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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】圧延材の形状制御システム
(51)【国際特許分類】
   B21B 37/32 20060101AFI20231129BHJP
   B21B 1/22 20060101ALI20231129BHJP
   B21B 27/10 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
B21B37/32 C
B21B1/22 J
B21B27/10 C
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020009895
(22)【出願日】2020-01-24
(65)【公開番号】P2021115589
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-01-27
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新居 稔大
【審査官】池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-274101(JP,A)
【文献】特開平05-042314(JP,A)
【文献】特開平03-020610(JP,A)
【文献】特開2010-125453(JP,A)
【文献】特開2016-144821(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21B 37/00 - 37/78
B21B 1/00 - 11/00
B21B 47/00 - 99/00
B21B 27/00 - 35/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧延ロールと、
前記圧延ロールの出側、かつ、前記圧延ロールの胴長方向に分割された複数のゾーンごとに設けられ、圧延材の実績形状を前記複数のゾーンごとに計測する計測器と、
前記圧延ロールの入側、かつ、前記複数のゾーンごとに設けられ、前記複数のゾーンに向けてクーラントをそれぞれ噴射する複数のノズルと、
前記実績形状と目標形状の偏差に基づいて、前記複数のノズルによるクーラントの噴射動作を個別に制御する形状制御を行う制御装置と、
前記噴射動作の基本動作または反転動作と、圧延材の材種区分との関係を示すスイッチテーブルと、前記基本動作または反転動作の対象とされるノズルと、圧延材の板幅区分との関係を示すノズルテーブルと、が格納された記憶装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記形状制御において、
前記圧延ロールによって圧延される圧延材の材種区分を用いた前記スイッチテーブルの参照と、当該圧延材の板幅区分を用いた前記ノズルテーブルの参照とを行って、前記複数のノズルによる個別の前記噴射動作として前記基本動作または前記反転動作を選択し、
前記基本動作が選択されたノズルに対しては、前記偏差が閾値よりも小さい場合には当該ノズルからのクーラントの噴射流量を所定流量に設定し、前記偏差が前記閾値よりも大きい場合には当該ノズルからのクーラントの噴射流量を最低流量に設定し、
前記反転動作が選択されたノズルに対しては、前記偏差が前記閾値よりも大きい場合には当該ノズルからのクーラントの噴射流量を前記所定流量に設定し、前記偏差が前記閾値よりも小さい場合には当該ノズルからのクーラントの噴射流量を前記最低流量に設定する
ことを特徴とする圧延材の形状制御システム。
【請求項2】
前記制御装置は、更に、所定の学習期間における前記偏差に基づいて、前記ノズルテーブルにおける前記基本動作または反転動作の対象とされるノズルの情報を更新する反転学習処理を行う
ことを特徴とする請求項1に記載の圧延材の形状制御システム。
【請求項3】
前記スイッチテーブルは、圧延材の材種区分を変えた圧延において、形状制御による当該圧延材の平坦化効果が得られる前記圧延ロールの胴長方向における複数のゾーンを特定し、又は、形状制御による当該圧延材の平坦化効果とは逆の効果がもたらされる前記圧延ロールの胴長方向における複数のゾーンを特定することにより作成されたものであり、
前記ノズルテーブルは、圧延材の板幅区分を変えた圧延において、形状制御による当該圧延材の平坦化効果が得られない前記圧延ロールの胴長方向における複数のゾーンを特定することにより作成されたものである
ことを特徴とする請求項1または2に記載の圧延材の形状制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、金属箔などの圧延材の平坦度を制御する形状制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な圧延材の形状制御では、形状偏差に基づいて制御用アクチュエータの操作量が設定される。形状偏差は、形状計により得られた圧延材の実績形状と、目標形状の差である。形状計は、圧延ロールの胴長方向に複数に分割されたゾーンごとに設置されている。つまり、実績形状は、ゾーンごとに得られる。形状偏差の計算および操作量の設定も、ゾーンごとに行われる。制御用アクチュエータとしては、ロールベンダー、レベリングおよびクーラントスプレーが例示される。
【0003】
ロールベンダーは、圧延ロールの撓みを変更することにより平坦度を制御する。レベリングは、左右のロールギャップ差の操作により平坦度を制御する。クーラントスプレーは、ゾーンごとにノズルを備える。クーラントスプレーは、これらのノズルから噴射されるクーラントの流量の調整により平坦度を制御する。または、クーラントスプレーは、ノズルのバルブの開閉を切り替えることにより平坦度を制御する。
【0004】
圧延機の出側の板厚が10μm程度となるような金属箔の圧延では、板幅方向の両端よりも外側において上下の圧延ロールが接触する。そのため、このような金属箔の圧延には、ロールベンダーやレベリングを用いた形状制御よりも、クーラントスプレーを用いた形状制御の方が適している。
【0005】
クーラントスプレーを用いた形状制御では、ゾーンごとに計算された形状偏差に基づいて、クーラントの噴射流量が増減される。または、ノズルの近傍における形状偏差が閾値を超えるか否かの判定に基づいて、バルブの開閉が切り替えられる。この切り替えは、予め指定した制御周期における流量率に基づいて行われることもある。流量率は、制御周期に対する開期間の比に100を乗じた値である。
【0006】
形状偏差と閾値の比較の結果に基づいて、バルブの開閉を切り替えられる場合について述べる。実績形状が目標形状よりもルーズなゾーンがある場合、そのゾーンに対応するバルブが開状態に制御される。そうすると、クーラントによって圧延ロールの熱膨張が局所的に抑えられ、ルーズな状態が緩和される。反対に、実績形状が目標形状よりもタイトなゾーンがある場合、そのゾーンに対応するバルブが閉状態に制御される。そうすると、圧延ロールの熱膨張が局所的に促され、タイトな状態が緩和される。
【0007】
ところで、アルミニウムの箔圧延では、クーラントスプレーを用いた形状制御の実行が、上述した平坦化効果とは逆の効果を招くことがある。この逆効果に関し、特開2009-274101号公報には、バルブが開状態に制御されているにも関わらず、ルーズな状態が更に進む現象が示されている。この公報には、また、逆効果に対処するためのバルブ制御が開示されている。このバルブ制御では、バルブを開状態に制御したときの形状偏差の度合いと、バルブを閉状態に制御したときのそれとが比較される。そして、より小さな度合いを示す状態となるように全てのバルブが一律に制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2009-274101号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、クーラントスプレーを用いた形状制御の実行が裏目に出る現象は、圧延材の板幅方向の全域で発生するとは限らない。すなわち、板幅方向の一部の領域のみで逆効果となることがある。そのため、全てのバルブを一律に開状態または閉状態に制御する上記公報の技術では、部分的な逆効果がもたらされたときに圧延材の形状を目標形状に制御することができない。
【0010】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、クーラントスプレーを用いた形状制御の実行が裏目に出る現象が板幅方向の一部の領域で発生した場合においても、実績形状を目標形状に維持することが可能なシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の発明は、圧延材の形状制御システムであり、次の特徴を有する。
前記形状制御システムは、圧延ロールと、計測器と、複数のノズルと、制御装置と、記憶装置と、を備える。
前記計測器は、前記圧延ロールの出側、かつ、前記圧延ロールの胴長方向に分割された複数のゾーンごとに設けられる。前記計測器は、圧延材の実績形状を前記複数のゾーンごとに計測する。
前記複数のノズルは、前記圧延ロールの入側、かつ、前記複数のゾーンごとに設けられる。前記複数のノズルは、前記複数のゾーンに向けてクーラントをそれぞれ噴射する。
前記制御装置は、前記実績形状と目標形状の偏差に基づいて、前記複数のノズルによるクーラントの噴射動作を個別に制御する形状制御を行う。
前記記憶装置は、スイッチテーブルと、ノズルテーブルと、が格納される。前記スイッチテーブルは、前記噴射動作の基本動作または反転動作と、圧延材の材種区分との関係を示す。前記ノズルテーブルは、前記基本動作または反転動作の対象とされるノズルと、圧延材の板幅区分との関係を示す。
前記制御装置は、前記形状制御において、
前記圧延ロールによって圧延される圧延材の材種区分を用いた前記スイッチテーブルの参照と、当該圧延材の板幅区分を用いた前記ノズルテーブルの参照とを行って、前記複数のノズルによる個別の前記噴射動作として前記基本動作または前記反転動作を選択し、
前記基本動作が選択されたノズルに対しては、前記偏差が閾値よりも小さい場合には当該ノズルからのクーラントの噴射流量を所定流量に設定し、前記偏差が前記閾値よりも大きい場合には当該ノズルからのクーラントの噴射流量を最低流量に設定し、
前記反転動作が選択されたノズルに対しては、前記偏差が前記閾値よりも大きい場合には当該ノズルからのクーラントの噴射流量を前記所定流量に設定し、前記偏差が前記閾値よりも小さい場合には当該ノズルからのクーラントの噴射流量を前記最低流量に設定する。
【0012】
第2の発明は、第1の発明において、更に次の特徴を有する。
前記制御装置は、更に、反転学習処理を行う。
前記反転学習処理では、所定の学習期間における前記偏差に基づいて、前記ノズルテーブルにおける前記基本動作または反転動作の対象とされるノズルの情報が更新される。
【発明の効果】
【0013】
第1の発明によれば、実績形状と目標形状の偏差に基づいて、複数のノズルによるクーラントの噴射動作を個別に制御する形状制御が行われる。この形状制御では、圧延ロールによって圧延される圧延材の材種区分を用いたスイッチテーブルの参照と、当該圧延材の板幅区分を用いたノズルテーブルの参照とを行って、複数のノズルによるクーラントの噴射動作として、基本動作または反転動作が選択される。ここで、スイッチテーブルは、噴射動作の基本動作または反転動作と、圧延材の材種区分との関係を示すものであり、ノズルテーブルは、基本動作または反転動作の対象とされるノズルと、圧延材の板幅区分との関係を示すものである。これらのテーブルの参照により基本動作が選択されたノズルでは、偏差が閾値よりも小さい場合にはクーラントの噴射流量が所定流量に設定され、偏差が閾値よりも大きい場合にはクーラントの噴射流量が最低流量に設定される。一方、これらのテーブルの参照により反転動作が選択されたノズルでは、偏差が閾値よりも大きい場合にはクーラントの噴射流量が所定流量に設定され、偏差が閾値よりも小さい場合にはクーラントの噴射流量が最低流量に設定される。
【0014】
基本動作と反転動作とでは、偏差と閾値の大小関係の比較の結果に対するクーラントの噴射の態様が正反対である。そのため、スイッチテーブルにおける基本動作または反転動作と、圧延材の材種区分との関係、および、ノズルテーブルにおける基本動作または反転動作の対象とされるノズルと、圧延材の板幅区分との関係が正しく設定されることで、平坦化効果が得られるゾーンと、その逆効果がもたらされるゾーンとに対して、的確にクーラントを噴射することが可能となる。従って、圧延材の一部の領域と他の領域とでクーラントの噴射により得られる効果が逆転していても、実績形状を目標形状に維持することが可能となる。従って、圧延材の製品品質を向上することが可能となる。
【0015】
第2の発明よれば、反転学習処理が行われる。反転学習処理によれば、基本動作または反転動作による平坦化効果が得られるか否かを定期的に検証することが可能となる。従って、圧延材の圧延の最中に圧延ロールに対して行われた微調整や、圧延条件の変更に起因する製品品質のばらつきの発生を抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施の形態1に係る形状制御システムの構成例を示す図である。
図2図1に示すクーラントスプレーおよび形状計測器が適用される圧延ラインの要部の概略図である。
図3】ノズルの基本動作を説明する図である。
図4】ノズルの基本動作の第1の問題点を説明する図である。
図5】ノズルの基本動作の第2の問題点を説明する図である。
図6】反転スイッチテーブルの一例を示す図である。
図7】反転ノズルテーブルの一例を示す図である。
図8】形状制御が行われる場合の処理の流れを説明するフローチャートである。
図9】本発明の実施の形態2に係る形状制御システムの構成例を示す図である。
図10】反転学習処理の第1の例を示すタイミングチャートである。
図11】反転学習処理の第2の例を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0018】
1.実施の形態1
まず、図1~8を参照しながら実施の形態1を説明する。
【0019】
1-1.システム構成の説明
図1は、実施の形態1に係る形状制御システム(以下、単に「システム」とも称す。)の構成を説明する図である。図1に示されるように、システム100は、クーラントスプレー10と、設定計算装置20と、形状制御装置30と、記憶装置40と、スプレー制御装置50と、形状計測器60と、を備えている。
【0020】
クーラントスプレー10および形状計測器60について、図2を参照して説明する。図2は、クーラントスプレー10および形状計測器60が適用される圧延ラインの要部の概略図である。図2に示される圧延ライン70は、シングルスタンド形式の圧延機72により、圧延材71を10μm程度まで圧延(箔圧延)する。なお、図2においては圧延機72が4段式であるが、圧延機72の段数は特に限定されず、2段式でも6段式でもよい。
【0021】
クーラントスプレー10は、上スプレー11と、下スプレー12と、を備えている。上スプレー11は、圧延機72と向かい合う面に複数のノズル11a~11jを備えている。これらのノズルからは、クーラントが噴射される。クーラントが噴射されると、圧延機72の上圧延ロール73が冷やされる。下スプレー12は、上スプレー11が有するノズルと同数のノズルを備えている。これらのノズルからは、クーラントが噴射される。クーラントが噴射されると、圧延機72の下圧延ロール74が冷やされる。
【0022】
形状計測器60は、圧延機72の出側に設置されている。形状計測器60は、その胴長方向に分割されたゾーン60a~60jを有している。形状計測器60は、圧延材71の板幅方向における荷重をゾーン60a~60jごとに計測して張力を計算する。以下、ゾーン60a~60jごとに計算された張力を、「実績形状SA」とも称す。圧延材71の板幅方向における平坦度は、実績形状SAの平均値からのずれとして表される。実績形状SAが均一であるほど平坦度が小さくなる。
【0023】
ゾーン60a~60jの数と、ノズル11a~11jの数は一致する。つまり、上スプレー11は、形状計測器60と同じように分割されている。また、ノズル11a~11jは、ゾーン60a~60jのそれぞれに対応している。この対応関係は、下スプレー12と形状計測器60の間でも成立する。1つのゾーンに対して2つ以上のノズルが割り当てられてもよい。この場合、上スプレー11または下スプレー12が有するノズルの総数は、ゾーンの総数のk倍(ただし、kは2以上の整数)で表される。
【0024】
図1に戻り、システム100の構成の説明をする。設定計算装置20は、少なくともプロセッサと、メモリと、入出力インターフェースと、を有するコンピュータである。設定計算装置20は、圧延ラインにおける各種設備の設定値を計算する。各種設備には、熱間圧延設備、冷間圧延設備、箔圧延設備などが含まれる。圧延機72は、箔圧延設備に該当する。
【0025】
設定値には、各種設備の出側における圧延材の各種目標値が含まれる。各種目標値には、板厚および板幅の目標値が含まれる。箔圧延設備の出側における目標値には、ゾーン60a~60jごとの張力の目標値が含まれる。以下、ゾーン60a~60jごとの張力の目標値を、「目標形状ST」とも称す。設定計算装置20は、圧延情報を形状制御装置30に送信する。圧延情報には、設定値に関する情報が含まれる。
【0026】
形状制御装置30は、少なくともプロセッサと、メモリと、入出力インターフェースとを、有するコンピュータである。形状制御装置30は、プロセッサの機能として、形状偏差計算機能31と、操作量計算機能32と、反転判定機能33と、を備えている。
【0027】
形状偏差計算機能31は、形状計測器60からの実績形状SAと、設定計算装置20からの目標形状STとの偏差(以下、「形状偏差SD」とも称す。)を、ゾーン60a~60jごとに計算する。形状偏差SDの計算は、所定の制御周期ごとに行われる。形状偏差SDの情報は、操作量計算機能32に送信される。
【0028】
操作量計算機能32は、形状偏差SDと閾値TH(≦0)との比較の結果に基づいて、クーラントスプレー10の各ノズルの操作量を計算する。例えば、目標形状STよりも実績形状SAの方が小さい値を示すゾーン(つまり、ルーズなゾーン)がある場合、そのゾーンの形状偏差SD(=SA-ST)の符号はマイナスになる。ゾーンの形状偏差SDが閾値THよりも小さい値を示す場合、操作量計算機能32は、このゾーンに対応するノズルの操作量を両者の偏差の絶対値AV(=|SD-TH|)に応じて設定する。一方、ゾーンの形状偏差SDが閾値THよりも大きい値を示す場合、操作量計算機能32は、このゾーンに対応するノズルの操作量を最低値に設定する。「最低値」とは、クーラントの噴射流量を最低流量(例えば、ゼロ、または、ゼロに近い流量)にするためのノズルの操作量である。
【0029】
別の例として、目標形状STよりも実績形状SAの方が大きい値を示すゾーン(つまり、タイトなゾーン)がある場合、そのゾーンの形状偏差SDの符号はプラスになる。閾値THの符号はマイナスであることから、このゾーンの形状偏差SDは、閾値THよりも大きくなる。従って、この場合、操作量計算機能32は、このゾーンに対応するノズルの操作量を最低値に設定する。
【0030】
バルブの開閉によりクーラントの噴射を行うノズルの場合、操作量計算機能32は、形状偏差SDと閾値THの比較の結果に基づいてバルブの開閉状態を切り替える。例えば、目標形状STよりも実績形状SAの方が小さい値を示すゾーンがある場合、そのゾーンの形状偏差SDの符号はマイナスになる。ゾーンの形状偏差SDが閾値THよりも小さい値を示す場合、操作量計算機能32は、このゾーンに対応するノズルのバルブを開状態に設定する。一方、ゾーンの形状偏差SDが閾値THよりも大きい値を示す場合、操作量計算機能32は、このゾーンに対応するノズルのバルブを閉状態に設定する。
【0031】
別の例として、目標形状STよりも実績形状SAの方が大きい値を示すゾーンがある場合、そのゾーンの形状偏差SDの符号はプラスになる。閾値THの符号はマイナスであることから、このゾーンの形状偏差SDは閾値THよりも大きくなる。従って、この場合、操作量計算機能32は、このゾーンに対応するノズルのバルブを閉状態に設定する。
【0032】
操作量計算機能32は、ノズルの操作量を操作量情報としてスプレー制御装置50に送信する。反転判定機能33からの反転判定情報を受信した場合、操作量計算機能32は、スプレー制御装置50に操作量情報を送る前に、反転判定情報に基づいて操作量情報を変更する。例えば、絶対値AVに応じた操作量が設定されている場合、操作量計算機能32は、この操作量を最低値に変更する。反対に、操作量が最低値に設定されている場合、操作量計算機能32は、形状偏差SDと閾値THの偏差に応じた操作量に変更する。操作量計算機能32は、変更後の操作量情報をスプレー制御装置50に送信する。
【0033】
別の例として、操作量計算機能32は、バルブの開閉状態を操作量情報としてスプレー制御装置50に送信する。反転判定機能33からの反転判定情報を受信した場合、操作量計算機能32は、スプレー制御装置50に操作量情報を送る前に、反転判定情報に基づいて操作量情報を変更する。例えば、バルブが開状態に設定されている場合、操作量計算機能32は、設定状態を開状態(ON)から閉状態(OFF)に切り替える。バルブが閉状態に設定されている場合、操作量計算機能32は、設定状態を閉状態(OFF)から開状態(ON)に切り替える。
【0034】
反転判定機能33は、記憶装置40に格納された反転スイッチテーブル41に基づいて、形状制御の実行が逆効果をもたらすかを判定する。反転判定機能33は、また、記憶装置40に格納された反転ノズルテーブル42に基づいて、ノズルによるクーラントの噴射動作を反転させるか否かをノズルごとに判定する。反転判定機能33は、これらの判定結果を示す情報を反転判定情報として、操作量計算機能32に送信する。反転スイッチテーブル41、反転ノズルテーブル42、形状制御、平坦化効果および逆効果の詳細については、後述される。
【0035】
スプレー制御装置50は、操作量計算機能32からの操作量情報に基づいて、クーラントスプレー10の各ノズルによるクーラントの噴射動作を個別に制御する。
【0036】
1-2.形状制御
実施の形態1において、設定計算装置20、形状制御装置30およびスプレー制御装置50は、圧延材の形状制御を実行する本発明の「制御装置」に該当する。以下、バルブの設定状態をONとOFFの間で切り替えることにより行われるクーラントスプレー10の構成を前提とする形状制御について説明する。
【0037】
1-2-1.基本動作
操作量計算機能32の説明で述べたとおり、形状制御では、形状偏差SDと閾値THとの比較の結果に基づいて、ノズルによるクーラントの噴射動作が決定される。形状偏差SDが閾値THよりも小さい値を示す場合に絶対値AVに応じてクーラントを噴射し、形状偏差SDが閾値THよりも大きい値を示す場合にクーラントを最低流量で噴射するノズル動作を、以下、「基本動作」とも称す。
【0038】
図3は、基本動作を説明する図である。図3には、形状制御の実行前後における形状偏差SDの第1の分布例が示されている。図3の縦方向は、形状偏差SDを示している。図3の横方向は、圧延材の板幅方向の位置を示している。板幅方向に並んだ形状偏差SDの各データは、形状計測器60のゾーンごとに計算されたものである。
【0039】
図3の上段は、形状制御の実行前の形状偏差SDを示している。この上段では、圧延材の両端部の幾つかのゾーンの形状偏差SDが閾値THよりも小さい値を示す。一方、圧延材の中央部の幾つかのゾーンの形状偏差SDが閾値THよりも大きい値を示す。
【0040】
形状制御が実行されると、両端部のゾーンに対応するノズルのバルブが開状態に設定される。一方、中央部のゾーンに対応するノズルのバルブ閉状態に設定される。これにより、両端部のゾーンに対応するノズルからのクーラントの噴射が所定流量にて行われ、中央部のゾーンに対応するノズルからのクーラントの噴射が最低流量にて行われる。なお、所定流量は、最低流量よりも多いクーラントの噴射流量として予め設定されている。
【0041】
図3の下段は、形状制御の実行後の形状偏差SDを示している。この下段では、両端部の形状偏差SDが縮小し、一部の形状偏差SDは閾値THよりも大きな値を示す。この理由は、両端部のゾーンに対応するノズルからのクーラントの噴射が所定流量にて行われることで、これらのゾーンに対応する圧延ロールのゾーンがクーラントにより冷やされて熱膨張が局所的に抑えられるためでる。
【0042】
図3の下段の例では、両端部の形状偏差SD同様、中央部の形状偏差SDも縮小する。ただし、一部の形状偏差SDは、ゼロよりも小さい値を示す。また、一部の形状偏差SDは、閾値THよりも小さい値を示す。この理由は、中央部のゾーンに対応するノズルからのクーラントの噴射が最低流量にて行われることで、これらのゾーンに対応する圧延ロールのゾーンの熱膨張が局所的に促されるためである。
【0043】
1-2-2.基本動作の第1の問題点
図4は、形状制御の実行前後における形状偏差SDの第2の分布例を示す図である。図4の上段に示される分布例は、図3の上段に示した分布例と同じである。そのため、図3で説明した形状制御と同じ内容の形状制御を実行すれば、図3の下段に示した分布例と同じ分布例が図4の下段に示されるはずである。
【0044】
ところが、図4の下段に示されるように、両端部の形状偏差SDは減少せず、むしろ拡大する。中央部の形状偏差SDも両端部のそれと同様の傾向を示す。つまり、図3の下段で説明した平坦化効果とは逆の効果がもたらされる。
【0045】
1-2-3.基本動作の第2の問題点
図5は、形状制御の実行前後における形状偏差SDの第3の分布例を示す図である。図5の上段に示される分布例は、図3の上段に示した分布例と同じである。そのため、図3で説明した形状制御と同じ内容の形状制御を実行すれば、図3の下段に示した分布例と同じ分布例が図5の下段に示されるはずである。
【0046】
ところが、図5の下段に示されるように、両端部の形状偏差SDは減少せず、むしろ拡大する。一方、中央部の形状偏差SDは縮小する。つまり、中央部では図3の下段で説明した平坦化効果が得られ、両端部ではそれとは逆の効果がもたらされる。
【0047】
1-3.形状制御の改良点
そこで、実施の形態1の形状制御では、圧延材の材種区分と、反転動作との関係を規定した反転スイッチテーブルが設定される。反転動作とは、クーラントの噴射動作を基本動作から反転させたノズル動作である。反転スイッチテーブルは、例えば、材種区分を変えた圧延を別途行い、逆効果がもたらされるゾーンを特定することにより作成される。平坦化効果が得られるゾーンを特定することにより、反転スイッチテーブルを作成してもよい。
【0048】
図6は、反転スイッチテーブルの一例を示した図である。図6に示されるように、反転スイッチテーブル41は、材種区分(AA、BB、CC、DD、EE、・・・)ごとに反転スイッチ(ONまたOFF)を規定したテーブルである。反転スイッチテーブル41によれば、反転スイッチがOFFを示す場合、基本動作が選択される。反転スイッチがONを示す場合、反転動作が選択される。選択されたノズル動作を示す情報は、上述した反転判定情報に含まれる。
【0049】
別の例では、反転スイッチテーブル41の代わりに、基本スイッチテーブルが設定される。基本スイッチテーブルは、材種区分(AA、BB、CC、DD、EE、・・・)ごとに基本スイッチ(ONまたOFF)を規定したテーブルである。基本スイッチテーブルによれば、基本スイッチがONを示す場合、基本動作が選択される。基本スイッチがOFFを示す場合、反転動作が選択される。反転スイッチテーブル41または基本スイッチテーブルは、本発明の「スイッチテーブル」に該当する。
【0050】
また、実施の形態1の形状制御では、圧延材の板幅区分と、反転動作を行うノズルとの関係を規定した反転ノズルテーブルが設定される。反転ノズルテーブルは、形状制御による平坦化効果が得られないゾーンがある圧延材の板幅区分を変えた圧延を別途行い、形状制御による平坦化効果が得られないゾーンを特定することにより作成される。
【0051】
図7は、反転ノズルテーブルの一例を示した図である。図7に示されるように、反転ノズルテーブル42は、板幅区分(1、2、3、4、5、・・・)ごとに反転動作を行うノズルを規定したテーブルである。反転ノズルテーブル42によれば、反転スイッチがONを示す場合において、反転動作の対象とされるノズルが特定される。特定されたノズルを示す情報は、上述した反転判定情報に含まれる。なお、反転ノズルテーブル42において特定されたノズル以外のノズルは、基本動作の対象とされる。
【0052】
別の例では、反転ノズルテーブル42の代わりに、基本ノズルテーブルが設定される。基本ノズルテーブルは、板幅区分(1、2、3、4、5、・・・)ごとに基本動作を行うノズルを規定したテーブルである。基本ノズルテーブルによれば、基本スイッチがOFFを示す場合において、基本動作の対象とされるノズルが特定される。特定されたノズルを示す情報は、上述した反転判定情報に含まれる。なお、基本ノズルテーブルにおいて特定されたノズル以外のノズルは、反転動作の対象とされる。
【0053】
1-4.具体的処理
図8は、実施の形態1の形状制御を形状制御装置30のプロセッサが行う場合の処理の流れを説明するフローチャートである。図8に示すルーチンは、所定の制御周期で繰り返し実行される。図8に示すルーチンは、クーラントスプレー10のノズルごとに独立して実行される。
【0054】
図8に示されるルーチンでは、まず、反転スイッチがONであるか否かが判定される(ステップS1)。ステップS1の処理は、現在圧延中の圧延材の材種区分を用いた反転スイッチテーブル41の参照により行われる。反転スイッチテーブル41の代わりに、基本スイッチテーブルが用いられてもよい。なお、材種区分に関する情報は、設定計算装置20からの圧延情報に含まれている。
【0055】
ステップS1の判定結果が肯定的な場合、本ルーチンが着目するノズルが反転動作の対象であるか否かが判定される(ステップS2)。ステップS2の処理は、現在圧延中の圧延材の板幅区分を用いた反転ノズルテーブル42の参照により行われる。反転ノズルテーブル42の代わりに、基本ノズルテーブルが用いられてもよい。なお、板幅区分に関する情報は、設定計算装置20からの圧延情報に含まれている。
【0056】
ステップS1またはS2の判定結果が否定的な場合、形状偏差SDが閾値THよりも小さいか否かが判定される(ステップS3)。ステップS1またはS2の判定結果が否定的な場合は、本ルーチンが着目するノズルが基本動作の対象であることを意味する。そこで、ステップS3の判定結果が肯定的な場合、バルブが開状態に設定される(ステップS4)。一方、ステップS3の判定結果が否定的な場合、バルブが閉状態に設定される(ステップS5)。
【0057】
ステップS2の判定結果が肯定的な場合、形状偏差SDが閾値THよりも大きいか否かが判定される(ステップS6)。ステップS2の判定結果が肯定的な場合は、本ルーチンが着目するノズルが反転動作の対象であることを意味する。ステップS6の判定結果が肯定的な場合、バルブが開状態に設定される(ステップS7)。一方、ステップS6の判定結果が否定的な場合、バルブが閉状態に設定される(ステップS8)。
【0058】
1-5.効果
以上説明した実施の形態1の形状制御によれば、反転スイッチテーブル41および反転ノズルテーブル42の参照により、クーラントの噴射動作がノズルごとに決定される。そのため、形状制御による平坦化効果が得られる場合だけでなく、逆効果がもたらされる場合においても噴射動作を個別に制御して、各ゾーンにおける形状偏差SDをゼロに近づけることが可能となる。従って、圧延材の製品品質を向上することが可能となる。
【0059】
2.実施の形態2
次に、図9~11を参照しながら実施の形態2を説明する。なお、実施の形態1で説明した内容と重複する内容については適宜省略される。
【0060】
2-1.システム構成の説明
図9は、実施の形態2に係るシステムの構成を説明する図である。図9に示されるシステム200の基本的な構成は、図1に示したシステム100のそれと同じである。システム100とシステム200の違いは、形状制御装置30のプロセッサの機能として、反転学習機能34が追加されている点にある。
【0061】
反転学習機能34は、反転学習処理を行う。反転学習処理は、圧延材71の圧延の最中に行われてもよいし、圧延材71の圧延の準備中に行われてもよい。反転学習処理では、所定の学習期間において形状計測器60から受信した形状偏差SDを用いて、評価値ESDが計算される。この学習期間としては、圧延材71の速度が安定であり、かつ、反転スイッチの切り替えが行われていない期間が例示される。反転学習処理では、また、評価値ESDに基づいて、反転ノズルテーブル42の情報を更新するか否かが判定される。反転学習処理の対象とされるノズルは、クーラントスプレー10の全てのノズルである。以下、反転学習処理について説明する。
【0062】
2-2.反転学習処理
図10は、反転学習処理の第1の例を示すタイミングチャートである。図11は、反転学習処理の第2の例を示すタイミングチャートである。なお、図10および11に示される時刻T1~T10の間は、定常条件下の学習期間に相当する。図10および11に示されるように、時刻T1~T10の間、反転スイッチテーブル41の反転スイッチはONを示している。
【0063】
図10および11に示される例では、反転学習処理の対象とされるノズルに対し、反転動作が選択されている。そして、図10に示される例では、時刻T1~T6の間はバルブが開状態に設定され、時刻T6~T10の間はバルブが閉状態に設定される。図11に示される例では、時刻T1~T4の間はバルブが開状態に設定され、時刻T4~T10の間はバルブが閉状態に設定される。
【0064】
評価値ESDは、実績形状SAの変化量ΔSAに基づいて計算される。変化量ΔSAは、今回時刻Tnにおける実績形状SA(n)を、前回時刻Tn-1における実績形状SA(n-1)から減算することにより計算される(ただし、2≦n≦10)。評価値ESDは、変化量ΔSAにバルブの設定状態に応じて設定される係数(設定状態がONの場合は+1、設定状態がOFFの場合は-1)を乗算した値の総和として表される。
【0065】
図10に示される例では、バルブがON(開状態)に設定される時刻T1~T6の間、実績形状SAはルーズ側に変化し続ける。張力が小さくなるほど実績形状SAはよりルーズ側の値を示すことから、時刻T1~T6の間における変化量ΔSAの符号はプラスを示す。よって、この変化量ΔSAに係数(=+1)を乗じた値の総和である評価値ESDは、時刻T1~T6の間増加する。
【0066】
一方、実績形状SAは時刻T7において最もルーズな値を示し、その後はタイト側の値に変わっている。この時刻T7を現在時刻としたときの前回時刻は時刻T6であり、この間はバルブがOFF(閉状態)に設定されている。そのため、変化量ΔSAの符号はプラスを示すが、係数(=-1)を乗じた値の総和である評価値ESDは時刻T6~T7の間減少する。
【0067】
時刻T7~T10の間はバルブがOFF(閉状態)に設定され、実績形状はタイト側に変化し続ける。張力が大きくほど実績形状SAはよりタイト側の値を示すことから、時刻T7~T10の間における変化量ΔSAの符号はマイナスを示す。よって、この変化量ΔSAに係数(=-1)を乗じた値の総和である評価値ESDは、時刻T7~T10の間増加する。
【0068】
図11に示される例では、バルブがON(開状態)に設定される時刻T1~T4の間、実績形状SAはルーズ側に変化し続ける。張力が小さくなるほど実績形状SAはよりルーズ側の値を示すことから、時刻T1~T4の間における変化量ΔSAの符号はプラスを示す。よって、この変化量ΔSAに係数(=+1)を乗じた値の総和である評価値ESDは、時刻T1~T4の間増加する。
【0069】
実績形状SAは、時刻T4以降もルーズ側に変化し続ける。そのため、時刻T4以降における変化量ΔSAの符号はプラスを示す。ただし、時刻T4以降はバルブがOFFに設定されている。そのため、この変化量ΔSAに係数(=-1)を乗じた値の総和である評価値ESDは、時刻T4以降減少し続ける。
【0070】
反転学習処理では、学習期間における評価値ESDの値が許容値ALを上回るか否かの判定に基づいて、反転ノズルテーブル42の情報が更新される。評価値ESDが許容値ALを上回る場合(つまり、図10に示した例の場合)は、反転ノズルテーブル42の情報が正しく、反転動作による平坦化効果が得られると判断される。そのため、この場合は、情報は更新されない。
【0071】
一方、評価値ESDが許容値ALを下回る場合(つまり、図11に示した例の場合)は、反転ノズルテーブル42の情報は誤っており、反転動作による平坦化効果が得られないと判断される。そのため、この場合は、反転ノズルテーブル42の情報が更新される。具体的には、反転学習処理の対象とされたノズルの情報が、反転ノズルテーブル42から削除される。
【0072】
なお、図10および11に示した例では、反転動作による平坦化効果が得られるか否かという観点に基づいて、反転スイッチテーブル41の情報が更新された。しかしながら、この観点とは異なる観点に基づいて情報が更新されてもよい。例えば、基本動作による平坦化効果が得られるか否かという観点に基づいて、反転スイッチテーブル41の情報が更新されてもよい。反転スイッチがOFFを示している間に評価値ESDを計算して許容値ALと比較すれば、反転動作の対象とすべきノズルの情報を反転ノズルテーブル42に追加することが可能となる。
【0073】
基本スイッチテーブルを用いて反転学習処理を行う場合は、基本動作による平坦化効果が得られるか否かという観点に基づいて当該スイッチテーブルの情報が更新されてもよい。例えば、基本スイッチがONを示している間に評価値ESDを計算して許容値ALと比較する。これにより、反転動作の対象とすべきノズルの情報を、基本ノズルテーブルから削除することが可能となる。反転動作による平坦化効果が得られるか否かという観点に基づいて、基本スイッチテーブルの情報が更新されてもよい。例えば、基本スイッチがOFFを示している間に評価値ESDを計算して許容値ALと比較する。これにより、基本動作の対象とすべきノズルの情報を、基本ノズルテーブルに追加することが可能となる。
【0074】
2-3.効果
以上説明した実施の形態2によれば、反転学習処理が行われる。反転学習処理によれば、基本動作または反転動作による平坦化効果が得られるか否かを定期的に検証することが可能となる。そして、この検証結果に応じて、反転学習処理の対象とされたノズルを反転ノズルテーブル42(または基本ノズルテーブル)に追加し、または、削除することが可能となる。従って、圧延材71の圧延の最中に圧延機72に対して行われた微調整や、圧延条件の変更に起因する製品品質のばらつきの発生を抑えることが可能となる。
【符号の説明】
【0075】
10 クーラントスプレー
11 上スプレー
12 下スプレー
20 設定計算装置
30 形状制御装置
31 形状偏差計算機能
32 操作量計算機能
33 反転判定機能
34 反転学習機能
40 記憶装置
41 反転スイッチテーブル
42 反転ノズルテーブル
50 スプレー制御装置
60 形状計測器
60a~60j ゾーン
70 圧延ライン
72 圧延機
73 上圧延ロール
74 下圧延ロール
100,200 形状制御システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11