(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】表示デバイス及び投射型表示装置
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1333 20060101AFI20231129BHJP
G02F 1/13 20060101ALI20231129BHJP
G03B 21/00 20060101ALI20231129BHJP
G03B 21/16 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
G02F1/1333
G02F1/13 505
G03B21/00 E
G03B21/16
(21)【出願番号】P 2020003375
(22)【出願日】2020-01-14
【審査請求日】2022-12-28
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(72)【発明者】
【氏名】相澤 忠
【審査官】磯崎 忠昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-036447(JP,A)
【文献】特開2011-180325(JP,A)
【文献】特開2016-012003(JP,A)
【文献】特開2013-054145(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1333
G02F 1/13
G03B 21/00
G03B 21/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画素が配列され、
入射された照明光を前記画素ごとに光変調する画素領域を有する液晶表示素子と、
前記液晶表示素子の熱を放熱するヒートシンクと、
前記ヒートシンクに固定され、前記ヒートシンクよりも熱伝導率の低い材料によって形成されており、前記画素領域に対応する第1の開口を有して、前記照明光のうち、前記液晶表示素子の前記画素領域に入射されない不要光をマスクするための第1のマスク部材と、
前記第1のマスク部材よりも前記液晶表示素子から離れた位置に配置されて前記ヒートシンクに固定され、
かつ、前記第1のマスク部材と接触し、前記第1のマスク部材よりも熱伝導率の高い材料によって形成されており、前記第1の開口の大きさ以上の大きさを有する第2の開口を有して、前記不要光をマスクするための第2のマスク部材と、
前記第2のマスク部材よりも前記液晶表示素子から離れた位置に配置された光学部材と、
前記光学部材よりも前記液晶表示素子から離れた位置に配置され、前記第2のマスク部材及び前記光学部材と接触した状態で、前記第2のマスク部材を介して前記ヒートシンクに固定され、前記第2の開口より大きい第3の開口を有して、前記光学部材を押さえる押さえ板と、
を備える表示デバイス。
【請求項2】
前記ヒートシンクはアルミニウムまたはアルミニウム合金によって形成され、前記第1のマスク部材はステンレス鋼によって形成され、前記第2のマスク部材はアルミニウムまたはアルミニウム合金によって形成されている請求項1に記載の表示デバイス。
【請求項3】
前記第2の開口は前記第1の開口より大きく、前記第1のマスク部材の前記第1の開口側の端部は前記第2のマスク部材の第2の開口側の端部よりも内側に突出している請求項1または2に記載の表示デバイス。
【請求項4】
前記第2のマスク部材の板厚は、前記第1のマスク部材の板厚より厚い請求項1~3のいずれか1項に記載の表示デバイス。
【請求項5】
入射される赤色照明光を表示しようとする画像の赤色成分に応じて変調して赤色画像光を生成する赤色画像生成用表示デバイスと、
入射される緑色照明光を表示しようとする画像の緑色成分に応じて変調して緑色画像光を生成する緑色画像生成用表示デバイスと、
入射される青色照明光を表示しようとする画像の青色成分に応じて変調して青色画像光を生成する青色画像生成用表示デバイスと、
前記赤色画像光と、前記緑色画像光と、前記青色画像光とを合成して合成画像光を生成する合成光学系と、
前記合成画像光を投射する投射レンズと、
を備え、
前記赤色画像生成用表示デバイス、前記緑色画像生成用表示デバイス、及び前記青色画像生成用表示デバイスとして、請求項1~4のいずれか1項に記載の表示デバイスが用いられている
投射型表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示デバイス及び投射型表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子を有して構成される表示デバイスによって入射される照明光を変調して、変調された照明光による画像を投射する投射型表示装置が普及している。特許文献1に記載のように、表示デバイスは、液晶表示素子の画素領域以外に画像の投射に寄与しない不要光が照射されないように遮光する遮光マスクを備える。遮光マスクによって不要光を遮光することによって、迷光による投射画像の品質の低下を抑え、液晶表示素子の温度上昇に起因する投射画像の安定性の低下を抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-43442号公報
【文献】特開2019-3123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、投射型表示装置の高輝度化に伴って、表示デバイスに照射される照明光のエネルギは増大している。よって、遮光マスクは以前より増して高温となりやすい。高温の遮光マスクが液晶表示素子に近接していると、遮光マスクの熱が輻射によって液晶表示素子に伝搬して液晶表示素子の温度が上昇する。そこで、遮光マスクを液晶表示素子から離して配置することが考えられる。しかしながら、遮光マスクを液晶表示素子から離すと、画素領域の端部付近に斜め方向に入射する不要光が遮光マスクで遮光されにくくなるので、遮光能力が悪化する。
【0005】
特許文献2には、遮光能力を悪化させることなく、遮光マスクの熱を液晶表示素子に伝搬させにくくすることができる遮光マスクが提案されている。特許文献2に記載の遮光マスクは、画素領域の外周部の近傍で液晶表示素子に近接し、画素領域から外側へと離れるに従って液晶表示素子から離れるように傾斜する4つの傾斜部を備える。ところが、4つの傾斜部を備える遮光マスクは、遮光マスクを製造するのが容易でない。また、本来であれば液晶表示素子の前面の近傍に配置すべき光学部品を少なくとも傾斜部の厚みだけ離して配置しなければならない。
【0006】
本発明は、遮光マスクを液晶表示素子に近接して配置しても、遮光マスクの熱が液晶表示素子に伝搬して液晶表示素子の温度が上昇することを抑制することができる表示デバイス及び投射型表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、複数の画素が配列され、入射された照明光を前記画素ごとに光変調する画素領域を有する液晶表示素子と、前記液晶表示素子の熱を放熱するヒートシンクと、前記ヒートシンクに固定され、前記ヒートシンクよりも熱伝導率の低い材料によって形成されており、前記画素領域に対応する第1の開口を有して、前記照明光のうち、前記液晶表示素子の前記画素領域に入射されない不要光をマスクするための第1のマスク部材と、前記第1のマスク部材よりも前記液晶表示素子から離れた位置に配置されて前記ヒートシンクに固定され、かつ、前記第1のマスク部材と接触し、前記第1のマスク部材よりも熱伝導率の高い材料によって形成されており、前記第1の開口の大きさ以上の大きさを有する第2の開口を有して、前記不要光をマスクするための第2のマスク部材と、前記第2のマスク部材よりも前記液晶表示素子から離れた位置に配置された光学部材と、前記光学部材よりも前記液晶表示素子から離れた位置に配置され、前記第2のマスク部材及び前記光学部材と接触した状態で、前記第2のマスク部材を介して前記ヒートシンクに固定され、前記第2の開口より大きい第3の開口を有して、前記光学部材を押さえる押さえ板とを備える表示デバイスを提供する。
【0008】
本発明は、入射される赤色照明光を表示しようとする画像の赤色成分に応じて変調して赤色画像光を生成する赤色画像生成用表示デバイスと、入射される緑色照明光を表示しようとする画像の緑色成分に応じて変調して緑色画像光を生成する緑色画像生成用表示デバイスと、入射される青色照明光を表示しようとする画像の青色成分に応じて変調して青色画像光を生成する青色画像生成用表示デバイスと、前記赤色画像光と、前記緑色画像光と、前記青色画像光とを合成して合成画像光を生成する合成光学系と、前記合成画像光を投射する投射レンズとを備え、前記赤色画像生成用表示デバイス、前記緑色画像生成用表示デバイス、及び前記青色画像生成用表示デバイスとして、上記の表示デバイスが用いられている投射型表示装置を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の表示デバイス及び投射型表示装置によれば、遮光マスクを液晶表示素子に近接して配置しても、遮光マスクの熱が液晶表示素子に伝搬して液晶表示素子の温度が上昇することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施形態の表示デバイスを示す分解斜視図である。
【
図2】一実施形態の表示デバイスを示す斜視図である。
【
図3】一実施形態の表示デバイスを示す概念的な断面図である。
【
図4】一実施形態の表示デバイスにおける放熱の様子を示す概念的な断面図である。
【
図5A】板厚の薄いマスク部材を液晶表示素子に近接して配置した状態を示す部分断面図である。
【
図5B】板厚の薄いマスク部材を液晶表示素子から離して配置した状態を示す部分断面図である。
【
図5C】板厚の厚いマスク部材を液晶表示素子に近接して配置した状態を示す部分断面図である。
【
図6】一実施形態の投射型表示装置を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、一実施形態の表示デバイス及び投射型表示装置について、添付図面を参照して説明する。まず、
図1~
図5Cを用いて、一実施形態の表示デバイスの構成例とその作用効果を説明する。
【0012】
図1は、
図2に示す一実施形態の表示デバイス10の分解斜視図である。
図1において、液晶表示素子11は反射型液晶表示素子である。液晶表示素子11はLCOS(Liquid Crystal On Silicon)素子と称される液晶表示素子であってもよい。液晶表示素子11は、一点鎖線で囲まれた矩形状の、複数の画素が面内の直交する2つの方向に配列された画素領域111を有する。画素領域111は、画素ごとに入射された照明光を光変調する。
【0013】
液晶表示素子11にはフレキシブル基板112が接続されている。フレキシブル基板112の液晶表示素子11とは反対側の端部には、コネクタ接続端113が設けられている。コネクタ接続端113は、液晶表示素子11を駆動する図示していない回路基板のコネクタと接続される。
【0014】
液晶表示素子11の信号線の本数またはワイヤボンディング等の接続条件によって、液晶表示素子11の長手方向または短手方向の双方にフレキシブル基板112が接続されることがある。
【0015】
ヒートシンク12はアルミニウム合金によって形成されており、裏面側に複数のフィン121が形成されている。一例として、ヒートシンク12は、マグネシウムとケイ素とを含有するアルミニウム合金である材料記号A6063のアルミニウム合金によって形成されている。ヒートシンク12は1000系の純アルミニウムによって形成されていてもよい。
【0016】
ヒートシンク12は、液晶表示素子11を収納する凹部122、第1のマスク部材13及び第2のマスク部材15を位置決めするための一対のピン123、第1のマスク部材13をねじ止めするための4つのねじ穴124を有する。また、ヒートシンク12は、第2のマスク部材15と押さえ板18とをねじ止めするための4つのねじ穴125、押さえ板114をねじ止めするための2つのねじ穴126を有する。
【0017】
押さえ板114の両端部には、ねじ115が挿入される孔1141が形成されている。液晶表示素子11が凹部122に収納された状態で、ヒートシンク12と押さえ板114とによってフレキシブル基板112を挟み、孔1141に挿入されたねじ115をねじ穴126にねじ込むことによって、フレキシブル基板112はヒートシンク12に固定される。
【0018】
第1のマスク部材13は、金属の薄板によって形成されている。第1のマスク部材13は、板厚0.2mmのステンレス板を用いるのが好適である。一例として、第1のマスク部材13は材料記号SUS304のステンレス鋼によって形成されている。ステンレス鋼はアルミニウム及び鉄と比較して熱伝導性が低く、熱伝導率は16.7W/m・Kである。第1のマスク部材13の熱伝導性(熱伝導率)は、ヒートシンク12の熱伝導性(熱伝導率)よりも低い。
【0019】
第1のマスク部材13には、液晶表示素子11の画素領域111の大きさに対応する開口131(第1の開口)が形成されている。即ち、開口131は画素領域111の大きさとほぼ同じ大きさである。第1のマスク部材13は、ピン123が挿入される一対の孔132及び4本のねじ14が挿入される4つの孔133を有する。
【0020】
液晶表示素子11をヒートシンク12の凹部122に収納した状態で、第1のマスク部材13はピン123が孔132に挿入されて位置決めされ、孔133に挿入されたねじ14をねじ穴124にねじ込むことによってヒートシンク12に固定される。
【0021】
第2のマスク部材15は、金属の薄板によって形成されている。第2のマスク部材15は、板厚0.5mmのアルミニウム板を用いるのが好適である。一例として、第2のマスク部材15は材料記号A5052のような5000系のアルミニウム合金によって形成されている。第2のマスク部材15は1000系の純アルミニウムによって形成されていてもよい。アルミニウムはステンレス鋼よりも強度が低いため、第2のマスク部材15の板厚は第1のマスク部材13の板厚0.2mmよりも厚い0.5mmとしている。第2のマスク部材15が材料記号A5052のアルミニウム合金で形成されている場合、熱伝導率は140W/m・Kである。
【0022】
第2のマスク部材15には、第1のマスク部材13の開口131の大きさ以上の大きさを有する開口151(第2の開口)が形成されている。開口151は開口131よりわずかに大きいことが好ましい。第2のマスク部材15は、開口151の周囲の内周部152、内周部152より外側の外周部153、ピン123が挿入される一対の孔154、4本のねじ19が挿入される4つの孔155、ねじ14との干渉を避けるための4つの孔156を有する。内周部152と外周部153との間は、第2のマスク部材15の面と交差する方向の面で形成された段差部1523となっている。
【0023】
第2のマスク部材15と押さえ板18との間には、例えばゴムによって形成されたパッキング部材16と、偏光調整部材17とが配置されている。パッキング部材16は、内周部152と段差部1523とに接触するように第2のマスク部材15上に配置される。後述するように、偏光調整部材17には液晶表示素子11より射出されたs偏光が入射する。偏光調整部材17はs偏光の傾きを調整し、傾きが均一な状態に揃えられたs偏光を射出する。なお、液晶表示素子11がp偏光を射出するように構成されている場合には、偏光調整部材17はp偏光の傾きを調整し、傾きが均一な状態に揃えられたp偏光を射出すればよい。
【0024】
押さえ板18には、第2のマスク部材15の開口151より大きい開口181が形成されている。押さえ板18は、ねじ14との干渉を避けるための4つの凹部182、偏光調整部材17を押さえるための押さえ片183、ピン123が挿入される一対の孔184、4本のねじ19が挿入される4つの孔185を有する。押さえ片183は、押さえ板18の開口181側の端部を切り起こして曲げることによって形成されている。押さえ板18はステンレス鋼またはアルミニウム合金によって形成されており、押さえ片183は可撓性を有する。
【0025】
パッキング部材16の内周部には、偏光調整部材17を配置するための凹部161(
図3参照)が形成されている。偏光調整部材17は、パッキング部材16の凹部161に配置される。パッキング部材16と偏光調整部材17とを第2のマスク部材15と押さえ板18とで挟んだ状態で、4本のねじ19は孔185及び155に挿入されて、ねじ穴125にねじ込まれる。これによって、第2のマスク部材15、パッキング部材16、偏光調整部材17、押さえ板18はヒートシンク12に固定される。
【0026】
以上のようにして、ヒートシンク12に、液晶表示素子11、第1のマスク部材13、第2のマスク部材15、パッキング部材16、偏光調整部材17、及び押さえ板18、押さえ板114が固定されると、
図2に示す表示デバイス10が形成される。
【0027】
図3は、
図2に示す表示デバイス10の概念的な断面図である。液晶表示素子11は、液晶11Lcを複数の画素が形成されたシリコン基板11Ssとガラス基板11Gsとで挟み、外周部をシール材11Smで封止した構成を有する。フレキシブル基板112の液晶表示素子11側の端部には開口1121が形成されている。液晶表示素子11は、シリコン基板11Ssとヒートシンク12とが熱伝導材20を介して接触するように凹部122の底面に配置されている。熱伝導材20は例えば放熱ゲルであって、液晶表示素子11(特にシリコン基板11Ss)で発生した熱をヒートシンク12に伝導させやすくする。
【0028】
第1のマスク部材13は、液晶表示素子11に近接して配置されている。第1のマスク部材13と第2のマスク部材15とは、開口131の中心と開口151の中心とが略一致するように配置されている。第2のマスク部材15の内周部152は、第1のマスク部材13と接触している。開口151を開口131よりわずかに大きくした場合、第1のマスク部材13の開口131側の端部は、第2のマスク部材15の開口151側の端部よりも内側に突出している。本実施形態においては、第1のマスク部材13の開口131側の端部は、第2のマスク部材15の開口151側の端部から0.3mm突出している。
【0029】
図3に示すように、表示デバイス10には照明光L1が照射される。表示デバイス10に照明光L1が照射されると、第2のマスク部材15は、照明光L1の一部が入射することによって発熱し、温度が上昇した偏光調整部材17及び押さえ板18から伝搬する熱によって高温となる。第1のマスク部材13の熱伝導性は第2のマスク部材15及びヒートシンク12の熱伝導性よりも低いため、第2のマスク部材15の熱は第1のマスク部材13よりもヒートシンク12に多く伝搬する。
【0030】
図4に太実線で示すように、第2のマスク部材15の熱は主としてヒートシンク12に伝搬する。ヒートシンク12のフィン121には、図示していない放熱ファンによって白抜き矢印で示す風が当てられており、風はフィン121の面に沿って流れていく。これにより、ヒートシンク12に伝搬した熱は太破線で示すように放熱される。
図4では、図示していないが、液晶表示素子11が駆動されることで発生する自己発熱もヒートシンク12によって放熱される。
【0031】
本実施形態の表示デバイス10によれば、第1のマスク部材13がさほど高温となることはなく、第2のマスク部材15が高温になったとしても第2のマスク部材15の熱がヒートシンク12によって効率的に放熱される。よって、第2のマスク部材15の熱が輻射によって液晶表示素子11に伝搬して液晶表示素子11の温度が上昇することを抑制することができる。
【0032】
図5A~
図5Cを用いて、本実施形態の表示デバイス10による作用効果を説明する。
図5Aは板厚の薄いマスク部材31を液晶表示素子11に近接して配置した状態を示している。
図5Bは板厚の薄いマスク部材31を液晶表示素子11から離して配置した状態を示している。
図5Cは板厚の厚いマスク部材32を液晶表示素子11に近接して配置した状態を示している。マスク部材31及び32に形成されている開口は画素領域111の大きさに対応しており、開口側の端部311及び321は画素領域111の端部に対応した位置にある。
【0033】
表示デバイス10に照射される照明光L1は、必ずしも液晶表示素子11の面と直交する方向に入射するとは限らず、照明光L1は一定の角度範囲内の光で構成されため、斜めに傾いて角度も持った光が液晶表示素子11に入射する。マスク部材31の端部311またはマスク部材32の端部321において斜め方向に入射して画素領域111から外れた位置に照射される光は不要光である。
【0034】
図5Aに示すように、板厚の薄いマスク部材31が液晶表示素子11に近接して配置されていれば、端部311において斜め方向に入射する光によって形成される境界領域は小さい。即ち、マスク部材31の遮光能力は優れている。
図5Bに示すように、板厚の薄いマスク部材31を液晶表示素子11から離して配置されていると境界領域が大きくなり、遮光能力が悪化する。
【0035】
本実施形態の表示デバイス10においては、第1のマスク部材13が液晶表示素子11に近接しているため、
図5Aと同様に、境界領域が小さく遮光能力が優れている。
【0036】
図5Cに示すように、板厚の厚いマスク部材32を液晶表示素子11に近接して配置すると境界領域が大きくなり、遮光能力が悪化する。第2のマスク部材15の開口151を第1のマスク部材13の開口131より大きくすれば、第1のマスク部材13の開口131側の端部においては
図5Aのように板厚の薄いマスク部材31を配置したのと等価となる。従って、第1のマスク部材13と第2のマスク部材15とで不要光を遮光する遮光マスクを形成しながら、遮光マスクの板厚が厚くなることによる遮光能力の悪化を招くことがない。
【0037】
但し、第1のマスク部材13と第2のマスク部材15との合成の板厚が極めて薄い場合には、第2のマスク部材15の開口151の大きさを第1のマスク部材13の開口131の大きさと同じにしても遮光能力はさほど悪化しない。第2のマスク部材15の開口151の大きさを第1のマスク部材13の開口131の大きさと同じにしてもよいが、第2のマスク部材15の開口151を第1のマスク部材13の開口131より大きくするのがよい。
【0038】
さらに、本実施形態の表示デバイス10によれば、遮光マスク(第1のマスク部材13及び第2のマスク部材15)を製造するが容易で低コストであり、偏光調整部材17を液晶表示素子11の前面の近傍に配置することが可能である。偏光調整部材17を液晶表示素子11の近傍に配置できれば偏光調整部材17を小さくすることが可能となり、偏光調整部材17のコストを下げることができる。
【0039】
図6を用いて、表示デバイス10を備える一実施形態の投射型表示装置100の構成例を説明する。投射型表示装置100は、光源110、ダイクロイックミラー120及び130、反射ミラー140、光均一化光学系150及び160、偏光ビームフィルタ170R、170G及び170B、合成光学系180と、投射レンズ190と、3つの表示デバイス10とを備える。3つの表示デバイス10を区別するために、赤色画像を生成するための表示デバイス10を10R(赤色画像生成用表示デバイス)、緑色画像を生成するための表示デバイス10を10G(緑色画像生成用表示デバイス)、青色画像を生成するための表示デバイス10を10B(青色画像生成用表示デバイス)と称することとする。表示デバイス10R、10G、及び10Bは、
図1~
図3で説明した構成を有する。
【0040】
光源110から射出された白色照明光L1は、ダイクロイックミラー120に入射される。ダイクロイックミラー120は、白色照明光L1の青色成分を反射させて青色照明光L1Bとする。ダイクロイックミラー120は、白色照明光L1の赤色成分と緑色成分とを含む黄色成分を透過させて黄色照明光L1Yとする。
【0041】
青色照明光L1Bは、反射ミラー140により反射されて光路が90度曲げられ、光均一化光学系150に入射する。光均一化光学系150は、青色照明光L1Bの照明分布を均一化し、偏光状態を最適化する。光均一化光学系150は、インテグレータ(フライアイレンズ)またはライトパイプと、偏光板または偏光変換素子(PCS(Polarization Conversion System))との組み合わせによって構成される。インテグレータ及びライトパイプは、青色照明光L1Bの照明分布を均一化する。偏光板及びPCSは、青色照明光L1Bの偏光状態を最適化する。光均一化光学系150は、青色照明光L1Bのs偏光及びp偏光のうち、p偏光のみを射出する。
【0042】
光均一化光学系150から射出されたp偏光の青色照明光L1Bは、偏光ビームフィルタ170Bに入射される。偏光ビームフィルタ170Bはp偏光を透過させ、s偏光を反射させる。p偏光とされた青色照明光L1Bは、偏光ビームフィルタ170Bを透過して表示デバイス10Bに入射される。表示デバイス10Bは、青色照明光L1Bを表示しようとする画像の青色成分に応じて変調して、s偏光の青色画像光L2Bを射出する。青色画像光L2Bは偏光ビームフィルタ170Bで反射して、合成光学系180に入射する。
【0043】
黄色照明光L1Yは、光均一化光学系160に入射する。光均一化光学系160は、黄色照明光L1Yの照明分布を均一化し、偏光状態を最適化する。光均一化光学系150と同様に、光均一化光学系160は、インテグレータまたはライトパイプと、偏光板またはPCSとの組み合わせによって構成される。インテグレータ及びライトパイプは、黄色照明光L1Yの照明分布を均一化する。偏光板及びPCSは、黄色照明光L1Yの偏光状態を最適化する。光均一化光学系160は、黄色照明光L1Yのs偏光及びp偏光のうち、p偏光のみを射出する。
【0044】
光均一化光学系160から射出されたp偏光の黄色照明光L1Yは、ダイクロイックミラー130に入射される。ダイクロイックミラー130は、黄色照明光L1Yの緑色成分を反射させて緑色照明光L1Gとする。ダイクロイックミラー130は、黄色照明光L1Yの赤色成分を透過させて赤色照明光L1Rとする。
【0045】
緑色照明光L1Gは、偏光ビームフィルタ170Gに入射される。偏光ビームフィルタ170Gはp偏光を透過させ、s偏光を反射させる。p偏光である緑色照明光L1Gは、偏光ビームフィルタ170Gを透過して表示デバイス10Gに入射される。表示デバイス10Gは、緑色照明光L1Gを表示しようとする画像の緑色成分に応じて変調して、s偏光の緑色画像光L2Gを射出する。緑色画像光L2Gは偏光ビームフィルタ170Gで反射して、合成光学系180に入射する。
【0046】
赤色照明光L1Rは、偏光ビームフィルタ170Rに入射される。偏光ビームフィルタ170Rはp偏光を透過させ、s偏光を反射させる。p偏光である赤色照明光L1Rは、偏光ビームフィルタ170Rを透過して表示デバイス10Rに入射される。表示デバイス10Rは赤色照明光L1Rを表示しようとする画像の赤色成分に応じて変調して、s偏光の赤色画像光L2Rを射出する。赤色画像光L2Rは偏光ビームフィルタ170Rで反射して、合成光学系180に入射する。
【0047】
合成光学系180は、赤色画像光L2Rと緑色画像光L2Gと青色画像光L2Bとを合成して合成画像光を射出する。投射レンズ190は、合成光学系180より射出された合成画像光をフルカラー画像として図示していないスクリーンに拡大投射する。スクリーンにはフルカラー画像が表示される。
【0048】
本実施形態の投射型表示装置100によれば、表示デバイス10の液晶表示素子11の温度上昇が抑えられるので、液晶表示素子11の温度上昇に起因する投射画像の安定性の低下を抑えることができる。
【0049】
本発明は、以上説明した本実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。第2のマスク部材15は第1のマスク部材13よりも熱伝導率が高い材料で形成されていればよいので、アルミニウム板に代えて炭素よりなるグラファイトシートで形成されていてもよい。グラファイトシートは面内方向に熱が伝搬しやすい異方性を有するので、第1のマスク部材13に熱が伝搬しにくく、熱を効率的にヒートシンク12に伝搬させることができる。
【0050】
第1のマスク部材13及び第2のマスク部材15は光が入射することによってアウトガスまたは異物が発生しない材料であって、第2のマスク部材15の熱伝導性が第1のマスク部材13の熱伝導性よりも高いという関係であればよい。第1のマスク部材13及び第2のマスク部材15は金属または炭素以外の他の材料によって形成されていてもよい。
【0051】
図6に示す投射型表示装置100は、表示デバイス10R、10G、及び10Bにp偏光を入射してs偏光を射出するように構成されているが、s偏光を入射してp偏光を射出するように構成することも可能であるし、色によってs偏光とp偏光とを組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0052】
10 表示デバイス
11 液晶表示素子
12 ヒートシンク
13 第1のマスク部材
14,19,115 ねじ
15 第2のマスク部材
16 パッキング部材
17 偏光調整部材
18,114 押さえ板
20 熱伝導材
110 光源
120,130 ダイクロイックミラー
131 開口(第1の開口)
140 反射ミラー
150,160 光均一化光学系
151 開口(第2の開口)
170R,170G,170B 偏光ビームフィルタ
180 合成光学系
190 投射レンズ