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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】インクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20231129BHJP
   B41J 2/165 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
B41J2/01 305
B41J2/165 207
B41J2/01 401
B41J2/01 451
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019212474
(22)【出願日】2019-11-25
(65)【公開番号】P2021084234
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-10-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 洋
(72)【発明者】
【氏名】岡田 雅典
【審査官】小野 郁磨
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-030576(JP,A)
【文献】特開2012-232832(JP,A)
【文献】特開2018-083313(JP,A)
【文献】特開2011-121226(JP,A)
【文献】特開2006-021399(JP,A)
【文献】特開2013-023293(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出する複数のノズルを有する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドと対向する位置に記録媒体を搬送するとともに、前記記録媒体への画像形成に寄与するタイミングとは異なるタイミングで前記インクを吐出するフラッシングを前記記録ヘッドが実行したときに、前記インクを通過させる開口部をベルト幅方向に並べた開口部群を、前記記録媒体の搬送方向に複数有する無端状の搬送ベルトと、
前記搬送ベルトの走行による前記開口部群の通過を検知する第1検知センサーと、
前記記録媒体を搬送して前記搬送ベルトに供給する複数の搬送ローラー対と、
前記搬送ベルトに向かう前記記録媒体の通過を検知する第2検知センサーと、
前記複数の搬送ローラー対の駆動を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記第1検知センサーによる前記開口部群の通過の検知に基づいて、前記搬送ベルト上で、前記開口部群に対して所定の位置関係となる前記記録媒体の合流目標位置を認識するとともに、前記第2検知センサーによる前記記録媒体の通過の検知に基づいて、前記開口部群の通過の検知時点における前記記録媒体の搬送位置を認識し、前記搬送ベルトの走行により、前記開口部群の通過の検知時点における前記合流目標位置が、前記複数の搬送ローラー対によって搬送される前記記録媒体と合流する合流地点に到達するまでの前記搬送ベルトの走行時間と、前記記録媒体が前記開口部群の通過の検知時点における前記搬送位置から前記合流地点に到達するまでの前記記録媒体の搬送時間とが等しくなるように、前記複数の搬送ローラー対の少なくとも1つの駆動を制御して、前記合流地点に向かう前記記録媒体の搬送速度を調整し、
前記制御部は、前記搬送ベルトの前記走行時間と、前記記録媒体の前記搬送時間とが等しくなるときの前記記録媒体の前記搬送速度が閾値を超える場合、前記複数の搬送ローラー対の少なくとも1つの駆動を制御して、前記記録媒体の搬送を減速または停止させることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記複数の搬送ローラー対のうち、前記合流地点に最も近い位置にある搬送ローラー対を第1の搬送ローラー対とし、前記第1の搬送ローラー対よりも前記記録媒体の搬送方向の上流側に位置する搬送ローラー対を第2の搬送ローラー対とし、
前記第1の搬送ローラー対から前記合流地点までの前記記録媒体の搬送区間Aの距離をLa(mm)とし、前記搬送区間Aでの前記記録媒体の搬送速度をVa(mm/sec)とし、
前記第2の搬送ローラー対から前記第1の搬送ローラー対までの前記記録媒体の搬送区間B1の距離をLb1(mm)とし、前記搬送区間B1での前記記録媒体の搬送速度をVb1(mm/sec)とし、
前記開口部群の通過の検知時点における前記記録媒体の前記搬送位置から前記第2の搬送ローラー対までの前記記録媒体の搬送区間B2の距離をLb2(mm)とし、前記搬送区間B2での前記記録媒体の搬送速度をVb2(mm/sec)とし、
前記開口部群の通過の検知時点での前記搬送ベルトの前記合流目標位置が、前記搬送ベルトの走行によって前記合流地点に到達するまでの前記搬送ベルトの走行区間Sの距離をLs(mm)とし、前記走行区間Sでの前記搬送ベルトの走行速度をVs(mm/sec)としたとき、
前記制御部は、以下の条件式(1)を満足するように、前記第1の搬送ローラー対および前記第2の搬送ローラー対の少なくとも一方の駆動を制御することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置;
(Ls/Vs)=(La/Va)+(Lb1/Vb1)
+(Lb2/Vb2) ・・・(1)
である。
【請求項3】
前記第1の搬送ローラー対は、前記記録媒体を所定のタイミングで前記搬送ベルトに供給するレジストローラー対であり、
前記搬送区間Aでの前記記録媒体の搬送速度Vaは、前記走行区間Sでの前記搬送ベルトの走行速度Vsと等しく、
前記制御部は、前記条件式(1)を満足するように、前記第2の搬送ローラー対の駆動を制御することを特徴とする請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記搬送ベルトの前記開口部群は、前記搬送ベルトの1周期において、前記搬送方向に不定期に位置し、
前記制御部は、前記搬送ベルトの前記複数の開口部群のうち、前記記録媒体のサイズに応じたパターンで搬送方向に位置する開口部群と開口部群との間に少なくとも1枚の前記記録媒体を前記複数の搬送ローラー対によって供給させることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクを記録媒体に吐出して画像を記録するインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、インクジェットプリンターなどのインクジェット記録装置において、インクの乾燥によるノズルの目詰まりを低減または予防するため、定期的にノズルからインクを吐き出すフラッシング(空吐出)が行われている。例えば特許文献1に記載のインクジェット記録装置では、搬送ベルトに開口部を設けておき、画像形成に供しないインクをノズルから吐出させて上記の開口部を通過させることにより、フラッシングを行うようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-160425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、搬送ベルトの開口部と重なるように記録媒体が搬送ベルトに供給されると、フラッシングの際に上記開口部と対向するタイミングで記録ヘッドのノズルからインクを吐出したときに、吐出されたインクが上記開口部上の記録媒体に着弾する。この場合、記録媒体の記録画像の画質が低下する。このような不都合を回避するためには、搬送ベルト上で開口部と重ならない位置、つまり、搬送ベルト上で開口部に対して所定の位置関係となる位置に記録媒体が載置されるように、搬送ベルトに記録媒体を供給することが必要となる。
【0005】
また、搬送ベルトへの記録媒体の搬送途中では、ローラー表面での記録媒体のスリップ等によって記録媒体の搬送が遅れる場合もある。記録媒体の搬送が遅れると、一定速度で走行する搬送ベルト上で、任意の開口部に対して所定の位置関係となる位置に記録媒体を供給して載置することが困難となる。この場合、フラッシングのときに、吐出されたインクが開口部と重なった記録媒体に着弾して記録画像の画質低下が生じ得る。
【0006】
したがって、記録媒体の搬送が何らかの原因で変動したとしても、搬送ベルト上の特定の位置に記録媒体を載置できるように、記録媒体の供給を制御することが望ましい。しかし、このような記録媒体の供給制御については、特許文献1も含めて未だ提案されていない。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑み、記録媒体の搬送が何らかの原因で変動したとしても、搬送ベルト上の特定の位置に記録媒体を載置して、フラッシングを行ったときに記録画像の画質が低下することを回避できるインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の一側面に係るインクジェット記録装置は、インクを吐出する複数のノズルを有する記録ヘッドと、前記記録ヘッドと対向する位置に記録媒体を搬送するとともに、前記記録媒体への画像形成に寄与するタイミングとは異なるタイミングで前記インクを吐出するフラッシングを前記記録ヘッドが実行したときに、前記インクを通過させる開口部をベルト幅方向に並べた開口部群を、前記記録媒体の搬送方向に複数有する無端状の搬送ベルトと、前記搬送ベルトの走行による前記開口部群の通過を検知する第1検知センサーと、前記記録媒体を搬送して前記搬送ベルトに供給する複数の搬送ローラー対と、前記搬送ベルトに向かう前記記録媒体の通過を検知する第2検知センサーと、前記複数の搬送ローラー対の駆動を制御する制御部と、を備える。前記制御部は、前記第1検知センサーによる前記開口部群の通過の検知に基づいて、前記搬送ベルト上で、前記開口部群に対して所定の位置関係となる前記記録媒体の合流目標位置を認識するとともに、前記第2検知センサーによる前記記録媒体の通過の検知に基づいて、前記開口部群の通過の検知時点における前記記録媒体の搬送位置を認識し、前記搬送ベルトの走行により、前記開口部群の通過の検知時点における前記合流目標位置が、前記複数の搬送ローラー対によって搬送される前記記録媒体と合流する合流地点に到達するまでの前記搬送ベルトの走行時間と、前記記録媒体が前記開口部群の通過の検知時点における前記搬送位置から前記合流地点に到達するまでの前記記録媒体の搬送時間とが等しくなるように、前記複数の搬送ローラー対の少なくとも1つの駆動を制御して、前記合流地点に向かう前記記録媒体の搬送速度を調整する。
【発明の効果】
【0009】
上記の構成によれば、記録媒体の搬送途中で、記録媒体の搬送が何らかの原因で変動したとしても、搬送ベルト上の特定の位置に記録媒体を載置して、フラッシングを行ったときに記録画像の画質が低下することを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置としてのプリンターの概略の構成を示す説明図である。
図2】上記プリンターが備える記録部の平面図である。
図3】上記プリンターの給紙カセットから第1搬送ユニットを介して第2搬送ユニットに至る用紙の搬送経路の周辺の構成を模式的に示す説明図である。
図4】上記プリンターの主要部のハードウェア構成を示すブロック図である。
図5】上記第1搬送ユニットにおいて吸引力の異なる領域を模式的に示す説明図である。
図6】上記第1搬送ユニットの一構成例を模式的に示す説明図である。
図7】上記第1搬送ユニットの他の構成例を模式的に示す説明図である。
図8】上記第1搬送ユニットが有する第1搬送ベルトの一構成例を示す平面図である。
図9図8の第1搬送ベルトを用いたときの、フラッシング用の開口部群のパターンの一例と、上記パターンに応じて上記第1搬送ベルト上に配置される用紙とを模式的に示す説明図である。
図10】上記パターンの他の例と、上記パターンに応じて上記第1搬送ベルト上に配置される用紙とを模式的に示す説明図である。
図11】上記パターンのさらに他の例と、上記パターンに応じて上記第1搬送ベルト上に配置される用紙とを模式的に示す説明図である。
図12】上記パターンのさらに他の例と、上記パターンに応じて上記第1搬送ベルト上に配置される用紙とを模式的に示す説明図である。
図13】上記第1搬送ベルトの他の構成例を示す平面図である。
図14図13の第1搬送ベルトを用いたときの上記パターンの一例と、上記パターンに応じて上記第1搬送ベルト上に配置される用紙とを模式的に示す説明図である。
図15】上記パターンの他の例と、上記パターンに応じて上記第1搬送ベルト上に配置される用紙とを模式的に示す説明図である。
図16】上記パターンのさらに他の例と、上記パターンに応じて上記第1搬送ベルト上に配置される用紙とを模式的に示す説明図である。
図17】上記パターンのさらに他の例と、上記パターンに応じて上記第1搬送ベルト上に配置される用紙とを模式的に示す説明図である。
図18】上記プリンターにおいて、複数の搬送ローラー対によって搬送される用紙が、上記第1搬送ベルトに合流する付近の構成を模式的に示す説明図である。
図19図18の一部を拡大して示す説明図である。
図20】上記用紙の搬送速度を調整する処理の流れを示すフローチャートである。
図21】上記第1搬送ベルト上に配置される用紙の配置パターンの例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔1.インクジェット記録装置の構成〕
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置としてのプリンター100の概略の構成を示す説明図である。プリンター100は、用紙収容部である給紙カセット2を備えている。給紙カセット2は、プリンター本体1の内部下方に配置されている。給紙カセット2の内部には、記録媒体の一例である用紙Pが収容されている。
【0012】
給紙カセット2の用紙搬送方向下流側、すなわち図1における給紙カセット2の右側の上方には給紙装置3が配置されている。この給紙装置3により、用紙Pは図1において給紙カセット2の右上方に向け、1枚ずつ分離されて送り出される。
【0013】
プリンター100は、その内部に第1用紙搬送路4aを備えている。第1用紙搬送路4aは、給紙カセット2に対してその給紙方向である右上方に位置する。給紙カセット2から送り出された用紙Pは、第1用紙搬送路4aにより、プリンター本体1の側面に沿って垂直上方に搬送される。
【0014】
用紙搬送方向において第1用紙搬送路4aの下流端には、レジストローラー対13が設けられている。さらに、レジストローラー対13の用紙搬送方向下流側直近には、第1搬送ユニット5および記録部9が配置されている。給紙カセット2から送り出された用紙Pは、第1用紙搬送路4aを通ってレジストローラー対13に到達する。レジストローラー対13は、用紙Pの斜め送りを矯正しつつ、記録部9が実行するインク吐出動作とのタイミングを計り、第1搬送ユニット5に向かって用紙Pを送り出す。
【0015】
第1搬送ユニット5に送り出された用紙Pは、第1搬送ベルト8(図2参照)によって記録部9(特に後述する記録ヘッド17a~17c)との対向位置に搬送される。記録部9から用紙Pにインクが吐出されることにより、用紙P上に画像が記録される。このとき、記録部9におけるインクの吐出は、プリンター100の内部の制御部110によって制御される。制御部110は、例えばCPU(Central Processing Unit)によって構成される。
【0016】
用紙搬送方向において、第1搬送ユニット5の下流側(図1の左側)には、第2搬送ユニット12が配置されている。記録部9によって画像が記録された用紙Pは、第2搬送ユニット12へ送られる。用紙Pの表面に吐出されたインクは、第2搬送ユニット12を通過する間に乾燥される。
【0017】
用紙搬送方向において、第2搬送ユニット12の下流側であってプリンター本体1の左側面近傍には、デカーラー部14が設けられている。第2搬送ユニット12によってインクが乾燥された用紙Pは、デカーラー部14へ送られて、用紙Pに生じたカールが矯正される。
【0018】
用紙搬送方向において、デカーラー部14の下流側(図1の上方)には、第2用紙搬送路4bが設けられている。デカーラー部14を通過した用紙Pは、両面記録を行わない場合、第2用紙搬送路4bを通り、プリンター100の左側面外部に設けられた用紙排出トレイ15に排出される。
【0019】
プリンター本体1の上部であって記録部9および第2搬送ユニット12の上方には、両面記録を行うための反転搬送路16が設けられている。両面記録を行う場合、用紙Pの一方の面(第1面)への記録が終了して第2搬送ユニット12およびデカーラー部14を通過した用紙Pは、第2用紙搬送路4bを通って反転搬送路16へ送られる。
【0020】
反転搬送路16へ送られた用紙Pは、続いて用紙Pの他方の面(第2面)への記録のために搬送方向が切り替えられる。そして、用紙Pは、プリンター本体1の上部を通過して右側に向かって送られ、レジストローラー対13を経て第2面を上向きにした状態で再び第1搬送ユニット5へ送られる。第1搬送ユニット5では、記録部9との対向位置に用紙Pが搬送され、記録部9からのインク吐出によって第2面に画像が記録される。両面記録後の用紙Pは、第2搬送ユニット12、デカーラー部14、第2用紙搬送路4bを順に介して用紙排出トレイ15に排出される。
【0021】
また、第2搬送ユニット12の下方には、メンテナンスユニット19およびキャップユニット20が配置されている。メンテナンスユニット19は、パージを実行する際に記録部9の下方に水平移動し、記録ヘッドのインク吐出口から押出されたインクを拭き取り、拭き取られたインクを回収する。なお、パージとは、インク吐出口内の増粘インク、異物、気泡を排出するために、記録ヘッドのインク吐出口からインクを強制的に押し出す動作を言う。キャップユニット20は、記録ヘッドのインク吐出面をキャッピングする際に記録部9の下方に水平移動し、さらに上方に移動して記録ヘッドの下面に装着される。
【0022】
図2は、記録部9の平面図である。記録部9は、ヘッドハウジング10と、ラインヘッド11Y、11M、11C、11Kとを備えている。ラインヘッド11Y~11Kは、駆動ローラー6a、従動ローラー6bおよび他のローラー7を含む複数のローラーに張架された無端状の第1搬送ベルト8の搬送面に対して、所定の間隔(例えば1mm)が形成される高さでヘッドハウジング10に保持される。また、ラインヘッド11Y~11Kは、第1搬送ベルト8の走行方向において、下流側から上流側に向けてこの順で並んでいる。
【0023】
ラインヘッド11Y~11Kは、複数(ここでは3個)の記録ヘッド17a~17cをそれぞれ有している。記録ヘッド17a~17cは、用紙搬送方向(矢印A方向)と直交する用紙幅方向(矢印BB’方向)に沿って千鳥状に配列されている。記録ヘッド17a~17cは、複数のインク吐出口18(ノズル)を有している。各インク吐出口18は、記録ヘッドの幅方向、つまり、用紙幅方向(矢印BB’方向)に等間隔で並んで配置されている。ラインヘッド11Y~11Kからは、記録ヘッド17a~17cのインク吐出口18を介して、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のインクが、第1搬送ベルト8で搬送される用紙Pに向かってそれぞれ吐出される。
【0024】
図3は、給紙カセット2から第1搬送ユニット5を介して第2搬送ユニット12に至る用紙Pの搬送経路の周辺の構成を模式的に示している。また、図4は、プリンター100の主要部のハードウェア構成を示すブロック図である。プリンター100は、上記の構成に加えて、レジストセンサー21と、第1用紙センサー22と、第2用紙センサー23と、ベルトセンサー24および25と、をさらに備えている。
【0025】
レジストセンサー21は、用紙カセット2から給紙装置3によって搬送され、レジストローラー対13に送られる用紙Pを検知する。制御部110は、レジストセンサー21での検知結果に基づき、レジストローラー対13の回転開始タイミングを制御することができる。例えば、制御部110は、レジストセンサー21での検知結果に基づき、レジストローラー対13によるスキュー(斜行)補正後の用紙Pの第1搬送ベルト8への供給タイミングを制御することができる。なお、レジストローラー対13は、第1の搬送ローラー対91を構成している。第1の搬送ローラー対91は、用紙Pを搬送して第1搬送ベルト8に供給する複数の搬送ローラー対の1つであり、複数の搬送ローラー対の中で第1搬送ベルト8に最も近い位置にある(図1図18参照)。なお、複数の搬送ローラー対のそれぞれは、2つのローラー(駆動ローラー、従動ローラー)を対向配置して構成されている。
【0026】
第1用紙センサー22は、レジストローラー対13から第1搬送ベルト8に送られる用紙Pの幅方向の位置を検知するラインセンサーである。制御部110は、第1用紙センサー22での検知結果に基づき、ラインヘッド11Y~11Kの記録ヘッド17a~17cの各インク吐出口18のうち、用紙Pの幅に対応するインク吐出口18からインクを吐出させて用紙Pに画像を記録することができる。
【0027】
第2用紙センサー23は、記録媒体供給部としてのレジストローラー対13によって第1搬送ベルト8に供給された用紙Pの通過を検知する。つまり、第2用紙センサー23は、第1搬送ベルト8で搬送される用紙Pの搬送方向の位置を検知する。第2用紙センサー23は、用紙搬送方向において記録部9の上流側で第1用紙センサー22の下流側に位置している。制御部110は、第2用紙センサー23での検知結果に基づき、第1搬送ベルト8によってラインヘッド11Y~11K(記録ヘッド17a~17c)と対向する位置に到達する用紙Pに対するインクの吐出タイミングを制御することができる。
【0028】
ベルトセンサー24および25は、第1搬送ベルト8に設けられた、後述する複数の開口部群82(図8参照)の位置を検知する。つまり、ベルトセンサー24および25は、第1搬送ベルト8の走行による開口部群82の少なくともいずれかの通過を検知する第1検知センサーである。ベルトセンサー24は、用紙搬送方向(第1搬送ベルト8の走行方向)において記録部9の下流側に位置している。ベルトセンサー25は、第1搬送ベルト8を張架する従動ローラー6bと他のローラー7との間に位置している。従動ローラー6bは、記録部9に対して第1搬送ベルト8の走行方向の上流側に位置している。なお、ベルトセンサー24は、第2用紙センサー23と同等の機能を兼ね備えている。制御部110は、ベルトセンサー24または25での検知結果に基づき、第1搬送ベルト8に対して所定のタイミングで用紙Pを供給するように、レジストローラー対13を制御することができる。
【0029】
また、用紙の位置を複数のセンサー(第2用紙センサー23、ベルトセンサー24)で検知し、第1搬送ベルト8の開口部群82の位置を複数のセンサー(ベルトセンサー24および25)で検知することにより、検知した位置の誤差修正や異常の検知も可能となる。
【0030】
また、プリンター100は、第2の搬送ローラー対92と、第3用紙センサー200と、をさらに備えている。第2の搬送ローラー対92は、レジストローラー対13(第1の搬送ローラー対91)よりも、用紙Pの搬送方向の上流側に位置し、用紙Pを搬送して第1搬送ベルト8に供給する複数の搬送ローラー対の1つを構成している(図18参照)。第2の搬送ローラー対92は、用紙Pの搬送経路に沿って1つだけ設けられていてもよいし、複数設けられていてもよい。第2の搬送ローラー対92の駆動制御は、制御部110によって行われる。
【0031】
第3用紙センサー200は、第1搬送ベルト8に向かって搬送される用紙Pの通過を検知する第2検知センサーであり、上記の第2の搬送ローラー対92に対して用紙Pの搬送方向の上流側に位置している(図18参照)。用紙Pの搬送速度を一定とした場合、制御部110は、第3用紙センサー200での検知結果に基づいて、用紙Pの搬送位置を認識することができる。また、制御部110は、例えば第2の搬送ローラー対92の駆動を制御して、用紙Pの搬送速度を調整することができるが、その詳細については後述する。なお、第3用紙センサー200は、用紙Pの搬送経路に沿って複数配置されていてもよい。
【0032】
上述した第1用紙センサー22、第2用紙センサー23、第3用紙センサー200、ベルトセンサー24および25は、透過型または反射型の光学センサー、CISセンサー(Contact Image Sensor、密着型イメージセンサー)で構成されてもよい。また、第1搬送ベルト8の幅方向の端部に、開口部群82の位置に対応するマークを形成しておき、ベルトセンサー24および25が上記マークを検知することにより、開口部群82の位置を検知してもよい。
【0033】
その他、プリンター100は、第1搬送ベルト8の蛇行を検知する蛇行検知センサーを備え、その検知結果に基づいて第1搬送ベルト8の蛇行を修正する構成であってもよい。
【0034】
また、プリンター100は、操作パネル27と、記憶部28と、通信部29と、をさらに備えている。操作パネル27は、ユーザーによる各種の設定入力を受け付けるための操作部である。例えば、ユーザーは、操作パネル27を操作して、給紙カセット2にセットする用紙Pのサイズ、つまり、第1搬送ベルト8によって搬送する用紙Pのサイズの情報を入力することができる。記憶部28は、制御部110の動作プログラムを記憶するとともに、各種の情報を記憶するメモリであり、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、不揮発性メモリなどを含んで構成されている。操作パネル27によって設定された情報(例えば用紙Pのサイズの情報)は、記憶部28に記憶される。通信部29は、外部(例えばパーソナルコンピュータ(PC))との間で情報を送受信するための通信インターフェースである。例えば、ユーザーがPCを操作し、プリンター100に対して画像データとともに印刷コマンドを送信すると、上記の画像データおよび印刷コマンドが通信部29を介してプリンター100に入力される。プリンター100では、制御部110が上記画像データに基づいて記録ヘッド17a~17cを制御してインクを吐出させることにより、用紙Pに画像を記録することができる。
【0035】
また、図3に示すように、プリンター100は、第1搬送ベルト8の内周面側に、インク受け部31Y、31M、31C、31Kを有している。インク受け部31Y~31Kは、フラッシングを記録ヘッド17a~17cに実行させたときに、記録ヘッド17a~17cから吐出されて第1搬送ベルト8の後述する開口部群82の開口部80(図8参照)を通過したインクを受けて回収する。したがって、インク受け部31Y~31Kは、ラインヘッド11Y~11Kの記録ヘッド17a~17cと、第1搬送ベルト8を介して対向する位置に設けられている。なお、インク受け部31Y~31Kで回収されたインクは、例えば廃インクタンクに送られて廃棄されるが、廃棄せずに再利用されてもよい。
【0036】
ここで、フラッシングとは、インクの乾燥によるインク吐出口18の目詰まりを低減または予防する目的で、用紙Pへの画像形成(画像記録)に寄与するタイミングとは異なるタイミングでインクを吐出することを言う。記録ヘッド17a~17cにおけるフラッシングの実行は、制御部110によって制御される。
【0037】
上述した第2搬送ユニット12は、第2搬送ベルト12aと、乾燥器12bとを有して構成されている。第2搬送ベルト12aは、2つの駆動ローラー12cおよび従動ローラー12dによって張架されている。第1搬送ユニット5によって搬送され、記録部9によるインク吐出によって画像が記録された用紙Pは、第2搬送ベルト12aによって搬送され、搬送中に乾燥器12bによって乾燥されて上述したデカーラー部14に搬送される。
【0038】
〔2.第1搬送ユニットの詳細〕
(2-1.第1搬送ユニットの一構成例)
本実施形態では、第1搬送ユニット5において用紙Pを搬送する方式として、負圧吸引方式を採用している。負圧吸引方式とは、用紙Pを負圧吸引によって第1搬送ベルト8に吸着させて搬送する方式である。
【0039】
ここで、ラインヘッド11Y~11Kの記録ヘッド17a~17cと、第1搬送ベルト8を介して対向する位置にインク受け部31Y~31Kが設けられていることは上述の通りである。負圧吸引の際に、インク受け部31Y~31Kが設けられた領域の吸引力が強いと、フラッシング時に記録ヘッド17a~17cから吐出されたインクが、第1搬送ベルト8の開口部80を勢いよく通過し、インク受け部31Y~31Kに既に収容されたインクの液面に衝突して周囲にインクを飛散させるミストが生じる場合がある。ミストが生じると、飛散したインクが第1搬送ベルト8の内周面に付着して内周面を汚す。その結果、第1搬送ベルト8を張架するローラーの表面が汚れ、第1搬送ベルト8の搬送ムラ(例えば蛇行やスリップ)が生じるおそれがある。
【0040】
そこで、本実施形態では、図5に示すように、インク受け部31Y~31Kが設けられている領域、つまり、ラインヘッド11Y~11Kと第1搬送ベルト8を介して対向する領域の吸引力を、その用紙搬送方向の上流側および下流側の領域よりも弱くすることにより、ミストによる上記の不都合を低減するようにしている。具体的には、以下の構成により、吸引力の異なる領域を生成している。
【0041】
図6は、第1搬送ユニット5の一構成例を模式的に示す説明図である。第1搬送ユニット5の第1搬送ベルト8の内周面側には、第1吸引室51a~51eおよび第2吸引室52a~52dが設けられている。第1吸引室51a~51eおよび第2吸引室52a~52dは、第1搬送ベルト8のベルト幅方向に長尺状で形成されている。第1吸引室51a~51eおよび第2吸引室52a~52dは、第1搬送ベルト8との対向側が開口している。
【0042】
第1吸引室51a~51eは、用紙搬送方向(A方向)の下流側から上流側に向かってこの順で設けられている。第2吸引室52aは、第1吸引室51aと第1吸引室51bとの間で、ラインヘッド11Yと第1搬送ベルト8を介して対向する位置に設けられている。第2吸引室52bは、第1吸引室51bと第1吸引室51cとの間で、ラインヘッド11Mと第1搬送ベルト8を介して対向する位置に設けられている。第2吸引室52cは、第1吸引室51cと第1吸引室51dとの間で、ラインヘッド11Cと第1搬送ベルト8を介して対向する位置に設けられている。第2吸引室52dは、第1吸引室51dと第1吸引室51eとの間で、ラインヘッド11Kと第1搬送ベルト8を介して対向する位置に設けられている。上述したインク受け部31Y~31Kは、上記の第2吸引室52a~52dにそれぞれ配置されている。
【0043】
第1吸引室51a~51eおよび第2吸引室52a~52dの内部は、吸引部材53によって吸引される。吸引部材53は、用紙Pを第1搬送ベルト8上に負圧吸引によって吸着させる。このような吸引部材53は、例えばファンまたはコンプレッサーで構成される。本実施形態では、第1吸引室51aおよび第2吸引室52aの内部が、共通の吸引部材53によって吸引される。また、第1吸引室51bおよび第2吸引室52bの内部が、共通の吸引部材53によって吸引される。同様に、第1吸引室51cおよび第2吸引室52cの内部が、共通の吸引部材53によって吸引され、第1吸引室51dおよび第2吸引室52dの内部が、共通の吸引部材53によって吸引される。第1吸引室51eは単独で、吸引部材53によって吸引される。
【0044】
第1吸引室51a~51eには、フィルター54がそれぞれ配置されており、第2吸引室52a~52dには、フィルター55がそれぞれ配置されている。したがって、各吸引部材53を駆動すると、第1吸引室51a~51eの内部はフィルター54を介して吸引され、第2吸引室52a~52dの内部はフィルター55を介して吸引される。これにより、第1吸引室51a~51eおよび第2吸引室52a~52dの内部が負圧となり、第1搬送ベルト8に設けられた後述する吸引孔8a(図8参照)または開口部群82を介して空気が吸引され、用紙Pが第1搬送ベルト8に吸着しながら搬送される。
【0045】
ここで、フィルター54は、フィルター55よりも目が粗く構成されている。このため、フィルター54を通過する空気の抵抗は、フィルター55を通過する空気の抵抗よりも低い。したがって、各吸引部材53を同じ駆動力で駆動した場合、第1吸引室51a~51eの内部は相対的に強い吸引力で吸引され、第2吸引室52a~52dの内部は相対的に弱い吸引力で吸引される。よって、フラッシング時に記録ヘッド17a~17cから吐出されたインクが、第1搬送ベルト8の開口部80を通過するときの速度を抑えて、インク受け部31Y~31Kに溜まったインクの液面との衝突によるインクの飛散(ミスト)を低減することができる。これにより、ミストによって生じる上記の不都合を低減することができる。
【0046】
(2-2.第1搬送ユニットの他の構成例)
図7は、第1搬送ユニット5の他の構成例を模式的に示す説明図である。図7の第1搬送ユニット5は、図6で示した第1吸引室51a~51eおよび第2吸引室52a~52dに同じフィルター54を配置し、第1吸引室51a~51eおよび第2吸引室52a~52dのそれぞれを別々の吸引部材53で吸引するように構成したものである。このような構成では、第2吸引室52a~52dの内部を吸引する各吸引部材53の駆動力を切り替えることにより、第2吸引室52a~52dの吸引力を、強吸引と弱吸引とで切り替える。なお、各吸引部材53の駆動は、例えば制御部110によって制御される。
【0047】
例えば、第1搬送ベルト8によって搬送される用紙Pへのインク吐出時(画像記録時)には、第1吸引室51a~51eおよび第2吸引室52a~52dを吸引する全ての吸引部材53を第1の駆動力で駆動する。一方、フラッシング時には、第1吸引室51a~51eを吸引する各吸引部材53を第1の駆動力で駆動しつつ、第2吸引室52a~52dを吸引する各吸引部材53を第1の駆動力よりも低い第2の駆動力で駆動する。これにより、画像記録時には、第1吸引室51a~51eおよび第2吸引室52a~52dを強吸引で吸引して用紙Pを搬送しつつ、フラッシング時には、第2吸引室52a~52dのみを弱吸引にしてミストを低減することができる。これにより、ミストによって生じる上記の不都合を低減することができる。
【0048】
その他、フィルター54または55を用いる代わりに、第1吸引室51a~51eおよび第2吸引室52a~52dから吸引される空気の流路となる管の径(流路断面積)を異ならせることにより、第1吸引室51a~51eと第2吸引室52a~52dとで、吸引力を異ならせるようにすることもできる。
【0049】
〔3.第1搬送ベルトの詳細〕
(3-1.第1搬送ベルトの一構成例)
次に、第1搬送ユニット5の第1搬送ベルト8の詳細について説明する。図8は、第1搬送ベルト8の一構成例を示す平面図である。本実施形態では、上述したように、負圧吸引方式で用紙Pを搬送するようにしている。このため、同図に示すように、第1搬送ベルト8には、吸引部材53の負圧吸引によって発生する吸引風を通過させる吸引孔8aが無数に設けられている。
【0050】
また、第1搬送ベルト8には、開口部群82も設けられている。開口部群82は、フラッシングのときに記録ヘッド17a~17cの各ノズル(インク吐出口18)から吐出されるインクを通過させる開口部80の集合である。開口部80の開口面積は、上記の吸引孔8aの開口面積よりも大きい。第1搬送ベルト8は、開口部群82を用紙Pの搬送方向(A方向)に1周期で複数有しており、本実施形態は6個有している。なお、各開口部群82を互いに区別するときは、6個の開口部群82を、A方向の下流側から、開口部群82A~82Fと称する。上記の吸引孔8aは、A方向において隣り合う開口部群82と開口部群82との間に位置している。すなわち、第1搬送ベルト8において、開口部群82と重複する領域には、吸引孔8aは形成されていない。
【0051】
開口部群82は、第1搬送ベルト8の1周期において、A方向に不定期に位置する。つまり、A方向において、隣り合う開口部群82と開口部群82との間隔は一定ではなく、変化している(上記間隔は少なくとも2種類存在する)。このとき、A方向に隣り合う2つの開口部群82の最大間隔(例えば図8の開口部群82Aと開口部群82Bとの間隔)は、印字可能な最小サイズ(例えばA4サイズ(横置き))の用紙Pが第1搬送ベルト8上に載置されたときの上記用紙PのA方向の長さよりも長い。
【0052】
上記の開口部群82は、開口部列81を有している。開口部列81は、A方向と直交するベルト幅方向(用紙幅方向、BB’方向)に複数の開口部80を並べて構成されている。1つの開口部群82は、開口部列81をA方向に少なくとも1列有しており、本実施形態では、開口部列81を2列有している。なお、2列の開口部列81を互いに区別するときは、一方を開口部列81aとし、他方を開口部列81bとする。
【0053】
1つの開口部群82において、いずれかの開口部列81(例えば開口部列81a)の開口部80は、他の開口部列81(例えば開口部列81b)の開口部80とBB’方向にずれて位置し、かつ、A方向に見て他の開口部列81(例えば開口部列81b)の開口部80の一部と重畳するように位置する。また、各開口部列81において、複数の開口部80は、BB’方向に等間隔で位置する。
【0054】
上記のように複数の開口部列81をA方向に並べて1つの開口部群82を形成していることにより、開口部群82のBB’方向の幅は、記録ヘッド17a~17cのBB’方向の幅よりも大きくなっている。したがって、開口部群82は、記録ヘッド17a~17cのBB’方向のインク吐出領域を全てカバーしており、フラッシング時に記録ヘッド17a~17cの全てのインク吐出口18から吐出されるインクは、開口部群82のいずれかの開口部80を通過する。したがって、記録ヘッド17a~17cのBB’方向の全ての位置のインク吐出口18について、目詰まりを低減または予防することができる。また、A方向に見て開口部80同士が一部重畳しているため、一部のインク吐出口18については、どちらの開口部列81の開口部80を利用してもフラッシングを行うことができる。つまり、フラッシング時に上記インク吐出口18からインクを吐出するタイミングを選択することができる。
【0055】
(3-2.フラッシングのときに用いる開口部群のパターンについて)
本実施形態では、上記の第1搬送ベルト8を用いて用紙Pを搬送しながら、外部(例えばPC)から送信される画像データに基づいて、制御部110が記録ヘッド17a~17cを駆動することにより、用紙P上に画像を記録する。その際に、搬送される用紙Pと用紙Pとの間で記録ヘッド17a~17cにフラッシング(紙間フラッシング)を実行させることにより、インク吐出口18の目詰まりを低減または予防するようにしている。
【0056】
ここで、本実施形態では、制御部110は、第1搬送ベルト8の1周期において、フラッシングのときに用いる複数の開口部群82のA方向のパターン(組み合わせ)を、用いる用紙Pのサイズに応じて決定する。なお、用いる用紙Pのサイズは、制御部110が、記憶部28に記憶された情報(操作パネル27によって入力された用紙Pのサイズ情報)に基づいて認識することができる。
【0057】
図9図12は、用紙Pごとの上記パターンの一例をそれぞれ示している。例えば、用いる用紙PがA4サイズ(横置き)またはレターサイズ(横置き)である場合、制御部110は、図9で示す開口部群82のパターンを選択する。つまり、制御部110は、図8で示した6つの開口部群82の中から、フラッシングに用いる開口部群82として、開口部群82A、82C、82Fを選択する。用いる用紙PがA4サイズ(縦置き)またはレターサイズ(縦置き)である場合、制御部110は、図10で示すように、6つの開口部群82の中から、フラッシングに用いる開口部群82として、開口部群82A、82Dを選択する。用いる用紙PがA3サイズ、B4サイズまたはリーガルサイズ(いずれも縦置き)である場合、制御部110は、図11で示すように、6つの開口部群82の中から、フラッシングに用いる開口部群82として、開口部群82A、82B、82Eを選択する。用いる用紙Pが13インチ×19.2インチのサイズである場合、制御部110は、図12で示すように、6つの開口部群82の中から、フラッシングに用いる開口部群82として、開口部群82A、82Dを選択する。なお、各図面では、上記パターンに属する開口部群82の開口部80を、便宜的に黒塗りで示す。
【0058】
そして、制御部110は、第1搬送ベルト8の走行により、決定したパターンで位置する開口部群82が記録ヘッド17a~17cと対向するタイミングで、記録ヘッド17a~17cにフラッシングを実行させる。ここで、第1搬送ベルト8の走行速度(用紙搬送速度)、開口部群82A~82Eの間隔、第1搬送ベルト8に対する記録ヘッド17a~17cの位置は、全て既知である。このため、第1搬送ベルト8の走行によって基準となる開口部群82(例えば開口部群82A)が通過したことをベルトセンサー24または25が検知すると、その検知時点から何秒後に開口部群82A~82Eが記録ヘッド17a~17cとの対向位置を通過するかがわかる。したがって、制御部110は、ベルトセンサー24または25での検知結果に基づき、上記で決定したパターンで位置する開口部群82が記録ヘッド17a~17cと対向するタイミングで、記録ヘッド17a~17cにフラッシングを実行させることができる。
【0059】
このとき、制御部110は、ベルトセンサー24または25での検知結果に基づき、用紙Pのサイズに応じて決まるクラスごとに、第1搬送ベルト8の各周期において同じ開口部群82をインクが通過するように、記録ヘッド17a~17cにおけるフラッシングを制御する。
【0060】
例えば、用いる用紙PがA4サイズ(横置き)またはレターサイズ(横置き)である場合(第1のクラス)、制御部110は、第1搬送ベルト8の各周期で、図9で示す同じ開口部群82A、82C、82Fをインクが通過するように、記録ヘッド17a~17cにおけるフラッシングを制御する。用いる用紙PがA4サイズ(縦置き)またはレターサイズ(縦置き)である場合(第2のクラス)、制御部110は、第1搬送ベルト8の各周期で、図10で示す同じ開口部群82A、82Dをインクが通過するように、記録ヘッド17a~17cにおけるフラッシングを制御する。用いる用紙PがA3サイズ、B4サイズまたはリーガルサイズ(いずれも縦置き)である場合(第3のクラス)、制御部110は、第1搬送ベルト8の各周期で、図11で示す同じ開口部群82A、82B、82Eをインクが通過するように、記録ヘッド17a~17cにおけるフラッシングを制御する。用いる用紙Pが13インチ×19.2インチのサイズである場合(第4のクラス)、制御部110は、第1搬送ベルト8の各周期で、図12で示す同じ開口部群82A、82Dをインクが通過するように、記録ヘッド17a~17cにおけるフラッシングを制御する。
【0061】
また、制御部110は、決定したパターンで位置する開口部群82とはA方向にずれるように用紙Pの第1搬送ベルト8への供給を制御する。つまり、制御部110は、第1搬送ベルト8上で、上記パターンでA方向に並ぶ複数の開口部群82の間に、記録媒体供給部としてのレジストローラー対13によって用紙Pを供給させる。
【0062】
例えば、用いる用紙PがA4サイズ(横置き)またはレターサイズ(横置き)である場合、制御部110は、図9で示すように、第1搬送ベルト8上で、開口部群82Aと開口部群82Cとの間に2枚の用紙Pが配置され、開口部群82Cと開口部群82Fとの間に2枚の用紙Pが配置され、開口部群82Fと開口部群82Aとの間に1枚の用紙Pが配置されるように、レジストローラー対13を制御して所定の供給タイミングで用紙Pを第1搬送ベルト8に供給させる。このとき、制御部110は、第1搬送ベルト8上で、上記パターンで位置する開口部群82A、82C、82FからA方向(上流側、下流側の両方向を含む)に所定距離以上離れた位置に各用紙Pが配置されるように、レジストローラー対13を制御して用紙Pを第1搬送ベルト8に供給させる。なお、上記所定距離は、ここでは一例として10mmとしている。
【0063】
ここで、レジストローラー対13による用紙Pの供給タイミングは、制御部110がベルトセンサー24または25での検知結果に基づいて決定することができる。例えば、第1搬送ベルト8の走行によって基準となる開口部群82(例えば開口部群82A)が通過したことをベルトセンサー24または25が検知すると、制御部110はその検知時点から何秒後にレジストローラー対13によって用紙Pを第1搬送ベルト8に供給すれば、図9で示した各位置に用紙Pを配置できるかを判断することができる。したがって、制御部は、ベルトセンサー24または25での検知結果に基づいて用紙Pの供給タイミングを決定し、決定した供給タイミングで用紙Pが供給されるようにレジストローラー対13を制御する。これにより、第1搬送ベルト8上で図9で示した各位置に、およそ等間隔で用紙Pを配置することができる。図9の例では、第1搬送ベルト8の1周期で用紙Pを5枚搬送することができ、用紙Pの1分あたりの印字枚数(生産性)として、150ipm(images per minute)を実現することができる。
【0064】
また、図9で示すように、A4サイズ(横置き)の用紙Pを第1搬送ベルト8に供給する場合、第1搬送ベルト8の開口部群82Fと開口部群82Aとの間には、用紙Pが1枚だけ供給される。この場合、制御部110は、開口部群82Fと開口部群82Aとの間の中間位置8mに、用紙PのA方向の中心Poが位置するように、ベルトセンサー24または25の検知結果に基づいてレジストローラー対13を制御し、レジストローラー対13から第1搬送ベルト8に用紙Pを供給させる。
【0065】
一方、用いる用紙PがA4サイズ(縦置き)またはレターサイズ(縦置き)である場合、制御部110は、図10で示すように、第1搬送ベルト8上で、開口部群82Aと開口部群82Dとの間に2枚の用紙Pが配置され、開口部群82Dと開口部群82Aとの間に2枚の用紙Pが配置されるように、レジストローラー対13を制御して所定の供給タイミングで用紙Pを第1搬送ベルト8に供給させる。図10の例では、第1搬送ベルト8の1周期で用紙Pを4枚搬送することができ、120ipmの生産性を実現することができる。
【0066】
用いる用紙PがA3サイズ、B4サイズまたはリーガルサイズ(いずれも縦置き)である場合、制御部110は、図11で示すように、第1搬送ベルト8上で、開口部群82Aと開口部群82Bとの間に1枚の用紙Pが配置され、開口部群82Bと開口部群82Eとの間に1枚の用紙Pが配置され、開口部群82Eと開口部群82Aとの間に1枚の用紙Pが配置されるように、レジストローラー対13を制御して所定の供給タイミングで用紙Pを第1搬送ベルト8に供給させる。図11の例では、第1搬送ベルト8の1周期で用紙Pを3枚搬送することができ、90ipmの生産性を実現することができる。なお、制御部110は、決定したパターンに含まれる隣り合う2つの開口部群82の中間位置に、1枚の用紙PのA方向の中心が位置するように、ベルトセンサー24または25の検知結果に基づいてレジストローラー対13を制御し、第1搬送ベルト8に用紙Pを供給させることが望ましい。
【0067】
用いる用紙Pが13インチ×19.2インチのサイズである場合、制御部110は、図12で示すように、第1搬送ベルト8上で、開口部群82Aと開口部群82Dとの間に1枚の用紙Pが配置され、開口部群82Dと開口部群82Aとの間に1枚の用紙Pが配置されるように、レジストローラー対13を制御して所定の供給タイミングで用紙Pを第1搬送ベルト8に供給させる。図12の例では、第1搬送ベルト8の1周期で用紙Pを2枚搬送することができ、60ipmの生産性を実現することができる。
【0068】
以上のように、制御部110は、用いる用紙Pのサイズに応じて、フラッシングのときに用いる複数の開口部群82のA方向のパターン(組み合わせ)を決定する。これにより、どのサイズの用紙Pを用いる場合でも、上記パターンで並ぶ開口部群82と重ならないようにできるだけ多くの用紙Pを第1搬送ベルト8上に配置することができる。したがって、どのサイズの用紙Pを用いる場合でも、生産性の低下(印字枚数の低下)を回避することができる。
【0069】
また、第1搬送ベルト8の1周期の間では、上記パターンで位置する複数の開口部群82を用いて複数回フラッシングを行うことができる。したがって、どのサイズの用紙Pを用いる場合でも、フラッシング不足およびそれによるノズル(インク吐出口18)の目詰まりを低減することができる。特に、制御部110は、第1搬送ベルト8の走行によって上記パターンで位置する開口部群82が記録ヘッド17a~17cと対向するタイミングで記録ヘッド17にフラッシングを実行させる。これにより、第1搬送ベルト8の1周期の間に複数回のフラッシングを確実に行ってフラッシング不足を解消することができる。
【0070】
また、フラッシング不足を解消するために、用紙Pの搬送速度を低下させる必要がないため、この点でも生産性向上に寄与することができる。また、用紙Pの搬送速度を変化させる必要はないため、用紙Pの複雑な搬送制御(第1搬送ベルト8の複雑な駆動制御)も不要となる。
【0071】
(3-3.第1搬送ベルトの他の構成例)
図13は、第1搬送ベルト8の他の構成例を示す平面図である。第1搬送ベルト8は、上述した開口部群82が、第1搬送ベルト8の搬送方向、つまりA方向に等間隔で位置する構成であってもよい。このとき、A方向に隣り合う2つの開口部群82は、印字可能な最小サイズの用紙Pが第1搬送ベルト8上に載置されたときの用紙PのA方向の長さよりも短い間隔で位置する。また、図13の構成では、開口部群82を構成する開口部80が、図8の構成における吸引孔8aを兼ねている。なお、開口部群82が複数の開口部列81を有している点、1つの開口部列81がBB’方向に等間隔で並ぶ複数の開口部80を有している点は、図8等で示した第1搬送ベルト8と同じである。
【0072】
図13で示す第1搬送ベルト8を用いた場合でも、制御部110は、図8で示す第1搬送ベルト8を用いた場合と同様に、用いる用紙Pのサイズに応じて、フラッシングのときに用いる複数の開口部群82のA方向のパターンを決定する。例えば、用いる用紙PがA4サイズ(横置き)またはレターサイズ(横置き)である場合、制御部110は、図14で示す開口部群82のパターンを選択する。用いる用紙PがA4サイズ(縦置き)またはレターサイズ(縦置き)である場合、制御部110は、図15で示す開口部群82のパターンを選択する。用いる用紙PがA3サイズ、B4サイズまたはリーガルサイズ(いずれも縦置き)である場合、制御部110は、図16で示す開口部群82のパターンを選択する。用いる用紙Pが13インチ×19.2インチのサイズである場合、制御部110は、図17で示す開口部群82のパターンを選択する。なお、図14図17では、便宜的に、図8の開口部群82A~82Fと対応する位置にある開口部群82を、開口部群82A~82Fとして示している。
【0073】
そして、制御部110は、第1搬送ベルト8の走行により、決定したパターンで位置する開口部群82が記録ヘッド17a~17cと対向するタイミングで、記録ヘッド17a~17cにフラッシングを実行させる。
【0074】
また、制御部110は、第1搬送ベルト8上で、図14図17で示す位置に(上記パターンでA方向に並ぶ複数の開口部群82の間に)、レジストローラー対13によって用紙Pを供給させる。このとき、制御部110は、第1搬送ベルト8上で、上記パターンで位置する開口部群82からA方向(上流側、下流側の両方向を含む)に所定距離以上離れた位置に各用紙Pが配置されるように、レジストローラー対13を制御して用紙Pを第1搬送ベルト8に供給させる。
【0075】
以上のように、図13に示す第1搬送ベルト8を用いた場合でも、制御部110は、図8で示した第1搬送ベルト8を用いた場合と同様の制御(フラッシング制御、用紙Pの供給制御)を行うことにより、どのサイズの用紙Pを用いる場合でも、生産性の低下を回避しつつ、フラッシング不足によるノズルの目詰まりを低減することができるなど、上記と同様の効果を得ることができる。
【0076】
なお、図13の構成の第1搬送ベルト8では、フラッシング用の開口部80がベルト全面にわたって無数に形成されているため、第1搬送ベルト8において用紙PをA方向に詰めて搬送し、用紙Pと重ならない位置の開口部80を用いてフラッシングを行うことで、生産性を格段に向上させることができる。しかし、そのように用紙Pを搬送すると、第1搬送ベルト8の各周期で、フラッシングのときのインクの通過によって汚れた開口部80と、搬送する用紙Pとが重なりやすくなり、用紙Pが汚れやすくなる。
【0077】
図13の第1搬送ベルト8を用いた構成であっても、上述のように、用紙Pのサイズに応じてフラッシングのときに用いる開口部群82のパターンを決定し、決定したパターンで位置する開口部群82を用いてフラッシングを行うことにより、各周期において同じ開口部群82を用いてフラッシングを行うとともに、フラッシングのときに用いる開口部群82とはずれた位置に用紙Pを配置して搬送することができる。これにより、生産性を確保しながら、複数の周期にわたって用紙Pを搬送して印字する場合の用紙Pの汚れを低減することができる。この点で、図13の構成の第1搬送ベルト8を用いた場合でも、本実施形態で説明したフラッシング制御および用紙Pの供給制御は有効である。
【0078】
なお、図13で示した第1搬送ベルト8で用紙Pを搬送する場合、フラッシング時に用いる開口部群82のパターンは、図8で示した第1搬送ベルト8を用いた場合のパターンとは異なるパターンであってもよい。例えば、図14図17で示した位置で搬送される用紙Pと用紙Pとの間に位置する開口部群に対してフラッシングを行うようにしてもよい。
【0079】
以上では、用紙Pを負圧吸引によって第1搬送ベルト8に吸着させて搬送する場合について説明したが、第1搬送ベルト8を帯電させ、用紙Pを第1搬送ベルト8に静電吸着させて搬送するようにしてもよい(静電吸着方式)。この場合でも、本実施形態と同様のフラッシング制御および用紙Pの第1搬送ベルト8への供給制御を行うことにより、本実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0080】
以上では、インクジェット記録装置として、4色のインクを用いてカラーの画像を記録するカラープリンターを用いた例について説明したが、ブラックのインクを用いてモノクロの画像を記録するモノクロプリンターを用いた場合でも、上述の制御を適用することは可能である。
【0081】
〔4.用紙の搬送速度の調整について〕
次に、本実施形態における第1搬送ベルト8への用紙Pの搬送速度の調整について説明する。図18は、本実施形態のプリンター100において、レジストローラー対13(第1の搬送ローラー対91)および第2の搬送ローラー対92によって搬送される用紙Pが、第1搬送ベルト8に合流する付近の構成を模式的に示す説明図である。また、図19は、図18の一部を拡大して示す説明図である。
【0082】
ここで、以下での説明の便宜上、第1搬送ベルト8に対する用紙Pの合流目標位置をXとする。また、第1の搬送ローラー対91および第2の搬送ローラー対92によって搬送される用紙Pが、走行する第1搬送ベルト8と実際に合流する合流地点をYとする。なお、上記の「合流目標位置」とは、第1搬送ベルト8上で、開口部群82に対して所定の位置関係で用紙Pが載置されるように、走行する第1搬送ベルト8に用紙Pを合流させる目標となる位置を指す。また、上記の「所定の位置関係」とは、第1搬送ベルト8の1周期で複数枚の用紙Pが第1搬送ベルト8上に等間隔で載置され、かつ、用紙Pのサイズに応じたパターンで位置する開口部群82と搬送方向にずれて用紙Pが載置されるような、開口部群82と用紙Pとの位置関係(図9等参照)を指す。
【0083】
そして、第1の搬送ローラー対91から合流地点Yまでの用紙Pの搬送区間Aの距離をLa(mm)とし、搬送区間Aでの用紙Pの搬送速度をVa(mm/sec)とする。また、ベルトセンサー25による開口部群82の通過の検知時点における用紙Pの搬送位置(用紙Pの先端位置)をZとし、搬送位置Zから第1の搬送ローラー対91までの用紙Pの搬送区間Bの距離をLb(mm)とする。特に、第2の搬送ローラー対92から第1の搬送ローラー対91までの用紙Pの搬送区間B1の距離をLb1(mm)とし、搬送位置Zから第2の搬送ローラー対92までの用紙Pの搬送区間B2の距離をLb2(mm)とする。すなわち、Lb=Lb1+Lb2である。そして、搬送区間B1での用紙Pの搬送速度をVb1(mm/sec)とし、搬送区間B2での用紙Pの搬送速度をVb2(mm/sec)とする。一方、合流目標位置Xが、第1搬送ベルト8の走行によって合流地点Yに到達するまでの第1搬送ベルト8の走行区間Sの距離をLs(mm)とし、走行区間Sでの第1搬送ベルト8の走行速度をVs(mm/sec)とする。
【0084】
図20は、用紙Pの搬送速度を調整する処理の流れを示すフローチャートである。本実施形態では、制御部110は、まず、ベルトセンサー25による開口部群82の通過の検知に基づいて、第1搬送ベルト8の合流目標位置Xを認識する(S1)。例えば、用紙Pのサイズが予めわかっていれば、合流目標位置Xは、用紙Pのサイズに応じて一義的に決まる(図9図12等参照)。つまり、合流目標位置Xは、第1搬送ベルト8上で任意の開口部群82(例えば図9の開口部群82A)から搬送方向(走行方向)の上流側に、用紙Pのサイズに応じて決まる距離α(mm)だけ離れた位置にある。制御部110は、記憶部28(図4参照)を参照することにより、用いる用紙Pのサイズを認識することができるため、ベルトセンサー25による開口部群82の通過の検知に基づいて、上記の合流目標位置Xを認識することができる。
【0085】
次に、制御部110は、第3用紙センサー200による用紙Pの通過の検知に基づいて、ベルトセンサー25による開口部群82の通過の検知時点における用紙Pの搬送位置Zを認識する(S2)。第3用紙センサー200の設置位置(例えば第2の搬送ローラー対92と第3用紙センサー200との離間距離)は予めわかっており、第2の搬送ローラー対92に供給される用紙Pの搬送速度は、予めデフォルトで設定されている。したがって、制御部110は、第3用紙センサー200による用紙Pの通過の検知に基づいて、用紙Pの搬送位置Zを認識することができる。
【0086】
例えば第2の搬送ローラー対92と第3用紙センサー200との離間距離をL(mm)とし、第3用紙センサー200による用紙Pの検知位置と用紙Pの先端位置との間の距離をLc(mm)とし、距離Lcを搬送される用紙Pの搬送時間、つまり、第3用紙センサー200が用紙Pの通過を経過してからベルトセンサー25が開口部群82の通過の検知する時点までの経過時間をt(sec)とし、第2の搬送ローラー対92に供給される用紙Pの搬送速度をVb2(mm/sec)としたとき、用紙Pの搬送位置Zは、第2の搬送ローラー対92から上流側に距離(L-Lc)だけ離れた位置にある。距離Lは、第3用紙センサー200の設置位置に応じて予め決まり、距離Lcは、Vb2×tで表される。したがって、制御部110は、L-Lcを演算することにより、開口部群82の通過の検知時点における用紙Pの搬送位置Zを認識することができる。
【0087】
次に、制御部110は、第1搬送ベルト8の走行により、開口部群82の通過の検知時点における合流目標位置Xが合流地点Yに到達するまでの第1搬送ベルト8の走行時間T1(sec)と、用紙Pが開口部群82の通過の検知時点における搬送位置Zから合流地点Yに到達するまでの用紙Pの搬送時間T2(sec)とが等しくなるように、第1の搬送ローラー対91および第2の搬送ローラー対92の少なくとも1つの駆動を制御して、合流地点Yに向かう用紙Pの搬送速度を調整する(S3)。
【0088】
ここで、走行時間T1は、例えば以下のようにして求められる。ベルトセンサー25から合流地点Yまでの距離をβ(mm)とすると、距離βは、ベルトセンサー25の設置位置に応じて予め決まる。また、距離αは上述のように用紙Pのサイズに応じて決まる。さらに、第1搬送ベルト8の走行速度Vsは一定の値であり、予めわかっている。したがって、制御部110は、T1=(α+β)/Vs=Ls/Vsを演算することにより、走行時間T1を求めることができる。
【0089】
一方、用紙Pの搬送時間T2は、(La/Va)+(Lb1/Vb1)+(Lb2/Vb2)によって表される。ここで、距離LaおよびLb1は、合流地点Yに対して、第1の搬送ローラー対91および第2の搬送ローラー対92の設置位置を決めることにより、予め決まる。また、距離Lb2は上述した距離(L-Lc)に等しく、搬送速度Vb2は例えばデフォルトで設定され得る。
【0090】
したがって、制御部110は、第1の搬送ローラー対91および第2の搬送ローラー対92の少なくとも一方の駆動を制御して、搬送速度VaおよびVb1の少なくとも一方を調整することにより、走行時間T1と等しくなるように搬送時間T2を調整することができる。
【0091】
次に、制御部110は、走行時間T1と搬送時間T2とが等しくなるときの用紙Pの搬送速度(例えばVb1)が閾値を超えるか否かを判断する(S4)。用紙Pの搬送速度が閾値以下である場合(S4でNo)、制御部110は、上記搬送速度が限界を超えていないと判断し、印刷ジョブが終了していなければ(S5でNo)、S1に戻って上記と同様の処理を繰り返し、印刷ジョブが終了していれば(S5でYes)、一連の処理を終了する。
【0092】
一方、用紙Pの搬送速度が閾値を超えている場合(S4でYes)、制御部110は、上記搬送速度が限界を超えたと判断し、複数の搬送ローラー対の少なくとも1つの駆動を制御して、用紙Pの搬送を(Vb2よりも)減速させるか、停止させる(S6)。その後、制御部110は、上記と同様に印刷ジョブが終了したか否かを判断し(S5)、印刷ジョブが終了していなければ、S1に戻って上記と同様の処理を繰り返し、印刷ジョブが終了していれば、一連の処理を終了する。
【0093】
以上のように、制御部110は、第1搬送ベルト8の走行時間T1と用紙Pの搬送時間T2とが等しくなるように、複数の搬送ローラー対の少なくとも1つ(例えば第1の搬送ローラー対91および第2の搬送ローラー対92の少なくとも一方)の駆動を制御して、合流地点Yに向かう用紙Pの搬送速度を調整する。これにより、用紙Pの搬送途中で、例えば上流側の搬送ローラー対でのスリップなどにより、用紙Pの搬送が遅れた場合でも、第1の搬送ローラー対91および第2の搬送ローラー対92の少なくとも一方の駆動を制御して用紙Pの搬送速度を調整することにより、用紙Pの搬送の遅れを取り戻すことができる。したがって、複数の搬送ローラー対によって搬送される用紙Pを、走行する第1搬送ベルト8の合流目標位置Xに合流地点Yで合流させて、第1搬送ベルト8上で開口部群82に対して所定の位置関係となる特定の位置に用紙Pを載置することができるとともに、用紙Pと搬送方向にずれて位置する開口部群82の開口部80を利用してフラッシングを行うことができる。その結果、フラッシングのときに開口部80に向けて吐出されたインクが用紙Pに着弾して記録画像の画質が低下することを回避することができる。
【0094】
特に、走行時間T1と搬送時間T2とが等しい場合、以下の条件式(1)が成立する。すなわち、
(Ls/Vs)=(La/Va)+(Lb1/Vb1)
+(Lb2/Vb2) ・・・(1)
である。制御部110は、具体的に条件式(1)を満足するように、第1の搬送ローラー対91としてのレジストローラー対13および第2の搬送ローラー対92の少なくとも一方の駆動を制御して、搬送速度VaおよびVbの少なくとも一方を調整することにより、T1=T2を実現して上記の効果を得ることができる。
【0095】
また、本実施形態では、第1の搬送ローラー対91は、用紙Pを所定のタイミングで第1搬送ベルト8に供給するレジストローラー対13である。レジストローラー対13によって第1搬送ベルト8に用紙Pを供給する場合、第1搬送ベルト8上の特定の位置に用紙Pを載置するためには、第1搬送ベルト8の走行速度Vsと、合流地点Yでの用紙Pの搬送速度Vaとを等しくすることが必要である。Vs=Vaを実現する場合、制御部110は、上記の条件式(1)を満足するように、第2の搬送ローラー対92の駆動を制御することが望ましい。
【0096】
このような駆動制御では、レジストローラー対13をVa=Vsとなるように一定速度で駆動して、第1搬送ベルト8上への用紙Pの載置を可能としつつ、搬送区間B1での用紙Pの搬送速度Vb1を第2の搬送ローラー対92によって変化させて、条件式(1)を満足させることができる。したがって、レジストローラー対13の駆動制御が複雑になるのを回避しながら、第1搬送ベルト8上で開口部群82に対して所定の位置関係となるように用紙Pを確実に載置することができる。
【0097】
また、各搬送ローラー対を駆動するモーターの特性等により、搬送速度の増大には限界があり、用紙Pの搬送遅れの程度によっては、用紙Pの搬送速度を最大にしても、第1搬送ベルト8上の特定の位置に用紙Pを合流させて載置することができない場合がある。例えば、図21の上段に示すように、先頭の用紙P1の搬送遅れが大きかったために、第2の搬送ローラー対92の駆動を制御して用紙P1の搬送速度を増大させても第1搬送ベルト8上の特定の位置に用紙P1を載置することができない場合(開口部群82Aに対する用紙P1の載置位置が特定の位置から搬送方向にずれた場合)、後続の用紙P2が第1搬送ベルト8の次の開口部群82Cと重なって載置されるおそれがある。この場合、開口部群82Cの開口部80を利用してフラッシングを行うと、用紙P2に対してインクが吐出され、用紙P2の記録画像の画質が低下する。このため、フラッシングを中止せざるを得ず、インク吐出口18の目詰まりを低減または予防して画像品質を維持することが困難となる。
【0098】
本実施形態では、制御部110は、第1搬送ベルト8の走行時間T1と用紙Pの搬送時間T2とが等しくなるときの用紙Pの搬送速度(例えばVb1)が閾値を超える場合、複数の搬送ローラー対の少なくとも1つの駆動を制御して、用紙Pの搬送を(Vb2よりも)減速させるか、停止させる(S4、S6)。用紙Pの搬送速度が閾値を超える場合、上記搬送速度が限界を超えたか、限界を超えるおそれがあり、第1搬送ベルト8上の特定の位置に用紙Pを載置することが困難であると判断することができる。この場合、制御部110が次の用紙P2の搬送を減速または停止させることにより、図21の下段で示すように、用紙P2を、第1搬送ベルト8の次の開口部群82Cに対して所定の載置位置に載置することが可能となる。つまり、用紙Pを次の開口部群82Cの開口部80と重ならないように第1搬送ベルト8上に載置して、開口部群82Cの開口部80を利用してフラッシングを行うことが可能となる。これにより、フラッシングによる用紙P2の記録画像の画質低下を回避することができる。また、開口部群82Cを利用してフラッシングを行うことができるため、インクの乾燥によるインク吐出口18の目詰まりを低減または予防して、画像品質を維持することができる。
【0099】
また、複数の開口部群82が搬送方向に不定期に位置する図8の第1搬送ベルト8を用いた場合、第1搬送ベルト8の複数の開口部群82のうち、用紙Pのサイズに応じたパターンで搬送方向に位置する開口部群82と開口部群82との間に少なくとも1枚の用紙Pを供給することで、生産性の低下を回避することができる(図9図12参照)。このように第1搬送ベルト8上に用紙Pを供給する構成では、用紙Pの搬送が何らかの原因で遅れ、基準となる開口部群82Aに対して先頭の用紙Pの載置位置が特定の位置からずれると、後続の用紙Pがいずれかの開口部群82と重なり、フラッシング用のインクが開口部群82の開口部80を通過せずに、開口部群82と重なった用紙Pに着弾し、記録画像の画質が低下する場合がある。
【0100】
したがって、上述した用紙Pの搬送速度の調整は、特に図9図12で示したような用紙Pの供給制御を行う場合に非常に有効となる。つまり、制御部110は、複数の搬送ローラー対の少なくとも1つの駆動を制御して、T1=T2となるように用紙Pの搬送速度を調整しながら、第1搬送ベルト8の複数の開口部群82のうち、用紙Pのサイズに応じたパターンで搬送方向に位置する開口部群82と開口部群82との間に少なくとも1枚の用紙Pを複数の搬送ローラー対によって供給させることが、記録画像の画質と生産性とを両方とも確保できる点で望ましいと言える。
【0101】
なお、以上では、第1の搬送ローラー対91および第2の搬送ローラー対92の少なくとも一方の駆動を制御することにより、用紙Pの搬送速度を調整する例について説明したが、第2の搬送ローラー対92が複数設けられる場合は、少なくとも1つの第2の搬送ローラー対92の駆動を制御して用紙Pの搬送速度を調整してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明は、インクを記録媒体に吐出して画像を記録するインクジェット記録装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0103】
8 第1搬送ベルト(搬送ベルト)
13 レジストローラー対(搬送ローラー対)
17a~17c 記録ヘッド
18 インク吐出口(ノズル)
25 ベルトセンサー(第1検知センサー)
80 開口部
82 開口部群
91 第1の搬送ローラー対
92 第2の搬送ローラー対
100 プリンター(インクジェット記録装置)
110 制御部
200 第3用紙センサー(第2検知センサー)
P 用紙(記録媒体)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図9
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