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特許7392478拡大倍率算出装置、長尺撮影システム、プログラム及び拡大倍率算出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】拡大倍率算出装置、長尺撮影システム、プログラム及び拡大倍率算出方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20060101AFI20231129BHJP
【FI】
A61B6/00 350A
A61B6/00 300D
A61B6/00 300X
A61B6/00 360B
A61B6/00 350Z
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020002510
(22)【出願日】2020-01-10
(65)【公開番号】P2021108935
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2022-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 厚司
【審査官】蔵田 真彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-060544(JP,A)
【文献】特開2009-240656(JP,A)
【文献】特開2011-255054(JP,A)
【文献】特開2015-217109(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0057524(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0350925(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
幾何学的撮影条件がそれぞれ異なるとともに、被写体の注目部位が共通して写る画像重複領域をそれぞれ有する複数の放射線画像を取得する取得手段と、
前記取得手段が取得した複数の前記放射線画像における複数の前記画像重複領域に基づいて、前記被写体の注目部位の、実物に対する前記放射線画像の拡大倍率を算出する算出手段と、
前記算出手段が算出した前記拡大倍率に基づいて所定の出力を行う出力手段と、を備える拡大倍率算出装置。
【請求項2】
前記取得手段は、放射線源と、撮像面に受けた放射線に応じた前記放射線画像を生成する放射線検出器と、を備え、前記被写体を撮影可能な放射線撮影システムが、前記放射線源及び前記放射線検出器を、前記被写体の体軸の延長方向である体軸方向にそれぞれ移動させつつ前記被写体を繰り返し撮影することで生成した、長尺画像を得るのに必要な前記画像重複領域をそれぞれ有する複数の前記放射線画像を取得し、
前記算出手段は、前記画像重複領域の前記体軸方向の幅、前記放射線源が発する放射線が前記撮像面に照射される範囲である照射野の各撮影における放射線の焦点の高さ、及び放射線の焦点と前記放射線検出器の放射線検出領域との距離、放射線の照射角、及び前記放射線検出器の高さに基づいて前記拡大倍率を算出する請求項1に記載の拡大倍率算出装置。
【請求項3】
前記取得手段は、放射線源と、撮像面に受けた放射線に応じた前記放射線画像を生成する放射線検出器と、を備え、前記被写体を撮影可能な放射線撮影システムが、前記放射線源及び前記放射線検出器を、前記被写体の体軸の延長方向である体軸方向にそれぞれ移動させつつ前記被写体を繰り返し撮影することで生成した、長尺画像を得るのに必要な前記画像重複領域をそれぞれ有する複数の前記放射線画像を取得し、
前記算出手段は、
仮の拡大倍率を推定し、
複数の前記放射線画像を、それぞれの光軸を中心に、前記仮の拡大倍率をもとに縮小し、前記画像重複領域内の一つ以上の点の位置を求め、
縮小した複数の前記放射線画像における、各点の位置のズレがなくなるように、前記仮の拡大倍率を変更して前記放射線画像の縮小及び前記点の位置の求めを繰り返し、
各点のズレがなくなったときの前記仮の拡大倍率を前記拡大倍率に決定する請求項1に記載の拡大倍率算出装置。
【請求項4】
前記算出手段は、予め設定した値、衝立の位置の計測値、及び前記被写体の位置の計測値の少なくともいずれかに基づいて最初の前記仮の拡大倍率を推定する請求項3に記載の拡大倍率算出装置。
【請求項5】
前記算出手段は、算出に用いる前記画像重複領域に、人体モデルにおける、前記光軸方向に関し前記注目部位と同一距離の平面上にあると思われる部位を用いる請求項3又は請求項4に記載の拡大倍率算出装置。
【請求項6】
前記出力手段は、前記所定の出力として、前記放射線画像を移動させ、結合画像を表示する請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の拡大倍率算出装置。
【請求項7】
前記出力手段は、前記所定の出力として、前記複数の放射線画像のうちの少なくとも一つの前記拡大倍率を変化させ、他の放射線画像の拡大倍率を当該変化と同期させ、前記複数の放射線画像の結合画像を表示する請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の拡大倍率算出装置。
【請求項8】
前記出力手段は、前記算出手段が処理を実行している途中の前記点の位置を表示することが可能である請求項3から請求項5のいずれか一項に記載の拡大倍率算出装置。
【請求項9】
ユーザーが操作可能な操作部を備え、
前記操作部になされた操作に基づいて前記算出手段が実行する処理を途中で停止する算出停止手段を備える請求項8に記載の拡大倍率算出装置。
【請求項10】
前記算出手段は、
前記体軸方向の幅、前記照射野の各撮影における前記体軸方向の幅、前記放射線源の移動量、及び放射線の焦点と前記放射線検出器の放射線検出領域との距離に基づいて前記拡大倍率を算出する第一機能と、
の拡大倍率を推定し、複数の前記放射線画像を、それぞれの光軸を中心に、前記仮の拡大倍率をもとに縮小し、画像重複領域内の一つ以上の点の位置を求め、縮小した複数の前記放射線画像における、各点の位置のズレがなくなるように、前記仮の拡大倍率を変更して前記放射線画像の縮小及び前記点の位置の求めを繰り返し、各点のズレがなくなったときの前記仮の拡大倍率を前記拡大倍率に決定する第二機能と、を有し、
前記第一機能及び前記第二機能のうちの一方の機能を用いて前記拡大倍率を算出することが困難である場合に他方の機能を用いて前記拡大倍率を算出する請求項2に記載の拡大倍率算出装置。
【請求項11】
前記取得手段が取得した複数の前記放射線画像に画像処理による類似性判断を行って、複数の前記放射線画像における前記画像重複領域をそれぞれ決定する領域決定手段を備える請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の拡大倍率算出装置。
【請求項12】
ユーザーが操作可能な操作部と、
前記操作部になされた操作に基づいて複数の前記放射線画像における前記画像重複領域をそれぞれ決定する領域決定手段と、を備える請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の拡大倍率算出装置。
【請求項13】
ユーザーが操作可能な操作部と、
前記操作部になされた操作に基づいて一枚目の前記放射線画像における前記画像重複領域を決定し、決定した一枚目の前記放射線画像における前記画像重複領域に基づいて、二枚目の前記放射線画像における前記画像重複領域の位置を決定する領域決定手段と、を備える請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の拡大倍率算出装置。
【請求項14】
放射線源と、
前記放射線源が発する放射線が撮像面に照射される範囲である照射野の幅を変更する絞りと、
前記放射線源及び前記絞りを被写体の体軸の延長方向である体軸方向に移動させる第一移動機構と、
前記撮像面に受けた放射線に応じた放射線画像を生成する放射線検出器と、
前記放射線検出器を前記体軸方向に移動させる第二移動機構と、
前記放射線源及び前記放射線検出器が、前記体軸方向にそれぞれ移動しつつ前記被写体を繰り返し撮影して生成した、画像重複領域どうしを重ねて繋ぎ合わせて長尺画像を生成する長尺画像生成手段と、
前記放射線検出器が生成した複数の前記放射線画像における複数の前記画像重複領域に基づいて、前記被写体の注目部位の、実物に対する前記放射線画像の拡大倍率を算出する算出手段と、
前記算出手段が算出した前記拡大倍率に基づいて所定の出力を行う出力手段と、を備える長尺撮影システム。
【請求項15】
前記放射線源が発する放射線が前記撮像面に照射される範囲である照射野が一の撮影と
他の撮影とで重なる領域の幅が80mm以下となるように、前記第一移動機構及び前記第二移動機構の動作を制御する動作制御手段を備える請求項14に記載の長尺撮影システム。
【請求項16】
前記動作制御手段は、一の撮影における前記照射野の前記体軸方向の幅が、他の撮影における前記照射野の前記体軸方向の幅と異なるように、前記第一移動機構及び前記第二移動機構の動作を制御することが可能である請求項15に記載の長尺撮影システム。
【請求項17】
コンピューターに、
幾何学的撮影条件がそれぞれ異なるとともに、被写体の注目部位が共通して写る画像重複領域をそれぞれ有する複数の放射線画像を取得する取得処理と、
前記取得処理において取得した複数の前記放射線画像における複数の前記画像重複領域に基づいて、前記被写体の注目部位の、実物に対する前記放射線画像の拡大倍率を算出する算出処理と、
前記算出処理において算出した前記拡大倍率に基づいて所定の出力を行う出力処理と、を実行させるプログラム。
【請求項18】
幾何学的撮影条件がそれぞれ異なるとともに、被写体の注目部位が共通して写る画像重複領域をそれぞれ有する複数の放射線画像を生成する撮影工程と、
前記撮影工程において生成した複数の前記放射線画像における複数の前記画像重複領域に基づいて、前記被写体の注目部位の、実物に対する前記放射線画像の拡大倍率を算出する算出工程と、
前記算出工程において算出した前記拡大倍率に基づいて所定の出力を行う出力工程と、を含む拡大倍率算出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、拡大倍率算出装置、長尺撮影システム、プログラム及び拡大倍率算出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線検出器及び放射線源(管球)を、被検者の体軸の延長方向である体軸方向にそれぞれ移動させつつ被検者を繰り返し撮影することで複数の放射線画像を生成し、それらを繋ぎ合わせることにより、一の放射線検出器のサイズよりも大きな領域の放射線画像(長尺画像)を生成する長尺撮影(平行法)という撮影法がある。
この長尺撮影で得られる長尺画像は、整形外科分野の診断において、例えば注目部位(例えば骨)の大きさや注目部位間の距離を測定するのに用いられる。
【0003】
ところで、長尺撮影を含む放射線画像の撮影を行う際、放射線検出器の撮像面は患者の注目部位よりも放射線源から離れることになる。また、撮影に使用される放射線(X線)は放射光であることが一般的である。このため、放射線画像における注目部位は、実際の注目部位よりも拡大されて写ることになる。
放射線画像から注目部位の大きさや注目部位間の距離を正確に測定するためには、被写体に対する放射線画像の拡大倍率を知る必要がある。そこで、従来、以下のような方法を用いて拡大倍率を算出してきた。
・放射線源と撮像面との距離SIDを既知の値とし、放射線源と被検者の注目部位との距離SODを計測し、拡大倍率(SID/SOD)を算出する。
・被検者に接する衝立の表面に指標(スケール等)を配置し、放射線画像に写った指標に基づいて拡大倍率を算出する。
しかしながら、こうした従来の拡大倍率の算出方法では、SODを正確に測定することが困難であった。また、注目部位の位置と指標の位置が一致しないと拡大倍率を正確にすることができないが、これらを一致させることも困難であった。
【0004】
そこで、近年、注目部位の移動量から拡大倍率を算出する技術が提案されている。
例えば、特許文献1には、第1の状態で得た試料のX線透視像と、第1の状態からステージをX線光軸方向に既知量移動させた第2の状態で得た試料のX線透視像の各寸法情報、及びステージの既知の移動量とから、第1の状態におけるX線源と試料との距離SODを算出し、第1の状態で得たX線透視像の寸法情報と、当該第1の状態からX線検出器をX線光軸方向に既知量移動させた第3の状態で得た試料のX線透視像の寸法情報、及びX線検出器の既知の移動量とから、第1の状態におけるX線源とX線検出器との距離SIDを算出し、SIDとSODとから第1の状態における透視倍率を算出するX線撮影装置について記載されている。
また、特許文献2には、表示器に表示されているX線透視画像上における注目部位を指定し、指定された部位の表示器の画面上での移動量を算出し、試料テーブルをX線発生装置とX線検出器とを結ぶ線に対して直交する方向に移動させたときの当該試料テーブルの移動量と、そのときの上記注目の画面上での移動量を用いて当該注目部位近傍の撮像倍率を算出するX線透視装置について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-064906号公報
【文献】特開2002-243663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1,2に記載されたような従来の技術では、拡大倍率を算出するための透視像を得るのに、試料を移動させる必要がなる。このため、装置に試料を移動させる機構を設ける必要が生じたり、試料の移動の分だけ撮影時の作業が増加してしまったりする。
特に、試料が人(被写体)である場合、被写体を移動させることになるため、被写体が装置にぶつかったり、装置に挟まれたりする危険を伴うことになる。
また、従来の技術では、何処が注目部位なのかを自動的に判別することができなかった(ユーザーが指定するしかなかった)。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、装置を複雑化したり、撮影時の工程を増やしたりすることなく、放射線画像に写る被写体の注目部位の、実物に対する拡大倍率を正確に算出できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る拡大倍率算出装置は、
幾何学的撮影条件がそれぞれ異なるとともに、被写体の注目部位が共通して写る画像重複領域をそれぞれ有する複数の放射線画像を取得する取得手段と、
前記取得手段が取得した複数の前記放射線画像における複数の前記画像重複領域に基づいて、前記被写体の注目部位の、実物に対する前記放射線画像の拡大倍率を算出する算出手段と、
前記算出手段が算出した前記拡大倍率に基づいて所定の出力を行う出力手段と、を備える。
【0009】
また、本発明に係る長尺撮影システムは、
放射線源と、
前記放射線源が発する放射線が撮像面に照射される範囲である照射野の幅を変更する絞りと、
前記放射線源及び前記絞りを被写体の体軸の延長方向である体軸方向に移動させる第一移動機構と、
前記撮像面に受けた放射線に応じた放射線画像を生成する放射線検出器と、
前記放射線検出器を前記体軸方向に移動させる第二移動機構と、
前記放射線源及び前記放射線検出器が、前記体軸方向にそれぞれ移動しつつ前記被写体を繰り返し撮影して生成した、画像重複領域どうしを重ねて繋ぎ合わせて長尺画像を生成する長尺画像生成手段と、
前記放射線検出器が生成した複数の前記放射線画像における複数の前記画像重複領域に基づいて、前記被写体の注目部位の、実物に対する前記放射線画像の拡大倍率を算出する算出手段と、
前記算出手段が算出した前記拡大倍率に基づいて所定の出力を行う出力手段と、を備える。
【0010】
また、本発明に係るプログラムは、
コンピューターに、
幾何学的撮影条件がそれぞれ異なるとともに、被写体の注目部位が共通して写る画像重複領域をそれぞれ有する複数の放射線画像を取得する取得処理と、
前記取得処理において取得した複数の前記放射線画像における複数の前記画像重複領域に基づいて、前記被写体の注目部位の、実物に対する前記放射線画像の拡大倍率を算出する算出処理と、
前記算出処理において算出した前記拡大倍率に基づいて所定の出力を行う出力処理と、を実行させる。
【0011】
また、本発明に係る拡大倍率算出方法は、
幾何学的撮影条件がそれぞれ異なるとともに、被写体の注目部位が共通して写る画像重複領域をそれぞれ有する複数の放射線画像を生成する撮影工程と、
前記撮影工程において生成した複数の前記放射線画像における複数の前記画像重複領域に基づいて、前記被写体の注目部位の、実物に対する前記放射線画像の拡大倍率を算出する算出工程と、
前記算出工程において算出した前記拡大倍率に基づいて所定の出力を行う出力工程と、を含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、装置を複雑化したり、撮影時の工程を増やしたりすることなく、放射線画像に写る被写体の注目部位の、実物に対する拡大倍率を正確に算出できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第一,第二実施形態に係る長尺撮影システムの側面図である。
図2】第一,第二実施形態に係る他の長尺撮影システムの側面図である。
図3図1,2の長尺撮影システムが備える拡大倍率算出装置(コンソール)を表すブロック図である。
図4図3の拡大倍率算出装置が実行する拡大倍率算出処理の流れを示すフローチャートである。
図5図1の長尺撮影システムを用いて長尺撮影を行う際の各装置、放射線及び被写体の注目部位の位置関係を示す図である。
図6】第二実施形態に係る拡大倍率算出装置が図4の拡大倍率算出処理において実行する算出処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。ただし、本発明の範囲は、以下の実施形態や図面に記載されたものに限定されるものではない。
【0015】
<1.第一実施形態>
まず、本発明の第一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0016】
〔1-1.長尺撮影システム(1)〕
初めに、本実施形態に係る長尺撮影システムの概略構成について説明する。
図1は本実施形態に係る長尺撮影システム100の側面図、図2は本実施形態に係る他の長尺撮影システム100Aの側面図である。
【0017】
長尺撮影システム100は、図1に示すように、放射線撮影システム110と、コンソール120と、を備えている。
放射線撮影システム110とコンソール120とは、通信ネットワークNWを介して互いに通信可能となっている。
なお、長尺撮影システム100は、図示しない病院情報システム(Hospital Information System:HIS)や、放射線科情報システム(Radiology Information System:RIS)、画像保存通信システム(Picture Archiving and Communication System:PACS)、画像解析装置等と接続されていてもよい。
【0018】
(1-1-1.放射線撮影システム)
放射線撮影システム110は、放射線出力装置(以下、出力装置1)と、放射線検出器(以下、検出器2)と、撮影台3と、を備えている。
各装置1~3は、通信ネットワークNWを介して互いに通信可能となっている。
【0019】
出力装置1は、ジェネレーター11と、放射線源12(管球)と、絞り13と、第一移動機構14と、第三移動機構15と、を備えている。
そして、出力装置1は、撮影する放射線画像(撮影画像(長尺画像を含む)・連続撮影画像)に応じた態様で放射線R(例えばX線)を発生させるようになっている。
【0020】
ジェネレーター11は、撮影指示スイッチが操作されたことに基づいて、予め設定された撮影条件(例えば撮影部位、撮影方向、体格等の被写体Sに関する条件や、管電圧や管電流、照射時間、電流時間積(mAs値)等の放射線の照射に関する条件)に応じた負荷を放射線源12に与えるようになっている。
また、ジェネレーター11は、図示しない撮影指示スイッチを備えている。
【0021】
放射線源12は、ジェネレーター11からの負荷に応じた線量の放射線Rを発生させるようになっている。
本実施形態に係る放射線源12は、絞り13を介して放射線Rを水平方向に照射するようになっている。
また、放射線源12は、鉛直方向及び放射線の照射方向と直交する方向(図1の紙面と直交する方向)に延びる回転軸を中心に回転させることが可能となっている。
このため、放射線源12は、放射線Rを、例えば鉛直下方に照射することが可能となっている。
【0022】
絞り13は、コンソール120からの制御に基づいて自身が形成する矩形の開口の体軸方向の幅を制御することにより、放射線源12が発する放射線が後述する撮像面22に照射される範囲である照射野の体軸方向の幅を変更することが可能に構成されている。
この「体軸方向」とは、被写体Sの体軸の延長方向を指す。
図1に示した長尺撮影システム100は、立位の被写体Sを撮影するものである。このため、図1に示した長尺撮影システム100においては、鉛直方向(図1における上下方向)が体軸方向となる。
なお、絞り13は、開口の体軸方向と直交する方向の幅を変更することが可能に構成されていてもよい。
また、絞り13は、自身が形成する開口の少なくとも体軸方向の幅を検知する幅センサー13aを備えている。
また、絞り13は、放射線Rの照射方向と同じ方向に、放射線Rの照射野と等しい範囲で可視光を照射することで、ユーザーに照射野の体軸方向の幅を認識させることが可能となっている。
【0023】
第一移動機構14は、放射線源12及び絞り13を体軸方向に移動させることが可能に構成されている。
なお、第一移動機構14は、放射線源12及び絞り13の移動を、ユーザーの操作によって手動で行うようになっていてもよいし、コンソール120からの制御に基づいて自動で行うようになっていてもよい。
また、第一移動機構14は、放射線源12の位置(移動の起点からの距離、高さ)を検知する第一位置センサー14aを備えている。
【0024】
第三移動機構15は、放射線源12及び絞り13を検出器2の放射線入射面21と直交する方向(水平方向)に移動させることが可能に構成されている。
なお、第三移動機構15は、放射線源12及び絞り13の移動を、ユーザーの操作によって手動で行うようになっていてもよいし、コンソール120からの制御に基づいて自動で行うようになっていてもよい。
また、第三移動機構15は、放射線源12の位置(移動の起点からの距離)を検知する第三位置センサー15aを備えている。
【0025】
検出器2は、図示しないセンサー部と、走査駆動部と、読み出し部と、制御部と、出力部と、を備えている。
【0026】
センサー部は、図示しない基板と、複数の半導体素子と、図示しない複数の走査線と、複数の信号線と、複数のスイッチ素子と、を備えている。
複数の走査線は、基板の表面に、所定間隔を空けて互いに平行に延びるように設けられている。
複数の信号線は、基板の表面に、走査線の延長方向と直交する方向に、所定間隔を空けて互いに平行に延びるように設けられている。
すなわち、複数の走査線及び複数の信号線は、格子状をなしている。
【0027】
複数の半導体素子は、基板の表面における複数の走査線及び複数の信号線によって仕切られた複数の矩形領域にそれぞれ設けられている。
上述したように、複数の走査線及び複数の信号線は、格子状をなしているため、複数の半導体素子は、行列状に配列されることになる。
各半導体素子は、受けた放射線の線量に応じた電荷を発生させるようになっている。
複数のスイッチ素子は、各半導体素子の近傍に設けられている。
各スイッチ素子は、走査線に印加された電圧に応じて、半導体素子から信号線へ電荷を放出可能なオン状態、又は半導体素子から信号線へ電荷を放出できないオフ状態に切り替割ることが可能となっている。
以下、この基板における半導体素子が形成された面を撮像面22と称し、撮像面22における半導体素子が配列された領域を放射線検出領域22aと称する。
【0028】
走査駆動部は、各スイッチ素子のオン/オフを切り替えることが可能に構成されている。
読み出し部は、各画素から放出された電荷の量を信号値として読み出すように構成されている。
制御部は、検出器2の各部を制御し、読み出し部が読み出した複数の信号値から放射線画像の画像データを生成するように構成されている。
出力部は、生成した画像データ等を他の装置(コンソール120等)へ出力することが可能に構成されている。
このように構成された検出器2は、出力装置1から放射線が照射されるタイミングと同期して、撮像面22(放射線検出領域22a)に受けた放射線に応じた放射線画像を生成するようになっている。
【0029】
撮影台3は、支柱31と、第二移動機構32と、装填部33(ブッキー)と、衝立34と、を備えている。
【0030】
支柱31は、鉛直方向に延びるように設けられている。
なお、長尺撮影システム100が撮影室内に設置される場合には、撮影室の壁が支柱31の代わりであってもよい。
第二移動機構32は、支柱31に設けられ、装填部33を体軸方向に移動させることが可能に構成されている。
なお、第二移動機構32は、装填部33の移動を、ユーザーの操作によって手動で行うようになっていてもよいし、コンソール120からの制御に基づいて自動で行うようになっていてもよい。
また、第二移動機構32は、検出器2の位置(移動の起点からの距離、高さ)を検知する第二位置センサー32aを備えている。
また、第二移動機構32は、検出器2を、放射線入射面21と直交する方向や、図1の紙面と直交する方向に移動させることが可能に構成されていてもよい。
装填部33は、検出器2を、放射線入射面21が放射線源12の方を向くように保持する。すなわち、上記第二移動機構32は、装填部33を介して検出器2を体軸方向に移動させるようになっている。
衝立34は、放射線源12と検出器2との間にある被写体Sの立ち位置に鉛直方向に延びるように且つ検出器2の放射線入射面21と平行に広がるように設けられている。
【0031】
(1-1-2.コンソール)
コンソール120は、拡大倍率算出装置をなすもので、PCや専用の装置で構成されている。
コンソール120は、放射線撮影システム110が生成した複数の放射線画像をつなぎ合わせて長尺画像を生成することが可能となっている。
このコンソール120の詳細については後述する。
【0032】
なお、図1には、拡大倍率算出装置を兼ねているコンソール120を例示したが、拡大倍率算出装置はコンソールから独立した別の装置であってもよい。
また、図1には、コンソール120を一つ備える長尺撮影システム100を例示したが、長尺撮影システム100は、各装置を制御するためのコンソールと、検出器2が生成した放射線画像に各種処理(長尺画像の生成を含む)を施すためのコンソールと、を備えたものであってもよい。
【0033】
(1-1-3.動作)
このように構成された本実施形態に係る長尺撮影システム100は、長尺撮影を行うことが可能となっている。
具体的には、放射線源12及び検出器2を、体軸方向にそれぞれ移動させつつ被写体Sを繰り返し撮影することにより、長尺画像を得るのに必要な画像重複領域をそれぞれ有する複数の放射線画像を生成する。
そして、コンソール120が複数の放射線画像から長尺画像を生成する。
【0034】
〔1-2.長尺撮影システム(2)〕
他の長尺撮影システム100Aは、撮影台3Aの構成が上記長尺撮影システム100とは異なっている。
具体的には、他の長尺撮影システム100Aにおける撮影台3Aは、図2に示すように、支持部35と、天板36と、第四移動機構37と、装填部38と、を備えている。
【0035】
支持部35は、床に載置されている。
天板36は、支持部35の上に水平に広がるように配置されている。
第四移動機構37は、支持部35の中(天板36の下)に設けられ、装填部38を体軸方向に移動させることが可能に構成されている。
図2に示した他の長尺撮影システム100Aは、臥位の被写体Sを撮影するものである。このため、図2に示した長尺撮影システム100においては、水平方向(図2における左右方向)が体軸方向となる。
なお、第四移動機構37は、装填部38の移動を、ユーザーの操作によって手動で行うようになっていてもよいし、コンソール120からの制御に基づいて自動で行うようになっていてもよい。
また、第四移動機構37は、検出器2の位置(移動の起点からの距離、高さ)を検知する第四位置センサー37aを備えている。
装填部38は、検出器2を、放射線入射面21が放射線源12の方を向くように保持する。すなわち、上記第四移動機構37は、装填部38を介して検出器2を体軸方向に移動させるようになっている。
【0036】
この撮影台3Aの構成の相違により、本実施形態に係る放射線源12は、絞り13を介して放射線Rを鉛直下方に照射するようになっている。
【0037】
また、第一移動機構14と第三移動機構15は、役割が逆になっている。
すなわち、第一移動機構14は、放射線源12及び絞り13を検出器2の放射線入射面21と直交する方向(鉛直方向)に移動させることが可能に構成されている。
また、第三移動機構15は、放射線源12及び絞り13を体軸方向に移動させることが可能に構成されている。
【0038】
〔1-3.コンソール〕
次に、上記長尺撮影システム100,100Aが備えるコンソール120の詳細について説明する。
図3はコンソール120を表すブロック図、図4はコンソール120が実行する拡大倍率算出処理の流れを示すフローチャート、図5は長尺撮影システム100,100Aを用いて長尺撮影を行う際の各装置、放射線及び被写体の注目部位の位置関係を示す図である。
なお、図3,4における括弧書きの符号は、後述する第二実施形態のものである。
【0039】
(1-3-1.構成)
コンソール120は、図3に示すように、制御部121と、通信部122と、記憶部123と、表示部124と、操作部125と、を備えている。
各部121~125は、バス等で電気的に接続されている。
【0040】
制御部121は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)等により構成されている。
そして、制御部121のCPUは、記憶部123に記憶されている各種プログラムを読出してRAM内に展開し、展開されたプログラムに従って各種処理を実行し、コンソール120各部の動作を集中制御するようになっている。
【0041】
通信部122は、通信モジュール等で構成されている。
そして、通信部122は、通信ネットワークNW(LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、インターネット等)を介して接続された他の装置等との間で各種信号や各種データを有線又は無線で送受信するようになっている。
【0042】
記憶部123は、不揮発性の半動態メモリーやハードディスク等により構成されている。
また、記憶部123は、制御部121が実行する各種プログラムやプログラムの実行に必要なパラメーター等を記憶している。
なお、記憶部123は、放射線画像(長尺画像を含む)の画像データを保存できるようになっていてもよい。
【0043】
表示部124は、LCD(Liquid Crystal Display)やCRT(Cathode Ray Tube)等の画像を表示するモニターで構成されている。
そして、表示部124は、制御部121から入力される制御信号に基づいて、各種画像等を表示するようになっている。
なお、上述したように、コンソール120が、各装置を制御するためのコンソールと、検出器2が生成した放射線画像に各種処理を施すためのコンソールに分かれている場合には、各コンソールが表示部を備えていてもよいし、いずれか一方のコンソールが表示部を備え、この表示部が両方のコンソールの表示を行うようになっていてもよい。
【0044】
本実施形態に係る操作部125は、カーソルキーや、数字入力キー、各種機能キー等を備えたキーボードや、マウス等のポインティングデバイス、表示部124の表面に積層されるタッチパネル等によってユーザーが操作可能に構成されている。
そして、操作部125は、ユーザーによってなされた操作に応じた制御信号を制御部121へ出力するようになっている。
なお、上述したように、コンソール120が、各装置を制御するためのコンソールと、検出器2が生成した放射線画像に各種処理を施すためのコンソールに分かれている場合には、各コンソールが操作部を備えていてもよいし、いずれか一方のコンソールが操作部を備え、この操作部で両方のコンソールの操作を行うようになっていてもよい。
【0045】
(1-3-2.動作)
このように構成されたコンソール120の制御部121は、ユーザーによる撮影モード(撮影する放射線画像の種類)の選択を受け付ける機能を有している。
具体的には、表示部124に撮影モードの一覧画面を表示し、操作部125によって表示部124に表示されているいずれかの撮影モードを選択できるようになっている。
【0046】
また、制御部121は、出力装置1の第一,第三位置センサー14a,15aから、放射線源12の高さ及び位置の情報を取得する機能を有している。
また、制御部121は、撮影台3の第二位置センサー32a又は撮影台3Aの第四位置センサー37aから、検出器2の高さの情報を取得する機能を有している。
また、制御部121は、絞り13の幅センサー13aから、絞り13の開口の少なくとも体軸方向の幅を取得する機能を有している。
また、制御部121は、絞り13の開口、放射線源12内の放射線の焦点Fと検出器2の放射線検出領域22aとの距離(以下、SID)に基づいて、放射線源12から放出された絞り13で絞られた放射線が、撮像面22と一致する平面上のどの範囲に照射されるかを算出する機能を有している。
【0047】
また、制御部121は、第一移動機構14の動作を制御して、放射線源12を任意の高さに移動させる機能を有している。
また、制御部121は、第三移動機構15の動作を制御して、放射線源12を任意の位置に移動させる機能を有している。
また、制御部121は、第二移動機構32の動作を制御して、検出器2を任意の高さに移動させる機能を有している。
また、制御部121は、絞り13の動作を制御して、絞り13の開口を任意の開き方に変更する機能を有している。
【0048】
また、制御部121は、長尺撮影を行う際に、照射野が一の撮影と他の撮影とで重なる領域の幅が80mm以下となるように、第一移動機構14及び第二移動機構32の動作を制御する機能を有している。
本実施形態に係る制御部121は、長尺撮影を行う際に、一の撮影における照射野の体軸方向の幅が、他の撮影における照射野の体軸方向の幅と異なるように、第一移動機構14及び第二移動機構32の動作を制御する機能を有している。
【0049】
制御部121は、このようにして検出器2の高さ、放射線源12の高さ、放射線源12の位置、絞り13の開口の動作を制御することにより動作制御手段をなす。
そして、放射線源12の高さ、放射線源12の位置、検出器2の高さ及び絞り13の開口の開き方がユーザーの所望する状態に制御された状態で、ユーザーが照射指示スイッチを操作し、放射線源12が放射線を発生させるとともに、検出器2が放射線画像を生成することにより、ユーザーは任意の位置の任意の領域の放射線画像を得ることができる。
【0050】
また、制御部121は、複数の放射線画像から長尺画像を生成する機能を有している。
この「長尺画像」とは、画像重複領域をそれぞれ有する複数の放射線画像の画像重複領域どうしを重ねて繋ぎ合わせたものである。
長尺画像を生成するためには、自動、手動いずれの方法で行う場合であっても、合成する放射線画像の両方に、被写体Sの注目部位Saが共通して写る領域が必要となる。この領域が画像重複領域である。
制御部121は、このようにして長尺画像を生成することにより長尺画像生成手段をなす。
また、画像重複領域を有する放射線画像を生成することは、拡大倍率算出方法における撮影工程に相当する。
【0051】
また、制御部121は、所定条件が成立したこと(例えば、操作部125に所定操作がなされたこと、他の装置から所定の制御信号を受信したこと、検出器2が放射線画像の生成を開始したこと等)に基づいて、図4に示す拡大倍率算出処理を実行する機能を有している。
この拡大倍率算出処理で、制御部121は、まず、取得処理を実行する(ステップS1)。
この取得処理で、制御部121は、複数の放射線画像を取得する。
複数の放射線画像は、幾何学的撮影条件がそれぞれ異なるとともに、被写体Sの注目部位Saが共通して写る画像重複領域をそれぞれ有するものとなっている。
本実施形態に係る制御部121は、放射線撮影システム110から、長尺画像を得るのに必要な画像重複領域をそれぞれ有する複数の放射線画像を取得するようになっている。
すなわち、本実施形態に係る幾何学的撮影条件は、放射線の焦点の高さ、SID、照射角、及び検出器2の高さとなっている。
【0052】
なお、幾何学的撮影条件は、焦点の高さ、SID、照射角の情報が有ると良く、さらに検出器2の高さがあると更に良い。また、焦点の高さと検出器2の高さの関係は既知である場合が多く、更にSIDや照射角も一定の場合が多い。このような場合は、焦点の高さだけで十分である。即ち、装置制御の内容によって、取得が必要な条件が異なる。
また、取得する放射線画像は、それぞれ共通する画像重複領域を有しているものであれば、長尺画像を得るためのものである必要はなく、例えばトモシンセシスに用いるための放射線画像であってもよい。
制御部121は、以上説明してきた取得処理を実行することにより取得手段をなす。
【0053】
複数の放射線画像を取得した後、本実施形態に係る制御部121は、領域決定処理を実行する(ステップS2)。
この領域決定処理で、制御部121は、複数の放射線画像における画像重複領域をそれぞれ決定する。
本実施形態に係る制御部121は、取得した複数の放射線画像に画像処理による類似性判断を行って、複数の放射線画像における画像重複領域をそれぞれ決定するようになっている。
【0054】
なお、制御部121は、操作部125になされた操作に基づいて複数の放射線画像における画像重複領域をそれぞれ決定するようになっていてもよいし、操作部125になされた操作に基づいて一枚目の放射線画像における画像重複領域を決定し、決定した一枚目の放射線画像における画像重複領域に基づいて、二枚目の放射線画像における画像重複領域の位置を決定するようになっていてもよい。
このようにすれば、注目部位を選択することができるため、被写体の奥行き方向(高さ方向及び放射線照射方向と直交する方向)において制御部121が自動判別した注目部位の拡大倍率とは異なる拡大倍率を算出することができる。
また、制御部121は、類似性判断の結果、類似している判断した領域全体を画像重複領域とするのではなく、一部だけを画像重複領域に決定するようになっていてもよい。
制御部121は、この領域決定処理を実行することにより領域決定手段をなす。
【0055】
画像重複領域を決定した後、制御部121は、算出処理を実行する(ステップS3)。
この算出処理で、制御部121は、取得した複数の放射線画像における複数の画像重複領域に基づいて、被写体に対する放射線画像の拡大倍率を算出する。
本実施形態に係る制御部121は、画像重複領域の体軸方向の幅、各撮影における焦点の高さ、SID、照射角、及び検出器2の高さに基づいて拡大倍率を算出するようになっている。
【0056】
以下、拡大倍率の具体的な算出方法について、図5を用いながら説明する。尚、図5に示す各点は、空間上の点である
具体的には、まず、図5に示す点F,点Hの位置を算出する。
点Fは、類似性判断によって求められた、若しくはユーザーによって指定された、画像重複領域の上端が2枚目の撮影で得られた点であるため、二枚目の放射線画像及び2枚目の撮影の際の検出器2の位置に基づいて算出することができる。
点Hは、類似性判断によって求められた、若しくはユーザーによって指定された、画像重複領域の上端が1枚目の撮影で得られた点であるため、一枚目の放射線画像及び一枚目の撮影の際の検出器2の位置から算出することができる。
【0057】
点E、点Mの高さ及びSIDは既知の値(各センサーから取得できる値)である為、点E及び点Mと同じ高さになる点A及び点A’の高さも既知の値である。
このため、線分a’と光軸(線分c’)とがなす角度は、点Mと点Fとの距離及びSIDに基づいて算出することができる。以下、算出された線分a’と光軸とがなす角度をαとする。
同様に、線分qと光軸(線分c)とがなす角度も、点Eと点Hとの距離及びSIDに基づいて算出することができる。以下、算出された線分qと光軸とがなす角度をβとする。
【0058】
一枚目の撮影におけるSIDと二枚目の撮影におけるSIDは等しくても異なっていても良いが、等しい場合、Γを点Fと点Gの距離、Ζを点Gと点Hの距離、Φを点Bと点Gの距離としたときに下記式(a)~(c)が成立する。
Γ+Ζ=点Fと点Hとの距離・・(a)
Γ= Φtanα・・(b)
Ζ= Φtanβ・・(c)
なお、点Fと点Hの高さは既知の値であるため、点Fと点Hの距離も既知の値となる。
【0059】
これらの式(a)~(c)の連立方程式を解くことで算出されるΦ(点Bと点Gの距離)は、OIDである。
OIDは、被写体Sと検出器2との距離、より具体的には、被写体Sの注目部位Sa(例えば背骨)と検出器2の撮像面22との距離(Object to Image-receptor Distance)である。
そして、SID及び算出したOIDに基づいて拡大倍率(SID/(SID-OID))を算出する。
なお、ここでは、制御部121は、画像重複領域の上端を使って算出するようになっているが、画像重複領域内の任意の点を使っても良い。また、複数の点から夫々OIDを求め、求められた複数のOIDの平均値や中央値をOIDにすることもできる。
制御部121は、以上説明してきた算出処理を実行することにより算出手段をなす。
また、拡大倍率を算出することは、拡大倍率算出方法における算出工程に相当する。
【0060】
拡大倍率を算出した後、制御部121は、出力処理を実行する(ステップS4)。
この出力処理で、制御部121は、算出した拡大倍率に基づいて所定の出力を行う。
所定の出力としては、以下のようなものが挙げられる。
・注目部位の画像を実物大で表示する。
・注目部位と共に映る指標(スケール)を変換する。
・画像を移動させ、結合画像を表示する。
制御部121は、以上説明してきた出力処理を実行することにより出力手段をなす。
また、所定の出力を行うことは、拡大倍率算出方法における出力工程に相当する。
【0061】
〔1-4.効果〕
以上説明してきたコンソール120(拡大倍率算出装置)を備える長尺撮影システム100,100Aは、複数の放射線画像における複数の画像重複領域に基づいて拡大倍率を算出するため、拡大倍率を従来よりも正確に算出することができる。
また、拡大倍率の算出に用いる放射線画像は、通常の長尺撮影を行うことで得られるものである。本実施形態に係る長尺撮影システム100,100Aは、長尺撮影を行う際に被写体を動かすことがないため、装置に被写体を移動させる機構を設ける必要もなければ、撮影時の作業が増加することもない。
また、被写体を移動させることがないため、安全に撮影を行うことができる。
このため、コンソール120又は長尺撮影システム100,100Aによれば、装置を複雑化したり、撮影時の工程を増やしたりすることなく、放射線画像に写る被写体の注目部位の、実物に対する拡大倍率を正確に算出することができる。
【0062】
本手法は、注目部位を変更した場合、それに追従できる機能を併せ持つ。
例えば、背骨が注目部位の場合と肋骨が注目部位の場合とでは拡大倍率が異なる。
しかし、予め注目部位を指定しておく事で的確な拡大倍率補正を行う事ができる。
更に、撮影後、注目部位を変更してもそれに追従することができる。
【0063】
また、画像結合処理の結果は、ユーザーによって修正される場合がある。
これは、画像処理によって判定した画像重複領域とユーザーが求める画像重複領域の違いによって生ずる。即ち、求められたOIDとユーザーが意図するOIDの違いと同じである。
本手法によれば、修正した量(即ち画像を移動した量)に応じて拡大倍率を変更することもできる。
【0064】
<2.第二実施形態>
次に、本発明の第二施形態について説明する。
なお、ここでは、上記第一実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0065】
〔2-1.長尺撮影システム〕
第一の実施形態と区別する為、長尺撮影システム100B,100C(図1~3参照)、コンソール120A(図1,4参照)として説明する。
【0066】
〔2-2.コンソール〕
本実施形態に係るコンソール120Aの制御部121は、上記第一実施形態とは異なる内容の拡大倍率算出処理を実行する機能を有している。
具体的には、本実施形態に係る拡大倍率算出処理は、算出処理(ステップS3A)の内容が異なっている。
本実施形態に係る算出処理は、仮の拡大倍率を推定し(ステップS31)、推定された拡大倍率によって各放射線画像を結合し、結合された画像上の注目部位の位置ずれを評価する。そして、仮の拡大倍率を徐々に変化させ、結合された画像上の注目部位の位置ずれが最小になる仮の拡大倍率を、拡大倍率とするものである。
最初の仮の拡大倍率は、予め設定した値や、衝立34の位置の計測値、患者の位置の計測値等、様々な方法が可能である。
最初の仮の拡大倍率が、求める拡大倍率と大きく異なる場合、最終の拡大倍率が求まるまで時間を要する。この為、本実施形態では、予め設定した値、衝立34の位置の計測値、及び患者の位置の計測値以外の方法で求めている。
【0067】
以下、最初の仮の拡大倍率の具体的な算出方法について、図5を用いながら説明する。
なお、ここでは、制御を簡素にするため、図5における三角形ADLと三角形A‘FNとは合同であり、点Eと点Mとの距離は放射線の焦点及び検出器2の移動量と同じであるとみなして説明する。
【0068】
図5における点Bと点Cとの間の領域が、被写体の注目部位であり、点Bと点Cとの距離(以下、距離BC)が注目部位の長さとなる。
このとき、点Hと点Lとの間の領域(以下、領域HL)が一枚目に撮影された放射線画像に写る注目部位の拡大像、点Fと点Jの間の領域(以下、領域FJ)が二枚目に撮影された放射線画像に写る注目部位の拡大像である。
つまり、領域HL及び領域FJが、それぞれ画像重複領域であり、長尺画像を生成する際、これらの領域が重ね合わされる。
【0069】
また、線分aaは、線分aを、点Cを通るように平行移動させたものである。
そして、線分aaが撮像面22と交差する点が点Iである。
なお、点Aと点Eとの距離又は点A´と点Mとの距離は、SIDであり、センサーから得られる既知の値である。
ここで、三角形CILは、三角形A‘FNと相似な為、距離FNと距離ILの比が分かれば拡大倍率を算出する事ができる。しかし、点Iは、線分aaを正確に知る事が必要となるが、この為には画像重複領域を正確に見積もる必要がある。
画像重複領域の正確な見積もりは時には困難な場合もある為、本実施例では、距離ILと大小関係が既知であり、尚且つ求め易い距離JLを採用し、仮の拡大倍率を求め回帰的に拡大倍率を求める。
【0070】
距離JLは、距離FLから距離FJを引く事で求める事ができる。距離FLは、検出器2の撮像面22の大きさから検出器2の移動量を差し引くことで容易に求められ、距離FJは任意の画像重複領域の大きさである為、距離JLは容易に求める事ができる。
距離JLは、距離ILより必ず小さい。
本実施例における最初の拡大倍率は、距離JLを底辺とする三角形A‘FNと相似な三角形を使い、求める。
【0071】
仮の拡大倍率を算出した後、制御部121は、1枚目、2枚目それぞれの放射線画像を、それぞれの光軸(点E及び点M)を中心に、仮の拡大倍率をもとに縮小し、画像重複領域内の一つ以上の点の位置を求める(ステップS32)。
【0072】
次に、縮小された各放射線画像における画像重複領域内の位置を求めた各点の位置にズレがあるか否かを判定する(ステップS33)。
ここで、ズレがあると判定した場合(ステップS33;Yes)、制御部121は、ステップS34の処理へ進む。
各交点の距離が移動量と等しい状態を保ったまま正確な拡大倍率に基づいて各放射線画像をそれぞれ縮小すると、各放射線画像の画像重複領域がぴったりと重なることになる。しかし、初回のステップS33の処理においては、距離JLを底辺とする三角形A‘FNと相似の三角形に基づいた為、ズレがあると判定することになる。
【0073】
ステップS33の処理においてズレがあると判定した場合、制御部121は、仮拡大倍率変更処理を実行して(ステップS34)、ステップS32の処理へ戻る。
この仮拡大倍率変更処理で、制御部121は、縮小した複数の放射線画像における、各点の位置のズレがなくなるように、仮の拡大倍率を変更する。具体的には、仮の距離JLを変更し、仮の拡大倍率を算出し直す。
すなわち、制御部121は、ステップS33の処理においてズレが無いと判定するまで、仮の拡大倍率を変更してステップS32,S33を繰り返すことになる。
【0074】
ステップS33の処理においてズレが無いと判定した場合(ステップS33;Yes)制御部121は、決定処理を実行して(ステップS35)、算出処理(ステップS3A)を終了する(拡大倍率算出処理における出力処理(ステップS4)へ進む)。
この決定処理で、制御部121は、各点のズレがなくなったときの仮の拡大倍率を最終的な拡大倍率に決定する。
【0075】
なお、算出に用いる点と点との距離(区間)は小さくても良い。
また、複数の区間の中央値や平均値を用いるようになっていてもよい
また、その場合、用いる複数の区間は、撮像面22と平行な同一平面(同じ位置と考えられる部位)に存在するものの中から選択するようにするのが好ましい。
また、制御部121は、算出に用いる画像重複領域に、人体モデル等を利用し、同一平面上にあると思われる部位(例えば背骨、肋骨、どちらかに絞るのが好ましい)に相当する形状を用いると良い。
【0076】
なお、本実施形態は、仮の拡大倍率を回帰的に求めるものであることから、制御部121は、算出処理を実行している途中の点の位置を表示部124に表示させることが可能となっていてもよい。
また、制御部121は、操作部125になされた操作に基づいて算出処理を途中で停止する機能を有していてもよい。
この場合、制御部121は、算出停止手段をなすこととなり、回帰の過程の表示中に最も好ましい段階で処理を止めることができる。これは、注目領域がユーザーの意図を必ずしも反映しない為、有効である。
更に、制御部121は、放射線画像を移動させる代わりに拡大倍率を変化させ、当該変化と同期した結合画像を表示する機能を有していてもよい。これは、ユーザーから放射線画像の移動という煩雑な作業を伴わない為、使い勝手が良い。
【0077】
また、制御部121は、ズレがあるか否か判定する(ステップS33)時に用いる注目領域を、最初の仮の拡大倍率を求める為に使用した注目領域とは異なるものにする事もできる。
例えば、最初の拡大倍率を求める時は、検出器2に近い部分(患者が検出器2側を向いて撮影する場合は、肋骨)を注目領域とする。一方、ズレがあるか否か判定する(ステップS33)時に用いる注目領域は、検出器2から遠い部分(患者が検出器2側を向いて撮影する場合は、背骨)とする。
以上のようにする事で、ユーザーが意図する注目領域を確実に回帰過程の中で表示する事ができる。
尚、撮影時の患者の向きは、予め撮影条件として指定されている事が一般的である為、これを用い夫々の注目領域を求める事が可能である。また、画像の類似性判断から求めても良い。
【0078】
〔2-3.効果〕
以上説明してきたコンソール120A、またはこのコンソール120Aを備える長尺撮影システム100B,100Cによれば、上記第一実施形態と同様に、装置を複雑化したり、撮影時の工程を増やしたりすることなく、放射線画像に写る被写体の注目部位の、実物に対する拡大倍率を正確に算出することができる。
【0079】
<3.その他>
以上、本発明を実施形態に基づいて説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0080】
例えば、本実施形態に係る制御部121は、拡大倍率を回帰的に決定する第二機能を有しているが、上記第一実施形態に係るコンソールが実行するような方式で拡大倍率を算出する第一機能を更に有していてもよい。
そして、第一機能及び前記第二機能のうちの一方の機能を用いて拡大倍率を算出することが困難である場合に他方の機能を用いて拡大倍率を算出するようになっていてもよい。
【0081】
また、上記実施形態の説明では、二枚の放射線画像に基づいて拡大倍率を算出する場合について説明したが、制御部121は、上記取得処理で取得した放射線画像が3枚以上である場合、例えば一枚目と二枚目の放射線画像に基づいて第一拡大倍率を算出するとともに、二枚目と三枚目の放射線画像に基づいて第二拡大倍率を算出するようになっていてもよい。
そして、制御部121は、算出した第一拡大倍率と第二拡大倍率とを比較し、両者の値が異なる場合に、算出した第一拡大倍率及び第二拡大倍率のうちの少なくとも一方の倍率を画素毎に補間するようになっていてもよい。
補間は、線形に行ってもよいし、人体モデルを使って非線形に行ってもよい。
【0082】
また、図1,2には、撮影室内に据え付けられた長尺撮影システム100,100Aを例示したが、長尺撮影システム100,100Aは、回診車と呼ばれる移動可能に構成されたものとなっていてもよい。
また、長尺撮影システム100,100Aは、放射線の発生と、放射線画像の生成を短時間に複数回繰り返す連続撮影画像の撮影に対応したものであってもよい。
【0083】
また、上記実施形態の説明では、本発明に係るプログラムのコンピューター読み取り可能な媒体としてハードディスクや半導体の不揮発性メモリー等を使用した例を開示したが、この例に限定されない。その他のコンピューター読み取り可能な媒体として、CD-ROM等の可搬型記録媒体を適用することが可能である。また、本発明に係るプログラムのデータを、通信回線を介して提供する媒体として、キャリアウエーブ(搬送波)も適用される。
【符号の説明】
【0084】
100,100A,100B,100C 長尺撮影システム
110 放射線撮影システム
1 放射線出力装置
11 ジェネレーター
12 放射線源
13 絞り
13a 幅センサー
14 第一移動機構
14a 第一位置センサー
15 第三移動機構
15a 第三位置センサー
2 放射線検出器
21 放射線入射面
22 撮像面
22a 放射線検出領域
3,3A 撮影台
31 支柱
32 第二移動機構
32a 第二位置センサー
33 装填部
34 衝立
35 支持部
36 天板
37 第四移動機構
37a 第四位置センサー
38 装填部
120,120A コンソール(拡大倍率算出装置)
121 制御部
122 通信部
123,123A 記憶部
124 表示部
125 操作部
図1
図2
図3
図4
図5
図6