IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コニカミノルタ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-画像形成装置 図1
  • 特許-画像形成装置 図2
  • 特許-画像形成装置 図3A
  • 特許-画像形成装置 図3B
  • 特許-画像形成装置 図4
  • 特許-画像形成装置 図5
  • 特許-画像形成装置 図6
  • 特許-画像形成装置 図7
  • 特許-画像形成装置 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20231129BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
G03G15/20 510
G03G21/00 510
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019210577
(22)【出願日】2019-11-21
(65)【公開番号】P2021081647
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-10-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森田 亮
【審査官】山下 清隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-309980(JP,A)
【文献】特開2008-083091(JP,A)
【文献】特開2015-180927(JP,A)
【文献】特開2010-152402(JP,A)
【文献】特開2017-102428(JP,A)
【文献】特開昭52-017030(JP,A)
【文献】特開2006-267674(JP,A)
【文献】特開2013-025060(JP,A)
【文献】特開2007-127759(JP,A)
【文献】特開2018-159852(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
G03G 21/00
G03G 21/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1定着部材と、前記第1定着部材との間でニップ部を形成する第2定着部材とを有する定着部と、
前記第1定着部材と前記第2定着部材とが離間した離間状態と、前記第1定着部材と前記第2定着部材とが圧着した圧着状態との間で前記定着部を遷移させる圧着離間機構と、
前記定着部が前記離間状態から前記圧着状態に遷移する際における、前記第2定着部材に前記第1定着部材からの負荷がかかっていない状態の後の前記圧着離間機構の駆動電流値の変化に基づいて、前記定着部の耐久状態に起因した画像不良を抑制するための所定制御を行う制御部と、
を備え
前記所定制御は、定着部の寿命を判定する制御であり、
前記制御部は、前記第1定着部材および前記第2定着部材が非回転状態の条件において測定された前記駆動電流値に基づいて前記所定制御を行う、
画像形成装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記駆動電流値の最大値に基づいて前記所定制御を行う、
請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記定着部の温度条件において測定された前記駆動電流値に基づいて前記所定制御を行う、
請求項1または請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記第1定着部材における複数の箇所のそれぞれにより前記ニップ部を形成するように前記圧着離間機構を制御し、
前記複数の箇所のそれぞれで前記ニップ部を形成する毎における前記駆動電流値の変化に基づいて前記所定制御を行う、
請求項1~3の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
第1定着部材と、前記第1定着部材との間でニップ部を形成する第2定着部材とを有する定着部と、
前記第1定着部材と前記第2定着部材とが離間した離間状態と、前記第1定着部材と前記第2定着部材とが圧着した圧着状態との間で前記定着部を遷移させる圧着離間機構と、
前記定着部が前記離間状態から前記圧着状態に遷移する際における、前記第2定着部材に前記第1定着部材からの負荷がかかっていない状態の後の前記圧着離間機構の駆動電流値の変化に基づいて、前記定着部の耐久状態に起因した画像不良を抑制するための所定制御を行う制御部と、
を備え、
前記所定制御は、前記駆動電流値の履歴に基づいて前記定着部における寿命時期の予測を行う制御であり
前記制御部は、前記第1定着部材および前記第2定着部材が非回転状態の条件において測定された前記駆動電流値に基づいて前記所定制御を行う、
像形成装置。
【請求項6】
第1定着部材と、前記第1定着部材との間でニップ部を形成する第2定着部材とを有する定着部と、
前記第1定着部材と前記第2定着部材とが離間した離間状態と、前記第1定着部材と前記第2定着部材とが圧着した圧着状態との間で前記定着部を遷移させる圧着離間機構と、
前記定着部が前記離間状態から前記圧着状態に遷移する際における、前記第2定着部材に前記第1定着部材からの負荷がかかっていない状態の後の前記圧着離間機構の駆動電流値の変化に基づいて、前記定着部の耐久状態に起因した画像不良を抑制するための所定制御を行う制御部と、
を備え、
前記所定制御は、前記駆動電流値に基づいて、前記ニップ部の荷重を所定荷重に維持する制御であり
前記制御部は、前記第1定着部材および前記第2定着部材が非回転状態の条件において測定された前記駆動電流値に基づいて前記所定制御を行う、
像形成装置。
【請求項7】
第1定着部材と、前記第1定着部材との間でニップ部を形成する第2定着部材とを有する定着部と、
前記第1定着部材と前記第2定着部材とが離間した離間状態と、前記第1定着部材と前記第2定着部材とが圧着した圧着状態との間で前記定着部を遷移させる圧着離間機構と、
前記定着部が前記離間状態から前記圧着状態に遷移する際における、前記第2定着部材に前記第1定着部材からの負荷がかかっていない状態の後の前記圧着離間機構の駆動電流値の変化に基づいて、前記定着部の耐久状態に起因した画像不良を抑制するための所定制御を行う制御部と、
を備え、
前記所定制御は、前記駆動電流値に基づいて、前記定着部における温度制御であり
前記制御部は、前記第1定着部材および前記第2定着部材が非回転状態の条件において測定された前記駆動電流値に基づいて前記所定制御を行う、
像形成装置。
【請求項8】
前記負荷がかかっていない状態は、前記第1定着部材と前記第2定着部材とが圧着する前における、前記駆動電流値が所定範囲内に収まっている状態を含み、
前記所定範囲は、前記所定制御を行う基準となる基準値よりも駆動電流値が低いレベルの範囲である、
請求項1~の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記第1定着部材と前記第2定着部材とが圧着を開始してから設定位置まで圧着するまでの間を含む期間における、前記駆動電流値の変化に基づいて前記所定制御を行う、
請求項1~の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記駆動電流値に加え、前記第1定着部材および前記第2定着部材の少なくとも1つの径変化に基づいて前記所定制御を行う、
請求項1~の何れか1項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、記録媒体に画像を定着する定着装置を備えた画像形成装置が知られている。定着装置における定着部材や加圧部材の耐久が進むと、ニップ部における荷重減少または荷重増加に起因した画像不良が発生する。
【0003】
このような画像不良を抑制するため、従来においては、印刷枚数の履歴から定着装置の耐久状態を判定していたが、このようにすると、同じ印刷枚数であっても、部品のばらつきによって定着装置の耐久状態が異なるので、耐久状態の判定精度が低くなる。その結果、寿命を迎えていないにも関わらず早期に部品を交換する問題や、想定よりも早く部品が寿命を迎える問題が発生する。
【0004】
このような問題を抑制するため、例えば特許文献1には、定着部材の駆動モーターのトルクに基づいて定着装置の寿命を判断する構成が開示されている。この構成では、定着部材と加圧部材とを圧着させた状態のトルクと、定着部材と加圧部材とを離間させた状態のトルクとの差分に基づいて定着装置の寿命を判断している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-309981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、定着部材の駆動モーターのトルクには、定着部材および加圧部材の耐久状態によるトルク変動以外に、定着部材で用いられる潤滑剤の劣化や駆動ギヤーの劣化等のトルク成分が含まれるので、正確なトルクの差分が得られない可能性がある。
【0007】
また、定着部材および加圧部材を駆動状態とすると、両方の駆動によるトルクはばらつきやすく、かつ、ノイズ成分が大きくなりやすいので、正確なトルクの差分が得られない可能性がある。さらに、冷間時にトルクの差分を測定する場合、例えば、定着ベルト等に癖が付きやすく、ひいては測定が安定しない。また、暖気時にトルクの差分を測定する場合、定着部材等での温度がばらつきやすいので、トルクの差分の測定精度が悪くなる。
【0008】
以上のことから、特許文献1に記載の構成は、定着装置における寿命の判定精度が低く、ひいては定着装置の耐久状態に起因した画像不良が発生するおそれがあった。
【0009】
本発明の目的は、定着部における耐久状態に起因した画像不良を抑制することが可能な画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る画像形成装置は、
第1定着部材と、前記第1定着部材との間でニップ部を形成する第2定着部材とを有する定着部と、
前記第1定着部材と前記第2定着部材とが離間した離間状態と、前記第1定着部材と前記第2定着部材とが圧着した圧着状態との間で前記定着部を遷移させる圧着離間機構と、
前記定着部が前記離間状態から前記圧着状態に遷移する際における、前記第2定着部材に前記第1定着部材からの負荷がかかっていない状態の後の前記圧着離間機構の駆動電流値の変化に基づいて、前記定着部の耐久状態に起因した画像不良を抑制するための所定制御を行う制御部と、
を備え
前記所定制御は、定着部の寿命を判定する制御であり、
前記制御部は、前記第1定着部材および前記第2定着部材が非回転状態の条件において測定された前記駆動電流値に基づいて前記所定制御を行う
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、定着部における耐久状態に起因した画像不良を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施の形態に係る画像形成装置の全体構成を概略的に示す図である。
図2】本実施の形態に係る画像形成装置の制御系の主要部を示す図である。
図3A】離間状態の圧着離間機構を示す図である。
図3B】圧着状態の圧着離間機構を示す図である。
図4】駆動モーターにおける駆動電流値の時間変化を示す図である。
図5】ローラーの硬度と印刷枚数との関係を示す図である。
図6】画像形成装置における所定制御の動作例を示すフローチャートである。
図7】定着部の寿命時期の予測を説明するための図である。
図8図3Aに示す構成において、定着ローラーにおける複数の箇所を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る画像形成装置1の全体構成を概略的に示す図である。図2は、本実施の形態に係る画像形成装置1の制御系の主要部を示す図である。
【0014】
図1に示すように、画像形成装置1は、電子写真プロセス技術を利用した中間転写方式のカラー画像形成装置である。すなわち、画像形成装置1は、感光体ドラム413上に形成されたY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の各色トナー像を中間転写ベルト421に一次転写し、中間転写ベルト421上で4色のトナー像を重ね合わせた後、給紙トレイユニット51a~51cから送出された用紙Sに二次転写することにより、画像を形成する。
【0015】
また、画像形成装置1には、YMCKの4色に対応する感光体ドラム413を中間転写ベルト421の走行方向に直列配置し、中間転写ベルト421に一回の手順で各色トナー像を順次転写させるタンデム方式が採用されている。
【0016】
図2に示すように、画像形成装置1は、画像読取部10、操作表示部20、画像処理部30、画像形成部40、用紙搬送部50、定着部60および制御部101を備える。
【0017】
制御部101は、CPU(Central Processing Unit)102、ROM(Read Only Memory)103、RAM(Random Access Memory)104等を備える。CPU102は、ROM103から処理内容に応じたプログラムを読み出してRAM104に展開し、展開したプログラムと協働して画像形成装置1の各ブロック等の動作を集中制御する。このとき、記憶部72に格納されている各種データが参照される。記憶部72は、例えば不揮発性の半導体メモリ(いわゆるフラッシュメモリ)やハードディスクドライブで構成される。
【0018】
制御部101は、通信部71を介して、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)等の通信ネットワークに接続された外部の装置(例えばパーソナルコンピューター)との間で各種データの送受信を行う。制御部101は、例えば、外部の装置から送信された画像データ(入力画像データ)を受信し、この画像データに基づいて用紙Sに画像を形成させる。通信部71は、例えばLANカード等の通信制御カードで構成される。
【0019】
図1に示すように、画像読取部10は、ADF(Auto Document Feeder)と称される自動原稿給紙装置11および原稿画像走査装置12(スキャナー)等を備えて構成される。
【0020】
自動原稿給紙装置11は、原稿トレイに載置された原稿Dを搬送機構により搬送して原稿画像走査装置12へ送り出す。自動原稿給紙装置11により、原稿トレイに載置された多数枚の原稿Dの画像(両面を含む)を連続して一挙に読み取ることが可能となる。
【0021】
原稿画像走査装置12は、自動原稿給紙装置11からコンタクトガラス上に搬送された原稿又はコンタクトガラス上に載置された原稿を光学的に走査し、原稿からの反射光をCCD(Charge Coupled Device)センサー12aの受光面上に結像させ、原稿画像を読み取る。画像読取部10は、原稿画像走査装置12による読取結果に基づいて入力画像データを生成する。この入力画像データには、画像処理部30において所定の画像処理が施される。
【0022】
図2に示すように、操作表示部20は、例えばタッチパネル付の液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)で構成され、表示部21及び操作部22として機能する。表示部21は、制御部101から入力される表示制御信号に従って、各種操作画面、画像の状態、各機能の動作状況等の表示を行う。操作部22は、テンキー、スタートキー等の各種操作キーを備え、ユーザーによる各種入力操作を受け付けて、操作信号を制御部101に出力する。
【0023】
画像処理部30は、入力画像データに対して、初期設定又はユーザー設定に応じたデジタル画像処理を行う回路等を備える。例えば、画像処理部30は、制御部101の制御下で、階調補正データ(階調補正テーブル)に基づいて階調補正を行う。また、画像処理部30は、入力画像データに対して、階調補正の他、色補正、シェーディング補正等の各種補正処理や、圧縮処理等を施す。これらの処理が施された画像データに基づいて、画像形成部40が制御される。
【0024】
図1に示すように、画像形成部40は、入力画像データに基づいて、Y成分、M成分、C成分、K成分の各有色トナーによる画像を形成するための画像形成ユニット41Y、41M、41C、41K、中間転写ユニット42等を備える。
【0025】
Y成分、M成分、C成分、K成分用の画像形成ユニット41Y、41M、41C、41Kは、同様の構成を有する。図示及び説明の便宜上、共通する構成要素は同一の符号で示し、それぞれを区別する場合には符号にY、M、C、又はKを添えて示すこととする。図1では、Y成分用の画像形成ユニット41Yの構成要素についてのみ符号が付され、その他の画像形成ユニット41M、41C、41Kの構成要素については符号が省略されている。
【0026】
画像形成ユニット41は、露光装置411、現像装置412、感光体ドラム413、帯電装置414、及びドラムクリーニング装置415等を備える。
【0027】
感光体ドラム413は、例えばドラム状の金属基体の外周面に、有機光導電体を含有させた樹脂よりなる感光層が形成された有機感光体よりなる。
【0028】
制御部101は、感光体ドラム413を回転させる駆動モーター(図示略)に供給される駆動電流を制御することにより、感光体ドラム413を一定の周速度で回転させる。
【0029】
帯電装置414は、例えば帯電チャージャーであり、コロナ放電を発生させることにより、光導電性を有する感光体ドラム413の表面を一様に負極性に帯電させる。
【0030】
露光装置411は、例えば半導体レーザーで構成され、感光体ドラム413に対して各色成分の画像に対応するレーザー光を照射する。その結果、感光体ドラム413の表面のうちレーザー光が照射された画像領域には、背景領域との電位差により各色成分の静電潜像が形成される。
【0031】
現像装置412は、二成分逆転方式の現像装置であり、感光体ドラム413の表面に各色成分の現像剤を付着させることにより静電潜像を可視化してトナー像を形成する。
【0032】
現像装置412には、例えば帯電装置414の帯電極性と同極性の直流現像バイアス、または交流電圧に帯電装置414の帯電極性と同極性の直流電圧が重畳された現像バイアスが印加される。その結果、露光装置411によって形成された静電潜像にトナーを付着させる反転現像が行われる。
【0033】
ドラムクリーニング装置415は、感光体ドラム413の表面に当接され、弾性体よりなる平板状のドラムクリーニングブレード等を有し、中間転写ベルト421に転写されずに感光体ドラム413の表面に残留するトナーを除去する。
【0034】
中間転写ユニット42は、中間転写ベルト421、一次転写ローラー422、複数の支持ローラー423、二次転写ローラー424、及びベルトクリーニング装置426等を備える。
【0035】
中間転写ベルト421は無端状ベルトで構成され、複数の支持ローラー423にループ状に張架される。複数の支持ローラー423のうちの少なくとも1つは駆動ローラーで構成され、その他は従動ローラーで構成される。例えば、K成分用の一次転写ローラー422よりもベルト走行方向下流側に配置されるローラー423Aが駆動ローラーであることが好ましい。これにより、一次転写部におけるベルトの走行速度を一定に保持しやすくなる。駆動ローラー423Aが回転することにより、中間転写ベルト421は矢印A方向に一定速度で走行する。
【0036】
中間転写ベルト421は、導電性および弾性を有するベルトであり、表面に高抵抗層を有する。中間転写ベルト421は、制御部101からの制御信号によって回転駆動される。
【0037】
一次転写ローラー422は、各色成分の感光体ドラム413に対向して、中間転写ベルト421の内周面側に配置される。中間転写ベルト421を挟んで、一次転写ローラー422が感光体ドラム413に圧接されることにより、感光体ドラム413から中間転写ベルト421へトナー像を転写するための一次転写ニップが形成される。
【0038】
二次転写ローラー424は、駆動ローラー423Aのベルト走行方向下流側に配置されるバックアップローラー423Bに対向して、中間転写ベルト421の外周面側に配置される。中間転写ベルト421を挟んで、二次転写ローラー424がバックアップローラー423Bに圧接されることにより、中間転写ベルト421から用紙Sへトナー像を転写するための二次転写ニップが形成される。
【0039】
一次転写ニップを中間転写ベルト421が通過する際、感光体ドラム413上のトナー像が中間転写ベルト421に順次重ねて一次転写される。具体的には、一次転写ローラー422に一次転写バイアスを印加し、中間転写ベルト421の裏面側、つまり一次転写ローラー422と当接する側にトナーと逆極性の電荷を付与することにより、トナー像は中間転写ベルト421に静電的に転写される。
【0040】
その後、用紙Sが二次転写ニップを通過する際、中間転写ベルト421上のトナー像が用紙Sに二次転写される。具体的には、二次転写ローラー424に二次転写バイアスを印加し、用紙Sの裏面側、つまり二次転写ローラー424と当接する側にトナーと逆極性の電荷を付与することにより、トナー像は用紙Sに静電的に転写される。トナー像が転写された用紙Sは定着部60に向けて搬送される。
【0041】
ベルトクリーニング装置426は、二次転写後に中間転写ベルト421の表面に残留する転写残トナーを除去する。
【0042】
定着部60は、用紙Sの定着面、つまりトナー像が形成されている面側に配置される定着面側部材を有する上側定着部60A、用紙Sの裏面つまり定着面の反対の面側に配置される裏面側支持部材を有する下側定着部60B、および加熱源等を備える。定着面側部材に裏面側支持部材が圧接されることにより、用紙Sを挟持して搬送する定着ニップが形成される。
【0043】
定着部60は、トナー像が二次転写され、搬送されてきた用紙Sをニップ部で加熱、加圧することにより、用紙Sにトナー像を定着させる。定着部60は、定着器F内にユニットとして配置される。
【0044】
上側定着部60Aは、定着面側部材である無端状の定着ベルト61、加熱ローラー62および定着ローラー63を有する。定着ベルト61は、加熱ローラー62と定着ローラー63とによって張架されている。
【0045】
下側定着部60Bは、裏面側支持部材である加圧ローラー64を有する。加圧ローラー64は、定着ベルト61における定着ローラー63に巻き掛けられた部分との間で用紙Sを挟持して搬送するニップ部を形成している。つまり、ニップ部は、定着ローラー63と加圧ローラー64との間で形成される。
【0046】
また、本実施の形態には、定着ベルト61における定着ローラー63に巻き掛けられている部分に加圧ローラー64を圧着/離間させる圧着離間機構65が設けられている。図3Aおよび図3Bに示すように、圧着離間機構65は、筐体65Aと、回動軸65Bと、付勢部材65Cと、カム65Dと、駆動モーター65Eと、電流検出部65Fとを有する。
【0047】
筐体65Aは、加圧ローラー64を収容しており、回動軸65Bに回動可能に支持されている。付勢部材65Cは、筐体65Aを上側定着部60A側に付勢する。カム65Dは、回転可能に設けられており、楕円形状に構成されている。カム65Dは、付勢部材65Cを押圧する。カム65Dが回転すると、付勢部材65Cの位置が上下に移動する。これにより、定着ローラー63と加圧ローラー64との圧着/離間が制御される。なお、図3Aおよび図3Bでは、定着ベルト61の図示を省略している。
【0048】
駆動モーター65Eは、カム65Dを回転駆動する駆動源であり、制御部101によって制御される。つまり、圧着離間機構65は、駆動パラメーターの一例としての駆動電流値によって駆動モーター65Eが駆動されることにより、離間状態と圧着状態との間で定着部60を遷移させる。
【0049】
離間状態は、定着ローラー63(定着ベルト61における定着ローラー63が巻き掛けられた部分)と加圧ローラー64とが離間した状態である(図3A参照)。圧着状態は、定着ベルト61を介して定着ローラー63と加圧ローラー64とが圧着した状態である(図3B参照)。定着ローラー63は、本発明の「第1定着部材」に対応し、加圧ローラー64は、本発明の「第2定着部材」に対応する。
【0050】
電流検出部65Fは、駆動モーター65Eの駆動電流値を検出する。電流検出部65Fにより検出された駆動電流値は、時系列データとして記憶部72に逐次記憶される。制御部101は、当該駆動電流値に基づいて、定着部60の耐久状態に起因した画像不良を抑制するための所定制御を行う。所定制御については後述する。
【0051】
図1に戻り、用紙搬送部50は、給紙部51、排紙部52、及び搬送経路部53等を備える。給紙部51を構成する3つの給紙トレイユニット51a~51cには、坪量やサイズ等に基づいて識別された用紙S(規格用紙、特殊用紙)が予め設定された種類毎に収容される。搬送経路部53は、レジストローラー対53aを含む複数の搬送ローラー対を有する。レジストローラー対53aが配設されたレジストローラー部は、用紙Sの傾きおよび片寄りを補正する。
【0052】
給紙トレイユニット51a~51cに収容されている用紙Sは、最上部から一枚ずつ送出され、搬送経路部53により画像形成部40に搬送される。画像形成部40においては、中間転写ベルト421のトナー像が用紙Sの一方の面に一括して二次転写され、定着部60において定着工程が施される。画像形成された用紙Sは、排紙ローラー52aを備えた排紙部52により機外に排紙される。
【0053】
次に、定着部60の耐久状態に起因した画像不良を抑制するための所定制御について説明する。
【0054】
制御部101は、圧着離間機構65において、離間状態から圧着状態に遷移する際における所定状態の後の駆動電流値の変化に基づいて、定着部60の耐久状態に起因した画像不良を抑制するための所定制御を行う。
【0055】
図4に示すように、圧着離間機構65の駆動モーター65Eを駆動すると、上側定着部60Aと下側定着部60Bとが離間した離間時から、上側定着部60Aと下側定着部60Bとが圧着した圧着時までの間で定着部60が遷移する際、駆動電流値が変動する。
【0056】
離間時においては、駆動電流値は、駆動開始時における所定の突入電流が発生する駆動開始状態の後、所定状態で推移する。所定状態は、上側定着部60Aと下側定着部60Bが離間しているので、加圧ローラー64に上側定着部60Aからの負荷がかかってない状態である。そのため、所定状態では、定着ローラー63と加圧ローラー64とが圧着する前における、駆動電流値が所定範囲内に収まっている状態である。
【0057】
所定範囲は、例えば、上側定着部60Aと下側定着部60Bとが圧着時の駆動電流よりも十分に小さい電流値となるレベルの範囲(例えば、50mA等)である。具体的には、所定範囲は、所定制御を行う基準となる基準値(後述する所定電流値)よりも駆動電流値が低いレベルの範囲であり、実験等で適宜設定可能な範囲である。
【0058】
圧着時においては、上側定着部60Aと下側定着部60Bとが圧着していくことにより、加圧ローラー64に上側定着部60Aからかかる負荷が大きくなっていくので、駆動電流値が増大していく(実線D1参照)。そして、下側定着部60Bが、画像形成において設定された設定位置(駆動電流値が最大値(例えば、850mA等)となる位置)まで上側定着部60Aに圧着されたら、駆動モーター65Eの駆動が終了して駆動電流値が低下していく。
【0059】
しかし、定着部60の耐久が進むと、下側定着部60Bが設定位置まで上側定着部60Aに圧着されても、そのニップ圧が所望の圧とならなくなる。
【0060】
例えば、加圧ローラー64および定着ローラー63の少なくとも一方の硬度が、耐久が進むことに起因して減少する場合がある。例えば、ローラーの弾性層がゴム等の材料で構成されている場合、図5に示すように、印刷枚数が進むにつれ、ローラーの硬度が減少することが確認されている(実線H参照)。
【0061】
なお、本実施の形態に係る定着ローラー63は、外径が90mmであり、表面の弾性層が、厚さ20mm、アスカーC硬度35°のシリコンゴムである。また、加圧ローラー64は、外径が80mmであり、表面の弾性層が、厚さ6mm、アスカーC硬度65°のシリコンゴムである。
【0062】
ローラーの硬度が減少していくと、定着ローラー63と加圧ローラー64との間の荷重が減少してニップ圧が所望の圧よりも小さくなる。その結果、定着部60において、定着不良等の画像不良が生じる。
【0063】
ここで、設定位置におけるニップ圧が所望の圧よりも小さくなると、定着ローラー63と加圧ローラー64との間の荷重の減少により、圧着離間機構65における駆動モーター65Eによる駆動電流値の最大値も小さくなる。そのため、図4に示す破線D2のように、駆動電流値の最大値が、所望の圧となる場合(例えば、実線D1)よりも小さくなる。
【0064】
このことから、ローラーの硬度と、定着ローラー63と加圧ローラー64との圧着の設定位置での駆動電流値とは、比例関係であることがわかる。言い換えると、ローラーの硬度が減少すると、当該駆動電流値も減少することとなる。
【0065】
そこで、本実施の形態では、所定状態の後の駆動電流値の変化に基づいて、制御部101が所定制御を行う。つまり、制御部101は、定着ローラー63と加圧ローラー64とが圧着を開始してから設定位置まで圧着するまでの間を含む期間における、駆動電流値の変化に基づいて所定制御を行う。
【0066】
所定制御としては、定着部60の寿命を判定する制御が挙げられる。
【0067】
具体的には、制御部101は、駆動電流値の最大値に基づいて定着部60が寿命であるか否かについて判定する。より詳細には、制御部101は、駆動電流値の最大値が所定電流値以下である場合、定着部60が寿命であると判定する。
【0068】
所定電流値は、定着ローラー63の硬度および加圧ローラー64の硬度の少なくとも一方が小さくなり過ぎることに起因して、画像不良が発生する程度までニップ圧が弱くなったときの駆動電流値(例えば、700mA)である。所定電流値は、ローラーの硬度が、例えば図5に示す画像不良が発生する硬度(破線参照)のときの駆動電流値に近い値等、適宜設定可能である。
【0069】
図4に示す例では、破線D2の駆動電流値は、所定電流値より最大値が小さいので、制御部101は、定着部60が寿命であると判定することとなる。
【0070】
これにより、ユーザーが定着部60の寿命を正確に把握することができるので、結果として定着部60の耐久状態に起因した画像不良を抑制することができる。
【0071】
また、制御部101は、所定条件において測定された駆動電流値に基づいて、所定制御を行う。
【0072】
所定条件としては、例えば、定着部60の温度条件が挙げられる。
【0073】
定着部60は、動作中は高温状態とされるので、定着ローラー63および加圧ローラー64の熱膨張または熱収縮に起因する体積変動が発生する。そのため、定着部60の温度条件がばらつくと、定着ローラー63および加圧ローラー64の体積変動量のばらつきも大きくなり、ひいては測定される駆動電流値のばらつきの原因となる可能性がある。
【0074】
そこで、定着部60の温度条件を室温状態等、一定の温度条件とすることで定着部60の温度のばらつきを低減し、ひいては駆動電流値のばらつきを低減することができる。
【0075】
また、所定条件としては、上側定着部60Aおよび下側定着部60Bが非回転状態である条件が挙げられる。
【0076】
上側定着部60Aおよび下側定着部60Bがともに回転した状態で圧着状態とすると、駆動電流値のノイズ成分が大きくなり、ひいては駆動電流値の測定精度が低下する。
【0077】
そこで、上側定着部60Aおよび下側定着部60Bを非回転状態とすることで駆動電流値の測定を行うことにより、駆動電流値のノイズ成分が大きくなることを低減し、ひいては駆動電流値の測定精度を向上させることができる。
【0078】
また、制御部101は、定着部60が寿命であると判定した場合、定着部60が寿命である旨をユーザーに報知する報知指令を出力する。報知指令は、例えば表示部21等に表示される文字や、アラーム等の音声等、ユーザーに把握可能なものである限りどのようなものでも良い。
【0079】
これにより、定着部60が寿命であることをユーザーが迅速に把握することができる。
【0080】
以上のように構成された画像形成装置1における所定制御の動作例について説明する。図6は、画像形成装置1における所定制御の動作例を示すフローチャートである。図6における処理は、例えば、画像形成動作開始前において適宜実行される。
【0081】
図6に示すように、制御部101は、駆動電流値の測定を開始する(ステップS101)。そして、制御部101は、圧着離間機構65における圧着動作を開始する(ステップS102)。
【0082】
次に、制御部101は、圧着離間機構65における圧着動作が終了したか否かについて判定する(ステップS103)。判定の結果、圧着動作が終了していない場合(ステップS103、NO)、ステップS103の処理が繰り返される。
【0083】
一方、圧着動作が終了した場合(ステップS103、YES)、制御部101は、駆動電流値の測定を終了する(ステップS104)。そして、制御部101は、測定した駆動電流値の時系列データを参照し、所定状態から外れた後の駆動電流値の最大値を抽出する(ステップS105)。
【0084】
次に、制御部101は、駆動電流値の最大値が所定電流値以下であるか否かについて判定する(ステップS106)。判定の結果、最大値が所定電流値以下である場合(ステップS106、YES)、制御部101は、定着部60が寿命であると判定する(ステップS107)。
【0085】
一方、最大値が所定電流値より大きい場合(ステップS106、NO)、制御部101は、定着部60が寿命ではないと判定する(ステップS108)。ステップS107またはステップS108の後、本制御は終了する。
【0086】
以上のように構成された本実施の形態によれば、制御部101が、圧着離間機構65の駆動モーター65Eの駆動電流値に基づいて定着部60の耐久状態に起因した画像不良を抑制するための所定制御を行う。具体的には、制御部101が駆動電流値の最大値が所定電流値以下である場合、定着部60が寿命であると判定する。
【0087】
その結果、ユーザーが定着部60の寿命を正確に把握することができるので、結果として定着部60の耐久状態に起因した画像不良を抑制することができる。
【0088】
また、圧着離間機構65の駆動モーター65Eにおけるギヤー、および、その潤滑剤は、圧着離間動作時のみ負荷を受けるので、一度圧着動作が完了すると、通紙中においては、ほとんど負荷がない状態となる。そのため、ローラー等を回転駆動するモーターにおけるギヤーと比較すると、駆動モーター65Eのギヤーの劣化量が大幅に小さいものである。
【0089】
すなわち、駆動モーター65Eのギヤーの劣化量は、定着ローラー63および加圧ローラー64の劣化量に対して無視できるレベルである。ローラー等を回転駆動するモーターにおけるギヤーは、動作中、常時負荷を受け続けるので、劣化量が大きくなり、ひいては測定すべきパラメーターに影響を与えやすい。
【0090】
それに対し、本実施の形態では、駆動モーター65Eにおけるギヤーの劣化量が、駆動電流値の測定に影響を与えることないので、駆動電流値の測定精度を向上させることができる。その結果、定着部60の寿命の判定精度を向上させることができるので、結果として定着部60の耐久状態に起因した画像不良を抑制することができる。
【0091】
また、制御部101が所定条件において測定された駆動電流値に基づいて所定制御を行うので、駆動電流値における外乱による影響度を低減することができる。その結果、駆動電流値の測定精度を向上させて正確に定着部60の寿命を判定しやすくすることができる。
【0092】
なお、上記実施の形態では、所定制御として、定着部60における寿命を判定する制御を例示したが、本開示はこれに限定されず、定着部60における寿命を判定する制御以外の制御であっても良い。
【0093】
例えば、所定制御として、定着部60の耐久状態に起因した画像不良を低減する制御が適用されても良い。
【0094】
例えば、制御部101は、駆動電流値に基づいて、定着ローラー63と加圧ローラー64とのニップ部の荷重を所定荷重に維持する制御を、定着部60の耐久状態に起因した画像不良を低減する制御として行う。所定荷重は、例えばニップ部が所望の圧となるような荷重である。
【0095】
つまり、制御部101は、駆動電流値の最大値が所定電流値以下である場合、駆動モーター65Eによりカム65Dを回転させて、加圧ローラー64の位置を設定位置よりも定着ローラー63側にして、ニップ部の荷重を上昇させるように制御する。
【0096】
こうすることで、ニップ部の荷重が、耐久が進んでいない状態のときの荷重に近づけることができるので、定着部60における画像不良を低減し、ひいては定着部60の耐久状態に起因した画像不良の発生を抑制することができる。また、定着部60の寿命を延ばすことができる。
【0097】
また、制御部101は、駆動電流値に基づいて定着部60における温度制御を、定着部60の耐久状態に起因した画像不良を低減する制御として行う。
【0098】
つまり、制御部101は、駆動電流値の最大値が所定電流値以下である場合、定着部60の加熱ローラー62における加熱量を上昇させるように制御する。
【0099】
こうすることで、定着部60における温度が上昇してニップ部を通過する用紙Sに画像が定着しやすくなるので、定着部60における画像不良を低減し、ひいては定着部60の耐久状態に起因した画像不良の発生を抑制することができる。また、定着部60の寿命を延ばすことができる。
【0100】
また、所定制御として、定着部60における寿命時期の予測を行う制御が適用されても良い。
【0101】
具体的には、制御部101は、駆動電流値の履歴に基づいて定着部60における寿命時期の予測を行う。制御部101は、例えば、任意のタイミングで測定した駆動電流値を複数個、印刷枚数毎に記憶部72に記憶させる。
【0102】
そして、図7に示すように、横軸を印刷枚数とし、縦軸を当該印刷枚数に対応する駆動電流値としたグラフに示した、印刷枚数と駆動電流値との関係に基づいて、制御部101は、定着部60における寿命時期の予測を行う。
【0103】
例えば、印刷枚数T1,T2,T3と、それぞれの印刷枚数に対応する駆動電流値A1,A2,A3が測定されていたとする。
【0104】
印刷枚数T1は、最少の印刷枚数である。印刷枚数T2は、印刷枚数T1より多い印刷枚数である。印刷枚数T3は、最多の印刷枚数である。駆動電流値A1は、印刷枚数T1に対応する。駆動電流値A2は、印刷枚数T2に対応する。駆動電流値A3は、印刷枚数T3に対応する。
【0105】
また、図7におけるP1は、印刷枚数T1および駆動電流値A1に対応するプロットである。P2は、印刷枚数T2および駆動電流値A2に対応するプロットである。P3は、印刷枚数T3および駆動電流値A3に対応するプロットである。
【0106】
制御部101は、各プロットのP1,P2,P3の近似直線Lを生成し、当該近似直線Lが所定電流値に到達する印刷枚数T4を、定着部60における寿命時期であると判定する。
【0107】
このように、定着部60における寿命時期を予測することにより、定着部60の耐久状態に起因した画像不良の発生を未然に防ぐことができる。
【0108】
また、寿命時期の予測結果は、例えば、寿命時期であるT4と、最新の印刷枚数であるT3との差分等、残りの印刷可能な印刷枚数や、寿命時期となる印刷枚数等とすることができる。
【0109】
また、駆動電流値の履歴については、画像形成装置1の使用開始時から所定印刷枚数毎の駆動電流値が記憶されたものでも良いし、任意のタイミングの駆動電流値が記憶されたものでも良い。
【0110】
また、上記実施の形態では、例えば、定着ローラー63等におけるニップ部に対応する箇所における駆動電流値のみを測定する構成であったが、本開示はこれに限定されない。制御部101は、例えば、図8に示すように、定着ローラー63における複数の箇所X1,X2,X3,X4のそれぞれによりニップ部を形成するように圧着離間機構65を制御する。
【0111】
複数の箇所X1,X2,X3,X4のそれぞれを、ニップ部に対応する位置にする方法については、例えば定着ローラー63の芯金に、当該芯金と異なる物質で、複数の箇所X1,X2,X3,X4のそれぞれに印をつける。そして、各印を光学センサーで読み取ることで、各箇所X1,X2,X3,X4の回転角度が判断可能となる。こうすることで、離間状態において、定着ローラー63の複数の箇所のそれぞれを、ニップ部に対応する位置に合わせることが可能となる。図8では、X1がニップ部に対応する位置に位置する例が示されている。
【0112】
そして、複数の箇所X1,X2,X3,X4のうちの一つをニップ部に対応する位置に合わせて定着ローラー63および加圧ローラー64を圧着状態とし、そのときの駆動電流値を測定し、測定終了後、離間状態とする。その後、別の箇所をニップ部に対応する位置に合わせる。その後、再度、定着ローラー63および加圧ローラー64を圧着状態として駆動電流値を測定する工程を繰り返していく。
【0113】
すなわち、制御部101は、定着ローラー63における複数の箇所のそれぞれでニップ部を形成する毎における駆動電流値の変化に基づいて所定制御を行う。
【0114】
このようにすることで、定着ローラー63における複数の箇所の耐久状態を判定することが可能となる。その結果、定着ローラー63の耐久状態を部分的に判定することができる。また、複数の箇所における駆動電流値の平均値を算出することにより、部材全体の耐久状態を判定することができる。
【0115】
また、上記実施の形態では、駆動電流値に基づいて所定制御を行っていたが、本開示はこれに限定されない。例えば、制御部101が駆動電流値に加え、定着ローラー63および加圧ローラー64の少なくとも1つの径に基づいて所定制御を行っても良い。
【0116】
例えば、離間状態から圧着状態に遷移する間の定着ローラー63等の径は、耐久が進むにつれ経時的に変化する。
【0117】
そのため、駆動電流値に加えて、ローラーの径の変化を組み合わせることにより、より精度良く定着部60の耐久状態を判定することができ、ひいては定着部60の耐久状態に起因した画像不良を抑制することができる。
【0118】
ところで、ローラーの径変化のみで定着部60の耐久状態を判定する構成であると、ローラーの硬度変動の方が早く進むような場合、定着部60の耐久状態の判定精度が不十分になるので、当該判定を行う構成として改善の余地がある。
【0119】
しかし、本実施の形態のように、駆動モーター65Eの駆動電流値に基づいて、間接的にローラーの硬度の減少を検出して、定着部60の耐久状態を判定するので、定着部60の耐久状態の判定精度を向上させることができる。
【0120】
また、駆動電流値に加えてローラーの径変化を所定制御に用いることで、定着部60の耐久状態の判定精度をさらに向上させることができる。
【0121】
また、上記実施の形態では、駆動電流値に基づいて所定制御を行っていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、駆動電流値の最大値をローラーの硬度に変換した上で、ローラーの硬度に基づいて所定制御を行うようにしても良い。
【0122】
駆動電流値のローラーの硬度への変換方法としては、例えば、駆動電流値に対応付けたローラーの硬度を記載したテーブル等を記憶部72等に記憶しておき、制御部101が記憶部72を参照することで、ローラーの硬度を取得する方法等が挙げられる。
【0123】
また、上記実施の形態では、所定状態を、駆動電流値が所定範囲内に収まっている状態である定着ローラー63と加圧ローラー64とが圧着する前における離間時の状態としていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、所定状態が、定着ローラー63と加圧ローラー64との圧着後における微小時間経過時等の状態を含んでいても良い。
【0124】
所定状態が、定着ローラー63と加圧ローラー64との圧着後における微小時間経過時を含む場合、制御部101は、駆動電流値が所定範囲を超えたタイミング以降の駆動電流値の変化に基づいて所定制御を行うようにしても良い。
【0125】
また、所定状態は、定着ローラー63と加圧ローラー64との圧着開始時よりも微小時間前までの状態としても良い。この場合、制御部101は、所定状態終了時、つまり、定着ローラー63と加圧ローラー64との圧着開始前のタイミング以降の駆動電流値の変化に基づいて所定制御を行う。
【0126】
また、所定状態は、図4に示す駆動開始状態のように、駆動電流値が安定していない状態を含んでいても良い。
【0127】
また、上記実施の形態では、定着部60の部材が、耐久が進むほどローラーの硬度が減少するものであったが、耐久が進むほどローラーの硬度が増大する部材が存在する場合は、当該部材が定着部60の部材に適用されていても良い。このような部材の場合、例えば、ローラーの硬度が増大するほど、ニップ部の荷重が増加して、しわ等の画像不良が発生するおそれがある。そのため、この場合は、硬度増大により駆動電流値が増えすぎることをもって、所定制御を行うようにしても良い。
【0128】
また、上記実施の形態では、定着部60における、定着ローラー63や加圧ローラー64等の各部材の寿命については言及していなかったが、定着ローラー63および加圧ローラー64の少なくとも一方の寿命を判定するようにしても良い。例えば、ローラーの弾性層の材質の柔らかい方を優先して、寿命であるか否かについて判定しても良いし、各部材の使用履歴に基づいて定着ローラー63および加圧ローラー64の何れか一方が寿命であるか否かについて判定しても良い。
【0129】
また、上記実施の形態では、駆動電流値を駆動パラメーターとして例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、圧着離間機構65の駆動モーター65Eの駆動トルク等、駆動電流値以外で代用可能な駆動パラメーターがある場合、駆動電流値以外の駆動パラメーターを用いても良い。
【0130】
その他、上記実施の形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0131】
1 画像形成装置
60 定着部
60A 上側定着部
60B 下側定着部
61 定着ベルト
62 加熱ローラー
63 定着ローラー
64 加圧ローラー
65 圧着離間機構
65A 筐体
65B 回動軸
65C 付勢部材
65D カム
65E 駆動モーター
65F 電流検出部
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8