際特許分類】
B32B 7/022 20190101AFI20231129BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20231129BHJP
B32B 27/08 20060101ALI20231129BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20231129BHJP
G02B 5/30 20060101ALN20231129BHJP
G02B 5/28 20060101ALN20231129BHJP
【FI】
B32B7/022
B32B7/023
B32B27/08
B32B27/36
G02B5/30
G02B5/28
(21)【出願番号】P 2019170727
(22)【出願日】2019-09-19
【審査請求日】2022-06-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 智子
(72)【発明者】
【氏名】渡部 誉之
【審査官】市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-205615(JP,A)
【文献】特開2011-118190(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00
G02B5/20-5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂を主体とする第1層と樹脂を主体とする第2層とが交互に積層した多層積層構造を有する多層積層フィルムであって、
前記多層積層構造は、前記第1層と前記第2層とを少なくとも有する繰り返し単位の物理厚みでの層厚みプロファイルを有し、前記層厚みプロファイルは、
前記多層積層構造の第1表面から厚みが単調に減少する第1領域と、前記多層積層構造の第2表面に向かって厚みが単調に増加する第2領域とを有し、前記多層積層構造における全ての繰り返し単位数に対する前記第1領域の繰り返し単位数の割合が5%以上35%以下であり、前記多層積層構造における全ての繰り返し単位数に対する前記第2領域の繰り返し単位数の割合が65%以上95%以下であり、
以下の(A)又は(B)を満たす多層積層フィルム。
(A)
前記第1領域における前記第1表面側の端の繰り返し単位の物理厚みが90nm以上170nm以下であり、かつ前記第2表面側の端の繰り返し単位の物理厚みが80nm以上120nm以下であり、
前記第2領域における前記第1表面側の端の繰り返し単位の物理厚みが前記第1領域における全ての繰り返し単位の平均厚み以上、前記第1領域における繰り返し単位の最大厚み以下であり、前記第2表面側の端の繰り返し単位の物理厚みが240nm以上310nm以下である。
(B)
前記第1領域における前記第1表面側の端の繰り返し単位の物理厚みが240nm以上310nm以下であり、かつ前記第2表面側の端の繰り返し単位の物理厚みが200nm以上300nm以下であり、
前記第2領域における前記第1表面側の端の繰り返し単位の物理厚みが80nm以上120nm以下であり、かつ前記第2表面側の端の繰り返し単位の物理厚みが前記第1領域における繰り返し単位の最小厚み以上、前記第1領域における全ての繰り返し単位の平均厚み以下である。
【請求項2】
前記多層積層構造における全ての繰返し単位数に対する前記第1領域及び前記第2領域の合計割合が85%以上である請求項1に記載の多層積層フィルム。
【請求項3】
前記多層積層構造の表面に厚さ4μm以下の樹脂を主体とする支持層を有する請求項1又は請求項2に記載の多層積層フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
屈折率の低い層と高い層とを交互に多数積層させた多層積層構造を有する多層積層フィルムは、層間の構造的な光干渉によって特定波長の光を選択的に反射または透過する光学干渉フィルムとすることができる。また、このような多層積層フィルムは、各層の膜厚を厚み方向に沿って徐々に変化させたり、異なる反射ピークを有するフィルムを貼り合わせたりすることで、幅広い波長範囲に渡って光を反射または透過することができ、金属を使用したフィルムと同等の高い反射率を得ることもでき、金属光沢フィルムや反射ミラーとして使用することもできる。さらには、このような多層積層フィルムを1方向に延伸することで、特定の偏光成分のみを反射する反射偏光フィルムとしても使用でき、液晶ディスプレイなどの輝度向上部材等に使用できることが知られている(例えば、特許文献1~4参照)。
特に携帯電話、タブレット型PC等では、これらの多層積層フィルムは電力消費を抑制するために広く使用されている。
【0003】
ここで、多層積層フィルムにおいて、厚膜の最外層や保護層や支持機能を有する層(「支持層」ともいう。)を設けることにより、広い反射波長帯域(すなわち、広い波長帯域で反射率が高いこと)及び適度に高い偏光度の少なくとも一方を維持しながら、操作性が高いものが提案されている(特許文献5~7参照)。しかし、そのような厚膜の層を積層すると、光学フィルム全体としての厚みや重量が増加してしまうことがある。特に、小型軽量化が望まれる携帯電話、タブレットPC等の分野において、多層積層フィルムは、厚みや重量が増加しないよう、さらなる改善が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平04-268505号公報
【文献】特表平9-506837号公報
【文献】特表平9-506984号公報
【文献】国際公開第01/047711号
【文献】特開2003-251675号公報
【文献】特開2016-24312号公報
【文献】国際公開第13/080987号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
多層積層フィルムにおいて、小型軽量化を実現しようとする場合、光学特性に寄与しない支持層を薄くしたり、もしくは設けないようにしたりして、多層積層フィルムを薄膜化することが考えられる。しかしながら、各層の膜厚を厚み方向に沿って徐々に変化させることで広い反射帯域及び適度に高い偏光度を維持できる多層積層構造を有する多層積層フィルムにおいては、上記のようにして薄膜化を試みると、傾斜構造の薄い側の表層付近にスジ状の欠点が発生することがある。ここで、スジ抑制のために、多層積層構造の傾斜構造の薄い側の表面に厚膜の支持層を設けると、多層積層フィルムの小型軽量化という制約上、多層積層構造を必要以上に薄くしなければならず、反射波長帯域が狭くなったり、光の反射率が低下したりしてしまう。
本発明の課題は、多層積層フィルムにおいて、薄膜化しながら、広い反射帯域及び適度に高い偏光度を維持しつつ、スジの発生を抑制する多層積層フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段には、以下の態様が含まれる。
<1>
樹脂を主体とする第1層と樹脂を主体とする第2層とが交互に積層した多層積層構造を有する多層積層フィルムであって、前記多層積層構造は、前記第1層と前記第2層とを少なくとも有する繰り返し単位の物理厚みでの層厚みプロファイルを有し、前記層厚みプロファイルは、前記多層積層構造の第1表面から厚みが単調に減少する第1領域と、前記多層積層構造の第2表面に向かって厚みが単調に増加する第2領域とを有し、前記多層積層構造における全ての繰り返し単位数に対する前記第1領域の繰り返し単位数の割合が5%以上35%以下であり、前記多層積層構造における全ての繰り返し単位数に対する前記第2領域の繰り返し単位数の割合が65%以上95%以下であり、以下の(A)又は(B)を満たす多層積層フィルム。(A)前記第1領域における前記第1表面側の端の繰り返し単位の物理厚みが90nm以上170nm以下であり、かつ前記第2表面側の端の繰り返し単位の物理厚みが80nm以上120nm以下であり、前記第2領域における前記第1表面側の端の繰り返し単位の物理厚みが前記第1領域における全ての繰り返し単位の平均厚み以上、前記第1領域における繰り返し単位の最大厚み以下であり、前記第2表面側の端の繰り返し単位の物理厚みが240nm以上310nm以下である。(B)前記第1領域における前記第1表面側の端の繰り返し単位の物理厚みが240nm以上310nm以下であり、かつ前記第2表面側の端の繰り返し単位の物理厚みが200nm以上300nm以下であり、前記第2領域における前記第1表面側の端の繰り返し単位の物理厚みが80nm以上120nm以下であり、かつ前記第2表面側の端の繰り返し単位の物理厚みが前記第1領域における繰り返し単位の最小厚み以上、前記第1領域における全ての繰り返し単位の平均厚み以下である。
<2>
前記多層積層構造における全ての繰返し単位数に対する前記第1領域及び前記第2領域の合計割合が85%以上である<1>に記載の多層積層フィルム。
<3>
前記多層積層構造の表面に厚さ4μm以下の樹脂を主体とする支持層を有する<1>又は<2>に記載の多層積層フィルム。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、多層積層フィルムにおいて、薄膜化しながら、広い反射帯域及び適度に高い偏光度を維持しつつ、スジの発生を抑制する多層積層フィルムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A】第1実施形態に係る多層積層フィルムの多層積層構造における層厚みプロファイルの一例を示す模式図である。
【
図1B】第2実施形態に係る多層積層フィルムの多層積層構造における層厚みプロファイルの一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一例である実施形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0010】
[多層積層フィルム]
本発明の多層積層フィルムは、樹脂を主体とする第1層と樹脂を主体とする第2層とが交互に積層した多層積層構造を有する。
また、多層積層フィルムは、多層積層構造の表面に厚さ4μm以下の樹脂を主体とする支持層を有していてもよい。
以下、本発明の多層積層フィルムの各構成要素について説明する。
【0011】
[多層積層構造]
本発明の多層積層構造は、樹脂を主体とする第1層と樹脂を主体とする第2層とを少なくとも有する繰り返し単位の物理厚みでの層厚みプロファイルを有する。
かかる第1層は複屈折性で、かかる第2層は等方性であることが好ましく、第1層と第2層とによる光の干渉効果により、波長380nm~780nmの可視光領域において、幅広い波長範囲で反射可能であることができる。
【0012】
ここで反射可能とは、少なくともフィルム面内の任意の一方向において、かかる方向と平行な偏光の垂直入射での平均反射率が50%以上であることをいう。かかる反射は、各波長範囲での平均反射率として50%以上であればよく、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上である。
【0013】
なお、ここで「樹脂を主体とする」とは、各層において樹脂が70質量%以上を占めることをいい、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上である。
このような反射特性とするために、樹脂を主体とし、膜厚が10~1000nmの複屈折性の第1層と、樹脂を主体とし、膜厚が10~1000nmの等方性の第2層とが合計30層以上で厚み方向に交互に積層した構造を有することが好ましい。合計層数は、より好ましくは100層以上、さらに好ましくは150層以上、特に好ましくは190層以上であり、また、合計層数の上限値として、好ましくは2000層以下、より好ましくは1000層以下、さらに好ましくは500層以下、特に好ましくは360層以下である。
【0014】
多層積層構造が、上記の第1層と第2層に加え、第3層を有していてもよく、第3層を有する場合は、第1層、第2層、第3層の順の繰り返し単位が積層された構造を有することが好ましい。
【0015】
また、各層を構成する樹脂については、詳細は後述するが、複屈折性の層および等方性の層を形成し得るものであれば特に制限されない。いずれも、フィルムを製造し易い観点から、熱可塑性樹脂が好ましい。
なお、本発明の各層においては、製膜機械軸方向(縦方向、長手方向、又はMD方向という場合ある。)、製膜機械軸方向にフィルム面内で直交する方向(横方向、幅方向、又はTD方向という場合がある。)、厚み方向の屈折率につき、最大と最小の差が0.1以上のものを複屈折性、0.1未満のものを等方性とする。
【0016】
(層厚みプロファイル)
本発明における多層積層構造の層厚みプロファイルは、多層積層構造の第1表面から厚みが単調に減少する第1領域と、多層積層構造の第2表面に向かって厚みが単調に増加する第2領域とを有し、多層積層構造における全ての繰り返し単位数に対する第1領域の繰り返し単位数の割合が5%以上35%以下であり、前記多層積層構造における全ての繰り返し単位数に対する前記第2領域の繰り返し単位数の割合が65%以上95%以下であり、以下の(A)又は(B)を満たす。
【0017】
(A)第1領域における前記第1表面側の端の繰り返し単位の物理厚みが90nm以上170nm以下であり、かつ前記第2表面側の端の繰り返し単位の物理厚みが80nm以上120nm以下であり、第2領域における前記第1表面側の端の繰り返し単位の物理厚みが前記第1領域における全ての繰り返し単位の平均厚み以上、前記第1領域における繰り返し単位の最大厚み以下であり、前記第2表面側の端の繰り返し単位の物理厚みが240nm以上310nm以下である。
【0018】
(B)第1領域における前記第1表面側の端の繰り返し単位の物理厚みが240nm以上310nm以下であり、かつ前記第2表面側の端の繰り返し単位の物理厚みが200nm以上300nm以下であり、第2領域における前記第1表面側の端の繰り返し単位の物理厚みが80nm以上120nm以下であり、かつ前記第2表面側の端の繰り返し単位の物理厚みが前記第1領域における繰り返し単位の最小厚み以上、前記第1領域における全ての繰り返し単位の平均厚み以下である。
【0019】
なお、本発明の多層積層フィルムの実施形態について、層厚みプロファイルが、上記(A)を満たす場合、「第1実施形態」とも称し、また、上記(B)を満たす場合、「第2実施形態」とも称す。「第1実施形態」と「第2実施形態」とを合わせて、「本実施形態」と称する。
【0020】
ここで、多層積層構造が、第3層を有する場合であっても同様に、繰り返し単位の物理厚みでの層厚みプロファイルを有し、かかる層厚みプロファイルは、多層積層構造の第1表面から厚みが単調に減少する第1領域と、前記多層積層構造の第2表面に向かって厚みが単調に増加する第2領域とを有し、多層積層構造における全ての繰り返し単位数に対する第1領域の繰り返し単位数の割合が5%以上35%以下であり、前記多層積層構造における全ての繰り返し単位数に対する前記第2領域の繰り返し単位数の割合が65%以上95%以下であり、上記の(A)又は(B)を満たす。
次いで、本発明の多層積層フィルムの「第1実施形態」及び「第2実施形態」について詳細に説明する。
【0021】
[第1実施形態]
本発明の多層積層フィルムが第1実施形態である場合、スジの発生を抑制する観点から、第1領域における第1表面側の端の繰り返し単位の物理厚みが105nm以上であることが好ましく、110nm以上であることがより好ましく、120nm以上であることがさらに好ましい。また、第1領域における第1表面側の端の繰り返し単位の物理厚みの上限値は特に限定されるものではないが、薄膜化の観点から、160nm以下であることが好ましく、150nm以下であることがより好ましく、140nm以下であることがさらに好ましい。
第1領域における第2表面側の端の繰り返し単位の物理厚みは、薄膜化しつつ広い反射帯域及び適度に高い偏光度を確保する観点から、90nm以上であることが好ましく、105nm以上であることがより好ましく、また、115nm以下であることが好ましい。なお、第1領域は単調減少していることから、当該物理厚みは、第1表面側の端の繰り返し単位の物理厚みより薄い厚みが選択される。
第1領域における全ての繰り返し単位の平均厚みは、95nm以上が好ましく、105nm以上がより好ましく、115nm以上がさらに好ましく、また、145nm以下が好ましく、135nm以下がより好ましく、125nm以下がさらに好ましい。
また、薄膜化しながら広い反射帯域及び適度に高い偏光度を維持しつつ、スジの発生を抑制する観点から、第2領域における第2表面側の端の繰り返し単位の物理厚みが250nm以上であることが好ましく、また、300nm以下であることが好ましい。
【0022】
図1Aは、第1実施形態に係る多層積層フィルムの多層積層構造における層厚みプロファイルの一例を示す模式図である。
例えば
図1Aに示すように、多層積層構造100Aは、第1表面50Aから厚みが単調に減少する第1領域10Aと、第2表面70Aに向かって厚みが単調に増加する第2領域20Aを有する。
第1領域10Aにおける第1表面50A側に端の繰り返し単位の物理厚みが140nmで、第2表面70A側の端の繰り返し単位の物理厚みが110nmである。
また、第2領域20Aにおける、第2表面70A側の端の繰り返し単位の物理厚みが250nmである。
【0023】
[第2実施形態]
本発明の多層積層フィルムが第2実施形態である場合、薄膜化しながら、広い反射帯域及び適度に高い偏光度を維持しつつ、スジの発生を抑制する観点から、第1領域における第1表面側の端の繰り返し単位の物理厚みが250nm以上であることが好ましく、また、300nm以下であることが好ましい。
また、第1領域における第2表面側の端の繰り返し単位の物理厚みは、薄膜化しつつ広い反射帯域及び適度に高い偏光度を確保する観点から、205nm以上295nm以下であることが好ましい。なお、第1領域は単調減少していることから、当該物理厚みは第1表面側の端の繰り返し単位の物理厚みより薄い厚みが選択される。
第1領域における全ての繰り返し単位の平均厚みは、225nm以上が好ましく、230nm以上がより好ましく、235nm以上がさらに好ましく、また、295nm以下が好ましく、285nm以下がより好ましく、270nm以下がさらに好ましい。
また、薄膜化しつつ広い反射帯域及び適度に高い偏光度を確保する観点から、第2領域における第1表面側の端の繰り返し単位の物理厚みが90nm以上であることが好ましく、105nm以上であることがより好ましく、また、115nm以下であることが好ましい。
【0024】
図1Bは、第2実施形態に係る多層積層フィルムの多層積層構造における層厚みプロファイルの一例を示す模式図である。
例えば
図1Bに示すように、多層積層構造100Bは、第1表面50Bから厚みが単調に減少する第1領域10Bと、第2表面70Bに向かって厚みが単調に増加する第2領域20Aを有する。
第1領域10Bにおける第1表面50B側に端の繰り返し単位の物理厚みが250nmで、第2表面70B側の端の繰り返し単位の物理厚みが237nmである。
また、第2領域20Bにおける第1表面50B側に端の繰り返し単位の物理厚みが110nmである。
【0025】
本実施形態に係る多層積層フィルムは、上記構成とすることで、薄膜化しながら、広い反射帯域及び適度に高い偏光度を維持しつつ、スジの発生を抑制することができる。
その理由は定かではないが、以下のように推測される。
【0026】
多層積層構造を有する多層積層フィルムにおいて、薄膜化を試みた際のスジが発生する原因として、多層積層構造の一端部の表面を形成する層は、多層積層フィルムの製造工程に由来する樹脂流れの影響を受けやすいことが考えられる。したがって、多層積層構造の表面を形成する層が薄すぎると、樹脂流れの影響で層構成が乱れて、スジが発生しやすくなることが考えられる。
一方、本実施形態の多層積層フィルムは、上記のような膜厚の薄い層が多層積層構造の表層ではなく、中に形成される構成としたため、多層積層フィルムの製造工程に由来する樹脂流れの影響が軽減され、スジの発生を抑制することができると考えられる。
また、本実施形態の多層積層フィルムは、多層積層構造の第1領域と第2領域における、繰り返し単位の物理厚みの重複する領域を最小限あるいは必要最小限に留めるような構成としたため、多層積層構造の厚みを特段増やすことなく、広い反射帯域及び適度に高い偏光度を維持することができると考えられる。
【0027】
かかる第1領域及び第2領域において、各反射波長に対応する屈折率および厚みを備える繰り返し単位を適切に配分することによって、幅広い光学厚みの第1層および第2層を有することとなり、広い波長範囲の光を反射することが可能となる。
これは、反射波長が多層積層フィルムを構成する各層の光学厚みに起因するためである。一般的に多層積層フィルムの反射波長は、下記(式1)で示される。
λ=2(n1×d1+n2×d2) (式1)
(上式中、λは反射波長(nm)、n1、n2はそれぞれの層の屈折率、d1、d2はそれぞれの層の物理厚み(nm)を表わす)
【0028】
また、光学厚みλM(nm)は、下記(式2)のように、各層それぞれの屈折率nkおよび物理厚みdk(nm)の積で表される。ここでの物理厚みは透過型電子顕微鏡を用いて撮影した写真から求めたものが採用され得る。
λM(nm)=nk×dk (式2)
【0029】
本発明においては、第1領域および第2領域の厚みの態様を、上記の第1実施形態及び第2実施形態のようにすれば、波長380nm~780nmにある光を広く反射可能である層厚みプロファイルとすることができる。更に、第1領域および第2領域の繰り返し単位の割合を調整することで、さらに広い反射帯域、さらに高い反射率とすることができる。
【0030】
本発明において繰り返し単位の物理厚みは下記(式3)で表される。
dp=d1+d2 (式3)
上式中、dpは繰り返し単位の物理厚み(nm)、d1、d2はそれぞれかかる繰り返し単位を構成する第1層、第2層の物理厚み(nm)を表す。
ここでの物理厚みは透過型電子顕微鏡を用いて撮影した写真から求めたものが採用され得る。
【0031】
(第1領域)
本発明の、多層積層構造の第1表面から厚みが単調に減少する第1領域とは、多層積層構造の厚み方向における一方の表面を起点とし、一方の表面(第1表面)から他方の表面(第2表面)に向かって繰り返し単位の物理厚みの厚さが単調に減少する層厚みプロファイルを有するものである。
【0032】
本発明において「単調減少(単調に減少する)」とは、第1領域において、多層積層構造の一方の表面(第1表面)側の端の繰り返し単位の物理厚みの厚さが最も厚く、かつ第1領域の全てにおいて、繰り返し単位の物理厚みの厚さが減少していくことを意味することが好ましいが、それに限定されるものではない。例えば、第1領域全体を見て、繰り返し単位の物理厚みの厚さが減少している傾向が見られればよい。具体的には、第1表面側の端を起点として、繰り返し単位の物理厚みの厚みのより厚い側からより薄い側に向かって繰り返し単位に番号を付し、それを横軸として、繰り返し単位の物理厚みを縦軸にプロットしたときに、厚みが減少傾向を示す範囲内で繰り返し単位数を略5等分し、厚みが減少する方向に、等分された各エリアでの繰り返し単位の物理厚みの平均値が全て減少している場合は単調減少であるとし、そうでない場合は単調減少でないとした。
ただし、繰り返し単位数が4以下である場合に限り、繰り返し単位数を略3等分し、等分された各エリアにおいて、上記と同じ手法で単調減少であるか、そうでないかを判断する。
【0033】
(第2領域)
本発明の、多層積層構造の第2表面に向かって厚みが単調に増加する第2領域とは、多層積層構造の厚み方向において、第1領域の起点とは反対側である多層積層構造の表面(第2表面)を終点とし、他方の表面(第2表面)に向かって繰り返し単位の物理厚みの厚さが単調に増加する層厚みプロファイルを有するものである。
【0034】
本発明において「単調増加(単調に増加する)」とは、第2領域において、第1領域の起点とは反対側である多層積層構造の表面(第2表面)側の端の繰り返し単位の物理厚みの厚さが最も厚く、かつ第2領域の全てにおいて、繰り返し単位の物理厚みの厚さが増加していくことを意味することが好ましいが、それに限定されるものではない。例えば、第2領域全体を見て、繰り返し単位の物理厚みの厚さが増加している傾向が見られればよい。具体的には、第2表面側の端を終点として、繰り返し単位の物理厚みの厚みのより薄い側からより厚い側に向かって繰り返し単位に番号を付し、それを横軸として、繰り返し単位の物理厚みを縦軸にプロットしたときに、厚みが増加傾向を示す範囲内で繰り返し単位数を略5等分し、厚みが増加する方向に、等分された各エリアでの繰り返し単位の物理厚みの平均値が全て増加している場合は単調増加であるとし、そうでない場合は単調増加でないとした。
【0035】
-最小厚みに対する最大厚みの比[最大厚み/最小厚み]-
本実施形態において、多層積層構造の第1領域及び第2領域における繰り返し単位の物理厚みの最小厚みに対する最大厚みの比は、特定の範囲であることが望ましい。
広い反射帯域及び適度に高い偏光度を有し、かつその反射帯域で適正な反射量を維持する観点から、第1領域において、繰り返し単位の物理厚みの最小厚みに対する最大厚みの比は、1.01以上1.50以下であることが好ましく、1.03以上1.47以下であることがより好ましく、1.05以上1.45以下であることが更に好ましい。また、同様の観点から、第2領域において、繰り返し単位の物理厚みの最小厚みに対する最大厚みの比は、1.51以上3.50以下であることが好ましく、1.55以上3.30以下であることがより好ましく、1.58以上3.20以下であることが更に好ましい。
【0036】
本発明の多層積層構造における全ての繰り返し単位数に対する第1領域の繰り返し単位数の割合は5%以上35%以下であり、広い反射帯域及び適度に高い偏光度を維持しつつ、スジの発生を抑制する観点から、10%以上30%以下であることが好ましく、10%以上25%以下であることがより好ましい。
本発明の多層積層構造における全ての繰り返し単位数に対する第2領域の繰り返し単位数の割合が65%以上95%以下であり、広い反射帯域及び適度に高い偏光度を維持しつつ、スジの発生を抑制する観点から、70%以上95%以下であることが好ましく、75%以上90%以下であることがより好ましい。
【0037】
本発明において、多層積層構造における全ての繰返し単位数に対する第1領域及び第2領域の合計割合は、薄膜化しながら、広い反射帯域及び適度に高い偏光度を維持する観点から、85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることが更に好ましい。
本発明の多層積層構造は、本発明の目的を阻害しない範囲で、上記の第1領域及び第2領域の他にも、第1領域と第2領域との間に、多層積層フィルムの光学特性の向上に寄与する層や寄与しない層を有していてもよい。例えば、多層積層フィルムの光学特性の向上に寄与する層として、上記した第1実施形態及び第2実施形態における第1領域や第2領域と同様な傾斜構造を有する領域を有していてもよい。また、特定の波長帯域の反射率を向上させる目的で、前記第1領域や第2領域と同様の厚み範囲にある傾斜構造を有しない領域を有していてもよい。また、多層積層フィルムの光学特性の向上に寄与しない層としては、厚膜の中間層(例えば物理厚みが1μmを超える層)等が挙げられる。
【0038】
-多層積層構造の構成-
[第1層]
本発明の多層積層構造を構成する第1層は、複屈折性の層であることが好ましく、すなわちこれを構成する樹脂は、複屈折性の層を形成し得るものであることが好ましい。従って、第1層を構成する樹脂としては配向結晶性の樹脂が好ましく、かかる配向結晶性の樹脂として特にポリエステルが好ましい。該ポリエステルは、それを構成する繰り返し単位を基準として好ましくはエチレンテレフタレート単位および/またはエチレンナフタレート単位を、より好ましくはエチレンナフタレート単位を、80モル%以上、100モル%以下の範囲で含有することが、より高い屈折率の層とし易く、それにより第2層との屈折率差を大きくしやすいことから好ましい。ここで樹脂の併用の場合は、合計の含有量のことをいう。
【0039】
(第1層の樹脂)
第1層の樹脂として、ポリエステルが好ましく、ポリエステルとして、ジカルボン酸成分としてナフタレンジカルボン酸成分を含有し、その含有量は該ポリエステルを構成するジカルボン酸成分を基準として80モル%以上、100モル%以下であることが好ましい。かかるナフタレンジカルボン酸成分としては、2,6-ナフタレンジカルボン酸成分、2,7-ナフタレンジカルボン酸成分、またはこれらの組み合わせから誘導される成分、もしくはそれらの誘導体成分が挙げられ、特に2,6-ナフタレンジカルボン酸成分もしくはその誘導体成分が好ましく例示される。ナフタレンジカルボン酸成分の含有量は、好ましくは85モル%以上、より好ましくは90モル%以上であり、また、好ましくは100モル%未満、より好ましくは98モル%以下、さらに好ましくは95モル%以下である。
【0040】
第1層のポリエステルを構成するジカルボン酸成分としては、ナフタレンジカルボン酸成分以外にさらに本発明の目的を損なわない範囲でテレフタル酸成分、イソフタル酸成分などを含有してもよく、中でもテレフタル酸成分を含有することが好ましい。含有量は0モル%を超え、20モル%以下の範囲であることが好ましい。かかる第2のジカルボン酸成分の含有量は、より好ましくは2モル%以上、さらに好ましくは5モル%以上であり、また、より好ましくは15モル%以下、さらに好ましくは10モル%以下である。
【0041】
本発明の多層積層フィルムを液晶ディスプレイ等に用いられる輝度向上部材や反射型偏光板として使用する場合、第1層が第2層よりも相対的に高屈折率特性を有する層であり、第2層が第1層よりも相対的に低屈折率特性を有する層であり、また1軸方向に延伸されることが好ましい。
なお、この場合、本発明においては、1軸延伸方向をX方向(縦方向ともいう。)、フィルム面内においてX方向と直交する方向をY方向(横方向、非延伸方向ともいう。)、フィルム面に対して垂直な方向をZ方向(厚み方向ともいう。)と称する場合がある。
【0042】
第1層に、上記のようにナフタレンジカルボン酸成分を主成分として含有するポリエステルを用いることで、X方向に高屈折率を示すと同時に1軸配向性の高い複屈折率特性を実現でき、X方向について第2層との屈折率差を大きくすることができ、高偏光度に寄与する。一方、ナフタレンジカルボン酸成分の含有量が下限値に満たないと、非晶性の特性が大きくなり、X方向の屈折率nXと、Y方向の屈折率nYとの差異が小さくなる傾向にあるため、多層積層フィルムにおいて、フィルム面を反射面とし、1軸延伸方向(X方向)を含む入射面に対して平行な偏光成分と定義される本発明におけるP偏光成分について十分な反射性能が得難くなる傾向にある。
なお、本発明におけるS偏光成分とは、多層積層フィルムにおいて、フィルム面を反射面とし、1軸延伸方向(X方向)を含む入射面に対して垂直な偏光成分と定義される。
【0043】
第1層の好ましいポリエステルを構成するジオール成分としては、エチレングリコール成分が用いられ、その含有量は該ポリエステルを構成するジオール成分を基準として80モル%以上、100モル%以下であることが好ましく、より好ましくは85モル%以上、100モル%以下、さらに好ましくは90モル%以上、100モル%以下、特に好ましくは90モル%以上、98モル%以下である。該ジオール成分の割合が下限値に満たない場合は、前述の1軸配向性が損なわれることがある。
【0044】
第1層のポリエステルを構成するジオール成分として、エチレングリコール成分以外に、さらに本発明の目的を損なわない範囲でトリメチレングリコール成分、テトラメチレングリコール成分、シクロヘキサンジメタノール成分、ジエチレングリコール成分などを含有してもよい。
【0045】
(第1層のポリエステルの特性)
第1層に用いられるポリエステルの融点は、好ましくは220~290℃の範囲、より好ましくは230~280℃の範囲、さらに好ましくは240~270℃の範囲である。融点は示差走査熱量計(DSC)で測定して求めることができる。該ポリエステルの融点が上限値を越えると、溶融押出して成形する際に流動性が劣り、吐出などが不均一化しやすくなることがある。一方、融点が下限値に満たないと、製膜性は優れるものの、ポリエステルの持つ機械的特性などが損なわれやすくなり、また液晶ディスプレイの輝度向上部材や反射型偏光板として使用される際の屈折率特性が発現し難い傾向にある。
【0046】
第1層に用いられるポリエステルのガラス転移温度(以下、Tgと称することがある。)は、好ましくは80~120℃、より好ましくは82~118℃、さらに好ましくは85~118℃、特に好ましくは100~115℃の範囲にある。Tgがこの範囲にあると、耐熱性および寸法安定性に優れ、また液晶ディスプレイの輝度向上部材や反射型偏光板として使用される際の屈折率特性を発現し易い。かかる融点やガラス転移温度は、共重合成分の種類と共重合量、そして副生物であるジエチレングリコールの制御などによって調整できる。
【0047】
第1層に用いられるポリエステルは、o-クロロフェノール溶液を用いて35℃で測定した固有粘度が0.50~0.75dl/gであることが好ましく、より好ましくは0.55~0.72dl/g、さらに好ましくは0.56~0.71dl/gである。これにより適度な配向結晶性を有し易くなる傾向にあり、第2層との屈折率差を発現し易くなる傾向にある。
【0048】
[第2層]
本発明の多層積層構造を構成する第2層は、等方性の層であることが好ましく、すなわちこれを構成する樹脂は、等方性の層を形成し得るものであることが好ましい。従って、第2層を構成する樹脂としては非晶性の樹脂が好ましい。中でも非晶性であるポリエステルが好ましい。なおここで「非晶性」とは、極めて僅かな結晶性を有することを排除するものではなく、本発明の多層積層フィルムが目的とする機能を奏する程度に第2層を等方性にできればよい。
【0049】
(第2層の樹脂)
第2層を構成する樹脂としては、共重合ポリエステルが好ましく、特に、ナフタレンジカルボン酸成分、エチレングリコール成分およびトリメチレングリコール成分を共重合成分として含む共重合ポリエステルを用いることが好ましい。なお、かかるナフタレンジカルボン酸成分としては、2,6-ナフタレンジカルボン酸成分、2,7-ナフタレンジカルボン酸成分、またはこれらの組み合わせから誘導される成分、もしくはそれらの誘導体成分が挙げられ、特に2,6-ナフタレンジカルボン酸成分もしくはその誘導体成分が好ましく例示される。かかるナフタレンジカルボン酸成分、好ましくは2,6-ナフタレンジカルボン酸成分は、第2層の共重合ポリエステルを構成する全カルボン酸成分の30モル%以上、100モル%以下であることが好ましく、より好ましくは30モル%以上、80モル%以下、さらに好ましくは40モル%以上、70モル%以下である。これにより第1層との密着性をより高くできる。ナフタレンジカルボン酸成分の含有量が下限に満たないと相溶性の観点から密着性が低下することがある。また、ナフタレンジカルボン酸成分の含有量の上限は特に制限されないが、多すぎると第1層との屈折率差を発現し難くなる傾向にある。なお、第1層との屈折率の関係を調整するために他のジカルボン酸成分を共重合させてもよい。
【0050】
なお、本発明における共重合成分とは、ポリエステルを構成するいずれかの成分であることを意味しており、従たる成分(共重合量として全酸成分または全ジオール成分に対して50モル%未満)としての共重合成分に限定されず、主たる成分(共重合量として全酸成分または全ジオール成分に対して50モル%以上)も含めて用いられる。
【0051】
本発明においては、上述したように、第1層の樹脂としてエチレンナフタレート単位を主成分とするポリエステルを用いることが好ましく、そのとき、第2層の樹脂としてナフタレンジカルボン酸成分を含む共重合ポリエステルを用いることで、第1層との相溶性が高くなり、第1層との層間密着性が向上する傾向にあり、層間剥離が生じ難くなるため好ましい。
第2層の共重合ポリエステルは、ジオール成分がエチレングリコール成分と、トリメチレングリコール成分の少なくとも2成分を含むことが好ましい。このうち、エチレングリコール成分は、フィルム製膜性などの観点より主たるジオール成分として用いられることが好ましい。
【0052】
エチレングリコール成分は、第2層の共重合ポリエステルを構成する全ジオール成分の50モル%以上、95モル%以下であることが好ましく、より好ましくは50モル%以上、90モル%以下、さらに好ましくは50モル%以上、85モル%以下、特に好ましくは50モル%以上、80モル%以下である。これにより第1層との屈折率差を発現し易くなる傾向にある。
【0053】
本発明における第2層の共重合ポリエステルは、さらにジオール成分としてトリメチレングリコール成分を含有することが好ましい。トリメチレングリコール成分を含有することで、層構造の弾性を補い、層間剥離を抑制する効果が高まる。
【0054】
トリメチレングリコール成分は、第2層の共重合ポリエステルを構成する全ジオール成分の3モル%以上、50モル%以下であることが好ましく、さらに5モル%以上、40モル%以下であることが好ましく、より好ましくは10モル%以上、40モル%以下、特に好ましくは10モル%以上、30モル%以下である。これにより第1層との層間密着性をより高くできる。また、第1層との屈折率差を発現し易くなる傾向にある。トリメチレングリコール成分の含有量が下限に満たないと層間密着性の確保が難しくなる傾向にあり、上限を超えると所望の屈折率とガラス転移温度の樹脂とすることがし難くなる。
本発明における第2層は、本発明の目的を損ねない範囲であれば、第2層の質量を基準として10質量%以下の範囲内で該共重合ポリエステル以外の熱可塑性樹脂を第2のポリマー成分として含有してもよい。
【0055】
第2層の共重合ポリエステルの具体例として、(1)ジカルボン酸成分として2,6-ナフタレンジカルボン酸成分を含み、ジオール成分としてエチレングリコール成分およびトリメチレングリコール成分を含む共重合ポリエステル、(2)ジカルボン酸成分として2,6-ナフタレンジカルボン酸成分およびテレフタル酸成分を含み、ジオール成分としてエチレングリコール成分およびトリメチレングリコール成分を含む共重合ポリエステル、が挙げられる。
【0056】
(第2層の共重合ポリエステルの特性)
本発明において、上述する第2層の共重合ポリエステルは、85℃以上のガラス転移温度を有することが好ましく、より好ましくは90℃以上、150℃以下、さらに好ましくは90℃以上、120℃以下、特に好ましくは92℃以上、110℃以下である。これにより耐熱性により優れる。また、第1層との屈折率差を発現し易くなる傾向にある。第2層の共重合ポリエステルのガラス転移温度が下限に満たない場合、耐熱性が十分に得られないことがあり、例えば90℃近辺での熱処理などの工程を含むときに第2層の結晶化や脆化によってヘーズが上昇し、輝度向上部材や反射型偏光板として使用される際の偏光度の低下を伴うことがある。また、第2層の共重合ポリエステルのガラス転移温度が高すぎる場合には、延伸時に第2層のポリエステルも延伸による複屈折性が生じることがあり、それに伴い延伸方向において第1層との屈折率差が小さくなり、反射性能が低下することがある。
【0057】
上述した共重合ポリエステルの中でも、90℃×1000時間の熱処理で結晶化によるヘーズ上昇を極めて優れて抑制できる点から、非晶性の共重合ポリエステルであることが好ましい。ここでいう非晶性とは、DSCにおいて昇温速度20℃/分で昇温させたときの結晶融解熱量が0.1mJ/mg未満であることを指す。
【0058】
第2層の共重合ポリエステルは、o-クロロフェノール溶液を用いて35℃で測定した固有粘度が0.50~0.70dl/gであることが好ましく、さらに好ましくは0.55~0.65dl/gである。第2層に用いられる共重合ポリエステルが共重合成分としてトリメチレングリコール成分を有する場合、製膜性が低下することがあり、該共重合ポリエステルの固有粘度を上述の範囲とすることで製膜性をより高めることができる。第2層として上述する共重合ポリエステルを用いる場合の固有粘度は、製膜性の観点からはより高い方が好ましいものの、上限を超える範囲では第2層のポリエステルとの溶融粘度差が大きくなり、各層の厚みが不均一になることがある。
【0059】
[支持層]
本発明の多層積層フィルムは、薄膜化の観点からは支持層を有しないことが好ましいが、多層積層構造の表面に厚さ4μm以下の樹脂を主体とする支持層を有していてもよい。多層積層構造が支持層を有することにより、多層積層構造の操作性が向上すると共に、最終的に得られる多層積層フィルムの操作性が向上する。
かかる支持層は、樹脂を主体とする。なお、ここで「主体とする」とは、層において樹脂が70質量%以上を占めることをいい、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上である。また、支持層は、等方性の層であることが好ましく、製造上の容易性の観点からは第2層と同一樹脂であってもよく、上述した第2層の共重合ポリエステルから構成することができ、そのような態様が好ましい。
【0060】
支持層の厚みは、より好ましくは3μm以下、さらに好ましくは2μm以下である。支持層の下限値としては1μmを超える範囲であればよい。支持層が薄すぎると、多層積層フィルムの光学特性に影響を及ぼし易くなる傾向にあり、光学特性の劣化につながる可能性がある。
【0061】
(塗布層)
本発明の一実施形態の多層積層フィルムは、少なくとも一方の表面に塗布層を有することができる。
かかる塗布層としては、滑り性を付与するための易滑層や、プリズム層や拡散層等との接着性を付与するためのプライマー層などが挙げられる。塗布層は、バインダー成分を含み、滑り性を付与するためにはたとえば粒子を含有させるとよい。易接着性を付与するためには、用いるバインダー成分を、接着したい層の成分と化学的に近いものとすることが挙げられる。また、塗布層を形成するための塗布液は、環境の観点から水を溶媒とする水系塗布液であることが好ましいが、特にそのような場合等において、積層多層フィルムに対する塗布液の濡れ性を向上させる目的で、界面活性剤を含有することができる。その他、塗布層の強度を高めるために架橋剤を添加したりなど、機能剤を添加してもよい。
【0062】
[多層積層フィルムの製造方法]
本発明の一実施形態の多層積層フィルムの製造方法について詳述する。なお、ここで以下に示す製造方法は一例であり、本発明はこれに限定されるものでない。また、異なる態様についても、以下を参照して得ることができる。
本発明の一実施形態の多層積層フィルムにおける多層積層構造は、第1層を構成する樹脂と第2層を構成する樹脂とを、多層フィードブロック装置を用いて溶融状態で交互に重ね合わせて、例えば、合計で30層以上の交互積層構成を作成し、得ることができる。このとき、交互積層構成の片面または両面にバッファ層を設けることで、支持層を形成することができる。
【0063】
かかる交互積層構成は、第1層と第2層の各層の厚みが所望の傾斜構造を有するように積層される。これは、たとえば、多層フィードブロック装置においてスリットの間隔や長さを変化させることで得られる。
上述した方法で所望の積層数に積層したのち、ダイより押出し、キャスティングドラム上で冷却し、多層未延伸体を得る。その後、後述する延伸によって多層積層フィルムを得る。
【0064】
上記方法により得られた多層未延伸体は、製膜機械軸方向、またはそれにフィルム面内で直交する方向(横方向、幅方向またはTDという場合がある)の少なくとも1軸方向(かかる1軸方向はフィルム面に沿った方向である。)に延伸されることが好ましい。延伸温度は、第1層の樹脂のガラス転移点温度(Tg)~(Tg+20)℃の範囲で行うことが好ましい。従来よりも低めの温度で延伸を行うことにより、フィルムの配向特性をより高度に制御することができる。
【0065】
上記多層未延伸体の延伸は、倍率2.0~7.0倍で行うことが好ましく、4.5~6.5倍であることがより好ましい。かかる範囲内で延伸倍率が大きいほど、第1層および第2層における個々の層の面方向の屈折率のバラツキが延伸による薄層化により小さくなり、多層積層構造の光干渉が面方向に均一化され、また第1層と第2層の延伸方向の屈折率差が大きくなるので好ましい。このときの延伸方法は、棒状ヒータによる加熱延伸、ロール加熱延伸、テンター延伸など公知の延伸方法を用いることができるが、ロールとの接触によるキズの低減や延伸速度などの観点から、テンター延伸が好ましい。
【0066】
また、かかる延伸方向とフィルム面内で直交する方向(Y方向)にも延伸処理を施し、2軸延伸を行う場合は、用途にもよるが、反射偏光特性を具備させたいときは、1.01~1.20倍程度の延伸倍率にとどめることが好ましい。Y方向の延伸倍率をこれ以上高くすると、偏光性能が低下することがある。
また、延伸後にさらに(Tg)~(Tg+30)℃の温度で熱固定を行いながら、5~15%の範囲で延伸方向にトーアウト(再延伸)させることにより、得られた多層積層フィルムの配向特性を高度に制御することができる。
【0067】
本発明の一実施形態において上述の塗布層を設ける場合、多層積層フィルムへの塗布は任意の段階で実施することができるが、フィルムの製造過程で実施することが好ましく、延伸前のフィルムに対して塗布することが好ましい。
かくして本発明の一実施形態の多層積層フィルムが得られる。
【0068】
なお、多層積層フィルムが金属光沢フィルムや反射ミラーの用途に用いられる場合は、2軸延伸フィルムとすることが好ましく、この場合は、逐次2軸延伸法、同時2軸延伸法のいずれで製造されてもよい。また、延伸倍率は、第1層および第2層の各層の屈折率および膜厚が所望の反射特性が得られるように調整されればよいが、例えばこれら層を構成する樹脂の通常の屈折率を考慮すると、縦方向および横方向ともに2.5~6.5倍程度とすればよい。
【0069】
-多層積層構造及び多層積層フィルムの光学特性-
本発明において、多層積層構造として、波長380nm~780nmでの透過軸における平均透過率は70%以上が好ましく、さらに好ましくは80%以上、最も好ましくは85%以上である。また、波長380nm~780nmでの反射軸における平均反射率は、70%以上が好ましく、さらに好ましくは75%以上、最も好ましくは80%以上である。
【0070】
[用途]
以下、本発明の多層積層フィルムが好ましく適用され得る用途について説明する。本発明の多層積層フィルムは、カラーフィルター、熱線反射フィルム、輝度向上部材、反射型偏光板あるいはセキュリティーフィルムとして使用されることが特に好ましい。
【0071】
(輝度向上部材としての用途)
本発明の多層積層フィルムは、上述したポリマー組成や層構成、配向の態様とすることで、一方の偏光成分を選択的に反射し、該偏光成分と垂直方向の偏光成分を選択的に透過させる性能を奏することができる。より具体的には1軸延伸した態様である。かかる性能を利用し、液晶ディスプレイなどの輝度向上部材として用いることができる。輝度向上部材として用いた場合、一方の偏光成分は透過し、他方の透過しなかった偏光成分は吸収せずに光源側に反射させることによって光を再利用でき、良好な輝度向上効果が得られる。
また、本発明の多層積層フィルムの少なくとも一方の面にプリズム層や拡散層等の硬化性樹脂層を積層してもよい。ここで硬化性樹脂層は、熱硬化性樹脂層や電子線硬化性樹脂層である。その際、プライマー機能等を有する塗布層を介してこれらプリズム層あるいは拡散層を積層することもでき、好ましい。
本発明の多層積層フィルムを用いてプリズム層などの部材と貼り合わせ、または本発明の多層積層フィルムの表面にプリズム等を形成し、ユニット化することにより、組み立て時の部材数を低減でき、また液晶ディスプレイの厚みをより薄くすることができる。また、本発明の多層積層フィルムを用いてこれらの部材と貼り合せることにより、加工時などに加わる外力による層間剥離を抑制できるため、より信頼性の高い輝度向上部材を提供できる。
本発明の多層積層フィルムを輝度向上部材として用いる場合、液晶ディスプレイの光源と、偏光板/液晶セル/偏光板で構成される液晶パネルとの間に輝度向上部材を配置する態様の液晶ディスプレイ装置が例示される。プリズム層またはプリズムをさらに設ける場合は、輝度向上部材の液晶パネル側にプリズム層またはプリズムを配置することが好ましい。
【0072】
(反射型偏光板としての用途)
本発明の多層積層フィルムは、吸収型偏光板と併用して、或いは単独で用いて液晶ディスプレイなどの偏光板として用いることができる。特に反射偏光性能を高め、後述する偏光度(P)で80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは87%以上となる高偏光度を有するものについては、吸収型偏光板を併用することなく、単独で液晶セルに隣接して用いられる液晶ディスプレイの偏光板として用いることができる。
本発明の積層多層フィルムの用途としては、より具体的には、本発明の積層多層フィルムからなる第1の偏光板、液晶セル、および第2の偏光板がこの順で積層された液晶ディスプレイが挙げられる。
【実施例】
【0073】
以下に、本発明の実施例を挙げて説明するが、本発明は以下に示した実施例に制限されるものではない。なお、実施例中の物性や特性は、下記の方法にて測定または評価した。
【0074】
-各層の厚みの測定-
多層積層フィルムをフィルム長手方向2mm、幅方向2cmに切り出し、包埋カプセルに固定後、エポキシ樹脂(リファインテック(株)製エポマウント)にて包埋した。包埋されたサンプルをミクロトーム(LEICA製ULTRACUT UCT)で幅方向に垂直に切断し、50nm厚の薄膜切片にした。透過型電子顕微鏡(日立S-4300)を用いて加速電圧100kVにて観察撮影し、写真から各層の厚み(物理厚み)を測定した。
なお、第1層か第2層かは、屈折率の態様により判断できるが、それが困難な場合は、NMRでの解析や、TEMでの解析による電子状態により判断することも可能である。
【0075】
-延伸後の屈折率の測定-
多層積層構造の第1層及び第2層の屈折率は、得られた多層積層構造の製造条件と同様の条件で、層の厚み比率が1:1である2層積層フィルムを作成し、それを用いて測定した第1層及び第2層の屈折率を、それぞれ多層積層構造の第1層及び第2層の屈折率として求める。
例えば、本実施形態においては、厚み比率が第1層:第2層=1:1である2層積層フィルムとする以外は後述する実施例1と同様の条件で合計厚み75μmのフィルムを作成し、第1層、第2層のそれぞれについて、それぞれ延伸方向(X方向)とその直交方向(Y方向)、厚み方向(Z方向)のそれぞれの屈折率(それぞれnX、nY、nZとする)を、メトリコン製プリズムカプラを用いて波長633nmにおける屈折率を測定して求め、第1層及び第2層それぞれの延伸後の屈折率とした。
【0076】
-単調減少の判断-
多層積層構造の単調減少の判断は、第1層と第2層との組み合わせを1つの繰り返し単位とし、かかる繰り返し単位の物理厚みの値を縦軸に入力し、各繰り返し単位の層番号(多層積層構造の第1表面側から順に付した番号)を横軸に入力した際の層厚みプロファイルの任意の領域において、第1の表面側から第2の表面側に向かって膜厚が減少傾向を示す範囲内での繰り返し単位数を略5等分し、膜厚が薄くなる方向に、等分された各エリアでの膜厚の平均値が全て減少している場合は単調減少であるとし、そうでない場合は単調減少でないとした。
ただし、繰り返し単位数が4以下である場合に限り、繰り返し単位数を略3等分し、等分された各エリアにおいて、上記と同じ手法で単調減少であるか、そうでないかを判断する。
【0077】
-単調増加の判断-
多層積層構造の単調増加の判断は、第1層と第2層との組み合わせを1つの繰り返し単位とし、かかる繰り返し単位の物理厚みの値を縦軸に入力し、各繰り返し単位の層番号(多層積層構造の第2表面側から順に付した番号)を横軸に入力した際の層厚みプロファイルの任意の領域において、第1の表面側から第2の表面側に向かって膜厚が増加傾向を示す範囲内での繰り返し単位数を略5等分し、膜厚が厚くなる方向に、等分された各エリアでの膜厚の平均値が全て増加している場合は単調増加であるとし、そうでない場合は単調増加でないとした。
【0078】
-偏光度の評価-
偏光フィルム測定装置(日本分光株式会社製「VAP7070S」)を用いて、得られた多層積層フィルムの視感度補正偏光度を測定し、偏光度(P)(単位:%)とした。なお、測定はグランテーラープリズム、スポット径調整用マスクΦ1.4、および偏角ステージを使用し、測定光の入射角は0度設定とし、クロスニコルサーチ(650nm)で定まる多層積層フィルムの透過軸と該透過軸と直交する軸の各々の平均透過率(波長範囲380~780nm)をもとに算出される。
ここで、偏光度は、76%以上であることが好ましい。輝度向上部材等の光学用に用いる場合は、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、更に好ましくは87%以上である。
【0079】
-反射軸平均反射率の測定-
偏光フィルム測定装置(日本分光株式会社製「VAP7070S」)を用いて、得られた多層積層体および多層積層フィルムの透過スペクトルを測定した。
なお、測定はグランテーラープリズム、スポット径調整用マスクΦ1.4、および偏角ステージを使用し、測定光の入射角は0度設定とし、クロスニコルサーチ(650nm)で定まる多層積層フィルムの透過軸及び該透過軸に直交する軸(反射軸)の波長380nm~780nmの範囲における平均透過率(それぞれ「透過軸平均透過率」、「反射軸平均透過率」ともいう。)を、5nm間隔で測定した。なお、「反射軸平均反射率」は、100-反射軸平均透過率として求めた。
【0080】
-スジの評価-
得られた多層積層フィルムについて、長さ1m×幅1mの領域をスジの評価領域とした。得られたスジの評価領域について、蛍光灯下で目視によって観察し、下記の評価基準に基づき、多層積層フィルムのスジ抑制効果の評価を行った。
A:全くスジが見えない
B:うっすらスジが見える程度で、色斑のスジには見えない
C:全面ではなく部分的に色斑スジが確認できる
D:ほぼ全面に色斑スジがすぐ確認でき、フィルムは濁って見えるが、表面手触りで凹凸は分からない
E:全面にスジが発生し、手触りでも凹凸がはっきりしている
【0081】
[製造例1]ポリエステルA
第1層用ポリエステルとして、2,6-ナフタレンジカルボン酸ジメチル、テレフタル酸ジメチル、そしてエチレングリコールを、チタンテトラブトキシドの存在下でエステル交換反応を行い、さらに引き続いて重縮合反応を行って、酸成分の95モル%が2,6-ナフタレンジカルボン酸成分、酸成分の5モル%がテレフタル酸成分、グリコール成分がエチレングリコール成分である共重合ポリエステル(固有粘度0.64dl/g)(o―クロロフェノール、35℃、以下同様)を準備した。
【0082】
[製造例2]ポリエステルB
第2層用ポリエステルとして、2,6-ナフタレンジカルボン酸ジメチル、テレフタル酸ジメチル、そしてエチレングリコールとトリメチレングリコールを、チタンテトラブトキシドの存在下でエステル交換反応を行い、さらに引き続いて重縮合反応を行って、酸成分の50モル%が2,6-ナフタレンジカルボン酸成分、酸成分の50モル%がテレフタル酸成分、グリコール成分の85モル%がエチレングリコール成分、グリコール成分の15モル%がトリメチレングリコール成分である共重合ポリエステル(固有粘度0.63dl/g)を準備した。
【0083】
[実施例A1~A8、実施例B1~B8、比較例1~4]
<実施例A1>
第1層用にポリエステルAを170℃で5時間乾燥した後、第2層用にポリエステルBを85℃で8時間乾燥した後、それぞれ第1、第2の押し出し機に供給し、300℃まで加熱して溶融状態とし、第1層用ポリエステルを138層、第2層用ポリエステルを138層に分岐させた後、第1層と第2層が交互に積層され、かつ表1及び表2に示すような層厚みプロファイルとなるような櫛歯を備える多層フィードブロック装置を使用して、総数276層の積層状態の溶融体とし、その積層状態を保持したままダイから押し出し、未延伸多層積層構造を作製した。
この未延伸多層積層体を130℃の温度で幅方向に5.9倍に延伸した。得られた1軸延伸多層積層フィルムの厚みは28μmであった。
この多層積層フィルムを上述した評価方法により評価し、その結果を表1及び表2に示す。
また、上述した延伸後の屈折率から、第1層は複屈折性であり、第2層は等方性であることを確認した。
【0084】
<実施例A2~A8、及び実施例B1~B8>
表1及び表2に示す層厚みプロファイルとなるように用いる多層フィードブロック装置を変更した以外は実施例1と同様にして、多層積層フィルムを作製した。
実施例A2~実施例A8、及び実施例B1~B8で得られた多層積層フィルムの評価結果を表1及び表2に示す。
なお、表1中の「(A)」は、層厚みプロファイルが既述の第1実施形態である場合を示し、表2中の「(B)」は、層厚みプロファイルが既述の第2実施形態である場合を示す。
【0085】
また、実施例A2~A8、及び実施例B1~B8で得られたフィルムは全て、上述した延伸後の屈折率の評価から、第1層は複屈折性であり、第2層は等方性であることを確認した。
【0086】
<比較例1~4>
表1及び表2に示す層厚みプロファイルとなるように用いる多層フィードブロック装置を変更した以外は実施例1と同様にして、多層積層フィルムを作製した。
比較例1~4で得られた多層積層フィルムの評価結果を表1及び表2に示す。
【0087】
【0088】
【0089】
表1及び表2からわかるように、実施例の多層積層フィルムでは、薄膜化しながら、広い反射帯域及び適度に高い偏光度を維持しつつ、スジの発生が抑制されていた。
【0090】
したがって、実施例の多層積層フィルムでは、薄膜化しながら、広い反射帯域及び適度に高い偏光度を維持しつつ、スジの発生を抑制することができるため、実施例の多層積層フィルムを光学フィルムとして、例えば液晶ディスプレイ及びそれを備えるデバイス等に適用された場合、それらの小型化、軽量化に寄与することができる。