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特許7392351静電荷像現像用キャリア、静電荷像現像剤、プロセスカートリッジ、画像形成装置及び画像形成方法
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  • 特許-静電荷像現像用キャリア、静電荷像現像剤、プロセスカートリッジ、画像形成装置及び画像形成方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】静電荷像現像用キャリア、静電荷像現像剤、プロセスカートリッジ、画像形成装置及び画像形成方法
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/113 20060101AFI20231129BHJP
【FI】
G03G9/113 362
G03G9/113 351
G03G9/113 361
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019174594
(22)【出願日】2019-09-25
(65)【公開番号】P2021051216
(43)【公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 拓郎
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 一綱
(72)【発明者】
【氏名】角倉 康夫
(72)【発明者】
【氏名】橋本 安章
(72)【発明者】
【氏名】安野 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 淳平
【審査官】高草木 綾音
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-197569(JP,A)
【文献】特開2005-148184(JP,A)
【文献】特開2006-330307(JP,A)
【文献】特開2014-085410(JP,A)
【文献】特開2009-109701(JP,A)
【文献】特開2016-218410(JP,A)
【文献】特開2009-109771(JP,A)
【文献】特開2005-274808(JP,A)
【文献】特開2010-217629(JP,A)
【文献】特開2005-233988(JP,A)
【文献】特開2009-276575(JP,A)
【文献】特開2009-237034(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/00-9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯材と、窒素含有樹脂粒子及び表面が疎水化処理された無機酸化物粒子を含み、前記芯材を被覆する被覆樹脂層と、を有し、
前記窒素含有樹脂粒子の表面露出率が0.8%以上3.0%以下である、
静電荷像現像用キャリア。
【請求項2】
前記被覆樹脂層は、
キャリア表面から深さ方向300nm以内の第一の領域に含まれる全成分に由来する炭素原子C1に対する、前記第一の領域に含まれる前記窒素含有樹脂粒子に由来する窒素原子N1の割合(N1/C1)が、
キャリア表面から深さ方向300nm超え600nm以内の第二の領域に含まれる全成分に由来する炭素原子C2に対する、前記第二の領域における前記窒素含有樹脂粒子に由来する窒素原子N2の割合(N2/C2)よりも、大きい、
請求項1に記載の静電荷像現像用キャリア。
【請求項3】
前記被覆樹脂層は、
前記第一の領域に含まれる前記窒素含有樹脂粒子に由来する窒素原子N1の割合(N1/C1)と、前記第二の領域における前記窒素含有樹脂粒子に由来する窒素原子N2の割合(N2/C2)との差(N1/C1-N2/C2)が0.01以上である、
請求項に記載の静電荷像現像用キャリア。
【請求項4】
前記被覆樹脂層は、前記表面が疎水化処理された無機酸化物粒子の含有量が、前記被覆樹脂層の全質量に対して15質量%以上50質量%以下である、請求項1~請求項のいずれか1項に記載の静電荷像現像用キャリア。
【請求項5】
前記被覆樹脂層は、
キャリア表面から深さ方向300nm以内の第一の領域に含まれる全成分に由来する炭素原子C1に対する、前記第一の領域に含まれる前記表面が疎水化処理された無機酸化物粒子に由来する原子M1の割合(M1/C1)が、0.1以上1.0以下である、請求項1~請求項のいずれか1項に記載の静電荷像現像用キャリア。(ただし、前記M1は、酸素原子を除く。)
【請求項6】
前記被覆樹脂層は、
キャリア表面から深さ方向300nm超え600nm以内の第二の領域に含まれる全成分に由来する炭素原子C2に対する、前記第二の領域における前記表面が疎水化処理された無機酸化物粒子に由来する原子M2の割合(M2/C2)が、0.1以上1.0以下である、請求項に記載の静電荷像現像用キャリア。(ただし、前記M2は、酸素原子を除く。)
【請求項7】
前記表面が疎水化処理された無機酸化物粒子の体積平均粒径が、5nm以上50nm以下である、請求項1~請求項のいずれか1項に記載の静電荷像現像用キャリア。
【請求項8】
前記窒素含有樹脂粒子の体積平均粒径が、100nm以上800nm以下である、請求項1~請求項のいずれか1項に記載の静電荷像現像用キャリア。
【請求項9】
前記表面が疎水化処理された無機酸化物粒子は、表面が疎水化処理された、シリカ粒子、チタニア粒子及びアルミナ粒子からなる群より選択される少なくとも1種の無機酸化物粒子を含む、請求項1~請求項のいずれか1項に記載の静電荷像現像用キャリア。
【請求項10】
前記被覆樹脂層における、前記窒素含有樹脂粒子の含有量は、前記表面が疎水化処理された無機酸化物粒子の全質量に対して、15質量%以上55質量%以下である、請求項1~請求項のいずれか1項に記載の静電荷像現像用キャリア。
【請求項11】
静電荷像現像用トナーと、
請求項1~請求項10のいずれか1項に記載の静電荷像現像用キャリアと、
を含む静電荷像現像剤。
【請求項12】
請求項11に記載の静電荷像現像剤を収容し、前記静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段を備え、
画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジ。
【請求項13】
像保持体と、
前記像保持体の表面を帯電する帯電手段と、
帯電した前記像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成手段と、
請求項11に記載の静電荷像現像剤を収容し、前記静電荷像現像剤により、前記像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段と、
前記像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、
前記記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着手段と、
を備える画像形成装置。
【請求項14】
像保持体の表面を帯電する帯電工程と、
帯電した前記像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成工程と、
請求項11に記載の静電荷像現像剤により、前記像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像工程と、
前記像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写工程と、
前記記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着工程と、
を有する画像形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電荷像現像用キャリア、静電荷像現像剤、プロセスカートリッジ、画像形成装置及び画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、「芯材と、前記芯材を被覆し、樹脂、導電材、及び球状シリカ粒子を含み、前記球状シリカ粒子が表面側に偏在している樹脂被覆層と、を有する静電荷像現像用キャリア。」が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-195698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、『芯材と、無機酸化物粒子を含み、前記芯材を被覆する被覆樹脂層とを有する静電荷像現像用キャリア』を含む静電荷像現像剤を用いると、画像の中抜けが発生することがあった。
本発明では、上記事情に鑑み、
「前記窒素含有樹脂粒子の表面露出率が0.8%未満又は3.0%超えである場合」、
「キャリアをターブラ撹拌機により30秒間撹拌したときの帯電立ち上がり速度TV30sと、キャリアをターブラ撹拌機により2分間撹拌したときの帯電立ち上がり速度TV2mと、の比(TV30s/TV2m)が、0.7未満又は1.40超えである場合」、又は、
「被覆樹脂層における、キャリア表面から深さ方向300nm以内の第一の領域に含まれる全成分に由来する炭素原子C1に対する、前記第一の領域に含まれる前記窒素含有樹脂粒子に由来する窒素原子N1の割合(N1/C1)が、0.02未満又は0.3超えである場合」に比べて、
高温高湿度環境下においても画像の中抜けが抑制される静電荷像現像用キャリアを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための具体的手段には、下記の態様が含まれる。
【0006】
[1] 芯材と、窒素含有樹脂粒子及び無機酸化物粒子を含み、前記芯材を被覆する被覆樹脂層と、を有し、
前記窒素含有樹脂粒子の表面露出率が0.8%以上3.0%以下である、静電荷像現像用キャリア。
[2] 芯材と、窒素含有樹脂粒子及び無機酸化物粒子を含み、前記芯材を被覆する被覆樹脂層と、を有し、
キャリアをターブラ撹拌機により30秒間撹拌したときの帯電立ち上がり速度TV30sと、キャリアをターブラ撹拌機により2分間撹拌したときの帯電立ち上がり速度TV2mと、の比(TV30s/TV2m)が、0.7以上1.40以下である、静電荷像現像用キャリア。
[3] 芯材と、窒素含有樹脂粒子及び無機酸化物粒子を含み、前記芯材を被覆する被覆樹脂層と、を有し、
前記被覆樹脂層は、キャリア表面から深さ方向300nm以内の第一の領域に含まれる全成分に由来する炭素原子C1に対する、前記第一の領域に含まれる前記窒素含有樹脂粒子に由来する窒素原子N1の割合(N1/C1)が、0.02以上0.3以下である、静電荷像現像用キャリア。
[4] 前記被覆樹脂層は、
キャリア表面から深さ方向300nm以内の第一の領域に含まれる全成分に由来する炭素原子C1に対する、前記第一の領域に含まれる前記窒素含有樹脂粒子に由来する窒素原子N1の割合(N1/C1)が、
キャリア表面から深さ方向300nm超え600nm以内の第二の領域に含まれる全成分に由来する炭素原子C2に対する、前記第二の領域における前記窒素含有樹脂粒子に由来する窒素原子N2の割合(N2/C2)よりも、大きい、
[1]~[3]のいずれか1つに記載の静電荷像現像用キャリア。
[5] 前記被覆樹脂層は、
前記第一の領域に含まれる前記窒素含有樹脂粒子に由来する窒素原子N1の割合(N1/C1)と、前記第二の領域における前記窒素含有樹脂粒子に由来する窒素原子N2の割合(N2/C2)との差(N1/C1-N2/C2)が0.01以上である、
[4]に記載の静電荷像現像用キャリア。
[6] 前記被覆樹脂層は、前記無機酸化物粒子の含有量が、前記被覆樹脂層の全質量に対して15質量%以上50質量%以下である、[1]~[5]のいずれか1つに記載の静電荷像現像用キャリア。
[7] 前記被覆樹脂層は、
キャリア表面から深さ方向300nm以内の第一の領域に含まれる全成分に由来する炭素原子C1に対する、前記第一の領域に含まれる前記無機酸化物粒子に由来する原子M1の割合(M1/C1)が、0.1以上1.0以下である、[1]~[6]のいずれか1つに記載の静電荷像現像用キャリア。(ただし、前記M1は、酸素原子を除く。)
[8] 前記被覆樹脂層は、
キャリア表面から深さ方向300nm超え600nm以内の第二の領域に含まれる全成分に由来する炭素原子C2に対する、前記第二の領域における前記無機酸化物粒子に由来する原子M2の割合(M2/C2)が、0.1以上1.0以下である、[7]に記載の静電荷像現像用キャリア。(ただし、前記M2は、酸素原子を除く。)
[9] 前記無機酸化物粒子の体積平均粒径が、5nm以上50nm以下である、[1]~[8]のいずれか1つに記載の静電荷像現像用キャリア。
[10] 前記窒素含有樹脂粒子の体積平均粒径が、100nm以上800nm以下である、[1]~[9]のいずれか1つに記載の静電荷像現像用キャリア。
[11] 前記無機酸化物粒子は、シリカ粒子、チタニア粒子及びアルミナ粒子からなる群より選択される少なくとも1種の無機酸化物粒子を含む、[1]~[10]のいずれか1つに記載の静電荷像現像用キャリア。
[12] 前記被覆樹脂層における、前記窒素含有樹脂粒子の含有量は、前記無機酸化物粒子の全質量に対して、15質量%以上55質量%以下である、[1]~[11]のいずれか1つに記載の静電荷像現像用キャリア。
[13] 静電荷像現像用トナーと、
[1]~[12]のいずれか1つに記載の静電荷像現像用キャリアと、
を含む静電荷像現像剤。
[14] [13]に記載の静電荷像現像剤を収容し、前記静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段を備え、
画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジ。
[15] 像保持体と、
前記像保持体の表面を帯電する帯電手段と、
帯電した前記像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成手段と、
[13]に記載の静電荷像現像剤を収容し、前記静電荷像現像剤により、前記像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段と、
前記像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、
前記記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着手段と、
を備える画像形成装置。
[16] 像保持体の表面を帯電する帯電工程と、
帯電した前記像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成工程と、
[13]に記載の静電荷像現像剤により、前記像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像工程と、
前記像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写工程と、
前記記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着工程と、
を有する画像形成方法。
【発明の効果】
【0007】
[1]又は[11]に係る発明によれば、前記窒素含有樹脂粒子の表面露出率が0.8%未満又は3.0%超えである場合に比べて、画像の中抜けが抑制される静電荷像現像用キャリアが提供される。
[2]又は[11]に係る発明によれば、キャリアをターブラ撹拌機により30秒間撹拌したときの帯電立ち上がり速度TV30sと、キャリアをターブラ撹拌機により2分間撹拌したときの帯電立ち上がり速度TV2mと、の比(TV30s/TV2m)が、0.7未満又は1.40超えである場合に比べて、画像の中抜けが抑制される静電荷像現像用キャリアが提供される。
[3]又は[11]に係る発明によれば、被覆樹脂層における、キャリア表面から深さ方向300nm以内の第一の領域に含まれる全成分に由来する炭素原子C1に対する、前記第一の領域に含まれる前記窒素含有樹脂粒子に由来する窒素原子N1の割合(N1/C1)が、0.02未満又は0.3超えである場合に比べて、画像の中抜けが抑制される静電荷像現像用キャリアが提供される。
【0008】
[4]に係る発明によれば、前記被覆樹脂層が、キャリア表面から深さ方向300nm以内の第一の領域に含まれる全成分に由来する炭素原子C1に対する、前記第一の領域に含まれる前記窒素含有樹脂粒子に由来する窒素原子N1の割合(N1/C1)が、キャリア表面から深さ方向300nm超え600nm以内の第二の領域に含まれる全成分に由来する炭素原子C2に対する、前記第二の領域における前記窒素含有樹脂粒子に由来する窒素原子N2の割合(N2/C2)よりも、小さい場合に比べて、画像の中抜けが抑制される静電荷像現像用キャリアが提供される。
【0009】
[5]に係る発明によれば、前記第一の領域に含まれる前記窒素含有樹脂粒子に由来する窒素原子N1の割合(N1/C1)と、前記第二の領域における前記窒素含有樹脂粒子に由来する窒素原子N2の割合(N2/C2)との差(N1/C1-N2/C2)が0.01未満である場合に比べて、画像の中抜けが抑制される静電荷像現像用キャリアが提供される。
【0010】
[6]に係る発明によれば、前記被覆樹脂層が、前記無機酸化物粒子の含有量が、前記被覆樹脂層の全質量に対して15質量%未満又は50質量%超えである場合に比べて、画像の中抜けが抑制される静電荷像現像用キャリアが提供される。
【0011】
[7]に係る発明によれば、前記被覆樹脂層が、キャリア表面から深さ方向300nm以内の第一の領域に含まれる全成分に由来する炭素原子C1に対する、前記第一の領域に含まれる前記無機酸化物粒子に由来する原子M1の割合(M1/C1)が、0.1未満又は1.0超えである場合に比べて、画像の中抜けが抑制される静電荷像現像用キャリアが提供される。
【0012】
[8]に係る発明によれば、前記被覆樹脂層が、キャリア表面から深さ方向300nm超え600nm以内の第二の領域に含まれる全成分に由来する炭素原子C2に対する、前記第二の領域における前記無機酸化物粒子に由来する原子M2の割合(M2/C2)が、0.1未満又は1.0超えである場合に比べて、画像の中抜けが抑制される静電荷像現像用キャリアが提供される。
【0013】
[9]に係る発明によれば、前記無機酸化物粒子の体積平均粒径が、5nm未満又は50nm超えである場合に比べて、画像の中抜けが抑制される静電荷像現像用キャリアが提供される。
【0014】
[10]に係る発明によれば、前記窒素含有樹脂粒子の体積平均粒径が、100nm未満又は800nm超えである場合に比べて、画像の中抜けが抑制される静電荷像現像用キャリアが提供される。
【0015】
[12]に係る発明によれば、前記被覆樹脂層における、前記窒素含有樹脂粒子の含有量が、前記無機酸化物粒子の全質量に対して、15質量%未満又は55質量%超えである場合に比べて、画像の中抜けが抑制される静電荷像現像用キャリアが提供される。
【0016】
[13]、[14]、[15]又は[16]に係る発明によれば、
「前記窒素含有樹脂粒子の表面露出率が0.8%未満又は3.0%超えである場合」、
「キャリアをターブラ撹拌機により30秒間撹拌したときの帯電立ち上がり速度TV30sと、キャリアをターブラ撹拌機により2分間撹拌したときの帯電立ち上がり速度TV2mと、の比(TV30s/TV2m)が、0.7未満又は1.40超えである場合」、又は、
「被覆樹脂層における、キャリア表面から深さ方向300nm以内の第一の領域に含まれる全成分に由来する炭素原子C1に対する、前記第一の領域に含まれる前記窒素含有樹脂粒子に由来する窒素原子N1の割合(N1/C1)が、0.02未満又は0.3超えである場合」に比べて、
画像の中抜けが抑制される静電荷像現像剤、プロセスカートリッジ、画像形成装置又は画像形成方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
図2】本実施形態に係る画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジの一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の実施形態について説明する。これらの説明及び実施例は実施形態を例示するものであり、実施形態の範囲を制限するものではない。
【0019】
本明細書中で段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0020】
本明細書において各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。本開示において組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
【0021】
≪静電荷像現像用キャリア≫
第一の実施形態に係る静電荷像現像用キャリアは、芯材と、窒素含有樹脂粒子及び無機酸化物粒子を含み、前記芯材を被覆する被覆樹脂層と、を有し、前記窒素含有樹脂粒子の表面露出率が0.8%以上3.0%以下である。
【0022】
第二の実施形態に係る静電荷像現像用キャリアは、芯材と、窒素含有樹脂粒子及び無機酸化物粒子を含み、前記芯材を被覆する被覆樹脂層と、を有し、キャリアをターブラ撹拌機により30秒間撹拌したときの帯電立ち上がり速度TV30sと、キャリアをターブラ撹拌機により2分間撹拌したときの帯電立ち上がり速度TV2mと、の比(TV30s/TV2m)が、0.7以上1.40以下である。
【0023】
第三の実施形態に係る静電荷像現像用キャリアは、芯材と、窒素含有樹脂粒子及び無機酸化物粒子を含み、前記芯材を被覆する被覆樹脂層と、を有し、前記被覆樹脂層は、キャリア表面から深さ方向300nm以内の第一の領域に含まれる全成分に由来する炭素原子C1に対する、前記第一の領域に含まれる前記窒素含有樹脂粒子に由来する窒素原子N1の割合(N1/C1)が、0.02以上0.3以下である。
【0024】
以下、第一の実施形態に係る静電荷像現像用キャリア、第二の実施形態に係る静電荷像現像用キャリア、及び、第三の実施形態に係る静電荷像現像用キャリアを、あわせて「本実施形態に係る静電荷像現像用キャリア」とも称す。
以下、「静電荷像現像用キャリア」を、単に「キャリア」とも称す。
【0025】
高温高湿度環境下(例えば、28℃、85%RH)における現像装置内では、トナーにストレスがかかり、トナー粒子表面に外添される外添剤がキャリアに付着しトラップされることがある。そのため、トナー画像の転写の際に、トナーから遊離して転写性を向上させる役割を有する外添剤(以下、「遊離外添剤」とも称す。)の量が減少する傾向にある。遊離外添剤の量が少ないまま、トナー画像を転写しようとすると、像保持体と転写部材とを挿通させる転写ニップにおいて、トナーが画像の中心領域で凝集し、遊離外添剤はトナー画像の縁側で偏在する傾向にある。その結果、凝集している画像の中心領域のトナーは、転写性が低いため転写されず、且つ、遊離外添剤が偏在する画像の縁側のトナーは転写される現象、つまり、画像が中抜けする現象が生じることがある(以下、この現象を単に「画像の中抜け」とも称す。)。
【0026】
一方、第一の実施形態に係るキャリア、第二の実施形態に係るキャリア、及び、第三の実施形態に係るキャリアは、上記構成を有することにより、高温高湿度環境下においても、画像の中抜けが抑制される。この要因は必ずしも明らかではないが、以下の様に推察される。
【0027】
(第一の実施形態に係るキャリアによる画像の中抜けの抑制)
被覆樹脂層が窒素含有樹脂粒子を含み、且つ、窒素含有樹脂粒子の表面露出率が0.8%以上であると、キャリアの表面が正帯電する傾向にある。他方、窒素含有樹脂粒子の表面露出率が3.0%以下であると、キャリア表面が局所的に強く正帯電することが抑制され、キャリア表面全体が均一性高く帯電する傾向にある。
被覆樹脂層が無機酸化物粒子及び窒素含有樹脂粒子を含むと、フィラー効果により、キャリアの硬度が向上したり、キャリアの表面に凹凸が生じたりし易くなり、これによりキャリアの外添剤に対する物理的付着力が低下する傾向にある。また、キャリア表面の凹凸により、キャリアとトナーとが現像装置内で接触したときに、摩擦が生じ易く、この摩擦により、トナーの表面が帯電することが促進される傾向にある。
上述の通り、第一の実施形態に係るキャリアは、キャリア表面が均一性高く正帯電し、且つ、トナーと接触することによりトナー表面を帯電させ易くする。これにより、トナーとキャリアとの間で静電的な反発力が働く傾向にあり、外添剤がキャリアに付着し難くなる。その結果、高温高湿度環境下におけるトナー画像の転写の際にも、転写ニップでトナーの凝集が抑制されるため、画像の中抜けが抑制されると考えられる。
【0028】
(第二の実施形態に係るキャリアによる画像の中抜けの抑制)
キャリアをターブラ撹拌機により30秒間撹拌したときの帯電立ち上がり速度TV30sと、キャリアをターブラ撹拌機により2分間撹拌したときの帯電立ち上がり速度TV2mと、の比(TV30s/TV2m)が、0.7以上1.40以下であるということは、つまり、キャリア表面の帯電性が高いことを表している。
また、被覆樹脂層が無機酸化物粒子及び窒素含有樹脂粒子を含むと、上述の通り、キャリアの外添剤に対する物理的付着力が低下する傾向にある。また、トナーの表面が帯電することが促進される傾向にある。
上述の通り、第二の実施形態に係るキャリアは、キャリア表面が高い帯電性を有し、且つ、トナーと接触することによりトナー表面を帯電させ易くする。これにより、トナーとキャリアとの間で静電的な反発力が働く傾向にあり、外添剤がキャリアに付着し難くなる。その結果、高温高湿度環境下におけるトナー画像の転写の際にも、転写ニップでトナーの凝集が抑制されるため、画像の中抜けが抑制されると考えられる。
【0029】
(第三の実施形態に係るキャリアによる画像の中抜けの抑制)
被覆樹脂層における、キャリア表面から深さ方向300nm以内の第一の領域に含まれる全成分に由来する炭素原子C1に対する、前記第一の領域に含まれる前記窒素含有樹脂粒子に由来する窒素原子N1の割合(N1/C1)が、0.02以上であるということは、窒素含有樹脂粒子がキャリア表面に近い領域に多く含まれていることを表している。そのため、キャリア表面が正帯電する傾向にある。他方、前記割合(N1/C1)が0.3以下であるということは、窒素含有樹脂粒子がキャリア表面に過度に存在し難いことを表している。そのため、キャリアの表面が局所的に強く正帯電することが抑制され、キャリア表面全体が均一性高く帯電する傾向にある。
また、被覆樹脂層が無機酸化物粒子及び窒素含有樹脂粒子を含むと、上述の通り、キャリアの外添剤に対する物理的付着力が低下する傾向にある。また、トナーの表面が帯電することが促進される傾向にある。
上述の通り、第三の実施形態に係るキャリアは、キャリア表面が均一性高く正帯電し、且つ、トナーと接触することによりトナー表面を帯電させ易くする。これにより、トナーとキャリアとの間で静電的な反発力が働く傾向にあり、外添剤がキャリアに付着し難くなる。その結果、高温高湿度環境下におけるトナー画像の転写の際にも、転写ニップでトナーの凝集が抑制されるため、画像の中抜けが抑制されると考えられる。
【0030】
また、本実施形態に係るキャリアは、被覆樹脂層が無機酸化物粒子及び窒素含有樹脂粒子を含む。これにより、比重の軽い傾向にある窒素含有樹脂粒子が、被覆樹脂層の表面に偏在し易く、且つ、比重の重い傾向にある無機酸化物粒子が被覆樹脂層の芯材側に偏在し易くなる。そのため、キャリア全体としての硬度が向上し、摩耗が抑制される傾向にある。その結果、高温高湿度環境下において長期に画像を形成したときも、画像の中抜けが抑制されると考えられる。
【0031】
(静電荷像現像用キャリアの性質)
第二の実施形態に係るキャリアは、
キャリアをターブラ撹拌機により30秒間撹拌したときの帯電立ち上がり速度TV30sと、キャリアをターブラ撹拌機により2分間撹拌したときの帯電立ち上がり速度TV2mと、の比(TV30s/TV2m)が、
0.7μ以上1.4以下であり、0.8以上1.2以下であることが好ましく、0.9以上1.1以下であることがより好ましい。
【0032】
第一の実施形態に係るキャリア及び第三の実施形態に係るキャリアは、
画像の中抜けをより抑制する観点から、
前記比(TV30s/TV2m)が、0.7以上1.4以下であることが好ましく、0.8以上1.2以下であることがより好ましく、0.9以上1.1以下であることがさらに好ましい。
【0033】
前記比(TV30s/TV2m)は、以下の様にして求める。
(1)エアジェットシーブにより、トナーの外添剤としてシリカ粒子を含む静電荷像現像剤からトナーとキャリアとを分離する。
(3)キャリア30gに対し、トナー1.30gを28℃85RH%環境下で1晩シーズニングし、ターブラ撹拌機(WAB社製、製品番号Type T2F)で30秒間撹拌した後、帯電測定装置を用いて、キャリアの帯電立ち上がり速度を測定する。この測定を5回行い、各測定値の算術平均値を、「キャリアをターブラ撹拌機により30秒間撹拌したときの帯電立ち上がり速度TV30s」とする。
(4)キャリア30gに対し、トナー1.30gを28℃85RH%環境下で1晩シーズニングし、ターブラ撹拌機(WAB社製、製品番号Type T2F)で2分間撹拌した後、帯電測定装置を用いて、キャリアの帯電立ち上がり速度を測定する。この測定を5回行い、各測定値の算術平均値を、「キャリアをターブラ撹拌機により2分間撹拌したときの帯電立ち上がり速度TV2m」とする。
(5)キャリアをターブラ撹拌機により30秒間撹拌したときの帯電立ち上がり速度TV30sと、キャリアをターブラ撹拌機により2分間撹拌したときの帯電立ち上がり速度TV2mと、の比(TV30s/TV2m)を求める。
【0034】
前記比(TV30s/TV2m)を、上記範囲内とする手法は特に制限されないが、例えば、キャリアの表面に、窒素含有樹脂粒子等の表面電荷を調整可能な粒子を分散させる手法;窒素含有樹脂粒子量を変更する手法;などが挙げられる。
【0035】
〔芯材〕
本実施形態に係る静電荷像現像用キャリアは、芯材を含む。
芯材は、磁性を有するものであれば特に制限されず、キャリアの芯材として用いられる公知の材料が適用される。
芯材としては、例えば、粒子状の磁性粉(磁性粒子);多孔質の磁性粉に樹脂を含侵させた樹脂含浸磁性粒子;樹脂中に磁性粉が分散して配合された磁性粉分散樹脂粒子;などが挙げられる。芯材は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0036】
磁性粒子としては、鉄、ニッケル、コバルト等の磁性金属の粒子;フェライト、マグネタイト等の磁性酸化物等が挙げられ、磁性酸化物粒子であることが好ましい。
芯材を構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、スチレン-アクリル酸エステル共重合体、オルガノシロキサン結合を含んで構成されるストレートシリコーン又はその変性品、フッ素樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、芯材を構成する樹脂には、導電性粒子等の添加剤を含ませてもよい。導電性粒子としては、金、銀、銅等の金属、カーボンブラック、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、硫酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、チタン酸カリウム等の粒子が挙げられる。
【0037】
芯材は、粒子状の磁性粉、つまり、磁性粒子であることが好ましい。
【0038】
磁性粒子の体積平均粒径は、例えば20μm以上50μm以下であることが好ましい。
【0039】
〔被覆樹脂層〕
本実施形態に係る被覆樹脂層は、窒素含有樹脂粒子及び無機酸化物粒子を含む。
本実施形態に係る被覆樹脂層は、前記芯材を被覆する樹脂層である。
【0040】
(結着樹脂)
被覆樹脂層を構成する結着樹脂としては、スチレン・アクリル酸共重合体;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン等のポリビニル系又はポリビニリデン系樹脂;塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体;オルガノシロキサン結合からなるストレートシリコーン樹脂又はその変性物;ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン等のフッ素樹脂;ポリエステル;ポリウレタン;ポリカーボネート;尿素・ホルムアルデヒド樹脂等のアミノ樹脂;エポキシ樹脂;などが挙げられる。被覆樹脂層を構成する樹脂は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0041】
被覆樹脂層を構成する樹脂は、脂環式(メタ)アクリル樹脂を含有することが好ましい。被覆樹脂層が脂環式アクリル樹脂を含有することにより、被覆樹脂層に含まれる無機酸化物粒子の分散性がより高くなり易く、無機酸化物粒子を含む樹脂片が効率よく発生する傾向にある。その結果、画像の濃度ムラがより抑制される傾向にある。
【0042】
脂環式(メタ)アクリル樹脂の重合成分としては、(メタ)アクリル酸の低級アルキルエステル(例えば、アルキル基の炭素数が1以上9以下の(メタ)アクリル酸アルキルエステル)が好ましく、具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2-(ジメチルアミノ)エチル(メタ)クリレート等が挙げられる。
上記の中でも、脂環式アクリル樹脂の重合性分としては、画像の濃度ムラをより抑制する観点から、メチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート及び2-(ジメチルアミノ)エチル(メタ)クリレートからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、メチル(メタ)アクリレート及びシクロヘキシル(メタ)アクリレートの少なくとも一方を含むことがより好ましい。脂環式アクリル樹脂の重合成分は、1種を用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0043】
脂環式(メタ)アクリル樹脂は、脂環式官能基の立体障害によって、炭素原子と酸素原子の結合の分極成分に対する水の影響を遮蔽する。環境変化に対する水分影響を抑制することができることから、重合成分としてシクロヘキシル(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。
【0044】
脂環式(メタ)アクリル樹脂に含まれるシクロヘキシル(メタ)アクリレートの含有量は、75モル%以上100モル%以下であることが好ましく、90モル%以上100モル%以下であることがより好ましく、95モル%以上100モル%以下であることがさらに好ましい。
【0045】
被覆樹脂層を構成する樹脂に含まれる全樹脂に占める脂環式(メタ)アクリル樹脂の割合は、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましい。
【0046】
(無機酸化物粒子)
無機酸化物粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン(チタニア)、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化鉄、酸化銅、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化クロム、酸化セリウム、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム等の粒子が挙げられる。これらの中でも、無機酸化物粒子としては、画像の濃度ムラをより抑制する観点から、シリカ、アルミナ及び酸化チタンからなる群より選択される少なくとも1種の無機酸化物粒子を含むことが好ましく、シリカの粒子を含むことがより好ましい。無機酸化物粒子は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0047】
無機酸化物粒子は、疎水化処理剤により疎水化処理された無機酸化物粒子を含むことが好ましく、疎水化処理されたシリカ粒子を含むことがより好ましい。
【0048】
疎水化処理剤としては公知の表面処理剤が挙げられ、具体的には、例えば、シランカップリング剤、シリコーンオイル等が挙げられる。
シランカップリング剤としては、例えば、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルシラン、トリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、アリルジメチルクロロシラン、ベンジルジメチルクロロシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、n-ブチルトリメトキシシラン、n-ヘキサデシルトリメトキシシラン、n-オクタデシルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン等が挙げられる。
シリコーンオイルとしては、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジンポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等が挙げられる。
【0049】
本実施形態に係る無機酸化物粒子の含有量は、画像の中抜けをより抑制する観点から、
被覆樹脂層の全質量に対して、
15質量%以上50質量%以下であることが好ましく、20質量%以上45質量%以下であることがより好ましく、25質量%以上40質量%以下であることがさらに好ましい。
【0050】
本実施形態に係る無機粒子の体積平均粒径は、画像の中抜けをより抑制する観点から、5nm以上50nm以下であることが好ましく、5nm以上30nm以下であることがより好ましく、8nm以上20nm以下であることがさらに好ましい。
【0051】
無機粒子の体積平均粒径は、キャリアを厚み方向に沿って切断した断面を、走査型顕微鏡で観察し、無機粒子の画像解析を行うことで測定する。具体的には、キャリア一つ当たり50個の無機粒子を走査型顕微鏡により観察し、無機粒子の画像解析によって粒子ごとの最長径、最短径を測定し、この中間値から球相当径を測定する。この球相当径の測定をキャリア100個分について行う。そして、得られた球相当径の体積基準の累積頻度における50%径(D50v)を無機粒子の体積平均粒径とする。
【0052】
(窒素含有樹脂粒子)
窒素含有樹脂粒子としては、例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)クリレート、ジメチルアクリルアミド、アクリロニトリル等を含んで重合してなる(メタ)アクリル系樹脂;ウレア、メラミン、グアナミン、アニリン等のアミノ樹脂;アミド樹脂;ウレタン樹脂;前記樹脂の共重合体;などの粒子が挙げられる。これらの中でも、窒素含有樹脂粒子としては、画像の濃度ムラをより抑制する観点から、アミノ樹脂、ウレタン樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の粒子を含むことが好ましく、アミノ樹脂の粒子を含むことがより好ましく、メラミン樹脂の粒子を含むことがさらに好ましい。窒素含有樹脂粒子は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0053】
本実施形態に係る窒素含有樹脂粒子の含有量は、画像の中抜けをより抑制する観点から、被覆樹脂層の全質量に対して、5質量%以上20質量%以下であることが好ましく、8質量%以上16質量%以下であることがより好ましく、10質量%以上14質量%以下であることがさらに好ましい。
【0054】
本実施形態に係る窒素含有樹脂粒子の含有量は、画像の中抜けをより抑制する観点から、無機酸化物粒子の全質量に対して、15質量%以上55質量%以下であることが好ましく、20質量%以上45質量%以下であることがより好ましく、25質量%以上40質量%以下であることがさらに好ましい。
【0055】
本実施形態に係る窒素含有樹脂粒子の体積平均粒径は、画像の中抜けをより抑制する観点から、100nm以上800nm以下であることが好ましく、150nm以上700nm以下であることがより好ましく、200nm以上500nm以下であることがさらに好ましい。特に、窒素含有樹脂粒子の体積平均粒径が、100nm以上であると、キャリア表面に凹凸を形成し易いため、トナーの外添剤がキャリアに付着することを物理的により抑制する傾向にある。
【0056】
窒素含有樹脂粒子の体積平均粒径は、無機粒子の体積平均粒径と同様の手法によって求めることができる。
【0057】
(被覆樹脂層の性質)
・窒素含有樹脂粒子の表面露出率
第一の実施形態に係る被覆樹脂層は、窒素含有樹脂粒子の表面露出率が0.8%以上3.0%以下であり、画像の中抜けをより抑制する観点から、1.0%以上2.8%以下であることが好ましく、1.2%以上2.4%以下であることがより好ましい。
【0058】
第二の実施形態に係る被覆樹脂層及び第三の実施形態に係る被覆樹脂層は、
画像の中抜けをより抑制する観点から、
窒素含有樹脂粒子の表面露出率が0.8%以上3.0%以下であることが好ましく、1.0%以上2.8%以下であることがより好ましく、1.2%以上2.4%以下であることがさらに好ましい。
【0059】
窒素含有樹脂粒子の表面露出率は、以下のようにして求める。
X線光電子分光装置(XPS、JPS-9000MX、日本電子(株)製)を用いて、キャリア表面に存在する元素を全て検出する。そして、キャリア表面に存在する全元素の元素ピーク面積の総和に対する、窒素含有樹脂粒子に由来する窒素元素ピーク面積の割合を求める。この測定を、任意の10個のキャリアについて行い、各キャリアにおける前記窒素元素の元素ピーク面積の割合について算術平均した値を、窒素含有樹脂粒子の表面露出率とする。
【0060】
窒素を含む樹脂と窒素含有樹脂粒子を区別する方法は特に制限されないが、例えば、XPS測定において検出される窒素元素における、窒素含有樹脂粒子に由来する窒素の割合は、XPS測定で検出される窒素元素のピークに対し、窒素樹脂と窒素含有粒子の結合の違いで異なるピーク位置がずれることを利用し、窒素を含む樹脂と窒素含有樹脂粒子との割合比を求めることができる。
【0061】
窒素含有樹脂粒子の表面露出率を上記範囲とする手法は特に制限されないが、例えば、
キャリアの製造において、(1)窒素含有樹脂粒子と無機酸化物粒子の配合量を調整する手法;(2)窒素含有樹脂粒子と無機酸化物粒子と樹脂とを含む被覆樹脂層形成用溶液を用いて芯材を被覆することで、窒素含有樹脂粒子と無機酸化物粒子の比重の差により、窒素含有樹脂粒子を被覆樹脂層の表面に分散させる手法;(3)無機酸化物粒子及び樹脂を含む被覆樹脂層形成用溶液1と、窒素含有樹脂粒子及び樹脂を含む被覆樹脂層形成用溶液2と、を作製し、被覆樹脂層形成用溶液1、被覆樹脂層形成用溶液2の順で、芯材を被覆する手法;などが挙げられる。
【0062】
・割合(N1/C1)
第三の実施形態に係る被覆樹脂層は、キャリア表面から深さ方向300nm以内の第一の領域に含まれる全成分に由来する炭素原子C1に対する、前記第一の領域に含まれる前記窒素含有樹脂粒子に由来する窒素原子N1の割合(N1/C1)が、0.02以上0.3以下であり、画像の中抜けをより抑制する観点から、0.04以上0.18以下であることが好ましく、0.06以上0.16以下であることがより好ましい。
【0063】
第一の実施形態に係る被覆樹脂層及び第二の実施形態に係る被覆樹脂層は、
画像の中抜けをより抑制する観点から、
キャリア表面から深さ方向300nm以内の第一の領域に含まれる全成分に由来する炭素原子C1に対する、前記第一の領域に含まれる前記窒素含有樹脂粒子に由来する窒素原子N1の割合(N1/C1)が、0.02以上0.3以下であることが好ましく、0.04以上0.18以下であることがより好ましく、0.06以上0.16以下であることがさらに好ましい。
【0064】
前記第一の領域に含まれる窒素含有樹脂粒子に由来する窒素原子N1の割合(N1/C1)は、以下のようにして求める。
(1)先述の窒素含有樹脂粒子の表面露出率の測定と同様に、キャリア表面、つまり、キャリア表面から0nm位置に存在する元素を全て検出する。そして、キャリア表面に存在する全元素に由来する元素ピーク面積の総和に対する、窒素含有樹脂粒子に由来する窒素元素ピーク面積の割合を求める。
(2)キャリア表面を、被覆樹脂層の深さ方向に対して、150nm位置まで、エッチング処理し、前記100nm位置に存在する元素を、X線光電子分光装置(XPS、JPS-9000MX、日本電子(株)製)を用いて、全て検出する。そして、前記100nm位置に存在する全元素に由来する元素ピーク面積の総和に対する、窒素元素に由来する元素ピーク面積の割合を求める。
(3)上記(2)と同様にして、キャリア表面を、被覆樹脂層の深さ方向に対して、300nm位置について、窒素元素に由来する元素ピーク面積の割合をそれぞれ求める。
(4)0nm位置、150nm位置及び300nm位置それぞれにおける「窒素元素に由来する元素ピーク面積の割合の算術平均値」を求める。
(5)この測定を、任意の10個のキャリアについて行い、各「窒素元素に由来する元素ピーク面積の割合の算術平均値」の算術平均値を、第一の領域に含まれる窒素含有樹脂粒子に由来する窒素原子N1の割合(N1/C1)とする。
【0065】
前記第一の領域に含まれる窒素含有樹脂粒子に由来する窒素原子N1の割合(N1/C1)を上記範囲とする手法は特に制限されないが、例えば、
キャリアの製造において、(1)窒素含有樹脂粒子と無機酸化物粒子の配合量を調整する手法;(2)窒素含有樹脂粒子と無機酸化物粒子と樹脂とを含む被覆樹脂層形成用溶液を用いて芯材を被覆することで、窒素含有樹脂粒子と無機酸化物粒子の比重の差により、窒素含有樹脂粒子を被覆樹脂層の表面に分散させる手法;(3)無機酸化物粒子及び樹脂を含む被覆樹脂層形成用溶液1と、窒素含有樹脂粒子及び樹脂を含む被覆樹脂層形成用溶液2と、を作製し、被覆樹脂層形成用溶液1、被覆樹脂層形成用溶液2の順で、芯材を被覆する手法;などが挙げられる。
【0066】
・割合(N2/C2)
本実施形態に係る被覆樹脂層は、画像の中抜けをより抑制する観点から、
キャリア表面から深さ方向300nm以内の第一の領域に含まれる全成分に由来する炭素原子C1に対する、前記第一の領域に含まれる前記窒素含有樹脂粒子に由来する窒素原子N1の割合(N1/C1)が、
キャリア表面から深さ方向300nm超え600nm以内の第二の領域に含まれる全成分に由来する炭素原子C2に対する、前記第二の領域における前記窒素含有樹脂粒子に由来する窒素原子N2の割合(N2/C2)よりも、大きいことが好ましい。
【0067】
本実施形態に係る被覆樹脂層は、画像の中抜けをより抑制する観点から、
第一の領域に含まれる前記窒素含有樹脂粒子に由来する窒素原子N1の割合(N1/C1)と、前記第二の領域における前記窒素含有樹脂粒子に由来する窒素原子N2の割合(N2/C2)との差(N1/C1-N2/C2)が、0.01以上であることが好ましく、0.015以上であることがより好ましく、0.02以上であることがさらに好ましい。
【0068】
前記第二の領域に含まれる窒素含有樹脂粒子に由来する窒素原子N2の割合(N2/C2)は、以下のようにして求める。
(1)キャリア表面を、被覆樹脂層の深さ方向に対して、450nm位置まで、エッチング処理し、前記100nm位置に存在する元素を、X線光電子分光装置(XPS、JPS-9000MX、日本電子(株)製)を用いて、全て検出する。そして、前記450nm位置に存在する全元素に由来する元素ピーク面積の総和に対する、窒素元素に由来する元素ピーク面積の割合を求める。
(2)上記(1)と同様にして、キャリア表面を、被覆樹脂層の深さ方向に対して、600nm位置について、窒素元素に由来する元素ピーク面積の割合を求める。
(4)450nm位置及び600nm位置それぞれにおける「窒素元素に由来する元素ピーク面積の割合の算術平均値」を求める。
(5)この測定を、任意の10個のキャリアについて行い、各「窒素元素に由来する元素ピーク面積の割合の算術平均値」の算術平均値を、第二の領域に含まれる窒素含有樹脂粒子に由来する窒素原子N2の割合(N2/C2)とする。
【0069】
前記第二の領域に含まれる窒素含有樹脂粒子に由来する窒素原子N2の割合(N2/C2)を上記範囲とする手法、及び、前記割合(N1/C1)と前記割合(N2/C2)の関係を上記関係とする手法は特に制限されないが、例えば、
キャリアの製造において、(1)窒素含有樹脂粒子と無機酸化物粒子の配合量を調整する手法;(2)窒素含有樹脂粒子と無機酸化物粒子と樹脂とを含む被覆樹脂層形成用溶液を用いて芯材を被覆することで、窒素含有樹脂粒子と無機酸化物粒子の比重の差により、窒素含有樹脂粒子を被覆樹脂層の表面に分散させる手法;(3)無機酸化物粒子及び樹脂を含む被覆樹脂層形成用溶液1と、窒素含有樹脂粒子及び樹脂を含む被覆樹脂層形成用溶液2と、を作製し、被覆樹脂層形成用溶液1、被覆樹脂層形成用溶液2の順で、芯材を被覆する手法;などが挙げられる。
【0070】
各領域における、「XPS測定で検出される窒素元素を含む全成分に占める、窒素含有樹脂粒子に由来する窒素元素の割合」を求める方法は特に制限されないが、例えば、XPS測定で検出される窒素元素のピークに対し、窒素樹脂と窒素含有粒子の結合の違いで異なるピーク位置がずれることを利用し、窒素を含む樹脂と窒素含有樹脂粒子との割合比を求めることができる。
【0071】
・割合(M1/C1)
本実施形態に係る被覆樹脂層は、画像の中抜けをより抑制する観点から、
キャリア表面から深さ方向300nm以内の第一の領域に含まれる全成分に由来する炭素原子C1に対する、前記第一の領域に含まれる無機酸化物粒子に由来する原子M1の割合(M1/C1)が、
0.1以上1.0以下であることが好ましく、0.12以上0.7以下であることがより好ましく、0.15以上0.6以下であることがさらに好ましい。ただし、前記M1は、酸素原子を除く。
【0072】
前記第一の領域に含まれる無機酸化物粒子に由来する原子M1の割合(M1/C1)は、以下のようにして求める。
(1)先述の窒素含有樹脂粒子の表面露出率の測定と同様に、キャリア表面、つまり、キャリア表面から0nm位置に存在する元素を全て検出する。そして、キャリア表面に存在する炭素元素ピーク面積に対する、無機酸化物粒子に由来する元素ピーク面積の割合を求める。
(2)キャリア表面を、被覆樹脂層の深さ方向に対して、150nm位置まで、エッチング処理し、前記100nm位置に存在する元素を、X線光電子分光装置(XPS、JPS-9000MX、日本電子(株)製)を用いて、全て検出する。そして、前記100nm位置に存在する炭素元素ピーク面積に対する、無機酸化物粒子に由来する元素ピーク面積の割合を求める。
(3)上記(2)と同様にして、キャリア表面を、被覆樹脂層の深さ方向に対して、300nm位置について、無機酸化物粒子に由来する元素ピーク面積の割合をそれぞれ求める。
(4)0nm位置、150nm位置及び300nm位置それぞれにおける「無機酸化物粒子に由来する元素ピーク面積の割合の算術平均値」を求める。
(5)この測定を、任意の10個のキャリアについて行い、各「無機酸化物粒子に由来する元素ピーク面積の割合の算術平均値」を算術平均した値を、第一の領域に含まれる無機酸化物粒子に由来する原子M1の割合(M1/C1)とする。
【0073】
前記第一の領域に含まれる無機酸化物粒子に由来する原子M1の割合(M1/C1)を上記範囲とする手法は特に制限されないが、例えば、先述の前記第一の領域に含まれる窒素含有樹脂粒子に由来する窒素原子N1の割合(N1/C1)を特定範囲とする手法と同様の手法が挙げられる。
【0074】
・割合(M2/C2)
本実施形態に係る被覆樹脂層は、画像の中抜けをより抑制する観点から、
キャリア表面から深さ方向300nm超え600nm以内の第二の領域に含まれる全成分に由来する炭素原子C2に対する、前記第二の領域における前記無機酸化物粒子に由来する原子M2の割合(M2/C2)が、
0.1以上1.0以下であることが好ましく、0.12以上0.7以下であることがより好ましく、0.15以上0.6以下であることがさらに好ましい。ただし、前記M2は、酸素原子を除く。
【0075】
前記第二の領域に含まれる無機酸化物粒子に由来する原子M2の割合(M2/C2)は、以下のようにして求める。
(1)キャリア表面を、被覆樹脂層の深さ方向に対して、450nm位置まで、エッチング処理し、前記100nm位置に存在する元素を、X線光電子分光装置(XPS、JPS-9000MX、日本電子(株)製)を用いて、全て検出する。そして、前記450nm位置に存在する炭素元素ピーク面積に対する、無機酸化物粒子に由来する元素ピーク面積の割合を求める。
(2)上記(1)と同様にして、キャリア表面を、被覆樹脂層の深さ方向に対して、600nm位置について、無機酸化物粒子に由来する元素ピーク面積の割合を求める。
(4)450nm位置及び600nm位置それぞれにおける「無機酸化物粒子に由来する元素ピーク面積の割合の算術平均値」を求める。
(5)この測定を、任意の10個のキャリアについて行い、各「無機酸化物粒子に由来する元素ピーク面積の割合の算術平均値」の算術平均値を、第二の領域に含まれる無機酸化物粒子に由来する原子M2の割合(M2/C2)とする。
【0076】
各領域における、「XPS測定で検出される元素が無機酸化物粒子に由来する元素か否かの識別」、及び、「前記無機酸化物粒子に由来する元素を含む全成分に占める無機酸化物粒子の割合」は、例えば、XPS測定で検出される無機酸化物粒子に由来するピークに対し、無機元素を含む樹脂における結合性と無機酸化物粒子における結合性との違いでピーク位置がずれることを利用し、求めることができる。
【0077】
前記第二の領域に含まれる無機酸化物粒子に由来する原子M2の割合(M2/C2)を上記範囲とする手法は特に制限されないが、例えば、先述の前記第二の領域に含まれる窒素含有樹脂粒子に由来する窒素原子N2の割合(N2/C2)を特定範囲とする手法と同様の手法が挙げられる。
【0078】
例えば、被覆樹脂層が無機酸化物粒子を複数含む場合、上記工程における無機酸化物粒子に由来する元素ピーク面積とは、全ての無機酸化物粒子に由来する元素ピーク面積の総和を意味する。
例えば、無機酸化物粒子が複数の無機元素を含む無機複合酸化物である場合、上記工程における無機酸化物粒子に由来する元素ピーク面積とは、無機複合酸化物における酸素原子を除く全ての元素ピーク面積の総和を意味する。
【0079】
≪静電荷像現像剤≫
本実施形態に係る現像剤は、トナーと、本実施形態に係るキャリアとを含む。
【0080】
本実施形態に係る現像剤は、トナーと本実施形態に係るキャリアとを適切な配合割合で混合することにより調製される。トナーとキャリアとの混合比(質量比)は、トナー:キャリア=1:100乃至30:100が好ましく、3:100乃至20:100がより好ましい。
【0081】
[静電荷像現像用トナー]
トナーとしては、特に制限はなく、公知のトナーが用いられる。例えば、結着樹脂と着色剤とを含有するトナー粒子を含む着色トナーが挙げられ、着色剤の代わりに赤外線吸収剤を用いた赤外線吸収トナーも挙げられる。トナーは、離型剤や各種の内添剤、外添剤等を含んでいてもよい。
【0082】
-結着樹脂-
結着樹脂としては、例えば、スチレン類(例えばスチレン、パラクロロスチレン、α-メチルスチレン等)、(メタ)アクリル酸エステル類(例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2-エチルヘキシル等)、エチレン性不飽和ニトリル類(例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル等)、ビニルエーテル類(例えばビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等)、ビニルケトン類(例えばビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等)、オレフィン類(例えばエチレン、プロピレン、ブタジエン等)等の単量体の単独重合体、又はこれら単量体を2種以上組み合せた共重合体からなるビニル系樹脂が挙げられる。
結着樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテル樹脂、変性ロジン等の非ビニル系樹脂、これらと前記ビニル系樹脂との混合物、又は、これらの共存下でビニル系単量体を重合して得られるグラフト重合体等も挙げられる。
これらの結着樹脂は、1種類単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0083】
結着樹脂としては、ポリエステル樹脂が好適である。ポリエステル樹脂としては、例えば、公知のポリエステル樹脂が挙げられる。
【0084】
ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、50℃以上80℃以下が好ましく、50℃以上65℃以下がより好ましい。
ガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)により得られたDSC曲線より求め、より具体的にはJIS K7121-1987「プラスチックの転移温度測定方法」のガラス転移温度の求め方に記載の「補外ガラス転移開始温度」により求められる。
【0085】
ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、5000以上1000000以下が好ましく、7000以上500000以下がより好ましい。ポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)は、2000以上100000以下が好ましい。ポリエステル樹脂の分子量分布Mw/Mnは、1.5以上100以下が好ましく、2以上60以下がより好ましい。
重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定する。GPCによる分子量測定は、測定装置として東ソー製GPC・HLC-8120GPCを用い、東ソー製カラム・TSKgel SuperHM-M(15cm)を使用し、THF溶媒で行う。重量平均分子量及び数平均分子量は、この測定結果から単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用して算出する。
【0086】
結着樹脂の含有量は、トナー粒子全体に対して、40質量%以上95質量%以下が好ましく、50質量%以上90質量%以下がより好ましく、60質量%以上85質量%以下がさらに好ましい。
【0087】
-着色剤-
着色剤としては、例えば、カーボンブラック、クロムイエロー、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、スレンイエロー、キノリンイエロー、ピグメントイエロー、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、ウオッチヤングレッド、パーマネントレッド、ブリリアントカーミン3B、ブリリアントカーミン6B、デュポンオイルレッド、ピラゾロンレッド、リソールレッド、ローダミンBレーキ、レーキレッドC、ピグメントレッド、ローズベンガル、アニリンブルー、ウルトラマリンブルー、カルコオイルブルー、メチレンブルークロライド、フタロシアニンブルー、ピグメントブルー、フタロシアニングリーン、マラカイトグリーンオキサレート等の顔料;アクリジン系、キサンテン系、アゾ系、ベンゾキノン系、アジン系、アントラキノン系、チオインジコ系、ジオキサジン系、チアジン系、アゾメチン系、インジコ系、フタロシアニン系、アニリンブラック系、ポリメチン系、トリフェニルメタン系、ジフェニルメタン系、チアゾール系等の染料;が挙げられる。
着色剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0088】
着色剤は、必要に応じて表面処理された着色剤を用いてもよく、分散剤と併用してもよい。また、着色剤は、複数種を併用してもよい。
【0089】
着色剤の含有量は、トナー粒子全体に対して、1質量%以上30質量%以下が好ましく、3質量%以上15質量%以下がより好ましい。
【0090】
-離型剤-
離型剤としては、例えば、炭化水素系ワックス;カルナバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス等の天然ワックス;モンタンワックス等の合成又は鉱物・石油系ワックス;脂肪酸エステル、モンタン酸エステル等のエステル系ワックス;などが挙げられる。離型剤は、これに限定されるものではない。
【0091】
離型剤の融解温度は、50℃以上110℃以下が好ましく、60℃以上100℃以下がより好ましい。
融解温度は、示差走査熱量測定(DSC)により得られたDSC曲線から、JIS K7121-1987「プラスチックの転移温度測定方法」の融解温度の求め方に記載の「融解ピーク温度」により求める。
【0092】
離型剤の含有量は、トナー粒子全体に対して、1質量%以上20質量%以下が好ましく、5質量%以上15質量%以下がより好ましい。
【0093】
-その他の添加剤-
その他の添加剤としては、例えば、磁性体、帯電制御剤、無機粉体等の公知の添加剤が挙げられる。これらの添加剤は、内添剤としてトナー粒子に含まれる。
【0094】
-トナー粒子の特性等-
トナー粒子は、単層構造のトナー粒子であってもよいし、芯部(コア粒子)と芯部を被覆する被覆層(シェル層)とで構成された所謂コア・シェル構造のトナー粒子であってもよい。コア・シェル構造のトナー粒子は、例えば、結着樹脂と必要に応じて着色剤及び離型剤等のその他添加剤とを含んで構成された芯部と、結着樹脂を含んで構成された被覆層と、で構成されていることがよい。
【0095】
トナー粒子の体積平均粒径(D50v)は、2μm以上10μm以下が好ましく、4μm以上8μm以下がより好ましい。
トナー粒子の体積平均粒径(D50v)は、コールターマルチサイザーII(ベックマン・コールター社製)を用い、電解液はISOTON-II(ベックマン・コールター社製)を使用して測定される。測定に際しては、分散剤として、界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムが好ましい)の5質量%水溶液2ml中に測定試料を0.5mg以上50mg以下加える。これを電解液100ml以上150ml以下中に添加する。試料を懸濁した電解液は超音波分散器で1分間分散処理を行い、コールターマルチサイザーIIにより、アパーチャー径100μmのアパーチャーを用いて2μm以上60μm以下の範囲の粒径の粒子の粒度分布を測定する。サンプリングする粒子数は50000個である。
【0096】
-外添剤-
外添剤としては、例えば、無機粒子が挙げられる。該無機粒子として、SiO、TiO、Al、CuO、ZnO、SnO、CeO、Fe、MgO、BaO、CaO、KO、NaO、ZrO、CaO・SiO、KO・(TiO)n、Al・2SiO、CaCO、MgCO、BaSO、MgSO等が挙げられる。
【0097】
外添剤としての無機粒子の表面は、疎水化処理が施されていることがよい。疎水化処理は、例えば疎水化処理剤に無機粒子を浸漬する等して行う。疎水化処理剤は特に制限されないが、例えば、シラン系カップリング剤、シリコーンオイル、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
疎水化処理剤の量は、通常、例えば、無機粒子100質量部に対して、1質量部以上10質量部以下である。
【0098】
外添剤としては、樹脂粒子(ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、メラミン樹脂等の樹脂粒子)、クリーニング活剤(例えば、ステアリン酸亜鉛に代表される高級脂肪酸の金属塩、フッ素系高分子量体の粒子)等も挙げられる。
【0099】
外添剤の外添量は、トナー粒子に対して、0.01質量%以上5質量%以下が好ましく、0.01質量%以上2.0質量%以下がより好ましい。
【0100】
-トナーの製造方法-
トナーは、トナー粒子を製造後、トナー粒子に対して、外添剤を外添することで得られる。トナー粒子は、乾式製法(例えば、混練粉砕法等)、湿式製法(例えば、凝集合一法、懸濁重合法、溶解懸濁法等)のいずれにより製造してもよい。これらの製法に特に制限はなく、公知の製法が採用される。これらの中でも、凝集合一法により、トナー粒子を得ることがよい。
【0101】
≪画像形成装置及び画像形成方法≫
本実施形態に係る画像形成装置及び画像形成方法について説明する。
本実施形態に係る画像形成装置は、像保持体と、像保持体の表面を帯電する帯電手段と、帯電した像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成手段と、静電荷像現像剤を収容し、静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段と、像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着手段と、を備える。そして、静電荷像現像剤として、本実施形態に係る静電荷像現像剤が適用される。
【0102】
本実施形態に係る画像形成装置では、像保持体の表面を帯電する帯電工程と、帯電した像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成工程と、本実施形態に係る静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像工程と、像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写工程と、記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着工程と、を有する画像形成方法(本実施形態に係る画像形成方法)が実施される。
【0103】
本実施形態に係る画像形成装置は、像保持体の表面に形成されたトナー画像を直接記録媒体に転写する直接転写方式の装置;像保持体の表面に形成されたトナー画像を中間転写体の表面に一次転写し、中間転写体の表面に転写されたトナー画像を記録媒体の表面に二次転写する中間転写方式の装置;トナー画像の転写後、帯電前の像保持体の表面をクリーニングするクリーニング手段を備えた装置;トナー画像の転写後、帯電前に像保持体の表面に除電光を照射して除電する除電手段を備える装置;等の公知の画像形成装置が適用される。
本実施形態に係る画像形成装置が中間転写方式の装置の場合、転写手段は、例えば、表面にトナー画像が転写される中間転写体と、像保持体の表面に形成されたトナー画像を中間転写体の表面に一次転写する一次転写手段と、中間転写体の表面に転写されたトナー画像を記録媒体の表面に二次転写する二次転写手段と、を有する構成が適用される。
【0104】
本実施形態に係る画像形成装置において、例えば、現像手段を含む部分が、画像形成装置に着脱するカートリッジ構造(プロセスカートリッジ)であってもよい。プロセスカートリッジとしては、例えば、本実施形態に係る静電荷像現像剤を収容し、現像手段を備えるプロセスカートリッジが好適に用いられる。
【0105】
以下、本実施形態に係る画像形成装置の一例を示すが、これに限定されるわけではない。以下の説明においては、図に示す主要部を説明し、その他はその説明を省略する。
【0106】
図1は、本実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
図1に示す画像形成装置は、色分解された画像データに基づく、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像を出力する電子写真方式の第1乃至第4の画像形成ユニット10Y、10M、10C、10K(画像形成手段)を備えている。これらの画像形成ユニット(以下、単に「ユニット」と称する場合がある)10Y、10M、10C、10Kは、水平方向に互いに予め定められた距離離間して並設されている。これらユニット10Y、10M、10C、10Kは、画像形成装置に着脱するプロセスカートリッジであってもよい。
【0107】
各ユニット10Y、10M、10C、10Kの上方には、各ユニットを通して中間転写ベルト(中間転写体の一例)20が延設されている。中間転写ベルト20は、駆動ロール22及び支持ロール24に巻きつけて設けられ、第1のユニット10Yから第4のユニット10Kに向う方向に走行するようになっている。支持ロール24は、図示しないバネ等により駆動ロール22から離れる方向に力が加えられており、両者に巻きつけられた中間転写ベルト20に張力が与えられている。中間転写ベルト20の像保持体側面には、駆動ロール22と対向して中間転写体クリーニング装置30が備えられている。
各ユニット10Y、10M、10C、10Kの現像装置(現像手段の一例)4Y、4M、4C、4Kのそれぞれには、トナーカートリッジ8Y、8M、8C、8Kに収められたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各トナーの供給がなされる。
【0108】
第1乃至第4のユニット10Y、10M、10C、10Kは、同等の構成及び動作を有しているため、ここでは中間転写ベルト走行方向の上流側に配設されたイエロー画像を形成する第1のユニット10Yについて代表して説明する。
【0109】
第1のユニット10Yは、像保持体として作用する感光体1Yを有している。感光体1Yの周囲には、感光体1Yの表面を予め定められた電位に帯電させる帯電ロール(帯電手段の一例)2Y、帯電された表面を色分解された画像信号に基づくレーザ光線3Yによって露光して静電荷像を形成する露光装置(静電荷像形成手段の一例)3、静電荷像に帯電したトナーを供給して静電荷像を現像する現像装置(現像手段の一例)4Y、現像したトナー画像を中間転写ベルト20上に転写する一次転写ロール5Y(一次転写手段の一例)、及び一次転写後に感光体1Yの表面に残存するトナーを除去する感光体クリーニング装置(クリーニング手段の一例)6Yが順に配置されている。
一次転写ロール5Yは、中間転写ベルト20の内側に配置され、感光体1Yに対向した位置に設けられている。各ユニットの一次転写ロール5Y、5M、5C、5Kには、一次転写バイアスを印加するバイアス電源(図示せず)がそれぞれ接続されている。各バイアス電源は、図示しない制御部による制御によって、各一次転写ロールに印加する転写バイアスの値を変える。
【0110】
以下、第1のユニット10Yにおいてイエロー画像を形成する動作について説明する。
まず、動作に先立って、帯電ロール2Yによって感光体1Yの表面が-600V乃至-800Vの電位に帯電される。
感光体1Yは、導電性(例えば20℃における体積抵抗率1×10-6Ωcm以下)の基体上に感光層を積層して形成されている。この感光層は、通常は高抵抗(一般の樹脂の抵抗)であるが、レーザ光線が照射されると、レーザ光線が照射された部分の比抵抗が変化する性質を持っている。そこで、帯電した感光体1Yの表面に、図示しない制御部から送られてくるイエロー用の画像データに従って、露光装置3からレーザ光線3Yを照射する。それにより、イエローの画像パターンの静電荷像が感光体1Yの表面に形成される。
【0111】
静電荷像とは、帯電によって感光体1Yの表面に形成される像であり、レーザ光線3Yによって、感光層の被照射部分の比抵抗が低下し、感光体1Yの表面の帯電した電荷が流れ、一方、レーザ光線3Yが照射されなかった部分の電荷が残留することによって形成される、いわゆるネガ潜像である。
感光体1Y上に形成された静電荷像は、感光体1Yの走行に従って予め定められた現像位置まで回転する。そして、この現像位置で、感光体1Y上の静電荷像が、現像装置4Yによってトナー画像として現像され可視化される。
【0112】
現像装置4Y内には、例えば、少なくともイエロートナーとキャリアとを含む静電荷像現像剤が収容されている。イエロートナーは、現像装置4Yの内部で攪拌されることで摩擦帯電し、感光体1Y上に帯電した帯電荷と同極性(負極性)の電荷を有して現像剤ロール(現像剤保持体の一例)上に保持されている。そして、感光体1Yの表面が現像装置4Yを通過していくことにより、感光体1Y表面上の除電された潜像部にイエロートナーが静電的に付着し、潜像がイエロートナーによって現像される。イエローのトナー画像が形成された感光体1Yは、引続き予め定められた速度で走行され、感光体1Y上に現像されたトナー画像が予め定められた一次転写位置へ搬送される。
【0113】
感光体1Y上のイエロートナー画像が一次転写位置へ搬送されると、一次転写ロール5Yに一次転写バイアスが印加され、感光体1Yから一次転写ロール5Yに向う静電気力がトナー画像に作用し、感光体1Y上のトナー画像が中間転写ベルト20上に転写される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(-)と逆極性の(+)極性であり、第1のユニット10Yでは制御部(図示せず)によって例えば+10μAに制御されている。
一方、感光体1Y上に残留したトナーは感光体クリーニング装置6Yで除去されて回収される。
【0114】
第2のユニット10M以降の一次転写ロール5M、5C、5Kに印加される一次転写バイアスも、第1のユニットに準じて制御されている。
こうして、第1のユニット10Yにてイエローのトナー画像が転写された中間転写ベルト20は、第2乃至第4のユニット10M、10C、10Kを通して順次搬送され、各色のトナー画像が重ねられて多重転写される。
【0115】
第1乃至第4のユニットを通して4色のトナー画像が多重転写された中間転写ベルト20は、中間転写ベルト20と、中間転写ベルトの内面に接する支持ロール24と、中間転写ベルト20の像保持面側に配置された二次転写ロール(二次転写手段の一例)26とから構成された二次転写部へと至る。一方、記録紙(記録媒体の一例)Pが供給機構を介して二次転写ロール26と中間転写ベルト20とが接触した隙間に予め定められたタイミングで給紙され、二次転写バイアスが支持ロール24に印加される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(-)と同極性の(-)極性であり、中間転写ベルト20から記録紙Pに向う静電気力がトナー画像に作用し、中間転写ベルト20上のトナー画像が記録紙P上に転写される。この際の二次転写バイアスは二次転写部の抵抗を検出する抵抗検出手段(図示せず)により検出された抵抗に応じて決定されるものであり、電圧制御されている。
【0116】
この後、記録紙Pは定着装置(定着手段の一例)28における一対の定着ロールの圧接部(ニップ部)へと送り込まれ、トナー画像が記録紙P上へ定着され、定着画像が形成される。
【0117】
トナー画像を転写する記録紙Pとしては、例えば、電子写真方式の複写機、プリンター等に使用される普通紙が挙げられる。記録媒体としては、記録紙P以外にも、OHPシート等も挙げられる。
定着後における画像表面の平滑性をさらに向上させるには、記録紙Pの表面も平滑であることが好ましく、例えば、普通紙の表面を樹脂等でコーティングしたコート紙、印刷用のアート紙等が好適に使用される。
【0118】
カラー画像の定着が完了した記録紙Pは、排出部へ向けて搬出され、一連のカラー画像形成動作が終了される。
【0119】
≪プロセスカートリッジ≫
本実施形態に係るプロセスカートリッジについて説明する。
本実施形態に係るプロセスカートリッジは、本実施形態に係る静電荷像現像剤を収容し、静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段を備え、画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジである。
【0120】
本実施形態に係るプロセスカートリッジは、上記構成に限られず、現像手段と、その他、必要に応じて、例えば、像保持体、帯電手段、静電荷像形成手段、及び転写手段等のその他手段から選択される少なくとも一つと、を備える構成であってもよい。
【0121】
以下、本実施形態に係るプロセスカートリッジの一例を示すが、これに限定されるわけではない。以下の説明においては、図に示す主要部を説明し、その他はその説明を省略する。
【0122】
図2は、本実施形態に係るプロセスカートリッジを示す概略構成図である。
図2に示すプロセスカートリッジ200は、例えば、取り付けレール116及び露光のための開口部118が備えられた筐体117により、感光体107(像保持体の一例)と、感光体107の周囲に備えられた帯電ロール108(帯電手段の一例)、現像装置111(現像手段の一例)、及び感光体クリーニング装置113(クリーニング手段の一例)を一体的に組み合わせて保持して構成し、カートリッジ化されている。
図2中、109は露光装置(静電荷像形成手段の一例)、112は転写装置(転写手段の一例)、115は定着装置(定着手段の一例)、300は記録紙(記録媒体の一例)を示している。
【実施例
【0123】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明は下記実施例により限定されるものではない。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理手順等は、本開示の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。なお、特に断りがない限り「部」は「質量部」を意味する。
【0124】
<トナーの作製>
[樹脂粒子分散液(1)の調製]
・エチレングリコール(富士フイルム和光純薬(株)) 37部
・ネオペンチルグリコール(富士フイルム和光純薬(株)) 65部
・1,9-ノナンジオール(富士フイルム和光純薬(株)) 32部
・テレフタル酸(富士フイルム和光純薬(株)) 96部
上記の材料をフラスコに仕込み、1時間かけて温度200℃まで上げ、反応系内が均一に攪拌されていることを確認したのち、ジブチル錫オキサイドを1.2部投入した。生成する水を留去しながら6時間かけて240℃まで温度を上げ、240℃で4時間攪拌を継続し、ポリエステル樹脂(酸価9.4mgKOH/g、重量平均分子量13,000、ガラス転移温度62℃)を得た。このポリエステル樹脂を溶融状態のまま、乳化分散機(キャビトロンCD1010、ユーロテック社)に毎分100gの速度で移送した。別途、試薬アンモニア水をイオン交換水で希釈した0.37%濃度の希アンモニア水をタンクに入れ、熱交換器で120℃に加熱しながら毎分0.1リットルの速度でポリエステル樹脂と同時に乳化分散機に移送した。乳化分散機を回転子の回転速度60Hz、圧力5kg/cmの条件で運転し、体積平均粒径160nm、固形分30%の樹脂粒子分散液(1)を得た。
【0125】
[樹脂粒子分散液(2)の調製]
・デカン二酸(東京化成工業(株)) 81部
・ヘキサンジオール(富士フイルム和光純薬(株)) 47部
上記の材料をフラスコに仕込み、1時間かけて温度160℃まで上げ、反応系内が均一に攪拌されていることを確認したのち、ジブチル錫オキサイドを0.03部投入した。生成する水を留去しながら6時間かけて200℃まで温度を上げ、200℃で4時間攪拌を継続した。次いで、反応液を冷却し、固液分離を行い、固形物を温度40℃/減圧下で乾燥し、ポリエステル樹脂(C1)(融点64℃、重量平均分子量15,000)を得た。
【0126】
・ポリエステル樹脂(C1) 50部
・アニオン性界面活性剤(ネオゲンSC、第一工業製薬(株)) 2部
・イオン交換水 200部
上記の材料を120℃に加熱して、ホモジナイザー(ウルトラタラックスT50、IKA社(株))で十分に分散した後、圧力吐出型ホモジナイザーで分散処理した。体積平均粒径が180nmになったところで回収し、固形分20%の樹脂粒子分散液(2)を得た。
【0127】
[着色剤粒子分散液(1)の調製]
・シアン顔料(PigmentBlue15:3、大日精化工業(株)) 10部
・アニオン性界面活性剤(ネオゲンSC、第一工業製薬(株)) 2部
・イオン交換水 80部
上記の材料を混合し、高圧衝撃式分散機(アルティマイザーHJP30006、スギノマシン社)により1時間分散し、体積平均粒径180nm、固形分20%の着色剤粒子分散液(1)を得た。
【0128】
[離型剤粒子分散液(1)の調製]
・パラフィンワックス(HNP-9、日本精蝋(株)) 50部
・アニオン性界面活性剤(ネオゲンSC、第一工業製薬(株)) 2部
・イオン交換水 200部
上記の材料を120℃に加熱して、ホモジナイザー(ウルトラタラックスT50、IKA社)で十分に分散した後、圧力吐出型ホモジナイザーで分散処理した。体積平均粒径が200nmになったところで回収し、固形分20%の離型剤粒子分散液(1)を得た。
【0129】
[トナー(1)の作製]
・樹脂粒子分散液(1) 150部
・樹脂粒子分散液(2) 50部
・着色剤粒子分散液(1) 25部
・離型剤粒子分散液(1) 35部
・ポリ塩化アルミニウム 0.4部
・イオン交換水 100部
上記の材料を丸型ステンレス製フラスコに投入し、ホモジナイザー(ウルトラタラックスT50、IKA社)を用いて十分に混合分散した後、フラスコ内を攪拌しながら加熱用オイルバスで48℃まで加熱した。反応系内を48℃で60分間保持した後、樹脂粒子分散液(1)を緩やかに70部追加した。次いで、0.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを8.0に調整し、フラスコを密閉し攪拌軸のシールを磁力シールし、攪拌を継続しながら90℃まで加熱して30分間保持した。次いで、降温速度5℃/分で冷却し、固液分離し、イオン交換水で十分に洗浄した。次いで、固液分離し、30℃のイオン交換水に再分散し、回転速度300rpmで15分間攪拌し洗浄した。この洗浄操作をさらに6回繰り返し、濾液のpHが7.54、電気伝導度が6.5μS/cmとなったところで固液分離し、真空乾燥を24時間継続して、体積平均粒径5.7μmのトナー粒子(1)を得た。
【0130】
上記のトナー粒子(1)100部と、疎水性シリカ(日本アエロジル社製RY50)0.7部とをヘンシェルミキサーで混合し、トナー(1)を得た。
【0131】
<キャリアの作製>
[芯材の準備]
-フェライト粒子-
Feを74部、Mg(OH)を4部、MnOを21部混合し、ロータリーキルンを用いて温度950℃/7時間の条件で仮焼成した(1回目)。得られた仮焼成物を、湿式ボールミルを用いて7時間粉砕し、平均粒径を2.0μmとした後、スプレードライヤーを用いて造粒した。得られた造粒物を、ロータリーキルンを用いて温度950℃/6時間の条件で仮焼成した(2回目)。得られた仮焼成物を、湿式ボールミルを用いて3時間粉砕し、平均粒径を5.6μmとした後、スプレードライヤーを用いて造粒した。得られた造粒物を、電気炉を用いて温度1300℃/5時間の条件で本焼成した。得られた焼成物を解砕及び分級して、体積平均粒径32μmのフェライト粒子(1)を得た。
【0132】
[無機酸化物粒子の準備]
シリカ粒子、チタニア粒子、及びアルミナ粒子は、以下に示す材料を用いた。
【0133】
・シリカ粒子1
疎水化処理剤:ヘキサメチルジシラザン
体積平均粒径:12nm
トクヤマ株式会社製、製品番号HM20S
・シリカ粒子2
疎水化処理剤:ヘキサメチルジシラザン
体積平均粒径:55nm
CABOT株式会社製、製品番号TG-6020N
・シリカ粒子3
疎水化処理剤:ヘキサメチルジシラザン
体積平均粒径:17nm
・シリカ粒子4
疎水化処理剤:ヘキサメチルジシラザン
体積平均粒径:30nm
・シリカ粒子5
疎水化処理剤:ヘキサメチルジシラザン
体積平均粒径:20nm
・シリカ粒子6
疎水化処理剤:ヘキサメチルジシラザン
体積平均粒径:3nm
シリカ粒子1をヘンシェルミキサーで解砕し、シリカ粒子6を得た。
・シリカ粒子7
疎水化処理剤:ヘキサメチルジシラザン
体積平均粒径:8nm
シリカ粒子1をヘンシェルミキサーで解砕し、シリカ粒子4を得た。
【0134】
・チタニア粒子
疎水化処理剤:イソブチルシラン
体積平均粒径:20nm
チタン工業社製、製品番号STT100H
・アルミナ粒子
疎水化処理剤:デシルシラン、
体積平均粒径:20nm
日本アエロジル社製、製品番号C805
【0135】
[窒素含有樹脂粒子の準備]
窒素含有樹脂粒子は、以下に示す材料を用いた。
・窒素含有樹脂粒子1:MB1
(メラミン樹脂、日本触媒社製、製品番号エポスターFS)
体積平均粒径:250nm
・窒素含有樹脂粒子2:MB2
(メラミン樹脂、日本触媒社製、製品番号エポスターSS)
体積平均粒径:70nm
・窒素含有樹脂粒子3:MB3
(メラミン樹脂、日本触媒社製、製品番号エポスターS12)
体積平均粒径:900nm
・窒素含有樹脂粒子4
(ベンゾグアナミン樹脂、日本触媒社製、製品番号エポスターS12)
体積平均粒径:250nm
【0136】
[実施例1]
・フェライト粒子(1) 100部
・無機酸化物粒子(シリカ粒子1) 1.9部
(被覆樹脂層の全質量に対して35質量%)
・窒素含有樹脂粒子1 (MB1) 0.55部
(被覆樹脂層の全質量に対して10質量%)
(無機酸化物粒子の全質量に対して28質量%)
・シクロヘキシルメタクリレート/メチルメタクリレート共重合体
(共重合比95モル:5モル) 3部
・トルエン 14部
上記の材料のうち、MB1とシリカ粒子1とシクロヘキシルメタクリレート/メチルメタクリレート共重合体とトルエンと、さらにガラスビーズ(直径1mm、トルエンと同量)とを、サンドミル(関西ペイント社)に投入し、回転速度1200rpmで30分間攪拌し、樹脂層形成用溶液(1)とした。
真空脱気型ニーダーにフェライト粒子(1)を入れ、さらに樹脂層形成用溶液(1)を入れ、攪拌しながら昇温及び減圧してトルエンを留去させ、フェライト粒子(1)を樹脂で被覆した。次いで、エルボジェットにて微粉及び粗粉を取り除き、キャリアを得た。キャリアの性質を表1に示す。
【0137】
[実施例2、4~実施例21]
無機酸化物粒子及び窒素含有樹脂粒子の種類及び含有量を表1に示す仕様とした以外は実施例1と同様にして、各例のキャリアを作製した。
【0138】
[実施例3]
無機酸化物粒子及び窒素含有樹脂粒子の種類及び含有量を表1に示す仕様とし、さらに、回転速度を1800rpmにした以外は、実施例1と同様にして、キャリアを作製した。
【0139】
[比較例1及び比較例2]
無機酸化物粒子及び窒素含有樹脂粒子の種類及び含有量を表1に示す仕様とした以外は実施例1と同様にして、キャリアを作製した。
【0140】
[比較例3]
無機酸化物粒子及び窒素含有樹脂粒子の種類及び含有量を表1に示す仕様とし、さらに、攪拌での乾燥時間を延長した以外は実施例1と同様にして、キャリアを作製した。
【0141】
表1中、無機酸化物粒子の含有量は、被覆樹脂層の全質量に対する含有量を表す。
表1中、窒素含有樹脂粒子の含有量は、被覆樹脂層の全質量に対する含有量を表す。
【0142】
【表1】
【0143】
<中抜け評価>
各現像剤について、DocuCentreColor400CP(富士ゼロックス社製)を用いて中抜け評価を行った。高温高湿環境下(28℃、85%RH)においてトナー量を6.0g/mになるように調整後、細線画像を作成し、1万枚画像出力した。画像出力後に12時間放置した後、再度1万枚画像出力を行った。
画像出力開始から100枚画像出力後(初期)における画像と、1万枚画像出力後における画像と、1万枚画像出力後12時間放置した後に再度1万枚画像出力後における画像について、それぞれ中抜けの有無を確認した。中抜けは目視により下記判断基準で評価した。なお、許容できるのはA~C-である。
-判断基準-
A :目視/拡大では判断できず、画質に問題はない。
B :拡大するとわずかな中抜けがある(細線の一部が薄い)が目視では判断できない。
C :目視でわずかな中抜け(細線の一部が抜けている)が観察される。
C-:目視でわずかな中抜け(細線の一部が複数抜けている)が観察される。
D :目視ではっきりとした中抜け(細線部が抜け、細線が途切れている)が観察される。
【0144】
表1に示すように、実施例の静電荷像現像用キャリアは、比較例の静電荷像現像用キャリアに比べて、画像の中抜けが抑制されることがわかった。
【符号の説明】
【0145】
1Y、1M、1C、1K 感光体(像保持体の一例)
2Y、2M、2C、2K 帯電ロール(帯電手段の一例)
3 露光装置(静電荷像形成手段の一例)
3Y、3M、3C、3K レーザ光線
4Y、4M、4C、4K 現像装置(現像手段の一例)
5Y、5M、5C、5K 一次転写ロール(一次転写手段の一例)
6Y、6M、6C、6K 感光体クリーニング装置(クリーニング手段の一例)
8Y、8M、8C、8K トナーカートリッジ
10Y、10M、10C、10K 画像形成ユニット
20 中間転写ベルト(中間転写体の一例)
22 駆動ロール
24 支持ロール
26 二次転写ロール(二次転写手段の一例)
28 定着装置(定着手段の一例)
30 中間転写体クリーニング装置
P 記録紙(記録媒体の一例)
【0146】
107 感光体(像保持体の一例)
108 帯電ロール(帯電手段の一例)
109 露光装置(静電荷像形成手段の一例)
111 現像装置(現像手段の一例)
112 転写装置(転写手段の一例)
113 感光体クリーニング装置(クリーニング手段の一例)
115 定着装置(定着手段の一例)
116 取り付けレール
117 筐体
118 露光のための開口部
200 プロセスカートリッジ
300 記録紙(記録媒体の一例)
図1
図2