(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】配線部材
(51)【国際特許分類】
H02G 3/30 20060101AFI20231129BHJP
H01B 7/40 20060101ALI20231129BHJP
H01B 7/08 20060101ALI20231129BHJP
H01B 7/00 20060101ALI20231129BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20231129BHJP
H02G 3/04 20060101ALI20231129BHJP
F16B 7/04 20060101ALI20231129BHJP
F16B 19/00 20060101ALI20231129BHJP
F16B 2/08 20060101ALI20231129BHJP
F16B 5/06 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
H02G3/30
H01B7/40 307Z
H01B7/08
H01B7/00 301
B60R16/02 623D
H02G3/04
F16B7/04 301G
F16B19/00 C
F16B2/08 S
F16B5/06 Q
(21)【出願番号】P 2019206158
(22)【出願日】2019-11-14
【審査請求日】2022-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【氏名又は名称】有田 貴弘
(74)【代理人】
【識別番号】100117662
【氏名又は名称】竹下 明男
(74)【代理人】
【識別番号】100103229
【氏名又は名称】福市 朋弘
(72)【発明者】
【氏名】工藤 隆祐
(72)【発明者】
【氏名】西村 哲也
(72)【発明者】
【氏名】中野 悠
(72)【発明者】
【氏名】水下 昌樹
(72)【発明者】
【氏名】荒井 健太
【審査官】鈴木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-151867(JP,A)
【文献】特許第6531884(JP,B1)
【文献】特開2017-019311(JP,A)
【文献】実開昭62-039011(JP,U)
【文献】実開昭52-137269(JP,U)
【文献】特開2012-161234(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/30
H02G 3/04
H01B 7/00
H01B 7/08
H01B 7/40
B60R 16/02
F16B 2/08
F16B 5/06
F16B 7/04
F16B 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
線状伝送部材と、
前記線状伝送部材が固定された第1シートと、
前記線状伝送部材を覆った状態で、少なくとも一部が前記第1シートに重ねられた第2シートと、
を備える配線部材であって、
前記第2シートは前記第1シートよりも剛性が高く、
前記第2シートに保持孔が形成され、
前記保持孔に挿入された車両固定用部品を介して車両の固定対象部材に前記第2シートが保持される、配線部材。
【請求項2】
請求項1に記載の配線部材であって、
前記保持孔は、前記線状伝送部材を避けた位置に設けられる、配線部材。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の配線部材であって、
少なくとも前記第2シートは、前記第1シートのうち前記線状伝送部材が固定された部分に対して側方に突出する突出片を含み、
前記保持孔は前記突出片に形成されている、配線部材。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の配線部材であって、
前記第1シートは、前記線状伝送部材が固定された帯状部分を含み、
前記第2シートのうち前記帯状部分に重なる部分に前記保持孔が形成されている、配線部材。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の配線部材であって、
前記保持孔は、前記第2シートのうち前記第1シートと重なる部分に形成されており、 前記第1シートのうち前記保持孔の形成領域と重なる領域に重なり保持孔が形成されており、
前記車両固定用部品は、前記保持孔と前記重なり保持孔との両方に挿入されている、配線部材。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の配線部材であって、
前記保持孔が前記第2シートに複数形成され、
前記複数の保持孔は、前記線状伝送部材の両側に交互に形成されたものを含む、配線部材。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の配線部材であって、
前記車両固定用部品は、前記保持孔よりも大きく広がる頭部を含み、
前記車両固定用部品が前記固定対象部材に固定された状態で、前記頭部が前記第2シートに接触している、配線部材。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の配線部材であって、
前記車両固定用部品は、長尺状の柱状部と、前記固定対象部材に形成された孔に引っ掛かり可能な円錐外周面状の複数の係止片とを含み、前記複数の係止片は、前記柱状部の長手方向に沿って間隔をあけて複数形成されている、配線部材。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の配線部材であって、
前記車両固定用部品は、追加線状伝送部材を固定する追加保持部を含む、配線部材。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の配線部材であって、
前記第1シートに対して前記第2シートと反対側に固定される第3シートをさらに備え、
前記第3シートは、前記第1シートよりも剛性が高
く、
前記第3シートは、前記第1シートと同じ領域に設けられる、配線部材。
【請求項11】
請求項10に記載の配線部材であって、
前記保持孔は、前記第2シートのうち前記第3シートと重なる部分に形成されており、 前記第3シートには、前記保持孔の形成領域と重なる領域に重なり保持孔が形成されている、配線部材。
【請求項12】
請求項10又は請求項11に記載の配線部材であって、
前記第3シートは、前記第2シートと同じ材料によって形成されている、配線部材。
【請求項13】
線状伝送部材と、
前記線状伝送部材が固定された第1シートと、
少なくとも一部が前記第1シートに重ねられた第2シートと、
を備える配線部材であって、
前記第2シートは前記第1シートよりも剛性が高く、
前記第2シートに保持孔が形成され、
前記保持孔に挿入された車両固定用部品を介して車両の固定対象部材に前記第2シートが保持され、
前記保持孔は、第1保持孔と、第2保持孔とを含み、
前記第2シートが広がる方向において、前記第1保持孔における前記車両固定用部品の移動可能量と、前記第2保持孔における前記車両固定用部品の移動可能量とが異なっている、配線部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、配線部材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、配線モジュールが粘着部を介して固定対象部材に固定されることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
配線部材をよりしっかりと固定対象部材に固定できるようにすることが望まれている。
【0005】
そこで、本開示は、配線部材をよりしっかりと固定対象部材に固定できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の配線部材は、線状伝送部材と、前記線状伝送部材が固定された第1シートと、少なくとも一部が前記第1シートに重ねられた第2シートと、を備える配線部材であって、前記第2シートは前記第1シートよりも剛性が高く、前記第2シートに保持孔が形成され、前記保持孔に挿入された車両固定用部品を介して車両の固定対象部材に前記第2シートが保持される、配線部材である。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、配線部材がよりしっかりと固定対象部材に固定される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は実施形態に係る配線部材を示す平面図である。
【
図3】
図3は第1変形例に係る移動可能量を示す説明図である。
【
図4】
図4は第2変形例に係る配線部材を示す断面図である。
【
図5】
図5は第3変形例に係る配線部材を示す平面図である。
【
図6】
図6は第4変形例に係る配線部材を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0010】
本開示の配線部材は、次の通りである。
【0011】
(1)線状伝送部材と、前記線状伝送部材が固定された第1シートと、少なくとも一部が前記第1シートに重ねられた第2シートと、を備える配線部材であって、前記第2シートは前記第1シートよりも剛性が高く、前記第2シートに保持孔が形成され、前記保持孔に挿入された車両固定用部品を介して車両の固定対象部材に前記第2シートが保持される、配線部材である。
【0012】
この配線部材によると、車両固定用部品は第1シートよりも剛性が高い第2シートの保持孔に挿入された状態で第2シートに保持される。第2シートに形成された保持孔に挿入された車両固定用部品を介して車両の固定対象部材に配線部材を保持するため、固定された配線部材の位置ずれを抑制でき、強固に固定することができる。
【0013】
(2)(1)の配線部材において、前記保持孔は、前記線状伝送部材を避けた位置に設けられてもよい。
【0014】
(3)(1)又は(2)の配線部材において、少なくとも前記第2シートは、前記第1シートのうち前記線状伝送部材が固定された部分に対して側方に突出する突出片を含み、前記保持孔は前記突出片に形成されていてもよい。この場合、配線部材のうち突出片が形成された部分を除く部分が細幅に形成され得る。配線部材のうち突出片が形成された部分を除く部分を細幅に形成することで車両固定用部品を固定対象部材に固定する際に固定対象部材を視認しやすい。このため、車両固定用部品を固定対象部材に固定する作業が容易に行われ得る。
【0015】
(4)(1)又は(2)の配線部材において、前記第1シートは、前記線状伝送部材が固定された帯状部分を含み、前記第2シートのうち前記帯状部分に重なる部分に前記保持孔が形成されていてもよい。これにより、配線部材から側方に部分的に突出する部分が生じ難くなる。
【0016】
(5)(1)から(4)のいずれか1つの態様に係る配線部材であって、前記保持孔は、前記第2シートのうち前記第1シートと重なる部分に形成されており、前記第1シートのうち前記保持孔の形成領域と重なる領域に重なり保持孔が形成されており、前記車両固定用部品は、前記保持孔と前記重なり保持孔との両方に挿入されていてもよい。これにより、車両固定用部品がよりしっかりと第1シート及び第2シートに保持される。
【0017】
(6)(1)から(5)のいずれか1つの態様に係る配線部材において、前記保持孔が前記第2シートに複数形成され、前記複数の保持孔は、前記線状伝送部材の両側に交互に形成されたものを含んでもよい。前記複数の保持孔は、前記線状伝送部材の両側に交互に形成されたものを含むため、配線部材の両側部が交互の位置で固定対象部材に固定される。これにより、配線部材が固定対象部材に安定して固定される。
【0018】
(7)(1)から(6)のいずれか1つの態様に係る配線部材において、前記車両固定用部品は、前記保持孔よりも大きく広がる頭部を含み、前記車両固定用部品が前記固定対象部材に固定された状態で、前記頭部が前記第2シートに接触していてもよい。この場合、頭部が第2シートに接触した状態で第2シートを押え付ける。このため、配線部材が固定対象部材にしっかりと固定される。
【0019】
(8)(1)から(7)のいずれか1つの態様に係る配線部材において、前記車両固定用部品は、長尺状の柱状部と、前記固定対象部材に形成された孔に引っ掛かり可能な円錐外周面状の複数の係止片とを含み、前記複数の係止片は、前記柱状部の長手方向に沿って間隔をあけて複数形成されていてもよい。これにより、車両固定用部品が保持孔に挿入された状態で、複数の係止片のいずれかが前記保持孔の縁に引っ掛かって、車両固定用部品が保持孔から抜出ることを抑制できる。このため、車両固定用部品と第2シートとが一体的に容易に取扱われ得る。
【0020】
(9)(1)から(8)のいずれか1つの態様に係る配線部材において、前記車両固定用部品は、追加線状伝送部材を固定する追加保持部を含んでもよい。これにより、車両固定用部品は、第1シートに固定された線状伝送部材の他に、追加保持部によって追加線状伝送部材を固定することができる。
【0021】
(10)(1)から(9)のいずれか1つの態様に係る配線部材において、前記第1シートに対して前記第2シートと反対側に固定される第3シートをさらに備え、前記第3シートは、前記第1シートよりも剛性が高くてもよい。これにより、配線部材が車両に固定された後に、万一固定対象部材が第1シートに干渉しても第3シートによって補強することができる。
【0022】
(11)(10)の態様に係る配線部材において、前記保持孔は、前記第2シートのうち前記第3シートと重なる部分に形成されており、前記第3シートには、前記保持孔の形成領域と重なる領域に重なり保持孔が形成されていてもよい。第2シートに第3シートが重ねられることで剛性が高められる。これにより、より強固な固定が可能となる。
【0023】
(12)(10)又は(11)の態様に係る配線部材において、前記第3シートは、前記第2シートと同じ材料によって形成されていてもよい。第1シートと第2シートとが同じ材料によって形成されることは、コスト削減に貢献する。
【0024】
(13)(1)から(12)のいずれか1つの態様に係る配線部材において、前記保持孔は、第1保持孔と、第2保持孔とを含み、前記第2シートが広がる方向において、前記第1保持孔における前記車両固定用部品の移動可能量と、前記第2保持孔における前記車両固定用部品の移動可能量とが異なっていてもよい。例えば、第1保持孔及び第2保持孔のうち移動可能量が小さい方の保持孔に保持された車両固定用部品は、なるべく一定位置で配線部材を固定対象部材に固定することができる。第1保持孔及び第2保持孔のうち移動可能量が大きい方の保持孔に保持された車両固定用部品については誤差等を吸収しつつ配線部材を固定対象部材に固定することができる。
【0025】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の配線部材の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0026】
[実施形態]
以下、実施形態に係る配線部材について説明する。
図1は実施形態に係る配線部材20を示す平面図である。
図2は
図1におけるII-II線断面図である。
図1及び
図2において配線部材20が固定される固定対象部材10が仮想線で示されている。
【0027】
配線部材20は、固定対象部材10に固定される配線部品である。固定対象部材10としては、車両における各種部品、例えば、ボディ、内装パネル等であることが想定される。固定対象部材10の材料は特に限定されず、金属であってもよいし、樹脂であってもよい。
【0028】
配線部材20は、線状伝送部材22と、第1シート30と、第2シート40とを備える。
【0029】
線状伝送部材22は、車両における部品同士を接続する線状伝送部材であることが想定される。配線部材20は、複数の線状伝送部材22を備える。複数の線状伝送部材22は、接続先となる部品の位置等に応じて分岐しつつ車両における配線経路に沿って延びる。
【0030】
より具体的には、線状伝送部材22は、電気又は光等を伝送する線状の部材であればよい。例えば、線状伝送部材22は、芯線と芯線の周囲の被覆とを有する一般電線であってもよいし、裸導線、シールド線、ツイスト線、エナメル線、ニクロム線、光ファイバ等であってもよい。
【0031】
電気を伝送する線状伝送部材22としては、各種信号線、各種電力線であってもよい。電気を伝送する線状伝送部材の一部等は、信号又は電力を空間に対して送る又は空間から受けるアンテナ、コイル等として用いられてもよい。
【0032】
また、線状伝送部材22は、単一の線状物であってもよいし、複数の線状物の複合物(ツイスト線、複数の線状物を集合させてこれをシースで覆ったケーブル等)であってもよい。
【0033】
ここでは、線状伝送部材22が電線22であることを想定した説明がなされる。
【0034】
第1シート30は、電線22が固定されるシート状の部材である。第1シート30は、配線経路に沿って延びる細長いシート状に形成される。ここでは、第1シート30は、中間部31と、一方の端部32と、他方の端部33とを含む。中間部31及び端部32、33のそれぞれは細長い帯状に形成されている。一方の端部32は、中間部31の一端部から中間部31の延在方向に対して交差する方向(ここでは直交する方向)に延び出る。他方の端部33は、中間部31の他端部から中間部31の延在方向に対して交差する方向(ここでは直交する方向)に延び出る。ここでは、中間部31に対して、一方の端部32及び他方の端部33が延び出る方向は同じである。
【0035】
第1シート30は、直線状に形成されていてもよいし、各種方向に曲っていてもよい。第1シート30は、曲線状に曲る部分を有していてもよい。第1シート30は、分岐部分を有していてもよい。
【0036】
第1シート30に対する電線22の固定態様としては、接触部位固定であってもよいし、非接触部位固定であってもよいし、両者が併用されていてもよい。ここで接触部位固定とは、電線22と第1シート30とが接触する部分がくっついて固定されているものである。また、非接触部位固定とは、接触部位固定でない固定態様である。非接触部位固定とは、例えば、縫糸、別のシート材、粘着テープなどの固定用の部材が、電線22を第1シート30に向けて押え込んだり、電線22と第1シート30とを挟み込んだりして、その状態に維持するものである。以下では、電線22と第1シート30とが、接触部位固定の状態にあるものとして説明される。
【0037】
係る接触部位固定の態様として、接触部位間接固定であってもよいし、接触部位直接固定であってもよいし、異なる領域で両者が併用されていてもよい。ここで接触部位間接固定とは、電線22と第1シート30とが、その間に設けられた接着剤、粘着剤、両面粘着テープなどの間接固定部分を介して間接的にくっついて固定されているものである。また接触部位直接固定とは、電線22と第1シート30とが別に設けられた接着剤等を介さずに直接くっついて固定されているものである。接触部位直接固定では、例えば電線22と第1シート30とのうち少なくとも一方に含まれる樹脂が溶かされることによってくっついて固定されることが考えられる。
【0038】
係る接触部位直接固定の状態が形成されるに当たり、樹脂は、例えば、熱によって溶かされることも考えられるし、溶剤によって溶かされることも考えられる。つまり、接触部位直接固定の状態としては、熱による接触部位直接固定の状態であってもよいし、溶剤による接触部位直接固定の状態であってもよい。好ましくは、熱による接触部位直接固定の状態であるとよい。
【0039】
このとき接触部位直接固定の状態を形成する手段は特に限定されるものではなく、溶着、融着、溶接等の公知の手段を用いることができる。例えば、溶着によって熱による接触部位直接固定の状態を形成する場合、超音波溶着、加熱加圧溶着、熱風溶着、高周波溶着など種々の溶着手段を採用することができる。またこれらの手段によって接触部位直接固定の状態が形成されると、電線22と第1シートとは、その手段による接触部位直接固定の状態とされる。具体的には、例えば、超音波溶着によって接触部位直接固定の状態が形成されると、電線22と第1シート30とは、超音波溶着による接触部位直接固定の状態とされる。
【0040】
以下では、電線22と第1シート30とが、接触部位直接固定の状態にあるものとして説明される。
【0041】
ここでは、複数の電線22が第1シート30の延在方向に沿って並行に延在するように、第1シート30の一方主面に固定されている。複数の電線22は、第1シート30の端部から外方に延出し、コネクタ28に接続されている。複数の電線22は、第1シート30の端部から延出していなくてもよい。例えば、第1シート30の端部にコネクタが固定されており、複数の電線22が第1シート30から延出せずに、当該コネクタに接続されていてもよい。
【0042】
複数の電線22のうちの一部の電線22は、第1シート30の延在方向中間部において、他の電線22から分岐して、第1シート30の側方から外部に延出していてもよい。ここでは、一部の電線22が、中間部31と端部32の間で他の電線22から分岐して外方に延出している。分岐した一部の電線22の端部にもコネクタ28が接続されている。
【0043】
電線22は、コネクタ28を介して車両における部品18(ここでは、電気部品18)に接続される。電線22は、コネクタ28を介さず、直接電気部品18に接続されてもよい。
【0044】
第2シート40は、少なくとも一部が第1シート30に重ねられたシートである。ここでは、第2シート40は、第1シート30と同形状に形成されており、第1シート30の全体に重ねられる。第2シート40は、第1シート30の延在方向の一部に重ねられていてもよい。第2シート40は、第1シート30の幅方向の一部に重ねられていてもよい。
【0045】
第2シート40は、第1シート30に対して、電線22が固定される側の面に重ねられていてもよいし、電線22が固定されない側の面に重ねられていてもよい。第2シート40は、第1シート30の両面に重ねられていてもよい。
【0046】
第2シート40が第1シート30に対して電線22が固定される側の面に重ねられる場合、第2シート40は、電線22を保護する役割を果すことができる。また、第2シート40は、配線部材20が曲り難いようにする役割を果すことができる。第2シート40が第1シート30に対して電線22が固定される側とは反対側に重ねられる場合、第1シート30を裏側から補強し、配線部材20が全体として曲り難いようにする役割を果すことができる。第2シート40は、後述する保持孔46A、46B、46Cが形成される領域においてのみ、第1シート30に重ねられていてもよい。なお、第2シート40が上記役割を果すことは必須ではない。ここでは、第2シート40は、第1シート30に対して、電線22が固定される側の面に重ねられた例が示される。つまり、第2シート40は、第1シート30に対して電線22を覆った状態で、第1シート30に重ねられる。第1シート30と第2シート40とは、第1シート30に固定された電線22の両外側で相互に固定される。この固定は、例えば、溶着、接着、粘着、縫付け等によってなされてもよい。溶着は、超音波溶着であってもよいし、加熱溶着であってもよい。
【0047】
第1シート30及び第2シート40を構成する材料は特に限定されない。第1シート30及び第2シート40は、例えばPVC(ポリ塩化ビニル)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PP(ポリプロピレン)、ナイロン等の樹脂によって形成されてもよい。第1シート30及び第2シート40は、不織布、織地、編地等の繊維を有する繊維材等であってもよいし、非繊維材であってもよい。非繊維材としては、内部が一様に埋った部材、または樹脂が発泡成形された発泡体などであってもよい。第1シート30及び第2シート40は、金属等の材料を含むこともあり得る。
【0048】
第2シート40は、第1シート30よりも剛性が高い。ここで、剛性とは、外力による変形のし難さである。例えば、第1シート30は、曲げ可能、特に、折り曲げ可能な程度に柔らかくてもよい。また、例えば、第2シート40は、配線部材20がなるべく一定の配線経路を保つことができる程度に高剛性であってもよい。第1シート30と第2シート40との剛性の違いは、第1シート30を構成する材料と第2シート40を構成する材料との違い、第1シート30の外部形状と第2シート40の外部形状との違い、第1シート30の内部形状と第2シート40の内部形状との違いのうちのいずれか又はそれらの組合せによってもたらされ得る。例えば、第2シート40を構成する材料が、第1シート30を構成する材料よりも硬いことによって、第2シート40が第1シート30よりも高剛性に形成されていてもよい。より具体的には、第1シート30が主として軟質PVC(ポリ塩化ビニル)によって形成され、第2シート40が主として硬質PVCによって形成されていてもよい。また、例えば、第2シート40の厚みが第1シート30の厚みよりも厚いことによって、第2シート40が第1シート30よりも高剛性に形成されていてもよい。また、例えば、第1シート30が不織シートであり、かつ、第2シート40が内部が一様に埋ったシートであることによって、第2シート40が第1シート30よりも高剛性に形成されていてもよい。さらに、第1シート30が不織シートと軟質PVCシートとの積層シートであり、第2シート40が硬質PVCシートであることによって、第2シート40が第1シート30よりも高剛性に形成されていてもよい。なお、第1シートと第2シートで厚みを異ならせることで剛性を異ならせても良いことは言うまでも無い。
【0049】
第2シート40は、保持孔46A、46B、46Cに挿入された車両固定用部品50を介して固定対象部材10に保持される部分である。この車両固定用部品50は、車両における固定対象部材10に固定可能な部品である。ここでは、固定対象部材10に車両側固定孔10hが形成される。車両側固定孔10hは、円孔又は楕円孔であってもよい。ここでは、固定対象部材10は、板状部分を含む。車両側固定孔10hは、当該板状部分を表裏に貫通するように形成された孔である。
【0050】
車両固定用部品50は、ワイヤーハーネス等の各種車両部品を車両に固定するために用いられるクリップ又はクランプと呼ばれる部品であってもよい。ここでは、車両固定用部品50は、例えば、樹脂によって金型一体形成された部品である。車両固定用部品50は、頭部52と、柱状部54と、複数の係止片56とを含む。柱状部54は、長尺形状に形成されている。柱状部54は、円柱状に形成されてもよいし、角柱状に形成されてもよい。柱状部54の基端部に頭部52が形成される。頭部52は、後述する保持孔46A、46B、46Cよりも大きく広がる形状に形成されており、保持孔46A、46B、46Cを抜けずに第2シート40のうち保持孔46A、46B、46Cの周縁部に引っ掛かることができる。ここでは、頭部52は、円板状に形成されている。頭部52は、皿バネ状に形成されてもよい。複数の係止片56は、円錐外周面状、換言すれば、柱状部54の外周側に向うにつれて柱状部54の基端部に向う形状に形成されている。係止片56の外幅は、車両側固定孔10hの内径よりも大きい。このため、係止片56は、固定対象部材10に形成された車両側固定孔10hに引っ掛かり可能とされている。複数の係止片56は、柱状部54の長手方向に沿って間隔をあけて並ぶように形成されている。
【0051】
そして、車両固定用部品50を車両側固定孔10hに挿入すると、複数の係止片56の外向き傾斜面が車両側固定孔10hの周縁部に接触して、係止片56が柱状部54側に縮むように弾性変形することができる。複数の係止片56のうちの少なくとも一部が車両側固定孔10hを抜けると、元の形状に弾性復帰して車両側固定孔10hの周縁部に抜止め状に引っ掛かることができる。これにより、車両固定用部品50が固定対象部材10に固定される。
【0052】
車両固定用部品50は、次の構成によって第2シート40に保持されている。
【0053】
すなわち、第2シート40に保持孔46A、46B、46Cが形成されている。保持孔46A、46B、46Cは、電線22を避けた位置に設けられる。ここでは、第2シート40は、第1シート30のうち電線22が固定された部分に対して側方に突出する突出片44A、44B、44Cを含む。
【0054】
より具体的には、上記したように、第1シート30は、電線22の経路に沿って延びる中間部31と端部32、33とを含む。第1シート30のうち中間部31及び端部32、33が帯状に繋がる部分が、第1シート30のうち電線22が固定された帯状部分である。
【0055】
第2シート40は、第1シート30における中間部31と端部32、33と同じ領域に広がる帯状部分を含む。この帯状部分のいずれかの側部から外方に突出するように、突出片44A、44B、44Cが形成されている。
【0056】
突出片44A、44B、44Cの形状は特に限定されない。ここでは、突出片44A、44B、44Cは、先端部が弧を描く形状、より具体的には、半円状に形成されている。突出片44A、44B、44Cは、方形状、三角形状等に形成されていてもよい。
【0057】
突出片44A、44B、44Cのそれぞれに、保持孔46A、46B、46Cが形成されている。保持孔46A、46B、46Cは、上記車両固定用部品50を挿入可能で、かつ、頭部52が引っ掛かる形状に形成されている。例えば、保持孔46A、46B、46Cは、頭部52よりも小さい形状に形成される。これにより、頭部52が保持孔46A、46B、46Cを抜けずに、保持孔46A、46B、46Cの周縁部に引っ掛かることができる。また、例えば、保持孔46A、46B、46Cは、上記柱状部54よりも大きく形成される。これにより、柱状部54が保持孔46A、46B、46Cに挿入され得る。また、保持孔46A、46B、46Cは係止片56よりも小さく形成される。これにより、車両固定用部品50のうち柱状部54が保持孔46A、46B、46Cに挿入された状態で、係止片56が保持孔46A、46B、46Cの周縁部に引っ掛かることができ、車両固定用部品50が第1シート30から脱落し難くなる。例えば、保持孔46A、46B、46Cは、上記車両側固定孔10hと同じ径の孔に形成されてもよい。
【0058】
ここでは、第1シート30も上記突出片44A、44B、44Cと重なる領域に突出する突出片34A、34B、34Cを含む。突出片44A、44B、44Cと、突出片34A、34B、34Cとは重なった状態となっている。突出片44A、44B、44Cと突出片34A、34B、34Cとは、固定されていてもよいし、固定されていなくてもよい。上記突出片34A、34B、34Cにも、重なり保持孔36が形成されている。重なり保持孔36は、対応する保持孔46A、46B、46Cと重なる領域に形成されている。換言すれば、保持孔46A、46B、46Cは、第2シート40のうち第1シート30と重なる部分に形成されており、第1シート30のうち保持孔46A、46B、46Cの形成領域と重なる領域に重なり保持孔36が形成される。
【0059】
なお、第1シート30は、突出片44A、44B、44Cに重なる部分を含んでいなくてもよい。
【0060】
車両固定用部品50は、保持孔46A、46B、46C及び重なり保持孔36の両方に挿入された状態で、第2シート40に保持される。保持は、少なくとも上記柱状部54が保持孔46A、46B、46Cに挿入されることによってなされる。第2シート40に対する車両固定用部品50の保持は、第2シート40に対する車両固定用部品50の分離が困難な程度になされる必要は無い。この保持は、配線部材20を固定対象部材10に固定する際等において、車両固定用部品50を第2シート40における一定位置に保てる程度でなされていればよい。
【0061】
ここでは、車両固定用部品50が保持孔46A、46B、46C及び重なり保持孔36に挿入された状態で、第1シート30のうち保持孔46A、46B、46Cの周縁部と、第2シート40のうち重なり保持孔36の周縁部とが、複数の係止片56のいずれかの間に配設されるか、頭部52と当該頭部52に最も近い係止片56との間に配設された状態となる。これにより、車両固定用部品50が保持孔46A、46B、46C及び重なり保持孔36から抜け難くなり、車両固定用部品50が第1シート30に保持された状態に保たれ易い。車両固定用部品は、接着剤、粘着剤等によって第1シートに対してより確実に保持されてもよい。車両固定用部品は、その他の引っ掛かり構造によって第1シートにより確実に保持されてもよい。
【0062】
車両固定用部品は、第1シートに形成された保持孔に挿入された状態で当該第1シートに保持可能であり、かつ、車両に固定可能な構成であれば、他の構成であってもよい。例えば、車両固定用部品は、柱状部の先端部から基端部に向うに連れて外向き傾斜する一対の係止片が延出する構成であってもよい。この場合、保持孔は、一対の係止片が係止可能な大きさに形成されることが好ましい。車両固定用部品50は、ネジであってもよい。この場合、保持孔は、ネジ山に引っ掛かり可能な大きさに形成されることが好ましい。
【0063】
また、ここでは、車両固定用部品50は、第2シート40から第1シート30に向うように、保持孔46A、46B、46C及び重なり保持孔36に挿入される。このため、柱状部54が保持孔46A、46B、46C及び重なり保持孔36に挿入された状態で、頭部52が保持孔46A、46B、46C側に位置している。頭部52は、より高剛性な第2シート40に接触することができる。このため、頭部52は、配線部材20を、より高剛性な第2シート40を介して固定対象部材10に対して押え付けることができる。
【0064】
複数の保持孔46A、46B、46Cは、電線22の両側に交互に形成されたものを含む。ここでは、複数の保持孔46A、46B、46Cが、電線22の両側に交互に形成されている。
【0065】
より具体的には、突出片44Aは、一方の端部32のうち内向きの辺から突出するように形成されている。突出片44Cは、他方の端部のうち内向きの辺から突出するように形成されている。電線22が延びる方向(帯状部分の延びる方向)において、突出片44Aと突出片44Bの間にある突出片44Cは、中間部31のうち外向きの辺から突出するように形成されている。このため、第2シート40のうち電線22が固定される帯状部分を観察すると、複数の突出片44A、44B、44Cが、当該帯状部分の両側に交互に形成される。また、複数の突出片44A、44B、44Cのそれぞれに形成された複数の保持孔46A、46B、46Cも、上記帯状部分の両側に交互に形成される。保持孔は、上記帯状部分の両側に交互に形成されないものを含んでいてもよい。
【0066】
このため、配線部材20が、上記保持孔46A、46B、46Cが形成された部分で、車両固定用部品50を用いて固定対象部材10に固定されると、上記帯状部分が両側で交互に固定されることになる。これにより、配線部材20が安定して固定対象部材10に固定される。なお、配線部材における保持孔の位置は上記例に限られない。複数の保持孔は、配線部材における第1シートにおいて一側寄りの位置のみに形成されていてもよい。
【0067】
このように構成された配線部材20によると、車両固定用部品50は、第1シート30よりも剛性が高い第2シート40の保持孔46A、46B、46Cに挿入された状態で第2シート40に保持される。このため、車両固定用部品50が高剛性である第2シート40にしっかりと保持された状態で、当該車両固定用部品50が固定対象部材10に固定される。このため、配線部材20が固定対象部材10によりしっかりと固定される。
【0068】
また、保持孔46A、46B、46Cは、第2シート40のうち第1シート30が重なる領域に形成されている。重なり保持孔36も、第1シート30のうち第2シート40が重なる領域において、保持孔46A、46B、46Cと同じ位置に形成されている。このため、車両固定用部品50は、保持孔46A、46B、46C及び重なり保持孔36を通って、第1シート30及び第2シート40の両方に保持される。結果、車両固定用部品50がよりしっかりと第1シート30及び第2シート40に固定される。特に、電線22が固定される第1シート30が車両固定用部品50によって固定対象部材10に固定されることになるため、電線22がよりしっかりと車両固定用部品50に固定される。
【0069】
また、車両固定用部品50の頭部52は第2シート40に接触した状態で、第2シート40を固定対象部材10に押え付ける。このため、配線部材20が固定対象部材10にしっかりと固定される。頭部52は、保持孔46A、46B、46Cに直接接触し難いため、第2シート40のうち保持孔46A、46B、46Cの周縁部で破れ、解れ等が生じ難い。
【0070】
また、保持孔46A、46B、46Cは、第1シート30のうち電線22が固定される帯状部分から外方に突出した突出片44A、44B、44Cに形成されている。このため、配線部材20のうち突出片44A、44B、44Cが形成された部分を除く部分が細幅に形成される。また、突出片44A、44B、44Cは、帯状部分から突出しているため、車両固定用部品50を車両側固定孔10hに挿入する際に、車両側固定孔10hが帯状部分によって隠れ難い。このため、車両側固定孔10hが認識された状態で、車両固定用部品50を車両側固定孔10hに挿入する作業が容易に行われ得る。
【0071】
また、複数の保持孔46A、46B、46Cは、電線22の両側に交互に形成されたものを含むため、配線部材20の量側部が交互の位置で固定対象部材10に固定される。これにより、配線部材20が固定対象部材10に安定して固定される。
【0072】
また、車両固定用部品50は、柱状部54と、複数の係止片56とを含む。この車両固定用部品50が保持孔46A、46B、46Cに挿入された状態で、複数の係止片56のいずれかが保持孔46A、46B、46Cに引っ掛かって、車両固定用部品50が保持孔46A、46B、46Cから抜出ることを抑制する。このたため、車両固定用部品50と第2シート40とが一体的に容易に取扱われ得る。
【0073】
<変形例>
上記実施形態を前提として各種変形例について説明する。
【0074】
上記実施形態における配線部材20において、保持孔46Aを第1保持孔46A、保持孔46Bを第2保持孔46Bとする。第2シート40が広がる方向において、第1保持孔46Aにおける車両固定用部品50の移動可能量と、第2保持孔46Bにおける車両固定用部品50の移動可能量とは異なっていてもよい。
【0075】
第1保持孔46Aにおける車両固定用部品50の移動可能量は、第1保持孔46Aの大きさと、車両固定用部品50の太さと差によって決る。同様に、第2保持孔46Bにおける車両固定用部品50の移動可能量は、第2保持孔46Bの大きさと、車両固定用部品50の太さと差によって決る。例えば、第1保持孔46A及び第2保持孔46Bに同じ大きさの車両固定用部品50が挿入されるとする。この場合、第1保持孔46Aにおける車両固定用部品50の移動可能量と、第2保持孔46Bにおける車両固定用部品50の移動可能量との大小関係は、第1保持孔46Aの大きさと第2保持孔46Bの大きさとの大小関係に依存する。
【0076】
例えば、
図2に示すように、第2保持孔46Bの中心と柱状部54の中心とを一致させた状態で、柱状部54と第2保持孔46Bとの間隔をD2とする。係止片56は柱状部54の外周面に接触するまで変形可能であると考え、上記D2を、第1保持孔46Aにおける車両固定用部品50の移動可能量であると考える。
【0077】
図3に示すように、第1保持孔46Aと車両固定用部品50とについても同様に考える。ここでは、第1保持孔46Aにおける車両固定用部品50の移動可能量D1が、第2保持孔46Bにおける車両固定用部品50の移動可能量D2よりも大きく設定されるとする。この場合、第1保持孔46Aが第2保持孔46Bよりも大きく形成されれば、柱状部54と第1保持孔46Aとの間隔D1は、上記D2よりも大きくなる。移動可能量は、保持孔の大きさだけで無く、車両固定用部品の太さを調整することによっても調整され得る。
【0078】
この例によると、例えば、第2保持孔46Bに保持された車両固定用部品50を固定対象部材10に固定した後、第1保持孔46Aに保持された車両固定用部品50を固定対象部材10に固定することができる。この際、第2保持孔46Bに保持された車両固定用部品50については移動可能量D2が小さいので、当該車両固定用部品50によって配線部材20が固定対象部材10に対してより正確に位置決めされる。また、第1保持孔46A及び第2保持孔46Bの位置関係と、それらに保持された複数の車両固定用部品50が挿入される複数の車両側固定孔10hの位置関係との間にずれが生じていたとしても、車両固定用部品50が第1保持孔46A内で上記移動可能量D2の範囲内で移動することで、当該ずれが吸収される。
【0079】
複数の保持孔46A、46B、46Cが存在する場合、それぞれにおける車両固定用部品50の移動可能量は、いずれか1つの保持孔における移動可能量を基準として、当該1つの保持孔から遠ざかるにつれて、大きく設定されてもよい。
【0080】
例えば、3つ以上の保持孔46A、46B、46Cが存在する場合において、電線22の経路に沿った中間部の保持孔46Bを基準とし、保持孔46A、46B、46Cにおける車両固定用部品50の移動可能量が、当該保持孔46Bから遠ざかる程、大きくなるように設定されてもよい。この場合、配線部材20のうち電線22の経路に沿った中間部を基準として、配線部材20が固定対象部材10に固定され得る。また、複数の車両側固定孔10hの位置関係と、保持孔46A、46B、46Cの位置関係のずれは、主として保持孔46A、46Cにおいて移動可能量の範囲で車両固定用部品50が移動することによって吸収される。この際、上記位置関係のずれは、上記基準となる保持孔46Bを基準として、当該保持孔46Bから遠ざかる程蓄積されていく。当該基準箇所から遠ざかる程、移動可能量が大きく設定されていると、当該蓄積された誤差を吸収しつつ、車両固定用部品50を固定対象部材10に固定していくことができる。
【0081】
また、例えば、3つ以上の保持孔46A、46B、46Cが存在する場合において、電線22の経路に沿っていずれか一方の端部の保持孔(例えば、保持孔46C)を基準とし、保持孔46A、46B、46Cにおける車両固定用部品50の移動可能量が当該保持孔(例えば、保持孔46C)から遠ざかる程、大きくなるように設定されてもよい。
【0082】
この場合、例えば、基準となる保持孔(例えば、保持孔46C)に保持された車両固定用部品50が先に車両側固定孔10hに固定され、この後、当該基準位置から遠い車両固定用部品50が順次車両側固定孔10hに固定されればよい。上記と同様の理由により、基準となる保持孔(例えば、保持孔46C)に保持された車両固定用部品50によって配線部材20が固定対象部材10により正確に位置決めされる。また、複数の車両側固定孔10hの位置関係と、保持孔46A、46B、46Cの位置関係のずれは、主として他の保持孔(例えば、保持孔46A、46B)において移動可能量の範囲で車両固定用部品50が移動することによって吸収される。
【0083】
図4は第2変形例に係る配線部材220を示す断面図である。この配線部材220は、上記配線部材20に対して、第3シート260が追加して設けられた構成とされている。第3シート260は、第1シート30に対して第2シート40とは反対側に固定される。第3シート260も、第1シート30より高剛性なシートである。第3シート260は、第2シート40と同じ材料によって形成されてもよい。例えば、第2シート40と第3シート260とは、PVC(ポリ塩化ビニル)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PP(ポリプロピレン)、ナイロン等の樹脂によって形成される。好ましくは、第3シート260は、第2シート40と同じ厚みである。つまり、好ましくは、第2シート40と第3シート260とは、同じシート材を加工することによって製造されてもよい。
【0084】
第3シート260は、第1シート30に対して、例えば、溶着、接着、粘着、縫付け等によって固定される。第3シート260と第1シート30との固定箇所は、第1シート30の側縁部に沿った箇所であってもよいし、他の箇所であってもよい。第3シート260は、第1シート30と同じ領域に設けられてもよいし、第1シート30に対して部分的な領域に設けられてもよい。第3シート260は、第2シート40と重なる領域に設けられている。第2シート40における保持孔46A、46B、46Cは、第3シート260と重なる領域に形成されている。第3シート260のうち保持孔46A、46B、46Cの形成領域と重なる領域に重なり保持孔266が形成される。保持孔46A、46B、46C及び保持孔266が形成される領域において、第1シート30が設けられていることは必須ではない。例えば、第2シート及び第3シートが第1シートから側方に突出し、それらのシートが直接接触して重ね合されていてもよい。
【0085】
本例によると、配線部材220が車両に固定された後に、万一固定対象部材等が第1シート30に干渉しても第3シート260によって補強することができる。第2シート40に第3シート260が重ねられることで剛性が高められる。この剛性が高められた部分に保持孔46A、46B、46C及び保持孔266が形成される。このため、車両固定用部品50が高剛性部分にしっかり保持され、配線部材220がより強固に固定される。また、第2シート40と第3シート260とが同じ材料によって形成されるため、配線部材20の製造コストを低減することができる。
【0086】
図5は第3変形例に係る配線部材320を示す平面図である。上記実施形態では、保持孔46A、46B、46Cは、突出片44A、44B、44Cに形成されていた。本変形例では、第1シート30に対応する第1シート330は、電線22が固定された帯状部分331を含む。ここでは、帯状部分331は、電線22の経路に沿う帯状であり、その両側縁部も当該電線22の経路に沿う形状に形成されている。つまり、実施形態とは異なり、突出片が形成されていない。
【0087】
第2シート40に対応する第2シート340は、上記帯状部分331に重なる部分を含む。ここでは、第2シート340は、帯状部分331と同じ形状であり、帯状部分331の全体に重なっている。第2シートは、第1シート330における帯状部分331に対して部分的に重なっていてもよい。第2シートは第1シート330からはみ出ていてもよい。例えば、第2シートは、帯状部分331のうち保持孔346A、346B、346Cが形成された部分を囲む領域のみに形成されていてもよい。
【0088】
上記第2シート340のうち帯状部分331に重なる部分に保持孔346A、346B、346Cが形成されている。ここでは、複数の保持孔346A、346B、346Cは、電線22の両側に交互に形成されたものを含む。ここでは、複数の保持孔346A、346B、346Cが、電線22の両側に交互に形成されている。
【0089】
より具体的には、第2シート340のうち中間部341bの外側寄りの位置に保持孔346Bが形成される。第2シート340のうち両端部341a、341cの内側寄りの位置に保持孔346A、346Cが形成される。第1シート330にも、上記保持孔346A、346B、346Cと同じ位置に、保持孔336が形成される。
【0090】
本変形例によると、配線部材320の縁から部分的に突出する部分が生じ難くなる。これにより、配線部材20の保管、運搬、組付時等に、配線部材20が周辺部材に引っ掛かり難くなる。また、配線部材20が電線22の近くで固定され得る。
【0091】
図6は第4変形例に係る配線部材420を示す断面図である。この変形例では、車両固定用部品50に対応する車両固定用部品450は、追加保持部456を含む。
【0092】
追加保持部456は、追加線状伝送部材を固定可能な部分である。追加線状伝送部材は、上記線状伝送部材と同様に、電気又は光等を伝送する線状の部材であればよい。ここでは、追加線状伝送部材は、追加電線422である例が説明される。追加電線422は、1本であってもよいし、複数本であってもよい。ここでは、複数本の追加電線422が束422Bに束ねられた場合が説明される。
図6において、束ねられた一部の追加電線422が図示されている。
【0093】
車両固定用部品450は、上記実施形態における車両固定用部品50に追加保持部456が一体化された構成とされている。
【0094】
追加保持部456は、頭部52に一体化された基部457Bと、当該基部457Bから外方に延びるベルト部457とを含む。ベルト部457は、追加電線422に巻付可能な帯状に形成されている。ベルト部457の一方主面にその長手方向に沿って複数の係止溝が形成されている。係止溝は、ベルト部457の幅方向に沿って延びる溝である。基部457Bには、ベルト部457が挿通可能な貫通孔457Bhが形成されている。貫通孔457Bh内に、上記係止溝に係止可能な係止爪457Baが形成されている。そして、ベルト部457が追加電線422に巻付けられた状態で、ベルト部457の先端部が上記貫通孔457Bh内に挿入される。この状態で、係止爪457Baがベルト部457の係止溝に係止することで、ベルト部457が追加電線422に巻付いた状態が保たれる。これにより、追加電線422が車両固定用部品450に固定される。かかる車両固定用部品450としては、ワイヤーハーネスを車両に固定するために用いられる、ベルト付クランプ又はベルト付クリップと称される部品が用いられてもよい。
【0095】
本例によると、車両固定用部品450は、第1シート30に固定された電線22の他に、追加保持部456によって追加電線422を固定することができる。例えば、第1シート30に固定された電線22の経路とは異なる経路の追加電線422を、追加保持部456によって保持することができる。追加保持部456は、第1シート30に固定された電線22と同時に固定対象部材10に固定されてもよいし、電線22の固定後に固定対象部材10に固定されてもよい。
【0096】
追加保持部は、上記構成例に限られない。例えば、車両固定用部品における頭部に、追加保持部として、細長い板状又は棒状の長尺部分が一体形成されてもよい。この場合、追加電線が当該追加保持部に沿って配設された状態で、追加電線と追加保持部とに粘着テープ又は結束バンド等の結束部材が巻回されることで、追加電線が追加保持部によって保持される。なお、本実施形態では、車両固定用部品に追加保持部を形成することで追加電線を保持する形態を示したが、以下の形態においても適用することが可能である。すなわち、第2シートに追加保持部を固定するための追加保持孔を設け、追加保持部を追加保持孔を介して第2シートに固定することで追加電線を固定することが可能である。また上記の通り、追加保持部は車両固定用部品の一部として設けられても良いし、別体として設けられても良い。別体として設けられる場合は、保持孔に挿入された車両固定用部品を介して車両の固定対象部材に前記第2シートを保持し、さらに第2シートに追加保持部を固定するための追加保持孔を別途設け、追加保持部を追加保持孔を介して第2シートに固定することで追加電線を固定するように併用することもできるし、追加保持部と追加保持孔のみを有する構成によって、追加電線を固定する構成であってもよい。
【0097】
なお、上記実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせることができる。例えば、実施形態に係る配線部材20と
図5に示す第3変形例に係る配線部材320とが組合わされ、複数の保持孔の一部が突出片に形成され、残部が帯状部分内に形成されてもよい。
【符号の説明】
【0098】
10 固定対象部材
10h 車両側固定孔
18 電気部品
20 配線部材
22 電線(線状伝送部材)
28 コネクタ
30 第1シート
31 中間部
32、33 端部
34A、34B、34C 突出片
36 保持孔
40 第2シート
44A、44B、44C 突出片
46A 保持孔(第1保持孔)
46B 保持孔(第2保持孔)
46C 保持孔
50 車両固定用部品
52 頭部
54 柱状部
56 係止片
220 配線部材
260 第3シート
266 保持孔
320 配線部材
330 第1シート
331 帯状部分
336 保持孔
340 第2シート
341a 端部
341b 中間部
341c 端部
346A、346B、346C 保持孔
420 配線部材
422 追加電線
422B 束
450 車両固定用部品
456 追加保持部
457 ベルト部
457B 基部
457Ba 係止爪
457Bh 貫通孔