IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東洋インキSCホールディングス株式会社の特許一覧 ▶ 東洋ビジュアルソリューションズ株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】積層体、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 3/30 20060101AFI20231129BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20231129BHJP
   B32B 7/025 20190101ALI20231129BHJP
   G02B 7/02 20210101ALI20231129BHJP
【FI】
B32B3/30
B32B7/023
B32B7/025
G02B7/02 D
G02B7/02 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020005780
(22)【出願日】2020-01-17
(65)【公開番号】P2021112843
(43)【公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】718000495
【氏名又は名称】東洋ビジュアルソリューションズ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小川 孝一
(72)【発明者】
【氏名】笹木 香苗
(72)【発明者】
【氏名】山崎 智己
【審査官】伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-022664(JP,A)
【文献】国際公開第2018/180477(WO,A1)
【文献】特開2018-077279(JP,A)
【文献】国際公開第2019/188861(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/061990(WO,A1)
【文献】特開2002-286906(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
G02B 7/02- 7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第一層(a)と、表面に凹凸構造を有する第二層(b)との二層を有する積層体であって、
第二層(b)表面側から測定した積層体の波長400~700nmにおける最大反射率が0.1%以上1.5%以下であり、
第一層(a)のL*値が、10以下であり、
第二層(b)表面側から測定した積層体のL*値が、5.0以下であり
第二層(b)が、第二層(b)を構成する全固形分中にカーボンナノチューブを0.1~10質量%含有し、
第一層(a)と積層している面と反対側の第二層(b)表面の、高さ方向の表面粗さパラメーターである算術平均粗さRaが、0.2~2.5μm、横方向の表面粗さパラメーターである粗さ曲線要素の平均長さRSmが0.1~2.5μm、RSm及びRaの比率(RSm/Ra)が0.1~3であることを特徴とする積層体。
【請求項2】
第二層(b)中に含有するカーボンナノチューブの外径が、3~50nmであることを特徴とする請求項1記載の積層体。
【請求項3】
第一層(a)の体積抵抗率が、1.0×1013Ω・cm以上8×10 14 Ω・cm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の積層体。
【請求項4】
請求項1~3いずれか1項に記載の積層体の製造方法であって、第二層(b)表面の凹凸構造をナノインプリント法またはフォトリソグラフィー法で形成することを特徴とする積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた低反射性と高い漆黒性を兼ね備えた、積層体、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
膜に低反射性を付与する方法として、特許文献1には、黒色基材上に光の最短波長よりも小さいピッチで反射防止構造体をアレイ状に配置した低反射部材が開示されている。しかしながら、特許文献1に記載の発明は、反射防止構造体が透明であり、構造体内部に入射した光は構造体では吸収されずに構造体と基材の界面まで到達し、その界面において反射するため、低反射性を損なう。また、反射防止構造体を有する部材に高い遮光性及び光吸収性が要求される場合には、該部材をシアン、マゼンタ、イエロー等の色素を混ぜて得られる染料やカーボンブラック等の顔料を配合した黒色材料にて形成することが好ましいことが開示されているが、具体的な記載は一切ないため、漆黒性や低反射性への効果は不明である。
【0003】
特許文献2には、表面に凹凸構造を有する着色膜であり、凹凸の特性を最適化することで優れた低反射性、耐光性を有する着色膜、固体撮像素子が提案されている。着色膜の素材としては、チタンブラック、カーボンブラック等の各種有機、無機顔料が用いられているが、黒色度、漆黒性の数値が劣り、黒色低反射膜としての性能は十分ではないのが現状である。
【0004】
特許文献3には、カーボンブラックに代えて、青色、黄色、赤色の各有機顔料を混合して得た黒色有機顔料組成物が開示されている。カーボンブラックを含有する着色膜は黒色度は比較的高いものの、導電性が高く熱吸収が高いため、電気的部材への使用には不向きであり、その代わりとして青色、黄色、赤色の有機顔料の混合が提案されているが、カーボンブラックと比較すると十分な黒色度が得られているとは言えないのが現状である。
【0005】
また、黒色度に優れた積層体としては、特許文献4に、L*値が10以下の第一層の上に、カーボンナノチューブを0.1~1質量%含有する第二層を積層することで、漆黒性の高い積層体が得られることが提案されている。しかし、特許文献4に記載の発明は、漆黒性に優れるものの表面が平滑で光沢性に優れるものであり、低反射性を達成する趣旨のものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2006-285223号公報
【文献】国際公開第2018/180477号
【文献】特開2012-032697号公報
【文献】特許2016-022664号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、全反射が小さく低反射性に優れ、漆黒性の高い積層体、並びに積層体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、特定の構成の積層体を用いることによって上記の課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、少なくとも第一層(a)と、表面に凹凸構造を有する第二層(b)との二層を有する積層体であって、
第一層(a)のL*値が、10以下であり、
第二層(b)が、第二層(b)を構成する全固形分中にカーボンナノチューブを0.1~10質量%含有し、
第一層(a)と積層している面と反対側の第二層(b)表面の、高さ方向の表面粗さパラメーターである算術平均粗さRaが、0.2~2.5μm、横方向の表面粗さパラメーターである粗さ曲線要素の平均長さRSmが0.1~2.5μm、RSm及びRaの比率(RSm/Ra)が0.1~3であることを特徴とする積層体に関する。
【0010】
また、本発明は、第二層(b)表面側から測定した積層体のL*値が、5.0以下であり、
第二層(b)表面側から測定した積層体の波長400~700nmにおける最大反射率が、2.0%以下である上記積層体に関する。
【0011】
また、本発明は、第二層(b)中に含有するカーボンナノチューブの外径が、3~50nmであることを特徴とする上記積層体に関する。
【0012】
また、本発明は、第一層(a)の体積抵抗率が、1.0×1013Ω・cm以上であることを特徴とする上記積層体に関する。
【0013】
また、本発明は上記積層体の製造方法であって、第二層(b)表面の凹凸構造をナノインプリント法またはフォトリソグラフィー法で形成することを特徴とする積層体の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、全反射が小さく低反射性に優れ、漆黒性の高い、特に黒色低反射膜としての特性に優れた積層体、並びに積層体の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の積層体は、L*値が10以下の第一層(a)を形成し、その上にカーボンナノチューブを0.1~10質量%含有し、表面に特定の微細凹凸構造を有する第二層(b)を積層したものである。
本発明の積層体は、多数の微小突起が規則的に又は不規則的(ランダム)に、第二層(b)表面に形成された凹凸構造からなる光反射防止構造であり、こうした光反射防止構造は、微小突起が形成された面に平行な水平面内での、微小突起の断面積が、微小突起の最凸部から最凹部までに至る過程で漸増することで、光に対する屈折率の急激な変化がなくなり、物質界面での不連続な屈折率変化に起因する光の反射を、生じないようにしたものである。
さらに、本発明の積層体はL*値が10以下の第一層(a)を有する積層体であるため、表面に微細凹凸構造を有する第二層(b)内部に侵入した入射光は積層体と基材の界面まで到達することなく第一層(a)で吸収されるか、万が一入射光が界面に到達した場合は、界面で反射した光は再度積層体に侵入し、第一層(a)で吸収されるため、積層体外部への光の漏れは最大限抑制される。
よって、本発明の積層体は、これらの相互作用により極めて良好な低反射性と漆黒性とを両立することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
【0016】
<第一層形成用組成物(a’)>
第一層(a)は、第一層形成用組成物(a’)から形成される。
第一層形成用組成物(a’)を得るには、黒色色材、バインダーと必要に応じてワックス、溶媒とを、特に限定されるものではないが、例えば、ペイントシェーカー(レッドデビル社製)、ボールミル、サンドミル(シンマルエンタープライゼス社製「ダイノーミル」等)、アトライター、パールミル(アイリッヒ社製「DCPミル」等)、コボールミル、バスケットミル、ホモミキサー、ホモナイザー( エム・テクニック社製「クレアミックス」等)、湿式ジェットミル(ジーナス社製「ジーナスPY」、ナノマイザー社製「ナノマイザー」等)、フーバーマーラー、3本ロールミル、エクストルーダー(二軸押出し機)、ヘンシェルミキサー等を使用して分散処理を行うことが好ましい。必要に応じて、分散剤や添加剤を加えても良い。
【0017】
第一層形成用組成物(a’)に用いるバインダーは特に制限されず、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、ウレタンウレア樹脂、アルキッド樹脂、ブチラール樹脂、アセタール樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、スチレン-アクリル樹脂、スチレン樹脂、ニトロセルロース、ベンジルセルロース、セルロース(トリ)アセテート、カゼイン、シェラック、ギルソナイト、スチレン-無水マレイン酸樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル/マレイン酸共重合体樹脂、フッ素樹脂、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、フェノール樹脂、マレイン酸樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ケトン樹脂、石油樹脂、ロジン、ロジンエステル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、カルボキシメチルニトロセルロース、エチレン/ビニルアルコール樹脂、ポリオレフィン樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、変性塩素化ポリオレフィン樹脂、及び塩素化ポリウレタン樹脂等が挙げられる。
【0018】
本発明には必要に応じて、硬化剤を使用することができる。使用できる硬化剤は特に制限されず、ポリイソシアネート及びエポキシ樹脂等が挙げられる。
【0019】
また、第一層形成用組成物(a’)に用いるバインダーとして、オリゴマー及び/又はモノマーを含む電子線又は紫外線硬化性材料、又はその硬化物を用いてもよい。
単官能モノマーとしては特に制限されず、2-(2-エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、インデシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、カプロラクトン(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、エトキシ化ノニルフェノール(メタ)アクリレート、プロポキシ化ノニルフェノール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレン(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ノニルフェニル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド-2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、及びジプロピレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
本明細書において、「(メタ)アクリレート」はメタクリレート及びアクリレートを意味し、「(メタ)アクリロイル」はメタクリロイル及びアクリロイルを意味する。
【0020】
二官能モノマーとしては、1 ,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、(水素化)ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、(水素化)エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、(水素化)プロピレングリコール変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2-エチル-2-ブチル-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、及び1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0021】
多官能モノマーとしては、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性グリセリルトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、トリス(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタ(メタ)アクリレートエステル、及びジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0022】
ラジカル重合性のオリゴマー及び/又はモノマーを紫外線を用いて重合させる場合に用いられる光重合開始剤としては特に制限されず、例えば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、芳香族ジアゾニウム塩、及びメタロセン等が挙げられる。重合促進剤として、アミン類及びホスフィン類等を併用してもよい。電子線を用いて重合させる場合にはこれらを配合しなくてもよい。
カチオン重合性のオリゴマー及び/又はモノマーを紫外線を用いて重合させる場合に用いられるカチオン系開始剤としては、ルイス酸のジアゾニウム塩、ルイス酸のヨードニウム塩、ルイス酸のスルホニウム塩、ルイス酸のホスホニウム塩、その他のハロゲン化物、トリアジン系開始剤、ボーレート系開始剤、及びその他の光酸発生剤等が挙げられる。
【0023】
第一層形成用組成物(a’)に用いるバインダーとして、これらの樹脂、オリゴマー、及びモノマーは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0024】
第一層形成用組成物(a’)に用いるワックスとしては、ポリエチレン系ワックス、ポリプロピレン系ワックス、サゾールワックス、モンタンワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、カルナバワックス、シュラックワックス等から選ばれる1種または2種以上であることが好ましい。これらの中でもポリエチレン系ワックスまたはポリプロピレン系ワックスがより好ましい。
【0025】
第一層形成用組成物(a’)に必要に応じて用いる溶媒は特に限定されるものではなく、水、有機溶媒のいずれも用いることができる。
【0026】
有機溶媒としては、沸点が50~250℃の有機溶媒が、塗工時の作業性や硬化前後の乾燥性の点から用いやすい。具体的な溶媒の例としては、メタノール、エタノールおよびイソプロピルアルコールなどのアルコール系溶媒、アセトン、ブチルジグリコールアセテート、MEKなどのケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、3-エトキシプロピオン酸エチル(EEP)等のエステル系溶媒、ジブチルエーテル、エチレングリコール、モノブチルエーテル等のエーテル系溶媒、トルエン、キシレン、ソルベッソ150(東燃ゼネラル石油社製)などの芳香族系溶媒、N-メチル-2-ピロリドンなどの非プロトン性極性溶媒などを用いることができる。これらの溶媒は、1種または2種以上を混合して用いることもできる。
【0027】
また、前記溶媒のほかにも、必要に応じて、例えば濡れ浸透剤、皮張り防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、架橋剤、防腐剤、防カビ剤、粘度調整剤、pH調整剤、レベリング剤、消泡剤などの添加剤を本発明の目的を阻害しない範囲で適宜配合することができる。
【0028】
第一層形成用組成物(a’)に用いる黒色色材としては、カーボンブラック、チタンブラック、ペリレンブラック等の各種無機、有機顔料や各種染料が挙げられる。
【0029】
カーボンブラックの具体例としては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック並びにナフサなどの炭化水素を水素及び酸素の存在下で部分酸化して、水素及び一酸化炭素を含む合成ガスを製造する際に副生するカーボンブラック、あるいはこれを酸化または還元処理したカーボンブラックなどが挙げられる。
【0030】
使用できる市販のカーボンブラックの例としては、例えば三菱ケミカル社製のMA7、MA8、MA11、MA77、MA100、MA100R、MA220、MA230、#25、#33、#44、#45、#47、#52、#47、#45、#2600、#2650、#2300、#1000、#980、#900等、オリオン・エンジニアドカーボンズ社製のPrintex95、Printex90、Printex85、Printex80、Printex75、Printex55、Printex45、Printex35、Printex30、Printex3、PrintexA、PrintexL、SpecialBlack550、SpecialBlack350、SpecialBlack250、SpecialBlack100等、キャボット社製のMonarch460、Monarch430、Monarch280、Monarch120、Monarch800、Monarch4630、REGAL99、REGAL99R、REGAL415、REGAL415R、REGAL250、REGAL250R、REGAL330、BLACKPEARLS480、PEARLS130等、コロンビヤンカーボン社製のRAVEN11、RAVEN15、RAVEN30、RAVEN35、RAVEN40、RAVEN410、RAVEN420、RAVEN450、RAVEN500、RAVEN780、RAVEN850、RAVEN890H、RAVEN1000、RAVEN1020、RAVEN1040等が挙げられる。
【0031】
また、黒色色材として、チタンブラックを用いることもできる。市販のチタンブラックの例としては、三菱マテリアル社製のチタンブラック12S、13M、13M-C等が挙げられる。
【0032】
また、黒色色材として、青色顔料、緑色顔料、黄色顔料、赤色顔料、紫色顔料から選択された少なくとも2種の有機または無機の顔料を混合して用いることもできる。これらの各色顔料として具体的には、ジケトピロロピロール系顔料、アゾ、ジスアゾ、又はポリアゾ等のアゾ系顔料、アミノアントラキノン、ジアミノジアントラキノン、アントラピリミジン、フラバントロン、アントアントロン、インダントロン、ピラントロン、又はビオラントロン等のアントラキノン系顔料、キナクリドン系顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、チオインジゴ系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、スレン系顔料または金属錯体系顔料等の有機顔料や、チタンイエロー、オーカー、酸化鉄、べんがら、群青、紺青、コバルトブルー、セルリアンブルー、酸化クロム、クロムグリーン、コバルトグリーン、コバルト紫、マンガン紫等の無機顔料が挙げられる。
【0033】
青色顔料としては、例えばC.I.ピグメントブルー1、1:2、9、14、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、17、19、25、27、28、29、33、35、36、56、56:1、60、61、61:1、62、63、66、67、68、71、72、73、74、75、76、78、79などを挙げることができる。これらの中でも、好ましくはC.I.ピグメントブルー15、15:1、15:3、15:4、15:6を挙げることができ、更に好ましくはC.I.ピグメントブルー15:3、15:4、または15:6である。
【0034】
緑色顔料としては、例えばC.I.ピグメントグリーン1、2、4、7、8、10、13、14、15、17、18、19、26、36、45、48、50、51、54、55または58を挙げることができる。これらの中でも、好ましくはC.I.ピグメントグリーン7、36、または58である。
【0035】
黄色顔料としては、例えばC.I.ピグメントイエロー3、12、13、14、15、17、20、24、31、34、42、53、55、74、83、93、95、109、110、111、117、125、128、129、138、139、147、150、151、153、154、155、166、168、174、180、185、188、199、203、215等を挙げることができる。これらの中でも、好ましくはC.I.ピグメントイエロー53、83、117、129、138、139、150、154、155、180、185を挙げることができ、更に好ましくはC.I.ピグメントイエロー139、150、または185である。
【0036】
赤色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、12、14、15、16、17、21、22、23、31、32、37、38、41、47、48、48:1、48:2、48:3、48:4、49、49:1、49:2、50:1、52:1、52:2、53、53:1、53:2、53:3、57、57:1、57:2、58:4、60、63、63:1、63:2、64、64:1、68、69、81、81:1、81:2、81:3、81:4、83、88、90:1、101、101:1、104、108、108:1、109、112、113、114、122、123、144、146、147、149、151、166、168、169、170、172、173、174、175、176、177、178、179、181、184、185、187、188、190、193、194、200、202、206、207、208、209、210、214、216、220、221、224、230、231、232、233、235、236、237、238、239、242、243、245、247、249、250、251、253、254、255、256、257、258、259、260、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276などを挙げることができる。
赤色顔料と同様にはたらくオレンジ色顔料としては、例えばC.I.ピグメントオレンジ36、38、43、51、55、59、61等を挙げることができる。
これらの中でも、好ましくはC.I.ピグメントレッド48:1、122、168、177、202、206、207、209、242、254を挙げることができ、更に好ましくはC.I.ピグメントレッド177、または254である。
【0037】
紫色顔料としては、例えばC.I.ピグメントバイオレット1、1:1、2、2:2、3、3:1、3:3、5、5:1、14、15、16、19、23、25、27、29、31、32、37、39、42、44、47、49、50などを挙げることができる。こ
れらの中でも、好ましくはC.I.ピグメントバイオレット19、または23であり、更に好ましくはC.I.ピグメントバイオレット23である。
【0038】
本発明においては、青色顔料、緑色顔料、黄色顔料、赤色顔料、紫色顔料の中から選択された少なくとも2種の有機または無機の顔料を混合して黒色色材として使用することができるが、必要に応じて、カーボンブラックや他色の有機顔料、各種無機顔料、各種染料等を併用して色調調整しても良い。
【0039】
本発明の第一層形成用組成物(a’)に用いる黒色色材としては、上記のようにカーボンブラック、チタンブラック、もしくは青色顔料、緑色顔料、黄色顔料、赤色顔料、紫色顔料の中から選択された少なくとも3種の有機または無機の顔料を混合して使用できる他、第一層(a)を形成した際のL*値が10以下となる材料であれば、いかなる色材であっても構わない。これらのうち黒色色材として、カーボンブラックを含まない形態は積層体の体積抵抗率を高くすることができるため、さらにカーボンブラックまたはチタンブラックを含まず、青色顔料、緑色顔料、黄色顔料、赤色顔料、紫色顔料の中から選択された少なくとも3種の有機または無機の顔料を混合して用いる形態は熱吸収を低く抑えることができるため、特に好ましい。
【0040】
カーボンブラックまたはチタンブラックを含まず、青色顔料、緑色顔料、黄色顔料、赤色顔料、紫色顔料の中から選択された少なくとも3種の有機または無機の顔料を混合して用いる形態で使用する有機顔料の組み合わせ、ならびに配合割合は、第一層(a)を形成した際のL*値が10以下であれば、特に制限されるものではないが、第一層形成用組成物(a’)中の全色材に対して、青色顔料が10~50質量%、黄色顔料が10~50質量%、赤色顔料及び/又は紫色顔料が10~50質量%の割合で配合されていることが、漆黒度の観点から好ましい。
【0041】
<第一層(a)>
第一層(a)は第一層形成用組成物(a’)を使用して得た層であり、少なくとも黒色色材とバインダーを含み、L*値が10以下を有するものである。第一層(a)をカラーベース層と呼ぶことがある。基材の上に第一層(a)が形成されていてもよい。
【0042】
基材としては、特に限定されるものではなく、鉄、アルミニウム、銅またはこれらの合金などの金属類、ガラス、セメント、コンクリート等の無機材料、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリカーボネード樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂類や各種フィルム、FRP等のプラスチック材料、木材、繊維材料(紙、布等)等の天然または合成材料等が挙げられる。
【0043】
第一層(a)を形成する方法としては、形成する物質により最適な方法を選択すれば良く、加熱硬化、真空蒸着、EB蒸着、スパッタ蒸着などのドライ法、キャスト、スピンコート、ディップコート、バーコート、スプレー、ブレードコート、スリットダイコート、グラビアコート、リバースコート、スクリーン印刷、鋳型塗布、印刷転写、インクジェットなどのウエットコート法、圧縮成形、押出成形、ブロー成形などの射出成型法等、一般的な方法を挙げることができる。
【0044】
第一層(a)の膜厚は0.5μm以上であることが好ましく、1μm以上であることがより好ましい。一方、0.5μm未満であると、積層体の黒度が低下する可能性がある。
【0045】
第一層(a)のL*値は、JIS Z8729で規定されるL*a*b*表色系における値であり、10以下が好ましい。第一層(a)のL*値は、基材上に積層された第一層の面方向から色差計を用いて測定できる。特に斯かる範囲であれば、漆黒性に優れた積層体が得られる。L*値が小さい程、黒度が高い(明度が低い)ことを示す。
【0046】
<第二層形成用組成物(b’)>
第二層(b)は、第二層形成用組成物(b’)から形成される。
第二層形成用組成物(b’)を得るには、カーボンナノチューブとバインダー、必要に応じて溶媒を、特に限定されるものではないが、例えば、ペイントシェーカー(レッドデビル社製)、ボールミル、サンドミル(シンマルエンタープライゼス社製「ダイノーミル」等)、アトライター、パールミル(アイリッヒ社製「DCPミル」等)、コボールミル、バスケットミル、ホモミキサー、ホモナイザー(エム・テクニック社製「クレアミックス」等)、湿式ジェットミル(ジーナス社製「ジーナスPY」、ナノマイザー社製「ナノマイザー」等)、フーバーマーラー、3本ロールミル、エクストルーダー等を使用して分散処理を行うことが好ましい。必要に応じて、分散剤や添加剤を加えても良い。
【0047】
第二層形成用組成物(b’)に用いるバインダーとしては、第一層形成用組成物(a’)に用いられるバインダーと同様のものが用いられる。第二層形成用組成物(b’)に用いるバインダーと第一層形成用組成物(a’)に用いられるバインダーとは同じであっても、異なっていてもよい。
【0048】
第二層形成用組成物(b’)に用いる溶媒は、特に限定されるものではなく、水、有機溶媒のいずれも用いることができる。有機溶媒としては第一層形成用組成物(a ’)に用いられる有機溶媒と同様のものが用いられる。第二層形成用組成物(b’)に用いる溶媒と第一層形成用組成物(a’)に用いられる溶媒とは同じであっても、異なっていてもよい。
【0049】
第二層形成用組成物(b’)は、さらに必要に応じて紫外線吸収剤、光安定剤、表面調整剤などを適宜添加でき、また各種着色顔料などを該塗膜の透明性が阻害されない程度に配合できる。
【0050】
第二層形成用組成物(b’)に用いるカーボンナノチューブは、グラファイトの1枚面を巻いて円筒状にした形状を有しており、そのグラファイト層が1層で巻いた構造を持つ単層カーボンナノチューブ、2層またはそれ以上で巻いた多層カーボンナノチューブでも、これらが混在するものであっても良いが、コスト面や着色効果の面から多層カーボンナノチューブであることが好ましい。また、カーボンナノチューブの側壁がグラファイト構造ではなく、アモルファス構造をもったカーボンナノチューブを用いることもできる。
【0051】
カーボンナノチューブの形状は、針状、円筒チューブ状、魚骨状(フィッシュボーン、カップ積層型)、トランプ状(プレートレット)、コイル状の形態などいずれの形態を有するものであってもよい。具体的には、例えばグラファイトウィスカー、フィラメンタスカーボン、グラファイトファイバー、極細炭素チューブ、カーボンチューブ、カーボンフィブリル、カーボンマイクロチューブ、カーボンナノファイバーなどを挙げることができる。これらの形態として1種または2種以上を組み合わせた形態において使用することができる。本発明は魚骨状(フィッシュボーン、カップ積層型)、トランプ状(プレートレット)、コイル状以外の形態であることが好ましい。魚骨状、トランプ状の場合は、樹脂組成物・成形体の製造時に発生するせん断応力によりカップ・トランプ状グラファイトシートの積層面(x-y面)よりカーボンナノチューブの切断が起こり、樹脂中に十分なネットワーク構造を形成できず、光閉じ込め効果が減少して黒度の低下に繋がる恐れがある。コイル状の場合も同様に、製造時にその3次元構造が破壊されやすく、着色効果が低下する可能性がある。一方、針状、円筒チューブ状の場合には、せん断応力による構造破壊が生じにくいため好ましい。
【0052】
本実施形態のカーボンナノチューブの外径は、分散の容易さや色相の観点から、1~500nmが好ましく、3~50nmがより好ましく、7~15nmであることがさらに好ましい。カーボンナノチューブの外径がこの範囲であると、漆黒性に優れた積層体を得ることができる。
【0053】
本実施形態のカーボンナノチューブの外径の標準偏差は2~8nmであることが好ましく、3~6nmであることがより好ましい。標準偏差がこれらの数値から外れてしまうとカーボンナノチューブ同士が凝集し易くなり、分散が困難になる場合があるため好ましくない。
【0054】
本実施形態のカーボンナノチューブの外径は次のように求められる。まず走査型電子顕微鏡によって、カーボンナノチューブを観測するとともに撮像する。次に観測写真において、任意の100本のカーボンナノチューブを選び、それぞれの外径を計測する。次に外径の数平均としてカーボンナノチューブの平均外径(nm)を算出すればよい。
【0055】
本実施形態のカーボンナノチューブは、通常二次粒子として存在している。この二次粒子の形状は、例えば一般的な一次粒子であるカーボンナノチューブが複雑に絡み合っている状態でもよい。カーボンナノチューブを直線状にしたものの集合体であってもよい。直線状のカーボンナノチューブの集合体である二次粒子は、絡み合っているものと比べるとほぐれ易い。また直線状のものは、絡み合っているものに比べると分散性が良いのでカーボンナノチューブとして好適に利用できる。
【0056】
本実施形態のカーボンナノチューブは、表面処理を行ったカーボンナノチューブでもよい。またカーボンナノチューブは、カルボキシル基に代表される官能基を付与させたカーボンナノチューブ誘導体であってもよい。また、有機化合物、金属原子、又はフラーレンに代表される物質を内包させたカーボンナノナノチューブも用いることができる。
【0057】
カーボンナノチューブの層構成は下記方法で粉末X線回折分析することにより解析することができる。
【0058】
まず、カーボンナノチューブを所定のサンプルホルダーに表面が平らになるように詰め、粉末X線回折分析装置にセットし、15°から35°までX線源の照射角度を変化させ測定する。X線源としては例えばCuKα線が用いられる。その時にピークが現れる回折角2θを読み取ることでカーボンナノチューブの評価が可能である。グラファイトでは通常2θが26°付近にピークが検出され、これが層間回折によるピークであることが知られている。カーボンナノチューブもグラファイト構造を有するため、この付近にグラファイト層間回折によるピークが検出される。ただし、カーボンナノチューブは円筒構造であるために、その値はグラファイトとは異なってくる。その値2θが25°±2°の位置にピークが出現することで単層ではなく、多層構造を有している組成物を含んでいることが判断できる。この位置に出現するピークは多層構造の層間回折によるピークであるため、カーボンナノチューブの層数を判断することが可能となる。単層カーボンナノチューブは層数が1枚しかないので、単層カーボンナノチューブのみでは25°±2°の位置にピークは出現しない。しかしながら、単層カーボンナノチューブであっても、100%単層カーボンナノチューブということはなく、多層カーボンナノチューブ等が混入している場合は2θが25°±2°の位置にピークが出現する場合がある。
【0059】
本実施形態のカーボンナノチューブは2θが25°±2°の位置にピークが出現する。また粉末X線回折分析により検出される25°±2°のピークの半価幅からも層構成を解析することができる。すなわち、このピークの半価幅が小さいほど多層カーボンナノチューブの層数が多いと考えられる。逆にこのピークの半価幅が大きいほど、カーボンナノチューブの層数が少ないと考えられる。
【0060】
本実施形態のカーボンナノチューブとしては、少なくとも多層カーボンナノチューブを含むことが好ましく、粉末X線回折分析を行った時に回折角2θ=25°±2°にピークが存在し、そのピークの半価幅が0.5°以上3°未満であることが好ましく、2°以上3°未満であることがより好ましい。半価幅がこの範囲内であると漆黒性に優れた積層体を得ることができる。
【0061】
本実施形態のカーボンナノチューブは、粉末X線回折分析において、回折角2θ=25°±2°にピークが存在し、そのピークの半価幅が0.5°以上3°未満であれば特に限定されず、どのような方法で製造したカーボンナノチューブでもよい。例えば、レーザーアブレーション法、アーク放電法、熱CVD法、プラズマCVD法及び燃焼法により、カーボンナノチューブを得た後、酸素濃度が1体積%以下の雰囲気中、加熱することで、カーボンナノチューブを得ることができる。加熱時の温度としては、700~2500℃が好ましく、900~2000℃がより好ましく、1200~1800℃がさらに好ましい。
【0062】
本実施形態のカーボンナノチューブの体積抵抗率は1.0×10-2~3.0×10-2Ω・cmであることが好ましく、1.5×10-2~2.5×10-2Ω・cmであることがより好ましい。カーボンナノチューブの体積抵抗率は粉体抵抗率測定装置((株)三菱化学アナリテック社製:ロレスターGP粉体抵抗率測定システムMCP-PD-51))を用いて測定することができる。
【0063】
本実施形態のカーボンナノチューブのBET比表面積は100~800m/gのものが好ましく、150~600m/gのものがより好ましく、150~400m/gのものが特に好ましい。
【0064】
本実施形態のカーボンナノチューブの繊維長は、0.1~150μmが好ましく、1~10μmがより好ましい。繊維長がこれらの範囲を外れると、分散性が悪化することにより漆黒性が低下する傾向があり、好ましくない。
【0065】
本実施形態のカーボンナノチューブの炭素純度はカーボンナノチューブ中の炭素原子の含有率(質量%)で表される。炭素純度はカーボンナノチューブ100質量%に対して、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、99質量%以上がさらに好ましく、99.5質量%以上がより好ましい。炭素純度が90質量%以上であると、漆黒性に優れた積層体を得ることができる。
【0066】
本実施形態のカーボンナノチューブ中に含まれる金属量はカーボンナノチューブ100質量%に対して、10質量%未満が好ましく、5質量%未満がより好ましく、1質量%未満がさらに好ましく、0.5質量%未満がより好ましい。金属量が10質量%以上であると、漆黒性が低下してしまう。カーボンナノチューブに含まれる金属としては、カーボンナノチューブを合成する際に触媒として使用される金属や金属酸化物が挙げられる。具体的には、コバルト、ニッケル、アルミニウム、マグネシウム、シリカ、マンガンやモリブデン等の金属、金属酸化物やこれらの複合酸化物が挙げられる。
【0067】
以上のような、本発明に使用できるカーボンナノチューブとしては、例えば、単層カーボンナノチューブとしては、日本ゼオン社製ZEONANO SG101(外径:3~5nm)、OCSiAl社製 TUBALL(外径:約2nm)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、多層カーボンナノチューブとしては、ARKEMA社製 Graphistre ngth(外径:10~15nm)、SUSUN Sinotech New Materials社製 HCNTs10(外径:10~20nm)、HCNTs40(外径:30~50nm)、Nanocyl社製 NC7000(外径:10nm)、NX7100(外径:10nm)、JEIO社製 JENOTUBE8A(外径:6~9nm)、JENOTUBE10A(外径:7~20nm)、JENOTUBE10B(外径:7~10nm)、Cnano社製 Flotube9100(外径:10~15nm)、Flotube9000(外径:10~15nm)、Flotube9110(外径:10~15nm)、Flotube7010(外径:7~11nm)、Kumho Petrochemical社製 K-Nanos100P(外径:10~15nm)、K-Nanos100T(外径:10~15nm)、K-Nanos200P(外径:5~15nm)、Shenzhen Nanotech Port社製 NTP3121(外径:20~35nm)、NTP3221(外径:15~25nm)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0068】
<第二層(b)>
第二層(b)は、第二層形成用組成物(b’)を使用して得た層であり、第二層(b)を構成する全固形分中にカーボンナノチューブを0.1~10質量%含有するものである。カーボンナノチューブの含有量が0.1質量%未満であると光の吸収が不十分になり漆黒性が低下し、また10質量%を超えると塗膜の体積抵抗率が低下するため好ましくない。カーボンナノチューブの含有量は0.1~3質量%であることがより好ましく、0.2~1質量%であることがさらに好ましい。第二層(b)をカラークリア層と呼ぶことがある。
また、第二層(b)の表面には、後述のような特定の微細凹凸構造を有している。
【0069】
<表面の粗さパラメーター>
本発明の積層体を構成する第二層(b)の表面は、高さ方向の表面粗さパラメーターである算術平均粗さRaが0.2~2.5μm、横方向の表面粗さパラメーターである粗さ曲線要素の平均長さRSmが0.1~2.5μm、RSm及びRaの比率(RSm/Ra)が0.1~3となる微細凹凸構造を有している。
表面粗さパラメーターRa及びRSmは、JIS B0601:2001に準拠した方法で測定した値を示す。Raは算術平均粗さを表し、粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さだけを抜き取り、この抜取り部分について、平均線の方向にX軸を、縦倍率の方向にZ軸を取り、粗さ曲線を式:Z=f(x)で表し、基準長さをlrで表したときに、次の式によって求められる値である。RSmは、基準長さ(lr)中に輪郭曲線要素がm個あり、各輪郭曲線要素の長さXsの平均であり、次の式によって求められる値である。
【0070】
【数1】
【0071】
【数2】
【0072】
本発明の積層体を構成する第二層(b)表面のRaは、0.2μm~2.5μmである。Raが0.2μm以上であることで、凸部位は十分な高さを有し、入射した光を確実に吸収して外部に光を漏れ出すことを抑制し、低反射化及び高漆黒性を発現する。2.5μm以下とすることで、膜表面の見掛け上の屈折率を空気層に近似することができるため、表面からの入射光の反射を抑制し、低反射化及び高漆黒性を発現する。
【0073】
本発明の積層体を構成する第二層(b)表面のRSmは、0.1μm~2.5μmである。0.1μm以上であることで凹凸構造体が小さくなり過ぎず光の反射を防ぐことと、凹凸構造の体積が十分であることで光の吸収性を確保できるため低反射化及び高漆黒性を発現する。2.5μm以下とすることで、凹凸構造が入射した光に対して大きくなり過ぎず、入射した光を確実に吸収して外部に光を漏れ出すことを抑制し、低反射化及び高漆黒性を発現する。
【0074】
また、近赤外線の反射を抑制する場合には、RSmは0.3μm以上であることが好ましい。入射光の波長に対して凹凸構造が小さすぎると入射光は反射してしまうが、波長が0.7μm近辺の可視光領域では、RSmが0.3μm以上である場合、反射が抑制されるため好ましい。さらに長波長の近赤外領域になるとこの傾向は顕著であり、RSmが0.3μm以上である場合、近赤外光の反射が抑制されるため好ましい。
【0075】
本発明の積層体を構成する第二層(b)表面のRSm/Raは0.1~3である。RSm/Raが0.1以上であることで、塗膜中の凸部位は、十分な量が存在することになり、入射した光を確実に吸収して外部に光を漏れ出すことを抑制し、低反射化及び高漆黒性を発現する。RSm/Raが3以下であることで、膜表面の見掛け上の屈折率を空気層に近似することができるため、表面からの入射光の反射を抑制し、低反射化及び高漆黒性を発現する。
【0076】
また、本発明において、微細凹凸構造の凸部位の高さ、幅、間隔は、バラツキを有しランダムであっても良い。
【0077】
第二層(b)表面に特定の微細凹凸構造を付与する方法は、特に制限されず、特定の表面状態と同様の微細形状(以下、パターンともいう)を有する型(以下、モールドともいう)を用いた光ナノインプリント法若しくは熱ナノインプリント法等のナノインプリント法のほか、フォトリソグラフィー法、射出成型法等を用いることができ、複数を組み合わせてもよい。
第二層(b)表面に特定の微細凹凸構造を付与する方法としては、形状再現性の観点から光ナノインプリント法が好適に用いられる。具体的には、第二層形成用組成物(b’)のバインダーとして、オリゴマー及び/又はモノマーを含む電子線又は紫外線硬化性材料を使い、第一層(a)上に第二層形成用組成物(b’)を塗布してパターン形成用膜を作製し、当該パターン形成用膜表面に光透過性モールドを圧接し、モールドパターンを転写する加工を行い、パターンが転写され特定の表面形状となった膜をモールドの裏面から露光して硬化させ、特定の表面形状を付与する。
【0078】
モールドは、転写されるべきパターンを有するモールドを使用する。モールドへのパターン形成方法は特に制限されず、例えば、フォトリソグラフィーや電子線描画法等によって、所望する加工精度に応じてパターンを形成することができる。光透過性モールド材の材質は特に限定されず、所定の強度、耐久性を有するものであれば良い。具体的には、ガラス、石英、PMMA、ポリカーボネート樹脂等の光透明性樹脂、透明金属蒸着膜、ポリジメチルシロキサン等の柔軟膜、光硬化膜、金属膜等が挙げられる。
また、第二層(b)との剥離性を向上するために、離型処理されたモールドを用いてもよく、シリコーン系やフッソ系等のシランカップリング剤による処理を行ったものを好適に用いることができる。
【0079】
また第二層(b)表面に特定の微細凹凸構造を付与する方法として、フォトリソグラフィー法で作製することも好ましいが、この場合には、第一層(a)の上に第二層形成用組成物(b’)を塗布し光硬化させた後、再度第二層形成用組成物(b’)を塗布し、特定の微細パターンを有するフォトマスクを介して光硬化させ、その後アルカリ現像することで、表面に特定の微細凹凸構造を有する第二層(b)を形成することができる。
【0080】
第二層(b)を第一層(a)上に形成する方法としては、形成する物質により最適な方法を選択すれば良く、キャスト、スピンコート、ディップコート、バーコート、スプレー、ブレードコート、スリットダイコート、グラビアコート、リバースコート、スクリーン印刷、鋳型塗布、印刷転写、インクジェットなどのウエットコート法等を挙げることができる。
【0081】
また第二層(b)表面に特定の微細凹凸構造を付与する方法として、射出成型法で表面に微細凹凸構造を有するフィルムを作製し、別途用意した第一層(a)表面に貼付することで、本発明の積層体を作製することもできる。
【0082】
第二層(b)の波長380~780nmにおける平均透過率は5~80%であることが好ましく、10~30%であることがさらに好ましい。特に斯かる範囲であれば、漆黒性に優れた積層体が得られる。
【0083】
平均透過率は、基材としてPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム(東レ株式会社製、ルミラー100、T60)を用い、このフィルム上に第二層形成用組成物(b ’)をバーコーターで塗布した積層体について、紫外可視近赤外分光光度計(日立製作所社製、UV-3500)を用い、波長300~1500nmにおける透過スペクトルを5nmの範囲で測定し、波長380~780nmの各透過率の加重平均値を求めることで算出できる。
【0084】
第二層(b)の膜厚は0.5μm以上であることが好ましく、1μm以上であることが
より好ましい。斯かる範囲であれば、漆黒性に優れた積層体が得られる。
【0085】
<積層体>
本発明の積層体は少なくとも第一層(a)と第二層(b)の二層から構成されていれば、第一層(a)と第二層(b)との間に他の層が設けられていてもよい。
【0086】
また、積層体は基材の上に第一層(a)が形成されていてもよい。
【0087】
基材としては、特に限定されるものではなく、鉄、アルミニウム、銅またはこれらの合金などの金属類、ガラス、セメント、コンクリート等の無機材料、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン― 酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリカーボネード樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂エポキシ樹脂等の樹脂類や各種フィルム、FRP等のプラスチック材料、木材、繊維材料(紙、布等)等の天然または合成材料等が挙げられる。
【0088】
塗工法で本発明の積層体を形成方法においては、第一層(a)を硬化させることなく第二層(b)を形成し、その後塗膜を硬化させる方法(ウェットオンウェット法)、および、第一層(a)を硬化させ、次に第二層(b)を硬化させる方法(ウェットオンドライ法)のどちらも適用可能である。
【0089】
また、第一層(a)と第二層(b)のフィルムを別々に用意し、第二層(b)の平坦面(特定の微細凹凸構造を有するのと逆の面)を第一層(a)に貼付することによって積層体を作製する方法や、第一層形成用組成物(a’)を基材上に塗布、硬化させ、その上に第二層(b)フィルムを貼付する方法、第一層(a)フィルムを作製し、その上に第二層形成用組成物(b’)を塗布、硬化させる方法等であっても構わない。
【0090】
<漆黒性>
本発明の積層体のJIS Z8729に基づいたL*、a*、b*表色系におけるL*値は5.0以下であることが好ましく、3.0以下であることがより好ましく、2.0以下であることがさらに好ましい。L*値が小さい程、黒度が高い(明度が低い)ことを示すため、漆黒性に優れた積層体となる。
また、a*値は-2.0以上、2.0以下であることが好ましく、b*値は-2.0以上0.5以下であることが好ましく、-2.0以上0以下であることがより好ましく、- 2.0以上-1.0以下であることがさらに好ましい。a*値とb*値はゼロ(0)に近い値である程、黒い色相であると言える。また、b*値がマイナスである程、青味(青色)が強い色相であると言える。漆黒性という観点では、若干青味(青色)を有する黒色であることが好ましい。
【0091】
積層体のJIS Z8729で規定されるL*、a*、b*表色系における明度(L*値)および色度(a*値、b*値)は、分光測色計(例えば、コニカミノルタ株式会社製、CM-700d)を用いて測定することによって得られる。
【0092】
<低反射性>
また、積層体表面から光を当てた時の正反射率と拡散反射率を合計した値を全反射率と定義したとき、本発明の積層体の400~700nmにおける全反射率の最大値は、好ましくは2.0%以下、より好ましくは1.5%以下であり、さらに好ましくは1.0%以下である。全反射率の最大値が2.0%以下であることで、低反射性が発現し、蛍光灯等の映り込み等の外観不良が目立たなくなり、さらに漆黒性の高い膜となる。全反射率は、分光測色計(例えば、コニカミノルタ株式会社製、CM-700d)によって測定される。
【0093】
<体積抵抗率>
本発明の積層体を構成する第一層(a)の体積抵抗率は、1.0×1011Ω・cm以上であることが好ましく、1.0×1012Ω・cm以上であることがより好ましく、1.0×1013Ω・cm以上であることがさらに好ましい。第一層(a)の体積抵抗率が1.0×1011Ω・cm以上であると、電気的部材に使用した場合でも不具合が発生しづらいことから好ましい。
【実施例
【0094】
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。例中、特に断わりのない限り、「部」とは「質量部」、「%」とは「質量%」をそれぞれ意味する。また、「カーボンナノチューブ」を「CNT」、「カーボンブラック」を「CB」と略記することがある。
【0095】
各実施例及び比較例において使用されたCNTの物性は以下の方法により測定した。使用したCNTとその物性値を表1に示す。
【0096】
【表1】
【0097】
<CNTの外径>
走査型電子顕微鏡(日本電子(JEOL)社製:JSM-6700M)を用いて、加速電圧5kVにてCNTを観察し、5万倍の画像(画素数1024X1280)を撮影した。次いで、撮影された画像にて任意のCNT100個について、各々の短軸長を測定し、それら短軸長の数平均値をCNTの外径とした。
【0098】
<CNTの粉末X線回折分析>
アルミ試料板(外径φ46mm、厚さ3mm、試料部φ26.5mm、厚さ2mm)の中央凹部にCNTをのせ、スライドガラスを用いて、平坦化した。その後、CNTを載せた面に薬包紙をのせ、さらにアルミハイシートパッキンをのせた面に対して、1トンの荷重をかけて平坦化した。その後、薬包紙とアルミハイシートパッキンを除去して、CNTの粉末X線回折分析用サンプルを得た。その後、X線回折装置(Ultima2100、株式会社リガク社製)にCNTの粉末X線回折分析用サンプルを設置し、15°から35°まで操作し、分析を行った。サンプリングは0.02°毎に行い、スキャンスピードは2°/min.とした。電圧は40kV、電流は40mA、X線源はCuKα線とした。この時得られる回折角2θ=25°±2°に出現するプロットをそれぞれ11点単純移動平均し、そのピークの半価幅をCNTの半価幅とした。ベースラインは2θ=16°および2θ=34°のプロットを結んだ線とした。
【0099】
<CNTの体積抵抗率>
粉体抵抗率測定装置((株)三菱ケミカルアナリテック社製:ロレスターGP粉体抵抗率測定システムMCP-PD-51)を用い、試料質量1.2gとし、粉体用プローブユニット(四探針・リング電極、電極間隔5.0mm、電極半径1.0mm、試料半径12.5mm)により、印加電圧リミッタを90Vとして、種々加圧下の導電性粉体の体積抵抗率[Ω・cm]を測定した。1g/cmの密度におけるCNTの体積抵抗率の値について評価した。
【0100】
<CNT純度の測定>
CNTをマイクロ波試料前処理装置(マイルストーンゼネラル社製、ETHOS1)を使用し、酸分解し、CNTに含まれる金属を抽出した。その後、マルチ型ICP発光分光分析装置(Agilent社製、720-ES)を用いて分析を行い、抽出液に含まれる金属量を算出した。CNTの純度は次のようにして計算した。
CNT純度(%)=((CNT質量-CNT中の金属質量)÷CNT質量)×100
【0101】
<樹脂の重量分子量(Mw)>
樹脂の重量平均分子量(Mw)はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(東ソー社製HLC-8220)を用いて測定した。検量線は標準ポリスチレンサンプルにより作成した。また、溶離液としてテトラヒドロフランを用い、カラムとしてTSKgel SuperHM-M(東ソー社製)を3本用いた。測定は、流速1.0mL/分、注入量10μL、及びカラム温度40℃の条件下で行った。
【0102】
(バインダー溶液の作製)
セパラブル4口フラスコに温度計、冷却管、窒素ガス導入管、滴下管および撹拌装置を取り付けた反応容器にシクロヘキサノン196部を仕込み、80℃に昇温し、反応容器内を窒素置換した後、滴下管より、n-ブチルメタクリレート37.2部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート12.9部、メタクリル酸12.0部、パラクミルフェノールエチレンオキサイド変性アクリレート(東亞合成社製「アロニックスM110」)20.7部、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル1.1部の混合物を2時間かけて滴下した。滴下終了後、更に3時間反応を継続し、アクリル樹脂の溶液を得た。室温まで冷却した後、樹脂溶液約2部をサンプリングして180℃、20分間加熱乾燥して不揮発分を測定し、先に合成した樹脂溶液に不揮発分が40%になるようにメトキシプロピルアセテートを添加してバインダー溶液を調製した。重量平均分子量(Mw)は26,000であった。
【0103】
<顔料分散液>
(顔料分散液-1の作製)
下記の混合物を均一になるように攪拌混合した後、直径0.5mmのジルコニアビーズを用いて、ペイントシェーカーで60分間分散した後、5μmのフィルタで濾過して顔料分散液-1を作製した。
リオノールブルーES(ピグメントブルー15:6、トーヨーカラー社製):7.4部
イルガフォーレッドB-CF(ピグメントレッド254、BASF社製):5.8部
E4GN(ピグメントイエロー150、ランクセス社製):6.8部
分散剤アジスパーPB-821(味の素ファインテクノ社製):6.0部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMAc):74.0部
【0104】
(顔料分散液-2の作製)
配合を下記の組成に変更した以外は、上記の顔料分散液-1と同様にして、顔料分散液-2を作製した。
リオノールブルーES(ピグメントブルー15:6、トーヨーカラー社製):8.0部
リオノゲンバイオレットRL(ピグメントバイオレット23、トーヨーカラー社製):4.2部
パリオトールイエローD1819(ピグメントイエロー139、BASF社製):7.8部
分散剤アジスパーPB-821(味の素ファインテクノ社製):6.0部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMAc):74.0部
【0105】
(顔料分散液-3の作製)
配合を下記の組成に変更した以外は、上記の顔料分散液-1と同様にして、顔料分散液-3を作製した。
リオノールブルーES(ピグメントブルー15:6、トーヨーカラー社製):7.8部
イルガフォーレッドB-CF(ピグメントレッド254、BASF社製):6.2部
タイペークイエロー50(ピグメントイエロー53、石原産業社製):12.0部
分散剤アジスパーPB-821(味の素ファインテクノ社製):6.0部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMAc):68.0部
【0106】
(顔料分散液-4の作製)
配合を下記の組成に変更した以外は、上記の顔料分散液-1と同様にして、顔料分散液-4を作製した。
MA-100(カーボンブラック、粒子径24nm、DBP吸油量100cm3/100g、三菱ケミカル社製):20.0部
分散剤アジスパーPB-821(味の素ファインテクノ社製):6.0部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMAc):74.0部
【0107】
(顔料分散液-5の作製)
配合を下記の組成に変更した以外は、上記の顔料分散液-1と同様にして、顔料分散液-5を作製した。
13M-C(チタンブラック、三菱マテリアル社製):24.0部
分散剤アジスパーPB-821(味の素ファインテクノ社製):6.0部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMAc):70.0部
【0108】
【表2】
【0109】
<第一層形成用組成物>
(a’-1の作製)
下記の混合物を均一になるように攪拌混合した後、1μmのフィルタで濾過して第一層形成用組成物(a’-1)を作製した。
顔料分散液-1:100部
スチレン-アクリル樹脂(ジョンクリル683、ジョンソンポリマー社製):14部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMAc) :126部
【0110】
(a’-2~6の作製)
表3の配合組成に変更した以外は、上記のa’-1と同様にして、第一層形成用組成物(a’-2~6)を作製した。
【0111】
(a’-10の作製)
下記の混合物を均一になるように攪拌混合した後、1μmのフィルタで濾過して第一層形成用組成物(a’-10)を作製した。
顔料分散液-1:50部
バインダー溶液(不揮発分40質量%):10部
DPHA(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ダイセルオルネクス社製):15部
OXE02(オキシムエステル系光重合開始剤、IGM Resins B.V社製):1部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMAc):24部
【0112】
(CL-1の作製)
下記の混合物を均一になるように攪拌混合した後、1μmのフィルタで濾過してCL-1を作製した。
スチレン-アクリル樹脂(ジョンソンポリマー社製、ジョンクリル683):30部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMAc) :150部
【0113】
[第一層(a)の体積抵抗率]
150nm厚のITO膜をスパッタ法により成膜したガラス基板上に、乾燥膜厚2.5μmとなるように第一層形成用組成物(a’)をスピンコーターで塗布し、乾燥・硬化させて第一層(a)を作製した。このサンプルのITO膜を主電極とし、第一層(a)上に金の対向電極を蒸着法により形成した。体積抵抗率はKEITHLEY社製237型SMUを用いて、印加電圧10Vでの電流値を測定することで、第一層(a)の体積抵抗率を求めた。結果を表3に示す。
【0114】
[第一層(a)のL*値]
第一層(a)のL*値は、上記被膜サンプルを分光測色計(コニカミノルタ社製、CM-700d)を用い、視野角10°、光源D65の条件で測定した。結果を表3に示す。
【0115】
【表3】
【0116】
<第二層形成用組成物>
(b’-1の作製)
下記の混合物を均一になるように攪拌混合し、直径1mmのジルコニアビーズを用いて、ペイントシェーカーで60分間分散した後、1μmのフィルタで濾過して第二層形成用組成物(b’-1)を作製した。
CNT-1(Flotube7010、Cnano社製):0.2部
バインダー溶液(不揮発分40質量%):25.3部
DPHA(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ダイセルオルネクス社製):30部
OXE02(オキシムエステル系光重合開始剤、IGM Resins B.V社製):2部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMAc):42.5部
【0117】
(b’-2~7、CL-2の作製)
表4の配合組成に変更した以外は、上記のb’-1と同様にして、第二層形成用組成物(b’-2~7、CL-2)を作製した。
【0118】
【表4】
【0119】
なお、表4で使用した原料は下記のとおりである。
TMPTA:トリメチロールプロパントリアクリレート、新中村化学社製
イルガキュア907:光重合開始剤、BASF社製
EAB-F:増感剤、保土谷化学工業社製
【0120】
[実施例1]
(積層体1の作製)
得られた第一層形成用組成物(a’-1)をスピンコーターを用いて透明ガラス基板(コーニング社製、イーグル2000)上に塗工し、クリーンオーブン中60℃で5分乾燥(プリベーク)した後、230℃で20分加熱(ポストベーク)して溶剤を除去し、厚さ2.5μmの第一層(a-1)を得た。
この第一層(a-1)を室温に冷却後、得られた(a-1)上に第二層形成用組成物(b’-1)をスピンコーターを用いて塗工し、クリーンオーブン中80℃で20分間乾燥して溶剤を除去し、厚さ3μmのカラークリア塗膜を形成した。得られたカラークリア塗膜に、石英板の表面をドライエッチングによって特定の表面状態を形成した透明モールド(Ra=0.3μm、RSm=0.3μm、RSm/Ra=1.0)を用いて、下記条件で光ナノインプリントを用い、モールドを離脱させることにより、第一層(a-1)上に表面に特定の微細凹凸構造を有する第二層(b-1)を積層した積層体1を作製した。
≪ナノインプリント条件≫
装置名:SCIVAX社製、X-100U
プレス圧 0.7MPa
保持時間:100秒
照度:30.0mW/cm(波長365nmのLED光源)
露光時間:100秒(モールド裏面からの光照射)
なお塗膜の膜厚は、Dektak 8(日本真空技術社製)を用いて測定した。
【0121】
[実施例2~14、比較例1、3~5]
(積層体2~14、101、103~105の作製)
表5に記載の第一層形成用組成物、第二層形成用組成物、透明モールドを使用した以外は全て実施例1と同様にして、積層体2~13、101,103~105を作製した。
【0122】
[実施例15]
(積層体15の作製)
実施例1と同様にして、透明ガラス基板(コーニング社製、イーグル2000)上に厚さ2.5μmの第一層(a-1)を得た。次に、得られた(a-1)上に第二層形成用組成物(b’-7)をスピンコーターを用いて塗工し、クリーンオーブン中70℃で15分間加温して溶剤を除去して1μmの塗膜を得た。次に超高圧水銀ランプを用いて紫外線を露光し、クリーンオーブン中230℃で30分間加熱して溶剤を完全に除去し、塗膜を得た。基板を室温に冷却後、この塗膜上にもう一度、第二層形成用組成物(b’-7)を塗工し、クリーンオーブン中70℃で15分間加温して溶剤を除去し1μmの塗膜を得た。次いで1.2μm幅(ピッチ2.4μm)ストライプパターンのフォトマスクを介して、再び超高圧水銀ランプを用いて紫外線を露光した。その後、この基板を23℃の炭酸ナトリウム水溶液を用いてスプレー現像した後、イオン交換水で洗浄、風乾し、クリーンオーブン中230℃で30分間加熱することによって、第一層(a-1)上に表面に特定の微細凹凸構造を有する第二層(b-7)を積層した積層体15を作製した。
【0123】
[実施例16]
(積層体16の作製)
第一層形成用組成物として、実施例15の(a’-1)に変えて(a’-3)を用いた以外は全て実施例15と同様にして、積層体16を作製した。なお、本明細書で実施例15~16は参考例である。
【0124】
[比較例2]
(黒色膜102の作製)
第一層形成用組成物(a’-10)をスピンコート法によりガラス基板に塗工し、クリーンオーブン中で80℃で20分加温して溶剤を除去し、厚さ3μmの黒色塗膜を形成した。得られた黒色塗膜に、石英板の表面をドライエッチングによって特定の表面状態を形成した透明モールド(Ra=0.3μm、RSm=0.3μm、RSm/Ra=1.0)を用いて、実施例1と同様の条件で光ナノインプリントを用い、モールドを離脱させることにより、黒色膜102を作製した。
【0125】
【表5】
【0126】
<積層体の評価>
得られた積層体について、以下の評価を実施した。結果を表6に示す。
【0127】
[表面粗さパラメーター]
積層体の表面粗さRa及びRSmは、前記の通りJIS B0601:2001に準拠した方法で測定した。
【0128】
[最大反射率]
積層体の第二層表面からの反射率は、白色校正板の上に各積層体を載せ、400nm~700nmの全反射率を分光測色計(コニカミノルタ社製、CM-700d)を用い、視野角10°、光源D65の条件で測定した。なお、全反射率とは正反射率と拡散反射率を合計したものであり、400~700nmの測定値のうち最大の全反射率を最大反射率とした。
【0129】
[L*値]
積層体の第二層表面からのL*値は、白色校正板の上に各積層体を載せ、分光測色計(コニカミノルタ社製、CM-700d)を用い、視野角10°、光源D65の条件で測定した。L*の測定値から下記の基準で漆黒性を評価した。
◎:L*値が2.0以下
○:L*値が2.0を超え、5.0以下
×:L*値が5.0を超える
【0130】
【表6】
【0131】
表6の結果から、L*値が10以下の第一層(a)の上に、表面に特定の微細凹凸構造を有する第二層(b)が積層された積層体は、優れた低反射性と漆黒性を示した。また表3の結果から、第一層形成用組成物(a’)の黒色色材としてカーボンブラックを含まない場合、第一層(a)の体積抵抗率が高い値を示した。
一方、比較例1では第一層(a)のL*値が10を超えるため、低反射性、漆黒性ともに十分でない結果であった。比較例2では第二層(b)を積層していないため、比較例3では第二層(b)は積層されているもののカーボンナノチューブを含有していないため、いずれも漆黒性が不十分であった。また比較例4では第二層(b)にカーボンナノチューブではなくカーボンブラックを含有するため、漆黒性は十分であったが、低反射性が不十分な結果であった。さらに比較例5では第二層(b)が特定の表面粗さパラメーターを満足していないため、低反射性が極めて悪い結果であった。
【産業上の利用可能性】
【0132】
本発明の積層体は、特に黒色低反射膜として、レンズ保持部材、カメラ、顕微鏡、双眼鏡、望遠鏡、内視鏡等の撮像光学部材、プロジェクタ等の投影光学部材、レーザー装置、分光光度計、放射温度計、センサー部材、照明装置等の光学部材、治具などに用いることで迷光防止効果が期待できる。加えて、家電や家具の外装、自動車内外装、建材、衣類、壁紙、看板などに用いることで、低反射性かつ平滑性を併せ持つ、意匠性部材としても利用でき、また、その低反射性を活用した防眩部材にも用いることができる。さらに、複数の画素と、前記複数の画素の間に配置される遮光部とを有する表示装置における前記遮光部として用いることができる。黒色度が高く低反射の遮光部を画素間に設けることにより、コントラストの向上が期待できる。あるいは、アレイ型表示装置において最表面で使用することにより、外光反射防止層としての効果も期待できる。その他にも、低反射性からもたらされる光吸収性を利用した、太陽光発電用パネルの部材、太陽熱集熱パネル、光熱変換部材にも用いることができる。