IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ スズキ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-車両のエンジン始動装置 図1
  • 特許-車両のエンジン始動装置 図2
  • 特許-車両のエンジン始動装置 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】車両のエンジン始動装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 29/02 20060101AFI20231129BHJP
   B60W 10/04 20060101ALI20231129BHJP
   B60W 10/18 20120101ALI20231129BHJP
   B60W 10/06 20060101ALI20231129BHJP
   B60W 10/184 20120101ALI20231129BHJP
   F02N 11/10 20060101ALI20231129BHJP
   F02N 15/00 20060101ALI20231129BHJP
   B60T 7/12 20060101ALI20231129BHJP
   F16H 59/08 20060101ALI20231129BHJP
   F16H 59/54 20060101ALI20231129BHJP
   F16H 61/12 20100101ALI20231129BHJP
   F16H 63/50 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
F02D29/02 321B
B60W10/00 120
B60W10/06
B60W10/184
F02N11/10 C
F02N15/00 E
F02N11/10 A
B60T7/12 Z
F16H59/08
F16H59/54
F16H61/12
F16H63/50
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020058928
(22)【出願日】2020-03-27
(65)【公開番号】P2021156239
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小泉 槙吾
【審査官】櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-076474(JP,A)
【文献】特開2010-106800(JP,A)
【文献】特開2001-132836(JP,A)
【文献】特開2012-026561(JP,A)
【文献】特開昭61-278454(JP,A)
【文献】特開2016-109177(JP,A)
【文献】特開2021-063481(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 29/02
B60W 10/04
B60W 10/06
B60W 10/184
F02N 11/10
F02N 15/00
B60T 7/12
F16H 59/08
F16H 59/54
F16H 61/12
F16H 63/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランクシャフトを回転させて車両を駆動するエンジンと、
インプットシャフトから入力された回転をシフトレバーのシフト位置に対応する変速比で変速する変速機と、
前記クランクシャフトと前記インプットシャフトを伝達状態と遮断状態との間で切り替えるバイワイヤで動作するノーマリークローズ式のクラッチと、
ブレーキの制動力を制御する制動制御部と、を備える車両のエンジン始動装置であって、
前記エンジンの始動時に、前記ブレーキによる制動力が規定値を下回ると、前記ブレーキの制動力を上げて、前記ブレーキによる制動力が規定値より大きくなったとき、または前記クラッチの締結状態から駆動軸に伝達される駆動力を算出し、前記駆動力より前記ブレーキの制動力が大きい場合に、前記エンジンの始動を許可する制御部を備える車両のエンジン始動装置。
【請求項2】
前記シフトレバーのシフト位置を検出するシフト位置センサを備え、
前記制御部は、前記シフト位置センサの異常が検出されているとき、前記ブレーキの制動力を前記規定値より大きくして、前記エンジンの始動を許可する請求項1に記載の車両のエンジン始動装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記シフト位置センサの検出するシフト位置と、前記変速機のギヤ位置が一致していない場合に、前記シフト位置センサが異常であると判定する請求項2に記載の車両のエンジン始動装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記変速機のギヤ位置をニュートラルに操作できない場合に、または前記変速機のギヤ位置を判断できない場合に、前記ブレーキの制動力を既定値より大きくして、前記エンジンの始動を許可する請求項1に記載の車両のエンジン始動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のエンジン始動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、所定の停止条件が成立したときにエンジンを自動で停止するとともに、所定の再始動条件が成立したときに停止したエンジンを自動で再始動するいわゆるエコラン制御を行なう車両の制御装置において、ニュートラルSWの故障時には、車両の制動力が所定値以上であると判定すると自動再始動制御を行なうことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-106800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ノーマリークローズ式のクラッチを採用している車両の場合は、スタータ駆動中にバッテリからクラッチのアクチュエータやECU(Electronic Control Unit)への供給電圧が降下することで、クラッチの解放状態を保つことができなくなる可能性がある。
【0005】
その場合、スタータが動作している状態で、クラッチが締結状態となるため、スタータの駆動力が駆動軸に伝達され、運転者の意図に反して車両が動く可能性があった。
【0006】
そこで、本発明は、エンジン始動時に運転者の意図に反して車両が動くことを防止することができる車両のエンジン始動装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため本発明は、クランクシャフトを回転させて車両を駆動するエンジンと、インプットシャフトから入力された回転をシフトレバーのシフト位置に対応する変速比で変速する変速機と、前記クランクシャフトと前記インプットシャフトを伝達状態と遮断状態との間で切り替えるバイワイヤで動作するノーマリークローズ式のクラッチと、ブレーキの制動力を制御する制動制御部と、を備える車両のエンジン始動装置であって、前記エンジンの始動時に、前記ブレーキによる制動力が規定値を下回ると、前記ブレーキの制動力を上げて、前記ブレーキによる制動力が規定値より大きくなったとき、または前記クラッチの締結状態から駆動軸に伝達される駆動力を算出し、前記駆動力より前記ブレーキの制動力が大きい場合に、前記エンジンの始動を許可する制御部を備えるものである。
【発明の効果】
【0008】
このように、本発明によれば、エンジン始動時に運転者の意図に反して車両が動くことを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の一実施例に係る車両のエンジン始動装置の要部の構成図である。
図2図2は、本発明の一実施例に係る車両のエンジン始動装置のエンジン始動判定処理の手順を示すフローチャートである。
図3図3は、本発明の一実施例に係る車両のエンジン始動装置のエンジン始動判定処理によるブレーキ制動力とエンジン始動のタイミングを示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施の形態に係る車両のエンジン始動装置は、クランクシャフトを回転させて車両を駆動するエンジンと、インプットシャフトから入力された回転をシフトレバーのシフト位置に対応する変速比で変速する変速機と、クランクシャフトとインプットシャフトを伝達状態と遮断状態との間で切り替えるノーマリークローズ式のクラッチと、ブレーキの制動力を制御する制動制御部と、を備える車両のエンジン始動装置であって、エンジンの始動時に、ブレーキによる制動力が規定値を下回ると、ブレーキの制動力を上げて、ブレーキによる制動力が規定値より大きくなったとき、エンジンの始動を許可する制御部を備えるよう構成されている。
【0011】
これにより、本発明の一実施の形態に係る車両のエンジン始動装置は、エンジン始動時に運転者の意図に反して車両が動くことを防止することができる。
【実施例
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施例に係る車両のエンジン始動装置について詳細に説明する。
【0013】
図1において、本発明の一実施例に係るエンジン始動装置を搭載した車両1は、エンジン2と、変速機3と、制動制御部としてのESP(登録商標:Electronic Stability Program)4と、ECM(Engine Control Module)5と、制御部としてのTCM(Transmission Control Module)6と、を含んで構成される。
【0014】
エンジン2には、複数の気筒が形成されている。本実施例において、エンジン2は、各気筒に対して、吸気行程、圧縮行程、膨張行程および排気行程からなる一連の4行程を行うように構成されている。
【0015】
変速機3は、エンジン2のクランクシャフトから伝達された回転を変速して、駆動軸11を介して車輪12を駆動するようになっている。変速機3は、非制御時において板バネ等の付勢力によって接続状態となるノーマリークローズタイプの乾式クラッチによって構成されるクラッチ31、図示しない変速機構およびディファレンシャル機構、アクチュエータを備えている。
【0016】
変速機3は、いわゆるAMT(Automated Manual Transmission)として構成されており、TCM6により制御されたアクチュエータにより変速機構における変速段の切換えとクラッチ31の締結及び解放が行なわれるようになっている。
【0017】
クラッチ31は、エンジン2のクランクシャフトと一体的に回転するフライホイールと変速機3のインプットシャフトと一体的に回転するクラッチディスクが圧着または離脱することにより、エンジン2のクランクシャフトから伝達された回転を変速機3のインプットシャフトに伝達または遮断する。
【0018】
クラッチ31は、フライホイールとクラッチディスクが圧着されている状態と離脱された状態の間では、滑りながら摩擦によって回転を伝達する摩擦状態となる。この摩擦状態では、フライホイールとクラッチディスクの位置により摩擦力が変化し、回転の伝達度合も変化する。TCM6は、アクチュエータによる制御量により、クラッチ31の伝達度合を検出することができる。
【0019】
なお、変速機3は、DCT(Dual Clutch Transmission)であってもよい。DCTは、有段自動変速機の一種で、2系統のギヤを有し、それぞれにクラッチを有する。
【0020】
ESP4は、車輪12のブレーキ液圧を制御するようになっている。ESP4には、図示しないマスターシリンダー圧センサ、ブレーキ液圧センサ、ブレーキストロークセンサ、加速度センサ、車輪速度センサが接続されており、これらのセンサの検出信号に基づいてブレーキ液圧を制御する。ESP4は、これらのセンサの検出情報をTCM6に送信する。ESP4は、TCM6の制御によってもブレーキ液圧を制御するようになっている。
【0021】
ECM5及びTCM6は、それぞれCPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)と、バックアップ用のデータなどを保存するフラッシュメモリと、入力ポートと、出力ポートとを備えたコンピュータユニットによって構成されている。
【0022】
これらのコンピュータユニットのROMには、各種定数や各種マップ等とともに、当該コンピュータユニットをECM5及びTCM6としてそれぞれ機能させるためのプログラムが格納されている。
【0023】
すなわち、CPUがRAMを作業領域としてROMに格納されたプログラムを実行することにより、これらのコンピュータユニットは、本実施例におけるECM5及びTCM6としてそれぞれ機能する。
【0024】
ECM5は、エンジン2を制御する。ECM5は、図示しないスタータに電力を供給し、スタータによりエンジン2のクランクシャフトを回転させ、エンジン2を始動させる。ECM5は、運転者のイグニッションスイッチのオンによりTCM6にエンジン始動要求を送信し、TCM6からのエンジン始動の許可によりエンジン2を始動させる。
【0025】
TCM6の入力ポートには、ブレーキスイッチ61、シフト位置センサ62を含む各種センサ類が接続されている。
【0026】
ブレーキスイッチ61は、運転者によりブレーキペダルが踏み込まれた場合にオン信号を出力する。シフト位置センサ62は、運転者によるシフトレバーの操作により選択されたシフト位置を検出する。シフト位置は、例えば、前進走行レンジ(Dレンジ)、速度制限レンジ(Bレンジ)、後進走行レンジ(Rレンジ)、停車レンジ(Nレンジ)、駐車レンジ(Pレンジ)のいずれかが選択される。
【0027】
TCM6の出力ポートには、前述の変速機3のアクチュエータを含む各種制御対象類が接続されている。
【0028】
本実施例において、クラッチ31がノーマリークローズタイプであるため、エンジン2の始動時の電圧降下によりクラッチ31の解放状態の維持ができなくなる場合がある。また、エンジン2の始動時の電圧降下によりTCM6がリセットしてしまい、クラッチ31の解放状態の維持ができなくなる場合もある。
【0029】
このため、TCM6は、変速機3のギヤ位置がニュートラル状態で、且つ運転者によってブレーキペダルが踏み込まれている場合に、エンジン2の始動を許可する。
【0030】
また、TCM6は、エンジン2の始動時に、ブレーキによる制動力が規定値を下回っていると、ブレーキの制動力を上げて、ブレーキによる制動力が規定値より大きくなったとき、エンジン2の始動を許可する。なお、ESP4の駆動電圧は、TCM6の駆動電圧よりも低く設定されており、エンジン2の始動時の電圧降下によりTCM6がリセットしても、ESP4は動作できるようになっている。
【0031】
TCM6は、例えば、ESP4により検出されるマスターシリンダー圧、ブレーキ液圧、ブレーキストロークが規定値を上回っていれば、ブレーキの制動力が規定値より大きいと判定する。
【0032】
TCM6は、シフト位置センサ62の異常が検出されているとき、ブレーキの制動力を既定値より大きくして、エンジン2の始動を許可するようにしてもよい。
【0033】
TCM6は、例えば、運転者によってシフト位置がニュートラルに操作されたとしても、シフト位置センサ62からニュートラル位置を示す信号を検出できない場合に、シフト位置を正常に判断することができないため、シフト位置センサ62が異常であると判定する。シフト位置センサ62からニュートラル位置を示す信号を検出できない場合とは、シフト位置がニュートラルに操作されたとしても、シフト位置センサ62からTCM6へニュートラル位置を示す信号が出力できない状態や、シフト位置がニュートラル以外の位置に操作されていたとしても、ニュートラル位置を示す信号を出力し続ける状態などがある。
【0034】
TCM6は、例えば、シフト位置センサ62の検出するシフト位置と、変速機3のギヤ位置が一致していない場合に、シフト位置センサ62が異常であると判定する。
【0035】
TCM6は、変速機3のギヤ位置をニュートラルに操作できない場合に、または変速機3のギヤ位置を検出できない場合に、ブレーキの制動力を既定値より大きくして、エンジン2の始動を許可するようにしてもよい。ギヤ位置をニュートラルに操作できない場合とは、変速機3のギヤがその動作経路上を物理的に移動できない場合や、ギヤが固着した場合などがある。また、ギヤ位置を検出できない場合とは、TCM6が変速機3のギヤ位置を検出する図示しないギヤ位置センサからギヤ位置を示す信号を検出できない場合などがある。
【0036】
TCM6は、クラッチ31の締結状態から駆動軸11に伝達される駆動力を算出し、この駆動力よりブレーキの制動力が大きい場合に、エンジン2の始動を許可するようにしてもよい。TCM6は、クラッチ31の締結状態から駆動軸11に伝達される駆動力を算出し、この駆動力よりブレーキの制動力が大きくない場合に、ブレーキの制動力を駆動軸11に伝達される駆動力より大きくして、エンジン2の始動を許可するようにしてもよい。
【0037】
クラッチ31の締結状態は、クラッチ31のアクチュエータの制御量により検出することができる。
【0038】
以上のように構成された本実施例に係る車両のエンジン始動装置によるエンジン始動判定処理について、図2を参照して説明する。なお、以下に説明するエンジン始動判定処理は、TCM6がECM5からエンジン始動要求を受信すると開始される。
【0039】
ステップS1において、TCM6は、ブレーキによる制動力が既定値より小さいか否かを判定する。ブレーキによる制動力が既定値より小さいと判定した場合には、TCM6は、ステップS2の処理を実行する。ブレーキによる制動力が既定値より小さくないと判定した場合には、TCM6は、ステップS4の処理を実行する。
【0040】
ステップS2において、TCM6は、ブレーキ圧を昇圧させる。ステップS2の処理を実行した後、TCM6は、ステップS3の処理を実行する。
【0041】
ステップS3において、TCM6は、ブレーキによる制動力が既定値より大きいか否かを判定する。ブレーキによる制動力が既定値より大きいと判定した場合には、TCM6は、ステップS4の処理を実行する。ブレーキによる制動力が既定値より大きくないと判定した場合には、TCM6は、ステップS2の処理を実行する。
【0042】
ステップS4において、TCM6は、エンジン2の始動を許可する。ステップS4の処理を実行した後、TCM6は、ステップS5の処理を実行する。
【0043】
ステップS5において、TCM6は、エンジン2が完爆したか否かを判定する。エンジン2が完爆したと判定した場合には、TCM6は、ステップS6の処理を実行する。エンジン2が完爆していないと判定した場合には、TCM6は、ステップS5の処理を繰り返す。
【0044】
ステップS6において、TCM6は、ブレーキ圧の昇圧を終了させる。ステップS6の処理を実行した後、TCM6は、エンジン始動判定処理を終了する。
【0045】
このようなエンジン始動判定処理による動作について図3を参照して説明する。図3において、Aで示した線は、制動力の要求を示す線であり、Bで示した線は、実際の制動力を示す線であり、Cで示した線は、ブレーキペダルの踏力により生じる制動力を示す線であり、Dで示した線は、変速機3がニュートラル状態でなくクラッチ31が伝達状態である場合の駆動力を示す線である。
【0046】
時刻t1においてブレーキペダルが踏まれ、時刻t2においてエンジン2の始動要求が発生すると、Cで示した線のブレーキペダルの踏力により生じる制動力が既定値(ギヤニュートラルを保証できない場合に始動許可する制動力)より小さいため、ESP4に制動力を上げるように要求が送信され、ESP4によりブレーキ圧が昇圧され、実際の制動力も上昇する。
【0047】
時刻t3において実際の制動力が既定値より大きくなると、エンジン始動が許可され、エンジン2が始動される。このとき、電圧降下によりクラッチ31が締結状態となっても、それによって生じるDで示した線の駆動力は制動力より小さいため、車両1が発進する(動き出す)ことはない。時刻t4においてエンジン2が完爆状態となると、ブレーキ圧の昇圧が終了される。
【0048】
このように、本実施例では、TCM6は、エンジン2の始動時に、ブレーキによる制動力が規定値を下回っていると、ブレーキの制動力を上げて、ブレーキによる制動力が規定値より大きくなったとき、エンジン2の始動を許可する。
【0049】
これにより、運転者によるエンジン始動要求が発生した場合に、変速機3のギヤ位置がニュートラルであることが保証されないときでも、エンジン2の始動を許可しながら、運転者の意図に反して車両1が動いてしまうことを防ぐことができる。すなわち、クラッチ31がクローズ状態で、運転者によるエンジン始動要求が発生したとしても、車両1が動いてしまうことを防止しながら、エンジン2の始動を許可することができる。
【0050】
また、TCM6は、シフト位置センサ62の異常が検出されているとき、ブレーキの制動力を既定値より大きくして、エンジン2の始動を許可する。
【0051】
これにより、運転者によるエンジン始動要求が発生した場合に、変速機3のギヤ位置がニュートラルであることが保証されないときでも、エンジン2の始動を許可しながら、運転者の意図に反して車両1が動いてしまうことを防ぐことができる。
【0052】
また、TCM6は、シフト位置センサ62の検出するシフト位置と、変速機3のギヤ位置が一致していない場合に、シフト位置センサ62が異常であると判定する。
【0053】
これにより、シフト位置センサ62の異常を検出するセンサを設けなくても、TCM6がシフト位置センサ62の異常を判断することができる。
【0054】
また、TCM6は、変速機3のギヤ位置をニュートラルに操作できない場合に、または変速機3のギヤ位置を判断できない場合に、ブレーキの制動力を既定値より大きくして、エンジン2の始動を許可する。
【0055】
これにより、運転者によるエンジン始動要求が発生した場合に、変速機3のギヤ位置がニュートラルであることが保証されないときでも、エンジン2の始動を許可しながら、運転者の意図に反して車両1が動いてしまうことを防ぐことができる。
【0056】
また、TCM6は、クラッチ31の締結状態から駆動軸11に伝達される駆動力を算出し、この駆動力よりブレーキの制動力が大きい場合に、エンジン2の始動を許可する。
【0057】
これにより、運転者によるエンジン始動要求が発生した場合に、変速機3のギヤ位置がニュートラルであることが保証されないときでも、エンジン2の始動を許可しながら、運転者の意図に反して車両1が動いてしまうことを防ぐことができる。
【0058】
本実施例では、各種センサ情報に基づきECM5やTCM6が各種の判定や算出を行なう例について説明したが、これに限らず、車両1が外部サーバ等の車外装置と通信可能な通信部を備え、該通信部から送信された各種センサの検出情報に基づき車外装置によって各種の判定や算出が行なわれ、その判定結果や算出結果を通信部で受信して、その受信した判定結果や算出結果を用いて各種制御を行なってもよい。
【0059】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正及び等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0060】
1 車両
2 エンジン
3 変速機
4 ESP(制動制御部)
6 TCM(制御部)
11 駆動軸
31 クラッチ
62 シフト位置センサ
図1
図2
図3