(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】チーズ様食品
(51)【国際特許分類】
A23C 19/00 20060101AFI20231129BHJP
【FI】
A23C19/00
(21)【出願番号】P 2019194050
(22)【出願日】2019-10-25
【審査請求日】2022-06-21
(31)【優先権主張番号】P 2018200947
(32)【優先日】2018-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019097909
(32)【優先日】2019-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019104689
(32)【優先日】2019-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019110575
(32)【優先日】2019-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】佐野 文彦
(72)【発明者】
【氏名】池島 和也
(72)【発明者】
【氏名】桑谷 紀子
(72)【発明者】
【氏名】玉川 明子
(72)【発明者】
【氏名】上野 浩義
【審査官】澤田 浩平
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-516078(JP,A)
【文献】国際公開第2011/122113(WO,A1)
【文献】特許第6248222(JP,B1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0295265(US,A1)
【文献】特開2016-195554(JP,A)
【文献】特表2018-518159(JP,A)
【文献】特開平09-094063(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料チーズ類の含有量が
0.1質量%以上40質量%以下である、乳タンパク質と油脂とを含むチーズ様食品であって、
アセチル化澱粉を含み、
アセチル化澱粉がアセチル化馬鈴薯澱粉であり、
澱粉含有量が10質量%以上である、前記チーズ様食品。
【請求項2】
ヒドロキシプロピル化澱粉をさらに含む、請求項1に記載のチーズ様食品。
【請求項3】
ヒドロキシプロピル化澱粉がヒドロキシプロピル化タピオカ澱粉である、請求項2に記載のチーズ様食品。
【請求項4】
原料チーズ類の含有量がチーズ様食品の全質量に対して0.1質量%未満である、
乳タンパク質と油脂とを含むチーズ様食品であって、
アセチル化澱粉を含み、
乳タンパク質濃縮物及びマイセラカゼインから選択される少なくとも1種を含み、
チーズ様食品の全質量に対して0.1質量%未満の溶融塩を含有する、
前記チーズ様食品。
【請求項5】
ヒドロキシプロピル化澱粉をさらに含む、請求項4に記載のチーズ様食品。
【請求項6】
ヒドロキシプロピル化澱粉がヒドロキシプロピル化タピオカ澱粉である、請求項5に記載のチーズ様食品。
【請求項7】
レンネットカゼインを含む、
請求項4~6のいずれか1項に記載のチーズ様食品。
【請求項8】
アセチル化澱粉が、アセチル化酸変性澱粉である、
請求項1~7のいずれか1項に記載のチーズ様食品。
【請求項9】
アセチル化酸変性澱粉が、アセチル化酸変性馬鈴薯澱粉である、
請求項8に記載のチーズ様食品。
【請求項10】
アセチル化澱粉が、熱可逆性を有する澱粉である、
請求項1~9のいずれか1項に記載のチーズ様食品。
【請求項11】
チーズ様食品の全質量に対して、澱粉含有量と蛋白質含有量との合計が15~50質量%である、
請求項1~10のいずれか1項に記載のチーズ様食品。
【請求項12】
チーズ様食品の全質量に対して蛋白質含有量が7.5質量%以下である、
請求項11に記載のチーズ様食品。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載のチーズ様食品であって、
高さ35±5mm、横70±10mm、縦70±10mmの試料としたときに、5℃においてテクスチャーアナライザーを用いて直径6mmのプランジャーを圧縮速度50mm/minで表面から高さ方向に押し込んだ場合の応力が700gf以上5000gf以下となる硬さを有する、前記チーズ様食品。
【請求項14】
上昇融点が10~50℃の範囲内である油脂を含む、
請求項1~13のいずれか1項に記載のチーズ様食品。
【請求項15】
ココナッツオイル及びパーム油から選択される少なくとも1種を含む
、請求項1~14のいずれか1項に記載のチーズ様食品。
【請求項16】
保形剤の含有量がチーズ様食品の全質量に対して0.1質量%未満である、
請求項1~15のいずれか1項に記載のチーズ様食品。
【請求項17】
加熱用である、
請求項1~16のいずれか1項に記載のチーズ様食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チーズ様食品に関する。
【背景技術】
【0002】
チーズは、乳などを凝固させた凝乳からホエイを部分的に排除し、必要に応じて熟成されたナチュラルチーズと、ナチュラルチーズを粉砕し、加熱溶融し、乳化することで得られるプロセスチーズに大別される。また、加熱用チーズとして市販される、加熱により溶融し糸曳性が生じるチーズは、ピザやグラタンに用いられる。
【0003】
近年、チーズの需要は増加しているが、健康志向の高まりやコスト削減の観点から乳脂肪源である原料チーズの使用量を減らしたり、原料チーズを全く使用せずに、チーズに類似した食品(以下、チーズ様食品ともいう)を製造することが検討されている。例えば、特許文献1及び2には、乳由来タンパク質含量が0.1質量%以下であって、酸化澱粉等のデンプンと、油脂及び水を含むチーズ様加工食品が開示されている。また、特許文献3には、酸処理澱粉と、油脂を含有し、蛋白質含量が10重量%以下のチーズ様食品が開示されている。また、特許文献4には、75~85℃における粘度が50~1000Poiseであるチーズ様食品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6190556号公報
【文献】特許第6222788号公報
【文献】国際公開第2013/147280号
【文献】特許第5229999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように様々なチーズ様食品が開発されているが、その風味や食感は、本来のチーズとは異なり、改善の余地が残されていた。本発明の課題は、本来のチーズと同様の風味や食感を有するチーズ様食品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、本発明者らは、アセチル化澱粉を所定の原料と組み合わせて用いることにより、本来のチーズにより近い食感を有するチーズ様食品が得られることを見出した。そして、この知見に基づきさらに検討を重ね本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下のようなチーズ様食品を提供するものである。
【0007】
[1]原料チーズ類の含有量が60質量%以下である、乳タンパク質と油脂とを含むチーズ様食品であって、アセチル化澱粉を含む、上記チーズ様食品。
[2]ヒドロキシプロピル化澱粉を含む[1]に記載のチーズ様食品。
[3]ヒドロキシプロピル化澱粉が、ヒドロキシプロピル化タピオカ澱粉である、[2]に記載のチーズ様食品。
[4]原料チーズ類の含有量がチーズ様食品の全質量に対して0.1質量%以上60質量%以下である、[1]~[3]のいずれかに記載のチーズ様食品。
[5]原料チーズ類の含有量がチーズ様食品の全質量に対して0.1質量%未満である、[1]~[3]のいずれかに記載のチーズ様食品。
[6]MPC(乳タンパク質濃縮物)及びマイセラカゼイン(ミセラタンパク質濃縮物)から選択される少なくとも1種を含む、[5]に記載のチーズ様食品。
[7]上記乳タンパク質が、マイセラカゼイン(ミセラタンパク質濃縮物)である、[6]に記載のチーズ様食品。
[8]チーズ様食品の全質量に対して0.1質量%未満の溶融塩を含有する、[6]又は[7]に記載のチーズ様食品。
[9]上記溶融塩がリン酸塩である、[8]に記載のチーズ様食品。
[10]レンネットカゼインを含む、[5]~[9]のいずれかに記載のチーズ様食品。
【0008】
[11]アセチル化澱粉が、アセチル化酸変性澱粉である、[1]~[10]のいずれかに記載のチーズ様食品。
[12]アセチル化酸変性澱粉が、アセチル化酸変性馬鈴薯澱粉である、[11]に記載のチーズ様食品。
[13]アセチル化澱粉が、熱可逆性を有する澱粉である、[1]~[12]のいずれかに記載のチーズ様食品。
[14]チーズ様食品の全質量に対して、澱粉含有量と蛋白質含有量との合計が15~50質量%である、[1]~[13]のいずれかに記載のチーズ様食品。
[15]チーズ様食品の全質量に対して、蛋白質含有量が7.5質量%以下である、[14]に記載のチーズ様食品。
[16][1]~[15]のいずれかに記載のチーズ様食品であって、
高さ35±5mm、横70±10mm、縦70±10mmの試料としたときに、5℃においてテクスチャーアナライザーを用いて直径6mmのプランジャーを圧縮速度50mm/minで表面から高さ方向に押し込んだ場合の応力が700gf以上5000gf以下となる硬さを有する、上記チーズ様食品。
[17]上昇融点が10~50℃の範囲内である油脂を含む、[1]~[16]のいずれかに記載のチーズ様食品。
[18]ココナッツオイル及びパーム油から選択される少なくとも1種を含む、[1]~[17]のいずれかに記載のチーズ様食品。
[19]保形剤の含有量がチーズ様食品の全質量に対して0.1質量%未満である、[1]~[18]のいずれかに記載のチーズ様食品。
[20]上記保形剤が、セルロースである、[19]に記載のチーズ様食品。
[21]シュレッドタイプである、[1]~[20]のいずれかに記載のチーズ様食品。
[22]加熱用である、[1]~[21]のいずれかに記載のチーズ様食品。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、本来のチーズにより近い食感を有するチーズ様食品が提供される。本発明のチーズ様食品は、シュレッドタイプの製品として提供するために適した保形性を有している。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】製造例αおよび比較例1Cにおける応力測定の結果を示す図である。
【
図2】製造例3B、製造例1B、比較例1Cおよび比較例1Dにおける応力測定の結果を示す図である。
【
図3】製造例3Cにおける応力測定の結果を示す図である。
【
図4】製造例5A-2、製造例6A-2における応力測定の結果を示す図である。
【
図5】製造例14Aのチーズ様食品をシュレッドした後の様子を示す写真である。
【
図6】製造例14Aのチーズ様食品を加熱溶融した後の様子を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は「~」前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0012】
(チーズ様食品)
本発明は、原料チーズ類の含有量が60質量%以下であるチーズ様食品にかかるものである。本発明のチーズ様食品は、乳タンパク質および油脂とともにアセチル化澱粉を含む。
本発明の第1態様は、アセチル化澱粉と、原料チーズ類と、油脂とを含む、チーズ様食品に関する。ここで、原料チーズ類の含有量は、チーズ様食品の全質量に対して0.1質量%以上60質量%以下である。
また、本発明の第2態様は、アセチル化澱粉と、油脂と、乳タンパク質とを含む、チーズ様食品に関するものでもある。この場合、原料チーズ類の含有量はチーズ様食品の全質量に対して0.1質量%未満である。
【0013】
本明細書において、チーズ様食品とは、チーズに似せた類似食品のことであり、イミテーションチーズ、アナログチーズ、チーズレプリカなどと称されることもある。チーズ様食品はチーズの代用品として使用することができる。
【0014】
チーズ様食品の形態は特に限定されるものではないが、例えば、シュレッドタイプチーズ様食品、ブロックチーズ様食品、クリームチーズ様食品、スプレッドチーズ様食品、モッツァレラチーズ様食品、チーズソース様食品、粉チーズ様食品、を挙げることができる。中でも、本発明のチーズ様食品は、シュレッドタイプチーズ様食品であることが好ましい。
【0015】
<アセチル化澱粉>
本発明のチーズ様食品はアセチル化澱粉を含む。アセチル化澱粉は、アセチル基を有する澱粉である。アセチル化澱粉は、一般的には原料澱粉をアセチル化処理して得られる加工澱粉であればよい。アセチル化澱粉は食品衛生法施行規則第十二条別表第1に人の健康を損なうおそれのない添加物として指定された「指定添加物リスト」に酢酸デンプンとして記載されたものである。アセチル化澱粉は低分子化されたものであることが好ましい。低分子化の方法としては、酸処理(酸変性処理)、デキストリン化処理、酵素処理等が挙げられる。このような澱粉としては、市販品を用いることができ、例えば、Lyckeby社製のLyckeby CheeseApp 30、Lyckeby CheeseApp 40、Lyckeby CheeseApp 60、Lyckeby CheeseApp 70、Lyckeby 11200等を挙げることができる。
【0016】
上記澱粉のアセチル化度は、1.5%以下であることが好ましく、1.4%以下であることがより好ましい。また、アセチル化酸変性澱粉のアセチル化度は、0.1%以上であることが好ましく、0.3%以上であることがより好ましく、0.4%以上であることがさらに好ましい。
【0017】
アセチル化度は、税関法に従った方法で測定されたものとする。例えば、以下の手順で測定することができる。
[アセチル化度測定手順]
試薬
1)0.25N塩酸溶液(ファクターは0.1Nの水酸化ナトリウム溶液(指示薬フェノールフタレイン)を用いて求めておく)
2)0.45N水酸化ナトリウム溶液
3)フェノールフタレイン
操作
1)300mLトールビーカーにサンプル5gをとり、蒸留水100mLとフェノールフタレイン数滴を加える。
2)スターラーで撹拌しながら、水酸化ナトリウムでpH8.3に合わせる。
3)pH8.3に合わせたら、0.45N水酸化ナトリウム溶液を25mL加える。
4)30分間スターラーで撹拌する。
5)0.25N塩酸溶液で滴定する(終点pH8.3)。
ブランク 上記と同様の操作を蒸留水で行なう。
計算
以下の式1にしたがって、アセチル化度を求める。
【0018】
【0019】
アセチル化澱粉はアセチル化酸変性澱粉であることが好ましい。アセチル化酸変性澱粉は、原料澱粉にアセチル化処理および酸処理を行なって得られる加工澱粉である。
例えば、酸処理は、アセチル化澱粉を酸性水溶液に浸漬することにより行うことができる。酸性水溶液は塩酸水溶液または硫酸水溶液であることが好ましい。具体的には、アセチル化酸変性澱粉は、アセチル化澱粉を酸性水溶液に糊化温度以下で浸漬した後、中和、水洗、ろ過、乾燥などの工程を経て製造することができる。
または、原料澱粉に同様の酸処理を行い、その後アセチル化処理をすることでアセチル化酸処理澱粉を得ることができる。
【0020】
本発明で用いられるアセチル化澱粉の澱粉種としては、例えば、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、トウモロコシ由来の澱粉等を使用することができる。なお、トウモロコシ由来の澱粉としては、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ等が挙げられる。中でも、アセチル化澱粉は、タピオカ澱粉又は馬鈴薯澱粉であることが好ましく、馬鈴薯澱粉であることがより好ましい。すなわち、アセチル化澱粉は、アセチル化馬鈴薯澱粉であることが好ましく、アセチル化酸変性馬鈴薯澱粉であることがより好ましい。
【0021】
なお、加工澱粉として広く用いられるものに酸化澱粉がある。これは次亜塩素酸ナトリウム等の「酸化剤」を用いて澱粉を酸化処理するもので、酸化処理によってカルボキシル基やカルボニル基が生成するものであるが、上述した、澱粉を酸性水溶液に浸漬する酸処理(酸変性)とは異なる加工方法である。
【0022】
アセチル化澱粉を固形分濃度が10質量%濃度のゲル状体とした場合、50℃におけるB型粘度は、15mPa・s以上であることが好ましく、25mPa・s以上であることがより好ましい。また、アセチル化澱粉の上記条件におけるB型粘度は、300mPa・s以下であることが好ましく、250mPa・s以下であることがより好ましく、210mPa・s以下であることがさらに好ましい。アセチル化澱粉の上記B型粘度は、アセチル化澱粉の酸処理などにより調整することができる。なお、アセチル化澱粉の上記条件におけるB型粘度は、具体的には、以下の手順で測定する。まず、アセチル化澱粉を絶乾状態で20.0gをトールビーカーに量りとり、蒸留水を加えて全量が200.0gになるようにする。次いで、トールビーカーを沸騰浴中に漬けながら撹拌棒で5分間撹拌し、糊化させ、5分おきに30秒間撹拌を行う作業を、沸騰水中に最初に漬けた時点を起点として25分間経過時まで行う。その後、沸騰浴から、トールビーカーを取り出し、蒸発した分の蒸留水を加えることで水分量を調整する。次いで、トールビーカーを水浴に入れ50℃になるまで冷却し、50℃における粘度をB型粘度計で測定する。
【0023】
アセチル化澱粉は、熱可逆性を有する澱粉であることが好ましい。ここで、熱可逆性とは、加熱することで糊化させ、その後に低温条件下でゲル化状態とした後に、再度加熱した場合に、ゲル化する前の状態である糊化の状態に戻る性質をいう。具体的には、再度加熱することで得られる糊化液の50℃におけるB型粘度が、ゲル化する前の状態の糊化液の粘度と同程度の粘度に戻る性質をいう。通常、一度ゲル化した糊化液は、再び糊化液となることはない(熱不可逆である)。
【0024】
アセチル化澱粉の含有量は、チーズ様食品の全質量に対して、1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましく、3質量%以上であることがさらに好ましい。また、アセチル化澱粉の含有量は、チーズ様食品の全質量に対して、50質量%以下であることが好ましく、45質量%以下であることがより好ましく、40質量%以下であることがさらに好ましい。アセチル化澱粉の含有量を上記範囲内とすることにより、チーズ様食品の食感を高めることができる。
【0025】
本発明のチーズ様食品はアセチル化澱粉を含むことにより、原料チーズ類の添加量が少ないか、もしくは実質的に添加されていなくとも、チーズにより近い食感を有している。チーズにより近い食感は、舌触りで判断でき、より滑らかであり、ざらつき感が少ない場合において、チーズにより近い食感であると言える。また、本発明のチーズ様食品は、優れた加熱溶融性を有しており、加熱により容易に溶融し、溶融後も滑らかな舌触りを発現し得る。したがって、本発明のチーズ様食品は加熱用の製品に適したチーズ様食品として提供することができる。さらに、本発明のチーズ様食品においては、原料チーズ類の添加量が少ないか、もしくは実質的に添加されていないため、チーズ様食品における原料コストを低減することができる。また、原料チーズ類の添加量を抑制することにより、乳脂肪の含有量を抑えることができ、動物性脂肪の摂取を控えたい消費者などのニーズに応えることもできる。
【0026】
本発明のチーズ様食品は、特に、アセチル化澱粉を含むことにより、優れたシュレッド化適性を有し、ブロック状に製造されたチーズ様食品をシュレッドして(切断するかまたは削って)、シュレッドタイプのチーズ様食品とする場合に適した性質を有する。すなわち、本発明のチーズ様食品では後述するようなシュレッド時の温度(低温時:5℃~10℃)の保形性が向上している。具体的には、チーズ様食品を短冊状にカット(切断)でき、かつ、カットされたチーズ様食品同士が付着せずに存在できる場合に、チーズ様食品は優れたシュレッド化適性を有していると判定できる。
【0027】
現在市販されている一般的な、シュレッドタイプのチーズは、ブロック状のチーズをシュレッドすることで形成されている。このため、従来、シュレッドタイプのチーズを形成する場合、ブロック状のチーズを意図した形状にカットできるよう、チーズの保形性を高めるべく、セルロースといった保形剤(増粘安定剤)等の添加剤が添加されていた。なお、本明細書における保形剤には、澱粉を除く保形剤や増粘安定剤が含まれ、チーズやチーズ様食品に用いられている代表的な保形剤としてセルロースが挙げられる。ここで、セルロースなどを含む保形剤はアレルギー反応を引き起こす場合があり、問題となる場合がある。しかし、本発明のチーズ様食品においては、アセチル化澱粉を使用することにより、セルロースといった保形剤を添加せずともチーズ様食品の保形性を高めることに成功した。これにより、本発明のチーズ様食品は優れたシュレッド化適性を発揮することができる。具体的には、本発明のチーズ様食品において、保形剤の含有量はチーズ様食品の全質量に対して0.1質量%未満であることが好ましい。保形剤の含有量が上記範囲内であれば、保形剤は実質的に含まれていないと言える。なお、保形剤としては、例えばセルロースを挙げることができ、セルロースの含有量がチーズ様食品の全質量に対して0.1質量%未満であることがより好ましい。
【0028】
本発明者は、シュレッド化適性を、チーズ様食品の硬さを指標として判断することについて検討し、一定の基準を見出した。チーズまたはチーズ様食品のカットなどは通常5℃~10℃程度で行なわれるため、この範囲内の温度である5℃での硬さを基準とする。チーズ様食品は、プランジャー(直径6mmの円柱)を使用する場合は、少なくとも高さが3mm超のサイズ、具体的には、高さ30±5mm、横70±10mm、縦70±10mmのサイズ(例えば、高さ35mm、横78mm、縦75mmのサイズ)のブロックを試料として準備する。チーズ様食品の測定部直近の温度が5℃である場合において、テクスチャーアナライザーを用いて、プランジャー(直径6mmの円柱)を圧縮速度:50mm/minで、上記試料表面から高さ方向に押し込んだ場合における、応力(典型的には、試料表面から3mm押し込んだ時点での応力)が700gf以上、好ましくは1000gf以上となる硬さを有するチーズ様食品がシュレッド時の刃への付着が少なく、良好なシュレッド化適性を有している。ここでテクスチャーアナライザー(「レオメーター」ともいう)は市販のものを使用することができ、たとえば島津製作所 EZ-test 小型試験機などは好適に使用できる。上記の応力の上限は、概ね7000gf以下であることが好ましい。7000gf以下であれば、硬すぎて食することが困難になることもなく、十分なシュレッド化適性を有する。さらに食感などを考慮し、適宜6000gf以下、5000gf以下などとしてもよい。
【0029】
上記のようにプランジャーを試料に押し込んだ場合、試料破断までには押し込み距離は20mm以上となり、応力はこのとき大きくなるが、シュレッド化適性には刃が被シュレッド物に当たり切断が開始されるまでの、圧縮変形開始直後の硬さが関与する。すなわち圧縮変形が少ない時点での硬さが重要である。この観点から上記のようにプランジャーの先端を表面から3mm押し込んだ時の硬さを指標とすることが好適である。
【0030】
チーズ様食品の硬さは澱粉含有量及び蛋白質含有量で調整することができる。
ここで、澱粉含有量とは、アセチル化澱粉、ヒドロキシプロピル化澱粉、およびその他の澱粉の含有量の合計である。澱粉含有量はチーズ様食品の総質量に対し、5質量%以上であることが好ましい。シュレッドタイプのチーズ様食品においては、澱粉含有量は10質量%以上であることも好ましく、15質量%以上であることがより好ましい。また、澱粉含有量はチーズ様食品の総質量に対し、例えば40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下などであればよい。
アセチル化澱粉を用いた場合、澱粉添加量が上記の好ましい範囲内であれば、原料チーズ類の含有量が60質量%以下であるチーズ様食品において良好なシュレッド化適性を得ることができる。
【0031】
本明細書において、蛋白質含有量は、チーズ様食品についてケルダール法により測定される蛋白質含有量を意味する。チーズ様食品の蛋白質含有量は、1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましい。また、チーズ様食品の蛋白質含有量は、例えば、15質量%以下、10質量%以下、8質量%以下または7.5質量%以下などとすることができる。蛋白質含有量を低減すると、乳化後の粘度が低く、また良好なシュレッド化適性となる硬さが得られやすい。
【0032】
蛋白質含有量の調整は、タンパク質を含む原料の添加量の調整で行なえばよい。すなわち、後述の乳タンパク質(原料チーズ類(ナチュラルチーズ)、MPC(乳タンパク質濃縮物)、マイセラカゼイン(ミセラタンパク質濃縮物)、レンネットカゼイン等)等の添加量で調整すればよい。なお、一般にナチュラルチーズの蛋白質含有量は20質量%~30質量%、MPC、カゼイン類の蛋白質含有量は80質量%~90質量%である。
【0033】
本発明において、上述した適切な硬さを得るためには、チーズ様食品の総質量に対する澱粉と蛋白質含有量の合計は、15質量%以上が好ましく、16質量%以上がより好ましく、18質量%以上が更に好ましい。また、良好な食感を得る等の目的のためには、チーズ様食品の総質量に対する澱粉と蛋白質含有量の合計は、例えば50質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、25質量%以下などであればよい。
【0034】
チーズ様食品の硬さは、使用する加工澱粉の種類・加工度等によっても硬さを調整することができる。一般に、加工澱粉の糊化後の粘度が高いほど得られるチーズ様食品が硬くなる傾向にある。糊化後の粘度は、含有する澱粉を所定濃度でスラリーを作り、α澱粉は冷水に溶解し、β澱粉は加熱糊化させた後所定の濃度に調整し、所定の液温に調整してから、B型粘度計を用いて測定することができる。
【0035】
<ヒドロキシプロピル化澱粉>
本発明のチーズ様食品はヒドロキシプロピル化澱粉を含むことが好ましい。本発明の第1態様においても、第2態様においても、チーズ様食品はヒドロキシプロピル化澱粉を含むことが好ましい。ヒドロキシプロピル化澱粉は、ヒドロキシプロピル基を有する澱粉であり、原料澱粉を酸化プロピレンでエーテル化することで得ることができる。ヒドロキシプロピル化澱粉は、ヒドロキシプロピル基が導入されていることにより未処理澱粉より親水性が増大し、老化耐性に優れている。本発明のチーズ様食品においては、アセチル化澱粉とヒドロキシプロピル化澱粉を併用することにより、優れた糸曳き性が達成される。糸曳き性が良好なチーズ様食品は、加熱溶融した際の伸びが良く、独特の粘性や弾性を発現するものである。具体的には、加熱直後のチーズ様食品を爪楊枝等ですくい上げた場合の伸びが良好である場合に、糸引き性に優れていると言える。例えば、加熱して溶融したチーズ様食品を爪楊枝ですくい上げて、3mm以上の長さの糸曳き性が見られた場合に、糸曳き性に優れていると判定できる。
【0036】
さらに、ヒドロキシプロピル化澱粉の添加により、チーズ様食品の冷蔵・冷凍耐性を高めることもできる。
また、糊化後の粘度が高いヒドロキシプロピル化澱粉を添加した場合、上述の圧縮変形開始直後の硬さを固くすることができる。このような効果が得られやすい粘度は、前述のアセチル化澱粉を固形分濃度が10質量%濃度のゲル状体とした場合の粘度測定方法と同様の方法で測定した場合、例えば5600mPa・s程度である。
【0037】
ヒドロキシプロピル化澱粉の澱粉種は特に限定されず、例えば、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、トウモロコシ由来の澱粉等を使用することができる。なお、トウモロコシ由来の澱粉としては、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ等が挙げられる。中でも、ヒドロキシプロピル化澱粉は、ヒドロキシプロピル化タピオカ澱粉であることが好ましい。なお、ヒドロキシプロピル化澱粉には、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉も含まれる。
【0038】
なお、ヒドロキシプロピル化澱粉がヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉である場合、リン酸架橋度は高い方が食感が硬くなる傾向が見られ、リン酸架橋度が低い方が食感が柔らかくなる傾向が見られる。このため、チーズ様食品の種類や求められる食感に応じて澱粉のリン酸架橋度を調整することも好ましい。
【0039】
ヒドロキシプロピル化澱粉の膨潤度は50~100であることが好ましく、70~90であることがより好ましい。ヒドロキシプロピル化澱粉の膨潤度は、以下の方法で測定した値である。まず、ヒドロキシプロピル化澱粉を乾燥重量で1.0g/100mlとなるように水中に分散し、90℃で30分間加熱後30℃に冷却することで糊化液とする。次いで、糊化液を遠心分離(3000rpm、10分間)してゲル層と上澄み層に分け、ゲル層の重量を測定してこれをWAとする。次いで、重量を測定したゲル層を乾燥し(105℃、恒量)、重量を測定してこれをWBとし、WA/WBを膨潤度とする。
【0040】
ヒドロキシプロピル化澱粉の含有量は、チーズ様食品の全質量に対して、0.1質量%以上であることが好ましく、0.2質量%以上であることがより好ましく、0.3質量%以上であることがさらに好ましい。また、ヒドロキシプロピル化澱粉の含有量は、チーズ様食品の全質量に対して、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。ヒドロキシプロピル化澱粉の含有量を上記範囲内とすることにより、チーズ様食品の糸曳き性を高めることができ、またチーズ様食品の食感をより高めることができる。
【0041】
ヒドロキシプロピル化澱粉におけるヒドロキシプロピル化の程度(以下「HP化度」という)は、JECFA(FAO/WHO合同食品添加物専門家会議)が定めるニンヒドリン試液を使用する方法で測定することができる。本発明においては、1.5~5.0のHP化度のヒドロキシプロピル化澱粉を用いることが好ましく、2.0~4.0のHP化度のヒドロキシプロピル化澱粉を用いることがより好ましい。
【0042】
なお、上記のJECFAが定めるニンヒドリン試液を使用する方法は、HP化度7.0以下の場合は以下のように行うことができる。試料約50~100mgを精密に量り、0.5mol/L硫酸25mLを加えて沸騰水浴中で加熱して溶かし、冷後、水で正確に100mLとする。必要に応じてヒドロキシプロピル基が4mg/100mL以上とならないように希釈する。別に、未加工(非ヒドロキシプロピル化)澱粉について同様に操作し、吸光度測定の対照液とする。これらの液1mLずつを正確に量り、それぞれ25mLの目盛り付試験管に入れ、冷水で冷却しながらそれぞれに硫酸8mLを滴下する。よくかく拌後、沸騰水浴中で正確に3分間加熱し、直ちに氷水中で冷却する。冷却後、それぞれにニンヒドリン試液(加工デンプン用)0.6mLを注意しながら管壁に沿って加え、直ちに振り混ぜ、25℃の水浴中に100分間放置する。それぞれに硫酸を加えて25mLとし、栓をして振とうしないように静かに数回上下を逆にして試料溶液とする。試料溶液を直ちに吸光度測定用のセルに移し、正確に5分後に、対照液に対する590nmの吸光度を測定する。別に、プロピレングリコール約25mgを精密に量り、水を加えて正確に100mLとし、標準原液とする。標準原液2、4、6、8、10mLを正確に量り、それぞれに水を加えて正確に50mLとし、標準溶液とする。それぞれの標準溶液の1mLを正確に採り、25mLの目盛り付試験管に入れ、冷水中で硫酸8mLを滴下し、それぞれに上記の試料溶液調製の際と同様にニンヒドリン試液(加工デンプン用)を加え、以下、試料溶液と同様に操作して590nmの吸光度を測定し、検量線を作成する。検量線から試料溶液中のプロピレングリコール濃度(μg/mL)を求める得られた値から、式2によりヒドロキシプロピル基含量を求め、更に乾燥物換算を行って、求めた値(%)を単位無しで表したものがHP化度である。
【0043】
【0044】
ヒドロキシプロピル化澱粉、ヒドロキシプロピル化澱粉としては、市販品を用いることができ、例えば、いかるが100、ミクロリス52、ファインテックスS-1、ひこぼし300等を用いることができる。
【0045】
<油脂>
本発明のチーズ様食品は油脂を含む。ここで、油脂は食用油脂であり、食用油脂としては、動物性油脂や植物性油脂、加工油脂が挙げられる。中でも、油脂は植物性油脂であることが好ましい。本発明においては、原料チーズ類の含有量を低減するか、もしくは、原料チーズ類を実質的に含まないものであるため、動物性油脂の含有量を低減することができる。また、油脂として植物性油脂を用いることにより、動物性油脂の含有量を極力減らすことができる。
【0046】
油脂の上昇融点は、10℃以上であることが好ましく、15℃以上であることがより好ましく、20℃以上であることがさらに好ましい。また、油脂の上昇融点は、50℃以下であることが好ましく、40℃以下であることがより好ましく、30℃以下であることがさらに好ましい。上昇融点が上限温度以下の油脂を用いることで加熱時の溶融性を有するチーズ様食品が得られ、上昇融点が下限温度以上の油脂を用いることでシュレッド化適性を有するチーズ様食品が得られる。
【0047】
油脂としては、例えば、ココナッツオイル、パーム油、バターオイル、菜種油、オリーブオイル、ゴマ油、ショートニング等を挙げることができる。中でも、油脂は、ココナッツオイル、パーム油及びバターオイルから選択される少なくとも1種であることが好ましいが、ココナッツオイル及びパーム油から選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
【0048】
油脂の含有量は、チーズ様食品の全質量に対して、3質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることがさらに好ましい。また、油脂の含有量は、チーズ様食品の全質量に対して、50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましい。油脂の含有量を上記範囲内とすることにより、チーズ様食品の食感と糸曳き性をより高めることができる。
【0049】
<乳タンパク質(原料チーズ類)>
本発明のチーズ様食品は乳タンパク質を含む。ここで、乳タンパク質とは、乳由来のタンパク質であり、乳成分が含まれていれば、乳タンパク質も含まれていることになる。このため、乳タンパク質には、原料チーズ類由来の乳タンパク質も含まれる。
【0050】
本発明の第1態様においては、チーズ様食品は原料チーズ類を含む。原料チーズ類は、ナチュラルチーズまたはプロセスチーズのいずれであってもよいが、ナチュラルチーズであることが好ましい。また、原料チーズ類の形態は特に限定されるものではなく、ブロック状、シート状、シュレッド状、パウダー状、クリーム状など、いずれの形態であってもよい。ナチュラルチーズとしては、軟質チーズ(例えば、モッツァレラ、マスカルポーネなどの非熟成タイプ、カマンベールなどの熟成タイプ)、半硬質チーズ(例えば、ゴルゴンゾーラ、ゴーダなどの熟成タイプ)、硬質チーズ(例えば、エメンタール、チェダーなどの熟成タイプ)、超硬質チーズ(例えば、パルミジャーノ・レッジャーノなどの熟成タイプ)等が挙げられる。プロセスチーズとしては、上述した1種以上のナチュラルチーズを加熱溶融して乳化したものが挙げられる。これらの原料チーズ類は、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0051】
本発明の第1態様においては、原料チーズ類の含有量は、チーズ様食品の全質量に対して、0.1質量%以上であればよく、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。また、原料チーズ類の含有量は、チーズ様食品の全質量に対して、60質量%以下であればよく、50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることがさらに好ましい。原料チーズ類の含有量を上記範囲内とすることにより、チーズ様食品の風味や食感をより高めることができる。また、原料チーズ類の含有量を上記上限値以下とすることにより、チーズ様食品における原料コストを低減することができる。さらに、原料チーズ類の含有量を上記上限値以下とすることにより、乳脂肪の含有量を抑えることができ、低カロリーのチーズ様食品を得ることもできる。
【0052】
本発明の第1態様においては、チーズ様食品は原料チーズ類に加えて、さらに原料チーズ類由来の乳タンパク質を除く乳タンパク質を含んでいてもよい。このような乳タンパク質の例としては、本発明の第2態様に用いられる乳タンパク質として下記で例示するものが挙げられる。
【0053】
本発明の第2態様においては、チーズ様食品は乳タンパク質として、原料チーズ類由来の乳タンパク質を除く乳タンパク質を含む。なお、本発明の第2態様においては、チーズ様食品は原料チーズ類を実質的に含まないものである。具体的には、原料チーズ類の含有量は、チーズ様食品の全質量に対して0.1質量%未満であり、このような場合、チーズ様食品は原料チーズ類を実質的に含まないものであると言える。
【0054】
本発明の第2態様で用いる乳タンパク質としては、例えば、脱脂粉乳やスキムミルク、ホエーパウダーなどに含まれている乳タンパク質を挙げることができる。また、本発明の第2態様では、乳タンパク質として、MPC(乳タンパク質濃縮物)、マイセラカゼイン(ミセラタンパク質濃縮物)、及びレンネットカゼインから選択される少なくとも1種が用いられることが好ましく、中でも、マイセラカゼイン(ミセラタンパク質濃縮物)が用いられることがより好ましい。MPCやマイセラカゼインは、乳由来のタンパク質濃縮物であり、タンパク質を高濃度で含有するものである。
【0055】
MPC(乳タンパク質濃縮物)やマイセラカゼインは、膜処理により乳タンパク質を濃縮することで得られるものである。なお、MPCは、カゼインとホエイの含有質量比が8:2(カゼイン:ホエイ)のものであり、マイセラカゼインは、カゼインとホエイの含有質量比が9:1(カゼイン:ホエイ)のものである。MPCやマイセラカゼインは、膜処理のみで濃縮精製されているタンパク質であるため、変性が抑制されており、水分散性に優れている。このため、MPCやマイセラカゼインをチーズ様食品に用いた際には、他の原料に速やかに溶解するため、滑らかな食感を達成することができる。
【0056】
本発明の第2態様では、乳タンパク質として、MPC(乳タンパク質濃縮物)及びマイセラカゼイン(ミセラタンパク質濃縮物)から選択される少なくとも1種を含むことにより、チーズ様食品の舌触りを良くすることができ、これにより、風味や食感を向上させることができる。また、乳タンパク質として、MPC(乳タンパク質濃縮物)及びマイセラカゼイン(ミセラタンパク質濃縮物)から選択される少なくとも1種を含むことにより、溶融塩を実質的に含まなくてもチーズ様食品を製造することができる。本明細書において、溶融塩とは、カゼイン等の乳タンパク質を溶融させるための塩であり、従来のチーズやチーズ様食品においては、カゼイン等の乳タンパク質の分散性を高めるために溶融塩が使用されていた。溶融塩としては、例えば、リン酸塩(例えば、ポリリン酸ナトリウム)、クエン酸塩(例えば、クエン酸ナトリウム)が挙げられる。しかし、近年は、溶融塩として用いられているリン酸塩の添加量は少ないことが好ましいとされており、溶融塩フリー(リン酸塩フリー)のチーズ様食品は健康志向の高い消費者にも好まれる傾向がある。本発明の第2態様では、溶融塩の含有量は、チーズ様食品の全質量に対して0.1質量%未満であることが好ましく、このような場合、チーズ様食品は溶融塩を実質的に含まないものであると言える。
【0057】
MPC(乳タンパク質濃縮物)及びマイセラカゼイン(ミセラタンパク質濃縮物)としては、市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、Pienas LT社製のMPC85、MicCC85等を挙げることができる。
【0058】
本発明の第2態様において、乳タンパク質としてMPC(乳タンパク質濃縮物)またはマイセラカゼイン(ミセラタンパク質濃縮物)を用いるとき、それらの含有量は、チーズ様食品の全質量に対して、5質量%以上であることが好ましく、7質量%以上であることがより好ましく、12質量%以上であることがさらに好ましい。また、MPC(乳タンパク質濃縮物)またはマイセラカゼイン(ミセラタンパク質濃縮物)の含有量は、チーズ様食品の全質量に対して、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、15質量%以下であることがさらに好ましい。上記範囲内とすることにより、チーズ様食品の風味や食感をより高めることができる。
【0059】
レンネットカゼインは、乳原料に含まれるカゼインをレンネット酵素により凝固した乳タンパク質である。レンネットカゼインは、チーズ様食品の乳化機能を高める働きをする。このため、レンネットカゼインを含むチーズ様食品は優れた食感を発現することに加えて、優れた糸曳き性も発揮することができる。
【0060】
本発明の第2態様において、乳タンパク質としてレンネットカゼインを用いるとき、レンネットカゼインの含有量は、チーズ様食品の全質量に対して、0.5質量%以上であることが好ましく、1.0質量%以上であることがより好ましく、2.0質量%以上であることがさらに好ましい。また、レンネットカゼインの含有量は、チーズ様食品の全質量に対して、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、15質量%以下であることがさらに好ましい。レンネットカゼインの含有量を上記範囲内とすることにより、チーズ様食品の風味や食感をより高めることに加え、チーズ様食品の糸曳き性をより高めることができる。
【0061】
<水分>
本発明のチーズ様食品は、上述した成分に加えて、水分をさらに含んでいることが好ましい。チーズ様食品が含み得る水分としては、例えば、水、豆乳、牛乳等を挙げることができる。なお、チーズ様食品中における水分は、添加される水等に由来する水分のみでなく、澱粉、原料チーズ類、乳タンパク質及び任意成分に含まれる水分にも由来する。
【0062】
<任意成分>
本発明のチーズ様食品は、上述した成分以外に他の任意成分を含んでいてもよい。任意成分としては、通常のチーズが含み得るものを挙げることができる。
【0063】
任意成分としては、例えば、食塩、砂糖、乳化剤、風味付けパウダー、調味料、酸味料、甘味料、防腐剤、酸化防止剤、pH調整剤、着色料、保存料、香料、機能性素材等を挙げることができる。中でも、本発明のチーズ様食品は、食塩、酸味料、調味料及び着色料から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0064】
風味付けパウダーとしては、例えば、果実風味パウダー、ココアパウダー、抹茶パウダー、カレーパウダーなどを挙げることができる。調味料としては、例えば、香辛料、ハーブ、コンソメ、ココナッツミルク等を挙げることができる。酸味料としては、例えば、クエン酸、酢酸、乳酸、グルコン酸等を挙げることができる。甘味料としては、例えば、糖類、糖アルコール類、ステビア、アスパルテーム等を挙げることができる。香料としては、例えば、バニラエッセンス、バター風香料等を挙げることができる。機能性素材としては、例えば、セラミド、アマニ、ポリフェノール、キシリトール、または難消化性デキストリン等を挙げることができる。
【0065】
チーズ様食品中における任意成分の含有量は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることさらに好ましい。
【0066】
(チーズ様食品の製造方法)
本発明のチーズ様食品は、慣用の方法を用いて製造することができる。例えば、本発明の第1態様におけるチーズ様食品の製造方法は、アセチル化澱粉と、ヒドロキシプロピル化澱粉と、原料チーズ類と、油脂と、必要に応じて水分と任意成分とを加熱混合する工程と、加熱混合物を冷却する工程とを含むことが好ましい。また、本発明の第2態様におけるチーズ様食品の製造方法は、アセチル化澱粉と、油脂と、乳タンパク質と、必要に応じてヒドロキシプロピル化澱粉と、水分と任意成分とを加熱混合する工程と、加熱混合物を冷却する工程とを含むことが好ましい。
【0067】
加熱混合する工程では、加熱温度は、60~100℃であることが好ましい。また、加熱混合の間、必要により脱気を行ってもよい。加熱混合物を冷却する工程では、加熱混合物は、例えば、1~10℃に冷却される。なお、冷却時間は1時間以上であることが好ましく、10時間以上であることがより好ましい。
【0068】
加熱混合する工程では、原料混合物を撹拌することが好ましい。この際の撹拌条件は、緩やかな条件であることが好ましい。
例えば、300~2000rpmの回転数で撹拌を行うことが好ましく、500~1000rpmの回転数で撹拌を行うことがより好ましい。これにより、より口当たりがよく、風味や食感に優れたチーズ様食品が得られる。
【0069】
また、加熱混合する工程(乳化工程)での撹拌力は、系内を均一に撹拌できる範囲内で、できるだけ弱いことが乳化後の粘度・加熱溶融性の観点から好ましい。
撹拌力は、撹拌レイノルズ数を指標とすることができる。撹拌レイノルズ数は撹拌羽根の半径の2乗と回転数の積に比例することが知られている。すなわち、撹拌羽根の直径をd(m)、回転数をn(m/s)とした場合、式3のようになる。
レイノルズ数(Re)∝(d2×n)÷動粘度-----(式3)
(動粘度=粘度÷密度)
したがって、チーズの原料配合が略同一であるなど、乳化時の粘度とチーズ原料の密度が略同一である場合においては、撹拌羽根の直径の2乗と回転数の積にレイノルズ数が比例するため、撹拌羽根の直径の2乗と回転数の積を回転力の指標とすることができる。
【0070】
ここで、均一撹拌を得るために撹拌力を強めなければならない場合、ナチュラルチーズの含有量を低減させ、油脂量を増加させることで乳化粘度を適切な範囲に低減させ、加熱溶融性を維持することができる。例えば、以下に示す、製造例8A-1および製造例8A-2では、表1中の他の例と比較して、上記の式2に該当する値が大きい。これらのうち、製造例8A-2においては、製造例8A-1よりもナチュラルチーズの含有量が低く、油脂量が大きいため、粘度がより低く、加熱溶融性がより良好である。
【0071】
加熱混合する工程の前には、原料混合物のpHを調整する工程を設けてもよい。原料混合物のpHは4以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましい。また、原料混合物のpHは8以下であることが好ましく、7以下であることがより好ましい。
【0072】
加熱混合物を冷却する工程の後には、チーズ様食品を所望の製品形態に合わせた形状に加工する工程を設けてもよい。例えば、チーズ様食品を所望の形状となるようにカットしたり、シュレッドしたりする工程を設けることができる。チーズ様食品のカットやシュレッドは、上記の冷却する工程の後、例えばブロック状に成形し、冷蔵庫でエージングした後に行なうことが好ましい。
【実施例】
【0073】
以下に製造例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の製造例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0074】
以下の製造例において、アセチル化澱粉としては、表に記載のとおり、馬鈴薯澱粉由来澱粉であって、上述の方法で測定したアセチル化度が1.00であり、粘度が25mPa・sである加工澱粉、または馬鈴薯澱粉由来澱粉であって、上述の方法で測定したアセチル化度が1.4であり、粘度が206mPa・sである加工澱粉、または馬鈴薯澱粉由来澱粉であって、上述の方法で測定したアセチル化度が1.4であり、粘度が132mPa・sである加工澱粉を用いた。
【0075】
以下の製造例において、オクテニルコハク酸α化澱粉は、馬鈴薯澱粉由来の、オクテニルコハク酸含量が2.3%であり、10質量%で水に溶解したときの粘度が液温50℃のとき470mPa・sであるものを使用した。オクテニルコハク酸基の含量は、食品添加物法第11条1項(H20.10.1厚生労働省告示485号)に準拠した測定方法で測定したものである。
【0076】
粘度は、以下の方法で測定した。
絶乾状態で20.0gをトールビーカーに量りとり、蒸留水を加えて全量が200.0gになるようにする。次いで、トールビーカーを沸騰浴中に漬けながら撹拌棒で5分間撹拌し、糊化させ、5分おきに30秒間撹拌を行う作業を、沸騰水中に最初に漬けた時点を起点として25分間経過時まで行う。その後、沸騰浴から、トールビーカーを取り出し、蒸発した分の蒸留水を加えることで水分量を調整する。次いで、トールビーカーを水浴に入れ50℃になるまで冷却し、50℃における粘度をB型粘度計で測定する。
【0077】
以下の製造例において、タピオカ澱粉由来のヒドロキシプロピル化澱粉は、ヒドロキシプロピル化度3.5、上記粘度測定方法で測定した粘度が5600mPa・sであるものを使用した。
【0078】
以下の製造例において、コーンスターチ由来の酸化澱粉は、上記測定方法で測定した粘度が50mPa・sのものを使用した。尚、スラリー濃度10%にて95℃に加熱し、20分保持後、50℃に冷却してからB型粘度計を用いて測定した時の粘度は50mPa・sであった。
以下の比較例において、馬鈴薯由来の酸変性澱粉は既知の方法で製造したものを使用した。尚、スラリー濃度10%にて95℃に加熱し、20分保持後、50℃に冷却してからB型粘度計を用いて60rpmで測定した時の粘度は8mPa・sであった。
【0079】
以下の製造例において、チーズ様食品の粘度は、乳化後(所定温度に到達し、所定時間撹拌後、サンプルをカップに取り出す前)、B型粘度計(ブルックフィールド社製 DV2T型B型粘度計)を用いて、チーズ様食品の品温が80℃であるとき及び60℃である時の粘度を測定した。尚、測定は、乳化後15分以内に測定するよう、速やかに行った。
【0080】
(製造例α、製造例1A:シュレッドタイプチーズ様食品)
下表に記載の全ての材料及び、チーズ原料全質量に対し0.2質量%の香料(チーズフレーバー、株式会社ミコヤ香商製)をステファン混合器に入れ、加熱せずに2分間600~700rpmで撹拌した。混合物のpHをチェックしたところ、pHは5.7~5.8であった。加温を開始し、真空引きしてから75℃になるまで600~700rpmで撹拌し、75℃に到達してから3分間600~700rpmで撹拌した。撹拌を止め、サンプルをカップに取り出し、粗熱を取ってシーリングし、冷蔵庫で2~4日間冷し固めた。冷蔵後、パール金属社製 ベジクラ にんじんしりしり・大根千切り器C-288を使用し、短冊状にカットした。得られたシュレッドタイプチーズ様食品について、後述する評価方法で評価した。
【0081】
(製造例5A-1、6A-1)
以下の方法で、シュレッドタイプチーズ様食品を得た。
1.表1に記載の全ての材料をステファン混合器に入れる。
2.600rpmで撹拌しながら55℃に保持し、10分加圧する。
3.pHをチェックし、5.4に調整する。
4.加温を開始し、真空引きしてから85℃になるまで600rpmで撹拌する。
5.85℃に到達したらそのままの温度で3分撹拌し、撹拌を止める。
6.サンプルをカップに取り出す。
7.急冷して、冷蔵庫に入れる。
8.冷蔵庫で2~4日間冷蔵し固める。
【0082】
(製造例5A-2、6A-2)
以下の方法で、シュレッドタイプチーズ様食品を得た。
1.表1に記載の全ての材料をステファン混合器に入れる。
2.600rpmで撹拌しながら55℃に保持し、10分加圧する。
3.pHをチェックし、5.4に調整する。
4.加温を開始し、真空引きしてから85℃になるまで600rpmで撹拌する。
5.85℃に到達したらそのままの温度で9分撹拌し、撹拌を止める。
6.サンプルをカップに取り出す。
7.急冷して、冷蔵庫に入れる。
8.冷蔵庫で2~4日間冷蔵し固める。
【0083】
(製造例7A-1)
以下の方法で、シュレッドタイプチーズ様食品を得た。
1.表1に記載の全ての材料をステファン混合器に入れる。
2.750rpmで2分間撹拌する。この時の温度は24℃であった。
3.pHをチェックし、5.4に調整する。
4.加温を開始し、真空引きしてから85℃になるまで750rpmで撹拌する。
5.85℃に到達したらそのままの温度で3分撹拌し、撹拌を止める。
6.サンプルをカップに取り出す。
7.急冷して、冷蔵庫に入れる。
8.冷蔵庫で2~4日間冷蔵し固める。
【0084】
(製造例7A-2)
製造例7A-1の5.において撹拌時間3分を9分に変更した以外は、製造例7A-1と同様にしてシュレッドタイプチーズ様食品を得た。
【0085】
(製造例8A-1)
製造例7A-2において撹拌数を600rpmに変更した以外は、製造例7A-2と同様にしてシュレッドタイプチーズ様食品を得た。
(製造例8A-2)
製造例8A-1において、表1に記載のように、ナチュラルリーズ含量およびパーム油含量を変更した以外は、製造例8A-1と同様にしてシュレッドタイプチーズ様食品を得た。
【0086】
(比較例1B、2B、製造例1B~4B:シュレッドタイプチーズ様食品)
表2に記載の材料を混合した以外は、製造例1Aと同様にしてシュレッドタイプチーズ様食品を得た。
【0087】
(比較例1C、比較例1D、製造例3C)
以下の方法で、シュレッドタイプチーズ様食品を得た。
1.全ての材料をステファン混合器に入れる。
2.600rpmで撹拌しながら55℃に保持し、10分加圧する。
3.pHをチェックし、5.4に調整する。
4.加温を開始し、真空引きしてから85℃になるまで600rpmで撹拌する。
5.85℃に到達したらそのままの温度で6分撹拌し、撹拌を止める。
6.サンプルをカップに取り出す。
7.急冷して、冷蔵庫に入れる。
8.冷蔵庫で2~4日間冷蔵し固める。
【0088】
(評価)
評価は訓練されたパネラー3名で行った。評価においてパネラー間でのばらつきは生じなかった。
<食感>
製造例及び比較例で得たチーズ様食品を試食し、舌触りについて以下の評価基準で評価した。
A:舌触りが滑らかである
B:ややざらつきを感じる
C:非常にざらつきを感じる
【0089】
<加熱溶融性>
10mm各のダイス状にカットしたチーズ様食品をアルミホイルの上に置き、800ワットのタイガー社製オーブントースター KTG-0800で3分間加熱し、加熱後すぐにチーズの高さを測定し、加熱溶融性の評価を以下の評価基準で行った。
A:カットしたチーズ様食品が溶融し、溶解前10mmの高さが5mm以下になる
B:カットしたチーズ様食品が少し溶融するが、溶解前10mmの高さが5mmよりも高い
C:カットしたチーズ様食品が溶融せず、元の形状を留めている
【0090】
<糸曳き性>
上記と同様の方法で加熱溶融を行ったチーズ様食品を、直径1mmの爪楊枝で引き上げ、糸曳き性を以下の評価基準で評価した。
A:3mm以上糸を引くように伸びる
B:糸を引くが糸の長さが3mm未満である
C:糸引きがなく伸びない
【0091】
<硬さ(応力)>
各製造例および比較例で製造したチーズ様食品を高さ35mm、横78mm、縦75mmのブロック状にカットした。得られたブロックについて、テクスチャーアナライザー(島津製作所 EZ-test 小型試験機)を用いて、直径6mmのプランジャーを、圧縮速度:50mm/minでサンプルの上表面中央を高さ方向から押し込み、各押し込み距離に応じた応力を測定した。なお、上記応力測定開始時には、ブロックの4隅について熱電対を用いて外周から5mm内側の部分の温度を測定し、その後速やかに押し込み距離-応力曲線を測定し、応力測定終了後に速やかに測定部分の穴の内部の温度を測定し、いずれの温度も5.0℃±0.3℃であることを確認できた場合の応力測定データを採用した。温度の測定には防水型デジタル温度計SN3200パーソナルサーモメーター Easyを使用し、直径0.95mmの針金状の熱電対(SN3200-K30センサ(いずれも株式会社熱研製)を使用した。
【0092】
なお、製造例αおよび比較例1Cにおける結果を
図1に、製造例3B、製造例1B、比較例1C、比較例1Dにおける結果を
図2、製造例3Cにおける結果を
図3、および製造例5A-2、製造例6A-2、における結果を
図4に示す。また、製造例α、製造例2A、製造例5A-1,2、製造例6A-1,2、製造例7A-1,2、および製造例8A-1,2につき、試料表面から3mm押し込んだ時点での応力を表1に示す。さらに、製造例α、製造例3C、製造例1B、製造例3B、製造例4B、比較例1C、および比較例1Dにつき、試料表面から3mm押し込んだ時点での応力を表2に示す。
【0093】
<シュレッド化適性>
短冊状にカットできるか否か、及び、カット後の性状について、以下の評価基準で評価した。
○:短冊状になり、互いに付着しない
×:短冊状にならない又は短冊状になっても互いに付着する
【0094】
<香りと風味>
製造例及び比較例で得たチーズ様食品を試食し、香りと風味について以下の評価基準で評価した。
A:チーズらしい香りが感じられ、更に、自然な乳風味とボディー感を感じる
B:チーズらしい香りを感じるが、自然な乳風味とボディー感が少ない
C:チーズの香りが全くしない
【0095】
【0096】
【0097】
(製造例14A、14B:モッツァレラタイプチーズ様食品)
ステファン混合器に水を張り、ポリリン酸ナトリウム及びレンネットカゼインを入れた。加熱せずに30秒間1500rpmで撹拌した。次に下表に記載の乳酸及びパーム油以外の全ての材料をステファン混合器に入れ、加熱せずに1500rpmで60秒間撹拌した。加熱を開始し、74℃になるまで750rpmで撹拌した。乳酸とパーム油を添加することでpHを6.1~6.2に調整した。更に750rpmで1分間撹拌した。撹拌を止め、サンプルをカップに取り出し、粗熱を取ってシーリングし、冷蔵庫で一晩冷し固めた。得られたモッツァレラタイプチーズについて、上記と同様の方法で評価した。
【0098】
【0099】
製造例で得られたチーズ様食品は、優れた食感とシュレッド化適性を有していた。一方、比較例で得られたチーズ様食品においては、滑らかな食感は得られず、また、優れたシュレッド化適性もなかった。
なお、レンネットカゼインを用いたモッツァレラタイプチーズ様食品(製造例14A)においては強い糸曳き性が得られた。一方、マイセラカゼインを用いたモッツァレラタイプチーズ様食品(製造例14B)においては糸曳き性が弱くなる傾向が見られたが、チーズ様食品の香りと風味に優れる傾向が見られた。
【0100】
図5は、製造例14Aをシュレッドした後の様子を示す写真であり、
図6は、製造例14Aを加熱溶融した後の様子を示す写真である。