(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-28
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】空気調和機
(51)【国際特許分類】
F24F 11/87 20180101AFI20231129BHJP
F24F 11/84 20180101ALI20231129BHJP
F25B 1/00 20060101ALI20231129BHJP
F25B 29/00 20060101ALI20231129BHJP
F24F 110/10 20180101ALN20231129BHJP
F24F 140/20 20180101ALN20231129BHJP
【FI】
F24F11/87
F24F11/84
F25B1/00 341H
F25B1/00 351D
F25B29/00 391Z
F24F110:10
F24F140:20
(21)【出願番号】P 2020079908
(22)【出願日】2020-04-30
【審査請求日】2023-01-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100144211
【氏名又は名称】日比野 幸信
(72)【発明者】
【氏名】内田 守
(72)【発明者】
【氏名】亀山 将太郎
【審査官】佐藤 正浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-139418(JP,A)
【文献】特開2007-147220(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/87
F24F 11/84
F25B 1/00
F25B 29/00
F24F 110/10
F24F 140/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1熱交換部と第2熱交換部とを有する室内熱交換器と、前記第1熱交換部と前記第2熱交換部との間に接続された減圧装置と、室内空気の温度を検出する第1温度センサとを有する室内機と、
室外熱交換器と、前記室外熱交換器と前記室内機との間に接続された圧縮機と、前記室外熱交換器の温度を検出する第2温度センサとを有する室外機と、
前記第1熱交換部を凝縮器として機能させ前記第2熱交換部を蒸発器として機能させる再熱除湿運転時に、前記第2温度センサが検出した前記室外熱交換器の温度よりも前記第1温度センサが検出した室内空気の温度のほうが高いと判断した場合に、前記圧縮機の運転動作を停止する制御装置と
を具備する空気調和機。
【請求項2】
請求項1に記載された空気調和機であって、
前記制御装置は、前記室内機に設けられた第1制御部と、前記室外機に設けられた第2制御部とを有し、
前記第2制御部が前記圧縮機の運転動作を停止する制御を行い、
前記第1制御部は、前記第2制御部が前記圧縮機を停止させた情報を前記第2制御部から受信した場合、前記減圧装置の開度を所定時間内でより増加する制御を行う
空気調和機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除湿運転が可能な空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和機の中には、冷房サイクルで再熱除湿を行うものがある。例えば、室内熱交換器が凝縮器として機能する熱交換器と、蒸発器として機能する熱交換器とに分けられ、前者で室内空気が加熱される一方で、後者で室内空気が除湿・冷却される。ここで、凝縮器として機能する熱交換器は、冷媒流路の上流側に位置し、蒸発器として機能する熱交換器は、冷媒流路の下流側に位置している。また、上流側の熱交換器と下流側の熱交換器との間には、減圧装置が設けられる。
【0003】
しかしながら、室外熱交換器よりも室内温度が高い場合などには、上流側に位置する熱交換器で冷媒の蒸発が起きやすくなり、冷媒においては減圧装置の手前でガス成分が増加する場合がある。このような場合、減圧装置手前の冷媒が乾き度の高い気液混合冷媒となり、減圧装置における冷媒の圧力損失が大きくなって室内熱交換器から圧縮機に冷媒が帰還しにくくなる、いわゆる循環不良に陥ることがある。このような状態が起きた場合に除湿動作を続けたとしても、冷媒が冷房流路を循環しないことから結局のところ、除湿ができない状態が続く。
【0004】
このような除湿ができない程度の循環不良を回避するために、循環不良によって変動する圧縮機の入力電流に基づいて圧縮機の運転を停止する技術がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、圧縮機の入力電流値は、循環不良以外の要素、例えば、使用者によって設定された温度または湿度を維持するための通常の制御動作でも変動する場合がある。このため、循環不良を精度よく検出するには、入力電流値のほか、他の判断基準との組み合わせで判断することが余儀なくされ、迅速且つ高精度に循環不良を検出することができなくなる。
【0007】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、再熱除湿の際、迅速かつ高精度に循環不良を検出することが可能な空気調和機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る空気調和機は、室内機と、室外機と、制御装置とを具備する。
上記室内機は、第1熱交換部と第2熱交換部とを有する室内熱交換器と、上記第1熱交換部と上記第2熱交換部との間に接続された減圧装置と、室内空気の温度を検出する第1温度センサとを有する。
上記室外機は、室外熱交換器と、上記室外熱交換器と上記室内機との間に接続された圧縮機と、上記室外熱交換器の温度を検出する第2温度センサとを有する。
上記制御装置は、上記第1熱交換部を凝縮器として機能させ上記第2熱交換部を蒸発器として機能させる再熱除湿運転時に、上記第2温度センサが検出した上記室外熱交換器の温度よりも上記第1温度センサが検出した室内空気の温度のほうが高いと判断した場合に、上記圧縮機の運転動作を停止する。
【0009】
このような空気調和機であれば、制御装置が再熱除湿運転時に、第2温度センサが検出した室外熱交換器の温度よりも第1温度センサが検出した室内空気の温度のほうが高いと判断した場合には循環不良となる確率が高いため、第2温度センサが検出した室外熱交換器の温度と、第1温度センサが検出した室内空気の温度とを検出することにより、再熱除湿運転での循環不良を迅速かつ高精度に検出することが可能になる。
【0010】
上記の空気調和機においては、上記制御装置は、上記室内機に設けられた第1制御部と、上記室外機に設けられた第2制御部とを有し、上記圧縮機の運転動作を停止する制御は、上記第2制御部が行い、上記第1制御部は、上記第2制御部が上記圧縮機を停止させた情報を上記第2制御部から受信した場合、上記減圧装置の開度を所定時間内でより増加する制御を行ってもよい。
【0011】
このような空気調和機であれば、圧縮機の運転動作を停止する制御は、室外機に設けられた第2制御部が行い、第1制御部は、第2制御部が圧縮機を停止させた情報を第2制御部から受信した場合、減圧装置の開度を所定時間内でより増加する制御を行うため、制御部での処理を分散させること可能になる。
【発明の効果】
【0012】
以上述べたように、本発明によれば、再熱除湿の際、迅速かつ高精度に循環不良を検出することが可能な空気調和機が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施形態の空気調和機の概要を示すブロック構成図である。
【
図2】
図2は、第1制御部及び第2制御部のそれぞれの制御並びに第1制御部と第2制御部との間の電気通信を示すブロック図である。
【
図3】本実施形態の再熱除湿運転の制御の一例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。各図面には、XYZ軸座標が導入される場合がある。また、同一の部材または同一の機能を有する部材には同一の符号を付す場合があり、その部材を説明した後には適宜説明を省略する場合がある。また、以下に示す数値は例示であり、この例に限らない。
【0015】
図1は、本実施形態の空気調和機の概要を示すブロック構成図である。
図1に示す構成は、本実施形態の空気調和機の一例であり、この例には限定されない。なお、以下での"接続"とは、
図1の実線で示されたパイプ(冷媒配管)により冷媒回路の部品である熱交換器や減圧装置が接続され、冷媒流路が形成された状態を意味する。
【0016】
空気調和機1は、室内機10と、室外機30と、制御装置40とを具備する。空気調和機1は、冷房運転及び再熱除湿運転のほか、暖房運転を可能とした空気調和機である。
【0017】
室内機10は、室内熱交換器100と、減圧装置130と、第1温度センサ140と、室内ファン150とを有する。室内熱交換器100は、第1熱交換部110と第2熱交換部120とを有する。第1熱交換部110及び第2熱交換部120のそれぞれは、例えば、複数枚の金属フィンを有する。なお、
図1では、室内ファン150は、模式的に第1熱交換部110と第2熱交換部120とのそれぞれ付近に設置されているが、1つでもよい。
【0018】
減圧装置130は、例えば、開度が調整できる電磁式膨張弁(電磁弁)である。減圧装置130は、第1熱交換部110と第2熱交換部120との間に接続される。第1熱交換部110と、減圧装置130と、第2熱交換部120とは直列に接続されている。
【0019】
第1熱交換部110は、減圧装置130とは反対側において、室外機30の減圧装置330に接続されている。第2熱交換部120は、減圧装置130とは反対側において、室外機30の四方弁320に接続されている。室内ファン150は、第1熱交換部110及び第2熱交換部120のそれぞれの付近に配置される。
【0020】
第1温度センサ140は、室内機10が取り付けられた室内空気の温度を検出する。第1温度センサ140としては、例えば、熱電対、サーミスタ等があげられる。第1温度センサ140は、室内機10に設置することに限らず、空気調和機1のオン・オフ、温度設定等を可能にする遠隔操作器に設けてもよい。この場合、遠隔操作器は、室内機10に含まれるとする。
【0021】
室外機30は、室外熱交換器300と、圧縮機310と、四方弁320と、減圧装置330と、第2温度センサ340と、室外ファン350とを有する。室外熱交換器300は、例えば、複数枚の金属フィンを有している。減圧装置330は、例えば、膨脹弁である。
【0022】
圧縮機310は、第2熱交換部120と室外熱交換器300との間に接続される。但し、第2熱交換部120と圧縮機310との間、及び室外熱交換器300と圧縮機310との間には、四方弁320が接続される。
【0023】
室外熱交換器300は、四方弁320と減圧装置330との間に接続されている。減圧装置330は、室外熱交換器300と第1熱交換部110との間に接続されている。四方弁320と、室外熱交換器300と、減圧装置330とは直列に接続されている。室外ファン350は、室外熱交換器300付近に配置される。
【0024】
第2温度センサ340は、室外熱交換器300の温度を検出する。例えば、冷房運転時または再熱除湿運転時に、第2温度センサ340は、室外熱交換器300の出口の温度を検出する。室外熱交換器300の出口の温度は、室外熱交換器300によって熱交換がなされた後の室外熱交換器300から流出する冷媒の温度に相当する。第2温度センサ340としては、例えば、熱電対、サーミスタ等があげられる。
【0025】
制御装置40は、室内機10及び室外機30を制御する。制御装置40は、室内機10に設けられた第1制御部41と、室外機30に設けられた第2制御部42とを有する。空気調和機1において、第1制御部41と第2制御部42との間では、有線または無線により電気通信(例えば、シリアル通信等)が行われる。なお、第1制御部41と第2制御部42と纏めた制御装置40を室内機10または室外機30のどちらか一方に設置してもよい。
【0026】
例えば、
図2は、第1制御部及び第2制御部のそれぞれの制御並びに第1制御部と第2制御部とを示すブロック図である。
【0027】
第1制御部41は、例えば、減圧装置130、室内ファン150等を制御する。第1制御部41には、第1温度センサ140が検出した室内空気の温度が送信される。第1制御部41が受信した室内空気の温度は、第2制御部42に送信される。また、第1制御部41は、第1温度センサ140が検出した温度と使用者によって設定された設定温度との差に応じて、空気調和機1の冷房運転と再熱除湿運転との切り替えを行う。例えば、第1温度センサ140が検出した温度が設定温度よりも高い場合は再熱除湿運転から冷房運転に切り替えられる。
【0028】
第2制御部42は、例えば、圧縮機310、減圧装置330、室外ファン350等を制御する。第2制御部42には、第2温度センサ340が検出した室外熱交換器300の出口の温度が送信される。第2制御部42は、第1温度センサ140及び第2温度センサ340が検出した温度に応じて、圧縮機310を停止させることができる。この制御は、後述する。また、第2制御部42が圧縮機310を停止させた情報は、第1制御部41に送信される。
【0029】
例えば、再熱除湿運転では、第1熱交換部110が凝縮器として機能し、第2熱交換部120が蒸発器として機能する。これに対し、冷房運転では、第1熱交換部110及び第2熱交換部120のそれぞれが蒸発器として機能する。再熱除湿運転での冷媒の流れは、冷房サイクルと同じ方向の冷媒の流れで実行されるため、再熱除湿運転の動作を説明する前に冷房運転の動作について説明する。
【0030】
(冷房運転)
【0031】
冷房運転における冷媒の流れが
図1中の実線矢印で示されている。まず、圧縮機310が駆動すると、圧縮機310から流出した高圧の冷媒が四方弁320に流入し、四方弁320を経由して、室外熱交換器300に流入する。室外熱交換器300に流入した冷媒は、室外ファン350によって取り込まれた外気と熱交換を行って凝縮する。室外熱交換器300から流出した冷媒は、冷房運転に応じた開度となった減圧装置330を通過する際に減圧される。
【0032】
次に、減圧装置330から流出した冷媒は、第1熱交換部110に流入した後、冷房運転では開度が全開とされている減圧装置130を通過して第2熱交換部120に流入する。第1熱交換部110及び第2熱交換部120のそれぞれで、冷媒は室内ファン150によって取り込まれた室内空気と熱交換を行って蒸発する。これにより、室内機10から冷却された室内空気が放出される。
【0033】
この後、第2熱交換部120から流出した冷媒は、四方弁320を経由して、再び、圧縮機310に吸入されて圧縮される。
【0034】
(再熱除湿運転)
【0035】
再熱除湿運転では、冷媒の流れ方向は、冷房運転と同じ向きになる。但し、再熱除湿運転では、減圧装置330が全開とされ、減圧装置130が再熱除湿運転に応じた開度になる。これにより、室外熱交換器300とともに第1熱交換部110が凝縮器として機能し、第2熱交換部120が蒸発器として機能する。
【0036】
例えば、室外熱交換器300で外気と熱交換を行った冷媒は、全開とされている減圧装置330を通過し、第1熱交換部110に流入する。第1熱交換部110に流入した冷媒は、室内ファン150によって取り込まれた室内空気と熱交換を行って凝縮する。この後、冷媒は、第1熱交換部110から流出し、所定の開度とされた減圧装置130を通過して減圧される。そして、冷媒は、第2熱交換部120に流入し、室内ファン150によって取り込まれた室内空気と熱交換を行って蒸発する。
【0037】
再熱除湿運転では、室外熱交換器300及び第1熱交換部110が凝縮器として機能し、第2熱交換部120が蒸発器として機能する。つまり、第1熱交換部110では室内空気が加熱され、第2熱交換部120では室内空気の除湿と冷却とが行われる。
【0038】
再熱除湿運転が正常に動作している間は、一般的に室内空気の温度よりも室外熱交換器300の出口の温度(該出口の冷媒温度)のほうが高くなっている。室内空気の温度より高い温度の冷媒が第1熱交換部110に流入して室内空気と熱交換を行うことにより、再熱除湿運転では、室内空気の極端な温度低下が抑えられ、室内空気の除湿を図ることができる。
【0039】
なお、暖房運転時には、冷媒の流れる向きが冷房運転(または、再熱除湿運転)と逆になる。すなわち、冷媒は、実線矢印と逆の方向に流れ、室外熱交換器300が蒸発器として機能し、第1熱交換部110と第2熱交換部120とが凝縮器として機能する。暖房運転での四方弁320における冷媒の出入りは、図中に破線矢印で示されている。
【0040】
本実施形態の空気調和機1の作用を説明する前に、再熱除湿運転で空気調和機に起き得る現象について説明する。
【0041】
例えば、再熱除湿運転の際、一例として、室外機30に強風、突風等が流れ込むと、室外熱交換器300における熱交換が過剰になされ、室外熱交換器300内の冷媒が急激に冷やされる場合がある。これにより、室外熱交換器300の出口の温度よりも室内空気の温度のほうが高くなる場合がある。
【0042】
このような場合、再熱除湿運転モードであっても、第1熱交換部110は室内空気から熱を吸収してしまい、第1熱交換部110が凝縮器として作用しなくなる。例えば、再熱除湿運転時に第1熱交換部110が一時的に蒸発器として作用してしまう。
【0043】
これにより、第1熱交換部110内では、ガスの比率が増加し、減圧装置130の上流側に相当する第1熱交換部110内、または、第1熱交換部110と減圧装置130との間のパイプ(
図1のAで示す部分)内には、乾き度の高い二相冷媒(気相と液相とが混合した冷媒)が停滞することになる。ここで乾き度とは、湿り蒸気(二相冷媒)中の蒸気(ガス冷媒)の量の占める割合を意味する。すなわち、二相冷媒の乾き度が高くなるほど、二相冷媒における気相の比率が高くなることを意味する。
【0044】
このような乾き度の高い二相冷媒が減圧装置130の上流で形成されると、再熱除湿運転時に所定の開度に調整された減圧装置130は、冷媒にとって高抵抗の流路となり、冷媒が減圧装置130を通過しにくくなる。
【0045】
これにより、減圧装置130の下流に流出される冷媒の量が少なくなり、第2熱交換部120に流入される冷媒の量、及び圧縮機310に還流する冷媒の量が減ってしまう。この結果、圧縮機310内に冷媒が少ない状態で圧縮機310が稼働する、いわゆる圧縮機の空運転に近い状態が続き、圧縮機310が冷媒を室外熱交換器300側に押し出すことができにくくなる循環不良に陥る。
【0046】
また、このような循環不良の状態で空気調和機を稼働しても、第2熱交換部120内には、おける冷媒量の少なさから、第2熱交換部120が充分に蒸発器として作用せず、設定温度での除湿が充分になされないことになる。すなわち、使用者が除湿モードを選択しても、除湿がされないことになる。
【0047】
特に、この現象は、空気調和機1の初期動作から除湿(再熱除湿)が使用者によって選択され、圧縮機310が充分に温まっていない空気調和機の初期動作時に起き得る可能性がある。これは、圧縮機310が冷えているため、圧縮機310自体が圧縮機310から温かい冷媒を室外熱交換器300に供給できないためである。
【0048】
また、冷媒が圧縮機310に還流されないまま圧縮機310を駆動することは、圧縮機310にとって負荷となる。例えば、圧縮機310の本体、圧縮機310を駆動するモータ等が故障する可能性がある。
【0049】
このような循環不良を回避するため、本実施形態の空気調和機1では、
図3に示す制御が行われる。
【0050】
図3は、本実施形態の再熱除湿運転の制御の一例を示すフロー図である。
図3の左側には室内機10における制御のフローが示され、右側には室外機30における制御のフローが示されている。
図3に示すフローは、制御装置40によって自動的に行われる。例えば、室内機10は、第1制御部41によって制御され、室外機30は、第2制御部42によって、それぞれ制御される。
【0051】
例えば、使用者が室内にある遠隔操作器によって空気調和機1の再熱除湿運転モードを選択すると、遠隔操作器から室内機10の第1制御部41に再熱除湿運転の指示がなされる(ステップS10)。これにより、空気調和機1の再熱除湿運転が開始される(ステップS11)。
【0052】
再熱除湿運転が開始されると、室外機30においては、第2制御部42によって室外機30の運転が開始される。例えば、第2制御部42によって、圧縮機310が駆動し始め、室外ファン350が回転し始める(ステップS30)。
【0053】
一方、室内機10においては、圧縮機310が所定の時間駆動することによって減圧装置130(電磁弁)の上流側と下流側との冷媒の圧力差が所定の圧力差になる。この所定の圧力差になったら、減圧装置130の開度が第1制御部41によって所定の開度に調整される(ステップS12)。減圧装置130の所定の開度とは、第1熱交換部110が凝縮器となり第2熱交換部120が蒸発器となるような開度である。なお、減圧装置130の上流側と下流側との冷媒の圧力差は、圧力センサを用いて検出してもよい。
【0054】
この後、室内機10は、第1温度センサ140が検出した温度(室内温度)を室外機30の第2制御部42に送信する(ステップS13)。すなわち、第1温度センサ140及び第2温度センサ340のそれぞれが検出した温度の高低が判断される前に、室内機10の第1制御部41から室外機30の第2制御部42に第1温度センサ140が検出した室内空気の温度が送信される。
【0055】
一方、室外機30では、冷凍サイクル内の冷媒圧を安定させるため、圧縮機を温めるための暖機運転を行う。例えば、所定の暖気時間(例えば、数10分間)の暖機運転によって、冷凍サイクルの運転が継続される(ステップS31)。これにより、循環不良の誤検知による再起動の繰り返しを防止する。なお、圧縮機310が十分に温まったか否かを検出するために、圧縮機310の駆動モータの温度を検出してもよい。
【0056】
次に、室外機30では、室外熱交換器300の温度よりも室内温度が高いか否かの判断がなされる(ステップS32)。例えば、「第2温度センサ340が検出した温度<第1温度センサ140が検出した温度」であるか否かの判断がなされる。
【0057】
ここで、室外熱交換器300の温度≧室内温度ならば(ステップS32-NO)、引き続き、室外熱交換器300の温度よりも室内温度が高いか否かの判断がなされる。一方、室外熱交換器300の温度<室内温度ならば(ステップS32-YES)ならば、圧縮機310が停止される(ステップS33)。さらに、圧縮機310が停止した情報は、第2制御部42から第1制御部41に送信される。
【0058】
次に、室内機10の第1制御部41は、圧縮機310から送信された情報を基に、圧縮機310が停止しているか否かの判断を行う(ステップS14)。ここで、圧縮機310が停止中でないならば(ステップS14-NO)、引き続き、第1制御部41によって圧縮機310が停止しているか否かの判断が続けられる。
【0059】
一方、圧縮機310が停止中であると、第1制御部41が判断した場合には(S14-YES)、第1制御部41は、圧縮機310が停止した状態で、減圧装置130(電磁弁)を、全開にする。
【0060】
このように、圧縮機310の運転動作を停止する制御は、第2制御部42が行う。また、第1制御部41は、第2制御部42が圧縮機310を停止した情報を第2制御部42から受信した場合、減圧装置130の開度を所定時間内で再熱除湿運転時の開度よりも、開度をより増加する制御を行う。
【0061】
これにより、減圧装置130における冷媒の圧力損失が大きくなって室内熱交換器100から圧縮機310に冷媒が帰還しにくくなる循環不良が解消され、減圧装置130を通過しにくかった減圧装置130の上流側の高圧の冷媒が減圧装置130の下流に流れ、減圧装置130の上流側と下流側とでの冷媒の圧力の均一化を図ることができる。換言すれば、減圧装置130の下流に流出する冷媒の量が多くなり、第2熱交換部120に流入される冷媒の量、及び圧縮機310に還流される冷媒の量が増加する。
【0062】
この結果、再熱除湿運転を再び開始しても(ステップS11)、圧縮機310内には、充分な量の冷媒があるため、圧縮機310の空運転状態が起きにくく、圧縮機310は、冷媒を室外熱交換器300側に押し出すことができる。換言すれば、圧縮機310内に冷媒が少ない状態で圧縮機310が稼働する圧縮機の空運転が回避され、圧縮機310が冷媒を室外熱交換器300側に押し出すことができないといった循環不良が回避される。
【0063】
このとき、圧縮機310は、充分に温まっているため、室外熱交換器300に高圧高温の冷媒を供給することができる。これにより、室外熱交換器300内の冷媒は、急激に冷やされなくなり、室外熱交換器300の温度≧室内温度の状態が維持され、再熱除湿運転が安定して継続される。
【0064】
このように、本実施形態では、制御装置40が第1熱交換部110を凝縮器として機能させ、第2熱交換部120を蒸発器として機能させる再熱除湿運転時に、第2温度センサ340が検出した室外熱交換器300の温度よりも第1温度センサ140が検出した室内空気の温度のほうが高いと判断した場合に、圧縮機310の運転動作を停止するリセット動作(再起動)をかけ、再熱除湿運転が再び実行する。なお、リセット動作後では、上述したように、圧縮機310内には、充分な量の冷媒が存在するため、圧縮機310が冷媒を室外熱交換器300側に押し出すことができ、再熱除湿運転が継続される。
【0065】
特に、本実施形態では、再熱除湿運転での循環不良の起点となる、室外熱交換器の温度と、室内空気の温度との差を直接的に判断して圧縮機310にリセット動作をかけるため、圧縮機の入力電流値のほか、他の判断基準との組み合わせで判断することを要さず、迅速且つ高精度に再熱除湿運転時の循環不良を検出することができる。
【0066】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく種々変更を加え得ることは勿論である。各実施形態は、独立の形態とは限らず、技術的に可能な限り複合することができる。
【符号の説明】
【0067】
1…空気調和機
10…室内機
30…室外機
40…制御装置
41…第1制御部
42…第2制御部
100…室内熱交換器
110…第1熱交換部
120…第2熱交換部
130…減圧装置
140…第1温度センサ
150…室内ファン
300…室外熱交換器
310…圧縮機
320…四方弁
330…減圧装置
340…第2温度センサ
350…室外ファン