(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】車両天井構造及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B60R 13/02 20060101AFI20231129BHJP
【FI】
B60R13/02 A
(21)【出願番号】P 2020042464
(22)【出願日】2020-03-11
【審査請求日】2022-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094190
【氏名又は名称】小島 清路
(74)【代理人】
【識別番号】100151644
【氏名又は名称】平岩 康幸
(72)【発明者】
【氏名】藤森 健太
(72)【発明者】
【氏名】酒向 慎貴
【審査官】菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】実開平03-040259(JP,U)
【文献】特開2018-197083(JP,A)
【文献】実開昭63-134843(JP,U)
【文献】特開2019-143255(JP,A)
【文献】実開昭61-201001(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の天井材に形成された開口部を覆うように前記天井材の裏面に内側天井材が接着された車両天井構造であって、
前記内側天井材は表面模様を有し、
前記内側天井材
は、その外周部には位置決め孔が形成されて
いるとともに、その外周縁には切欠き部が形成されており、
前記天井材の裏面には、前記位置決め孔に挿通可能な位置決めピンが設けられているとともに、前記内側天井材の外周縁
の前記切欠き部が当接可能な
ブロック状の位置決め部が設けられており、
前記位置決め孔に前記位置決めピンが挿通されるとともに、前記内側天井材の
前記切欠き部が前記位置決め部に当接されることで、
前記天井材の前記開口部の合わせラインまたは前記天井材に施された表面模様に対して前記内側天井材の表面模様が位置合わせされた状態で、前記天井材に対して前記内側天井材が平面方向に位置決めされ接着されることを特徴とする車両天井構造。
【請求項2】
前記内側天井材の表皮は、光ファイバーが織り込まれた織布により形成されている請求項1に記載の車両天井構造。
【請求項3】
前記天井材の裏面には、前記光ファイバーの結束端部が接続される光源装置を保持するベースプレートが設けられており、
前記位置決めピンは、前記ベースプレートに設けられている請求項2に記載の車両天井構造。
【請求項4】
前記開口部は、前記天井材の車両幅方向の左右両側にそれぞれ形成されており、
前記ベースプレートは、左右両側の前記開口部の間に配置されている請求項3に記載の車両天井構造。
【請求項5】
車両の天井材に形成された開口部を覆うように前記天井材の裏面に内側天井材が接着された車両天井構造の製造方法であって、
前記天井材の裏面に、前記内側天井材の外周部に形成された位置決め孔に挿通可能な位置決めピンを取り付ける第1取付工程と、
前記位置決め孔に挿通された前記位置決めピンの軸回りに前記内側天井材を回転させることで、前記天井材に対して前記開口部から露出する前記内側天井材の表面模様を位置合わせする調整工程と、
前記天井材の裏面に、前記表面模様が位置合わせされた前記内側天井材の外周縁に当接するように位置決め部を取り付ける第2取付工程と、
前記天井材から取り外された前記内側天井材の外周表面に接着剤を塗布する塗布工程と、
前記接着剤が塗布された前記内側天井材の前記位置決め孔に前記位置決めピンを挿通させるとともに、前記内側天井材の外周縁を前記位置決め部に当接させることで、前記天井材に対して前記内側天井材を平面方向に位置決めされた状態で接着させる接着工程と、を備えることを特徴とする車両天井構造の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両天井構造及びその製造方法に関し、さらに詳しくは、車両の天井材に形成された開口部を覆うように天井材の裏面に内側天井材が接着された車両天井構造及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両天井構造として、車両の天井材に形成された開口部を覆うように天井材の裏面に内側天井材が接着されたものが一般に知られている。この車両天井構造では、意匠性を高めるために、内側天井材の表皮として、ストライプ柄のような方向性を持つものを採用することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の車両天井構造において、内側天井材の表皮として、ストライプ柄のような方向性を持つものを採用する場合、天井材に対する内側天井の接着位置のばらつきにより、開口部の合わせラインに対して内側天井材の表面模様のずれが生じたり、天井材の表面模様に対して内側天井材の表面模様のずれが生じたりして、意匠上の品質不具合となる恐れがある。
【0005】
特に、内側天井材の表皮として、光ファイバーが織り込まれた織布からなるものを採用する場合においては、織布の経糸又は緯糸を構成する光ファイバーにより内側天井材の表面模様がストライプ柄となるが、表皮が光るため、そのストライプ柄のずれが目立ちやすい。
また、開口部の周長が長い場合には、接着剤(ホットメルト)の塗布に時間がかかり、接着剤のオープンタイムを守るために、天井材に対する内側天井材の接着位置の調整に十分な時間をかけることができず、上述の問題が生じやすい。
さらに、上述の問題は、内側天井材の表面模様がストライプ柄である場合に限らず、例えば、波柄、格子柄、ドット柄、文字柄等であっても、同様に生じる。
【0006】
さらに、内側天井材の表皮として、光ファイバーが織り込まれた織布からなるものを採用する場合においては、最もシンプルに光ファイバーの光源装置を配置できる箇所は、天井材の裏面の車両前方(すなわち、サンバイザーが存在している付近)と考えられる。しかし、該当箇所は、車両ボデーのリンフォースが存在していることと、サンバイザーを収納するため天井材の裏面側に凸形状を形成していることから、光源装置を配置するスペース的な余裕がない。さらに、天井材の裏面の車両前方の中央にはオーバーヘッドコンソールが存在しているため、光源装置を左右に分けることで、ワイヤーハーネスが2系統となり、重量的に不利となる。
【0007】
なお、特許文献1には、車両室内天井の長手方向に延びる長尺の線状発光部を有する線状発光ユニットが、前記車両室内天井の左右両縁にそれぞれ備えられ、前記線状発光部が放射する光が前記車両室内を直接照明する、車両用室内照明システムが開示されている。
【0008】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、天井材に対して開口部から露出する内側天井材の表面模様を容易に且つ短時間で精度良く位置合わせして内側天井材を接着することができる車両天井構造及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記問題を解決するために、請求項1に記載の発明は、車両の天井材に形成された開口部を覆うように前記天井材の裏面に内側天井材が接着された車両天井構造であって、前記内側天井材の外周部には、位置決め孔が形成されており、前記天井材の裏面には、前記位置決め孔に挿通可能な位置決めピンが設けられているとともに、前記内側天井材の外周縁が当接可能な位置決め部が設けられており、前記位置決め孔に前記位置決めピンが挿通されるとともに、前記内側天井材の外周縁が前記位置決め部に当接されることで、前記天井材に対して前記内側天井材が平面方向に位置決めされた状態で接着されることを要旨とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記内側天井材の表皮は、光ファイバーが織り込まれた織布により形成されていることを要旨とする。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記天井材の裏面には、前記光ファイバーの結束端部が接続される光源装置を保持するベースプレートが設けられており、前記位置決めピンは、前記ベースプレートに設けられていることを要旨とする。
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、前記開口部は、前記天井材の車両幅方向の左右両側にそれぞれ形成されており、前記ベースプレートは、左右両側の前記開口部の間に配置されていることを要旨とする。
上記問題を解決するために、請求項5に記載の発明は、車両の天井材に形成された開口部を覆うように前記天井材の裏面に内側天井材が接着された車両天井構造の製造方法であって、前記天井材の裏面に、前記内側天井材の外周部に形成された位置決め孔に挿通可能な位置決めピンを取り付ける第1取付工程と、前記位置決め孔に挿通された前記位置決めピンの軸回りに前記内側天井材を回転させることで、前記天井材に対して前記開口部から露出する前記内側天井材の表面模様を位置合わせする調整工程と、前記天井材の裏面に、前記表面模様が位置合わせされた前記内側天井材の外周縁に当接するように位置決め部を取り付ける第2取付工程と、前記天井材から取り外された前記内側天井材の外周表面に接着剤を塗布する塗布工程と、前記接着剤が塗布された前記内側天井材の前記位置決め孔に前記位置決めピンを挿通させるとともに、前記内側天井材の外周縁を前記位置決め部に当接させることで、前記天井材に対して前記内側天井材を平面方向に位置決めされた状態で接着させる接着工程と、を備えることを要旨とす。
【発明の効果】
【0010】
本発明の車両天井構造によると、内側天井材の外周部には、位置決め孔が形成されており、天井材の裏面には、位置決め孔に挿通可能な位置決めピンが設けられているとともに、内側天井材の外周縁が当接可能な位置決め部が設けられている。そして、位置決め孔に位置決めピンが挿通されるとともに、内側天井材の外周縁が位置決め部に当接されることで、天井材に対して内側天井材が平面方向に位置決めされた状態で接着される。これにより、天井材に対して開口部から露出する内側天井の表面模様を容易に且つ短時間で精度良く位置合わせして内側天井材を接着することができる。その結果、意匠上の品質確保を可能とする。
【0011】
また、前記内側天井材の表皮が、光ファイバーが織り込まれた織布により形成されている場合は、織布の経糸又は緯糸を構成する光ファイバーにより内側天井材の表面模様がストライプ柄となるが、天井材に対してストライプ柄を精度良く位置合わせして内側天井材を接着できる。
【0012】
また、前記天井材の裏面に、光源装置を保持するベースプレートが設けられており、前記位置決めピンが、前記ベースプレートに設けられている場合は、位置決めピンを容易に設定できる。
【0013】
また、前記開口部が、前記天井材の車両幅方向の左右両側にそれぞれ形成されており、前記ベースプレートが、左右両側の前記開口部の間に配置されている場合は、天井材の車両幅方向の中央部上方のスペースを利用して、高さ寸法の比較的大きな光源装置とともに位置決めピンを配置できる。さらに、光源装置に接続されるワイヤーハーネスを1系統とすることができる。
【0014】
本発明の車両天井構造の製造方法によると、天井材の裏面に、内側天井材の外周部に形成された位置決め孔に挿通可能な位置決めピンを取り付ける第1取付工程と、位置決め孔に挿通された位置決めピンの軸回りに内側天井材を回転させることで、天井材に対して開口部から露出する内側天井材の表面模様を位置合わせする調整工程と、天井材の裏面に、表面模様が位置合わせされた内側天井材の外周縁に当接するように位置決め部を取り付ける第2取付工程と、天井材から取り外された内側天井材の外周表面に接着剤を塗布する塗布工程と、接着剤が塗布された内側天井材の位置決め孔に位置決めピンを挿通させるとともに、内側天井材の外周縁を位置決め部に当接させることで、天井材に対して内側天井材を平面方向に位置決めされた状態で接着させる接着工程と、を備える。これにより、天井材に対して開口部から露出する内側天井の表面模様を容易に且つ短時間で精度良く位置合わせして内側天井材を接着することができる。その結果、意匠上の品質確保を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本発明について、本発明による典型的な実施形態の非限定的な例を挙げ、言及された複数の図面を参照しつつ以下の詳細な記述にて更に説明するが、同様の参照符号は図面のいくつかの図を通して同様の部品を示す。
【
図1】実施例に係る車両天井構造を上部から視た斜視図である。
【
図2】上記車両天井構造を上部から視た要部平面図である。
【
図7】実施例に係るベースプレートの斜視図である。
【
図8】上記車両天井構造の製造方法を説明するための説明図であり、(a)は天井材の裏面にベースプレートが取り付けられた状態を示し、(b)は(a)の要部拡大図を示し、(c)は内側天井材を示す。
【
図9】上記車両天井構造の製造方法を説明するための説明図であり、(a)は位置決め孔に位置決めピンが挿通された状態を示し、(b)は意匠面側から視た天井材を示し、(c)は天井材の裏面に位置決め部が取り付けられた状態を示す。
【
図10】上記車両天井構造の製造方法を説明するための説明図であり、(a)は天井材から内側天井材が取り外された状態を示し、(b)は内側天井材の外周表面に接着剤が塗布された状態を示し、(c)は天井材の裏面に内側天井材が接着された状態を示す。
【
図11】上記車両天井構造の製造方法を説明するための説明図(意匠面側から視た天井材の平面図)であり、(a)は位置決めピンの軸回りに内側天井材が回転される状態を示し、(b)は天井材に対して内側天井材の表面模様が位置合わせされた状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
ここで示される事項は例示的なものおよび本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要である程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
【0017】
<車両天井構造>
本実施形態に係る車両天井構造は、例えば、
図1及び
図2等に示すように、車両の天井材(2)に形成された開口部(3)を覆うように天井材の裏面に内側天井材(4)が接着された車両天井構造(1)であって、内側天井材(4)の外周部には、位置決め孔(15)が形成されており、天井材(2)の裏面には、位置決め孔(15)に挿通可能な位置決めピン(7)が設けられているとともに、内側天井材(4)の外周縁(16a)が当接可能な位置決め部(8)が設けられている。そして、位置決め孔(15)に位置決めピン(7)が挿通されるとともに、内側天井材(4)の外周縁(16a)が位置決め部(8)に当接されることで、天井材(2)に対して内側天井材(4)が平面方向に位置決めされた状態で接着される。
【0018】
上記天井材(2)の構成、材質、形状等は特に問わない。この天井材は、例えば、意匠性を高めるために、ストライプ柄、波柄、格子柄、ドット柄、文字柄等の表面模様を有することができる。
上記開口部(3)の大きさ、形状、配置場所等は特に問わない。この開口部は、例えば、
図1等に示すように、天井材(2)の車両幅方向(Q)の左右両側のそれぞれに形成されていることができる。さらに、開口部は、例えば、車両前後方向(P)に長尺となる矩形状に形成されていることができる。
上記位置決めピン(7)の大きさ、配置場所等は特に問わない。この位置決めピンは、例えば、
図2等に示すように、天井材(2)の開口部(3)の外周部のうちの車両前後方向(P)に沿う部位において一端側に形成されていることができる。
上記位置決め部(8)の大きさ、形状、配置場所等は特に問わない。この位置決め部は、例えば、
図2等に示すように、天井材(2)の開口部(3)の外周部のうちの車両前後方向(P)に沿う部位において他端側に形成されていることができる。
【0019】
上記内側天井材(4)の構成、材質、形状等は特に問わない。この内側天井材は、例えば、意匠性を高めるために、ストライプ状、波柄、格子柄、ドット柄、文字柄等の表面模様を有することができる。なお、天井材(2)の表面模様と内側天井材(4)の表面模様とは、同種であってもよいし、異種であってもよい。
上記位置決め孔(15)の大きさ、配置場所等は特に問わない。この位置決め孔は、例えば、
図2等に示すように、内側天井材(4)の外周部のうちの車両前後方向(P)に沿う部位において一端側に形成されていることができる。
【0020】
本実施形態に係る車両天井構造としては、例えば、
図8(c)に示すように、内側天井材(4)の表皮(4b)は、光ファイバーが織り込まれた織布(11)により形成されている形態が挙げられる。この場合、通常、織布の経糸又は緯糸を構成する光ファイバーにより内側天井材の表面模様がストライプ柄となる。
【0021】
上述の形態の場合、例えば、
図1及び
図2等に示すように、天井材(2)の裏面には、光ファイバーの結束端部(13)が接続される光源装置(18)を保持するベースプレート(19)が設けられており、位置決めピン(7)は、ベースプレートに設けられていることができる。この場合、例えば、開口部(3)は、天井材(2)の車両幅方向(Q)の左右両側にそれぞれ形成されており、ベースプレート(19)は、左右両側の開口部(3)の間に配置されていることができる。
【0022】
本実施形態に係る車両天井構造としては、例えば、
図6等に示すように、内側天井材(4)の表皮(4b)には、開口部(3)の開口縁に当接する湾曲面(12)が形成されている形態が挙げられる。これにより、内側天井材(4)の位置決めピン(7)の軸回りの回転位置に関わらず、開口部(3)の開口縁と内側天井材(4)の湾曲面(12)とが隙間なく密着して当接される。
【0023】
<車両天井構造の製造方法>
本実施形態に係る車両天井構造の製造方法は、例えば、
図1及び
図2等に示すように、車両の天井材(2)に形成された開口部(3)を覆うように天井材の裏面に内側天井材(4)が接着された車両天井構造(1)の製造方法であって、天井材(2)の裏面に、内側天井材(4)の外周部に形成された位置決め孔(15)に挿通可能な位置決めピン(7)を取り付ける第1取付工程(
図8(a)(b)等参照)と、位置決め孔(15)に挿通された位置決めピン(7)の軸回りに内側天井材(4)を回転させることで、天井材(2)に対して開口部(3)から露出する内側天井材(4)の表面模様を位置合わせする調整工程(
図9(a)(b)等参照)と、天井材(2)の裏面に、表面模様が位置合わせされた内側天井材(4)の外周縁に当接するように位置決め部(8)を取り付ける第2取付工程(
図9(c)等参照)と、天井材(2)から取り外された内側天井材(4)の外周表面に接着剤(21)を塗布する塗布工程(
図10(a)(b)等参照)と、接着剤が塗布された内側天井材(4)の位置決め孔(15)に位置決めピン(7)を挿通させるとともに、内側天井材の外周縁(16a)を位置決め部(8)に当接させることで、天井材(2)に対して内側天井材(4)を平面方向に位置決めされた状態で接着させる接着工程(
図10(c)等参照)と、を備える。
本実施形態に係る車両天井構造の製造方法としては、例えば、上述の実施形態に係る車両天井構造(1)で説明した各構成を適用したものを挙げることができる。
【0024】
なお、上記実施形態で記載した各構成の括弧内の符号は、後述する実施例に記載の具体的構成との対応関係を示すものである。
【実施例】
【0025】
以下、図面を用いて実施例により本発明を具体的に説明する。
【0026】
(1)車両天井構造の構成
本実施例に係る車両天井構造1は、
図1及び
図2に示すように、車両の天井材2に形成された開口部3を覆うように天井材2の裏面(すなわち、車室外側を向く面)に内側天井材4が接着された2段天井構造である。
【0027】
天井材2は、基材2aと、基材2aの表面に積層される表皮2bと、を備えている(
図3参照)。この表皮2bは、織布、不織布、ニット等により形成されており、所定の表面模様を有している。また、開口部3は、天井材2の車両幅方向Qの左右両側のそれぞれに形成されているとともに、車両前後方向Pに長尺となる矩形状に形成されている。
なお、
図3等において、符号5は金属製の天井パネルを示す。
【0028】
天井材2の裏面には、内側天井材4の外周部に形成された後述の位置決め孔15に挿通可能なボス状の位置決めピン7が突設されているとともに、内側天井材4の外周縁を構成する後述の端面16aが当接可能なブロック状の位置決め部8が突設されている。
【0029】
位置決めピン7は、天井材2の開口部3の外周部のうちの車両前後方向Pに沿う部位(具体的に、天井材2の車両幅方向Qの中心に近い側の車両前後方向Pに沿う部位)において前端側に形成されている。この位置決めピン7は、天井材2の裏面に接着等により取り付けられる後述のベースプレート19に一体に設けられている(
図7参照)。
【0030】
位置決め部8は、天井材2の開口部3の外周部のうちの車両前後方向Pに沿う部位(具体的に、天井材2の車両幅方向Qの中心に近い側の車両前後方向Pに沿う部位)において後端側に形成されている。この位置決め部8は、天井材2の裏面に接着等により取り付けられている(
図5参照)。
【0031】
内側天井材4は、車両前後方向Pに長尺となる矩形状に形成されている。この内側天井材4は、基材4aと、基材4aの表面に積層される表皮4bと、を備えている(
図3参照)。この表皮4bは、光ファイバーが織り込まれた織布11により形成されている(
図8(c)参照)。この織布11の経糸又は緯糸を構成する光ファイバーにより内側天井材4の表面模様がストライプ柄となる(
図11参照)。このストライプ柄は、車両前後方向P(すなわち、内側天井材4の長尺方向)に延びている。さらに、内側天井材4の表皮4bには、開口部3の開口縁に当接する湾曲面12が形成されている(
図6参照)。
【0032】
図8(c)に示すように、表皮4bの一端側から引き出される多数の光ファイバーは、所定本数(例えば、104本)毎にスパイラル形状のシリコン製等のチューブによりケーブル状に収束されるとともに、所定本数の光ファイバーの端末はアルミニウム製等のチューブで固定される。これにより、後述の光源装置18に接続可能なコネクタ形状の光ファイバーの結束端部13が構成される。
【0033】
なお、本実施例では、1つの表皮4bが複数(図中3つ)の光ファイバーの結束端部13を備える形態を例示するが、これに限定されず、例えば、1つの表皮4bが1つの光ファイバーの結束端部13を備える形態としてもよい。
【0034】
内側天井材4の外周部には、
図1及び
図2に示すように、丸孔状の位置決め孔15が形成されている。この位置決め孔15は、内側天井材4の外周部のうちの車両前後方向Pに沿う部位(具体的に、天井材2の車両幅方向Qの中心に近い側の車両前後方向Pに沿う部位)において前端側に形成されている。さらに、位置決め孔15は、内側天井材4の外周部のうちの天井材2の裏面から離間して配置される部位に形成されている(
図3及び
図4参照)。
【0035】
内側天井材4の外周部には、位置決め部8と当接する端面16aを有する切欠き部16が形成されている。この切欠き部16は、内側天井材4の外周部のうちの車両前後方向Pに沿う部位(具体的に、天井材2の車両幅方向Qの中心に近い側の車両前後方向Pに沿う部位)において後端側に形成されている。
【0036】
天井材2の裏面には、光ファイバーの結束端部13が接続される光源装置18を保持するベースプレート19が接着等により取り付けられている。このベースプレート19は、各内側天井材4に対応して複数(図中2つ)備えられている。また、ベースプレート19は、左右両側の開口部3の前端側の間に配置されている。さらに、ベースプレート19上には、光源装置18を保持する保持部19aが複数(図中3つ)設けられている(
図7参照)。これら保持部19aは、車両前後方向Pに位置をずらして配置されている。
なお、
図1中で、符号29は、光源装置18に接続される電源ボックスを示す。
【0037】
次に、上記構成の車両天井構造1の製造方法について説明する。本製造方法は、以下に述べる第1取付工程、調整工程、第2取付工程、塗布工程及び接着工程を備えている。
【0038】
第1取付工程は、
図8(a)(b)に示すように、天井材2の裏面に、内側天井材4の外周部に形成された位置決め孔15に挿通可能な位置決めピン7を取り付ける工程である。この第1取付工程では、天井材2の裏面にベースプレート19を精度管理を行い貼り付ける。その後、
図8(c)に示すように、次の調整工程で用いる内側天井材4を用意する。
【0039】
調整工程は、
図9(a)(b)に示すように、位置決め孔15に挿通された位置決めピン7の軸回りに内側天井材4を回転させることで、天井材2に対して開口部3から露出する内側天井材4の表面模様を位置合わせする工程である。この調整工程では、
図11(a)(b)に示すように、位置決めピン7を主基準として、内側天井材4の精度管理された位置決め孔15に通す。これにより、天井材2と内側天井材4のばらつきは、主基準を中心とした回転のばらつきに制限される。そして、天井材2の意匠面から、開口部3の合わせラインや天井材2の表面模様に対して内側天井材4のストライプ柄の表面模様が合うように調整する。
【0040】
第2取付工程は、
図9(c)に示すように、天井材2の裏面に、表面模様が位置合わせされた内側天井材4の外周縁16aに当接するように位置決め部8を取り付ける工程である。この第2取付工程では、内側天井材4の切欠き部16の端面16aに合わせてブロック状の位置決め部8を天井材2の裏面に貼りつける。この位置決め部8を副基準とすることで、意匠上の品質を担保した構造をとることができる。
【0041】
塗布工程は、
図10(a)(b)に示すように、天井材2から取り外された内側天井材4の外周表面に接着剤21を塗布する工程である。この塗布工程では、接着剤21として湿気硬化型のホットメルトを用いる。
【0042】
接着工程は、
図10(c)に示すように、接着剤21が塗布された内側天井材4の位置決め孔15に位置決めピン7を挿通させるとともに、内側天井材4の外周縁16aを位置決め部8に当接させることで、天井材2に対して内側天井材4を平面方向に位置決めされた状態で接着させる工程である。
【0043】
ここで、通常、天井材2の裏面への他部品の組みつけはホットメルトを利用するが、開口部3の周長が長い場合においては、ホットメルトの塗布に時間がかかりオープンタイムが守れない問題が発生する(ホットメルトは樹脂を高温で溶融させ対象を貼りつける機能を有するタイプの接着剤であるため、開口部3の周長が長くなると塗布に時間がかかり、先に塗布したホットメルト温度が低下することで固形に戻り接着できなくなる)。このため、天井材2の裏面から内側天井材4が合わされる構造の本2段天井構造では、ホットメルトを塗布後、オーブンで再加熱し全周を短時間で貼り合わせ可能な湿気硬化型ホットメルトを採用している。
ただし、この場合、再加熱後の接着可能時間が60秒以内に限られることが多いため、位置調整を容易に行うことができない。このため、予め上記の方法で決めた主基準と副基準に合わせて貼り合わせることで意匠上の品質を確保しながら短時間で貼り合わせを可能とする。
【0044】
(2)実施例の効果
本実施例の車両天井構造1によると、内側天井材4の外周部には、位置決め孔15が形成されており、天井材2の裏面には、位置決め孔15に挿通可能な位置決めピン7が設けられているとともに、内側天井材4の外周縁16aが当接可能な位置決め部8が設けられている。そして、位置決め孔15に位置決めピン7が挿通されるとともに、内側天井材4の外周縁16aが位置決め部8に当接されることで、天井材2に対して内側天井材4が平面方向に位置決めされた状態で接着される。これにより、天井材2に対して開口部3から露出する内側天井材4の表面模様を容易に且つ短時間で精度良く位置合わせして内側天井材4を接着することができる。その結果、意匠上の品質確保を可能とする。
【0045】
また、本実施例では、内側天井材4の表皮4bは、光ファイバーが織り込まれた織布11により形成されている。これにより、織布11の経糸又は緯糸を構成する光ファイバーにより内側天井材4の表面模様がストライプ柄となるが、天井材2に対してストライプ柄を精度良く位置合わせして内側天井材4を接着できる。
【0046】
また、本実施例では、天井材2の裏面には、光源装置18を保持するベースプレート19が設けられており、位置決めピン7は、ベースプレート19に設けられている。これにより、位置決めピン7を容易に設定できる。
【0047】
また、本実施例では、開口部3は、天井材2の車両幅方向Qの左右両側にそれぞれ形成されており、ベースプレート19は、左右両側の開口部3の間に配置されている。これにより、天井材2の車両幅方向Qの中央部上方のスペースを利用して、高さ寸法の比較的大きな光源装置18とともに位置決めピン7を配置できる。さらに、光源装置18に接続されるワイヤーハーネスを1系統とすることができる。
これに対して、天井材2の車両幅方向Qの外側上方には、カーテンエアバッグ等の部品が配置されているため、光源装置18や位置決めピン7のためのスペースを確保し難い。
【0048】
また、本実施例では、ベースプレート19が車両幅方向Qの中央部に配置されているとともに、複数の光源装置18が車両幅方向Qの外側に向かって並列に配置されている。これにより、左右両側の内側天井材4の表皮4bに対して電源供給のし易さとスペース効率が高い構造としている。
【0049】
さらに、本実施例では、内側天井材4の表皮4bには、開口部3の開口縁に当接する湾曲面12が形成されている。これにより、内側天井材4の位置決めピン7の軸回りの回転位置に関わらず、開口部3の開口縁と内側天井材4の湾曲面12とが隙間なく密着して当接される。
これに対して、天井材2の開口部3と内側天井材4とが凹凸で嵌め合わされる場合、隙間が生じる恐れがある。
【0050】
本実施例の車両天井構造の製造方法によると、天井材2の裏面に、内側天井材4の外周部に形成された位置決め孔15に挿通可能な位置決めピン7を取り付ける第1取付工程と、位置決め孔15に挿通された位置決めピン7の軸回りに内側天井材4を回転させることで、天井材2に対して開口部3から露出する内側天井材4の表面模様を位置合わせする調整工程と、天井材2の裏面に、表面模様が位置合わせされた内側天井材4の外周縁16aに当接するように位置決め部8を取り付ける第2取付工程と、天井材2から取り外された内側天井材4の外周表面に接着剤21を塗布する塗布工程と、接着剤21が塗布された内側天井材4の位置決め孔15に位置決めピン7を挿通させるとともに、内側天井材4の外周縁16aを位置決め部8に当接させることで、天井材2に対して内側天井材4を平面方向に位置決めされた状態で接着させる接着工程と、を備える。これにより、天井材2に対して開口部3から露出する内側天井材4の表面模様を容易に且つ短時間で精度良く位置合わせして内側天井材4を接着することができる。その結果、意匠上の品質確保を可能とする。
【0051】
尚、本発明においては、上記実施例に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。すなわち、上記実施例では、左右2つの開口部3を有する天井材2を例示したが、これに限定されず、1つ又は3つ以上の開口部3を有する天井材2としてもよい。
【0052】
また、上記実施例では、光ファイバー織布11からなる表皮4bを用いる内側天井材4を例示したが、これに限定されず、例えば、光ファイバー織布11からなる表皮を用いず、一般的な織布、不織布、ニット等からなる表皮を用いる内側天井材4としてもよい。
【0053】
また、上記実施例では、ベースプレート19に一体に設けられる位置決めピン7を例示したが、これに限定されず、例えば、ベースプレート19と別体に設けられる位置決めピン7としててもよい。
【0054】
さらに、上記実施例では、内側天井材4に切欠き部16を設け、切欠き部16の端面16aと位置決め部8を当接させるようにしたが、これに限定されず、例えば、内側天井材4に切欠き部16を設けずに、内側天井材4の直線状に延びる外周縁と位置決め部8を当接させるようにしてもよい。
【0055】
前述の例は単に説明を目的とするものでしかなく、本発明を限定するものと解釈されるものではない。本発明を典型的な実施形態の例を挙げて説明したが、本発明の記述および図示において使用された文言は、限定的な文言ではなく説明的および例示的なものであると理解される。ここで詳述したように、その形態において本発明の範囲または精神から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲内で変更が可能である。ここでは、本発明の詳述に特定の構造、材料および実施例を参照したが、本発明をここにおける開示事項に限定することを意図するものではなく、むしろ、本発明は添付の特許請求の範囲内における、機能的に同等の構造、方法、使用の全てに及ぶものとする。
【0056】
本発明は上記で詳述した実施形態に限定されず、本発明の請求項に示した範囲で様々な変形または変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、車両の天井材に形成された開口部を覆うように天井材の裏面に内側天井材が接着された2段天井構造に関する技術として好適に利用される。
【符号の説明】
【0058】
1;車両天井構造、2;天井材、3;開口部、4;内側天井材、4b;表皮、7;位置決めピン、8;位置決め部、11;光ファイバーの織布、13;光ファイバーの結束端部、15;位置決め孔、16a;切欠き部の端面(内側天井材の外周縁)、18;光源装置、19;ベースプレート、21;接着剤、Q;車両幅方向。