(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】水素含有水生成装置用電解槽及び水素含有水生成方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/461 20230101AFI20231129BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20231129BHJP
【FI】
C02F1/461 A
C25B9/00 A
(21)【出願番号】P 2019230604
(22)【出願日】2019-12-20
【審査請求日】2022-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】織田 昭人
(72)【発明者】
【氏名】味能 弘之
(72)【発明者】
【氏名】三川 玄洋
(72)【発明者】
【氏名】大久保 典浩
(72)【発明者】
【氏名】井町 昌宏
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-022470(JP,A)
【文献】国際公開第2017/098598(WO,A1)
【文献】特開昭50-062176(JP,A)
【文献】特開昭50-003967(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/46- 1/48
C25B 1/00- 9/77
C25B 13/00-15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
側部に複数の開口を有する筒状の陽極部と、
側部に複数の開口を有し、前記陽極部の径方向外側又は径方向内側に離間して設けられる筒状の陰極部と、
前記陽極部及び前記陰極部が内部に設けられる筒状の槽本体と、
前記陽極部の長手方向に沿って延びて前記陽極部の側部に取り付けられる棒状の陽極用給電部材と、
前記陰極部の長手方向に沿って延びて前記陰極部の側部に取り付けられる棒状の複数の陰極用給電部材と、
前記陽極用給電部材に電気的に接続し、かつ前記複数の陰極用給電部材に選択的に電気的に接続して前記陽極部と前記陰極部との間に電圧を印加する電源部と、
を備える、水素含有水生成装置用電解槽。
【請求項2】
前記複数の陰極用給電部材は、前記陰極部の中心軸回りに等間隔に形成される、
請求項1に記載の水素含有水生成装置用電解槽。
【請求項3】
側部に複数の開口を有する筒状の陽極部と、
側部に複数の開口を有し、前記陽極部の径方向外側又は径方向内側に離間して設けられる筒状の陰極部と、
前記陽極部及び前記陰極部が内部に設けられる筒状の槽本体と、
前記陽極部の長手方向に沿って延びて前記陽極部の側部に取り付けられる棒状の陽極用給電部材と、
前記陰極部の長手方向に沿って延びて前記陰極部の側部に取り付けられる棒状の複数の陰極用給電部材と、
前記陽極用給電部材に電気的に接続し、かつ前記複数の陰極用給電部材に選択的に電気的に接続して前記陽極部と前記陰極部との間に電圧を印加する電源部と、
を備える電解槽を備える水素含有水生成装置による水素含有水生成方法であって、
前記複数の陰極用給電部材の数を設定する陰極用給電部数設定ステップと、
前記複数の陰極用給電部材のうち電圧を印加する対象の陰極用給電部材を変更するまでの時間間隔を設定する変更間隔設定ステップと、
前記時間間隔ごとに、陰極用給電部数設定ステップで設定した前記複数の陰極用給電部材の数に基づく所定回数、前記複数の陰極用給電部材のうち電圧を印加する対象の陰極用給電部材を順次変更する荷電箇所変更ステップと、
を含む、水素含有水生成方法。
【請求項4】
前記電解槽の前記陽極部の寿命を予測する電極寿命予測ステップを含む、
請求項3に記載の水素含有水生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素含有水生成装置用電解槽及び水素含有水生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水の電気分解作用を利用して、水道水等の原水から水素を含有する水である水素含有水を生成する技術が知られている。例えば、特許文献1には、陽極と陰極とに印加された電流の利用効率の低下を抑制する水素含有水生成装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、電気分解においては、陽極部において電子を放出するイオン化反応が起こる。この反応によって、陽極部は、母材が溶出して劣化する。この際、陰極部の電流密度が荷電部分である陰極用給電部材に集中しているため、陰極用給電部材と距離が近い陽極部の部分に劣化が集中する。劣化により、母材の溶出が発生すると、溶出部分から急速に劣化が広がるので、電極全体の長寿命化のために陽極部の局所的な劣化を抑制する必要がある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、電極の局所的な劣化を抑制して寿命を延ばすことができる水素含有水生成装置用電解槽及び水素含有水生成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の水素含有水生成装置用電解槽は、側部に複数の開口を有する筒状の陽極部と、側部に複数の開口を有し、前記陽極部の径方向外側又は径方向内側に離間して設けられる筒状の陰極部と、前記陽極部及び前記陰極部が内部に設けられる筒状の槽本体と、前記陽極部の長手方向に沿って延びて前記陽極部の側部に取り付けられる棒状の陽極用給電部材と、前記陰極部の長手方向に沿って延びて前記陰極部の側部に取り付けられる棒状の複数の陰極用給電部材と、前記陽極用給電部材に電気的に接続し、かつ前記複数の陰極用給電部材に選択的に電気的に接続して前記陽極部と前記陰極部との間に電圧を印加する電源部と、を備える。
【0007】
前記水素含有水生成装置用電解槽において、前記複数の陰極用給電部材は、前記陰極部の中心軸回りに等間隔に形成されることが好ましい。
【0008】
本発明の水素含有水生成方法は、側部に複数の開口を有する筒状の陽極部と、側部に複数の開口を有し、前記陽極部の径方向外側又は径方向内側に離間して設けられる筒状の陰極部と、前記陽極部及び前記陰極部が内部に設けられる筒状の槽本体と、前記陽極部の長手方向に沿って延びて前記陽極部の側部に取り付けられる棒状の陽極用給電部材と、前記陰極部の長手方向に沿って延びて前記陰極部の側部に取り付けられる棒状の複数の陰極用給電部材と、前記陽極用給電部材に電気的に接続し、かつ前記複数の陰極用給電部材に選択的に電気的に接続して前記陽極部と前記陰極部との間に電圧を印加する電源部と、を備える電解槽を備える水素含有水生成装置による水素含有水生成方法であって、前記複数の陰極用給電部材の数を設定する陰極用給電部数設定ステップと、前記複数の陰極用給電部材のうち電圧を印加する対象の陰極用給電部材を変更するまでの時間間隔を設定する変更間隔設定ステップと、前記時間間隔ごとに、陰極用給電部数設定ステップで設定した前記複数の陰極用給電部材の数に基づく所定回数、前記複数の陰極用給電部材のうち電圧を印加する対象の陰極用給電部材を順次変更する荷電箇所変更ステップと、を含む。
【0009】
前記水素含有水生成方法は、前記電解槽の前記陽極部の寿命を予測する電極寿命予測ステップを含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、電極の局所的な劣化を抑制して寿命を延ばすことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る水素含有水生成装置を構成する電解槽の電極の例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係る水素含有水生成装置の電解槽の例を示す断面図である。
【
図4】
図4は、本実施形態に係る水素含有水生成方法の流れを示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、
図4の荷電箇所変更ステップにおける水素含有水生成装置の制御部の処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明に係る水素含有水生成装置100の実施形態について図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態の説明において、同一構成には同一符号を付し、異なる構成には異なる符号を付すものとする。
【0013】
(電極の構成)
まず、水素含有水生成装置100を構成する電解槽DKが備える水素含有水生成用の電極10の構成について説明する。
図1は、本実施形態に係る水素含有水生成装置100を構成する電解槽DKの電極10の例を示す斜視図である。電極10は、水の電気分解作用を利用して、原水Wから、水素を含有する水である水素含有水Rを生成する。原水Wは、給水装置等から給水路及び循環ポンプP(
図2参照)等を介して電解槽DKに供給される温水等である。水素含有水Rは、中性を示す水である。
【0014】
図1に示すように、電極10は、陽極部12と、陰極部14とを有する。陽極部12及び陰極部14は、いずれも円筒状の導電体である。陽極部12は、陰極部14の内側に同心状態に設けられて、陰極部14と離間している。電極10、より具体的には陽極部12及び陰極部14は、両方の端部にそれぞれ開口部としての下端部側開口部10HA及び上端部側開口部10HBを有している。陽極部12と、陰極部14とは、下部スペーサ52及び上部スペーサ54(
図2参照)によって、陽極部12及び陰極部14の間の距離(電極間隙間と称する。)を維持される。
【0015】
本実施形態において、陽極部12及び陰極部14の電極間隙間の大きさは、0.1mm以上1mm以下とすることが好ましい。電極間隙間の大きさを前述した範囲とすることで、電極10が水素含有水Rを生成する際に、陽極部12と、陰極部14とに印加する電圧の電位差が比較的小さくても、電極10は、十分な量の水素を発生させることができる。電極間隙間の大きさが前述した範囲であれば、電極10に印加される電圧が比較的低電圧でも、電極10は、十分な量の水素を原水Wに溶存させて多くの水素を溶存した水素含有水Rを生成することができる。また、水素含有水Rに溶存する水素の量が同一であれば、電極10は、消費電力を抑制することができる。
【0016】
本実施形態において、陽極部12及び陰極部14は、チタン(Ti)に白金(Pt)をめっきしたものである。めっきは、例えば、白金-イリジウム(Ir)めっきであってもよい。本実施形態において、チタンは純チタンである。陽極部12及び陰極部14は、チタンに白金をめっきしたものに限定されるものではないが、原水Wに溶け出さない材料(例えば、バナジウム(V))であることが好ましい。本実施形態においては、陽極部12及び陰極部14の両方がめっきされているが、陽極部12のみをめっきし、陰極部14はめっきしなくてもよい。これにより、電極10の製造コストを低減することができる。
【0017】
陽極部12及び陰極部14は、複数の線状の部分である線状部分16が交差した、網状の部材である。陽極部12は、側部に複数の開口12Hを有している。陰極部14は、側部に複数の開口14Hを有している。複数の線状部分16で囲まれる部分が、陽極部12及び陰極部14の開口12H及び開口14Hとなる。陽極部12が有する複数の開口12Hは、陽極部12の側部を陽極部12の厚み方向に貫通している。陰極部14が有する複数の開口14Hは、陰極部14の側部を陰極部14の厚み方向に貫通している。
【0018】
陽極部12は、長手方向E、すなわち筒状の部材である陽極部12が延びる方向に向かうスリット12SLを有している。陰極部14は、長手方向E、すなわち筒状の部材である陰極部14が延びる方向に向かうスリット14SLを有している。電極10は、陰極部14の外側に複数の拘束部材18を備える。拘束部材18は、例えば、樹脂製の結束バンド、金属の線材等である。拘束部材18は、耐食性が高く、かつ原水Wに溶け出さない材料であることが好ましい。拘束部材18は、陽極部12のスリット12SL及び陰極部14のスリット14SLを閉じて、陽極部12及び陰極部14を陽極部12及び陰極部14の周方向Cから拘束する。拘束部材18を取り外すことによって、電極10は、陽極部12と、陰極部14とに容易に分解することができるので、保守、点検、補修及び部品交換が容易である。
【0019】
陽極用給電部材20及び陰極用給電部材22は、いずれも棒状の導電体である。陽極用給電部材20は、陽極部12に電気的に接続されている。陽極用給電部材20は、電源30の陽極と電気的に接続されている。陰極用給電部材22は、陰極部14に電気的に接続されている。陰極用給電部材22は、電源30の陰極と電気的に接続されている。電源30は、直流電源である。このような構成によって、陽極部12は、電源30の正極と陽極用給電部材20を介して電気的に接続され、陰極部14は、電源30の負極と陰極用給電部材22を介して電気的に接続される。電源30は、例えば、水素含有水生成装置100の制御部CLから出力される制御信号に基づいて、電解槽DK(
図2参照)の制御基板から電圧を与えられる。
【0020】
陰極用給電部材22は、本実施形態において、4つの陰極用給電部材22、すなわち、第一陰極用給電部材221と、第二陰極用給電部材222と、第三陰極用給電部材223と、第四陰極用給電部材224と、を含む。4つの陰極用給電部材22は、それぞれ陰極部14の長手方向Eに沿って延びて陰極部14の外周部側の側部に取り付けられる棒状である。本実施形態において、長手方向Eに平行な陰極部14の中心軸Zt回りに等間隔に設けられる。4つの陰極用給電部材22は、それぞれスイッチ32によって、いずれかの陰極用給電部材22が電源30に接続するように構成される。すなわち、スイッチ32を切り替え操作することによって、電源30から電圧を印加する対象の陰極用給電部材22を変更することができる。スイッチ32は、例えば、制御部CLから出力される制御信号によって切り替えられる。
【0021】
陽極用給電部材20及び4つの陰極用給電部材22は、本実施形態において、スポット溶接によって複数個所の接合部CPで陽極部12及び陰極部14にそれぞれ接合されて、取り付けられる(
図4参照)。複数の接合部CPは、陽極用給電部材20及び陰極用給電部材22の長手方向Eにおいて、一部分に偏らないように設けられている。このようにすることで、陽極用給電部材20及び陰極用給電部材22は、自身の長手方向Eの全体から電力を供給することができる。陽極用給電部材20及び陰極用給電部材22は、陽極部12及び陰極部14にそれぞれ電気的に接続されれば、スポット溶接に限られず、任意の接合手段が用いられてよい。
【0022】
本実施形態において、陽極用給電部材20及び陰極用給電部材22は、陽極部12及び陰極部14と同様に、チタンに白金をめっきした部材である。めっきは、例えば、白金-イリジウムめっきであってもよい。陽極用給電部材20及び陰極用給電部材22は、陽極部12及び陰極部14と同様に、チタンに白金をめっきしたものに限定されるものではないが、原水Wに溶け出さない材料であることが好ましい。本実施形態においては、陰極部14はめっきを施さなくてもよいが、この場合、陰極用給電部材22もめっきを施さなくてもよい。
【0023】
(電解槽の構成)
次に、電解槽DKの構成について説明する。
図2は、本実施形態に係る水素含有水生成装置100の電解槽DKの例を示す断面図である。
図3は、
図2のA-A断面図である。
図2に示すように、電解槽DKは、槽本体40と、下側基台42と、上側基台44と、給水管46と、排水管48と、下部スペーサ52と、上部スペーサ54と、接合管50と、を備える。
【0024】
槽本体40は、透明な円筒状の槽である。槽本体40の内部には、電極10が設けられる。電極10は、長手方向Eが鉛直方向となる向きで配置されている。陽極部12と陰極部14と槽本体40とは、中心軸Ztを同心として配置される。槽本体40が透明に設けられているので、使用者は、槽本体40の外側から電極10、特に、槽本体40と対面する位置に設けられる陰極部14を視認することができる。槽本体40の下端部は、下側基台42に覆われて固定される。槽本体40の上端部は、上側基台44に覆われて固定される。
【0025】
下側基台42は、槽本体40の下端部と、陽極用給電部材20と、4つの陰極用給電部材22とを固定する。なお、
図3においては、第四陰極用給電部材224の図示を省略している。陽極用給電部材20及び4つの陰極用給電部材22は、陽極部12及び陰極部14の下端部側開口部10HAより下方に一部が突出している。下側基台42は、陽極用給電部材20の突出部分20P及び陰極用給電部材22の突出部分22P(突出部分221P、222P、223P)に、水密状態で貫通される。下側基台42は、陽極用給電部材20及び陰極用給電部材22を介して陽極部12及び陰極部14を固定する。これにより、水素含有水生成装置100は、槽本体40の外部から陽極用給電部材20及び陰極用給電部材22を介して電極10へ給電することができる。また、電極10は、陽極用給電部材20及び陰極用給電部材22を介して下側基台42及び槽本体40に固定される。上側基台44は、上端部側が閉塞する円筒状の基台である。上側基台44は、槽本体40の上端部を固定する。上側基台44には、空気抜き弁AVと電極10の内周部10Siより内側とを連通させる接合管50が貫通する。
【0026】
給水管46は、槽本体40に原水Wを給水するI字状の配管である。給水管46は、槽本体40の側部を水密状態で貫通して設けられる。給水管46の下流端部側の開口部である給水部46Hは、電極10の外周部10Soより外側に設けられる。給水部46Hは、内周方向に向けて原水Wを給水する。
【0027】
排水管48は、槽本体40の水素含有水Rを排水するI字状の配管である。排水管48は、槽本体40の側部を水密状態で貫通して設けられる。排水管48の上流端部側の開口部である排水部48Hは、電極10の外周部10Soより外側に設けられる。排水管48は、外周方向に向けて水素含有水Rを排水する。
【0028】
接合管50は、空気抜き弁AVと電極10の内周部10Siより内側とを連通させる。接合管50は、上側基台44を貫通して固定される。接合管50の上端部は、空気抜き弁AVに連通する。接合管50の下端部は、電極10の内周部10Siより内側の上端部側開口部10HBより下方に連通する。空気抜き弁AVは、槽本体40の内部の圧力が所定値を超えた場合、空気Gを放出する。例えば、空気Gは、槽本体40内の水の電気分解反応によって発生した酸素ガスを含む。このような構成によって、電解槽DKは、酸素ガスを優先的に槽本体40から排出できる。電解槽DKは、酸素ガスを優先的に槽本体40から排出することによって、槽本体40内の水への酸素溶存量を抑制して、水素含有水Rを生成する。
【0029】
上述したように、陽極部12と、陰極部14とは、下部スペーサ52及び上部スペーサ54によって、電極間隙間を維持される。下部スペーサ52は、円筒状であり、下端部側開口部10HAにおいて、陰極部14の内周部と陽極部12の外周部との間に配置される。上部スペーサ54は、円筒状であり、上端部側開口部10HBにおいて、陰極部14の内周部と陽極部12の外周部との間に配置される。上部スペーサ54は、上端部に内周方向側に突出する内鍔部54Fiを有する。内鍔部54Fiは、電極10と接合管50との距離を所定距離とする。上部スペーサ54は、上端部に外鍔部54Foを有する。外鍔部54Foは、径方向と外側に突出し、周方向Cの全周に設けられている。外鍔部54Foは、電極10と槽本体40の内周部40Siとの距離を所定距離とする。
【0030】
水素含有水生成装置100の制御部CLは、水素含有水生成装置100の各構成要素に各種機能を実行させる制御信号を出力する。制御部CLは、例えば、電解槽DKの電源30に電圧を与えるよう制御する制御信号を出力する。制御部CLは、例えば、給水装置等から給水管46を介して槽本体40に原水Wを供給するよう制御する制御信号を出力する。制御部CLは、タイマーを含んでもよい。タイマーは、例えば、水素含有水生成装置100の稼働時間をカウントする。稼働時間は、電極10を交換した後の、電解槽DKに電圧を印加している時間を累積した時間である。
【0031】
制御部CLは、例えば、作業者等からの入力を受け付け可能である入力部を有してもよい。制御部CLは、入力部から入力された所定の操作信号に基づいて、各種の制御信号を出力する。入力部は、例えば、電解槽DKの電極10と同様の電極10を用いた試用実験の実験値等に基づく、電解槽DKの電極10が故障するまでの水素含有水生成装置100の稼働時間の予測値を受け付け可能であってもよい。制御部CLは、入力部から、電解槽DKが故障するまでの水素含有水生成装置100の稼働時間の予測値を設定されてもよい。
【0032】
制御部CLは、さらに、各種報知情報を表示する表示部を有してもよい。表示部は、例えば、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)等を含む表示装置である。表示部は、制御部CLから取得した報知情報に基づいて、報知情報を表示する。制御部CLがタイマーを含む場合、報知情報は、例えば、予め設定された稼働情報に基づくメンテナンス期に基づいて、作業者等にメンテナンスを行うように促す情報を含んでもよい。制御部CLがタイマーを含む場合、表示部は、水素含有水生成装置100の稼働時間を表示してもよい。表示部がタッチパネル式ディスプレイである場合、表示部は、入力部を含んでもよい。
【0033】
(電解槽の電気分解)
次に、電解槽DKにおける原水Wの電気分解について説明する。水素含有水生成装置100は、電極10が原水Wに浸漬され、電源30によって電極10に電圧が印加されて、陽極部12と、陰極部14との間に電位差が発生させることによって、原水Wを電気分解し、水素含有水Rを生成する。
【0034】
水素含有水生成装置100は、電極10の陽極部12と、陰極部14との間に電源30から所定の電圧が印加されると、陽極部12において、下記式(1)の反応が生じる。
【0035】
2H2O→O2+4H++4e-・・・(1)
【0036】
水素含有水生成装置100は、電極10の陽極部12と、陰極部14との間に電源30から所定の電圧が印加されると、陰極部14において、下記式(2)の反応が生じる。
【0037】
4H++4e-→2H2・・・(2)
【0038】
水素含有水生成装置100は、電極10の陽極部12と、陰極部14との間に電源30から所定の電圧が印加されると、陽極部12及び陰極部14の全体において、下記式(3)の反応が生じる。
【0039】
2H2O→O2+2H2・・・(3)
【0040】
水素含有水生成装置100において生成され、すなわち電解槽DKの排水部48Hから流出する水素含有水Rは、例えばpH7以上7.5以下程度の中性になる。陽極部12で発生する電離した水素イオンH+は陰極部14側に集まり、陰極部14には水素ガス(H2)の気泡が生成される。この気泡は、直径がナノメートルオーダーの微小な気泡である。酸素ガス(O2)は、陽極部12の内周部(電極10の内周部10Si)に気泡となって集まり、陽極部12の内周部に沿って又は陽極部12の内周部より内側を上昇して、接合管50を介して空気抜き弁AVから水素含有水生成装置100の外部に放出される。
【0041】
(水素含有水生成方法)
次に、本実施形態の水素含有水生成装置100において、水素含有水Rを生成する方法について説明する。
図4は、本実施形態に係る水素含有水生成方法の流れを示すフローチャートである。本実施形態に係る水素含有水生成方法は、電極寿命予測ステップST201と、陰極用給電部数設定ステップST202と、変更間隔設定ステップST203と、荷電箇所変更ステップST204と、を含む。
【0042】
電極寿命予測ステップST201は、電解槽DKの電極10の寿命を予測するステップである。電極寿命予測ステップST201では、例えば、電解槽DKの電極10と同様の電極10を用いた試用実験の実験値等に基づいて、電解槽DKの電極10の故障までの稼働時間の予測値を、制御部CLに設定する。同一の水素含有水生成装置100で、電解槽DKの電極10の故障までの稼働時間の予測値を既に設定している場合は、電極寿命予測ステップST201を省略してもよい。
【0043】
陰極用給電部数設定ステップST202は、陰極用給電部材22の数を示す陰極用給電部数Nを設定するステップである。制御部CLは、例えば、陰極用給電部数Nを設定する所定の操作を入力部が受け付けたことを示す操作信号を取得した場合、入力された陰極用給電部数Nを記憶する。本実施形態において、陰極用給電部数Nは、N=4である。陰極用給電部数設定ステップST202は、電極寿命予測ステップST201より前に実施されてもよい。
【0044】
変更間隔設定ステップST203は、電源30が電圧を印加する陰極用給電部材22の荷電箇所を変更する間隔である変更間隔Tcを設定するステップである。より詳しくは、変更間隔Tcは、電源30が電圧を印加する対象の陰極用給電部材22を別の陰極用給電部材22に変更する間隔である。変更間隔Tcは、本実施形態において、電極寿命予測ステップST201で設定された電解槽DKの電極10の故障までの稼働時間の予測値に基づいて設定される。変更間隔Tcは、例えば、故障までの稼働時間の予測値に所定の安全率を積算することによって算出される。制御部CLは、例えば、予め記憶された演算プログラムに基づいて算出した変更間隔Tcを記憶する。制御部CLは、例えば、変更間隔Tcを設定する所定の操作を入力部が受け付けたことを示す操作信号を取得した場合、入力された変更間隔Tcを記憶してもよい。
【0045】
荷電箇所変更ステップST204は、電源30が電圧を印加する陰極用給電部材22の荷電箇所を変更するステップである。荷電箇所変更ステップST204では、変更間隔Tc毎に電源30が電圧を印加する対象の陰極用給電部材22を別の陰極用給電部材22に変更する。荷電箇所変更ステップST204について、より詳細に説明する。
図5は、
図4の荷電箇所変更ステップST204における水素含有水生成装置100の制御部CRの処理の一例を示すフローチャートである。制御部CLは、電解槽DKの稼働開始を時刻0とした場合の時刻tをt=0として、カウントアップタイマーを動作中であるものとする。
【0046】
ステップST211において、制御部CLは、電源30から電圧を印加中の陰極用給電部材22が何番目かを示す陰極用給電部使用数NcをNc=0として記憶する。制御部CLは、ステップST212に移行する。ステップST212において、制御部CLは、陰極用給電部使用数Ncのカウンタ値を1つ増やして、Nc=Nc+1として記憶する。制御部CLは、ステップST213に移行する。
【0047】
ステップST213において、制御部CLは、時刻tが、変更間隔Tcと陰極用給電部使用数Ncとの積算から算出される電源30が電圧を印加する陰極用給電部材22の荷電箇所を変更する時刻に達したか否かを判定する(t≧Tc×Nc?)。制御部CLは、時刻tが陰極用給電部材22の荷電箇所を変更する時刻に達していないと判定した場合(ステップST213;No)、所定の周期毎にステップST213を繰り返し実行する。制御部CLは、時刻tが陰極用給電部材22の荷電箇所を変更する時刻に達したと判定した場合(ステップST213;Yes)、ステップST214に移行する。
【0048】
ステップST214において、制御部CLは、陰極用給電部使用数Ncが陰極用給電部数N以上か否かを判定する。制御部CLは、陰極用給電部使用数Ncが陰極用給電部数Nより小さいと判定した場合(ステップST214;No)、ステップST215に移行する。制御部CLは、陰極用給電部使用数Ncが陰極用給電部数N以上であると判定した場合(ステップST214;Yes)、ステップST216に移行する。
【0049】
陰極用給電部使用数Ncが陰極用給電部数Nより小さいと判定した場合(ステップST214;No)、ステップST215において、制御部CLは、電源30が電圧を印加する陰極用給電部材22の荷電箇所を変更する。より詳しくは、制御部CLは、スイッチ32を切り替える制御信号を出力する。スイッチ32が切り替わることによって、電源30が電圧を印加する対象の陰極用給電部材22は、別の陰極用給電部材22に変更される。制御部CLは、電圧を印加していた陰極用給電部材22がいずれの陰極用給電部材22であったか記憶し、まだ電圧を印加していない陰極用給電部材22に電圧を印加する対象を変更する。制御部CLは、ステップST212に移行する。
【0050】
陰極用給電部使用数Ncが陰極用給電部数N以上であると判定した場合(ステップST214;Yes)、ステップST216において、制御部CLは、電極10の交換を行うように報知する。より詳しくは、制御部CLは、電極10の交換を行うよう促す報知情報を含む制御信号を表示部へ出力する。表示部は、電極10の交換を行うよう促す報知情報を表示する。ステップST216を終了すると、制御部CLは、
図5に示すフローチャートの処理を終了することにより、
図4に示す荷電箇所変更ステップST204を終了する。制御部CLは、
図4に示すフローチャートの処理を終了する。
【0051】
以上のように、本実施形態の水素含有水生成装置100の電解槽DKは、陽極部12と、陰極部14と、槽本体40と、陽極用給電部材20と、複数の陰極用給電部材22と、電源30と、を備える。陽極部12は、側部に複数の開口12Hを有する筒状である。陰極部14は、側部に複数の開口14Hを有し、陽極部12の径方向外側又は径方向内側に離間して設けられる筒状である。槽本体40は、陽極部12及び陰極部14が内部に設けられる筒状である。陽極用給電部材20は、陽極部12の長手方向Eに沿って延びて陽極部12の側部に取り付けられる棒状である。複数の陰極用給電部材22は、それぞれ、陰極部14の長手方向Eに沿って延びて陰極部14の側部に取り付けられる棒状である。電源30は、陽極用給電部材20に電気的に接続し、かつ複数の陰極用給電部材22に選択的に接続して陽極部12と陰極部14との間に電圧を印加する。
【0052】
本実施形態の水素含有水生成装置100の電解槽DKによれば、電圧を印加する対象の陰極用給電部材22を順次変更することによって、陽極部12の位置に対する荷電箇所である荷電中の陰極用給電部材22の位置が変わる。水素含有水Rを生成する電気分解反応では、陰極部14の電流密度が荷電部分である陰極用給電部材22に集中しているため、陰極用給電部材22と距離が近い陽極部12の部分に劣化が集中してしまう。これに対し、電解槽DKは、陰極用給電部材22と距離が近い陽極部12の部分が穴開き等故障する前に、陽極部12に対する陰極用給電部材22の荷電箇所を変更することが可能である。これにより、電極10、特に陽極部12の局所的な劣化を抑制して寿命を延ばすことができる。
【0053】
本実施形態において、電解槽DKは、それぞれ4つの陰極用給電部材22を備えるが、陰極用給電部材22の数は4つに限定されず、2つ以上であればいくつであってもよい。陰極用給電部材22を陰極部14に取り付ける位置は特に限定されないが、陽極部12に対向する位置に均等に配置されることが好ましい。複数の陰極用給電部材22に電圧を印加する順番は特に限定されない。平面視において時計回り又は反時計回りであってもよいし、例えば、第一陰極用給電部材221、第三陰極用給電部材223、第二陰極用給電部材222、第四陰極用給電部材224の順番等でもよい。
【0054】
本実施形態において、陽極部12、陰極部14、及び槽本体40の形状は、いずれも円筒状であるが、これに限定されるものではなく、筒形状であればどのような形状でもよい。また、電極10は、下端部側開口部10HA及び上端部側開口部10HBを有していなくてもよいし、下端部側開口部10HA及び上端部側開口部10HBのいずれかのみを有していてもよい。
【0055】
本実施形態において、電極10は、陽極用給電部材20及び陰極用給電部材22を介して下側基台42及び槽本体40に固定されるが、固定方法は特に限定されない。また、本実施形態では、筒形状の陽極部12、陰極部14、及び槽本体40の軸方向が鉛直方向と平行となる向きで配置することで、槽本体40内の水の流れを好適に制御でき、水素含有水Rを好適に排出することができる。なお、陽極部12、陰極部14、及び槽本体40の向きは、軸方向が鉛直方向と平行となる向きに限定されないが、軸方向に沿った向きで配置することが好ましい。
【0056】
本実施形態において、陽極用給電部材20は、突出部分20Pとは反対側の端部が上端部側開口部10HBの近傍まで延びるが、陽極用給電部材20の陽極部12に取り付けられる部分の長さは、陽極部12の長手方向Eの寸法の半分以下でもよい。陰極用給電部材22は、突出部分22Pとは反対側の端部が上端部側開口部10HBの近傍まで延びるが、陰極用給電部材22の陰極部14に取り付けられる部分の長さは、陰極部14の長手方向Eの寸法の半分以下でもよい。これらの場合、例えば、電極10は、陽極用給電部材20が設けられている側とは反対側に、陽極用給電部材20と同じ形状の陽極用支持部材が設けられてもよい。また、電極10は、陰極用給電部材22が設けられている側とは反対側に、陰極用給電部材22と同じ形状の陰極用支持部材が設けられてもよい。陽極用支持部材及び陰極用支持部材は、陽極用給電部材20及び陰極用給電部材22と同一の材料であってもよいし、異なる材料であってもよい。
【0057】
陽極用給電部材20は、本実施形態のような棒状の形状でなくてもよく、任意の形状にしてもよい。また、陽極用給電部材20は、下端部側開口部10HAにおいて陽極部12に接続されることに限られず、導電体として陽極部12と電気的に接続されていれば、接続箇所は任意である。陰極用給電部材22は、本実施形態のような棒状の形状でなくてもよく、任意の形状にしてもよい。また、陰極用給電部材22は、下端部側開口部10HAにおいて陰極部14に接続されることに限られず、導電体として陰極部14と電気的に接続されていれば、接続箇所は任意である。
【0058】
本実施形態においては、陽極部12と、陰極部14とが下部スペーサ52及び上部スペーサ54を介して離間して設けられるが、陽極部12と、陰極部14との間に、側部に複数の開口を有する円筒状の絶縁体を介在させてもよい。絶縁体は、例えば、陽極部12の外周部及び陰極部14の内周部と接する。
【0059】
本実施形態においては、電極10が、内側に陽極部12を有し、外側に陰極部14を有するが、内側に陰極部14を有し、外側に陽極部12を有してもよい。この場合、給水管46の給水部46Hは、内側に配置された陰極部14の内周部より内側に設けられ、鉛直方向の上方に向けて給水することが好ましい。また、排水管48の排水部48Hは、内側に配置された陰極部14の内周部より内側に設けられ、給水部46Hの上方において、陰極部14の上端部側開口部10HBより下方の水素含有水Rを取水することが好ましい。また、接合管50は、陽極部12の外周部より外側に連通する上側基台44の内部空間に連通することが好ましい。
【0060】
以上、本実施形態を説明したが、本実施形態によってこの発明が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、本実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0061】
10 電極
12 陽極部
14 陰極部
20 陽極用給電部材
22 陰極用給電部材
221 第一陰極用給電部材
222 第二陰極用給電部材
223 第三陰極用給電部材
224 第四陰極用給電部材
30 電源
32 スイッチ
40 槽本体
100 水素含有水生成装置
DK 電解槽
CL 制御部
R 水素含有水
E 長手方向