(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】無線送信装置、無線受信装置、無線システム及び無線送信方法
(51)【国際特許分類】
H04L 1/08 20060101AFI20231129BHJP
H04L 27/00 20060101ALI20231129BHJP
H04W 84/12 20090101ALI20231129BHJP
H04W 4/06 20090101ALI20231129BHJP
【FI】
H04L1/08
H04L27/00 Z
H04W84/12
H04W4/06
(21)【出願番号】P 2019185505
(22)【出願日】2019-10-08
【審査請求日】2022-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩本 駿
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 裕和
(72)【発明者】
【氏名】菅原 寿之
【審査官】北村 智彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/045401(WO,A1)
【文献】特開2015-082751(JP,A)
【文献】特表2014-526203(JP,A)
【文献】国際公開第2019/171913(WO,A1)
【文献】特開2009-290451(JP,A)
【文献】特開2003-348102(JP,A)
【文献】特開2001-320324(JP,A)
【文献】特開2001-285297(JP,A)
【文献】国際公開第2005/074182(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 1/08
H04L 27/00
H04W 84/12
H04W 4/06
IEEE Xplore
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1,4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のサブデータに分割される送信データを取得する取得部と、
第1の変調方法および第2の変調方法を含む複数の変調方法のうちいずれかにより変調される複数のフレームをブロードキャストにより順に送信する送信部と、を含み、
前記送信部が、
前記複数のサブデータのうち一部の連続するサブデータが順に格納され、前記第1の変調方法により変調された
A個の第1のフレームを送信し、前記第1のフレームを送信した後に、
前記連続するサブデータの一部が順に格納され、前記第2の変調方法により変調された
第2のフレームであって、前記A個より少ないB個の第2のフレームを送信するよう制御する制御部と、を有する、 無線送信装置。
【請求項2】
請求項
1に記載の無線送信装置において、
前記第1の変調方法は前記第2の変調方法より伝送速度が速い
無線送信装置。
【請求項3】
請求項
1または2に記載の無線送信装置において、
前記制御部は、順に送信される前記複数のフレームのうち前記複数のサブデータのうちいずれかが前記第1の変調方法により変調され送信される第1のフレームの次に、前記いずれかのサブデータの次のサブデータが前記第1の変調方法により変調された第3のフレームを送信するよう前記送信部を制御する、
無線送信装置。
【請求項4】
請求項
1または2に記載の無線送信装置において、
前記制御部は、前記サブデータのいずれかが変調され送信される第1のフレームの次に、前記サブデータの前記いずれかが変調された第4のフレームを送信するよう前記送信部を制御する、
無線送信装置。
【請求項5】
請求項
1または2に記載の無線送信装置において、
前記制御部は、k番目(kは1以上n未満の整数であり、nは2以上の整数である)のサブデータが前記第1の変調方法で変調され送信されるフレームの次に、(k+1)番目のサブデータが前記第1の変調方法により変調されたフレームを送信することを繰り返したのちに、前記k番目のサブデータが前記第2の変調方法により変調されたフレームを送信する、
無線送信装置。
【請求項6】
請求項
1から5のいずれかに記載の無線送信装置において、
前記複数のフレームの少なくとも一部は、自らに含まれるサブデータの位置を示す情報を含む、
無線送信装置。
【請求項7】
請求項6に記載の無線送信装置において、
前記送信データは、ストリーミングデータおよびダウンロードデータのいずれかであり、
前記送信データがダウンロードデータである場合に、前記送信部は、自らに含まれるサブデータの位置を示す情報を含むフレームを送信する、
無線送信装置。
【請求項8】
請求項
1に記載の無線送信装置において、
前記制御部は、前記送信部が前記送信データの一部が圧縮された第1の圧縮データの一部を含み第1の変調方法で変調された第1のフレームを送信した後に、前記送信データの前記一部が前記第1の圧縮データと異なる圧縮率で圧縮された第2の圧縮データを含み第2の変調方法で変調された第2のフレームを送信するよう制御する、
無線送信装置。
【請求項9】
請求項1から
8のいずれかに記載の無線送信装置において、
前記第1の変調方法および前記第2の変調方法のそれぞれは、IEEE802.11にて定義される複数のMCSのうちいずれか
に含まれる変調方法であり、前記第1の変調方法と前記第2の変調方法は互いに異なる、
無線送信装置。
【請求項10】
送信部から順に送信され、それぞれ第1の変調方法および第2の変調方法を含む複数の変調方法のいずれかにより変調される複数のフレームを受信する受信部と、
前記受信部が
、第1の変調方法により変調された
A個の第1のフレームと、当該第1のフレームの後に
、前記第2の変調方法により変調された
第2のフレームであって、B個の第2のフレームとを受信した場合に、前記受信された
前記A個の第1のフレームに基づいて取得された受信データを出力する制御部と、
を含
み、
前記A個の前記第1のフレームには、送信データが分割された複数のサブデータのうち一部の連続するサブデータが順に格納され、
前記B個の前記第2のフレームは、前記連続するサブデータのうち一部のサブデータが順に格納され、
前記B個は前記A個より少ない、
無線受信装置。
【請求項11】
請求項
10に記載の無線受信装置において、
前記第1のフレームは前記送信データの一部が圧縮された第1の圧縮データが第1の変調方法により変調され、
前記第2のフレームは前記送信データの前記一部が前記第1の圧縮データより圧縮された第2の圧縮データが第2の変調方法により変調され、
前記制御部は、前記第1のフレームと前記第1のフレームの後に送信される前記第2のフレームとを受信した場合に、前記第1のフレームから復調される前記第1の圧縮データを出力し、前記第2のフレームから復調される前記第2の圧縮データを出力しない、
無線受信装置。
【請求項12】
複数のサブデータに分割される送信データを取得する取得部と、
第1の変調方法および第2の変調方法を含む複数の変調方法のうちいずれかにより変調される複数のフレームをブロードキャストにより順に送信する送信部と
、
前記送信部が、
前記複数のサブデータのうち一部の連続するサブデータが順に格納され、前記第1の変調方法により変調された
A個の第1のフレームを送信し、前記第1のフレームを送信した後に、
前記連続するサブデータの一部が順に格納され、前記第2の変調方法により変調された
第2のフレームであって、前記A個より少ないB個の第2のフレームを送信するよう制御する制御部と、を有
する送信装置、および、
前記送信部から順に送信される複数のフレームを受信し、前記
A個の第1のフレームと、当該
A個の第1のフレームの後
の、前記
B個の第2のフレームとを受信した場合に、前記受信された
前記A個の第1のフレームに基づいて、受信データを取得し記憶部に格納する
受信装置、
を有する無線システム。
【請求項13】
複数のサブデータに分割される送信データを取得し、
第1の変調方法および第2の変調方法を含む複数の変調方法のうちいずれかにより変調される複数のフレームをブロードキャストにより順に送信し、
前記複数のサブデータのうち一部の連続するサブデータが順に格納され、前記第1の変調方法により変調された
A個の第1のフレームが送信され、前記第1のフレームを送信した後に、
前記連続するサブデータの一部が順に格納され、前記第2の変調方法により変調された
第2のフレームであって、前記A個より少ないB個の第2のフレームを送信されるよう制御する、
無線送信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は無線送信装置、無線受信装置、無線システム及び無線送信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線LANは様々な場所で用いられている。無線LANの通信において、無線LANアクセスポイントを介してSSIDやARPなどを含むブロードキャストパケットが送信されている。ブロードキャストパケットは、すべての無線LANクライアントへ送信される。そのため、ブロードキャストされるデータは、予め規定される複数の変調方法(MCSと呼ばれる)のうち最も伝送速度の遅い変調方法で変調され、無線LANクライアントへ送信されることが一般的である。
【0003】
特許文献1には、複数のワイヤレスデバイスによって送信されるブロードキャストメッセージを用いて、複数のワイヤレスデバイス間の距離を計測することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ネットワークサービスの多様化により、ブロードキャストによってさまざまなコンテンツを送信することが考えられる。現状では伝送速度の低い変調方式によって短時間で大量のデータを送信することが難しく、伝送速度の高い変調方式による送信ではデータを受信できないクライアントが生じやすい。
【0006】
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであって、その目的は、無線LANのブロードキャストによってより適切にデータを送信することを可能にする技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る無線送信装置は、送信データを取得する取得部と、第1の変調方法および第2の変調方法を含む複数の変調方法のうちいずれかにより変調される複数のフレームをブロードキャストにより順に送信する送信部と、前記送信部が、送信データの一部に基づいて前記第1の変調方法により変調された第1のフレームを送信し、前記第1のフレームを送信した後に、前記送信データの前記一部に基づいて前記第2の変調方法により変調された第2のフレームを送信するよう制御する制御部と、を含む。
【0008】
また、本発明に係る無線送信方法は、送信データを取得し、第1の変調方法および第2の変調方法を含む複数の変調方法のうちいずれかにより変調される複数のフレームをブロードキャストにより順に送信し、前記送信データの一部に基づいて前記第1の変調方法により変調された第1のフレームが送信され、前記第1のフレームを送信した後に、前記送信データの前記一部に基づいて前記第2の変調方法により変調された第2のフレームを送信されるよう制御する。
【0009】
また、本発明に係る無線受信装置は、送信部から順に送信され、それぞれ第1の変調方法および第2の変調方法を含む複数の変調方法のいずれかにより変調される複数のフレームを受信する受信部と、前記受信部が、送信データの一部に基づいて第1の変調方法により変調された第1のフレームと、当該第1のフレームの後に、前記送信データの前記一部に基づいて前記第2の変調方法により変調された第2のフレームとを受信した場合に、前記受信された第1のフレームに基づいて取得された受信データを出力する制御部と、を含む。
【0010】
また、本発明に係る無線システムは、送信データを取得する取得部と、第1の変調方法および第2の変調方法を含む複数の変調方法のうちいずれかにより変調される複数のフレームをブロードキャストにより順に送信する送信部と、前記送信部から順に送信される複数のフレームを受信する受信部と、データ取得部と、前記送信部が、前記送信データの一部に基づいて前記第1の変調方法により変調された第1のフレームを送信し、前記第1のフレームを送信した後に、前記送信データの前記一部に基づいて前記第2の変調方法により変調された第2のフレームを送信するよう制御する制御部と、を含み、前記データ取得部は、前記受信部が、前記第1のフレームと、当該第1のフレームの後に、前記第2のフレームとを受信した場合に、前記受信された第1のフレームに基づいて、受信データを取得し記憶部に格納する。
【0011】
また、本発明に係る他の無線送信システムは、第1の送信データと前記第1の送信データと異なる第2の送信データとを取得する取得部と、第1の変調方法および第2の変調方法を含む複数の変調方法のうちいずれかにより変調される複数のフレームをブロードキャストにより順に送信する送信部と、を含み、前記制御部は、前記送信される複数のフレームが、第1の送信データが第1の変調方法により変調される複数の第1のフレームと、第2の送信データが第2の変調方法により変調される複数の第2のフレームと、を含むように前記送信部を制御する制御部と、を含み、前記第2の送信データは前記第1の送信データと異なる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、無線LANのブロードキャストによってより適切にデータを送信することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1の実施形態にかかる無線通信システムの一例を示す図である。
【
図2】変調方法と配信可能範囲との関係を示す図である。
【
図3】送信装置と受信端末の構成の一例を示すブロック図である。
【
図5】送信される複数のフレームの一例を示す図である。
【
図6】送信される複数のフレームの比較例を示す図である。
【
図7】送信される複数のフレームの他の一例を示す図である。
【
図8】送信される複数のフレームの他の一例を示す図である。
【
図9】送信される複数のフレームの他の一例を示す図である。
【
図10】送信される複数のフレームの他の一例を示す図である。
【
図11】送信される複数のフレームの一例を示す図である。
【
図12】受信端末の処理を説明するフロー図である。
【
図13】第2の実施形態において送信される複数のフレームの一例を示す図である。
【
図14】送信装置、受信端末および配信サーバのハードウェア構成およびメモリに格納されるプログラムの一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態の例を図面に基づいて説明する。本実施形態では、同一の周波数帯において複数の変調方式を用いて複数のフレームを送受信する無線通信システムについて説明する。無線通信システムは、特に説明のない限り、IEEE802.11に準拠して送受信を行う。
【0015】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の実施形態にかかる無線通信システムの一例を示す図である。無線通信システムは、送信装置1と、1または複数の受信端末2と、配信サーバ3とを含む。送信装置1は、例えば無線LANアクセスポイントであり、IEEE802.11に準拠して複数のフレームを送信することができる無線送信装置の一形態である。複数のフレームには、複数のブロードキャストフレームが含まれる。以下では特に、無線を用いてブロードキャスト送信をする場合に有効な無線通信システムについて説明する。
【0016】
1または複数の受信端末2のそれぞれは無線LANクライアントを含む。受信端末2は例えばパーソナルコンピュータやスマートフォンであり、無線LANアクセスポイントとIEEE802.11に準拠して通信することができる。受信端末2は無線受信装置の一形態である。配信サーバ3は、ブロードキャストで送信するための送信データをデータソースに格納し、その送信データを送信装置1へ引き渡す。ここでは送信装置1は主にデータを送信し、受信端末2はデータを受信するが、送信装置1がデータを受信し、受信端末2がデータを送信してもよい。
【0017】
図2は、変調方法と配信可能範囲との関係を模式的に示す図である。
図2には、送信装置1がそれぞれ変調方法としてMCS0、MCS5、MCS11を用いてフレームを送信する場合の配信可能範囲R0,R5,R11が示されている。MCSはModulation and Coding Schemeの略称であり、IEEE802.11により定義されている。送信装置1と配信可能範囲R0,R5,R11の縁との距離は、それぞれ100m、50m、10m程度である。変調方法による伝送レートが高くなるほど、配信可能範囲は狭くなっている。
【0018】
配信可能範囲R11内にある受信端末2aはMCS11で変調されたフレームを受信し復調することができ、他の変調方法で変調されたフレームも受信し復調することができる。一方、配信可能範囲R11の外かつ配信可能範囲R5の内にある受信端末2bは、MCS11で変調されたフレームを受信することができないが、MCS5およびMCS0で変調されたフレームを受信し復調することができる。配信可能範囲R5の外かつ配信可能範囲R0の内にある受信端末2cは、MCS11,5で変調されたフレームを受信できないが、MCS0で変調されたフレームを受信し復調することができる。この説明のように、受信端末2の置かれた環境により受信端末2が受信可能な変調方法が異なることがある。
【0019】
図2に示されるように、変調方法によっては一部の受信端末2では受信できない変調方法が生じる。一方、できるだけ多くの受信端末2がブロードキャストのフレームを受信できるように伝送レートの低い変調方法のフレームのみを用いると、例えば送信装置1のそばにある受信端末2aでは本来の性能で受信する場合より受信に時間がかかってしまう。以下では、より効率的にブロードキャストで送信する構成についてより詳細に説明する。
【0020】
図3は、送信装置1、受信端末2および配信サーバ3の構成の一例を示すブロック図である。送信装置1は、制御部11、メモリ12、スケジューラ13、送信部14を含む。受信端末2は、制御部21、メモリ22、受信部23を含む。配信サーバ3は、制御部31、メモリ32を含む。
図14は、送信装置1、受信端末2および配信サーバ3のハードウェア構成およびメモリ12,22に格納されるプログラムの一例を示すブロック図である。
【0021】
制御部11,21,31は、それぞれ少なくとも1つのプロセッサ110,210,310を含み、それぞれ有線通信のインタフェースを実現するハードウェアである通信部111,211,311を含む。
【0022】
制御部11,21,31に含まれるプロセッサ110、210,310は、それぞれメモリ12,22,32に格納されるプログラムに基づいて処理を実行する。なお、制御部11、21,31は、少なくとも一部のプログラムの代わりに専用のハードウェアによって処理を実行してもよい。
【0023】
メモリ12,22,32は、例えば揮発性メモリと不揮発性メモリとを含む。送信装置1のメモリ12は、送信の対象となる送信データを格納でき、受信端末2のメモリ22は受信された受信データを格納できる。また、配信サーバ3のメモリ32はデータソースでもあり、送信すべきデータを格納する。メモリ12には、取得モジュール51、制御モジュール52、スケジューラモジュール53および圧縮モジュール55のプログラムが格納されている。プロセッサ110は、スケジューラモジュール53を実行することにより、スケジューラ13の処理を実現してよい。メモリ22には、制御モジュール61のプログラムが格納されている。メモリ32には圧縮モジュール55のプログラムが格納されてもよい。
【0024】
スケジューラ13は、制御部11の制御に基づいて、メモリ12に格納される送信データを読み出し、送信部14へ渡す。送信部14は、複数のフレームを無線のブロードキャストにより順に送信する。フレームのそれぞれは送信データの一部を有する。より具体的には、送信データは、内部的に、フレームに格納可能なサイズに応じて複数のサブデータに分割され、複数のフレームのそれぞれは複数のサブデータのいずれかを含む。スケジューラ13は、メモリ12から次に送信対象となるサブデータを読み出し、そのサブデータを含むフレームのデータを送信部14へ引き渡す。スケジューラ13は、制御部11に含まれるものと同一のプロセッサであってよいし、データ転送に最適化されたハードウェアであってもよい。
【0025】
送信部14は、アンテナと変調回路とを含む。送信部14は、複数のフレームのそれぞれを、複数の変調方法のうちいずれかにより変調する。複数の変調方法は、IEEE802.11規格により定義されMCSと呼ばれている。例えばIEEE802.11axではMCS0から11が存在し、数値が大きくなるほど伝送速度が大きくなる。
【0026】
本実施形態では、送信部14は、複数のサブデータのいずれか(送信データの一部に相当する)に基づき、複数の変調方法のいずれかである第1の変調方法で変調された第1のフレームを送信した後に、そのいずれかのサブデータに基づき、複数の変調方法のいずれかであり第1の変調方法と異なる第2の変調方法により変調された第2のフレームを送信してよい。この送信により、同一のデータに基づくフレームが互いに変調方式の異なる複数のフレームにおいて送信される。また、同一のサブデータについては、伝送速度の速い変調方法によるフレームが先に送信される。
【0027】
受信部23は、アンテナと復調回路とを含む。受信部23は、送信部14により送信された複数のフレームを受信する。受信部23は、各フレームの変調方式にかかわらずフレームを受信するが、電波強度によっては一部の変調方法のみ受信する場合がある。また、受信部23は、受信されたフレームを復調する。復調されたフレームに含まれるデータはメモリ22に格納される。
【0028】
受信端末2の受信部23は、同じデータ(もしくは同じデータが異なる圧縮率で圧縮されたデータ)を含むフレームを複数回受信しうる。この場合、制御部21は、重複するデータを受信結果として出力しない。例えば、制御部21は制御モジュール61のプログラムの実行により、送信データの一部に基づいて第1の変調方法により変調された第1のフレームを受信部23が受信した後に、その一部に基づいて第2の変調方法により変調された第2のフレームを受信部23が受信した場合に、第1のフレームに含まれるデータを出力し、第2のフレームに含まれるデータを破棄する。
【0029】
データシンク29は、制御部21により出力されるデータを格納する。データシンク29は受信端末2内にあるメモリ22やストレージであってよいし、外部のコンピュータであってもよい。データシンク29に格納されるデータに基づいて、例えば映像や音声などのコンテンツやメッセージが出力される。
【0030】
次に、送信装置1がフレームを送信する際の処理をさらに詳細に説明する。
図4は送信装置1の処理を説明するフロー図である。はじめに、制御部11は、取得モジュール51のプログラムの実行により、配信サーバ3のデータソースから送信データを取得する(ステップS101)。ここで、制御部11は、自ら配信サーバ3に対して能動的にリクエストすることにより送信データを取得してもよいし、配信サーバ3から送信される送信データを受動的に受信することにより送信データを取得してもよい。また、制御部11は、メモリ12に予め格納された送信データを取得してもよい。
【0031】
また、取得モジュール51のプログラムの実行により、制御部11は取得された送信データをメモリ12に格納する(ステップS102)。メモリ12は、送信すべき送信データを格納している。
【0032】
送信データは、様々な種別に分類される。例えば送信データの種別は、ストリーミングデータ、ダウンロードデータ、などがある。ストリーミングデータは即時性を必要とするデータであり、ダウンロードデータは、例えばアプリケーションプログラム、または、即時性を求められないコンテンツのデータである。
【0033】
制御部11は、制御モジュール52のプログラムの実行により、メモリ12に格納された送信データの種別に基づいて、送信される複数のフレームのパターンを決定する(ステップS103)。パターンは、順に送信される複数のフレームのそれぞれに格納されるサブデータと変調方法とを含む。なお、制御部11は、ブロードキャストである場合に、複数のパターンのうちから1つを選択してもよいし、あらかじめ定められた1つのパターンを常に決定してもよい。
【0034】
パターンは、スケジューラ13および送信部14の動作を規定する命令であってよい。例えば、パターンは、順に送信される複数のフレームのそれぞれの変調方法と、その複数のフレームのそれぞれに格納されるサブデータを特定する情報とであってよい。また、サブデータを特定する情報として、ある変調方法でa番目(aは1以上b未満の整数であり、bはサブデータの数)に送信されるフレームに格納されるサブデータと、その変調方法で(a+1番目)に送信されるフレームに格納されるサブデータとの位置の変化を示す情報であってよい。
【0035】
スケジューラ13は、決定されたパターンに基づいて、メモリ12からサブデータを読み出し、読み出されたサブデータを送信部14へ渡す(ステップS104)。そして送信部14は、渡されたサブデータを含むフレームデータをパターンとして決定された変調方法で変調し、無線で送信する(ステップS105)。
【0036】
送信装置1は、制御部11により決定されるパターンに応じて、複数の変調方式を用いてデータを送信する。データや通信環境などの特性に応じたパターンを用いることで、より適切にデータを送信することが可能になる。
【0037】
以下ではパターンについてより詳細に説明する。本実施形態では、制御部11は、複数のサブデータのいずれか(送信データの一部に相当する)に基づき、複数の変調方法のいずれかである第1の変調方法で変調された第1のフレームを送信した後に、そのいずれかのサブデータに基づき、複数の変調方法のいずれかであり第1の変調方法と異なる第2の変調方法により変調された第2のフレームを送信するよう送信部14を制御する。また、その第1の変調方法は第2の変調方法より伝送速度が速い。
【0038】
以下では、m個の変調方法(具体例ではMCS11、MCS5、MCS0の3つの変調方法)を用いる場合について説明する。伝送速度の速いものから順に第1の変調方法(ここではMCS11)、第2の変調方法(ここではMCS5)、第mの変調方法(ここではMCS0)と定義する。
【0039】
図5は、送信される複数のフレームの一例を示す図である。
図5では、フレームとして示される矩形の領域はフレームが送信される期間を示し、矩形の中に記載されている文字列は変調方式を示している。フレームの矩形の領域の下に示されるサブデータの符号は、フレームに格納されるサブデータの元の送信データ中の位置を示す情報である。複数のフレームのそれぞれは、この符号をサブデータ識別情報として含んでよい。サブデータ識別情報は受信端末2にて用いられる。また、送信データがダウンロードデータである場合に、送信部14がサブデータ識別情報を含むフレームを送信してもよい。
【0040】
図5に示されるパターンでは、制御部11は、あるサブデータについて、第1の変調方法の1つのフレーム、第2の変調方法の1つのフレーム、・・・、第mの変調方法の1つのフレームを送信部14が順に送信し、次のサブデータについて同様に複数のフレームを送信部14が送信することを繰り返すように制御する。より具体的には、制御部11は上記パターンに基づいてスケジューラ13にメモリ12からサブデータを順に送信部14に渡し、送信部14がそのパターンに応じた変調方法で渡されたサブデータを含むフレームを送信するよう制御する。
【0041】
制御部11は、例えば送信装置1に近い受信端末2に対してブロードキャストによりその送信データを確実に送る必要があるが遠くの受信端末2に対しては不確実であってもよい場合(その蓋然性が高いデータ種別である場合)に、
図5に示されるパターンを決定し、送信部14を制御する。
【0042】
図6は、送信される複数のフレームの比較例を示す図である。
図6は従来のブロードキャストにおけるフレームの送信の例である。
図6の例では、最も伝送速度の低い変調方法(ここではMCS0)のみでブロードキャストのデータを送信するため、伝送速度に限界がある。そのため、
図5の例と比べ、送信装置1に近い受信端末2において受信エラーが発生すると、データの受信そのものに失敗するか、あるいはもう一度送信されるまで長時間待つ必要が生じる。
図5の例では、伝送速度の速い変調方法で同じデータを送信することにより、送信装置1に近い受信端末2により確実にデータを受信させることが可能になる。また、
図5の例では同一のサブデータについては、伝送速度の速い変調方法によるフレームが先に送信されるため、送信装置1に近い受信端末2は他の順序で送信されるより早くデータを受信できる。
【0043】
図7は、送信される複数のフレームの他の一例を示す図である。
図7に示されるパターンでは、制御部11は、第1の変調方法の連続するF(1)個のフレーム、第2の変調方法の連続するF(2)個のフレーム、・・・、第mの変調方法の連続するF(m)個のフレームを送信部14が順に送信することを繰り返すよう制御する。ここで、F(1)>F(2)>…>F(m)の条件を満たしている。送信部14が送信するすべてのフレームのうち同一の変調方法で送信される複数のフレームについて、あるサブデータを格納するフレームの次には、次のサブデータを格納するフレームが送信される。連続するF(p)個(pは1以上m以下の整数)のフレームのそれぞれには連続するサブデータが格納される。また、
図7に示される最後のフレームの次のフレームでは、8番目のサブデータを含みMCS11で変調されるフレームが送信される。
【0044】
図7の例では、伝送速度の速い変調方法ではより短時間でデータが送信される。そのため、送信装置1に近い受信端末2ではアプリケーションなどのデータをより短時間でダウンロードできる。制御部11は、例えば送信装置1に近い受信端末2に対してブロードキャストによりその送信データを短時間で送る必要があるが、遠くの受信端末2に対しては遅くでもよい場合(その蓋然性が高いデータ種別である場合)に、
図7に示されるパターンを決定し、送信部14を制御する。
【0045】
図8は、送信される複数のフレームの他の一例を示す図である。
図8に示されるパターンでは、
図7の例と異なり、送信部14が送信するすべてのフレームのうち同一の変調方法で送信される複数のフレームは、同じサブデータを格納する連続する2つのフレームを含んでいる。また、同一の変調方法で送信されるその複数のフレームは、その連続する2つのフレームの後に、次のサブデータを格納する連続する2つのフレームを含む。
図8の例ではあるサブデータのフレームが連続して複数回送信されるため、受信時のエラーが生じてもより確実にデータを受信することが可能になる。制御部11は、例えば受信端末2に対して確実にデータを送信する必要があり、かつ、送信装置1に近い受信端末2に対してブロードキャストによりその送信データを短時間で送る必要がある場合(その蓋然性が高いデータ種別である場合)に、
図8に示されるパターンを決定し、送信部14を制御する。
【0046】
図9は、送信される複数のフレームの他の一例を示す図である。
図9に示されるパターンでは、
図7の例と異なり、送信部14が送信するすべてのフレームのうち同一の変調方法で送信される複数のフレームは、それぞれ2つのフレームを含む複数のセットを含む。セットのそれぞれは、k番目(kは1以上n未満の整数であり、nは2以上の整数である)のサブデータが格納されるフレームと、その次のフレームであって(k+1)番目のサブデータが格納されるフレームと、を含む。この場合、k番目のサブデータが第1の変調方法で変調され送信され、その次に、(k+1)番目のサブデータが第1の変調方法で変調され送信されること、が繰り返され(
図9のMCS11参照)、その繰り返しののちに、k番目のサブデータが第2の変調方法により変調されたフレームを送信する(
図9のMCS5参照)よう制御部11が送信部14を制御する。
図9の例においても、
図8の例と同様に、より確実にデータを受信しつつ効率を確保することが可能になる。制御部11は、
図8の例と同様の場合に、
図9に示されるパターンを決定し、送信部14を制御する。
【0047】
図10は、送信される複数のフレームの他の一例を示す図である。
図10の例では、送信装置1の送信部14は動画データを複数の変調方法で配信している。制御部11は、もとの送信データが圧縮された第1の圧縮データの一部を含み第1の変調方法で変調された第1のフレームを送信した後に、その送信データの一部が第1の圧縮データと異なる圧縮率で圧縮された第2の圧縮データを含み第2の変調方法で変調された第2のフレームを送信するよう送信部14を制御する。ここで、第1の圧縮データおよび第2の圧縮データは、プロセッサ110が、圧縮モジュール55のプログラムを実行することにより、送信データの少なくとも一部を圧縮することにより生成され、メモリ12に格納される。なお、配信サーバ3のプロセッサ310が圧縮モジュール55のプログラムを実行することにより、第1の圧縮データおよび第2の圧縮データが生成され、送信装置1がそれらを取得しメモリ12に格納してもよい。
【0048】
より具体的には、
図10の例では、MCS11のフレームによりサブデータd1,d2が送信され、MCS5のフレームでサブデータd1a,d2aが送信され、MCS0のフレームでサブデータd1b,d2bが送信される。サブデータd1,d1a,d2aは同一のサブデータに基づくデータであり、サブデータd2,d2a,d2bは同一のデータに基づくデータであり、各フレームに格納されるサブデータは、元のデータから圧縮されたデータが分割されている。同一のサブデータに基づいて生成される圧縮されたサブデータを格納するフレームは、同一のサブデータ識別情報を含んでよい。
【0049】
圧縮前のサブデータに対する、第iの変調方法(iは1以上m以下の整数)に格納されるサブデータの比を圧縮率C(i)とすると、1≧C(1)>C(2)>…>C(m)の条件を満たす。つまり、伝送速度が遅い変調方法のフレームほど、データが圧縮されている。また、ここで行われる圧縮は非可逆圧縮である。また、制御部11は、元のデータの同等の部分が圧縮された複数のサブデータについて、送信部14が、圧縮率C(i)が大きい、つまりあまり圧縮されていないサブデータのフレームを、より圧縮されたサブデータのフレームより先に送信するよう制御する。
【0050】
制御部11は、リアルタイム性を要求され非可逆圧縮が可能なデータ、例えば動画データをブロードキャストで送信する場合に、
図10に示されるパターンを決定する。なお、このパターンでは、制御部11は動画データのエンコーダを有し、メモリ12に格納された動画データを、第iの変調方法に応じた圧縮率C(i)で圧縮エンコードし、適切なサイズでサブデータに分割する。この圧縮エンコードは、配信サーバ3側の制御部31が行ってもよい。
【0051】
これにより、例えば動画データをブロードキャストで送信する場合に、送信装置1に近い受信端末2ではより多いデータに基づく高品質の画像を出力することが可能になる。
【0052】
なお、送信装置1の送信部14は、ブロードキャストのフレームとユニキャストのフレームとを混在させて送信してもよい。
図11は、送信される複数のフレームの一例を示す図である。
図11の例では、送信部14は、ユニキャストのサブデータuを含むフレームと、ブロードキャストのサブデータd1~d6,x1,x2を含むフレームとを混在させて送信している。
【0053】
次に、受信端末2がフレームを受信する際の処理をさらに詳細に説明する。
図12は受信端末2の処理を説明するフロー図である。
図12に示される処理は、受信端末2の受信部23がフレームを受信するごとに実行される。
【0054】
はじめに、受信部23は、送信部14から送信されるフレームを受信し、そのフレームに含まれるフレームデータを復調する(ステップS201)。受信部23は、復調されたフレームデータに含まれるサブデータをメモリ22に格納する(ステップS202)。ここで、受信部23は制御部21へ復調されたフレームデータを渡し、制御部21がメモリ22へフレームデータを格納してもよい。
【0055】
そして制御部21は、送信部14が復調したサブデータのうち、以前に受信したサブデータと重複していないサブデータのみをデータシンク29に対して出力する。より具体的には、制御部21はメモリ22に格納されたサブデータのうち、以前受信されたものと重複するものを削除する(ステップS203)。より具体的には、制御部21は、すでに受信されたサブデータのサブデータ識別情報と、その後に受信されたサブデータのサブデータ識別情報とが同じである場合に、重複するとして後に受信されたサブデータを削除してよい。
【0056】
そして制御部21は、削除されていないサブデータをデータシンク29へ向けて出力する(ステップS204)。制御部21は、データシンク29が受信端末2内にありアプリケーションプログラムにより利用される場合には、そのサブデータをメモリ22のうちアプリケーションプログラムがアクセスする領域に格納してよい、またデータシンク29が外部のコンピュータにある場合には、制御部21は、外部のコンピュータに向けてサブデータを送信してよい。
【0057】
なお、
図10の例においては、圧縮前のデータの部分がほぼ重なる場合、圧縮率が異なっていてもサブデータ識別情報は同じであり、かつ、より圧縮されていないサブデータが先に送信される。具体的には、送信装置1からは、送信データの一部が圧縮された第1の圧縮データが第1の変調方法により変調された第1のフレームと、その一部が第1の圧縮データより圧縮された第2の圧縮データが第2の変調方法により変調された第2のフレームとを順に送信する。受信部23が第1のフレームおよび第2のフレームを受信した場合、制御部21は、受信部23が先に受信する第1のフレームから復調される第1の圧縮データをデータシンク29へ向けて出力し、第2のフレームから復調される第2の圧縮データを出力しない。これにより、より簡易な形で、受信環境がよい受信端末2がより圧縮されていないデータを出力することが可能になる。
【0058】
[第2の実施形態]
第1の実施形態においては、送信装置1が同一のデータまたは同一のデータに基づくデータを複数の変調方法で送信していたが、第2の実施形態では、互いに異なるデータを複数の変調方法により変調し、ブロードキャストで送信する。以下では主に第1の実施形態との相違点について説明する。送信装置1が制御部11、メモリ12、スケジューラ13、送信部14を備える点に違いはないので説明を省略する。また受信端末2の構成は大きな違いがないので説明を省略する。
【0059】
第2の実施形態では、制御部11は、配信サーバ3から第1の送信データと、第1の送信データと異なる第2の送信データとを取得し、メモリ12に格納する。
【0060】
また、制御部11は、送信部14が送信する複数のフレームが、第1の送信データが第1の変調方法により変調される複数の第1のフレームと、第2の送信データが第2の変調方法により変調される複数の第2のフレームと、を含むように制御する。
【0061】
図13は、第2の実施形態において送信される複数のフレームの一例を示す図である。
図13の例では、伝送速度の速い変調方法MCS11で送信される第1の送信データのサブデータ1~8と、その後に伝送速度の低い変調方法MCS0で送信される第2の送信データのサブデータd1~d3とが記載されている。例えば送信装置1が博物館に配置される場合には、第1のデータが送信装置1の近くにある展示物を紹介する映像コンテンツであり、第2のデータが送信装置1の展示物を紹介するテキストコンテンツのデータであってよい。ブロードキャストで送信するデータの特性に応じて変調方法を異ならせることにより、より効率的にデータを送信することが可能になる。
【符号の説明】
【0062】
1 送信装置、2,2a,2b,2c 受信端末、3 配信サーバ、11,21,31 制御部、12,22,32 メモリ、13 スケジューラ、14 送信部、23 受信部、29 データシンク、51 取得モジュール、52 制御モジュール、53 スケジューラモジュール、55 圧縮モジュール、61 制御モジュール、110,210,310 プロセッサ、111,211,311 通信部、R0,R5,R11 配信可能範囲。