(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 21/00 20060101AFI20231129BHJP
【FI】
G03G21/00 502
(21)【出願番号】P 2019231804
(22)【出願日】2019-12-23
【審査請求日】2022-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石堂 紘平
【審査官】内藤 万紀子
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-145868(JP,A)
【文献】特開2005-341397(JP,A)
【文献】特開平06-194908(JP,A)
【文献】特開2007-199377(JP,A)
【文献】特開2012-078967(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1制御回路、第2制御回路、高圧基板、及び、ポリゴンモーターを含み、
前記高圧基板は、
前記第2制御回路が出力する印加用信号が入力され、
入力された前記印加用信号の周波数の電圧をトナー像形成用部材に印加し、
前記第1制御回路は、第1発振部、駆動信号生成回路、及び、調整用信号生成回路を含み、
前記第1発振部は、第1振動子を用いて第1クロック信号を生成し、
前記駆動信号生成回路は、
入力された前記第1クロック信号の数をカウントし、
モーター駆動信号を生成し、
前記第1クロック信号を第1回数だけカウントする間隔を前記モーター駆動信号の1周期とし、
前記モーター駆動信号を前記ポリゴンモーターに入力することにより、前記ポリゴンモーターを回転させ、
前記調整用信号生成回路は、
入力された前記第1クロック信号の数をカウントし、
調整用信号を生成し、
前記第1クロック信号を第2回数だけカウントする間隔を前記調整用信号の1周期とし、
前記第2制御回路は、第2発振部、調整用信号キャプチャー回路、印加用信号生成回路、及び、設定回路を含み、
前記第2発振部は、第2振動子を用いて第2クロック信号を生成し、
前記調整用信号キャプチャー回路は、入力された前記調整用信号の1周期中の前記第2クロック信号のカウント値である実測回数をカウントし、
前記印加用信号生成回路は、
入力された前記第2クロック信号の数をカウントし、
前記第2クロック信号を設定値だけカウントする間隔を前記印加用信号の1周期とし、
前記設定回路は、
前記実測回数と予め定められた前記実測回数の理論回数とを比較し、
前記実測回数と前記理論回数との差に応じて前記設定値を設定し、
前記理論回数は、前記第2クロック信号の理想的な周波数を前記調整用信号の理想的な周波数で除して得られる数であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記設定回路は、
前記実測回数が前記理論回数と同じとき、前記設定値を予め定められた基準回数に設定し、
前記実測回数が前記理論回数よりも多い場合、前記設定値を前記基準回数よりも大きい値に設定し、
前記実測回数と前記理論回数の差の絶対値が大きいほど、前記設定値を大きくすることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記設定回路は、
前記実測回数が前記理論回数よりも少ない場合、前記設定値を前記基準回数よりも小さい値に設定し、
前記実測回数と前記理論回数の差の絶対値が大きいほど、前記設定値を小さくすることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記設定回路は、
前記実測回数と理想的な前記調整用信号の周波数を乗ずることにより、前記第2クロック信号の周波数の推測値を求め、
求めた前記推測値を理想的な前記印加用信号の周波数で除した値を前記設定値とすることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記第1発振部は、発振回路とPLL回路を含み、
前記PLL回路は前記発振回路が出力する信号を逓倍した信号を前記第1クロック信号として出力することを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記トナー像形成用部材は、感光体ドラムを帯電させるための部材であることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記トナー像形成用部材は、感光体ドラムにトナーを供給して、静電潜像を現像する現像ローラーであることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナーを用いて印刷する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複合機、プリンター、ファクシミリ装置のような画像形成装置がある。画像形成装置は動作用の信号(クロック信号)を生成する回路を含む。所定の周波数の信号を生成し、画像形成装置内の各部分に分配する画像形成装置の一例が特許文献1に記載されている。
【0003】
具体的に、特許文献1には、基準周波数の信号に基づいて、基準周波数の信号に同期した所定の周波数の信号を複数種生成し、所定の周波数の信号を駆動クロックとして使用する画像形成関連モーターと、別の所定の周波数の信号に基づいて高圧を発生する高圧電源とを具えた画像形成装置が記載されている。全部分で同期をとることにより、非同期の高電圧に起因する異常画像や、スキャニングモータと用紙搬送用モーターの回転数の非同期に起因する印字ムラを減らそうとする(特許文献1:請求項1、[0003]参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
トナーを用いた印刷では、感光体ドラムの帯電、静電潜像の現像が行われる。また、トナーを用いる画像形成装置では、レーザーで感光体ドラムの帯電部分を露光することがある。このような画像形成装置は、ポリゴンミラーとポリゴンモーターを含む。ポリゴンミラーはレーザーを反射する。ポリゴンモーターはポリゴンミラーを回転させる。ポリゴンミラーの回転により、レーザーの照射位置が移動する。照射位置を移動させて、感光体ドラムの露光(走査)が行われる。
【0006】
画像形成装置では、感光体ドラムが1ライン分わずかに回転する間に、1ラインの感光体ドラムの露光がなされるように、ポリゴンモーターの駆動信号(クロック信号)の周波数が設定される。ここで、縞状の濃淡(模様)が印刷画像に出る駆動信号の周波数と帯電電圧の周波数の組み合わせがあることがわかっている。感光体ドラムでの周期的な帯電のムラとの関係性が考えられる。この現象は周波数干渉といわれることがある。周波数干渉による濃淡は、印刷物の画質を低下させる。縞状の濃淡が出ないように、駆動信号の周波数と帯電電圧の周波数が設定される。例えば、帯電電圧の周波数が、周波数干渉が生じない周波数に、意図的にずらされる。
【0007】
ここで、発振回路が生成する信号の周波数は、温度の影響を受ける。画像形成装置内の場所によって温度に差がある。また、振動子ごとに、発振周波数にある程度のばらつきがある。複数の発振回路を用いて複数の信号を生成する場合、温度や振動子の個体差により、1又は複数の信号の周波数が狙いの周波数からずれた場合、周波数干渉による異常画像が現れる可能性があるという問題がある。
【0008】
従来、1つの発振回路の生成信号を分周又は逓倍して、同期関係にある信号を複数生成する画像形成装置がある。発振周波数がずれても、全ての信号の周波数が同様にずれて、周波数干渉が生じにくいためである。特許文献1記載の画像形成装置は、1つの源振信号から多数の周波数の異なる信号を生成している。
【0009】
しかし、1つの源振信号から複数の信号を生成する場合、信号生成回路から位置が離れた場所にも信号を届けなくてはならない。配線が長く、かつ、複雑になる。また、特定の周波数の信号を生成する回路が信号生成回路に複数盛り込まれる。このような信号生成回路は多くの機種に適用しづらい。汎用性が低いという問題もある。
【0010】
特許文献1に記載の装置は、1つのクロック信号から、ポリゴンモーター回転用、用紙搬送用、帯電用、現像用、転写用の電圧を生成する(特許文献1:
図1、
図2参照)。これら全ての各部材に信号を配信する必要がある。機内で信号線が這い回される。配線が複雑となる。生成する信号の周波数は決まっており、回路の汎用性は高くない。従って、特許文献1記載の技術は上記の問題を含む。
【0011】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み、異なる発振回路を用いてモーター用の信号とトナー像形成用の信号を生成して配線の簡素化を図りつつ、周波数干渉が生じないように、信号の周波数を自動的に調整する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題解決のため、本発明に係る画像形成装置は、第1制御回路、第2制御回路、高圧基板、及び、ポリゴンモーターを含む。前記高圧基板は、前記第2制御回路が出力する印加用信号が入力される。前記高圧基板は、入力された前記印加用信号の周波数の電圧をトナー像形成用部材に印加する。前記第1制御回路は、第1発振部、駆動信号生成回路、及び、調整用信号生成回路を含む。前記第1発振部は、第1振動子を用いて第1クロック信号を生成する。前記駆動信号生成回路は、入力された前記第1クロック信号の数をカウントする。前記駆動信号生成回路は、モーター駆動信号を生成する。前記駆動信号生成回路は、前記第1クロック信号を第1回数だけカウントする間隔を前記モーター駆動信号の1周期とする。前記駆動信号生成回路は、前記モーター駆動信号を前記ポリゴンモーターに入力することにより、前記ポリゴンモーターを回転させる。前記調整用信号生成回路は、入力された前記第1クロック信号の数をカウントする。前記調整用信号生成回路は、調整用信号を生成する。前記調整用信号生成回路は、前記第1クロック信号を第2回数だけカウントする間隔を前記調整用信号の1周期とする。前記第2制御回路は、第2発振部、調整用信号キャプチャー回路、印加用信号生成回路、及び、設定回路を含む。前記第2発振部は、第2振動子を用いて第2クロック信号を生成する。前記調整用信号キャプチャー回路は、入力された前記調整用信号の1周期中の前記第2クロック信号のカウント値である実測回数をカウントする。前記印加用信号生成回路は、入力された前記第2クロック信号の数をカウントする。前記印加用信号生成回路は、前記第2クロック信号を設定値だけカウントする間隔を前記印加用信号の1周期とする。前記設定回路は、前記実測回数と予め定められた前記実測回数の理論回数とを比較する。前記設定回路は、前記実測回数と前記理論回数との差に応じて前記設定値を設定する。前記理論回数は、前記第2クロック信号の理想的な周波数を前記調整用信号の理想的な周波数で除して得られる数である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、別々の発振回路を用いてポリゴンモーター用の信号とトナー像形成用の信号を別々に生成しても、周波数干渉が生じにくいように、信号の周波数を自動的に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施形態に係るプリンターの一例を示す図である。
【
図2】実施形態に係る印刷部の一例を示す図である。
【
図3】実施形態に係る第1制御回路と第2制御回路の一例を示す図である。
【
図4】実施形態に係る帯電設定値と現像設定値の設定の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、
図1~
図4を用いて本発明の実施形態を説明する。以下の説明では、画像形成装置として、プリンター100を例に挙げて説明する。但し、本実施の形態に記載されている構成、配置等の各要素は、発明の範囲を限定せず、単なる説明例にすぎない。なお、以下の説明では、正帯電型のトナーを用いる例を説明する。しかし、本発明は、負帯電型のトナーを用いる画像形成装置にも適用できる。
【0016】
(プリンター100の概略)
次に、
図1に基づき、実施形態に係るプリンター100の概略を説明する。
図1は、実施形態に係るプリンター100の一例を示す図である。
【0017】
プリンター100は第1制御回路1、第2制御回路2、高圧基板3を含む(
図3参照、詳細は後述)。そして、プリンター100内に、制御部4(制御基板)が設けられる。制御部4は、プリンター100の動作を制御する。制御部4は制御回路40、画像処理回路41、通信部42を含む。例えば、制御回路40はCPUである。制御回路40は、記憶部5に記憶されるプログラム、データに基づきプリンター100の各部の動作を制御する。記憶部5が記憶するプログラム、データに基づき、制御回路40は演算、処理を行う。
【0018】
通信部42は、ソケット、通信回路、通信用メモリーを含む。通信部42はネットワーク300を介してコンピューター200と通信する。通信回路は、通信関連処理を行う。通信用メモリーは、通信用ソフトウェアを記憶する。ネットワーク300のタイプは、例えば、LANである。コンピューター200は、例えば、PC、サーバーである。通信部42は、コンピューター200から送信された印刷用データを受信する。印刷用データは、印刷の設定データや印刷内容をページ記述言語で記述したデータを含む。
【0019】
画像処理回路41は、例えば、ASIC(画像処理用に設計された集積回路)である。画像処理回路41は、印刷用データに含まれるページ記述言語で記述されたデータに基づき、画像データ(ラスターデータ)を生成する。画像処理回路41は、生成した画像データの画像処理を行って、出力用画像データを生成する。画像処理回路41は、コンピューター200での印刷の設定内容(設定データ)に応じて、画像処理を行う。
【0020】
記憶部5は、ROM51、RAM52、ストレージ53を含む。ストレージ53は、例えば、HDD又はSSDである。記憶部5は不揮発性と揮発性の記憶装置を組み合わせである。
【0021】
プリンター100は操作パネル6を含む。操作パネル6は、表示パネル61、タッチパネル62、ハードキー63を含む。制御部4は、メッセージ、設定画面、ソフトウェアキーを表示パネル61に表示させる。また、タッチパネル62の出力に基づき、制御部4は操作されたソフトウェアキーを認識する。また、ハードキー63が出力する信号に基づき、制御部4は、操作されたハードキー63を認識する。
【0022】
プリンター100は印刷部7を含む。印刷部7は、給紙部7a、用紙搬送部7b、画像形成部7c、定着部7dを含む。制御部4は、給紙部7a、用紙搬送部7b、画像形成部7c、定着部7dの動作を制御する。印刷部7の詳細は後述する。
【0023】
(印刷部7)
次に、
図2を用いて、実施形態に係る印刷部7の一例を説明する。
図2は、実施形態に係る印刷部7の一例を示す図である。
【0024】
給紙部7aは、例えば、用紙セット板71、給紙ローラー72、給紙モーター(不図示)を含む。用紙セット板71には、用紙束がセットされる。給紙モーターは給紙ローラー72を回転させる。印刷ジョブのとき、制御部4は、給紙ローラー72(給紙モーター)を回転させる。回転する給紙ローラー72は、用紙セット板71にセットされた用紙を1枚ずつ送り出す。用紙は用紙搬送部7bに送り出される。
【0025】
用紙搬送部7bは、用紙搬送用の搬送ローラー対73、搬送ガイド74、搬送モーター(不図示)を含む。搬送モーターは搬送ローラー対73を回転させる。これにより、搬送ローラー対73は用紙を搬送する。
図2は、搬送ローラー対73として、レジストローラー対75と排出ローラー対76を設ける例を示す。
【0026】
制御部4は、用紙先端が到達した時点では、レジストローラー対75を停止させる。用紙先端をレジストローラー対75のニップに突き当てることにより、用紙の斜行が矯正される。矯正後、制御部4は、画像形成部7c(感光体ドラム80)で形成されたトナー像にあわせてレジストローラー対75を回転させる。これにより、用紙の適切な位置にトナー像が転写されるように、用紙がレジストローラー対75から送り出される。搬送ガイド74は、搬送される用紙を案内する。これにより、用紙は所定の経路で搬送される。
【0027】
画像形成部7cは、感光体ドラム80、露光装置81、帯電装置82、現像装置83、転写ローラー84、クリーニング装置85を含む。帯電装置82、現像装置83、転写ローラー84、クリーニング装置85は、感光体ドラム80の周りに設けられる。感光体ドラム80の回転方向上流側から、帯電装置82、現像装置83、転写ローラー84、クリーニング装置85の順番に設けられる。
【0028】
感光体ドラム80は円筒状である。感光体ドラム80の表面(周面)は感光層である。感光層は、例えば、アモルファスシリコンの層である。印刷のとき、制御部4は、感光体ドラム80を回転させるメインモーター(不図示)を回転させる。印刷のとき、制御部4は、所定の周速度で感光体ドラム80を回転させる。
【0029】
帯電装置82は感光体ドラム80の表面を帯電させる。帯電装置82は、例えば、スコロトロン型の帯電器である。帯電装置82は、帯電用部材82a(トナー像形成用部材に相当)を含む。
図2の例では、帯電用部材82aは放電ワイヤーである。放電ワイヤーは正電荷を放出する。帯電装置82の下面(感光体ドラム80と対向する面)は、メッシュ部材82bである。メッシュ部材82bと対向する感光体ドラム80の部分はグリッドと称される。グリッドが正帯電する。なお、帯電用部材82aとして、ローラーやブラシを用いる帯電装置82が用いられてもよい。
【0030】
露光装置81は、半導体レーザー装置86(レーザーダイオード)を含む。出力用画像データに基づき、露光装置81は、半導体レーザー装置86を点消灯させる。露光装置81は、ポリゴンミラー87とポリゴンモーター88を含む。ポリゴンミラー87の形状は多角柱である。ポリゴンミラー87は、感光体ドラム80に向けて、半導体レーザー装置86のレーザー光を反射する。ポリゴンモーター88は、ポリゴンミラー87を回転させる。ポリゴンミラー87の回転により、感光体ドラム80上のレーザー光の照射位置が主走査方向に沿って、一定の速度で移動する。露光装置81のレーザー光(光信号)の照射によって、感光体ドラム80が走査、露光される。感光体ドラム80のうち、レーザー光が照射された部分(画素)は正電荷がキャンセルされる。その結果、感光体ドラム80の周面には、出力用画像データと対応する静電潜像が形成される。
【0031】
現像装置83はトナーを内部に収容する。現像装置83は、現像ローラー83a(トナー像形成用部材に相当)と攪拌ローラー83bを含む。印刷のとき、現像ローラー83aと攪拌ローラー83bは回転する。例えば、メインモーターが現像ローラー83aと攪拌ローラー83bを回転させる。印刷のとき、制御部4は、メインモーターを回転させる。
【0032】
攪拌ローラー83bは、トナーを攪拌するための羽根を有する。攪拌ローラー83bの回転により、トナーは攪拌される。攪拌による摩擦でトナーが正帯電する。なお、プリンター100は補給装置を含む(不図示)。現像装置83内のトナーが印刷によって減ると、補給装置はトナーを現像装置83に補給する。
【0033】
現像ローラー83aの周面と感光体ドラム80の周面は向かい合う。現像ローラー83aの回転軸と感光体ドラム80の回転軸は平行である。現像ローラー83aと感光体ドラム80の間には、隙間が設けられる。この隙間は微小である。例えば、隙間は1mm以下である。現像ローラー83aは周面にトナーを担持する。感光体ドラム80の周面のうち、露光で正電荷がキャンセルされた部分(画素)に、トナーが付着する。現像ローラー83aが担持するトナーによって、感光体ドラム80の周面の静電潜像が現像される。感光体ドラム80は、現像ローラー83aから供給されるトナーで現像されたトナー像を担持しつつ回転する。
【0034】
転写ローラー84の周面と感光体ドラム80の周面は向かい合う。転写ローラー84の回転軸は、感光体ドラム80の回転軸と平行である。転写ローラー84は感光体ドラム80と接する。この接触部分が転写ニップ89となる。印刷時、感光体ドラム80と転写ローラー84は回転する。用紙は転写ニップ89を通過する。この通過のとき、トナー像が感光体ドラム80から用紙に転写される。
図2に示すように、感光体ドラム80と転写ローラー84は、上下方向で接する。用紙は、転写ニップ89を水平方向で通過する。
【0035】
クリーニング装置85は、転写後の感光体ドラム80の表面に残るトナーを回収する。クリーニング装置85は、感光体ドラム80の表面をきれいにする。
【0036】
画像形成部7cの用紙搬送方向下流側に定着部7dが設けられる。定着部7dは、定着用回転体を含む。定着用回転体として、第1加熱ローラー77、第2加熱ローラー78、加圧ローラー79を含む。第1加熱ローラー77と第2加熱ローラー78には、加熱用ベルト710が架け回される。第1加熱ローラー77は、ヒーター77aを内蔵する。ヒーター77aは例えば、IHヒーターである。第2加熱ローラー78と加圧ローラー79は加熱用ベルト710を挟む。トナー像が転写された用紙は、加熱用ベルト710の外周面と加圧ローラー79の間を通過する。用紙が加熱、加圧される結果、トナー溶融し、トナー像が用紙に定着する。
【0037】
定着部7dの用紙搬送方向下流には、排出ローラー対76が設けられる。印刷のとき、制御部4は排出ローラー対76を回転させる。排出ローラー対76を通過した用紙は、排出トレイ711に排出される。
【0038】
(第1制御回路1と第2制御回路2)
次に、
図3を用いて、実施形態に係る第1制御回路1と第2制御回路2の一例を説明する。
図3は、実施形態に係る第1制御回路1と第2制御回路2の一例を示す図である。
【0039】
図3に示すように、プリンター100は、第1制御回路1、第2制御回路2、高圧基板3、電源装置9を含む。
【0040】
例えば、第1制御回路1はASICである。第1制御回路1は、モーター駆動信号S1を生成する。モーター駆動信号S1は、ポリゴンモーター88を回転させるための信号である。例えば、ポリゴンモーター88はDCブラシレスモーターである。そして、第1制御回路1は、第1発振部10、駆動信号生成回路11、調整用信号生成回路12を含む。
【0041】
第1発振部10は、第1振動子13、第1発振回路14、PLL回路15を含む。第1振動子13は、例えば、水晶振動子(水晶発振器)である。第1発振回路14は、第1振動子13に電圧を印加し、第1振動子13を振動させる。第1発振回路14は、第1振動子13が発生させる正弦波に基づき、クロック信号を生成する。第1発振回路14は、例えば、NOT回路、複数のコンデンサー、抵抗を含む。例えば、第1発振回路14は、19~20MHz程度のクロック信号を出力する。
【0042】
PLL回路15は、第1クロック信号CLK1を出力する。PLL回路15は、第1発振回路14が出力したクロック信号を逓倍した信号を、第1クロック信号CLK1として出力する。例えば、PLL回路15は、400~500MHz程度の信号を出力する。第1発振回路14が出力するクロック信号が20MHz、PLL回路15が25倍に逓倍する場合、PLL回路15は、500MHzの第1クロック信号CLK1を出力する。
【0043】
第1クロック信号CLK1は第1制御回路1の制御用クロック信号として利用される。第1クロック信号CLK1は、駆動信号生成回路11、調整用信号生成回路12にも入力される。なお、第1制御回路1は、駆動信号生成回路11、調整用信号生成回路12以外の回路を含んでもよい。この場合、第1クロック信号CLK1は、第1制御回路1内の他の回路にも供給される。
【0044】
駆動信号生成回路11は、モーター駆動信号S1を生成し、出力する。駆動信号生成回路11はカウンター(分周回路)である。第1クロック信号CLK1が駆動信号生成回路11に入力される。駆動信号生成回路11は入力された第1クロック信号CLK1の数を数える。例えば、駆動信号生成回路11は、第1クロック信号CLK1が立ち上がった又は立ち下がった回数を数える。
【0045】
また、駆動信号生成回路11は、第1クロック信号CLK1のカウント値が第1回数になるごとにモーター駆動信号S1のレベルを変化させる。駆動信号生成回路11は、第1クロック信号CLK1を第1回数だけカウントする間隔をモーター駆動信号S1の1周期とする。例えば、駆動信号生成回路11は、カウント値が第1回数になると、モーター駆動信号S1のレベルをHighレベルに変化させる(立ち上げる)。カウント値が第1回数になると、駆動信号生成回路11は、カウント値をリセットする。駆動信号生成回路11は、カウント値が再び第1回数になる前に、モーター駆動信号S1のレベルをLowレベルに変化させる(立ち下げる)。
【0046】
第1回数は予め定められる(設定される)。第1回数は、第1クロック信号CLK1の理想的な周波数(設計上の周波数、ずれがないときの周波数)に基づき、定められる。例えば、モーター駆動信号S1の理想的な周波数(設計上の周波数、ずれがないときの周波数)が5000Hzであるとする。第1クロック信号CLK1の理想的な周波数が500MHzとする。この場合、第1回数は、500MHz÷5000Hz=10万となる。
【0047】
調整用信号生成回路12は、調整用信号S2を生成し、出力する。調整用信号生成回路12はカウンター(分周回路)である。第1クロック信号CLK1が調整用信号生成回路12に入力される。調整用信号生成回路12は入力された第1クロック信号CLK1の数を数える。例えば、調整用信号生成回路12は、第1クロック信号CLK1が立ち上がった又は立ち下がった回数を数える。
【0048】
調整用信号生成回路12は、第1クロック信号CLK1のカウント値が第2回数になるごとに調整用信号S2のレベルを変化させる。調整用信号生成回路12は、第1クロック信号CLK1を第2回数だけカウントする間隔を調整用信号S2の1周期とする。例えば、調整用信号生成回路12は、カウント値が第2回数になると、調整用信号S2のレベルをHighレベルに変化させる(立ち上げる)。カウント値が第2回数になると、調整用信号生成回路12は、カウント値をリセットする。調整用信号生成回路12は、カウント値が再び第2回数になる前に、調整用信号S2のレベルをLowレベルに変化させる(立ち下げる)。
【0049】
第2回数は予め定められる(設定される)。第2回数は、第1クロック信号CLK1の理想的な周波数(設計上の周波数、ずれがないときの周波数)に基づき、定められる。例えば、調整用信号S2の理想的な周波数(設計上の周波数、ずれがないときの周波数)が2kHzであるとする。第1クロック信号CLK1の理想的な周波数が500MHzとする。この場合、第2回数は、500MHz÷2kHz=25万となる。
【0050】
例えば、第2制御回路2はASICである。第2制御回路2は印加用信号として、帯電用信号S3と現像用信号S4を生成する回路である。帯電用信号S3は、帯電用部材82a(放電ワイヤー)への電圧印加に用いられる信号である。現像用信号S4は、現像ローラー83aへの電圧印加に用いられる信号である。具体的に、第2制御回路2は、第2発振部20、調整用信号キャプチャー回路21、設定回路22、第1印加用信号生成回路23、第2印加用信号生成回路24を含む。
【0051】
第2発振部20は、第2振動子25、第2発振回路26を含む。第2振動子25は、例えば、水晶振動子(水晶発振器)である。第2発振回路26は、第2振動子25に電圧を印加し、第2振動子25を振動させる。第2振動子25が発生させる正弦波に基づき、第2発振回路26は第2クロック信号CLK2を生成、出力する。第2発振回路26は、例えば、NOT回路、複数のコンデンサー、抵抗を含む。例えば、第2発振回路26は、19~20MHz程度のクロック信号を出力する。
【0052】
調整用信号キャプチャー回路21は、カウンター(分周回路)である。調整用信号S2と第2クロック信号CLK2が調整用信号キャプチャー回路21に入力される。調整用信号キャプチャー回路21は、実測回数を数える。実測回数は、入力された調整用信号S2の1周期中の第2クロック信号CLK2のカウント値である。例えば、調整用信号キャプチャー回路21は、調整用信号S2の1周期中に第2クロック信号CLK2が立ち上がった又は立ち下がった回数を数える。言い換えると、調整用信号キャプチャー回路21は、調整用信号S2が立ち上がってから次に調整用信号S2が立ち上がるまでの期間中に入力された第2クロック信号CLK2の数を数える。なお、実測回数について、理論回数が予め定められる。理論回数の詳細は後述する。
【0053】
設定回路22は、第1印加用信号生成回路23の第1設定値と第2印加用信号生成回路24の第2設定値を設定する(詳細は後述)。
【0054】
第1印加用信号生成回路23は、帯電用信号S3を生成し、出力する。第1印加用信号生成回路23はカウンター(分周回路)である。第2クロック信号CLK2が第1印加用信号生成回路23に入力される。第1印加用信号生成回路23は入力された第2クロック信号CLK2の数を数える。例えば、第1印加用信号生成回路23は、第2クロック信号CLK2が立ち上がった又は立ち下がった回数を数える。
【0055】
第1印加用信号生成回路23は、第2クロック信号CLK2のカウント値が第1設定値になるごとに帯電用信号S3のレベルを変化させる。第1印加用信号生成回路23は、第2クロック信号CLK2を第1設定値だけカウントする間隔を帯電用信号S3の1周期とする。第1印加用信号生成回路23は、カウント値が第1設定値になると、帯電用信号S3のレベルをHighレベルに変化させる(立ち上げる)。カウント値が第1設定値になると、第1印加用信号生成回路23は、カウント値をリセットする。第1印加用信号生成回路23は、カウント値が再び第1設定値になる前に、帯電用信号S3のレベルをLowレベルに変化させる(立ち下げる)。
【0056】
第1設定値について、帯電用基準値が予め設定される。帯電用基準値は、第1設定値の理論値である。第2クロック信号CLK2の理想的な周波数(設計上の周波数、ずれがないときの周波数)に基づき、帯電用基準値は定められる。例えば、帯電用信号S3の理想的な周波数(設計上の周波数、ずれがないときの周波数)が4kHzであるとする。第2クロック信号CLK2の理想的な周波数が20MHzとする。この場合、帯電用基準値は、20MHz÷4kHz=5000となる。
【0057】
第2印加用信号生成回路24は、現像用信号S4を生成し、出力する。現像用信号S4は、現像装置83の現像ローラー83aへの電圧印加に用いられる。第2印加用信号生成回路24はカウンター(分周回路)である。第2クロック信号CLK2が第2印加用信号生成回路24に入力される。第2印加用信号生成回路24は入力された第2クロック信号CLK2の数を数える。例えば、第2印加用信号生成回路24は、第2クロック信号CLK2が立ち上がった又は立ち下がった回数を数える。
【0058】
また、第2印加用信号生成回路24は、第2クロック信号CLK2のカウント値が第2設定値になるごとに現像用信号S4のレベルを変化させる。第2印加用信号生成回路24は、第2クロック信号CLK2を第2設定値だけカウントする間隔を現像用信号S4の1周期とする。第2印加用信号生成回路24は、カウント値が第2設定値になると、現像用信号S4のレベルをHighレベルに変化させる(立ち上げる)。カウント値が第2設定値になると、第2印加用信号生成回路24は、カウント値をリセットする。また、第2印加用信号生成回路24は、カウント値が再び第2設定値になる前に、現像用信号S4のレベルをLowレベルに変化させる(立ち下げる)。
【0059】
第2設定値について、現像用基準値が予め設定される。現像用基準値は第2設定値の理論値である。第2クロック信号CLK2の理想的な周波数に基づき、現像用基準値は定められる。例えば、現像用信号S4の理想的な周波数(設計上の周波数、ずれがないときの周波数)が8kHzであるとする。第2クロック信号CLK2の理想的な周波数が20MHzとする。この場合、現像用基準値は20MHz÷8kHz=2500となる。
【0060】
高圧基板3は、帯電用電圧生成回路31と現像用電圧生成回路32を含む。高圧基板3は電源装置9から電力の供給を受ける。印刷のとき、制御部4は、帯電用電圧生成回路31に、帯電用部材82a(放電ワイヤー)に印加する電圧(帯電用電圧V1)を生成させる。例えば、帯電用電圧生成回路31は、昇圧回路を含む。例えば、帯電用電圧V1のピーク間電圧は数kVである。なお、帯電用電圧V1は、直流電圧と交流電圧を重畳した電圧でもよい。また、帯電用電圧V1は、直流電圧でもよい。
【0061】
帯電用信号S3に基づき、帯電用電圧生成回路31は、帯電用電圧V1を帯電用部材82aに印加する。例えば、帯電用信号S3のHigh、Lowにあわせて、帯電用電圧生成回路31は、帯電用電圧V1のON/OFFを切り替える。例えば、帯電用信号S3がHighレベルのとき、帯電用電圧生成回路31は、帯電用部材82aに帯電用電圧V1を印加する。帯電用信号S3がLowレベルのとき、帯電用電圧生成回路31は、帯電用部材82aに帯電用電圧V1を印加しない。
【0062】
また、印刷のとき、制御部4は、現像用電圧生成回路32に、現像用電圧V2を生成させる。例えば、現像用電圧生成回路32は昇圧回路を含む。現像用電圧V2は、直流電圧と交流電圧を重畳した電圧である。現像用電圧生成回路32は、現像ローラー83aに印加する直流電圧を生成する。現像用電圧生成回路32は、現像ローラー83aを直流電圧でバイアスする。また、現像用電圧生成回路32は、現像ローラー83aに印加する交流電圧を生成する。例えば、交流電圧のピーク間電圧は数kVである。また、現像用信号S4に基づき、現像用電圧生成回路32は、交流電圧を現像ローラー83aに印加する。例えば、現像用電圧生成回路32は、現像用信号S4の周波数と同じ周波数の交流電圧を現像ローラー83aに印加する。
【0063】
(第1設定値と第2設定値の設定)
次に、
図4を用いて実施形態に係る第1設定値と第2設定値の設定の一例を説明する。
図4は、実施形態に係る第1設定値と第2設定値の設定の一例を示す図である。
【0064】
モーター駆動信号S1と帯電用信号S3の周波数の組み合わせによっては、縞状の濃淡が印刷物に出ることがある。縞状の濃淡が出る現象を周波数干渉と称することがある。また、帯電用信号S3(帯電用電圧V1)と現像用信号S4(現像用電圧V2)の間でも、周波数の組み合わせによっては、縞状の濃淡が出る場合がある。モーター駆動信号S1と現像用信号S4(現像用電圧V2)の間でも、周波数の組み合わせによっては、縞状の濃淡が出る場合がある。帯電用信号S3と現像用信号S4の理想的な(設計上の)周波数として、周波数干渉が生じない周波数が選択される。
【0065】
帯電用基準値(第1設定値の理論値)が予め定められる。帯電用基準値は、第1クロック信号CLK1及び第2クロック信号CLK2に周波数のずれがない場合に、帯電用電圧V1を原因とする周波数干渉が生じない第1設定値である。また、現像用基準値(第2設定値の理論値)も予め定められる。現像用基準値は、第1クロック信号CLK1及び第2クロック信号CLK2に周波数のずれがない場合に、現像用電圧V2を原因とする周波数干渉が生じない第2設定値である。
【0066】
温度の影響や、振動子の個体差によって、第1クロック信号CLK1と第2クロック信号CLK2の実際の周波数は、理想的な周波数からずれることがある。第1制御回路1と第2制御回路2は、異なるクロック信号を用いて信号を生成、出力する。一方、又は、両方のクロック信号が、周波数干渉が生じる方向にずれる可能性がある。
【0067】
そこで、第2制御回路2の設定回路22は、各クロック信号の周波数が理想的な周波数からずれても、第1設定値と第2設定値を調整し、周波数干渉が生じない状態で維持する。設定回路22は、例えば、ASIC内に設けられたコントローラー回路である。例えば、プリンター100の主電源が投入された時点で、設定回路22は第1設定値と第2設定値を設定してもよい。また、印刷ジョブを開始する時点で、設定回路22は、第1設定値と第2設定値を設定してもよい。この場合、設定回路22は印刷ジョブごとに各設定値を設定する。設定回路22は、1ページの印刷ごとに各設定値を設定してもよい。
【0068】
主電源ONやスリープモードから通常モードへの復帰に伴い、第1制御回路1と第2制御回路2に電力が供給される。電力供給により、第1制御回路1と第2制御回路2は動作する。動作中、第1制御回路1は第1クロック信号CLK1、調整用信号S2を生成している。また、動作中、第2制御回路2は第2クロック信号CLK2を生成し、調整用信号キャプチャー回路21はカウントを行っている。
【0069】
第1設定値と第2設定値を設定するとき、第2制御回路2(調整用信号キャプチャー回路21)は、実測回数をカウントする。調整用信号キャプチャー回路21は実測回数を設定回路22に通知する。設定回路22は実測回数を認識する。設定回路22は、複数回数(複数周期)分の実測回数の平均値を実測回数として求めてもよい。
【0070】
ここで、実測回数について、理論回数が予め定められる。理論回数は、理想的な実測回数である。具体的に、理論回数は、第1クロック信号CLK1の周波数と第2クロック信号CLK2の周波数の何れもが理想的な周波数(設計上の周波数、ずれがないときの周波数)のときに得られる実測回数である。理論回数は、第2クロック信号CLK2の理想的な周波数を、調整用信号S2の理想的な周波数で除して得られる数である。
【0071】
1.実測回数=理論回数の場合
実測回数が理論回数と同じとき、第1クロック信号CLK1と第2クロック信号CLK2に周波数のずれはないと認められる。設計どおりの設定値を設定すれば周波数干渉による縞状の濃淡は現れない。
【0072】
この場合、設定回路22は、第1設定値として帯電用基準値を第1印加用信号生成回路23に設定する。第1印加用信号生成回路23は、帯電用信号S3の周期を、第2クロック信号CLK2を帯電用基準値カウントする期間とする。また、設定回路22は、第2設定値として現像用基準値を第2印加用信号生成回路24に設定する。第2印加用信号生成回路24は、現像用信号S4の周期を、第2クロック信号CLK2を現像用基準値カウントする期間とする。
【0073】
2.実測回数>理論回数の場合(実測回数の方が多い場合)
実測回数が理論回数よりも多い場合、第1クロック信号CLK1と第2クロック信号CLK2の何れか一方、又は、両方で周波数のずれがある。第1設定値と第2設定値を調整する必要がある。
【0074】
この場合、設定回路22は、帯電用基準値よりも大きい値を第1設定値とする。設定回路22は、基準よりも大きい第1設定値を第1印加用信号生成回路23に設定する。そして、設定回路22は、差の絶対値が大きいほど、第1設定値を大きい値に設定する。また、設定回路22は、現像用基準値よりも大きい値を第2設定値とする。設定回路22は、基準よりも大きい第2設定値を第2印加用信号生成回路24に設定する。そして、設定回路22は、差の絶対値が大きいほど、第2設定値を大きくする。
【0075】
実測回数が理論回数よりも多い場合、第1クロック信号CLK1の周波数が理想よりも低くなる方向にずれている可能性がある。第1クロック信号CLK1の周波数が低い場合、調整用信号S2の周波数が低くなる。例えば、調整用信号S2の理想的な周波数が2kHzであるとする。調整用信号S2は、2kHz未満になる。この場合、調整用信号S2の1周期が理想よりも長くなる。調整用信号S2の1周期が長いほど実測回数が増える。
【0076】
第1クロック信号CLK1の周波数が理想よりも低い場合、モーター駆動信号S1の周波数が低くなる。そこで、実測回数が理論回数よりも多い場合、第1設定値を帯電用基準値よりも大きくする。これにより、モーター駆動信号S1にあわせて、帯電用信号S3の周波数を低く(周期を長く)することができる。実測回数が理論回数よりも多い場合、第2設定値を現像用基準値よりも大きくする。これにより、モーター駆動信号S1、帯電用信号S3にあわせて、現像用信号S4の周波数を低くすることができる。
【0077】
実測回数が理論回数よりも多い場合、第2クロック信号CLK2の周波数が理想(設計)よりも高い方向にずれている可能性もある。第2クロック信号CLK2の周波数が高い場合、実測回数が理論回数よりも多くなる。第2クロック信号CLK2の周波数が理想よりも高くても、帯電用信号S3の周波数が上昇しすぎないようにする必要がある。実測回数が理論回数よりも多い場合、第1設定値を帯電用基準値よりも大きくする。第2クロック信号CLK2の周波数が理想よりも高くても、第1設定値が自動的に増やされる。帯電用信号S3の周波数の上昇を抑えることができる。
【0078】
また、第2クロック信号CLK2の周波数が理想よりも高くても、現像用信号S4の周波数が上昇しすぎないようにする必要がある。実測回数が理論回数よりも多い場合、第2設定値を現像用基準値よりも大きくする。これにより、第2クロック信号CLK2の周波数が理想よりも高くても、第2設定値が自動的に増やされる。現像用信号S4の周波数の上昇を抑えることができる。
【0079】
3.実測回数<理論回数の場合(実測回数の方が少ない場合)
実測回数が理論回数よりも少ない場合、第1クロック信号CLK1と第2クロック信号CLK2の何れか一方、又は、両方で周波数のずれがある。第1設定値と第2設定値を調整する必要がある。
【0080】
この場合、設定回路22は、帯電用基準値よりも小さい値を第1設定値とする。設定回路22は、基準よりも小さい第1設定値を第1印加用信号生成回路23に設定する。設定回路22は、差の絶対値が大きいほど、第1設定値を小さくする。また、設定回路22は、現像用基準値よりも小さい値を第2設定値とする。設定回路22は、基準よりも小さい第2設定値を第2印加用信号生成回路24に設定する。設定回路22は、差の絶対値が大きいほど、第2設定値を小さくする。
【0081】
実測回数が理論回数よりも少ない場合、第1クロック信号CLK1の周波数が理想よりも高い方向にずれている可能性がある。第1クロック信号CLK1の周波数が高い場合、調整用信号S2の周波数が高くなる。例えば、調整用信号S2の理想的な周波数が2kHzであるとする。調整用信号S2は、2kHzを超える。調整用信号S2の1周期が理想よりも短くなる。調整用信号S2の1周期が短いほど、実測回数が減る。
【0082】
第1クロック信号CLK1の周波数が理想よりも高い場合、モーター駆動信号S1の周波数が高くなり、周期が短くなる。実測回数が理論回数よりも少ない場合、設定回路22は、第1設定値を帯電用基準値よりも小さくする。これにより、モーター駆動信号S1にあわせて、帯電用信号S3の周波数を高く(周期を短く)することができる。実測回数が理論回数よりも少ない場合、設定回路22は第2設定値を現像用基準値よりも小さくする。これにより、モーター駆動信号S1、帯電用信号S3にあわせて、現像用信号S4の周波数を高く(周期を短く)することができる。
【0083】
実測回数が理論回数よりも少ない場合、第2クロック信号CLK2の周波数が理想よりも低い方向にずれている可能性もある。第2クロック信号CLK2の周波数が低い場合、実測回数が理論回数よりも少なくなる。
【0084】
第2クロック信号CLK2の周波数が理想より低くても、帯電用信号S3の周波数が低下しすぎないようにする必要がある。実測回数が理論回数よりも少ない場合、設定回路22は第1設定値を帯電用基準値よりも小さくする。第1設定値が自動的に減らされる。帯電用信号S3の周波数の低下を抑えることができる。また、現像用信号S4も周波数が低下しすぎないようにする必要がある。実測回数が理論回数よりも少ない場合、設定回路22は第2設定値を現像用基準値よりも小さくする。これにより、第2設定値が自動的に減らされる。現像用信号S4の周波数の低下を抑えることができる。
【0085】
このように、第2クロック信号CLK2の周波数がずれても、帯電用信号S3と現像用信号S4の周波数を維持することができる。また、第1クロック信号CLK1の周波数のずれに伴ってモーター駆動信号S1の周波数がずれても、同じ方向に帯電用信号S3と現像用信号S4の周波数をずらすことができる。
【0086】
次に、具体的な設定値の求め方について説明する。設定回路22は、第2クロック信号CLK2の周波数の推測値を求める。具体的に、設定回路22は、実測回数と調整用信号S2の理想的な周波数(ずれがないときの周波数)を乗じた値を推測値として求める。例えば、調整用信号S2の理想的な周波数が2kHzとする。実測回数が10040とする。2000×10040の演算に基づき、設定回路22は、第2クロック信号CLK2の周波数の推測値として、20.08MHzを求める。
【0087】
そして、設定回路22は、求めた推測値に基づき、第1設定値を定める。具体的に、設定回路22は、推測値を帯電用信号S3の理想的な周波数(設計上の周波数、ずれがないときの周波数)で除した値を第1設定値とする。例えば、帯電用信号S3の理想的な周波数が4kHzとする。求めた推測値が20.08MHzとする。この場合、設定回路22は、20,080,000÷4000=5020を第1設定値とする。
【0088】
また、設定回路22は、求めた推測値に基づき、第2設定値を定める。具体的に、設定回路22は、推測値を現像用信号S4の理想的な周波数(設計上の周波数、ずれがないときの周波数)で除した値を第2設定値とする。例えば、現像用信号S4の理想的な周波数が8kHzとする。求めた推測値が20.08MHzとする。この場合、設定回路22は、20,080,000÷8000=2510を第2設定値とする。
【0089】
このようにして、実施形態に係る画像形成装置(プリンター100)は、第1制御回路1、第2制御回路2、高圧基板3、及び、ポリゴンモーター88を含む。高圧基板3は、第2制御回路2が出力する印加用信号が入力される。高圧基板3は、入力された印加用信号の周波数の電圧をトナー像形成用部材に印加する。第1制御回路1は、第1発振部10、駆動信号生成回路11、及び、調整用信号生成回路12を含む。第1発振部10は、第1振動子13を用いて第1クロック信号CLK1を生成する。駆動信号生成回路11は、入力された第1クロック信号CLK1の数をカウントする。駆動信号生成回路11は、モーター駆動信号S1を生成する。駆動信号生成回路11は、第1クロック信号CLK1を第1回数だけカウントする間隔をモーター駆動信号S1の1周期とする。駆動信号生成回路11は、モーター駆動信号S1をポリゴンモーター88に入力することにより、ポリゴンモーター88を回転させる。調整用信号生成回路12は、入力された第1クロック信号CLK1の数をカウントする。調整用信号生成回路12は、調整用信号S2を生成する。調整用信号生成回路12は、第1クロック信号CLK1を第2回数だけカウントする間隔を調整用信号S2の1周期とする。第2制御回路2は、第2発振部20、調整用信号キャプチャー回路21、印加用信号生成回路、及び、設定回路22を含む。第2発振部20は、第2振動子25を用いて第2クロック信号CLK2を生成する。調整用信号キャプチャー回路21は、入力された調整用信号S2の1周期中の第2クロック信号CLK2のカウント値である実測回数をカウントする。印加用信号生成回路は、入力された第2クロック信号CLK2の数をカウントする。印加用信号生成回路は、第2クロック信号CLK2を設定値だけカウントする間隔を印加用信号の1周期とする。設定回路22は、実測回数と予め定められた実測回数の理論回数とを比較する。設定回路22は、実測回数と理論回数との差に応じて設定値を設定する。理論回数は、第2クロック信号CLK2の理想的な周波数を調整用信号S2の理想的な周波数で除して得られる数である。
【0090】
第1クロック信号CLK1に基づく調整用信号S2を第2クロック信号CLK2でカウントすることができる。実測回数(第2クロック信号CLK2に基づくカウント値)と理論回数とのずれに基づき、印加用信号をどのように調整すべきかを知ることができる。認識したずれに基づき、設定値を調整することができる。周波数干渉が生じないように、印加用信号の周波数を調整することができる。周波数干渉による画質低下が生じない方向に、印加用信号の周波数を自動的に調整することができる。
【0091】
実測回数が理論回数と同じとき、設定回路22は、設定値を予め定められた基準値に設定する。実測回数が理論回数よりも多い場合、設定回路22は、設定値を基準値よりも大きい値に設定する。実測回数と理論回数の差の絶対値が大きいほど、設定回路22は、設定値を大きくする。第2クロック信号CLK2の実際の周波数が、第2クロック信号CLK2の理想的な周波数(設計上の周波数)よりも高いと、実測回数が理論回数よりも多くなる。この場合、設定値が大きくなるように調整される。この調整により、印加用信号の周波数の上昇を抑えることができる。
【0092】
また、第1クロック信号CLK1の実際の周波数が理想的な周波数(設計上の周波数)よりも低くなると、調整用信号S2の周波数が低下し、周期が長くなる。この場合も、実測回数が理論回数よりも多くなる。この場合、モーター駆動信号S1の周波数も低下傾向を示す。一方で基準よりも大きい設定値が設定される。モーター駆動信号S1の周波数低下にあわせて、印加用信号の周波数を低くすることができる。
【0093】
実測回数が理論回数よりも少ない場合、設定回路22は、設定値を基準値よりも小さい値に設定する。設定回路22は、実測回数と理論回数の差の絶対値が大きいほど、設定値を小さくする。第2クロック信号CLK2の実際の周波数が、第2クロック信号CLK2の理想的な周波数(設計上の周波数)よりも低いと、実測回数が理論回数よりも少なくなる。この場合、設定値が小さくなるように調整される。この調整により、印加用信号の周波数低下を防ぐことができる。
【0094】
また、第1クロック信号CLK1の実際の周波数が理想的な周波数(設計上の周波数)よりも高くなると、調整用信号S2の周期は短くなる。この場合も、実測回数が理論回数よりも少なくなる。この場合、モーター駆動信号S1の周期は短くなる。設定値は小さい値に設定される。モーター駆動信号S1の高速化にあわせて、印加用信号の周波数を高めることができる。
【0095】
設定回路22は、実測回数と理想的な調整用信号S2の周波数を乗ずることにより、第2クロック信号CLK2の周波数の推測値を求める。設定回路22は、求めた推測値を理想的な印加用信号の周波数で除した値を設定値とする。設定値を計算で求めることができる。周波数干渉が生じないように印加用信号の周波数を設定するための値(設定値)を容易に定めることができる。
【0096】
第1発振部10は、発振回路とPLL回路15を含む。PLL回路15は発振回路が出力する信号を逓倍した信号を第1クロック信号CLK1として出力する。PLL回路15を用いて、第1クロック信号CLK1を生成することができる。第1クロック信号CLK1の実際の周波数にあわせて、画質低下が生じないように、印加用信号の周波数を自動的に調整することができる。
【0097】
トナー像形成用部材は、感光体ドラム80を帯電させるための部材である。帯電用電圧V1の周波数と、モーター駆動信号S1の周波数との関係に起因する画質低下(周波数干渉)の発生を防ぐことができる。
【0098】
トナー像形成用部材は、感光体ドラム80にトナーを供給して、静電潜像を現像する現像ローラー83aである。現像用電圧V2の周波数と、モーター駆動信号S1の周波数との関係に起因する画質低下(周波数干渉)の発生を防ぐことができる。
【0099】
本発明の実施形態を説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明は、トナーを用いて印刷する画像形成装置に使用可能である。
【符号の説明】
【0101】
100 プリンター(画像形成装置) 1 第1制御回路
10 第1発振部 11 駆動信号生成回路
12 調整用信号生成回路 13 第1振動子
14 第1発振回路 15 PLL回路
2 第2制御回路 20 第2発振部
21 調整用信号キャプチャー回路 22 設定回路
23 第1印加用信号生成回路 24 第2印加用信号生成回路
25 第2振動子 3 高圧基板
82a 帯電用部材(トナー像形成用部材)
83a 現像ローラー(トナー像形成用部材)
88 ポリゴンモーター S1 モーター駆動信号
S2 調整用信号 S3 帯電用信号(印加用信号)
S4 現像用信号(印加用信号) CLK1 第1クロック信号
CLK2 第2クロック信号