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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】モータ制御システム
(51)【国際特許分類】
   B60L 15/20 20060101AFI20231129BHJP
   H02P 5/46 20060101ALI20231129BHJP
   B60L 9/18 20060101ALN20231129BHJP
【FI】
B60L15/20 S
H02P5/46 H
B60L9/18 P
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019202040
(22)【出願日】2019-11-07
(65)【公開番号】P2021078205
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-10-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 亮太
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 直樹
【審査官】井古田 裕昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-086536(JP,A)
【文献】特開2018-105325(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 15/20
B60W 10/08
H02P 5/46
B60L 9/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のモータ及び前記第1のモータと異なる第2のモータを動力源とする車両に搭載されるモータ制御システムであって、
車両情報に基づいて前記車両の総トルク及び前記車両の左右輪のトルク差を算出する上位制御装置と、
前記上位制御装置で算出された前記車両の総トルク及び前記車両の左右輪のトルク差に基づいて前記第1のモータのトルクと前記第2のモータのトルクとを制御する下位制御装置と
を備え、
前記上位制御装置よりも前記下位制御装置側に前記第1のモータのトルクと前記第2のモータのトルクとを予め定めたモータトルク以下に制限する出力制限手段を有し、
前記上位制御装置は、前記車両の総トルク及び前記車両の左右輪のトルク差を出力する出力部を有し、
前記出力制限手段は、前記上位制御装置と前記下位制御装置との間の通信路に設けられ、
前記上位制御装置から前記下位制御装置に向けて出力された前記車両の左右輪のトルク差が予め定められた左右輪トルク差以下となるように数値処理する、モータ制御システム。
【請求項2】
第1のモータ及び前記第1のモータと異なる第2のモータを動力源とする車両に搭載されるモータ制御システムであって、
車両情報に基づいて前記車両の総トルク及び前記車両の左右輪のトルク差を算出する上位制御装置と、
前記上位制御装置で算出された前記車両の総トルク及び前記車両の左右輪のトルク差に基づいて前記第1のモータのトルクと前記第2のモータのトルクとを制御する下位制御装置と
を備え、
前記上位制御装置よりも前記下位制御装置側に前記第1のモータのトルクと前記第2のモータのトルクとを予め定めたモータトルク以下に制限する出力制限手段を有し、
前記下位制御装置は、前記車両の総トルク及び前記車両の左右輪のトルク差に基づいて前記第1のモータのトルク及び第2のモータのトルクを算出するモータトルク演算部を有し、
前記出力制限手段は、前記下位制御装置に設けられたモータトルク制限部であって、
前記モータトルク制限部は、前記モータトルク演算部で算出された前記第1のモータのトルク及び前記第2のモータのトルクがそれぞれ予め定められたモータトルク以下となるように数値処理する、モータ制御システム。
【請求項3】
前記下位制御装置は、前記モータトルクを変更可能なモータトルク変更部を有し、
前記モータトルク変更部は、前記車両の一輪又は複数輪の制動を行う制動ユニットからの指示によって前記モータトルクを変更可能である、請求項2に記載のモータ制御システム。
【請求項4】
第1のモータ及び前記第1のモータと異なる第2のモータを動力源とする車両に搭載されるモータ制御システムであって、
車両情報に基づいて前記車両の総トルク及び前記車両の左右輪のトルク差を算出する上位制御装置と、
前記上位制御装置で算出された前記車両の総トルク及び前記車両の左右輪のトルク差に基づいて前記第1のモータのトルクと前記第2のモータのトルクとを制御する下位制御装置と
を備え、
前記上位制御装置よりも前記下位制御装置側に前記第1のモータのトルクと前記第2のモータのトルクとを予め定めたモータトルク以下に制限する出力制限手段を有し、
前記下位制御装置は、
前記車両の総トルク及び前記車両の左右輪のトルク差に基づいて前記第1のモータのトルク及び前記第2のモータのトルクを算出するモータトルク演算部と、
前記モータトルク演算部で算出された前記第1のモータのトルクと前記第2のモータのトルクとに基づいて前記第1のモータと前記第2のモータのトルク差を算出するモータトルク差演算部と
を有し、
前記出力制限手段は、前記下位制御装置に設けられたモータトルク差制限部であって、
前記モータトルク差制限部は、前記モータトルク差演算部で算出された前記第1のモータと前記第2のモータのトルク差が予め定めたモータトルク差以下となるように、前記モータトルク演算部で算出された前記第1のモータのトルクと前記第2のモータのトルクを数値処理する、モータ制御システム。
【請求項5】
第1のモータ及び前記第1のモータと異なる第2のモータを動力源とする車両に搭載されるモータ制御システムであって、
車両情報に基づいて前記車両の総トルク及び前記車両の左右輪のトルク差を算出する上位制御装置と、
前記上位制御装置で算出された前記車両の総トルク及び前記車両の左右輪のトルク差に基づいて前記第1のモータのトルクと前記第2のモータのトルクとを制御する下位制御装置と
を備え、
前記上位制御装置よりも前記下位制御装置側に前記第1のモータのトルクと前記第2のモータのトルクとを予め定めたモータトルク以下に制限する出力制限手段を有し、
前記上位制御装置は、
前記車両の総トルク及び前記車両の左右輪のトルク差に基づいて前記第1のモータのトルク及び前記第2のモータのトルクを算出するモータトルク演算部と、
前記モータトルク演算部で算出された前記第1のモータのトルク及び前記第2のモータのトルクをモータトルク出力部と
を有し、
前記出力制限手段は、前記上位制御装置と前記下位制御装置との間の通信路に設けられ、
前記上位制御装置から前記下位制御装置に向けて出力される前記第1のモータのトルク及び前記第2のモータのトルクがそれぞれ予め定められたモータトルク以下となるように数値処理する、モータ制御システム。
【請求項6】
第1のモータ及び前記第1のモータと異なる第2のモータを動力源とする車両に搭載されるモータ制御システムであって、
車両情報に基づいて前記車両の総トルク及び前記車両の左右輪のトルク差を算出する上位制御装置と、
前記上位制御装置で算出された前記車両の総トルク及び前記車両の左右輪のトルク差に基づいて前記第1のモータのトルクと前記第2のモータのトルクとを制御する下位制御装置と
を備え、
前記上位制御装置よりも前記下位制御装置側に前記第1のモータのトルクと前記第2のモータのトルクとを予め定めたモータトルク以下に制限する出力制限手段を有し、
前記上位制御装置は、前記車両の総トルク及び前記車両の左右輪のトルク差に基づいて前記第1のモータのトルク及び前記第2のモータのトルクを算出するモータトルク演算部を有し、
前記出力制限手段は、前記下位制御装置に設けられたモータトルク制限部であって、
前記モータトルク制限部は、前記上位制御装置から下位制御装置に出力された前記第1のモータのトルク及び前記第2のモータのトルクがそれぞれ予め定められたモータトルク以下となるように数値処理し、
前記下位制御装置は、前記モータトルクを変更可能なモータトルク変更部を有し、
前記モータトルク変更部は、前記車両の一輪又は複数輪の制動を行う制動ユニットからの指示によって前記モータトルクを変更可能である、モータ制御システム。
【請求項7】
第1のモータ及び前記第1のモータと異なる第2のモータを動力源とする車両に搭載されるモータ制御システムであって、
車両情報に基づいて前記車両の総トルク及び前記車両の左右輪のトルク差を算出する上位制御装置と、
前記上位制御装置で算出された前記車両の総トルク及び前記車両の左右輪のトルク差に基づいて前記第1のモータのトルクと前記第2のモータのトルクとを制御する下位制御装置と
を備え、
前記上位制御装置よりも前記下位制御装置側に前記第1のモータのトルクと前記第2のモータのトルクとを予め定めたモータトルク以下に制限する出力制限手段を有し、
前記上位制御装置は、前記車両の総トルク及び前記車両の左右輪のトルク差に基づいて前記第1のモータのトルク及び前記第2のモータのトルクを算出するモータトルク演算部を有する一方、
前記下位制御装置は、前記上位制御装置から下位制御装置に出力された前記第1のモータのトルク及び前記第2のモータのトルクに基づいて前記第1のモータと前記第2のモータのトルク差を算出するモータトルク差演算部を有し、
前記出力制限手段は、前記下位制御装置に設けられたモータトルク差制限部であって、
前記モータトルク差制限部は、前記モータトルク差演算部で算出された前記第1のモータと前記第2のモータのトルク差が予め定められたモータトルク差以下となるように、前記モータトルク演算部で算出された前記第1のモータのトルクと前記第2のモータのトルクを数値処理する、モータ制御システム。
【請求項8】
前記下位制御装置は、前記モータトルク差を変更可能なモータトルク差変更部を有し、
前記モータトルク差変更部は、前記車両の車両情報に含まれる車速に基づいて前記モータトルク差を変更可能である、請求項4又は7に記載のモータ制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、モータ制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、モータの動作を制御する複数の制御系統を備え、各制御系統は、各駆動回路と組み合わせて設けられる各演算部を含んで構成されるものであり、各制御系統の各演算部には、マスタースレーブの関係が構築されてなるモータ制御装置が開示されている。かかるモータ制御装置では、マスターの演算部は、指令値を演算し、当該指令値とともにマスターの演算部に接続されているセンサの検出結果をスレーブの演算部に対して出力し、マスターの演算部及びスレーブの演算部は、指令値に基づいて、マスターの演算部に接続されているセンサの検出結果を用いて属する制御系統の駆動回路の動作をそれぞれ制御するように構成されており、マスターの演算部に接続されているセンサの検出結果に異常が生じた場合、当該検出結果の替わりにスレーブの演算部に接続されているセンサの検出結果が駆動回路の動作の制御に用いられるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-47875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両の動力源となる第1のモータ及び第1のモータと異なる第2のモータを動力源とする車両に搭載されるモータ制御システムでは、第1のモータと第2のモータの異常出力を制限することが求められる。
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されたモータ制御装置では、マスターの演算部(上位制御装置)から出力された指令値に異常がある場合に第1のモータと第2のモータの異常出力を効果的に制限することができない。
【0006】
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態は、上位制御装置から出力された指令値に異常がある場合でも第1のモータ及び第2のモータの異常出力を効果的に制限できるモータ制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の少なくとも一実施形態に係るモータ制御システムは、第1のモータ及び前記第1のモータと異なる第2のモータを動力源とする車両に搭載されるモータ制御システムであって、車両情報に基づいて前記車両の総トルク及び前記車両の左右輪のトルク差を算出する上位制御装置と、前記上位制御装置で算出された前記車両の総トルク及び前記車両の左右輪のトルク差に基づいて前記第1のモータのトルクと前記第2のモータのトルクとを制御する下位制御装置とを備え、前記上位制御装置よりも前記下位制御装置側に前記第1のモータのトルクと前記第2のモータのトルクとを予め定めたモータトルク以下に制限する出力制限手段を有する。
【0008】
上記の構成によれば、上位制御装置よりも下位制御装置側に第1のモータのトルクと第2のモータのトルクとを制限する出力制限手段を有する。これにより、上位制御装置から出力された指令値に異常がある場合でも第1のモータ及び第2のモータの異常出力を効果的に制限できる。
【0009】
本発明の一実施形態では、前記上位制御装置は、前記車両の総トルク及び前記車両の左右輪のトルク差を出力する出力部を有し、前記出力制限手段は、前記上位制御装置と前記下位制御装置との間の通信路に設けられ、前記上位制御装置から前記下位制御装置に向けて出力された前記車両の左右輪のトルク差が予め定められた左右輪トルク差以下となるように数値処理する。
【0010】
上記の構成によれば、出力制限手段は、上位制御装置から下位制御装置に向けて出力された車両の左右輪のトルク差が予め定められた左右輪トルク差以下となるように数値処理する。これにより、出力制限手段は、上位制御装置から下位制御装置に向けて出力された車両の左右輪のトルク差に異常がある場合でも第1のモータ及び第2のモータの異常出力を効果的に制限できる。
【0011】
本発明の一実施形態では、前記下位制御装置は、前記車両の総トルク及び前記車両の左右輪のトルク差に基づいて前記第1のモータのトルク及び第2のモータのトルクを算出するモータトルク演算部を有し、前記出力制限手段は、前記下位制御装置に設けられたモータトルク制限部であって、前記モータトルク制限部は、前記モータトルク演算部で算出された前記第1のモータのトルク及び前記第2のモータのトルクがそれぞれ予め定められたモータトルク以下となるように数値処理する。
【0012】
上記の構成によれば、モータトルク制限部は、モータトルク演算部で算出された第1のモータのトルク及び第2のモータのトルクがそれぞれ予め定められたモータトルク以下となるように数値処理する。これにより、モータ制限部は、上位制御装置で算出された車両の総トルク又は車両の左右輪のトルク差に異常がある場合でも第1のモータ及び第2のモータの異常出力を効果的に制限できる。
【0013】
本発明の一実施形態では、前記下位制御装置は、前記車両の総トルク及び前記車両の左右輪のトルク差に基づいて前記第1のモータのトルク及び前記第2のモータのトルクを算出するモータトルク演算部と、前記モータトルク演算部で算出された前記第1のモータのトルクと前記第2のモータのトルクとに基づいて前記第1のモータと前記第2のモータのトルク差を算出するモータトルク差演算部とを有し、前記出力制限手段は、前記下位制御装置に設けられたモータトルク差制限部であって、前記モータトルク差制限部は、前記モータトルク差演算部で算出された前記第1のモータと前記第2のモータのトルク差が予め定めたモータトルク差以下となるように、前記モータトルク演算部で算出された前記第1のモータのトルクと前記第2のモータのトルクを数値処理する。
【0014】
上記の構成によれば、モータトルク差制限部は、モータトルク差演算部で算出された第1のモータと第2のモータのトルク差が予め定めたモータトルク差以下となるように、モータトルク演算部で算出された第1のモータのトルクと第2のモータのトルクを数値処理する。これにより、モータトルク差制限部は、上位制御装置で算出された車両の総トルク又は車両の左右輪のトルク差に異常がある場合でも第1のモータ及び第2のモータの異常出力を効果的に制限できる。
【0015】
本発明の一実施形態では、前記上位制御装置は、前記車両の総トルク及び前記車両の左右輪のトルク差に基づいて前記第1のモータのトルク及び前記第2のモータのトルクを算出するモータトルク演算部と、前記モータトルク演算部で算出された前記第1のモータのトルク及び前記第2のモータのトルクをモータトルク出力部とを有し、前記出力制限手段は、前記上位制御装置と前記下位制御装置との間の通信路に設けられ、前記上位制御装置から前記下位制御装置に向けて出力される前記第1のモータのトルク及び前記第2のモータのトルクがそれぞれ予め定められたモータトルク以下となるように数値処理する。
【0016】
上記の構成によれば、出力制限手段は、上位制御装置から下位制御装置に向けて出力された第1のモータのトルク及び第2のモータのトルクがそれぞれ予め定められたモータトルク以下となるように数値処理する。これにより、出力制限手段は、上位制御装置から下位制御装置に向けて出力される第1のモータのトルク又は第2のモータのトルクに異常がある場合でも第1のモータ及び第2のモータの異常出力を効果的に制限できる。
【0017】
本発明の一実施形態では、前記上位制御装置は、前記車両の総トルク及び前記車両の左右輪のトルク差に基づいて前記第1のモータのトルク及び前記第2のモータのトルクを算出するモータトルク演算部を有し、前記出力制限手段は、前記下位制御装置に設けられたモータトルク制限部であって、前記モータトルク制限部は、前記上位制御装置から下位制御装置に出力された前記第1のモータのトルク及び前記第2のモータのトルクがそれぞれ予め定められたモータトルク以下となるように数値処理する。
【0018】
上記の構成によれば、モータトルク制限部は、上位制御装置から下位制御装置に出力された第1のモータのトルク及び第2のモータのトルクがそれぞれ予め定められたモータトルク以下となるように数値処理する。これにより、上位制御装置から下位制御装置に出力された第1のモータのトルク又は第2のモータのトルクに異常がある場合でも第1のモータ及び第2のモータの異常出力を効果的に制限できる。
【0019】
本発明の一実施形態では、前記上位制御装置は、前記車両の総トルク及び前記車両の左右輪のトルク差に基づいて前記第1のモータのトルク及び前記第2のモータのトルクを算出するモータトルク演算部を有する一方、前記下位制御装置は、前記上位制御装置から下位制御装置に出力された前記第1のモータのトルク及び前記第2のモータのトルクに基づいて前記第1のモータと前記第2のモータのトルク差を算出するモータトルク差演算部を有し、前記出力制限手段は、前記下位制御装置に設けられたモータトルク差制限部であって、前記モータトルク差制限部は、前記モータトルク差演算部で算出された前記第1のモータと前記第2のモータのトルク差が予め定められたモータトルク差以下となるように、前記モータトルク演算部で算出された前記第1のモータのトルクと前記第2のモータのトルクを数値処理する。
【0020】
上記の構成によれば、モータトルク差制限部は、モータトルク差演算部で算出された第1のモータと第2のモータのトルク差が予め定められたモータトルク差以下となるように、モータトルク演算部で算出された第1のモータのトルクと第2のモータのトルクを数値処理する。これにより、上位制御装置から下位制御装置に出力された第1のモータのトルク又は第2のモータのトルクに異常がある場合でも第1のモータ及び第2のモータの異常出力を効果的に制限できる。
【0021】
本発明の一実施形態では、前記下位制御装置は、前記モータトルクを変更可能なモータトルク変更部を有し、前記モータトルク変更部は、前記車両の一輪又は複数輪の制動を行う制動ユニットからの指示によって前記モータトルクを変更可能である。
【0022】
上記の構成によれば、モータトルク変更部は、車両の一輪又は複数輪の制動を行う制動ユニットからの指示によってモータトルクを変更できる。
【0023】
本発明の一実施形態では、前記下位制御装置は、前記モータトルク差を変更可能なモータトルク差変更部を有し、前記モータトルク差変更部は、前記車両の車両情報に含まれる車速に基づいて前記モータトルク差を変更可能である。
【0024】
上記の構成によれば、モータトルク差変更部は、車両の車両情報に含まれる車速に基づいてモータトルク差を変更できる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、上位制御装置から出力された指令値に異常がある場合にも第1のモータと第2のモータの異常出力を効果的に制限できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の実施形態1から6に係るモータ制御システムが搭載された電動車両の構成を概略的に示す図である。
図2】本発明の実施形態1に係るモータ制御システムの構成を概略的に示すブロック図である。
図3】本発明の実施形態2に係るモータ制御システムの構成を概略的に示すブロック図である。
図4】本発明の実施形態3に係るモータ制御システムの構成を概略的に示すブロック図である。
図5】本発明の実施形態4に係るモータ制御システムの構成を概略的に示すブロック図である。
図6】本発明の実施形態5に係るモータ制御システムの構成を概略的に示すブロック図である。
図7】本発明の実施形態6に係るモータ制御システムの構成を概略的に示すブロック図である。
図8】本発明の実施形態7に係るモータ制御システムの構成を概略的に示すブロック図である。
図9】本発明の実施形態8に係るモータ制御システムの構成を概略的に示すブロック図である。
図10】本発明の実施形態8に係るモータ制御システムによって、モータトルク差を変更する一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0028】
国際標準化機構(International Organization for Standardization)が定める、自動車用機能安全規格ISO26262には自動車安全水準(ASIL(Automotive Safety Integrity Level))が定められている。ASILには、A,B,C及びDで定められる四つの段階があり、ASIL-Aは自動車のハザードの程度が最も低く、ASIL-Dは最も高いことを示している。例えばエアバッグ、アンチロック・ブレーキ、パワーステアリングなどのシステムは故障に伴うリスクが最も高いため、安全を確保するための最も厳しい要件であるASIL-Dグレードが求められる。
【0029】
本発明の実施形態に係るモータ制御システム1は、第1のモータ111及び第1のモータ111と異なる第2のモータ112を動力源とする車両に搭載され、第1のモータ111のトルクと第2のモータ112のトルクを制御するために、ASIL-Dグレードが求められる。
【0030】
本発明の実施形態に係るモータ制御システム1は、駆動用バッテリ110に充電された電気を動力源とする、電気自動車(EV)、ハイブリッド自動車(HV)又はプラグインハイブリッド自動車(PHV,PHEV)等の電動車両に搭載される。本発明の一実施形態に係るモータ制御システム1が搭載される電動車両は、後輪二輪がモータによって駆動されるリアドライブの電動車両であるが、これに限られるものではなく、例えば全輪がモータによって駆動される四輪ドライブの電動車両であってもよい。
【0031】
図1に示すように、本発明の実施形態に係るモータ制御システム1は、第1のモータ111及び第1のモータ111と異なる第2のモータ112を動力源とする車両100に搭載される。第1のモータ111及び第2のモータ112を動力源とする車両100は、例えば第1のモータ111及び第2のモータ112のほかに動力分配装置130を備えている。例えば動力分配装置130は、第1のモータ111からの動力を左輪150L及び右輪150Rに分配するとともに、第2のモータ112からの動力を左輪150L及び右輪150Rに分配するように構成されている。
【0032】
第1のモータ111及び第2のモータ112は同一の定格出力のモータである。第1のモータ111及び第2のモータ112は例えば交流モータであって、第1のモータ111のトルクと第2のモータ112のトルクを任意に調整可能である。
【0033】
図2から図7に示すように、本発明の幾つかの実施形態に係るモータ制御システム1は、第1のモータ111のトルクと第2のモータ112のトルクとを制御するように構成されている。本発明の幾つかの実施形態に係るモータ制御システム1は、電動車両制御装置(上位制御装置)2(以下「EV-ECU2」という)と、モータ制御装置(下位制御装置)3(以下「MCU3」という)とを備え、出力制限手段4を有している。
【0034】
EV-ECU2は、演算装置、命令や情報を格納するレジスタ、周辺回路等から構成されるプロセッサ(図示せず)、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等のメモリ(図示せず)のほか入出力インターフェースによって構成される。
【0035】
EV-ECU2には、ステアリング情報(例えば操舵角)、車速情報(例えば車輪速)、アクセルペダル情報(例えば踏込量)やブレーキペダル情報(例えば踏込量)等の車両情報が入力され、これらの車両情報に基づいて車両100の総トルク及び車両100の左右輪のトルク差を算出するように構成されている。
【0036】
MCU3は、EV-ECU2と同様に、演算装置、命令や情報を格納するレジスタ、周辺回路等から構成されるプロセッサ(図示せず)ROMやRAM等のメモリ(図示せず)のほか入出力インターフェースによって構成される。
【0037】
MCU3は、EV-ECU2で算出された車両100の総トルク及び車両100の左右輪のトルク差に基づいて第1のモータ111のトルクと第2のモータ112のトルクとを制御するように構成されている。
【0038】
出力制限手段4は、EVE-ECU2よりもMCU3側に設けられている。出力制限手段4は、第1のモータ111のトルクと第2のモータ112のトルクを予め定めたモータトルク以下に制限するように構成されている。
【0039】
上述した本発明の幾つかの実施形態に係るモータ制御システム1によれば、EV-ECU2よりもMCU3側に第1のモータ111のトルクと第2のモータ112のトルクとを予め定めたモータトルク以下に制限手段を有する。これにより、EV-ECU2から出力された指令値(例えば、車両100の総トルク及び車両100の左右輪のトルク差、第1のモータ111のトルク及び第2のモータ112のトルク)に異常がある場合でも第1のモータ111及び第2のモータ112の異常出力を効果的に制限できる。このようにEV-ECU2から出力された指令値に異常がある場合でも第1のモータ111及び第2のモータ112の異常出力を効果的に制限できるので、上述した本発明の幾つかの実施形態に係るモータ制御システム1は、自動車安全水準(ASIL)に定められたACIL-Dグレードの要件を満たすことができる。
【0040】
図2から図4に示すように、本発明の幾つかの実施形態に係るモータ制御システム1A,1B,1Cでは、EV-ECU2A,2B,2Cは、総トルク演算部21、トルク差演算部22及び車両トルク出力部23を有している。
【0041】
総トルク演算部21は、車両情報に基づいて車両100の総トルクを算出する部分である。総トルク演算部21で使用される車両情報は、例えば、車速情報、アクセルペダル情報やブレーキペダル情報であり、総トルク演算部21はこれらの車両情報に基づいて車両100が走行するために必要とする車両100の総トルクを算出する。
【0042】
トルク差演算部22は、車両情報に基づいて車両100の左右輪のトルク差を算出する部分である。トルク差演算部22で使用される車両情報は、例えば、ステアリング情報、車速情報、アクセルペダル情報、ブレーキペダル情報であり、トルク差演算部22はこれらの車両情報に基づいて車両100が走行するために必要とする車両100の左右輪のトルク差を算出する。
【0043】
車両トルク出力部23は、総トルク演算部21で算出された車両100の総トルクとトルク差演算部22で算出された車両100の左右輪のトルク差をMCU3に向けて出力する部分である。
【0044】
また、本発明の幾つかの実施形態に係るモータ制御システム1A,1B,1Cでは、MCU3A,3B,3Cは、モータトルク演算部31及びモータ制御部32を有している。
【0045】
モータトルク演算部31は、EV-ECU4から出力された車両100の総トルクと車両100の左右輪のトルク差とに基づいて第1のモータ111のトルク及び第2のモータ112のトルクを算出する部分である。
【0046】
モータ制御部32は、モータトルク演算部31で算出された第1のモータ111のトルク及び第2のモータ112のトルクをそれぞれ第1のモータ111と第2のモータが出力するように制御する部分である。
【0047】
[実施形態1]
図2に示すように、本発明の実施形態1に係るモータ制御システム1Aでは、出力制限手段4Aは、EV-ECU2AとMCU3Aとの間の通信路5に設けられる。通信路5は、例えば、車載ネットワーク(CAN(Controller Area Network))を構成している。
【0048】
出力制限手段4Aは、EV-ECU2AからMCU3Aに向けて出力された車両100の左右輪のトルク差が予め定められた左右輪トルク差以下となるように数値処理するように構成されている。
【0049】
上述した本発明の実施形態1に係るモータ制御システム1Aでは、出力制限手段4AがEV-ECU2Aから出力された車両100の左右輪のトルク差が予め定められた左右輪トルク差以下となるように数値処理する。よって、EV-ECU2Aから出力された車両100の左右輪のトルク差が予め定められた左右輪トルク差を超える場合には車両100の左右輪のトルク差が予め定めた左右輪トルク差以下となるように数値処理される。そして、モータトルク演算部31では、EV-ECU2Aから出力された車両100の総トルクと出力制限手段4Aで数値処理された車両100の左右輪のトルク差とに基づいて第1のモータ111のトルクと第2のモータ112のトルクを算出する。そして、モータ制御部32では、モータトルク演算部31で算出された第1のモータ111のトルクを第1のモータ111から出力し、第2のモータ112のトルクを第2のモータ112から出力するように制御する。
【0050】
上述した本発明の実施形態1に係るモータ制御システム1Aによれば、出力制限手段4Aは、EV-ECU2AからMCU3Aに向けて出力された車両100の左右輪のトルク差が予め定められた左右輪トルク差以下となるように数値処理する。これにより、出力制限手段4Aは、EV-ECU2Aの異常によって車両100の左右輪のトルク差が予め定められた左右輪トルク差を超える場合でも第1のモータ111及び第2のモータの異常出力を効果的に制限できる。このように、EV-ECU2Aの異常によって車両100の左右輪のトルク差が予め定められた左右輪トルク差を超える場合でも第1のモータ111及び第2のモータ112の異常出力を効果的に制限できるので、本発明の実施形態1に係るモータ制御システム1AはACIL-Dグレードの要件を満たすことができる。
【0051】
[実施形態2]
図3に示すように、本発明の実施形態2に係るモータ制御システム1Bでは、MCU3Bは、モータトルク制限部33を有している。
【0052】
モータトルク制限部33は、出力制限手段4Bを構成するものであり、モータトルク演算部31で算出された第1のモータ111のトルク及び第2のモータ112のトルクがそれぞれ予め定められたモータトルク以下となるように数値処理するように構成されている。
【0053】
上述した本発明の実施形態2に係るモータ制御システム1Bでは、モータトルク制限部33がモータトルク演算部31で算出された第1のモータ111のトルク及び第2のモータ112のトルクが予め定められたモータトルク以下となるように数値処理する。よって、モータトルク演算部31で算出された第1のモータ111のトルク又は第2のモータ112のトルクが予め定められたモータトルクを超える場合にはモータトルク演算部31で算出された第1のモータ111のトルク及び第2のモータ112のトルクが予め定められたモータトルク以下となるように数値処理される。そして、モータ制御部32では、モータトルク演算部31で算出された第1のモータ111のトルクを第1のモータ111から出力し、第2のモータ112のトルクを第2のモータ112から出力するように制御する。
【0054】
上述した本発明の実施形態2に係るモータ制御システム1Bによれば、モータトルク制限部33は、モータトルク演算部31で算出された第1のモータ111のトルク又は第2のモータ112のトルクが予め定められたモータトルク以下となるように数値処理する。これにより、モータトルク制限部33は、EV-ECU2Bの異常又はモータトルク演算部31の異常によってモータトルク演算部31で算出された第1のモータ111のトルク又は第2のモータ112のトルクが予め定められたモータトルクを超える場合でも第1のモータ111及び第2のモータ112の異常出力を効果的に制限できる。このように、EV-ECU2Bの異常又はモータトルク演算部31の異常によってモータトルク演算部31で算出された第1のモータ111のトルク又は第2のモータ112のトルクがモータトルクを超える場合でも第1のモータ111及び第2のモータ112の異常出力を効果的に制限できるので、本発明の実施形態2に係るモータ制御システム1BはACIL-Dのグレードの要件を満たすことができる。
【0055】
[実施形態3]
図4に示すように、本発明の実施形態3に係るモータ制御システム1Cでは、MCU3Cは、モータトルク差演算部34及びモータトルク差制限部35を有している。
【0056】
モータトルク差演算部34は、モータトルク演算部31で算出された第1のモータ111のトルクと第2のモータ112のトルクとに基づいて第1のモータ111と第2のモータ112のトルク差を算出する部分である。
【0057】
モータトルク差制限部35は、出力制限手段4Cを構成するものであり、モータトルク差演算部34で算出された第1のモータ111と第2のモータ112のトルク差が予め定められたモータトルク差以下となるように、モータトルク演算部31で算出された第1のモータ111のトルクと第2のモータ112のトルクを数値処理するように構成されている。
【0058】
上述した本発明の実施形態3に係るモータ制御システム1Cでは、モータトルク制限部33がモータトルク差演算部34で算出された第1のモータ111と第2のモータ112のトルク差が予め定められたモータトルク差以下となるように、モータトルク演算部31で算出された第1のモータ111のトルクと第2のモータ112のトルクを数値処理する。よって、モータトルク差演算部34で算出された第1のモータ111と第2のモータ112のトルク差が予め定められたモータトルク差を超える場合にはモータトルク差演算部34で算出された第1のモータ111と第2のモータ112のトルク差が予め定められたモータトルク差以下となるように、モータトルク演算部31で算出された第1のモータ111のトルクと第2のモータ112のトルクとが数値処理される。そして、モータ制御部32では、モータトルク演算部31で算出された第1のモータ111のトルクを第1のモータ111から出力し、第2のモータ112のトルクを第2のモータ112から出力するように制御する。
【0059】
上述した本発明の実施形態3に係るモータ制御システム1Cによれば、モータトルク制限部33がモータトルク差演算部34で算出された第1のモータ111と第2のモータ112のトルク差が予め定められたモータトルク差以下となるように、モータトルク演算部31で算出された第1のモータ111のトルクと第2のモータ112のトルクを数値処理する。これにより、モータトルク差制限部35は、EV-ECU2Bの異常、モータトルク演算部31の異常又はモータトルク差演算部34の異常によってモータトルク差演算部34で算出された第1のモータ111と第2のモータ112のトルク差が予め定められたモータトルク差を超える場合でも第1のモータ111及び第2のモータ112の異常出力を効果的に制限できる。このように、EV-ECU2Bの異常、モータトルク演算部31の異常又はモータトルク差演算部34の異常によってモータトルク差演算部34で算出された第1のモータ111と第2のモータ112のトルク差がモータトルク差を超える場合でも第1のモータ111及び第2のモータ112の異常出力を効果的に制限できるので、本発明の実施形態3に係るモータ制御システム1CはACIL-Dのグレードの要件を満たすことができる。
【0060】
図5から図7に示すように、本発明の幾つかの実施形態に係るモータ制御システム1D,1E,1Fでは、EV-ECU2D,2E,2Fは、総トルク演算部21、トルク差演算部22、モータトルク演算部24及びモータトルク出力部25を有している。
【0061】
総トルク演算部21は、車両情報に基づいて車両100の総トルクを算出する部分である。総トルク演算部21で使用される車両情報は、例えば、車速情報、アクセルペダル情報やブレーキペダル情報であり、総トルク演算部21はこれらの車両情報に基づいて車両100が走行するために必要とする車両100の総トルクを算出する。
【0062】
トルク差演算部22は、車両情報に基づいて車両100の左右輪のトルク差を算出する部分である。トルク差演算部22で使用される車両情報は、例えば、ステアリング情報、車速情報、アクセルペダル情報、ブレーキペダル情報であり、トルク差演算部22はこれらの車両情報に基づいて車両100が走行するために必要とする車両100の左右輪のトルク差を算出する。
【0063】
モータトルク演算部24は、総トルク演算部21で算出された車両100の総トルクとトルク差演算部22で算出された車両100の左右輪のトルク差とに基づいて第1のモータ111のトルク及び第2のモータ112のトルクを算出する部分である。
【0064】
モータトルク出力部25は、モータトルク演算部24で算出された第1のモータ111のトルク及び第2のモータ112のトルクを出力する部分である。
【0065】
図5から図7に示すように、本発明の幾つかの実施形態に係るモータ制御システム1D,1E,1Fでは、MCU3D,3E,3Fは、モータ制御部32を有している。
【0066】
モータ制御部32は、モータトルク演算部24で算出された第1のモータ111のトルク及び第2のモータ112のトルクをそれぞれ第1のモータ111と第2のモータ112が出力するように制御する部分である。
【0067】
[実施形態4]
図5に示すように、本発明の実施形態4に係るモータ制御システム1Dでは、出力制限手段4Dは、EV-ECU2DとMCUA3Dとの間の通信路5に設けられる。通信路5は、例えば、車載ネットワークを構成している。
【0068】
出力制限手段4Dは、EV-ECU2DからMCU3Dに向けて出力された第1のモータ111のトルク及び第2のモータ112のトルクがそれぞれ予め定められたモータトルク以下となるように数値処理するように構成されている。
【0069】
上述した本発明の実施形態4に係るモータ制御システム1Dでは、出力制限手段4DがEV-ECU2DからMCU3Dに向けて出力された第1のモータ111のトルク及び第2のモータ112のトルクがそれぞれ予め定められたモータトルク以下となるように数値処理する。よって、EV―ECU2Dから出力された第1のモータ111のトルク又は第2のモータ112のトルクがそれぞれ予め定めたモータトルクを超える場合には第1のモータ111のトルク及び第2のモータ112のトルクが予め定めたモータトルク以下となるように数値処理される。そして、MCU3Dでは、モータ制御部32が数値処理された第1のモータ111のトルクと第2のモータ112のトルクに基づいて第1のモータ111と第2のモータ112のトルクを制御する。
【0070】
上述した本発明の実施形態4に係るモータ制御システム1Dによれば、出力制限手段4DがEV-ECU2DからMCU3Dに向けて出力された第1のモータ111のトルク及び第2のモータ112のトルクがそれぞれ予め定められたモータトルク以下となるように数値処理する。これにより、出力制限手段4Dは、EV-ECU2Dの異常によって第1のモータ111のトルク又は第2のモータ112のトルクが予め定めたモータトルクを超える場合でも第1のモータ111及び第2のモータ112の異常出力を効果的に制限できる。このように、EV-ECU2Dの異常によって第1のモータ111のトルク又は第2のモータ112のトルクが予め定めたモータトルクを超える場合でも第1のモータ111及び第2のモータ112の異常出力を効果的に制限できるので、本発明の実施形態4に係るモータ制御システム1DはACIL-Dのグレードの要件を満たすことができる。
【0071】
[実施形態5]
図6に示すように、本発明の実施形態5に係るモータ制御システム1Eでは、出力制限手段4Eは、MCU3Eに設けられたモータトルク制限部33である。モータトルク制限部33は、EV-ECU2EからMCU3Eに出力された第1のモータ111のトルク及び第2のモータ112のトルクがそれぞれ予め定められたモータトルク以下となるように数値処理するように構成されている。
【0072】
上述した本発明の実施形態5に係るモータ制御システム1Eでは、モータトルク制限部33がEV-ECU2EからMCU3Eに出力された第1のモータ111のトルク及び第2のモータ112のトルクがそれぞれ予め定められたモータトルク以下となるように数値処理する。よって、EV―ECU2Eから出力された第1のモータ111のトルク又は第2のモータ112のトルクがそれぞれ予め定められたモータトルクを超える場合にはモータトルク制限部33によって第1のモータ111のトルク及び第2のモータ112のトルクが予め定めたモータトルク以下となるように数値処理される。そして、MCU3Eでは、モータ制御部32が数値処理された第1のモータ111のトルクと第2のモータ112のトルクに基づいて第1のモータ111と第2のモータ112のトルクを制御する。
【0073】
上述した本発明の実施形態5に係るモータ制御システム1Eによれば、モータトルク制限部33がEV-ECU2EからMCU3Dに出力された第1のモータ111のトルク及び第2のモータ112のトルクがそれぞれ予め定めたモータトルク以下となるように数値処理する。これにより、モータトルク制限部33は、EV-ECU2Eの異常によって第1のモータ111のトルク又は第2のモータ112のトルクが予め定めたモータトルクを超える場合でも第1のモータ111及び第2のモータ112の異常出力を効果的に制限できる。このように、EV-ECU2Eの異常によって第1のモータ111のトルク又は第2のモータ112のトルクが予め定めたモータトルクを超える場合でも第1のモータ111及び第2のモータの異常出力を効果的に制限できるので、本発明の実施形態5に係るモータ制御システム1EはACIL-Dのグレードの要件を満たすことができる。
【0074】
[実施形態6]
図7に示すように、本発明の実施形態6に係るモータ制御システム1Fでは、MCU3Fは、更に、モータトルク差演算部34を有する。
【0075】
モータトルク差演算部34は、EV-ECU2FからMCU3Fに出力された第1のモータ111のトルク及び第2のモータ112のトルクに基づいて第1のモータ111と第2のモータ112のトルク差を算出する部分である。
【0076】
本発明の実施形態6に係るモータ制御システム1Fでは、出力制限手段4Fは、MCU3Fに設けられたモータトルク差制限部35である。モータトルク差制限部35は、EV-ECU2FからMCU3Eに出力された第1のモータ111と第2のモータ112のトルク差が予め定められたモータトルク差以下となるように、EV-ECU2FからMCU3Eに出力された第1のモータ111のトルクと第2のモータ112のトルクを数値処理するように構成されている。
【0077】
上述した本発明の実施形態6に係るモータ制御システム1Fでは、モータトルク差演算部34がEV-ECU2FからMCU3Fに出力された第1のモータ111のトルク及び第2のモータ112のトルクに基づいて第1のモータ111と第2のモータ112のトルク差を算出する。次に、モータトルク差制限部35がモータトルク差演算部34が算出した第1のモータ111と第2のモータ112のトルク差が予め定められたモータトルク差以下となるように、EV-ECU2FからMCU3Fに出力された第1のモータ111のトルクと第2のモータ112のトルクを数値処理する。
【0078】
よって、EV-ECU2FからMCU3Fに出力された第1のモータ111のトルク及び第2のモータ112のトルクに基づいてモータトルク差演算部34が算出した第1のモータ111と第2のモータ112のトルク差が予め定められたモータトルク差以上の場合には、モータトルク差制限部35によってモータトルク差演算部34が算出した第1のモータ111と第2のモータ112のトルク差が予め定められたモータトルク差以下となるように、EV-ECU2FからMCU3Fに出力された第1のモータ111のトルクと第2のモータ112のトルクとが数値処理される。そして、MCU3Fでは、モータ制御部32が数値処理された第1のモータ111のトルクと第2のモータ112のトルクに基づいて第1のモータ111と第2のモータ112のトルクを制御する。
【0079】
上述した本発明の実施形態6に係るモータ制御システム1Fによれば、モータトルク差制限部35は、モータトルク差演算部34で算出された第1のモータ111と第2のモータ112のトルク左が予め定められたモータトルク差以下となるように、EV-ECU7FからMCU3Fに出力された第1のモータ111のトルクと第2のモータ112のトルクを数値処理する。これにより、EV-ECU2FからMCU3Fに出力された第1のモータ111のトルク又は第2のモータ112のトルクに異常がある場合でも第2のモータ及び第2のモータの異常出力を効果的に制限できる。
【0080】
[実施形態7]
図8に示すように、本発明の実施形態7に係るモータ制御システム1Gは、上述した本発明の実施形態2又は実施形態5に係るモータ制御システム1B,1Dにおいて、MCU3B,3Dがモータトルク変更部36を有する。モータトルク変更部36は、モータトルク制限部33で管理されるモータトルク(予め定められたモータトルク)を変更可能であって、車両100の一輪又は複数輪の制動を行う制動ユニット6からの指示によってモータトルクを変更可能である。
【0081】
例えば、一輪又は複数輪の制動を行う制動ユニット(ASC)6が搭載され、車両100の姿勢の乱れを抑制するモーメントを発生させて車両100の安定するアクティブスタイビリティコントロール機能を有する車両では、制動ユニット6に含まれる制動制御装置(ASC-ECU)61が制動ユニット6に含まれるハイドロリックユニット62を制御するので、制動ユニット6からの指示によってモータトルクを変更する。
【0082】
上述した本発明の実施形態7に係るモータ制御システム1Gによれば、モータトルク変更部36は、車両100の一輪又は複数輪の制動を行う制動ユニット6からの指示によってモータトルクを変更できる。
【0083】
[実施形態8]
図9に示すように、本発明の実施形態8に係るモータ制御システム1Hは、上述した本発明の実施形態3又は6に係るモータ制御システム1C,1Fにおいて、MCU3C,3Fがモータトルク差変更部37を有する。モータトルク差変更部37は、モータトルク差制限部35で管理されるモータトルク差(予め定められたモータトルク差)を変更可能であって、車両100の車両情報に含まれる車速に基づいてモータトルク差制限部35で管理されるモータトルク差を変更可能である。
【0084】
例えば、図10に示すように、例えば車速がVkm/hの場合にはリミテッド・スリップデフ(LSD)機能を発揮すべくモータトルク差をTNmとし、車速がVkm/h(V<V)の場合にモータトルク差をTNm(T>T)とすることができる。
【0085】
上述した本発明の実施形態8に係るモータ制御システム1Hによれば、モータトルク差変更部37は、車両100の車両情報に含まれる車速に基づいてモータトルク差制限部35で管理されるモータトルク差を変更できる。
【0086】
本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【符号の説明】
【0087】
1,1A~1G モータ制御システム
2,2A~2F 電動車両制御装置(EV-ECU)(上位制御装置)
21 総トルク演算部
22 トルク差演算部
23 車両トルク出力部
24 モータトルク演算部
25 モータトルク出力部
3,3A~3F モータ制御装置(MCU)
31 モータトルク演算部
32 モータ制御部
33 モータトルク制限部
34 モータトルク差演算部
35 モータトルク差制限部
36 モータトルク変更部
37 モータトルク差変更部
4,4A~4G 出力制限手段
5 通信路(CAN)
6 制動ユニット(ASCユニット)
61 制動制御装置(ASC-ECU)
62 ハイドロリックユニット
100 電動車両
110 駆動用バッテリ
111 第1のモータ
112 第2のモータ
130 動力分配装置
150L 左輪
150R 右輪
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10