(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/16 20060101AFI20231129BHJP
G03G 15/08 20060101ALI20231129BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
G03G15/16 103
G03G15/08 321A
G03G15/00 303
(21)【出願番号】P 2019203825
(22)【出願日】2019-11-11
【審査請求日】2022-10-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒田 貴洋
【審査官】金田 理香
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-004109(JP,A)
【文献】特開2004-163457(JP,A)
【文献】特開2013-235292(JP,A)
【文献】特開2009-151120(JP,A)
【文献】特開平10-301407(JP,A)
【文献】特開2015-060122(JP,A)
【文献】特開平08-076615(JP,A)
【文献】特開2003-255682(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 13/02
13/08
13/095
13/14-13/16
13/34
15/00
15/02
15/08
15/095
15/14-15/16
15/36
21/00-21/02
21/14
21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子写真方式の画像形成装置であって、
トナーを収容した現像器によって第1極性に帯電させたトナーからなるトナー像を担持する像担持体と、
前記像担持体に接触するように設けられた転写部材と、
前記転写部材に印加されるバイアス電圧を制御するバイアス電圧制御部とを備え、
前記バイアス電圧制御部は、
前記トナー像を記録媒体に転写するために、前記像担持体と前記転写部材との間に前記記録媒体が通過している通紙時に、前記第1極性と反対極性である第2極性の電圧に前記バイアス電圧を設定し、
前記現像器内のトナーの帯電状態に関する情報に応じて、複数の記録媒体を連続的に通紙する際の紙間時に、前記第1極性の電圧又は零電圧のどちらかに前記バイアス電圧を設定する
ように構成され、
前記トナーの帯電状態に関する情報は、前記現像器内の前記第1極性のトナーの個数に対する前記第2極性のトナーの個数の比率に関する情報であり、
前記トナーの帯電状態に関する情報は、前記現像器が交換されてからの通算の通紙回数である第1通算通紙回数の情報を含み、前記現像器内の前記第2極性のトナーの個数の比率は、前記第1通算通紙回数が増加するにつれて減少し、
前記トナーの帯電状態に関する情報は、前記現像器の周囲の絶対湿度の情報をさらに含み、前記現像器内の前記第2極性のトナーの個数の比率は、前記現像器の周囲の絶対湿度が上昇するにつれて減少し、
前記バイアス電圧制御部は、
前記第1通算通紙回数が第1の閾値回数未満である場合に、前記紙間時における前記バイアス電圧を零電圧に設定し、
前記第1通算通紙回数が前記第1の閾値回数以上である場合に、前記紙間時における前記バイアス電圧を前記第1極性の電圧に設定し、
前記現像器の周囲の絶対湿度が第1の閾値湿度以上である場合には、前記現像器の周囲の絶対湿度が前記第1の閾値湿度未満である場合に比べて、前記第1の閾値回数をより小さな値に変更するように構成される、画像形成装置。
【請求項2】
前記バイアス電圧制御部は、前記現像器の周囲の絶対湿度が前記第1の閾値湿度よりも大きい第2の閾値湿度以上である場合には、前記第1通算通紙回数によらず前記紙間時における前記バイアス電圧を前記第1極性の電圧に設定する、請求項
1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
電子写真方式の画像形成装置であって、
トナーを収容した現像器によって第1極性に帯電させたトナーからなるトナー像を担持する像担持体と、
前記像担持体に接触するように設けられた転写部材と、
前記転写部材に印加されるバイアス電圧を制御するバイアス電圧制御部とを備え、
前記バイアス電圧制御部は、
前記トナー像を記録媒体に転写するために、前記像担持体と前記転写部材との間に前記記録媒体が通過している通紙時に、前記第1極性と反対極性である第2極性の電圧に前記バイアス電圧を設定し、
前記現像器内のトナーの帯電状態に関する情報に応じて、複数の記録媒体を連続的に通紙する際の紙間時に、前記第1極性の電圧又は零電圧のどちらかに前記バイアス電圧を設定する
ように構成され、
前記トナーの帯電状態に関する情報は、前記現像器内の前記第1極性のトナーの個数に対する前記第2極性のトナーの個数の比率に関する情報であり、
前記トナーの帯電状態に関する情報は、前記現像器が交換されてからの通算の通紙回数である第1通算通紙回数の情報を含み、前記現像器内の前記第2極性のトナーの個数の比率は、前記第1通算通紙回数が増加するにつれて減少し、
前記トナーの帯電状態に関する情報は、前記現像器内のキャリアに対するトナーの比率を表すトナー/キャリア比率の情報を含み、前記現像器内の前記第2極性のトナーの個数の比率は、前記トナー/キャリア比率が減少するにつれて減少し、
前記バイアス電圧制御部は、
前記第1通算通紙回数が第1の閾値回数未満である場合に、前記紙間時における前記バイアス電圧を零電圧に設定し、
前記第1通算通紙回数が前記第1の閾値回数以上である場合に、前記紙間時における前記バイアス電圧を前記第1極性の電圧に設定し、
前記トナー/キャリア比率が第1の閾値比率未満である場合には、前記トナー/キャリア比率が前記第1の閾値比率以上である場合に比べて、前記第1の閾値回数をより小さな値に変更するように構成される、画像形成装置。
【請求項4】
前記バイアス電圧制御部は、前記トナー/キャリア比率が前記第1の閾値比率よりも小さい第2の閾値比率未満である場合には、前記第1通算通紙回数によらず前記紙間時における前記バイアス電圧を前記第1極性の電圧に設定する、請求項
3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記バイアス電圧制御部は、前記転写部材が交換されてからの通算通紙回数である第2通算通紙回数が増加するにつれて、前記紙間時に印加する前記第1極性のバイアス電圧の絶対値をより大きな値に設定する、請求項
1~
4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、画像形成装置に関し、より特定的には、電子写真方式の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置においては、トナー像を用紙などの記録媒体に転写させるための転写ローラーに関して、以下のような技術が知られている。
【0003】
特開平10-301407号公報(特許文献1)は、転写ローラーの体積抵抗値が増大するのを抑制するための技術を開示する。特許文献1に開示された技術によると、転写ローラーにおける通紙間隙時である紙間時には、転写ローラーに対し転写バイアス電圧とは逆極性の逆バイアス電圧が継続して印加される。
【0004】
特開平6-51654号公報(特許文献2)は、転写ローラーの清掃方法に関する技術を開示する。特許文献2に開示された技術によると、かぶりトナーによる記録媒体の裏汚れを実用上問題のないレベルとするために、複数枚の記録媒体を連続通紙するときにおける紙間時には、当該連続通紙を開始してからの枚数が予め定めた枚数になるまでは正電圧、負電圧が、転写ローラー1回転ごとに切り替えて転写ローラーに印加される。その後は転写ローラーが少なくとも1回転する時間、正電圧のみが転写ローラーに印加される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平10-301407号公報
【文献】特開平6-51654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
通常、紙間時には、転写ローラーは像担持体の表面に接触している。したがって、特許文献1に開示された技術の場合には、紙間時に転写ローラーに対し逆バイアス電圧が継続して印加される間、かぶりトナー内に含まれる、正規帯電トナーとは逆極性の微量のトナーが転写ローラーに付着して、転写ローラーを汚してしまう可能性がある。その結果、転写ローラーの汚れに起因して用紙の裏汚れが生じる可能性がある。
【0007】
一方、特許文献2に開示された技術は、裏汚れの抑制を目的としたものである。しかし、紙間時に転写ローラー1周分以上の十分な紙間距離が必要となるため、生産性を上げられない課題が残る。したがって、紙間距離を大きくすることなく、かぶりトナーが転写ローラーに付着することを防止しつつ、転写ローラーの抵抗上昇を抑制する技術が必要とされている。
【0008】
本開示は、上記の課題を鑑みてなされたものであって、ある局面において、紙間距離を大きくすることなく、かぶりトナーが転写ローラー等の転写部材に付着することを防止しつつ、転写部材の抵抗上昇を抑制する技術が開示される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
ある実施形態に従う電子写真方式の画像形成装置は、現像器によって第1極性に帯電させたトナーからなるトナー像を担持する像担持体と、上記像担持体に接触するように設けられた転写部材と、上記転写部材に印加されるバイアス電圧を制御するバイアス電圧制御部とを備える。上記バイアス電圧制御部は、上記像担持体と上記転写部材との間に記録媒体が通過している通紙時に、上記トナー像を上記記録媒体に転写するために、上記第1極性と反対極性である第2極性の電圧に上記バイアス電圧を設定し、複数の記録媒体を連続的に通紙する際の紙間時に、上記現像器内のトナーの帯電状態に関する情報に応じて、上記第1極性の電圧および零電圧の一方に上記バイアス電圧を設定する。上記トナーの帯電状態に関する情報は、上記現像器内の上記第1極性のトナーの個数に対する上記第2極性のトナーの個数の比率に関する情報である。上記トナーの帯電状態に関する情報は、上記現像器が交換されてからの通算の通紙回数である第1通算通紙回数の情報を含む。上記現像器内の上記第2極性のトナーの個数の比率は、上記第1通算通紙回数が増加するにつれて減少する。上記トナーの帯電状態に関する情報は、上記現像器の周囲の絶対湿度の情報をさらに含む。上記現像器内の上記第2極性のトナーの個数の比率は、上記現像器の周囲の絶対湿度が上昇するにつれて減少する。上記バイアス電圧制御部は、上記第1通算通紙回数が第1の閾値回数未満である場合に、上記紙間時における上記バイアス電圧を零電圧に設定し、上記第1通算通紙回数が上記第1の閾値回数以上である場合に、上記紙間時における上記バイアス電圧を上記第1極性の電圧に設定する。上記バイアス電圧制御部は、上記現像器の周囲の絶対湿度が第1の閾値湿度以上である場合には、上記現像器の周囲の絶対湿度が上記第1の閾値湿度未満である場合に比べて、上記第1の閾値回数をより小さな値に変更する。
【0016】
ある局面において、上記バイアス電圧制御部は、上記現像器の周囲の絶対湿度が上記第1の閾値湿度よりも大きい第2の閾値湿度以上である場合には、上記第1通算通紙回数によらず上記紙間時における上記バイアス電圧を上記第1極性の電圧に設定する。
【0018】
ある実施形態に従う電子写真方式の画像形成装置は、現像器によって第1極性に帯電させたトナーからなるトナー像を担持する像担持体と、上記像担持体に接触するように設けられた転写部材と、上記転写部材に印加されるバイアス電圧を制御するバイアス電圧制御部とを備える。上記バイアス電圧制御部は、上記像担持体と上記転写部材との間に記録媒体が通過している通紙時に、上記トナー像を上記記録媒体に転写するために、上記第1極性と反対極性である第2極性の電圧に上記バイアス電圧を設定し、複数の記録媒体を連続的に通紙する際の紙間時に、上記現像器内のトナーの帯電状態に関する情報に応じて、上記第1極性の電圧および零電圧の一方に上記バイアス電圧を設定する。上記トナーの帯電状態に関する情報は、上記現像器内の上記第1極性のトナーの個数に対する上記第2極性のトナーの個数の比率に関する情報である。上記トナーの帯電状態に関する情報は、上記現像器が交換されてからの通算の通紙回数である第1通算通紙回数の情報を含む。上記現像器内の上記第2極性のトナーの個数の比率は、上記第1通算通紙回数が増加するにつれて減少する。上記トナーの帯電状態に関する情報は、上記現像器内のキャリアに対するトナーの比率を表すトナー/キャリア比率の情報を含む。上記現像器内の上記第2極性のトナーの比率は、上記トナー/キャリア比率が減少するにつれて減少する。上記バイアス電圧制御部は、上記第1通算通紙回数が第1の閾値回数未満である場合に、上記紙間時における上記バイアス電圧を零電圧に設定し、上記第1通算通紙回数が上記第1の閾値回数以上である場合に、上記紙間時における上記バイアス電圧を上記第1極性の電圧に設定する。上記バイアス電圧制御部は、上記トナー/キャリア比率が第1の閾値比率未満である場合には、上記トナー/キャリア比率が上記第1の閾値比率以上である場合に比べて、上記第1の閾値回数をより小さな値に変更する。
【0019】
ある局面において、上記バイアス電圧制御部は、上記トナー/キャリア比率が上記第1の閾値比率よりも小さい第2の閾値比率未満である場合には、上記第1通算通紙回数によらず上記紙間時における上記バイアス電圧を上記第1極性の電圧に設定する。
【0020】
ある局面において、上記バイアス電圧制御部は、上記転写部材が交換されてからの通算通紙回数である第2通算通紙回数が増加するにつれて、上記紙間時に印加する上記第1極性のバイアス電圧の絶対値をより大きな値に設定する。
【発明の効果】
【0021】
ある局面に従うと、紙間距離を大きくすることなく、かぶりトナーが転写部材に付着することを防止しつつ、転写部材の抵抗上昇を抑制し得る。
【0022】
この発明の上記および他の目的、特徴、局面並びに利点は、添付の図面と関連して理解されるこの発明に関する次の詳細な説明から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】画像形成装置101の内部構造の一例を示す図である。
【
図2】画像形成装置101のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】各現像器の通算使用時間に応じた、各現像器内のトナーの帯電量分布の変化を示す図である。
【
図4】本実施形態における制御部200の具体的な機能構成の一例を表すブロック図である。
【
図5】実施形態2の画像形成装置101における制御部200の具体的な動作の一例を表すフローチャートである。
【
図6】用紙の裏汚れおよび転写部材の抵抗上昇という観点により比較例と本実施形態とを比較した結果を示す図である。
【
図7】現像器107の周囲の温度および相対湿度に応じた、現像器107内のトナーの帯電量分布の変化を示す図である。
【
図8】実施形態2における制御部200の具体的な動作の一例を表すフローチャートである。
【
図9】実施形態2の画像形成装置101において、紙間時における2次転写ローラー111のバイアス電圧の設定例を表形式で示す図である。
【
図10】実施形態3における制御部200の具体的な動作の一例を表すフローチャートである。
【
図11】
図10のステップS455で参照されるデータテーブル700の一例を示す図である。
【
図12】実施形態3における画像形成装置101において、用紙の裏汚れおよび2次転写ローラー111の抵抗上昇について検証した結果を示す図である。
【
図13】現像器107を交換してからの通紙回数が相当数の場合の、現像器107内のトナー/キャリア比率の変化に応じた、現像器107内のトナーの帯電量分布の変化を示す図である。
【
図14】実施形態4のバイアス電圧制御部310において、紙間時に2次転写ローラー111に印加するバイアス電圧の設定例を表形式で示す図である。
【
図15】実施形態4の画像形成装置において、紙間時に2次転写ローラー111に印加されるバイアス電圧の他の制御方法を示すフローチャートである。
【
図16】実施形態4の画像形成装置において、紙間時における2次転写ローラー111に印加されるバイアス電圧の他の設定例を表形式で示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、各実施形態における画像形成装置について、図面を参照して詳しく説明する。以下に説明する実施形態において個数または量等に言及する場合には、特に記載がある場合を除き、本開示の範囲は、必ずしもその個数または量等に限定されない。
【0025】
図面においては、実際の寸法の比率に従って図示しておらず、構造の理解を容易にするために、構造が明確となるように比率を変更して図示している場合がある。また、同一または相当する部分には同一の参照符号を付して、その説明を繰り返さない。なお、以下で説明される各実施形態は、適宜選択的に組み合わされてもよい。
【0026】
<実施形態1>
[ハードウェア構成]
図1および
図2を参照して、実施形態1に従う画像形成装置101のハードウェア構成について説明する。
図1は、画像形成装置101の内部構造の一例を示す図である。
【0027】
図1には、カラープリンタ機能を備える画像形成装置101が示されているが、本開示の画像形成装置は、カラープリンタ機能を備える画像形成装置に限定されない。例えば、本開示の画像形成装置は、モノクロプリンタ用の画像形成装置であってもよいし、ファクシミリであってもよいし、モノクロプリンタ、カラープリンタおよびファクシミリの複合機(MFP:Multi-Functional Peripheral)であってもよい。
【0028】
以下、添え字であるY、M、C、およびKが記載されている部材は、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、およびブラック(BK)のトナー像に対応する部材を表す。また、当該部材を総称するとき、Y、M、C、およびKの添え字を省略することがある。
【0029】
画像形成装置101は、給紙トレイ102と、複数の搬送ローラー103a~103gと、プリンター150と、複数の温湿度センサー120Y、120M、120C、120K、および130と、複数のトナー濃度センサー125Y、125M、125C、および125Kと、光学センサー135と、制御部200とを備える。
【0030】
給紙トレイ102には、用紙がセットされる。用紙は、給紙トレイ102から1枚ずつ取り出される。取り出された用紙は、搬送ローラー103a~103cによって搬送経路に沿ってプリンター150の2次転写ローラー111へ送られる。用紙は、片面印刷される際には搬送ローラー103dにより排紙トレイ117へ排出される。用紙は、両面印刷される際には搬送ローラー103dにより搬送される向きを変えられ、搬送ローラー103e、103f、103gを通過した後、2次転写ローラー111へ再度送られる。そしてトナー像の転写後、用紙は、搬送ローラー103dにより排紙トレイ117へ排出される。
【0031】
プリンター150は、用紙などの記録媒体に文字または画像などを印刷する。なお、本では、記録媒体として代表的に用紙を示しているが、記録媒体は用紙に限定されない。例えば、記録媒体は、OHPシートなどのシートを含み得る。
【0032】
より詳細には、プリンター150は、複数の感光体104Y、104M、104C、および104Kと、複数の帯電装置105Y、105M、105C、および105Kと、露光装置106と、複数の現像器107Y、107M、107C、および107Kと、複数の1次転写ローラー108Y、108M、108C、および108Kと、中間転写ベルト109と、複数のクリーニング装置110Y、110M、110C、および110Kと、2次転写ローラー111と、クリーニング装置112と、定着装置113と、複数のトナーボトル114Y、114M、114C、および114Kと、冷却部材115とを備える。
【0033】
感光体104は、回転可能に構成されており、帯電装置105により帯電され、露光装置106により露光されて静電潜像が作像された後、現像器107からトナーが供給されることにより、当該静電潜像に応じて作成されたトナー像を保持する。
【0034】
帯電装置105は、対応する感光体104の表面に当接し、当該感光体を一定の電位に一様に帯電させる。
【0035】
露光装置106は、制御部200からの制御信号に応じて各感光体104にレーザー光を照射し、制御部200から命令された画像パターンに従って当該感光体の表面を露光する。これにより、入力画像に応じた静電潜像が当該感光体の表面に形成される。
【0036】
現像器107は、当該現像器内のトナーを攪拌して摩擦帯電にすることにより正規帯電極性に帯電させ、対応する感光体104表面に形成された静電潜像に応じたトナー像を、当該感光体の表面に形成する。各現像器107は、それぞれ、中間転写ベルト109の回転方向に沿って、順に配置されている。
【0037】
中間転写ベルト109は、感光体104と対応する1次転写ローラー108とを設けている部分で互いに接触している。各1次転写ローラー108は、トナー像と反対極性の転写電圧が各1次転写ローラー108に印加されることによって、対応する感光体104の表面に現像されたトナー像を、中間転写ベルト109に転写させる。
【0038】
中間転写ベルト109は、感光体104から転写された各色のトナー像を担持する。例えば、中間転写ベルト109は、各感光体104から転写されるイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、およびブラック(BK)の各色のトナー像を担持する。
【0039】
中間転写ベルト109は、従動ローラー(不図示)と駆動ローラー(不図示)とに張架されている。駆動ローラーはモーター(不図示)に接続されている。制御部200が当該モーターを制御することにより、駆動ローラーは回転する。中間転写ベルト109および従動ローラーは、駆動ローラーに連動して回転する。これにより、中間転写ベルト109上のトナー像が2次転写ローラー111へ送られる。
【0040】
クリーニング装置110は、感光体104から中間転写ベルト109にトナー像を転写した後に、対応する感光体104の表面に残留するトナーを回収する。
【0041】
2次転写ローラー111には、用紙が搬送されている間に、トナー像と反対極性の転写バイアス電圧が制御部200により印加される。これにより、トナー像は、中間転写ベルト109から2次転写ローラー111に引き付けられ、中間転写ベルト109上のトナー像が用紙に転写される。2次転写ローラー111は、回転可能に構成される。
【0042】
クリーニング装置112は、中間転写ベルト109から用紙にトナー像が転写された後に、中間転写ベルト109の表面に残留するトナーを回収する。クリーニング装置112により回収されたトナーは、搬送スクリュー(不図示)で搬送され、廃トナー容器(不図示)に貯められる。
【0043】
定着装置113は、定着装置113を通過する用紙を加圧および加熱する。これにより、トナー像は用紙に定着する。その後、用紙は、排紙トレイ117に排出される。
【0044】
各トナーボトル114は、予備のトナーを保管しており、保管されたトナーを、制御部200の制御指令に従って対応する現像器に供給する。各トナーボトル114は、取り外し可能である。ユーザーは、各トナーボトル114においてトナーがなくなったとき、当該トナーボトル114を交換することができる。
【0045】
冷却部材115は、定着装置113によりトナー像が用紙に定着した直後に、用紙を冷却する。
【0046】
温湿度センサー120は、対応する現像器107の近傍に設けられ、対応する現像器の周囲の温度および相対湿度を検出する。温湿度センサー120は、検出した温度および相対湿度に基づいて絶対湿度を計算する。温湿度センサー120は、検出した温度、相対湿度、および絶対湿度を外部に出力する。温湿度センサー130は、2次転写ローラー111の近傍に設けられ、2次転写ローラー111の周囲の温度および相対湿度を検出する。温湿度センサー130は、主として検出した温度を外部に出力する。
【0047】
なお、温湿度センサー120および130は、検出した温度および相対湿度の情報を外部に出力するように構成されていてもよい。この場合、制御部200は、温湿度センサー120および130から受信した温度および相対湿度の情報に基づいて絶対湿度を決定してもよい。
【0048】
トナー濃度センサー125は、対応する現像器内の2成分現像剤におけるキャリアに対するトナーの比率を表すトナー/キャリア比率を検出する。
図1の例では、トナー濃度センサー125は、対応する現像器107内を循環する現像剤に接触して配置される。
【0049】
一例としてトナー濃度センサー125は、駆動コイル(不図示)と基準コイル(不図示)と検出コイル(不図示)とを有しており、現像剤の透磁率に応じた信号を出力する。駆動コイルに高周波バイアス電圧が印加されると、現像剤のトナー/キャリア比率に応じて検出コイルの出力電圧が変化する。トナー濃度センサー125は、検出コイルの出力電圧と、現像剤に接触していない基準コイルの出力電圧とを比較することで、現時点での現像剤におけるトナー/キャリア比率を検出する。
【0050】
光学センサー135は、用紙の搬送経路上における用紙の位置を光学的に検出する。2次転写ローラー111への用紙の搬送タイミングは、中間転写ベルト109上のトナー像の位置と、光学センサー135による検出結果とに基づいて、制御部200により制御される。その結果、中間転写ベルト109上のトナー像は、用紙の適切な位置に転写される。
【0051】
制御部200は、画像形成装置101の全体の動作を制御する。
図2は、画像形成装置101のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図2に示されるように、画像形成装置101は、制御部200と、プリンター150と、光学センサー135と、温湿度センサー120および130と、トナー濃度センサー125と、ネットワークI/F255と、操作パネル260とを備える。
【0052】
図2のブロック図において、プリンター150、光学センサー135ならびに温湿度センサー120Y、120M、120C、120K、および130の構成については
図1を参照して詳述したので、説明を繰り返さない。なお、
図2では、各温湿度センサーに含まれる、温度センサー235と相対湿度を検出する湿度センサー240とが明示されている。
【0053】
ネットワークI/F255は、他の機器と通信するためのインターフェイスである。画像形成装置101は、複数のネットワークI/F255を備えてもよい。ある局面において、ネットワークI/F255は、LAN(Local Area Network)ポートまたはWi-Fi(登録商標)(Wireless Fidelity)の送受信装置等のいずれかまたは全てを含んでもよい。画像形成装置101は、ネットワークI/F255を介して、PC等の他の機器から、印刷ジョブを取得することができる。
【0054】
操作パネル260は、タッチパッド付きの液晶モニタ等であり、画像形成装置101に対するユーザーからのタッチ入力操作を受け付ける入力機能、および表示機能を実現する。操作パネル260は、タッチ入力に基づく信号をCPU210に送信し、CPU210から受信した信号に基づいて操作画面を表示する。
【0055】
制御部200は、CPU(Central Processing Unit)210と、RAM(Random Access Memory)215と、ROM(Read Only Memory)220と、補助記憶装置225とを含む。
【0056】
CPU210は、画像形成装置101の機能を実現するためのプログラムを実行する。一例として、CPU210は、プリンター150による印刷処理等のプログラムを実行し得る。一例として、CPU210は、操作パネル260から受信した信号に基づいて、ユーザーの操作内容を判定し、当該操作内容に応じた内部動作を実行し、応答表示のための命令を操作パネル260に送信し得る。ある局面において、CPU210は、少なくとも1つの組み込みCPU、少なくとも1つのASIC(Application Specific Integrated Circuit)、少なくとも1つのFPGA(Field Programmable Gate Array)、またはこれらの組み合わせ等によって構成される。
【0057】
RAM215は、自由に読み書きが行われる揮発性メモリーである。RAM215は、CPU210が、ROM220または補助記憶装置225に保存されているプログラムまたはデータを読み込んで実行する際の作業領域として用いられる。ある局面において、SRAM(Static Random Access Memory)またはDRAM(Dynamic Random Access Memory)がRAM215として使用されてもよい。
【0058】
ROM220は、画像形成装置101にプリンター150による印刷動作等の所定の動作を実行させるための各種プログラム、および画像形成装置101の製造事業者によって予め準備された各種データ等を記憶している。
【0059】
補助記憶装置225は、画像形成装置101において使用される印刷データ等の様々なデータを格納する。補助記憶装置225は、画像形成装置101において使用されるプログラムを保存してもよい。ある局面において、HDD(Hard Disk Drive)またはSSD(Solid State Drive)等の不揮発性の記憶装置が補助記憶装置225として使用されてもよい。
【0060】
[転写部材の抵抗上昇について]
以下、本開示の課題の1つである転写部材の抵抗の上昇について説明する。2次転写ローラー111などの転写部材は、継続されて使用されると抵抗値が上昇し得る。例えば、使用する転写ローラーが半導電ポリウレタンゴムを基材としたものである場合には、導電性を得るためにウレタンゴムにイソシアネートなどのイオン性導電物質が転写部材に混入している。そのため、転写部材に印加される転写バイアス電圧によって、ウレタンゴム成分中に均一に分散していた電荷が偏るイオン分極作用が生じ、転写部材は高抵抗化し、最終的に絶縁化する。転写部材が高抵抗化すると、トナー像を用紙に転写したときに画質が低下し得る。また、当該課題に対処するために特別な装置を画像形成装置に搭載すると、コスト増大につながる。
【0061】
上述した転写部材の抵抗上昇を抑制するためには、イオン性導電物質の電荷の偏りを均一に保てばよい。例えば、紙間時に転写バイアス電圧の極性とは反対の極性のバイアス電圧、すなわち、トナーの正規帯電極性のバイアス電圧が転写部材に印加されることによって、イオンの分極作用は緩和される。その結果、転写部材の抵抗上昇は抑制される。したがって、紙間時に転写部材に印加されるバイアス電圧の極性は、転写部材の抵抗上昇を抑制するという観点だけからは、転写バイアス電圧の極性とは反対の極性に設定されることが望ましい。
【0062】
[かぶりトナーによる転写部材の汚れについて]
しかし、転写部材の抵抗上昇を抑制するために、紙間時に、転写バイアス電圧の極性とは反対の極性のバイアス電圧が転写部材に印加されると、かぶりトナーによる用紙の裏汚れという別の課題が生じる。かぶりトナーとは、現像器から吐き出されてくるトナーのうち、感光体の非画像領域に付着するトナーである。感光体に付着したかぶりトナーは、転写部材に達して付着し得る。本実施形態のような2次転写方式の画像形成装置の場合には、感光体に付着したかぶりトナーは、中間転写ベルトを介して、2次転写ローラー等の転写部材に達する。
【0063】
以下、本開示においては、各現像器のトナーの正規帯電極性は、負極性であるとして説明する。なお、各現像器のトナーの正規帯電極性は、正極性の場合もあり得る。いずれの場合においても、転写バイアス電圧の極性は、トナーの正規帯電極性とは反対の正極性である。
【0064】
現像器内において、大部分のトナーは、負帯電したトナーであるが、正帯電したトナーも一部存在する。かぶりトナーの極性は、現像器内のトナーの帯電状態を反映している。そのため、大部分のかぶりトナーは、負帯電したかぶりトナーであるが、正帯電したかぶりトナーも、一部存在する。
【0065】
現像器内の、正規帯電極性とは反対の極性のトナー、すなわち正帯電したトナーは、感光体の非画像領域に付着しやすい。例えば、反転現像法の場合には、感光体の画像領域における電位が0V程度であることに対して、非画像領域は負帯電されている。そのため、現像器内に内包されていた正帯電したトナーが感光体の非画像領域に吐き出される。
【0066】
したがって、転写部材の抵抗上昇を抑制するために、紙間時に転写バイアス電圧の極性とは反対の極性の負極性のバイアス電圧が転写部材に印加されると、正帯電したかぶりトナーは、転写部材へ引き寄せられる。その結果、次の用紙が転写部材を通過し、正極性の転写バイアス電圧が転写部材に印加されたときに、転写部材に付着していた正帯電したかぶりトナーが当該用紙の裏面に弾き飛ばされ、用紙の裏汚れが発生する。以上から、転写部材の抵抗上昇の抑制と、かぶりトナーによる裏汚れの防止とを両立する技術が必要とされている。
【0067】
本開示においては、上記の課題を解決するために、現像器内のトナーの帯電状態が現像器の通算使用時間に応じて変化することに着目した。具体的には、現像器の交換直後においては正帯電したトナーの割合が比較的多いが、現像器の通算使用時間が増加するにつれて正帯電したトナーの割合は減少する。かぶりトナーの帯電量分布は、このような現像器内のトナーの帯電量分布を反映している。したがって、正帯電したかぶりトナーの割合も、現像器の通算使用時間が増加するにつれて減少する。
【0068】
以下、
図3を参照して、各現像器の通算使用時間に応じた、各現像器内のトナーの帯電量分布の変化についてさらに詳しく説明する。
図3は、各現像器の通算使用時間に応じた、各現像器内のトナーの帯電量分布の変化を示す図である。
【0069】
現像器の交換直後において、現像器内の現像剤は十分に攪拌されていない。この場合、各現像器内のトナーの帯電量分布は、
図3の分布(A)に示されるように、ブロードな分布状態であり、正帯電したトナーを一部含む分布である。
【0070】
一方、各現像器の通算使用時間が増加するにつれて、すなわち現像剤が攪拌され続けるにつれて、以下の現象が起こる。各現像器内において、トナー全体に対する正規帯電極性に摩擦帯電されたトナー、すなわち負帯電したトナーの個数の比率が、各現像器の交換直後における負帯電したトナーの個数の比率と比べて高くなる。さらに、先述したように、現像器内に内包されていた正帯電したトナーが感光体の非画像領域に吐き出されていく。加えて、現像剤に投入されていた化学的な外添剤と現像剤とが攪拌されていくにつれて、トナーが正規帯電極性に帯電されやすくなる。
【0071】
上記の現象によって、各現像器の通算使用時間が増加するにつれて、トナーの帯電量分布は、
図3の分布(A)から分布(B)へと変化する。その後のトナーの帯電量分布は、分布(B)で安定する。分布(B)は、分布(A)に比べてシャープであり、かつ、トナーの正規帯電極性である負極性の側へ全体的にシフトしている。したがって、各現像器が十分な時間使用された後では、各現像器内の正規帯電極性と反対の極性であるトナーの個数の比率は、各現像器交換直後における当該比率と比べて十分に小さい。
【0072】
かぶりトナーにおける帯電量分布は、各現像器内のトナーの帯電量分布を反映している。したがって、かぶりトナーにおける帯電量分布状態は、各現像器の交換直後において、
図3の分布(A)に類似したブロードな分布状態であり、正帯電したトナーを一部含む状態になっている。各現像器が十分な時間使用された後では、かぶりトナーにおける帯電量分布は、
図3の分布(B)に類似したシャープな分布になる。そのため、負帯電したかぶりトナーの個数に対する正帯電したかぶりトナーの個数の比率は、各現像器が使用され続けると十分に小さくなる。
【0073】
実施形態1の画像形成装置では、上記の知見に基づいて、紙間時に2次転写ローラー111に印加するバイアス電圧を各現像器107の通算使用時間に応じて変化させている。具体的に、紙間時に2次転写ローラー111に印加するバイアス電圧は、各現像器107の交換後しばらくの間は零電圧に設定され、その後、転写部材の抵抗上昇を防止するために転写バイアス電圧の極性と逆極性の負電圧に設定される。
【0074】
なお、本開示において、2次転写ローラー111のバイアス電圧が「零電圧」であるとは、その絶対値が転写バイアス電圧の絶対値、および紙間時の逆極性のバイアス電圧の絶対値に比べて十分に小さいことをいう。したがって、「零電圧」のバイアス電圧とは、必ずしも0Vの電圧に限定されず、±20Vまでの範囲の電圧であってもよい。
【0075】
上記の現像器107の通算使用時間に代えて、現像器107を交換してから用紙が2次転写ローラー111を通過した通算通紙回数を用いてもよい。すなわち、現像器107を交換してからの通算通紙回数が閾値を超えたか否かを判定してもよい。通算通紙回数は、用紙1枚を片面印刷する場合には1回増加し、用紙1枚を両面印刷する場合には2回増加する。
【0076】
以下、上記した2次転写ローラー111のバイアス電圧の制御を実現するための、画像形成装置101における制御部200の機能構成について具体的に説明する。
【0077】
[機能構成]
図4は、本実施形態における制御部200の具体的な機能構成の一例を表すブロック図である。なお、
図4においては、制御部200の機能構成に関係する、
図1に示された温湿度センサー120および130、トナー濃度センサー125、並びに光学センサー135も併せて示されている。
【0078】
図4に示すように、制御部200は、通紙/非通紙判断部300と、バイアス電圧制御部310と、トナー濃度制御部320と、現像器の使用履歴格納部330と、2次転写ローラーの使用履歴格納部340とを備える。通紙/非通紙判断部300、バイアス電圧制御部310、およびトナー濃度制御部320の各機能は、例えば、CPU210がROM220に格納されたプログラムに従って動作することで実現される。使用履歴格納部330および340は、例えば、RAM215、ROM220、または補助記憶装置225等により実現される。
【0079】
通紙/非通紙判断部300は、2次転写ローラー111を用紙が通過しているか否かを判断する。通紙/非通紙判断部300は、2次転写ローラー111に複数枚の用紙が連続通紙される場合には、通紙間隙時である紙間時であるか否かを判断する。より詳しくは、通紙/非通紙判断部300は、ユーザーが指定した印刷枚数および、光学センサー135による検出結果に基づいて、紙間時か否かを判断する。
【0080】
トナー濃度制御部320は、各トナー濃度センサー125による検出結果に基づいて、各トナー濃度センサー125に対応する現像器107内のトナー/キャリア比率を制御する。現像器107内のトナーが現像時に消費されるにつれてトナー/キャリア比率が減少するため、所望の画質を実現するために、各現像器107内のトナー/キャリア比率は、一定の範囲内に制御される必要がある。そこで、トナー濃度制御部320は、各現像器107内のトナー濃度センサー125の検出値に基づいて、各トナーボトル114から対応する現像器107へのトナーの補給を制御する。
【0081】
使用履歴格納部330は、各現像器107の使用履歴に関係する情報を格納する。一例として、各現像器107の使用履歴に関係する情報は、各現像器107が交換されてからの通算通紙回数または通算使用時間の情報を含む。
【0082】
使用履歴格納部340は、2次転写ローラー111の使用履歴に関係する情報を格納する。一例として、2次転写ローラー111の使用履歴に関する情報は、2次転写ローラー111が交換されてからの通算通紙回数の情報を含む。他の局面において、使用履歴格納部340は、2次転写ローラー111が交換されてからの通算使用時間、通算回転距離、または当該ローラーにバイアス電圧が印加された通算時間の情報を含んでもよい。
【0083】
バイアス電圧制御部310は、2次転写ローラー111に印加するバイアス電圧を制御する。より具体的には、バイアス電圧制御部310は、通紙時に、トナー像を用紙に転写するために、トナーの正規帯電極性と反対の極性の電圧に転写バイアス電圧を設定する。バイアス電圧制御部310は、紙間時に、各現像器107内のトナーの帯電状態に関する情報に応じて、トナーの正規帯電極性と同極性の電圧および零電圧の一方にバイアス電圧を設定する。
【0084】
本開示において、トナーの帯電状態は、各現像器107内の正規帯電である負帯電したトナーの個数に対する正帯電したトナーの個数の比率によって特徴付けられる。具体的に実施形態1の場合、トナーの帯電状態に関する情報として、各現像器107の交換後の通算通紙回数が用いられる。
【0085】
具体的に、バイアス電圧制御部310は、使用履歴格納部330を参照して、各現像器107を交換してからの2次転写ローラー111の通算通紙回数に関する情報を取得する。2次転写ローラー111の通算通紙回数が閾値未満の場合、正帯電したトナーの比率が比較的大きいので、バイアス電圧制御部310は、紙間時の2次転写ローラー111のバイアス電圧を零電圧に設定する。一方、2次転写ローラー111の通算通紙回数が上記の閾値以上の場合、正帯電したトナーの比率は十分に小さいので、バイアス電圧制御部310は、紙間時の2次転写ローラー111のバイアス電圧を負極性の所定電圧に設定する。
【0086】
なお、各現像器107内のトナーの帯電量分布は、各現像器107の周囲の絶対湿度の変化、および各現像器107内のキャリアに対するトナーの比率を表すトナー/キャリア比率の変化によっても変動する。これらの情報に基づいて紙間時の2次転写ローラー111のバイアス電圧を変化させる実施形態については、後述する。
【0087】
[画像形成装置の動作]
以下、
図5を参照して、実施形態1の画像形成装置101における制御部200の動作について詳しく説明する。
図5は、実施形態2の画像形成装置101における制御部200の具体的な動作の一例を表すフローチャートである。
図5のフローチャートは、画像形成装置101のプリンター150に複数の用紙を連続通紙する場合について示している。
【0088】
ステップS405において、各現像器107は、制御部200からの指令に基づいて、負電荷のトナー像を、対応する感光体104に形成する。
【0089】
ステップS410において、用紙が2次転写ローラー111を通過し始めるとき、バイアス電圧制御部310は、トナー像を用紙に転写するために、2次転写ローラー111への正極性のバイアス電圧の印加を開始する。
【0090】
その後、ステップS420において、通紙/非通紙判断部300が紙間の期間に入ったと判断するまで(ステップS420でNOの間)、バイアス電圧制御部310は、2次転写ローラー111への正極性のバイアス電圧の印加を継続する(ステップS415)。
【0091】
ステップS420において、通紙/非通紙判断部300は、紙間の期間に入ったと判断すると(ステップS420においてYES)、処理をステップS430に進める。
【0092】
ステップS430において、バイアス電圧制御部310は、使用履歴格納部330を参照して、各現像器107が交換されてからの通算通紙回数が閾値以上であるか否かを判断する。各現像器107が交換されてからの通算通紙回数が閾値以上である場合、
図3の分布(B)に示すように、現像器107内のトナーの帯電量分布はシャープであり、正規帯電極性と逆極性である正帯電したトナーの比率が十分に小さくなるように、上記閾値が選択される。
【0093】
したがって、バイアス電圧制御部310は、各現像器107が交換されてからの通算通紙回数が全て閾値以上であると判断した場合(ステップS430においてYES)、処理をステップS450に進める。ステップS450において、バイアス電圧制御部310は、2次転写ローラー111に印加するバイアス電圧を正極性のバイアス電圧から負極性電圧に切り替える。紙間時の2次転写ローラー111のバイアス電圧を負極性電圧に設定しても、正帯電のかぶりトナーによる用紙の裏汚れの可能性は低い。ステップS470において、バイアス電圧制御部310は、通紙/非通紙判断部300が紙間の期間が終了したと判断するまで(ステップS480でNOの間)、切り替えた後の負極性のバイアス電圧の印加を継続する。
【0094】
一方、バイアス電圧制御部310は、各現像器107が交換されてからの通算通紙回数が全て閾値以上ではない場合、すなわち、当該通算通紙回数の少なくとも1つが閾値未満である場合(ステップS430においてNO)、処理をステップS460に進める。ステップS460において、バイアス電圧制御部310は、通算使用時間が比較的少ない現像器107に起因する正帯電かぶりトナーによる用紙の裏汚れを防止するために、2次転写ローラー111に印加するバイアス電圧を正極性のバイアス電圧から零電圧に切り替える。その後、バイアス電圧制御部310は、処理をステップS470へ進める。ステップS470において、バイアス電圧制御部310は、通紙/非通紙判断部300が紙間の期間が終了したと判断するまで(ステップS480でNOの間)、切り替えた後の零電圧の印加を継続する。
【0095】
ステップS480において、通紙/非通紙判断部300は、紙間の期間が終了したと判断すると(ステップS480においてYES)、処理をステップS490に進める。
【0096】
ステップS490において、制御部200は、次に通紙する紙があるか否かを判断する。制御部200は、ユーザーから命令された印刷枚数、および用紙が両面印刷されるか否かの情報に基づいて、次に通紙する紙があると判断した場合(ステップS490においてYES)、処理をステップS405に戻す。次に通紙する紙がない場合(ステップS490においてNO)、制御部200は、用紙への画像形成を終了する。
【0097】
上記ステップS430における閾値は、例えば、トナーおよびキャリアの物性を考慮して、実験に基づいて決定してもよい。他の局面において、その実験により決定された閾値は、各色に対応する現像器107ごとに異なっていてもよい。例えば、現像器107Yにおける閾値と、現像器107Mにおける閾値とは、異なっていてもよい。
【0098】
[検証結果]
図6を参照して、実施形態1の効果を検証した結果について説明する。
図6は、用紙の裏汚れおよび転写部材の抵抗上昇という観点により比較例と本実施形態とを比較した結果を示す図である。なお、比較例の画像形成装置は、転写部材の抵抗上昇を抑制するために、紙間時に転写部材に印加されるバイアス電圧が、常に転写バイアス電圧の極性とは反対の極性のバイアス電圧に設定されるという点において、本実施形態の画像形成装置と異なる。その他の点で、比較例の画像形成装置と本実施形態の画像形成装置101とは同じである。
【0099】
また、
図6における「○」または「×」という判断基準について、「○」は、目視による裏汚れまたは抵抗上昇が実用上問題ないレベルであることを表す。一方、「×」は、目視による裏汚れまたは抵抗上昇が実用上問題となるレベルを表す。
【0100】
比較例において、転写部材の抵抗上昇は抑制できた。しかし、ユーザーが各現像器107を交換してからの通算通紙回数が10,000回未満の場合に、正帯電したかぶりトナーによる裏汚れが生じた。
【0101】
それに対して、本実施形態においては、バイアス電圧制御部310は、各現像器107が交換されてからの通算通紙回数が10,000回未満である場合でも、かぶりトナーによる裏汚れを防止できた。また、上記の場合、2次転写ローラー111の抵抗上昇は、実用上問題ないレベルであった。
【0102】
また、本実施形態の場合において、各現像器107が交換されてからの通算通紙回数が10,000回以上である場合には、2次転写ローラー111の抵抗上昇を抑制するために紙間時に2次転写ローラー111に負極性のバイアス電圧を印加した場合でも、正帯電したかぶりトナーによる裏汚れを防止できた。
【0103】
[実施形態1の効果]
以上のとおり、実施形態1の画像形成装置によれば、バイアス電圧制御部310は、トナーの帯電状態に関する情報の一つである、各現像器107が交換されてからの通算通紙回数に応じて、紙間時に2次転写ローラー111に印加するバイアス電圧を転写時と逆極性の電圧または零電圧の一方に設定する。具体的に、バイアス電圧制御部310は、通算通紙回数が閾値未満の場合に上記バイアス電圧を零電圧に設定し、通算通紙回数が閾値以上の場合に転写時とは逆極性の電圧を2次転写ローラー111に印加する。これにより、2次転写ローラー111等の転写部材の抵抗上昇の抑制と、逆極性のかぶりトナーによる用紙の裏汚れの防止とを両立できる。
【0104】
<実施形態2>
各現像器107内のトナーの帯電量分布は、各現像器107の周囲の絶対湿度の変化によっても変動する。そこで、実施形態2では、紙間時に2次転写ローラー111に印加するバイアス電圧を、各現像器107が交換されてからの通算通紙回数とともに、各現像器107の周囲の絶対湿度に基づいて制御する例について説明する。
【0105】
[絶対湿度とトナーの帯電量分布の関係]
以下、
図7を参照して、現像器107の周囲の絶対湿度と、現像器107内のトナーの帯電量分布との関係について説明する。
図7は、現像器107の周囲の温度および相対湿度に応じた、現像器107内のトナーの帯電量分布の変化を示す図である。
図7において、現像器107の周囲の温度および相対湿度に対応する絶対湿度も併せて示されている。なお、温度および相対湿度から絶対湿度を算出する際、気圧は大気圧(1013.25hPa)であるとして絶対湿度を算出している。
【0106】
図7において、分布(A)は、温度が10℃かつ相対湿度が15%(絶対湿度が1.4g/m
3)である場合における現像器107内のトナーの帯電量分布を示す。分布(B)は、温度が23℃かつ相対湿度が55%(絶対湿度が11.3g/m
3)である場合における現像器107内のトナーの帯電量分布を示す。分布(C)は、温度が30℃かつ相対湿度が85%(絶対湿度が25.8g/m
3)である場合における現像器107内のトナーの帯電量分布を示す。
【0107】
分布(A)~分布(C)において、現像器107の周囲の絶対湿度が上昇するにつれて、分布のピーク位置はほとんど変化せずに、分布形状がブロードな分布からシャープな分布に変化する。この結果、現像器内の負帯電トナーの個数に対する正帯電トナーの個数の比率は減少する。
【0108】
かぶりトナーの極性は、現像器107内のトナーの帯電状態を反映している。したがって、現像器107の周囲の絶対湿度が上昇するにつれて、負帯電したかぶりトナーの個数に対する正帯電したかぶりトナーの個数の比率は減少する。
【0109】
[機能構成]
以下、
図4を再び参照して、実施形態2における画像形成装置101の制御部200の機能構成について具体的に説明する。
【0110】
実施形態2における制御部200は、トナーの帯電状態に関する情報として、各現像器107が交換されてからの通算通紙回数の情報を受け取るとともに、温湿度センサー120から現像器107の周囲の絶対湿度の情報を受け取る。画像形成装置101のバイアス電圧制御部310は、現像器107を交換してからの通算通紙回数の情報とともに現像器107の周囲の絶対湿度の情報に基づいて2次転写ローラー111に印加するバイアス電圧を制御する。上記の点で、実施形態2における制御部200(特にバイアス電圧制御部310)は、実施形態1における制御部200と異なる。
【0111】
実施形態2の画像形成装置101のハードウェア構成、およびその他の機能構成は、実施形態1における
図2および
図4を参照して説明したものと同様であるので、これらの説明を繰り返さない。
【0112】
[画像形成装置の動作]
以下、
図4および
図8を参照して、実施形態2における制御部200の動作について詳しく説明する。
図8は、実施形態2における制御部200の具体的な動作の一例を表すフローチャートである。
図8のフローチャートでは、画像形成装置101のプリンター150に複数の用紙を連続通紙する場合について示している。
【0113】
ステップS405において、各現像器107は、制御部200からの指令に基づいて、負電荷のトナー像を、対応する感光体104に形成する。
【0114】
ステップS410において、用紙が2次転写ローラー111を通過開始し始めるとき、バイアス電圧制御部310は、トナー像を用紙に転写するために、2次転写ローラー111への正極性のバイアス電圧の印加を開始する。
【0115】
その後、ステップS420において、通紙/非通紙判断部300が紙間の期間に入ったと判断するまで(ステップS420でNOの間)、バイアス電圧制御部310は、2次転写ローラー111への正極性のバイアス電圧の印加を継続する(ステップS415)。
【0116】
ステップS420において、通紙/非通紙判断部300は、紙間の期間に入ったと判断すると(ステップS420においてYES)、処理をステップS424に進める。ステップS424において、バイアス電圧制御部310は、絶対湿度AHが閾値AH1以上か否かを判断する。絶対湿度AHが閾値AH1以上である場合、
図7の分布(C)に示すように、現像器107内のトナーの帯電量分布はシャープであり、正規帯電極性と逆極性である正帯電したトナーの比率が十分に小さいくなるように、閾値AH1が選択される。
【0117】
したがって、絶対湿度AHが閾値AH1以上である場合(ステップS424においてYES)、バイアス電圧制御部310は、処理をステップS450に進める。ステップS450において、バイアス電圧制御部310は、2次転写ローラー111のバイアス電圧を、正極性のバイアス電圧から負極性電圧に切り替える。紙間時の2次転写ローラー111のバイアス電圧を負極性電圧に設定しても、正帯電のかぶりトナーによる用紙の裏汚れの可能性は低い。その後、バイアス電圧制御部310は、処理をステップS470へ進める。ステップS470において、バイアス電圧制御部310は、通紙/非通紙判断部300が紙間の期間が終了したと判断するまで(ステップS480でNOの間)、切り替えた後の負極性のバイアス電圧の印加を継続する。
【0118】
一方、バイアス電圧制御部310は、絶対湿度AHが閾値AH1未満である場合(ステップS424においてNO)、処理をステップS428に進める。ステップS428において、実施形態1の場合と同様に、バイアス電圧制御部310は、各現像器107の交換後の通紙回数cが全て閾値回数c1以上であるか否かを判断する。各現像器107の交換後の通紙回数cが閾値回数c1以上の場合には、
図7の分布(C)に示すように、正規帯電極性と逆極性の正帯電したトナーの比率が十分に小さくなるように、閾値回数c1が選択される。逆に、各現像器107の交換後の通紙回数cが閾値回数c1に達していない場合には、
図7の分布(A)または(B)に示すように、正規帯電極性と逆極性の正帯電したトナーの比率が比較的大きい。
【0119】
したがって、バイアス電圧制御部310は、各現像器107が交換されてからの通算通紙回数が全て閾値以上ではない場合、すなわち、当該通算通紙回数の少なくとも1つが閾値未満である場合(ステップS428においてNO)、処理をステップS460へ進める。ステップS460において、バイアス電圧制御部310は、通算使用時間が比較的少ない現像器107に起因する正帯電かぶりトナーによる用紙の裏汚れを防止するために、2次転写ローラー111のバイアス電圧を、正極性のバイアス電圧から零電圧に切り替える。その後、バイアス電圧制御部310は、処理をステップS470へ進める。ステップS470において、バイアス電圧制御部310は、通紙/非通紙判断部300が紙間の期間が終了したと判断するまで(ステップS480でNOの間)、切り替えた後の零電圧の印加を継続する。
【0120】
逆に、現像器107交換後の通紙回数cの全てが閾値回数c1以上である場合(ステップS428においてYES)、バイアス電圧制御部310は、処理をステップS450へ進める。ステップS450において、バイアス電圧制御部310は、2次転写ローラー111のバイアス電圧を、正極性のバイアス電圧から負極性電圧に切り替える。その後、バイアス電圧制御部310は、処理をステップS470へ進める。ステップS470において、バイアス電圧制御部310は、通紙/非通紙判断部300が紙間の期間が終了したと判断するまで(ステップS480でNOの間)、切り替えた後の負極性のバイアス電圧の印加を継続する(ステップS470)。
【0121】
ステップS480において、通紙/非通紙判断部300は、紙間の期間が終了したと判断すると(ステップS480においてYES)、処理をステップS490に進める。
【0122】
ステップS490において、制御部200は、次に通紙する紙があるか否かを判断する。制御部200は、ユーザーから命令された印刷枚数、および用紙が両面印刷されるか否かの情報に基づいて、次に通紙する紙があると判断した場合(ステップS490においてYES)、処理をステップS405に戻す。次に通紙する紙がない場合(ステップS490においてNO)、制御部200は、用紙への画像形成を終了する。
【0123】
[絶対湿度の変化に応じて複数の閾値を設定する場合]
上記
図8のフローチャートにおいて、バイアス電圧制御部310は、絶対湿度AHが閾値AH1以上であるか否かによって制御フローを切り替えた。これに代えて、絶対湿度AHの閾値を複数設定してもよい。以下、
図9を参照して、一例として絶対湿度AHの閾値を2個設定する場合について説明する。
【0124】
図9は、実施形態2の画像形成装置101において、紙間時における2次転写ローラー111のバイアス電圧の設定例を表形式で示す図である。また、
図9に示す表では、用紙の裏汚れの防止と、2次転写ローラー111の抵抗上昇の抑制という観点から、上記の制御を評価した結果についても示している。
【0125】
具体的に
図9では、(A)現像器周辺の絶対湿度が比較的低い場合と(B)現像器周辺の絶対湿度が中程度の場合と(C)現像器周辺の絶対湿度が比較的高い場合との3つの場合について、紙間時の2次転写ローラー111のバイアス電圧の設定例が示されている。したがって、(A)の場合の絶対湿度と(B)の場合の絶対湿度との間に閾値AH2が設定され、(B)の場合の絶対湿度と(C)の場合の絶対室度との間に別の閾値AH1が設定されることになる。なお、
図9の(A)~(C)の温度および相対湿度は、
図7のトナー分布(A)~(C)の場合にそれぞれ対応している。
【0126】
現像器周辺の絶対湿度が比較的低い(A)の場合、
図7のトナー分布(A)に示すように、各現像器107内に含まれる正規帯電極性と逆極性である正帯電したトナーの比率は比較的大きい。このため、
図9に示すように、現像器107が十分な時間使用されるまで、すなわち、現像器107が交換されてからの通算通紙回数が100,000回未満の場合に、バイアス電圧制御部310は、紙間時において2次転写ローラー111に印加するバイアス電圧を零電圧に設定する。バイアス電圧制御部310は、当該通算通紙回数が100,000回以上であるときに、紙間時において2次転写ローラー111に印加するバイアス電圧を負極性の電圧に設定する。
【0127】
現像器周辺の絶対湿度が中程度である(B)の場合、
図7のトナー分布(B)に示すように、各現像器107内には正帯電したトナーが、(A)の場合と比べると少なくなっているものの、ある程度含まれている。したがって、
図9に示すように、現像器107がある程度の時間使用されるまで、すなわち、現像器107が交換されてからの通算通紙回数が10,000回未満である場合に、バイアス電圧制御部310は、紙間時において2次転写ローラー111に印加するバイアス電圧を零電圧に設定する。バイアス電圧制御部310は、当該通算通紙回数が10,000回以上であるときに、紙間時において2次転写ローラー111に印加するバイアス電圧を負極性の電圧に設定する。このように、現像器周辺の絶対湿度が大きくなるにつれて、現像器が交換されてからの通算通紙回数の閾値はより小さな値に設定される。
【0128】
現像器周辺の絶対湿度が比較的高い(C)の場合、
図7のトナー分布(C)に示すように、各現像器107内には正帯電したトナーはほとんど含まれていない。したがって、バイアス電圧制御部310は、現像器107が交換されてからの通算通紙回数によらず、紙間時において2次転写ローラー111に印加するバイアス電圧を負極性の電圧に設定する。
【0129】
[検証結果]
以下、用紙の裏汚れの防止と、2次転写ローラー111の抵抗上昇の抑制という観点から、上記の制御を評価した結果について説明する。
図9における「○」または「×」という判断基準は、実施形態1における判断基準と同じである。
【0130】
図9に示すように、現像器107の周辺の絶対湿度、および現像器107を交換してからの通算使用枚数に応じて、上記のように紙間時の2次転写ローラーのバイアス電圧を設定することによって、2次転写ローラーの抵抗上昇および用紙の裏汚れは、いずれも実用上問題とはならないレベルであることを確認した。
【0131】
[実施形態2の効果]
以上のとおり、実施形態2の画像形成装置によれば、バイアス電圧制御部310は、各現像器107が交換されてからの通算通紙回数に加え、現像器107の周囲の絶対湿度に基づいて、紙間時に2次転写ローラー111に印加するバイアス電圧を制御する。これにより、転写部材の抵抗上昇の抑制と、逆極性のかぶりトナーによる裏汚れの防止とを実現できる。
【0132】
<実施形態3>
2次転写ローラー111の抵抗値は、2次転写ローラー111を交換してからの通算使用時間が増加するにつれ増加する。そこで、実施形態3においては、バイアス電圧制御部310が、各現像器107が交換されてからの通算通紙回数および各現像器の周囲の絶対湿度に加え、2次転写ローラー111が交換されてからの通算通紙回数に基づいて、紙間時に2次転写ローラー111に印加するバイアス電圧を制御する例について説明する。
【0133】
[機能構成]
以下、
図4を再び参照して、実施形態3における画像形成装置101の制御部200の機能構成について具体的に説明する。
【0134】
実施形態3における制御部200のバイアス電圧制御部310は、トナーの帯電状態に関する情報として、各現像器107が交換されてからの通算通紙回数の情報および各現像器107周辺の絶対湿度の情報に加えて、使用履歴格納部340から、2次転写ローラー111が交換されてからの通算通紙回数の情報を受け取る。バイアス電圧制御部310は、これらの情報に基づいて、2次転写ローラー111に印加するバイアス電圧を制御する。より具体的には、実施形態3のバイアス電圧制御部310は、2次転写ローラー111が交換されてからの通算通紙回数が増加するにつれて、2次転写ローラー111の抵抗上昇を十分に抑制するために、紙間時に印加する負極性のバイアス電圧の絶対値をより大きな値に設定する。
【0135】
実施形態3の画像形成装置のハードウェア構成およびその他の機能的構成は、実施形態1および実施形態2において説明したものと同様であるので、これらの説明を繰り返さない。
【0136】
[画像形成装置の動作]
図10および
図11を参照して、実施形態3における制御部200の動作について詳しく説明する。
図10は、実施形態3における制御部200の具体的な動作の一例を表すフローチャートである。
図10のフローチャートは、画像形成装置101のプリンター150に複数の用紙を連続通紙する場合について示している。
【0137】
図11は、
図10のステップS455で参照されるデータテーブル700の一例を示す図である。データテーブル700は、現像器107を交換してからの通紙回数、2次転写ローラー111を交換していからの通紙回数、および現像器107の周辺の絶対湿度に応じた、紙間時の2次転写ローラー111のバイアス電圧の設定値を示している。データテーブル700は、例えば、
図1のRAM215、ROM220または補助記憶装置225に格納される。
【0138】
図10のステップS405において、各現像器107は、制御部200からの指令に基づいて、負電荷のトナー像を、対応する各感光体104に形成する。
【0139】
ステップS410において、用紙が2次転写ローラー111を通過し始めるとき、バイアス電圧制御部310は、トナー像を用紙に転写するために、2次転写ローラー111への正極性のバイアス電圧の印加を開始する。
【0140】
その後、ステップS420において、通紙/非通紙判断部300が紙間の期間に入ったと判断するまで(ステップS420でNOの間)、バイアス電圧制御部310は、2次転写ローラー111への正極性のバイアス電圧の印加を継続する(ステップS415)。
【0141】
ステップS420において、通紙/非通紙判断部300は、紙間の期間に入ったと判断すると(ステップS420においてYES)、処理をステップS425に進める。
【0142】
ステップS425において、バイアス電圧制御部310は、使用履歴格納部340を参照して、2次転写ローラー111を交換してからの通紙回数CAの情報を取得する。その後、バイアス電圧制御部310は、処理をステップS435に進める。
【0143】
ステップS435において、バイアス電圧制御部310は、使用履歴格納部330を参照して、各現像器107を交換してからの通紙回数CBの情報を取得する。その後、バイアス電圧制御部310は、処理をステップS445に進める。
【0144】
ステップS445において、バイアス電圧制御部310は、温湿度センサー120により出力された信号により、各現像器107の周囲の絶対湿度AHの情報を取得する。その後、バイアス電圧制御部310は、処理をステップS455に進める。上記のステップS425、S435、およびS445は、どの順番に実行してもよいし、並行して実行してもよい。
【0145】
ステップS455において、バイアス電圧制御部310は、使用履歴格納部340に格納されるデータテーブル700を参照して、通紙回数CA,通紙回数CB,絶対湿度AHの情報から紙間時に2次転写ローラー111に印加されるバイアス電圧を選択する。具体的にバイアス電圧は以下のように選択される。
【0146】
2次転写ローラー111を交換してから所定の通紙回数の間では(
図11では、通紙回数が10,000未満)、バイアス電圧制御部310は、紙間時の2次転写ローラーのバイアス電圧を、実施形態2の
図9の場合と同様に設定する。
【0147】
すなわち、現像器周辺の絶対湿度が比較的低い場合(
図11では5g/m
3未満)には、バイアス電圧制御部310は、現像器107が交換されてからの通算通紙回数が閾値回数c1(
図11では100,000)回未満の場合に、紙間時において2次転写ローラー111に印加するバイアス電圧を零電圧に設定する。バイアス電圧制御部310は、当該通算通紙回数が上記の閾値c1回以上であるときに、紙間時において2次転写ローラー111に印加するバイアス電圧を負極性の電圧(
図11では-500V)に設定する。
【0148】
現像器周辺の絶対湿度が中程度である場合(
図11では、5g/m
3以上かつ18g/m
3未満)には、バイアス電圧制御部310は、現像器107が交換されてからの通算通紙回数が上記c1より小さい閾値c2(
図11では10,000)回未満の場合に、紙間時において2次転写ローラー111に印加するバイアス電圧を零電圧に設定する。バイアス電圧制御部310は、当該通算通紙回数が上記の閾値c2回以上であるときに、紙間時において2次転写ローラー111に印加するバイアス電圧を負極性の電圧(
図11では-500V)に設定する。
【0149】
現像器周辺の絶対湿度が比較的高い場合(
図11では、18g/m
3以上)には、バイアス電圧制御部310は、現像器107が交換されてからの通算通紙回数によらず、紙間時において2次転写ローラー111に印加するバイアス電圧を負極性の電圧(
図11では-500V)に設定する。
【0150】
バイアス電圧制御部310は、2次転写ローラー111が交換されてからの通算通紙回数が増加するにつれて、上記の負極性のバイアス電圧の絶対値をより大きな値に設定する。具体的に
図11の例では、バイアス電圧制御部310は、2次転写ローラー111が交換されてからの通算通紙回数が10,000回以上20,000回未満の場合に、上記の負極性のバイアス電圧値を-500Vから-1000Vに変更する。バイアス電圧制御部310は、2次転写ローラー111が交換されてからの通算通紙回数が20,000回以上100,000回未満の場合に、上記の負極性のバイアス電圧値を-500Vから-1500Vに変更する。バイアス電圧制御部310は、2次転写ローラー111が交換されてからの通算通紙回数が100,000回以上の場合に、上記の負極性のバイアス電圧の電圧値を-500Vから-2000Vに変更する。このような制御により、2次転写ローラー111におけるイオン分極を防止して、2次転写ローラー111の抵抗値の増大を効果的に抑制することができる。
【0151】
その後、ステップS480において、通紙/非通紙判断部300が紙間の期間が終了したと判断するまで(ステップS480でNOの間)、バイアス電圧制御部310は、ステップS455にて選択されたバイアス電圧を2次転写ローラー111に印加し続ける(ステップS465)。
【0152】
ステップS480において、通紙/非通紙判断部300は、紙間の期間が終了したと判断すると(ステップS480においてYES)、処理をステップS490に進める。
【0153】
ステップS490において、制御部200は、次に通紙する紙があるか否かを判断する。制御部200は、ユーザーから命令された印刷枚数、および用紙が両面印刷されるか否かの情報に基づいて、次に通紙する紙があると判断した場合(ステップS490においてYES)、処理をステップS405に戻す。次に通紙する紙がない場合(ステップS490においてNO)、制御部200は、用紙への画像形成を終了する。
【0154】
[検証結果]
以下、
図12を参照して、実施形態3の結果を検証した結果について説明する。
図12は、実施形態3における画像形成装置101において、用紙の裏汚れおよび2次転写ローラー111の抵抗上昇について検証した結果を示す図である。
図12において、2次転写ローラー111を交換してからの通紙回数が(A)0~10,000回の場合、(B)10,000~20,000回の場合、および(C)100,000回以上の場合における検証結果が示されている。
【0155】
図12の(A),(B),(C)のいずれの場合においても、(a)温度が10℃かつ相対湿度が15%(絶対湿度が1.4%)の場合と、(b)温度が23℃かつ相対湿度が55%(絶対湿度が11.3%)の場合と、(c)温度が30℃かつ相対湿度が85%(接待湿度が25.8%)の場合との検証結果が示されている。上記(a)の場合には、
図11において絶対湿度が5g/m
3未満の場合のバイアス電圧値が適用される。上記(b)の場合には、
図11において絶対湿度が5g/m
3以上かつ18g/m
3未満の場合のバイアス電圧値が適用される。上記(c)の場合には、
図11において絶対湿度が18g/m
3以上の場合のバイアス電圧値が適用される。
【0156】
図12における「○」または「×」という評価結果の判断基準は、実施形態1および2における判断基準と同じである。
図12に示すように、2次転写ローラーの抵抗上昇および用紙の裏汚れは、いずれも実用上問題とはならないレベルであることを確認した。
【0157】
[実施形態3の変形例]
他の局面において、バイアス電圧制御部310は、上記のようにデータテーブルに基づいた制御を行うことなく、2次転写ローラー111に印加するバイアス電圧を決定してもよい。つまり、バイアス電圧制御部310は、現像器107の周囲の温度および相対湿度から、プログラムに基づく論理演算によって、2次転写ローラー111に印加するバイアス電圧を決定してもよい。
【0158】
[実施形態3の効果]
以上のとおり、実施形態3の画像形成装置によれば、バイアス電圧制御部310は、各現像器107が交換されてからの通算通紙回数と、現像器107の周囲の絶対湿度とに加えて、2次転写ローラー111が交換されてからの通算通紙回数に基づいて、紙間時に2次転写ローラー111に印加するバイアス電圧を制御する。これにより、2次転写ローラー111の抵抗上昇の十分な抑制と、逆極性のかぶりトナーによる裏汚れの防止とを実現できる。
【0159】
<実施形態4>
現像器107内のトナーの帯電量分布は、現像器107内のキャリアに対するトナーの比率を表すトナー/キャリア比率の変化によっても変動する。そこで、実施形態4では、バイアス電圧制御部310が、各現像器107が交換されてからの通算通紙回数および各現像器107の周囲の絶対湿度に加え、各現像器107内のトナー/キャリア比率に基づいて、紙間時に2次転写ローラー111に印加するバイアス電圧を制御する例について説明する。
【0160】
[トナー/キャリア比率とトナーの帯電量分布の関係]
以下、
図13を参照して、現像器107内のトナー/キャリア比率と現像器107内のトナーの帯電量分布との関係について説明する。
図13は、現像器107を交換してからの通紙回数が相当数の場合の、現像器107内のトナー/キャリア比率の変化に応じた、現像器107内のトナーの帯電量分布の変化を示す図である。
【0161】
図13において、分布(A)は、トナー/キャリア比率が6%の場合における現像器107内のトナーの帯電量分布を示す。分布(B)は、トナー/キャリア比率が7.5%の場合における現像器107内のトナーの帯電量分布を示す。分布(C)は、トナー/キャリア比率が8%の場合における現像器107内のトナーの帯電量分布を示す。
【0162】
分布(A)~分布(C)において、現像器107内のトナー/キャリア比率が減少するにつれて、トナーの帯電量分布が全体として正規帯電極性である負極性の側にシフトする。この結果、現像器107内の負極性のトナーの個数に対する正極性のトナーの個数の比率は減少する。かぶりトナーの帯電状態は、現像器107内のトナーの帯電状態を反映しているので、現像器107内のトナー/キャリア比率が減少するにつれて、負帯電したかぶりトナーの個数に対する正帯電したかぶりトナーの個数の比率も減少する。
【0163】
また、
図13では、トナー/キャリア比率が7.5%の場合における現像器107の交換直後のトナーの帯電量分布(I)を比較のために示している。実施形態1の
図3で説明したように、現像器107の使用時間が増加するにつれて、すなわち、現像器107を交換してからの通算通紙枚数が増加するにつれて、分布形状がブロードな分布からシャープな分布に変化するとともに、トナーの帯電量分布が全体として正規帯電極性である負極性の側へシフトする。
【0164】
[機能構成]
以下、
図4を再び参照して、実施形態4における画像形成装置101の制御部200の機能構成について具体的に説明する。
【0165】
実施形態4の制御部200のバイアス電圧制御部310は、トナーの帯電状態に関する情報として、各現像器107が交換されてからの通算通紙回数の情報および各現像器の107周辺の絶対湿度の情報に加えて、トナー濃度センサー125から、各現像器107内のトナー/キャリア比率の情報を受け取る。これらの情報に基づいて、バイアス電圧制御部310は、紙間時に2次転写ローラー111に印加するバイアス電圧を制御する。
【0166】
実施形態4の画像形成装置101のハードウェア構成、およびその他の機能構成は、実施形態1における
図2および
図4を参照して説明したものと同様であるので、これらの説明を繰り返さない。以下、実施形態4の制御部200バイアス電圧制御部310による上記バイアス電圧の制御方法の具体例について説明する。
【0167】
[制御方法1]
まず、
図4および
図14を参照して、バイアス電圧制御部310によるバイアス電圧の第1の制御方法について説明する。この制御方法1では、バイアス電圧制御部310は、現像器107内のトナー/キャリア比率のみに基づいて、紙間時に2次転写ローラー111に印加するバイアス電圧を制御する。
【0168】
図14は、実施形態4のバイアス電圧制御部310において、紙間時に2次転写ローラー111に印加するバイアス電圧の設定例を表形式で示す図である。
図14ではさらに、用紙の裏汚れおよび2次転写ローラー111の抵抗上昇に関する検証結果も示す。
図14における「○」または「×」という判断基準は、実施形態1~3における判断基準と同じである。具体的に、バイアス電圧制御部310は、次のように紙間時に2次転写ローラー111に印加するバイアス電圧を設定する。
【0169】
(A)トナー/キャリア比率が8%以上の場合、バイアス電圧制御部310は、紙間時に2次転写ローラー111に印加するバイアス電圧を零電圧に設定する。
図13の分布(A)に示すように、トナー/キャリア比率が標準値よりもかなり大きい場合には、現像器107内に含まれる正規帯電極性と逆極性の正帯電したトナーの比率が比較的大きい。このため、正帯電したかぶりトナーによる用紙の裏汚れを防止するために、バイアス電圧は零電圧に設定される。
【0170】
(B)トナー/キャリア比率が6%以上8%未満の場合、バイアス電圧制御部310は、紙間時に2次転写ローラー111に印加するバイアス電圧を零電圧に設定する。
図13の分布(B)に示すように、トナー/キャリア比率が標準的な値の場合にも、現像器107内に含まれる正帯電したトナーの比率は、上記(A)の場合よりも小さいものの、無視できる程度ではない。このため、正帯電したかぶりトナーによる用紙の裏汚れを防止するために、バイアス電圧は零電圧に設定される。
【0171】
(C)トナー/キャリア比率が6%未満の場合、バイアス電圧制御部310は、紙間時に2次転写ローラー111に印加するバイアス電圧を負極性の電圧に設定する。
図13の分布(C)に示すように、トナー/キャリア比率が標準値よりもかなり小さい場合には、現像器107内に含まれる正帯電したトナーの比率は十分に小さい。このため、2次転写ローラー111の抵抗上昇の抑制のために、バイアス電圧は負極性の電圧に設定される。
【0172】
上記(A)~(C)のいずれの場合についても、紙間時に上記したバイアス電圧を2次転写ローラー111に印加することによって、かぶりトナーに起因する裏汚れと2次転写ローラー111の抵抗上昇とが実用上問題ないレベルであることを確認した。
【0173】
[制御方法2]
次に、制御方法2として、現像器107内のトナー/キャリア比率と、現像器107が交換されてからの通紙回数とに基づいて、紙間時に2次転写ローラー111に印加するバイアス電圧を制御する例について説明する。この制御方法2によれば、
図13の分布(I)に示すような現像器107の交換直後におけるトナー帯電量分布まで考慮して、紙間時に2次転写ローラー111に印加するバイアス電圧を決定できる。
【0174】
図15は、実施形態4の画像形成装置において、紙間時に2次転写ローラー111に印加されるバイアス電圧の他の制御方法を示すフローチャートである。
図15のフローチャートでは、画像形成装置101のプリンター150に複数の用紙を連続通紙する場合について示している。
【0175】
図15のステップS405において、各現像器107は、制御部200からの指令に基づいて、負電荷のトナー像を、対応する感光体104に形成する。
【0176】
ステップS410において、用紙が2次転写ローラー111を通過開始し始めるとき、バイアス電圧制御部310は、トナー像を用紙に転写するために、2次転写ローラー111への正極性のバイアス電圧の印加を開始する。
【0177】
その後、ステップS420において、通紙/非通紙判断部300が紙間の期間に入ったと判断するまで(ステップS420でNOの間)、バイアス電圧制御部310は、2次転写ローラー111への正極性のバイアス電圧の印加を継続する(ステップS415)。
【0178】
ステップS420において、通紙/非通紙判断部300は、紙間の期間に入ったと判断すると(ステップS420においてYES)、処理をステップS423に進める。
【0179】
ステップS423において、バイアス電圧制御部310は、現像器107内のトナー/キャリア比率TCが閾値TC1以下であるか否かを判断する。現像器107内のトナー/キャリア比率TCが閾値TC1以下である場合、
図13の分布(C)に示すように、現像器107内のトナーの帯電量分布は、正規帯電極性である負極性側にシフトしており、逆極性である正帯電したトナーの比率が十分に小さくなるように、閾値TC1が選択される。
【0180】
したがって、現像器107内のトナー/キャリア比率TCが閾値TC1以下である場合(ステップS423においてYES)、バイアス電圧制御部310は、処理をステップS450に進める。ステップS450において、バイアス電圧制御部310は、2次転写ローラー111のバイアス電圧を、正極性のバイアス電圧から負極性電圧に切り替える。その後、バイアス電圧制御部310は、処理をステップS470へ進める。ステップS470において、バイアス電圧制御部310は、通紙/非通紙判断部300が紙間の期間が終了したと判断するまで(ステップS480でNOの間)、切り替えた後の負極性のバイアス電圧の印加を継続する。
【0181】
一方、バイアス電圧制御部310は、現像器107内のトナー/キャリア比率TCが閾値TC1以上である場合(ステップS423においてNO)、処理をステップS426に進める。ステップS426において、バイアス電圧制御部310は、実施形態1の場合と同様に、現像器107交換後の通紙回数cが全て閾値回数c1以上であるか否かを判断する。現像器107の交換後の通紙回数cが閾値回数c1以上の場合には、正帯電したトナーの比率が初期状態よりも十分に低下するように、閾値回数c1が選択される。
【0182】
したがって、現像器107交換後の通紙回数cの全てが閾値回数c1以上である場合(ステップS426においてYES)、バイアス電圧制御部310は、処理をステップS450へ進める。ステップS450において、バイアス電圧制御部310は、2次転写ローラー111のバイアス電圧を、正極性のバイアス電圧から負極性電圧に切り替える。その後、バイアス電圧制御部310は、処理をステップS470へ進める。ステップS470において、バイアス電圧制御部310は、通紙/非通紙判断部300が紙間の期間が終了したと判断するまで(ステップS480でNOの間)、切り替えた後のバイアス電圧として負極性の電圧の印加を継続する(ステップS470)。
【0183】
逆に、バイアス電圧制御部310は、各現像器107が交換されてからの通算通紙回数が全て閾値回数c1以上ではない場合、すなわち、当該通算通紙回数の少なくとも1つが閾値回数c1未満である場合(ステップS426においてNO)、処理をステップS460へ進める。ステップS460において、バイアス電圧制御部310は、通算使用時間が比較的少ない現像器107に起因する正帯電かぶりトナーによる用紙の裏汚れを防止するために、2次転写ローラー111のバイアス電圧を、正極性のバイアス電圧から零電圧に切り替える。その後、バイアス電圧制御部310は、処理をステップS470へ進める。ステップS470において、バイアス電圧制御部310は、通紙/非通紙判断部300が紙間の期間が終了したと判断するまで(ステップS480でNOの間)、切り替えた後のバイアス電圧として零電圧の印加を継続する(ステップS470)。
【0184】
ステップS480において、通紙/非通紙判断部300は、紙間の期間が終了したと判断すると(ステップS480においてYES)、処理をステップS490に進める。
【0185】
ステップS490において、制御部200は、次に通紙する紙があるか否かを判断する。制御部200は、ユーザーから命令された印刷枚数、および用紙が両面印刷されるか否かの情報に基づいて、次に通紙する紙があると判断した場合(ステップS490においてYES)、処理をステップS405に戻す。次に通紙する紙がない場合(ステップS490においてNO)、制御部200は、用紙への画像形成を終了する。
【0186】
[トナー/キャリア比率の変化に応じて複数の閾値を設定する場合]
上記
図15のフローチャートにおいて、バイアス電圧制御部310は、現像器107内のトナー/キャリア比率TCが閾値TC1以下であるか否かによって制御フローを切り替えた。これに代えて、トナー/キャリア比率TCの閾値を複数設定してもよい。以下、
図16を参照して、一例として現像器107内のトナー/キャリア比率TCの閾値を2個設定する場合について説明する。
【0187】
図16は、実施形態4の画像形成装置において、紙間時における2次転写ローラー111に印加されるバイアス電圧の他の設定例を表形式で示す図である。また、
図16に示す表では、用紙裏汚れの防止と、2次転写ローラー111の抵抗上昇の抑制という観点から、上記の制御を評価した結果についても示している。
【0188】
具体的に
図16では、(A)現像器107内のトナー/キャリア比率が比較的高い(8%以上)場合と(B)現像器107内のトナー/キャリア比率が中程度(6%~8%)の場合と(C)現像器107内のトナー/キャリア比率が比較的低い(6%以下)場合との3つの場合について、紙間時の2次転写ローラー111のバイアス電圧の設定例が示されている。したがって、(A)の場合のトナー/キャリア比率と(B)の場合のトナー/キャリア比率との間に閾値TC2が設定され、(B)の場合のトナー/キャリア比率と(C)の場合のトナー/キャリア比率との間に別の閾値TC1が設定されることになる。なお、
図16の(A)~(C)のトナー/キャリア比率の範囲には、
図13のトナー分布(A)~(C)の場合がそれぞれ含まれる。
【0189】
現像器107内のトナー/キャリア比率が比較的高い(8%以上)(A)の場合、各現像器107内に含まれる正規帯電極性と逆極性である正帯電したトナーの比率は比較的大きい。このため、
図16に示すように、現像器107が十分な時間使用されるまで、すなわち、現像器107が交換されてからの通算通紙回数が100,000回未満である場合に、バイアス電圧制御部310は、紙間時において2次転写ローラー111に印加するバイアス電圧を零電圧に設定する。バイアス電圧制御部310は、当該通算通紙回数が100,000回以上であるときに、紙間時において2次転写ローラー111に印加するバイアス電圧を負極性の電圧に設定する。
【0190】
現像器107内のトナー/キャリア比率が中程度(6%より大きく8%未満)である(B)の場合、各現像器107内には、(A)の場合と比べると少なくなっているものの、ある程度の正帯電したトナーが含まれている。したがって、
図9に示すように、現像器107がある程度の時間使用されるまで、すなわち、現像器107が交換されてからの通算通紙回数が10,000回未満である場合に、バイアス電圧制御部310は、紙間時において2次転写ローラー111に印加するバイアス電圧を零電圧に設定する。バイアス電圧制御部310は、当該通算通紙回数が10,000回以上であるときに、紙間時において2次転写ローラー111に印加するバイアス電圧を負極性の電圧に設定する。このように現像器107内のトナー/キャリア比率が小さくなるにつれて、現像器が交換されてからの通算通紙回数の閾値は、より小さな値に設定される。
【0191】
現像器107内のトナー/キャリア比率が比較的低い(6%以下)(C)の場合、各現像器107の使用初期の状態においても、各現像器107内には正帯電したトナーはほとんど含まれていない。よって、バイアス電圧制御部310は、現像器107が交換されてからの通算通紙回数によらず、紙間時において2次転写ローラー111に印加するバイアス電圧を負極性の電圧に設定する。
【0192】
[検証結果]
以下、かぶりトナーによる用紙の裏汚れおよび2次転写ローラー111の抵抗上昇という観点から、上記の制御の効果を検証した結果について説明する。
図16における「○」または「×」という判断基準は、実施形態1における判断基準と同じである。
図16に示すように、上記で説明した紙間時の2次転写ローラー111のバイアス電圧の制御によれば、2次転写ローラーの抵抗上昇および用紙の裏汚れは、いずれも実用上問題とはならないレベルであることを確認した。
【0193】
[実施形態4の効果]
以上のとおり、実施形態4の画像形成装置によれば、バイアス電圧制御部310は、現像器107を交換してからの通算通紙回数に加え、現像器107内のトナー/キャリア比率に基づいて、2次転写ローラー111に印加するバイアス電圧を制御した。これにより、転写部材の抵抗上昇の抑制と、逆極性のかぶりトナーによる裏汚れの防止とを両立できる。
【0194】
<実施形態1~4の変形例>
本開示においては、転写部材の例として2次転写ローラーを採用したが、開示される技術思想の適用の範囲はそれらに限定されない。例えば、転写部材の例として転写ブラシを転写部材として用いてもよい。
【0195】
また、本開示においては、中間転写方式の画像形成装置を一例として用いたが、開示した技術の範囲はそれに限定されない。本開示の技術は、直接転写方式の画像形成装置においても適用可能である。ここで、転写部材に接触するように設けられた、トナー像を担持する「像担持体」とは、中間転写方式の画像形成装置の場合には中間転写ベルトに相当し、直接転写方式の画像形成装置の場合には感光体に相当する。
【0196】
また、2次転写ローラー111の周辺の温度が高いほど2次転写ローラー111に含まれるイオンが活性化するので、2次転写ローラー111の抵抗上昇が起こりやすくなる。したがって、
図4に示すバイアス電圧制御部310は、2次転写ローラー111の近傍に設けられた温湿度センサー130から取得した温度が閾値温度よりも高い場合に、紙間時に印加する負極性の電圧の絶対値をより大きい値に変更してもよい。これによって、2次転写ローラー111の抵抗上昇をさらに抑制することができる。
【0197】
また、測定精度は多少低下するものの、各現像器107の近傍に設けられた温湿度センサー120と2次転写ローラー111の近傍に設けられた温湿度センサー130に代えて、画像形成装置の筐体内に1個の温湿度センサーを設けることも可能である。
【0198】
また、バイアス電圧制御部310は、実施形態2および3のように現像器107の周囲の絶対湿度に基づいて2次転写ローラー111に印加するバイアス電圧を制御する代わりに、現像器107の周囲の温度および相対湿度に基づいて同様の制御を行ってもよい。具体的に、バイアス電圧制御部310は、現像器107の周囲の温度が第1の閾値温度以上でありかつ現像器107の周囲の相対湿度が第1の閾値相対湿度以上である場合には、現像器107の周囲の温度が第1の閾値温度未満でありかつ現像器107の周囲の相対湿度が第1の閾値相対湿度未満である場合に比べて、第1の閾値回数をより小さな値に変更する。さらに、バイアス電圧制御部310は、現像器107の周囲の温度が第1の閾値温度よりも大きい第2の閾値温度以上でありかつ現像器107の周囲の相対湿度が第1の閾値相対湿度よりも大きい第2の閾値相対湿度以上である場合には、現像器107を交換してからの通算通紙回数によらず、紙間時において2次転写ローラー111に印加するバイアス電圧を正規帯電極性の電圧に設定する。
【0199】
また、本開示においては、転写部材に連続的に用紙に通紙する際の紙間時に転写部材に印加するバイアス電圧の制御について説明した。さらに付け加えて、1枚目の用紙が転写部材を通過する直前の期間および最後の用紙が転写部材を通過した直後の期間においても、転写部材に設定するバイアス電圧を本開示と同様に制御してもよい。
【0200】
また、実施形態1~3において用いられる現像剤は、トナーとキャリアから成る2成分現像剤に限られず、例えばトナーのみからなる1成分現像剤が用いられていてもよい。
【0201】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0202】
101 画像形成装置、104 感光体、107 現像器、109 中間転写ベルト、111 2次転写ローラー、114 トナーボトル、120,130 温湿度センサー、125 トナー濃度センサー、150 プリンター、200 制御部、210 CPU、215 RAM、220 ROM、225 補助記憶装置、235 温度センサー、240 湿度センサー、300 非通紙判断部、310 バイアス電圧制御部、320 トナー濃度制御部、330,340 使用履歴格納部、700 データテーブル。