(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】空気調和システム及び空気調和機
(51)【国際特許分類】
F24F 11/58 20180101AFI20231129BHJP
F24F 11/62 20180101ALI20231129BHJP
G06N 20/00 20190101ALI20231129BHJP
【FI】
F24F11/58
F24F11/62
G06N20/00
(21)【出願番号】P 2019198537
(22)【出願日】2019-10-31
【審査請求日】2022-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石▲崎▼ 順也
【審査官】町田 豊隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-066135(JP,A)
【文献】特許第6522269(JP,B2)
【文献】米国特許出願公開第2018/0283723(US,A1)
【文献】国際公開第2018/173121(WO,A1)
【文献】特開2018-084958(JP,A)
【文献】特開2019-138542(JP,A)
【文献】特開昭54-003744(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/58
G06N 20/00
F24F 11/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内機と、複数種類の学習モデルを生成するサーバ装置と、前記室内機と前記サーバ装置との間を通信で接続するアダプタとを有する空気調和システムであって、
前記アダプタは、
前記室内機を識別する識別情報、前記室内機の所定時間分の運転履歴データ及び、当該室内機で使用する対象の学習モデルの種類を識別する学習モデル種別情報を前記サーバ装置に送信するアダプタ側送信部を有し、
前記サーバ装置は、
前記アダプタから受信した前記学習モデル種別情報から前記学習モデルの種類を、及び、前記アダプタから受信した前記識別情報から送信先の室内機を識別する識別部と、
前記識別部にて識別された前記対象の学習モデルの生成に使用する前記運転履歴データを用いて、当該学習モデルを生成する学習部と、
前記学習部にて生成された前記学習モデルを前記識別部にて識別された前記送信先の室内機と接続する前記アダプタに送信するサーバ側送信部と
を有することを特徴とする空気調和システム。
【請求項2】
前記学習部は、
前記アダプタからの前記学習モデル種別情報内の前記対象の学習モデルに変更があった場合に、前記学習モデル種別情報内に変更のあった前記学習モデルを生成することを特徴とする請求項1に記載の空気調和システム。
【請求項3】
前記アダプタは、
前記サーバ装置から取得した前記学習モデルに基づき、前記室内機に関する予測を実行する予測部を有することを特徴とする請求項1に記載の空気調和システム。
【請求項4】
前記学習モデル種別情報は、
前記対象の学習モデルの種類を識別する学習識別情報毎に、当該学習モデルが特定の室内機に適用できるか否かを示す2進数の値を対応付けて管理する情報であることを特徴とする請求項1に記載の空気調和システム。
【請求項5】
運転履歴情報に基づいて外部のサーバ装置で生成された学習モデルを利用して、制御を行うことができる空気調和機であって、室内機と、室外機と、外部のサーバ装置と通信するためのアダプタと、を備え、
前記室内機は、前記室内機で使用する学習モデルの種類を識別するための学習モデル種別情報を記憶する記憶部を備えることを特徴とする空気調和機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和システム及び空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和機内の室内機を効率的に自動制御する空気調和システムが知られている(特許文献1)。この空気調和システムでは、記憶部が学習モデルを有し、学習モデルを用いて、標準仕様設定による制御に、利用者等の好みや行動パターン等による時系列的に好適な温度環境を反映させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、空気調和機は多様化したユーザーの好みに応じて、多くの機能を備えたものや必要最小限の機能を備えたものなどが提供されている。従って、学習モデルに関しても、空気調和機の種類によって、複数の種類の学習モデルを記憶したり、単一の学習モデルを記憶したりする空気調和機が提供されることが考えられる。一方、通信網を介して空気調和機と接続され、空気調和機内の室内機で収集した空調空間内の利用者の操作内容や実環境等の運転履歴データを用いて様々な種類の学習モデルを生成するクラウド側サーバ装置が設けられる場合がある。この場合、空気調和機は、クラウド側のサーバ装置から様々な学習モデルを取得し、取得した各種学習モデルを記憶している。
【0005】
サーバ装置は、学習モデルを更新した場合、更新後の学習モデルを各空気調和機に送信する。そして、各空気調和機は、学習モデルを最新の状態に更新できる。
【0006】
しかしながら、サーバ装置が学習モデルを生成あるいは更新した場合、サーバ装置に接続された各々の室内機が必要とするか否かに関わらずその学習モデルを一様に生成あるいは更新すると、サーバ装置に不要な負荷がかかるという問題があった。
【0007】
本発明ではこのような問題に鑑み、サーバ装置にかかる負荷を抑制できる空気調和システム及び空気調和機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の空気調和システムは、室内機と、複数種類の学習モデルを生成するサーバ装置と、前記室内機と前記サーバ装置との間を通信で接続するアダプタとを有する。前記アダプタは、前記室内機を識別する識別情報、前記室内機の所定時間分の運転履歴データ及び、当該室内機で使用する学習モデルの種類を識別する学習モデル種別情報を前記サーバ装置に送信するアダプタ側送信部を有する。前記サーバ装置は、識別部と、学習部と、サーバ側送信部とを有する。前記識別部は、前記アダプタから受信した前記学習モデル種別情報から前記学習モデルの種類を、及び、前記アダプタから受信した前記識別情報から送信先の室内機を識別する。前記学習部は、前記識別部にて識別された前記学習モデルの生成に使用する前記運転履歴データを用いて、当該学習モデルを生成する。前記サーバ側送信部は、前記学習部にて生成された前記学習モデルを前記識別部にて識別された前記送信先の室内機と接続される前記アダプタに送信する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の空気調和システム及び空気調和機は、サーバ装置にかかる負荷を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本実施例の空気調和システムの一例を示す説明図である。
【
図2】
図2は、検出部が測定する空調空間の温度分布エリアの一例を示す説明図である。
【
図3】
図3は、アダプタの構成の一例を示すブロック図はある。
【
図4】
図4は、サーバ装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、運転履歴データの内容の一例を示す説明図である。
【
図6】
図6は、学習モデル種別情報の一例を示す説明図である。
【
図7】
図7は、送信処理に関わるアダプタの処理動作の一例を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、学習処理に関わるサーバ装置の処理動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面に基づいて、本願の開示する空気調和システムの実施例を詳細に説明する。尚、本実施例により、開示技術が限定されるものではない。また、以下に示す各実施例は、矛盾を起こさない範囲で適宜変形しても良い。
【実施例】
【0012】
図1は、本実施例の空気調和システム1の一例を示す説明図である。
図1に示す空気調和システム1は、室内機2と、アダプタ3と、アクセスポイント4と、サーバ装置5と、中継装置6と、通信端末7と、通信網8と、リモコン9と、室外機10とを有する。
【0013】
室内機2は、例えば、室内に配置され、室内の空気を加熱又は冷却する空気調和機の一部である。尚、室内機2の利用者は、リモコン9の操作により室内機2を遠隔操作することが可能である。室内機2は、本体2Aと、当該本体2Aを制御する制御部2Bと、検出部2Cと、記憶部2Dとを有する。本体2Aは、室内ファン、膨張弁、室内熱交換器、風向板などの各装置が筐体に格納されたものである。制御部2Bは、上述した室内ファンや膨張弁や風向板の動作を制御する。制御部2Bは、膨張弁の開度を調整して、利用者が必要とする空調能力を発揮させるために必要となる量の冷媒を室内熱交換器に流し、室内ファンを駆動して室内熱交換器で冷媒と熱交換を行った室内空気を、風向板を制御して偏向させて空調空間に吹き出させる。これにより、空調空間の暖房、冷房、除湿が行われる。検出部2Cは、例えば、室内機2が据え付けられた空調空間の床面の輻射温度を測定する輻射センサ、当該空調空間の室内温度を測定する室温センサ、当該空調空間の室内湿度を測定する湿度センサ、室内機2の図示しない室内熱交換器に設けた室内熱交換器の温度である室内熱交換温度を測定する温度センサ等である。
【0014】
輻射センサとしての検出部2Cは、空調空間の床面を複数のエリアに分割した、例えば、
図2に示すように9個のエリアA1~A9の各々の床面の輻射温度を検出する。尚、
図2において、室内機2の吹出口から見て手前側のエリアをエリアA1~A3、室内機2の吹出口から見て奥側のエリアをエリアA7~A9、手前側のエリアと奥側のエリアとの間の中間のエリアをエリアA4~A6とする。また、エリアA1、A4、A7は、室内機2の吹出口から見て左(L:Left)方向のエリア、エリアA3、A6、A9は、室内機2の吹出口から見て右(R:Right)方向のエリア、エリアA2、A5、A8は、室内機2の吹出口から見て中央(C:Center)方向のエリアとする。記憶部2Dは、室内機2が使用可能な複数の学習モデルであってサーバ装置5に対して要求する学習モデルの種類を識別する学習モデル識別情報を記憶する。
【0015】
アダプタ3は、室内機2とアクセスポイント4との間を無線通信で接続する通信機能と、室内機2をAI制御する制御機能とを有する。アダプタ3は、室内機2毎に設けられるものである。なお、アダプタ3については、
図3を用いて後ほど詳細に説明する。アクセスポイント4は、例えば、WLAN(Wireless Local Area Network)等を使用してアダプタ3と通信網8とを無線通信で接続する装置である。通信網8は、例えば、インターネット等の通信網である。サーバ装置5は、アダプタ3が室内機2をAI制御する際に使用する学習モデルを生成する機能や、運転履歴データ等を記憶するデータベース等を有する。サーバ装置5は、例えば、データセンタに配置される。
【0016】
中継装置6は、通信網8と通信で接続されると共に、サーバ装置5と通信で接続される機能を有する。中継装置6は、サーバ装置5における学習モデルの生成又は学習モデルの更新に使用する運転履歴データ等を、室内機2からアダプタ3および通信網8経由で受信してサーバ装置5に送信する。また、中継装置6は、サーバ装置5で生成又は更新した学習モデルを通信網8経由でアダプタ3に送信する。中継装置6は、例えば、データセンタ等に配置される。
【0017】
中継装置6は、第1の中継部6Aと、第2の中継部6Bと、第3の中継部6Cと、中継側学習記憶部6Dとを有する。第1の中継部6Aは、アダプタ3とサーバ装置5との間でAI制御に関わる各種データを中継する。具体的には、第1の中継部6Aは、アダプタ3から通信網8経由で受信した学習モデルの生成又は更新に使用する運転履歴データ等をサーバ装置5に送信すると共に、サーバ装置5が生成又は更新した学習モデルを通信網8経由でアダプタ3に送信する。第2の中継部6Bは、利用者が外出先から後述する通信端末7を使用して設定した室内機2の運転条件(冷房/暖房といった運転モードや設定温度など)をアクセスポイント4および通信網8経由で受信し、これを室内機2に通信網8およびアクセスポイント4およびアダプタ3経由で送信する。第3の中継部6Cは、例えば、通信網8を経由して天気予報等の外部データを受信し、受信した外部データをサーバ装置5に送信する。また、第3の中継部6Cは、受信した外部データを通信網8およびアクセスポイント4経由でアダプタ3に送信する。中継側学習記憶部6Dは、第1の中継部6Aでサーバ装置5から学習モデルを受信した場合、当該学習モデルを記憶する。尚、中継側学習記憶部6Dは、サーバ装置5から次の学習モデルを受信した場合、当該受信した学習モデルを記憶中の学習モデルに上書きして記憶する。第1の中継部6Aは、中継側学習記憶部6Dに記憶中の学習モデルを通信網8経由でアダプタ3に送信する。
【0018】
図3は、アダプタ3の構成の一例を示すブロック図である。
図3に示すアダプタ3は、第1の通信部11と、第2の通信部12と、記憶部13と、CPU(Central Processing Unit)14とを有する。第1の通信部11は、室内機2内の制御部2Bと通信で接続される、例えば、UART(Universal Asynchronous Receiver Transmitter)等の通信IF(Interface)である。第2の通信部12は、アクセスポイント4と通信で接続される、例えば、WLAN等の通信IF等である。記憶部13は、例えば、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等を有し、データやプログラム等の各種情報を格納する。CPU14は、アダプタ3全体を制御する。
【0019】
記憶部13は、室内機2から取得した運転履歴データを一時記憶する運転履歴メモリ13Aと、中継装置6を介してサーバ装置5から取得した学習モデルを記憶するアダプタ側学習記憶部13Bと、外部データを記憶する外部メモリ13Cとを有する。
【0020】
CPU14は、取得部14Aと、アダプタ側送信部14Bと、受信部14Cと、設定部14Dと、予測部14Eと、制御部14Fとを有する。取得部14Aは、室内機2から所定周期、例えば、5分毎の取得タイミングで運転履歴データを取得する。取得部14Aは、5分周期で取得した運転履歴データを運転履歴メモリ13Aに記憶する。なお、運転履歴データについては、後に
図5を用いて詳細に説明する。
【0021】
アダプタ側送信部14Bは、運転履歴メモリ13Aに記憶している運転履歴データを第2の通信部12を介してアクセスポイント4に送信し、アクセスポイント4は、受信した運転履歴データを通信網8を介して中継装置6に送信し、中継装置6の第1の中継部6Aは、受信した運転履歴データをサーバ装置5に送信する。アダプタ側送信部14Bは、運転履歴データの他に、後述する室内機ID及び学習モデル種別情報を、第2の通信部12を介してアクセスポイント4に送信し、アクセスポイント4は、受信した室内機ID及び学習モデル種別情報を通信網8を介して中継装置6に送信する。中継装置6の第1の中継部6Aは、受信した室内機ID及び学習モデル種別情報をサーバ装置5に送信する。尚、室内機IDは、室内機2を識別する識別情報である。学習モデル種別情報は、後述するが、室内機2が使用可能な複数の学習モデルの内、サーバ装置5に対して要求する学習モデルの種類を識別する情報であり、室内機2の記憶部2Dに記憶されている。
【0022】
受信部14Cは、サーバ装置5から、例えば、温度ムラ予測モデル、体感予測モデルや建物負荷予測モデル等の学習モデルを受信する。具体的には、サーバ装置5は、中継装置6に学習モデルを送信し、中継装置6の第1の中継部6Aは受信した学習モデルを通信網8を介してアクセスポイント4に送信し、アクセスポイント4は受信した学習モデルをアダプタ3の受信部14Cに送信する。なお、受信部14Cは、第2の通信部12を介して受信した学習モデルをアダプタ側学習記憶部13Bに記憶する。設定部14Dは、アダプタ側学習記憶部13Bに記憶している学習モデルを予測部14Eに適用する。
【0023】
予測部14Eは、例えば、室内温度の安定した状態となれば、温度ムラ予測モデルを用いて予測した室内の温度ムラを室内機2の制御部2Bに送信し、これを受信した制御部2Bは、室内ファンや風向板を制御して温度ムラを解消する制御を実行する。尚、室内温度の安定した状態とは、室内温度(各エリアA1~A9の輻射温度ではなく、空調空間全体の温度)と室内機2の設定温度との温度差が所定閾値、例えば、±0.5度以内の状態が所定時間、例えば、5分以上継続した場合である。尚、予測部14Eが、学習モデルに基づいて室内機2の本体2Aを構成する各装置を直接的に制御しても良く、適宜変更可能である。予測部14Eは、学習モデルに基づき、室内機2に関する予測を実行しても良く、適宜変更可能である。制御部14Fは、CPU14全体を制御する。
【0024】
図4は、サーバ装置5の構成の一例を示すブロック図である。
図4に示すサーバ装置5は、複数台の室内機2に備えられるアダプタ3と中継装置6を介して通信を行うものであり、通信部31と、記憶部32と、CPU33とを有する。通信部31は、中継装置6と通信接続する通信IFである。記憶部32は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、ROMやRAMで構成され、データやプログラム等の各種情報を記憶する。CPU33は、サーバ装置5全体を制御する。
【0025】
サーバ装置5内の記憶部32は、データメモリ32Aと、サーバ側学習記憶部32Bとを有する。データメモリ32Aは、各アダプタ3から受信した各室内機2の運転履歴データを室内機2毎に記憶する。尚、アダプタ3は、運転履歴データを送信する際は、アダプタ3と接続する室内機2を識別する室内機IDも併せて送信している。そして、各室内機2から運転履歴データを受信したサーバ装置5は、受信した運転履歴データに含まれる室内機ID毎に運転履歴データをデータメモリ32Aに記憶する。サーバ側学習記憶部32Bは、サーバ装置5で生成又は更新した学習モデルを記憶する。サーバ装置5内のCPU33は、学習部33Aと、受信部33Bと、識別部33Cと、サーバ側送信部33Dとを有する。
【0026】
学習部33Aは、複数の室内機2のアダプタ3からアクセスポイント4、通信網8、中継装置6、及び、受信部33Bを介して、各々の運転履歴データを受信する。そして、学習部33Aは、各アダプタ3から受信した運転履歴データの内、データメモリ32Aに記憶中のN週間分(例えば、3週間分)の運転履歴データを使用して複数の学習モデルを生成又は更新する。学習部33Aは、学習結果に基づき、室内機2毎に学習モデルを生成又は更新する。
【0027】
そして、学習部33Aは、新たに生成した学習モデル又は既存の学習モデルを更新した学習モデルをサーバ側学習記憶部32Bに記憶する。識別部33Cは、アダプタ3から取得した後述する室内機IDを識別すると共に、アダプタ3から取得した後述する学習モデル種別情報100から提供対象の学習モデルの種類を識別する。尚、提供対象の学習モデルとは、例えば、室内機2で使用可能な学習モデルである。サーバ側送信部33Dは、中継装置6、通信網8及びアクセスポイント4を介して、学習部33Aにて室内機2毎に新たに生成した学習モデル又は既存の学習モデルを更新した学習モデルを各室内機2のアダプタ3に送信する。
【0028】
室外機10は、室内機2と冷媒配管で接続されており、室外ファンや圧縮機等が備えられている。例えば、室内機2、室外機10、アダプタ3及びリモコン9で空気調和機50が構成される。また、通信端末7は、利用者が持つスマートフォン等の端末装置である。
【0029】
図5は、運転履歴データの内容の一例を示す説明図である。運転履歴データには、例えば、運転状態、運転モード、設定温度、室内温度、室内湿度、風量、風向、人感センサ、温度分布、室内熱交温度、室外温度及び時刻等がある。
【0030】
運転状態とは、室内機2の運転がON又はOFFのどちらの状態にあったかを示す情報である。運転モードは、室内機2の運転時に冷房や暖房等のどの動作モードが選択されていたかを示す情報である。設定温度は、室内機2が使用される室内の温度の制御目標値である。室内温度は、室内機2に設けた図示しない室温センサの測定温度、例えば、吸込口における室内空気の温度である。室内湿度は、室内機2が使用される、室内機2に設けた図示しない湿度センサの室内の湿度である。風量は、室内機2から吹き出される空調空気の風量である。尚、風量は、例えば、室内機2の室内ファンの回転数で表わされる。風向は、室内機2から吹き出される空調空気の向きである。尚、風向は、室内機2の吹出口側から見た、例えば、左方向、中央方向及び右方向と、例えば、水平向き、斜め下向き及び下向きとが組み合わせられる。人感センサは、室内の人の有無や活動量のセンサによる検出結果である。温度分布は、例えば、室内の床や壁の温度の分布を室内機2の輻射センサによって検出したものである。尚、温度分布は、例えば、9個のエリア“A1”~“A9”のエリア毎の床面の輻射温度の分布であって、エリアA1~A9の各々に対応する空間(各エリアA1~A9の上空の空間)の温度分布とみなす温度分布である。室内熱交温度は、室内機2の図示しない室内熱交換器に設けた温度センサで検出した室内熱交換器の温度である。室外温度は、室外機10の温度センサで検出した外気温度である。アダプタ3は、室内機2を経由して室外機10の温度センサで検出した室外温度を収集する。尚、これらの運転履歴データは、データ取得時の年月日時分秒であるタイムスタンプとともに記録されればよい。また、図示しないが、運転履歴データには、例えば、室内機IDや、アダプタ3が通信網8およびアクセスポイント4経由で取得した天気予報データから収集した時間毎の雲量等を含めても良い。
【0031】
次に学習モデルについて説明する。本実施形態の学習モデルは、建物負荷予測モデル、体感予測モデル、温度ムラ予測モデルである。建物負荷予測モデルは、室内機2が設置された部屋の空調負荷を予測する学習モデルである。建物負荷モデルは、例えば、
図5に示す各情報に加えて、室内機2が現在発揮している空調能力を用いて、室内機2が設置された部屋の空調負荷を予測する。室内機2の制御部2Bは、建物負荷予測モデルで予測された空調負荷を取得し、取得した空調負荷を加えて予め定められた時刻に室内温度が設定温度となるように、本体2Aを構成する各装置を制御する。
【0032】
体感予測モデルは、各家庭の空気調和機の運転状況に応じて利用者の現時点から5分後の体感温度を、時系列で取得した複数の室内温度、室内湿度、室外温度を用いて予測する学習モデルである。室内機2制御部2Bは、体感予測モデルで予測された5分後の利用者の体感温度に基づいて設定温度を変更し、室内温度が変更した設定温度となるように、本体2Aを構成する各装置を制御する。
【0033】
温度ムラ予測モデルは、5分毎に実測した各エリアA1~A9の輻射温度(以降、温度分布と記載する)のうち、複数回分の温度分布の実測値を用いて、最後に温度分布を実測した時点から所定時間後、例えば、10分先の温度ムラを予測する学習モデルである。
【0034】
図6は、本実施形態の学習モデル種別情報を示す説明図である。
図6に示す学習モデル種別情報100は、16ビットのビット列で構成され、ビット毎に各学習モデルの適用可否を識別するための2進数の値が室内機2の記憶部2Dに格納されている。例えば、ビットが“1”の場合、適用可の学習モデルを示し、ビットが“0”の場合、適用不可の学習モデルを示している。尚、前述した通り、学習モデル種別情報100は室内機2の記憶部2Dに記憶されている。従って、室内機2が学習モデル種別情報を記憶しておくことで、複数の種類の学習モデルを記憶する空気調和機と、単一の学習モデルを記憶する空気調和機とで、アダプタ3を共通化することが容易になる。
図6に示す学習モデル種別情報内のビット列にある1ビット目~16ビット目(
図6における一番右側が1ビット目、一番左側が16ビット目)のビット毎に学習モデルの適用可否を割り当てる。アダプタ3及びサーバ装置5は、学習モデル種別情報内のビット位置毎に割当てられた学習モデルの種類を認識している。
図6に示す学習モデル種別情報では、例えば、1ビット目に“建物負荷予測モデル”、2ビット目に“体感予測モデル”、3ビット目に“温度ムラ予測モデル”の適用可否を示す“0”又は“1”が割当てられている。また、学習モデル種別情報は、例えば、4ビット目~16ビット目に“適用不可”を示す“0”が割り当てられており、これら適用不可のビットを他の学習モデルの適用可否に設定可能である。
【0035】
アダプタ3内のアダプタ側送信部14Bは、例えば“温度ムラ予測モデル”及び“建物負荷予測モデル”の2つの学習モデルの提供をサーバ装置5に要求する場合、例えば、機種名:X001の室内機2の学習モデル種別情報内のビット位置“1”及び“3”のビットを“1”、残りのビットを“0”にセットし、セット後の学習モデル種別情報100をサーバ装置5に送信する。尚、アダプタ側送信部14Bは、室内機2から取得した室内機ID、学習モデル種別情報100及び運転履歴データを併せてサーバ装置5に送信する。サーバ装置5は、アダプタ3から学習モデル種別情報100及び室内機IDを受信する。サーバ装置5は、学習モデル種別情報100内のビット位置“1”及び“3”のビットが“1”のため、室内機2と接続するアダプタ3が“温度ムラ予測モデル”及び“建物負荷予測モデル”の2つの学習モデルの提供を要求していることを識別できる。
【0036】
つまり、アダプタ側送信部14Bは、学習モデル種別情報100をサーバ装置5に送信する。サーバ装置5も、学習モデル種別情報100内のビット列及び室内機IDに基づき、アダプタ3側が要求する室内機2に適用可能な学習モデルを識別できる。また、サーバ装置5は、室内機2のプログラム更新に伴って適用できる学習モデルも変更されると、変更のあった学習モデルを生成する。その結果、サーバ装置5は、変更のあった学習モデルのみを生成できる。
【0037】
次に、本実施例の空気調和システム1の動作について説明する。
図7は、本実施形態におけるアダプタ3が学習モデル種別情報100の送信する際の処理動作を示すフローチャートである。尚、アダプタ3のCPU14は、現在が運転履歴データの送信タイミングの場合に送信処理を開始する。
図7においてアダプタ3内のアダプタ側送信部14Bは、現在のタイミングが運転履歴データの送信タイミングであるか否かを判定する(ステップS11)。
【0038】
アダプタ側送信部14Bは、現在のタイミングが運転履歴データの送信タイミングの場合(ステップS11:Yes)、室内機2から取得した所定時間分、例えば、5分間分の運転履歴データを取得する(ステップS12)。アダプタ側送信部14Bは、接続されている室内機2を識別する室内機IDを取得する(ステップS13)。
【0039】
アダプタ側送信部14Bは、提供対象の学習モデルの適用可を示すビットが“1”に設定された学習モデル種別情報100を室内機2から取得する(ステップS14)。尚、提供対象の学習モデルとは、室内機2に適用可能な学習モデルであり、サーバ装置5に対して提供を要求する学習モデルである。アダプタ側送信部14Bは、運転履歴データ、室内機IDを含む学習モデル種別情報100をサーバ装置5に送信し(ステップS15)、
図7に示す処理動作を終了する。アダプタ側送信部14Bは、現在のタイミングが運転履歴データの送信タイミングを検出したのでない場合(ステップS11:No)、
図7に示す処理動作を終了する。
【0040】
以上説明したように、アダプタ3は、現在のタイミングが運転履歴データの送信タイミングの場合、所定時間分、例えば、48時間分の運転履歴データ、室内機ID及び、学習モデルの適用可を示すビットを“1”に設定した学習モデル種別情報100を室内機2から取得する。アダプタ3は、所定時間分の運転履歴データ、室内機ID及び学習モデル種別情報100を中継装置6経由でサーバ装置5に送信する。その結果、アダプタ3は、自分が接続されている室内機2で適用可能な学習モデルをサーバ装置5に要求できる。
【0041】
図8は、本実施形態における、サーバ装置5が学習処理(新規に学習モデルを生成すること、および、既存の学習モデルを更新すること)を行う際の処理動作を示すフローチャートである。尚、サーバ装置5のCPU33は、アダプタ3から運転履歴データ、室内機ID及び学習モデル種別情報100を受信した場合に学習処理を開始する。
図8においてサーバ装置5内の受信部33Bは、アダプタ3から運転履歴データ、学習モデル種別情報100を受信したか否かを判定する(ステップS21)。受信部33Bは、アダプタ3から運転履歴データ、学習モデル種別情報100を受信した場合(ステップS21:Yes)、室内機IDに対応付けて運転履歴データをデータメモリ32Aに記憶する(ステップS22)。サーバ装置5内の識別部33Cは、学習モデル種別情報100から提供対象の学習モデル、すなわちビットが“1”の学習モデルを識別する(ステップS23)。
【0042】
サーバ装置5内の学習部33Aは、提供対象の学習モデルの識別結果に基づき、提供対象の学習モデルを特定し、特定した提供対象の学習モデルに使用する記憶中の運転履歴データを用いて当該提供対象の学習モデルを生成あるいは更新する(ステップS24)。学習部33Aは、生成あるいは更新した提供対象の学習モデルを室内機IDに対応付けてサーバ側学習記憶部32Bに記憶する(ステップS25)。サーバ装置5内のサーバ側送信部33Dは、生成あるいは更新した提供対象の学習モデルを記憶した後、当該提供対象の学習モデルを対象となっている室内機IDに対応する室内機2に接続されているアダプタ3に送信し(ステップS26)、
図8に示す処理動作を終了する。受信部33Bは、アダプタ3から各種情報を取得したのでない場合(ステップS21:No)、
図8に示す処理動作を終了する。
【0043】
以上説明したように、サーバ装置5は、アダプタ3から取得した学習モデル種別情報100内の1から16のビット位置を参照し、“0”と“1”のいずれかが格納されているかによってビット位置に対応する学習モデルがアダプタ3が要求する提供対象の学習モデルの種類であるか否かを識別する。更に、サーバ装置5は、アダプタ3から取得した運転履歴データを用いて、提供対象の学習モデルを生成又は更新する。
【0044】
サーバ装置5は、学習モデル種別情報100内の学習モデルに対応するビット位置を参照し、格納されている2進数の値が“1”の学習モデルのみを生成又は更新する。その結果、サーバ装置5は、余計な学習モデルを生成又は更新する際の処理を削減できる。しかも、室内機2の利用者も、サーバ装置5側で余計な学習モデルの生成又は更新に要する処理を削減することで余計な負荷を軽減でき、また、サーバ装置5の従量料金の負担を無くすことができる。
【0045】
本実施例のアダプタ3は、室内機2を識別する室内機ID、当該アダプタ3と接続する室内機2の所定時間分の運転履歴データ及び、当該室内機2で使用する対象の学習モデルの種類を識別する学習モデル種別情報をサーバ装置5に送信する。サーバ装置5は、学習モデル種別情報から室内機2に適用できる学習モデルの種類及び、室内機IDから送信先の室内機2に接続されたアダプタ3を識別する。更に、サーバ装置5は、識別された学習モデルの種類に使用する運転履歴データを用いて、当該学習モデルを生成し、生成された学習モデルを送信先の室内機2と接続するアダプタ3に送信する。その結果、サーバ装置5は、余計な学習モデルを生成又は更新する際の処理負荷を削減できる。しかも、室内機2の利用者も、サーバ装置5側で余計な学習モデルの生成又は更新に要する処理を削減することで余計な負荷を軽減でき、また、サーバ装置5の従量料金の軽減できる。
【0046】
サーバ装置5は、アダプタ3から学習モデルに変更があった場合に、変更のあった学習モデルを生成する。その結果、サーバ装置5は、変更のあった学習モデルのみを生成できる。
【0047】
アダプタ3は、サーバ装置5から取得した学習モデルに基づき、室内機2に関する予測を実行する。その結果、室内機2の利用者は、取得した学習モデルを用いて室内機2に関する最適な制御を実現できる。
【0048】
学習モデル種別情報100は、複数の学習モデルに、当該学習モデルが特定の室内機2に適用できるか否かを示す2進数の値を対応付けて管理する情報である。その結果、サーバ装置5は、アダプタ3からの学習モデル種別情報100学習モデルの種類内の学習モデル毎のビット位置を参照することで余計な学習モデルの生成又は更新に要する負担を削減できる。
【0049】
室内機2は、室内機2で使用する学習モデルの種類を識別するための学習モデル種別情報を記憶する記憶部2Dを備えたので、室内機2と接続するアダプタ3を共通化できる。
【0050】
尚、本実施例のアダプタ3は、室内機2の運転履歴データを中継装置6経由でサーバ装置5に送信する場合を例示したが、運転履歴データを、中継装置6を経由することなく、そのまま、サーバ装置5に送信しても良く、適宜変更可能である。
【0051】
また、現在の室内温度と設定温度との温度差が±0.5℃以内であるか否かを判定する処理を例示したが、温度差の閾値は±0.5℃に限定されるものではなく、適宜変更可能である。
【0052】
また、図示した各部の各構成要素は、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各部の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況等に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。
【0053】
更に、各装置で行われる各種処理機能は、CPU(Central Processing Unit)(又はMPU(Micro Processing Unit)、MCU(Micro Controller Unit)等のマイクロ・コンピュータ)上で、その全部又は任意の一部を実行するようにしても良い。また、各種処理機能は、CPU(又はMPU、MCU等のマイクロ・コンピュータ)で解析実行するプログラム上、又はワイヤードロジックによるハードウェア上で、その全部又は任意の一部を実行するようにしても良いことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0054】
1 空気調和システム
2 室内機
2D 記憶部
3 アダプタ
5 サーバ装置
6 中継装置
6D 中継側学習記憶部
10 室外機
13B アダプタ側学習記憶部
14A 取得部
14B アダプタ側送信部
14E 予測部
32B サーバ側学習記憶部
33A 学習部
33C 識別部
33D サーバ側送信部
50 空気調和機