(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】光学式粒状物判別装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/85 20060101AFI20231129BHJP
G01N 21/3563 20140101ALI20231129BHJP
G01N 21/359 20140101ALI20231129BHJP
B07C 5/342 20060101ALN20231129BHJP
【FI】
G01N21/85 A
G01N21/3563
G01N21/359
B07C5/342
(21)【出願番号】P 2020010380
(22)【出願日】2020-01-24
【審査請求日】2022-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000001812
【氏名又は名称】株式会社サタケ
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】石津 任章
(72)【発明者】
【氏名】定丸 雅明
【審査官】小野寺 麻美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-157119(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106269570(CN,A)
【文献】特開2019-148607(JP,A)
【文献】特開2012-108026(JP,A)
【文献】特開平08-015140(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0070146(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 - G01N 21/01
G01N 21/17 - G01N 21/61
G01N 21/84 - G01N 21/958
B07C 5/342
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移送手段で移送される粒状物に光学的検査を行う検査部と、該検査部による光学的検査に基づいて前記粒状物が良品であるか不良品であるかを判別する判定部とを備えた光学式粒状物判別装置において、
前記検査部は、前記粒状物に可視光を照射する可視光源と、前記粒状物に近赤外光を照射する近赤外光源と、前記粒状物を透過した可視光又は前記粒状物から反射した可視光を検出する可視光検出部と、前記粒状物を透過した近赤外光又は前記粒状物から反射した近赤外光を検出する近赤外光検出部と、を少なくとも有し、
前記判定部は、
複数の良品サンプル及び複数の不良品サンプルに対し、前記可視光検出部が検出した赤(R)、緑(G)、青(B)の光のうち、1つの波長成分と、前記近赤外光検出部が検出した複数
種の組合せによる2つの近赤外光成分を三次元空間にプロットして
複数種の三次元光学相関図を作成し、閾値を設定する
ことを特徴とする光学式粒状物判別装置。
【請求項2】
ディスプレイと、前記ディスプレイにおける表示内容に基づいて操作者による入力が可能な入力手段と、を備え、
前記ディスプレイは、赤(R)、緑(G)、青(B)の光のうち、任意の1つの波長成分と、任意の2つの近赤外光成分とによる複数種の前記三次元光学相関図を表示可能であり、
前記入力手段は、操作者の操作に基づいて前記ディスプレイに表示される前記三次元光学相関図を選択可能である
請求項1に記載の光学式粒状物判別装置。
【請求項3】
前記検査部は、移送される前記粒状物の前側に位置する第1の検査部と、前記粒状物の後側に位置する第2の検査部と、を備え、
前記第1の検査部及び前記第2の検査部は、それぞれ前記可視光検出部と前記近赤外光検出部とを備えている
請求項1又は2に記載の光学式粒状物判別装置。
【請求項4】
移送手段で移送される前記粒状物は、種子又は穀粒である
請求項1乃至3
のいずれかに記載の光学式粒状物判別装置。
【請求項5】
移送手段で移送される粒状物に光学的検査を行う検査部と、該検査部による光学的検査に基づいて前記粒状物が良品であるか不良品であるかを判別する判定部とを備えた光学式粒状物判別装置において、
前記検査部は、前記粒状物に可視光を照射する可視光源と、前記粒状物に近赤外光を照射する近赤外光源と、前記粒状物を透過した可視光又は前記粒状物から反射した可視光を検出する可視光検出部と、前記粒状物を透過した近赤外光又は前記粒状物から反射した近赤外光を検出する近赤外光検出部と、を少なくとも有し、
前記判定部は、
複数の良品サンプル及び複数の不良品サンプルに対し、前記可視光検出部が検出した赤(R)、緑(G)、青(B)の3つの波長成分及び前記近赤外光検出部が検出した複数の近赤外光成分をパラメータとして多変量解析し、
前記多変量解析の結果から最も相関性の高い前記波長成分及び前記近赤外光成分に基づいて、前記可視光検出部が検出した波長成分と、前記近赤外光検出部が検出した近赤外光成分をプロットして三次元光学相関図を作成し、閾値を設定する
ことを特徴とする光学式粒状物判別装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穀類、豆類、種子等の粒状物を、光学的検査に基づいて良品であるか不良品であるか判別する光学式粒状物判別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
穀類等の粒状物は、籾殻、石等の異物や不良品と、玄米等の良品とを選別分離する必要がある。そこで、光学的検査によって粒状物の良・不良を判別し、不良品を排除する装置が種々提案されている。例えば、特許文献1には、移送手段によって移送される粒状物に光を照射し、粒状物を透過あるいは反射したR(赤),G(緑),B(青)の光の波長成分を三次元色空間上にプロットし、粒状物の三次元色分布から良品であるか不良品であるかを判別して、不良品のみを排除する光学式粒状物選別機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載のような光学式粒状物選別機で、赤(R)、緑(G)、青(B)の3つの光の波長成分を用いて判別を行うと、良品と不良品の色や形状が類似している場合、例えば、黒豆の中に黒い石が混入していたり、黒ひまわりの種中に黒い菌糸体等の有害物質が混入している場合には、
図16に示すように、良品の集合と不良品の集合が重なってしまい、良否を判別することができなかった。
【0005】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、粒状体の良品と不良品が類似した色、形状を有していても、高い精度で良否を判別することができる光学式粒状物判別装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願請求項1に係る発明は、移送手段で移送される粒状物に光学的検査を行う検査部と、該検査部による光学的検査に基づいて前記粒状物が良品であるか不良品であるかを判別する判定部とを備えた光学式粒状物判別装置において、前記検査部は、前記粒状物に可視光を照射する可視光源と、前記粒状物に近赤外光を照射する近赤外光源と、前記粒状物を透過した可視光又は前記粒状物から反射した可視光を検出する可視光検出部と、前記粒状物を透過した近赤外光又は前記粒状物から反射した近赤外光を検出する近赤外光検出部と、を少なくとも有し、前記判定部は、複数の良品サンプル及び複数の不良品サンプルに対し、前記可視光検出部が検出した赤(R)、緑(G)、青(B)の光のうち、1つの波長成分と、前記近赤外光検出部が検出した複数の近赤外光成分を三次元空間にプロットして三次元光学相関図を作成し、閾値を設定することを特徴とする光学式粒状物判別装置である。
【0007】
本願請求項2に係る発明は、前記判定部は、前記三次元光学相関図に、良品集合体と不良品集合体とを仕切るマハラノビス距離境界面及びユークリッド距離境界面を作成し、前記マハラノビス距離境界面とユークリッド距離境界面との交線に垂直な二次元平面を作成し、前記二次元平面上の不良品集合体に慣性等価楕円を当てはめて閉領域を作成するとともに、該閉領域内に閾値を設定する請求項1に記載の光学式粒状物判別装置である。
【0008】
本願請求項3に係る発明は、前記判定部は、複数の良品サンプル及び複数の不良品サンプルに対し、前記可視光検出部が検出した赤(R)、緑(G)、青(B)の光のうち、1つの波長成分と、前記近赤外光検出部が検出した複数種の組合せによる2つの近赤外光成分を三次元空間にプロットして複数種の三次元光学相関図を作成する請求項1又は2に記載の光学式粒状物判別装置である。
【0009】
本願請求項4に係る発明は、前記近赤外光検出部が検出した近赤外光成分は、前記可視光検出部が検出した前記粒状物の輪郭内の近赤外光成分である請求項1乃至3に記載の光学式粒状物判別装置である。
【0010】
本願請求項5に係る発明は、前記判定部は、前記閉領域内に前記閾値を設定するに際し、前記慣性等価楕円の短軸に平行で長軸の両端点を通る2直線及び長軸に平行で短軸の両端点を通る2直線からなる外接矩形を作成し、前記良品集合体の重心と該外接矩形の長軸方向の両端点とを結ぶ2直線を作成する請求項1乃至4のいずれかに記載の光学式粒状物判別装置である。
【0011】
本願請求項6に係る発明は、前記判定部は、前記閉領域内に前記閾値を設定するに際し、第1の平面としてマハラノビス距離を最小とする前記マハラノビス距離境界面を利用し、第2の平面として良品集合体の重心と前記外接矩形の長軸方向の一端とを結ぶ平面を利用し、第3の平面として良品集合体の重心と前記外接矩形の長軸方向の他端とを結ぶ平面を利用し、第4の平面として前記外接矩形の一方側の長辺を利用し、第5の平面として前記外接矩形の他方側の長辺を利用し、第6の平面として良品集合体から遠い側の前記外接矩形の一方側短辺を利用する請求項1乃至5のいずれかに記載の光学式粒状物判別装置である。
【0012】
本願請求項7に係る発明は、ディスプレイと、前記ディスプレイにおける表示内容に基づいて操作者による入力が可能な入力手段と、を備え、前記ディスプレイは、赤(R)、緑(G)、青(B)の光のうち、任意の1つの波長成分と、任意の2つの近赤外光成分とによる複数の前記三次元光学相関図を表示可能であり、前記入力手段は、操作者の操作に基づいて前記ディスプレイに表示される前記三次元光学相関図を選択可能である請求項1乃至6のいずれかに記載の光学式粒状物判別装置である。
【0013】
本願請求項8に係る発明は、前記検査部は、移送される前記粒状物の前側に位置する第1の検査部と、前記粒状物の後側に位置する第2の検査部と、を備え、前記第1の検査部及び前記第2の検査部は、それぞれ前記可視光検出部と前記近赤外光検出部とを備えている請求項1乃至7のいずれかに記載の光学式粒状物判別装置である。
前記検査部は、移送される前記粒状物の前側に位置する第1の検査部と、前記粒状物の後側に位置する第2の検査部と、を備え、前記第1の検査部及び前記第2の検査部は、それぞれ前記可視光検出部と前記近赤外光検出部とを備えている請求項1乃至7のいずれかに記載の光学式粒状物判別装置である。
【0014】
本願請求項9に係る発明は、移送手段で移送される前記粒状物は、種子又は穀粒である請求項1乃至8のいずれかに記載の光学式粒状物判別装置である。
【0015】
本願請求項10に係る発明は、移送手段で移送される粒状物に光学的検査を行う検査部と、該検査部による光学的検査に基づいて前記粒状物が良品であるか不良品であるかを判別する判定部とを備えた光学式粒状物判別装置において、前記検査部は、前記粒状物に可視光を照射する可視光源と、前記粒状物に近赤外光を照射する近赤外光源と、前記粒状物を透過した可視光又は前記粒状物から反射した可視光を検出する可視光検出部と、前記粒状物を透過した近赤外光又は前記粒状物から反射した近赤外光を検出する近赤外光検出部と、を少なくとも有し、前記判定部は、複数の良品サンプル及び複数の不良品サンプルに対し、前記可視光検出部が検出した赤(R)、緑(G)、青(B)の3つの波長成分及び前記近赤外光検出部が検出した複数の近赤外光成分をパラメータとして多変量解析し、前記多変量解析の結果に基づいて、前記可視光検出部が検出した波長成分と、前記近赤外光検出部が検出した近赤外光成分をプロットして三次元光学相関図を作成し、閾値を設定することを特徴とする光学式粒状物判別装置である。
【発明の効果】
【0016】
請求項1、2に係る発明によれば、可視光検出部が検出した赤(R)、緑(G)、青(B)の光のうち、1つの波長成分と、近赤外光検出部が検出した複数の近赤外光成分とに基づいて、三次元光学相関図を作成し、不良品集合体に閉領域を作成して、該閉領域内に閾値を設定するように構成した。これにより、従来、可視光検出部が検出した赤(R)、緑(G)、青(B)3つの波長成分では判別することができなかった粒状物を、精度よく判別することが可能となった。
【0017】
請求項3に係る発明によれば、可視光検出部が検出した赤(R)、緑(G)、青(B)の光のうち、1つの波長成分と、近赤外光検出部が検出した異なる2つの近赤外光成分とに基づいて、複数種(例えば、G・850nmNIR・1550nmNIR、R・1200nmNIR・1550NIR、等々)の三次元光学相関図を作成する。これにより、複数の三次元光学相関図を相対比較することができ、粒状物の判別に最も適した可視光の波長成分を選択可能に構成することが可能となる。
【0018】
請求項4に係る発明によれば、判別対象である粒状物における近赤外光成分を精度よく検出するため、可視光検出部が検出した粒状物の輪郭に合わせて、当該粒状物の輪郭内の近赤外光成分を検出するようにしている。これにより、高精度に粒状物の良・不良の判別が可能となっている。
【0019】
請求項5、6に係る発明によれば、前記閉領域内に閾値を設定するに際し、第1の平面としてマハラノビス距離を最小とする前記マハラノビス距離境界面を利用し、第2の平面として良品集合体の重心と前記外接矩形の長軸方向の一端とを結ぶ平面を利用し、第3の平面として良品集合体の重心と前記外接矩形の長軸方向の他端とを結ぶ平面を利用し、第4の平面として前記外接矩形の一方側の長辺を利用し、第5の平面として前記外接矩形の他方側の長辺を利用し、第6の平面として良品集合体から遠い側の前記外接矩形の一方側短辺を利用することによって、精度の高い良・不良の判別が可能となる。
【0020】
請求項7に係る発明によれば、操作者の操作に基づいて、ディスプレイに表示される三次元光学相関図を選択して表示することが可能である。これにより、赤(R)、緑(G)、青(B)の光のうち、1つの波長成分を選択する際に、最も有意差(相関性が高い)のある波長成分を操作者が選択可能となり、精度の高い良・不良の判別が可能となる。
【0021】
請求項8に係る発明によれば、移送される粒状物の前後に第1の検査部と第2の検査部とを設け、それぞれ検査部で可視光画像及び近赤外光画像が得られるので、例えば、少なくとも一方の検査部で不良品の判定結果が出力された場合は、不良品として判別することが可能となり、良・不良の判別精度を向上させることができる。
【0022】
請求項9に係る発明によれば、実施形態で示された黒ひまわりの種以外の他の種子や、米などの穀粒に対しても、高い精度で良・不良の判別が可能となる。
【0023】
請求項10に係る発明によれば、複数の良品サンプル及び複数の不良品サンプルに対し、可視光検出部が検出した赤(R)、緑(G)、青(B)の3つの波長成分及び近赤外光検出部が検出した複数の近赤外光成分をパラメータとして多変量解析し、多変量解析の結果に基づいて、可視光検出部が検出した波長成分と、近赤外光検出部が検出した近赤外光成分をプロットして三次元光学相関図を作成し、閾値を設定している。これにより、可視光検出部が検出した赤(R)、緑(G)、青(B)の3つの波長成分と、例えば、850nm、1200nm、1550nm等々の近赤外光成分の相関性を導き出して、良品と不良品とを判別するための最適な三次元光学相関図を作成して閾値を設定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の第1の実施形態を示す光学式粒状物判別装置の模式断面図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係る光学式粒状物判別装置の概略ブロック図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係る判定部の詳細ブロック図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態に係る粒状物の良品サンプル及び不良品サンプルの画像が示されており、上から順に、CCDカメラ13a、13bにより撮像された可視光画像、第1波長NIRカメラ14-1a、14-1bにより撮像された近赤外光画像、CCDカメラ13a、13bによって得られた粒状物の輪郭に第1波長NIRカメラ14-1a、14-1bによる近赤外光画像を嵌め込んだ物体認識後の近赤外光画像、CCDカメラ13a、13bによって得られた粒状物の輪郭に第2波長NIRカメラ14-2a、14-2bによる近赤外光画像を嵌め込んだ物体認識後の近赤外光画像である。
【
図5】信号処理部の処理手順を示したフロー図である。
【
図8】本発明の第1の実施形態に係る良品サンプル及び不良品サンプルの三次元空間上におけるG・第1波長NIR・第2波長NIR三次元光学相関図である。
【
図9】本発明の第1の実施形態に係る良品サンプル及び不良品サンプルの最適二次元平面におけるG・第1波長NIR・第2波長NIR相関図である。
【
図10】最適二次元平面の不良品集合体に慣性等価楕円を当てはめたときの図である。
【
図11】慣性等価楕円に外接矩形を適用したときの図である。
【
図12】慣性等価楕円の外接矩形の長軸方向両端点と良品集合体の重心とを結ぶ2つの直線を作成するときの図である。
【
図13】慣性等価楕円を囲む閉領域を形成する際の6つの平面を作成するときの図である。
【
図14】二次元平面の作図上の例外を説明する図である。
【
図15】慣性等価楕円を囲む6つの平面で作成した閾値の算出と、最小(MIN)、中間(MID)及び最大(MAX)の3つの感度レベルとを対応させるときの図である。
【
図16】従来の光学式粒状物選別機に係る三次元色分布データである。
【
図17】他の実施形態における、判別対象粒状物の模式的な可視光画像及び近赤外光画像である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0026】
〔第1の実施形態〕
本発明の第1の実施形態を図に基づいて説明する。なお、本実施形態における光学式粒状物判別装置1は、光学的検査に基づいて決定された閾値を基準として、判別対象となる粒状物の中から、良品である規格に適合した黒ひまわりの種と、黒ひまわりの種に混入した不良品(菌糸体等の有害物質、石、規格外品など)とを判別する装置である。
【0027】
図1には、光学式粒状物判別装置1の模式断面図が示されている。図示されるように、本実施形態の光学式粒状物判別装置1は、機体2内に、粒状物の移送手段である傾斜したシュート3と、粒状物を貯留する貯留タンク4と、貯留タンク4からシュート3の上端に粒状物を搬送する振動フィーダ5と、シュート3から落下する粒状物に光学的検査を行う検査部6と、検査部6の下方に設けられたエジェクタノズル7と、エジェクタノズル7の噴風を受けずに落下した良品を受ける良品回収部8と、エジェクタノズル7の噴風で吹き飛ばされた不良品を回収する不良品回収部9とがそれぞれ設置されて構成される。また、機体2の前面側には、各種メンテナンスを行うための開閉可能なドア10と、操作のためのタッチパネル(入力手段)及びモニタを兼ねるディスプレイ11とが少なくとも設置されている。
【0028】
粒状物に光学的検査を行う検査部6は、粒状物の落下軌跡aを挟んで設置されたフロントボックス12a及びリヤボックス12bの内部に収容されている。フロントボックス12a内には、可視光検出部であるCCDカメラ13aと、近赤外光検出部である第1波長NIRカメラ14-1a及び第2波長NIRカメラ14-2aと、可視光源15aと、近赤外光源16aと、後述するCCDカメラ13bのバックグラウンド17aとが収容されている。また、リヤボックス12b内には、可視光検出部であるCCDカメラ13bと、近赤外光検出部である第1波長NIRカメラ14-1b及び第2波長NIRカメラ14-2bと、可視光源15bと、近赤外光源16bと、上記CCDカメラ13aのバックグラウンド17bとが収容されている。なお、本実施形態の第1波長NIRカメラ14-1a、14-1bは、850nmの近赤外光を検出して画像撮影することが可能となっており、第2波長NIRカメラ14-2a、14-2bは、1550nmの近赤外光を検出して画像撮影することが可能となっている。
【0029】
フロントボックス12a及びリヤボックス12bの、粒状物の落下軌跡aに面する側には透明な板状部材から成る透光部18a、18bが設けられている。そして、当該透光部18a、18bを介して、フロントボックス12a内のバックグラウンド17aがリヤボックス12b内のCCDカメラ13bに対向し、リヤボックス12b内のバックグラウンド17bがフロントボックス12a内のCCDカメラ13aに対向して配置されている。
【0030】
図2には、本実施形態の光学式粒状物判別装置1の概略ブロック図が示されている。図示されるように、粒状物から反射又は粒状物を透過した可視光成分を検出するCCDカメラ13a、13b、及び、粒状物から反射又は粒状物を透過した近赤外光成分を検出する第1波長NIRカメラ14-1a、14-1b、第2波長NIRカメラ14-2a、14-2bは判定部19に接続され、さらに、当該判定部19内の画像データを処理する信号処理部20に電気的に接続されている。
【0031】
また、信号処理部20はCPU/メモリ部21に双方向通信可能に接続されている。CPU/メモリ部21では、信号処理部20で処理された画像を格納し、後述する演算処理を行って粒状物の判別のための閾値を計算することが可能となっている。さらに、信号処理部20は、エジェクタ駆動回路22を介してエジェクタノズル7が接続されており、CPU/メモリ部21にはタッチパネル等の入力手段を有するディスプレイ11が接続されている。
【0032】
図3には、前述した判定部19の詳細ブロック図が示されている。図示されるように、信号処理部20は、CCDカメラ13a、13b及び第1波長NIRカメラ14-1a、14-1b、第2波長NIRカメラ14-2a、14-2bによって撮像された画像データを一時的に格納する画像データ取得部23と、CPU/メモリ部21で算出された閾値データを格納する閾値データ格納部24と、上記画像データを2値化処理する画像処理部25と、撮像された粒状物が良品であるのか不良品であるのかを判別する良・不良判別部26とを備えている。そして、良・不良判別部26からの信号をエジェクタ駆動回路22へ送り、エジェクタノズル7のバルブを開閉するように構成されている。
【0033】
図3に示されるように、CPU/メモリ部21は、画像データ取得部23からの画像データを格納する画像データ格納部27と、画像データ格納部27に格納された画像データに基づいて閾値を算出する閾値計算部28と、ディスプレイ11の入力手段からの操作信号を受信したり、画像データをディスプレイ11に出力する信号送受信部29とを少なくとも備えている。
【0034】
以下、本実施形態の光学式粒状物判別装置1による粒状物の判別処理手順を説明する。
図5には、信号処理部20の処理手順を示すフロー図が示されている。
図5中、ステップ101~103は、操作者があらかじめ準備した粒状物の良品サンプル及び不良品(異物を含む)サンプルをそれぞれシュート3に流し、良品、不良品(異物を含む)に係る三次元光学相関データを判定部19に学習させる良品パターン/不良品パターン学習工程である。
【0035】
図5中、ステップ104~108は、良品パターンと不良品パターンとの境界となる閾値を自動的に算出する閾値算出工程である。ステップ109は、閾値算出工程で算出された閾値を自動的に調整する閾値決定工程である。
【0036】
(良品パターン/不良品パターン学習工程)
まずステップ101において、予め準備した良品サンプルをシュート3に流し、シュート3から落下した良品サンプルをCCDカメラ13a、13b及び第1波長NIRカメラ14-1a、14-1b、第2波長NIRカメラ14-2a、14-2bで撮像する。撮像された良品サンプルの画像データは、画像データ取得部23を経て画像データ格納部27に格納され、ディスプレイ11に表示される。
【0037】
次いで、良品サンプルの場合と同様にして、不良品サンプルをシュート3に流し、不良品サンプルをCCDカメラ13a、13b及び第1波長NIRカメラ14-1a、14-1b、第2波長NIRカメラ14-2a、14-2bで撮像する。撮影された不良品サンプルの画像データは、画像データ取得部23を経て画像データ格納部27に格納され、ディスプレイ11に表示される。ここまでは、実際の選別作業ではなく、後述する閾値を決定するための準備作業である。なお、良品パターン/不良品パターン学習工程においては、良品サンプルと不良品サンプルが予め選別されているので、エジェクタノズル7は稼働させない。
【0038】
次いで、ステップ102では、ディスプレイ11上に表示された各サンプルの画像を再度操作者が目視によって確認し、良品となすべきもの、不良品(異物を含む)となすべきものを入力操作によって指定する。なお、
図4には、粒状物の良品サンプル及び不良品サンプルの画像が示されており、上から順に、CCDカメラ13a、13bにより撮像された可視光画像、第1波長NIRカメラ14-1a、14-1bにより撮像された近赤外光画像、CCDカメラ13a、13bによって得られた粒状物の輪郭に第1波長NIRカメラ14-1a、14-1bによる近赤外光画像を嵌め込んだ物体認識後の近赤外光画像、CCDカメラ13a、13bによって得られた粒状物の輪郭に第2波長NIRカメラ14-2a、14-2bによる近赤外光画像を嵌め込んだ物体認識後の近赤外光画像がそれぞれ上から順に示されている。すなわち、CCDカメラ13a、13bによる可視光画像は粒状物の輪郭がはっきりしているが、各NIRカメラによる近赤外光画像は粒状物の輪郭が不明瞭である。そこで、CCDカメラ13a、13bによって得られた粒状物の輪郭に、各NIRカメラによる近赤外光画像を嵌め込むことで、物体認識後の近赤外光画像が表示されるように構成されている。
【0039】
ここで、CCDカメラ13a、13bによって得られた粒状物の輪郭に、各NIRカメラによって撮像された近赤外光画像を嵌め込む際、CCDカメラ13a、13bによって得られた粒状物の可視光画像と、各NIRカメラによる粒状物の近赤外光画像にずれがあると、ずれている部分を不良部であると誤認識して、判別不良につながるおそれがある。したがって、可視光画像から得られる粒状物の輪郭から物体認識を行い、粒状物の輪郭に近赤外光画像を重ねたときにずれが生じないように、CCDカメラ13a、13b及び各NIRカメラの向きや位置を調整することが好ましい。
【0040】
また、本実施形態では、
図4に示されるように、第1波長NIRカメラ14-1a、14-1bによって波長成分850nmの近赤外光画像と、第2波長NIRカメラ14-2a、14-2bによって波長成分1550nmの近赤外光画像とが撮像される。すなわち、
図4の不良品No,1及びNo,2のように、CCD画像及び850nmの近赤外光画像から、良否の判別が困難である場合、1550nmの近赤外光画像が良品の不良品とで異なるため、これに基づいて判別対象物の良否を精度良く判別することが可能となる。
【0041】
次に、ステップ103に進み、多数の良品サンプル及び不良品サンプルの画像データに対し、赤(R)、緑(G)、青(B)の光の波長のうち、一つの波長成分と、二つの近赤外光成分(以下、「NIR」と称する場合がある)を三次元空間にプロットして、
図8に示されるような、三次元光学相関図を作成する。これにより、従来、
図16に示されるように、赤(R)、緑(G)、青(B)の光の波長成分では、良品と不良品とが判別できなかったという問題を効果的に解決することが可能となる。なお、本実施形態では、
図8に図示されるように、G、第1波長NIR、第2波長NIR各軸の三次元空間に、良品サンプル及び不良品サンプルのプロットを行っており、第1波長NIRの波長成分は850nm、第2波長NIRの波長成分は1550nmとしている。また、赤(R)、緑(G)、青(B)の光の波長成分のうち、いずれの波長成分を選択するのかは、三次元空間へのプロット態様をディスプレイ11にて確認し、最も有意差のある(相関性の高い)波長成分を操作者が入力手段にて選択する。もちろん、操作者が選択することなく判定部19において自動的に選択するようにしてもよい。
【0042】
(閾値算出工程)
ステップ104に進むと、良品に係るドット(
図8の黒の点)で形成される良品集合体と不良品に係るドット(
図8のグレーの点)で形成される不良品集合体とに大まかな分類が行われ、ステップ105では、良品集合体/不良品集合体の集合体毎の多変量データの統計量が算出される。
【0043】
この統計量の算出は、重心ベクルや分散共分散行列の演算により行うとよい。例えば、重心ベクトルの演算式は、
図7の(1)式によって表される。また、分散共分散行列の演算式は、
図7の(2)式によって表される。
【0044】
次に、良品集合体及び不良品集合体の各重心ベクトルからのマハラノビス平方距離を求める。ここで、マハラノビス平方距離は、多変量データの値の関数となっており、マハラノビス平方距離の演算式は、
図7の(3)式によって表される。
【0045】
次に、ステップ106では、各集合体間の境界面を求める。この境界面を決定する際は、マハラノビス平方距離が最小となる集合体に多変量データの値を分類し、多変量空間内のすべての多変量データの値について属する集合体を決定する。そして、
図8の符号mで示す境界面が決定されることになる。
【0046】
次に、ステップ107では、良品集合体と不良品集合体との重心間距離が最も離れるユークリッド距離を選択し、閾値有効範囲が広い境界面を探索する。このとき、良品集合体の重心ベクトルをP(Xp1,Xp2,Xp3,・・・Xpn)、不良品集合体の重心ベクトルをQ(Xq1,Xq2,Xq3,・・・Xqn)とすると、この間のユークリッド平方距離は、
図7の(4)式によって表される。
【0047】
次に、ステップ107では、各集合体間の境界面を求める。この境界面を決定する際は、ユークリッド平方距離が最大となる集合体に多変量データの値を分類し、
図8の符号uで示す境界面が決定されることになる。
【0048】
そして、上記マハラノビス距離を最小にする境界面の平面mの方程式は
図7の(5)式で表され、上記ユークリッド距離を最大とする境界面の平面uの方程式は
図7の(6)式で表されるとすると、
図8に示すような2つの特徴的な平面mと平面uが得られることになる。そして、ステップ108にて、
図8の三次元光学相関図を回転させ、これらの異なる2つの平面mと平面uとが交差して線分に見える位置に視線方向(視線ベクトル)を一致させる。これにより、
図8に示される三次元空間から、
図9に示されるような二次元平面に次元を減少させた最適な閾値が求められる。したがって、信号処理を大幅に簡略化し、操作者が扱いやすい光学式粒状物判別装置1を提供することができる。
【0049】
図7の(5)式の平面mと、
図7の(6)式の平面uとが交差した線分L(
図8等参照)は、
図7の(7)式にて求めることができる。そして、2つの平面m、平面uの法線ベクトルの外積計算により、交線の方向ベクトルeを求めると、
図7の(8)式となる。そして、交線Lが通る点Pは、
図7の(9)式となる。以上のように交線Lが求まると、交線L上に視点を置くような最適二次元平面におけるG・第1波長NIR・第2波長NIR相関図(
図9参照)へ変換することが可能となる。
【0050】
(閾値算出工程)
次に、ステップ109では、
図9の二次元平面上での交線Lに基づき、自動的に良品と不良品との判別閾値が算出されることになる。そこで、閾値算出工程の詳細について
図6のフロー図に基づいて以下に説明する。
【0051】
図6のフロー図は、
図5のステップ109の閾値算出工程を詳細に示したフロー図である。まず、ステップ201において、
図9のグレーの点で示す不良品集合体に慣性等価楕円を当てはめる(
図10参照)。ここで、慣性等価楕円とは、不良品集合体とほぼ等しい重心周りの二次モーメントと等価な楕円を表す特徴量であり、不良品集合体の広がり方の特徴をつかむことができる。実際には、不良品領域を不良品集合体の分布よりも十分に大きくするため、長軸の長さを標準偏差の倍数(正の整数倍)、短軸の長さを標準偏差の倍数(正の整数倍)として慣性等価楕円を作成する。これは経験値であって、粒状物の種類により変化するので、自由に変更できるようにするのが好ましい。
【0052】
そして、ステップ202において、慣性等価楕円の重心G及び長軸V方向の傾き角Θを求め、次いで、ステップ203において、長軸Vの距離、短軸Wの距離を算出していく(
図10参照)。
【0053】
ステップ204においては、上記慣性等価楕円において、短軸に平行で長軸の両端点を通る2直線と、長軸に平行で短軸の両端点を通る2直線を引く。すなわち、4つの直線によって前記慣性等価楕円の外接矩形を作成する(
図11参照)。この外接矩形が自動感度作成時の仮の基準となる。
【0054】
次に、ステップ205においては、良品集合体側の重心を算出する。これは全ての良品データの単純平均を算出することで求められる(
図11参照)。
【0055】
そして、良品集合体と不良品集合体との関係性を求めるために以下の処理を行う。すなわち、ステップ206では、ステップ205で求めた良品集合体側の重心と、ステップ204で求めた不良品集合体側の外接矩形の長軸方向の両端点とを結び、2つの直線(
図12、符号(2)及び(3)の直線)を作成する。
【0056】
以上より、不良品集合体に当てはめた慣性等価楕円を囲んで閉領域を形成する6つの平面が作成される。すなわち、
図13に示すように、慣性等価楕円を囲む6つの平面として、第1の平面はマハラノビス距離を最小とする境界面(1)、第2の平面は良品集合体側の重心と不良品集合体側の外接矩形の長軸方向の一端とを結ぶ平面(2)、第3の平面は良品集合体側の重心と不良品集合体側の外接矩形の長軸方向の他端とを結ぶ平面(3)、第4の平面は外接矩形の一方側の長辺(4)、第5の平面は外接矩形の他方側の長辺(5)、及び第6の平面は良品集合体から遠い側の外接矩形の一方側短辺(6)となる。
【0057】
なお、上記閉領域を形成する6つの平面(
図13、符号(1)乃至符号(6))は、外接矩形を作成するなどの作図によって求めたものであるが、これに限らず、上記作図により作成するといった複雑な演算処理を単純な配列の参照処理で置き換えて効率化を図るべく、あらかじめルックアップテーブル(LUT)に置き換えて、メモリなどに記憶させておくこともできる。
【0058】
なお、上記段落0044の平面の作図上の例外として、各集合体の重心間の直線と境界面(1)とのなす角度γ(
図14参照)、及び長軸と境界面(1)とのなす角度ω(
図14参照)がともに45°より大きい場合には、前記第4の平面及び第5の平面は短辺側となり、前記第6の平面は長辺側となる。
【0059】
次に、
図6のステップ208では、感度の調整が行われる。感度レベルとしては、その範囲が0~100の数値レベルで表される。すなわち、感度レベル0のときは最小感度(MIN)であって、良品と不良品との判別ができず、選別の際に良品に不良品が混じるレベルであり、感度が鈍い。感度レベル50のときは中感度(MID)であって、良品と不良品とが精度よく判別できる。感度レベル100のときは最大感度(MAX)であって、良品と不良品とを極めて精度よく判別できるが、不良品とともに良品をも選別して歩留まりが悪い。
【0060】
また、
図15に示すように、前述の慣性等価楕円を囲む6つの平面で作成した閾値の算出と、上記最小感度(MIN)、中感度(MID)及び最大感度(MAX)の3つの感度レベルとの対応関係は、以下のとおりとなる。
【0061】
最小感度(MIN)は、第6の平面(6)、中感度(MID)は、第1の平面(1)、最大感度(MAX)は、第2の平面(2)と第3の平面(3)とのなす角を2等分する直線と垂直となる直線で形成される第7の平面(7)とそれぞれ同じになる。つまり、
図15の第6の平面(6)、第1の平面(1)及び第7の平面(7)のそれぞれに、上記感度レベルが設定されており、例えば、感度レベルが中感度(MID)に設定されれば、
図15上の第1の平面(1)よりも上方が良品領域、下方が不良品領域となって、図示される粒状物Aは良品、粒状物Bは不良品として良・不良判別部26によって判定される。
【0062】
上記のような第1の平面、第6の平面及び第7の平面により作成した3つの閾値と、最小感度(MIN)、中感度(MID)及び最大感度(MAX)からなる3つの感度レベルとの対応付けは、ディスプレイ11上に配置した感度作成ボタン(図示略)をタッチすることで自動的に作成されるようになる。また、
図8の三次元空間から
図9の二次元平面に次元を減少させて閾値が算出されるため、信号処理を大幅に簡略化することができる。
【0063】
閾値計算部28において前述したようなフローに基づいて決定された閾値は、信号処理部20の閾値データ格納部24に格納される。続いて、実際の判別作業を行い、エジェクタノズル7を駆動可能とした状態で、判別対象となる粒状物を貯留タンク4からシュート3に流す。当該シュート3から落下した粒状物が検査部6に達すると、この粒状物をCCDカメラ13a、13b及び第1波長NIRカメラ14-1a、14-1b、第2波長NIRカメラ14-2a、14-2bが撮像する。
【0064】
良・不良判別部26は、閾値データ格納部24から閾値を読み込み、この閾値を基準にして、CCDカメラ13a、13b及び第1波長NIRカメラ14-1a、14-1b、第2波長NIRカメラ14-2a、14-2bが撮像した画像データから緑(G)の波長成分及び二つの近赤外光成分を用いて、粒状物が良品であるか不良品であるか判別する。もちろん、良品と比較して明らかな色彩上の相違がある不良品の場合は、緑(G)の波長成分のみで良・不良を判別することができる。
【0065】
良・不良判別部26が良品であると判断した粒状物がエジェクタノズル7を通過しても、エジェクタ駆動回路22はエジェクタノズル7のバルブを開くことはなく、粒状物は良品回収部8に向かって自然落下する。良・不良判別部26が不良品であると判断した粒状物がエジェクタノズル7に達すると、エジェクタ駆動回路22がエジェクタノズル7のバルブを開き、エジェクタノズル7からの噴風により粒状物が落下軌跡から吹き飛ばされて不良品回収部9に落下する。
【0066】
なお、第1の実施形態では、光学的検査を行う検査部6が、粒状物の落下軌跡aを挟んで前側のフロントボックス12a(第1の検査部)と、後側のリヤボックス12b(第2の検査部)とから構成され、それぞれに可視光検出部であるCCDカメラと、近赤外光検出部である第1波長NIRカメラ及び第2波長NIRカメラが収容されている。したがって、一つの粒状物に対して、二つの可視光画像及び二つの第1波長近赤外光画像、二つの第2波長近赤外光画像が取得される。このように構成されることで、例えば、前側又は後側のいずれか一方でも不良品と判定された場合は、エジェクタノズル7によって不良品回収部9へ回収することが可能となり、精度の高い判別を行うことが可能となる。
【0067】
〔その他の実施形態〕
以上、本発明の光学式粒状物判別装置の実施例のうち、第1の実施形態について説明した。しかし、本発明は前述の実施形態に必ずしも限定されるものではなく、例えば以下のような変形例も含まれる。
【0068】
例えば、前述の第1の実施形態では、判別対象となる粒状物を黒ひまわりの種としたが、他の粒状物であってもよく、例えば、米を判別対象とすることも可能である。具体的には、
図17に示されるように、光学的検査に基づいて決定された閾値を基準として、判別対象となる粒状物の中から、白米としらたを良品とし、着色米や薄焼け米、異物を不良品として判別することが可能である。例えば、図示されるように、「白米」及び「しらた」、「異物」は、可視光画像では判別ができないが、「しらた」は850nmの近赤外光画像によって白米と区別することが可能であり、さらに「異物」については、1550nmの近赤外光画像によって白米と区別することが可能となる。そして、撮像された各近赤外光画像と可視光画像に基づいて三次元光学相関図を作成し、前述の実施形態と同様にして閾値を求めることにより、良品と不良品とを正確に判別することが可能となる。なお、図示される別実施形態では、「しらた」を良品としているが、操作者の設定に応じて「しらた」を不良品とすることも可能であり、歩留まりとの関係において、良品と不良品とを自由に選択することが可能である。
【0069】
また、判別対象は上記した黒ひまわりの種や米に限らず、麦類、豆類、ナッツ類等の穀粒の他、ペレット、ビーズ等の樹脂片、医薬品、鉱石類、シラス等の細かい物品、その他の粒状物からなる原料を良品と不良品とに選別したり、原料に混入する異物等を排除したりする場合に、本発明の光学式粒状物判別装置は有効に適用することが可能である。
【0070】
前述の第1の実施形態では、判別対象を黒ひまわりの種とし、緑(G)の可視光、波長850nmの近赤外光の反射成分及び波長1550nmの近赤外光の反射成分を検出して、三次元光学相関図を作成したが、判別対象の種類に応じて、最も有意差が現れる可視光及び近赤外光の波長を選択することが可能である。可視光及び近赤外光の波長を選択するに際し、操作者がディスプレイ11に表示される三次元光学相関図を視認して選択してもよく、判定部19において自動的に選択されるように構成してもよい。
【0071】
より具体的には、他の近赤外光成分である1200nmの近赤外光画像を撮像するNIRカメラを増設(1つのNIRカメラで複数波長の撮像が可能なものを含む)してもよく、判別対象の種類に応じて複数波長の近赤外光画像を取得することが可能である。そしてこの場合、赤(R)、緑(G)、青(B)の波長成分と、850nm、1200nm、1550nmの近赤外光の波長成分を含めて多変量解析を行い、各波長成分のうち、最も相関性の高い波長成分によっての三次元光学相関図を作成することが可能となるため、様々な種類の判別対象物に対し、適切な閾値を設定して精度の高い判別が可能となる。
【0072】
また、第1の実施形態では、可視光検出部として赤(R)、緑(G)、青(B)の3つの波長成分を検出可能なCCDカメラを用いたが、特定の波長のみを検出可能な可視光検出部を用いることも可能である。さらに、第1の実施形態では、近赤外光の波長に応じて、第1波長NIRカメラ14-1a、14-1bと第2波長NIRカメラ14-2a、14-2bとを設けたが、1つのNIRカメラで複数種類の波長成分が撮影できるカメラを使用してもよい。
【0073】
また、第1の実施形態では、可視光画像から得られる粒状物の輪郭から物体認識を行い、粒状物の輪郭に近赤外光画像を重ねたときにずれが生じないように、CCDカメラ13a、13b及び第1波長NIRカメラ14-1a、14-1bと第2波長NIRカメラ14-2a、14-2bの向きや位置を調整するように構成したが、必ずしもこのような方法に限られず、例えば、ディスプレイ11に表示された物体認識後の近赤外光画像にずれが認められた場合は、画像の位置補正を手動又は自動で行うことによってずれを補正することも可能である。
【0074】
また、第1の実施形態では、フロントボックス12a及びリヤボックス12bにそれぞれ設けられた可視光検出部であるCCDカメラと、近赤外光検出部であるNIRカメラによって、一つの粒状物に対して、二つの可視光画像及び二つの近赤外光画像を取得して、精度の高い判別を行った。しかしながら、必ずしもこのような構成に限られるものではなく、例えば、フロントボックス12a及びリヤボックス12bのうち、いずれか一方のみに、可視光検出部であるCCDカメラと、近赤外光検出部であるNIRカメラを設けるようにしてもよい。さらに別の変形例では、フロントボックス12a及びリヤボックス12bのうち、いずれか一方のCCDカメラ及びNIRカメラを故障時の予備として備えることも可能である。
【符号の説明】
【0075】
1 光学式粒状物判別装置
2 機体
3 シュート
4 貯留タンク
5 振動フィーダ
6 検査部
7 エジェクタノズル
8 良品回収部
9 不良品回収部
10 ドア
11 ディスプレイ
12a フロントボックス
12b リヤボックス
13a,13b CCDカメラ
14-1a,14-1b 第1波長NIRカメラ
14-2a,14-2b 第2波長NIRカメラ
15a,15b 可視光源
16a,16b 近赤外光源
17a,17b バックグラウンド
18a,18b 透光部
19 判定部
20 信号処理部
21 CPU及びメモリ部
22 エジェクタ駆動回路
23 画像データ取得部
24 閾値データ格納部
25 画像処理部
26 良・不良判別部
27 画像データ格納部
28 閾値計算部
29 信号送受信部