(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】制御支援装置、制御支援方法、制御支援プログラム、および制御システム
(51)【国際特許分類】
G05B 23/02 20060101AFI20231129BHJP
【FI】
G05B23/02 302Z
(21)【出願番号】P 2020079703
(22)【出願日】2020-04-28
【審査請求日】2021-06-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梅本 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】後藤 宏紹
【審査官】今井 貞雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-229001(JP,A)
【文献】特開2014-002579(JP,A)
【文献】特開2017-167663(JP,A)
【文献】特開平02-259803(JP,A)
【文献】特開2003-005828(JP,A)
【文献】特開2007-272400(JP,A)
【文献】特開2009-009301(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
設備を計測した計測データに基づいて、前記設備の異常性を推測する設備異常性推測部と、
前記設備の異常性の推測結果に応じて、現在運用中の制御方法を維持する制御方法候補を含む複数の制御方法候補のそれぞれにより前記設備を制御した場合の将来の前記設備の状態をシミュレーションするシミュレーション部と、
前記複数の制御方法候補のそれぞれについて、将来の前記設備の状態に基づいて将来の前記設備の異常性を推測するシミュレーション異常性推測部と
を備える制御支援装置。
【請求項2】
前記複数の制御方法候補の中から前記シミュレーションの結果に基づいて選択された制御方法によって前記設備を制御することを前記設備の制御装置に指示する制御指示部を更に備える請求項
1に記載の制御支援装置。
【請求項3】
設備を計測した計測データに基づいて、前記設備の異常性を推測する設備異常性推測部と、
前記設備の異常性の推測結果に応じて、前記設備を複数の制御方法候補のそれぞれにより制御した場合の将来の前記設備の状態をシミュレーションするシミュレーション部と、
前記複数の制御方法候補のそれぞれについて、将来の前記設備の状態に基づいて将来の前記設備の異常性を推測するシミュレーション異常性推測部と、
前記複数の制御方法候補の中から前記シミュレーションの結果に基づいて選択された制御方法によって前記設備を制御することを前記設備の制御装置に指示する制御指示部と
を備え、
前記シミュレーション部は、第1の前記複数の制御方法候補および第2の前記複数の制御方法候補についてのシミュレーションを行い、
前記制御指示部は、
前記第1の複数の制御方法候補についてのシミュレーションが終了したことに応じて、前記第2の複数の制御方法候補についてのシミュレーションが終了する前に、前記第1の複数の制御方法候補の中から選択された制御方法によって前記設備を制御することを前記制御装置に指示し、
前記第2の複数の制御方法候補についてのシミュレーションが終了したことに応じて、前記第2の複数の制御方法候補を含む制御方法候補の中から選択された制御方法によって前記設備を制御することを前記制御装置に指示する
制御支援装置。
【請求項4】
前記制御指示部は、前記複数の制御方法候補のそれぞれに応じた将来の前記設備の異常性に基づいて選択された制御方法によって前記設備を制御することを前記制御装置に指示する請求項
2または3に記載の制御支援装置。
【請求項5】
前記設備異常性推測部および前記シミュレーション異常性推測部は、同じ推測モデルを用いて前記設備の異常性を推測する請求項1
から4のいずれか一項に記載の制御支援装置。
【請求項6】
前記設備の異常の要因となった要因パラメータを検出する要因検出部と、
前記複数の制御方法候補の少なくとも1つとして、前記要因パラメータを正常化する制御方法を生成する候補生成部と
を更に備える
請求項1から
5のいずれか一項に記載の制御支援装置。
【請求項7】
前記設備の操業目標を取得する目標取得部と、
前記複数の制御方法候補のうち、前記操業目標を満たす制御方法候補を選択する候補選択部と
を更に備える請求項1から
6のいずれか一項に記載の制御支援装置。
【請求項8】
前記複数の制御方法候補のうちの少なくとも1つの制御方法候補について、前記シミュレーション異常性推測部によって推測された異常性を提示する提示部を更に備える請求項1から
7のいずれか一項に記載の制御支援装置。
【請求項9】
前記シミュレーション部は、第1の前記複数の制御方法候補および第2の前記複数の制御方法候補についてのシミュレーションを行い、
前記制御指示部は、
前記第1の複数の制御方法候補についてのシミュレーションが終了したことに応じて、前記第2の複数の制御方法候補についてのシミュレーションが終了する前に、前記第1の複数の制御方法候補の中から選択された制御方法によって前記設備を制御することを前記制御装置に指示し、
前記第2の複数の制御方法候補についてのシミュレーションが終了したことに応じて、前記第2の複数の制御方法候補を含む制御方法候補の中から選択された制御方法によって前記設備を制御することを前記制御装置に指示する
請求項2、および、請求項
2を引用
する請求項
4から8のいずれか一項に記載の制御支援装置。
【請求項10】
第1制御方法候補を含む前記第1の複数の制御方法候補と、前記第1制御方法候補によって変更する制御パラメータをより小さい範囲で調整する第2制御方法候補を含む前記第2の複数の制御方法候補とを生成する候補生成部を備える、請求項
3、請求項
3を引用する請求項
4から
8、および
、請求項
9のいずれか一項に記載の制御支援装置。
【請求項11】
前記候補生成部は、前記第1制御方法候補が選択されたことに応じて、前記第2制御方法候補を含む前記第2の複数の制御方法候補を生成する請求項
10に記載の制御支援装置。
【請求項12】
第1制御方法候補を含む前記第1の複数の制御方法候補と、前記第1制御方法候補によって変更する制御パラメータを互いに異なる大きさに変更する2以上の第2制御方法候補を含む前記第2の複数の制御方法候補とを生成する候補生成部を備える、請求項
3、請求項
3を引用する請求項
4から
8、および
、請求項
9から
11のいずれか一項に記載の制御支援装置。
【請求項13】
前記候補生成部は、前記第1制御方法候補が選択されたことに応じて、前記2以上の第2制御方法候補を含む前記第2の複数の制御方法候補を生成する請求項
12に記載の制御支援装置。
【請求項14】
設備を制御する制御装置と、
請求項1から
13のいずれか一項に記載の制御支援装置と
を備える制御システム。
【請求項15】
設備の制御を支援する制御支援装置が、設備を計測した計測データに基づいて、前記設備の異常性を推測し、
前記制御支援装置が、前記設備の異常性の推測結果に応じて、現在運用中の制御方法を維持する制御方法候補を含む複数の制御方法候補のそれぞれにより前記設備を制御した場合の将来の前記設備の状態をシミュレーションし、
前記制御支援装置が、前記複数の制御方法候補のそれぞれについて、将来の前記設備の状態に基づいて将来の前記設備の異常性を推測する
制御支援方法。
【請求項16】
設備の制御を支援する制御支援装置が、設備を計測した計測データに基づいて、前記設備の異常性を推測し、
前記制御支援装置が、前記設備の異常性の推測結果に応じて、前記設備を複数の制御方法候補のそれぞれにより制御した場合の将来の前記設備の状態をシミュレーションし、
前記制御支援装置が、前記複数の制御方法候補のそれぞれについて、将来の前記設備の状態に基づいて将来の前記設備の異常性を推測し、
前記制御支援装置が、前記複数の制御方法候補の中から前記シミュレーションの結果に基づいて選択された制御方法によって前記設備を制御することを前記設備の制御装置に指示する
制御支援方法であって、
前記制御支援装置は、
第1の前記複数の制御方法候補および第2の前記複数の制御方法候補についてのシミュレーションを行い、
前記第1の複数の制御方法候補についてのシミュレーションが終了したことに応じて、前記第2の複数の制御方法候補についてのシミュレーションが終了する前に、前記第1の複数の制御方法候補の中から選択された制御方法によって前記設備を制御することを前記制御装置に指示し、
前記第2の複数の制御方法候補についてのシミュレーションが終了したことに応じて、前記第2の複数の制御方法候補を含む制御方法候補の中から選択された制御方法によって前記設備を制御することを前記制御装置に指示する
制御支援方法。
【請求項17】
コンピュータにより実行されると、前記コンピュータに、
設備を計測した計測データに基づいて、前記設備の異常性を推測することと、
前記設備の異常性の推測結果に応じて、現在運用中の制御方法を維持する制御方法候補を含む複数の制御方法候補のそれぞれにより前記設備を制御した場合の将来の前記設備の状態をシミュレーションすることと、
前記複数の制御方法候補のそれぞれについて、将来の前記設備の状態に基づいて将来の前記設備の異常性を推測することと
を実行させるための制御支援プログラム。
【請求項18】
コンピュータにより実行されると、前記コンピュータに、
設備を計測した計測データに基づいて、前記設備の異常性を推測することと、
前記設備の異常性の推測結果に応じて、前記設備を複数の制御方法候補のそれぞれにより制御した場合の将来の前記設備の状態をシミュレーションすることと、
前記複数の制御方法候補のそれぞれについて、将来の前記設備の状態に基づいて将来の前記設備の異常性を推測することと、
前記複数の制御方法候補の中から前記シミュレーションの結果に基づいて選択された制御方法によって前記設備を制御することを前記設備の制御装置に指示することと
を実行させ、
前記シミュレーションにおいて、前記コンピュータに、第1の前記複数の制御方法候補および第2の前記複数の制御方法候補についてのシミュレーションを行なわせ、
前記制御装置への指示において、前記コンピュータに、
前記第1の複数の制御方法候補についてのシミュレーションが終了したことに応じて、前記第2の複数の制御方法候補についてのシミュレーションが終了する前に、前記第1の複数の制御方法候補の中から選択された制御方法によって前記設備を制御することを前記制御装置に指示させ、
前記第2の複数の制御方法候補についてのシミュレーションが終了したことに応じて、前記第2の複数の制御方法候補を含む制御方法候補の中から選択された制御方法によって前記設備を制御することを前記制御装置に指示させる
ための制御支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御支援装置、制御支援方法、制御支援プログラム、および制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、予測モデルを用いてプラント等の設備の状態を推測して、異常になると推測した場合には作業員に通知するシステムが知られている。このようなシステムを用いた場合、作業員は、経験と勘とを活かして、設備が異常状態になってしまうことを回避するように設備の制御パラメータを調整する必要があった。また、特許文献1には、「シミュレータ40は、プラント3において実行されるプロセス12をシミュレートするプロセスシミュレータ42と、複数の制御対象装置10をそれぞれ制御する制御装置20をそれぞれシミュレートする制御装置シミュレータ43を含む。プロセスシミュレータ42は、プロセス12を構成する複数の制御対象装置10をそれぞれシミュレートする制御対象装置シミュレータ41を含む。学習装置2は、それぞれの制御装置シミュレータ43が制御操作量を決定するために使用するPIDパラメータを決定してシミュレータ40に入力し、入力したPIDパラメータを使用して制御された結果を示す複数の計測値を取得するステップを時系列的に複数回繰り返しつつプラント3の挙動を学習し、複数の制御装置20が協調して安定的にプラント3を運転させることが可能なPIDパラメータを統括的に決定するための方策を獲得する。」と記載されている(段落0046参照)。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1]特開2019-197315号公報
【発明の概要】
【0003】
本発明の第1の態様においては、制御支援装置を提供する。制御支援装置は、設備を計測した計測データに基づいて、設備の異常性を推測する設備異常性推測部を備えてよい。制御支援装置は、設備の異常性の推測結果に応じて、設備を複数の制御方法候補のそれぞれにより制御した場合の将来の設備の状態をシミュレーションするシミュレーション部を備えてよい。制御支援装置は、複数の制御方法候補のそれぞれについて、将来の設備の状態に基づいて将来の設備の異常性を推測するシミュレーション異常性推測部を備えてよい。
【0004】
制御支援装置は、複数の制御方法候補の中からシミュレーションの結果に基づいて選択された制御方法によって設備を制御することを設備の制御装置に指示する制御指示部を備えてよい。
【0005】
制御指示部は、複数の制御方法候補のそれぞれに応じた将来の設備の異常性に基づいて選択された制御方法によって設備を制御することを制御装置に指示してよい。
【0006】
設備異常性推測部およびシミュレーション異常性推測部は、同じ推測モデルを用いて設備の異常性を推測してよい。
【0007】
制御支援装置は、設備の異常の要因となった要因パラメータを検出する要因検出部を備えてよい。制御支援装置は、複数の制御方法候補の少なくとも1つとして、要因パラメータを正常化する制御方法を生成してよい。
【0008】
制御支援装置は、設備の操業目標を取得する目標取得部を備えてよい。制御支援装置は、複数の制御方法候補のうち、操業目標を満たす制御方法候補を選択する候補選択部を備えてよい。
【0009】
制御支援装置は、複数の制御方法候補のうちの少なくとも1つの制御方法候補について、シミュレーション異常性推測部によって推測された異常性を提示する提示部を更に備えてよい。
【0010】
シミュレーション部は、第1の複数の制御方法候補および第2の複数の制御方法候補についてのシミュレーションを行ってよい。制御指示部は、第1の複数の制御方法候補についてのシミュレーションが終了したことに応じて、第2の複数の制御方法候補についてのシミュレーションが終了する前に、第1の複数の制御方法候補の中から選択された制御方法によって設備を制御することを制御装置に指示してよい。制御指示部は、第2の複数の制御方法候補についてのシミュレーションが終了したことに応じて、第2の複数の制御方法候補を含む制御方法候補の中から選択された制御方法によって設備を制御することを制御装置に指示してよい。
【0011】
制御支援装置は、第1制御方法候補を含む第1の複数の制御方法候補と、第1制御方法候補によって変更する制御パラメータをより小さい範囲で調整する第2制御方法候補を含む第2の複数の制御方法候補とを生成する候補生成部を備えてよい。
【0012】
候補生成部は、第1制御方法候補が選択されたことに応じて、第2制御方法候補を含む第2の複数の制御方法候補を生成してよい。
【0013】
制御支援装置は、第1制御方法候補を含む第1の複数の制御方法候補と、第1制御方法候補によって変更する制御パラメータを互いに異なる大きさに変更する2以上の第2制御方法候補を含む第2の複数の制御方法候補とを生成する候補生成部を備えてよい。
【0014】
候補生成部は、第1制御方法候補が選択されたことに応じて、2以上の第2制御方法候補を含む第2の複数の制御方法候補を生成してよい。
【0015】
本発明の第2の態様によれば、制御支援装置を提供する。制御支援装置は、設備を計測した計測データに基づいて、設備の異常性を推測する設備異常性推測部を備えてよい。制御支援装置は、設備の異常性の推測結果に応じて、設備を複数の制御方法候補のそれぞれにより制御した場合の将来の設備の状態をシミュレーションするシミュレーション部を備えてよい。制御支援装置は、複数の制御方法候補の中からシミュレーションの結果に基づいて選択された制御方法によって設備を制御することを設備の制御装置に指示する制御指示部を備えてよい。
【0016】
本発明の第3の態様によれば、制御システムを提供する。制御システムは、設備を制御する制御装置を備えてよい。制御システムは、制御支援装置を備えてよい。
【0017】
本発明の第4の態様によれば、制御支援方法を提供する。制御支援方法においては、設備の制御を支援する制御支援装置が、設備を計測した計測データに基づいて、設備の異常性を推測してよい。制御支援方法においては、制御支援装置が、設備の異常性の推測結果に応じて、設備を複数の制御方法候補のそれぞれにより制御した場合の将来の設備の状態をシミュレーションしてよい。制御支援方法においては、制御支援装置が、複数の制御方法候補のそれぞれについて、将来の設備の状態に基づいて将来の設備の異常性を推測してよい。
【0018】
本発明の第5の態様によれば、制御支援方法を提供する。制御支援方法においては、設備の制御を支援する制御支援装置が、設備を計測した計測データに基づいて、設備の異常性を推測してよい。制御支援方法においては、制御支援装置が、設備の異常性の推測結果に応じて、設備を複数の制御方法候補のそれぞれにより制御した場合の将来の設備の状態をシミュレーションしてよい。制御支援方法においては、制御支援装置が、複数の制御方法候補の中からシミュレーションの結果に基づいて選択された制御方法によって設備を制御することを設備の制御装置に指示してよい。
【0019】
本発明の第6の態様によれば、コンピュータにより実行される制御支援プログラムを提供する。制御支援プログラムは、コンピュータに、設備を計測した計測データに基づいて、設備の異常性を推測することを実行させてよい。制御支援プログラムは、コンピュータに、設備の異常性の推測結果に応じて、設備を複数の制御方法候補のそれぞれにより制御した場合の将来の設備の状態をシミュレーションすることを実行させてよい。制御支援プログラムは、コンピュータに、複数の制御方法候補のそれぞれについて、将来の設備の状態に基づいて将来の設備の異常性を推測することを設備の制御装置に指示することを実行させてよい。
【0020】
本発明の第7の態様によれば、コンピュータにより実行される制御支援プログラムを提供する。制御支援プログラムは、コンピュータに、設備を計測した計測データに基づいて、設備の異常性を推測することを実行させてよい。制御支援プログラムは、コンピュータに、設備の異常性の推測結果に応じて、設備を複数の制御方法候補のそれぞれにより制御した場合の将来の設備の状態をシミュレーションすることを実行させてよい。制御支援プログラムは、コンピュータに、複数の制御方法候補の中からシミュレーションの結果に基づいて選択された制御方法によって設備を制御することを設備の制御装置に指示することを実行させてよい。
【0021】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施形態に係る制御システム100の構成を設備10と共に示す。
【
図2】本発明の実施形態に係る制御システム100の学習フローを示す。
【
図3】本発明の実施形態に係る健全性指標のグラフの一例を示す。
【
図4】本発明の実施形態に係る制御システム100の制御支援フローを示す。
【
図5】本発明の実施形態に係る制御システム100が出力する表示画面500の一例を示す。
【
図6】変形例に係る制御方法候補の選択の一例を示す。
【
図7】他の変形例に係る制御方法候補の選択の一例を示す。
【
図8】本発明の複数の態様が全体的または部分的に具現化されてよいコンピュータ2200の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0024】
図1は、本実施形態に係る制御システム100の構成を設備10と共に示す。本実施形態に係る制御システム100は、設備10の異常を推測したことに応じて、設備10を複数の制御方法の候補のそれぞれによって制御した場合における将来の設備10の状態をシミュレーションする。そして、制御システム100は、シミュレーション結果に基づいて、設備10の制御方法を選択することを可能とする。これにより、制御システム100は、シミュレーションの結果が良好であった制御方法を選択することを可能とし、より確実に設備10を正常状態に維持することを可能とすることができる。
【0025】
設備10は、プラント等に設けられる。このようなプラントは、例えば、化学または金属等の工業プラント、ガス田や油田等の井戸元やその周辺を管理制御するプラント、水力・火力・原子力等の発電を管理制御するプラント、太陽光や風力等の環境発電を管理制御するプラント、上下水やダム等を管理制御するプラント等であってよい。また、設備10は、ビルまたは交通機関等に設けられてもよい。このような設備10は、1または複数のプロセス装置、1または複数の発電装置、およびその他の1または複数の装置を有してよい。
【0026】
設備10は、1または複数のフィールド機器を有してよい。フィールド機器は、例えば圧力計、流量計、温度センサ等のセンサ機器、流量制御弁や開閉弁等のバルブ機器、ファンやモータ等のアクチュエータ機器、プラント等の状況や対象物を撮影するカメラ若しくはビデオ等の撮像機器、プラント等の異音等を収集し、または警報音等を発するマイク若しくはスピーカ等の音響機器、設備10が有する装置の位置情報を出力する位置検出機器、またはその他の機器であってよい。
【0027】
制御システム100は、設備10に接続される。制御システム100は、一例として分散制御システム(DCS)であってよい。制御システム100は、制御装置110と、制御支援装置120とを備える。制御装置110は、設備10に接続され、設備10を制御する。より具体的には、制御装置110は、設備10に設けられたセンサ等の計測機器によって計測された計測データを設備10から取得する。制御装置110は、設備10から取得した計測データに基づいて、設備10を制御するための制御パラメータをPID演算等によって算出し、算出した制御パラメータを設備10へと設定する。これにより、設備10は、設定された制御パラメータに応じて、バルブ機器の開度を変更し、アクチュエータの動作量を変更する等の処理を行う。
【0028】
制御支援装置120は、制御装置110に接続され、制御装置110に対して設備10の制御方法を指示する。制御支援装置120は、データ取得部125と、学習処理部130と、推測モデルDB135(推測モデルデータベース135)と、設備異常性推測部140と、要因検出部145と、候補生成部150と、候補DB155(候補データベース155)と、シミュレーション部160と、シミュレーション異常性推測部165と、提示部168と、目標取得部170と、候補選択部175と、制御指示部180とを有する。
【0029】
データ取得部125は、制御装置110に接続され、設備10内の計測機器によって計測された計測データを制御装置110を介して取得する。データ取得部125は、設備10から取得可能な全ての計測データを取得してもよく、これに代えて制御支援装置120による制御支援が可能な範囲で一部の計測データを取得してもよい。なお、データ取得部125は、少なくとも一部の計測データを、設備10から制御装置110を介さずに取得してもよい。また、データ取得部125は、制御装置110が設備10に対して設定した1または複数の制御パラメータを制御装置110から取得してもよい。
【0030】
学習処理部130は、データ取得部125に接続され、データ取得部125から計測データを取得する。学習処理部130は、取得した計測データを用いて、計測データを入力として設備10の異常性を推測する推測モデルを学習により生成する。学習処理部130は、教師なし学習によって推測モデルを生成してよい。これに代えて、学習処理部130は、設備10が異常かどうかの判断結果(図中「異常性判断」)を熟練した作業員等から受け取って教師データとして用い、教師あり学習によって推測モデルを生成してもよい。
【0031】
ここで、本実施形態において、設備10の「異常性」は、設備10の健全性を示す指標(「健全性指標」)であり、設備10の健全性が高いほど(すなわち正常である可能性が高いほど)大きくなり、設備10の健全性が低い(すなわち異常となる可能性が高いほど)小さくなる値である。これに代えて、「異常性」は、設備10が異常となる可能性が高いほど大きくなり、正常である可能性が高いほど小さくなる「異常度」を示す値であってよい。また、「異常性」は、正常と推測された場合には正常を示す値(例えば「0」)、異常と推測された場合には異常を示す値(例えば「1」)を示すような、フラグ値であってもよい。なお、設備10の健全性が低いこと、すなわち異常となる可能性が高いことは、必ずしも設備10が現在異常であることを示すものでなく、設備10が現在正常ではあるものの、将来異常となる予兆が検知されたことを示すものであってよい。換言すれば、設備10の「異常性」を用いて把握される設備10の「異常」は、設備10が現在故障等していること自体を示すものではなく、設備10が将来故障等する方向に向かっている状態のような、設備10の運転上適切でない状態をも含むものであってよい。
【0032】
推測モデルDB135は、学習処理部130に接続され、学習処理部130によって学習された推測モデルを格納する。設備異常性推測部140は、データ取得部125および推測モデルDB135に接続される。設備異常性推測部140は、推測モデルDB135に格納された推測モデルを用いて、データ取得部125が取得した計測データに基づいて、直近における設備10の異常性を推測する。設備異常性推測部140は、推測した異常性を作業員等または外部の機器等に出力する(図中「異常性出力」)。
【0033】
要因検出部145は、データ取得部125および設備異常性推測部140に接続され、設備10の異常の要因となった少なくとも1つの要因パラメータを検出する。例えば、要因検出部145は、設備異常性推測部140が設備10の異常を推測した場合において、例えばプロセス装置Aの圧力が学習した正常範囲を超えていることに応じて設備10の異常を推測した場合には、プロセス装置Aの圧力パラメータ(要因パラメータ)の異常を検出する。また、要因検出部145は、例えば配管Bの温度が学習した正常範囲を超えていることに応じて設備10の異常を推測した場合には、配管Bの温度パラメータ(要因パラメータ)の異常を検出する。
【0034】
候補生成部150は、データ取得部125および要因検出部145に接続され、設備10を制御する制御方法の候補(制御方法候補)を複数生成して候補DB155に格納する。ここで、候補生成部150は、設備10の少なくとも1つの制御パラメータに対して設定すべき設定値を含む制御方法候補を生成し、候補DB155に格納してよい。更に、候補生成部150は、現状における、設備10の各制御パラメータの設定値および設備10の計測データを、シミュレーションに供するべく候補DB155に格納してよい。
【0035】
候補生成部150は、複数の制御方法候補の少なくとも1つとして、要因検出部145が検出した少なくとも1つの要因パラメータを正常化する制御方法を生成してよい。例えば、候補生成部150は、プロセス装置Aの圧力が学習した正常範囲を超えている場合に、プロセス装置Aに気体または液体原料を供給する配管のバルブを絞って原料の流入を減らすべく、このバルブの制御パラメータの新たな設定値を含む制御方法を生成する。また例えば、候補生成部150は、配管Bの温度が学習した正常範囲を超えている場合に、配管Bの上流の加熱装置の加熱量を落とすべく、この加熱装置の制御パラメータの新たな設定値を含む制御方法を生成する。
【0036】
候補DB155は、候補生成部150およびシミュレーション異常性推測部165に接続される。候補DB155は、候補生成部150が生成した制御方法候補を記憶する。また、候補DB155は、現状における、設備10の各制御パラメータの設定値および設備10の計測データを記憶してよい。
【0037】
シミュレーション部160は、候補DB155に接続される。シミュレーション部160は、設備10の異常性の推測結果に応じて、設備10を、候補DB155に格納された複数の制御方法候補のそれぞれにより制御した場合の将来の設備10の状態をシミュレーションする。本実施形態に係るシミュレーション部160は、設備異常性推測部140が設備10の異常を推定したことに応じて要因検出部145が検出した要因パラメータに基づいて候補生成部150が生成した複数の制御方法候補のそれぞれを用いてシミュレーションを実行する。シミュレーション部160は、このシミュレーションにより、将来の設備10の状態として、将来設備10から計測されると想定される計測データの少なくとも一部を算出する。また、シミュレーション部160は、将来の設備10の状態の少なくとも一部として、設備10の生産量、設備10を停止させることなく生産等を維持することが可能な期間(設備維持期間)、およびその他の設備10の制御結果を算出してよい。シミュレーション部160は、各制御方法候補に関して算出した計測データ等の将来の設備10の状態を、その制御方法候補に対応づけて候補DB155に格納してよい。
【0038】
シミュレーション異常性推測部165は、推測モデルDB135およびシミュレーション部160に接続される。シミュレーション異常性推測部165は、候補DB155に格納された複数の制御方法候補のそれぞれについて、シミュレーション部160がシミュレーションした将来の設備10の状態に基づいて将来の設備10の異常性を推測する。本実施形態において、設備異常性推測部140およびシミュレーション異常性推測部165は、推測モデルDB135に格納された、同じ推測モデルを用いて設備10の異常性を推測する。ここで、シミュレーション異常性推測部165は、シミュレーションによって算出された、将来想定される設備10の計測データおよび設備10の制御結果に基づいて、将来の設備10の異常性を推測する。シミュレーション異常性推測部165は、複数の制御方法候補のそれぞれについて算出した、将来の設備10の異常性を、それぞれの制御方法候補に対応づけて、シミュレーションの結果の少なくとも一部として候補DB155に格納する。
【0039】
提示部168は、シミュレーション異常性推測部165に接続される。提示部168は、複数の制御方法候補のうちの少なくとも1つの制御方法候補について、シミュレーション異常性推測部165によって推測された異常性を含むシミュレーションの結果を設備10の作業員に対して提示する。ここで、提示部168は、複数の制御方法候補のそれぞれについて、シミュレーション部160が算出した計測データ等と共に、推測された異常性を提示してもよい。
【0040】
目標取得部170は、設備10の作業員等から設備10の操業目標を取得する。候補選択部175は、候補DB155および目標取得部170に接続される。候補選択部175は、候補DB155に格納された複数の制御方法候補の中から設備10の制御に用いる制御方法を、各制御方法候補についてのシミュレーションの結果に基づいて選択する。ここで、候補選択部175は、シミュレーションの結果の少なくとも一部として得られる、複数の制御方法候補のそれぞれに応じた将来の設備10の異常性に基づいて、設備10の制御に用いる制御方法を選択する。また、設備10の操業目標が指定された場合、候補選択部175は、複数の制御方法候補のうち、指定された操業目標を更に満たす制御方法を選択する。
【0041】
候補選択部175は、複数の制御方法候補のうち、シミュレーションの結果設備10の異常が予測される状態が解消し、かつ操業目標が指定されている場合には操業目標を達成可能な制御方法を自動的に選択してよい。また、候補選択部175は、複数の制御方法候補のそれぞれのシミュレーション結果を作業員等に対して表示し(図中「候補出力」)、作業員等がシミュレーションの結果に基づいて選択した制御方法の指定(図中「選択入力」)を入力することにより制御方法を選択してもよい。また、候補選択部175は、複数の制御方法候補の中から設備10の異常が予測される状態を改善し、操業目標の達成に近づけることが可能となる2以上の制御方法候補を絞り込んで作業員等に対して表示し、作業員等の指定に応じて1つの制御方法を選択してもよい。
【0042】
制御指示部180は、候補選択部175に接続される。制御指示部180は、複数の制御方法候補の中から、将来の設備10の異常性の推測結果を含むシミュレーションの結果に基づいて選択された制御方法によって設備10を制御することを、設備10の制御装置110に指示する。制御装置110は、制御指示部180によって指定された制御方法によって設備10を制御する。
【0043】
以上に示した制御システム100によれば、設備10の異常性を推測し、異常が発生すると推測したことに応じて、設備10の複数の制御方法候補を生成し、各制御方法候補によって設備10を制御した場合における将来の設備10の状態をシミュレーションすることができる。そして、制御システム100は、複数の制御方法候補の中から、シミュレーションの結果が良好であった制御方法を選択して設備10を制御することができる。このようにして、制御システム100は、シミュレーションの結果を用いてより確実かつ精度よく設備10を制御することができる。
【0044】
図2は、本実施形態に係る制御システム100の学習フローを示す。ステップ200(S200)において、データ取得部125は、例えば数秒といった予め定められた周期で、制御装置110によって収集された設備10の計測データを、制御装置110から取得する。ここで、データ取得部125は、制御装置110が設備10の制御のために計測データを取得するのと同じ周期で計測データを取得してもよく、設備10の監視目的で、制御装置110の取得周期よりも大きい周期で計測データを取得してもよい。
【0045】
S210において、設備異常性推測部140は、データ取得部125が取得した計測データに基づいて、設備10の異常性を推測する。S220において設備10が異常となると推測した場合、設備異常性推測部140は、S230において、アラームを発生する等により設備10の異常性を作業員等に対して通知する(
図1中「異常性出力」)。
【0046】
S240において、学習処理部130は、作業員等から設備10の正常または異常に関する判断結果(
図1中「異常性判断」)の入力があるか否かを判断する。なお、学習処理部130は、作業員等からの異常性判断の入力に過度のリアルタイム性を求めないように、作業員等が、設備10の異常であった期間を事後的に指定可能とする等のユーザーインターフェイスを提供してよい。
【0047】
S240において判断結果の入力があった場合には、学習処理部130は、S250において、この判断結果の入力を学習用入力として用いて、推測モデルの学習処理を行う。ここで学習処理に時間を要する場合、学習処理部130は、計測データの定期的な取得および異常性の推測のループの外で、バッチ処理等によって学習処理を行ってもよい。
【0048】
設備10の異常性を推測する推測モデルは、ニューラルネットワーク、サポートベクターマシン(SVM)、またはその他の機械学習モデルを用いてよい。例えばニューラルネットワークを用いる場合、学習処理部130は、設備10から取得した計測データをニューラルネットワークの入力層に入力した場合に出力層から出力される異常性の推測結果と目標とする異常性の判断結果との誤差を最小化するように、バックプロパゲーション等の手法を用いて各ニューロン間の重みおよび各ニューロンのバイアスを調整する。
【0049】
また、例えばSVMを用いる場合、学習処理部130は、設備10から取得した計測データにおける、1または複数の計測値の組を座標とする点を多次元空間にマップした場合に、設備10が正常とラベリングされた点の集合と、設備10が異常であるとラベリングされた点の集合との間を最大のマージンをもって分離する超平面を学習する。この超平面は、各計測値に対応する重みの組を含む重みベクトルによって表される。
【0050】
なお、プラント等の設備10は、現実に異常となるのが非常に稀である。このため、学習処理部130は、設備10が異常との判断が入力されなかった場合には、設備10が正常であるとして推測モデルの学習処理を行ってよい。
【0051】
以上に代えて、設備10の異常性を推測する推測モデルは、統計的手法を用いてもよい。例えば、学習処理部130は、各タイミングで取得された計測データを推測モデルDB135に蓄積していく。そして推測モデルDB135は、推測モデルDB135に蓄積された計測データの分布から閾値以上外れた計測データが取得されたことに応じて、設備10が異常となると推定してよい。また、推測モデルは、予めプログラミングされた条件(例えば配管Bの温度が85度以上等)が満たされたことに応じて設備10が異常となると推測してもよい。
【0052】
図3は、本実施形態に係る、設備10の異常性を示す健全性指標のグラフの一例を示す。本実施形態に係る健全性指標は、予め定められた数値範囲内で、設備10が異常となる可能性が高いほど小さく、設備10が正常である可能性が高いほど大きくなる値(例えば-1.0~+1.0)をとる。例えば、正常の場合に+1、異常の場合に-1を出力ノードから出力するように教育されたニューラルネットワークによる推定モデルを用いる場合、設備異常性推測部140は、この出力ノードの出力値を健全性指標として用いてよい。また例えば、統計的手法を用いた推測モデルを用いる場合、設備異常性推測部140は、取得された計測データが、推測モデルDB135に蓄積された計測データの分布にどの程度近いかを示す値(例えば、分布からどの程度外れているかを示す値の逆相関)を健全性指標として用いてもよい。
【0053】
設備異常性推測部140は、設備10の計測データが取得される毎に、取得された計測データに基づいてこのような健全性指標を算出し、
図3に例示したようなグラフ等を用いて作業員等に対して表示する。本実施形態に係る設備異常性推測部140は、健全性指標の値が正常および異常の境界を示す閾値よりも大きい場合には設備10は正常であると推定し、健全性指標の値が閾値以下となった場合には設備10が異常となると推定する。ここで、設備異常性推測部140は、複数の制御方法候補を生成してシミュレーションを実行する契機を判断するために用いる閾値と、設備10の異常をアラーム等によって作業者等に警告する場合に用いる閾値とを異なる値としてもよい。例えば、設備異常性推測部140は、シミュレーションを実行する契機を判断するために用いる閾値を、作業者等に警告する場合に用いる閾値よりも大きくし、将来警告を発する可能性がある場合に先行してシミュレーションを開始するようにしてもよい。
【0054】
また、設備異常性推測部140は、健全性指標が減少傾向にある等の他の条件を用いて、設備10の異常を推定してもよい。これにより、設備異常性推測部140は、将来異常が発生する可能性がある状況において予めシミュレーションを実行し、設備10の制御方法を切り換えるようにすることができる。
【0055】
図4は、本実施形態に係る制御システム100の制御支援フローを示す。S400において、要因検出部145は、設備異常性推測部140が設備10の異常を推測する要因となった少なくとも1つの要因パラメータを検出する。推測モデルがニューラルネットワークを用いるものである場合、設備異常性推測部140は、例えば正常を示す健全性指標の値(例えば+1.0)と異常が推測されたときの健全性指標の値との誤差をニューラルネットワークの出力層から入力層へと逆伝搬(バックプロパゲーション)させることにより、入力層に入力された計測データの各計測値の誤差を算出してよい。設備異常性推測部140は、このようにして算出した誤差が比較的大きな計測値に対応する少なくとも1つのパラメータを、異常の要因となった要因パラメータとして検出してよい。
【0056】
また、例えば推測モデルが統計的手法を用いるものである場合、設備異常性推測部140は、複数のパラメータのそれぞれについての計測値のうち、推測モデルDB135に蓄積された計測データの分布から外れる要因となった計測値に対応する少なくとも1つのパラメータを、要因パラメータとして検出してもよい。また、推測モデルが予めプログラミングされた条件を用いて設備10の異常性を判断するものである場合、設備異常性推測部140は、計測データが満たすべき複数の条件のうち、満たされなかった条件判断において参照するパラメータを要因パラメータとして検出してよい。
【0057】
S410において、候補生成部150は、要因検出部145が検出した少なくとも1つの要因パラメータを正常化する制御方法候補を生成して候補DB155に格納する。例えば、候補生成部150は、複数の制御パラメータのそれぞれと、その制御パラメータを変更することによって計測値が変わりうる少なくとも1つのパラメータとの関係を予め有してよい。候補生成部150は、この関係を用いて、要因検出部145が検出した少なくとも1つの要因パラメータを調整するために使用することができる少なくとも1つの制御パラメータを特定する。そして、候補生成部150は、特定した制御パラメータを変更する1または複数の制御方法候補を生成する。
【0058】
例えば、候補生成部150は、プロセス装置Aの圧力が要因パラメータとして検出された場合、プロセス装置Aの圧力に影響を与える、プロセス装置Aの上流の配管のバルブ開度設定、およびプロセス装置Aの反応速度設定等の制御パラメータを特定する。そして、候補生成部150は、このバルブをより開く制御方法候補、このバルブをより閉める制御方法候補、プロセス装置Aの反応速度をより小さくする制御方法候補、プロセス装置Aの反応速度をより大きくする制御方法候補等を生成する。ここで、候補生成部150は、制御パラメータの増減と要因パラメータの増減との関係を予め有してもよく、この場合には要因パラメータを正常化する方向に制御パラメータを変化させる制御方法候補を生成してよい。
【0059】
また、候補生成部150は、同じ制御パラメータについて変化量を異ならせた複数の制御方法候補を生成してもよい。例えば、候補生成部150は、ある制御パラメータを、+1、+5、+10、+20等変化させるような複数の制御方法候補を生成してよい。
【0060】
また、候補生成部150は、現在運用中の制御方法を維持する制御方法候補を生成してもよい。現在運用中の制御方法を含む制御方法候補についてのシミュレーションも併せて実行することにより、候補選択部175は、現在運用中の制御方法に応じた制御方法候補と、他の制御方法候補とを、同じシミュレーションにより得られた結果を基準として選択可能とすることができる。
【0061】
S420において、シミュレーション部160は、候補DB155に格納された複数の制御方法候補のそれぞれにより制御した場合の将来の設備10の状態をシミュレーションする。一例として、シミュレーション部160は、設備10の定常状態を静的シミュレーションによって算出してよい。静的シミュレーションにおいて、設備10内の各装置は、その装置の動作を数学的に模擬するシミュレーションモデルによって表される。例えば、設備10内のプロセス装置は、制御パラメータによって反応速度等が設定され、原料の入力速度等のようなそのプロセス装置の外部環境、およびそのプロセス装置の内部の状態等を用いて算出される量の中間製造物を出力するシミュレーションモデルによって表されてもよい。
【0062】
また、シミュレーション部160は、設備10の状態変化を動的シミュレーションによって算出してもよい。例えば、シミュレーション部160は、有限要素法等を用いた流体シミュレーションまたは熱力学シミュレーション等により設備10の状態の経時変化を解析してもよい。
【0063】
また、シミュレーション部160は、制御装置110の動作を模擬するシミュレーションモデルを含むシミュレーションを行ってもよい。例えば制御装置110がPID制御等を行う場合、シミュレーション部160は、制御支援装置120が制御装置110に制御パラメータを設定してから、制御装置110がPID制御等によって設備10の制御パラメータの設定値を経時的に変化させる過程をシミュレーションしてもよい。
【0064】
S430において、シミュレーション異常性推測部165は、複数の制御方法候補のそれぞれについて、シミュレーション部160によるシミュレーションの結果、すなわちシミュレーションによって算出された、将来想定される設備10の計測データに基づいて、将来の設備10の異常性を推測する。シミュレーション異常性推測部165は、設備異常性推測部140と同じ方法を用いて将来の設備10の異常性を推測してよい。本実施形態に係るシミュレーション異常性推測部165は、推測モデルDB135に格納された推測モデルを用いて、将来の設備10の異常性を推測する。ここで、シミュレーション部160が動的シミュレーションを実行する場合、シミュレーション異常性推測部165は、将来の各時点における設備10の異常性の指標値を推測してよい。
【0065】
S440において、候補選択部175は、候補DB155に格納された複数の制御方法候補のうち、設備10の制御に用いる制御方法を、シミュレーション部160によるシミュレーション結果およびシミュレーション異常性推測部165による将来の異常性の判断結果に基づいて選択する。ここで、候補選択部175は、複数の制御方法候補のうち、将来の健全性指標の値が、
図3に示したような、正常および異常の境界を示す閾値よりも大きいものを選択する。候補選択部175は、複数の制御方法候補のうち、健全性指標の値がより大きいものほど、より高い優先度で選択してもよい。また、シミュレーション部160が動的シミュレーションを行った場合には、候補選択部175は、複数の制御方法候補のうち、健全性指標の値がより早く閾値より大きくなるものをより高い優先度で選択してもよい。
【0066】
また、目標取得部170は、設備10の作業員等の要求を受けて、設備10の操業目標を取得してもよい。操業目標が取得された場合には、候補選択部175は、複数の制御方法候補のうち、指定された操業目標を満たす制御方法を選択する。操業目標は、設備10全体または少なくとも1つの装置の生産量、稼働率、負荷、または設備維持時間等の少なくとも1つの目標値を含んでよい。候補選択部175は、複数の制御方法候補のうち、操業目標の達成率がより高いものほど、より高い優先度で選択してもよい。また、候補選択部175は、各制御方法候補について、健全性指標の値、操業目標の達成率、およびその他の選択指標を重み付けしてスコアリングし、最も高いスコアとなった制御方法を選択してもよい。
【0067】
また、候補選択部175は、複数の制御方法候補またはその一部を作業員等に対して表示し、作業員等により1つの制御方法を決定させてもよい。この場合において、候補選択部175は、健全性指標の値が正常となると推測され、かつ指定された操業目標を満たす2以上の制御方法候補を作業員等に対して表示してもよい。
【0068】
S450において、制御指示部180は、S440において選択された制御方法によって設備10を制御することを制御装置110に指示する。例えば、制御指示部180は、選択された制御方法において変更を予定した制御パラメータの値を、実際に変更するよう制御装置110に指示する。S460において、制御装置110は、制御指示部180からの指示を受けて、選択された制御方法に応じて設備10を制御する。
【0069】
以上に示した制御システム100によれば、設備10の異常が発生すると推測される場合に設備10の複数の制御方法候補を生成してそれぞれシミュレーションし、シミュレーション結果が良好であった制御方法を選択して設備10を制御することができる。これにより、制御システム100は、より確実に設備10を異常へと向かうと可能性がある状態から回復させることができ、更には設備10の操業目標を満たすことができる制御方法を選択して設備10を稼働させることができる。
【0070】
なお、制御支援装置120は、上記の全ての機能および構成を備える必要はなく、一部の機能または構成を有しない場合においても設備10を好適に制御することができる。例えば、候補生成部150は、設備10の異常が推測されたか否かによらず、常時、または予め定められた周期等において、少なくとも1つの制御方法候補を生成し、シミュレーション部160によってシミュレーションをさせてもよい。この場合、制御支援装置120は、設備10の異常が推測されない場合においても、よりよい制御方法候補を選択可能とすることができる。
【0071】
また、制御支援装置120は、シミュレーション異常性推測部165を有しない構成を採ってもよい。この場合、制御支援装置120は、シミュレーション結果に基づいて将来の異常性を推測しないものの、シミュレーション結果から異常性を判断可能な熟練作業員等に複数の制御方法候補の選択肢を与えることが可能となる。
【0072】
また、制御支援装置120は、目標取得部170を有しない構成を採ってもよい。この場合、制御支援装置120は、将来の異常性の推測結果に基づいて制御方法を選択してもよく、将来正常となると推測された2以上の制御方法候補の中から、作業員等の基準で選択された制御方法を決定してもよい。
【0073】
また、制御支援装置120は、目標取得部170、候補選択部175、および制御指示部180を有しない構成を採ってもよい。この場合、制御支援装置120は、複数の制御方法候補を生成してそれぞれシミュレーションし、将来の異常性を推測して作業員等に提示する。この場合、作業員等は、複数の制御方法候補のうち、提示されたシミュレーション結果を確認して選択した制御方法に基づいて、制御パラメータを手動で設備10または制御装置110に設定することができる。
【0074】
図5は、本実施形態に係る制御システム100が出力する表示画面500の一例を示す。本図の例では、候補生成部150は、
図4のS410において、ケース1~3の制御方法候補を生成する。ケース1は、制御パラメータXを20増加させ、制御パラメータYを5増加させ、制御パラメータZを5減少させるものである。ケース1において、他の制御パラメータは変更されない。ケース2は、同様に、制御パラメータXを20増加させ、制御パラメータYを5減少させ、制御パラメータZを10減少させるものである。ケース3は、同様に、制御パラメータXを10増加させ、制御パラメータYを5減少させ、制御パラメータZを20減少させる。
【0075】
シミュレーション部160は、
図4のS420において、ケース1~3についてシミュレーションを実行する。本図の例において、シミュレーション部160は、将来の設備10の状態として、設備10の生産量が、ケース1の場合1日あたり200、ケース2の場合1日あたり50、ケース3の場合1日あたり100であり、設備10の設備維持期間が、ケース1の場合4日、ケース2の場合40日、ケース3の場合15日であることをシミュレーションにより算出する。
【0076】
シミュレーション異常性推測部165は、
図4のS430において、ケース1~3のそれぞれについてのシミュレーション結果に基づいて、将来の設備10の健全性指標の値を推測する。本図の例においては、ケース2においては健全性指標が正常へと回復するが、ケース1および3においては健全性指標が図示した期間内には正常へと回復しない。
【0077】
候補選択部175は、
図4のS440において、ケース1~3のシミュレーション結果を作業員等に対して表示する。そして、候補選択部175は、ケース1~3のそれぞれに応じた将来の設備10の健全性指標に基づいて、健全性指標が正常へと回復するケース2の制御方法を選択する。本図の例においては、候補選択部175は、ケース1~3のうち、健全性指標が正常へと回復すると推測されたケース2の制御方法を自動的に選択してよい。これに代えて、候補選択部175は、ケース1~3の中から作業員等によって指示された制御方法を選択してもよい。
【0078】
候補選択部175による選択に応じて、制御指示部180は、制御パラメータXを20増加させ、制御パラメータYを5減少させ、制御パラメータZを10減少させることを制御装置110へと指示し、制御装置110は、この指示に応じて設備10を制御する。
【0079】
本図の例において、ケース1~3のいずれにおいても健全性指標が正常へと回復する場合には、候補選択部175は、操業目標に基づいて、いずれかの制御方法を選択してもよい。例えば、操業目標が、生産量の最大化または生産量を1日あたり150以上とすること等であった場合、候補選択部175は、当該操業目標を満たすケース1を選択する。また、操業目標が、設備維持期間の最大化または設備維持期間を30日以上とすること等であった場合、候補選択部175は、当該操業目標を満たすケース2を選択する。また、操業目標が、生産量を1日あたり80以上とし、かつ設備維持期間を10日以上とすること等であった場合、候補選択部175は、当該操業目標を満たすケース3を選択する。
【0080】
このようにして、制御システム100は、複数の制御方法候補のそれぞれのシミュレーション結果に基づいて、適切な制御方法を選択して設備10を制御することができる。
【0081】
図6は、本実施形態の変形例に係る制御方法候補の選択の一例を示す。本変形例において、候補生成部150は、複数の制御方法候補のグループを複数生成し、シミュレーション部160は、複数のグループのそれぞれに属する複数の制御方法候補についてのシミュレーションを順次行う。本図の例において、候補生成部150は、設備10の異常が推測されたことに応じて、ケース1~3を含む第1の複数の制御方法候補と、ケース1-1~3を含む第2の複数の制御方法候補と、ケース1-3-1~3を含む第3の複数の制御方法候補とを生成する。シミュレーション部160は、第1の複数の制御方法候補についてのシミュレーションを先に実行開始し、第2の複数の制御方法候補についてのシミュレーションを次に実行開始し、第3の複数の制御方法候補についてのシミュレーションをその次に実行開始する。
【0082】
候補選択部175は、第1の複数の制御方法候補についてのシミュレーションが終了したことに応じて、第2の複数の制御方法候補およびそれ以降の複数の制御方法候補についてのシミュレーションが終了する前に、第1の複数の制御方法候補の中から制御方法を選択してよい。制御指示部180は、選択された制御方法によって設備10を制御することを制御装置110に指示する。その後、候補選択部175は、第2の複数の制御方法候補についてのシミュレーションが終了したことに応じて、第2の複数の制御方法候補を含む制御方法候補の中から制御方法を選択し、制御指示部180は、選択された制御方法によって設備10を制御することを制御装置110に指示してよい。ここで、候補選択部175は、新たにシミュレーションが終了した第2の複数の制御方法候補のみの中から制御方法を選択してよく、すでにシミュレーションが終了している第1の複数の制御方法候補および新たにシミュレーションが終了した第2の複数の制御方法候補を合わせた中から制御方法を選択してもよい。
【0083】
これにより、制御システム100は、多数の制御方法候補のシミュレーションを実行していき、ある程度の数の制御方法候補のシミュレーションが終了したことに応じてその中から制御方法をいったん選択して設備10の制御を行うことができる。制御システム100は、残りの制御方法候補のシミュレーションの少なくとも一部がさらに終了したことに応じて、シミュレーションが終了した制御方法候補の中から、更に制御方法を選択して、設備10の制御を更新することができる。このようにして、制御システム100は、全てのシミュレーションを完了させる前に設備10の制御方法を改善することができる。
【0084】
更に、本図の例においては、候補生成部150は、第1制御方法候補の一例としてのケース1を含む第1の複数の制御方法候補であるケース1~3と、ケース1の制御方法候補によって変更する制御パラメータXをより小さい範囲で調整する第2の複数の制御方法候補であるケース1-1~3とを生成する。ここで、候補生成部150は、ケース1~3の中からケース1が選択されたことに応じて、ケース1の制御方法候補によって変更する制御パラメータXをケース1よりも小さい範囲で調整するケース1-1~3を生成してよい。ここで、候補生成部150は、ケース1~3のうち選択されなかったケース2~3によって変更する制御パラメータY~Zをケース2~3よりも小さい範囲で調整するケースは生成せず、シミュレーションを省略させるようにしてよい。
【0085】
候補生成部150は、ケース1-1~3の中からいずれかの制御方法(図中ケース1-3)が選択されたことに応じて、制御パラメータXを更に小さい範囲で調整する第3の複数の制御方法候補であるケース1-3-1~3を生成してもよい。ここでケース1-3-1を選択したとすると、制御支援装置120は、ケース1を選択することにより制御パラメータXを+20とし、次にケース1-3を選択することにより制御パラメータXを-10とし(異常の推測時に対し+10)、次にケース1-3-1を選択することにより制御パラメータXを+5(異常の推測時に対し+15)とすることができる。なお、より小さい範囲で調整するとは、「+20」、「-10」、「+5」のように、制御パラメータを調整する大きさ(絶対値)を小さくしていって調整することを意味する。
【0086】
これにより、制御支援装置120は、調整する制御パラメータの組み合わせが異なる第1の複数の制御方法候補の中から将来の設備10の異常性および操業目標に基づいて制御方法を選択した後、選択した制御パラメータの組み合わせに含まれる各制御パラメータを微調整するように第2の複数の制御方法候補を生成して更にシミュレーションを行うことができる。これを繰り返すことにより、制御支援装置120は、制御パラメータを徐々に微調整して適切な値に近づけていくことができる。
【0087】
図7は、本実施形態の他の変形例に係る制御方法候補の選択の一例を示す。本図の例においては、候補生成部150は、第1制御方法候補の一例としてのケース1を含む第1の複数の制御方法候補であるケース1~3と、ケース1の制御方法候補によって変更する制御パラメータを互いに異なる大きさに変更する2以上の第2制御方法候補であるケース1-1~3を含む第2の複数の制御方法候補とを生成する。ここで、候補生成部150は、ケース1~3の中からケース1が選択されたことに応じて、ケース1-1~3を生成してよい。
【0088】
一例として候補生成部150は、互いに制御パラメータの組み合わせが異なり、変更対象の制御パラメータを比較的小さく変更するケース1(制御パラメータX=+1)、ケース2(制御パラメータY=+1)、ケース3(制御パラメータZ=+1)を生成し、その中からケース1が選択されたことに応じて、ケース1によって変更した制御パラメータXをより大きく変更する制御方法候補を含むケース1-1(パラメータX=+10)、ケース1-2(パラメータX=+20)、ケース1-3(パラメータX=+40)を生成する。この後、候補生成部150は、
図6と同様にして、制御パラメータXを徐々に微調整して適切な値に近づけていくようにしてよい。
【0089】
これにより、制御支援装置120は、設備10が異常となると予測される状態を改善するために調整すべき制御パラメータの組み合わせを特定した後に、その制御パラメータの組み合わせを調整していくことができる。なお、候補生成部150は、ある制御パラメータを増加させる制御方法候補と、ある制御パラメータを減少させる制御方法候補との両方を第1の複数の制御方法候補に含めるようにしてもよい。これにより、制御支援装置120は、設備10が異常となると予測される状態を改善するために調整すべき制御パラメータの組み合わせと、各制御パラメータを増減いずれとするべきかとを特定することができる。
【0090】
本発明の様々な実施形態は、フローチャートおよびブロック図を参照して記載されてよく、ここにおいてブロックは、(1)操作が実行されるプロセスの段階または(2)操作を実行する役割を持つ装置のセクションを表わしてよい。特定の段階およびセクションが、専用回路、コンピュータ可読媒体上に格納されるコンピュータ可読命令と共に供給されるプログラマブル回路、および/またはコンピュータ可読媒体上に格納されるコンピュータ可読命令と共に供給されるプロセッサによって実装されてよい。専用回路は、デジタルおよび/またはアナログハードウェア回路を含んでよく、集積回路(IC)および/またはディスクリート回路を含んでよい。プログラマブル回路は、論理AND、論理OR、論理XOR、論理NAND、論理NOR、および他の論理操作、フリップフロップ、レジスタ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、プログラマブルロジックアレイ(PLA)等のようなメモリ要素等を含む、再構成可能なハードウェア回路を含んでよい。
【0091】
コンピュータ可読媒体は、適切なデバイスによって実行される命令を格納可能な任意の有形なデバイスを含んでよく、その結果、そこに格納される命令を有するコンピュータ可読媒体は、フローチャートまたはブロック図で指定された操作を実行するための手段を作成すべく実行され得る命令を含む、製品を備えることになる。コンピュータ可読媒体の例としては、電子記憶媒体、磁気記憶媒体、光記憶媒体、電磁記憶媒体、半導体記憶媒体等が含まれてよい。コンピュータ可読媒体のより具体的な例としては、フロッピー(登録商標)ディスク、ディスケット、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)、消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EPROMまたはフラッシュメモリ)、電気的消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EEPROM)、静的ランダムアクセスメモリ(SRAM)、コンパクトディスクリードオンリメモリ(CD-ROM)、デジタル多用途ディスク(DVD)、ブルーレイ(登録商標)ディスク、メモリスティック、集積回路カード等が含まれてよい。
【0092】
コンピュータ可読命令は、アセンブラ命令、命令セットアーキテクチャ(ISA)命令、マシン命令、マシン依存命令、マイクロコード、ファームウェア命令、状態設定データ、またはSmalltalk、JAVA(登録商標)、C++等のようなオブジェクト指向プログラミング言語、および「C」プログラミング言語または同様のプログラミング言語のような従来の手続型プログラミング言語を含む、1または複数のプログラミング言語の任意の組み合わせで記述されたソースコードまたはオブジェクトコードのいずれかを含んでよい。
【0093】
コンピュータ可読命令は、汎用コンピュータ、特殊目的のコンピュータ、若しくは他のコンピュータ等のプログラム可能なデータ処理装置のプロセッサまたはプログラマブル回路に対し、ローカルにまたはローカルエリアネットワーク(LAN)、インターネット等のようなワイドエリアネットワーク(WAN)を介して提供され、フローチャートまたはブロック図で指定された操作を実行するための手段を作成すべく、コンピュータ可読命令を実行してよい。プロセッサの例としては、コンピュータプロセッサ、処理ユニット、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ等を含む。
【0094】
図8は、本発明の複数の態様が全体的または部分的に具現化されてよいコンピュータ2200の例を示す。コンピュータ2200にインストールされたプログラムは、コンピュータ2200に、本発明の実施形態に係る装置に関連付けられる操作または当該装置の1または複数のセクションとして機能させることができ、または当該操作または当該1または複数のセクションを実行させることができ、および/またはコンピュータ2200に、本発明の実施形態に係るプロセスまたは当該プロセスの段階を実行させることができる。そのようなプログラムは、コンピュータ2200に、本明細書に記載のフローチャートおよびブロック図のブロックのうちのいくつかまたはすべてに関連付けられた特定の操作を実行させるべく、CPU2212によって実行されてよい。
【0095】
本実施形態によるコンピュータ2200は、CPU2212、RAM2214、グラフィックコントローラ2216、およびディスプレイデバイス2218を含み、それらはホストコントローラ2210によって相互に接続されている。コンピュータ2200はまた、通信インターフェイス2222、ハードディスクドライブ2224、DVD-ROMドライブ2226、およびICカードドライブのような入/出力ユニットを含み、それらは入/出力コントローラ2220を介してホストコントローラ2210に接続されている。コンピュータはまた、ROM2230およびキーボード2242のようなレガシの入/出力ユニットを含み、それらは入/出力チップ2240を介して入/出力コントローラ2220に接続されている。
【0096】
CPU2212は、ROM2230およびRAM2214内に格納されたプログラムに従い動作し、それにより各ユニットを制御する。グラフィックコントローラ2216は、RAM2214内に提供されるフレームバッファ等またはそれ自体の中にCPU2212によって生成されたイメージデータを取得し、イメージデータがディスプレイデバイス2218上に表示されるようにする。
【0097】
通信インターフェイス2222は、ネットワークを介して他の電子デバイスと通信する。ハードディスクドライブ2224は、コンピュータ2200内のCPU2212によって使用されるプログラムおよびデータを格納する。DVD-ROMドライブ2226は、プログラムまたはデータをDVD-ROM2201から読み取り、ハードディスクドライブ2224にRAM2214を介してプログラムまたはデータを提供する。ICカードドライブは、プログラムおよびデータをICカードから読み取り、および/またはプログラムおよびデータをICカードに書き込む。
【0098】
ROM2230はその中に、アクティブ化時にコンピュータ2200によって実行されるブートプログラム等、および/またはコンピュータ2200のハードウェアに依存するプログラムを格納する。入/出力チップ2240はまた、様々な入/出力ユニットをパラレルポート、シリアルポート、キーボードポート、マウスポート等を介して、入/出力コントローラ2220に接続してよい。
【0099】
プログラムが、DVD-ROM2201またはICカードのようなコンピュータ可読媒体によって提供される。プログラムは、コンピュータ可読媒体から読み取られ、コンピュータ可読媒体の例でもあるハードディスクドライブ2224、RAM2214、またはROM2230にインストールされ、CPU2212によって実行される。これらのプログラム内に記述される情報処理は、コンピュータ2200に読み取られ、プログラムと、上記様々なタイプのハードウェアリソースとの間の連携をもたらす。装置または方法が、コンピュータ2200の使用に従い情報の操作または処理を実現することによって構成されてよい。
【0100】
例えば、通信がコンピュータ2200および外部デバイス間で実行される場合、CPU2212は、RAM2214にロードされた通信プログラムを実行し、通信プログラムに記述された処理に基づいて、通信インターフェイス2222に対し、通信処理を命令してよい。通信インターフェイス2222は、CPU2212の制御下、RAM2214、ハードディスクドライブ2224、DVD-ROM2201、またはICカードのような記録媒体内に提供される送信バッファ処理領域に格納された送信データを読み取り、読み取られた送信データをネットワークに送信し、またはネットワークから受信された受信データを記録媒体上に提供される受信バッファ処理領域等に書き込む。
【0101】
また、CPU2212は、ハードディスクドライブ2224、DVD-ROMドライブ2226(DVD-ROM2201)、ICカード等のような外部記録媒体に格納されたファイルまたはデータベースの全部または必要な部分がRAM2214に読み取られるようにし、RAM2214上のデータに対し様々なタイプの処理を実行してよい。CPU2212は次に、処理されたデータを外部記録媒体にライトバックする。
【0102】
様々なタイプのプログラム、データ、テーブル、およびデータベースのような様々なタイプの情報が記録媒体に格納され、情報処理を受けてよい。CPU2212は、RAM2214から読み取られたデータに対し、本開示の随所に記載され、プログラムの命令シーケンスによって指定される様々なタイプの操作、情報処理、条件判断、条件分岐、無条件分岐、情報の検索/置換等を含む、様々なタイプの処理を実行してよく、結果をRAM2214に対しライトバックする。また、CPU2212は、記録媒体内のファイル、データベース等における情報を検索してよい。例えば、各々が第2の属性の属性値に関連付けられた第1の属性の属性値を有する複数のエントリが記録媒体内に格納される場合、CPU2212は、第1の属性の属性値が指定される、条件に一致するエントリを当該複数のエントリの中から検索し、当該エントリ内に格納された第2の属性の属性値を読み取り、それにより予め定められた条件を満たす第1の属性に関連付けられた第2の属性の属性値を取得してよい。
【0103】
上で説明したプログラムまたはソフトウェアモジュールは、コンピュータ2200上またはコンピュータ2200近傍のコンピュータ可読媒体に格納されてよい。また、専用通信ネットワークまたはインターネットに接続されたサーバーシステム内に提供されるハードディスクまたはRAMのような記録媒体が、コンピュータ可読媒体として使用可能であり、それによりプログラムを、ネットワークを介してコンピュータ2200に提供する。
【0104】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0105】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0106】
10 設備、100 制御システム、110 制御装置、120 制御支援装置、125 データ取得部、130 学習処理部、135 推測モデルDB、140 設備異常性推測部、145 要因検出部、150 候補生成部、155 候補DB、160 シミュレーション部、165 シミュレーション異常性推測部、168 提示部、170 目標取得部、175 候補選択部、180 制御指示部、500 表示画面、2200 コンピュータ、2201 DVD-ROM、2210 ホストコントローラ、2212 CPU、2214 RAM、2216 グラフィックコントローラ、2218 ディスプレイデバイス、2220 入/出力コントローラ、2222 通信インターフェイス、2224 ハードディスクドライブ、2226 DVD-ROMドライブ、2230 ROM、2240 入/出力チップ、2242 キーボード