(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】情報登録判定システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 30/06 20230101AFI20231129BHJP
G06Q 50/10 20120101ALI20231129BHJP
【FI】
G06Q30/06
G06Q50/10
(21)【出願番号】P 2019186655
(22)【出願日】2019-10-10
【審査請求日】2022-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】嶋村 高志
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 梓
【審査官】菅原 浩二
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-028660(JP,A)
【文献】特開2007-293534(JP,A)
【文献】特表2012-503264(JP,A)
【文献】特開2016-019286(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0025244(US,A1)
【文献】レジ横のQRコードをスマホで読み取って来店ポイントを加算してく店で:お料理速報,「お料理速報」の2019年1月27日付けのアーカイブ[online],2019年01月27日,<URL:http://web.archive.org/web/20190127174302/http://oryouri.2chblog.jp/archives/9981876.html><検索日:2023年7月27日>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
識別コード支持媒体上に配置されたバーコードや二次元コードを含む識別コードのイメージが直接に携帯端末の画像取得手段によって撮像されたものであるかを判定するシステムであって、
識別コード発行者による識別コードの事前登録手段と、
識別コードイメージ取得者によって取得された識別コードの判別手段
と、を備え、
前記識別コードの判別手段が、
該識別コードと、該識別コードをスマートフォンのカメラを含む携帯端末の画像取得手段によって撮像したものを液晶ディスプレイを含む表示デバイス上で表示した複製識別コードと、のうちいずれかのイメージを、スマートフォンのカメラを含む携帯端末の画像取得手段によって専用の携帯端末アプリケーションに画像データとして読み込む手段と、
前記携帯端末に設けられ、読み込んだ画像データから個別の特徴点情報を抽出する手段と、
それぞれの特徴点情報をクラウドに保存する手段と、
抽出された特徴点情報を前記クラウドに保存された特徴点情報と比較する手段と、
比較された結果から取得画像が真に識別コード支持媒体上に配置された識別コードのものであるか携帯端末の画像取得手段で複製された複製識別コードのものであるかを判別する手段と、
を備える識別コードの判定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は情報登録判定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、スタンプラリーや来店ポイントなど、主催者の指定場所(以下キャンペーン会場)に参加者が直接赴くことによって特典を得られるキャンペーンにおいて、実際に参加者が立ち寄ったことを証明する手段として、物理的な手法としてのスタンプ台での押印や、電磁的な手法としてのGPS情報、キャンペーン会場でのローカルなWiFiまたはBluetooth(登録商標)への接続情報、ビーコン情報などが用いられている。
【0003】
しかしこれらの手段には、スタンプ台の盗難や破損への対応、GPS位置情報の精度不足、電磁的な手法全般における参加者が所持する端末装置との接続の煩雑さや電磁的設備の設置に関わる運用環境の制限などの課題があった。
【0004】
それに対してユニークQR(登録商標)という各マーカーに固有のQRコード(登録商標)(先行特許文献1)をキャンペーン会場毎に備え、参加者のスマートフォンなどの携帯端末で該ユニークQR(登録商標)を撮像することによって、参加者の来場や来店の証明を行う手法の利用が増加してきている。この手法では該ユニークQR(登録商標)の作製や複製が容易であることから、前記の物理的または電磁的な手法に比べてキャンペーン主催者の負担が少ないという利点がある。
【0005】
しかし同時に該ユニークQR(登録商標)の複製が容易であるため、実際に現地に用意されている該ユニークQR(登録商標)ではなく、現地で撮像された該ユニークQR(登録商標)画像がSNSなどで広く拡散されてしまうことによって、現地での撮像行為をともなうことなく、遠隔地で該ユニークQR(登録商標)画像を取得できてしまうことから、キャンペーン会場への立寄の特典が不正に詐取されてしまうという事象も発生している。
【0006】
このような識別コード複製による被害を防ぐために、識別コードの印刷工程で自然発生する様々な印刷品質の揺らぎによる固有の特徴を専用の画像認識アプリケーションで抽出することで、人間の眼やバーコードスキャナでは区別できない個々の特徴の違いを識別できる画像認識技術が登場している(先行特許文献2)
【0007】
しかしながら、上記画像認識技術は印刷物上の個々の識別コードの違いは識別できても、印刷物上の識別コードとスマートフォンのカメラなどで撮影した識別コード画像を識別できず、上記の不正を抑制することができないという課題が残っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2008-293284号公報
【文献】特許第6181885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、紙などの識別コード支持媒体上に印刷などによって配置された識別コードのイメージを撮像して得られた画像と、該識別コードのイメージを他の撮像表示手段によって複製されたイメージを撮像して得られた画像を判別することによって、来場や来店の証明が現地に設置された該識別コードを撮像した場合に限って行われるシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、
識別コード支持媒体上に配置されたバーコードや二次元コードを含む識別コードのイメージが直接に携帯端末の画像取得手段によって撮像されたものであるかを判定するシステムであって、
識別コード発行者による識別コードの事前登録手段と、
識別コードイメージ取得者によって取得された識別コードの判別手段と、を備え、
前記識別コードの判別手段が、
該識別コードと、該識別コードをスマートフォンのカメラを含む携帯端末の画像取得手段によって撮像したものを液晶ディスプレイを含む表示デバイス上で表示した複製識別コードと、のうちいずれかのイメージを、スマートフォンのカメラを含む携帯端末の画像取得手段によって専用の携帯端末アプリケーションに画像データとして読み込む手段と、
前記携帯端末に設けられ、読み込んだ画像データから個別の特徴点情報を抽出する手段と、
それぞれの特徴点情報をクラウドに保存する手段と、
抽出された特徴点情報を前記クラウドに保存された特徴点情報と比較する手段と、
比較された結果から取得画像が真に識別コード支持媒体上に配置された識別コードのものであるか携帯端末の画像取得手段で複製された複製識別コードのものであるかを判別する手段と、
を備える識別コードの判定システムである。
【発明の効果】
【0013】
キャンペーン参加者が直接印刷物から取得した識別コードであるか、あるいは一旦電子的に取得された画像を介して間接的に取得した識別コードの複製であるかを判別することができる。
【0014】
この判別によってキャンペーン会場や店舗に立ち寄っていない参加者の前記複製識別コード利用による特典詐取不正を防ぐことができる。
【0015】
このように、バーコードや二次元コードなど印刷した識別コードの「複製が容易にできる」という欠点と、画像認識技術の「表示デバイス上の識別コード画像を識別できない」という欠点の双方を解消することができる。
【0016】
またキャンペーン特典だけでなく、不正に複製された識別コードによる商品の真贋保証などへの応用も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】識別コードの特徴点登録方法(1)実物の特徴点登録。
【
図2】識別コードの特徴点登録方法(2)複製の特徴点登録。
【
図3】識別コードの読み取り判定方法(1)実物である場合。
【
図4】識別コードの読み取り判定方法(2)複製である場合。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明の一実施形態を示す。
【0019】
本実施形態は識別コードの事前登録方法と、識別コードの判別方法の2つの方法から構成される。
【0020】
まず識別コードの事前登録方法について
図1および
図2にもとづいて説明する。
【0021】
事前登録方法は、紙を含む識別コード支持媒体200上に配置された識別コード1と、該識別コードを画像データとして取得する解像度300dpi以上の解像度を有する撮像部300と、取得した該画像データを処理する通信ネットワークで接続された認証クラウド100によって提供される。
【0022】
識別コードは紙を含む面上に印刷されたバーコード、二次元コード等を想定しているが、それ以外の特殊コード、ランダムパターン、用紙や基材の表面パターン、凹凸など、画像としての特徴が識別できるものであればいずれでも構わない。
【0023】
また撮像の波長域は可視光を想定しているが、カメラの性能に応じて赤外線、紫外線などの不可視領域を用いても構わない。
【0024】
まず
図1にもとづいて、キャンペーン参加者が実際にキャンペーン会場に赴いて識別コードを取得することを想定した識別コードイメージの事前登録手順について説明する。
【0025】
キャンペーン主催者である識別コードの発行者は、キャンペーン地点ごとに配備する識別コードについて、前記撮像部300を用いて、紙などの識別コード支持媒体200上に印刷などによって配置された識別コード1のイメージ(以下真正識別コードイメージ
)を画像データとして取得する。
【0026】
撮像部300は前記真正識別コードイメージから得られた画像データを通信ネットワークを通じて認証クラウド100へ送信する。
【0027】
認証クラウド100は受信した画像データから画像ごとの特徴点情報を画像認識技術を用いて抽出する機能と個別の特徴点情報を比較評価する機能を有する画像解析部110と、抽出された特徴点情報を保存する特徴記憶部120によって構成される。
【0028】
前記特徴点情報とは、人間の眼やバーコードスキャナでは区別できない個々のイメージに固有な特徴の違いを表すものである。例えば同一パターンの印刷イメージが被印刷基材のランダムな形状の違いによって異なった転写イメージとなっていることを表す情報である。
【0029】
認証クラウド100の画像解析部110は受信した画像データから画像認識技術によって特徴点情報を抽出し、真正識別コードイメージについて得られた特徴点情報を特徴点ID:Gとして認証クラウド記憶部120に保存する。これによって真正識別コードイメージについての事前登録が完了する。
【0030】
次に
図2にもとづいて、キャンペーン参加者が実際にキャンペーン会場で識別コードを取得することなく、他者が撮像したものを流用することを想定した複製識別コードイメージの事前登録手順について説明する。
【0031】
前記撮像部300を用いて、該真正識別コードイメージを携帯端末400のカメラなどで撮像したものを該携帯端末のディスプレイ上に表示したイメージ401(以下複製識別コードイメージ)の画像データを取得する。取得する複製識別コードイメージは前記携帯端末400のディスプレイ上に表示したイメージ401に限定することなく、パソコンなどに具備された少なくともフルHD(1920x1080)の解像度を有する液晶ディスプレイ410上に転送して表示されたイメージ411でも構わない。
【0032】
撮像部300は前記複製識別コードイメージから得られた画像データも通信ネットワークを通じて認証クラウド100へ送信する。
【0033】
認証クラウド100の画像解析部110は受信した画像データから画像認識技術によって特徴点情報を抽出し、複製識別コードイメージについて得られた特徴点情報を特徴点ID:Cとして認証クラウド記憶部120に保存する。これによって複製識別コードイメージについての事前登録が完了する。
【0034】
以上により、真正識別コードイメージと複製識別コードイメージそれぞれに、前者には特徴点ID:G、後者には特徴点ID:Cと2つの異なる特徴点情報のセットが事前に登録され、これらを以後の識別コード1の認証に必要となる参照データとして認証クラウド100上に準備することによって、識別コード1についての事前登録が完了する。
【0035】
なお、ここでは複製識別コードイメージはスマートフォンやパソコンのディスプレイなど、液晶ディスプレイ上に表示されたものを想定したが、OLED(Organic Light Emitting Diode)などの表示デバイスや、紙に印刷出力されることも想定し、必要に応じて特徴点情報を複数(特徴点ID:C2,C3・・)備えることもできる。
【0036】
次に識別コードの判別方法について
図3および
図4を用いて説明する。
【0037】
キャンペーン参加者が行う識別コードの読み取りは、携帯端末500に具備する専用のアプリケーションを用いて行う。該アプリケーションは、識別コードのイメージ読み取りを該携帯端末500のカメラで直接撮像する以外に行うことができない仕様とする。
【0038】
図3はキャンペーン参加者が実際にキャンペーン会場に赴いて識別コードを取得することを想定したもので、識別コード支持媒体200上に配置された識別コード1のイメージを前記アプリケーションを用いて読み取った事例を示したものである。該アプリケーションは該携帯端末の画像取得手段から得られた画像データを通信ネットワークを通じて認証クラウド100に対して送信する。
【0039】
認証クラウド100の画像解析部110は、受信した画像データから画像認識技術によって特徴点情報Tを抽出し、特徴記憶部120から呼び出した事前登録されている特徴点ID:Gおよび特徴点ID:Cとそれぞれ比較する。この場合、得られた特徴点情報Tは特徴点ID:Gにより近いものとなることから、得られた画像が真正識別コードイメージであると判定し、正しく識別コード1を取得したと判断してキャンペーン会場への来場を認定する。
【0040】
図4はキャンペーン参加者が実際にキャンペーン会場に赴かず、他者が取得した画像データを流用して不正に識別コードイメージを取得したことを想定したものである。この場合、識別コード支持媒体200上に配置された識別コード1のイメージは他者の撮像デバイスで取得され、直接にキャンペーン参加者の携帯端末500では取得されていない。ここでは他者の携帯端末600を用いて識別コードイメージが取得された場合について示されている。
【0041】
得られた画像データは該携帯端末600のディスプレイに直接表示された複製識別コードイメージ601、あるいは該イメージ601の画像データを通信ネットワークを介して他のコンピュータや携帯端末などの機器に転送し、それぞれの機器の表示デバイス上に表示させた複製識別イメージ611として提供される。
【0042】
これらの表示された複製識別コードイメージ601または複製識別コードイメージ611を、前記携帯端末500に具備した前記アプリケーションを用いて読み取る。該アプリケーションは該携帯端末の画像取得手段から得られた画像データを通信ネットワークを通じて認証クラウド100に対して送信する。
【0043】
認証クラウドの画像解析部110は、受信した画像データから画像認識技術によって特徴点情報Fを抽出し、記憶部から呼び出した事前登録されている特徴点ID:Gおよび特徴点ID:Cとそれぞれ比較する。この場合、得られた特徴点情報Fは特徴点ID:Cにより近いものとなることから、得られた画像が複製識別コードイメージであると判定し、識別コード1が不正に取得されたと判断してキャンペーン会場への来場を認定しない。
【0044】
上記のように、識別コードが真にキャンペーン会場に配置された識別コード支持媒体上のものから直接撮像して得られたものであるか、あるいは画像データが液晶ディスプレイなどの中間媒体を通して間接的に得られたものであるかを判別することができ、キャンペーン会場への来場証明を正しく行うことができる。
【0045】
ここでは特徴点情報を抽出する画像認識技術を認証クラウド100の画像解析部110上に配置した例を示したが、これを事前登録方法においては事前登録撮像部300に、識別コードの判別方法においては携帯端末500上に、それぞれ配置しても構わない。
【符号の説明】
【0046】
1 識別コード
100 認証クラウド
110 認証クラウド画像解析部
120 認証クラウド特徴記憶部
200 識別コード支持媒体
300 事前登録用撮像部
400 携帯端末
401 複製識別コードイメージ
410 液晶ディスプレイ
411 複製識別コードイメージ
500 参加者の携帯端末
600 他者の携帯端末
601 複製識別コードイメージ
610 液晶ディスプレイ
611 複製識別コードイメージ