(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】スライド機構、表示パネル駆動装置および電子機器
(51)【国際特許分類】
H05K 5/02 20060101AFI20231129BHJP
B60R 11/02 20060101ALI20231129BHJP
H04N 5/64 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
H05K5/02 A
B60R11/02 C
H04N5/64 581C
(21)【出願番号】P 2019229661
(22)【出願日】2019-12-19
【審査請求日】2022-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小川 誉晴
【審査官】ゆずりは 広行
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-062809(JP,A)
【文献】特開2004-155291(JP,A)
【文献】特開2009-195417(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 5/02
B60R 11/02
H04N 5/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームと、
前記フレームに対して前方位置と後方位置とにスライド移動が可能に設けられたスライダと、
前記スライダを移動させる駆動部と、
前記スライダに固定された被当接部材と、
前記フレーム側に設けられて前記スライダが後方位置に移動した状態で前記被当接部材の前端の位置に変位する当接部材と、
前記当接部材を前記被当接部材の前端に向けて付勢する弾性部材と、
を備える、スライド機構。
【請求項2】
前記被当接部材は、前記フレームの面から離れる方向に突出し、かつ前記スライダの移動方向に沿って連続して延びて形成され、
前記当接部材は、前記スライダのスライド移動時に前記被当接部材の突出端の位置に変位するように設けられ、
前記弾性部材は、前記当接部材を前記被当接部材の突出端に向けて付勢力を生じるように設けられている、
請求項1に記載のスライド機構。
【請求項3】
前記被当接部材は、前記突出端が前側から後側に向けて漸次上側に傾斜して形成されている、
請求項2に記載のスライド機構。
【請求項4】
前記被当接部材は、前記突出端の幅が、前記当接部材の幅よりも狭く形成されている、
請求項2または3に記載のスライド機構。
【請求項5】
前記被当接部材は、前記スライダが前記フレームに対してスライド移動可能に支持された部分に固定されている、
請求項1から4のいずれか1項に記載のスライド機構。
【請求項6】
前記被当接部材および前記当接部材は、前記スライダの移動方向に
直交する方向で複数の箇所に設けられており、複数の前記被当接部材および前記当接部材は、前記スライダの移動方向に
直交する方向で対称に形成されている、
請求項1から5のいずれか1項に記載のスライド機構。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載のスライド機構と、
前記スライダのスライド移動に伴い姿勢を変位可能に設けられた表示パネルと、
を備える、表示パネル駆動装置。
【請求項8】
請求項7に記載の表示パネル駆動装置を備える、電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スライド機構、表示パネル駆動装置および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載される電子機器として、例えば、表示パネルを備えたカーナビゲーションやカーオーディオが知られている。このような電子機器では、スライダを電子機器本体の表面に対して前進させるスライド機構によって、電子機器本体の表面に設けられた表示パネルを傾倒し開けるチルト動作を行う、表示パネル駆動装置がある。
【0003】
ここで、特許文献1には、車両の走行時の振動音の発生を減少させるため、弾性部材により表示パネルの側面を付勢する技術が示されている。
【0004】
また、特許文献2には、起立姿勢にある表示パネルのガタ付きや押圧操作に伴う沈み込みを防止するため、可動パネルに固定したブラケットの軸部に捩りコイルばねの巻回部を挿入し、ブラケットとスライドベースに捩りコイルばねの腕部を掛止する技術が示されている。
【0005】
また、特許文献3には、表示パネルと電子機器本体との接触による異音の発生を防止するため、電子機器本体側に表示パネルの閉位置および開位置において表示パネルに接触するゴムローラを設ける技術が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2011-161998号公報
【文献】特開2005-271784号公報
【文献】特開2009-166668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
表示パネルを開けるためにスライダを前進させるスライド機構では、スライダの後方位置において表示パネルが起立して閉じた状態を支持する。このような後方位置において、車両の走行時の振動によってスライダが前後方向に力が加わると、スライド機構自体や表示パネルの微振動によりラトルノイズが発生する。
【0008】
本発明は、ラトルノイズを低減することのできるスライド機構、表示パネル駆動装置および電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明の一態様のスライド機構は、フレームと、前記フレームに対して前方位置と後方位置とにスライド移動が可能に設けられたスライダと、前記スライダを移動させる駆動部と、前記スライダに固定された被当接部材と、前記フレーム側に設けられて前記スライダが後方位置に移動した状態で前記被当接部材の前端の位置に変位する当接部材と、前記当接部材を前記被当接部材の前端に向けて付勢する弾性部材と、を備える。
【0010】
上記の目的を達成するため、本発明の一態様の表示パネル駆動装置は、上記のスライド機構と、前記スライダのスライド移動に伴い姿勢を変位可能に設けられた表示パネルと、を備える。
【0011】
上記の目的を達成するため、本発明の一態様の電子機器は、上記の表示パネル駆動装置を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明のスライド機構、表示パネル駆動装置および電子機器は、弾性部材の弾性力が当接部材を介して被当接部材の前端に付与され、被当接部材を後側に押し付けるように作用するため、後方位置にあるスライダが後側に押し付けられる。この結果、本発明のスライド機構は、スライダが後方位置にあるとき、スライダを後方に押し付ける(引っ張った)状態を維持することでスライダがスライド移動するための嵌合部に発生するガタを一方向に寄せてラトルの発生を抑制できる。そして、本発明のスライド機構は、この状態を振動や衝撃が加わっても維持できる。また、本発明の表示パネル駆動装置および電子機器は、スライダと共に表示パネルも同様に押し付けられるため、スライダと表示パネルとの嵌合部に発生するガタを一方向に寄せてラトルの発生を抑制できる。そして、本発明の表示パネル駆動装置および電子機器は、この状態を、振動や衝撃が加わっても維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係るスライド機構、表示パネル駆動装置および電子機器を示す前方視斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係るスライド機構、表示パネル駆動装置および電子機器の動作を示す前方視斜視図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態に係るスライド機構、表示パネル駆動装置および電子機器を示す前方視一部拡大斜視図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態に係るスライド機構、表示パネル駆動装置および電子機器の被当接部材を示す平面図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態に係るスライド機構、表示パネル駆動装置および電子機器の被当接部材を示す断面図(
図4のA-A断面図)である。
【
図6】
図6は、本発明の実施形態に係るスライド機構、表示パネル駆動装置および電子機器の被当接部材を示す正面図である。
【
図7】
図7は、本発明の実施形態に係るスライド機構、表示パネル駆動装置および電子機器の当接部材を示す斜視図である。
【
図8】
図8は、本発明の実施形態に係るスライド機構、表示パネル駆動装置および電子機器の動作図である。
【
図9】
図9は、本発明の実施形態に係るスライド機構、表示パネル駆動装置および電子機器の動作図である。
【
図10】
図10は、本発明の実施形態に係るスライド機構、表示パネル駆動装置および電子機器の動作図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、発明を実施するための形態(以下、実施形態という)につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の実施形態により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0015】
図1は、本実施形態に係るスライド機構、表示パネル駆動装置および電子機器を示す前方視斜視図である。
図2は、本実施形態に係るスライド機構、表示パネル駆動装置および電子機器の動作を示す前方視斜視図である。
【0016】
以下の説明においては、車両用の電子機器1を車両の運転席の前方に搭載した状態で各方向を定義する。前後方向とは、車両直進時の進行方向と平行な方向であり、運転席側に向かう方向を前後方向の「前」、前方ウインドシールド側に向かう方向を前後方向の「後」とする。前後方向を、X軸方向とする。左右方向とは、前後方向に対して水平に直交する方向である。運転席側から見て、左手側が「左」、右手側が「右」である。左右方向を、Y軸方向とする。上下方向とは、前後方向および左右方向に対して直交する方向である。上下方向を、Z軸方向とする。したがって、前後方向、左右方向および上下方向は、3次元で直交する。
【0017】
電子機器1は、例えば、AV一体型のカーナビゲーションシステムまたはカーオーディオなどである。
図1および
図2に示すように、電子機器1は、筐体2と、表示パネル3と、スライド機構4とを有する。
【0018】
筐体2は、前側が開放し、その他の上側、下側、右側、左側、および後側が板金で塞がれた筐体である。従って、筐体2は、板金である上板2Aと、下板2Bと、右板2Cと、左板2Dと、後板2Eと、を有している。
【0019】
表示パネル3は、筐体2の前側に設置される。表示パネル3は、例えば、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)または有機EL(Organic Electro-Luminescence)ディスプレイを含むディスプレイを前面に有する。また、表示パネル3は、電子機器1の各種操作を行うための操作ボタンを有する。
【0020】
表示パネル3は、通常、
図1に示すように、筐体2の前側の開放を塞ぐように上下方向に起立した起立姿勢とされ、ディスプレイが前側に向けて配置される。また、表示パネル3は、操作者の操作に基づき、
図2に示すように、筐体2の前側に開放するように前後方向に傾倒した傾倒姿勢とされ、ディスプレイが上側に向けて配置される。この表示パネル3の動作はスライド機構4により行われる。
【0021】
スライド機構4は、
図1および
図2に示すように、筐体2の下板(フレーム)2Bと、スライダ5と、駆動部6と、押付手段7と、を有する。
【0022】
スライダ5は、下板2Bに設けられている。スライダ5は、
図1に示す後方位置から
図2に示す前方位置にスライド移動する。スライダ5は、左右方向に延びるスライダ本体5Aと、前後方向に延びてスライダ本体5Aの左右両端に一体に連結されている左右スライド部5B,5Cとで構成されている。スライダ本体5Aおよび左右スライド部5B,5Cは、下板2Bの上面に沿う板状に形成され、
図1に示す後方位置において、スライダ本体5Aが下板2Bの前端部で左右方向に沿って配置され、左右スライド部5B,5Cが下板2Bの左右端部で前後方向に沿って配置される。スライダ5は、左右スライド部5B,5Cが図示しない長穴とピンとの係合などの摺動構造により下板2Bに対して前後方向に移動可能に支持されている。例えば、スライダ5は、左右スライド部5B,5Cに前後方向に延びる長穴が形成されており、この長穴に下板2Bに固定されたピンが挿入されることで、下板2Bに対して前後方向に移動可能に支持される。従って、スライダ5は、
図1に示す後方位置から前進し、
図2に示す前方位置において、スライダ本体5Aが筐体2の下板2Bの前側に飛び出した形態となる。一方、スライダ5は、
図2に示す前方位置から後退し、
図1に示す後方位置において、スライダ本体5Aおよび左右スライド部5B,5Cが下板2B上に至って筐体2の内部に収納された形態となる。また、スライダ5は、スライダ本体5Aの左右両端から左右スライド部5B,5Cに連続して上方に立設された側壁部5Dが一体に形成されている。側壁部5Dは、スライダ本体5Aの左右両端となる位置に左右方向に延びる回転軸5Eが設けられている。
【0023】
ここで、上記スライダ5に対し、表示パネル3は、その下端部が回転軸5Eを介してスライダ本体5Aに取り付けられている。また、図には明示しないが、表示パネル3は、左右側部の上部にガイドローラが設けられ、このガイドローラが左右板2C,2D側にて上下方向に延びて設けられたガイド溝に挿入されている。従って、表示パネル3は、スライダ5の前進動作によって、スライダ本体5Aと共に前側に移動する回転軸5Eに従動して下端部が筐体2から遠ざかるように前側に移動し、かつ左右側部のガイドローラがガイド溝に沿って下側に移動する。このため、表示パネル3は、スライダ5の前進動作によって、
図2に示す上述した傾倒姿勢となる。一方、表示パネル3は、スライダ5の後退動作によって、スライダ本体5Aと共に後側に移動する回転軸5Eに従動して下端部が筐体2に近づくように後側に移動し、かつ左右側部のガイドローラがガイド溝に沿って上側に移動する。このため、表示パネル3は、スライダ5の後退動作によって、
図1に示す上述した起立姿勢となる。
【0024】
駆動部6は、ラック部6Aと、減速歯車6Bと、モータ6Cとを有する。
【0025】
ラック部6Aは、スライダ5の左右スライド部5B,5Cの一方に固定されている。本実施形態では、ラック部6Aは、右スライド部5Bに固定され、右スライド部5Bに沿って前後方向に延びて設けられている。ラック部6Aは、自身の延在方向である前後方向に複数並んでラック歯6Aaが形成されている。
【0026】
減速歯車6Bは、互いに噛み合う複数の歯車により構成された歯車群である。本実施形態では、減速歯車6Bは、各歯車が平歯車で構成されている。減速歯車6Bは、噛み合いの終段の歯車がラック部6Aのラック歯6Aaに噛み合っている。また、減速歯車6Bは、噛み合いの初段の歯車がモータ6Cの主軸に設けられた駆動歯車に噛み合っている。モータ6Cは、駆動部6を駆動する駆動源である。モータ6Cの駆動歯車は、本実施形態ではウォームギアとして構成されている。
【0027】
従って、駆動部6は、モータ6Cの主軸の回転が減速歯車6Bを介してラック部6Aのラック歯6Aaに伝達される。これにより、ラック部6Aがスライダ5を伴って前後方向に移動する。この結果、表示パネル3が
図1に示す起立姿勢と
図2に示す上述した傾倒姿勢とに変位する。従って、本実施形態のスライド機構4は、表示パネル3と共に構成されることで表示パネル駆動装置を構成する。
【0028】
押付手段7は、
図3から
図7に示すように、被当接部材7Aと、支持部材7Bと、当接部材7Cと、弾性部材7Dとを有する。
【0029】
被当接部材7Aは、
図3に示すように、スライド機構4におけるスライダ5と共に前後方向にスライド移動可能に設けられている。被当接部材7Aは、スライダ5の左右スライド部5B,5Cの移動方向である前後方向に延びて形成され、左右スライド部5B,5Cの板状の上面から上方に突出し、フレームである下板2Bの面から離れる方向(遠ざかる方向)に突出するよう左右スライド部5B,5Cに固定されている。即ち、被当接部材7Aは、スライダ5において、下板2Bに対して前後方向に移動可能に支持された左右スライド部5B,5Cに固定されている。この被当接部材7Aは、
図4から
図6に示すように、基部7Aaと、突状7Abとを有する。
【0030】
基部7Aaは、左右スライド部5B,5Cに固定される部分であり、スライダ5の左右スライド部5B,5Cの移動方向である前後方向に延びて形成されている。基部7Aaは、断面四角形の棒状に形成され、前側に向く前端7Aa1が上下左右方向に対して平坦な面として形成されている。基部7Aaは、
図5に示すように、下部において後側に先端を向けて延びる固定片7Aa2と、下部において前側に先端を向けて延びる係止片7Aa3と、を有する。固定片7Aa2は、基部7Aaの下面よりも下側に設けられ、基部7Aaの延在方向で複数(本実施形態では3個)形成されている。係止片7Aa3は、基部7Aaの下面よりも上側に設けられ、固定片7Aa2の間に形成されている。係止片7Aa3の先端の前側には、当該先端と所定間隔をあけて後側に向く壁面7Aa4が形成されている。そして、固定片7Aa2は、左右スライド部5B,5Cの上面から上側に形成された引掛部51に対し、基部7Aaを後側に移動させることで挿入される。また、係止片7Aa3は、基部7Aaを後側に移動させているとき、左右スライド部5B,5Cの上面から上側に突出した突部52に対して撓んで乗り上げ、固定片7Aa2が引掛部51に奥方まで挿入された時点で先端が突部52を通り過ぎる。また、壁面7Aa4は、係止片7Aa3の先端との間隔に突部52を配置する。従って、基部7Aaは、固定片7Aa2により左右スライド部5B,5Cの上面から離れないように取り付けられ、係止片7Aa3および壁面7Aa4により前後方向に移動することを阻止されて左右スライド部5B,5Cに取り付けられる。このように、被当接部材7Aの基部7Aaは、左右スライド部5B,5Cに対してネジなどを用いず嵌め合いにより固定される。
【0031】
突状7Abは、基部7Aaの上面から突出して設けられ、基部7Aaと共にスライダ5の左右スライド部5B,5Cの移動方向である前後方向に延びて形成されている。突状7Abは、突出端7Ab1の左右方向の幅W1(
図6参照)が、当接部材7Cの幅W2(
図7参照)よりも狭く形成されている。突状7Abは、基部7Aaの上面において左右方向で複数(本実施形態では2個)設けられている。また、突状7Abは、その突出端7Ab1が被当接部材7Aの突出端を構成する。この突状7Abの突出端7Ab1は、フレームである下板2Bの面から離れる方向(遠ざかる方向)に向けて突出し、その突出した端面が上方に向く平面をなし前側から後側に向けて漸次上側に傾斜して形成されている。
【0032】
この被当接部材7Aは、上記構成についてスライダ5の移動方向に直交する左右方向で対称に形成されている。また、被当接部材7Aは、上記構成が一体とされて樹脂材により形成されている。
【0033】
支持部材7Bは、
図3に示すように、フレームである下板2Bの上面において、後方位置に移動したスライダ5のスライダ本体5Aの後側に固定されている。即ち、支持部材7Bは、スライダ5の後方位置から前方位置への移動を妨げないように配置されている。支持部材7Bは、左右スライド部5B,5Cの上方に位置する部分に、スライダ5の移動方向に交差して左右方向に延び、スライダ5と共に移動する被当接部材7Aの上方位置に至る支軸7Baが設けられている。この支軸7Baは、当接部材7Cが回転可能に支持される。また、支持部材7Bは、支軸7Baの後側に、掛止片7Bbが形成されている。この掛止片7Bbは、弾性部材7Dが掛け止められる。
【0034】
当接部材7Cは、
図7に示すように、支持部材7Bの支軸7Baに回転可能に設けられている。当接部材7Cは、支軸7Baが挿通される軸受部7Caを有している。当接部材7Cは、軸受部7Caから支軸7Baの中心に直交する方向に延びる腕部7Cbが形成されている。当接部材7Cは、腕部7Cbの後側に掛止片7Ccが形成されている。当接部材7Cは、腕部7Cbの左右側に支軸7Baの延在方向に沿って左右にそれぞれ延びるストッパ7Cdが形成されている。
【0035】
この当接部材7Cは、上記構成についてスライダ5の移動方向に直交する左右方向で対称に形成されている。また、当接部材7Cは、上記構成が一体とされて樹脂材により形成されている。
【0036】
弾性部材7Dは、
図8に示すように、支持部材7Bと当接部材7Cとの間を連結し、支軸7Baを回転軸として当接部材7Cを所定方向に付勢する。弾性部材7Dは、本実施形態では、引張コイルバネとして構成されている。弾性部材7Dは、支持部材7Bの掛止片7Bbと、当接部材7Cの掛止片7Ccとにそれぞれ端部が掛け止められ、支軸7Baを軸として当接部材7Cを後側に回転するように弾性力により引っ張って付勢する。なお、弾性部材7Dにより、支軸7Baを軸として後側に回転するように付勢された当接部材7Cは、ストッパ7Cdが支持部材7Bに当たることで回転移動が規制される。このため、当接部材7Cは、弾性部材7Dと共に支持部材7Bに組み付けられた状態で、この組み付け状態が所定の回転位置で保持されることとなる。
【0037】
この構成により、押付手段7は、
図8に示すように、スライダ5が後方位置にあるとき、弾性部材7Dにより後側に付勢された当接部材7Cが支軸7Baを軸として
図8中の時計回りに回転し、当接部材7Cにおける腕部7Cbの先端7Cb1が被当接部材7Aの前端7Aa1に当接する。こうして、押付手段7は、弾性部材7Dの弾性力が当接部材7Cを介して被当接部材7Aの前端7Aa1に付与され、被当接部材7Aを後側に押し付けるように作用する。このため、後方位置にあるスライダ5は、被当接部材7Aが後側に押し付けられていることで後側に押し付けられる。この結果、スライド機構4は、スライダ5が後方位置にあるとき、スライダ5を後方に押し付ける(引っ張った)状態を維持することでスライダ5がスライド移動するための嵌合部に発生するガタを一方向に寄せてラトルの発生を抑制でき、この状態を振動や衝撃が加わっても維持できる。
【0038】
なお、押付手段7は、
図8に示すように、スライダ5が後方位置にあるとき、当接部材7Cを支持する支軸7Baの前後方向の位置P1が、スライダ5と共に後退した被当接部材7Aの前端7Aa1の前後方向の位置P2よりも前側に位置する。この場合、支軸7Baの中心を通る垂線(P1)に対し、当接部材7Cにおける腕部7Cbの先端7Cb1が被当接部材7Aの前端7Aa1に当接した状態の支軸7Baの中心と腕部7Cbの先端7Cb1とを結ぶ直線L1の角度θとする。そして、この直線L1の角度θが、弾性部材7Dによる引張力が生じる方向に延びる直線L2対して直角に近いほど、弾性部材7Dの弾性力が、当接部材7Cにより被当接部材7Aを後側に押し付ける力としてより作用する。従って、本実施形態のスライド機構4では、スライダ5が後方位置にあるとき、当接部材7Cを支持する支軸7Baの前後方向の位置P1が、スライダ5と共に後退した被当接部材7Aの前端7Aa1の前後方向の位置P2よりも前側に位置するようにすることで、当接部材7Cにより被当接部材7Aを後側に押し付けるための弾性部材7Dの弾性力をより作用させることができる。このため、押付手段7は、当接部材7Cにより被当接部材7Aを後側に押し付ける力の分散を抑え、スライダ5を後方に押し付ける(引っ張った)状態を確実に維持し、スライダ5がスライド移動するための嵌合部に発生するガタを一方向に寄せてラトルの発生を抑制し、この状態を振動や衝撃が加わっても維持できる効果をより得ることができる。
【0039】
また、押付手段7は、
図9に示すように、スライダ5が後方位置から前進した場合、スライダ5と共に被当接部材7Aが前進する。押付手段7は、前進する被当接部材7Aにより当接部材7Cが押されて弾性部材7Dの弾性力に抗して支軸7Baを軸として
図9中の反時計回りに回転し、当接部材7Cの腕部7Cbの先端7Cb1が被当接部材7Aを乗り上げるように前端7Aa1から離れる。
【0040】
また、押付手段7は、
図10に示すように、スライダ5がさらに前進した場合、スライダ5と共に被当接部材7Aがさらに前進する。押付手段7は、当接部材7Cが弾性部材7Dの弾性力により支軸7Baを軸として
図10中の時計回りに付勢されているため、当接部材7Cにおける腕部7Cbの先端7Cb1が被当接部材7Aにおける突状7Abの突出端7Ab1に当接する。こうして、押付手段7は、弾性部材7Dの弾性力が当接部材7Cを介して被当接部材7Aにおける突状7Abの突出端7Ab1に付与され、被当接部材7Aを下側に押し付けるように作用する。このため、後方位置よりも前方位置寄りにあるスライダ5は、被当接部材7Aが下側に押し付けられていることで下側の下板2Bに押し付けられる。この結果、スライド機構4は、スライダ5が前進移動する途中および前方位置にあるとき、スライダ5がスライド移動するための隙間によるガタを抑える。また、スライド機構4は、当接部材7Cが被当接部材7Aに押されて支軸7Baを軸として回転する構造であり、スライダ5がスライド移動の動作に対し駆動部6への負荷を与える程の荷重を生じないため、スライダ5への駆動負荷の増加を抑えることができる。また、スライド機構4は、当接部材7Cが被当接部材7Aに押されて支軸7Baを軸として回転する構造であり、スライダ5が前進移動する途中および前方位置にあるとき、当接部材7Cが被当接部材7Aの突出端7Ab1に対して相対的に摺動するため、スライダ5への駆動負荷の増加を抑えることができる。
【0041】
なお、被当接部材7Aにおける突状7Abの突出端7Ab1は、前側から後側に向けて漸次上側に傾斜して形成されている。すると、押付手段7は、スライダ5と共に前進する被当接部材7Aに対し、当接部材7Cにおける腕部7Cbの先端7Cb1が傾斜により漸次上側に押し上げられる。このため、当接部材7Cにおける腕部7Cbの先端7Cb1には、弾性部材7Dの弾性力が反力として下側に作用し、スライダ5が前方位置に近づくほど被当接部材7Aにおける突状7Abの突出端7Ab1を下側に押し付ける力が大きくなる。本実施形態において、スライダ5は、前方位置に近づくほど左右スライド部5B,5Cが下板2Bの前端から迫り出し、スライダ本体5Aが下板2Bの前端から前側に遠ざかる構成である。このため、スライダ5は、スライダ本体5Aが下板2Bの前端から前側に遠ざかるほど、下側の下板2Bに押し付けられる力が増大する。この結果、スライド機構4は、スライダ5が前方位置に近づくほど、スライダ5がスライド移動するための隙間によるガタを抑える。
【0042】
ところで、本実施形態のスライド機構4は、弾性部材7Dである引張コイルバネの仕様変更により引張力を変えることができ、押し付け力を変更できる。このため、例えば、表示パネル3が大型化してスライド機構4自体や表示パネル3の微振動が大きくなることが想定される場合、弾性部材7Dの仕様変更により対応を容易に行うことができる。また、本実施形態のスライド機構4は、左右スライド部5B,5Cに、被当接部材7A、当接部材7C、および弾性部材7Dを設けているが、片側だけであってもよい。このため、例えば、本実施形態において駆動部6が接続されてないことでガタが生じ易い左スライド部5C側に被当接部材7A、当接部材7C、および弾性部材7Dを設ける。また、本実施形態のスライド機構4は、左右スライド部5B,5Cに、被当接部材7A、当接部材7C、および弾性部材7Dを設けており、左右の弾性部材7Dの仕様変更により左右の押し付け力を変更できる。このため、本実施形態において駆動部6が接続されてないことでガタが生じ易い左スライド部5C側の押し付け力を右スライド部5Bよりも大きくなるように調整する。従って、本実施形態のスライド機構4は、弾性部材7Dが着脱可能に設けられ、交換が可能であることが好ましい。
【0043】
このように、本実施形態のスライド機構4は、フレームである下板2Bと、下板2Bに対して前方位置と後方位置とにスライド移動が可能に設けられたスライダ5と、スライダ5を移動させる駆動部6と、スライダ5に固定された被当接部材7Aと、下板2Bに設けられてスライダ5が後方位置に移動した状態で被当接部材7Aの前端7Aa1の位置に変位する当接部材7Cと、当接部材7Cを被当接部材7Aの前端7Aa1に向けて付勢する弾性部材7Dと、を備える。
【0044】
従って、スライド機構4は、弾性部材7Dの弾性力が当接部材7Cを介して被当接部材7Aの前端7Aa1に付与され、被当接部材7Aを後側に押し付けるように作用するため、後方位置にあるスライダ5が後側に押し付けられる。この結果、スライド機構4は、スライダ5が後方位置にあるとき、スライダ5を後方に押し付ける(引っ張った)状態を維持することでスライダ5がスライド移動するための嵌合部に発生するガタを一方向に寄せてラトルの発生を抑制できる。そして、スライド機構4は、この状態を振動や衝撃が加わっても維持できる。
【0045】
また、本実施形態のスライド機構4では、被当接部材7Aは、下板2Bの面から離れる方向(遠ざかる方向)に突出し、かつスライダ5の移動方向に沿って連続して延びて形成され、当接部材7Cは、スライダ5のスライド移動時に被当接部材7Aの突出端7Ab1の位置に変位するように設けられ、弾性部材7Dは、当接部材7Cを被当接部材7Aの突出端7Ab1に向けて付勢力を生じるように設けられている。
【0046】
従って、スライド機構4は、弾性部材7Dの弾性力が当接部材7Cを介して被当接部材7Aの突出端7Ab1に付与され、被当接部材7Aを下側に押し付けるように作用する。このため、後方位置よりも前方位置寄りにあるスライダ5は、被当接部材7Aが下側に押し付けられていることで下側の下板2Bに押し付けられる。この結果、スライド機構4は、スライダ5が前進移動する途中および前方位置にあるとき、スライダ5がスライド移動するための隙間によるガタを抑え、スライド機構4自体や表示パネル3の微振動を抑えてラトルノイズを低減できる。
【0047】
また、本実施形態のスライド機構4では、被当接部材7Aは、突出端7Ab1が前側から後側に向けて漸次上側に傾斜して形成されている。
【0048】
従って、スライド機構4は、スライダ5と共に前進する被当接部材7Aに対し、当接部材7Cが傾斜により漸次上側に押し上げられる。このため、当接部材7Cには、弾性部材7Dの弾性力が反力として下側に作用し、スライダ5が前方位置に近づくほど被当接部材7Aの突出端7Ab1を下側に押し付ける力が大きくなる。この結果、スライド機構4は、スライダ5が前方位置に近づくほど、スライダ5がスライド移動するための隙間によるガタを抑え、スライド機構4自体や表示パネル3の微振動を抑えてラトルノイズを低減できる。
【0049】
また、本実施形態のスライド機構4では、被当接部材7Aは、突出端7Ab1の幅W1が、当接部材7Cの幅W2よりも狭く形成されている。
【0050】
従って、スライド機構4は、スライダ5と共に前進する被当接部材7Aの突出端7Ab1と当接部材7Cとの接触抵抗が低減する。この結果、スライド機構4は、スライダ5のスライド移動に係る負荷を低減しつつ、スライダ5を下側の下板2Bに押し付けることができる。
【0051】
また、本実施形態のスライド機構4では、被当接部材7Aは、スライダ5が下板2Bに対してスライド移動可能に支持された部分である左右スライド部5B,5Cに固定されている。
【0052】
従って、スライド機構4は、スライダ5が下板2Bに対してスライド移動可能に支持された部分で、被当接部材7Aを当接部材7Cにより押し付けることができ、スライダ5がスライド移動するための隙間によるガタをより抑え、スライド機構4自体や表示パネル3の微振動が抑えられるためラトルノイズを低減できる。
【0053】
また、本実施形態のスライド機構4では、被当接部材7Aおよび当接部材7Cは、スライダ5の移動方向に直交する方向で複数の箇所に設けられており、複数の被当接部材7Aおよび当接部材7Cは、スライダ5の移動方向に直交する方向で対称に形成されている。
【0054】
従って、スライド機構4は、複数の被当接部材7Aおよび当接部材7Cを採用する場合、これらがスライダ5の移動方向に直交する方向で対称に形成されていることで、どの位置でも同様に取り付けることができ、汎用性を向上し、取り付け作業を容易に行える。
【0055】
また、本実施形態の表示パネル駆動装置は、上述したスライド機構4と、スライダ5のスライド移動に伴い姿勢を変位可能に設けられた表示パネル3と、を備える。
【0056】
従って、表示パネル駆動装置は、スライダ5と共に表示パネル3も同様に押し付けられるため、スライダ5と表示パネル3との嵌合部に発生するガタを一方向に寄せてラトルの発生を抑制できる。そして、表示パネル駆動装置は、この状態を振動や衝撃が加わっても維持できる。また、この表示パネル駆動装置を備える電子機器1においても、ラトルの発生を抑制でき、この状態を振動や衝撃が加わっても維持できる。
【符号の説明】
【0057】
1 電子機器
2B 下板(フレーム)
3 表示パネル
4 スライド機構
5 スライダ
6 駆動部
7A 被当接部材
7Aa1 前端
7Ab1 突出端
7C 当接部材
7D 弾性部材