(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】センサシステム、マスタユニット、予測装置、及び予測方法
(51)【国際特許分類】
G05B 23/02 20060101AFI20231129BHJP
G05B 19/418 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
G05B23/02 Z
G05B19/418 Z
(21)【出願番号】P 2019220520
(22)【出願日】2019-12-05
【審査請求日】2022-05-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100108213
【氏名又は名称】阿部 豊隆
(72)【発明者】
【氏名】飯田 雄介
(72)【発明者】
【氏名】蓬郷 典大
(72)【発明者】
【氏名】谷末 光平
(72)【発明者】
【氏名】加藤 豊
(72)【発明者】
【氏名】高橋 政典
【審査官】杉山 悟史
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-150211(JP,A)
【文献】特開2018-109876(JP,A)
【文献】特開2014-96036(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/00 ~ 23/02
G05B 19/418
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラインによって移動するワークを測定する第1センサと、
前記第1センサよりも長い周期で前記ワークを測定する第2センサと、
マスタユニットと、を備え、
前記マスタユニットは、
前記第1センサによって測定されたデータと前記第2センサによって測定されたデータとを取得する取得部と、
学習モデルの機械学習に用いられ、取得された前記第1センサのデータを入力データとし、取得された前記第2センサのデータを前記入力データの性質を表すラベルデータとする学習用データを生成する生成部と、を含む、
センサシステム。
【請求項2】
前記生成部は、前記ワークの移動速度及び前記第1センサと前記第2センサとの間の距離から算出される時間差と、前記第1センサの測定周期と、前記第2センサの測定周期とに基づいて、前記入力データと前記ラベルデータとを対応付け、前記学習用データを生成する、
請求項1に記載のセンサシステム。
【請求項3】
前記第1センサは、前記ワークが移動する
前記ラインにおいて、前記第2センサに対して上流側に配置されている、
請求項1又は2に記載のセンサシステム。
【請求項4】
前記マスタユニットは、前記学習用データを用いて学習モデルの機械学習を実行し、学習済モデルを生成する学習部をさらに含む、
請求項1から3のいずれか一項に記載のセンサシステム。
【請求項5】
前記マスタユニットは、取得された前記第1センサのデータを前記学習済モデルに入力し、該学習済モデルに予測値を出力させる予測部をさらに含む、
請求項4に記載のセンサシステム。
【請求項6】
複数の前記第1センサを備え、
前記マスタユニットは、前記複数の第1センサのうちの1つについて、取得された該第1センサのデータと取得した前記第2センサのデータとの相関係数を算出する選定部をさらに含む、
請求項1から5のいずれか一項に記載のセンサシステム。
【請求項7】
複数の前記第1センサを備え、
前記生成部は、前記複数の第1センサのうちの少なくとも1つから取得されたデータを入力データとする学習用データを生成し、
前記マスタユニットは、取得された前記第2センサのデータと、前記学習用データを用いて学習モデルの機械学習を実行して生成される学習済モデルに前記入力データを入力して出力させた予測値とに基づいて、該学習済モデルの学習進捗の割合を表す学習進捗値を算出する選定部をさらに含む、
請求項1から5のいずれか一項に記載のセンサシステム。
【請求項8】
ラインによって移動するワークを測定する第1センサと前記第1センサよりも長い周期で前記ワークを測定する第2センサとを含むセンサシステムに用いられるマスタユニットであって、
前記第1センサによって測定されたデータと前記第2センサによって測定されたデータとを取得する取得部と、
学習モデルの機械学習に用いられ、取得された前記第1センサのデータを入力データとし、取得された前記第2センサのデータを前記入力データの性質を表すラベルデータとする学習用データを生成する生成部と、を備える、
マスタユニット。
【請求項9】
前記生成部は、前記ワークの移動速度及び前記第1センサと前記第2センサとの間の距離から算出される時間差と、前記第1センサの測定周期と、前記第2センサの測定周期とに基づいて、前記入力データと前記ラベルデータとを対応付け、前記学習用データを生成する、
請求項8に記載のマスタユニット。
【請求項10】
前記学習用データを用いて学習モデルの機械学習を実行し、学習済モデルを生成する学習部をさらに備える、
請求項8又は9に記載のマスタユニット。
【請求項11】
取得された前記第1センサのデータを前記学習済モデルに入力し、該学習済モデルに予測値を出力させる予測部をさらに備える、
請求項10に記載のマスタユニット。
【請求項12】
前記センサシステムは複数の前記第1センサを含み、
前記複数の第1センサのうちの1つについて、取得された該第1センサのデータと取得された前記第2センサのデータとの相関係数を算出する選定部をさらに備える、
請求項8から11のいずれか一項に記載のマスタユニット。
【請求項13】
前記センサシステムは複数の前記第1センサを含み、
前記生成部は、前記複数の第1センサのうちの少なくとも1つから取得されたデータを入力データとする学習用データを生成し、
取得された前記第2センサのデータと、前記学習用データを用いて学習モデルの機械学習を実行して生成される学習済モデルに前記入力データを入力して出力させた予測値とに基づいて、該学習済モデルの学習進捗の割合を表す学習進捗値を算出する選定部をさらに備える、
請求項8から11のいずれか一項に記載のマスタユニット。
【請求項14】
ワークの異常又は異常予兆を予測する予測装置であって、
前記ワークを測定する第1センサによって測定されたデータを取得する取得部と、
取得された前記第1センサのデータを学習済モデルに入力し、該学習済モデルに予測値を出力させる予測部と、を備え、
前記学習済モデルは、前記第1センサのデータを入力データとし、前記第1センサよりも長い周期で前記ワークを測定する第2センサのデータを、前記入力データの性質を表すラベルデータとして生成された学習用データを用い、学習モデルの機械学習を実行して生成されたものである、
予測装置。
【請求項15】
ワークの異常又は異常予兆を予測する予測方法であって、
前記ワークを測定する第1センサによって測定されたデータを取得するステップと、
取得された前記第1センサのデータを学習済モデルに入力し、該学習済モデルに予測値を出力させるステップと、を含み、
前記学習済モデルは、前記第1センサのデータを入力データとし、前記第1センサよりも長い周期で前記ワークを測定する第2センサのデータを、前記入力データの性質を表すラベルデータとして生成された学習用データを用い、学習モデルの機械学習を実行して生成されたものである、
予測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、センサシステム、マスタユニット、予測装置、及び予測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ラインに沿って複数のセンサを配置して、ライン上を搬送されるワークの有無を測定することがある。複数のセンサにより測定されたデータは、複数のスレーブユニットにより取得されてマスタユニットに転送され、マスタユニットに接続されたPLC(Programmable Logic Controller)等の制御装置に集約されることがある。
【0003】
下記特許文献1には、複数のセンサユニットと、各々のセンサユニットから受信した情報を制御装置に向けて送信する通信装置とを備えるセンサシステムが記載されている。各センサユニットは、いずれかのセンサユニットから発信される同期信号を起点として、センサユニット毎に定められる待機時間が経過してから、センシングデータ等の検出情報を通信装置に送信する。ここで、各センサユニットの待機時間は、他のセンサユニットの待機時間とは異なるように定められている。特許文献1に記載の技術によって、複数のセンサにより測定したデータを制御装置に集約する場合に、制御装置からのコマンドを待たずにデータを送信することができ、通信速度を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、複数のセンサにより測定されたデータを学習モデルの機械学習に用いて学習済モデルを生成し、学習済モデルによってより高度な判定を行うセンサシステムを構築する研究が行われている。
【0006】
従来、学習済モデルを用いたセンサシステムとして、ラインに配置された複数のセンサにより測定されたデータから生成された学習済モデルを用い、当該ライン上を搬送されるワークの異常又は異常の予兆若しくは兆候を検知するものが提案されている。
【0007】
しかしながら、このようなセンサシステムでは、なるべく早くワークの異常又は異常の予兆若しくは兆候を検知して異常のあるワークの製造や生成を抑制したい、という要望があった。
【0008】
そこで、本発明は、早期にワークの異常又は異常予兆を検知することのできるセンサシステム、マスタユニット、予測装置、及び予測方法を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様に係るセンサシステムは、ワークを測定する第1センサと、第1センサよりも長い周期でワークを測定する第2センサと、マスタユニットと、を備え、マスタユニットは、第1センサによって測定されたデータと第2センサによって測定されたデータとを取得する取得部と、学習モデルの機械学習に用いられ、取得された第1センサのデータを入力データとし、取得された第2センサのデータを入力データの性質を表すラベルデータとする学習用データを生成する生成部と、を含む。
【0010】
この態様によれば、学習モデルの機械学習に用いられ、取得された第1センサのデータを入力データとし、取得された第2センサのデータを入力データの性質を表すラベルデータとする学習用データが生成される。これにより、当該学習用データを用いて生成される学習済モデルは、測定周期が第2センサよりも短い第1センサのデータを入力として値(予測値)を出力することが可能となる。従って、当該学習済モデルを用いることで、従来よりも早期にワークの異常又は異常予兆を検知することができる。
【0011】
前述した態様において、生成部は、ワークの移動速度及び第1センサと第2センサとの間の距離から算出される時間差と、第1センサの測定周期と、第2センサの測定周期とに基づいて、入力データとラベルデータとを対応付け、学習用データを生成してもよい。
【0012】
この態様によれば、時間差と第1センサの測定周期と第2センサの測定周期とに基づいて、入力データとラベルデータとを対応付け、学習用データが生成される。これにより、同一又は近似のワークに対して測定されたデータ同士を対応付けて学習用データが生成されるので、学習済モデルの予測精度を向上させることができる。
【0013】
前述した態様において、第1センサは、ワークが移動するラインにおいて、第2センサに対して上流側に配置されていてもよい。
【0014】
この態様によれば、第1センサは、ワークが移動するラインにおいて、第2センサに対して上流側に配置される。これにより、第2センサに対して下流側に配置される場合と比較して、生成される学習済モデルは、ラインにおける相対的に早い段階のワークに対して測定したデータが入力データとなるので、早期にワークの異常又は異常予兆を予測することができる。
【0015】
前述した態様において、マスタユニットは、学習用データを用いて学習モデルの機械学習を実行し、学習済モデルを生成する学習部をさらに含んでもよい。
【0016】
この態様によれば、学習用データを用いて学習モデルの機械学習を実行し、学習済モデルが生成される。これにより、早期にワークの異常又は異常予兆を検知する学習済モデルを容易に生成することができる。
【0017】
前述した態様において、マスタユニットは、取得された第1センサのデータを学習済モデルに入力し、該学習済モデルに予測値を出力させる予測部をさらに含んでもよい。
【0018】
この態様によれば、取得した第1センサのデータを入力し、学習済モデルに予測値を出力させる。これにより、当該予測値によって早期にワークの異常又は異常予兆を予測することができる。
【0019】
前述した態様において、複数の第1センサを備え、マスタユニットは、複数の第1センサのうちの1つについて、取得された該第1センサのデータと取得した第2センサのデータとの相関係数を算出する選定部をさらに含んでもよい。
【0020】
この態様によれば、複数の第1センサのうちの1つについて、取得された第1センサのデータと取得された第2センサのデータとの相関係数が算出される。これにより、複数の第1センサのうち、第2センサのデータと、線形関係又は線形関係に近いにあるデータを測定する第1センサを選定することができる。
【0021】
前述した態様において、複数の第1センサを備え、生成部は、複数の第1センサのうちの少なくとも1つから取得されたデータを入力データとする学習用データを生成し、マスタユニットは、取得された第2センサのデータと、学習用データを用いて学習モデルの機械学習を実行して生成される学習済モデルに入力データを入力して出力させた予測値とに基づいて、該学習済モデルの学習進捗の割合を表す学習進捗値を算出する選定部をさらに含んでもよい。
【0022】
この態様によれば、取得された第2センサのデータと、学習用データを用いて学習モデルの機械学習を実行して生成される学習済モデルに入力データを入力して出力させた予測値とに基づいて、学習進捗値が算出される。これにより、学習進捗値に基づいて、複数の第1センサ30aから少なくとも1つを選定することで、当該第1センサのデータから生成される学習済モデルの予測値が第2センサのデータの値に近いものを選ぶことが可能となる。
【0023】
本開示の他の態様に係るマスタユニットは、ワークを測定する第1センサと第1センサよりも長い周期でワークを測定する第2センサとを含むセンサシステムに用いられるマスタユニットであって、第1センサによって測定されたデータと第2センサによって測定されたデータとを取得する取得部と、学習モデルの機械学習に用いられ、取得された第1センサのデータを入力データとし、取得された第2センサのデータを入力データの性質を表すラベルデータとする学習用データを生成する生成部と、を備える。
【0024】
この態様によれば、学習モデルの機械学習に用いられ、取得された第1センサのデータを入力データとし、取得された第2センサのデータを入力データの性質を表すラベルデータとする学習用データが生成される。これにより、当該学習用データを用いて生成される学習済モデルは、測定周期が第2センサよりも短い第1センサのデータを入力として値(予測値)を出力することが可能となる。従って、当該学習済モデルを用いることで、従来よりも早期にワークの異常又は異常予兆を検知することができる。
【0025】
前述した態様において、生成部は、ワークの移動速度及び第1センサと第2センサとの間の距離から算出される時間差と、第1センサの測定周期と、第2センサの測定周期とに基づいて、入力データとラベルデータとを対応付け、学習用データを生成してもよい。
【0026】
この態様によれば、時間差と第1センサの測定周期と第2センサの測定周期とに基づいて、入力データとラベルデータとを対応付け、学習用データが生成される。これにより、同一又は近似のワークに対して測定されたデータ同士を対応付けて学習用データが生成されるので、学習済モデルの予測精度を向上させることができる。
【0027】
前述した態様において、学習用データを用いて学習モデルの機械学習を実行し、学習済モデルを生成する学習部をさらに備えてもよい。
【0028】
この態様によれば、学習用データを用いて学習モデルの機械学習を実行し、学習済モデルが生成される。これにより、早期にワークの異常又は異常予兆を検知する学習済モデルを容易に生成することができる。
【0029】
前述した態様において、取得された第1センサのデータを学習済モデルに入力し、該学習済モデルに予測値を出力させる予測部をさらに備えてもよい。
【0030】
この態様によれば、取得した第1センサのデータを入力し、学習済モデルに予測値を出力させる。これにより、当該予測値によって早期にワークの異常又は異常予兆を予測することができる。
【0031】
前述した態様において、センサシステムは複数の第1センサを含み、複数の第1センサのうちの1つについて、取得された該第1センサのデータと取得した第2センサのデータとの相関係数を算出する選定部をさらに備えてもよい。
【0032】
この態様によれば、複数の第1センサのうちの1つについて、取得された第1センサのデータと取得された第2センサのデータとの相関係数が算出される。これにより、複数の第1センサのうち、第2センサのデータと、線形関係又は線形関係に近いにあるデータを測定する第1センサを選定することができる。
【0033】
前述した態様において、センサシステムは複数の第1センサを含み、生成部は、複数の第1センサのうちの少なくとも1つから取得されたデータを入力データとする学習用データを生成し、取得された第2センサのデータと、学習用データを用いて学習モデルの機械学習を実行して生成される学習済モデルに入力データを入力して出力させた予測値とに基づいて、該学習済モデルの学習進捗の割合を表す学習進捗値を算出する選定部をさらに備えてもよい。
【0034】
この態様によれば、取得された第2センサのデータと、学習用データを用いて学習モデルの機械学習を実行して生成される学習済モデルに入力データを入力して出力させた予測値とに基づいて、学習進捗値が算出される。これにより、学習進捗値に基づいて、複数の第1センサ30aから少なくとも1つを選定することで、当該第1センサのデータから生成される学習済モデルの予測値が第2センサのデータの値に近いものを選ぶことが可能となる。
【0035】
本開示の他の態様に係る予測装置は、ワークの異常又は異常予兆を予測する予測装置であって、ワークを測定する第1センサによって測定されたデータを取得する取得部と、取得された第1センサのデータを学習済モデルに入力し、該学習済モデルに予測値を出力させる予測部と、を備え、学習済モデルは、第1センサのデータを入力データとし、第1センサよりも長い周期でワークを測定する第2センサのデータを、入力データの性質を表すラベルデータとして生成された学習用データを用い、学習モデルの機械学習を実行して生成されたものである。
【0036】
この態様によれば、取得した第1センサのデータを学習済モデルに入力し、該学習済モデルに予測値を出力させる。ここで、学習済モデルは、第1センサのデータを入力データとし、第2センサのデータを入力データの性質を表すラベルデータとして生成された学習用データを用いて生成されたものなので、測定周期が第2センサよりも短い第1センサのデータを入力として予測値を出力することができる。従って、当該予測値によって早期にワークの異常又は異常予兆を予測することができる。
【0037】
本開示の他の態様に係る予測方法は、ワークの異常又は異常予兆を予測する予測方法であって、ワークを測定する第1センサによって測定されたデータを取得するステップと、取得された前記第1センサのデータを学習済モデルに入力し、該学習済モデルに予測値を出力させるステップと、を含み、学習済モデルは、第1センサのデータを入力データとし、第1センサよりも長い周期で前記ワークを測定する第2センサのデータを、入力データの性質を表すラベルデータとして生成された学習用データを用い、学習モデルの機械学習を実行して生成されたものである。
【0038】
この態様によれば、取得した第1センサのデータを学習済モデルに入力し、該学習済モデルに予測値を出力させる。ここで、学習済モデルは、第1センサのデータを入力データとし、第2センサのデータを入力データの性質を表すラベルデータとして生成された学習用データを用いて生成されたものなので、測定周期が第2センサよりも短い第1センサのデータを入力として予測値を出力することができる。従って、当該予測値によって早期にワークの異常又は異常予兆を予測することができる。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、早期にワークの異常又は異常予兆を検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る光学計測装置の概略構成を例示する構成図である。
【
図2】
図2は、一実施形態におけるマスタユニット及びスレーブユニットの物理的構成を例示する構成図である。
【
図3】
図3は、一実施形態におけるマスタユニットの機能ブロックの構成を例示する構成図である。
【
図4】
図4は、一実施形態におけるラインの第1例の概略構成を例示する構成図である。
【
図5】
図5は、一実施形態におけるマスタユニットの設定モード処理の概略動作を例示するフローチャートである。
【
図6】
図6は、一実施形態におけるマスタユニットの予測学習処理の概略動作を例示するフローチャートである。
【
図7】
図7は、生成部による入力データとラベルデータとの対応付けを説明ための概念図である。
【
図8】
図8は、一実施形態におけるマスタユニットの選定学習処理の概略動作を例示するフローチャートである。
【
図9】
図9は、一実施形態におけるマスタユニットの第1センサ選定モード処理の概略動作を例示するフローチャートである。
【
図10】
図10は、一実施形態におけるマスタユニットの予測モード処理の概略動作を例示するフローチャートである。
【
図11】
図11は、一実施形態におけるラインの第2例の概略構成を例示する構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下に本発明の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一または類似の部分には同一または類似の符号で表している。但し、図面は模式的なものである。従って、具体的な寸法等は以下の説明を照らし合わせて判断するべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。さらに、本発明の技術的範囲は、当該実施形態に限定して解するべきではない。
【0042】
まず、
図1を参照しつつ、一実施形態に従うセンサシステムの構成について説明する。
図1は、一実施形態におけるセンサシステム1の概略構成を例示する構成図である。
【0043】
図1に示すように、センサシステム1は、例えば、マスタユニット10、第1スレーブユニット20a、第2スレーブユニット20b、第1センサ30a、第2センサ30b、及びPLC40を備える。なお、本実施形態のマスタユニット10は、「予測装置」の一例にも相当する。
【0044】
第1センサ30a及び第2センサ30bは、ラインLに沿って配置される。ラインL上には、
図1において左から右(紙面手前から奥)の方向に、ワークWが搬送されている。第1センサ30a及び第2センサ30bは、ラインL上を搬送されるワークWに関するデータ、例えば通過状況を示すデータを測定する。第1センサ30a及び第2センサ30bの測定周期は、互いに異なっており、第2センサ30bは、第1センサ30aよりも長い周期でワークWを測定する。すなわち、第1センサ30aは、第2センサ30bよりも短い周期でワークWを測定している。
【0045】
なお、ラインLは、
図1に示した例に限定されるものではない。ラインLは、ワークWが移動するものであればよい。例えば、ラインLは、ワークWを搬送するための搬送ライン、ワークWを製造するための製造ライン、ワークWを生産するための生産ライン等、その種類を問わない。また、ワークWは、最終製品である場合に限定されず、例えば、中間製品、半製品、部品、材料等であってもよい。
【0046】
第1スレーブユニット20aは第1センサ30aに接続され、第2スレーブユニット20bは第2センサ30bに接続されている。また、マスタユニット10は、第1スレーブユニット20a及び第2スレーブユニット20bと、PLC40とに接続されている。本明細書では、第1スレーブユニット20a、第2スレーブユニット20bを総称してスレーブユニット20といい、第1センサ30a、第2センサ30bを総称してセンサ30という。
【0047】
なお、本実施形態では、センサシステム1が1つの第1センサ30aと、1つの第2センサ30bと、2つのスレーブユニットを備える例を示したが、これに限定されるものではない。センサシステム1が備える第1センサの数、第2センサの数、スレーブユニットの数は任意であり、適宜変更してもよい。また、センサシステム1は、必ずしもPLC40を備えていなくてもよい。
【0048】
マスタユニット10は、LAN(Local Area Network)等の通信ネットワークを介してPLC40に接続されている。スレーブユニット20は、マスタユニット10に物理的かつ電気的に接続される。本実施形態において、マスタユニット10は、スレーブユニット20から受信した情報を記憶部に記憶し、記憶された情報をPLC40に送信する。従って、スレーブユニット20により取得されたデータは、マスタユニット10によって一元化されてPLC40に伝送される。
【0049】
具体的には、スレーブユニット20からマスタユニット10に、判定信号及び検出情報が伝送される。判定信号とは、例えば第2センサ30bにより測定されたデータに基づき、第2スレーブユニット20bによって判定された、ワークに関する判定結果を示す信号である。例えば、第2センサ30bが光電センサである場合、判定信号は、第2センサ30bにより測定された受光量と閾値とを、第2スレーブユニット20bによって比較して得られるオン信号又はオフ信号である。検出情報は、例えば第1スレーブユニット20aの検出動作によって得られる検出値である。例えば、第1センサ30aが光電センサである場合、検出動作は、投光及び受光の動作であり、検出情報は、受光量である。
【0050】
スレーブユニット20は、マスタユニット10の側面に取り付けられている。マスタユニット10とスレーブユニット20との通信には、パラレル通信又はシリアル通信が用いられる。すなわち、マスタユニット10と、スレーブユニット20とがシリアル伝送路及びパラレル伝送路で物理的に接続される。例えば、パラレル伝送路上でスレーブユニット20からマスタユニット10に判定信号が送信され、シリアル伝送路上で、スレーブユニット20からマスタユニット10に検出情報が送信されてもよい。なお、マスタユニット10とスレーブユニット20とは、シリアル伝送路及びパラレル伝送路のうちのいずれか一方で接続されていてもよい。
【0051】
次に、
図2を参照しつつ、一実施形態に従うマスタユニット及びスレーブユニットの物理的構成について説明する。
図2は、一実施形態におけるマスタユニット10及びスレーブユニット20の物理的構成を例示する構成図である。
【0052】
図2に示すように、マスタユニット10は、PLC40との接続に用いられる入力/出力コネクタ101,102と、スレーブユニット20との接続に用いられる接続コネクタ106と、図示しない電源入力コネクタとを備える。
【0053】
また、マスタユニット10は、MPU(Micro Processing Unit)110、通信ASIC(Application Specific Integrated Circuit)112、パラレル通信回路116、シリアル通信回路118、Flash ROM120、表示装置122、及び図示しない電源回路を備える。
【0054】
MPU110は、マスタユニット10における全ての処理を統括して実行するように動作する。通信ASIC112は、PLC40との通信を管理する。パラレル通信回路116は、マスタユニット10とスレーブユニット20との間でのパラレル通信に用いられる。同様に、シリアル通信回路118は、マスタユニット10とスレーブユニット20との間でのシリアル通信に用いられる。Flash ROM120は、不揮発メモリであり、学習モデルを記憶する。例えば、学習モデルがニューラルネットワークの場合、Flash ROM120は、ニューラルネットワークの重みパラメータやネットワーク構造を記憶してよい。また、学習モデルが回帰モデルであったり、決定木であったりする場合、Flash ROM120は、回帰パラメータや決定木のハイパーパラメータを記憶してよい。表示装置122は、有機EL(Electro Luminescence)等のディスプレイであり、文字情報や状態を表示する。
【0055】
スレーブユニット20は、両側壁部分に、マスタユニット10又は他のスレーブユニット20との接続コネクタ304,306が設けられている。スレーブユニット20は、マスタユニット10に対して一列に複数接続することが可能である。複数のスレーブユニット20からの信号は、隣り合うスレーブユニット20に伝送され、マスタユニット10に伝送される。
【0056】
スレーブユニット20の両側面には、赤外線による光通信用の窓が設けられ、接続コネクタ304,306を利用して複数のスレーブユニット20を一つずつ連結して一列に配置すると、互いに対向する光通信用の窓により、隣り合うスレーブユニット20間で赤外線を利用した双方向光通信が可能となる。
【0057】
スレーブユニット20は、CPU(Central Processing Unit)400によって実現される各種の処理機能と、専用の回路によって実現される各種の処理機能とを備える。
【0058】
CPU400は、投光制御部403を制御し、発光素子(LED)401から赤外線を放出させる。受光素子(PD)402が受光することによって生じた信号は、増幅回路404を介して増幅された後、A/Dコンバータ405を介してデジタル信号に変換されて、CPU400に取り込まれる。CPU400では、受光データ、すなわち受光量をそのまま検出情報としてマスタユニット10に向けて送信する。また、CPU400では、受光量が予め設定された閾値よりも大きいか否かを判定することによって得られるオン信号又はオフ信号を、判定信号としてマスタユニット10に向けて送信する。
【0059】
さらにCPU400は、左右の投光回路411,413を制御することにより、左右の通信用発光素子(LED)407,409から隣接するスレーブユニット20に対して赤外線を放出する。隣接する左右のスレーブユニット20から到来する赤外線は左右の受光素子(PD)406,408で受光された後、受光回路410,412を介しCPU400へと到来する。CPU400では、所定のプロトコルに基づいて、送受信信号を制御することにより、左右の隣接するスレーブユニット20との間で光通信を行なう。
【0060】
受光素子406、通信用発光素子409、受光回路410、投光回路413は、スレーブユニット20間の相互干渉を防止するための同期信号を送受信するために利用される。具体的には、各スレーブユニット20において、受光回路410と投光回路413とは直接結線される。この構成により、受信した同期信号が、CPU400による遅延処理が施されずに速やかに投光回路413を経て通信用発光素子409から隣接する別のスレーブユニット20に送信される。
【0061】
CPU400は、さらに、表示器414を点灯制御する。また、CPU400は、設定スイッチ415からの信号を処理する。CPU400の動作に必要な各種のデータは、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)416等の記録媒体に記憶される。リセット部417から得られた信号は、CPU400へと送られ、計測制御のリセットが行われる。発振器(OSC)418からCPU400には、基準クロックが入力される。
【0062】
出力回路419は、受光量を閾値と比較して得られた判定信号の送信処理を行なう。前述したように、本実施の形態において、判定信号はパラレル通信によってマスタユニット10に向けて送信される。
【0063】
パラレル通信用の伝送路は、マスタユニット10と各スレーブユニット20とが個別に接続された伝送路である。すなわち、複数のスレーブユニット20は、それぞれ、別々のパラレル通信線によって、マスタユニット10に接続される。ただし、マスタユニット10に隣接するスレーブユニット20以外のスレーブユニット20と、マスタユニット10とを接続するパラレル通信線は、他のスレーブユニット20を通過し得る。
【0064】
シリアル通信ドライバ420は、マスタユニット10から送信されたコマンド等の受信処理、検出情報(受光量)の送信処理を行なう。本実施形態においては、シリアル通信にRS-422プロトコルが用いられる。シリアル通信にRS-485プロトコルを利用してもよい。
【0065】
シリアル通信用の伝送路は、マスタユニット10及び全てのスレーブユニット20が接続された伝送路である。すなわち、全てのスレーブユニット20は、マスタユニット10に対して、シリアル通信線によってバス形式で信号伝達可能に接続される。
【0066】
次に、
図3を参照しつつ、一実施形態に従うマスタユニットの機能ブロックの構成について説明する。
図3は、一実施形態におけるマスタユニット10の機能ブロックの構成を例示する構成図である。
【0067】
図3に示すように、マスタユニット10は、機能ブロックとして、取得部11、生成部12、記憶部13、学習部14、選定部15、予測部16、通信部17、及び表示部18を備える。
【0068】
取得部11は、スレーブユニット20を介して、第1センサ30aによって測定されたデータと第2センサ30bによって測定されたデータとを取得するように構成されている。具体的には、取得部11は、シリアル伝送路によってスレーブユニット20から複数のセンサ30により測定された検出情報を取得する。
【0069】
生成部12は、学習モデルの機械学習に用いられる学習用データ13aを生成するように構成されている。学習用データ13aは、学習モデルの教師有り学習に用いられるデータであり、入力データ及びラベルデータを含む。ここで、入力データとは、学習モデルの機械学習の際に、学習モデルに入力するデータである。入力データは、数値データであってよいが、その他の形式のデータであってもよい。ラベルデータは、入力データの性質を表す。入力データの性質とは、入力データから予測される性質であり、例えば、ラインLを搬送されるワークWの異常又は異常予兆の有無であったり、ワークWの種類であったり、ワークWの寸法であったり、ワークWの位置ズレであったりしてよい。ラベルデータは、学習モデルの機械学習の際に、学習モデルが出力すべきデータであり、学習の目標とされるデータである。ラベルデータは、数値データであってよいが、その他の形式のデータであってもよい。
【0070】
より詳細には、生成部12は、取得された第1センサ30aのデータを学習モデルの入力データとして設定し、取得された第2センサ30bのデータを学習モデルの教師有り学習で用いるラベルデータとして設定し、入力データ及びラベルデータを含む学習用データ13aを生成するように構成されている。このように、取得された第1センサ30aのデータを入力データとし、取得された第2センサ30bのデータをラベルデータとする学習用データ13aを生成することにより、当該学習用データ13aを用いて生成される学習済モデルは、測定周期が相対的に短い第1センサ30aのデータを入力として値(予測値)を出力することが可能となる。従って、当該学習済モデルを用いることで、従来よりも早期にワークWの異常又は異常予兆を検知することができる。
【0071】
記憶部13は、生成部12によって生成された学習用データ13aと、学習済モデル13bとを記憶する。
【0072】
学習部14は、学習用データ13aを用いて学習モデルの機械学習を実行し、学習済モデル13bを生成するように構成されている。例えば、学習モデルがニューラルネットワークの場合、学習部14は、学習用データ13aの入力データをニューラルネットワークに入力し、その出力とラベルデータとの差に基づいて、誤差逆伝播法によりニューラルネットワークの重みを更新してよい。なお、学習モデルは、ニューラルネットワークに限られず、回帰モデルであったり、決定木であったりしてよい。学習部14は、任意のアルゴリズムによって学習モデルの機械学習を実行してよい。このように、学習用データ13aを用いて学習モデルの機械学習を実行し、学習済モデル13bを生成することにより、早期にワークWの異常又は異常予兆を検知する学習済モデル13bを容易に生成することができる。
【0073】
選定部15は、複数の第1センサ30aから1つ又は複数の第1センサ30aを選定するためのものである。ここで、ラインLに複数の第1センサ30aが設置される場合、学習済モデルの予測精度を向上させるために、入力データとすべきデータを限定したい状況が存在する。そのため、選定部15は、第1センサ30aのデータを選定する際に指標となる値を算出し、当該値に基づいて1つ又は複数の第1センサ30aを選定したり、当該値を利用者(ユーザ)に通知し、1つ又は複数の第1センサ30aを選定させたりする。
【0074】
より詳細には、選定部15は、複数の第1センサ30aのうちの1つについて、取得された当該第1センサ30aのデータと取得された第2センサ30bのデータとの相関係数を算出するように構成されている。一般に、2つのセンサ30が測定するデータ間には、相関関係が存在する。よって、第1センサ30aのデータと第2センサ30bとの間の相関係数において、絶対値が所定値以上である場合、当該第1センサ30aのデータを入力データとしてよい。また、各第1センサ30aのデータと第2センサ30bとの相関係数のうち、その絶対値が最大となる第1センサ30aのデータを、入力データとしてもよい。このように、取得された第1センサ30aのデータと取得された第2センサ30bのデータとの相関係数を算出することにより、複数の第1センサ30aのうち、第2センサ30bのデータと、線形関係又は線形関係に近いにあるデータを測定する第1センサ30aを選定することができる。
【0075】
また、選定部15は、取得した第2センサ30bのデータと、学習用データ13aを用いて学習モデルの機械学習を実行して生成される学習済モデル13bに入力データを入力して出力させた予測値とに基づいて、学習進捗値を算出するように構成されている。ここで、選定部15が学習進捗値を算出するために使用する学習用データ13aは、複数の第1センサ30aのうちの少なくとも1つから取得されたデータを入力データとするものであり、生成部12によって生成される。選定部15は、この学習用データ13aを用いて学習済モデル13bを生成し、生成した学習済モデル13bに、前述した入力データを入力して出力させた予測値に基づいて、当該学習済モデル13bの学習進捗の割合を表す学習進捗値を算出する。なお、学習進捗値の詳細については、後述する。
【0076】
予測部16は、取得された第1センサ30aのデータを学習済モデル13bに入力し、当該学習済モデル13bに予測値を出力させるように構成されている。なお、予測部16は、学習済モデル13bの出力をそのまま予測値として用いる場合に限定されるものではない。予測部16は、例えば、学習済モデル13bの出力に、任意の後処理を行って予測値としてもよい。このように、第1センサ30aのデータを入力して学習済モデル13bに予測値を出力させることにより、当該予測値によって早期にワークWの異常又は異常予兆を予測することができる。
【0077】
通信部17は、PLC40との通信を行うインターフェースである。通信部17は、PLC40以外の外部機器との通信を行うものであってもよい。
【0078】
表示部18は、文字情報や状態を表示してユーザに通知するためのものである。表示部18の表示対象は、例えば、予測値、学習進捗率等の数値データとその意味づけ、判定結果、予測可能通知、現在のモード等の状態、他、マスタユニット10の設定値等である。
【0079】
本実施形態では、マスタユニット10が
図3に示す機能ブロックを備える例を説明したが、これに限定されるものでない。例えば、マスタユニット10がワークWの異常又は異常予兆を予測する予測装置としての役割を果たす場合、当該マスタユニット10は、第1センサ30aによって測定されたデータを取得する取得部11と、取得された第1センサ30aのデータを学習済モデル13bに入力し、該学習済モデル13bに予測値を出力させる予測部16とを備える。これにより、取得した第1センサ30aのデータを学習済モデル13bに入力し、該学習済モデル13bに予測値を出力させる。ここで、学習済モデル13bは、第1センサ30aのデータを入力データとし、第2センサ30bのデータを入力データの性質を表すラベルデータとして生成された学習用データ13aを用いて生成されたものなので、測定周期が第2センサ30bよりも短い第1センサ30aのデータを入力として予測値を出力することができる。従って、当該予測値によって早期にワークWの異常又は異常予兆を予測することができる。
【0080】
なお、マスタユニット10がワークWの異常又は異常予兆を予測する予測装置である場合、予測部16が用いる学習済モデル13b、及び、当該学習済モデル13bの生成に用いる学習用データ13aは、外部機器等の他の装置によって生成されたものであってもよい。また、当該センサユニット10は、学習済モデル13bを記憶する記憶部13を備える必要はなく、例えば、学習済モデル13bは外部機器等の他の装置に記憶されており、予測部16は、取得された第1センサ30aのデータを通信部17を介して当該他の装置に送信し、当該他の装置から通信部17を介して予測値を受信してもよい。
【0081】
次に、
図4を参照しつつ、一実施形態に従う第1センサ及び第2センサが設置されるラインの第1例について説明する。
図4は、一実施形態におけるラインLの第1例の概略構成を例示する構成図である。
【0082】
図4に示すように、第1センサ30a及び第2センサ30bが設置されるラインL10は、例えば材料MAを加熱しながら制御された速度で押し出し、ワークW10を成型するためのものである。ラインL10は、ホッパーL11、加熱シリンダL12、ダイL15、冷却装置L16、引取装置L17、及び切断装置L18を備える。
【0083】
ホッパーL11は、ワークW10の材料MAを収容する容器である。排出口から加熱シリンダL12の内部に材料MAを供給する。材料MAは、例えば樹脂である。加熱シリンダL12は、スクリューL13及びヒータL14を含む。加熱シリンダL12は、ヒータ14の熱が材料MAに均一に加わるように、内部に供給された材料MAをスクリューL13によって攪拌しながら押し出す。なお、スクリューL13の押出速度及びヒータL14の温度は、一定であってもよいし、可変であってもよい。
【0084】
加熱シリンダL12から押し出された材料MAは、ダイL15を介して所定の厚さ(太さ)のワークW10として排出される。このワークW10は、次に冷却装置L16に供給される。冷却装置L16は、ワークW10からヒータ14による熱を奪い、ワークW10を所定の温度に冷却する。なお、冷却装置L16は、ワークW10を冷却するための式を問わず、例えば空冷式であってもよいし、水冷式であってもよい。
【0085】
冷却装置L16から排出されたワークW10は、引取装置L17に供給され、次いで切断装置L18に供給される。切断装置L18は、制御されたタイミングでワークW10を切断する。これにより、所定の厚さ(太さ)で所定の長さのワークW10が成型される。
【0086】
このようなラインL10において、例えば、第1センサ30aはダイL15と冷却装置L16との間の位置に配置され、第2センサ30bは引取装置L17と切断装置L18との間の位置に配置されている。
【0087】
ラインL10における第1センサ30aは、例えば透過型の光電センサであり、投光器及び受光器がワークW10を挟んで対向する位置に設置される。投光器から放射された光は、ワークW10の厚さ(太さ)に応じて遮断され、遮断されなかった光は受光器によってその光量が測定される。第1センサ30aは、測定された受光量をワークW10の受光量データとして出力する。第1センサ30aは、相対的に短い周期で受光量を測定可能であり、例えば10[μs]ごとにワークW10の受光量データを出力する。
【0088】
ラインL10における第2センサ30bは、例えばレーザ式の測長センサであり、投光器及び受光器がワークW10を挟んで対向する位置に設置される。投光器から放射されたレーザ光は、ワークW10の厚さ(太さ)に応じて遮断され、遮断されずに受光器に入射したレーザ光に基づいてワークW10の厚さ(太さ)が測定される。第2センサ30bは、ワークW10の厚さ(太さ)データを出力する。第2センサ30bが出力する厚さ(太さ)データの分解能は、例えば10[μm]である。第2センサ30bは、相対的に長い周期でワークW10の厚さ(太さ)を測定可能であり、例えば500[μs]ごとにワークW10の厚さ(太さ)データを出力する。
【0089】
第1センサ30aは、ワークW10が移動するラインL10において、第2センサ30bに対して上流側(
図4における左側)に、配置されている。これにより、第2センサ30bに対して下流側(
図4における右側)に配置される場合と比較して、生成される学習済モデル13bは、ラインL10における相対的に早い段階のワークW10に対して測定したデータが入力データとなるので、早期にワークW10の異常又は異常予兆を予測することができる。
【0090】
次に、
図5から
図10を参照しつつ、一実施形態に従うマスタユニットの動作の一例について説明する。
図5は、一実施形態におけるマスタユニット10の設定モード処理S200の概略動作を例示するフローチャートである。
図6は、一実施形態におけるマスタユニット10の予測学習処理S220の概略動作を例示するフローチャートである。
図7は、生成部12による入力データとラベルデータとの対応付けを説明ための概念図である。
図8は、一実施形態におけるマスタユニット10の選定学習処理S240の概略動作を例示するフローチャートである。
図9は、一実施形態におけるマスタユニット10の第1センサ選定モード処理S260の概略動作を例示するフローチャートである。
図10は、一実施形態におけるマスタユニット10の予測モード処理S280の概略動作を例示するフローチャートである。
【0091】
マスタユニット10は、複数のモードを備えており、例えば、各モードを実行するために必要な設定を行う設定モードと、学習済モデルを生成する学習モードと、学習済モデルを用いて予測を行う予測モードと、を備える。ラインLに複数の第1センサ30aが設置される場合、マスタユニット10は、さらに第1センサ選定モードを備えてもよい。利用者(ユーザ)は、操作により、マスタユニット10が備えるモードを選択することができる。
【0092】
マスタユニット10は、例えば、利用者(ユーザ)の操作によってモードが変更されると、
図5に示す設定モード処理S200を実行する。なお、以下において、特に明記する場合を除き、第1センサ30a及び第2センサ30bは、
図4に示したラインL10に設置される例を用いて説明する。
【0093】
<設定モード処理>
図5に示すように、最初に、マスタユニット10は、利用者(ユーザ)の操作により入力された各種の設定値に、現在の値から変更が有るか否かを判定する(S201)。各種の設定値とは、例えば、第1センサ30aのための設定値、第2センサ30bのための設定値、及び、マスタユニット10が使用するための、後述する、センサ間の時間差Δt、判定値、上限しきい値、下限しきい値、並びに、学習済モデルの生成の際に追加学習を行うか否かの設定等である。
【0094】
ステップS201の判定の結果、各種の設定値のいずれかに、現在の値から変更が有る場合、マスタユニット10は、当該設定値の変更後の内容を反映させる(S202)。ステップS202の後、マスタユニット10は、学習条件に変更が有るか否かを判定する(S203)。例えば、第1センサ30a及び第2センサ30bの少なくとも一方が複数設置されており、設定によってある第1センサ30aから別の第1センサ30aへ変更した場合、及び/又は、ある第2センサ30bから別の第2センサ30bへ変更した場合、学習条件に変更が有ると判定される。
【0095】
ステップS203の判定の結果、学習条件に変更が有る場合、マスタユニット10は、記憶部13に記憶された学習済モデル13bを消去する(S204)。なお、マスタユニット10は、学習済モデル13bを消去するとともに、又は、消去することに代えて、記憶部13に記憶された学習済モデル13bを外部の機器、例えばPLC40に送信したり、他の記憶装置に書き出し、一時的に退避させたりしてもよい。
【0096】
ステップS201の判定の結果、設定値に変更がない場合、ステップS203の判定の結果、学習条件に変更がない場合、又は、ステップS204の後、マスタユニット10は、現在のモードが学習モードであるか否かを判定する(S205)。
【0097】
ステップS205の判定の結果、現在のモードが学習モードである場合、マスタユニット10は、後述する予測学習処理S220及び選定学習処理S240を行う。マスタユニット10は、予測学習処理S220及び選定学習処理S240の後、設定モード処理S200を終了する。
【0098】
なお、選定学習処理S240の実行は、予測学習処理S220の後である場合に限定されるものではない。選定学習処理S240は、予測学習処理S220の前に行われてもよいし、予測学習処理S220と並行して行われてもよい。また、第1センサ30aが1つのみである場合、あるいは、第1センサ30aが複数であって、当該複数の第1センサ30aのデータを全て使用する場合、マスタユニット10は、選定学習処理S240を行わなくてもよい。
【0099】
一方、ステップS205の判定の結果、現在のモードが学習モードでない場合、マスタユニット10は、現在のモードが第1センサ選定モードであるか否かを判定する(S206)。
【0100】
ステップS206の判定の結果、現在のモードが第1センサ選定モードである場合、マスタユニット10は、後述する第1センサ選定モード処理S260を行う。マスタユニット10は、第1センサ選定モード処理S260の後、設定モード処理S200を終了する。
【0101】
なお、第1センサ30aが複数であって、当該複数の第1センサ30aのうちの少なくとも1つを選定する必要がある場合、マスタユニット10は、選定学習処理S240及び第1センサ選定モード処理S260の少なくとも一方を行ってもよい。また、ユーザの操作により、複数の第1センサ30aの中から任意の第1センサ30aを選択してもよい。この場合、ユーザによって従前の第1センサ30aとは異なる第1センサ30aが選択されると、ステップS203の判定において、マスタユニット10は、学習条件に変更が有ると判定する。
【0102】
一方、ステップS206の判定の結果、現在のモードが第1センサ選定モードでない場合、マスタユニット10は、現在のモードが予測モードであるか否かを判定する(S207)。
【0103】
ステップS207の判定の結果、現在のモードが予測モードである場合、マスタユニット10は、記憶部13を参照して学習済モデル13bが有るか否かを判定する(S208)。
【0104】
ステップS208の判定の結果、学習済モデル13bが有る場合、マスタユニット10は、後述する予測モード処理S280を行う。マスタユニット10は、予測モード処理S280の後、設定モード処理S200を終了する。
【0105】
一方、ステップS208の判定の結果、学習済モデル13bがない場合、マスタユニット10は、通信部17を介してPLC40又は外部機器にエラー信号を送信するとともに、表示部18にエラー表示し、ユーザ(利用者)にエラーを通知する(S209)。マスタユニット10は、ステップS209の後、設定モード処理S200を終了する。
【0106】
<予測学習処理>
予測学習処理S220が開始されると、
図6に示すように、取得部11は、スレーブユニット20を介してセンサ30からデータを取得する(S221)。
【0107】
次に、生成部12は、取得されたデータのうちのいずれかが更新されたか否かを判定する(S222)。
【0108】
ステップS222の判定の結果、取得されたデータのうちのいずれかが更新された場合、生成部12は、学習用データ13aを生成する(S223)。生成された学習用データ13aは、記憶部13に記憶される。次に、学習部14は、学習用データ13aを用いて学習モデルの機械学習を実行し、学習済モデル13bを生成する(S224)。生成された学習済モデル13bは、入力データが入力されると予測値を出力するようになっている。学習済モデルが既に存在する場合、学習部14は、学習用データ13aを用いて追加学習を行い、更新された学習済モデル13bを生成する。
【0109】
なお、生成される学習済モデル13bは、1回の入力データを用いて1回の予測値を出力する場合に限定されるものではない。例えば、学習済モデル13bは、タイミングの異なる複数回の入力データを用いて予測値を出力するものであってもよい。この場合であっても、測定周期が十分に短い場合には、早期に予測を早くするという効果は維持される。
【0110】
一方、ステップS222の判定の結果、取得されたデータのうちのいずれも更新されていない場合、マスタユニット10は、取得されたデータのうちのいずれかが更新されるまで、ステップS221及びステップS222を繰り返す。
【0111】
ステップS224の後、予測部16は、取得された第1センサ30aのデータを入力データとして学習済モデル13bに入力し、予測値を出力させる(S225)。次に、学習部14は、出力された予測値に基づいて、学習済モデル13bの学習進捗値を算出する(S226)。学習進捗値は、学習モデルの機械学習における進捗状態を示す指標であって、例えば、学習済モデル13bの学習進捗の割合(%)を表すものである。学習進捗値は、第2センサ30bのデータである測定値Aと学習済モデル13bの予測値A’とを用いて以下の式(1)のように表される。
学習進捗値=100-|A-A’|/A×100 …(1)
【0112】
学習進捗値の表し方は、式(1)に限定されるものではない。例えば、学習進捗値は、|A-A’|のように測定値と予測値の差の絶対値であってもよい。この場合、学習進捗値は、値が小さいほど進捗が良い、つまり、予測が正しく行われていることを示す。
【0113】
次に、学習部14は、算出された学習進捗値と所定の判定値とを比較し、学習進捗値が判定値より大きいか否かを判定する(S227)。
【0114】
ステップS227の判定の結果、学習進捗値が判定値より大きい場合、学習部14は、通信部17を介してPLC40又は外部機器に信号を送信するとともに、表示部18にその旨を表示し、ユーザ(利用者)に予測モードによる予測が可能である旨を通知する(S228)。この際、学習部14は、予測可能である旨とともに、学習進捗値を通知してもよい。これにより、ユーザ(利用者)は、ワークW10の状態を予測可能な学習済モデル13bが生成されたことを知ることができる。
【0115】
一方、ステップS227の判定の結果、学習進捗値が判定値以下である場合、又は、ステップS228の後、学習部14は、利用者(ユーザ)の操作に基づいて、学習を完了させるか否かを判定する(S229)。
【0116】
ステップS229の判定の結果、学習を完了させる場合、学習部14は、ステップS224で生成した学習済モデルを記憶部13に記憶させて保存し(S230)、予測学習処理S220を終了する。
【0117】
一方、ステップS229の判定の結果、学習を完了させない場合、マスタユニット10は、学習を完了させるまで、ステップS221からステップS229までを繰り返す。
【0118】
ステップS223において学習用データ13aを生成する際、入力データとラベルデータとの組合せは、様々な態様が考え得られる。ここで、
図7に示すように、第1センサ30aの測定周期は100[μs]、第2センサ30bの測定周期は500[μs]、第1センサ30aと第2センサ30bとは距離dだけ離れており、ワークW10は速度vで移動している場合を考える。第2センサ30bの測定周期は、第1センサ30aの測定周期の5倍であり、第2センサ30bは、データakを測定してから次のデータak+1を測定するまでの間、データakを出力し続ける(
図7において括弧で示す)。
【0119】
なお、距離dは、第1センサ30aの設置位置と第2センサ30bの設置位置との距離である場合に限定されるものではない。例えば、ワークW10がX軸方向に移動し、第1センサ30aの光軸がY軸に平行であり、第2センサ30bの光軸がZ軸に平行である場合を想定すると、各センサ30の設置位置の距離ではなく、ワークW10上での測定ポイントの距離に意味がある。この場合、距離dは、第1センサ30aの測定ポイントと第2センサ30bの測定ポイントとの距離となる。
【0120】
例えば、時間差Δt(=距離d/速度v)が700[μs]のとき、生成部12は、第2センサ30bのデータakをラベルデータとし、第1センサ30aのデータbk-7を入力データとして対応付ける。同様に、生成部12は、第2センサ30bのデータak+1をラベルデータとし、第1センサ30aのデータbk-2を入力データとして対応付ける。このように、時間差Δtと第1センサ30aの測定周期と第2センサ30bの測定周期とに基づいて、入力データとラベルデータとを対応付け、学習用データ13aを生成することにより、同一又は近似のワークW10に対して測定されたデータ同士を対応付けて学習用データ13aが生成されるので、学習済モデル13bの予測精度を向上させることができる。
【0121】
なお、速度vは、あらかじめ設定させた値を用いてもよいし、装置の送り機構、例えばモータ等に取り付けたロータリエンコーダによって取得してもよい。特に、速度vが一定でない場合に、生成部12は、入力データとラベルデータとを精度良く対応付けることができる。
【0122】
図7に示す例では、生成部12は、第2センサ30bのデータが更新されたときに、これをラベルデータとし、時間差Δtと第2センサ30bの測定周期と第2センサ30bの測定周期とに基づいて、対応する第1センサ30aのデータを入力データとして対応付け、学習用データ13aを生成する例を示したが、これに限定されるものではない。例えば、生成部12は、第1センサ30aのデータが更新されたときに、これを入力データとし、時間差Δtと第1センサ30aの測定周期と第2センサ30bの測定周期とに基づいて、対応する第2センサ30bのデータをラベルデータとして対応付け、学習用データ13aを生成してもよい。
【0123】
第1センサ30a及び第2センサ30bの少なくとも一方は、測定周期が一定でなくてもよい。この場合、センサ30の測定時刻、つまり、タイムスタンプを測定結果と紐付けて記録しておき、生成部12は、時間差Δtを考慮して第1センサ30aと第2センサ30bの計測時刻を照合することにより、入力データとラベルデータとを対応付けることが可能となる。
【0124】
以下において、複数の第1センサ30aについて言及する場合、ラインL10の同じ又は略同一の位置にn台(nは2以上の整数)の第1センサ30aを設置する例を用いて説明する。
【0125】
<選定学習処理>
選定学習処理S240が開始されると、
図8に示すように、取得部11は、スレーブユニット20を介してセンサ30からデータを取得する(S241)。次に、選定部15は、添字iに“1”を設定する(S242)。なお、添字iは、n台の第1センサ30aの番号を表ものであり、“1”から“n”までの整数の値をとる。
【0126】
次に、生成部12は、取得したデータのうち、第2センサ30bのデータが更新されたか否かを判定する(S243)。
【0127】
ステップS243の判定の結果、第2センサ30bのデータが更新された場合、生成部12は、学習用データを生成する(S244)。生成された学習用データは、記憶部13に記憶される。次に、選定部15は、学習用データ13aを用いた機械学習により、i番目の第1センサ30aの学習済モデルを生成する(S245)。このように、学習済モデルは、各第1センサ30aに対して生成される。生成された学習済モデルは、i番目の第1センサ30aのデータが入力データとして入力されると予測値を出力するようになっている。i番目の第1センサ30aの学習済モデルが既に存在する場合、選定部15は、学習用データ13aを用いて追加学習を行い、更新された学習済モデルを生成する。
【0128】
一方、ステップS243の判定の結果、第2センサ30bのデータが更新されていない場合、マスタユニット10は、第2センサ30bのデータ更新されるまで、ステップS241からステップS243までを繰り返す。
【0129】
ステップS245の後、選定部15は、i番目の第1センサ30aから取得したデータを入力データとして、i番目の第1センサ30aの学習済モデルに入力し、予測値を出力させる(S246)。次に、選定部15は、出力された予測値に基づいて、i番目の第1センサ30aの学習済モデルの学習進捗値を算出する(S247)。学習進捗値は、前述したものと同様であり、式(1)を用いて算出することができる。このように、取得した第2センサ30bのデータと、i番目の第1センサ30aの学習済モデルにi番目の第1センサ30aから取得したデータを入力して出力させた予測値とに基づいて、学習進捗値を算出することにより、学習進捗値に基づいて、複数の第1センサ30aから少なくとも1つを選定することで、当該第1センサ30aのデータから生成される学習済モデルの予測値が第2センサ30bのデータの値に近いものを選ぶことが可能となる。
【0130】
次に、選定部15は、添字iの値が第1センサ30aの台数nに等しいか否かを判定する(S248)。
【0131】
ステップS248の判定の結果、添字iの値が第1センサ30aの台数nに等しい場合、選定部15は、通信部17を介して、PLC40又は外部機器に信号を送信し、ユーザ(利用者)に全ての第1センサ30aにおける学習済モデルの学習進捗値を通知する(S249)。これにより、ユーザ(利用者)は、各第1センサ30aの学習済モデルの学習進捗値を知ることができる。
【0132】
一方、ステップS249の判定の結果、添字iの値が第1センサ30aの台数nに等しくない場合、選定部15は、添字iに“1”を加算する(S250)。そして、マスタユニット10は、添字iの値が第1センサ30aの台数nに等しくなるまで、ステップS244からステップS248、及びステップS250を繰り返す。
【0133】
ステップS249の後、選定部15は、利用者(ユーザ)の操作に基づいて、学習を完了させるか否かを判定する(S251)。
【0134】
ステップS251の判定の結果、学習を完了させる場合、選定部15は、利用者(ユーザ)の操作に基づいて、複数の中から少なくとも1つの第1センサ30aを選定する(S252)。この場合、全ての第1センサ30aのうち、学習済モデルの学習進捗値が最大となるものを利用者(ユーザ)に通知して選択させたり、学習済モデルの学習進捗値が所定値、例えば80[%]以上であるものを利用者(ユーザ)に通知して選択させたりしてよい。
【0135】
次に、選定部15は、選定された第1センサ30aの学習済モデルを記憶部13に記憶させて保存し(S253)、選定学習処理S240を終了する。なお、選定されなかった第1センサ30aの学習済モデルは、記憶部13に記憶させてもよいし、消去してもよいし、他の記憶装置に退避させてもよい。
【0136】
一方、ステップS251の判定の結果、学習を完了させない場合、マスタユニット10は、学習を完了させるまで、ステップS241からステップS251までを繰り返す。
【0137】
図8に示す例では、選定部15は、各第1センサ30aについて、学習済モデルを生成して学習進捗値を算出する例を示したが、これに限定されるものではない。例えば、選定部15は、n台の第1センサ30aのうちの任意のm台(mは2以上、かつ、nより小さい整数)をグループとし、グループごとに学習済モデルを生成し、該グループの学習済モデルの学習進捗値を算出してもよい。この場合、入力データは、当該グループに含まれる全ての第1センサ30aのデータとなる。また、選定される第1センサ30aは、各第1センサ30aではなく、グループ単位となる。
【0138】
<第1センサ選定モード処理>
第1センサ選定モード処理S260が開始されると、
図9に示すように、取得部11は、スレーブユニット20を介してセンサ30から所定数のデータを取得する(S261)。所定数のデータは、例えば255組のデータセットである。次に、選定部15は、添字jに“1”を設定する(S262)。なお、添字jは、n台の第1センサ30aの番号を表ものであり、“1”から“n”までの整数の値をとる。
【0139】
次に、選定部15は、j番目の第1センサ30aのデータ群及び第2センサ30bのデータ群を用いて、j番目の第1センサ30aと第2センサ30bとの相関係数を算出する(S263)。
【0140】
次に、選定部15は、添字jの値が第1センサ30aの台数nに等しいか否かを判定する(S264)。
【0141】
ステップS264の判定の結果、添字jの値が第1センサ30aの台数nに等しい場合、選定部15は、通信部17を介して、PLC40又は外部機器に信号を送信し、ユーザ(利用者)に、第2センサ30bのデータに対する全ての第1センサ30aのデータの相関係数を通知する(S265)。
【0142】
一方、ステップS264の判定の結果、添字jの値が第1センサ30aの台数nに等しくない場合、選定部15は、添字jに“1”を加算する(S266)。そして、マスタユニット10は、添字jの値が第1センサ30aの台数nに等しくなるまで、ステップS263、ステップS264、及びステップS266を繰り返す。
【0143】
ステップS267の後、選定部15は、利用者(ユーザ)の操作に基づいて、第1センサ30aの選定を完了させるか否かを判定する(S267)。
【0144】
ステップS267の判定の結果、第1センサ30aの選定を完了させる場合、選定部15は、利用者(ユーザ)の操作に基づいて、複数の中から少なくとも1つの第1センサ30aを選定し(S268)、第1センサ選定モード処理S260を終了する。この場合、全ての第1センサ30aのうち、第2センサ30bのデータとの相関係数の絶対値が最大となるものを利用者(ユーザ)に通知して選択させたり、第2センサ30bのデータとの相関係数の絶対値が所定値以上であるものを利用者(ユーザ)に通知して選択させたりしてよい。
【0145】
一方、ステップS267の判定の結果、第1センサ30aの選定を完了させない場合、マスタユニット10は、第1センサ30aの選定を完了させるまで、ステップS261からステップS267までを繰り返す。
【0146】
<予測モード処理>
予測モード処理S280が開始されると、
図10に示すように、取得部11は、スレーブユニット20を介して第1センサ30aからデータを取得する(S281)。
【0147】
次に、予測部16は、記憶部13に記憶された学習済モデル13bを読み出し、当該学習済モデル13bに、取得した第1センサ30aのデータを入力データとして入力し、予測値を出力させる(S282)。
【0148】
次に、予測部16は、出力させた予測値が上限しきい値より大きいか、又は、下限しきい値より小さいか否かを判定する(S283)。例えば、ワークW10の厚さ(太さ)は、規定値が20[mm]であり、許容範囲が±1[mm]であるときに、上限しきい値は21[mm]に、下限しきい値は19[mm]に、それぞれ設定される。
【0149】
ステップS283の判定の結果、予測値が上限しきい値より大きい、又は、下限しきい値より小さい場合、予測部16は、判定結果に“ON”を設定する(S284)。一方、ステップS283の判定の結果、予測値が上限しきい値以下、かつ、下限しきい値以上である場合、予測部16は、判定結果に“OFF”を設定する(S285)。
【0150】
ステップS284の後、又は、ステップS285の後、予測部16は、通信部17を介してPLC40又は外部機器に信号を送信するとともに、表示部18に表示し、ユーザ(利用者)に予測値及び判定結果を通知する(S286)。これにより、ユーザ(利用者)は、第1センサ30aのデータから予測されるワークW10の厚さ(太さ)と、予測されるワークW10の厚さ(太さ)が規定値の許容範囲内であるか又は許容範囲外であるかと、を知ることができる。
【0151】
ステップS286の後、予測部16は、利用者(ユーザ)の操作に基づいて、予測を中断させるか否かを判定する(S287)。
【0152】
ステップS287の判定の結果、予測を中断させる場合、予測モード処理S280を終了する。
【0153】
一方、ステップS287の判定の結果、予測を中断させない場合、マスタユニット10は、予測を中断させるまで、ステップS281からステップS287までを繰り返す。
【0154】
本実施形態では、センサシステム1及びマスタユニット10が、
図4に示した例に適用された場合を説明したが、これに限定されるものでない。センサシステム1及びマスタユニット10は、他の形態のライン、他の配置の第1センサ及び第2センサに適用してもよい。
【0155】
次に、
図11を参照しつつ、一実施形態に従う第1センサ及び第2センサが設置されるラインの第2例について説明する。
図11は、一実施形態におけるラインLの第2例の概略構成を例示する構成図である。
【0156】
図11に示すように、ラインL20は、
図11における右上から左下(紙面奥から手前)の方向に、複数のワークW21,W22を搬送している。
ラインL20の搬送方向における同一、又は略同一の位置に、3つの第1センサ30aと、1つの第2センサ30bとが配置されている。3つの第1センサ30aは、それぞれ、ラインL20の幅方向(
図1における左右方向)に、所定の間隔を空けて配置されている。
【0157】
各第1センサ30aは、例えば反射型の光電センサであり、投光器及び受光器は一体に形成される。投光器から放射された光は、ワークW21,W22又は背景によって反射され、受光器はその反射光の光量を測定する。各第1センサ30aは、測定された受光量をワークW21,W22の受光量データとして出力する。第1センサ30aは、
図4に示した例と同様に、第2センサ30bよりも短い周期で受光量を測定する。
【0158】
第2センサ30bは、例えば変位センサであり、投光器及び受光器は一体に形成される。投光器から放射された光がワークW21,W22によって反射されると、受光器に入射した反射光に基づいて、ワークW21,W22までの距離が測定される。第2センサ30bは、ワークW21,W22までの距離データを出力する。第2センサ30bは、
図4に示した例と同様に、第1センサ30aよりも長い周期でワークW21,W22までの距離を測定する。
【0159】
図4に示した例と同様に、
図11に示す例においても、マスタユニット10は、3つの第1センサ30aのデータを入力データとし、第2センサ30bのデータをラベルデータとする学習用データを生成することが可能である。
【0160】
図11に示す例では、第1センサ30aは受光量データを出力し、第2センサ30bは距離データを出力しており、両者の物理量は異なっている。すなわち、生成された学習用データを用いて学習モデルの機械学習を実行し、生成される学習済モデルは、予測において物理量の変換を行っていることになる。
【0161】
なお、学習用データの入力データは、第1センサ30aの出力データをそのまま使用する場合に限定されるものではない。例えば、複数の第1センサ30aの測定値を演算することによって得られるデータ(情報)を、学習用データの入力データとして使用してもよい。
【0162】
また、学習用データのラベルデータは、第2センサ30bの出力データをそのまま使用する場合に限定されるものではない。例えば、第2センサ30bとして、距離(変位)や三次元位置を測定するセンサを用いる場合、第2センサ30bを2個以上用いてそれぞれの測定値について減算や加算等の演算を行うことにより、ワークW21,W22の幅や高さを求めることが可能となる。この場合、これらの演算結果を学習用データのラベルデータとして使用してもよい。
【0163】
学習モデルの機械学習を実行し、学習進捗が十分であると判断された場合、マスタユニット10は、第2センサ30bを取り外して運用、つまり、ワークWの異常又は異常予兆を予測してもよい。この場合、設備のコストを節約することができる。
【0164】
以上、本発明の例示的な実施形態について説明した。本発明の一実施形態に係るセンサシステム1及びマスタユニット10によれば、取得された第1センサ30aのデータを入力データとし、取得された第2センサ30bのデータをラベルデータとする学習用データ13aが生成される。これにより、当該学習用データ13aを用いて生成される学習済モデル13bは、測定周期が第2センサ30bよりも短い第1センサ30aのデータを入力として値(予測値)を出力することが可能となる。従って、当該学習済モデル13bを用いることで、従来よりも早期にワークWの異常又は異常予兆を検知することができる。
【0165】
また、本発明の一実施形態に係るマスタユニット10及び予測方法によれば、取得した第1センサ30aのデータを学習済モデル13bに入力し、該学習済モデル13bに予測値を出力させる。ここで、学習済モデル13bは、第1センサ30aのデータを入力データとし、第2センサ30bのデータを入力データの性質を表すラベルデータとして生成された学習用データ13aを用いて生成されたものなので、測定周期が第2センサ30bよりも短い第1センサ30aのデータを入力として予測値を出力することができる。従って、当該予測値によって早期にワークWの異常又は異常予兆を予測することができる。
【0166】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可能である。
【0167】
(附記1)
ワークを測定する第1センサ(30a)と、
第1センサ(30a)よりも長い周期でワークを測定する第2センサ(30b)と、
マスタユニット(10)と、を備え、
マスタユニット(10)は、
第1センサ(30a)によって測定されたデータと第2センサ(30b)によって測定されたデータとを取得する取得部(11)と、
学習モデルの機械学習に用いられ、取得された第1センサ(30a)のデータを入力データとし、取得された第2センサ(30b)のデータを入力データの性質を表すラベルデータとする学習用データを生成する生成部(12)と、を含む、
センサシステム(1)。
(附記8)
ワークを測定する第1センサ(30a)と第1センサ(30a)よりも長い周期でワークを測定する第2センサ(30b)とを含むセンサシステム(1)に用いられるマスタユニット(10)であって、
第1センサ(30a)によって測定されたデータと第2センサ(30b)によって測定されたデータとを取得する取得部(11)と、
学習モデルの機械学習に用いられ、取得された第1センサ(30a)のデータを入力データとし、取得された第2センサ(30b)のデータを前記入力データの性質を表すラベルデータとする学習用データを生成する生成部(12)と、を備える、
マスタユニット(10)。
(附記14)
ワークの異常又は異常予兆を予測する予測装置(10)であって、
ワークを測定する第1センサ(30a)によって測定されたデータを取得する取得部(11)と、
取得された第1センサ(30a)のデータを学習済モデルに入力し、該学習済モデルに予測値を出力させる予測部(16)と、を備え、
学習済モデルは、第1センサ(30a)のデータを入力データとし、第1センサ(30a)よりも長い周期でワークを測定する第2センサ(30b)のデータを、入力データの性質を表すラベルデータとして生成された学習用データを用い、学習モデルの機械学習を実行して生成されたものである、
予測装置(10)。
(附記15)
ワークの異常又は異常予兆を予測する予測方法であって、
ワークを測定する第1センサ(30a)によって測定されたデータを取得するステップ(S281)と、
取得された第1センサ(30a)のデータを学習済モデルに入力し、該学習済モデルに予測値を出力させるステップ(S282)と、を含み、
学習済モデルは、第1センサ(30a)のデータを入力データとし、第1センサ(30a)よりも長い周期でワークを測定する第2センサ(30b)のデータを、入力データの性質を表すラベルデータとして生成された学習用データを用い、学習モデルの機械学習を実行して生成されたものである、
予測方法。
【符号の説明】
【0168】
1…センサシステム、10…マスタユニット、11…取得部、12…生成部、13…記憶部、13a…学習用データ、13b…学習済モデル、14…学習部、15…選定部、16…予測部、17…通信部、18…表示部、20…スレーブユニット、20a…第1スレーブユニット、20b…第2スレーブユニット、30…センサ、30a…第1センサ、30b…第2センサ、d…距離、L,L10,L20…ライン、L11…ホッパー、L12…加熱シリンダ、L13…スクリュー、L14…ヒータ、L15…ダイ、L16…冷却装置、L17…引取装置、L18…切断装置、MA…材料、S200…設定モード処理、S220…予測学習処理、S240…選定学習処理、S260…第1センサ選定モード処理、S280…予測モード処理、v…速度、W,W10,W21,W22…ワーク、Δt…時間差。