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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】作業機
(51)【国際特許分類】
   B25F 5/00 20060101AFI20231129BHJP
   B25F 5/02 20060101ALI20231129BHJP
   B24B 23/02 20060101ALI20231129BHJP
【FI】
B25F5/00 G
B25F5/02
B24B23/02
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020065215
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021160045
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2022-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】工機ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079290
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100136375
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 弘実
(72)【発明者】
【氏名】相澤 宗太郎
(72)【発明者】
【氏名】西河 智雅
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 慎一郎
【審査官】大光 太朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-111624(JP,A)
【文献】特許第6443541(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25F 5/00
B25F 5/02
B24B 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータを収容するハウジングを有する作業機であって、
前記ハウジングは、前記モータを収容するモータケースと、前記モータケースに接続される容器状の容器部と、前記モータへ電力を供給する電力供給部を保持する保持部と、を有し、
前記容器部は、一部が前記ハウジングの外殻を成し
前記容器部には、前記モータを制御する制御回路が搭載された回路基板が収容されるともに、前記制御回路の少なくとも一部を覆う樹脂が充填され
前記回路基板の延在方向で、前記容器部の一端が前記モータケースに接続され、前記容器部の他端が前記保持部に接続される、作業機。
【請求項2】
前記電力供給部は電源コードであり、前記保持部は前記電源コードを保護するコードアーマーを支持する、請求項1に記載の作業機。
【請求項3】
前記ハウジングには、前記モータによって回転するファンが収容されるとともに、前記ファンの回転によって前記ハウジング内に冷却風を生成するための風窓が設けられ、
前記冷却風によって前記制御回路が冷却される、請求項1または2に記載の作業機。
【請求項4】
モータを収容するハウジングと、
前記モータによって回転するファンと、を有し、
前記ハウジングは、前記モータを収容するモータケースと、前記モータケースに接続される容器状の容器部と、を有し、
前記容器部は、一部が前記ハウジングの外殻を成し、
前記容器部には、前記モータを制御する制御回路が搭載された回路基板が収容されるとともに、前記制御回路の少なくとも一部を覆う樹脂が充填され、
前記ハウジングは、前記容器部とは別部材であって前記モータへ電力を供給する電力供給部を保持する保持部を有し、
前記ファンの回転によって前記ハウジング内に冷却風を生成するための風窓前記保持部に設けられ、前記冷却風によって前記制御回路が冷却される、作業機。
【請求項5】
モータを収容するハウジングと、
前記モータによって回転するファンと、を有し、
前記ハウジングは、前記モータを収容するモータケースと、前記モータケースに接続される容器状の容器部と、前記容器部とは別部材として構成されて前記容器部を覆う覆い部と、を有し、
前記容器部と前記覆い部とは、それぞれの一部が前記ハウジングの外殻を成し、
前記容器部には、前記モータを制御する制御回路が搭載された回路基板が収容されるとともに、前記制御回路の少なくとも一部を覆う樹脂が充填され、
前記覆い部には前記ファンの回転によって前記ハウジング内に冷却風を生成するための風窓が設けられ、前記冷却風によって前記制御回路が冷却される、作業機。
【請求項6】
前記容器部は所定方向に開口するとともに、前記所定方向側を前記覆い部によって覆われる、請求項5に記載の作業機。
【請求項7】
前記回路基板の所定方向側には、前記容器部の開口によって少なくとも一部が露出された発熱素子または放熱部材が位置して前記冷却風によって冷却される、請求項5に記載の作業機。
【請求項8】
モータを収容するハウジングを有する作業機であって、
前記ハウジングは、前記モータを収容するモータケースと、前記モータケースに接続される容器状の容器部と、を有し、
前記容器部は、一部が前記ハウジングの外殻を成し、
前記容器部には、前記モータを制御する制御回路が搭載された回路基板が収容されるとともに、前記制御回路の少なくとも一部を覆う樹脂が充填され、
前記容器部の一端が前記モータケースに締結具により接続され、
前記容器部は、前記締結具を露出させるスリットを有し、
前記スリットを埋めるカバー部が前記容器部に取り付けられる、作業機。
【請求項9】
前記カバー部の少なくとも一部が前記作業機の外殻を成す、請求項に記載の作業機。
【請求項10】
前記モータは前後方向を軸として回転するロータを有し、
前記ハウジングは、前記モータケースの前側に接続されるとともに先端工具が固定されるスピンドルを保持するギヤケースを有し、
前記容器部と前記覆い部とは前記モータケースの後方に位置するとともに、略円筒形となる前記ハウジングの外殻の一部を成す、請求項5に記載の作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハウジング内に回路基板を有する作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1は、グラインダ等の電動工具に関する。この電動工具のハウジングは、ブラシレスモータを収容するモータハウジングと、モータハウジングの後方に取り付けられたリヤカバーと、を有する。リヤカバーの内部に容器状のケースが設けられ、ケース内部に回路基板が配置される。前記回路基板には、モータの回転制御を行う演算部と、モータを駆動させるためのインバータ回路と、外部から電源コードにて供給される交流を直流に変換するための電源回路と、が搭載される。前記回路基板は、前記ケース内で、液体状の樹脂を硬化させる硬化性樹脂によって全体が固められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6443541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
手にもって使用されたり、運搬可能であったりする作業機においては、利便性の観点から現在でも本体の小型化が求められている。
【0005】
本発明はこうした状況を認識してなされたものであり、その目的は、小型化が可能な作業機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様は、作業機である。この作業機は、
モータを収容するハウジングを有する作業機であって、
前記ハウジングは、前記モータを収容するモータケースと、前記モータケースに接続される容器状の容器部と、前記モータへ電力を供給する電力供給部を保持する保持部と、を有し、
前記容器部は、一部が前記ハウジングの外殻を成し
前記容器部には、前記モータを制御する制御回路が搭載された回路基板が収容されるともに、前記制御回路の少なくとも一部を覆う樹脂が充填され
前記回路基板の延在方向で、前記容器部の一端が前記モータケースに接続され、前記容器部の他端が前記保持部に接続される。
【0007】
前記電力供給部は電源コードであり、前記保持部は前記電源コードを保護するコードアーマーを支持してもよい。
【0008】
前記ハウジングには、前記モータによって回転するファンが収容されるとともに、前記ファンの回転によって前記ハウジング内に冷却風を生成するための風窓が設けられ、
前記冷却風によって前記制御回路が冷却されてもよい。
【0010】
本発明の別の態様は、作業機である。この作業機は、
モータを収容するハウジングと、
前記モータによって回転するファンと、を有し、
前記ハウジングは、前記モータを収容するモータケースと、前記モータケースに接続される容器状の容器部と、を有し、
前記容器部は、一部が前記ハウジングの外殻を成し、
前記容器部には、前記モータを制御する制御回路が搭載された回路基板が収容されるとともに、前記制御回路の少なくとも一部を覆う樹脂が充填され、
前記ハウジングは、前記容器部とは別部材であって前記モータへ電力を供給する電力供給部を保持する保持部を有し、
前記ファンの回転によって前記ハウジング内に冷却風を生成するための風窓前記保持部に設けられ、前記冷却風によって前記制御回路が冷却される
【0011】
本発明の別の態様は、作業機である。この作業機は、
モータを収容するハウジングと、
前記モータによって回転するファンと、を有し、
前記ハウジングは、前記モータを収容するモータケースと、前記モータケースに接続される容器状の容器部と、前記容器部とは別部材として構成されて前記容器部を覆う覆い部と、を有し、
前記容器部と前記覆い部とは、それぞれの一部が前記ハウジングの外殻を成し、
前記容器部には、前記モータを制御する制御回路が搭載された回路基板が収容されるとともに、前記制御回路の少なくとも一部を覆う樹脂が充填され、
前記覆い部には前記ファンの回転によって前記ハウジング内に冷却風を生成するための風窓が設けられ、前記冷却風によって前記制御回路が冷却される
【0012】
前記容器部は所定方向に開口するとともに、前記所定方向側を前記覆い部によって覆われてもよい。
【0013】
前記回路基板の所定方向側には、前記容器部の開口によって少なくとも一部が露出された発熱素子または放熱部材が位置して前記冷却風によって冷却されてもよい。
【0014】
本発明の別の態様は、作業機である。この作業機は、
モータを収容するハウジングを有する作業機であって、
前記ハウジングは、前記モータを収容するモータケースと、前記モータケースに接続される容器状の容器部と、を有し、
前記容器部は、一部が前記ハウジングの外殻を成し、
前記容器部には、前記モータを制御する制御回路が搭載された回路基板が収容されるとともに、前記制御回路の少なくとも一部を覆う樹脂が充填され、
前記容器部の一端が前記モータケースに締結具により接続され、
前記容器部は、前記締結具を露出させるスリットを有し、
前記スリットを埋めるカバー部が前記容器部に取り付けられ
【0015】
前記モータは前後方向を軸として回転するロータを有し、
前記ハウジングは、前記モータケースの前側に接続されるとともに先端工具が固定されるスピンドルを保持するギヤケースを有し、
前記容器部と前記覆い部とは前記モータケースの後方に位置するとともに、略円筒形となる前記ハウジングの外殻の一部を成してもよい。
【0016】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法やシステムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、小型化が可能な作業機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施の形態1に係る作業機1の斜視図。
図2】作業機1の側面図。
図3】作業機1の平面図。
図4図2のIV-IV断面図。
図5図3のV-V断面図。
図6図5のVI部拡大図。
図7図3のVII-VII断面図。
図8】作業機1の容器部10及びその内部構成を下方から見た図。
図9】作業機1の、前方かつ上方から見た分解斜視図。
図10】作業機1の、前方かつ下方から見た分解斜視図。
図11】作業機1の、後方かつ上方から見た分解斜視図。
図12】作業機1の、後方かつ下方から見た分解斜視図。
図13】比較例に係る作業機の斜視図。
図14】同側面図。
図15】同平面図。
図16図14のXVI-XVI断面図。
図17図15のXVII-XVII断面図。
図18】本発明の実施の形態2に係る作業機の分解斜視図。
図19図18の状態から基板41Aを容器部63eに収容した状態の分解斜視図。
図20】実施の形態2に係る作業機の正面図。
図21】実施の形態2に係る作業機の平面図。
図22】本発明の実施の形態3に係る作業機の分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下において、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材等には同一の符号を付し、適宜重複した説明は省略する。実施の形態は、発明を限定するものではなく例示である。実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0020】
(実施の形態1)
図1図12を参照し、本発明の実施の形態1を説明する。本実施の形態は、作業機1に関する。作業機1は、グラインダである。図1により、作業機1における互いに直交する前後、上下、左右の各方向を定義する。前後方向は、モータ6の出力軸6aと平行な方向である。上下方向は、スピンドル8の軸方向と平行な方向である。
【0021】
作業機1のハウジングは、モータケース3、ギヤケース4、容器部10、覆い部20、及びリアケース30によって構成される。ギヤケース4は、例えばアルミ等の金属製である。モータケース3、容器部10、覆い部20、及びリアケース30は、例えば絶縁性の樹脂成形体であり、その外周面は作業者の把持部となる。図2に、前後方向における把持部の範囲を示している。
【0022】
モータケース3は、モータ6を内部に収容する。モータ6は、周知のインナーロータ型のブラシレスモータである。モータ6は、ロータ6b及びステータ6cを有する。モータケース3内において、モータ6の前方に、ファン2が収容される。ファン2は、モータ6の出力軸6aに取り付けられ、モータ6によって回転する。
【0023】
ギヤケース4は、モータケース3の前端部にネジ止め等により接続、固定される。ギヤケース4の前面には、排気口(風窓)4aが設けられる。ギヤケース4は、図示しない2つのベベルギヤを組み合わせた周知の回転伝達機構を内部に収容する。この回転伝達機構は、モータ6の回転を減速すると共に回転軸方向を前後方向から上下方向に90°変換してスピンドル8に伝達する。スピンドル8の下端部には、砥石8aが一体回転可能に取り付けられる。
【0024】
容器部10は、モータケース3の後端部に、締結具としてのネジ14により接続、固定される。容器部10は、前後方向に延びる有底容器状である。詳細には、図4に示すように、上方に底部10aがあり、底部10aの端部から下方に延びる側壁10bにて容器状構造が形成されている。すなわち、容器部10は、下方に向かって開口する。なお、底部10aは本体形状に合わせて湾曲している。容器部10の外周面は、作業機1の外殻を成す。容器部10は、第1回路基板41及び第2回路基板42を内部に収容する。第1回路基板41及び第2回路基板42は、共に上下方向と垂直かつ互いに略平行となるように配置される。第1回路基板41及び第2回路基板42は、図4に示すようにピン50によって互いに電気的に接続される。第1回路基板41の上方に第2回路基板42が位置する。
【0025】
第1回路基板41及び第2回路基板には、モータ6を制御する制御回路(コントローラ)が搭載される。第1回路基板41の下面に搭載される電子部品は、例えば、チョークコイル45、6つのスイッチング素子46、コンデンサ47及びダイオードブリッジ49を含む。6つのスイッチング素子46は、モータ6の電流経路に設けられ、モータ6に駆動電流を供給するインバータ回路を構成する。スイッチング素子46には、放熱用のフィン51が設けられる。6つのスイッチング素子46は、左右に3個ずつ分かれて設けられる。
【0026】
パーティション52は、左右のスイッチング素子46間を仕切ると共に、左側の隣り合うスイッチング素子46間を仕切る。左側のスイッチング素子46の更に左側には、3つのタブターミナル48が設けられる。スイッチング素子46の後方において、チョークコイル45、コンデンサ47、及びダイオードブリッジ49が左右方向に並ぶ。ダイオードブリッジ49には、フィン53が設けられる。
【0027】
容器部10内には、シリコーン樹脂43が充填される。シリコーン樹脂43は、絶縁樹脂の例示である。シリコーン樹脂43は熱硬化性樹脂である。シリコーン樹脂43は、第1回路基板41及び第2回路基板42を覆う。換言すれば、第1回路基板41及び第2回路基板42は硬化したシリコーン樹脂43の内部に位置する。シリコーン樹脂43は、第1回路基板41の下面までを覆う深さを有し、第1回路基板41及び第2回路基板42に設けた制御回路を保護する。なお、図9図12に示す分解斜視図においては、容器部10の内部構造が見やすいように第1回路基板41及び第2回路基板42を含んだシリコーン樹脂43を容器部10から離間させているが、シリコーン樹脂43は容器部10の内部で硬化しているため、取り外せるようには構成されていない。容器部10の前端部には、前後方向と略垂直にセンサ基板44が立設される。センサ基板44は、モータ6の後部に設けられて出力軸6aと共に回転するマグネット6mと対向する。容器部10の後端部には、作業者が操作するスイッチ9が設けられる。スイッチ9により、モータ6への通電及び停止、すなわち作業機1の駆動、停止が切り替えられる。
【0028】
容器部10は、ネジ14を前後方向に貫通させるボス13を有する。ボス13は、シリコーン樹脂43を充填する内部空間よりも上方に位置する。スリット11は、ネジ14の着脱作業時にボス13及びネジ14を露出させる(ボス13及びネジ14にアクセスする)ために設けられる。スリット11は、容器部10の上面の後端部から前後方向と平行に切り込まれた部分である。スリット11の左右両側には、レール受部12がそれぞれ設けられる。レール受部12は、前後方向に延びる凹溝である。
【0029】
覆い部20は、モータケース3の後端部に締結具としてのネジ24により接続、固定される。覆い部20は、前後方向を軸とする半筒状である。覆い部20の外周面は、作業機1の外殻を成す。覆い部20は、容器部10の下方を覆う。覆い部20は、締結具としてのネジ25、26により、前後両端部において容器部10の下方に接続、固定され、容器部10の下部開口を覆う(閉じる)。覆い部20と容器部10は、互いに組み合わされて筒形状、好ましくは略円筒形状を成す。覆い部20及び容器部10の外周面は、モータケース3の外周面と前後方向に連なる。すなわち、モータケース3から容器部10後部にかけて略円筒形状が連続する。
【0030】
覆い部20は、ネジ24を前後方向に貫通させるボス23を有する。スリット21は、ネジ24を露出させるために設けられる。ネジ24の着脱作業時にボス23及びネジ24を露出させる(ボス23及びネジ24にアクセスする)ために設けられる。スリット21は、覆い部20の下面の後端部から前後方向と平行に切り込まれた部分である。スリット11の左右両側には、レール受部22がそれぞれ設けられる。レール受部22は、前後方向に延びる凹溝である。
【0031】
リアケース30は、容器部10の後端部に締結具としてのネジ34により接続、固定される。リアケース30は、基部31と、上側カバー部32と、下側カバー部33と、を有する。基部31は、前後方向を軸とし、前端部が開放された筒状である。基部31の外周面と後端面は、作業機1の外殻を成す。基部31の外周面は、容器部10及び覆い部20の外周面と前後方向に連なる。
【0032】
基部31の後端面に、吸気口(風窓)31aが設けられる。吸気口31aは、図7に矢印で示す冷却風CA2の入口となる。冷却風CA2は、コントローラ冷却用の冷却風である。冷却風CA2は、容器部10の内部空間を通って前方に流れ、第1回路基板41に設けられた各電子部品等の制御回路を冷却する。冷却風CA2は、その後、更に前方に流れ、覆い部20の前端の図4に示す通気口29を通り抜けてモータ6を冷却し、排気口4aから排出される。基部31の後端部に、コードアーマー5a及び電源コード5が保持される。電源コード5は、外部交流電源に接続される。電源コード5は、モータ6に電力を供給する電力供給部である。すなわち、基部31は、電力供給部の保持部として機能する。コードアーマー5aは、電源コード5の基端部を保護する。なお、図1以外において、電源コード5の図示を省略している。
【0033】
上側カバー部32は、基部31の上部から前方に延びて、容器部10のスリット11と係合し、スリット11を埋める。上側カバー部32の左右両端部は、容器部10のレール受部12と係合する凸状のレール部32aとなっている。上側カバー部32の上面は、容器部10の外周面と周方向に連なる。上側カバー部32の後部には、吸気口(風窓)32bが設けられる。吸気口32bは、図7に矢印で示す冷却風CA1の入口となる。冷却風CA1は、モータ冷却用の冷却風である。冷却風CA1は、容器部10の内部空間を通らずに前方に流れ、容器部10の前端の図4に示す通気口19を通り抜けてモータ6を冷却し、排気口4aから排出される。
【0034】
下側カバー部33は、基部31の下部から前方に延びて、覆い部20のスリット21と係合し、スリット21を埋める。下側カバー部33の左右両端部は、覆い部20のレール受部22と係合する凸状のレール部33aとなっている。下側カバー部33の下面は、覆い部20の外周面と周方向に連なる。
【0035】
作業機1のハウジングの組立手順を説明する。容器部10には、第1回路基板41及び第2回路基板42を収容し、シリコーン樹脂43を充填し硬化させておく。ネジ25,26により、容器部10及び覆い部20を互いに固定する。ネジ14により容器部10をモータケース3に固定し、ネジ24により覆い部20をモータケース3に固定する。リアケース30を、上側カバー部32及び下側カバー部33をスリット11,21に対して挿入しながら、容器部10及び覆い部20に組み合わせる。ネジ34により、リアケース30を容器部10に固定する。
【0036】
作業機1のハウジングの絶縁構成を説明する。図12等に示すように、容器部10の内周面の左右両側の下端部は、それぞれ平坦な合わせ面18である。覆い部20の外周面の左右両側の上端部は、平坦な合わせ面28である。図4に示すように、合わせ面18,28は、上下方向において重複し、左右方向に対面接触している。すなわち、容器部10の下端部と覆い部20の上端部とが段差状に係合する。これにより、容器部10の内部の導電部から、露出部分における容器部10の外周面と覆い部20の外周面との境界までの沿面距離を大きく確保できる。合わせ面28が一段内側に位置するため、露出部分において容器部10の外周面と覆い部20の外周面との間に段差がなく連続となっている。
【0037】
図9等に示すように、モータケース3の外周面の後端部は、合わせ面3cである。容器部10の内周面の前端部は、合わせ面17である。覆い部20の内周面の前端部は、合わせ面27である。図6に示すように、合わせ面3c,17は、前後方向において重複し、モータ6の径方向に対面接触している。すなわち、容器部10の前端部とモータケース3の後端部とが段差状に係合する。これにより、ネジ14から、露出部分における容器部10の外周面とモータケース3の外周面のとの境界までの沿面距離を大きく確保できる。同様に、合わせ面3c,27は、前後方向において重複し、モータ6の径方向に対面接触している。すなわち、覆い部20の前端部とモータケース3の後端部とが段差状に係合する。これにより、ネジ24から、露出部分における覆い部20の外周面とモータケース3の外周面との境界までの沿面距離を大きく確保できる。合わせ面3cが一段内側に位置するため、露出部分において容器部10及び覆い部20の外周面とモータケース3の外周面との間に段差がなく連続となっている。
【0038】
図6等に示すように、上側カバー部32とボス13は、前後方向において重複する。重複部分において、上側カバー部32の下面(内面)とボス13の上側面とがモータ6の径方向に対面接触している。これにより、ネジ14から、露出部分における容器部10の外周面と上側カバー部32の前端部との境界までの沿面距離を大きく確保できる。同様に、下側カバー部33とボス23は、前後方向において重複する。重複部分において、下側カバー部33の上面(内面)とボス23の下側面とがモータ6の径方向に対面接触している。これにより、ネジ24から、露出部分における覆い部20の外周面と下側カバー部33の前端部との境界までの沿面距離を大きく確保できる。
【0039】
本実施の形態によれば、下記の作用効果を奏することができる。
【0040】
(1) 容器部10は、第1回路基板41及び第2回路基板42を収容してシリコーン樹脂43が充填されると共に、作業機1のハウジングの外殻を成す。このため、ハウジング内に別途容器状のケースを設ける場合と比較して、シリコーン樹脂43による回路保護の効果を得ながらハウジングの外径を小さくし、作業機1の本体を小型化できる。また、容器部10の外周面は作業機1の把持部の一部であり、把持部を小径化できることにより、握りやすくなり作業性が向上する。また、回路基板を収容するケースが不要となるので、部品点数を削減することができる。また、回路基板の保護とハウジングに対する位置決めを樹脂によって同時に行うことができ、組み立て性を向上させることができる。
【0041】
(2) 第1回路基板41の上下においてネジ14,24により容器部10及び覆い部20をモータケース3に固定するため、図4に示すように、第1回路基板41の高さ(上下方向)における容器部10の外寸(ハウジングの外寸)を、第1回路基板41の左右方向の幅と容器部10の左部及び右部の厚さとの合計に抑えることができる。当該部分の外寸は、幅の広い第1回路基板41を収める関係上、最も長さが必要となる部分であり、把持部を円筒状にする際の小径化のネックとなっていたところ、本実施の形態の構成により、好適に小径化が可能となる。
【0042】
(3) 容器部10の下端部と覆い部20の上端部との段差状の係合、容器部10及び覆い部20の前端部とモータケース3の後端部との段差状の係合、上側カバー部32とボス13との前後方向における重複構造、及び下側カバー部33とボス23との前後方向における重複構造により、容器部10内の導電部やネジ14,24と、把持部との間の沿面距離を簡易な構成で大きく確保できる。
【0043】
(4) 吸気口32bから取り込まれる冷却風CA1は、容器部10の内部空間を通らずに前方に流れてモータ6を冷却する。このため、直接制御回路に当たって温められていない冷却風をモータ6に供給でき、モータ6の冷却性能が高められる。
【0044】
(5) 吸気口32bは、ネジ14から遠く、かつ容器部10の内部空間からも距離が取れた位置にあるため、絶縁上の問題を抑制できる。
【0045】
(比較例)
図13図17を参照し、比較例の作業機の構成を簡単に説明する。この作業機の外殻は、モータケース3A、テールカバー3B、及びギヤケース4によって構成される。テールカバー3Bは、円筒状であり、モータケース3Aの後部にネジ止め等により固定される。テールカバー3Bの内部には、容器部59が設けられる。容器部59の内部に、第1回路基板41及び第2回路基板42が収容され、かつシリコーン樹脂43が充填される。この比較例の構成では、テールカバー3Bの内部に別途、第1回路基板41及び第2回路基板42を収容する容器部59が設けられる。このため、本体が大型化すると共に、把持部でもあるテールカバー3Bの外径が大きくなることで握りにくくなり、使い勝手が悪くなる。上述の実施の形態1は、こうした問題を好適に解決するものである。
【0046】
(実施の形態2)
図18図21を参照し、本発明の実施の形態2の作業機の構成を説明する。この作業機は、携帯用丸鋸である。ベース66の底面は、木材等の被切断材上の摺動面である。本作業機の外殻は、互いに接続、固定されたモータケース62、ハンドルハウジング63、及びソーカバー65によって構成される。モータケース62及びハンドルハウジング63は、例えば絶縁性の樹脂成形体である。ソーカバー65は、例えばアルミ等の金属製である。モータケース62は、モータ(ブラシレスモータ)6を内部に収容する。モータケース62は、吸気口(風窓)62aを有する。ハンドルハウジング63は、作業者が把持するための把持部63hを有する。
【0047】
丸鋸刃64は、モータ6によりギヤを介して回転駆動される。ソーカバー65は、モータケース62に取り付けられ、丸鋸刃64外周のほぼ上側半分を覆う。ソーカバー65には、保護カバー77が取り付けられる。保護カバー77は、丸鋸刃64外周のほぼ半分を覆う形状である。保護カバー77は、ソーカバー65内において丸鋸刃64の駆動軸と同軸で回動可能に保持される。ソーカバー65を介して、モータケース62及びハンドルハウジング63と、ベース66とが連結される。ソーカバー65は、周知の揺動支持機構により上下にベース66に対して揺動可能であり、かつ周知の傾動支持機構により左右の少なくとも一方に傾動可能である。
【0048】
遠心ファン67は、モータ6の出力軸6aに取り付け固定され、モータ6の駆動により回転する。遠心ファン67の発生する冷却風は、モータ6及び回路基板41Aに設けられた制御回路を冷却する。ハンドルハウジング63の把持部63hには、本作業機の運転開始、停止を切り替えるトリガスイッチ63gが設けられる。ハンドルハウジング63の後端下部からは、電源コード5が引き出される。
【0049】
図18及び図19に示すように、ハンドルハウジング63は、左ハンドルハウジング63aと、右ハンドルハウジング63bと、をネジ止め等により相互に固定、一体化したものである。右ハンドルハウジング63bは、モータケース62の後方となる位置に、容器部(基板収容部)63eを有する。容器部63eの底部の右面は、右ハンドルハウジング63bの外殻の一部を成す。容器部63eは、その底部に立設された4つの側壁部63fを含む。容器部には、回路基板41Aが収容され、図示しないシリコーン樹脂が充填される。回路基板41Aには、モータ6への電力供給用のスイッチング素子や、整流用のダイオードブリッジ等が設けられる。
【0050】
左ハンドルハウジング63aは、モータケース62の後方となる位置に、覆い部63cを有する。覆い部63cは、前述の容器部を覆う。覆い部63cの外面は、左ハンドルハウジング63aの外殻の一部を成す。覆い部63cには、排気口(風窓)63dが設けられる。本実施の形態によれば、右ハンドルハウジング63bが容器部63eを有し、容器部63eの右面が右ハンドルハウジング63bの外殻の一部を成すため、別途の容器部を設ける場合と比較してハンドルハウジング63を小型化できる。更に、部品点数も削減することができる。
【0051】
(実施の形態3)
図22は、本発明の実施の形態3に係る作業機の分解斜視図である。この作業機は、モータ(ブラシレスモータ)6を駆動源とするインパクトレンチである。右ハウジング83a及び左ハウジング83bは、互いにネジ止め等により固定、一体化される。把持部83dには、モータ6の駆動、停止を切り替えるトリガスイッチ83gが設けられる。モータ6は、モータ収容部83c内に収容される。モータ6の後方には、インバータ回路やホールICを搭載した駆動回路基板84が設けられる。モータ収容部83cの前方には、動力伝達機構を収容したハンマケース85が設けられる。
【0052】
左ハウジング83bは、把持部83dの内側となる部分に容器部(基板収容部)83eを有する。容器部83eの底部の左面は、左ハウジング83bの外殻の一部を成す。容器部83eは、その底部から立設された4つの側壁部83fを含む。右ハウジング83aのうち容器部83eの底部と対向する部分は、覆い部である。容器部83eには、回路基板41Bが収容され、図示しないシリコーン樹脂が充填される。回路基板41Bには、制御回路としてのマイクロコントローラやフィルタ回路などが設けられる。本実施の形態によれば、左ハウジング83bが容器部83eを有し、容器部83eの左面が左ハウジング83bの外殻の一部を成すため、別途の容器部を設ける場合と比較して把持部83dを小型化(小径化)できる。
【0053】
以上、実施の形態を例に本発明を説明したが、実施の形態の各構成要素や各処理プロセスには請求項に記載の範囲で種々の変形が可能であることは当業者に理解されるところである。以下、変形例について触れる。
【0054】
実施の形態1において、風窓を覆い部20あるいは下側カバー部33に設けてもよい。本発明の作業機は、外部の交流電源からの供給電力で動作するコード付きタイプに限定されず、電池パックの電力で動作するコードレスタイプであってもよい。この場合、実施の形態1の作業機1では、リアケース30の基部31に、電池パックを着脱可能な電池パック装着部を設けてもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 グラインダ、2 ファン、3 モータケース、3a,3b ネジ穴、3c 合わせ面、4 ギヤケース、4a 排気口(風窓)、5 電源コード、5a コードアーマー、6 モータ、6a 出力軸、6b ロータ、6c ステータ、6m マグネット、7 ホイルガード、8 スピンドル、8a 砥石、9 スイッチ、10 容器部、11 スリット、12 レール受部、13 ボス、14 ネジ、17,18 合わせ面、19 通気口、20 覆い部、21 スリット、22 レール受部、23 ボス、24~26 ネジ、27,28 合わせ面、29 通気口、30 リアケース、31 基部、31a 吸気口(風窓)、32 上側カバー部、32a レール部、32b 吸気口(風窓)、33 下側カバー部、33a レール部、34 ネジ、41 第1回路基板、41A,41B 回路基板、42 第2回路基板、43 シリコーン樹脂、44 センサ基板、45 チョークコイル、46 スイッチング素子、47 コンデンサ、48 タブターミナル、49 ダイオードブリッジ、50 ピン、51 フィン、52 パーティション、53 フィン、59 容器部、62 モータケース、62a 吸気口(風窓)、63 ハンドルハウジング、63a 左ハンドルハウジング、63b 右ハンドルハウジング、63c 覆い部、63d 排気口(風窓)、63e 容器部(基板収容部)、63f 側壁部、63g トリガスイッチ、63h 把持部、64 丸鋸刃、65 ソーカバー、66 ベース、67 遠心ファン、77 保護カバー、83a 右ハウジング、83b 左ハウジング、83c モータ収容部、83d 把持部、83e 容器部(基板収容部)、83f 側壁部、83g トリガスイッチ、84 駆動回路基板、85 ハンマケース、CA1,CA2 冷却風。
図1
図2
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図5
図6
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図22