(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】半導体素子および半導体素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/336 20060101AFI20231129BHJP
H01L 29/78 20060101ALI20231129BHJP
C01B 33/02 20060101ALI20231129BHJP
H01L 29/786 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
H01L29/78 301H
C01B33/02 Z
H01L29/78 618B
H01L29/78 616V
H01L29/78 618Z
H01L29/78 627Z
H01L29/78 301S
(21)【出願番号】P 2019218906
(22)【出願日】2019-12-03
【審査請求日】2022-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三浦 篤志
(72)【発明者】
【氏名】中野 秀之
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 健治
(72)【発明者】
【氏名】大橋 雅卓
【審査官】石塚 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0104790(US,A1)
【文献】特開2016-084261(JP,A)
【文献】国際公開第2006/009073(WO,A1)
【文献】特開2016-216309(JP,A)
【文献】特開2015-144251(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/78
H01L 21/336
C01B 33/02
H01L 29/786
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコンが蜂巣格子状に配置されている原子シートであるシリセンの1~数原子層と、
前記シリセンの1~数原子層の上面および下面に配置されている1~数原子層の厚さを有する絶縁層と、
を有する特定チャネル構造を備え
、
前記絶縁層はフッ化カルシウム(CaF2)である、半導体素子。
【請求項2】
シリコンが蜂巣格子状に配置されている原子シートであるシリセンの1~数原子層と、
前記シリセンの1~数原子層の上面および下面に配置されている1~数原子層の厚さを有する絶縁層と、
を有する特定チャネル構造を備え
、
前記特定チャネル構造は、基板上に島状に配置されたメサ構造を備える、半導体素子。
【請求項3】
前記特定チャネル構造の一端と接続しており、前記基板上に配置された前記メサ構造を備えるソース領域と、
前記特定チャネル構造の他端と接続しており、前記基板上に配置された前記メサ構造を備えるドレイン領域と、
前記特定チャネル構造の上方に配置されたゲート電極と、
をさらに備える、請求項
2に記載の半導体素子。
【請求項4】
前記特定チャネル構造の最上層の前記絶縁層の上面に配置されているゲート絶縁膜をさらに備え、
前記ゲート電極は、前記ゲート絶縁膜の上面に配置されている、請求項
3に記載の半導体素子。
【請求項5】
前記ソース領域および前記ドレイン領域はカルシウムシリサイド(CaSi2)で形成されている、請求項
3または
4に記載の半導体素子。
【請求項6】
シリコンが蜂巣格子状に配置されている原子シートであるシリセンの1~数原子層と、
前記シリセンの1~数原子層の上面および下面に配置されている1~数原子層の厚さを有する絶縁層と、
を有する特定チャネル構造を備え
、
前記特定チャネル構造は、前記シリセンと前記絶縁層とが交互に積層した構造を備えており、
前記シリセンが2層以上存在している、半導体素子。
【請求項7】
基板上にカルシウムシリサイド薄膜(CaSi2)を成膜する工程と、
前記カルシウムシリサイド薄膜の第1領域にフッ素を拡散させる工程と、
前記第1領域の上方にゲート電極を形成する工程と、
前記フッ素が拡散されていない領域であって前記第1領域の近傍の領域であるソース領域およびドレイン領域の前記カルシウムシリサイド薄膜の表面に、ソース電極およびドレイン電極を形成する工程と、
を備える、半導体素子の製造方法。
【請求項8】
前記第1領域、前記ソース領域および前記ドレイン領域を含んだ領域の上面を覆うマスクを形成する工程と、
前記マスクで覆われていない領域の前記カルシウムシリサイド薄膜を除去する除去工程と、
を備える、請求項
7に記載の半導体素子の製造方法。
【請求項9】
前記マスクは酸化マグネシウム(MgO)を含んだマスクである、請求項
8に記載の半導体素子の製造方法。
【請求項10】
前記除去工程では、フッ素を含んだガスを用いたエッチングを用いる、請求項
8または
9に記載の半導体素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、シリセンを用いた半導体素子および半導体素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリセンは、シリコン(Si)が蜂巣格子状に組んで形成された1枚の原子シートである。シリセンは、グラフェンの欠点を克服した新たな新機能材料として、超高速電子デバイスへの応用が大きく期待されている。なお、関連する技術が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シリセンは、自然酸化しやすい特性を有するなど、取り扱いが難しい材料である。そのため、半導体素子に適用することが困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示する半導体素子は、特定チャネル構造を備える。特定チャネル構造は、シリコンが蜂巣格子状に配置されている原子シートであるシリセンの1~数原子層を備える。特定チャネル構造は、シリセンの1~数原子層の上面および下面に配置されている1~数原子層の厚さを有する絶縁層を備える。
【0006】
特定チャネル構造は、シリセンの1~数原子層が絶縁層で挟まれた構造を備えている。絶縁層によりシリセンを保護することができるため、大気中でのシリセンの自然酸化等を抑制することができる。シリセンの取り扱いが容易になるため、シリセンを用いて半導体素子を作成することが可能となる。
【0007】
絶縁層はフッ化カルシウム(CaF2)であってもよい。効果の詳細は実施例で説明する。
【0008】
特定チャネル構造は、基板上に島状に配置されたメサ構造を備えていてもよい。
【0009】
特定チャネル構造の一端と接続しており、基板上に配置されたメサ構造を備えるソース領域を備えていてもよい。特定チャネル構造の他端と接続しており、基板上に配置されたメサ構造を備えるドレイン領域を備えていてもよい。特定チャネル構造の上方に配置されたゲート電極を備えていてもよい。
【0010】
特定チャネル構造の最上層の絶縁層の上面に配置されているゲート絶縁膜をさらに備えていてもよい。ゲート電極は、ゲート絶縁膜の上面に配置されていてもよい。効果の詳細は実施例で説明する。
【0011】
ソース領域およびドレイン領域はカルシウムシリサイド(CaSi2)で形成されていてもよい。
【0012】
特定チャネル構造は、シリセンと絶縁層とが交互に積層した構造を備えていてもよい。シリセンが2層以上存在していてもよい。効果の詳細は実施例で説明する。
【0013】
本明細書が開示する半導体素子の製造方法は、基板上にカルシウムシリサイド薄膜(CaSi2)を成膜する工程を備える。製造方法は、カルシウムシリサイド薄膜の第1領域にフッ素を拡散させる工程を備える。製造方法は、第1領域の上方にゲート電極を形成する工程を備える。製造方法は、フッ素が拡散されていない領域であって第1領域の近傍の領域であるソース領域およびドレイン領域のカルシウムシリサイド薄膜の表面に、ソース電極およびドレイン電極を形成する工程を備える。効果の詳細は実施例で説明する。
【0014】
製造方法は、第1領域、ソース領域およびドレイン領域を含んだ領域の上面を覆うマスクを形成する工程を備えていてもよい。製造方法は、マスクで覆われていない領域のカルシウムシリサイド薄膜を除去する除去工程を備えていてもよい。
【0015】
マスクは酸化マグネシウム(MgO)を含んだマスクであってもよい。効果の詳細は実施例で説明する。
【0016】
除去工程では、フッ素を含んだガスを用いたエッチングを用いてもよい。効果の詳細は実施例で説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施例1に係る半導体装置1の要部断面図および上面図である。
【
図2】半導体装置1の製造方法を説明するフロー図である。
【
図3】半導体装置1の製造工程を説明する断面図および上面図である。
【
図4】半導体装置1の製造工程を説明する断面図および上面図である。
【
図5】半導体装置1の製造工程を説明する断面図および上面図である。
【
図6】実施例2に係る半導体装置1aの要部断面図および上面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0018】
(半導体装置1の構造)
図1(A)および
図1(B)に、半導体装置1の要部断面図および上面図を示す。
図1(A)は、
図1(B)のA-A線における断面図である。半導体装置1は、プレーナゲート構造を有する横型のMOSFETである。半導体装置1は、Si基板10、特定チャネル構造21、ソース領域22、ドレイン領域23、酸化シリコン層30、ゲート電極41、ソース電極42、ドレイン電極43、を備えている。
【0019】
Si基板10は、表面が(111)面である高抵抗の基板である。Si基板10の表面には、特定チャネル構造21、ソース領域22、ドレイン領域23が配置されている。特定チャネル構造21、ソース領域22、ドレイン領域23は、Si基板10上に島状に配置されたメサ構造MSを備えている。すなわち特定チャネル構造21、ソース領域22、ドレイン領域23は、Si基板10の表面10sから上方(z軸正方向)へ突出した台形に形成されている。
【0020】
特定チャネル構造21は、シリセン層SLと、絶縁層IL1およびIL2を備えている。シリセン層SLは、シリコンが蜂巣格子状に配置されている原子シートであるシリセンの1~数原子層である。絶縁層IL1およびIL2は、シリセン層SLの上面および下面に配置されている、1~数原子層の厚さを有するフッ化カルシウム(CaF2)である。本実施例では、特定チャネル構造21は、1~5原子層のシリセン層SLを、1~5原子層の絶縁層IL1およびIL2が挟み込んでいる構造を有している。さらに好ましくは、シリセン層SLの厚さは、2原子層であってもよい。2原子層(二層構造)のシリセンは、1原子層(一層構造)のシリセンに比して、ダングリングボンドを25%まで低減することができる。
【0021】
特定チャネル構造21の一端にはソース領域22が接続しており、他端にはドレイン領域23が接続している。ソース領域22およびドレイン領域23は、カルシウムシリサイド(CaSi2)で形成されている。特定チャネル構造21、ソース領域22、ドレイン領域23の上面の高さは、略同一である。
【0022】
Si基板10、特定チャネル構造21、ソース領域22、ドレイン領域23の上面には、酸化シリコン層30が配置されている。特定チャネル構造21の上面には、窓部31を介して、ゲート電極41が配置されている。ソース領域22の上面には、開口部32を介して、ソース電極42が配置されている。ドレイン領域23の上面には、開口部33を介して、ドレイン電極43が配置されている。
【0023】
(半導体装置1の製造方法)
図2のフロー図、および、
図3~
図5の断面図および上面図を用いて、半導体装置1の製造方法を説明する。ステップS1において、Si基板10上にカルシウムシリサイド(CaSi
2)薄膜20を成膜する。カルシウムシリサイド薄膜20は、例えば、分子線エピタキシー法(Molecular Beam Epitaxy)を用いて成膜してもよい。
【0024】
ステップS2において、カルシウムシリサイド薄膜20上にハードマスク24を成膜する。本実施例では、ハードマスク24は、酸化マグネシウム(MgO)である。ハードマスク24は、カルシウムシリサイド薄膜20に酸化などの影響を与えない方法で成膜される。本実施例では、真空蒸着によって成膜される。ステップS3において、ハードマスク24をパターニングする。具体的には、特定チャネル構造21、ソース領域22、ドレイン領域23の上面を覆うマスクを作成する。ハードマスク24のパターニングは、例えばリフトオフ法によって行ってもよい。
【0025】
ステップS4において、ハードマスク24で覆われていない領域のカルシウムシリサイド薄膜20をエッチングにより除去する。これにより、
図3に示すように、メサ構造MSを有した構造が形成される。エッチングは、基板温度を上げないエッチングが好ましい。本実施例では、誘導結合プラズマ反応性イオンエッチング(Inductively Coupled Plasma Reactive Ion Etching: ICP-RIE)を用いた。またエッチングには、フッ素を含んだガスが用いられる。本実施例では、エッチングガスとしてCHF
3を用いた。ステップS5において、ハードマスク24を除去する。本実施例で用いている酸化マグネシウムは、希塩酸などの水溶液で容易に剥離できる。
【0026】
ステップS6において、酸化シリコン層30を成膜する。ステップS7において、レジストをデポし、周知のリソグラフィ技術およびドライエッチング技術を用いて、酸化シリコン層30に窓部31を開口する。これにより、
図4に示す構造が形成される。窓部31は、後述するステップS8で、カルシウムシリサイド薄膜20をフッ素化して特定チャネル構造21に変化させるために用いる部位である。窓部31の配置位置は、特定チャネル構造21に対応した位置とされる。窓部31の数、x方向幅、y方向幅、y方向間隔などは、特定チャネル構造21のx方向幅およびy方向幅に応じて適宜に調節が可能である。
【0027】
ステップS8において、窓部31を介して、カルシウムシリサイド薄膜20にフッ素を拡散させる。これにより、窓部31の近傍のカルシウムシリサイド薄膜20が、フッ素化する。よって
図5に示すように、特定チャネル構造21に対応する領域を、絶縁層IL1およびIL2に挟まれたシリセン層SLに変化させることができる。また、カルシウムシリサイド薄膜20のうちフッ素化されていない領域を、ソース領域22およびドレイン領域23とすることができる。
【0028】
本実施例では、フッ素を含有する液相中において熱処理する方法により、フッ素を拡散させた。このような液相としては、例えば、[BMIM][BF4]、[EMIM][BF4]などのイオン液体が挙げられる。一般に、熱処理温度が高くなるほど、フッ素の拡散速度が速くなる。また熱処理時間が長くなるほど、フッ素の拡散量が増大する。従って、特定チャネル構造21のx方向幅およびy方向幅が所望の値となるように、熱処理温度および時間を調整すればよい。
【0029】
ステップS9において、周知のリソグラフィ技術およびドライエッチング技術により、ソース領域22上に開口部32を形成するとともに、ドレイン領域23上に開口部33を形成する。電極材料(例:Au)を蒸着する。周知のリソグラフィ技術およびエッチング技術により、ゲート電極41、ソース電極42、ドレイン電極43を形成する。これにより、
図1に示す半導体装置1が完成する。なお、
図2のステップS2~S7およびS9の各工程は、文部科学省ナノテクノロジープラットフォーム事業(NIMS微細加工プラットフォーム)の支援(設備利用)を受けて実施した。
【0030】
(効果)
窓部31を介してカルシウムシリサイド薄膜20をフッ素化する(ステップS8)ことで、シリセン層SLが絶縁層IL1およびIL2で挟まれた構造を備えた特定チャネル構造21を形成することができる。絶縁層IL1およびIL2によりシリセン層SLを保護することができるため、大気中でのシリセン層SLの自然酸化等を抑制することができる。シリセンの取り扱い性を高めることができるため、シリセンを用いて半導体装置1を作成することが可能となる。グラフェンでは存在しないバックリング構造を持つシリセンは、超高速電子の起源となるディラック・コーン電子状態が安定しているため、超高速電子デバイス(テラヘルツデバイス)を作成することが可能となる。
【0031】
カルシウムシリサイド薄膜20をエッチングで除去してメサ構造MSを形成する工程(ステップS4)では、マスクを使用する。マスク材料は、(1)マスク成膜時にカルシウムシリサイド薄膜20に酸化などの影響を与えないこと、(2)エッチング時にカルシウムシリサイド薄膜20との選択比を十分に確保できること、(3)エッチング後のマスク除去時にカルシウムシリサイド薄膜に影響を与えないこと、の3条件を満たすことが好ましい。しかし、マスク材料に例えば有機材料のレジストを用いる場合には、選択比が確保できない問題がある。またマスク材料に例えばクロム(Cr)を用いる場合には、マスク除去に混酸(強酸化学溶液)によるウエットエッチングを行う必要があることや、廃液処理の問題がある。そこで本実施例では、マスク材料に酸化マグネシウム(MgO)を用いている。これにより、(1)真空蒸着により成膜(ステップS2)できるため、マスク成膜時にカルシウムシリサイド薄膜20に与える影響を抑制できる。また、(2)エッチングにフッ素を含んだガス(例:CHF3)を用いることで、カルシウムシリサイド薄膜20との選択比を十分に確保することができる。また、(3)希塩酸などの水溶液で容易に剥離できるため、マスク除去時にカルシウムシリサイド薄膜20に与える影響を抑制できる。また、マグネシウムはクロムに比して毒性が低いため、廃液処理を容易化できる。
【実施例2】
【0032】
図6に、実施例2に係る半導体装置1aを示す。実施例2の半導体装置1aは、実施例1の半導体装置1(
図1)に比して、ゲート電極41と特定チャネル構造21との間に、ゲート絶縁膜(酸化シリコン層30a)を配置している点が異なる。なお、その他の構成は実施例1の内容と同様である。実施例1と同一内容の部位には同一符号を付すことで、説明を省略する。また実施例2に特有の構造には、符号の末尾に「a」を付すことで区別している。
【0033】
酸化シリコン層30aは、特定チャネル構造21の最上層の絶縁層IL2の上面に配置されている。酸化シリコン層30aは、x方向に並んで2つ配置されている窓部31aを備えている。x方向に並ぶ窓部31aの間の距離は、幅W1である。幅W1の値は、前述したフッ素化工程(ステップS8)において、ゲート電極41a下部に十分にフッ素が拡散できるような値とすればよい。
【0034】
窓部31aの間に配置されている酸化シリコン層30aの表面に、ゲート電極41aが配置されている。ゲート電極41aは、y方向に伸びる帯形状を有している。ゲート電極41aのx方向の幅は、幅W1以下である。酸化シリコン層30aは、ゲート絶縁膜として機能する。酸化シリコン層30aは、ち密でピンホールの少ない良好な膜質であることが好ましい。本実施例では、低温プラズマCVDにより酸化シリコン層30aを成膜した。
【0035】
(効果)
ゲート電極41aと特定チャネル構造21とが、ゲート絶縁膜である酸化シリコン層30aを介して積層される構造とすることができる。絶縁層IL1の膜質が良好でなく、ピンホールやクラックが存在する場合であっても、ゲートリークの発生を防止することが可能となる。
【0036】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【0037】
(変形例)
特定チャネル構造21の構造は、本実施例で示した3層構造に限られない。シリセン層が絶縁層に挟み込まれている構造を備えていれば、何れの構造でもよい。例えば、シリセン層と絶縁層とが交互に積層した5層以上の構造であってもよい。積層構造の層数を増加させるほど、シリセン層の層数を増加させることができる。シリセン層にキャリアが流れるため、積層構造の層数を増加させるほど、チャネル抵抗を低くすることが可能となる。なお、積層構造の層数は、ステップS8でフッ素化する前のカルシウムシリサイド薄膜20の膜厚によって制御することができる。従って、所望の層数となるように、ステップS1で成膜するカルシウムシリサイド薄膜20の膜厚を調整すればよい。
【0038】
シリセンを挟み込む絶縁層は、フッ化カルシウムに限られない。シリセンと格子定数が近い結晶構造を有していれば、何れの絶縁層でもよい。例えば、酸化セリウム(CeO2)であってもよい。
【0039】
図2で説明した半導体装置1の製造方法の各工程の順番は一例であり、順番の入れ替え、工程の追加および削除が可能である。例えば、特定チャネル構造21の作成工程(ステップS6~S8)と、メサ構造の作成工程(ステップS2~S5)を入れ替えてもよい。
【符号の説明】
【0040】
1:半導体装置 10:Si基板 20:カルシウムシリサイド薄膜 21:特定チャネル構造 22:ソース領域 23:ドレイン領域 30:酸化シリコン層 31:窓部 41:ゲート電極 SL:シリセン層 IL1、IL2:絶縁層